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約130名の出席者それぞれが団結を誓った春の総会

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約130名の出席者それぞれが団結を誓った春の総会
19
発行日 H 18 . 7 . 20
発行人 東海銀杏会
編集人 角田 牛夫
〒456−0004 名古屋市熱田区桜田町19−21(株)山田商会内 TEL. 052−871−9811 FAX. 052−871−9869 E-mail:[email protected]
事務局が変更になりました。ご注意ください。
幹事 原野素雄
(S46 工)
約130 名の出席者それぞれが団結を誓った 春の総会
東海銀杏会の平成 18 年度総会が、9 月 26 日(月)に名
古屋マリオットアソシアホテルで開催されました。総
会に先立ち、午後 3 時 30 分から 17 階「桐の間」で役員会
が開かれ、13 名が出席しました。開会の挨拶に続いて、
全員が自己紹介を行い、総会はじめ講演会、東大総長講
話および懇親会の進め方についての説明があり、皆さん
の了承を得ました。当日は内容が多く、日程が詰まって
いるため、役員会は午後 3 時 55 分までに終えました。
午後 4 時から 4 時 15 分まで、16 階「サルビアの間」
で総
会を行いました。司会は長谷川 曼氏(S32 法)で、議長
として大島宏彦氏(S32 法)を選出し、事務局から平成 17
年度活動報告のほか、平成 18 年度の役員体制、活動計
画などの説明と提案があって、審議の後、出席者全員の
賛成により承認されました。
▲
1
▲
▲
午後 4 時 20 分から 5 時 35 分まで総会と同じ部屋で、東
海財務局長の藤岡博氏(S52 法)による講演会が開催され
ました。参加者は約 70 名で、演題は「我が国財政の現状
と課題」。経済関連諸データなどから、東海が全国で一
番元気な地区であることに触れられた後、今後の問題と
して 税収の低さ 貯蓄率の急激な下降 60 歳以上の
人口の急増——などを指摘、日本経済がオン・ザ・エッ
ジ状態にあると話されました。
▲講演される藤岡博 東海財務局長
▲総会で司会を務めた永井恒夫副会長
▲やはりカメラ目線に…
▲懇親会で挨拶される小宮山宏東大総長
▲飲むほどに会話も
はずみにこやかに
▲
懇親会で挨拶する長
崎新一・東大同窓会
連合会事務局長
▲手拍子で
「ただひとつ」
を合唱する皆さん
引き続き、特別に出掛けていただいた小宮山宏・東大
総長(S42 工)の講話に移りました。演題は「課題解決先
進国・日本」で、日本が環境問題など世界における課題
に対して、いかに真摯に取り組んで成果を挙げているか、
実例を挙げながら解りやすく説明され、世界的な課題解
決のために,先進国としての役割を果たしていかなけれ
ばならないと、熱っぽく話されました。40 分という短
い時間でしたが、参会者は熱心に聞き入っていました。
小宮山総長はこの後、懇親会にも出席され、しばし出席
者との交流をしていただきました。
▲笑顔は健康のアカシです
▲挨拶する南隆明・関西東大会代表幹事
▲いつも元気な応援団OB
▲美女を囲んでとは結構な…
閉会の辞を述べる大島副会長
▲
懇親会は午後 6 時 30 分、瀧季夫副会長(S29 法)の開会
の辞で始まり、当日の講演者の藤岡博・東海財務局長の
音頭で乾杯の後、出席者約 130 名が 14 のテーブルに分か
れて歓談しました。各テーブルには出席者の名簿があり、
順番に自己紹介などして話が弾んでいました。
宴たけなわの午後 8 時すぎ、本田信浄幹事(S46 法)ら
東海銀杏会応援団が壇上に上がり、そのリードにより
「ただひとつ」を合唱、大島宏彦副会長が閉会の辞を述べ、
懇親会を終わりました。
二次会は、17 階の会場に変え、約 40 名が参加して、
大いに盛り上がりました。午後 10 時前、名残を惜しみ
つつ帰路につきました。
なお、平成 18 年度秋の例会は 9 月 25 日(月)、平成 19
年度総会は 3 月 26 日(月)、いずれも名古屋マリオットア
ソシアホテルで開催の予定です。
▲このコーナーは若者がズラリ。頼もしい限りです
2
東海財務局長
財務局は、財務省の仕事と金融庁の仕事をしています
が、今日は主に財政の話をしようと思います。財政が大変
危機であるといわれますが、財政は経済と無縁ではない
わけで、まずは地元の東海地区の経済、次いで日本の経済、
そして日本の財政といった順で申し上げます。
藤岡 博(S52 法)
気が出てきて、18 年 1 月には、名古屋、西三河など産業の
中核地区は 2 倍以上となり、それ以外の地区にも、均てん
する形で景気がよくなってきたといえます。
トヨタの例をとりますと、設備投資、生産増強の隘路と
して、一つは、土地が足りません。また、人も足らないと
いうことで、東北や九州で人集めをしたようですが、それ
だけでは足りず、結局、北九州にシフトして、昨年、そこ
に第二工場ができました。子会社の関東自動車も岩手に
工場をつくりました。
東海地区は昨年、セントレアの開港と愛・地球博があり、
日本で一番元気だと言われていますので、その状況を確
認してみたいと思います。鉱工業生産指数でみると、平
成 12 年を 100 として、18 年 1 月は、全国が 105 ですが、東
海 3 県は 132.4 と大変な数字になっています。中でも、直
近の数字で三重県は 146 です。岐阜県は 100 ちょうどぐら
いですが、愛知県、三重県の北部は大変いい数字です。
全国の有効求人倍率は、平成 4 年 9 月以来 13 年 3 カ月か
かって、昨年の 12 月に 1 を超えたのですが、東海地区は
非常に早い段階から 1 を超えており、1 月の東海地区はな
らして1.46 です。県別では、
愛知1.67 、
三重1.46 、
静岡1.22 、
岐阜 1.25と、いずれも大変よい数字です。
ちなみに、愛知県の有効求人倍率は全国一ですが、職
安単位では名古屋中が全国一で、1月の有効求人倍率は 3.2
倍です。豊田 2.17 倍、刈谷 2.45 倍、岡崎 2.16 倍と、目を
奪うような数字が並んでいます。
景気も生産も雇用もいいとなれば、消費もということ
になります。大型小売店舗の販売金額を見ますと、去年、
全国でプラスになったのは、1 月、11 月、12 月の 3 回だけ
なのに、東海地区では、ほとんどプラスが続いており、大
変調子がいいのです。
財務局では、年 4 回、法人企業景気予測調査を行って
