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九州地区における東シナ海での長周期振動に関する研究

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九州地区における東シナ海での長周期振動に関する研究
九州地区における東シナ海での長周期振動に関する研究
−−
「あびき」あるいは「気象津波」と呼ばれる長周期波災害について−−
浅野敏之*
* 鹿児島大学大学院理工学研究科
要
海洋土木工学専攻
旨
長崎港における気象擾乱を発生源とする長周期波「あびき」は、古くから知られた海象災
害である。近年、同様な災害事例が北海、地中海、アドリア海などに面する国から報告され
ている。共通するのは海洋上を東進する微気圧変動が海洋長波の波速と共鳴し、さらに細長
い湾内で固有振動を発生させることである。狭長な湾は通常風浪に対しては遮蔽域となり、
漁港や水産施設の適地となるが、気象擾乱が起因の長周期波は予期せぬ副振動を発生させ、
最近では「気象津波」と呼ばれるに至っている。本稿は、東シナ海側に開口する甑島の浦内
湾を対象地として、著者らの研究グループが実施した現地観測と気象場・海象場の数値解析
結果についてまとめたものである。
1.
研究の歴史
限らず、九州本土から南西諸島にかけて広い範囲で
発生しており、東シナ海に面した地点ばかりでなく、
1.1
長崎湾のあびき
毎年、冬から春先にかけて東シナ海に面する九州
太平洋岸でも発生している。例えば、2004年2月29
日~3月1日に発生したあびきは、九州西岸の佐世保、
西岸の湾や港湾では、多くの場合何の前ぶれもなく
長崎、阿久根、枕崎のみならず九州東岸の細島、油
周期数分から数十分の海水面の副振動が発生し、係
津、大泊、薩南諸島の種子島、南西諸島の中之島で
留漁船の転覆や荷役障害、背後の住宅地の浸水等の
大きな副振動が観測されている(志賀ら、2007)。
被害が発生してきた。九州西岸、特に長崎湾では、
長崎湾のあびき研究が、世界の気象起因の副振動
この副振動は「あびき(網曳き)」と呼ばれ、古くか
災害の先駆けとなったことは明確であり、前述の
ら知られてきた。この発生メカニズムは、東シナ海
Hibiya-Kajiuraをはじめとする研究は、現在も国の内
海洋上を九州沿岸に向けて東進する微気圧変動の速
外を問わず論文中で引用されている。
度と、誘起される海洋長波の伝搬速度が近いために
共鳴増幅が起こり、さらに湾口に到達した長周期波
が 湾 内 で 共 振 す る こ と で 説 明 さ れ て い る (Hibiya
-Kajiura, 1982)。
1.2
海外における気象津波の研究
気象擾乱が起因となる湾内の副振動災害は、海外
のいくつかの国でも報告されている。発生箇所の大
長 崎 港 の あび き に 関 す る 研 究 は 、 古 く は寺田ら
半は、わが国と同じく外洋に対して東側に開口する
(1953)やNakano-Unoki(1962)の研究にさかのぼるが、
細長い湾や入り江である。これまで報告されている
1979年3月31日に長崎検潮所で最大全振幅279cmの大
大きな災害事例を挙げると以下の通りである。
きなあびきが発生し、この時にその発生メカニズム
アドリア海に位置するクロアチア国Korcula島内
について研究が本格的に行われるようになった(例
の入り江の奥地にある町Vela Lukaでは1978年6月21
えば、赤松、1982、富樫ら、1986)。長崎湾では1988
日に全振幅6m、周期18分の大きな副振動が発生し、
年3月16日にも最大全振幅217cmの大きなあびきが発
大規模な浸水被害が生じた。地中海スペイン南部
生し(半沢ら1989)、長崎湾があびき研究の中心とな
Balearic諸島のMenorca島Ciutadella港では、1984年6
った時期が続いた。しかし、あびきは長崎湾だけに
月の副振動で300隻のボートが被害を受け
(Rabinovich and Monserrat, 1996)、さらに2006年6月15
象情報が簡単に入手できるようになったこと、水位
日には再び全振幅6mの副振動が発生し、数千万ユー
計・流速計・気圧計などの高精度化・小型化が進み、
ロの経済被害が生じた (Monserrat et al., 2006). これ
離島など僻地での現地観測が容易になったことが要
ら以外でもさまざまな国で同様な被害が生じており、
因と考えられる。
国によって異なる名称で気象起因の副振動災害は呼
ばれている。例えば、上記スペインBalearic諸島では
rissaga,イタリア・シシリー島ではmarubbio, 西アイ
1.3
著者らの研究
東シナ海西方に開口する上甑島浦内湾(図-1(C))は,
ルランドではdeath wave、バルチック海ではseebӓrな
毎年,冬から春先にかけて現地で「あびき」と呼ば
どである。
れる副振動の被害を受けている.浦内湾では,数分
最近の学術誌上ではこうした気象起因の副振動災
害をMeteotsunami(あるいはMeteorological Tsunami)
と呼ぶようになってきている。この用語は古くは
から数 10 分周期の副振動が頻繁に発生し,冬から春
先にかけては副振動の全振幅が 1m を超えることも
しばしばである。2004 年 3 月 1 日に九州全域で観測
Defant(1961)の海洋物理学の教科書に使われた用語
である。Elsevier発行の学術誌”Physics and Chemistry
of the Earth”では、2009年にMeteo-tsunamiの特集号を
発行しており、そこには前述のクロアチア、スペイ
ンをはじめ、アルゼンチン・ニュージーランドを含
む12カ国からの12論文が掲載されている(Robinovich
et al.,2009)。以下、本稿においても1つの地元名であ
された副振動は浦内湾でも確認されており,この影
響によって,上甑島の小島漁港では,係留中の漁船
5 隻が転覆する被害が発生した.また,2009 年 2 月
24 日~25 日にも九州北部から南西諸島の奄美大島
までの広い範囲で大きな副振動が発生し,上甑島で
は付近家屋 8 棟の床下浸水,小型漁船 7 隻の転覆,
る「あびき」ではなく、「気象津波」の用語を使用
マグロ養殖用イケスの破損などの広範囲の被害が発
することにする。
生した。このときの副振動の山から谷の高さは遡上
この気象津波に対する関心の高まりは、多くの国
で同様な災害が発生していることが認識されてきた
こと、インターネットの発達により広域の気象・海
の痕跡から 3m に達していたことが報告されている
(柿沼ら、2009).
このような被害をもたらすほどの大きな副振動が
Mejima 図-1
調査点の位置図
発生しているにも関わらず,水位や流速の測定記録
五島列島福江および鹿児島県阿久根の特別地域気象
がないため,その特性はよく解明されていなかった。
観測所で測定された気圧データを気象業務支援セン
また、浦内湾は 2 つに分岐する独特な湾形を持つた
ターから入手し解析した.
