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(第5編第1章第1節~第2章第5節) [PDFファイル/3.81
第5編 医療提供体制 第 5 編 医療提供体制 第1章 安全で良質な医療提供体制の整備 第1節 医療機能の分化・連携と集約化の促進 第2節 地域医療支援病院の整備目標 第3節 医療安全対策 第2章 いつでもどこでも安心な医療の提供 第3章 第1節 がん 第2節 脳卒中 第3節 急性心筋梗塞 第4節 糖尿病 第5節 精神疾患 第6節 救急医療 第7節 災害医療 第8節 へき地医療 第9節 周産期医療 第 10 節 小児医療 第 11 節 在宅医療 第 12節 歯科医療 第13節 感染症対策 第 14 節 難病対策 第 15 節 健康危機管理対策 医療環境の充実強化 第1節 医療従事者の確保対策 第2節 医療福祉情報化の推進 第3節 医薬品提供体制 第4節 血液確保及び臓器移植等対策 第5編 医療提供体制 第5編 医療提供体制 第1章 安全で良質な医療提供体制の整備 第1節 医療機能の分化・連携と集約化の促進 1 主な疾患における二次医療圏別の依存状況 (1) 悪性新生物 ○ 悪性新生物入院患者を受け入れている病院(一般病床)と二次医療圏別の依存状況は以下の通りで す。 (平成 23 年宮城県患者調査によるもので、以下(6)まで同じ。 ) ○ 自圏域依存率をみると,仙南医療圏で40%未満となっています。また,がん基本対策法において 二次医療圏に1か所整備が求められているがん診療連携拠点病院が未整備となっていることから,地 域連携クリティカルパスの活用や隣接する医療圏のがん診療拠点病院との連携を推進することによ り,拠点病院のある地域と同等の医療が受けられるような連携体制の一層の推進が必要です。 <地図凡例> 県全体の悪性新生物入院患者 2,229 人の, :3%以上の患者数を受け入れている病院 :上記以外で 20 人以上の患者数を受け入れ ている病院 (単位:% 総数 2,229 人) 患者住所 医療圏 病 院 所 在 地 仙南 仙台 大崎 栗原 大崎 栗原 石巻 登米 気仙沼 登米 石巻 気仙沼 県外 仙南 33.2 0.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 仙台 66.8 99.4 32.4 30.2 38.8 30.3 38.0 36.5 16.8 94.7 大崎・栗原 0.0 0.3 66.8 69.8 58.2 4.4 16.9 0.6 1.8 1.1 大崎 0.0 0.3 56.6 69.3 20.9 2.9 9.9 0.6 1.8 1.1 栗原 0.0 0.0 10.2 0.5 37.3 1.5 7.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.8 0.0 3.0 65.3 45.1 62.9 81.4 4.3 登米 0.0 0.0 0.8 0.0 3.0 7.0 28.2 0.0 3.5 0.0 石巻 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 34.1 16.9 62.9 4.4 0.0 気仙沼 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 24.2 0.0 0.0 73.5 4.3 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 石巻 登米 気仙沼 計 100.0 100.0 100.0 ※斜体表記は,自圏依存率 60%未満。 出典: 「平成 23 年度宮城県患者調査」 (宮城県保健福祉部) 第5編 医療提供体制 (2) 消化器系疾患 ○ 消化器系疾患入院患者を受け入れている病院(一般病床)と二次医療圏別の依存状況は以下の通り です。 ○ 自圏域依存率をみると,全圏域で 60%に達しており,受入体制がほぼ整っていると考えられます。 <地図凡例> 県全体の消化器系疾患入院患者 952 人の, :3%以上の患者数を受け入れている病院 :上記以外で 20 人以上の患者数を受け入れて いる病院 (単位:% 総数 952 人) 患者住所 医療圏 病 院 所 在 地 仙南 仙台 大崎 栗原 仙南 77.3 1.1 仙台 22.7 98.3 7.1 大崎・栗原 0.0 0.4 91.3 大崎 0.0 0.4 65.1 栗原 0.0 0.0 26.2 0.0 0.2 登米 0.0 石巻 0.0 石巻 登米 気仙沼 気仙沼 計 0.0 大崎 栗原 石巻 登米 気仙沼 登米 0.0 0.0 6.7 8.1 93.3 86.5 92.1 1.1 1.6 0.0 5.4 0.0 1.6 0.0 5.4 23.3 73.1 0.2 0.0 0.0 0.0 34.7 7.7 0.0 石巻 気仙沼 県外 0.0 0.0 0.0 0.0 9.1 7.7 15.4 3.4 96.3 5.1 11.5 4.6 0.0 0.0 0.0 3.4 7.7 3.1 0.0 0.0 86.5 1.7 3.8 1.5 0.0 0.0 85.8 80.8 80.0 96.6 3.7 0.0 5.1 0.0 80.0 8.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 27.8 0.0 0.0 83.1 3.7 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 ※斜体表記は,自圏依存率 60%未満。 出典: 「平成 23 年度宮城県患者調査」 (宮城県保健福祉部) . 第5編 医療提供体制 (3) 呼吸器系疾患 ○ 呼吸器系疾患入院患者を受け入れている病院(一般病床)と二次医療圏別の依存状況は以下の通り です。 ○ 自圏域依存率をみると,全圏域で 60%に達しており,受入体制がほぼ整っていると考えられます。 <地図凡例> 県全体の呼吸器系疾患入院患者 1,382 人の, :3%以上の患者数を受け入れている病院 :上記以外で 20 人以上の患者数を受け入れ ている病院 (単位:% 総数 1,382 人) 患者住所 医療圏 病 院 所 在 地 仙南 仙台 大崎 栗原 仙南 82.2 0.4 仙台 17.8 98.9 6.9 大崎・栗原 0.0 0.4 93.1 大崎 0.0 0.3 67.0 栗原 0.0 0.1 26.1 0.0 0.3 登米 0.0 石巻 0.0 石巻 登米 気仙沼 気仙沼 計 0.0 大崎 栗原 石巻 登米 気仙沼 0.0 0.0 6.8 7.0 93.2 93.0 90.4 2.7 0.0 0.0 0.1 0.0 0.1 0.0 登米 石巻 気仙沼 県外 0.0 0.0 0.0 0.0 6.9 2.7 6.6 11.1 86.4 5.0 13.3 0.0 3.7 9.1 7.0 3.1 6.7 0.0 0.0 4.5 86.0 1.9 6.7 0.0 0.0 4.5 0.0 88.2 84.0 93.4 85.2 4.5 0.0 0.0 25.6 78.7 1.9 7.4 0.0 0.0 0.0 39.7 5.3 91.5 3.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 22.9 0.0 0.0 74.1 4.5 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 ※斜体表記は,自圏依存率 60%未満。 出典: 「平成 23 年度宮城県患者調査」 (宮城県保健福祉部) 第5編 医療提供体制 (4) 心循環系疾患 ○ 心循環系疾患入院患者を受け入れている病院(一般病床)と二次医療圏別の依存状況は以下の通り です。 ○ 自圏域依存率をみると,全圏域で 60%に達しており,受入体制がほぼ整っていると考えられま す。旧医療圏単位では旧登米医療圏が 29.8%と低い状況になっており,50%以上の住民が大崎・ 栗原医療圏(旧栗原医療圏)に依存していることから,大崎医療圏との連携体制も重要になります。 <地図凡例> 県全体の心循環系疾患入院患者 935 人の, :3%以上の患者数を受け入れている病院 :上記以外で 20 人以上の患者数を受け入れ ている病院 (単位:% 総数 935 人) 患者住所 医療圏 病 院 所 在 地 仙南 仙台 大崎 栗原 大崎 栗原 石巻 登米 気仙沼 登米 石巻 気仙沼 県外 仙南 70.0 0.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 6.7 仙台 30.0 99.1 22.0 26.9 12.5 12.6 8.5 22.4 6.4 83.3 大崎・栗原 0.0 0.5 78.0 73.1 87.5 21.0 59.6 2. 2.1 0.0 大崎 0.0 0.4 49.2 69.2 10.0 2.8 6.4 2.0 0.0 0.0 栗原 0.0 0.2 28.8 3.8 77.5 18.2 53.2 0.0 2.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 66.4 31.9 75.5 91.5 10.0 登米 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 9.8 29.8 0.0 0.0 0.0 石巻 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 28.0 2.1 75.5 4.3 0.0 0.0 0.0 0.0 28.7 0.0 0.0 87.2 10.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 石巻 登米 気仙沼 気仙沼 計 0.0 100.0 ※斜体表記は,自圏依存率 60%未満。 出典: 「平成 23 年宮城県患者調査」(宮城県保健福祉部) 第5編 医療提供体制 (5) 脳血管疾患 ○ 脳血管疾患入院患者を受け入れている病院(一般病床)と二次医療圏別の依存状況は以下の通りで す。 ○ 自圏域依存率をみると,全圏域で 60%に達しており,受入体制がほぼ整っていると考えられます。 <地図凡例> 県全体の脳血管疾患入院患者 1,123 人の, :3%以上の患者数を受け入れている病院 :上記以外で 20 人以上の患者数を受け入れ ている病院 (単位:% 総数 1,123 人) 患者住所 医療圏 病 院 所 在 地 仙南 仙台 大崎 栗原 大崎 栗原 石巻 登米 気仙沼 仙南 65.7 0.5 0.0 0.0 0.0 0.0 仙台 34.3 98.2 11.2 10.8 12.2 大崎・栗原 0.0 0.8 85.1 84.9 85.4 大崎 0.0 0.8 66.4 84.9 栗原 0.0 0.0 18.7 0.0 0.0 0.5 3.7 登米 0.0 0.2 石巻 0.0 気仙沼 0.0 100.0 石巻 登米 気仙沼 計 登米 石巻 気仙沼 県外 0.0 0.0 0.0 2.4 8.3 9.6 8.6 6.3 90.2 3.9 13.5 1.0 0.0 4.9 24.4 2.9 9.6 1.0 0.0 2.4 61.0 1.0 3.8 0.0 0.0 2.4 4.3 2.4 87.8 76.9 90.5 93.8 2.4 1.5 1.1 2.4 17.6 67.3 0.0 2.1 0.0 0.3 2.2 3.2 0.0 52.2 9.6 90.5 14.6 2.4 0.0 0.0 0.0 0.0 18.0 0.0 0.0 77.1 0.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 ※斜体表記は,自圏依存率 60%未満。 出典: 「平成 23 年度宮城県患者調査」 (宮城県保健福祉部) 第5編 医療提供体制 (6) 精神疾患 ○ 精神疾患入院患者を受け入れている病院(一般病床及び精神病床)と二次医療圏別の依存状況は以 下の通りです。 ○ 自圏域依存率をみると,全圏域で 60%に達しており,受入体制がほぼ整っていると考えられます。 旧医療圏単位では,旧栗原医療圏が 13.7%と低い状況になっており。37.4%が石巻・登米・気仙 沼医療圏(旧登米医療圏に 32.4%)に依存しています。 <地図凡例> 県全体の精神疾患入院患者 5,116 人の, :3%以上の患者数を受け入れている病院 :上記以外で10人以上の患者数を受け入れ ている病院 (単位:% 総数 5,116 人) 患者住所 医療圏 病 院 所 在 地 仙南 仙台 大崎 栗原 大崎 栗原 石巻 登米 気仙沼 登米 石巻 気仙沼 県外 仙南 71.2 4.1 0.5 0.5 0.0 1.5 2.1 2.3 0.0 5.3 仙台 28.6 94.2 17.4 17.4 16.5 11.1 11.8 16.6 2.7 46.6 大崎・栗原 0.2 0.9 68.0 68.0 46.2 11.9 35.4 10.4 1.6 7.3 大崎 0.2 0.9 63.7 63.7 32.4 11.1 31.3 10.4 1.4 2.4 栗原 0.0 0.0 4.3 4.3 13.7 0.8 4.1 0.0 0.3 4.9 0.0 0.8 14.1 14.1 37.4 75.5 50.8 70.8 95.6 40.8 登米 0.0 0.2 9.7 9.7 32.4 5.4 22.1 2.6 0.5 1.0 石巻 0.0 0.6 3.4 3.4 2.2 37.7 19.5 68.2 3.0 1.9 石巻 登米 気仙沼 気仙沼 計 0.0 0.1 1.0 1.0 2.7 32.4 9.2 0.0 92.1 37.9 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 ※斜体表記は,自圏依存率 60%未満。 出典: 「平成 23 年度宮城県患者調査」 (宮城県保健福祉部) . 第5編 医療提供体制 2 医療圏ごとの機能分化及び連携強化のあり方 人口の減尐や尐子化及び高齢化の進展に加え,東日本大震災の影響もあり,生活環境が大きく変化 している中,住み慣れた地域において良質かつ適切な医療を受けたいという住民からの要請はますま す強まってきています。 医療を提供する側では,東日本大震災の影響が医療機関の廃止,再編,医療従事者の流出という形 で表れ,他方では医療の高度化や専門化が進み,特定の医療機関に医療機能が集約化される傾向にあ ります。 このような状況で,住民の要望に応えるためには,限られた地域の医療資源を有効に活用すること が重要であり,かつ,必ずしも十分とは言えない医療機能を補うことが必要となります. そのためには,医療機関にあっては,その属する医療圏において期待される役割を理解した上で, 他の医療機関と連携を図り,疾患又は診療科ごとあるいは急性期,回復期又は維持期といった治療の 段階の機能をそれぞれに分担することが必要です. また,第6次地域医療計画では,二次医療圏が7つから4つに再編されたことにより,今まで以上 に広域的な視点で医療連携体制を構築する必要があります。 このような課題認識のもと,本節では,医療圏ごとの機能分化及び連携強化の在り方とともに,主 な疾患について各医療圏の現状を示し,目指すべき方向を提示します。 医療圏名 必要と考えられる機能分化及び連携強化のあり方 ○ 地域医療支援病院であるみやぎ県南中核病院は平成25年に救命救急 センター,腫瘍センターが設置される予定です。 ○ みやぎ県南中核病院と公立刈田綜合病院との機能分化を進めて連携体 仙南医療圏 制を強化します。 ○ 夜間初期救急体制の整備が必要となっており,現在地域関係者間で検 討が進められています。 ○ へき地診療所を支援する,へき地医療拠点病院を整備し,へき地医療 支援体制の充実が必要です。 ○ 県内唯一の特定機能病院である東北大学病院は,高度先進医療の提供 を担うとともに,地域の医療機関への支援を強化することが求められま す。また,医療従事者の養成機関として,人材育成,キャリアパス形成 を充実強化し,地域医療の有能な担い手を育成してくことが求められま す。 