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入浴施設の実態調査から見る課題

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入浴施設の実態調査から見る課題
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
第 2 章は、入浴施設での各種実態調査に基づく解析と課題、動向の把握であ
る。
1998 年の東京都目黒区内の特別養護老人ホームの循環式浴槽を感染源とす
る死亡を伴うレジオネラ症集団感染をうけて、98 年度に厚生科学研究費補助金
で設置された委員会で実態調査をした。「1. 社会福祉施設」は、98 年の調査の
後追い調査をまとめ直したもので、2004 年度と 05 年度に厚生労働科学研究費
補助金で設置された研究部会での研究成果を用いた。これまで 04 年度と 05 年
度の調査を総括して解析したことはなく、最近の現状と傾向が把握できた。
「2. 化学的洗浄後の循環系でのレジオネラ属菌等の推移」と「3. 化学的洗浄
後のろ過器内でのレジオネラ属菌等の推移」は、2001 年度の厚生科学研究費補
助金で設置された委員会で実態調査を中心にまとめた。浴槽水を感染源とする
レジオネラ症の防止には消毒が重要であるが、本調査は、我が国の残留塩素保
持時間の規定を変更した重要な調査である。
「4. 化学的洗浄による安全・衛生・快適性の向上」で触れた化学的洗浄は、「2.
化学的洗浄後の循環系でのレジオネラ属菌等の推移」と「3. 化学的洗浄後のろ
過器内でのレジオネラ属菌等の推移」の調査開始前にも実施した。過酸化水素に
よる化学的洗浄について、施設での実施事例を挙げて手順や要点をまとめて、
快適性等の向上に寄与することを述べた。
死に水(Dead Leg)は、レジオネラ属菌やレジオネラ属菌の温床となる生物
膜に脆弱であると考えられてきた。「5. 死に水部分の微生物汚染」は、死に水の
事例としてのレベル管の実態調査と考察である。
49
第2章
1.
入浴施設の実態調査から見る課題
社会福祉施設
1.1 はじめに
1998 年(平成 10 年)5 月に、東京都目黒区内の特別養護老人ホームで循環
式浴槽を感染源としたレジオネラ症集団感染があった。この事故は、患者の喀痰
と浴槽水から Legionella pneumophila ・SG5 が検出され、両菌株は分子遺伝
子学的にも一致したために浴槽水を感染源と判定した
1) 2)
。この事故での発症
者は 12 人で、うち 1 人が死亡した。
これを受けて、1998 年度(平成 10 年度)に東京都衛生局生活環境部環境指
導課が、特別養護老人ホームの浴槽の実態調査をした。翌 99 年(平成 11 年)
7 月 12 日に、「特別養護老人ホームの浴槽水等におけるレジオネラ属菌の生息
実態調査について」を発表した。
また 1999 年度(平成 11 年度)の厚生科学研究費補助金(厚生科学特別研究事
業)で、(財)ビル管理教育センターに設置された社会福祉施設における循環式浴
槽の実態調査委員会で、調査を行った。
東京都衛生局と(財)ビル管理教育センターの調査委員会での調査結果の概要
は、表-2.1.1 である。
(財)ビル管理教育センターの調査委員会が実施した調査結果は、つぎの通り
である。関東地区での調査の最高菌数は 6.6×105CFU/100mL で、関西地区は
2.9×105CFU/100mL であった。以後の研究でレジオネラ症集団感染の閾値と
された 1.0×104CFU/100mL 以上の試料は、関東が 75 試料のうち 13 試料
(17.3%)、関西が 125 試料のうち 13 試料(10.4%)、全国調査 94 試料では 9 試
料(9.6%)が該当した。
その後、日帰り温泉施設等でのレジオネラ症集団感染事故を受けて、法令の
改正や行政の積極的な指導があった。ここで実態を調査するために、2004 年度
(平成 16 年度)と 05 年度(平成 17 年度)に、厚生労働科学研究費補助金で(財)
ビル管理教育センターに設置した調査研究部会で、東北地方の社会福祉施設を
中心に実態調査をした
3)4)。本研究はこの調査結果と報告書を参考にして、2
年度分のデータを総括、解析をして記述した。
表-2.1.1 と、04 年度~05 年度の調査結果を踏まえて、実態と課題を考察す
50
第2章
表-2.1.1
入浴施設の実態調査から見る課題
1998 年度と 99 年度の社会福祉施設の実態調査結果
4
調査
時期
調査機関
・委員会等
調査対象
特別養護老人ホー
東京都衛生局 ム・24時間型風呂
98年度 生活環境部環
特別養護老人ホー
境指導課
ム・ろ過器付風呂
(財)ビル管理
教育センター
社会福祉施設
99年度
における循環
式浴槽の実態
調査委員会
関東地区(神奈川
県、埼玉県、千葉
県)
対象
件数
レジオネラ属菌
陽性件数
10 CFU/100mL
以上のレジオネラ
属菌件数
94試料 60試料 ( 63.8% )
―
16試料
―
6試料 ( 37.5% )
75試料 39試料 ( 52.0% ) 13試料 ( 17.3% )
関西地区(大阪市と
堺市を除く大阪府 125試料 60試料 ( 48.0% ) 13試料 ( 10.4% )
内)
全国の都道府県、
政令都市と中核都
市の計95自治体
94試料 60試料 ( 63.8% ) 9試料 ( 9.6% )
4
※ 10 CFU/100mL以上のレジオネラ属菌件数を抽出したのは、下記の資料で
4
10 CFU/100mLを集団感染の閾値としたためである。
倉文明:レジオネラ属菌の管理基準,厚生労働省健康局生活衛生課
第5回全国レジオネラ対策会議資料(2007-3) る。2004 年度~05 年度の調査結果は、後述する表-2.1.5 に示すが、循環式ろ
過装置を設けた浴槽から採水した 47 検体(施設 H の器械浴の検体を除く)の
うち、10 検体(21.3%)からレジオネラ属菌が分離された。表-2.1.1 と較べ
ると、レジオネラ属菌に汚染されている確率が大幅に低下している。
レジオネラ属菌対策は、遊離残留塩素濃度の維持が重要であるが、この調査
での濃度は、時系列で測定すると基準値より低い時間帯が散見された。また高
めの遊離残留塩素濃度も見られた。遊離残留塩素濃度が低いのは、安全面や衛
生面での懸念がある。高めの場合は、快適性が失われることが考えられる。残
留塩素濃度は、第 3 章で詳述する。
1.2 調査施設の概要
調査した施設の用途、所在地や浴槽面積、浴槽容量の他、消毒剤の種類と投
入方法、調査日の入浴者数等を示す。
1.2.1
2004 年度(平成 16 年度)の調査施設
51
第2章
2004 年度調査施設の概要(1)
表-2.1.2a
施設名
施
設
入浴施設の実態調査から見る課題
施 設 B
途
デイサービス
介護老人保健施設
所
在
県
宮城県岩沼市
宮城県仙台市
計
測
日
平成16年12月8日
平成17年3月10日
帯
計
測
1
時
日
入
時
入
用
施 設 A
の
浴
間
者
当
浴
間
数
り 最
者
大
数
9:30 ~ 12:00
9:30 ~ 14:00
男 子 〔人〕
6
16
女 子 〔人〕
27
9
合 計 〔人〕
33
25
男 子 〔人/h〕
0
5
女 子 〔人/h〕
22
6
合 計 〔人/h〕
22
11
67%
44%
類
カートリッジフィルタ+石英斑岩
カートリッジフィルタ+石英斑岩
1 日の入浴者に対する時間最大入 浴者 の比 率〔 %〕
ろ
過
器
気
浴
種
泡
槽
面
積
浴
浴
槽
槽
容
深
量
さ
換
水
日
・
消
消
毒
毒
そ
剤
剤
板
無 し
無 し
〔
m2
〕
6.8
6.6
〔
〔
3
m
m
〕
〕
4.1
3.3
0.60
0.50
間
帯
12月3日(5日前) 朝
3月8日(前々日) 朝
類
ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム顆粒
電解次亜塩素酸
法
浴槽に直接投入
ポーラログラフで制御
時
の
の
投
の
種
入
方
他
施設の概要は、表-2.1.2 の通りである。調査は、冬季に東北地方を中心に実
施した。
用途は、施設 A がデイサービス、施設 B、C、D が介護老人保健施設である。
施設 D では、デイサービスによる入浴も行っており、計測日は、午前中がデイ
サービス利用者、午後に施設入所者が入浴した。
計測日の入浴の状況は、施設 A と施設 C が午前中のみ、施設 B と施設 D は
午前・午後を通して行われた。このために1日の入浴者数に対する時間最大入
浴者数の割合が、施設 A と施設 C は、それぞれ 70%前後となっている。単位
面積当りの時間最大入浴者数を、厚生労働省健康局通知「公衆浴場における衛生
等管理要領」(健発第 0214004 号 平成 15 年 2 月 14 日)にある必要浴槽面積
と比べると、計測日の入浴者数では必要面積の 2.2~4.4 倍確保されていた。
浴槽の特徴として、公衆浴場や宿泊施設等の業務用施設大型浴槽の浴槽深さ
は 600 ㎜の場合が多い。施設 A と施設 D の浴槽深さは 600 ㎜であったが、施
52
第2章
2004 年度調査施設の概要(2)
表-2.1.2b
施設名
施
設
入浴施設の実態調査から見る課題
用
途
施 設 C
施 設 D
介護老人保健施設
介護老人保健施設
所
在
県
岩手県北上市
新潟県新井市
計
測
日
平成17年1月14日
平成17年2月9日
帯
10:00 ~ 14:00
9:20 ~ 15:40
男 子 〔人〕
6
23
女 子 〔人〕
18
30
計
測
1
日
入
時
入
時
の
浴
間
者
当
浴
間
数
り 最
者
大
数
合 計 〔人〕
24
53
男 子 〔人/h〕
0
9
女 子 〔人/h〕
17
6
合 計 〔人/h〕
1 日の入浴者に対する時間最大入 浴者 の比 率〔 %〕
ろ
過
器
気
浴
種
槽
面
積
浴
浴
槽
槽
容
深
量
さ
換
水
日
・
消
消
そ
類
泡
毒
毒
剤
剤
砂
式
砂
式
板
無 し
有 り(900mm×900mm)
7.9
m2
〕
10.4
〔
〔
3
m
m
〕
〕
4.9
3.8
0.47
0.60
間
帯
1月13日(前日) 午後
2月9日(当日) 朝
類
次亜塩素酸ナトリウム
次亜塩素酸ナトリウム
法
ポーラログラフで制御
手動で循環系に注入
時
投
15
28%
〔
の
の
17
71%
種
入
方
の
他
写真-2.1.1
入浴剤使用
施設 B の浴槽
設 B は 500 ㎜、施設 C は 470 ㎜と浅めであった。溺死等の事故防止や介助し
やすさから浅めの浴槽深さとしていると推測する。
入浴しやすさを考慮して、階段やスロープを設置している。施設 A と施設 B
53
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
写真-2.1.2
施設 C の浴槽
写真-2.1.3
施設 D の浴槽
は公衆浴場や宿泊施設等の一般の浴槽で用いられるのと同様の腰掛を兼ねた上
がり框(かまち)状の階段がある(写真-2.1.1)。施設 C はスロープを設置し
ている(写真-2.1.2)。施設 D は、全体に蹴上げの低い階段を雛壇(ひなだん)
状に設置している(写真-2.1.3)。
施設 D には、900 ㎜×900 ㎜の気泡板(いわゆるバイブラマット)が設置さ
れており、入浴時間帯に実際に使用されている。ろ過器の種類は、施設 A と施
設 B がカートリッジフィルタと石英斑岩(いわゆる麦飯石)との組み合わせ、
54
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
施設 C と施設 D は砂式である。
消毒剤の種類は、施設 A がジクロロイソシアヌル酸ナトリウム顆粒、施設 B
が電解次亜塩素酸、施設 C と施設 D が次亜塩素酸ナトリウムである。消毒剤の
添加方法では、施設 B と施設 C はポーラログラフ電極式で遊離残留塩素濃度を
検出して自動的に注入している。施設 A は朝にジクロロイソシアヌル酸ナトリ
ウム顆粒を浴槽に投入している。施設 D は、手動で薬注ポンプを稼動させ、次
亜塩素酸ナトリウムを注入している。
施設 D では、入浴剤を投入している。計測日は午前中に投入し、午後は 14
時 00 分~14 時 30 分の間にも追加投入した。入浴剤は炭酸水素ナトリウム(重
曹)と硫酸ナトリウム(芒硝)が主成分で、赤色を呈している。施設 D は、多
くの補給水を入れており、午前中はホースにて 2 時間程度加水していた。また