め,外洋とともに湾内の多点で水位変動を計測しな
一方、水位変動観測については、図-2 に示すよう
ければ、複雑なモードの副振動の全体像を明らかに
に,浦内湾内と周辺海域の計 9 点(St.1~St.9)と,
することはできないと考えられた。
著者らの鹿児島大学を中心とする研究グループは、
外洋域として女島(St.10)において連続観測する体
制をとった.使用した水位計は,半導体水圧センサ
2004 年の甑島の副振動災害から研究を開始しており、
2007 年には浦内湾の湾水振動の特性を調べるために
数値シミュレーションを実施した(白橋ら、2008)。
2010 年 1 月~4 月には甑島浦内湾内と湾外ならびに
外洋部に水位計・流速計・気圧計を配置した現地観
測を実施し、現地の副振動の特性を解明しようとし
た(浅野ら、2011)。併せて、2009 年 2 月のあびき災
害を再現し、海洋長周期波の発生・発達・増幅のメ
カニズムの解明を目指した数値シミュレーション
(齋田・浅野、2011)と、気象擾乱場の数値シミュレー
ションを実施した(田中・浅野、2011)。得られた主要
な結果については、次節以下で詳述することにする。
最後にあびき対策が求められる今日的な背景を指
摘しておきたい。こうした細長く入りくんだ湾は,
通常の風浪の侵入が少なく台風時でも静穏域を提供
するため,従来から生簀などの水産施設の適地とな
っている.最近では世界中で天然マグロの個体数が
減少し、漁獲制限などの資源保護の中で、マグロ養
殖が注目されている。鹿児島県の平成 23 年における
養殖クロマグロの出荷重量は 3058 トンで全国の 1/3
を占める(水産庁、2012)。このように離島や遠隔地
にとって、大型魚養殖の事業展開は、産業と雇用の
図-2
浦内湾周辺の測定計器の配置位置
ー(測定範囲 25m,精度 0.3%FS)である.測定間隔
は 1min でメモリー容量から 123 日間の連続観測が可
能である.水位計の設置方法は,激しい外洋波浪を
受ける女島(St.10)のみ海底固定とし,それ以外は
おもりと中立ブイを用いた係留固定とした.ただし,
創出につながり、大きな期待をかけている.こうし
水深の大きい St.1~St.4 では波浪によって係留系
た大型生簀は高額の水産施設となるが、ひとたびあ
が揺動したことが一部の水位データの解析から認め
びきの長周期変動によって大きな被害を受ければ、
られ,そのデータ区間の精度が低下した恐れがある.
水産事業のみならず地元の雇用に大きな打撃を与え
得られた水位変動データの例を図-3 に示す.水位の
てしまう。
生データから気圧変動補正を行い,潮位変動を差し
引くことにより水位偏差を求め,以後のスペクトル
2.
測
上甑島浦内湾における気象津波の現地観
や wavelet の解析に用いた.
流況観測については、浦内湾内の中央部(St.5)
と小島漁港側湾奥部(St.8)の 2 点で ADCP を用いて
2.1
現地観測の概要
現地観測は、2010 年 1 月 12 日~4 月 4 日までの約
3 ヶ月にわたって図-2 に示す地点において気圧計・
水位計・流速計を配置し、長期観測を実施した。
気圧観測については、図-2 に示すように上甑島浦
内湾の小島漁港側の湾奥部と,図-1(a)に示す甑島西
方約 140km にある男女群島の女島の 2 点に気圧観測
ユニットを配置した.微気圧の急変を測得する必要
から測定間隔は 1min として連続観測を行った.また
図-3
2010 年 2 月 1 日に St.9 で観測された水位変動
実施した.図-2 に示したように,浦内湾は途中で
小島側と桑之浦側の 2 つの湾に分岐しており,そ
の副振動の特性は,湾奥部で腹,湾口部で節を持
つモードだけでなく,桑之浦側の湾奥部と小島側
の湾奥部の両端部で逆位相となる腹の振動,中央
の湾分岐部付近で節を持つモードが存在すること
が明らかになっている(山城ら 2009).ADCP の設
置位置はこうした腹と節の流況を測得するために
決定した.ADCP の仕様は,使用周波数 600Hz,測
定精度±0.8%,設定層数 2~30 層,設定層厚 1m
であり 1min でデータサンプリングを行った.
2.2
観測結果ならびに考察
(1) あびきイベントの検出
小島側の湾奥地点(St.9)において得られた全
観測期間中の水位偏差データから,ゼロアップク
ロス法で全振幅(=波高)を求めた(図-4).浦内
湾奥部 St.9 において全振幅 150cm 以上の大きな副
振動は,観測期間 82 日中で,1 月 25 日(1.6m),
2 月 1 日(1.6m),3 月 3 日(2.6m),3 月 5 日~
図-4
3 月 6 日(2.5m~2.8m),3 月 24 日(2.3m)の 5
副振動全振幅の時系列
回発生した.また,全振幅 100cm 以上のイベントは
15 日(発生回数 82 回)観測された.2 月 1 日に発生
したあびきでは,上甑町瀬上地区において床下浸水
等の被害が発生したが,これは大潮の満潮時期と重
なったことが 要因 と考 えら れる .鹿 児島 地方気象
台・長崎海洋気象台の発表によると,同日 10:07 に
枕崎で 56cm(周期 17min),同日 11:39 に長崎で 78cm
(周期 38min)の副振動が観測された.浸水被害の
生じた 2 月 1 日は大潮の満潮期に重なっていたが,
それ以外は,ほぼ小潮期に相当し浸水や堤防からの
越流等の被害は起こっていない.本観測から,現地
ではかなりの頻度で大きな副振動が発生することが
明らかになった.副振動に大潮の満潮時期が重なれ
ば浸水や越流の被害が発生する.潮位の関係で越流
による被害は生じなくても,あびきによる流れで水
図-5 浦内湾湾口ならびに湾内で取得された水位偏差のパ
ワースペクトル(2010 年 2 月 1 日データ)
産施設や漁船等に被害は生じる可能性があり注意
が必要である.
(2) 浦内湾内の副振動の周波数特性
図-5 は 2 月 1 日のあびきの水位偏差データを用
い,浦内湾湾口部(St.4)ならびに浦内湾内(St.5
~St.9)のパワースペクトルを示したものである.
浦内湾では,湾奥を腹とし湾口を節とする約
24min(第1モード)と 12min(第 2 モード)のモ
ード,分岐部を節として 2 つの湾奥を腹とする約
10.5min(第 3 モード)のモードの副振動が観測さ
れている(山城ら 2009).図-5 中に振動①と示し
図-6
2010 年 2 月 1 日に St.9 で観測された水位変動
の wavelet 解析結果
た部分は周期 24min の第1モードに相当し,その振
特性を示した.
幅は St.9>St.8>St.7=St.6>St.5>St.4 の大小
3 月 5 日の気圧波の伝搬状況も 2 月 1 日とほぼ同
関係が認められ,小島と桑之浦の両湾奥で振幅が大
じで女島→福江→甑島→阿久根の順で気圧波が伝搬
きく湾口に近づくにつれて小さくなることがわかる.