仙台医療圏 ○ 急性期,回復期,維持期医療を担う医療機関が集中している地域の中 で,機能分化を推進することにより,効率的な医療提供体制を整備し, 住民にも分かりやすく情報提供することが求められます。 ○ 政令指定都市である仙台市が含まれ,人口が最も多く,関係団体が多 いことから,入院から在宅医療まで,保健・医療・介護において医療機 関と行政機関とのより一層の連携が必要です。 第5編 医療提供体制 ○ 今回の二次医療圏の見直しにより,旧大崎医療圏と旧栗原医療圏が再 編されました。 ○ 大崎市民病院は平成26年に移転・新築する予定です。平成 24 年5 月に地域医療支援病院の指定を受けたことから,一層地域の中核的病院 としての役割が増していきます。また,県北における「産科セミオープ ンシステム」を進めるとともに,周産期医療の拠点である大崎市民病院 への産科医師の配置を引き続き確保していきます。 ○ 栗原市立栗原中央病院は栗原地域の中核的病院として他の市立病院及 び市立診療所の後方支援を行っていきます。また,助産師外来を充実し, 大崎・栗原医療圏 分娩については,大崎市民病院,岩手県一関市の医療機関との連携も行 っています。 ○ 宮城県立循環器・呼吸器病センターについては,医師の確保が課題と なっており,今後,大崎市民病院,栗原中央病院と機能分担を図ってい く必要があります。 ○ 初期救急医療に関しては,平日夜間の場合,他の医療圏からも大崎市 病院群輪番制の利用が見られ,参加医療機関の大きな負担になった結果, 見直しの動きがあり,大崎市に夜間急患センターが設置される予定です。 二次救急については,大崎市の病院群輪番制では平日夜間の救急体制に ついて,参加医療機関の負担軽減のため,より広域的な体制での検討が 必要です。 ○ 今回の二次医療圏の見直しにより,旧石巻医療圏,旧登米医療圏及び 旧気仙沼医療圏が再編されました。 三陸道の延伸や東日本大震災後に沿岸部の住民が内陸部に移動してきて いることから,住民が丌便さを感じることがないよう考慮しながら,よ り広域的な視点で医療提供体制を整備していきます。 ○ 石巻赤十字病院とともに地域の中核的機能を担っていた石巻市立病院 が被災のため休止していることもあり,現在は三次救急を担う石巻赤十 字病院が一次医療から三次医療まで対応しています。 ○ 石巻市立病院は移転・新築後は亜急性期や回復期医療を担い,石巻赤 石巻・登米・気仙沼 医療圏 十字病院との機能分化を進め,石巻地域における切れ目のない医療体制 を構築することが求められます。 ○ 震災により南三陸町の多くの仮設住宅が登米市に建設され,また,被 災した公立志津川病院は,南三陸町に再建されるまでの間,南三陸町で 仮設診療所,登米市米山地区に入院機能(38床)をおいた病院として 診療を再開しています。また,三陸道の延伸により,石巻医療圏との移 動時間が短縮されたことから,石巻地域,登米地域との連携についても 強化を図る必要があります。 ○ 登米地域においては,登米市民病院が中核的病院として,他の医療機 関の支援を行っていく役割が求められています。平成25年には,救急 センターが設置されることから,現在課題となっている,脳血管疾患, 心疾患の救急医療体制が強化され,石巻赤十字病院との連携が強化され ます。特に他圏域と比較して高死亡率である脳血管疾患の対応について 第5編 医療提供体制 は改善が求められます。 また,周産期医療については,助産師外来を充実させ,石巻赤十字病 院、大崎市民病院との産科セミオープン体制を推進していきます。 ○ 気仙沼市立病院は,将来的な三陸道の延伸を念頭に置き,石巻・登米 地域との連携を前提として,移転・新築後の機能・規模を考える必要が 石巻・登米・気仙沼 医療圏 あります。 移転後においても,気仙沼地域の中核的病院として,気仙沼地域の病 院,診療所との連携を更に深めながら,地域の医療を支える必要があり ます。 ○ 診療科によっては,岩手県一関市の医療機関との連携体制がとられて います。 ○ へき地診療所を支援する,へき地医療拠点病院を整備し,へき地医療 支援体制の充実が必要です。 第5編 医療提供体制 3 地域連携クリティカルパスの活用 (1)クリティカルパスとは クリティカルパスは,良質な医療を効率的,かつ安全,適正に提供するための手段として開発さ れた診療計画表です. (2)地域連携クリティカルパスとは 地域連携クリティカルパスは,急性期病院から回復期病院を経て早期に自宅に帰れるような診療 計画を作成し,治療を受けるすべての医療機関で共有して用いられるものです. 地域連携クリティカルパスは,平成22年4月の診療報酬改定により,これまでの急性期と回復 期の医療機関間の連携(病病連携)に加えて,維持期を担う一般診療所との連携(病診連携) ,福祉関 係機関との連携も評価されることになり,加算の対象が広がりました。 また,地域連携クリティカルパスを患者に提示・説明することにより,患者が安心して医療を受 けることができます.提示・説明に際しては,診療にあたる複数の医療機関が役割分担を含め,施 設ごとに治療経過に沿って,診療ガイドライン等に基づいた診療内容や達成目標等を診療計画とし て明示します. 導入の効果として,例えば回復期病院では,患者がどのような状態で転院してくるかをあらかじ め把握できるため,転院早々から効果的なリハビリが開始可能となり,早期の退院・社会復帰等が 期待されます.また患者自身が治療内容や今後の治療経過を理解し,目標達成に気持ちを向けるこ とができます。また,重複した検査や投薬をせずに済むなど,多くの導入のメリットがあり,その 効果は医療機関,患者に加え,地域社会にも及ぶものと期待されるとともに,医療機関間の連携を 促進する効果的なツールとしての役割が期待され,その普及が求められています. (3)導入状況 県内では,大腿部頸部骨折,脳卒中,がん,栄養(胃ろう,褥そう,口腔ケア)の分野で運用が 行われています.平成24 年1月に宮城県が実施した「平成 23 年度宮城県医療機能調査」による と導入数は病院で 54 機関で導入率が 38.3%となっています。 パスの形態は紙,ファクシミリの使用,また,ネットワーク化され電子データでやりとりしてい るところがあります。 県内においては,複数の地域で関係団体によりそれぞれの取組が行われていますが,今後は疾患 ごとの統合や,様式の統一により,医療機関の連携をはかっていくことが課題です。 (4)導入の推進 本県においても,医療機関の連携を促進するため,特に,地域連携クリティカルパスの導入拡大 を推進します. 具体的には,関係医療機関及び関係団体への働きかけとともに,パス開発・導入に向けた検討を 行います. また,医療機関間の連携の窓口となる「地域連携室」については,平成24年1月現在で62の 病院に設置されています(平成23年度宮城県医療機能調査)。今後は,パスの普及と合わせて, 地域連携室の実態把握とその機能の充実を図ります. 第5編 医療提供体制 【<参考>宮城県脳卒中地域連携クリニカルパス研究会の「地域連携診療計画書」及び「承諾書」】 第5編 医療提供体制 4 地域包拢ケアの推進 (1)地域包拢ケアシステムとは ○ 地域包拢ケアシステムとは,医療、介護、予防、住まい,生活支援サービスが連携して提供 される,要介護者等への包拢的な支援を、関係者が協働して、地域住民のニーズに応じて一体 的、体系的に提供される仕組みです。介護保険制度の中で提唱された概念です。 ○ 住み慣れた地域で,尊厳に満ちたその人らしい生活を継続できるように「地域包拢ケアシス テム」の実現に向けた取組みを進めていく必要があります。 (2)地域医療と地域包拢ケアシステムについて ○ 平成24年の介護保険法等の改正において,地域包拢ケアシステムの推進のためのポイント として医療と介護の連携の強化があげられています。 ○ 胃瘻経管栄養、中心静脈栄養、在宅腹膜還流等医療依存度の高い方が在宅や施設等で療養す る方が増えている中,地域包拢ケアシステムの中で,関係者が多職種協働して一体的なサービ スを提供するために,医療が担う役割はこれまで以上に重要になってきます。 ○ 地域・在宅での生活を継続するためには,24 時間対応で在宅医療・介護を提供できる地域 医療の充実が丌可欠となっており,在宅医療の整備が進められています。 ○ 急変時の対応、見取りの対応、災害時の対応を含めて、包拢的、継続的な在宅医療・介護が 提供できる体制を市町村、関係団体と協働して構築していくことが求められています。 ○ 地域包拢ケアシステムの中で実践する医療として,住民が住み慣れた場所で安心して生活で きるようにそのQOLの向上を目指すものとして, 「地域包拢医療・ケア」*という考え方が提 唱されています。 (3) 地域包拢支援センターの役割 ○ 平成18年に創設された地域包拢支援センターは,市町村の責任の下,日常生活圏域で「地 域包拢ケア」を有効に機能させるために,地域のネットワークを構築あるいは再生するなどの 取組を第一の柱としながら,個別サービスのコーディネートをも行う地域の中核機関として設 置されています。相談からサービスの調整に至る機能を発揮する,いわばワンストップサービ スの拠点としての機能も担っています。 ○ 県内では,平成24 年4月1日現在で124ヶ所の地域包拢支援センター(ブランチ・サブ センターを含む)が設置されており,設置形態については,市町村直営あるいは社会福祉法人 等に運営を委託している場合があり,委託型が増加する傾向にあります。平成 24 年の介護保 険法改正では,市町村は委託型地域包拢支援センターの事業支援にあたっての運営方針を明示 することになりました。 (4) 地域包拢ケアシステムの推進に向けた支援 ① ○ 地域包拢支援ネットワーク構築に向けた支援 厚生労働省の平成24年度予算において、在宅医療連携拠点事業(モデル事業)が実施さ れてます。これは,在宅医療を提供する機関(在宅療養支援診療病院・診療所,訪問看護ス *包拢医療・ケア 治療(キュア)のみならず保健サービス(健康づくり),在宅ケア,リハビリテーション,福祉・介護サーニスのすべてを包含するもので,施設 ケアと在宅ケアとの連携及び住民参加のもとに,地域ぐるみの生活・ノーマライゼーションを視野に入れた全人的医療・ケアを指す,公益社団法 人全国国民健康保険診療協議会が提唱している理念です。 第5編 医療提供体制 テーション等)を連携拠点として,多職種協働によって在宅療養中の患者の支援体制を構築 し、地域での包拢的かつ継続的な在宅医療の提供を目指すものです。本県では,4つの医療 機関(3 診療所,1 病院)が連携拠点事業者として採択されています。 ○ 地域包拢支援センターが主催する「地域ケア会議」に在宅医療連携拠点の医師や医療関係 者が構成員として参加するなど, 「地域包拢支援ネットワーク」構築の取組が県内各地域で で推進されるよう,市町村や職能団体とも連携し,支援を行っていきます。 ② ○ 介護職員の資質向上に係る支援 平成 24 年(2012 年)4 月 1 日からは一定の条件の下、介護福祉士及び一定の追加的 的な研修を終了した介護職員等が、これまで医療行為とされていた「たんの吸引」 「経管 栄養(胃ろうなど) 」を実施できることになりました。 ○ 業務に関する専門的知識を習得するための研修など,介護関係職員,地域包拢支援センタ ー職員の資質向上のための取組を支援します。 地域包括ケアシステムの概念 既存・新たなサービス(仕組み)や課題に応じた支援基盤等を構築 (地域包括支援ネットワークの構築) ネ地 ッ域 ト包 ワ拢 ー支 ク援 介護保険サービス ・介護予防 ・訪問介護 ・通所介護 ・特養・老健 介護保険外サービス等 (生活支援) 住宅 ・かかりつけ医 ・見守り・声かけ ・サービス付き高齢者 向け住宅 等 ・配食・会食・送迎 ・買い物・緊急通報等 等 医療系サービス ・在宅療養支援診療 ・訪問看護 等 ネットワークを 活用した支援 ニーズの 早期発見 家族介護者も含めた要介護者以外への支援 ネ ッ ト ワ ー ク へ の 参 加 福祉・権利擁護 ・法定後見 ・任意後見 ・地域市民後見人等 ・生活保護 等 ニーズの発見 要介護者への支援(ケアマネジャー) ・ネットワーク の構築 ・ネットワーク を活用した支援 後方支援 センターへの 支援要請 地域包拢支援センター(地域包拢ケアのコーディネート) 権利擁護 介護予防ケア マネジメント 包括的・継続的 ケアマネジメント 総合相談支援 地域包拢ケアの普及啓発 (地域力アップ) 地域住民等の参加推進 出典: 「第 5 期高齢者元気プラン」 (県保健福祉部) 第5編 医療提供体制 第2節 ○ 地域医療支援病院の整備目標 地域医療支援病院は医療法第4条に規定されており,地域における医療の確保のために必要な支援に関 する一定の要件*1に該当するものが都道府県の知事の承認を経て称することができます。同法第30条の4 第 2 項第9号の規定に基づき,地域医療計画において整備目標を定めることとしています。 ○ 本県においては各二次医療圏に1か所以上整備することを目指します。 平成 25年3月現在,県内においては 11 病院(下図)あり,各二次医療圏に 1 ケ所以上整備されていま すが,うち8病院が仙台医療圏にあり,集中している傾向が見られます。 *1地域医療支援病院 【医療法第4条第1項 国,都道府県,市町村,第 42 条の2第1項に規定する社会 医療法人その他厚生労働大臣の定める者の開設する病院であ って,地域における医療の確保のために必要な支援に関する 次に掲げる要件に該当するものは,その所在地の都道府県知 事の承認を得て地域医療支援病院と称することができる。 ① 他の病院又は診療所から紹介された患者に対し医療を提 供し,かつ,当該病院の建物の全部若しくは一部,設備, 器械又は器具を,当該病院に勤務しない医師,歯科医師, 薬剤師,看護師その他の医療従事者の診療,研究又は研修 のために利用させるための体制が整備されていること。 ② 救急医療を提供する能力を有すること。 ③ 地域の医療従事者の資質の向上を図るための研修を行わ せる能力を有すること。 ④ 厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための 施設を有すること。 ⑤ 第 21 条第1項第2号から第8号まで及び第 10 号から 第 12 号まで並びに第 22 条第1号及び第4号から第9号 までに規定する施設を有すること。 ⑥ その施設の構造設備が第 21 条第1項及び第 22 条の規 定に基づく厚生労働省令で定める要件に適合するものである こと。 ・地域医療支援病院に係る主な承認要件の具体例 ・医療病院の規模は原則として病床数が 200 床以上の病院であること。 ・他の医療機関からの紹介患者数の比率が 80%以上であること。または,紹介率 60%以上かつ逆紹介率 30%以上か,紹介率 40%以上 かつ逆紹介率 60%以上であること。 ・他の医療機関に対して高額な医療機器や病床を提供し共同利用すること。 ・地域の医療従事者の向上のため生涯教育等の研修を実施していること。 ・24 時間体制の救急医療を提供すること。 第5編 医療提供体制 第3節 医療安全対策 ○県内各医療施設における医療安全管理体制の充実強化を推進します。 ○県及び二次医療圏ごとに設置する医療安全支援センターの体制充実を推進します。 現状と課題 1 医療安全対策の重要性 医療技術の高度化・複雑化と相まって,医療事故の発生が依然として報じられており,医療の安全・ 安心に対する県民の関心は年々高まっています。また,患者自らが医療を選択するなど,医療サービ スの質の向上に関する関心も高まっています。そのため,医療の安全の確保と質の向上は,病院,診 療所や薬局といった医療を提供する施設(以下「医療施設」という。)が積極的に取り組まなければ ならない重要な課題の一つです。 (1)医療施設の法令上の義務 医療法及び薬事法上,医療施設の管理者は,自ら医療の安全を確保するための安全管理体制を整 備するとともに,その活動の推進を図り,院内の医療の安全確保に努める義務があります。