13 時~14 時までの約1時間、機械室に設置されている補給用二方弁を作動さ
せて補給していた。
1.2.2
2005 年度(平成 17 年度)の調査施設
施設の概要は、表-2.1.3 の通りである。夏季、秋季と冬季に中部地方(愛知
県)、東北地方(福島県会津地方)と北海道で調査を実施した。
施設 G(写真-2.1.4)と施設 I(写真-2.1.5)はデイサービス、施設 H、施
設 K(写真-2.1.6)と施設 L(写真-2.1.7)は介護老人保健施設である。また、
比較のために対照施設として、社会福祉施設以外の施設(リゾートホテル)で
も調査した。
中部地方(愛知県)の2つの社会福祉施設では、夏季と秋季の 2 度にわたっ
て調査を実施した。北海道の 1 施設・2 循環系統の社会福祉施設と、1施設・2
循環系統のリゾートホテルでは夏季と冬季の 2 度調査を行った。福島県会津地
方の 2 施設・3 循環系統は、秋季に 1 度だけ調査を行った。
施設 G の消毒方法は、夏季と秋季で異なり、夏季が次亜塩素酸ナトリウムの
み、秋季が次亜塩素酸ナトリウムと二酸化塩素の混合注入である。施設 J の大
浴槽は、夏季と冬季では消毒剤の注入方法が異なり、夏季は定量注入、冬季は
ポーラログラフ式遊離残留塩素濃度計で計測して自動注入を行っていた。
55
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
消毒方法は、次亜塩素酸ナトリウムによるものがほとんどである。前述した施
設 G の秋季と施設 J(リゾートホテル)2 系統は、次亜塩素酸ナトリウムと二
酸化塩素の混合注入である。施設 K は、オゾンと次亜塩素酸ナトリウムの組み
合わせである。
ろ過器の形式は、施設 J(リゾートホテル)2 系統が砂式と溶解性風化鉱石
(人工温泉)ろ過式との組み合わせ、社会福祉施設は全て砂式である。
社会福祉施設であるために中部地方(愛知県)の 2 施設と北海道の 1 施設の浴
槽には、スロープが設けられていた。福島県会津地方の浴槽は、階段であった。
愛知県三河地方のデイサービス(施設 G)のスロープ部(写真-2.1.8)の浴槽
2005 年度調査施設の概要(1)
表-2.1.3a
施
設
施
名
設
用
所
在
ろ
過
器
種
気
泡
板
・
浴
槽
面
積
〔
浴
浴
槽
槽
容
深
量
さ
〔
〔
消
毒
消
毒
剤
の
計
測
夏 1
入
季
時
入
日
浴
間
時
の
者
当
浴
り 最
者
計
数
大
数
測
1
時
日
入
浴
間
当
浴
の
者
り 最
者
数
大
数
介護老人保健施設
愛知県三河地方
愛知県名古屋市
式
砂
式
無 し
m2
〕
15.1
13.7
m3
m
〕
〕
4.5
6.7
0.42
0.59
類
(夏)次亜塩素酸ナトリウム
(秋)次亜塩素酸ナトリウム
+ 二酸化塩素
次亜塩素酸ナトリウム
法
ポーラログラフで制御
ポーラログラフで制御
日
平成17年8月23日
平成17年8月25日
帯
9:00 ~ 12:00
9:30 ~ 16:30
種
入
砂
超音波・気泡共有り
方
間
男 子 〔人〕
3
女 子 〔人〕
9
合 計 〔人〕
12
男 子 〔人/h〕
0
女 子 〔人/h〕
5
合 計 〔人/h〕
5
測
計
時
入
投
デイサービス
地
波
測
計
秋
季
・
冬
季
音
の
施 設 H
類
超
剤
施 設 G
途
日
平成17年10月26日
平成17年10月28日
帯
9:00 ~ 11:30
10:00 ~ 17:15
4
7
女 子 〔人〕
9
22
合 計 〔人〕
13
29
男 子 〔人/h〕
0
0
女 子 〔人/h〕
5
10
合 計 〔人/h〕
5
10
間
男 子 〔人〕
56
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
水は、循環の影響を受けて、浴槽との湯が入れ替わっていた。しかし愛知県名
古屋市の介護老人保健施設(施設 H)と北海道石狩地方のデイサービス(施設
I)のスロープ部(写真-2.1.9)は、多少死に水に近い状況になっていた。スロ
ープや階段と洗い場の見切り部で、つまずき防止のために上縁が途切れていて、
洗い場の水が浴槽に流れ込む形状が見受けられる場合がある。しかし、今回調
査した浴槽では、スロープを設けてある浴槽全てが入口部にグレーチングを設
けて、洗い場の水の流入防止の措置を取っていた。また階段を設けている浴槽
では、上縁を設けていた(写真-2.1.10 は施設 K)。
気泡浴や超音波浴の設置状況は、施設 G が気泡浴と超音波浴の双方を設置し
2005 年度調査施設の概要(2)
表-2.1.3b
施
設
施
名
設
用
所
在
ろ
過
器
種
気
泡
板
・
浴
槽
面
積
浴
浴
槽
槽
消
容
深
毒
消
毒
超
量
さ
剤
剤
の
計
音
測
夏 1
入
季 時
入
日
浴
間
時
の
者
当
浴
り 最
者
数
大
数
地
北海道石狩地方
類
砂
砂
超音波有り
超音波有り
〕
17.1
17.1
〔
〔
3
〕
〕
6.6
6.6
0.50
0.50
類
次亜塩素酸ナトリウム
次亜塩素酸ナトリウム
法
定量注入
定量注入
m
m
種
入
方
平成17年8月30日
日
間
帯
10:00 ~ 12:00
10:00 ~ 12:00
男 子 〔人〕
7
0
女 子 〔人〕
0
19
合 計 〔人〕
7
19
男 子 〔人/h〕
4
0
女 子 〔人/h〕
0
8
4
8
換
水
日
平成17年8月29日
計
測
日
平成17年12月20日
計
測
1
日
入
時
入
換
浴
間
当
浴
時
の
者
り 最
者
数
大
数
水
式
波
合 計 〔人/h〕
秋
季
・
冬
季
式
m2
測
計
施 設 I (女子系統)
デイサービス
〔
の
投
施 設 I (男子系統)
途
間
帯
10:00 ~ 11:30
10:00 ~ 11:00
男 子 〔人〕
14
0
女 子 〔人〕
0
12
合 計 〔人〕
14
12
男 子 〔人/h〕
7
0
女 子 〔人/h〕
0
8
合 計 〔人/h〕
7
8
日
57
平成17年12月19日
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
ている。施設 I の 2 浴槽系統と施設 L の 2 浴槽系統には、超音波浴が設置され
ている。またリゾートホテルのなかの1系統には気泡浴を取り入れている。施
設 I の気泡浴槽には、入浴剤を投入している。今回調査した社会福祉施設の浴
槽では、むしろ、気泡浴装置や超音波浴装置がないほうが少なかった。
計測日の入浴の時間帯は、デイサービスの施設 G と施設 I は午前中のみ、介
護老人保健施設の施設 H と施設 K は午前・午後を通して、施設 L は午後のみ
であった。また対照施設の施設 J は、正午前後(夏季は 11 時、冬季は 13 時)
から深夜・午前1時(25 時)までであった。
2005 年度調査施設の概要(3)
表-2.1.3c
施
設
施
名 施 設 J (大浴槽系統)
設
用
所
途
在
ろ
過
気
器
泡
板
種
・
超
音
無 し
気泡板有り
〕
52.3
14.1
〕
〕
32.9
8.1
槽
面
積
〔
m
槽
槽
容
深
量
さ
〔
〔
m3
m
消
毒
剤
剤
の
の
そ
投
方
の
計
測
夏 1
入
季 時
入
日
浴
間
時
の
者
当
浴
り 最
者
0.63
0.57
類
次亜塩素酸ナトリウム
+ 二酸化塩素
次亜塩素酸ナトリウム
+ 二酸化塩素
法
(夏)定量注入
(冬)ポーラログラフで制御
定量注入
他
測
計
秋
季
・
冬
季
種
入
北海道後志地方
砂式 + 溶解性風化鉱石ろ過(人工温泉)
波
浴
浴
毒
地
類
2
浴
消
数
大
数
帯
136
136
158
158
合 計 〔人〕
294
294
男 子 〔人/h〕
29
29
女 子 〔人/h〕
24
24
合 計 〔人/h〕
53
53
水
日
日
1
日
入
時
入
換
浴
間
当
浴
の
者
り 最
者
数
大
数
水
9:20 ~ 15:40
男 子 〔人〕
測
時
平成17年9月1日
9:20 ~ 15:40
女 子 〔人〕
換
測
入浴剤使用
日
間
計
計
施 設 J (気泡浴系統)
リゾートホテル(対照施設)
間
帯
平成17年8月28日
平成17年9月1日
平成18年1月11日
13:00 ~ 25:00
13:00 ~ 25:00
男 子 〔人〕
176
176
女 子 〔人〕
138
138
合 計 〔人〕
314
314
男 子 〔人/h〕
42
42
女 子 〔人/h〕
29
29
合 計 〔人/h〕
71
71
平成18年1月9日
平成18年1月11日
日
58
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
半日だけ入浴する施設では、1 日の入浴者数に対する時間最大入浴者数の割
2005 年度調査施設の概要(4)
表-2.1.3d
施
設
施
設
用
所
在
ろ
過
器
種
気
泡
板
・
浴
槽
面
積
浴
浴
槽
槽
消
容
深
毒
消
剤
毒
剤
測
1
入
無 し
7.1
〔
〔
3
〕
〕
0.65
m
m
種
入
方
時
入
間
者
当
浴
間
数
り 最
者
4.6
類
オゾン+
次亜塩素酸ナトリウム
法
タイマー注入
他
の
浴
式
〕
時
日
砂
波
測
計
福島県会津地方
m2
投
大
数
日
平成17年11月21日
帯
9:00 ~ 15:30
男 子 〔人〕
3
女 子 〔人〕
13
合 計 〔人〕
16
男 子 〔人/h〕
0
女 子 〔人/h〕
6
合 計 〔人/h〕
換
水
施
設
施
設
用
所
在
ろ
過
器
種
気
泡
板
・
浴
槽
面
積
浴
浴
槽
槽
消
容
深
毒
消
毒
超
量
さ
剤
剤
音
投
測
1
日
入
時
入
換
浴
間
当
浴
時
の
者
り 最
者
数
大
数
水
名
施 設 L (男子系統)
施 設 L (女子系統)
途
介護老人保健施設
地
福島県会津地方
類
砂
波
超音波有り
超音波有り
8.8
式
砂
式
〕
12.0
〔
〔
3
〕
〕
8.8
6.3
0.73
0.72
類
次亜塩素酸ナトリウム
次亜塩素酸ナトリウム
法
タイマー注入
タイマー注入
他
入浴なし
m
m
種
入
方
測
計
平成17年11月21日
m2
の
計
6
日
〔
の
の
そ
秋
季
・
冬
季
音
の
計
秋
季
・
冬
季
地
〔
の
の
そ
施 設 K
介護老人保健施設
類
超
量
さ
名
途
日
間
帯
平成17年11月22日
13:30 ~ 15:00
13:30 ~ 15:00
男 子 〔人〕
8
0
女 子 〔人〕
30
0
合 計 〔人〕
38
0
男 子 〔人/h〕
0
0
女 子 〔人/h〕
30
0
合 計 〔人/h〕
30
0
日
59
平成17年11月17日
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
合が、4 割~8 割と高い値になっている。午前と午後にわたって入浴をしてい
る社会福祉施設では、1 日の入浴者数に対する時間最大入浴者数の割合が、30%
台となっている。また入浴時間帯を長く取っているリゾートホテルの 1 日の入
浴者数に対する時間最大入浴者数の割合は、夏季も冬季も 20%前後となってい
る。
単位面積当りの時間最大入浴者数を、厚生労働省健康局通知「公衆浴場におけ
る衛生等管理要領」(健発第 0214004 号 平成 15 年 2 月 14 日)にある必要浴
写真-2.1.4
施設 G の浴槽
写真-2.1.5
施設 I の浴槽
60
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
槽面積と比べると、計測日の入浴者数では、社会福祉施設が必要面積の 2.9~
30.5 倍確保されていた。
浴槽の特徴として、公衆浴場や宿泊施設等の業務用施設大型浴槽の浴槽深さ
は 600 ㎜の場合が多い。社会福祉施設のうち中部地方(愛知県)と北海道の浴
槽深さは 420~590 ㎜と浅めであったが、福島県会津地方の社会福祉施設の浴
槽深さは 650~730 ㎜と一般の業務用浴槽より深めであった。一方、北海道の
リゾートホテルの浴槽深さは、570~630 ㎜である。2004 年度に調査した 4 つ
写真-2.1.6
写真-2.1.7
施設 K の浴槽
施設 L の浴槽
61
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
の社会福祉施設の浴槽深さは、450 ㎜が 1 槽、500 ㎜が 1 槽で 600 ㎜が 2 槽で
あった。
社会福祉施設の浴槽深さは、溺死防止や介助しやすさから浅めの浴槽とする