いますが、各項目とも調査のたびによくなっており、売
上高や経常利益など大変にいい数字になってきています。
18 年 3 月期の見通しでは、売上げが全産業で 7%増、経常
利益も回を追うごとによくなって、9%増となっています。
また、経常利益の上方修正率をみると、為替が円安になっ
ていることもあって、輸出比率の大きい自動車など輸送用
機械の割合が高くなっています。
人が足らないとどうするか。三つの道があり、高齢者の
雇用増、女性労働力の活用と、もう一つが、外国人労働
者の雇用です。今、法制面での規制がありますが、正規
の手続を経て来訪された外国人労働者の 35.8%が、東海
地区に集中しています。北海道や九州からも来ていますが、
世界から人が集まっているということです。都道府県別の
外国人労働者数では、1 番は愛知、3 番目が静岡、5 番目
が三重で、岐阜も8 番目と大きな数字になっています。
実数では、愛知県の場合、5 年間で 2 万 8,000 人から 5
万 5,000 人と、大量に増えています。出身地域別では、
東海地区は 6 割が中南米系の方、とりわけ日系ブラジル
人のウエイトが高くなっています。従事している仕事も、
東海地区は工場勤めのウエイトが 8 割と、非常に高いの
が特色です。
さて、金融の話に移りますと、去年の 12 月に、全国の
銀行と信金で 7 年ぶりに貸出金残高が前年比で増加に転
じましたが、東海地区では、全国に先んじて去年の初めか
ら増加基調になっています。
内訳をみると、東海地区のメーカーは無借金経営で、
キャッシュフローの範囲内で投資するところが多く、設備
資金が出ているというよりは、6 割弱が個人の住宅ローン
向け、3 割ぐらいが不動産業者向けで、残る 1 割ぐらいが
設備などの運転資金です。
需要が大きければ値段が高くなるのが経済原理ですが、
この地区の貸出金利は、俗に言う名古屋金利で、全国的
に見ても低く、時系列でも安くなってきています。名古屋
金利が低いのは、基本的に貸し倒れが少ないということ
です。銀行は、貸出金利で、調達金利、貸倒れの償却を
含む業務費用を賄い、利益を上げなければなりませんが、
貸し倒れリスクが低ければ、それだけ安い金利でもよいこ
とになります。
元気な名古屋と言いますけれど、名古屋も 3 年ぐらい前
は、さほどのことではなかったのです。やっぱり、セント
レア開港、万博が起爆剤で、よくなってきたという状況で
す。ここ 3 年の有効求人倍率を見ると、平成 15 年は、管
内の有効求人倍率も 0.82 で、1 を超えるのは、名古屋中、
豊田など限られた地区だけでした。それが、16 年から元
3
えたように、総じて改善されてきました。
「設備の過剰」も
解消されて、設備投資が非常に高い伸び率で増えていま
す。
「企業債務の過剰」
も減っています。全国銀行ベースで、
平成 14 年 3 月期に 43.2 兆円あった不良債権は、17 年 9 月
期には 15.9 兆円に減りました。日本経済が長い不況を脱し
て、過剰雇用、過剰設備、過剰債務を脱したと言えます。
しかし、その裏で残っている大きな過剰があリ、それが
「政府債務の過剰」であるというのが、谷垣大臣の財政演
説の要旨です。経済はよくなったけれど、まだ、問題がな
くなったわけではありません。政府の公債のフロー、
ストッ
クが非常に増えてきたことは、大変な問題となっています。
平成 17 年度の予算 82 兆円について、歳入をみると、税
収で賄っているのは 53.5%で、公債を 4 割程度発行して
ファイナンスしています。歳出では、社会保障費、国債費、
地方交付税の三つの経費が大半を占めています。公共事
業、文教科学、防衛などは、三大経費に比べると、3 分の
1 、4 分の 1 、5 分の 1 といった数字です。日本の財政問題
を考えるには、社会保障費と地方交付税、それに元利償
還が雪だるまのように増えている国債費を考えなければな
らないのが実態です。
1 月 20 日に閣議決定された政府の経済見通しによれば、
17 年度は実質 GDPが 2.7%増、民間消費も 1.9%増で、設
備投資は 7.7%増える見込みです。3 月に発表された四半
期ごとの法人企業統計ですと、全産業ベースの対前年比
は、売上高が 5.5%、経常が 11.1%、設備投資が 9.5%もそ
れぞれ増えています。名古屋だけでなく、北海道から九州
まで、それから大企業も中小企業も、非常に高く、いい数
字になってきています。株価が去年、1 年間で 1 万 1,517 円
から、大納会の 1 万 6,111 円まで 4 割も上がったことは、そ
れを先取りしていたと言えます。
バブルの頂点は通常、90 年と言われますから、15 年たっ
て、ようやく日本経済はいい状況になってきたわけです。
そこで、この間の経済指標をみていきたいと思います。
名目GDP は 450 兆円が 503 兆円となり、15 年かかって
プラスが確認され、日が沈んだ日本に、日がまた昇ってき
ています。ただ、経済はよくなってきたけれども、1 億 2,400
万人だった人口は 1 億 2,800 万人と、やや頭打ちになって
きています。これは、高齢化で 65 歳以上の方々の比率が、
12%から 19.5%に増えてきたということです。そうなりま
すと、年金の費用や医療費がかかり、国の予算で 11 兆円
だった社会保障関係費が 20.4 兆円に膨らんできて、一般
会計予算の歳出は 35 兆円が 47 兆円になってきました。
どう考えても、税収のウエイトの低さが、イレギュラー
であると言わなければなりません。さきほど、平成 17 年
度予算で、税収の歳入総額に占める割合は 53.5%と申し
上げましたが、日本でも、平成 2 年 (1990 年 )までは、税
金で入ったお金で、国の支出の 8 割から 9 割を賄うのは当
たり前でした。
ところが、バブル崩壊後の 91 年から急激に悪くなり、
現在、政府の債務残高は、年間のフローのGDPよりも 1.6
倍の規模となっています。私がベルギーのブリュッセルに
91 年から 94 年まで駐在していたころ、ユーロに参加する
条件として、政府の債務残高は GDP 比で 60%以内にせよ
とのルールがつくられました。そういったことからすると、
国際的にみても、日本の債務残高は大変に高い数字です。
日本は、実は、外債を発行する必要がない国です。公
債残高は 500 兆円を超えていますが、国内には 1,400 兆円
の個人金融資産の残高があって、基本的には、国内の金
融資産で賄うことができます。
家計が直接保有している国債は少なくても、個人の貯
蓄が銀行預金あるいは郵便貯金に行くといった形で、民