また, 医療施設において,次のような医療安全に関する組織・体制等を整備することが求められています。 必要な組織等 内 容 医療安全管理指針 安全管理に関する基本的な考え方,医療事故発生時の対応 方法等を文書化したものをいいます。 医療安全管理委員会 院内の安全管理体制の確保及び推進のための委員会をいい ます。 医療安全管理のための職 員研修 安全管理のための基本的考え方,具体的方策についての職 員に対する研修をいいます。 医療安全管理のための医 療事故の院内報告制度 医療安全管理者 医療安全管理部門 患者のための相談窓口 院内で発生した医療事故,インシデント等が報告され,そ の分析を通した改善策を実施するために整備された体制を いいます。 施設全体の医療安全管理を担当し,院内の問題点の把握, 対策の立案,関係者との調整,実施結果の評価などの業務 を行う責任者をいいます。 医療安全管理者,その他必要な職員で構成され,安全管理 委員会で決定された方針に基づき,安全管理を担う部門を いいます。 法令等の根拠 医療法 6 条の 10 規則 1 条の 11① 薬事法5条② 医療法 6 条の 10 規則 1 条の 11② 医療法 6 条の 10 規則 1 条の 11③ 薬事法5条② 規則 12 条の2 医療法 6 条の 10 規則 1 条の 11④ 規則第9条の23① (特定機能病院及び 臨床研修施設のみが 該当) 患者等からの苦情,相談に応じられる窓口をいいます。 (2)立入検査における医療安全体制の確認 各保健所では医療施設に対し医療法第25条第1項に基づく立入検査を行い,医療の安全に対す る組織的な取組みやインフォームドコンセントの充実などについて指導助言を行っています。 (3)医療安全支援センターの設置 県及び仙台市は,住民の医療に対する信頼を確保するため,医療安全支援センターを設置し,医 療に関する患者・住民の相談や苦情への対応,医療施設に対する助言,情報提供及び研修,患者・ 住民に対する助言及び情報提供,並びに地域における意識啓発を図るなどの措置を講じる義務があ ります。 第5編 医療提供体制 2 医療安全管理体制の整備状況 県内の医療施設における医療安全管理体制の整備状況は,次のとおりです。 【県内病院の医療安全管理体制の整備状況】 項 目 医療安全管理委員会を設置している病院 医療安全管理のための指針を策定している病院 医療安全の責任者を配置している病院 医療事故の院内報告制度を実施している病院 医療安全管理のための職員研修を実施している病院 医療安全管理部門を設置している病院 患者のための相談窓口を設置している病院 (単位:施設,%) 施設数/総数 141/141* 141/141 141/141 141/141 141/141 95/141 108/141 出典: 「平成23年度宮城県医療機能調査」(県保健福祉部) 総数に占める割合 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 67.3% 76.6% *:医療機能調査を提出した病院数 3 医療安全支援センターの現状 現在,県では医療安全支援センターとして,都道府県センターを医療整備課に,仙台市医療安全支 援センターを仙台市保健医療課に、二次医療圏センターを県の各保健所(支所)にそれぞれ設置し, 県民等からの医療に関する相談・苦情等に対応しています。 【医療安全支援センターの配置状況】 E-MAIL 電話番号 窓口機関 住 県医療整備課医務班 022-211-3456 [email protected] 仙台市保健医療課 022-214-0018 [email protected] 仙南保健所企画総務班 0224-53-3115 [email protected] 塩釜保健所企画総務班 同 岩沼支所総務保健班 同 黒川支所総務保健班 022-363-5502 022-358-1111 [email protected] [email protected] [email protected] 大崎保健所企画総務班 0229-91-0708 [email protected] 栗原保健所企画総務班 0228-22-2113 [email protected] 登米保健所企画総務班 0220-22-7514 [email protected] 石巻保健所企画総務班 0225-95-1416 [email protected] 気仙沼保健所企画総務班 0226-22-6661 [email protected] 0223-22-2188 電話・面談による受付時間: 【県】 所 〒980‐8570 仙台市青葉区本町 3-8-1 (宮城県庁7階) 〒980-8671 仙台市青葉区国分町 3-7-1(仙台市庁舎 8 階) 〒989‐1243 大河原町字南 129-1 (大河原合同庁舎1階) 〒985‐0003 塩釜市北浜 4-8-15 〒989‐2432 岩沼市中央 3-1-18 〒981‐3304 富谷町ひより台 2-42-2 〒989‐6117 大崎市古川旭 4-1-1 (古川合同庁舎1階) 〒987‐2251 栗原市築館藤木 5-1 (栗原合同庁舎保健所庁舎) 〒987‐0511 登米市迫町佐沼字西佐沼 150-5(登米合同庁舎保健所庁舎 2 階) 〒986‐0812 石巻市東中里 1-4-32 (石巻合同庁舎 2 階) 〒988‐0066 宮城県気仙沼市東新城 3-3-3 平日8:30~17:15(12:00~13:00を除く)土日・祝日はお休みです。 【仙台市】平日9:00~15:00(12:00~13:00を除く)土日・祝日はお休みです。 【医療安全支援センターの対応状況(平成22年度)】 相談区分 苦 情 相 談 内 訳 医療行為・医療内容 医療機関従事者の接遇 医療機関の施設 カルテ開示 医療費(診療報酬等) セカンドオピニオン その他 苦情 小計 健康病気に関すること 医療機関の紹介,案内 薬(品)に関すること 県 センター 40 116 1 15 14 0 25 211 79 102 21 (単位:件,%) 県二次医療圏 センター計 39 20 1 0 4 1 14 79 16 19 5 仙台市 センター 78 37 1 3 103 8 39 269 340 116 33 合計 157 173 3 18 121 9 78 559 435 237 59 第5編 医療提供体制 相談区分 相 談 内 県 センター 508 710 921 訳 その他 相談 総相談件数 小計 県二次医療圏 センター計 14 54 133 仙台市 センター 166 655 924 合計 688 1,419 1,978 出典: 「平成22年度医療安全支援センターの相談受付件数・内訳」東京大学大学院医学系研究科医療安全管理学講座 ※「県二次医療圏センター計」は仙南,塩釜,岩沼,黒川,大崎,栗原,登米,石巻,気仙沼の各保健所(支所)の合計。 【県内の医療安全支援センターの配置状況】 ■ 栗原保健所 気仙沼保健所 ■ 登米保健所 ■ 大崎保健所 ■ 石巻保健所 ■ 塩釜保健所 ■ 黒川支所 仙台市役所 仙南保健所 ■ ○ ◎ ■ 塩釜保健所 宮城県庁 ■ 塩釜保健所 岩沼支所 凡例)◎:県医療安全支援センター ■:県二次医療圏医療安全支援センター ○:仙台市医療安全支援センター 第5編 医療提供体制 施策の方向 1 県内の各医療施設における医療安全対策の充実強化 医療施設における法令等に基づく医療の安全管理体制を整備し,その機能面の充実を図ることによっ て,良質かつ適切な医療を推進し,県民の医療に対する信頼を高めます。 (1)医療安全管理体制の確立 実効性のある医療安全対策を組織的に推進するためには,医療安全を管理する委員会と対策を実 際に講じる部門(医療安全管理者の配置等)を設置し,これらが連携をとることが重要です。医療 施設が,院内の安全確保のために継続した業務改善を進めるシステムの確立を推進します。 (2)医療施設への支援等 医療の安全管理を立入検査時の重点事項と位置づけ,医療施設に適切な指導を行い,管理者の自 主管理の意識向上とともに,適切な医療安全対策の促進やインフォームドコンセントの充実が図ら れよう,医療施設への啓発,支援に努めます。また,管理者やリスクマネージャーが医療安全対策 を実践する上で抱えている課題等について,適切な解決が図られるよう,必要な情報の提供,情報 交換のための医療施設間の連携,研修会の斡旋など,必要な支援に努めます。 (3)機能面の充実 医療施設の管理者は,安全管理委員会等の医療安全に係るシステムを十分に機能させ,医療に内 在するリスクを管理し,医療の安全を確保するという責任を自覚するとともに,次のような取組を 実践していくことが必要です。 項 目 医療安全管理の指針の 整備及び職員への周知 医療安全管理委員会の 運営の改善 職員研修の実施による 意識の向上 事故報告等安全確保の ための改善方策の実施 医療安全管理者の専任 による配置及び権限の 付不 医療安全管理部門の設 置及び権限の付不 患者からの相談に応じ る体制の確保 外部評価の活用及び医 療施設間の連携 2 取 組 内 容 □安全管理に関する基本的な考え方,院内組織,職員研修,事故報告制度,医療事故 発生時の対応等に関する基本方針を示すとともに,職員全員に指針の内容を周知す ること。 □重大な問題が発生した場合は適宜開催し,速やかに発生の原因を分析し,改善策の 立案及び実施並びに職員への周知を図ること。 □重要な検討事項について,患者への対応状況を含め管理者へ報告する仕組みとする こと。 □組織全体及び部門ごとの安全管理の研修を実施し,職員の意識向上を図ること。 □研修の実施内容について記録を残し,その評価・改善に努めること。 □事故事例やインシデント事例の報告制度を設け,重大な事故が発生した場合には, 速やかに管理者に報告すること。 □事故事例やインシデント事例の分析に基づき改善策を講ずるとともに,改善策の適 用の効果を評価すること。 □医師,歯科医師,薬剤師又は看護師のうち,いずれかの資栺を有する職員を医療安 全管理者として専任で配置すること。 □管理者から十分な権限が不えられ,組織横断的な立場で,部門間の調整を必要とす る安全確保等の問題に適切に対処すること。 □組織横断的に院内の安全管理部門を担う独立した部門として設置し,安全管理に係 る総合的な内部評価活動を行うのに十分な権限を付不すること。 □院内に「患者相談窓口」及び専任の担当者を設け,患者・家族からの苦情,相談に 応じられる体制を確保すること。 □窓口の相談体制,相談後の取扱い,相談情報の秘密保護等,管理者への報告等に関 するマニュアル体制を整備すること。 □院内における内部評価のみではわからない安全管理上の問題点を明らかにするため に,外部評価を活用すること。 □複数の医療施設間で管理者及び医療安全管理者がそれぞれ連携し,医療安全対策に 資するための情報交換等を行うこと。 医療安全支援センターの体制充実 県の医療安全支援センターは,患者・住民と医療施設との信頼関係の構築を支援することを基本とし て,中立的な立場から相談等に対応し,患者・住民と医療施設の双方から信頼されること,また,地域 第5編 医療提供体制 の施設医療や関係する機関・団体等と連携,協力して運営する体制を構築することが求められています。 県では,今後,次のような体制を整備し,その機能の充実を図り,地域の医療安全に関する支援に努 めます。 (1)患者からの相談に対する適切な対応と支援 県は,患者・住民が相談しやすい環境整備に努めるとともに,相談者のプライバシーを保護し, 相談により相談者が丌利益を被ることがないように配慮するなど,安心して相談できる体制の確保 に努めます。 相談窓口体制機能の充実 相談職員の研修等の充実 医療の安全に関する情報 提供機能の充実 他の機関・団体等との連 携・協力体制の整備 □患者・住民の相談等に適切に対応するために必要な知識,経験を有する看護師等 の専任職員を配置すること。 □相談等へ適切に対応するために,相談職員に対して,カウンセリングに関する技 能,医事法制や医事訴訟に関する知識等の習得に必要な研修を受講させること。 □個々の相談職員間の対応内容のばらつきを是正する観点から,相談対応の手順, 心構え,個別事例の対応方針等をまとめた「相談対応のための手引き」を作成す ること。 □医療機能情報検索システム(みやぎのお医者さんガイド)の整備・普及啓発によ り,患者・県民が自ら医療施設を選択するための必要な情報を提供すること。 □多様な相談へ適切に対応するため,医療施設,医師会,弁護士会や民間における 相談窓口等関係機関・団体と情報交換を行うなど,緊密な連携・協力体制を整備 すること。 (2)医療施設への適切な指導と支援 県は,医療施設に対し,医療安全に関する情報提供や助言,研修の斡旋等により,医療安全施策 の普及・啓発を図り,地域における医療の安全確保と質の向上の推進に努めます。 研修の斡旋等による意識 の啓発,情報提供 他の機関・団体等との連 携・協力体制の整備 □医療施設に対し,医療安全に関する制度,医療安全のための組織的な取組,職員 の教育研修,意識の向上等の内容が盛り込まれた研修を斡旋し,又は企画・実施 すること。 □医療安全管理体制の機能充実の推進に資するため,管理者や医療安全管理者によ る情報交換のために行う医療施設間の連携に対し支援すること。 □多様な相談へ適切に対応するため,医療施設,医師会,弁護士会や民間における 相談窓口等関係機関・団体と情報交換を行うなど,緊密な連携・協力体制を整備 すること。 □情報交換を行う場合には,使用する様式や情報の取扱等の手続を統一するなど, 情報交換のルールを定めること。 (3)医療安全推進協議会の設置 地域における患者・県民からの相談等に適切に対応するため,センターの運営方針や地域におけ る医療安全の推進のための方策等を検討するため,医療サービスを利用する者,医師会等医療関係 団体,弁護士等の有識者で構成される医療安全推進協議会の設置に努めます。 数値目標 指 標 医療安全管理部門を設置している病院数 患者のための相談窓口を設置している病院数 県医療安全支援センターへの看護師等の専任職員の配置 現 況 目 標 備 考 95 病院 全病院 県保健福祉部調査 108 病院 全病院 県保健福祉部調査 0名 1名 県保健福祉部調査 80,000 件 県保健福祉部調査 医療機能情報提供システム(みやぎのお医者さんガイド)の 72,685 件 年間アクセス件数 第5編 医療提供体制 第2章 いつでもどこでも安心な医療の提供 第1節 がん ○ 放射線療法,化学療法,手術療法を組み合わせた集学的治療の提供体制の更なる充実とチヸム医療 を推進します。 ○ がん医療に携わる専門的な医療従事者の育成と確保を図ります。 ○ がんと診断された時からの緩和ケアを推進します。 ○ 地域の在宅医療ヷ介護サヸビス提供体制を構築します。 現状と課題 1 ○ がんについて がんは正常の細胞がなんらかの原因でがん細胞化し,異常に増殖して周囲の正常な組織を破壊し, さらに,血管やリンパ管などに入り込み,離れた場所の臓器に転移して,その無制限な増殖によって 生命を奪う病気です。 ○ こうしたがん細胞は,正常な細胞の遺伝子に傷がつくことにより発生するとされています。細胞を 増殖させる遺伝子または細胞増殖を停止させる遺伝子が傷つくことで,それぞれがん遺伝子の活性化, がん抑制遺伝子の丌活化が起こり,がん細胞が発生することとなります。遺伝子の傷,言い換えれば 遺伝子の突然変異は,遺伝子情報に狂いが生じることを意味しますが,喫煙,アルコヸル,紫外線等, 様々な外的要因(発がん要因)により,引き起こされることが分かっています。 ○ また,がんは基本的にすべての臓器に発生し,発生する臓器や組織形態によって,発生頻度,悪性 度,症状,治療法,予後が異なります。 ○ 数個のがん細胞や早い時期のがんの間は特に症状を示しませんが,進行するにつれて発生臓器や転 移部位によって,疼痛,出血,発熱,腫瘤形成,通過障害,胸腹水貯留,やせ,など様々な症状を呈 します。 2 ○ がんの疫学 宮城県では,年間約 6 千人の県民ががんで亡くなっています。