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Ⅱ.筋収縮

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Ⅱ.筋収縮
http://smile.poosan.net/dryeyez/
生理学実習レポート
実験日:2005年 6月 7日
テーマ:
Ⅱ.筋収縮
グループ:*(*班)
学籍番号:0341***
氏 名 :emm386
共同実験者:
0341***:** *
0341***:** ***
0341***:** **
■ INTRODUCTION
作成したカエルの筋試料を刺激電極で直接刺激し、刺激の強さ・頻度・継続時間を変えることで収
縮の様子が変化することを観察し、刺激と収縮の関係を調べる。
■ MATERIALS and METHODS
◇ MATERIALS
事前に作成したカエルの筋試料(腓腹筋)
、
三脚ミオグラフィオン、リンゲル液、記録槓杆、刺激装置、キモグラフ、記録用紙
◇ METHODS
実験準備:
1)筋試料の作成
2)筋試料の装置への取り付け
3)キモグラフィオンの記録準備
実験1:刺激閾値および刺激の強さと収縮高
1)刺激装置からの矩形波パルスの持続時間(duration)を一定(約 1msec)にし、刺激強度
(intensity)を徐々に増して行き、それにつれて収縮の大きさ(等張性収縮高)が増大す
るのを記録し、閾値刺激と最大刺激を得る。
2)最大刺激で、4∼5 回(1Hz)連続刺激し、上り階段現象を観察する。
実験2:強さ−時間曲線
1)刺激持続時間を種々に変え、各々の持続時間について閾値を矩形波パルスの電圧を求める。
2)刺激持続時間と閾値との関係をプロットし、Weiss の式にあてはまるか否かを検討する。
実験3:収縮の加重および強縮
1)最大刺激を用いて、低頻度の反復刺激(1∼2Hz)で個々の単収縮曲線を記録する。
2)次いで、刺激頻度を増して、単収縮の加重、不完全強縮、完全強縮を記録する。また、完
全強縮を起こすに必要な最小刺激頻度を求める。
3)閾値よりわずか下の刺激強度で反復刺激を与え、適当な刺激頻度で潜伏加重により収縮が
起こるのを記録する。
実験4:筋肉の仕事
1)後荷重法による実験
2)直接荷重法による実験
3)1)と2)の実験の結果をそれぞれ、縦軸に筋肉のなした仕事を、横軸に筋肉にかけた負
荷をとり、実験データをプロットし、筋が最大の仕事をなす中程度の負荷(最適負荷)、
筋の発生する最大張力等の値を両者で比較する。
4)2)から静止筋の弾性曲線(負荷−伸長曲線)を求める。
5)縦軸に筋の長さ(あるいは伸長度)を、横軸に負荷をとり実験データをプロットする。
6)筋肉の弾性曲線の勾配(弾性率)は荷重によってどのように変化するか、筋肉の弾性は
Hook の法則にあてはまるか否かを考察する。
実験5:疲労曲線
1)最大刺激を用い、1Hz の頻度で神経を反復刺激する。
2)収縮高が小さくなったところで刺激を中止し、数分経って刺激を再開すると、収縮高がや
や刺激中止直前に比して増大するのを観察する。
3)これを繰り返すと、刺激強度を増してもほとんど単収縮が起こらなくなるのを観察する。
■ RESULTS
◇ 実験1:刺激閾値および刺激の強さと収縮高
図 1.閾値刺激と最大刺激、および上り階段現象
1)閾値刺激は 3.6V、最大刺激は 12V となった。
刺激電圧を 0V から徐々に上げていくと、3V 付近から筋はピクピクと収縮を始めたが、この時
はまだ槓杆は振れず、記録用紙に収縮は検出されなかった。そのため今回の実験では、記録用
紙に始めて検出された 3.6V を閾値刺激とした。
閾値刺激からさらに刺激電圧を上げていくと、12V 付近からは槓杆の振れは一定となった(最
大刺激)
。しかし、スケールを x10 にすると、最大刺激は 55v を示した(図 1)
。担当教官によ
ると、今回使用した刺激装置では x10 使用時の電圧の数値は不正確であるという。そのためこ