間金融機関に入り、国内の金融資産の資金循環の中で、
景気が悪かったことに加え、この間、減税をかなり行っ
たので、国民負担率は 38%が 35.9%に減ってきました。つ
まり、財政をみると、一方で歳出が増え、他方で税金を減
らしたことで、公債が増え、ストックの発行残高が 166 兆
円から 536 兆円へと、一気に 3.2 倍に増加し、フローの公
債依存度も8.4%が 41.8%へと、大幅増になりました。
谷垣財務大臣は、法学部の先輩でいらっしゃいますが、
1月20日の財政演説の冒頭で、明快な説明をされています。
それは、90 年からの失われた 10 年ないし 15 年には、日本
経済成長の制約要因として、
「三つの過剰」
があったという
ことです。
具体的には、
「雇用の過剰」
、
「設備の過剰」
、
「企業債務の
過剰」
の三つです。これについて言えば、
「雇用の過剰」
は、
去年の 12 月に、13 年 3 カ月ぶりに有効求人倍率が 1 を超
4
国債が消化されています。ですから、国債を海外で売らな
ければ消化できないということはなく、日本は、2001 年に
デフォルト宣言をしたアルゼンチンのような状況にはなっ
ていません。海外からの借金を繰り返し、やがて国際金融
市場の信認を失い、経済が破綻するといったことにはなっ
ておらず、かなり幸せな状況です。
らんとしていますから、貯蓄も減ってきているのです。
堀江貴文氏がつくったライブドアの前身は、オンザエッ
ジという名称でした。オン・ザ・エッジとは、綱渡りとい
う意味ですが、今の財政、経済、社会の構造をみると、日
本経済は、オン・ザ・エッジの状況にあるという気がします。
今、社会保障の大きな問題は、医療保険、介護保険、
年金保険の三つをどういうふうに扱っていくかということ
でしょう。現在、
1 世帯の所得金額は、
平均で 203 万円です。
65 歳以上の高齢世帯では 186 万円あり、貯蓄は、若い世
代の 1,273 万円に対して、2,504 万円です。不動産などのス
トックもお持ちです。フローも、現役に伍する水準があり、
かつストックも相応の水準をお持ちの高齢者が多いという
ことを前提に、改革を考えていく必要があるでしょう。
医療は、平成 18 年度、制度改革の大きな課題となって
います。どんな方でも基礎的な医療サービスを受けられる
という制度の目標は重要なことですが、だからといって、
過剰な診療をやっていいというわけではありません。財政
と自己負担のバランスをどうすべきかといった議論を排除
するものではありません。
ただ、見逃してはならない点があります。日本の家計の
貯蓄率は、高度成長期に至るまでは、非常に高い水準で
した。それが、今、つるべ落としのように、貯蓄の積み増
しができる力が落ちてきています。日銀の 12 月の統計で
は、家計の貯蓄はちょっと増えているのですが、これは株
式を時価ベースで評価したからで、預・貯金の額は減って
います。
原因は、はっきりしています。高齢の方が急激に増えて
きますと、現役世代に貯蓄したものを取り崩していくのが、
通常のライフサイクルだからです。65 歳以上の人口が急
激に増えてくると、貯蓄の積み増しは期待できず、だんだ
ん取り崩していきます。つまり、国債を新たに買い増すこ
とができる人が少なくなってきて、外国から借金をせざる
を得ない事態が迫ってきています。
他方で、公債の発行額がどんどん増えてきて、家計の
貯蓄額の増加分が、これに追いつきません。今、国債が
国内で売れているのは、過去の蓄積と、民間企業の資金
需要が多くなかったからで、公債の発行増を国内の民間資
金で賄えなくなってくると、大変に苦しい状況になってき
ます。
平成 2 年までは、税収が 60.1 兆円で、歳出が 69.3 兆円ぐ
らいですから、公債の発行は 7 兆円ぐらいでよかったので
すが、ここから急に悪くなりました。歳出が急激に増えて、
税収が減ってきたので、赤字が増えたということです。
1人当たりの年間医療費は、70 歳代の方が40 歳代の方の
5 倍かかるというように、財政的には、医療費の問題と高
齢化とは切っても切れない関係です。ただ、高齢者の 1 人
当たりの医療費をとりますと、北海道と長野県では、2 倍
ぐらいの差があります。北海道は50 万円以上なのに、長野
県は 25 万円から 30 万円の間です。人口当たりの病床数は、
北海道の方がずっと多く、患者の方々に医療サービスを提
供したいと思っている方々が多いから、高い数字になって
くるのではないかという見方も出てきます。
ちなみに、長野県は、男性の平均寿命が 78.9 歳で、男
性では日本一長寿の県です。ベッドが多くて医療費をかけ
ているから長寿かというと、実は逆ですし、老人の就業者
割合も 30%以上を超え、高齢者の方もよく働いていると
いうことです。
小泉改革により、18 年度予算で診療報酬が 3.2%減にな
りました。医療費のうち、薬価を下げるだけでなく、診療
報酬も下げるという大きな改革でした。
介護については、4 月から法改正をして、自治体ごとに
新しい制度をつくり直していますが、要支援とか介護度 1
とかが非常に増えてきています。中には、家なら食費は自
分で持つのに、病院に入ったら公費で賄ってくれるとか、
買い物や掃除など、家政婦さんみたいに使っているケース
があり、費用負担の適正化といった議論がされて、かなり
制度が変わってきています。
増えた経費は、社会保障と国債と地方交付税で、特に
社会保障が急激に増えていますし、地方交付税も非常に
増えています。やっぱり社会保障が、高齢化との関連で、
大変な状況となり、時代のターニングポイントに来ている
わけです。
日本では、昭和 22 年(1947 年 )あたりからベビーブーム
が始まりました。60 を足すと 2007 年です。日本の人口構
成は非連続的な構造で、高度成長期を支えた団塊の世代
の方々が、あと 1 、2 年で高齢者となり、年金をもらう側
の世代に移ります。
昭和 25 年 (1950 年 ) の男性の平均寿命は 59.6 歳でした
が、50 年後の平成 12 年
(2000 年)
は 77.1 歳で、世界に冠た
る長寿国です。50 年間で平均寿命が 15 年以上増えれば、
高齢者人口が増えるのは当たり前です。同時に若い方が
増えればいいのですが、合計特殊出生率は昭和 25 年の3.65
に対し、
平成12 年が1.36 です。こういった数字を見ますと、
キーワードは 60 、1947 年に60 足せば 2007 年で、もう来年
ですが、団塊世代が勤労世代から年金受給可能世代にな
年金も、このままでは収支償うのが難しい状況です。16