ことが多い。04 年度と 05 年度実測した施設の浴槽深さを見ると、福島県会津
地方の施設の浴槽は、何れも深いと判断できる。これは、浴槽への出入りしや
すさや安全性向上のためにスロープや階段を設けることがほとんどであるが、
福島県会津地方の浴槽は何れも階段を用いていることにも影響していると推測
する。
写真-2.1.8
施設 G のスロープ
写真-2.1.9
施設 I のスロープ
62
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
写真-2.1.10 施設 K の階段
1.3 浴槽水質等の推移
塩素濃度の計測は現地で行い、その他の化学的な水質検査と微生物検査は、
持ち帰って行った。微生物検査用の検水には、採水後すぐにチオ硫酸ナトリウ
ムを添加し、塩素分を中和した。
1.3.1
2004 年度(平成 16 年度)の調査施設
各々の施設で、入浴開始時から終了時まで、30 分ごとに水質調査をした。化
学的な調査項目は、pH、電気伝導率、濁度、色度、アンモニア性窒素、塩素イ
オン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、過マンガン酸
カリウム消費量、TOC、遊離残留塩素や総残留塩素である。微生物の調査項目
は、一般細菌、大腸菌群、緑膿菌とレジオネラ属菌である。
測定結果の例として、表-2.1.4 に施設 C のデータを示す。この中で、時刻に
よって変動の見られた水質項目と代表的な項目を抽出してグラフ化したものが、
図-2.1.1~図-2.1.4 である。以下に水質項目を抽出して、解説する。
「公衆浴場における水質基準等に関する指針」(健発第 0214004 号 平成 15
年 2 月 14 日)では『濁度は 5 度以下であること』としている。今回の調査で、
施設 D では入浴剤を添加していたために吸光度を計測した。残りの 3 施設は、
63
第2章
表-2.1.4
電気伝導率
(カッコ内は水温)
(μS/cm)
(℃)
濁度
アンモニア性窒素
(度)
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
塩素イオン
硝酸イオン
リン酸イオン
硫酸イオン
過マンガン酸カリウム消費量
TOC
遊離残留塩素
結合残留塩素
においセンサー値
一般細菌
大腸菌群
緑膿菌
レジオネラ属菌
浴槽温度
浴室温度
温湿度
浴室湿度
入浴者数
男 子
女 子
合 計
施設 C の水質等の推移
原水
時 刻
pH
10時00分 10時30分 11時00分 11時30分 12時00分 14時00分
7.03
209
(19.1℃)
0.00
0.01
14.3
7.00
234
(19.3℃)
0.06
0.12
14.3
3.05
41.4
1.11
0.43
1.63
41.4
1.39
0.81
(mg/L)
(mg/L)
入浴施設の実態調査から見る課題
0.68
0.04
255
7.00
235
(21.0℃)
0.13
0.08
14.3
0.99
0.77
41.2
1.77
0.85
7.05
235
(21.2℃)
0.13
0.04
14.3
0.86
0.71
41.2
2.28
1.22
7.10
236
(20.9℃)
0.19
0.08
14.4
1.01
0.22
41.6
1.96
0.87
7.12
237
(20.8℃)
0.22
0.05
14.6
1.18
7.15
240
(20.7℃)
0.31
0.02
14.8
42.1
2.65
0.94
41.9
2.31
0.90
0.44
0.18
325
―
―
―
―
41.0
29.8
99
0.30
0.35
330
―
―
―
―
41.1
29.9
99
0.16
0.36
329
0.62
0.11
355
3.8×10 5
ND
ND
ND
41.2
30.4
99
3.4×10 5
2.0
ND
ND
41.1
28.7
91
0
8
8
0
1
1
6
0
6
0
0
0
(CFU/mL)
(CFU/mL)
(MPN/100mL)
(CFU/100mL)
(℃)
(℃)
(%RH)
―
―
―
―
―
―
―
1.0×10 5
ND
ND
ND
41.1
27.2
88
0.22
0.42
288
―
―
―
―
41.2
28.7
99
(人)
(人)
(人)
―
―
―
0
0
0
0
9
9
濁度を計測したが、測定値全てが「公衆浴場における衛生等管理要領」を大きく
下回っていた。計測値の最大が施設 A の 11 時 30 分と 12 時 00 分の 0.9 度で
ある。施設 B は、時間経過による濁度の変化は見られなかったが、施設 A と施
設 C は時間経過とともに上昇した。施設 A は 9 時 30 分からの 2 時間に、濁度
が 0.4 度から 0.9 度に上昇した。施設 C は 10 時 00 分からの 2 時間に、濁度が
0.06 度から 0.22 度に上昇した。入浴を終了してからも濁度は上昇し、14 時 00
分には 0.31 度となった。入浴がないのに濁度が上昇したのは、撹拌されたか、
ろ過器で捕集された汚れが何らかの原因で流出したことが考えられるが、不明
である。濁度の大きな上昇のなかった施設 B では、色度も測定したが時刻変動
はあるものの、特徴的な傾向は見られない。
アンモニア性窒素は、施設 A と施設 D で時間経過とともに上昇傾向が見られ
た。施設 A は 9 時 30 分からの 2 時間に、アンモニア性窒素が 0.11mg/L から
0.26mg/L に上昇した。施設 D は 9 時 30 分からの約 2 時間の間に、0.03mg/L
から 0.10mg/L に上昇した。補給水が多いこともあり、13 時 30 分には一旦
64
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
0.07mg/L に下降したが、再び上昇し約 2 時間後の 15 時 40 分には 0.13 mg/L
となった。9 時 20 分で 0.01mg/L であったのが、10 分後の 9 時 30 分には
0.03mg/L に上昇した。入浴剤、気泡板の空気配管に溜まっていた死に水や、
ろ過循環系統の影響が考えられるが、正確な原因は不明である。
濁度 (度)
アンモニア性窒素 (mg/L)
リン酸イオン (mg/L)
1.0
過マンガン酸カリウム消費量 (×10 mg/L)
TOC (×10 mg/L)
0.9
遊離残留塩素 (mg/L)
0.8
結合残留塩素 (mg/L)
濃度(mg/L)
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
9時30分
10時00分
10時30分
時刻
11時00分
11時30分
12時00分
施設 A の水質等の推移
図-2.1.1
濁度 (度)
アンモニア性窒素 (×1/10 mg/L)
色度 (度)
過マンガン酸カリウム消費量 (×10 mg/L)
4.0
3.5
TOC (×10 mg/L)
遊離残留塩素 (mg/L)
濃度(mg/L)
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
9時30分
10時00分
10時30分
11時00分
図-2.1.2
11時30分
時刻
12時00分
13時00分
施設 B の水質等の推移
65
13時30分
14時00分
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
硝酸イオンは、施設 D だけが時間経過とともに下降傾向が見られる。他の 3
施設は横ばいであった。施設 D では、リン酸イオンと硫酸イオンも時間経過と
ともに下降した。施設 A と施設 B は、換水から実質 2~4 日間入浴に供した浴
濁度 (度)
アンモニア性窒素 (×1/10 mg/L)
リン酸イオン (mg/L)
過マンガン酸カリウム消費量 (mg/L)
3.0
TOC (mg/L)
遊離残留塩素 (mg/L)
2.5
結合残留塩素 (mg/L)
濃度(m/L)
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
10時00分
10時30分
11時00分
11時30分
12時00分
14時00分
時刻
図-2.1.3
施設 C の水質等の推移
吸光度 (×1/100)
アンモニア性窒素 (×1/10 mg/L)
リン酸イオン (mg/L)
過マンガン酸カリウム消費量 (×10 mg/L)
1.6
TOC (×10 mg/L)
1.4
遊離残留塩素 (mg/L)
結合残留塩素 (mg/L)
1.2
濃度(mg/L)
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
9時20分
10時00分
11時00分
図-2.1.4
13時00分
時刻
14時00分
施設 D の水質等の推移
66
15時00分
15時40分
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
槽水でありながら、入浴前のリン酸イオンと硫酸イオンの値が、施設 C と施設
B の値より大幅に小さい値となっている。両施設とも逆洗機能を持たないカー
トリッジフィルタと石英斑岩(いわゆる麦飯石)を組み合わせたろ過装置の生
物ろ過による浄化作用で、良好な水質が確保されていると推測する。
「公衆浴場における水質基準等に関する指針」では、「過マンガン酸カルウム消
費量は、25mg/L 以下であること」とある。各施設の過マンガン酸カリウム消費
量の最大値は、施設 A が 0.414mg/L、施設 B が 3.48mg/L、施設 C が 2.65mg/L、
施設 D が 5.97mg/L であった。施設 A は 9 時 30 分からの 2 時間 30 分の間に、
過マンガン酸カリウム消費量が 0.297mg/L から 0.414mg/L に上昇した。施設
B は 9 時 30 分からの 2 時間 30 分の間に、0.83mg/L から 3.38mg/L に上昇し
た。施設 C は 10 時 00 分からの 2 時間 00 分の間に、1.39mg/L から 2.65mg/L
に上昇した。施設 D は 9 時 20 分から 10 分間の間に、入浴剤か何らかの影響
で急激に上昇したが、その後は上昇・下降の傾向は見られなかった。大量の補
給水による希釈が、要因と考えられる。
1.3.2
2005 年度(平成 17 年度)の調査施設
各々の施設で、入浴開始時から終了時まで、30 分ごとに水質調査をした。た
だし施設 J は、夏季が 11 時から翌日 1 時(25 時)まで、冬季は、13 時から翌
日 1 時(25 時)までの測定であったので、60 分ごとの測定とした。
化学的な調査項目は、pH、電気伝導率、濁度、色度、アンモニア性窒素、塩
素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、過マンガ
ン酸カリウム消費量、TOC、においセンサー値、遊離残留塩素や総残留塩素で
ある。微生物の調査項目は、一般細菌、従属栄養細菌、大腸菌群、緑膿菌とレ
ジオネラ属菌である。
測定結果の例として、表-2.1.5 に施設 G での秋季のデータを示す。施設 G
は、愛知県三河地方にあるデイサービスである。夏季は塩素のみ、秋季は塩素
と二酸化塩素で消毒した。ブロアを使った気泡浴と、超音波ポンプを用いた超
音波浴装置が設置されている。
入浴者数は、夏季の測定日が 12 人、秋季が 13 人でほぼ同数であった。何れ
もレジオネラ属菌は検出されなかったが、大腸菌群が検出された。入浴前に採
67
第2章
表-2.1.5
時 刻
pH
(カッコ内は水温)
9時00分
9時30分
7.00
20.4
39
20
0.063
0.091
6.9
ND
ND
ND
7.06
20.4
58
20
0.313
0.418
8.5
0.93
ND
ND
7.12
20.5
57
19.9
0.094
0.181
8.5
0.95
ND
ND
7.18
20.2
58
19.9
0.156
0.309
8.5
0.95
ND
ND
7.17
20.1
58
19.9
0.188
0.291
8.6
0.98
ND
ND
7.08
20.1
61
19.9
0.125
0.309
8.4
0.97
ND
ND
6.95
19.8
60
20
0.313
0.382
8.6
1.04
ND
ND
(CFU/mL)
(CFU/mL)
1.72
0.25
0.68
0.64
0.07
―
108
―
―
1.98
1.90
1.21
0.30
0.07
