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近年の我が国における国際貨物輸送の動向について(PDF形式)

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近年の我が国における国際貨物輸送の動向について(PDF形式)
今月のトピックス(1)
近年の我が国における国際貨物輸送の動向について
我が国の輸出は、本年5月以降、世界的な景気回復を背景に、半導体等電子部品
など電気機器と一般機械が増加してきた。最近では、弱含みの動きとなっているもの
の、ここ数ヶ月間においては、地域別では、アジア向け輸出を中心に、電気機器、一
般機械が増加し、我が国の景気の持ち直しに寄与してきた。
また、輸入についても、電気機械を中心とした国内生産の持ち直しの動きを背景に、
I
T関連など機械機器の輸入が増加し、全体としても、昨年の減少基調から、本年後
半以降、増加に転じている。
このような状況の中、本年4月18日には、新東京国際空港(成田空港)の暫定平
行滑走路の供用が開始され、国際線の発着枠が年間13万回から18万回に増加し
ており、今後、成田空港が我が国の国際物流にもたらす効果についても注目されて
いるところである。
こうしたことから、今月のトピックスでは、我が国の貿易量の推移や主要国際港湾、
国際空港における輸出入額等を通じて、近年の国際貨物輸送の動向等について簡
単に分析することとした。なお、旅客輸送に係る国際収支の動向については、本年7
月のトピックス『輸送・旅行分野における国際収支(サービス収支)の動向について』
を参照されたい。
1.我が国の輸出入の長期的推移
1980年以降の我が国の輸出入の推移(日本の貿易額及び輸出入量)をみると
(図1及び図2参照)、輸出と輸入は概ね同様の動きを示し、全体の基調としては、
概ね右肩上がりで推移している。
しかしながら、プラザ合意(1985年)以降の急激な円高の進展や、東アジア諸
国の経済発展、世界の景気動向等の影響を受けながら、我が国の貿易の態様は
大きく変化している。ここでは、1980年以降の我が国の輸出入の長期的推移につ
いて総括する。
図1 日本の貿易額の推移(
輸出/輸入)
(10億円)
(円/$)
60,000
300
日本経済の低迷等
東アジア地域の輸出入増
貿易構造の変化
1980 年代前半の輸出増
50,000
250
円高による輸入量増
40,000
200
30,000
150
20,000
100
輸出
湾岸戦争終結による
原油価格減(輸入額減)
輸入
10,000
円安影響
為替レート
(右軸)
50
円高(プラザ合意)による輸出入減
0
1980
82
84
86
88
90
92
94
96
98
2000
0
(
年)
出典:日本関税協会「議国貿易概況」
出典:日本関税協会「外国貿易概況」
図2 日本の輸出入量の推移
(百万MT)
900
800
700
600
500
輸出
400
輸入
300
200
100
0
1980
82
84
86
88
90
92
94
96
98
2000
(年)
出典:日本関税協会「外国貿易概況」
(注)MT(メトリックトン):容積トン数(1MT=1トン)
(1)1980年代前半の動向
我が国は、伝統的には加工貿易国として、国内の乏しい資源を補うため、国
内生産に必要な原油を始めとする鉱物性燃料、原料等を輸入に頼ってきた。こ
のため、我が国の総輸入に占めるこれらの品目の占める割合は、食料品等を含
めると約8割近い水準となっている(図3参照)。
一方、輸出については、主に国内で製造された米国向けの自動車、映像機器
等の製品輸出を中心として、大きく輸出額を伸ばしている。
このように、1980年代前半においては、原材料を中心とした輸入が横這いで
推移する中で、自動車等の製品輸出が堅調に推移し、1981年以降、貿易収支
は黒字基調が定着した。
図3 輸出入品目の構成比(
1980年)
輸入
輸出
米国への自動車輸出が中心
食料品
10%
その他
機械機器 11%
7%
(金額ベース)
その他 食料品繊維・
同製品
精密機器
1%
8%
5%
6%
原料品
17%
化学製品
4%
鉱物性燃
料
51%
輸送用機器
20%
非金属鉱物製
品
1%
金属及び同製
品
16%
一般機械
23%
電気機器
15%
約8割を占める
化学製品
5%
出典:財務省「貿易統計」、日本関税協会「外国貿易概況」
(2)1980年代後半の動向(プラザ合意以降の貿易構造の変化)
その後の我が国の輸出入の推移をみると、金額ベースでは、1985年に輸出
入ともに大きく減少させていることが分かる(図1参照)。
これは、85年のプラザ合意による急激な円高(図4参照)により、原材料を中
心とした輸入においては、円建てでの支払いを押し下げるという価格要因が大き
く寄与した一方で、輸出においては、我が国の製品がドル建てでの製品価格を
押し上げた結果、輸出数量が減少したことが、その要因として考えられる。