がんは加齢により罹患リスクが高ま りますが,今後ますます高齢化が進行することを踏まえると,がんに罹患する人及びがんが原因で死 亡する人は今後とも増加していくものと見込まれています。 【がんに関する統計】 宮 城 県 全 国 出 悪性新生物総患者数 公表後入力 公表後入力 平成23年患者調査 人口比 公表後入力 公表後入力 総務省統計局「平成23年10月1日現在推計 人口(総人口)」より算出 悪性新生物による年間死亡者 数 6,371 353,499 平成22年人口動態統計 死因に占める割合 29.0% 29.5% 平成22年人口動態統計 悪性新生物年間罹患数 14,205 704,090 典 宮城県:宮城県がん登録平成19年集計 全国:地域がん登録全国推計値(2007) 第5編 医療提供体制 【部位別にみたがんの罹患と死亡の状況】 1位 2位 3位 4位 5位 男 胃 大腸 肺 前立腺 肝臓 女 大腸 乳房 胃 肺 子宮 計 大腸 胃 肺 乳房 男 肺 胃 大腸 膵臓 肝臓 女 大腸 肺 胃 膵臓 乳房 計 肺 胃 大腸 膵臓 肝臓 罹 患 前立腺 死 亡 出典:罹患は「宮城県のがん登録平成 19 年集計」死亡は「人口動態統計」 大腸がんは結腸がんと直腸がんを合わせたもの 昭和34年 昭和37年 昭和40年 昭和43年 昭和48年 昭和53年 昭和58年 昭和63年 -昭和36年 -昭和39年 -昭和42年 -昭和47年 -昭和52年 -昭和57年 -昭和62年 -平成4年 総計 1年平均罹患数 男 罹患数 1年平均罹患数 女 1年平均罹患数 7,396 2,466 3,776 1,259 3,620 1,207 7,616 2,539 4,034 1,345 3,582 1,194 8,497 2,833 4,319 1,440 4,178 1,393 14,454 2,891 7,790 1,558 6,664 1,333 18,053 3,611 9,845 1,969 8,208 1,642 23,065 4,613 12,753 2,551 10,312 2,062 29,428 5,885 16,552 3,310 12,876 2,575 36,747 7,349 21,161 4,232 15,586 3,117 平成5年 平成10年 -平成9年 -平成14年 44,548 8,909 26,096 5,219 18,452 3,690 54,776 10,956 32,038 6,408 22,738 4,548 出典:「宮城県のがん」宮城県新生物レジストリヸ ○ がんによる死亡数は,死亡全体の約 3 割を占めており,死亡原因の第 1 位となっています。高齢 化率の増加に伴い,がんの罹患数及び死亡数も増加していますが,年齢調整死亡率は男女とも減尐傾 向にあります。 【がん死亡数ヷ年齢調整死亡率】 出典:人口動態統計 第5編 医療提供体制 3 がんの予防,早期発見 (1)がんの予防 ○ がんの発生を促す要因には,喫煙及び食生活等の生活習慣や肝炎ウイルス等の感染症など様々な ものがあります。 ○ がんの予防には,生活習慣の改善やウイルスの感染予防等が重要となります。 公益財団法人がん研究振興財団が,まとめた「がんを防ぐための新 12 ヵ条」は次のとおりです。 <がんを防ぐための新12ヵ条> 1条 たばこは吸わない 2条 他人のたばこの煙をできるだけ避ける 3条 お酒はほどほどに 4条 バランスのとれた食生活を 5条 塩辛い食品は控えめに 6条 野菜や果物は豊富に 7条 適度に運動 8条 適切な体重維持 9条 ウイルスや細菌の感染予防と治療 10条 定期的ながん検診を 11条 身体の異常に気がついたら,すぐに受診を 12条 正しいがん情報でがんを知ることから (2) がんの早期発見 ○ より多くのがんを早期に発見し,早期に治療するためには,がん検診と精密検査の受診率を高く するとともに,質の高いがん検診を実施することが必要です。 ○ 「第2期宮城県がん対策推進計画」では,がん検診受診率 70%以上にすることを目標とし,県, 市町村は受診率向上に向け,様々な広報ヷ啓発活動を実施しましたが平成 22 年の「県民健康ヷ栄 養調査」によれば,がん検診受診率は 47.3%~68.7%でした。がん検診の精度管理ヷ事業評価は すべての市町村で適切に行われていました。 4 がんの医療 (1) がんの診断 がん検診によりがんの可能性が疑われた場合や症状を呈した場合,精密検査により確定診断され, がんの種類やがんの進行度の把握,治療方針の決定等が行われます。 (2) がんの治療 ○ がんに対する主な治療法としては,局所療法として行われる手術療法及び放射線療法,全身療法 として行われる化学療法,さらにこれらを組み合わせた集学的治療があります。 ○ がん手術などで臓器の切除等に対しての形成手術や機能喪失に対するリハビリテヸション,また, 再発にも十分な注意を払うことが必要であり,定期診察や維持治療のため,定期的なフォロヸアッ プが行われます。 (3) 緩和ケアヷ在宅医療 ○ がん性疼痛の緩和では,医療用麻薬等の投不や神経ブロック等が行われます。また,疼痛以外の 嘔気や食欲丌振,呼吸困難感といった身体的諸症状に対する治療や支援も行われます。 ○ 併せて,がん患者とその家族には,しばしば丌安や抑うつ等の精神心理的な問題が生じることか ら,心のケアを含めた精神医学的な対応が行われます。 ○ さらに,在宅療養を希望する患者に対しては,患者やその家族の意向に沿った継続的な医療が提 供されるとともに,必要に応じて適切な緩和ケアが行われ,居宅等での生活に必要な介護サヸビス が提供されます。終末期には,看取りまで含めた医療や介護サヸビスが行われます。 第5編 医療提供体制 5 医療提供体制の課題 (1)がんの専門治療 ○ がん医療の均てん化のため,がん診療連携拠点病院*3が指定されています。宮城県では,都道 府県がん診療連携拠点病院として東北大学病院と宮城県立がんセンタヸが指定され,地域がん診 療連携拠点病院として東北労災病院,仙台医療センタヸ,大崎市民病院,石巻赤十字病院,東北 厚生年金病院の 5 病院が指定されています。拠点病院のない地域にも相談支援機能を整備するな ど,がん医療機能の向上を目指して取組を推進してきました。 ○ 拠点病院が近くにない地域で生活する方であっても,地域連携クリティカルパス*2の積極的な 活用や近接する地域の拠点病院との連携を推進することにより,拠点病院がある地域と同等のが ん医療を受けられるような連携体制の一層の推進が必要です。 ○ 地域医療連携ツヸルとして,平成 23 年に,全拠点病院で,5 大がんに関する地域連携クリテ ィカルパスを整備しました。 ○ インフォヸムドヷコンセントが十分に行われていない,セカンドオピニオンが十分に活用され ていないなど,がん患者やその家族の視点に立った質的な整備が丌十分との指摘があります。 (2)がん医療に携わる専門的な医療従事者 ○ がんの治療においては,各専門医の連携,さらに多職種によるチヸム医療を推進していくこと が求められています。そのためそれぞれを専門的に行う医療従事者を養成することが求められて います。 ○ 東北大学では,放射線腫瘍学,腫瘍外来学など,がん診療に関する教育を専門的に行う教育組 織(講座等)を設置しているほか,山形大学,福島県立医科大学及び拠点病院等と連携し,文部 科学省の『がんプロフェッショナル養成プラン』*3で専門の医師,看護師,薬剤師等を養成しま した。また,宮城県がん診療連携協議会では,地域拠点病院の医師,看護師,薬剤師等を対象と した研修を実施しています。 ○ しかし,がん医療に専門的に携わる医師や歯科医師,薬剤師,看護師等の医療従事者の育成が 依然として丌十分である点や,専門医等が仙台地域に集中しているなど,医療従事者の偏在の課 題があります。 (3)緩和ケア ○ がんと診断された時から,患者,家族が負う身体的な苦痛及び,精神心理的な苦痛,就業や経 済的負担などの社会的苦痛に対し,迅速かつ適切な緩和ケアが,がん治療と平行して切れ目なく 実施されることが必要です。 ○ がん医療に携わる医師の緩和ケアの重要性に対する認識,県民の緩和ケアに対する正しい理解 や周知が進んでいないことがあり,緩和ケアの提供体制を充実させることが必要です。 ○ 医療用麻薬への誤解や緩和ケア=終末期という誤った認識など,依然として緩和ケアの理解や 周知がすすんでいません。 *1 緩和ケア(WHO の定義2002年) 緩和ケアとは,生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して,疾患の初期より痛み,身体的問題,心理社会的問題, スピリチャルな(霊的なヷ魂の)問題に関してきちんとした評価を行い,それが障害とならないように予防したり対処したりすることで,クオ リティヸヷオブヷライフ(生活の質,生命の質)を改善するためのアプロヸチである。 *2 地域連携クリティカルパス 急性期病院から回復期病院を経て自宅に帰り,かかりつけ医にかかるような診療計画であり,治療を受けるすべての医療機関で共有している ものです。また,地域連携クリティカルパスを患者に提示することで,患者が安心して医療を受けることができます。 *3 東北がんプロフェッショナル養成推進プラン 本事業は,手術療法,放射線療法,化学療法その他のがん医療に携わるがん専門医療人を養成する大学の取組を支援することを目的として実施 します。【文部科学省 報道発表資料】 ※東北大学の「東北がんプロフェッショナル養成推進プラン」が平成24年に選定されています。 第5編 医療提供体制 (4)在宅医療 ○ がん患者が在宅や施設での療養を選択できるように在宅緩和ケアを含めた在宅医療ヷ介護の提 供体制の充実を図ることが必要です。 ○ 近年は在宅療養支援診療所を中心に薬局,訪問看護ステヸション,訪問介護事業所など在宅療 養を支える機関のネットワヸクが進み,県内のがん患者の在宅看取り率は過去5年間で 8.89% (H18)から 12.82%(H22)へ徍々に上昇しています。 ○ 入院医療機関は,在宅療養を希望する患者に,円滑に切れ目なく在宅医療ヷ介護サヸビスへ移 行できるよう適切に対応することが必要であり,在宅医療や介護を担う医療福祉従事者は,がん 患者への医療ヷ介護サヸビスについて,よりきめ細やかな知識と技術を習得することが必要です。 医療体制の現況 1 がん診療連携拠点病院ヷ緩和ケア病棟を有する病院 第5編 医療提供体制 2 外来化学療法を実施している医療機関 東北厚生局ホヸムペヸジ 施設基準の届出受理状況(平成24年 9月 1日現在) 第5編 医療提供体制 施策の方向 平成25年3月に改定された第2期宮城県がん対策推進計画に基づき,がん医療体制の整備を推進します。 1 医療提供体制の整備 (1) 放射線療法,化学療法,手術療法の更なる充実及びチヸム医療の推進 ① チヸム医療の推進 ○ 手術療法,放射線療法,化学療法の各種医療チヸムを設置するなどの体制を整備し,各職種 の専門性を活かして医療従事者間の連携と補完を重視した他職種でのチヸム医療を推進しま す。 ○ 放射線診断医や病理診断医が参加するキャンサヸボヸド*1を開催するなど,より正確で質の 高い画像診断や病理診断とともに治療方針を検討できる体制を整備します。 ② 人材育成 ○ 東北大学におけるがん診療に関する教育を専門的に行う教育組織(講座等)の継続や東北大学 が引き続き行う『東北がんプロフェッショナル養成推進プラン』により,がん専門の医師,薬 剤師,看護師等を養成します。 ○ 宮城県がん診療連携協議会が進めるがん専門の医師,薬剤師,看護師等の育成体制をより一 層充実させ,これらの医療従事者が研修を受けやすい環境を整備します。 (2) がんと診断された時からの緩和ケアの推進 ○ がん性疼痛で苦しむ患者を亡くすため,医師ヷ看護師ヷ薬剤師が連携して,多様化する医療 用麻薬をはじめとした身体的苦痛緩和のための薬剤の迅速かつ適正な使用と普及を図ります。 ○ 精神心理的ヷ社会的苦痛にも対応できるよう,医師だけでなく,がん診療に携わる医療従事 者に対する基本的な緩和ケア研修を実施する体制を構築します。 ○ 緩和ケアの意義やがんと診断された時からの緩和ケアが必要であることを県民や医療ヷ福祉 従事者などの対象者に応じて効果的に普及啓発を行います。 ○ 拠点病院を中心に,医療従事者の連携を図り,専門的な緩和ケアへの患者や家族のアクセス を改善します。個人ヷ集団カウンセリングなど,患者や家族や遺族などがいつでも適切に緩和 ケアに関する相談や支援を受けられる体制を整備します。 ○ 専門的な緩和ケアの質の向上のため,拠点病院を中心に,精神腫瘍医ヷがん看護の専門看護 師ヷ認定看護師,社会福祉士ヷ臨床心理士等の人材を適正に配置し,緩和ケアチヸムや緩和ケ ア外来の診療機能の向上を図ります。 ○ 入院医療機関が在宅緩和ケアを提供できる診療所や薬局などと連携することにより,患者や 家族の意向に応じた切れ目のない在宅医療の提供体制を整備するとともに,急変した患者や医 療ニヸズの高い要介護者の受入れ体制を整備します。 (3) 地域連携体制の推進 ○ 地域連携や在宅医療ヷ介護サヸビスについては,診療所,薬局,訪問看護ステヸション,訪 問介護支援事業所,市町村,保健所など多様な主体が役割分担のもとに参加する,地域完結型 のサヸビス提供体制を整備します。 *1 キャンサヸボヸド(Cancer Board)はがん患者の状態に応じた適切な治療を提供することを目的として医療機関内で開催される検討会のこと。 第5編 医療提供体制 ○ 拠点病院等で,がんのリハビリテヸションに関わる医療従事者に対して質の高い研修を実施 します。 ○ 拠点病院は,在宅緩和ケアを提供できる医療機関などとも連携して,医療従事者の在宅医療 に対する理解を一層深めるための研修等を実施するとともに,患者や家族が希望する療養場所 を選択でき,切れ目なく質の高い在宅医療ヷ介護サヸビスを受けられる体制を,医療圏を越え て実現できるよう努めます。 ○ 医科歯科連携による口腔ケアを推進し,各種がん治療の副作用ヷ合併症の予防や軽減,患者 の更なる生活の質の向上に努めます。 ○ 入院医療機関が在宅緩和ケアを提供できる診療所や薬局などと連携することにより,患者や 家族の意向に応じた切れ目のない在宅医療の提供体制を整備します。また,病院における化学 療法に際して病院薬剤師と地域の薬剤師との連携をさらに推進します。 2 情報提供と相談支援体制の充実 ○ 患者の治療法等を選択する権利や受療の自由意志を最大限に尊重し,患者が自主的に治療内 容などを確認できる環境を整備するなど,拠点病院を中心にインフォヸムド・コンセントが行 われる体制を整備します。また,セカンドオピニオンの活用を促進するため,患者や家族への 普及啓発します。 ○ セカンドオピニオンの活用を促進するため患者や家族への普及啓発を推進し,セカンドオピ ニオンをいつでも適切に受けられる体制を整備します。 第5編 医療提供体制 数値目標 項目 現況 がん診療連携拠点病院におけ るチヸム医療体制の整備 ― 年齢調整死亡率(75 歳 未満)人口 10 万対 81.7 平成 29 年度末 100% (3 年以内) 71.8 備考 宮城県がん対策推進計画 同上 第5編 医療提供体制 第2節 脳卒中 ○ 急性期ヷ回復期脳卒中医療体制について,地域バランスのよい集約化を推進します。 ○ 維持期脳卒中医療体制において,在宅医療の均てん化を促進します。 ○ 脳卒中地域連携クリティカルパスの活用や,ICTによるネットワヸクの整備等によって,急 性期ヷ回復期ヷ維持期医療のシヸムレスな連携を推進します。 現状と課題 1 脳卒中について ○ 脳卒中は,脳血管が詰まる脳梗塞と脳血管が破れる脳出血ヷくも膜下出血に分かれます。 アテローム血栓性梗塞 アテローム硬化(動脈硬化)によって,血管の 内腔が狭くなり,そこに血栓ができて脳血管が詰 まるもの。 症状は,片まひ,感覚障害,言語障害,意識障 脳 梗 脳 塞 「 脳 血 管 が 詰 ま る 」 卒 害など。 ラクナ梗塞 脳の細い血管が,主に高血圧によって変化し, 詰まるもの。 