年度の年金改革の政府案に、スライド調整率というのがあ
りました。それまでは、賃金が上がれば 5 年に 1 回、物価
5
は当然ですが、それだけで財政がよくなると言うのは、適
当なことではありません。
ところで、景気が悪いから税収が入らず、赤字が増えた
と思われがちですが、これは必ずしも正しくありません。
平成 2 年当時、457 兆円ぐらいだった名目GDPは 500 兆円
の大台にのるようになったのに、税収は 60.1 兆円から 44
兆円ぐらいまで落ちています。要するに、景気が悪いだけ
ではなく、定率減税などの減税が影響しているのです。そ
の結果、国民の税負担率は、諸外国と比べても非常に低
い構造になっています。
が上がれば毎年、年金額をスライドさせていたのですが、
それではもたないのではないかということで、公的年金被
保険者数が減ってきたり、平均余命が延びてくるというこ
とを反映し、年金制度、給付金額も現役世代の負担能力
に合わせていこうという改正を行いました。これは、長い
目で見て、年金財政の安定に寄与する大きな改正でした。
地方交付税は、基本的には、国が全国の地方自治体を
合わせた地方財政計画をつくって、地方に不足が出たら、
地方交付税で補ってあげようという制度です。個別の自治
体でみてもそうで、基準財政需要と基準財政収入に差額
が出ると、それを交付税で埋めようという構造を持ってい
ます。
以前の 3,100 自治体が、平成の大合併で 2,300 自治体に
なっていますが、このうち交付税をもらわなくていい団体
は 138 です。この中で、愛知県内は 28 を占め、非常に財
政力のいい自治体が多く、日本に冠たる、世界に冠たる県
と言えます。
消費税の税率ですが、EU の加盟国は全部 15%以上で
す。フランスはほぼ 20%ですし、デンマークやスウェーデ
ンなど北欧の国は 25%になっています。日本の場合、消
費税率 1%で、大雑把に言って、グロスで 2.5 兆円入りま
すから、欧州並みの 20%との差の 15%は、機械的に計算
すると37.5 兆円に相当します。
政府は 1 月 20 日の閣議決定で、2010 年代初頭には、基
礎的な財政収支の黒字化を目指すとし、6 月には、「 歳出・
歳入一体改革 」の選択肢と改革工程を明らかにするとして
います。その上で、来年の 3 月までに結論を出すとことは
合意されていますので、今後の重要な政策課題になって
くると思います。
基礎的財政収支というのは、公債金収入と国債費の差
額ですが、今は赤字の状態で、GDPに占める債務残高の
割合が、雪だるま式に増える状態になっています。しかし、
基礎的財政収支がゼロになれば、利払い分しか増えない
構図になってきますので、2010 年代初頭には、基礎的財
政収支をゼロにしたいというのが政府の目標です。
また、経済財政諮問会議での議論で、民間議員から出
されたケースの中に「3%成長・4%金利」
、つまり金利の方
が高いケースがありますが、これを基本として見ますと、
もう少し財政再建努力をしないといけないようです。
財政制度審議会の学者の意見でも、この「3%成長・4%
金利」のケースでは、一般会計の基礎的財政収支はさらに
悪化していく傾向が見てとれ、歳出、歳入合わせた改革
を議論しないといけないと指摘されています。また、歳出
削減だけで 2011 年に基礎的財政収支をゼロにしようとす
ると、一律 42%ぐらいカットしないといけないとの試算も
出されています。高齢者が増える時代に、社会保障費を 4
割も削ったら大変なことになり、自己負担の増加や、他の
歳出分野での厳しい改革が必要になると思われます。
いずれにしても、貯蓄率は減少し、間もなく 60 歳以上
の人口が急増、他方で財政赤字は累増してきます。その
意味で、日本経済は、今、オン・ザ・エッジの状態にある
のではないでしょうか。そんな状況のもとで、歳出、歳入
一体となった改革を行うことが必要であり、6 月には選択
肢や改革工程が示されます。今、何か特定の結論や方向
づけが決まっているわけではありませんが、今後とも、財
政をめぐる問題は、避けて通れない話題になっていくと思
われます。
基礎的な財政収支を見ると、国が赤字で、地方は黒字
です。税収も、地方税はあまり減税せず、国税の減税を
景気対策として行ってきたので、今の財政赤字の問題は、
マクロで見たときには、地方公共団体の課題ではなくて、
国の課題です。
ほかの予算の話をしますと、公共事業、なかんずく農地
関係の公共土木などは無駄だと報じられることも多いので
すが、例えば、犬山の頭首工工事は防災・治水工事の側
面があります。ダムも無駄な公共事業の代名詞とされる向
きもありますが、東海豪雨の場合など、大きな被害が出る
ことがあります。公共工事の無駄をなくすことは当然です
が、そのすべてが不要かということは、真剣に考えなけれ
ばならないと思います。
人件費も、見直しを決めています。国家公務員は、自
衛官まで含めると 61.5 万人で、人件費は 5 兆 4,410 億円、
諸掛りを含めて 1 人 800 万円強ですから、これを全部退職
させれば 5 兆円分の財政赤字の削減ができる計算ですが、
平成 17 年度の公債発行が 34 兆円ですから、これで財政再
建ができるというのは、非現実的な議論だと思われます。
人件費は、国の 5 兆円に比べて、地方は 22 兆円です。
国は昭和 43 年の総定員法から一切増えていませんが、地
方は 100 万人ぐらい増えています。無駄な仕事を減らし、
民間給与や職務に見合った適正な給与水準にすべきこと
6
東京大学総長
小宮山 宏(S42 工)
この時期は、大学で入学式と卒業式が行われますので、
私は都合 7 回、大勢の前で話すことになり、大変プレッシャー
の強い時期です。その場において、私は幾つかの共通の話
をしていますが、その 1 つに「課題解決先進国・日本」という
話をしています。本日は、その「課題解決先進国・日本」のお
話をさせていただきたいと思います。
それ故に横軸に重さをとり、縦軸に 1 キロ当たりどれだけ燃
料を使うかをとれば、直線に乗ります。直線に乗るというの
は、技術が同じということです。
日本車の場合、同じ重さならば、20%ほどガソリンを節約
できますし、ハイブリッドカーになると、さらに半分になり
ます。私は、2 月にマークⅡからプリウスに乗り換えました。
その結果、ガソリン消費は 40%に減りました。もしも、世界
の人々が、ハイブリッドカーに乗り換えると、ガソリン消費
量が 3 分の1で済むことになります。これは逆にいうと3 倍多
くの自動車が走っていても、今のガソリン消費と同じで済む