図4 為替レート
図4
為替レート
(円/$)
260
240
プラザ合意による急激な円高
プラザ合意
220
200
180
160
140
120
100
(年)
80
1980
82
84
86
88
注:日本銀行資料より作成
90
92
94
96
98
2000
02
しかしながら、1985年(プラザ合意)以降、為替レートが円高基調で推移する
中で、我が国の貿易構造も変化し、その結果、後に述べる我が国の国際海上貨
物輸送と国際航空貨物輸送の動向にも、大きな影響を与えた。
すなわち、1980年には全体の約68%を占めていた石油等の工業用原料等
の輸入が、1990年には約43%にまで低下しており、代わりに機械類の輸入の
シェアは、80年の約7%から90年の約20%まで、約3倍の伸びを示している
(図5参照)。また、特に、海外で生産された製品を輸入する割合は、1980年代
後半以降、大幅に増加した(図6参照)。
図5
輸入品目の構成比の変化
図5 輸入品目の構成比
1990年
1980年
化学製品
4%
機械機器
7%
約3倍に増加
その他
11%
機械機器
20%
食料品
10%
その他
13%
食料品
16%
化学製品
8%
原料品
14%
原料品
17%
鉱物性燃料
51%
鉱物性燃料
29%
約7割から約4割に減少
出典:日本関税協会「外国貿易概況」
図6 製品輸入額と製品輸入比率の推移
(10億円)
20,000
(%)
50.0
18,000
45.0
16,000
40.0
輸入額(左目盛)
比率(右目盛)
14,000
35.0
12,000
30.0
10,000
25.0
8,000
20.0
6,000
15.0
4,000
10.0
2,000
5.0
0
0.0
1980
82
84
86
出典:日本関税協会「外国貿易概況」
88
90
92
94
96
98
2000
(年)
このような輸入品目のシフトは、プラザ合意による急速な円高の進行を契機と
して、日本企業による東アジア諸国をはじめとする海外展開が進み、各国の比
較優位に基づく分業構造が進展した結果、我が国の貿易構造に変化がもたらさ
れたことによるものと考えられる。
(3)1990年代以降から今日までの動向
1990年代前半の日本の輸出入の動向をみると(図1参照)、輸入金額は93
年以降高い伸びを示している一方で、輸出金額は、それに比べ低い伸びにとど
まっている。これは、1990年から95年にかけて円高傾向で推移した結果、輸
出数量の伸びが抑えられた一方で、製品輸入の増加等により輸入の伸びが高
められる方向に寄与したためと考えられる(図7参照)。
また、1996年から97年にかけての輸入金額の伸びは、輸入量よりも1995
年後半以降の円安傾向による価格要因が寄与しているものと考えられる。
図7 日本の輸出入量の推移
百万MT(輸入)
百万MT(輸出)
250
850
輸出
200
800
輸入
150
750
100
700
50
650
0
600
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
2000
(年)
出典:日本関税協会「外国貿易概況」
一方、1998年から99年にかけては、いわゆるアジア危機(アジア通貨の下
落)を契機とした輸出数量の減少等により、輸出総額が減少し、輸入についても、
日本の経済低迷による輸入数量の減少等により、大幅に減少したものと考えら
れる(図8及び図9参照)。
図8
地域別輸出額の推移
図7
地域別輸出額の推移
(
10億円)
60,000
オセアニア
アフリカ
50,000
南アメリカ
40,000
北アメリカ
30,000
ヨーロッパ
20,000
10,000
アジア
0
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
(
年)
出典:
日本関税協会「
外国貿易概況」
アジア地区の輸出入の減
全体の貿易額に影響
図9
地域別輸入額の推移
図8
地域別輸入額の推移
(10億円)
45,000
オセアニア
40,000
アフリカ
35,000
南アメリカ
30,000
25,000
北アメリカ
20,000
15,000
ヨーロッパ
10,000
アジア
5,000
0
1990
1991
1992
1993
1994
出典:日本関税協会「外国貿易概況」
1995
1996
1997
1998
1999
2000
(年)
以上に述べたように、1980年代後半から、我が国は、為替レートの円高基調
を背景として、日本企業の海外移転による現地生産を加速させ、日本国内では
より付加価値の高い品目の生産へと特化する一方で、相対的に労働集約的な
付加価値の低い品目は海外での生産に依存する構造へと移行してきた。
この結果、日本の貿易構造は、かつての原材料を輸入して工業製品を輸出す
るという「垂直分業型」あるいは「加工貿易型」のものから、日本と世界各国との
