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1 健康の自己管理の為の BIT と BITAS 自らの健康状態を知る為の最高

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1 健康の自己管理の為の BIT と BITAS 自らの健康状態を知る為の最高
1
健康の自己管理の為の BIT と BITAS
自らの健康状態を知る為の最高の方法は、専門のクリニックや病院に行って、最高の医療
機器を使って科学的・客観的に調べてもらうことです。明らかな病気の兆候が判った時には、
そうするべきです。
しかし、現実的に問題なのは、自分は健康と思っている人です。体内で何が生じているの
かは定期的にチェックしないと判らない事が多いのですが、自分で健康と思っている人は
なかなかチェックしません。その間に色々と病状が進んでしまうことがあります。
近頃では未病という言葉も一般的になってきました。この未病の人たちが「病気になるか
も知れない?」との疑念を持った時にも、なかなかクリニックや病院に行かないで、結果的
にかなり悪くなってしまってから、慌てて病院に行くというケースが多い様です。
このような状況を避けるためには、自分自身で日常的に健康の自己管理をする必要があ
ります。健康の崩れるサインをキャッチする物差しを常日頃から作っておき、いち早く兆候
を見つけ出すのです。
そして、今はそうしたことを簡単に支援するツールとしての健康機器、あるいは日々の生
活の中で用いられる簡便な医療機器が登場してきています。その中でも最良のものが、ここ
で紹介する測定装置である BIT と解析ソフトウェアである BITAS です。BIT はそのサイ
ンを出すための心臓の動きや肺の状態、体温や、日々の運動あるいは身体の活動状態を検出
します。この情報を解析して瞬間心拍、呼吸数、更に、睡眠状態や自律神経の働きを明らか
にし、何かのおかしな動きや兆候を知らせるのが BITAS です。
BIT の構造・機能と特色
2
BIT とは、生体情報追跡の為のウェア
ラブルセンサーです。その中には、体の状
態を測定する為の3つのセンサー、心電
計、三軸の加速度センサー、体温計、が入
っていて図1のように装着して用いま
す。この超小型の BIT(40 ㎜×39 ㎜×8
㎜)の中には、上下方向、
左右方向、前後方向の3つの方向の加
速の大きさを検出するセンサーが入って
図 1 M-BIT 装着例(4 歳児)
いるので、上下方向を体の上下方向に合
わせて、上下間違わずに装着する事が必要です。重量は、14g と超軽量なので、装着して五
分間くらいで装着していることを忘れてしまいます。
シャワーやお風呂に入る事、スポーツ等、日常生活をそのまま行いながらの測定が出来る
ので大変便利です。長時間(24時間以上)の健康チェックが可能であり、主として 24 時
間装着してのデータを解析して、睡眠評価や1日の生活行動評価や健康状態の把握等を行
います(図2)。
図2 生解析結果
BITAS とは
3
『BITAS』は BIT で測定したデータを解析し、それぞれの部位・目的に従って健康状態
をお知らせるソフトウェア群の総称で、多くのソフトウェアが存在します。どのソフトウェ
アも解析の基本単位は1分間です。1 分間毎の各項目の値から、健康に関する様々な情報を
解き明かしていきます。ここでは、健康な生活の為の3つの基本、身体活動・メンタルスト
レス・睡眠に関連した3つの基本的ソフトウェア、身体活動の Physical Activity(図3)
、
メンタルストレスの Stress(図4)、睡眠の SLEEP(図5)をご紹介します。
図3 身体活動
図4 メンタルストレス
図5 睡眠挙動
この章の以下に続く節では、この3つの BITAS から得られる情報を、健康管理との関連
からご説明します。更に、その深奥、『何故、このような事が判るのか』あるいは背景知識
に関しては、次の章でご説明致します。
3-1 BITAS Physical Activity
BITAS Physical Activity は、皆さんが起きている時に、どの位の運動、あるいは、活動
をしているかを示す身体活動の強度・量と関連した事を示します。
昔は、運動量管理は万歩計を使用して歩数で行われていました。万歩計では、1歩毎の衝
撃を検出していたので、誤検出も多く、また、歩数を健康管理の為の具体的な項目に結びつ