しており,女島と甑島の時間遅れは 1 時間であった
また図中に振動②と示した部分は周期 12min の第 2
ことから気圧波は 140km/h の速度で東進したと判断
モードに相当し,St.9>St.8>St.4>St.5>St.6 の
できる.
関係が認められる.このモードでは湾長 LB と長周期
3 月 6 日については前日と異なり,図-9 に示すよ
波長 LW の比が 3/4 となるので湾内の St.6 近くで節
となりスペクトルの振幅が小さくなっている.図中
に振動③と示した部分は,周期 10.5min の第 3 モー
ドであり,St.9>St.8>St.7>St.6 の関係が得られ
ている.この結果は,中央の湾分岐部で節となり,
小島と桑之浦の両湾を腹としてシーソーのように振
動するモードの特性をよく示している.
次いで wavelet 解析で第 1 モードに相当する周期
17~32min の成分,第 2,第 3 モードに相当する周期
6~17min の成分を抽出しその時系列を調べた(図-6,
図-7).その結果,第 1 モードでは全測点で同位相の
変動が認められ,湾奥 St.9 に向かうほど振幅が大き
くなることがわかった.第 2,第 3 モードでは湾口
図-7
wavelet 解析から抽出した第 1 モードの振動
および第 2,第 3 モードの振動波形
部の St.3,St.4 と湾奥部の St.8,St.9 で位相が逆と
なっており,分岐部の St.6 で振幅が小さくなる結
果を得た.また 2 つに分岐した湾の一方の湾奥側
(St.8,St.9)と他方の湾奥側(St.7)で逆位相
の変動を示し,第 3 モードの存在が裏付けられた.
ここに示していない 2 月 1 日以外の観測データか
らも上記の特性が認められる.外洋部女島におけ
る St.10 のスペクトルに関しては,10min 以下の
風波・うねり成分の変動が強いが,3 月 6 日では
18min,45min,3 月 24 日では 15min,26min,58min
にピークがみられ,長周期の変動成分も卓越して
いた.
図-8
2 月 1 日の女島と甑島の気圧偏差の時系列
(3) 気圧変動と気圧波の伝搬特性
あびき発生時の気圧変動状況を明らかにするため
に,取得された連続気圧データに対して周期 60min
以上の長周期波成分をカットする数値フィルターを
かけた気圧偏差について検討した.
図-8 は 2 月 1 日の女島と甑島の気圧波を示したも
のである.女島で 7:04~8:14 の 70min 間に全振幅
2.1hPa の急激に低下する気圧波が,甑島には 8:11
~9:04 に 1.6hPa/24min の気圧急変波となって伝搬
していることが確認できる.女島・甑島間の距離は
約 140km であるから,気圧波は女島から甑島間を約
140km/h の速度で伝播したことになる.この日の浦
内湾内の副振動の最大全振幅(湾奥 St.9 で 1.6m)
は,8:50~9:00 に記録されている.なお,図には示
していないが福江は女島と,阿久根は甑島と同様な
図-9
3 月 6 日の女島と甑島の気圧偏差の時系列
うに,2:30 頃に甑島→阿久根,19:30 頃に甑島→阿
スペクトルの湾内部と湾口部の比の平方根で計算で
久根→女島の順に気圧波が伝搬している.これより
きる.図-12 は湾口部における入射波として St.3 を
甑島南方からの気圧波が 120~150km/h で北東方向
用い,湾奥の St.9 とのパワースペクトル比から求め
に進行したものと考えられる.浦内湾湾奥の St.9 で
た増幅率の例である.ここに示していないあびき発
は 20:50 頃に全振幅 2.0m,21:30 頃に全振幅 2.8m の
生イベントの結果も総合すると,水位変動の増幅率
副振動が観測されている.
3 月 24 日は図-10 に示すように女島では 4:30 頃
に 1.7hPa/23min,21:00 頃に 2.2hPa/22min の気圧急
変があり,甑島では 6:30 頃に 1.1hPa/30min,22:10
頃に 1.0hPa/24min の気圧急変が認められる.したが
って女島・甑島間では約 1~2 時間の時間遅れで気圧
波が伝播したことになる.この日の副振動の最大全
振幅(湾奥 St.9 で 2.3m)は,23:40 頃に観測されて
いる.
図-11 は,3 月 24 日の女島と甑島での気圧偏差の
wavelet スペクトルを示したものである.女島にお
図-10
3 月 24 日の女島と甑島の気圧偏差の時系列
ける高エネルギー密度の領域(図中黒線内)が甑島
におよそ 1~2 時間の時間遅れで伝播しており,前述
の気圧波の解析結果が周波数スペクトルの時間変動
からも確認された.
(4) 外洋部ならびに浦内湾内の海洋波の増幅
特性
前節(3)の解析結果で得られた気圧変動の全振幅
はたかだか 1~3hPa 程度であり,静的な海面変動に
置き換えると,1~3cm にすぎない.湾口部の St.3
での浦内湾の副振動に対応する周期帯の有義波高は,
非定常性が高い時系列で解析データ長に依存するた
めやや任意性があるが,全振幅で 30cm~40cm 程度で
ある.したがって外洋から湾口までの増幅過程には
図-11
動的過程の考察が必要である.
3 月 24 日の女島における気圧偏差と甑島の
気圧偏差の wavelet スペクトル
前節で,気圧変動波の伝搬パターンは東シナ海上
を 約 140km/h で 東 進 す る も の と , 南 方 海 域 か ら
120km/h~150km/h で北東に進行するものの 2 つがあ
ることがわかった.この速度はこの海域の長波の伝
搬速度と近い.また気圧変動波は 3 月 6 日のデータ
(図-9)に典型的に見られるように,数波~数 10 波
の一連の波であり,寒気団の流入が海面で暖められ
ることによる対流セルの進行(de Jong and Battjes,
2004)に起因するとも考えられる.いずれにせよ,
外洋で発生した 1~3hPa 程度の微気圧変動は,海面
長波の伝搬速度に近い速度で洋上を伝搬する過程で
海 面 波 に エ ネ ル ギ ー を 供 給 し 続 け ( Proudman
resonance),海面長周期波の増幅がなされたと考えら
れる.
次に浦内湾内における増幅過程を検討する.湾内
の増幅率は,基本的には例えば図-5 に示したパワー
図-12
湾口部(St.3)と湾奥部(St.9)のパワースペク
トルから求めた増幅率
は浦内湾の共振周期である 10min,20min 付近で大き
地から長江下流の低地域での不安定波動によって発
くなっており,また,10~30min の周期帯の平均値
生したことを指摘している.
として湾口から入射した長周期波は湾奥において約
以上のように,気象予報モデルや計算機技術の発
4~7 倍に増幅されることがわかった.したがって,
達により,気圧波をもたらす気象側の要因が少しず
外洋部と浦内湾内での増幅過程の両者を考慮すると,
つ解明されつつある.しかしながら,上記の成果を
浦内湾湾奥において全振幅 1.5m~2.8m のあびきが
更に体系化し,気象津波の予測技術を確立させるた
観測されたことが説明できる.