0.33
132
ND
1.0
2.03
1.33
1.13
0.32
0.01
0.50
136
―
―
2.00
1.26
1.14
0.25
0.02
0.34
136
―
―
2.07
1.39
1.24
0.30
0.09
0.46
144
―
―
2.02
0.98
1.09
0.31
0.19
0.24
148
―
―
2.03
1.17
1.19
0.36
0.09
0.28
145
0.5
6.5
(CFU/mL)
(CFU/100mL)
(CFU/100mL)
(℃)
(℃)
(%RH)
(人)
(人)
(人)
―
―
―
―
―
―
―
―
―
5.0
ND
ND
40.2
23.0
75
0
0
0
―
―
―
39.8
24.5
81
0
3
3
―
―
―
40.2
25.0
85
0
2
2
―
―
―
40.6
25.6
87
0
3
3
―
―
―
40.2
25.7
88
0
1
1
5.5
ND
ND
39.8
26.0
87
4
0
4
(℃)
(μS/cm)
(℃)
濁度
(度)
(度)
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
結合残留塩素
二酸化塩素
においセンサー値
一般細菌
従属栄養細菌
大腸菌群
緑膿菌
レジオネラ属菌
温湿度
入浴者数
浴槽温度
浴室温度
浴室湿度
男 子
女 子
合 計
施設 G の秋季計測時の水質等の推移
原水
電気伝導率
(カッコ内は水温)
色度
塩素イオン
硝酸イオン
亜硝酸イオン
リン酸イオン
硫酸イオン
過マンガン酸カリウム消費量
TOC
遊離残留塩素
入浴施設の実態調査から見る課題
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
10時00分 10時30分 11時00分 11時30分
水した試料からも大腸菌群が検出されたのは、超音波浴の循環系等から、絶え
ず菌が供給されていることも考えられるが、明確ではない。
施設 J は、北海道後志地方のリゾートホテルである。夏季の消毒剤の注入は
定量で行っていたが、冬季は遊離残留塩素濃度を計測して自動制御により注入
した。なお本測定での残留塩素濃度は、「第 3 章
4.循環系浴槽での消毒剤添
加・制御方法」に記載した。また別途 2007 年(平成 19 年)夏季に男女浴槽ご
とに 3 箇所ずつ残留塩素濃度を調査した結果を、
「第 3 章
5.循環系浴槽での消
毒剤濃度分布の時系列変化と微生物」に記載した。
施設 K は、福島県会津地方の介護老人保健施設である。塩素消毒にオゾン消
毒も付加しており、臭いから浴槽水にオゾンが残留していると推測される。オ
ゾン消毒を主にしていることから、遊離残留塩素濃度を低めにしていると推測
する。レジオネラ属菌は検出されなかったものの、大腸菌群や緑膿菌が検出さ
68
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
れたことから、微生物に対して脆弱な状態であると考えられる。
オゾン消毒は強力な酸化力を持っているが、本システムでは有効に性能を発
揮しているとは言えない。また浴槽水にオゾンが残留することにより、人体の
粘膜等への悪影響を指摘している研究者もいる。これらのことから、浴槽ろ過
循環方式では、オゾン消毒が有効かつ安全な方法とは考えにくい。
1.4 浴槽水の微生物等
2004 年度と 2005 年度に調査した浴槽水のデータのうち、一般細菌やレジオ
ネラ属菌等の微生物項目を表-2.1.5 に示す。施設 H の器械浴は、ストレッチ
ャや車いす等で入浴するタイプのもので、循環式ろ過装置はない。
循環式ろ過装置を設けた浴槽では、47 検体のうち 10 検体(21.3%)からレ
ジ オ ネ ラ 属 菌 が 分 離 さ れ た 。 レ ジ オ ネ ラ 属 菌 の 最 高 菌 数 は 、 9.4 × 102
CFU/100mL で、後の研究でレジオネラ症集団感染の閾値とされた 1.0×
104CFU/100mL 以上の検体は、なかった。
非循環方式の浴槽水の調査として、愛知県名古屋市にある介護老人保健施設
の施設 H の器械浴では、新しい水を張ったときは、レジオネラ属菌が検出され
なかった。しかし 2 人が入浴した後の水からレジオネラ属菌が検出された。器
械浴の例を考えるとヒト由来のレジオネラ属菌の可能性も否定できない。
1.5 まとめ
1998 年に東京都目黒区内の特別養護老人ホームでの浴槽水を感染源とした
レジオネラ症集団感染があった。これを受けて 1999 年に、(財)ビル管理教育セ
ンターの委員会が社会福祉施設の浴槽の調査をした。294 の試料のうち、159
試料(54.1%)からレジオネラ属菌が分離された。
2004 年度と 2005 年度の調査では、循環式ろ過装置を設けた浴槽で、47 検
体のうち 10 検体(21.3%)からレジオネラ属菌が分離された。1999 年の調査
結果から考えると、かなり衛生管理がされるようになったと判断できる。
福島県会津地方の介護老人保健施設では、オゾンと塩素によって消毒してい
た。オゾン消毒を主にしていることから、遊離残留塩素濃度を低めにしていた。
レジオネラ属菌は検出されなかったが、大腸菌群や緑膿菌が検出された。消毒
69
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
は微生物に対して脆弱な状態であった。オゾン消毒は強力な酸化力を持ってい
るが、調査した施設では有効に性能を発揮していない。また浴槽水にオゾンが
残留することにより、人体の粘膜等への悪影響を指摘している研究者もいる。
浴槽ろ過循環方式では、オゾン消毒が有効かつ安全な方法とは考えにくい。
現在の厚生労働省の基準には合致しない逆洗機能を持たないカートリッジフ
ィルタと石英斑岩(いわゆる麦飯石)を組み合わせたろ過装置を設置している
社会福祉施設が、2 つあった。生物ろ過による浄化作用が行われていたと予想
され、共にリン酸イオンと硫酸イオンの値で良好な水質であった。衛生面と快
適性から、今後、生物ろ過方式復活の検討が必要だと考察した。
表-2.1.5a
2004 年度~05 年度の調査結果のうち微生物項目等(1)
施設名(系統名)
施 設 A
施 設 B
施 設 用 途
デイサービス
介護老人保健施設
所 在 地
宮城県岩沼市
宮城県仙台市
計 測 日
計 測 時 刻
平成16年12月8日
平成17年3月10日
遊離残留塩素
9時30分 12時00分 9時30分 12時00分 14時00分
(mg/L)
(mg/L)
0.29
0.02
0.04
0.04
0.63
―
0.41
―
0.84
―
(CFU/mL)
―
―
―
―
3.2×104
―
ND
(CFU/mL)
1.7×10 5
―
(CFU/mL)
(CFU/100mL)
ND
ND
3×10
ND
ND
ND
ND
ND
ND
レジオネラ属菌 (CFU/100mL)
備 考
ND
ND
ND
ND
結合残留塩素
一般細菌
従属栄養細菌
大腸菌群
緑膿菌
2
2.4×10
ND
施設名(系統名)
施 設 C
施 設 用 途
所 在 地
介護老人保健施設
岩手県北上市
計 測 日
平成17年1月14日
計 測 時 刻
10時00分 12時00分 14時00分
0.68
0.16
0.62
遊離残留塩素
(mg/L)
結合残留塩素
一般細菌
(mg/L)
0.04
0.36
0.11
(CFU/mL)
(CFU/mL)
1.0×10
―
ND
3.8×10
―
ND
3.4×10 5
―
2.0
(CFU/100mL)
ND
ND
ND
(CFU/100mL)
備 考
ND
ND
ND
従属栄養細菌
大腸菌群
緑膿菌
レジオネラ属菌
(CFU/mL)
5
5
70
―
第2章
表-2.1.5b
入浴施設の実態調査から見る課題
2004 年度~05 年度の調査結果のうち微生物項目等(2)
施設名(系統名)
施 設 D
施 設 用 途
介護老人保健施設
所 在 地
新潟県新井市
計 測 日
計 測 時 刻
平成17年2月9日
遊離残留塩素
9時20分
11時15分 13時00分 15時40分
(mg/L)
(mg/L)
0.43
0.36
0.05
0.21
0.09
0.05
0.09
0.07
(CFU/mL)
(CFU/mL)
1.0×104
―
5.9×105
―
4.4×10 6
―
5.0×104
―
(CFU/mL)
(CFU/100mL)
ND
ND
ND
ND
ND
ND
2.0
ND
レジオネラ属菌 (CFU/100mL)
備 考
10
ND
10
ND
結合残留塩素
一般細菌
従属栄養細菌
大腸菌群
緑膿菌
施設名(系統名)
施 設 G
施 設 用 途
所 在 地
デイサービス
愛知県三河地方
計 測 日
計 測 時 刻
平成17年8月23日
平成17年10月26日
9時00分
11時30分
9時00分
11時30分
遊離残留塩素
(mg/L)
0.19
0.30
0.30
0.36
結合残留塩素
一般細菌
(mg/L)
0.06
0.11
0.07
0.09
(CFU/mL)
ND
1.0
ND
0.5
(CFU/mL)
(CFU/mL)
ND
1.0
ND
1.0
1.0
5.0
6.5
5.5
(CFU/100mL)
ND
ND
ND
ND
(CFU/100mL)
備 考
ND
ND
ND
ND
従属栄養細菌
大腸菌群
緑膿菌
レジオネラ属菌
施設名(系統名)
施 設 H (大浴槽)
施 設 用 途
所 在 地
介護老人保健施設
愛知県名古屋市
計 測 日
計 測 時 刻
遊離残留塩素
結合残留塩素
一般細菌
平成17年8月25日
9時30分
(mg/L)
0.15
(mg/L)
0.07
平成17年10月28日
12時00分 16時30分 10時00分 12時10分 17時15分
0.20
0.20
0.15
0.26
0.15
4
4
1.7×10
5
5
0.07
0.02
0.14
5.0×10
3.5×104
4
4.0×10
ND
5.9×10
8.3×10
5.8×10
1.4×10
1.4×10
9.0
6
1.9×10
ND
従属栄養細菌
大腸菌群
(CFU/mL)
4.0×10
ND
緑膿菌
レジオネラ属菌
(CFU/100mL)
ND
ND
ND
ND
(CFU/100mL)
備 考
ND
ND
ND
ND
2.4×10
71
0.31
3
4
(CFU/mL)
(CFU/mL)
0.34
5
4
1.9×10
ND
2.4×10 6≧
3.8×10 2 1.7×10
ND
第2章
表-2.1.5c
入浴施設の実態調査から見る課題
2004 年度~05 年度の調査結果のうち微生物項目等(3)
施設名(系統名)
施 設 H (器械浴槽)
施 設 I (男子系統)
施 設 用 途
介護老人保健施設
デイサービス
所 在 地
愛知県名古屋市
計 測 日
計 測 時 刻
平成17年10月28日
遊離残留塩素
北海道石狩地方
平成17年8月30日
14時15分 15時50分 10時00分 12時00分 10時00分 11時30分
(mg/L)
(mg/L)
0.04
0.02
0.00
0.03
0.17
0.05
0.64
0.03
一般細菌
従属栄養細菌
(CFU/mL)
1.5×104
2.4×103
4.7×10 4
(CFU/mL)
6
5
5
大腸菌群
緑膿菌
レジオネラ属菌
結合残留塩素
(CFU/mL)
(CFU/100mL)
1.1×10
ND
ND
1.1×10
ND
ND
1.1×10
ND
ND
(CFU/100mL)
ND
3.3×10
1.7×10
使用前
使用後
備 考
施設名(系統名)
施 設 I (女子系統)
施 設 用 途
所 在 地
デイサービス
北海道石狩地方
計 測 日
計 測 時 刻
遊離残留塩素
(mg/L)
結合残留塩素
一般細菌
(mg/L)
(CFU/mL)
平成17年8月30日
0.19
0.18
0.17
0.06
4.7×104
1.0
1.5×10
3
3.0
8.0×102
ND
5.6×10
ND
ND
ND
ND
1.7×10
ND
平成17年12月20日
10時00分 12時00分 10時00分 11時30分
0.09
err
0.24
0.38
0.01
err
4
4
0.06
0.09
5.0×10
3.0
6.5×10
ND
7.5×10
ND
(CFU/mL)
(CFU/mL)
4.8×10
1.0
2.9×10
―
ND
(CFU/100mL)
ND
ND
ND
ND
(CFU/100mL)
備 考
ND
ND
ND
ND
従属栄養細菌
大腸菌群
緑膿菌
レジオネラ属菌
2.5×10
5
施設名(系統名)
施 設 J (大浴槽系統)
施 設 用 途