ける事は出来ませんでした。1日に1万歩を歩こうというガイドラインを記憶されている
方も多いと思います。
近年では、加速度センサーの普及に伴い、人体の活動により生成される加速度の変動をよ
り詳細に測定し、
『消費エネルギー(kcal) 』の形で結果を表示するものが多い様です。カロ
リーメーターと呼ばれています。また、携帯電話に活動量測定機能があるのも当たり前にな
りました。しかしながら、活動の測定の場合は、体の動きをきちんと反映できる事が大切で
す。小型軽量で体との一体感の良い専用の装置を使用する事が望ましいと思います。
最近の日本では、活動量が大きい
表 1 消費エネルギー
時も小さい時も(活動強度が強い時も
弱い時も)、活動量を全て総和して、
消費エネルギーの形で示しています(表 1)
。表1に示した結果に kg を単位とした体重を掛
けると kcal を単位とした日本流の消費エネルギーが得られます。
一方、欧米では、その時々の活動強度を 1 分間毎に、その活動による消費エネルギーが、
安静にして座っている場合の何倍になるかという比で表現します。この比は
『METs(Metabolic Equivalents) 』
、(日本語では『代謝相当量』)といいます。したがって、
安静にして座っている場合の
METs は1になります。表 2 に
表 2 身体活動と METs、活動の分類
示していますように、同じ歩く
事でも、室内歩行は 2METs、屋
外の散歩は 2.5、しっかり歩く
場合は 3、更に勢い良く歩く場
合は 4-5METs になります。そ
して、何 METs の運動を何分間
したかという事で活動量を評
価します。
更に、METs の値により、運動・活動は4つに分類されます。1-1.5 METs が座位活動、
1.5-3METs が軽強度活動、3-6METs が中強度活動、6METs 以上が高強度活動です。そし
て、心肺機能の維持・発達等の観点で、運動として有効なのは中強度活動以上の活動とされ
ています。身体の発達期にある 3-5 歳児は、1 日に 120 分以上中強度以上の活動をする事が
望ましい、成人でも 1 日に 30
表 3 身体活動量と心拍数
分以上、というガイドライン
が出されています。表 3 にこ
の4つの種類の活動を行った
分数とその時の心拍数の平均
値を示しています。また、中
強度活動と高強度活動の分数
の合計を有効活動の分数とし
て示し、その値に応じて成人を対象としたガイドラインに基づく励ましの言葉と図を示し
ています。
図 6 には、測定した全時間範囲を1時間毎に分割し、その1時間での軽強度、中強度及び
高強度活動のパーセンテージをグラフに示しています。この図 6 により、24時間の運動・
活動挙動を詳細に把握できます。
欧米では、大人
も子どもも、TV
をみる、ゲームを
する等、座位的状
態で過ごす時間
の割合が多い事
が問題になって
います。我々が、
幼稚園児の身体
活動挙動を海外
と比較した報告
では、軽強度活動
が多く、その分、
座位活動が少な
いのが、日本の子
図 7 1時間あたりの各活動レベルの身体活動のパーセンテージ
ども達の特徴でした。表及び図を見るとこのデータでも軽強度活動である時間が多い事が
判ります。日本人に多いこの室内歩行等による軽強度活動は、残念ながら身体の機能の維持
や発達に有効ではありません。
例えば、仕事上・生活上多数回行わざるを得ない屋内での歩行をスキップに置き換えると、
軽強度活動から中強度活動あるいは高強度活動に変える事ができます。スキップには跳び
上がる要素があるからです。日本の木造の建物内で行っても、周りのものや人に悪い影響は
与えません。このように、運動・活動の方法を工夫して、忙しい中でもスマートに、健康維
持に必要な運動量を確保しましょう。
図 8 は、
『心拍数』、
『呼吸数』と『身体活動強度』の関係です。心拍数、呼吸数ともに身
体活動が無いと小さな値です。身体活動を行うとその強度に依存して大きくなりますが、活
動を止めて
もすぐには
小さな値に
戻 り ま せ
ん。したが
って、上に
開いた三角
形になりま
す。運動を
中止した後
の心拍数、
図 8 心拍数、呼吸数と身体活動強度の関係
呼吸数の戻り方は、肉体的鍛錬度によって変わります。したがって、トレーニングを行いな
がら、測定を繰り返すと、位置や形状が変わって行きます。努力を続けたポジティブな効果
も、怠ったネガティブな効果も可視化出来ます。継続的に測定を行い、トレーニングの効果
を視覚的に味わうのは如何でしょうか?