めには,他の事例も含めて検証する必要がある.
本節では,気象津波の外力となる気圧微変動の発
(5) 浦内湾内のあびき発生時の流況特性
生源の特徴を明らかにすることを目的として,前節
あびき発生時に St.8 において 60cm/s を超える強い
2.で示した 2010 年の気象津波事例を対象に,その
流れが観測された.大型生簀の設置点に近い St.5 で
時の気象場の特性を解析した.解析手法について論
は周期 25min 程度で流速振幅 20cm/s の往復流が観測
じる前に,気圧微変動発生と伝播に関するメカニズ
された.あびき発生時には表層から底層まで流速が
ムに関して概説し,東シナ海で発生する気象津波の
一様に近い流れが発生する.表層では時に吹送流の
事例解析により,その関与の可能性について論じる.
影響を受けて速くなることがある.潮汐による浦内
湾内で発生する入退潮流は最大でも 2cm/s と微弱で
3.2
あり,あびきによる流れの特性を検討する際には無
視できる.
2.3
現地観測結果のまとめ
気圧微変動発生と伝播の主要なメカ
ニズム
Vilibić and Šepić (2009)および Šepić et al.(2009)は,
アドリア海で発生する気象津波に関して,大気・海
洋相互作用の観点から研究を進め,寒冷前線がアル
全振幅 150cm 以上の大きな副振動は,82 日間の
プス山脈を越えるときに生じる山岳波により下層の
観測期間中 5 日観測され,現地において予想を上
湿った空気が持ち上げられ,大気側で不安定波動が
回る頻度で大きな副振動が発生することがわか
生じ,それが海洋長波を発生させる外力として作用
った.
することを述べている.その際に,大気中の不安定
①
②
あびき発生時における気圧波の伝搬特性と,外
波動は wave-CISK および wave-duct のカップリング
洋域ならびに浦内湾内における増幅機構について
によって発生することに言及している.
考察した.両者の増幅機構により今回観測された
(1)
あびきの全振幅が定量的に説明できることを示し
た.
wave-CISK
対流と波との相互作用によってもたらされる第二
種条件付不安定(Conditionally Instability of the Second
Kind)を wave-CISK と呼び,Lindzen(1972)によって提
唱された概念である.wave-CISK の研究対象は,マ
3.気象津波の発生と伝搬についての気象
場の数値解析
ッデン-ジュリアン振動(MJO)をはじめとする熱帯海
域での大気波動と対流活動との相互作用や,温帯低
気圧の発生過程(Moore and Montgomery, 2004)や前線
3.1
研究の目的
形成過程に対する寄与について言及がされてきてい
これまで,気象津波をもたらす気象状況に関して
る.
は,気圧微変動の観測や,気圧配置の特徴などの統
(2)
計的分析(志賀ら,2007)が中心で,気圧微変動の発
上空の大気中に不安定層の上に安定層(逆転層)が
生から気象津波の発生に至るまでの過程が殆ど研究
存在すると,下層で発生した内部重力波が上空に伝
されていなかった.田中・浅野(2010)は,2009 年 2
播し,不安定層内で増幅し,上層の安定層の境界ま
月 25 日に鹿児島県甑島をはじめ九州西岸で発生し
で達すると反射することで,長距離伝播する(たとえ
た気象津波について,数値予報モデル WRF を用いて,
ば, Lindzen and Tang , 1976; Zhang et al. 2003).
東シナ海上の気圧微変動の解析を行い,寒冷前線に
対流圏の気層の安定度を見る上で,下記で定義され
沿って波長数 10km の気圧変動の波群が進行し,気圧
るリチャードソン数(Ri)を用いる.
波の周期が内湾の振動モードと同程度であったこと
を明らかにした.また,Tanaka (2010)では,同日の
発生事例に関する気圧微変動が,中国大陸南岸の山
wave-duct と対流圏中層の不安定層
大気区規模の Domain1 から,東シナ海上の詳細場
表-1 ケース別の計算開始時刻と計算時間
発生日
計算開始時刻(UTC)
計算時間
2009/2/25
2009/2/23 12:00
48 時間
2010/1/25
2010/1/23 12:00
48 時間
2010/2/1
2010/1/30 12:00
48 時間
2010/3/3
2010/3/1 12:00
48 時間
2010/3/5-6
2010/3/3 12:00
72 時間
2010/3/24
2010/3/23 0:00
48 時間
(Domain3)までの 3 段階の領域を定めた.水平方向
の格子点間隔を 50km, 10km, 2.5km とし,計算時
間ステップを 300 秒, 60 秒, 15 秒と定めた.雲物
理は,Hong et al. (2006)の 6 相スキームを用いて計
算を行った.入力データは気象庁全球数値予報
GPV を用い,海面温度は NCEP 海面温度データを用
いた.計算開始時刻と計算時間は表-1 の通りとし,
6 時間ごとに気象庁数値予報 GPV の解析値でデー
タ同化を行った.計算後のデータ解析として,σ
座標系の出力生データを鉛直方向 50hPa 間隔の等
Ri =
圧面データへと変換し,式(1)で表されるリチャード
N m2
2
⎛ dU ⎞ ⎛ dV ⎞
⎜
⎟ +⎜
⎟
⎝ dz ⎠ ⎝ dz ⎠
2
(1)
ソン数の 3 次元分布を計算した.
ここで, U,V は水平風速, Nm は水蒸気の凝結過程を
考慮に入れたブラント・バイサラ振動数であり,以
下の式で計算を行う.
⎛ d ln θ
L dqs ⎞ dqw ⎪⎫ (2)
⎪⎧ 1 + ( Lqs RT )
×⎜
+
N m2 = g ⎨
⎟⎟ −
⎬
2
⎜ dz
1
(
/
)
ε
+
L
q
c
RT
c
dz ⎭⎪
p T dz ⎠
s
p
⎝
⎩⎪
ここで qw は大気中の水分の混合比, qs は水蒸気の
飽和混合比, ε=0.622, L は蒸発潜熱, R は乾燥空気
の気体定数, T は気温、 θ は温位, cp は定圧比熱で
図-13
計算領域
ある.
3.4 解析結果
3.3 解析方法
(1)
事例抽出
前節2.で示したように 2010 年 1 月~3 月鹿児島
県上甑島における潮位と気圧微変動に関する現地観
測結果では、2010 年 1 月 25 日, 2 月 1 日, 3 月 3 日,3
月 5~6 日, 3 月 24 日に顕著な副振動が観測された
(図-4).加えて 2009 年 2 月 25 日の事例を合わせ全
6 事例を本研究の解析対象とした.気象庁の地上天
気図に見られる特徴として,東シナ海上の北緯 30 度
付近は停滞前線の形成や,その後の地上低気圧の発
生が挙げられる.