所 在 地
リゾートホテル(対照施設)
北海道後志地方
計 測 日
計 測 時 刻
平成17年9月1日
(mg/L)
0.78
結合残留塩素
一般細菌
(mg/L)
0.04
従属栄養細菌
大腸菌群
緑膿菌
レジオネラ属菌
(CFU/mL)
(CFU/mL)
(CFU/100mL)
(CFU/100mL)
備 考
平成18年1月11日
11時00分 25時00分 13時00分 19時00分 25時00分
遊離残留塩素
(CFU/mL)
平成17年12月20日
0.23
0.21
0.22
4
7.2×10
5
0.20
4
3.8×10
3
3.6×10
2
0.16
1.2×10
ND
3.3×10 5
1.5×10
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
1.0×10
ND
1.5×10
ND
ND
2
1.7×10
72
0.52
0.18
5
8.1×10
2.0×102
ND
9.4×10
0.23
5
4.1×10
3
3
4.6×10
ND
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
2004 年度~05 年度の調査結果のうち微生物項目等(4)
表-2.1.5d
施設名(系統名)
施 設 J (気泡浴系統)
施 設 用 途
所 在 地
リゾートホテル(対照施設)
北海道後志地方
計 測 日
計 測 時 刻
平成17年9月1日
11時00分 25時00分 13時00分 19時00分 25時00分
遊離残留塩素
(mg/L)
3.75
結合残留塩素
一般細菌
(mg/L)
0.19
従属栄養細菌
大腸菌群
緑膿菌
レジオネラ属菌
平成18年1月11日
0.13
0.66
0.45
0.26
0.07
3
5
1.2×10
3
4
0.12
0.20
0.43
1.7×10
5
5
2.9×10
3.0×10 5
3
(CFU/mL)
6.8×10
(CFU/mL)
(CFU/mL)
3.1×10
ND
4.4×10
ND
4.0×10
ND
2
2.6×10
2.0×10
2.4×10
1.0
(CFU/100mL)
ND
ND
5.0×10
1.1×107
1.7×10
ND
1.7×10
1.1×10 7
ND
(CFU/100mL)
備 考
施設名(系統名)
施 設 用 途
施 設 K
介護老人保健施設
所 在 地
福島県会津地方
計 測 日
平成17年11月21日
計 測 時 刻
遊離残留塩素
(mg/L)
結合残留塩素
(mg/L)
一般細菌
(CFU/mL)
従属栄養細菌
大腸菌群
(CFU/mL)
緑膿菌
(CFU/100mL)
(CFU/mL)
レジオネラ属菌
(CFU/100mL)
備 考
9時00分
12時20分 15時30分
0.06
0.03
0.14
0.03
3
0.02
0.05
3
3
3.5×10
5.5×102
ND
5.5×10
7.5×103
5.5×10
6.5×10
4.0×10 2
2.5
1.1×106
ND
ND
ND
ND
ND
施設名(系統名)
施 設 用 途
施設L(男子系統)
介護老人保健施設
施設L(女子系統)
介護老人保健施設
所 在 地
福島県会津地方
福島県会津地方
計 測 日
平成17年11月22日
平成17年11月22日
計 測 時 刻
遊離残留塩素
(mg/L)
結合残留塩素
一般細菌
従属栄養細菌
大腸菌群
緑膿菌
レジオネラ属菌
(mg/L)
(CFU/mL)
13時30分 15時00分 13時30分 15時00分
0.73
0.09
3
(CFU/mL)
4.1×10
9.0×104
ND
(CFU/100mL)
(CFU/100mL)
ND
ND
(CFU/mL)
0.85
0.55
0.34
0.11
ND
0.04
ND
0.06
8.5×10
ND
ND
ND
ND
2.1×103
8.0×10
ND
ND
ND
ND
ND
ND
備 考
73
3
3.3×10
第2章
2.
入浴施設の実態調査から見る課題
化学的洗浄後の循環系でのレジオネラ属菌等の推移
2.1 はじめに
研究は浴槽循環系を過酸化水素を使用して化学的洗浄をした後、生物膜の生
成やレジオネラ属菌等がどのように推移するかを調査した。本論文は、2001
年度(平成 13 年度)厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)で、(財)
ビル管理教育センターに設置した水景施設及び循環式浴槽における微生物に関
する研究委員会で採取したデータに、独自に追跡調査で得たデータを加えた。
本項は、2001 年度(平成 13 年度)の(財)ビル管理教育センターの報告書 5)、
2004 年度空気調和・衛生工学会大会学術講演会論文集『循環式ろ過式大型浴槽
でのレジオネラ症対策事例(その 1)』6)と空気調和・衛生工学会 浴場施設に
おけるレジオネラ対策小委員会報告書『浴場施設におけるレジオネラ対策指針
のための調査・研究』7)に執筆した内容を参考にしている。
2.2 日帰り入浴施設
本施設は日帰り入浴施設で、温泉水を利用している。施設の概要は表-2.2.1、
温泉成分は表-2.2.2 である。屋内の男女浴槽を1台のろ過系統で、屋外(露天)
も同様である。屋内系統のレジオネラ属菌数等の変化が表-2.2.3、屋外系統が
表-2.2.4 である。浴槽水の完全換水頻度は 2 週間に 1 度である。
01 年度は、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム顆粒を浴槽に投入し、成り行
きで溶解させた。試験開始前々日にろ材の交換と、循環ろ過系統の過酸化水素
洗浄を行った。ろ過器内のろ材(砂)の入れ替えと循環ろ過系統を過酸化水素
洗浄終了後にバイオフィルム等を付着させるためのシリコンゴム(1 枚当たり
10c ㎡)をヘアキャッチャー内に設置した。採水とシリコンゴムの拭き取りは、
初回が試験開始 1 週間後に、その後は 2 週間ごとに行い経緯を観察した。
当時の厚生省基準に準拠するよう 1 日最低 2 時間、遊離残留塩素濃度を
0.2mg/L 以上保持するように、当初毎日 22 時に 1 度だけ投入した。投入量の
仮決定方法として、試験開始初日夕方から翌日にかけてジクロロイソシアヌル
酸ナトリウム顆粒を投入して残留塩素の消失の変化を確認した。7 日後に 1 週
間前に決めたジクロロイソシアヌル酸ナトリウム顆粒投入により 2 時間以上、
74
第2章
表-2.2.1
日帰り入浴施設・浴槽の概要と殺菌消毒方法
施
設
用
所
在
竣
工
年
利 用 者 数 ( 入 浴 者 数
浴
槽
系
浴
槽
使
用
時
間
ろ 過 装 置 運 転 時 間
ろ
過
器
種
途
県
月
)
統
帯
帯
類
3
過
器
槽
槽
環
日帰 り入浴 施設
宮 城 県
93年(平成5年) 11月
約 200 人/日 (平均)
屋
内
屋外(露天)
10:00 ~ 22:00
9:00 ~ 1:00
砂
9:00 ~ 0:40
式
50.0
35.0
23.0 × 2槽
8.3 × 2槽
15.0 × 2槽
5.4 × 2槽
1.7
3.2
ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム顆粒
浴槽に直接投入
電解次 亜塩素 酸
ポーラログラフ3極式塩素濃度計
で計測し、自動注入
循
環
量
[m /h]
2
面
積
[m ]
3
容
量
[m ]
回
数
[R/h]
消 毒 剤 の 種 類
2001年度
(平成13年度)
消 毒剤の 投入 方法
消 毒 剤 の 種 類
2002~03年度
(平成14~15年度) 消 毒剤の 投入 方法
ろ
浴
浴
循
入浴施設の実態調査から見る課題
表-2.2.2 日帰り入浴施設の温泉の成分
値
8.0
項 目
pH
電気伝 導率
全 硬
度
Ca 硬 度
Mg 硬 度
酸消費量(pH4.8)
塩化 物イオン
硫 酸 イ オ ン
シ
リ
カ
ナ ト リ ウ ム
カ リ ウ ム
280 mS/m
466 mg/L
160 mg/L
6 mg/L
75 mg/L
780 mg/L
130 mg/L
67 mg/L
410 mg/L
10 mg/L
備 考
(CaCO 3)
(CaCO 3)
(CaCO 3)
(CaCO 3)
0.2mg/L 以上残留塩素濃度が保たれることを施設管理者に確認してもらい、投
入量を確定した(有効塩素量:屋内 62.5g、屋外 37.5g)。
しかし検査開始 21 日目の採水でレジオネラ属菌が検出されたことにより、暫
定的にジクロロイソシアヌル酸ナトリウム顆粒の投入量を上げた。試験開始 35
日目時点で、試験開始 7 日目と同量のジクロロイソシアヌル酸ナトリウム顆粒
投入では、2 時間以上、0.2mg/L 以上残留塩素濃度を保持できないことが判明
75
第2章
表-2.2.3
入浴施設の実態調査から見る課題
日帰り入浴施設・屋内浴槽系統での殺菌消毒方法の違いによる浴槽水
と拭き取り検査の変化
塩素剤種類
投入方式
(調査時期)
(
ジ 浴
ク 槽
ロ 投
ロ 入
〇
イ
・
顆 溶 一
ソ 成
粒 解 年
シ り
度
ア 行
ヌ き
ル 自
酸 然
)
(
~
電塩
解素 〇
年
次濃 二
酸
度
亜度
塩制 〇
素御 三
)
塩素剤種類
投入方式
(調査時期)
(
ジ 浴
ク 槽
ロ 投
ロ 入
〇
イ
・
顆 溶 一
ソ 成
粒 解 年
シ り
度
ア 行
ヌ き
ル 自
酸 然
)
(
~
電塩
解素 〇
年
次濃 二
酸
度
亜度
塩制 〇
素御 三
検査開始
からの日数
日目
7
21
35
50
64
77
92
105
37
116
162
226
396
検査開始
からの日数
日目
7
21
35
浴 槽 水
1.1×10 4
-
1.3×104
2.1×103
4
4.2×10
4
2.3×10
不検出
3.0×10
3
2.2×10
不検出
4.6×10
不検出
1.5×10 2
7.6×10 5
2.3×10 6
6
1.6×10
3
2.4×10
4
考
追加塩素投入前
追加塩素投入30分後
循環開始2時間後
3
2.3×10
不検出
不検出
1.0×10
1.8×102
1.0×10
不検出
1.0×10
拭 き 取 り
一般細菌 レジオネラ属菌
CFU/mL
CFU/mL
2
不検出
1.2×10
3
4
)
64
77
92
105
37
116
162
226
8.1×10 2
1.4×10
2.2×10 2
不検出
不検出
不検出
1.6×10
4
2.2×10
2
3.0×10
不検出
不検出
不検出
不検出
2.0×10
不検出
不検出
396
不検出
不検出
50
備
一般細菌 レジオネラ属菌
CFU/mL CFU/100mL
不検出
7.7×10
4
1.3×10
2
5.8×10
不検出
ATP
pmol/L
備
考
8.3×102
3
1.4×10
3
2.7×10
2
8.7×10
5.0×10
1.1×102
不検出
3.7×10
3.5
9
0.29
不検出
追加塩素投入前
追加塩素投入30分後
循環開始2時間後
※ 拭き取り検査方法:浴槽系に浸漬したバイオフィルム試験片を定期的に「ふきふきチェック」
で拭き取り、試験水とした。
表中データは、その試験水中の値で示す。
2
シリコンゴムの試験片10cm を拭き取り、滅菌水10mLに懸濁している。
し、投入量を増した(有効塩素量:屋内 94.5g、屋外 54.0g)。また試験開始
76
第2章
表-2.2.4
入浴施設の実態調査から見る課題
日帰り入浴施設・屋外浴槽系統での殺菌消毒方法の違いによる浴槽水
と拭き取り検査の変化
塩素剤種類
投入方式
(調査時期)
(
ジ 浴
ク 槽
ロ 投
ロ 入
〇
イ ・
顆 溶 一
ソ 成
粒 解 年
シ り
度
ア 行
ヌ き
ル 自
酸 然
)
(
~
電塩
解素 〇
年
次濃 二
度
酸
亜度
塩制 〇
素御 三
)
塩素剤種類
投入方式
(調査時期)
(
ジ 浴
ク 槽
ロ 投
ロ 入
〇
イ ・
顆 溶 一
ソ 成
粒 解 年
シ り
度
ア 行
ヌ き
ル 自
酸 然
)
(
~
電塩
解素 〇
年
次濃 二
度
酸
亜度
塩制 〇
素御 三
検査開始
からの日数
日目
7
21
35
50
64
77
92
105
37
116
162
226
396
検査開始
からの日数
日目
7
21
35
浴 槽 水
一般細菌
CFU/mL
-
レジオネラ属菌
CFU/100mL
不検出
1.1×10 4
-
1.3×104
2.1×103
4
4.2×10
4
2.3×10
不検出
3.0×10
3
2.2×10
不検出
4.6×10
不検出
1.5×10 2
7.6×10 5
2.3×10 6
6