また、人によっては、身体活動強度が小さくても心拍数が大きな場合があります。このよ
うな人に、根性論で迫ると不幸な事故を引き起こす可能性があります。学校の先生、スポー
ツの指導者の方々は、指導する対象のこのようなデータを把握しておく必要があります。
3-2BITAS Stress
3-2-1 ストレスとは
人の心臓は絶え間なく収縮を繰り返して血液を全身に送っています。1分間に心臓が何
回収縮するかを「心拍数」といいます。この心臓並びに動脈系更には内臓の諸器官は、我々
が意識しなくても働き続け、我々を取り巻く環境の変化に対応して自動的に調整されます。
我々の体が、全く反対方向に作用する2つの『自律神経』、
「交感神経系」と「副交感神経系」
のバランスにより支配されているからです。
先にも述べたように、夜間、眠っている時には、動脈を拡張させ柔らかくして、血液を体
の隅々にまで届け、栄養分の補給と老廃物の搬出行ないます。この時は、リラックスさせる
働き持つ副交感神経の活動が優位になります。心拍数は小さくなります。
責任ある仕事をする時、戦う時、危機に臨むときは、脳の血圧を増加させる必要がありま
す。このような場合には、動脈を収縮させて硬く細くし、心拍数を増加させます。この場合
は、緊張させる働きを持つ交感神経が優位に活動します。血圧が増大し、脳の血圧も上昇し
ます。交感神経活動が大きい = ストレスが大きい = 悪い事 と考えておられる方が多い
様ですが、これは間違いです。外からの刺激(実はこれがストレスです)に対応して受動的に
交感神経が大きくなる場合もありますが、積極的に活動しようとする場合には言わば能動
的に交感神経活動が大きくなります。世の中での呼ばれ方にならって、前者を受動的ストレ
ス、後者を能動的ストレスと呼びます。
心臓の収縮から次の収縮までの時間間隔(これをRR間隔といいます。)は、実は一定で
はなく、時々刻々と変動しています。これも、心臓が次の収縮までの時間間隔を短くしよう
とする交感神経と、長くしようとする副交感神経の拮抗的に働くからです。間隔のばらつき
が大きいほど自律神経活動は元気という事になります。このばらつきの大きさを自律神経
活動の健康度と呼びます。
外部からの刺激や心の状態の変化に伴い、交感神経活動も自律神経活動の健康度も日々
頻繁に変動しています。自律神経活動の健康度は、外部からの刺激が大きいと小さくなり、
刺激が持続し疲労が蓄積すると全般的に小さくなってしまいます。したがって、朝は健康度
が大きいが、仕事中に減少し、夕方は小さな値になります。もちろん、健常者の場合には一
晩眠って疲労回復した翌朝には、再び大きな値に戻ります。
皆さまがストレスが大きいという言葉に持たれていた悪いイメージは、受動的なストレ
スに対するものであったわけです。そして、この受動的なストレスが大きな状態が続くと、
自律神経活動の健康度が一日中小さな値を示すようになってしまいます。自律神経活動が
不健康になってしまう訳です。更に、続くと、自律神経活動失調状態や抑うつ状態等、慢性
的な不健康に陥ってしまいます。仕事や人間関係の維持ができなくなります。
3-2-2 ストレス評価の実際
BITAS Stress では、交感神経活動の値と自律神経活動の健康度の値の変化挙動に着目し
ます。1 日を、一般に働く人の出社前、勤務中、退社後に相当する起床後 3 時間、その後の
9 時間、更にその後ベッドに入るまでの時間、及び在床時間の 4 つに分割し、1 日の中での
ストレス状況を解析します。
図 9 にはこの 4
つの領域の Y マッ
プを示していま
す。Y マップとは、
横軸を自律神経の
活動度、縦軸を交
感神経活動の値と
した 2 次元のマッ
プです。オレンジ
の領域は受動的ス
トレス、赤の領域
は能動的ストレス
図 9 4つの時間領域のYプロット
の分布を示してい