(1) 大規模場の特徴
図-14 に 2010 年 2 月 1 日,2010 年 3 月 5-6 日,2010
年 3 月 24 日の気象津波の発生数時間前の 500hPa 面
等圧面高度・湿度・風速および 400hPa~700hPa 面で
の Ri の最小値(濃色)の分布を示す.気象津波発生前
~発生時における大陸規模の気象場に見られる共通
の特徴として,チベット高原およびヒマラヤ山脈の
南側を迂回する亜熱帯ジェット気流直下の乾燥空気
を伴う偏西風が,太平洋高気圧の辺縁部に接する中
国大陸南岸から東シナ海にかけて北側に蛇行してい
ることが挙げられる.太平洋高気圧辺縁部の暖かい
湿った空気が南西風に乗って中国南部の山地を通過
するときに,山地の地形に沿って空気が上昇し,重
(2) WRFの計算設定
力波が発生する.上昇した空気が乾燥空気と接する
数値予報モデル WRF は,国際的に最も広く利用さ
ことで,凝結した水蒸気の再蒸発と共に乾燥空気の
れている気象予報モデルの一つである.モデルに関
冷却・沈降が起こり,対流の活性化と重力波の増幅
する詳細は Skamarock et al.(2008)を参照とし,ここで
が生じる(wave-CISK).その結果として,湿った空気
は本研究で選択した事例に関する計算設定について
の上昇と共に対流圏中層の不安定域が中国大陸南部
述べる.
から西日本にかけて帯状に延びている様子が現れて
計算領域は,図-13 のように与え,チベット高原
いる.ただし,2010 年 1 月 25 日の事例では,不安
や日本の南岸の太平洋の大気循環場を考慮に入れた.
定層が東シナ海および台湾北部に発生し,陸側での
不安定層が見られなかった.この時には,九州の
南西側に不安定層が広がり,九州西岸には達しなか
った.その理由として,シベリアから朝鮮半島に達
する気圧の谷が深く,北緯 30 度付近の東シナ海の上
空の風が西~西北西の風であり,重力波の北進が妨
げられたこと,台湾南部から海南島にかけての海域
での上空の空気が湿っており,他の事例と比べて対
流不安定が弱いことが挙げられる.
対流圏中層の不安定層が東シナ海を覆っている
ときの北緯 31 度付近の東シナ海上の鉛直流および
不安定層の高度分布の断面図を図-15 に示す.2009
年 2 月 25 日のケース(a)では,不安定層が 700~
400hPa 付近に集中しており,その上下で大気層が安
定している.このように不安定層の上下に安定層に
挟まれた構造が大陸側で発生した重力波を九州西岸
まで長距離伝播する.この効果が wave duct である.
2010 年 3 月 5 日 18 時(日本時間)の鉛直断面では,
2009 年 2 月 25 日のケースとくらべて不安定層の高
度が低く,鉛直方向の上下動が不安定層内にとどま
っているのに対し,その 2 時間後の 3 月 5 日 20 時(日
本時間)の断面では,大気下層の安定層の厚さが増
大し,東経 127 度~130 度の上空で波長 30~50km の
大気の上下動が顕著である.図-15(b),(c)の 2 時間で
の東西方向の移動は東経方向換算で 2 度(約 100
km/h)と見積もられることから,海洋長波の位相速度
と同程度の速度で伝播していることが分かる.
(a) 2009 2/25 4:00 JST
(b) 2010/3/5 18:00 JST
(c) 2010/3/5 20:00 JST
図 -14 気 象 津 波 発 生 前 ~ 発 生 途 中 に お け る ア ジ ア 域 の
500hPa 面での大気場(Domain1).2010 年 1 月 25 日, 2010
年 2 月 1 日, 2010 年 3 月 5-6 日, 2010 年 3 月 25 日の事例.
赤濃色は対流圏中層(400~700hPa 面)の不安定域,トーン
は湿度 20%以下の乾燥域を表す.
図-15 北緯 31 度での東シナ海上の鉛直風速および不安定
層(斜線影部分)の鉛直断面.
(2) 気圧
圧微変動の伝播
2009 年 2 月 25 日の事
事例について, 九州沿岸域
の水平発散強度
度分布を表
での気圧 偏差と風速の
した結果
果を図-16 に示 す.北緯 31 度東経
度
128 度
の東シナ 海上から鹿児
児島県甑島に向
向けて濃色
東方向に帯状に
に延びているが
が,これは地
域が北東
上の寒冷
冷前線に対応す
する
図 -17 計 算 で 得 ら れ た 海 面 気 圧 と 観 測 気 圧 と の 比 較 . 上 段 は
2009 年 2 月 25 日のケース,下
下段は 2010 年 3 月 5-6 日
のケースを示す
の
.
図-18
8 九州南岸の下
下層大気に到達 する水蒸気を含
含む空気塊
図-16 九州西岸に接近
九
近する気圧微変
変動.凡例は 海上
の粒子追跡(BBackward 解析).色は空気塊の
の高度を表
の水平風
風の発散強度を
を示す.
す.2010/3/5-6 の事例.
風の収束
束域である.2 月 25 日 5 時 30 分(日本時 間)
(3) 粒子追跡解
解析
の分布で Q と示してい
いる区域に,++2hPa の正の気
気圧
本節の数値計算
本
算により得ら れる風速場の
のデータを
に対してほぼ直
直交する向き (北
偏差域が あり,前線に
用い
いて,後方粒子
子追跡を行い ,九州西岸に
に気象津波
動している.
東)に移動
が達
達するときの気
気流の流入経 路について調
調べた.図
数値計
計算で得られた
た定点の海面気
気圧の時系列と
と観
-18 は 3 月 5 日 21
2 時に東経 1130 度,北緯 30 度~32
測との比 較を示したも
ものを図-17 に示す.2009
に
年2
度の
のライン上で,上空 0.1km~
~2.0km の間の
の大気層に
月 25 日の
のケースでは同
同日 6 時頃の気
気圧ジャンプ がよ
到達
達する空気を追
追跡した結果を
を示している.Domain2
く再現さ れている.一
一方,2010 年の
のケースでは ,周
の 30
3 分間隔の気
気象場データを
を使用し,風の場を 10
~20 分,最大 全振幅 1.2hPaa の気圧微変動
動が
期 10 分~
分間
間隔で時間的に
に線形内挿し ながら追跡し
した.計算
計算上に は現れている
るが,観測で得
得られているよ
よう
の際
際には,水蒸気
気の凝結潜熱 放出に伴う空
空気塊の上
が必ずしも再現
現できている とは
な数時間 周期の変動が
昇や
や降水による落
落下の影響も 考慮に入れて
てある.図
スでも気圧微変
変動自体は現れ
れて
限らない .他のケース
-18 中のマーカー
ーは,1 時間毎
毎の位置を示している.
幅が 1.0hPa 未満と前節で示
未
示した現地観 測結
も,全振幅
18 の結果から
ら,九州西岸 に達する空気
気塊は,①
図-1
果と比べ
べ全般的に小さ
さい.