間で工業製品を相互に貿易しあう「水平分業型」の貿易構造へ変化してきた。
2.我が国の輸出入における国際海上貨物輸送及び国際航空貨物輸送の動向
1.で述べた我が国の貿易構造の変化を踏まえ、我が国の輸出入における国際
海上輸送と国際航空貨物輸送の分担状況について簡単に分析を試みることとす
る。
まず、国際海上輸送及び国際航空輸送の輸出入額の推移をみると(図10及び
図11参照)、国際海上輸送については、1980年代後半からの輸入額が大きく上
下していることが特徴として挙げられる。これは、上記に述べたように、我が国全体
の貿易額が為替レートの変動や諸外国の景気動向等に大きく左右される中で、海
上輸送が、その特性上、主に原材料等の輸送を担っていることより、金額ベースで
は、輸出に比べ、為替レートや国内景気の影響を、より受けやすいためであると考
えられる。
一方、国際航空貨物輸送については、輸出入額ともに、1980年以降中期的に
みると堅調にその割合を増加させており、全体に占めるその割合は、それぞれ、
1980年の8%(輸出)及び9%(輸入)から、2001年には31%(輸出)及び30%
(輸入)へと3倍以上の伸びを示すに至っている。
(
10億円)
図9 海上輸送と航空輸送の輸出額の比較
図10
海上輸送と航空輸送の輸出額の比較
図11
図10 海上輸送と航空輸送の輸入額の比較
海上輸送と航空輸送の輸入額の比較
(
10億円)
60,000
45,000
40,000
50,000
35,000
40,000
30,000
25,000
30,000
20,000
海上輸送
20,000
31%
海上輸送
30%
15,000
10,000
10,000
8%
5,000
航空輸送
0
1980
9%
航空輸送
0
82
84
86
88
出典:日本関税協会「外国貿易概況」
90
92
94
96
98
2000 (年)
1980
82
84
86
88
90
92
94
96
98
出典:日本関税協会「外国貿易概況」
これは、国際航空輸送が、比較的軽量かつ高付加価値な貨物である電子機器、
電子部品等に関する世界的な輸送需要の増大に、その特性が合致したため、飛
躍的にその取扱額(輸出入額)を伸ばしたことが大きな要因であると考えられる。
このことは、国際海上輸送と国際航空輸送における輸出入数量(MT)の推移か
らも確認することができる(図12及び図13参照)。
2000 (年)
すなわち、海上輸送及び航空輸送は、いずれも右肩上がりで推移しているという
点は共通しているものの、
① 特に、1985年(プラザ合意の年)以降の航空輸送による輸出入量が急激に増
加していること
② 全体の輸出入数量に占める航空輸送の占める割合は極めて低く(2001年の
航空輸送は、輸出が全体の0.8%、輸入が0.2%)、我が国の輸出入数量は、
圧倒的に海上輸送が担っていること
からも、先に述べたように、1980年代後半から我が国の貿易構造が変化していく
中で、海上輸送と航空輸送が、その特性を発揮しながら、それぞれ、鉱産品や穀
物等の太宗貨物の大量輸送と軽量な高付加価値品の輸送を担うという役割を果た
してきたことが分かる。
図11海上輸送と航空輸送の輸出量の比較
海上輸送と航空輸送の輸出量の比較
図12
(1000MT)
(
1000MT)
図12海上輸送と航空輸送の輸入量の比較
海上輸送と航空輸送の輸入量の比較
図13
(1000MT)
(
1000MT)
160,000
1,600
900,000
1,800
140,000
1,400
800,000
1,600
120,000
1,200
700,000
1,400
100,000
1,000
600,000
1,200
500,000
1,000
80,000
800
400,000
800
60,000
600
海上輸送(左目盛)
航空輸送(右目盛)
40,000
20,000
0
1980 82
84
86
88
90
92
94
96
400
300,000
200,000
200
100,000
0
98 2000 (
年)
0
出典:日本関税協会「外国貿易概況」
600
海上輸送(
左目盛)
航空輸送(
右目盛)
400
200
1980 82
84
86
88
90
92
94
96
0
98 2000 (
年)
出典:日本関税協会「外国貿易概況」
次に、これまで述べたことを、我が国の個別港湾と空港における輸出入の状況
から確認する。
まず、1982年及び2001年の東京港における輸出入品目の構成比を対比して
みると(図14参照)、輸出については、いずれも、機械類のシェアが大きい点では
同様であるが、1982年については、ラジオ、TV等の電気機器製品やテープレコ
ーダー、ビデオデッキ等の精密機器製品が主要な輸出品目を占めるのに対し、
2001年については、コンピューター(一般機械)や半導体(電気機器)等のI
T関連
機器、部品等が主要な輸出品目となっている。また、輸入については、1982年で
は食料品や原料品が主要輸入品目であったが、2001年では食料品の比率が下