ます。自律神経活動度0.05を境界としています。赤の領域の大きいところまで分布が拡
がっていれば自律神経活動は全般的に健康です。赤の領域で交感神経活動の値が大きけれ
ば積極的に生きた証拠です。分布がオレンジの範囲に集中していれば、自律神経活動は全般
的に不健康で、この領域で交感神経活動の値が大きければ、受動的なストレスが大きかった
訳です。
責任ある地位にあり多忙なこの被験者の場合、出社前には小さな受動的領域の割合が在
社時、退社後と大きくなっている事が判ります。一方、大きな交感神経活動の値は能動的な
領域のみでみられ、精神的な不健康になる心配はない事が予想されます。
深呼吸する、美しい花や美術を観る、好きな飲み物を飲んだり、アロマを嗅ぐ等、自分な
りのちょっとしたストレス解除法を見つけて、自律神経活動を健康にしましょう。これらの
方法は、日本最高で世界的にも高名なメンタルストレスの権威により、モントルー国際スト
レス学会でストレス解除効果が実証されています。
これまで交感神経活動の値のみで 1 次元の評価をされていたものを、2 次元の Y マップ
による評価を導入し、良いストレスと悪いストレスに分けたのは世界に誇る我々の成果で
す。最初にこの点に気づいた研究員を記念してYマップと名付けました。
先にも述べた様に交感神経活動は、人間への外部からの評価できる影響により頻繁に増
加と減少を繰り返します。したがって、交感神経活動が大きな被験者とは、単に交感神経活
動が大きなピークを示すのみでなく、大きな値に留まる傾向にある被験者であると考えら
れます。
また、交感神経活動は良質な睡眠の際には減少するものです。従って、睡眠時に交感神経
活動が残存する事もストレスが大きい事を意味します。在床時の交感神経活動の分布があ
るレベル以下に減少しない被験者と考えられます。
表 4 には、各領域での自律神経活動の健康度を代表するパラメータの値と判定結果、及
び、ストレスが大きかったか否かの判定結果、及び睡眠時にストレスが残存したか否かの判
定結果を示しています。
表 4 自律神経活動判定結果
自律神経活動健康
自律神経活動不健康
3-3 BITAS SLEEP
規則正しく質の良い睡眠をとることは、また、疲労回復の根本です。質の良い睡眠中には、
自律神経系の中の緊張に関与する交感神経の活動が小さくなり、リラックスに関与する副
交感神経の活動が増加します。このために、全身の血管が拡張し、血行が良くなる。血液の
流れる量が多くなり、体の末梢組織へ、より多くの栄養や体の器官を修復するのに必要な材
料が運ばれ、また、末梢組織でできた老廃物等が逆に運び出されます。このようにして、体
の組織はリフレッシュされ、疲労は回復します。また、体の中心部で生成された熱も全身へ
運ばれるために質の良い睡眠をとると全身が温かくなります。
普通人は夜になると寝床に入って横になり、やがて眠る(睡眠に入る)
。朝になると目が
覚め(覚醒する)、寝床から起き上がる。寝床に入る時刻を『入床時刻』
、睡眠に入る時刻を
『入眠時刻』
、目が覚める時刻を『覚醒時刻』
、寝床から起き上がる時刻を『離床時刻』とい
います。
今日、不眠症や睡眠時無呼吸で悩んでいる人が多い様です。しかし、病院に行って睡眠検
査を受けるには1日入院しなければならないので、躊躇してしまう人が多いのです。また、
予約が詰まっている事が多く、必要を感じてからずいぶん後でなければ、検査を受ける事が
できません。さらに、検査の為の睡眠の際には、睡眠環境が大きく変わるので、毎日の普通
の睡眠状態になるのも難しいのです。
しかしながら、BIT を使用しますと、日常の生活の中での睡眠の測定を行う事ができま
す。そして、世界で唯一、小さな子供でも測定が可能です。
さて、それでは「何が得られるのでしょうか」
BIT を正しく装着して頂くと、BITAS SLEEP は、睡眠を開始した時刻、睡眠時間の長さ
