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ヤマブシタケ栽培マニュアル(PDF:3480KB)

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ヤマブシタケ栽培マニュアル(PDF:3480KB)
t
〔はじめに
長野県林業総合センターでは、キノコの新品目の開発に取り組んでいる。そのなかで、ヤマ
ブ、シタケについて品種の育成と栽培方法の検討を行った。
野生株かう優良な-晶種を選抜した。試験研究に加えて、現地適応性の検討、市場調査等を
行った結果、普及の可能性が見い出されたので「栽培マニュアル」を発行した。
D
t
ヤマブシタケとは
サンゴ八リタケ科サンゴハリタケ属に分類され、傘をつくらす、長さ数センチ程度の針を垂
れ下がらせる白くて球状のきの乙である。
9月かう 10月にかけて、ブナ、ミズナラなどの広葉樹の倒木や、立ち枯れた木の幹、高い
梢に発生する。山伏が胸にかけているふさに似ているところから、この名前がついたと言われ
ている。
昧、香りは淡泊-温和で、軽く湯通しして二杯酢、三杯酢、ホワイトソースなどであえ物に
すると風昧が損なわれす美昧しい。そのほか、お吸い物、すきやき、妙め物などにも適する。
中国では古くから食用、薬用として人気がある。
近年、キノコ類は免疫力を高める成分を含み、健康食晶としても見直されている。ヤマブシ
タケも神経細胞生長因子の生合成を促進する物質を含むことがわかっており、機能性食品とし
ても注目されてきた。
菌床栽培(ビン栽培)
L
ヤマブシタケ菌の性質
】
0
菌糸体の伸長は、 25C付近で最大になる。また、菌糸体の伸長を最大にするオガコ培地の
含水率は、 60"'-'62%であり、一般の栽培キノコよりやや低い。好適な子実体発生温度は、子
0
実体の形状を整えるため 12C程度が妥当である。
】
l
L
栽培法
(1)栽培方式
培養期間が短くてよく、基本的には空調施設を利用し、機械化した集約的な栽培体系に適す
る。しかし、子実体の形状などの品質を多少犠牲にすれば、簡易な施設による組放的芯方式で
も十分可能である。
野生昧のあるキノコ芯ので、秋の野生キノコの時期に地域の特産品としての販売に向いてい
る
。
〔ャマブシタケのピン栽活工程 】
開閉
•
オガコ:栄養材 =
1
0
:
2 ビ
ン
常圧殺菌
水 6
2
"
"
'
6
3
%
8
0
0
c
c
広口ビ‘ン
5
5
0
"
"
'
6
0
0
9
高圧殺菌
調整・包装
褐色に変色する前
一昼夜
種菌接種量
1
5
c
c
程度
温度
1
0
.
.
.
.
.
.
1
2
.
C
湿度 90%以 上
温度 1
S
.
.
.
.
.
.
2
0
.
C
2
0
"
"
"
3
0日間
(
2
)培地調整
オガコはブナが最適であるが、大部分の広葉樹も利用できる 。スギでも加水堆積したもので
あれば、広葉樹に比較して大きな収量減はない。栄養材は、 トウモロコシヌ力系(コーンプラ
ン、スーパープラン)が適する。コメヌ力、フスマは、多く混用すると収量減となる 。
2
6
3
%程
オガコと栄養材の混合は容積比で 10対2が標準である 。含水率は湿量基準で 6
度のやや少なめがよい。
ビンとしては、口径 52mmで容量 8
0
0
8
5
0
c
c程度のブナシメジ用でよい。 1ビン当り
5
5
0
6
0
0
g
程度が標準で、中央には 1.