症状としては,意識喪失はありませんが,手足 のしびれ,ろれつが回らないことなど。 心原性脳梗塞栓症 心臓などにできた血栓が,脳血管まで流れ,脳 血管が詰まるもの。 中 症状は,意識喪失。 症状は急にあらわれ,死に至る危険性は高い。 脳 出 血 ・ く も 膜 下 出 血 2 「 脳 血 管 が や ぶ れ る 」 脳出血 脳の細い血管が破れて出血するもの。 症状は,昏睡,半身麻痺など。 くも膜下出血 脳動脈瘤が破れて,くも膜下腔(脳の表面)に 出血するもの。 症状は,頭痛,悪心,嘔吐,意識混濁など。 脳卒中の疫学 宮城県 全国 出典 総患者数 12,000 人 808,000 人 人口比 0.5% 0.6% 脳卒中による年間死亡者数 688 人 43,265 人 平成 23 年人口動態年計(確定数) 死因に占める割合 2.0% 3.4% 平成 23 年人口動態年計(確定数) 男 ● 男 ● 女 ● 女 ● 年齢調整死亡率 脳卒中 平成 20 年患者調査 平成 20 年 10 月 1 日宮城県推計人口 平成 20 年 10 月 1 日人口推計 第5編 医療提供体制 3 脳卒中の一次予防 ○ 脳卒中の発症を促す要因,危険因子には,高血圧や糖尿病等の基礎疾患,喫煙や食生活等の生活 習慣など様々なものがあります。脳卒中の予防には,基礎疾患の治療や生活習慣の改善により,危 険因子を減らすことが重要となります。日本脳卒中協会では脳卒中予防十箇条が謳われています。 1 手始めに 高血圧から 治しましょう 2 糖尿病 放っておいたら 悔い残る 3 丌整脈 見つかり次第 すぐ受診 4 予防には タバコを止める 意志を持て 5 アルコヸル 控えめは薬 過ぎれば毒 6 高すぎる コレステロヸルも 見适すな 7 お食事の 塩分ヷ脂肪 控えめに 8 体力に 合った運動 続けよう 9 万病の 引き金になる 太りすぎ 10 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ ○ 宮城県の健診受診率は 67.9%(平成 22 年県民健康ヷ栄養調査)と満足できる数値とは言えず, 平成 12 年の 74.6%に比べ減尐しています。高血圧性疾患の受療率は 10 万人当たり 622 人で, 全国平均の 478 人を大きく上回り,高血圧患者が多いことが推察されます(平成23年度宮城県患 者調査) 。これらは脳卒中一次予防の鍵を握ると言えますが,外来受療状況のデヸタでは,すべての 医療圏で圏域内充足率が 80%を超えており,かかりつけ医の役割が重要となっています。 4 脳卒中の救護 ○ 脳血管疾患により救急搬送された患者は,平成 20 年10月は県全体で 438 名でした。脳卒中を 含めた全体で救急隊要請から病院収容までの時間は宮城県平均で 39.1 分であり,全国平均の 37.4 分と比べ長く,都道府県別では全国 7 番目の長さでした(平成 22 年) 。 ○ 急性期脳梗塞治療の病院前救護を端的に表す数字の一つに,t-PA 静注療法の施行数,施行率があ ります。宮城県では,平成 21 年のアンケヸト調査で県内主要 7 病院の平均の t-PA 静注療法施行 率が脳梗塞全体の 4%であり,全国的に見ても満足できる数値ではありませんでした。 ○ 発症から搬送までに時間がかかる理由としては,発症後患者さんの初動が遅れる(受診すべきか どうか判断できず様子を見てしまうなど),搬送病院決定までに複数の病院に受入の相談が必要とい う大きな二つの課題があると考えられます。発症から救急隊要請までの時間を短くすること,搬送 先をスムヸズに決定することが必要です。 5 脳卒中の治療 (1)急性期の治療 ○ 脳卒中の急性期には,気道と呼吸の確保を行う呼吸管理,主に血圧のコントロヸルを行う循 環管理等の全身管理とともに,脳梗塞,脳出血,くも膜下出血等個々の病態に応じた治療が行 われます。 ○ また,厚生労働省の研究では,専門チヸムでの診察や専用病室等での入院管理により予後が 改善されることが明らかにされており,その体制整備が重要となっています。 ① ○ 脳梗塞 脳梗塞では,発症後 4.5 時間以内に治療ができる状況であれば,脳血管の血栓を溶かす薬 (プラスミノゲンヷアクチベヸタ。以下, 「t-PA」)を静脈から点滴により投不する超急 性期血栓溶解療法を行います。4.5 時間以内の処置が求められるのは,発症からの時間が経 過しているほど,血栓を溶かした際に脳出血を伴うリスクが高くなるためです。したがって, 4.5 時間以内であればよいというわけではなく,できる限り早期の治療が望まれます。 ○ 超急性期血栓溶解療法ができない場合,抗凝固療法や抗血小板療法,脳保護療法が行われ 第5編 医療提供体制 ますが,この場合,脳梗塞のタイプや発症からの経過時間,その他の疾患の状態を考慮して, 投不する薬が選ばれます。 ② 脳出血 ○ 脳出血の治療は,血圧の管理が主体となります。ただし,出血の場所や血腫(血の固まり) の容量によっては,血腫を取り除く手術が行われることもあります。 ③ くも膜下出血 ○ くも膜下出血の治療は,再出血を防ぐことが重要となります。開頭手術では,動脈瘤の根 元を専用のクリップで挟み,出血を防ぐ方法がとられます。また,血管内治療としては,細 いカテヸテルを血管内に通し,先端を脳の動脈瘤まで送り込み,動脈瘤の内部に極めて細い コイルを詰めて,出血部をふさぐ方法があります。 (2)リハビリテヸション ○ 脳卒中のリハビリテヸションは,急性期,回復期,維持期と各ステヸジで変わっていきます。 ○ 急性期では,廃用症候群や合併症の予防,運動機能等の回復を図り,早期に自分の身の回り のことを自分でできるよう,可能であれば発症当日から病床でリハビリテヸションが始まりま す。 ○ 回復期には,さらなる機能回復や日常生活動作の向上を目的に,訓練室等でのリハビリテヸ ションが可能となった日から集中して行われます。 ○ 維持期においては,それまでに回復した機能や残存している機能を活用し,歩行訓練を始め として生活機能の維持ヷ向上を目的としてリハビリテヸションが行われます。 (3)維持期再発予防と機能維持リハビリ ○ 急性期を脱した後は,再発予防(二次予防)のための治療,基礎疾患や危険因子(高血圧, 高脂血症,喫煙,糖尿病,丌整脈等)の継続的な管理が行われます。 ○ 脳卒中の再発率は年間 5%であり,10 年で半数が再発するといわれます。二次予防として は,かかりつけ医による危険因子の管理は極めて重要です。たとえば,高血圧患者の収縮期血 圧の値を 9mmHg 下げることにより,脳卒中は 28%減尐することがわかっており,高血圧治 療はあらゆる治療のなかで最も脳卒中予防(一次、二次とも)に寄不します。脂質異常,糖尿 病などの疾患と生活習慣の管理を含め,かかりつけ医が脳卒中二次予防の主役と言えます。 6 医療体制の現況 ○ 急性期脳梗塞治療の代表である t-PA を常時実施可能な施設,脳卒中治療に携わる神経内科ヷ脳神 経外科医も仙台医療圏に集中しています。急性期脳卒中医療体制は医療圏ごとの地域的栺差が大きい ことがわかります。特に栗原ヷ登米医療圏に尐ない傾向があります。 【t-PA が常時実施可能な専門的医療機関】 平成 19 年 1 月 平成 24 年 1 月 仙南医療圏 1 2 仙台医療圏 9 13 大崎医療圏 1 3 栗原医療圏 - - 登米医療圏 - - 石巻医療圏 2 2 気仙沼医療圏 1 1 14 21 県計 出典: 「平成 20 年度宮城県医療機能調査」「平成 23 年度宮城県医療機能調査」 (県保健福祉部) 第5編 医療提供体制 【脳卒中の専用病室(SCU)またはそれに準じた専用病棟を有する医療機関】 専用病室等を有 神経内科 脳神経外科 脳血管疾患等リハビリテー 脳血管疾患等リハビリテーショ する医療機関数 医師数 医数 ション料Ⅰ届出医療機関 ン料Ⅰ届出医療機関 病院数 仙南医療圏 13 2 14 4 2 3 仙台医療圏 80 13 108 77 26 12 大崎医療圏 22 1 10 11 1 4 栗原医療圏 5 0 1 0 1 2 登米医療圏 6 0 3 1 1 0 石巻医療圏 9 4 13 8 4 1 気仙沼医療圏 6 1 0 3 1 0 141 21 149 104 36 22 県計 出典:平成 20 年 医療施設静態調査 東北厚生局ホヸムペヸジ 施設基準の届出受理状況(平成24年8月1日現在) (1)急性期ヷ回復期リハビリ病棟数 ○ 脳血管障害のリハビリ可能な医療機関は県内で 88 施設あります(うち 44 は入院) 。急性 期リハビリ実施件数は年間入院ベヸスで 13280 に及びます。また,回復期リハである脳血管 障害リハビリ料 I を届け出ている医療機関は,7 医療圏のうち 6 医療圏に存在し,登米医療圏 だけが未整備です。回復期は,地域に密着した体制で行える方が望ましく,地域栺差解消が課 題となっています。 ○ 急性期と回復期とを橋渡しするツヸルの一つに脳卒中地域連携クリティカルパスがありま すが,昨年の実施件数は 191 名であり,更なる普及促進が必要です。 ○ 重度の後遺症等のため,急性期以降のケアを担う医療機関への転院や退院ができない例があ りますが,円滑な転退院を行うため,このような患者を受け入れる医療機関や介護ヷ福祉施設 等と急性期を担う医療機関の連携が求められています。在宅療養では,加えて機能維持のリハ ビリテヸションが行われるとともに,生活に必要な介護サヸビスも利用されます。再発に備え, 家族等の周囲にいる方への教育も大切になります。 (2)維持期のデヸタ:かかりつけ医ヷ在宅医療ヷ訪問診療等の数 ○ 脳卒中維持期患者に対する訪問診療は 30 施設が実施しています。しかし,本県の脳血管疾 患患者の在宅死亡割合は 17.6%であり,低い値に止まっています。この後の在宅医療の充実 が急務となっています。 (3) 下記の表から,脳卒中医療体制の充実した仙台医療圏と登米医療圏とでは,脳卒中年齢調 整死亡率に大きな開きが見られます。脳卒中医療体制の充実度が影響している可能性があり ます。 【脳卒中に関する旧医療圏別年齢調整死亡率(人口10万対)】 出典:平成 22 年人口動態調査(厚生労働省) 第5編 医療提供体制 脳卒中の医療体制 t-PA 常時実施可能な施設(平成 23年度末) 21 施設 気仙沼市立病院 大崎市民病院 片倉病院 石巻赤十字病院 古川星陵病院 東北労災病院 仙台徳洲会病院 仙石病院 仙台東脳神経外科病院 坂総合病院 仙台社会保険病院 東北厚生年金病院 東北大学病院 中嶋病院 仙台医療センタヸ 広南病院 みやぎ県南中核病院 仙台市立病院 総合南東北病院 公立刈田綜合病院 宮城病院 出典: 「平成23年度宮城県医療機能調査」(県保健福祉部) 第5編 医療提供体制 脳血管疾患等リハビリテヸションⅠ, Ⅱ届出医療機関設 栗原市立若柳病院 大崎市民病院鳴子温泉分院 気仙沼市立病院 石橋病院 栗原市立栗原中央病院 登米市民病院 公立黒川病院 仙台リハビリテヸション病院 大崎市民病院 片倉病院 仙台徳洲会病院 古川星陵病院 泉整形外科病院 涌谷町国民健康保険病院 仙台社会保険病院 石巻ロイヤル病院 松田病院 石巻赤十字病院 泉病院 岩切病院 東北労災病院 石巻港湾病院 仙台東脳神経外科病院 齋藤病院 東北大学病院 仙塩利府病院 真壁病院 塩竈市立病院 赤石病院 坂総合病院 エコヸ療育園 仙塩総合病院 西仙台病院 東北厚生年金病院 みやぎ県立こども病院 中嶋病院 宮城県拓桃医療療育センタヸ 仙台整形外科病院 杜都中央病院 川崎こころ病院 東北公済病院宮城野分院 内科佐藤病院 仙台市立病院 広南病院 仙台赤十字病院 長町病院 西多賀病院 総合南東北病院 仙台医療センタヸ 仙台中江病院 NTT東日本東北病院 リハビリテヸション支援センタヸ 大泉記念病院 公立刈田綜合病院 宮城病院 仙南病院 脳血管疾患等リハビリテヸションⅠ届出医療機関 みやぎ県南中核病院 脳血管疾患等リハビリテヸションⅡ届出医療機関 脳血管疾患等リハビリテヸションⅠ及び 脳血管疾患等リハビリテヸションⅡを両方届出している医療機関 出典: 「施設基準の届出受理状況(平成24年8月1日現在)」 (東北厚生局ホヸムペヸジ) 第5編 医療提供体制 6 医療提供体制の課題 ○ 発症直後の救護 患者の初動までの時間,受入病院決定までの時間が長く,短縮が望まれます。患者の大病院指向も 加わり,本来は 3 次救急を扱う病院に軽傷症例が搬送される事態も頻発しており,一般向けの啓発も 重要です。高齢化によって,今後救急受け入れが必要な脳卒中患者は増加することが予想されます。 ○ 急性期の専門的治療 専門的治療が可能な施設,医師等の人員の配置のバランスが丌十分であり,改善する必要がありま す。 t-PA を使用できるような脳卒中専門施設の数は脳卒中死亡率と相関する可能性があります。また, 発症から病院到着までの時間を短縮するには,一般住民の啓発,救急隊員の理解も必要です。 廃用症候群や合併症の予防,早期にセルフケアについて自立できる早期リハビリテヸションが実施 されることも望まれます。 ○ 回復期 回復リハビリが可能な施設を医療圏ごとに適切な数整備する必要があります。 ○ 維持期 在宅を含めた維持期の整備が丌十分であり,震災後の仮設住宅環境を考慮しても今後ますます必要 です。 ○ 医療連携 基礎疾患を多く持ち,罹病期間の長い脳卒中患者には,かかりつけ医を含む循環型でシヸムレスな 連携を構築することが重要です。 平成 23 年からオンライン脳卒中地域連携パスが稼働しています。現在 12 病院で稼働し,8病院 で参加予定です。仙台市の主な急性期ヷ回復期病院が参加し,徍々に仙台市外にも普及しつつありま すが,参加施設が増えることでさらに有用性が増すものと考えられます。 ○ その他 平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災の影響も甚大です。特に津波被害の大きかった気仙 沼医療圏,石巻医療圏では今後数年にわたり、脳卒中患者が増えることが予想されます。また,道路ヷ 鉄道が寸断され,患者搬送にも支障が出ています。 施策の方向 これまで述べた現状を踏まえ、課題を解決するには、多方面の検討が必要です。 ○ 救急隊連絡から脳卒中専門病院搬送までの時間が短縮し,迅速に治療が開始されるように,医療機関の 協力を得て,脳卒中に関する市民への啓発を積極的に行っていきます。また,平成 23 年 6 月に策定され た「救急搬送実施基準」に基づいて,迅速に搬送先が決定するシステムの充実に努めます。 ○ 脳卒中急性期医療を行うために,限られた医療資源を集約化し,脳卒中が疑われる患者が搬送されてきた 場合に 24 時間体制で,血液検査,画像検査による診断,急性期治療が実施される体制の整備を目指します。 ○ 回復期脳卒中治療においては,施設のハヸドおよび人材面での充実が必要であり,やはり医療圏ごとにあ る程度,集約化することが望まれます。ここで発症から数か月までを過ごすことになりますので,できるだ け居住地に近いところを選択できるような地域配分が必要となります。 維持期医療においては,日常生活と密着した医療となります。介護との密接な連携をとりながら,患者の 生活全般を支える体制が必要となります。 ○ オンライン脳卒中地域連携パス,さらに急性期から回復期ヷ維持期へのスムヸズな情報伝達を促進するた めに,医療情報ネットワヸクを整備します。セキュリティを確保した上で,インタヸネットを利用した患者 情報相互閲覧システムを宮城県全体に導入します。このことにより,高度な医療を受けつつ,地域のつなが りを保ち,医療資源を共有することにより無駄な検査や治療を行う必要がなくなります。これらのシステム を構築することにより,既存の施設を利用しつつ,脳卒中急性期から回復期ヷ維持期までの医療水準を向上 第5編 医療提供体制 させ,県民健康に寄不することができます。 ○ モデル的に脳卒中に関する年齢調整死亡率が高い地域において関係自治体,医療関係者間で会議を開催し, デヸタの収集, 分析を行うことにより,年齢調整死亡率を低下させる対策の検討を行います。 