から、睡眠の質に関する情報、リラックス度、REM 睡眠の挙動、睡眠時無呼吸の有無度合
いと、皆様が睡眠に関して知りたい殆どすべての情報をアウトプットする事ができます。ま
た、BITAS SLEEP では、
『入床時刻』を在床時間の始まる時刻、
『起床時刻』を在床時間の
終わる時刻として求めています。また、
『入眠時刻』を睡眠区間の始まる時刻、
『覚醒時刻』
を睡眠区間の終わる時刻として求めます。その結果は、図に例を示したパネルにまとめられ
ています。それでは、このパネルの各部を順にご説明しましょう。
3-3-1 睡眠の質を示すレーダーチャート(図 10)
一般に睡眠の質といわれるものは睡眠時間の長さ、入眠潜時、途中覚醒回数、睡眠効率、
姿勢変動回数及び睡眠時の自律神経活動のバランスの6つです。ここでは、これらの評価結
果を 6 角形のレーダーチャートで示しています。外側に行くほど良い状態である事を示す
様に描かれており、緑が理想的な状態、肌色が貴方の状態を示しています。
図 10 睡眠の質
A
睡眠時間―8時間が基準
一般に8時間が理想とされています。個人差もありますので、自分の常日頃の睡眠時間も
参考にして判断してください。
B
入眠潜時―10分位までが最適
寝床に入った『入床時刻』から、眠りに落ちた『入眠時刻』までの時間です。適度な疲労
感があるとすぐに眠れますが、疲れすぎていたり、運動不足であったり、心配事があるとな
かなか眠れません。
C
途中覚醒回数―(大きな体動回数)5回程度まで
寝心地の悪さ等による大きな体の動きの回数です。覚醒を自覚する場合も、自覚しない場
合もあります。
D
睡眠効率―0.9 程度
入床してから離床までの間の時間の中で、実際に寝ている時間がどの位かを示す数値で、
0.9 以上なら良いと判断します。日中に昼寝をしたり、身体活動が小さかったりすると、途
中覚醒回数が増加したり、入眠潜時が大きくなり、睡眠効率は低下します。
E
姿勢変化回数(寝返り等)―30回程度
寝返りの回数です。体の同じ個所で寝床に接していると、その個所のダメージが大きくな
り血流が滞るので、体の姿勢を
変化させて負担を分散する必要
があります。この為の体の自然
な反応です。一般的には、肉体疲
労が大きかったり、筋力が低下
したり、寝具が不適切であると
回数が小さくなりますが、人に
よっては姿勢が変化しない場合
が良い場合もあります。
図 11 覚醒時と睡眠時の自律神経活動マップ
睡眠が浅い、肉体疲労感がと
ても大きい、暑苦しさを感じる
場合には大きな値になります。
体型によっても変化します。肥
満傾向にある場合や、女性では
小さめの値になるようです。
F
自律神経のバランス―1.0
程度
睡眠時は、自律神経系の中の
図 12 睡眠時の自律神経活動マップ (同一被験者)
緊張に関与する交感神経の活動
が小さくなり、リラックスに関与する副交感神経の活動が増加する事が望ましい訳ですが、
その度合いを示します。大きな値は、緊張度が大きく残存し、リラックス度が小さい事を示
します。図 11 に示した覚醒時と睡眠時の自律神経活
動マップとも対応します。
同じ被験者でも、肉体的疲労度や環境、自律神経活
動の状態によって、睡眠時の自律神経活動のマップの
形状や自律神経のバランスの値は変わります。例え
ば、図 11 の場合は、自律神経のバランスの値は 1.105
ですが、図 12 の場合は 2.137 になります。
3-3-2 睡眠変数の表
健全な生活を示す規則的な睡眠・覚醒パターンと
は、毎日の『入眠時刻』
・
『覚醒時刻』がほぼ一致して
いる事です。これらの時刻や時間の長さ、睡眠の質に
関するパラメータの値を表5にまとめています。
表5 睡眠変数
3-3-3 1 日 24 時間のなかでの睡眠時の挙動の特徴と睡眠時無呼吸