太平
平洋高気圧の辺
辺縁に沿って 南~南西風に
に乗って流
入す
する下層の湿っ
った空気,② 台湾西部から
ら中国南岸
で上昇し,風速 30m/s 前後の南西風に乗って到達す
4.1 数値解析の概要
る高度 3~5km の対流圏中層の大気,③上海付近でや
(1) 基礎方程式
や北に向けて蛇行する上空のジェット気流に伴う乾
基礎方程式は,式(3)~(5)に示す連続の式および海面
燥した空気,以上の3つから成ることが分かる.気
上の気圧勾配を考慮した非線形浅水方程式である.
圧波の発生・伝播で重要となるのは②の空気塊で,
マーカーの空間間隔から中国大陸側から 8~12 時間
かけて到達する.したがって,中国大陸南岸域での
対流圏中層の不安定域と西日本への移動が適切に予
測されれば,冬季~春季にかけて東シナ海を伝播す
る気象津波の予測が可能となると考えられる.
3.5 気象場の解析のまとめ
①
北緯 25 度付近の亜熱帯ジェット気流直下の乾
燥した偏西風がチベット高原と太平洋高気圧に
より中国大陸南岸部で北寄りに蛇行する.この時
に下層の湿った空気が地形などにより強制的に
②
∂η
∂
{(h + η )U } + ∂ {(h + η )V } = 0
+
∂t
∂x
∂y
∂U ∂U 2 ∂UV
∂η 1 ∂pa
+
+
= fV − g
−
∂t
∂x
∂y
∂x ρ ∂x
⎛ ∂ 2U ∂ 2U
+ Ah ⎜⎜ 2 + 2
∂y
⎝ ∂x
⎞ KU U 2 + V 2
⎟−
⎟
h +η
⎠
∂V ∂UV ∂V 2
∂η 1 ∂pa
+
+
= − fU − g
−
∂t
∂x
∂y
∂y ρ ∂y
⎛ ∂ 2V ∂ 2V
+ Ah ⎜⎜ 2 + 2
∂y
⎝ ∂x
(3)
(4)
(5)
⎞ KV U 2 + V 2
⎟−
⎟
h +η
⎠
持ち上がり,上空 3~6km 付近の大気の状態が不
ここで,U,V は水平方向の水深平均流速,h は平均
安定となる(wave-CISK).
水深,f はコリオリパラメータ,ηは水面変動,g は
一方,海面付近の下層大気は安定であり,安定
層の上に不安定層が存在することで,中国大陸南
重力加速度,K は海底摩擦係数,Ah は水平渦動粘性
係数, pa は海面上の大気圧である.
部および沿岸域で発生した重力波が海面を含む
下層付近で勢力を維持したまま伝播し,海面気圧
の微変動をもたらす.
③
④
(2) 計算対象領域と計算条件
計算対象領域は図-19(a)において破線で囲まれた
上述の不安定大気の層が東シナ海上を帯状に東
九州西方の東シナ海を対象とした領域(領域Ⅰ),な
西に長く伸び,気圧微変動は不安定層の直下に分
らびに図-19(b)に示す甑島列島北部の浦内湾周辺海
布する.
域(領域Ⅱ)である.領域Ⅰにおける東西方向,南
発生源から九州沿岸までの到達時間は約 8~12
北方向の水平計算格子サイズはそれぞれ Δx=750m,
時間であり,移動速度は上空 3~5km の風速に支
Δy=900m である.領域Ⅰは東シナ海の 122° 37′ 00″ E
配され,東シナ海の海洋長波の位相速度(25~
~130° 05′ 00″ E,30° 00′ 00″~32° 46′ 30″ N の範囲で
35m/s)と程度となり共鳴条件を満たす.
あり,格子数は 896(東西方向)×333(南北方向)
以上より,大陸規模の偏西風蛇行から個々の気圧
となる.領域Ⅰの計算では,コリオリパラメータ f
微変動までの多重規模の現象が一連の現象として繋
=7.25×10-5s-1,水平渦動粘性係数 Ah=100m2/s とした.
がっていることが示され,数時間規模の気象津波の
開境界を放射境界とし,陸域境界では完全反射条件
予知の可能性を示す結果が得られた.
を仮定した.計算時間間隔 Δt は 2.0s とした.
気象モデルと海洋モデルとのカップリングによる
領域Ⅱの計算における水平計算格子サイズは Δx
気象津波のメカニズムの統合的解明には,対流雲形
=Δy =50m,格子数は 162(東西方向)×147(南北方
成などの微物理過程の違いによる効果をはじめ,更
向)である.領域Ⅱの計算では,コリオリパラメー
なる研究が必要である.
タ f=7.69×10-5s-1,水平渦動粘性係数 Ah=20m2/s とし
た.領域Ⅱの計算では,西側の開境界を入射境界,
東南北の開境界を放射境界とし,陸域境界では完全
4.気圧擾乱波の伝搬によって発生する海
洋長周期波の伝搬・増幅に関する数値解析
反射条件とした.計算時間間隔 Δt は 0.05s とした.
海底摩擦係数 K,重力加速度 g,海水密度ρは,そ
れぞれ 0.0026,9.8m/s2,1035kg/m3 とし,領域Ⅰ,Ⅱ
本節では,東シナ海上を東進する気圧波に対する
海洋の応答特性を数値解析によって評価する。また,
ともに同じ値を用いた.以上の条件のもとで式(3)~
(5)を差分法によって解くことによって検討を行った.
上甑島浦内湾の振動特性との関連性を検討すること
により,どのような気圧擾乱の伝搬によって浦内湾
における副振動発生リスクが高まるのかを検討する。
4.2 東シナ海における長周期波の発達特性
浦内湾における副振動の発生を考える上で東シナ
(a) 東シナ海の水深分布と計算領域Ⅰの位置
(b) 甑島周辺の水深分布と計算領域Ⅱの位置
図-19
計算領域Ⅰと水深分布
海上のどのような気圧変動が重要となるかを検討す
気圧波
るため,東シナ海上を東進する気圧波の波形と進行
速度を種々変化させて数値計算を実施した.
p
Ca
x
xc
変動に対する海洋の応答特性を評価した.計算では
図-20
度 Ca で進行するように設定し,気圧変動によって誘
た.
気圧波形は図-20 のように x 方向(東西方向)にの
計算で設定した気圧波形の模式図
400
Pressure (Pa)
起される水位変動の波高や周期について検討を行っ
Wa ve 1
Wa ve 2
Wa ve 3
200
0
-200
み距離 La で気圧が pmax だけ変化するように設定し,
y 方向(南北方向)には一様な分布とした.x 方向の
p max
y
計算は領域Ⅰを対象として行い,東シナ海上の気圧
気圧波が計算領域の西端から東端に向かって伝搬速
La
-20
図-21
気圧変化は正弦関数によって表現した.本研究では
-10
0
10
Horizontal distance (km)
計算で設定した気圧波形
20
( La=10km, pmax=
2hPa の例)
図-21 に示すような 3 種類の波形を設定した.大気
降下する「波形2」,大気圧が pmax 上昇し,上昇後は
pmax を維持する「波形3」である.3 種類の波形につ
いて,気圧急変部の空間スケール La を 10,20,40,
110
Water elevation (Meshima)
Water elevation (Koshiki)
Pressure (Koshiki)
Pressure (Meshima)
0.10
0.05
90
70
0.00
50
-0.05
30
-0.10
10
-0.15
-10
30000
0
60,80,100,120,140,160km,気圧変化量 pmax を
5000
10000
15000
20000
Elapsed time (s)
25000
(a) 波形 2 (pmax=1hPa,La=20km,Ca=110km/h)
130,140,150,170,190,210km/h と変化させた合
0.15
ール La は pmax の気圧変化が生じる距離である.