5
-2m
m程度の接種孔を空けておく 。
(
3
)殺菌・冷却
0
詰め終えた培地は直ちに殺菌を行う。殺菌には水蒸気が用いうれ、培地温度が 100C付 近
0
で 3時間行う常圧殺菌と圧力容器で 120Cまで上げる高圧殺菌のどちうでもよい。
殺菌の完了した培地は余熱のあるうちに殺菌釜から取り出し、ピン外周や栓を乾燥させると
ともに、清潔な場所で 20C以下に冷却する。
0
(
4
)種菌接種
種菌は 800ccビ、ンで 20日間程度培養し、菌糸がビン全体に蔓延した直後の新しいものを使
用する 。害菌の混入していないことを確認して、最上部表面を掻き出して捨て、その下の部分
程度あれば十分である 。
から接種源を取る 。接種量は、 15cc
(
5
)培 養
o
8
2
0Cである。培養中の発熱や害菌対策上
培養温度は、空調施設で人工調節する場合、 1
5
2
6Cより低く設定するのが標準である 。培養期間は、
から、菌糸伸長量が最大になる 2
0
2
0
3
0日間程度が妥当である。
ヤマブシタケ(拡大)
(
6
)発生
ヤマブシタケは、培養段階で菌糸が培地内に蔓延していくと同時に、接種面から上方にマッ
ト状の菌塊が発達し子実体となる 。培養したまま放置すると子実体が容易にビンの栓を持ち上
げてしまう 。 したがって、マット状の菌塊がビン栓を持ち上げる直前が、発生にかける適期で
ある 。
菌塊がビンを持ち上げてしまった場合は、菌塊を - 8剥ぎ取ってから発生にかけた方が、形
状のよい子実体が収穫できる 。
発生室は、加湿器により空中湿度を 90%
以上に保つ。温度は、 1
0
.
.
.
.
.
.
.
12C程度の低温にす
0
ると、子実体の針が発達し、ヤマブシタケ本来の形状が得られる 。 1
4
.
.
.
.
.
.
.
1
5Cでは、収穫まで
0
に要する期間は、数日短くなるが、子実体の針が形成されにくく、サンゴ様の子実体の発生比
率が高くなる 。光は、数十ルクス程度で十分である。順調に発生すれば、発生処理日から収穫
まで 20.
.
.
.25日程度である 。収量は、 800cc1ビン当り 120g程度である 。 2番収穫も可能
であるが激減するため、 1回取りが妥当である 。
(7) 収穫・出荷
幼子実体は、薄いピンク色を呈するが、生長にしたがい白色となる 。さらに白色から薄い褐
色を呈するようになるため、針が形成し白色のうちに収穫するのが妥当である 。全体としては、
球状になるため、 1玉ごとに収穫して、イチゴパックやトレイなどに詰めて販売する方法があ
る。また、健康補助食品等の原料として、収穫物を乾燥して出荷する例もある 。
発生状況(空調施設)
l
〔特性データ
(
増野和彦・小出博志 菌床栽培用きのこの育種と栽培技術の改良、長野県林業総合センター研究報告第 12号より )
温度と菌糸体伸長
町1
円1
30
菌糸体伸長量 (7日間)
25
20
15
10
5
O
O
5
10
15
20
25
35
30
40
温度 C
C)
ヤマブシタケ温度別菌糸体伸長量
(POA培地)
培養日数と収量
20
24
30
36
40
培養日数
ヤマブシタケ培養日数と収量(生重量)
オガコ :スーパープラン =10:
2 培養温度 ・20
"
C 発生温度 :1
2"
C
差
偏
準
標
16
±
20
ー
T
工・
ー
上
・
40
O
O
ナギ値
均
平
吾-
60
呈三
-ス
T
ー
上
・・
ー
+
80
E呈呈
一・
宇
ム
・
収
4杢
100
T
一
e
ei
120
-ブ
T
I
-L 上
-
140
・
g/ビ
ン
│
】
オガコ樹種と子実体等級区分
スギオガコ
ブナオガコ
0%
20%
40%
60%
80%
100%
比率
オガコ樹種と子実体等級区分
発生温度と子実体等級区分
「ー
0
15C
ト
0
12C
0%
20%
40%
80%
60%
100%
比率
発生温度と子実体等級区分
ヤマブシタケ子実体の等級区分基準
等級
A
基
準
針がほぼ全体に形成、褐変がない、収量70g
以上
B 針形成が全体の半分以上あるが未形成部分も目立つ、褐変が何ヵ所か目立つ、収量35~69g
C 針形成が全体の半分以下、褐変が著しく目立つ、収量35g
未満
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