図 13 は、1 日 24 時間のデータの中での睡眠時の特徴を示しています。
図 13 基本的なパラメータの 24 時間の挙動
(時刻の単位は分。測定開始日の 0 時 0 分基
最上段は、CVRR、自律神経の健康度の変化を示しています。
次の段は睡眠領域です。
次の段は睡眠時無呼吸の発生状況です。箱型の台が解析
表 6 睡眠時無呼吸
した時間領域、箱から伸びている髭が、睡眠時無呼吸が発
生したエポックです。
1999年にアメリカ睡眠医学アカデミーは、日中の眠
気及び居眠り挙動と、夜間の睡眠時のモニタリング結果に
基づき、
『睡眠時無呼吸』を、軽度、中程度及び重篤の3段階に分類しました。睡眠時の無
呼吸の検出数が、1時間あたり5回から15回の場合は軽度とされています。テレビ視聴、
読書や旅客としての旅行中等、注意力をあまり必要としない活動中に眠気や居眠りが発生
する程度です。社交的、職業的機能に対する障害は軽微なものです。
睡眠時の無呼吸の検出数が、1時間あたり15回から30回の場合は中程度とされてい
ます。コンサート、会議、発表視聴等、中程度の注意力を必要とする活動中に眠気や居眠り
が発生する程度です。社交的、職業的機能に対する障害は中程度のものです。
睡眠時の無呼吸の検出数が、1時間あたり30回以上の場合は重篤とされています。食事
中、会話中、歩行中および運転中等、よりアクティブな注意力を必要とする活動中に眠気や
居眠りが発生します。社交的、職業的機能に対する障害は顕著なものです。
日本でも、主にはこの分類が使用されています。神奈川県では緑ナンバーのバスの運転手
さんは『睡眠時無呼吸』の検査を受け、重篤の場合は、運転業務から外される様です。
我々もこの分類に基づき睡眠時無呼吸の検出結果をまとめて表 6 に示しています。
その下は皮膚温度、心拍数及び呼吸周波数が続きます。睡眠時の皮膚温度の上昇、呼吸周
波数の減少がお判り頂けるでしょうか?
4.
『何故、このような事が判るのか』あるいは背景知識
BIT-BITAS による測定と解析結果は、世界で最も権威の高いこの分野の学会で論文が採
択されるだけでなく、高い評価を得ております。海外の一国を代表するような医者や医学系
の研究者にもファンが増えつつあります。
4-1 姿勢
もし、人が動かない場合、加速度センサーが検出するのは、地球の重力による加速度だけ
です。したがって、人がM‐BITを装着して立っていれば、加速度センサーの上下方向が
加速度(地球重力1G)を検出し、他の2つは何も検出しません。
(0G)
。つまり、加速度
センサーの3つの出力の値から姿勢が判ります。体が横になっている場合は、上下方向が0
Gになります。左右方向と前後方向の値から、うつぶせ、仰向け、左右側臥位が識別できま
す。我々は、1分間毎に姿勢やその他の量を求めています。
4-2 身体活動量
人が動く場合、加速度センサーが検出するのは、
『重力加速度+人の動く加速度』です。
測定された3つの方向の加速度を加え合わせた全体としての加速度の大きさは、地球重力
加速度よりも大きくなります。その大きくなる度合いは、室内で歩く、屋外で散歩する、あ
るいは、元気良く歩く、屋外で走る等の様々な動きのレベルにより異なります。人が運動・
活動している時の加速度の大きさの変化の度合いより、身体活動量が得られます。
人間の吸う空気と吐く空気の中の酸素の濃度は違います。人体が呼吸に酸素を消費して
活動に必要なエネルギーを生成するからです。この2つの空気を分離して濃度差を測定す
る事で、人の時々刻々消費している酸素量、つまりエネルギー消費量が判るわけです。我々
は、この測定装置と M-BIT を同時使用しての測定を行い、加速度変化から消費エネルギー
を求める方法を確立しました。
4-3 睡眠・覚醒
人は眠りに入ると動かなくなり、目が覚めると何かしら動く事が、「睡眠・覚醒を判定し