計算結果の一例として,図-22 に女島沖と浦内湾
沖における水位変動の時間変化を示す.これらより,
気圧波が東シナ海上を東進することで,浦内湾で共
Cw=(gh)0.5=24.5m/s=88.3km/h が,気圧波の進行速度
110km/h と比較して遅くなる.このため,沖縄トラ
フ以西の海域では,気圧波によって生じる水位変動
の後方(西方)への伝搬は認められたが,前方(東
50
-0.05
30
-0.10
10
-0.15
-10
30000
5000
0.09
Water elevation (m)
61.4m か ら 算 定 さ れ る 長 波 の 伝 搬 速 度
70
0.00
10000
15000
20000
Elapsed time (s)
25000
60
Water elevation (Meshima)
Water elevation (Koshiki)
Pressure (Koshiki)
Pressure (Meshima)
0.06
0.03
40
20
0.00
0
-0.03
-20
-0.06
-40
-0.09
15000
20000
25000
30000
35000
Elapsed time (s)
40000
-60
45000
(c) 波形 1 (p max=1hPa,La=20km,Ca=60km/h)
図-22
水位変動と気圧の時間変化
Pressure (Pa)
域内の東経 123°~127°の範囲)の海域の平均水深
90
(b) 波形 3 (p max=1hPa,La=20km,Ca=110km/h)
のがわかる.気圧波の伝搬速度 Ca が 110km/h のケー
ス(図-22(a),(b))では,沖縄トラフ以西(計算領
0.05
0
振を引き起こすのに十分な数波の水位変動が生じる
110
Water elevation (Meshima)
Water elevation (Koshiki)
Pressure (Koshiki)
Pressure (Meshima)
0.10
Pressure (Pa)
計 891 ケースの計算を実施した.ここで,空間スケ
Water elevation (m)
1,2,3hPa,移動速度 Ca を 60,80,100,110,120,
Pressure (Pa)
降下する「波形1」,大気圧が pmax 上昇した後に pmax
0.15
Water elevation (m)
圧が pmax /2 降下した後に pmax 上昇し,再び pmax /2
図-23
(a)
波形 1
(左図:最大波高,右図:最大波周期)
(b)
波形 2
(左図:最大波高,右図:最大波周期)
(c)
波形 3
(左図:最大波高,右図:最大波周期)
気圧波の進行速度 Ca・空間スケール La と浦内湾沖における最大の波高・周期との関係
(破線:安田ら(2010)が示した浦内湾の固有周期)
方)への伝搬は見られなかった.結果として,女島
では,沖縄トラフ以西の海域における長波の伝搬速
沖では気圧波の到達とほぼ同時に水位変動が発生す
度 Cw に対して気圧波の進行速度のほうが小さいため,
る.女島以東の海域(沖縄トラフ)では水深が大き
気圧変動によって生じた擾乱は気圧波の前方(東方)
く,長波の伝搬速度が気圧波の進行速度より大きく
および後方(西方)の両方に伝搬する.この場合,
なり,気圧波に先行して水位変動が東に伝搬し始め
女島沖と浦内湾沖のいずれにおいても気圧波の到達
る.このため,甑島浦内湾沖では気圧波の到達より
より早く水位変動が生じる.
も早く水位変動が生じる.女島沖で水位変動が生じ
図-23 に気圧波の進行速度および空間スケールと
てから浦内湾沖に到達するまでの時間は約 1700 秒
浦内湾沖での最大波の波高・周期との関係を示す.
(約 30 分)であった.さらに,沖縄トラフが南南西
気圧波によって生じる水位変動は, pmax 以外の条件
-北北東の方向に伸びていることに加えて,女島と五
が同じであれば pmax とほぼ比例関係にあったことか
島列島の間に枝分かれした水深の大きな海域が存在
ら,図-23 には pmax =1hPa の計算結果を用いた.最大
するため,この長波の伝搬速度の増大は女島の北側
波を決定する際には,ゼロアップクロス法とゼロダ
と南側の海域において波の屈折として現れる.その
ウンクロス法によって個々の波を定義し,波高が最
結果,片山ら(2010)によって示されているように東シ
も大きかった波を最大波とした.これらの結果より,
ナ海を東進してきた波は長崎,天草,甑島にかけて
気圧波の伝搬速度が 80~140km/h 付近で大きな水位
の海域に集まりながら波高を増して来襲する.一方,
変動が生じるのが確認できる.沖縄トラフ以西の長
気圧波の伝搬速度 Ca が 60km/h のケース(図-22(c))
波の伝搬速度が 88.3km/h であることから,この波高
の増大は Proudeman Resonance による増幅の影響と
考えられる.また,
「波形3」の場合には「波形1」,
「波形2」と比較して生じる水位変動が小さくなっ
た.これは,気圧急変後の気圧の回復によって水位
変動の波高が増大するという柿沼ら(2010)の研究結
果と対応している.
本解析では計算領域の南端から北端まで一様に
気圧波を与えており,波高の計算結果については過
(a) 桑之浦の水位変動
大評価となっている可能性があるため,相対的な比
較に留める.気圧波の空間スケール La については,
La が小さいほど大きな水位変動が生じるとともに
水位変動の周期が短くなる傾向がみられる.最大波
の周期については, La が 40km 以下の場合に安田ら
(2010)が示した浦内湾の第 1 モードの振動周期(24.5
分)に近い周期の水位変動が生じることが明らかと
なった.
4. 2
(b) 小島の水位変動
浦内湾の長周期波の増幅特性
領域Ⅱの西側開境界から振幅 0.1m の規則波を入射
させ,東進してくる長周期波に対する浦内湾の応答
特性について検討した.入射波周期 Ti を 240s~990s
の範囲で 30s 毎,1000s~4000s の範囲で 100s 毎に変
化させた 57 ケースの計算を実施した.
図-24 に桑之浦(図-2○印)と小島(図-2△印)
における水位変動のパワースペクトル S の log 値と
図-24
Ti との関係を示す.参考のために入射波のパワース
ペクトルも併せて示している. Ti が湾の固有周期に
接近する場合に共振が生じているのが確認できる.