こでの最大刺激は x1 使用時の数値である 12V としたが、以後の実験はすべて x10 で行った。
2)最大刺激を用い、1Hz で連続的に筋試料を刺激することで、上り階段現象を観察することが出
来た(図 1 右端)
。
◇ 実験2:強さ−時間曲線
時間[ms]
グラフ1.刺激持続時間と閾値との関係
閾値[V]
0.1
7.8
0.5
4.0
1.0
3.6
1.5
3.2
2.0
3.2
2.5
3.2
3.0
3.2
閾値[V]
刺激持続
9.0
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
刺激持続時間[ms]
2.5
3.0
3.5
◇ 実験3:収縮の加重および強縮
図 2.単収縮の加重と不完全強縮および完全強縮
1)1Hz と 2Hz では、一回の電気刺激に伴って一回収縮する単収縮が観察された。
2)5Hz では、一回の単収縮が完全に収縮する前に、次の収縮が重なって(加重)
、不完全強縮を起
こしている。また、10Hz∼50Hz では、一回一回の単収縮が区別できなくなり、完全強縮を起
こしている様子が観察できる。100Hz では 50Hz のときと張力はほぼ同じであるが、ピークを
過ぎるとすぐに弛緩してしまっている。
3)今回の実験では、潜伏加重による収縮を観察することは出来なかった。
◇ 実験4:筋肉の仕事
重り
荷重 w
高さ h
仕事
[個]
[g]
[mm]
w×h
0
0.0
120
0
1
63.4
96
6086
2
126.8
72
9130
3
190.2
60
11412
4
253.6
60
15216
5
317.0
52
16484
6
380.4
44
16738
7
443.8
40
17752
表 1.後荷重法による実験
重り
荷重 w
高さ h
仕事
[個]
[g]
[mm]
w×h
0
0.0
130
0
1
63.4
101
6431
2
126.8
80
10144
3
190.2
64
12227
4
253.6
54
13767
5
317.0
43
13586
6
380.4
37
14129
7
443.8
24
10778
8
507.2
1
725
表 2.直接荷重法による実験
この実験結果をそれぞれ、縦軸に筋肉のなした仕事を、横軸に筋肉にかけた負荷をとり、実験
データをプロットする(次項 グラフ 2,3)
。
グラフ2.後荷重法
仕事 [w×h]
20000
15000
10000
5000
0
0
1
2
3
4
重り [個]
5
6
7
8
5
6
7
8
グラフ3.直接荷重法
仕事 [w×h]
20000
15000
10000
5000
0
0
1
図 3.後荷重法による実験
2
3
4
重り [個]
図 4.直接荷重法による実験
また、直接荷重法による実験で、各荷重における基線の変化(図 4)から静止筋の弾性曲線(負荷
−伸長曲線)が求められる(グラフ 4)
。
筋伸長の長さ [mm]
グラフ4.弾性曲線
70
60
50
40
30
20
10
0
58
50
30
62
54
38
18
0
100
200
300
400
500
負荷 [g]
◇ 実験5:疲労曲線
図 5.疲労曲線
1)収縮を数回反復すると急激に収縮の幅が小さくなり、その後は緩やかに収縮の幅が減少する
様子が観察された。
2)5 分間刺激を中止し再び刺激を開始すると、最初の数回の収縮の幅は 1 回目の反復刺激時の
幅と同様なまでに回復したがすぐに急激に減少し、再び緩やかに減少する状態となった。
3)この実験を繰り返すと、再開直後には収縮の幅は回復するが、その後の収縮の幅は限りなく
小さなものとなった。刺激の強さを大きくすると、やや収縮の幅が大きくなった。
■ DISCUSSION and QUESTIONS
◇ 実験1:刺激閾値および刺激の強さと収縮高
上り階段現象の機序については、実験 5 の Q7 に示した。
Q1:刺激強度増加とともに収縮高が増すのはなぜか考える。