睡眠・覚醒時刻を推定する事」、
「途中覚醒を推定する事」の基本です。このためには、加速
度センサーの出力値に僅かな変化があるか否かを検出しています。加速度センサーの出力
値の僅かな変動の有無を探索し、変動が無い1分間を 「活動の無い」1分間とします。次
に「人の睡眠はある長さ連続する」という事に基づき、全データを時間順に最初から1分間
毎に判定した結果の中で、
「活動の無い」1分間が集まっている領域を探します。これが睡
眠領域の候補となります。また、姿勢に関しても横なっている1分間が集まった領域を探し
ます。この領域の中に睡眠領域の候補があれば、その領域を睡眠領域とし、外側の横になっ
ている領域をベッドの中に居る領域(在床領域)としました。更に、睡眠領域の中に、所々
存在する「活動の大きな1分間」を途中覚醒の1分間としました。
4-4 睡眠評価の歴史的波形
睡眠の研究は、睡眠に入っていく人の脳波を追跡する事で始まりました。睡眠が深くなっ
ていくと、低周波のシータ波の出現、紡錘状の波形の出現、より低周波で振幅の大きなデル
タ波の出現、更に、デルタ波が大多数になると、脳波の様子が変化していきます。
「REM
睡眠」に入ると、脳が全ての神経支配を切断してしまいますので、それまで支配されて大人
しくしていた器官群、例えば眼球、が自由に動き始めます。この睡眠期の存在は、寝ている
人の素早い目の動き(REM:Rapid Eye’s Movement)に驚く事で明らかになりました。そ
れで、REM睡眠と呼ばれた訳です。これ以来、睡眠研究は、大きな施設の中の、外部から
の雑音・電磁波等を厳重にシールドした部屋で行われるのが常識でした。
これに満足しなかったのが米国陸軍でした。1960年代、兵器群の発達により兵士の一
瞬の眠気が多大の損失に結びつく様になり、兵士の睡眠管理が重要になってきました。また、
飛行機で空輸されて海外で展開されるストライクコマンドの効率的な運用には、ジェット
ラグの克服が必須でした。米国陸軍は、歩兵部隊の兵士達の野戦状況での睡眠測定がしたか
ったのです。このために、手首にセンサーを装着するアクティグラフが開発されたのです。
今では、睡眠研究の分野の最高峰の論文誌SLEEPの論文の半数近くがアクティグラフ
を使用したものであるほどポピュラーです。
アクティグラフやその仲間が手首にセンサーを装着するのに対し、M‐BITは胸部に
装着するため、体幹の姿勢に関する情報を得る事ができます。これは、大きなメリットです。
脳波(ポリグラフ)にしろ、アクティグラフにしろ、ベッドに入った、あるいは横になった時
間の計測には他の測定が必要です。スリーブラボでは、寝室の消灯時間が使われたりしてい
ます。M‐BITを用いた場合は、横になった時刻同じ時計を使用して自動的に得る事がで
きます。横になってから睡眠に入る前の時刻、入眠潜時は普通数分程度であり、後述するよ
うに睡眠の質を反映する重要な情報です。この数分程度の入眠潜時を求める場合には、横に
なった時刻の定義の明確さや妥当性、及び二つの時刻を同一の時計で求める事は重要です。
子どもの場合、夜間に睡眠中の午後10時頃と午前3時頃に成長ホルモンが分泌される
といわれています。このために、子どもは9時に眠ることが薦められている訳です。子ども
でなくても我々の体は24時間の周期に従うので、夜速めに規則正しく眠る事が望ましい
と思われます。
4-5 心臓の収縮と自律神経活動の健康度、呼吸周波数と睡眠時無呼吸
心臓の収縮は電気的な刺激によるものです。まず、心臓の中の洞結節というところが自発
的に電気的に興奮し、その興奮が心臓の外側の筋肉全体に伝わると、心臓は収縮します。体
の胸部の2箇所に電極を装着し、その間の電圧(心電図)を測定すると、収縮時に大きな電
気的パルスが発生する事が判ります。これをRピークと呼びます。Rピークの時間を求める