ということです。
家庭用のエアコンが、冷房能力に対してどれだけ電力を使
うかについて、アメリカと日本を比べると、日本はアメリカ
の半分しか電気を使いません。日本のエアコンはアメリカの
ものと比べて、エネルギー消費が半分で済むということです。
エネルギー効率も、二酸化炭素との関連においては一つの環
境の基準であり、環境に関しても、日本は圧倒的に先進国と
いうことが言えます。
火力発電においても同じで、発電時に排出される亜硫酸ガ
スは、日本はアメリカ、イギリスの 20 分の 1 です。ドイツは、
脱硫で非常に頑張っていますが、亜硫酸ガスは日本の 6 倍で
す。つまり、日本の火力発電は、各国に比べ非常にクリーン
な発電をしているということです。1996 年に調べたとき、脱
硫プラントが世界で 4,000 台動いていましたが、そのうちの
3,200 台は日本で動いているものです。
今、隅田川で天ぷらを食べながら屋形船に乗ることができ
ますが、これが 1970 年代でしたら、川が臭くて屋形船で食
事などできなかったでしょう。それを、シラウオがとれるま
でに浄化したのです。資源のない小さな島国で、勤勉な、教
育レベルの高い人たちがつくった世界屈指の大国として、世
界が日本を認めているのです。どうして、もっと自信を持っ
て前に進まないのかと、私は学生に言っているのです。
黒船が来航したとき、日本は自国の船と比べて負けたと
思ってしまったのですが、確かに、250 年鎖国していた間に、
生産力は伸ばせませんでした。しかし、いろいろな文化は栄
えました。江戸前の寿司は、マクドナルドのハンバーガーよ
りも美味しいと思います。また、クロード・モネは、自宅に
日本庭園をつくって、浮世絵を模写しています。ゴッホも、
広重の模写をしていました。
つまり、何を言いたいかというと、生産力で負けて根づい
た「日本は途上国」という意識が、維新後、あらゆるものを導
入させたということです。例えば、イギリスからは議会制度、
フランスからは警察制度、大学や化学産業はドイツから、道
路などのシステムはアメリカから導入しました。
日本は今、少子化、環境、エネルギーと、いろいろな問題
を抱えていますが、これは自分自身で解決していかなければ
なりません。自分で解決しようとするときに、今の時代は全
体像を個人がなかなか把握できない状況になっています。そ
の解として、私は知識の構造化ということを、ここ 20 年ぐら
い提唱し続け、本も出しています。
科学技術は重要ですが、あくまでも財政、社会制度と三
位一体でないといけません。そして、課題解決先進国へ向け
て動くことです。このことを私は入学式や卒業式の学生達に
も訴えかけています。
世界のGDPは、アメリカが 1 番ですが、日本は 2 番で、全
GDPの12.8%ぐらいを占めています。これは 3 、
4 位のドイツ、
イギリスを合わせた数値よりも大きいのです。日本は輸出大
国と言われていますが、基本的に生産した 12.8%の殆どを国
内で消費しており、世界第二のマーケットということがいえ
ると思います。
マスコミは、日本をCO2 排出大国と言っていますが、経済
が大きいほどエネルギーを多く使うのは当然のことです。ア
メリカはGDPとパラレルにCO2 を排出していますが、日本は
12.8%の富を生産しながら、世界のCO2 排出量の 5%弱しか出
していません。GDP 3 位のドイツと 4 位のイギリスのCO2 排出
量を合わせると、日本よりも 20%以上も大きく、日本は主要
国の中でも圧倒的にエネルギー効率の高い国といえます。
アメリカは、今でもエネルギー価格を安くする政策をとっ
ており、未だに湿式と乾式が半分ずつぐらいでセメントを
作っています。セメントの生産は、湿式から乾式に変わり、
その後も二世代ほど変わっていますが、日本はほぼ全てに
おいて最新鋭のニュー・サスペンション・ヒーターがつい
ています。
このように、日本はエネルギー効率が高い生産を行ってい
ることに加えて、作っているもの、使っているものもエネル
ギー効率が非常に高いわけです。例えば、自動車を例にする
と、ドイツ、アメリカ、フランス、スウェーデンなどの外国
車について、横軸に車両の重さをとり、縦軸にリッター何キ
ロの逆数(1 キロ走るのに何リッター使うか)をとると、その
グラフは直線に乗ります。その訳は、自動車は摩擦に抗する
ために燃料を使っているからで、技術が一定ならば、燃費の
逆数をとると、直線に乗るというわけです。
その摩擦とは、通常の走行状態では、タイヤと地面との摩
擦のことであり、転がり摩擦も静止摩擦も重さに比例します。
くしくも、1868 年の明治維新から100 年たった1968 年に経
済が世界第二位になっています。
「坂の上の雲」
の時代だとか、
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第二次世界大戦とかの疲弊を経つつも、100 年で世界第二の
経済大国になったのです。日本は文化では負けていませんし、
生産力も追いついたことで、世界のフロントランナーの 1 人
になったのです。
バブル崩壊後を、失われた15 年、という言い方をしますが、
それは間違いで、少なくとも、失われた 37 年、と言うべきだ
と思います。37 年前に経済で世界のトップに立ったときに、
問題があれば、自分たちで解決するのだというマインドにな
らなければいけなかったのです。つまり、課題先進国という
とらえ方をすべきだったのです。
日本はエネルギー輸入国で、原子力を除けば、96%のエネ
ルギーを輸入しています。原子力を国産と考えても、80%の
エネルギーを輸入しており、これは厳しい負担です。廃棄物
の増大、環境汚染、さらに高齢化、少子化、ヒートアイラン
ドなど、課題は確かに多く存在します。しかし、ニーズがあ
るということは、解を生み出すチャンスを与えられていると
いうことでもあります。
例えば、エネルギーの輸入は、非常に負担ですが、一時
は世界最大の石油生産国だったアメリカでも、今は世界第一
位の石油輸入国であり、昨年は 62.8%の石油を輸入していま
す。エネルギーの輸入という点では、アメリカが日本を追い
かけており、中国も同じです。中国は 92 年から石油の輸入
国に代わり、今や世界第二の石油輸入国であり、アメリカと
石油の利権を争っています。
日本はエネルギーを輸入に頼っていたので、そのコストも
高く、それ故に世界で最もエネルギー効率の良い国をつくっ
てきたのです。狭い国土で世界第二位の経済発展を遂げる
には、環境への排出を極度に抑えなければならなかったので
す。そのことが、世界第二位の経済を維持しながらも、これ