筋活動が段階的に増減するのは、一部は活動する運動単位の数の増減による。そのほか、個々
の単収縮中に発生した張力よりは強縮中の張力が大きいことから、筋活動の段階化には各神経
線維の興奮の頻度も一役を担っていることになる。さらに筋の長さも 1 つの要因である。最後
に運動単位は非同期的に興奮している(すなわち互いに同時に興奮していない)
。このように非
同期的に興奮しているので個々の筋線維の収縮が筋全体としての円滑な収縮に融合する。
◇ 実験2:強さ−時間曲線
筋細胞の静止電位を通電などによって十分に脱分極すると、収縮が起こる。実験ではこの現象
を利用し、ちょうど検出できる程度の収縮を起こすのに必要な脱分極の程度(よってこれを閾
値とするのは不適切かもしれない)を求め、グラフ 1 に示した。グラフから、時間が短いほど
強い脱分極を必要としていることがわかる。
Weiss の式よりこの実験における時値を求める。時値とは i=2a のときのパルスの持続時間(t)
の値 b/a のことである(下記 Q3 参照)
。グラフより a=2.2、b=2 が求まる。
よって、
時値(t)= b/a = 0.91
となった。
Q2:基電圧(基電流)
、時値とはなにか。
神経や筋を種々の強さの直流電流で刺激するとき、ある強さの電流が反応を起こすためには、
必要最小限の時間だけ流さねばならない。この時間を利用時という。一般に電流の強さが減少
すれば、利用時は長くなるが、ある強さ以下ではいかに長く通電しても有効でない。限界の強
さの電流を基電流といい、それに対する利用時を主利用時という。基電流の 2 倍の強さの電流
に対する利用時を時値という。
Q3:Weiss の式について説明すること。
末梢神経や横紋筋のような興奮性組織に電流のパルスを与えて刺激するとき、そのパルスの持
続時間(t)が短いほど、強い電流値を用いなければ興奮の閾値には達しない。閾値に達したと
きの強さ(i)と、そのときのパルスの持続時間(t)との関係を示したものを、強さ期間曲線と
いい、一般に
i
a
b
(Weiss の式)で表される。この式で a は、パルスの持続時間(t)を
t
無限大にしたときの強さ(i)の値で基電圧(基電流)とよばれ、i=2a のときのパルスの持続時
間(t)の値 b/a を時値とよんでいる。
◇ 実験3:収縮の加重および強縮
筋線維は、1 回の刺激ではどんなに強い刺激でも収縮を起こさないことがある。すなわち閾値
が無限大のようにみえることがある。しかし刺激を何回か反復していると収縮が起こることが
あり、閾下刺激の効果が加重されたものとみなし、これを潜伏加重 latent addition という。
今回の実験では潜伏加重を観察することはできなかった。これは、閾値の設定や、刺激頻度の
設定が適切でなかったことが予想されるが定かではない。
Q4:収縮の加重が起こるのはどのような条件か、加重が起こらない条件はどうか。
筋線維はスパイク電位の上昇期と下降期の一部においてのみ電気的に不応期にある。この時期
はちょうど最初刺激によって起こった収縮が始まっている時期である。しかしながら、収縮機
構には不応期がないから、弛緩が起こる前の反復刺激は収縮要素の活動を追加させ、既に起こ
っている収縮にさらに収縮を付け加えることになる。この現象は収縮の加重 summation of
contraction として知られている。加重によって発生した張力は単収縮中に発生した張力よりは
著しく大きい。
収縮の加重が起こる刺激頻度は、研究の対象としている特定の筋の単収縮の持続時間が 10ms
ならば、1/10ms(すなわち 100/s の頻度)未満の反復刺激では、完全な弛緩で中断された個々
別々の収縮が起こるであろうし、100/s を超える頻度の刺激では加重を起こすであろう。
Q5:完全収縮を起こすに必要な最小刺激頻度はどのような条件によって決まるか考える。
高頻度で反復刺激すると、弛緩が起こらないうちに収縮が反復して起こり、1 つ 1 つの収縮が