1.6×10
3
2.4×10
4
考
追加塩素投入前
追加塩素投入30分後
循環開始2時間後
3
2.3×10
不検出
不検出
1.0×10
1.8×102
1.0×10
不検出
1.0×10
拭 き 取 り
一般細菌
CFU/mL
1.2×10 2
3
7.7×10
4
1.3×10
2
5.8×10
不検出
レジオネラ属菌
CFU/mL
不検出
4
)
64
77
92
105
37
116
162
226
8.1×10 2
1.4×10
2.2×10 2
不検出
不検出
不検出
1.6×10
4
2.2×10
2
3.0×10
不検出
不検出
不検出
不検出
2.0×10
不検出
不検出
396
不検出
不検出
50
備
ATP
pmol/L
備
考
8.3×102
3
1.4×10
3
2.7×10
2
8.7×10
5.0×10
不検出
1.1×102
不検出
3.7×10
3.5
9
0.29
追加塩素投入前
追加塩素投入30分後
循環開始2時間後
※ 拭き取り検査方法:浴槽系に浸漬したバイオフィルム試験片を定期的に「ふきふきチェック」
で拭き取り、試験水とした。
表中データは、その試験水中の値で示す。
2
シリコンゴムの試験片10cm を拭き取り、滅菌水10mLに懸濁している。
35 日目までジクロロイソシアヌル酸ナトリウム顆粒の毎日の投入は 22 時の1
77
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
度だけであったが、試験開始 36 日目より 6 時 30 分と 22 時の 2 度に変更する
と同時に、1回当りの投入量も 50%増やした。
50 日目の 8 時 50 分に採水する際、塩素剤投入後 2 時間 20 分後であるのに
遊離残留塩素が検出されなかった。塩素の効果を確認するために 9 時 30 分に
再投入し、10 時に採水した。塩素投入から 30 分後(10 時)の測定でレジオネ
ラ属菌、一般細菌、アメーバー数、ATP の全ての項目で検出量が減少した(レ
ジオネラ属菌:屋内で 4.2×104 CFU/100mL→2.3×104CFU/100mL、屋外で
6.4×104 CFU/100mL→9.2×103 CFU/100mL)。
休館日(試験開始 64 日目と 92 日目)前日の 22 時に大量のジクロロイソシ
アヌル酸ナトリウム顆粒とトリクロロイソシアヌル酸錠剤を投入し、
(推定初期
塩素濃度約 40~50mg/L)投入後約 3 時間ろ過装置を循環させる高濃度塩素投
入による殺菌を行った後、ろ過器を停止させた。
64 日目の午前 9 時 30 分に再度ろ過装置を循環させ、2 時間後の 11 時 30 分
の採水した浴槽水からは(試験開始 64 日目は塩素剤投入せず)レジオネラ属
菌は屋内浴槽で不検出、屋外浴槽で 10CFU/100mL であった。
92 日目前日も 64 日目前日と同様に深夜に高濃度塩素殺菌を施したため、拭
き取り検体からはレジオネラが検出されなくなった。これらのことから、1 日
に 2 時間以上 0.2~0.4mg/L の残留塩素濃度の保持では、循環式浴槽ろ過系に
対してバイオフィルムやレジオネラ属菌発生の抑制に効果がないと判断した。
02~03 年度は塩素濃度を自動制御し、電解次亜塩素酸を注入するように改修
した。高濃度塩素殺菌は行わなくなった。現在も夜間、循環ろ過装置は停止し
ている。レジオネラの温床となる生物膜生成の指標となる拭き取り試験で、改
修により改善に向った。改修後、換水前の数日間を除き塩素臭が低減し、肌の
刺激も減少した。
拭き取り試験で ATP を指標としている理由は、つぎの通りである。ATP
(Adenosine Triphosphate、化学式 は C10H16N5O13P3)は、細菌・カビ・動
物・植物など、自然界で生きている全ての生物のエネルギー源として働く。ATP
の測定は、細菌や腐敗生物の存在に関する直接的な指標にはならないが、生物
の潜在的存在を検出するのには最適な指標となり得る。つまり「ATP が存在す
る」ことは、「生物、あるいは生物の生産物が存在する」証拠となるために、
78
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
ATP を測定することで、微生物の発生しやすさの指標にすることとした。
ATP は、ポータブルタイプの測定器で測定することができる。しかし、RLU
(Relative Light Unit)相対発光量を、検量線を用いて ATP に換算している
ために正確さに掛ける。本調査では、ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応の発光
量を直接測定する装置(東亜 DKK 製 ATP アナライザ AF-100)を用いて、絶
対発光量を測定して ATP 濃度に自動換算した値を用いた。
2.3 研修施設
本施設の浴槽水用水は水道水である。男女浴槽は、別々のろ過系統としてお
り、施設等の概要は表-2.2.5 の通りである。ろ過器はカートリッジフィルタと
石英斑岩(麦飯石)をろ材とし、逆洗機能はない。半年毎にろ材の交換・洗浄
を行っている。表-2.2.6 が男子浴槽系統のレジオネラ属菌数等の変化である。
竣工以来 01 年度の試験前までは、過酸化水素洗浄等の循環系の洗浄は行って
いなかった。03 年 12 月に初めて過酸化水素洗浄を行った。01 年度は循環系統
に設置した塩素供給装置にトリクロロイソシアヌル酸錠剤を投入し殺菌してい
た。毎日午後に遊離残留塩素濃度を測定し、0.2mg/L 以下の場合、有効塩素 135g
表-2.2.5
施
所
竣
利
浴
浴
ろ
ろ
設
研修施設・浴槽の概要と殺菌消毒方法
用
途
在
県
工
年
月
用 者 数 ( 入 浴 者 数 )
槽
系
統
槽
使
用
時
間
帯
過 装 置 運 転 時 間 帯
過
器
種
類
3
循
環
量
[m /h]
2
面
積
[m ]
3
容
量
[m ]
回
数
[R/h]
消 毒 剤 の 種 類
2001年度
(平成13年度)
消毒剤の 投入方 法
消 毒 剤 の 種 類
2002~03年度
(平成14~15年度) 消毒剤の 投入方 法
ろ
浴
浴
循
過
器
槽
槽
環
79
研 修 施 設
宮 城 県
97年(平成9年) 2月
約 20,000 人/年
男
子
女
子
朝 と 夕方~夜
24 時間(女子は、利用期間のみ稼動)
カートリッジフィルタ + 石英斑岩
90.0
30.0
47.6
12.0
31.2
7.7
2.9
3.9
トリクロロイソシアヌル酸錠剤
塩素供給装置に投入して、自然溶解
電解 次亜塩 素酸
ポーラログラフ3極式塩素濃度計
で計測し、自動注入
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
を投入していた。
01 年度の調査開始時の試験開始初日に、ろ過装置内のカートリッジフィルタ
交換と麦飯石の水洗いを行ったが、交換・洗浄前の浴槽水のレジオネラ属菌検
査結果は、不検出であった。塩素剤の投入量は毎日昼過ぎに残留塩素濃度を測
定して、0.2mg/L を下回っている際にトリクロロイソシアヌル酸錠剤 10 錠(有
効塩素 135g)を溶解タンク(塩素剤供給装置)に投入している。
塩素剤投入の判断の基準を 0.2mg/L としているのは、浴槽表面に樹脂シート
でカバーをした場合、残留塩素濃度をほぼ 2 時間は維持できることを根拠とし
ている。測定期間中の平均塩素投入量は、測定初日~94 日目までが 80.4g、
初日~113 日目までが 11.0gであった。
試験開始 52 日後に浴槽から 60CFU/100mL のレジオネラ属菌が検出された。
当施設の浴槽水管理は、データ採取や塩素剤投入量の検討を行うなど、比較的
良好になされている。しかし塩素剤 の投入は基準最低限の残留塩素濃度
0.2mg/L を 2 時間維持できないと判断した場合に限って不定期に行われている。
結果として浴槽水換水のインターバルは長いものの、当施設のように比較的管
理の行き届いた部類に属する施設でも、頻繁にレジオネラ属菌の検査を行うと、
レジオネラ属菌が検出されることが判明した。
02 年~03 年度は、塩素濃度を自動制御し、電解次亜塩素酸を注入するよう
に改修した。改修後、集毛器のぬめりを感じなくなった一方、ろ材の汚濁が激
しくなった。浴槽と循環系の汚れを剥離させているものと予想される。
女子浴槽系統の調査結果のデータの提示と考察の記載は、省略する。
2.4 まとめ
2000 年(平成 12 年)12 月に改正された「公衆浴場における衛生等管理要領」
と「旅館業における衛生等管理要領」(平成 12 年 12 月 15 日 生衛発第 1811 号
厚生省生活衛生局長)には、「浴槽水の消毒に用いる塩素系薬剤は、浴槽水中の
遊離残留塩素濃度を 1 日 2 時間以上 0.2~0.4mg/L に保つことが望ましいこ
と。」とあった。
しかし、1 日 2 時間だけの遊離残留塩素濃度の維持では、循環ろ過系統に生
物膜が生成しやすいことがわかった。また生成した生物膜によって塩素が消費
80
第2章
表-2.2.6
入浴施設の実態調査から見る課題
研修施設・男子浴槽系統での殺菌消毒方法の違いによる浴槽水と拭き
取り検査の変化
塩素剤種類
投入方式
(調査時期)
(
ト 塩
リ 素
ク 供
ロ 給〇
然
ル ロ 装一
溶
酸 イ 置年
解
ソ 投度
シ 入
ア ・
ヌ 自
)
日目
15
29
43
57
71
85
95
113
(
30
62
99
143
168
181
206
240
279
317
~
電 〇
塩
解 二
素
次
濃
亜 〇
度
塩 三
制
素 年
御
酸 度
)
塩素剤種類
投入方式
(調査時期)
(
ト 塩
リ 素
ク 供
ロ 給〇
然
ル ロ 装一
溶
酸 イ 置年
解
ソ 投度
シ 入
ア ・
ヌ 自
)
(
~
電 〇
塩
解 二
素
次
濃
亜 〇
度
塩 三
制
素 年
御
酸 度
検査開始
からの日数
検査開始
からの日数
日目
15
29
43
57
71
85
浴 槽 水
一般細菌
CFU/mL
-
レジオネラ属菌
CFU/100mL
不検出
不検出
不検出
6.0×10
不検出
不検出
不検出
-
ATP
pmol/L
-
不検出
1.8×10
5.9×10
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
5.0×10
不検出
不検出
不検出
4.0×10
-
2.7×10 3
4
4.1×10
1
1.1×10 5
2
3.9×10
3.0×10
-
5
拭 き 取 り
一般細菌
CFU/mL
不検出
7
不検出
8
不検出
レジオネラ属菌
CFU/mL
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
6
)
95
113
30
62
99
143
168
181
206
7.4×10
1
1
不検出
不検出
不検出
240
279
317
不検出
-
ATP
pmol/L
4.4×10 2
不検出
不検出
不検出
不検出
3
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
4.1×10
不検出
4.7
8.9
3.9
1.8×10
不検出
-
不検出
-
アメーバ
個/mL
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
-
※ 拭き取り検査方法:浴槽系に浸漬したバイオフィルム試験片を定期的に「ふきふきチェック」
で拭き取り、試験水とした。
表中データは、その試験水中の値で示す。
シリコンゴムの試験片10cm2 を拭き取り、滅菌水10mLに懸濁している。
されることもわかり、長時間の遊離残留塩素濃度維持の必要性がわかった。
81
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
調査研究結果の成果によって、02 年(平成 14 年)10 月の「公衆浴場法第 3
条第 2 項並びに旅館業法第 4 条第 2 項及び同法施行令第 1 条に基づく条例等に
レジオネラ症発生防止対策を追加する際の指針」(平成 14 年 10 月 29 日 健発
第 1029004 号 厚生労働省健康局長通知)で「浴槽水の消毒に当たっては、塩素
系薬剤を使用し、浴槽水中の遊離残留塩素濃度を頻繁に測定して、通常 1L 中
0.2 ないし 0.4mg 程度を保ち、かつ、遊離残留塩素濃度は最大 1L 中 1.0mg を
超えないよう努めるとともに、当該測定結果は検査の日から 3 年間保管するこ
と。」となった。
82
第2章
3.