だけ美しい環境を取り戻しつつある理由と言えます。
私は「地球持続の技術」という本で、2050 年に未来がこう
なっていれば、人類はエネルギーと物質に関する限りサステ
イナブルである、
というビジョンを提案しています。その中で、
エネルギー効率を 3 倍にするということを掲げ、いろいろな
技術について、省エネルギーはどこまでいけるのかを技術屋
という視点で議論しています。
エネルギーの議論にはすべて、これ以上はいけないという
理論があります。例えば、エアコンだったら、43 という数字
があります。それはどういう意味かというと、1 キロワットの
電力を使うと 43 キロワットの暖房、冷房ができるという理論
です。
1998 年に私が調べたときの値は、4 です。改良すれば、3
倍までいけるのではないかという議論をしました。2002 年
にカタログを見ると、4 から 6 に上がり、7 になっています。
2005 年と 6 年は調べていませんが、たぶん 2 倍になっている
と思われます。このとき、エアコンに詳しい大企業の技術屋
と一緒に議論をしたのですが、3 倍でなく、4 倍と言わなく
てはいけなかったのに、現状の技術だけを見ていて、そんな
高いことはできないだろうという議論をしてしまったのです。
2050 年には、冷暖房のエネルギーが 3 分の 1 か 4 分の 1 にま
でになると言われていますが、私は更に進むと思っています。
なぜならば、本当に部屋の断熱が良い場合、部屋が一定温
度まで暖まったら、暖房は要らなくなるはずです。断熱が悪
いから熱が逃げ、その分を補っているのが暖房であり、冷房
も同じことです。つまり断熱を良くすればいいのです。
普通の一軒家で、断熱が 3 倍になり、エアコンの効率が 3
倍に上がれば、9 分の 1 のエネルギーで冷暖房ができること
になります。私の家は、3 年前の建替え時に太陽電池を積み、
オール電化としました。その結果、年間の電気代は 5 万円し
かかかりません。普通、一軒家ならば、平均して 30 万円ぐ
らいかかると思いますので、6 分の 1 です。これぐらいのポ
テンシャルがあり、その先頭を走っているのが日本なのです。
課題があるということは、負担ではありますが、チャンス
でもあります。資源が乏しく、人口密度の高い産業の先進国
である日本は、中国、インドが先進国になったときの世界の
姿そのものなのです。世界的に石油がなく、人口密度の高い
産業先進国ばかりになったときの、地球の姿そのものなので
す。だから、21 世紀の地球の未来像を、日本は先進的に経
験しているモデル国と考えるべきだと思います。
モデルがあると、次に何を創るかを考える必要はありませ
ん。自分で創るとなると、技術の動向を考えたり、どこに新
しい科学技術の種があるか、世界がどのようなニーズを経験
するのだろうか、ということを読まなくてはいけません。そ
のときに知識が爆発的に増大したという背景を、よく考えな
くてはいけません。
知識の爆発的な増大があらゆる分野で起こっています。法
律の分野なども、昔とは違います。昔なら数枚の紙で済んで
いたものが、本に書かなければならなくなっています。化学
の分野で言えば、20 世紀は膨張の世紀であり、物質生産の
膨張が環境資源問題を引き起こしています。
これらの事の本質は、知識の膨張によって 1 人の人間が全
体像を把握できなくなったということです。今は、誰かに聞
けば、教えてくれるという時代ではありません。誰に聞いて
も、分からないものは分からないのです。それを前提として、
どうやってコンセンサスを見出していくかという時代なので
す。その解として、知識の構造化ということを私は申し上げ
ています。
また、電力のシステムについても50 年後の電力産業は、
「電
力ブローカー産業」
とでもいうべき、もっと面白いものになる
と思っています。今でも、夜の電気は余っていますが、そこ
にコージェネ、太陽電池、風力発電、二次電池、燃料電池
などが加わり、安定した電力システムを作るといった、極め
て面白い産業になっていると確信しています。
いずれにしても、それには知の結集が鍵となります。これ
はナノにおいても同じことです。シリコンのチップや化学の
チップを研究している人がたくさんいますが、それらチップ
を使って無痛針や、ナノ加工でガラスの内面を特殊加工した
針などを開発しています。これらの針だと、太い針を刺して
血を取るのに比べて痛みはありませんし、わずか数マイクロ
リットルの血で、前立腺がんの検査も可能なのです。
しかし、知の結集の技術でチップだけを作っても、社会シ
ステムにはなりません。社会システムを作るには、端末から
インターネットで病院にある膨大な電子カルテや、個人のゲ
ノム情報などと結び付けた膨大なデータベースとの遣り取り
ができるようにならなければいけません。
医者へは行き難くても、注射針を買ってきて採血をし、そ
れを病院に送ると、
「花粉症だから、売薬で我慢してなさい」
という診断が返ってくれば、医者に行かなくても安心できる
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わけです。このようなシステムは、高齢化社会には絶対に必
要であり、やればできるところまで来ているのです。
また、世界で初めてだと思いますが、世界トップクラスの10 大
学が研究で協力し、教員や学生の交流をすることについて、去年
の 6 月に調印しました。参加は北京大、オックスフォード、バーク
レー、
イエール、
オーストラリアナショナル、
シンガポールナショナル、
ケンブリッジ、スイス工科大、コペンハーゲン、東大の10校です。
経営努力も一生懸命行っています。
運営費交付金が毎年1%
減っていくのは、非常に厳しいのですが、民間に倣って調達
本部というものを設けました。研究のアクティビティーは落と
さず、そして教員数も減らさないという中で、国の時代に比べ、
平均して30%ぐらい安く物を買うことができています。
病院も変わりました。私が工学部長をしていたころ、学部
長同士で「東大病院で死ぬ会」という話をしていたくらい悪
かったのですが、今は東大病院を利用した人たちのうち、
「と
てもよかった」
「よかった」という人が 92%です。皆さんも是
非東大病院を利用してみてください。
今、日本がやれば勝てるのです。日本がやらなかったら、制
度に自由度があるアメリカが先にやってしまうでしょう。
しかし、
ここが問題なのです。やらなかったら負けてしまいます。やれ
ばできるということは、我々が仲間と一生懸命議論をして分
かっているのです。だから、決断する必要があるのです。