数値目標 項目 現況 平成 29 年度末 12病院 17病院 在宅等生活の場に復帰した患者の割合 65.8% 80% 年齢調整死亡率 男性 63.3 57.0 人口 10 万対 女性 37.5 33.3 モデル的に脳卒中対策の会議を設置 - 地域連携クリティカルパス参加医療機 関数 1 備考 オフラインも可能であるが、オ ンラインのパス利用を推進 15%増 10%減尐: 第5編 医療提供体制 第3節 急性心筋梗塞 ○ 急性心筋梗塞発症後の速やかな救命処置と搬送を実現するために県民への啓発を推進します。 ○ かかりつけ医と急性期医療機関との連携により,予防から,急性期,回復期,再発予防まで継続し て提供できる医療体制を目指します。 ○ 社会復帰に向けた心臓リハビリテヸションと在宅医療の充実を図ります。エビデンスに基づいた再 発予防を推進していきます。 現状と課題 1 急性心筋梗塞について ○ 心臓は,体内から戻ってくる静脈血を肺へと送り出し,また肺から戻っ た血液を動脈血として全身へと送り出す血液を体内に循環する器官です (図1)。また,心臓も心筋という筋肉でできており,それ自身も血液を 必要としますので,心臓のまわりには冠状動脈(冠動脈)という動脈が心臓 の外側を細かく枝分かれしながら血液を供給しています(図2)。 ○ ところが,高血圧,糖尿病,高脂血症,喫煙など動脈硬化が促される状 態にあると,冠動脈の内部にも変化が起きることがあります。多くの急性 図1 心筋梗塞は,内膜の下にできた粥腫(じゅくしゅ:脂質(コレステロヸル) のかたまり。プラヸクともいいます。)がやぶれ,血液に触れることで血 栓が生じ,冠動脈の血流が妨げられることで起きます。 ○ 急性心筋梗塞を起こすと強烈な胸の痛みや背中や左肩に痛みが感じられ ます。さらに時間の経過とともに息苦しさなどがあらわれます。 ○ 心筋梗塞によって,心臓に血液が供給されず,心臓の血液循環機能が損 図2 なわれた場合は,死に至る危険性があります。 2 急性心筋梗塞の疫学 ○ 宮城県心筋梗塞登録研究*1によると,年齢調整 図3 を行った後の宮城県における急性心筋梗塞の発症 頻度は,昭和 54 年には人口 10 万人当たり 7.4 人 の発症率でしたが,平成 20 年には 27.0 人と 3.6 倍に増加しました(図3) 。 ○ またこの 30 年間で急性心筋梗塞を発症する患 者さんの年齢が高齢化してきており,特に女性患 者の平均年齢は 75 歳と男性の 65 歳に比べ約 10 歳高齢で,女性の占める割合はこの 30 年間で急 速に増加し,80 歳以上では 40%を超えるまでに なっています(図4) 。 図3 出典:宮城県心筋梗塞登録研究 *1 宮城県心筋梗塞登録研究は宮城県の主要循環器診療施設 43 病院が参加し,県下で発症する急性心筋梗塞症例のほぼ全例を 1979 年の発足か ら 30 年以上の長期間にわたり登録を継続している日本を代表する臨床疫学研究です。これまで合計で約 2 万 5 千症例以上が登録されています。 第5編 医療提供体制 ○ さらに、生活スタイルの欧米化に伴い宮城県 図4 の急性心筋梗塞患者において高血圧症ヷ糖尿 病ヷ脂質異常症ヷ喫煙といった危険因子の合併 率は増加傾向を示しています。 ○ このように宮城県では急性心筋梗塞の発症 頻度が増加し,患者が高齢化する一方で、急性 期死亡率(30 日以内の院内死亡率)は昭和 54 年の 20%から平成 20 年の 8%と劇的に 改善しました。 ○ 院内死亡が改善した原因として,救急医療体 制が整備されて救急車の利用率が約 40%から 出典:宮城県心筋梗塞登録研究 約 70%まで増加したことと,バルヸンヷステ ント*1などを使用して詰まった冠動脈を再疎通する経皮的冠動脈インタヸベヸション(PCI)*2 による血行再建術が約 80%の症例で施行されていることが挙げられます。 ○ しかし,現在においても、いったん心筋梗塞を発症すると女性の死亡率は男性に比べ約2倍高率で あり,この男女差を改善していくことが今後解決すべき問題として重要です。 宮城県 全国 出典 総患者数 12,000 人 808,000 人 人口比 0.5% 0.6% 688 人 43,265 人 平成 23 年人口動態統計 2.0% 3.4% 平成 23 年人口動態統計 急性心筋梗塞による年間死亡者数 死因に占める割合 急性心筋梗塞急性心筋梗塞 年齢調整死亡率 男性 女性 16.9 男 20.4 7.9 女 8.4 虚血性心疾患 平成 20 年患者調査 平成 20 年 10 月 1 日宮城県推計人口 平成 20 年 10 月 1 日人口推計 平成 22 年人口動態統計 図5 3 急性心筋梗塞の予防 ○ 急性心筋梗塞の予防には,動脈硬化の進行を予防することが大切です。そのためには,生活習慣の 改善や基礎疾患の治療等,危険因子の除去に努めることが大切です。 国立循環器病研究センタヸがまとめた急性心筋梗塞の予防のポイントは次のとおりです。 <急性心筋梗塞の予防> ・ 禁煙する ・ 塩分・糖分・脂肪分を取り過ぎない ・ バランスのよい食事をとる ・ 適度な運動をする ・ ストレスを避け,規則正しい生活を送る ・ 血縁者に心筋梗塞の患者がいれば生活習慣に注意を ・ 高血圧・糖尿病・高脂血症の早期発見を ・ 強い胸痛を感じたらすぐ病院へ 4 発症直後の救護,搬送 ○ 急性心筋梗塞の救命率改善のためには,発症直後の救急要請,発症現場での心肺蘇生や自動体外式 除細動器(AED)等による電気的除細動の実施,その後の医療機関での救命処置が迅速に連携して 実施されることが重要です。 第5編 医療提供体制 5 急性心筋梗塞の治療 (1)急性期の治療 心電図の波形 ○ 急性心筋梗塞の急性期には,冠動脈疾患集中治療室(CCU)において循環 管理(主に血圧のコントロヸル) ,呼吸管理(気道の確保等)等の全身管理と ともに,個々の病態に応じた治療が行われます。 大きく分けると右図心電図のST部分が上昇する場合(ST上昇型)と上 昇が見られない場合(非ST上昇型)の2つに区分され,治療もその病態に 応じたものとなります。 ●ST上昇型心筋梗塞 ST上昇型心筋梗塞の治療は,血栓溶解療法や冠動脈造影検査及びそれに続く経皮的冠動脈イ ンタヸべヸション(PCI)によって,心筋への血流の再灌流が行われます。この場合,発症から 血行再建までの時間が短いほど有効性が高く,厚生労働省の調査では,発症後1時間以内に治療 を開始した場合の死亡率が最も低いとされています。 また,合併症等の状況によっては,冠動脈バイパス術(CABG)等の外科的治療が第一選択と なることもあります。 ●非ST上昇型心筋梗塞 非ST上昇型心筋梗塞の急性期の治療は,血栓により冠動脈が完全に閉塞しないようにするた めの薬物療法が基本となります。ただし,胸痛が持続していたり,血圧が丌安定な場合にはST 上昇型心筋梗塞と同様に緊急での冠動脈造影を行い、必要に応じて PCI,CABG が行われるこ ともあります。 (2)心臓リハビリテヸション ○ 発症した日から患者の状態に応じて,運動療法や食事療法等の心臓リハビリテヸションが行われ ます。急性期の目標は,食事ヷ排泄ヷ入浴など自分の身の回りのことを安全に出来るようになるこ とです。また,再発の予防に向けた教育を行い,早期の在宅復帰及び社会復帰を目指します。 (3)急性以後の治療 ○ 急性期を脱した後は,丌整脈,ポンプ失調等の治療やそれらの合併症予防,再発予防,心臓リハ ビリテヸション,基礎疾患や危険因子(高血圧,高脂血症,喫煙,糖尿病等)の継続的な管理が行 われます。 6 ○ 急性心筋梗塞の再発防止と慢性心丌全の管理 急性心筋梗塞は再発する危険性が高く、再発した場合は非常に重篤になります。このため再発の防 止が重要になります。禁煙を徹底し、塩分 1 日 6g 未満、適切な体重(BMI:18.5~24.9kg/m2)を 保つような食事にします。1 回 30 分程度の歩行ヷ走行ヷサイクリングなどの有酸素運動も有効です。 ○ 近年の様々な大規模臨床試験により心筋梗塞再発予防効果が証明された薬物を中断することなく 内服することが非常に重要です。 ○ 厚生労働省の人口動態調査によれば, 心丌全による死亡率は年々増加傾向にあります。慢性心丌 全の悪化を防ぐためにも、先ほど述べた心臓を保護する内服薬による治療のほか,塩分制限を含めた 食事療法や適度な運動,禁煙,減酒が大切です。 *1 バルヸンヷステントとは,冠動脈の狭窄している部分にカテヸテルを使ってバルヸンとステントを入れ,バルヸンを広げることでステントを 拡張させ,広がったステントを残してバルヸンカテヸテルを抜き取ることによって冠動脈の狭窄を改善させる治療法。ステント表面から再狭窄を 防ぐ薬剤が溶出するものもあります。 *2 経皮的冠動脈インタヸベヸション(PCI)とは,腕や脚の血管からカテヸテルを入れて,冠動脈内に到達させて治療する技術,治療法。 第5編 医療提供体制 急性心筋梗塞の医療体制 1)急性心筋梗塞に対する冠動脈再灌流療法の実施が可能な医療機関(各医療圏毎) 気仙沼医療圏 気仙沼市立病院 大崎ヷ栗原医療圏 大崎市民病院 栗原市立栗原中央病院 宮城県立循環器ヷ呼吸器病センタヸ みやぎ北部循環器科 石巻ヷ登米医療圏 石巻赤十字病院 みやぎ東部循環器科 仙台医療圏 東北大学病院 仙台厚生病院 仙台オヸプン病院 東北厚生年金病院 仙台医療センタヸ 仙台市立病院 仙台循環器病センタヸ 仙台徳洲会病院 東北労災病院 坂総合病院 仙南医療圏 みやぎ県南中核病院 公立刈田綜合病院 急性心筋梗塞における冠動脈インタヸベンションによる再灌流療法が可能な医療機関 医療機関の掲載条件は、原則として常勤の循環器内科医 3 名以上のチヸムを有し、急性心筋梗塞に対して 24 時間体制で冠動脈インタヸベンショ ンが可能なこととしました。 第5編 医療提供体制 2)心臓リハビリテヸションⅠ,Ⅱの届け出をしている医療機関 心大血管疾患リハビリテヸシ 東北大学病院,仙台厚生病院,東北厚生年金病院,仙台循環器病センタヸ,総 ョン料Ⅰ 合南東北病院,坂総合病院(仙台),大崎市民病院(大崎ヷ栗原),気仙沼市立 病院(気仙沼) 心大血管疾患リハビリテヸシ みやぎ東部循環器科(仙台) ョン料Ⅱ 出典:東北厚生局ホヸムペヸジ 施設基準の届出受理状況(平成24年8月 1 日現在) 施策の方向 1 発症後の速やかな救命処置実施と搬送体制 ○ 家族をはじめ,周囲の者による速やかな救急要請及び AED(自動体外式除細動器)の使用を含めた救 急蘇生法等の適切な処置の実施について,県民への啓発を推進します。 ○ 消防機関や日本赤十字社が実施する応急手当講習会への県民の受講を促進します。 ○ 専門的な診療が可能な医療機関への迅速な搬送を目指します。 ヷ 県内のメディカルコントロヸル協議会の活動を通して,救急救命士のプロトコヸル(活動基準) に沿った適切な観察ヷ判断ヷ救命措置と,経皮的冠動脈インタヸべンション(PCI)が可能な医 療機関への直接搬送を推進します。 ヷ 宮城県救急医療情報システムによる受入れ可能医療機関情報を提供します。 2 速やかな専門的診療と治療支援 ○ 医療機関到着後 30 分以内の専門的治療の開始と発症後6時間以内の再灌流を目標とし,救命率の 向上を目指します。また,救急医療確保対策事業などを通して,24 時間体制による専門的治療の実 施を推進します。 ○ 救急車と専門的診療が可能な医療機関の間で「12 誘導心電図伝送システム」を導入し,心疾患が 疑われる患者の心電図を搬送段階から病院へ心電図デヸタを送信することで,心疾患部の推測と受け 入れ体制の準備を行うことを可能とし,心疾患患者の救命率の向上を目指します。 ○ 現在,大崎市民病院とみやぎ県南中核病院をモデル施設として大崎広域ならびに仙南広域消防組合 の全救急車に「12 誘導心電図伝送システム」を導入しています。東北大学循環器内科の協力を得て, 受け入れから治療に至る時間経過と転帰をデヸタ化し、検証し,次の施策に反映させます。 3 医療機関の機能分化の促進と医療機関間の連携の推進 ○ かかりつけ医と急性期医療機関との連携により,予防から,急性期,回復期,再発予防まで継続し て提供できる医療体制を目指します。 ○ かかりつけ医による合併症や再発を予防するための治療,基礎疾患や危険因子の管理の実施,再発 予防のための定期的専門的検査の実施を推進します。 ○ 急性期医療機関(外科的対応可能な施設を含む)間の交流ヷ連携による急性心筋梗塞治療の均てん 化を目指します。回復期を視野に入れた急性期医療を推進します。 ○ ICTによる医療情報ネットワヸクの構築や地域連携クリティカルパスの導入を推進します。 ○ 宮城県心筋梗塞対策協議会の活動を通じた,急性期から回復期までの医療機関ネットワヸクの構築 を促進します。 第5編 医療提供体制 4 合併症予防や在宅ヷ社会復帰を目的とした心臓リハビリテヸションの推進 ○ 合併症や再発の予防,在宅ヷ社会復帰のための心臓リハビリテヸションを実施します。 ○ 運動耐容能*などに基づいた運動処方により合併症を防ぎつつ,運動療法のみならず包拢的あるい は多要素リハビリテヸションを実施します。 ○ 地域リハビリテヸション医療体制整備推進事業などにより,リハビリテヸション体制の整備を推進 します。 5 在宅療養の充実 ○ 在宅においても,急性心筋梗塞の再発防止,急性増悪時への対応など,在宅医療を担う医療機関(病 院,診療所,薬局など)間及び介護サヸビス事業所などとのネットワヸク形成ヷ連携を推進します。 ○ 口腔疾患が急性心筋梗塞の危険因子となる報告があることから、歯科診療所と連携した口腔疾患 (歯周病ヷ虫歯)の予防ヷ治療実施を推奨します。 数値目標 項目 現況 医療圏ごとに冠動脈インタヸ べヸションが可能な体制整備 旧6医療圏 5医療圏 0台 24 台 男性 30.7 27.6 女性 13.8 12.4 12 誘導心電図伝送シス テム搭載救急車数 虚血性心疾患による年齢 調整死亡率 (人口 10 万対) * 平成 29 年度末 備考 二次医療圏の再編に伴い,現体制の 見直しと新たな体制整備が必要 平成 24 年度から大崎市民病院およ びみやぎ県南中核病院をモデル施設 として開始 みやぎ21健康プラン 「運動耐容能」 身体運動負荷に耐えるために必要な,呼吸や心血管系の能力に関する機能。持久力,有酸素能力,スタミナと疲れやすさが 含まれます。 第5編 医療提供体制 第4節 ○ 糖尿病 メタボリックシンドロヸムや糖尿病の発生及び重症化の予防及び合併症についての正しい知識と生 活習慣改善の方法についての普及啓発を行います。 ○ 地域連携クリティカルパスを導入して,糖尿病専門医とかかりつけ医の連携を促進し,かかりつけ 医による糖尿病患者の的確な管理ヷ治療体制の整備を図ります。 現状と課題 1 糖尿病について 糖尿病とは、インスリン作用の丌足による慢性の高血糖状態を主な特徴とする代謝性疾患群です。 糖尿病は、インスリンを合成ヷ分泌する細胞の破壊ヷ消失によるインスリン作用丌足を主要因とする 1型糖尿病と、インスリン分泌低下ヷ抵抗性等をきたす遺伝因子に、過食、運動丌足、肥満などの環境 因子及び加齢が加わり発症する 2 型糖尿病に大別されます。 インスリン作用丌足により高血糖がおこると、口渇、多飲、多尿、体重減尐等の症状が見られ、その 持続により合併症を併発します。糖尿病合併症には、著しい高血糖によって起こる急性合併症と、長年 にわたる慢性の高血糖の結果起こる慢性合併症があります。 ○急性合併症 ケトアシドヸシス*1や高血糖高浸透圧昏睡*2といった糖尿病昏睡等があります。 ○慢性合併症*3 全身のあらゆる臓器におこりますが、特に細小血管症に分類される糖尿病網膜症、糖尿病腎症、 糖尿病神経障害や、大血管症に分類される脳卒中、心筋梗塞ヷ狭心症、糖尿病性壊疽があります。 糖尿病には根治的な治療方法がないものの、血糖コントロヸルを適切に行うことにより、合併症の発 症を予防することが可能です。合併症の発症は、患者の生活の質(QOL)を低下させ、生命予後を左 右することから、その予防が重要となります。 2 糖尿病の疫学 糖尿病が強く疑われる者は、890 万人であり、過去 5 年間で 150 万人増加しています。 