入浴施設の実態調査から見る課題
化学的洗浄後のろ過器内でのレジオネラ属菌等の推移
3.1 はじめに
ろ過器内のろ材でのレジオネラ属菌、一般細菌等の微生物項目の調査結果で
ある。
本項は、一部 2001 年度(平成 13 年度)の厚生科学研究費で(財)ビル管理教
育センターに設置した委員会での調査内容
5)、これを継続して実施した独自の
調査を(社)空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集 6)、
(社)空気調和・衛生工学
会 浴場施設におけるレジオネラ対策小委員会の報告書
7)や(社)空気調和・衛生
工学会誌 8)、専門誌 9)に執筆、発表したものを参考にしている。
3.2 調査方法と結果
「2. 化学的洗浄後の循環系でのレジオネラ属菌等の推移」で記載した浴槽循環
系を、過酸化水素を使用して化学的洗浄を実施した後、しばらく経って、ろ過
器からろ過材を取り出してレジオネラ属菌等を検査した。砂と石英斑岩は、ろ
過器の上部から採取した。カートリッジフィルタは、フィルタを取り出して、
ほぐして検査した。
ろ過器内のろ材でのレジオネラ属菌数等の状況は表-2.3.1 だが、砂から最高
表-2.3.1
調
査
時
期
施設名
ろ材
屋内浴槽
屋外浴槽
日帰入浴
施設
砂
~
〇
三
年
度
(参考)検
査開始から
浴槽系統 の日数
日目
年〇
度一
〇
二
ろ材でのレジオネラ属菌等の変化
屋内浴槽
屋外浴槽
石英斑岩
研修施設
カートリッジ
フィルタ
男子浴槽
女子浴槽
男子浴槽
女子浴槽
147
162
366
162
366
316
ろ 一般細菌
CFU/mL
6
2.1×10
6
3.1×10
6
3.0×10
6
6.0×10
4.6×106
4.4×106
7
5
7.0×10
83
材
レジオネラ属
菌
CFU/100mL
8
1.1×10
3.8×108
検出不能
不検出
2
4.2×10
3
4.0×10
不検出
不検出
不検出
不検出
アメーバ
個/mL
2
2.0×10
2
4.0×10
3
1.7×10
3
1.2×10
5.0×10 2
7.0×10 2
2.0×10 2
不検出
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
3.8×108CFU/100mL のレジオネラ属菌が分離された。日帰り入浴施設では、02
年度以降にろ過器の直前に電解次亜塩素酸を注入するように改修して、ポーラ
ログラフ式残留塩素濃度計で濃度管理をするようになった。その結果、レジオ
ネラ属菌は分離されたものの、かなり微生物の発生が少なくなった。塩素濃度
の管理が重要であることを示唆する結果を得た。
写真-2.3.1 に示すように 01 年度の測定前は約 6 年間使用したろ材が砂塊化
しており、ろ材を交換した。その後、約 2 年半経過した時点でのろ材は初期状
態に近く、サラサラした状態を保っていた。
研修施設は、ポーラログラフ式残留塩素濃度計で濃度管理をするようになっ
てからのデータである。逆洗のできない石英斑岩とカートリッジフィルタでも、
レジオネラ属菌は不検出となっている。
写真-2.3.1
砂式ろ過器から取り出したろ材の砂塊
3.3 まとめ
これまでろ過器は、レジオネラ属菌等の温床と考えられてきた。本調査を実
施したのもそのような意図である。
砂式ろ過器に充填されているろ過砂の中には、微生物が増殖するとともに、
菌体表面にグライコカリックスと呼ばれる粘液性物質を体外に産出する。微生
84
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
物と粘液性物質が混在、結合して、膜状物である生物膜(Biofilm)を形成する。
ろ過器を定期的に逆洗しても生物膜の形成を阻止することは難しく、砂の粒子
を固め、写真-2.3.1 のようなマッドボールとかライスボールと呼ばれる砂塊が
形成される。
生物膜はレジオネラ属菌の温床となるが、砂塊にもレジオネラ属菌が生息し
ている可能性が高い。ろ過砂の上部表面に水道(みずみち)ができている場合
は、下部には大きな砂塊が形成されていると推測できる。塩素濃度を常時一定
以上に維持していれば生物膜は生成し難いため、砂塊もできにくいとされてき
た。
「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成
15 年 7 月 25 日 厚生労働省告示第 264 号)に、
「ろ過器内は、湯水の流速が遅
くなり、最も生物膜や汚れ等が付着しやすい場所であるため、1 週間に 1 回以
上、ろ過器内に付着する生物膜等を逆洗浄等で物理的に十分排出すること。併
せて、ろ過器及び浴槽水が循環している配管内に付着する生物膜等を適切な消
毒方法で除去すること。また、ろ過器の前に設置する集毛器は、毎日清掃する
こと。」とある。厚生労働省告示も、ろ過器は、レジオネラ属菌の温床という考
えに基づいている。
この調査とは別に医学系の研究者が、ろ過器内でのレジオネラ属菌の調査を
した。ろ過器の直前に塩素を添加しても、砂式ろ過器内の中心部で、レジオネ
ラ属菌を絶滅することは困難であることを示唆した。2000 年(平成 12 年)12
月の厚生省通知「公衆浴場における衛生等管理要領」で、塩素をろ過器の手前に
注入することで、ろ過器の内部を消毒することになったが、意味を余り持たな
いとしている。
ここで、研究者によって 2 つの考え方がある。片方は、ろ過器を使わないこ
とがレジオネラ属菌対策には不可欠であるという考え方である。もう一方は、
2000 年にろ過器の手前に塩素を注入することで、ろ過器からレジオネラ属菌を
追放しようとしたが、実際には無理で、生物ろ過を復活させようという考え方
である。前者は、家庭用 24 時間風呂を調査した研究者が傾倒している。後者
は、自らの研究と考察が至らなかった反省も含めて医学系から工学系までの研
究者が主張し始めている。
85
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
生物膜が全くない砂式ろ過器では、濁度はろ過できても有機物が除去できな
い。しかし、生物ろ過だと有機物除去ができる。現在活動中の空気調和・衛生
工学会 給排水衛生設備委員会 浴槽水等の保全および計測小委員会(主査:関
東学院大学 野知啓子)で行った実験結果が表-2.3.2 である。実験結果である。
地球環境時代の今日、古から人間の生活や自然環境で培われてきた生物ろ過の
必要性を再考すべき時かもしれない。つまり、ろ過器イコール危険という短絡
的な考察を改めるべき時期に差し掛かっている。
表-2.3.2
最小値
-196
生物砂
ろ過法
-163
最大値
-38
66
75
100
100
中央値
-115
-20
55
100
100
9
28
25
37
29
ろ過法
DOC
除去率
[%]
ろ過方式の違いによる DOC 除去率(模擬浴槽水)
N 数
砂ろ過法
活性炭
600g
26
生物活性炭
生物ろ過法
200g
83
85
(社)空気調和・衛生工学会 給排水衛生設備委員会 浴槽水等の保全および計測小委
員会 配布資料
86
第2章
4.
入浴施設の実態調査から見る課題
化学的洗浄による安全・衛生・快適性の向上
4.1 はじめに
レジオネラ属菌は微生物等の生息と関わりがある。Legionella pneumophila
は、アメーバを中心とする原生動物宿主細胞内への感染、増殖と破壊を繰り返
して、宿主細胞内を生存増殖の場としている。つまり Legionella pneumophila
はアメーバに寄生する。Legionella pneumophila が細菌捕食性原生動物に餌と
して取り込まれると消化されずに細胞内で増殖し、終いには宿主の原生動物の
細胞膜を破壊する。宿主細胞が崩壊すると新たな宿主に入る。国立感染症研究
所の調査の例では、対象とした 237 浴槽のうち、約 6 割からアメーバが検出さ
れた。
また藻類との共生があるとも言われている。藍藻や緑藻などの藻類が光合成
により出す有機炭素化合物をレジオネラ属菌が利用し、レジオネラ属菌が出す
二酸化炭素を藻類が利用する。
この他、循環式浴槽ろ過系統では、配管内部やろ材などに形成される生物膜
(Biofilm)中にレジオネラ属菌が生育する。生物膜は、風呂や台所、歯垢など
のヌメリが身近な例とされている。生物膜の中には、細菌、アメーバなどの原
生動物や藻類等、多種多様な生物が生息している。当然、レジオネラ属菌も生
物膜の中に生息している。
レジオネラ属菌は、アメーバ、藻類や生物膜の中で生息するため、消毒剤や
紫外線から保護される。つまり生物膜などを除去しないと、レジオネラ属菌を
有効に殺菌消毒することはできない。このように生物膜は、レジオネラ属菌と
関係するために、除去する必要性がある。
本項は、空気調和・衛生工学会誌に掲載された『温浴設備の管理』8)と、専
門誌 9)10)11)12)の内容を参考にした。また 2004 年度(平成 16 年度)厚生労働
科学研究費で(財)ビル管理教育センターに設置された建築物の給水における水
質管理に関する調査研究部会の報告書 13)の一部も参考にした。
4.2 化学洗浄と生物膜剥離
前述したように生物膜はレジオネラ属菌の温床となるため、配管からは除去
87
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
することが大切である。
「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」
(厚生労
働省告示第 246 号)には、「レジオネラ属菌は、生物膜に生息する微生物等の
中で繁殖し、消毒剤から保護されているため、浴槽の清掃や浴槽水の消毒では
十分ではないことから、ろ過器及び浴槽水が循環する配管内等に付着する生物
膜の生成を抑制し、その除去を行うことが必要である」と記載されている。具
体的な「維持管理上の措置」の記述として、
「ろ過器及び浴槽水が循環している
配管内に付着する生物膜等を適切な消毒方法で除去すること」とある。
静岡県条例では、「配管その他の設備の管理」の項に、「水質検査によりレジ
オネラ属菌が検出された場合には、過酸化水素又は二酸化塩素処理による消毒
を行うこと。」とある。
生物膜の剥離は、過酸化水素や高濃度塩素による方法がある。実際に循環系
で数 10mg/L の高濃度の次亜塩素酸ナトリウムによる洗浄を行っても、生物膜
を除去するのは困難で、汚れの酷い系統で泡が出たり、汚れが溶出したりする
程度である。泡や汚れの原因は、塩素が微生物の細胞膜を破壊し、多糖類やた
んぱく質を溶出するためである。
「公衆浴場における衛生等管理要領」にある「循環ろ過装置を使用する場合は、
ろ材の種類を問わず、ろ過装置自体がレジオネラ属菌の供給源とならないよう、
消毒を 1 週間に 1 回以上実施すること。」の具体的方法は、5~10%の高濃度塩
素消毒である。
生物膜を除去する方法として効果が高いものは、過酸化水素による洗浄であ
る。過酸化水素で洗浄した後は、写真-2.4.1 や写真-2.4.2 のようになることが
あるが、写真は温泉分のスケールも同時に剥離させたものだ。作業は、30%程
度の過酸化水素溶液を浴槽内で 2~3%に稀釈し、ろ過系に循環させ、生物膜を
剥離・除去させる。温泉成分や汚れの付着が強い場合、直管部でも剥離できな
かったり、継手やバルブ類の段差部分の生物膜も除去できなかったりする。
温泉利用の浴槽系統で、鉄やマンガン分が配管内面に付着していると過酸化
水素が反応し、空気溜りが生じ、循環できなくなることがある。技術レベルの
低い施工業者が、ろ過器の中に過酸化水素を直接投入して、大量の空気が発生
して、ろ過器の蓋を塞いだために写真-2.4.3 のように、ハンドレイアップ法で
88
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
製造した FRP 製のろ過器に大きな損傷を与えた例もある。
また錆が剥離して、
漏水トラブルが生じることもある。トラブル回避のためや過酸化水素のコスト