1 つの連続した収縮に融合する。このような収縮を強縮 tetanus という。刺激と刺激との間に弛
緩が起こらないとき、これを完全強縮 complete tetanus といい、収縮の加重の間に不完全なが
ら弛緩があるときはこれを不完全強縮 incomplete tetanus という。完全強縮の時に起こる張力は
1 回の単収縮の張力の約 4 倍である。
◇ 実験4:筋肉の仕事
静止状態にある筋を引き伸ばすと、グラフ 4 のような張力を発生した。この張力を静止張力
resting tension と呼び、この実験のように全筋の場合には、静止張力のかなりの部分が筋細胞と
平行に走る結合組織の弾性に由来すると考えられているが、単一筋線維を取り出しても、なお
静止張力は残る。これは、① 筋細胞膜、② 小胞体、③ 筋細胞内弾性タンパク質、コネクチン
(タイチン)、④ 静止期にも実は少量存在するかもしれない収縮反応、などによって説明され
ている。
Q6:骨格筋の発生する仕事を調節する機序について、本実験の結果から考察する。
実験 1∼3 までの結果から、刺激の強さ、刺激の持続時間、刺激の頻度が骨格筋の収縮(仕事)
を調節していることがわかった。さらに、この実験から刺激前の筋長も、静止張力などによっ
て仕事を調節していることがわかった。
◇ 実験5:疲労曲線
Q7:階段現象の原因について考える。
強縮を起こす頻度よりごくわずか低い頻度で一連の最大強度の刺激を骨格筋に与えると、毎回
の単収縮の張力が次第に増加し、数回の収縮を繰り返した後に各回の単収縮が一定の張力にな
る。これは階段現象 staircase phenomenon として知られている現象である。この現象は心筋で
も見られる。階段現象はトロポニン C への Ca2+の結合が増大するためと考えられている。
Q8:疲労の実験に最大刺激を用いる理由はなにか。
運動単位は同期的には興奮していないので、最大刺激以下では、全運動単位を興奮させること
は出来ない。興奮していない運動単位は潜伏加重などでノイズとして実験結果に影響してしま
う。最大刺激を用いて全運動単位を興奮させることでノイズのない正確な結果を得ることがで
きる。
Q9:疲労の原因について考える。
繰り返し筋収縮を起こしたときの張力低下は、概ね三つの相から成るといわれている。第 1 相
では急速に 80%程度まで張力が減少する。次いで第 2 相では比較的緩徐な張力低下が持続的に
起こり、第 3 相に達すると急速に張力が低下する。
第 1 相から第 2 相にかけての初期張力低下は、細胞内 Ca 濃度変化の減少を伴わないことと、
酸化と Pi が張力低下を起こすことが知られていたので、細胞内酸性化と Pi 濃度上昇が疲労の原
因と考えられた。ただし、ほ乳類骨格筋では生理的な温度(37℃)において細胞質酸性化の効
果はほとんどないことが示され、初期の疲労効果の大部分が Pi の効果ではないかと考えられて
いる。
第 3 相では、細胞内 Ca 濃度上昇自体が低下してくる。この時期には、クレアチンリン酸も枯
渇し ATP が減少して ADP が増加してくる。また、ATP に比較的強く結合していた Mg が遊離
して細胞内濃度が増加してくる。このような ATP の減少あるいは Mg 濃度の増加が興奮収縮連
関を抑制して筋小胞体からの Ca 放出を抑制するのが、第 3 相の疲労の原因と考えられている。
■ REFERENCES
・飯野正光:筋肉とその収縮、標準生理学 第5版、p91-111、株式会社 医学書院、東京、2003
・中村嘉男:興奮性組織;筋肉、医科生理学展望 原書 18 版、p65-85、株式会社 丸善、東京、1998
・南山堂医学大辞典 第 18 版:鈴木肇、株式会社 南山堂、東京、1998
・最新医学大辞典 第2版:後藤 稠、株式会社 医歯薬出版、東京、1997
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