資源が乏しく、人口密度の高い、課題先進国の日本は、地
球の未来像で、今こそ先頭に立って走る勇気を決断できるかが
問われています。そこで学生には、知識爆発の時代の中で本
質をとらえる知、そして、1 人で生きているわけではありません
ので、他者を感じる力、更に、先頭に立つ勇気を持つこと、こ
れこそ時代が要求している人間像であると言っているのです。
皆さんは、大学には実に多くの教授会があって、総長も
大変だろうと思われているでしょう。全くそのとおりですが、
これを昔のように戻すということは間違いだと思っています。
例えば、宇宙線研があるからノーベル賞が取れるわけであり、
最近ですとウナギの産卵場所を発見したのも、海洋研がある
からです。どれも世界に冠たるものであり、
これを前提にして、
私は何とか大学の経営をしていきたいと思っています。
その鍵は、先生は勝手にやりなさい、ということです。小
柴さんに、ニュートリノを辞めて来年からナノテクをしてく
ださい、ということではなく、良い人を選んで、それぞれ勝
手に自分の確信に基づいて教育研究をしていただきたいと
思っています。
20 世紀というのは簡単な時代で、フレミングがペニシリン
を発見すると製薬産業ができ、カローザスがナイロンを発見
するとデュポンが儲かり、ハーバー、ボッシュがアンモニア
を合成すると肥料産業ができました。ノーベル賞というサイ
エンスが極めて単純に経済価値に結びついていたのが、20
世紀の特徴です。しかし、これからは、細分化されたジグ
ソーパズルのピースみたいな知識が山のように出てきて、ど
うやって絵を作るかが問われます。自律分散型の「知」を、ど
うやって人間として欲しい「知」に結びつけていくか、ここを
総長裁量でやっていくためもあり、
「アクションプラン 2005 −
2008」
というものを作りました。任期は 4 年ですので、この間
にできることを全部やりたいと思っています。
先に、時代の先頭に立つべき、と言いましたが、時代とは
世界の時代のことで、世界の先頭に立てば、当然ながら、世
界の知の頂点に立つことになります。教育に携わって、様々
な研究をしてきましたが、学術俯瞰講義というのを、今年、
物質をテーマにして始めました。駒場に入ってきた学生に細
かい話を、いきなり講義するのではなく、大きな知の体系を
見せていこうというのが狙いです。最初、小柴さんに講義し
ていただき、それから佐藤さんというインフレーション宇宙
論の一番最初の提唱者が続き、その後、物性研のエースで
ある家さん、そして最後は、総長である私が 4 回講義を行い
ました。この後、生命、社会制度、芸術、哲学、さらに数学、
情報と、東大のエースと言える方々を動員して俯瞰する講義
をつくり、更にその講義を中国語と英語に翻訳したものも作
り世界に発信したいと思っています。
学術の統合化は、組織で行わないとできないので、総長
である私がやろうと思います。
それから、130 億円を目標にした基金に関しても話させていた
だきます。大学の資産という点でみると、世界の中でもアメリカ
のパワーはものすごく、ハーバードが 3 兆円、イエールは 2 兆円、
スタンフォードは1兆円を超える資産があります。また、ハーバー
ドは去年 2,800 億円の運用益を上げたのに、800 億円しか使って
いないとのことです。それに対して、東大の全予算は2,000 億円
で、運営費交付金は930 億円です。オックスフォード、ケンブリッ
ジなども本当に危機感を持っていて、最近も、オックスフォード
の倫理の有名教授が、ハーバードに引き抜かれたということで
す。アメリカの凄まじいパワーに東大も対抗しなくてはいけない
と、頑張っていますので、皆様どうかご賢察ください。
お陰様で、幾つかの寄付建物の目処もつけることができました。
情報学環という新しい組織も、ベネッセの寄付で建物を建てるこ
とができます。教養や柏にも力を入れていて、18 、19 歳で入っ
てきた学生たちの学習意欲が沸き立つような環境をつくり、その
ための理想の教室をつくる寄付についても目処がつきました。
法人化は、大学を自由にしたはずですが、自由度がないと
社会に訴えています。新聞にも取り上げていただき、その効
果だけとは言えませんが、4 月1日から大学が債権を発行する
こともできるようになりました。長期の借入金も可能になり
ました。費用省令では、学生の寮は 1 カ月 4,500 円しか取って
はいけないことになっているのですが、東京だと8 、9 万円の
家賃を学生は払っています。4,500 円とは余りに不合理です。
4 万円ぐらい取る代わりに、本当に貧しい人にはスカラーシッ
プで援助した方が合理的だと思いますが、この費用省令もほ
ぼ撤廃ということになり、学生寮やインターナショナル・ゲ
ストハウスなどもこれからつくりたいと考えています。
社会に対しルールの設定を訴えられるのは、東京大学しか
ないと思っています。我々は言う責任があると思っており、
怖くても恐れることなく、先頭に立つ勇気を持とうと思いま
す。そこで、ユニバーシティー・ディベロプメント・プロジェ
クトというのをつくりました。
いずれにしても、私たちは課題解決先進国を目指すべきで
あり、東京大学は、その主翼を担うということを宣言して、
社会に訴えていきたいと考えています。銀杏会の皆さんのご
協力を今後ともお願いしたいと思います。
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寺を建て観音菩薩を安置したことが起こりと言われていま
す。その後行基を始め名僧が数多く訪れ、多くの坊も建ち
並んで非常に隆盛でしたが、嘉禄年間(1225 年ごろ)の火
事で昔の面影はなくなり、永禄 11 年(1568 年)に武田信玄
が城砦を築きました。その後徳川氏の領有するところとな
り、元和 2 年
(1616 年)
4 月 17 日、家康の薨後、遺言により
当地に埋葬されました。2 代将軍秀忠の命により翌元和 3
年 12 月には権現造り、総漆塗り、極彩色の東照宮が完成
し現在に至っています。なお、遺言により家康の遺骸は元
和 3 年 4 月には日光に移され、家光の代に現在の荘厳華麗
な日光東照宮が造営されたこともご承知のとおりです。
拝殿の奥の神廟近くに“金のなる木”と称する杉の巨木が
あり、
『よろづ程のよ木 志ひふか木 志ょうぢ木』
という家
康の言葉が記されていて印象的でした。
海 抜 270 mの 久 能
山から駿河湾を臨みな
がら1129 段の石 段を
ゆっくりと下山。麓の
石垣いちごの店で小
休止。一皿のいちごを
分け合って食し、暫し
疲れを癒しました。
▲みんなで石垣いちごを堪能。美味い!