を下げたいがために低濃度で洗浄することも多いが、効果は薄い。
配管の洗浄で剥離した生物膜が、砂ろ材の中に潜り込まないようにしなけれ
ばならない。剥離した生物膜が、砂ろ材の中に入ると逆洗しても除去できにく
い。小さなろ過器ではろ材を取り出した状態で洗浄し、大きいものはろ過器に
写真-2.4.1
循環系を過酸化水素で洗浄した後の浴槽の様子(1)
写真-2.4.2
循環系を過酸化水素で洗浄した後の浴槽の様子(2)
89
第2章
写真-2.4.3
写真-2.4.4
入浴施設の実態調査から見る課題
過酸化水素洗浄作業でろ過器を損傷させた様子
過酸化水素後に分解酵素を投入した後の浴槽の様子(1)
バイパスを設けて循環させる。国産の五方弁はバイパス機能を有しているが、
それ以外は仮設のバイパス管を取り付ける。バイパスを架けた場合、ろ過器内
は別途洗浄する。
90
第2章
写真-2.4.5
入浴施設の実態調査から見る課題
過酸化水素後に分解酵素を投入した後の浴槽の様子(2)
循環ろ過系統以外の系統も洗浄しなければならない。浴槽間の連通管、レベ
ル管、超音波浴や気泡浴の配管も洗浄の必要があるが、気泡浴配管の洗浄は困
難で、現実には洗浄できないことも多い。
気泡浴槽や超音波浴槽の危険性が叫ばれ、装置を停止している施設が増えて
いる。停止状態は、生物膜を増殖させ、余計に危険な状況になる。装置停止に
併せて、気泡板や超音波ノズルの孔を塞ぐことが、レジオネラ症防止には、重
要である。
洗浄作業の際、目に過酸化水素が入らないように防護する。
91
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
洗浄を終えた廃水は、過マンガン酸カリウム消費量が高いため、浴槽排水が
浄化槽系統の場合は、分解酵素 Catalase による中和も必要となる。二酸化塩
素ではチオ硫酸ナトリウムで中和してから廃水する。分解酵素 Catalase を投
入すると写真-2.4.6 や写真-2.4.5 のように爆発的に大量の気泡が発生し、ポン
プが停止して。モータが焼き切れることもある。
4.3 まとめ
「第 2 章
2. 化学的洗浄後の循環系でのレジオネラ属菌等の推移」の表-2.3
と表-2.4 に示したように、循環式浴槽ろ過系統の配管やろ材に生物膜が生成さ
れると、塩素を消費する。低い塩素濃度と少ない塩素添加量で、消毒するため
には不要な生物膜はない方が良い。高い塩素濃度は、入浴環境としての快適性
を損なうし、揮発量が増えるので、浴室内とその周辺の内装や照明等の設備機
器の腐食や劣化を促進させる。
これとは反対に「第 2 章
3. 化学的洗浄後のろ過器内でのレジオネラ属菌等
の推移」には、生物膜が全くない砂ろ過器では、濁度はろ過できても有機物が
除去できないと記載した。
このようにレジオネラ属菌、アメーバや藻類を消毒剤から保護してしまう役
目の生物膜と、水を浄化する役目の生物膜という、トレードオフの関係が生物
膜には存在している。
安全面からの視点では、消毒剤がレジオネラ属菌に対して有効に働くように、
生物膜はない方が良いと考え勝ちだ。しかしレジオネラ属菌の生育には有機物
濃度が関係することから、門切り型の思考は通用しない。衛生面と快適性では、
生物膜があることにより有機物濃度が下がることから、望ましい面もある。
つまり配管(とくに死に水)には生物膜をなくして、ろ材には適度な生物膜
を生成させることが、今後の課題である。
生物膜を利用したろ材での有機物の除去は、関東学院大学の野知啓子氏を中
心とした(社)空気調和・衛生工学会 給排水衛生設備委員会 浴槽水等の保全お
よび計測小委員会で実験を重ねて、鋭利検討中である。医学分野では、九州大
学大学院医学研究院基礎医学部門(細菌学)の吉田眞一教授が研究中で、新し
い知見が出される日も近い。
92
第2章
5.
入浴施設の実態調査から見る課題
死に水(しにみず)部分の微生物汚染
5.1 はじめに
循環ろ過系統や浴槽に接続している配管の中には、死に水(しにみず・Dead
Leg)になる部分がある。死に水部分は、塩素等の消毒剤も行き渡りにくいた
めに生物膜が生成しやすいと考えられてきた。短い配管分岐部分は、配管内部
の水の乱流によって、水が入れ替わりやすいので、さほど問題にならないとさ
れている。問題なのは、循環配管等から取り出した配管が長い場合である。
長い死に水部分を持つ配管は、ろ過器や循環系の中の排水管、使用を停止し
ている超音波ノズルや気泡板、浴槽水位を制御するためのレベル管や連通管な
どが挙げられる。そこで、調査可能なレベル管から、水を抜き取りレジオネラ
属菌等の調査を行った。
本項は、(社)空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集 6)、
(社)空気調和・衛生
工学会 浴場施設におけるレジオネラ対策小委員会の報告書 7)や専門誌 9)に執
筆、発表したものを参考にした。
5.2 レベル管の微生物汚染調査
研修施設と社員保養施設のレベル管の調査結果である。研修施設の浴槽は、
「2. 化学的洗浄後の循環系でのレジオネラ属菌等の推移」で調査した表-2.5
に示した施設である。社員保養施設の浴槽等の概要は、表-2.5.1 である。
浴槽の水位は、浴槽に接続したレベル管の末端に設置した 3P 電極棒で制御
するのが一般的である。
レベル管でのレジオネラ属菌数等の状況は、表-2.5.2 である。研修施設での
日数は「2. 化学的洗浄後の循環系でのレジオネラ属菌等の推移」による。何れ
の浴槽から採取した水からはレジオネラ属菌が検出されなかった。しかし、レ
ベル管から採取した水、全てからレジオネラ属菌が分離された。
研修施設のレベル管のアイソメトリック図は、図-2.5.1 と図-2.5.2 である。
男子で 0.8m、女子で 3.8mと比較的短い。浴槽からの取り出しは、一般に底面
とすることが多いが、研修施設では男女とも壁面とし、特に女子系統は凹部(ト
ラップ様)が全くない。それでも高い濃度のレジオネラ属菌が、検出された。
93
第2章
表-2.5.1
施
所
竣
利
浴
浴
ろ
ろ
設
社員保養施設・浴槽の概要と殺菌消毒方法
用
途
在
県
工
年
月
用 者 数 ( 入 浴 者 数 )
槽
系
統
槽
使
用
時
間
帯
過 装 置 運 転 時 間 帯
過
器
種
類
3
循
環
量
[m /h]
2
面
積
[m ]
3
容
量
[m ]
回
数
[R/h]
消 毒 剤 の 種 類
2001年度
(平成13年度)
消毒剤の 投入方 法
消 毒 剤 の 種 類
2002~03年度
(平成14~15年度) 消毒剤の 投入方 法
ろ
浴
浴
循
過
器
槽
槽
環
表-2.5.2
施 設名
浴槽系統
研修 施設
女子浴槽
施 設名
男子浴槽
女子浴槽
浴槽系統
男子浴槽
研修 施設
女子浴槽
社員保養施設
社員保 養施設
岩 手 県
92年(平成4年) 11月
約 2,000 人/年
男
子
女
子
24 時間
24 時間
カートリッジフィルタ + 石英斑岩
18.0
7.3
10.1
4.5
6.0
2.7
3.0
2.7
ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム顆粒
浴槽に直接投入
電解 次亜塩 素酸
ポーラログラフ3極式塩素濃度計
で計測し、自動注入
研修施設等でのレベル管のレジオネラ属菌の生息状況
男子浴槽
社員保養施設
入浴施設の実態調査から見る課題
男子浴槽
女子浴槽
(参考)検
査開始か
らの日数
日目
279
279
279
279
(11月6日)
(11月6日)
(参考)検
査開始か
らの日数
日目
279
279
279
279
(11月6日)
(11月6日)
レベル管
一般細菌 レジオネラ属菌
CFU/mL
備
考
CFU/100mL
5
4
6.4×10
3.1×10 チオ硫酸ナトリウム添加せず
5
5
1.8×10 1.0×10 以上 チオ硫酸ナトリウム添加
4
4
1.1×10 チオ硫酸ナトリウム添加せず
1.9×10
3.4×103 チオ硫酸ナトリウム添加
8.2×10 4
5
3.0×102 チオ硫酸ナトリウム添加
3.3×10
9.5×102 チオ硫酸ナトリウム添加
1.2×10 6
浴 槽 水
一般細菌 レジオネラ属菌
CFU/mL
6
1.2×10
5
3.0×10
2
1.9×10
-
94
CFU/100mL
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
不検出
備
考
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
男子
3P電極棒
0.3
50SU
0.15
0.3
25SU
0.8
25VP
0.5
25SU
図-2.5.1 研修施設男子浴槽系統のレベル管アイソメトリック図
3P電極棒
女子
0.8
25VP
0.4
50SU
2.8
50SU
0.15
0.1
50SU
0.5
25SU
図-2.5.2 研修施設女子浴槽系統のレベル管アイソメトリック図
95
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
改造してレベル管
から取り出した排水
写真-2.5.1
研修施設男子浴槽系統のレベル管の改造
改造してレベル管
から取り出した排水
写真-2.5.2
研修施設女子浴槽系統のレベル管の改造
96
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
男子
3.9
75A
HTLP
3P電極棒
0.9
75A
HTLP
1.6H
25A
HTLP
0.9
25A
HTLP
0.3H
75A
HTLP
0.7H
75A
HTLP
3.4
75A
HTLP
0.4
75A
HTLP
0.7H
75A
HTLP
図-2.5.3
1.9
75A
HTLP
保養施設男子浴槽系統のレベル管アイソメトリック図
3P電極棒
3.9
75A
HTLP
0.3H
75A
HTLP
0.8
75A
HTLP
0.9
75A
HTLP
1.6H
75A
HTLP
0.5H
75A
HTLP
2.2
75A
HTLP
1.2
75A
HTLP
0.7H
75A
HTLP
図-2.5.4
1.7
75A
HTLP
保養施設女子浴槽系統のレベル管アイソメトリック図
97
第2章
入浴施設の実態調査から見る課題
研修施設の浴槽系統の配管は、一般フロアの上を通っている。このために写
真-2.5.1 と写真-2.5.2 のようにレベル管から排水を取る改造を行った。1 週間
に 1 回程度、ろ過器の逆洗に合わせて、排水を行っている。
社員保養施設のアイソメトリック図は、図-2.5.3 と図-2.5.4 で、どちらも約
10mの水平長さを持つ。この施設は、設計時点では、常に新しい湯を浴槽に投
入することを考えていたためにレベル管を不要としていた。しかし、施工途中
に省エネルギーを考慮して、浴槽の水位制御を行うことにしたために配管の凹
凸ができざるを得なかった。少しでもレベル管に滞留する水が入れ替わりやす
いように、通常のレベル管より太い配管にした。
凹凸の配管や長い水平距離の配管など、研修施設より条件は悪いが、低い濃
度のレジオネラ属菌であった。塩素は水より比重が大きいために、太めのレベ
ル管を伝わって行った可能性も考えられる。
保養施設では、レベル管の途中に排水管を設ける改造を行った。しかし床下
ピット内に排水バルブを設けることしかできなかったために、永続的に適当な
保全が取られることができるかは、不明である。
5.3 まとめ
快適性を損なうことが多い、高い塩素濃度を避けるために、このような死に
水部分を可能な限り避けるべきという知見を、調査によって得ることができて、
提言できた。
レベル管のように、死に水となる循環しない配管部分のレジオネラ属菌対策
はかなり重要であることがわかった。
この調査結果を踏まえて、浴槽下部に圧力センサを取り付けて、浴槽水の深
さを検知して、補給水を制御する装置も開発されて、市販されるようになった。
98
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