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ラット血漿中遊離システインの定量 ー HPLC用チオール蛍光誘導体化

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ラット血漿中遊離システインの定量 ー HPLC用チオール蛍光誘導体化
ラット血漿中遊離システインの定量
ー HPLC用チオール蛍光誘導体化試薬ABD-Fを用いた試み ー
大谷りら1),小川進也2),中澤京子1),趙治磊1),吉村悦郎2),加藤久典1),梅原俊介3)
1)東京大学総括プロジェクト機構「食と生命」,
2)東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻, 3)プロテインケミカル株式会社
目
的
チオール化合物の定量は誘導化試薬7-fluoro-2,1,3-bensoxadiazoke-4sulfonate(SBD-F)等を用い蛍光HPLCで検出する方法が広く用いられて
いる。蛍光標識時のチオール基の交換反応を抑えるために還元剤を使用する。
そのため,酸化型のチオール基が還元されるために,血漿中の遊離の
システイン(Cys)とシスチン(Cys2)を区別して定量することは困難であった。
本研究では,標識効率の高い4-aminosulfonyl-7-fluoro-2,1,3-benzoxadiazole
(ABD-F)を用いて,低温条件下で還元剤を使用せずに蛍光標識することで,血
漿中の遊離Cysの定量を試みた。
反 応
SBD-Fを用いた反応
Sample
条
システイン(Cys)
シスチン(Cys2)
[C3H7NO2S, MW,121.16]
[C6H12N2O4S2, MW, 240.30]
中性
アルカリ性条件下
O H
H
N
S
H
H
S
還元剤
レダクターゼ
件
H
O
H
N
H
O
O H
ABD-Fを用いた反応
Sample
0.5 mM N-Acetyl-Cysteine(内部標準)
還元剤(0.3
M トリブチルフォスフィン)
還元剤
0. 6 M 過塩素酸(除タンパク質)
遠心分離
遠心分離
上清
上清
水酸化ナトリウム(中和)
SBD-Fによる蛍光誘導化(
による蛍光誘導化(pH
℃)
による蛍光誘導化( 9.5, 60℃
蛍光標識時にチオール基や
チオエステル基の交換反応を抑える
ために,還元剤が必要
還元剤が必要
ABD-Fによる蛍光誘導化(
による蛍光誘導化(pH
℃)
による蛍光誘導化( 8.3, 4℃
低温,pH8.3で蛍光標識では,還元剤
還元剤
なしで交換反応を抑えられるかも
なし
HPLC
HPLC
Cys2からCysへの変換率
SBD-Fによる蛍光誘導化
ABD-Fによる蛍光誘導化
生理食塩水にCys2を添加
73 ± 16(%)
生理食塩水にCys2を添加 3 ± 1(%)
血漿にCys2を添加
112 ± 24(%)
血漿にCys2を添加
13 ± 3(%)
ラットへのCysおよびCys2の投与
実験動物: 雄性Wistarラット
投与量 : 対照群 (0.08N HCl / 0.9% saline)
Cys (300 mg/kg in 0.08 N HCl / 0.9% saline)
Cys2 (300 mg/kg in 0.08 N HCl / 0.9% saline)
投与方法:経口投与
3.00
1.50
門脈血
1.50
腹部大動脈血
抗凝固剤にEDTAを使用し,
投与60分後に門脈と大動脈から採血した。
遠心分離(1000×g, 1 min) により血漿を得た。
Cysの測定はABD-Fによる蛍光誘導化を行った。
4.00
腸内容物
門脈血
1.50
1.25
1.25
3.00
p <0.01
1.00
0.75
p <0.01
p <0.01
y = 4.1961x + 0.0949
R² = 0.9685
2.00
0.50
0.50
0.50
mM
0.75
1.00
0.75
0.75
0.50
0.50
0.25
0.25
p <0.01
p <0.01
1.00
0.25
0.25
腹部大動脈血
1.25
p <0.01
p <0.01
1.00
mM
p <0.01
mM
1.50
p <0.01
1.00
1.00
mM
1.25
2.00
mM
Cys/NAC Area
2.50
1.50
p <0.01
p <0.01
N.D.
0.00
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
血漿Cys濃度(mM)
Fig.1 検量線
血漿にCysを標準添加して作成
対照群 Cys
Cys2
0.00
0.00
0.00
0.00
対照群 Cys
Fig. 2 ラットの血漿Cys濃度
対照群 Cys
Cys2
Cys2
Fig. 3 腸内容物中の
Cys濃度
ま と
0.00
対照群 Cys
Cys2
対照群 Cys
Cys2
Fig. 4 血漿中のCysとCys2の総量
め
1. SBD-Fの場合,蛍光誘導化の反応時のチオール基の交換反応やCys2への酸化を抑えるために還元剤を使用する必要がある。
そのために,試料中に含まれるCys2のほとんどはCysに還元された。
2. ABD-Fの場合,蛍光誘導化の反応は4℃,pH8.3の条件で行い還元剤を使用しなかった。そして,Cys2からCysの変換率を
低く抑えることが可能となった。
3. ABD-Fを用いた蛍光誘導化の反応により,血漿中のCysのみを測定することが可能となった。
4. ラットにCysおよびCys2を投与し,血漿Cys濃度を測定した。その結果,Cys2の投与は血漿中Cys濃度を有効に上昇させた。
このとき,血漿中のCysとCys2の総量は両投与群で同程度であった。
5. Cys濃度は門脈血に比べ腹部大動脈血で低かったことから,Cysは肝臓である程度代謝されることが推測された。
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