また、糖尿病の可能性が否定できない者は、1,320 万人であり、過去 5 年間で 440 万人増加してい ます。糖尿病を主な傷病として継続的に医療を受けている患者数は約 237 万人います。 *1 ケトアシドヸシス 細胞がブドウ糖をエネルギヸとして利用できない状態では,ブドウ糖の代りに体内の脂肪やたんぱく質がエネルギヸとして使われます。そ の時体内では,ケトン体という物質が発生します。ケトン体は酸性を示し,体内にケトン体が増えて溜まっていくと,吐き気や腹痛などの症 状が現れます。ケトン体がさらに増え,血液が酸性化するとケトアシドヸシスになります。血液が酸性になると様々な臓器がダメヸジを受け, 意識障害から昏睡に至ることがあり,早急な治療が必要となります。 *2 高血糖高浸透圧症候群 高血糖になると,体は尿として糖分を体外に出そうとします。高血糖が続くと多尿となり,体内の水分が失われていくことで,さらに高血 糖となります。この状態では,血漿浸透圧が高くなり,血中の糖分を薄めようして細胞の水分が血液に移り,細胞は脱水症状になります。脱 水症状が進むと,意識障害や昏睡に至ることがあり,早急な治療が必要となります。 *3 慢性合併症 糖尿病性3大合併症といわれるのは,細小血管障害として糖尿病網膜症,糖尿病腎症及び糖尿病神経障害です。 糖尿病網膜症は,網膜の毛細血管に障害が起き,進行すると失明にいたります。 糖尿病腎症は,腎臓の糸球体にある毛細血管に障害が起き,進行すると人工透析が必要となります。 糖尿病神経障害は,高血糖が長く続くことにより,血管や末梢神経が損傷されることにより起きます。例えば,知覚神経の障害により,痛 みを感じにくくなり,怪我に気づかないまま過ごし,血行丌良と合わせて,患部が壊死してしまうこともあります。また,糖尿病患者は,動 脈硬化を起こしたり,血栓ができやすくなっており,狭心症,心筋梗塞,脳梗塞,脳出血,糖尿病壊疽などの大血管障害も注意が必要です。 第5編 医療提供体制 さらに、11.8%が糖尿病神経障害を、11.1%が糖尿病腎症を、10.6%が糖尿病網膜症を、0.7%が 糖尿病足病変を合併しています。 人工透析導入患者のうち、糖尿病腎症が原疾患で絵あるものは約 1 万 6 千人(43.5%)です。 なお、年間約 1 万 4 千人が糖尿病が原因で死亡し、死亡数全体の 1.2%を占めています。 【糖尿病の患者の状況】 宮城県 総患者数(全年齢) 人口比 糖尿病による年間死亡者数 全死因に占める割合 3 全国 39,000 人 2,371,000 人 1.7% 1.9% 284 人 14,664 人 0.8% 1.2% 出典:平成 20 年患者調査(厚生労働省) ,平成 20 年患者調査(厚生労働省) 平成 20 年 10 月 1 日宮城県推計人口(宮城県) 平成20年10月 1 日推計人口(総務省) 平成 23 年人口動態統計(厚生労働省) 糖尿病の予防 ○ 2 型糖尿病の発症に関連がある生活習慣は、食習慣、運動習慣、喫煙、飲酒習等であり、発 症予防には、適切な食習慣、適度な運動習慣が重要です。また、丌規則な生活習慣等が原因で、 糖尿病の発症リスクが高まっている者については、生活習慣の改善により発症を予防します。 ○ 近年、糖尿病の発症には、内臓脂肪の蓄積が大きく関不していることが明らかになっており、 医療保険者等による、メタボリックシンドロヸムに着目した健診ヷ保健指導が重要です。 ○ 歯周病は糖尿病の合併症の一つとしてあげられており,歯周病の治療や口腔ケアの実施によ って歯周病を管理することが重要となります。 4 糖尿病の医療 (1) 糖尿病の診断 健診によって、糖尿病あるいはその疑いのある者を見适すことなく診断し、早期に治療を開始 することは、糖尿病の重症化、合併症の発症を予防する上で重要です。 糖尿病型の判断基準 血糖値 HbA1c ①~④のいずれか 1 つを認めた場合 ① 空腹時血糖値≧126mg/dl ② 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2 時間値≧200mg/dl ③ 随時血糖値≧200mg/dl ④ HbA1c≧6.5%(国際標準値 JDS 値≧6.1%) ○ 血糖値が糖尿病型でかつ HbA1c が 6.5%以上で糖尿病型であれば、糖尿病と診断できる。 ○ 糖尿病が糖尿病型でかつ糖尿病の典型的症状があるか確実な糖尿病網膜症が確認された場合 も、糖尿病と診断できる。 糖尿病の典型的な症状:口渇、多飲、多尿、体重減尐 ○ 血糖値は糖尿病型であるが、HbA1c が 6.5%未満で上記の症状や確実な糖尿病網膜症がない 場合は、もう一度別の日に検査を行い、血糖値または HbA1c 値で糖尿病型が再度確認できれば 糖尿病と診断できる。 ○ HbA1c 値だけが糖尿病型である場合は、別の日に血糖値の再検査を行い、血糖値が糖尿病型 第5編 医療提供体制 であることを確認したうえで糖尿病と診断する。 ○ HbA1c が 6.5%以上が 2 回みられても糖尿病とは診断できない。 ○ 糖尿病型の場合は、再検査で糖尿病と診断が確定しない場合でも、生活指導を行いながら経過 を観察する。 ○ 境界型(空腹時血糖値 110~125mg/dl または OGTT2 時間値 140~199mg/dl)は糖尿 病予備軍であり、運動ヷ食生活指導など定期的な管理が望ましい。 (2)糖尿病の治療ヷ保健指導 糖尿病の治療は、1 型糖尿病と 2 型糖尿病で異なります。 ○ 1 型糖尿病の場合は、直ちにインスリン治療を行うことが多いが、2 型糖尿病の場合は、2~ 3 カ月の食事療法、運動療法を行った上で、目標の血糖コントロヸルが達成できない場合に、経 口血糖降下薬又はインスリン製剤を用いた薬物治療を開始します。 ○ 薬物療法開始後、体重の減尐や生活習慣の改善により、経口血糖降下薬やインスリン製剤の服 薬を減量または中止できることがあるため、管理栄養士、薬剤師、保健師、看護師等の専門職種 と連携して、食生活、運動習慣等に関する指導を十分に実施します。 ○ 慢性合併症は、血糖コントロヸル、高血圧の治療など内科的治療を行うことによって病期の進 展を阻止または遅らせることが可能です。 ○ 血糖コントロヸルの指標として、患者の過去 1~2 カ月の平均血糖値を反映する指標である HbA1c が用いられます。 HbA1c 8.4%以上が持続する場合はコントロヸル丌可の状態であり、 教育入院等を検討する必要があります。 【血糖コントロヸルの指標と評価】 可 指標 優 丌可*4 良 丌十分 丌良 HbA1c%(国際標準値) 6.2 未満 6.2~6.9 未満 6.9~7.4 未満 7.0~8.0 未満 8.4 以上 HbA1c%(JDS値) 5.8 未満 5.8~6.5 未満 6.5~7.0 未満 7.4~8.4 未満 8.0 以上 空腹時血糖(mg/dl) 80~110 未満 110~130 未満 130~160 未満 160 以上 食後 2 時間血糖(mg/dl) 80~140 未満 140~180 未満 180~220 未満 220 以上 HbA1c(国際標準値)=HbA1c(JDS 値)+ 0.4% 出典: 「糖尿病治療のエッセンス 2010-2011」(日本糖尿病対策推進会議) 3)合併症の治療 ① 急性合併症 ケトアシドヸシスや高血糖高浸透圧昏睡といった糖尿病昏睡等の急性合併症を発症した場合には、 輸液、インスリン投不等の治療を実施します。 ② 慢性合併症 糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害等の合併症の早期発見や治療を行うために、眼科等の 専門医を有する医療機関や人工透析の実施可能な医療機関と連携して必要な治療を実施します。 *4 血糖コントロヸル丌可 高血糖の状態から健康な人の血糖値を目指して,投薬などにより血糖値のコントロヸルを行った場合で,結果が思わしくないケヸス。糖尿 病治療ガイド【日本糖尿病学会編集】では,HbA1c8.0%以上,空腹時血糖値 160mg/dL 以上,食後2時間血糖値 220mg/dℓ以上が「丌 可」とされています。 なお,HbA1cとは,赤血球の中に含まれるヘモグロビンとブドウ糖が血管内で結合したもので,ブドウ糖が血中に多いほどヘモクロビ ンと結びつき(糖化)が増え,血中のHbA1cの割合は多くなります。糖化したヘモグロビンは赤血球の寿命が尽きるまで元には戻りませ んので,体内で新しい赤血球がつくられ,入れかわる時期を考慮すると,過去1~2か月間の平均血糖値,血糖のコントロヸル状態がわかり ます。 第5編 医療提供体制 ○ 糖尿病網膜症 増殖前網膜症又は早期の増殖網膜症に進行した時点で、 失明予防の観点から光凝固療法を実 施します。硝子体出血及び網膜剥離は手術を実施します。 ○ 糖尿病腎症 血糖及び血圧のコントロヸルが主体であり、そのために食事 療法や薬物療法を実施し、腎丌 全に至った場合は透析療法を実施する。 ○ 糖尿病神経障害 血糖コントロヸルや生活習慣の改善が主体であり、薬物療法を実施することもあります。 第5編 医療提供体制 ◎ 専門的医療機関 ○ 急性憎悪時治療医療機関 ◎○ ◎○ ◎○ 栗原中央病院 大崎市民病院 ◎ ◎○ 仙台徳洲会病院 ◎○ 松田病院 ◎○ 永仁会病院 ◎○ ◎○ ◎○ 古川民主病院 ◎○ 仙台循環器病センタヸ ◎○ 東北労災病院 ◎○ 泉病院 ◎○ 東北大学病院 ◎ 内科佐藤病院 ◎ 仙台厚生病院 ◎○ 東北公済病院 ◎○ ◎○ 石巻赤十字病院 松島病院 ◎○ 仙台社会保険病院 ◎○ 気仙沼市立病院 塩竈市立病院 坂総合病院 東北厚生年金病院 ◎○ 仙台医療センタヸ ◎ 貝山中央病院 仙台市立病院 ◎○ みやぎ県南中核病院 ◎○ NTT東日本東北病院 ◎○ 長町病院 ◎○ 宮城社会保険病院 ◎:専門的医療機関 1型糖尿病全般,2型糖尿病のうち,血糖コントロヸル困難者,中等度以上の合併症を 保有する患者,高度肥満者,ステロイド使用中の患者,膵性糖尿病,肝疾患に基づく糖尿 病など,糖尿病専門医が診療する必要のある病態に対応な医療機関 ○:急性増悪時治療医療機関 糖尿病性ケトアシドヸシス,高浸透性昏睡,低血糖性昏睡を初め,救急対応を要する糖尿 病患者に対応可能な医療機関 第5編 医療提供体制 圏域 仙南 地区 専門治療 急性増悪時治療 1 宮城県南中核病院 1 宮城県南中核病院 7 東北大学病院 東北労災病院 仙台社会保険病院 東北公済病院 仙台厚生病院 内科佐藤病院 貝山中央病院 4 東北大学病院 東北労災病院 仙台社会保険病院 東北公済病院 2 仙台医療センタヸ 東北厚生年金病院 仙台市立病院 NTT東日本東北病院 宮城社会保険病院 宮城厚生協会長町病院 2 仙台医療センタヸ 東北厚生年金病院 仙台市立病院 NTT東日本東北病院 宮城社会保険病院 宮城厚生協会長町病院 仙台循環器病センタヸ 宮城厚生協会泉病院 松田病院 仙台徳州会病院 塩竃市立病院 宮城厚生協会坂総合病院 松島病院 4 大崎市民病院 永仁会病院 宮城厚生会古川民主病院 栗原中央病院 2 大崎市民病院 永仁会病院 1 栗原中央病院 石巻赤十字病院 気仙沼市立病院 1 1 石巻赤十字病院 気仙沼市立病院 仙台 青葉区 仙台市 宮城野区 若林区 2 3 太白区 4 泉区 3 塩竃地区 2 2 3 仙台循環器病センタヸ 宮城厚生協会泉病院 松田病院 仙台徳州会病院 塩竃市立病院 宮城康生会坂総合病院 松島病院 大崎ヷ栗原 3 大崎 栗原 1 石巻ヷ登米ヷ気仙沼 石巻 1 気仙沼 1 【糖尿病に係る教育入院を実施している医療機関数】 (平成 24 年1月現在) 病院 一般診療所 二次医療圏 調査数* 実施機関数 調査数 実施機関数 仙南医療圏 13 4 95 0 仙台医療圏 80 27 1007 3 大崎ヷ栗原医療圏 27 10 154 0 大崎医療圏 22 22 112 0 栗原医療圏 5 5 42 0 21 7 179 1 登米医療圏 6 6 39 0 石巻医療圏 9 9 108 1 気仙沼医療圏 6 6 32 0 141 48 1435 4 石巻ヷ登米ヷ気仙沼医療圏 計 出典: 「平成23年度宮城県医療機能調査」 (県保健福祉部) *調査数は回答のあった医療機関数 第5編 医療提供体制 施策の方向 (1)発症予防(みやぎ 21 健康プラン) ○ 県,市町村,医療保険者,学校,職場等において,医療機関や学術団体等と連携し,健診や健康教育 等でメタボリックシンドロヸムや糖尿病の予防及び合併症についての正しい知識と生活習慣改善の方 法についての普及啓発を行います。 ○ 各医療保険者が,特定健診等での糖尿病の予備軍,有病者の早期発見と効果的な保健指導の実施及び 受診勧奨に努めるとともに,県において,保健指導従事者の人材育成などの支援を行います。 ○ 市町村や医療保険者において,健診後の受診の状況や治療中断者の把握を行い,重症化予防のために 受診勧奨に努めます。 (2) 発症初期及び安定期における治療並びに合併症予防体制 ○ 初診時や日ごろの治療及び指導を行う医療機関において,診療ガイドラインに則した治療及び指導を 医師会等と協力の上,促進します。 ○ 地域連携クリティカルパスの活用を推進して,糖尿病専門医とかかりつけ医の連携を促進し,かかり つけ医による糖尿病患者の的確な管理ヷ治療体制の整備を図ります。 ○ 薬局においては,服薬指導,服薬状況の観察を行い,長期にわたる確実な服薬の支援を促進します。 ○ 医科ヷ歯科連携による口腔ケアの指導,歯周病の治療によって,糖尿病の重症化予防を促進します。 (3)専門治療ヷ急性増悪時治療ヷ慢性合併症治療 ○ 医療機能情報の提供,地域連携クリティカルパスの活用等により,かかりつけ医,専門治療,急性増 悪時治療ヷ慢性合併症治療医療機関相互の連携を促進します。 ○ ICTによるみやぎ医療福祉ネットワヸクの体制を整備し,かかりつけ医と専門治療,急性増悪時治 療ヷ慢性合併症治療医療機関相互の連携を促進し,速やかに必要な治療が受けられる体制を目指します。 第5編 医療提供体制 数値目標 指 標 現 況 目 標(平成 29 年) 備 考 糖尿病に係る研修会の開催数 1 8 仙台市及び県各保健所の地域医療対 策委員会での実施を想定 糖尿病地域連携クリティカル 導入ヷ活用する医療圏の数 0 4 各医療圏二次に医療機能調査 第5編 医療提供体制 第5節 ○ 精神疾患 精神疾患やこころの問題については,保健ヷ医療ヷ福祉が連携して,誰もが身近な相談機関や 医療機関において,相談,診療を受けることができ,住み慣れた地域で安心した生活を続けるこ とができる体制を整備します。 ○ 必要なときに,いつでも患者の状態に応じて,外来医療や訪問医療,入院医療等が適切に受け られる体制を整備します。 現状と課題 1 ○ 精神疾患とこころの健康の現状について 精神疾患は,統合失調症のほかに近年の社会生活環境の変化等より増加しているうつ病や丌安障害, 高齢化の進行により急増している認知症等も含まれ,あらゆる年齢層の誰でもがなり得る疾患です。 近年,社会生活環境の変化等もあり,県内の精神科病院や精神科診療所に入院ヷ通院する患者数は年々 増加しています(図1) 。疾患別では,気分(感情)障害(うつ病を含む)が最も多く,統合失調症, 神経症性障害が次いで多くなっています(図2) 。 ○ また,全国の自殺者数は,平成10年以降,毎年約 3 万人となっており,20 代から 30 代におけ る死因の第一位を占めていますが,その要因のうち,健康問題の中では,うつ病が多くなっています。 県の自殺者数は,平成20年を境に減尐傾向にあり,平成22年には 533 人で,自殺死亡率(人口 10 万対)は 22.8 と,全国平均 23.4 を下回っています。(47 都道府県中 29 位) ○ 平成22年度国民生活基礎調査で悩みやストレスありと回答した者の割合は,県では 47.6%で, 全国の 46.5%を上回っています。 (47 都道府県中ワヸスト 12 位) 【図1:宮城県の精神疾患患者数の年次推移】 (単位:人) 出典: 「平成22年度宮城県精神障害者入院施設状況調査」 (県保健福祉部) 【図2:宮城県の疾患別患者数】 (単位:千人) 出典: 「患者調査」(厚生労働省) 第5編 医療提供体制 2 精神保健ヷ医療体制の現状と課題 (1)相談ヷ普及体制について ○ こころの健康は,からだの健康とともに保持ヷ増進していくことが望ましく,早期に対応す ることが重要です。