がった一方で、コンピューター関連機器や半導体等の機械類が増加して いるのが
特徴となっている。
図1
4 東京港における輸出入品目の構成比
図11 東京港における輸出入品目の構成比
輸出(
1982年)
食料品
2%
金属及び同製品
8%
非金属鉱物製品
1%
繊維等
1%
その他
12%
輸出(2001年)
一般機械
14%
電気機器
27%
化学製品
3%
精密機器
25%
原料別製品
7%
化学製品
6%
精密機器
12%
食料品
1%
その他
11%
輸送用機器
5%
輸送用機器
7%
輸入(1982年)
電気機器
24%
輸入(
2001年)
精密機器
一般機械 電気機器
1%
3%
7%
化学製品
11%
その他
21%
一般機械
34%
一般機械
17%
その他
21%
原料品
10%
金属鉱等
1%
鉱物性燃料
1%
食料品
45%
食料品
29%
原料別製品
9%
原材料
3%
電気機器
10%
精密機器
2%
化学製品
9%
東京税関資料により作成
一方、1982年及び2001年の成田空港における輸出入品目の構成比を対比し
てみると(図15参照)、いずれも、機械類が大幅に伸びていることが大きな特徴と
なっている。具体的には、1982年に、輸出品目の中で大きな割合を占めていたカ
メラ等の精密機器が、2001年では減少し、半導体等の電気機器部品やパソコン
(一般機械)等については、輸出入ともに、大きくその比率を伸ばしている。
図15 成田空港における輸出入品目の構成比
図12 成田空港における輸出入品目の構成比
輸出(1982年)
輸出(
2001年)
一般機械 電気機器
4%
1%
精密機器
37%
その他
56%
原料別製品
4%
その他
17%
化学製品
6%
精密機器
10%
食料品 化学製品
1%
1%
電気機器
40%
輸入(1982年)
一般機械
15%
その他
64%
一般機械
23%
輸入(2001年)
電気機器
5%
精密機器
1%
化学製品
6%
原料品
2%
食料品
7%
食料品
2%
原料別製品
6%
その他
15%
一般機械
33%
化学製品
8%
精密機器
9%
輸送用機器
1%
電気機器
26%
東京税関資料により作成
なお、近年の国際航空貨物における輸出入の動向についてみると、2000年末
頃から本年初頭にかけては、アメリカやアジアの景気減速等を背景として、成田空
港及び関西国際空港における輸出入は、ともに対前年実績を下回り低調に推移し
てきた(図16及び図17参照)。ただし、その中でも、成田空港に比べ関西国際空
港の方が、輸出入の対前年同月比の値は比較的高く推移しており、成田空港に離
発着制限がある中で、24時間空港である関西国際空港の優位性も表れているも
のと考えられる。
一方、本年4月以降は、世界的な IT 関連の在庫調整が進展し、為替レートの円
安傾向やアジアの景気回復の動き等対外経済環境の改善により、輸出入ともに対
前年同月比が増加に転じている(図16及び図17参照)が、ここでは、これまでの
傾向とは逆に、関西国際空港に比べ成田空港の伸びが大きくなっており、アジア方
面の国際航空貨物需要の増加に対応できる暫定平行滑走路の供用開始(本年4
月)の効果も大きいのではないかと考えられる。
図図13 成田と関空の輸出量(
16 成田と関空の輸出量(
前年同月比)
の推移
前年同月比)
の推移
図図14 成田と関空の輸入量(
17 成田と関空の輸入量(
前年同月比)
の推移
前年同月比)
の推移
160.0
160.0
140.0
140.0
120.0
120.0
100.0
100.0
80.0
80.0
60.0
60.0
成田空港
関西空港
40.0
成田空港
関西空港
40.0
20.0
20.0
7
4
2002.1
7
10
4
2,001.1
7
10
4
7
10
2000.1
東京税関及び大阪税関資料により作成
(
月)
0.0
4
7
4
2002.1
7
10
4
2,001.1
7
10
4
2000.1
7
10
4
1999.1
(月)
1999.1
0.0
東京税関及び大阪税関資料により作成
3.今後の動向について
1.2.で述べたとおり、我が国の国際貨物輸送は、これまで、経済成長と産業構
造の高度化、国際化を反映して、中長期的には量的拡大を続けながらも、その中
味は大きく変化してきた。
今後の先行きについては、目先においては、輸出が弱含みとなってきており、ア
メリカ経済等への先行き懸念といった懸念材料がいわれている。また、中長期的に
みると、人口の少子高齢化や経済構造の国際化に伴う経済成長率の低下や産業
構造の一層の高度化により、世界経済の拡大を反映して貿易量は今後とも伸びる
ものの、その伸びは緩やかになるとみる見方がある。国際経済、国内経済双方の
影響を大きく受ける国際貨物輸送の動向については、今後とも十分に注視してい
きたい。
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