(c)入射波
入射波周期と浦内湾の水位変動のパワースペクト
関係
(曲線:入射波周期 Ti,2Ti,Ti/2,横線:安田ら(2
が示した浦内湾の固有周期)
Ti が第 1 モードの周期に接近する Ti =1600s 付近で
は,桑之浦と小島ともに強い共振が発生している.
このような共振特性は,井上ら(2010)による数値解
析結果や安田ら(2010)による現地観測結果とよく対
応している.さらに本計算結果から,Ti =1600s の場
合には,入射波の倍周波数にあたる第 2,第 3 モー
ド(12.5 分,10.5 分)の振動が現れているのが確認
できる.同様に, Ti=3200s 付近の波を入射させた場
(a) 入射波周期 Ti=840s
合には,その倍周波数成分に対して湾の第 1 モード
に相当する振動が現れている.
結果の一例として,Ti=840s と Ti=1600s の場合の浦
内湾における水位変動の最大値分布を図-25 に示す.
Ti=1600s の計算ケースでは桑之浦と小島で水位変動
が大きくなっている.一方,Ti=840s の計算ケースで
は桑之浦側よりも小島側で水位変動が相対的に大き
くなっているのがわかる.この時,湾の分岐部が節
となり,小島漁港付近では約 0.5m の水位変動が発生
した.このことから,周期 14 分,振幅 0.3m 程度の
波が浦内湾に入射した場合には,長崎海洋気象台他
(2009)によって報告されている 2009 年 2 月 25 日の
あびき(小島漁港において全振幅 2.9m,周期 14 分
図-25
(b) 入射波周期 Ti=1600s
浦内湾内で生じた水位変動の最大値の分布
程度の水位変動)に匹敵する規模の水位変動が生じ
にチベット高原を含む大規模領域での気象変動のパ
得ると推察される.
ターンから気象津波の発生が予測できれば長時間に
遡った予報が可能と考えられ、今後の課題といえる。
4.3
海洋長周期波の数値解析のまとめ
本稿では紙数の関係で触れなかったが、気象津波に
数値解析によって,東シナ海上を伝搬する気圧波
よる深刻な被災を防ぐためには湾口防波堤などの構
の特徴と鹿児島県上甑島浦内湾での副振動(あびき)
造物の設置による副振動の低減も検討する必要があ
の発生特性との関連性を検討し,以下のような結果
る(浅野ら、2011、片山ら、2011)。
を得た.
最後に、本研究は、海象観測と海象数値解析を担
① 空間スケール 10~40km の気圧波が 80~140km/h
当する鹿児島大学理工学研究科海洋土木工学専攻の
で東シナ海上を伝搬する場合に特にあびきのリ
山城徹教授、柿沼太郎准教授、齋田倫範助教、気象
スクが高まることが示唆された.
場の数値解析を担当する広島工業大学の田中健路准
② 浦内湾に第 1 モード(24.5 分)に近い波が入射し
教授との共同研究であることを述べ、これまでのご
た場合に強い共振が生じるとともに第 2,第 3 モ
協力に感謝する。また、甑島浦内湾での現地観測に
ード付近(10 分程度)の振動も現れる.
は薩摩川内市役所の関係者に様々なご支援を頂いて
③ 周期 14 分,振幅 0.3m 程度の波が浦内湾に入射す
いることを付記し、謝意を表したい。
ることで 2009 年 2 月 25 日に発生したあびきに匹
敵する規模の水位変動が小島漁港で生じ得る.
参考文献
本節では,気圧波を単純化して長周期波の発生特
性に関する検討を行った。気圧波のモデル化は、前
節の気象場の数値解析で再現された気圧急変部の空
間スケール 30~50km,気圧変動の東進速度 100km/h,
赤松秀雄:長崎港のセイシュ(あびき),気象研究所
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全体の気圧変動規模として東西方向に約 600km の規
浅野敏之・山城徹・竹下彰・坂本裕昭・西村規弘
模とほぼ整合する計算範囲とした。その結果、上述
(2011):上甑島浦内湾における「あびき」の現地
の①~③の条件下で、大きな海面長周期波が得られ
観測,土木学会論文集 B2(海岸工学), Vol. 67, No.
る結果となった。しかし、今後、東シナ海上の気象
1, pp.176-180.
条件とあびき発生リスクとの関連性をさらに正確に
浅野敏之・島田知樹・山本竜太郎・片山裕之(2011):
評価していくためには,気象場と海象場の両者を直
分岐した細長い湾における副振動対策としての
接リンクした解析を行う必要があろう。
防波堤設置の効果について, 土木学会論文集 B3
(海洋開発),Vol.67,No2,pp.886-891.
井上太介・柿沼太郎・日高壮一郎・浅野敏之 (2010):
5.むすびに
上甑島浦内湾におけるあびき発生過程の数値解析,
海洋開発論文集,Vol.26,pp.831-836.
各節の最後にも得られた結果と今後の課題を述べ
柿沼太郎・浅野敏之・井上太介・山城徹・安田健二
たが、気象津波の解明には当然のことながら気象学
(2009):上甑島浦内湾における 2009 年 2 月潮位
と海洋・沿岸物理学の研究者が協働した取り組みが
副振動の被害調査,土木学会論文集 B2(海岸工学),
不可欠である。著者らのグループによる鹿児島県甑
Vol.B2-65,No.1,pp.1391-1395.
島をフィールドとした気象津波の研究も 8 年続けて
柿沼太郎・井上太介・日高壮一郎・浅野敏之・柊田
いることになるが、本稿でも述べたように気象場の
幸助 (2010):気圧変動に伴う長周期波発生過程の
解析については気圧急変動の定量的な再現が十分と
数 値 解 析 , 土 木 学 会 論 文 集 B2( 海 岸 工 学 ) ,
は言えず、海洋上の伝搬過程の解析についても気圧
場の時空間的な解析結果を直接反映させて計算する
Vol.B2-66,No.1,pp.171-175.
鹿児島地方気象台・長崎海洋気象台 (2010):平成 22
段階には至っていない。外洋から湾奥までの増幅率
年 2 月 1 日に鹿児島県薩摩川内市上甑島で発生し
の評価についても今後の精度向上に努めなければな
た顕著な海面昇降(副振動)に関する現地調査報
らない。
告,p.3.
防災の観点からは、気象津波の発生を事前に予知
小長俊二・半沢洋一・富山吉祐・高浜聡 (1990) :
し警報を発信する体制づくりが必要となろう。しか
長崎港の"あびき"について,海と空,65,203-222.
し九州西方の女島で気象津波の発生源となる微気圧
片山裕之・加藤広之・丹治雄一・中山哲嚴 (2010):
変動を検知したとしても来襲までには 1~2 時間程
2009 年 2 月のあびき被害と来襲特性についての
度の時間的余裕しかない。本稿 3.4(1)で示したよう
検討,海洋開発論文集,Vol.26,pp.837-842.
片山裕之・加藤広之・丹治裕一・中山哲嚴・浅野敏
之(2011):数値計算による鹿児島県上甑島小島漁
港のあびき対策の検討, 土木学会論文集 B2(海
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