そこからバスで静岡
駅に向かう山田さんと別れ、残り8 名はタクシーで清水港近
くの
“海道一のマグロ丼の店”
『なすび』
へ
(オプション1:メン
バーの由比さんのジパング倶楽部による)
。清水港で水揚げ
されたマグロや桜えびの天麩羅を堪能しました。夕闇迫る中
を腹ごなしにそぞろ歩いて新清水駅へ。そこから静鉄電車に
乗って 20 分で新静岡駅へ。予定通りの行程を終え、新幹線
でそれぞれの帰路に着きました。オプション 2 として
“静岡お
でん”
の店を予定していましたが、それはまたの機会に。
今回は由比さん(S27 工)に詳細な情報を提供していただ
いたお陰で充実した旅となりました。紙面をお借りしてお
礼申し上げます。
次回第10 回
(最終回)
は、11月に1 泊 2日で京都周辺を訪
ねる予定です。連絡先は、東海銀杏会(新企画担当)清水
順二
(S49 工卒:山田商会)
です。
E-mail:[email protected]
電 話:052-871-9811 FAX:052-871-9869
(S49 工)
世話人 清水順二
去る 4 月 9 日
(日)
、第 9 回三英傑の遺構を訪ねる会が 9 名
の参加で開催されました。今回は家康の人質時代と大御所
時代の遺構を訪ねて、駿府(静岡市)へと少々足を伸ばし
ました。東京からも以前東海銀杏会のメンバーだった田中
茂義さん
(S54 工)
が加わりました。
今年は例年になく寒く、春の訪れも遅かったのですが、当
日は良い天気になり穏やかな行楽日和になりました。朝 9 時
に新幹線名古屋駅に集合し、ひかり号で 10 時前には静岡駅
に到着しました。
そこで東京、
岡崎組と落ち合い、
静鉄のちゃっ
きりフリー乗車券でバス・電車乗り放題の旅に出発です。
まずはかわいらしいバスで市内北部の臨済寺へ。
臨済寺は今川義元の兄氏輝の菩提寺で、義元の軍師太原
雪斉長老が師の大休禅師を迎え開山。家康は竹千代時代の
天文 18 年(1549 年)8 歳のときから、今川家の人質としての
12 年間をこの臨済寺で過ごし、太原雪斉から文武両道を学
びました。庭園は国の指定名園、
方丈は国の重要文化財ですが、
拝観謝絶につき方丈は見られま
せんでした。掃き清められた庭
園は塵一つなく、清々しく、折
から始まった読経とともに、散
り始めた花吹雪のなかで往時を
偲びました。
再びバスに乗って、家光が建
立したという権現造りの浅間神
社の脇を通って、駿府城址へ。
周辺は県庁や市役所、学校な
ど官庁街になっていて、何と珍 ▲竹千代が暮らした臨済寺で
しいことに県警本部の 21 階が展望台として開放されていま
した。そこからの眺めはさすがに四方八方がよく見え、遠く
かすかに全山に雪が残る富士山が眺められ、また駿府城が
典型的な輪郭式の平城で、三重の堀に囲まれていることも
一目瞭然でした。
駿府城のいわれは今川氏に遡りますが、家康は永禄 3
年(1560 年)桶狭間の戦いの後、駿府の武田氏を天正 10 年
(1582 年)追放し浜松城から移りましたが、天正 18 年秀吉
により関東に移封され、その後関ヶ原で勝利し江戸幕府を
開いたことはご存知のとおり。慶長 10 年(1605 年)将軍職
を秀忠に譲って、同 12 年に大御所として三たび駿府に入
り、天下普請により城が拡張修築され、現在の規模に。
平成 8 年に復元された巽櫓、東御門を通って、徒歩で静
鉄の新静岡ターミナルへ。
次は久能山東照宮に向うために、バスで日本平へ。こ
のバスが大誤算で、日本平の中腹にある動物園に向かう車
で大渋滞。通常 40 分程度のところを 1 時間 40 分かかって
しまいました。午後 2 時の遅い昼食(名物桜えびの天麩羅
付)
をとり、ロープウェイで久能山へ。
久能山は、古くは推古天皇の時に久能忠仁が山を開き、
盛り切ってください。
夏を迎えます。健康に十分留意され、元気に乗
さて、今号は、小宮山宏・東大総長の特別講話を収
録しましたので、10 ページ編集となりました。藤岡博・
東海財務局長には、具体的なデータで、東海地区の活
気ぶりや国家財政の現状と問題点を説明され、小宮山
総長は、世界的な課題を解決するために、今こそ、わ
が国が先進的な役割を果たすべきであると、熱っぽく
話され、それぞれに聞き入る人の共感を誘っていました。
会員からの投稿をお待ちしています。随想、旅行
記、グループ活動、行事予定など、なんでも結構で
す。宛先は、東海銀杏会通信の題字下にある事務局か、
[email protected] へ。 (角田)
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