事で心臓の収縮する時間が判ります。
心臓の収縮と収縮の間の時間間隔は一定ではなくばらつきがある。ばらつきが大きいほ
ど自律神経活動が健康だという事は既にご説明しました。心電図の測定結果では R ピーク
と R ピークの時間間隔ですから RR 間隔と呼び、変動があるべきものなので、RR 間隔変動
と呼ぶことが多いようです。心拍数に着目する人は心拍変動と呼びます。同じものです。
我々は、このばらつきの大きさを自律神経活動の健康度と呼びました。専門的には、CVRR
と呼ばれています。検討している時間範囲での「RR間隔の標準偏差をRR間隔の平均値で
割ったもの」です。
自律神経活動の健康度が、うつ病の患者では、健常者に比して小さいという報告は昔から
良くあります。また糖尿病患者でも小さくなるという事は確立した事実となっています。
我々は、更に、大きな悩み(あるいは隠し事)を持っている人や自律神経活動失調状態の人
でも自律神経活動の健康度が低下する事、健常者でもストレス印加テストを行ったり、仕事
で多忙であったりすると一時的に自律神経活動の健康度が低下する事を見出しました。
呼吸周波数を求める事ができたり、睡眠時無呼吸が検出できる理由は、次の2つの生理
学的事実にあります。
1)心臓からすべての自律神経の支配を除去した場合の心臓本来の心拍数は元来もっと大
きい(110 拍程度)
。それを副交感神経活動が作用し続ける事で低いところに持ってきてい
る(70 拍程度)
。いわば、天井からぶら下がっている短いゴムの端を引っ張って下に持って
きているようなものです。
2)呼吸のコントロールをする部位と心臓への副交感神経活動が出力される部位は近接し
たところにあり、お互いに邪魔しあう。息を吸うときには副交感神経活動が出力されない。
つまり、息を吸うときにはゴムを引っ張る力が無くなる。息を吐くときにはまた引っ張られ
る。従って、心拍数は大きくなったり、小さくなったりを繰り返している訳です。1 分間あ
たりのゴムが長くなったり短くなったりする回数(RR 間隔が長くなったり短くなったりす
る回数)が呼吸数です。
従って、呼吸をゆっくりとし、息を吐く時間を長くすると、副交感神経活動が十分に働き、
心と体を良い状態に持っていく事ができます。呼吸は、意識的に自律神経をコントロールで
きる唯一の窓口なのです。古来、多くの健康法や武術が呼吸について述べているのもこの為
です。皆さん、何か行動を起こす前には深呼吸する事を習慣にしましょう。
睡眠時無呼吸が検出できる理由も同じです。無呼吸になり息を吸うという事が無くなる
とと副交感神経活動が働き続け心拍数が小さくなります。そのうちに血液中の酸素量の減
少や二酸化炭素量の増大により、脳が本人は意識しないレベルの覚醒を起こし、呼吸が再開
され、心拍数は増加します。この間、数十秒が経過します。従って、数十秒に亘る心拍数の
減少を検出する事で睡眠時無呼吸が検出できます。
専門の睡眠評価機関では、ポリグラフを使用して、脳波、心電図、口・鼻からの気流、胸
部・腹部の呼吸運動、動脈血の酸素量等を測定し、口・鼻からの気流、胸部・腹部の呼吸運
動による呼吸の停止、動脈血の酸素量の低下、脳波によるマイクロアロウザルの発生を測定
する事で『睡眠時無呼吸』
(SAS)の発生を検出します。
息を吸わない事が続くと心拍数は低下しますが、どこまでも低下する訳ではありません。
その人のその時の副交感神経活動の大きさに対応する最小値に達すると、それ以上は小さ
くなれません。従って、息を吐く時間には、それ以上長くしても無駄だという最適長さが存
在します。いつも副交感神経を十分に働かせ、副交感神経活動の大きさそのものをより大き
くするところに、呼吸法や健康法の奥義がある様です。
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