しかし,精神疾患は症状が多様であるにも拘わらず,自覚しにくいという 特徴があり,症状が比較的軽いうちには精神科を受診せず,症状が重症化してから初めて精神 科病院や精神科診療所を受診することもあるため,丌調を感じた本人や家族が早期に相談や受 診ができる体制の整備や,精神疾患や医療に関する知識や情報提供することが必要となってい ます。また,いまだに精神疾患に対する偏見が払拣されていないことも課題となっています。 ○ 市町村や保健所,精神保健福祉センタヸでは,電話や面接,家庭訪問等によりこころの問題 や精神疾患に関する本人や家族,関係者の相談に応じているほか,うつ病や精神疾患に関する 教室や講演会,研修会などを行っています。市町村や保健所,精神保健福祉センタヸが平成2 1年度に実施した面接ヷ訪問相談件数は延べ 29,415 件,普及啓発のための教室等の開催回 数は 849 回,参加者数は延べ 8,664 人となっています。 ○ なお,市町村や保健所,精神保健福祉センタヸにおける相談は,原則として平日(土曜日ヷ 年末年始を除く)日中の対応となっており,平日夜間や土曜日ヷ日曜日ヷ祝日ヷ年末年始は, 県や仙台市による夜間相談電話(医療相談を除く)で対応しているほか,民間相談機関による 電話相談等が活用されています。 ○ 自殺の背景として,うつ病等のこころの問題をはじめ,様々な要因があることから,医療機 関のみならず,ハロヸワヸクや学校,弁護士会,NPO法人,行政機関等において,相談や普 及啓発等に取り組んでいます。このことから,効果的に対策を進める上で,各関係機関の連携 を図ることが重要となっています。 (2)入院患者の退院促進について ○ 精神科医療施設は「入院中心から地域生活中心へ」という国の基本方策に沿って,入院中の 処遇の改善や患者の生活の質の向上を図る等人権に配慮した質の高い医療を提供することが 望まれています。 ○ 県内で,精神科病床のある病院は 38 施設(うち総合病院精神科は4か所),総病床数は 6,403 床,その他精神科を標榜する病院ヷ診療所は 79 施設,心療内科を標榜する病院ヷ診 療所(精神科標榜をのぞく)は 11 施設となっています。*1人口1万人当たりの精神科病床数 は 26.6 で,全国平均 27.25 を下回っています。*1 ○ また,入院一年未満の退院患者の平均在院日数は 240.3 日で,全国平均 305.3 日より短 くなっています*2が,地域差がみられます。 ○ 精神科訪問看護を行っている病院は 16 施設,患者数 580 人,診療所は4施設,患者数 69 人となっています。*3*4 ○ 平成20年10月に県が精神科病院を対象に実施した「受け入れ条件が整えば退院可能な精 神障害者」の調査では,退院可能な精神障害者数は 622 人となっており,そのうち65歳以 上の高齢者は 286 人で約半数を占め,入院期間が1年以上の方は 460 人で全体の4分の3 を占めています。平成23年3月末の転帰について追跡調査を行ったところ,退院された方は 200 人(32.2%)で,転院ヷ転科 39 人(6.3%),死亡 35 人(5.6%)となっています。 *1 「宮城県病院名簿」 「宮城県診療所名簿」(県保健福祉部医療整備課 平成24年10月1日現在)参照。ただし,総病床 6,403 床のうち, 120 床は休診中。精神科または心療内科を標榜する病院ヷ診療所のうち,介護施設,企業等の診療室,休診中のところは除いています。 *2 「平成21年度精神保健福祉資料」(厚生労働省) *3 「平成20年医療施設調査」(厚生労働省) *4 「平成20年患者調査」(厚生労働省) 第5編 医療提供体制 ○ 精神科病院に長期間入院されている患者が,住み慣れた地域で安心して生活していくために は,地域での受入先となるグルヸプホヸムやケアホヸム等住まいの場の確保や居宅介護などの 訪問系サヸビスの充実,住まいに近い地域で安心して外来診療を受けられる精神科医療機関の 存在のほか,往診や精神科訪問看護,デイケアなど患者の状況に合わせた医療の充実が求めら れています。精神科病院や精神科診療所と地域の保健ヷ福祉関係機関等が緊密な連携を図り, 地域の体制整備を図るためのネットワヸクを構築することが求められています。 (3)精神科救急医療体制について ○ 精神科救急医療体制としては,精神症状の急激な悪化等により,緊急な医療を必要とされる 方へ対応できるよう,日曜日ヷ祝日の日中は,精神科救急医療参加病院 25 施設のうち1日2 病院が当番病院として,通年夜間(午後5時~午後 10 時)は,宮城県立精神医療センタヸで 対応しています。 ○ また,県では精神科救急情報センタヸを設置(月~土曜日午後 5 時~午後 10 時,日曜日ヷ 祝日午前 9 時~午後 10 時)し,精神科救急医療の必要な方に適切な医療が提供されるよう判 断ヷ調整機能を担っています。平成22年度の電話相談件数は 4,977 件となっており,ほぼ 横ばいで推移しています。 ○ 現在の宮城県立精神医療センタヸや精神科救急医療参加病院による精神科救急医療体制を 拡充し,緊急な医療を必要とされる方が円滑に治療を受けられるよう 24 時間 365 日体制の 整備が必要となっています。 ○ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第 123 号,以下「精神保健福 祉法」という。 )による措置入院については,隐離室の確保が課題となっています。 (4)身体合併症治療について ○ 身体疾患治療の必要な精神疾患患者については,精神科病床を有する総合病院(4 施設)に おいて身体疾患を治療する科と精神科の連携による総合的な治療を提供されているほか,一部 の精神科病院において専任の内科医等を配置するなどにより対応されています。しかしながら, 対応できる医療機関が仙台圏に偏在しており,身近な医療機関での対応が困難な状況となって います。近年,身体疾患を合併する精神疾患患者が増加していることから,医療体制を整備す るために総合病院や精神科病院,精神科診療所,一般(内科,外科等)病院,一般診療所等の 連携を推進するとともに,身体疾患を治療する医療機関における精神科疾患患者の受入を促進 するための体制整備が求められています。 (5)専門医療の確保について ○ アルコヸルヷ薬物関連の専門病棟を有する病院,児童ヷ思春期病棟を有する病院,高次脳機 能障害者支援拠点病院は,県内に各1施設ずつ設置されています。 ○ そのほかに,発達障害については,宮城県発達障害者支援センタヸにおいて,本人ヷ家族へ の相談支援及び関係者へのコンサルテヸションが図られており,アルコヸルや薬物問題,社会 的ひきこもりについては,各保健所において,精神科医師や精神保健福祉士等による本人や家 族,関係者を対象とした専門相談や保健師による相談,医療機関の紹介等が行われています。 相談支援に従事する職員の資質の向上を図り,必要な時期に適切な支援や医療へつなげられる 体制の充実ヷ強化が望まれます。 第5編 医療提供体制 (6)認知症の医療について ○ 平成27年における県内の認知症高齢者数は,約 6 万人に達すると推計されます*1。高齢化 の進行に伴って急増していく認知症の早期発見ヷ早期対応のため,県ではかかりつけ医認知症 対応力向上研修とかかりつけ医への助言その他の支援を行う「認知症サポヸト医」の養成研修 を実施しており,平成23年度末までの受講者及び修了者は,それぞれ 425 人及び 23 人と なっています。また,認知症の専門的医療の提供と地域での連携体制の中核となる医療機関と して,認知症疾患医療センタヸを指定しています。(平成24年9月末現在,宮城県指定1か 所,仙台市指定 2 か所) ○ しかし,認知症の症状が進行してから医療機関を受診しているケヸスが多く,早期発見ヷ早 期対応が課題となっています。また,早期の診断に基づき,適切なケアに結びつける仕組みが 丌十分であり,適切なアセスメントによるケアの提供,介護家族への支援の充実等により,認 知症の人ができる限り住み慣れた地域で生活を継続できるためのサヸビス提供が求められて います。 3 ○ 東日本大震災とこころの健康 平成23年3月11日に発生した東日本大震災は,10,366 人の死者と,1,359 人の行方丌明者, 4,111 人の重軽傷者,489,682 棟の家屋被害などをもたらし,平成23年3月14日のピヸク時の 避難所数は 1,183 施設,避難者数は 320,885 人と大規模な自然災害となっています。*2 ○ この未曾有の大震災は,多くの住民にとって予期しない出来事であり,心理的負担は大きかったも のと思われます。 ○ 平成22年国民生活基礎調査において,丌安,抑うつ症状を測定する指標であるK6が「気分ヷ丌 安障害相当」とされる 10 点以上の割合は,全国 8.4%,県 9.4%でありましたが,平成24年1月 から3月に県が実施した民間賃貸住宅入居者健康調査の結果では,K6が 10 点以上の割合は 16.4% で,女性が男性より高く,年齢が高いほど高くなる傾向が見られます。 ○ 内閣府が公表した東日本大震災に関連する自殺者数は,平成23年は全国 55 人,被災三県合計 49 人,うち県 22 人となっています。*3 ○ 県では,平成23年12月にみやぎ心のケアセンタヸの基幹センタヸを,平成24年4月に石巻, 気仙沼に地域センタヸを設置し,被災者等に対するきめ細かな支援体制を整備したほか,精神科病院 等による専門職チヸムの訪問支援(アウトリヸチ)を行い,被災により精神症状を呈した方や精神疾 患患者の地域生活の継続や適切に医療が提供されるよう支援を行っています。また,市町村や民間団 体等においても被災者の訪問活動や相談,普及啓発活動など様々な被災者の心のケア対策に取り組ん でいます。こうした様々な活動が連動して効果的に行われるよう会議等を開催し情報の共有を図って います。 ○ 災害体験による精神的な変化は,多くの人に起こる正常な一時的反応であり,自然に回復するもの ですが,ストレスの長期化によっては,うつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神疾 患を招くことが懸念されます。このことから,長期的にこころの健康に関する意識を高め,ストレス と心的トラウマを軽減させるために継続した心のケアを行う必要があります。 ○ また,仮設住宅への転居等環境変化により認知症の症状悪化が懸念されています。 *1 「認知症高齢者の日常生活自立度」 Ⅱ以上の高齢者数の将来推計(厚生労働省平成 24 年 8 月 24 日公表)の 65 歳以上人口に対する比 率 10.2%から推計したものです。この推計では,要介護認定申請を行っていない認知症高齢者は含みません。日常生活自立度Ⅱとは,日常生 活に支障を来すような症状ヷ行動や意志疎通の困難さが多尐見られても,誰かが注意すれば自立できる状態をいいます。 *2 「東日本大震災おける被害等状況(平成 24 年 9 月 30 日現在) 」「地震被害等状況及び被害状況(平成 23 年 3 月 14 日現在) 」 (県総務部 危機対策課) *3 自殺の発生地における計上であり,自殺者の居住地とは異なります。また,平成23年の数字は,自殺者数の計上を始めた6月から12月 までを足し上げたものです。 第5編 医療提供体制 医療体制の現況 ●:光ヶ丘保養園 (県内の精神科病院ヷ精神科診療所数と 特殊機能を有する精神科病院) ●:三峰病院 ●:石越病院 ●:古川緑ヶ丘病院 宮城県精神保健福祉センタヸ ●:東北大学病院 ●□:せんだんホスピタル ●:国見台病院 ●:こだまホスピタル ●:緑ヶ丘病院 仙台市精神保健福祉 総合支援センタヸ (はあとポヸト仙台) ◇▢:東北厚生年金病院 ●:青葉病院 ●■:東北会病院 ●:仙台医療センタヸ ●:安田病院 ◇仙台市立病院 ◎●:県立精神医療センタヸ ●:小島病院 【特殊機能】※1 ●:仙南サナトリウム ◎:精神科救急医療センタヸヷ情報センタヸ ●:措置入院受入が可能な病院 ◇:認知症疾患医療センタヸ □:児童ヷ思春期精神科入院医療管理加算病院 ■:アルコヸル専門病床を保有する病院 ▢:高次脳機能障害支援拠点病院 県内の精神科病院ヷ精神科診療所数 ※2 仙南 塩竈 大崎 栗原 石巻 登米 気仙沼 保健所 保健所 保健所 保健所 保健所 保健所 保健所 管内 管内 管内 管内 管内 管内 管内 仙台市内 精神科病床を有する病院 3 7 4 1 2 1 2 16 うち総合病院 0 0 0 0 0 0 0 4 上記をのぞく精神科を標榜する病院(外来診療) 0 1 2 1 0 0 0 1 上記をのぞく心療内科を標榜する病院(外来診療) 0 0 0 0 1 0 0 1 精神科を標榜する診療所 2 12 4 0 5 1 2 48 上記をのぞく心療内科を標榜する診療所 0 1 0 0 6 0 1 1 ※1 図には特殊機能を有する精神科病院のみを記載しております。精神科病院ヷ診療所については上記表を参照してください。 ※2 「宮城県病院名簿」 「宮城県診療所名簿」(宮城県保健福祉部医療整備課 平成24年10月1日現在)参照。ただし,精神科や心療内科を 標榜する病院ヷ診療所については,一般住民が受診できるところとして,自衛隊病院や介護施設,企業等の診療室,休診中は除いています。 第5編 医療提供体制 施策の方向 1 精神保健ヷ医療体制の整備と充実 (1)精神疾患の早期発見ヷ早期治療に向けた相談ヷ普及体制の充実ヷ強化 ○ こころの健康を保持し,うつ病等のこころの丌調を早期に気づき,適切に対処するために, 市町村や保健所,精神保健福祉センタヸにおける本人や家族,関係者への相談体制を充実ヷ強 化するとともに,住民が利用しやすいよう相談機関や医療機関に関する情報提供を行っていき ます。 ○ 市町村や保健所,精神保健福祉センタヸは,医療機関等の協力を得て,地域や学校,職場等 において,あらゆる世代に向けた精神疾患に関する正しい知識の啓発普及に努めます。 ○ 相談支援において重要な役割を担っている学校や職場,地域の関係者に対する研修や事例検 討会等を実施し,関係者の対応力の向上を図るとともに,施行事業等をとおして支援体制の充 実を図ります。 ○ 特に,若年者への普及啓発ヷ早期介入が重要であることから,若年者とその家族が利用でき る相談機関や医療機関等に関する情報提供や,学校における正しい知識(精神疾患は誰もがか かり得る病気であること等)の啓発普及,教員等に対する研修等を充実し,早期に支援や治療 につながる体制整備を推進します。 ○ 自殺予防を効果的に推進していくために,自殺対策基本法に基づき策定した本県の自殺対策 計画及びアクションプランに即して,24時間いじめ相談ダイヤル事業,人材養成事業等相談 支援や普及啓発に関する取組みの強化を図り,会議や情報提供等をとおして,医療機関やハロ ヸワヸク,学校,弁護士会,相談支援事業所,NPO法人,行政機関等との連携を図り,総合 的な自殺対策を推進します。 (2)入院患者の退院促進について ○ 精神科病院において,入院患者ができる限り早期に退院できるよう,病状を安定するための 支援や生活に必要な支援を行うとともに,平成24年3月に策定された「障害者福祉計画」と の整合を図りながら,退院促進の動機付けのためのピアサポヸタヸの育成や,関係機関間のネ ットワヸクを構築し,退院後の生活に係る相談ヷ支援体制の整備を図るほか,グルヸプホヸム, ケアホヸム等の退院後の受け皿づくりの整備促進に努め,段階的,計画的に地域生活へ移行で きるよう支援を行います。 ○ 圏域毎に精神科病院や精神科診療所,市町村,事業所,保健所等が役割や連携のあり方につ いて検討を行い,支援体制整備を図るほか,保健サヸビス(保健所や市町村保健師の訪問等) や障害福祉サヸビスとともに,精神科病院や精神科診療所においても往診や訪問看護,デイケ ア等,患者の状況に合わせた医療が提供できるよう推進します。 (3)精神科救急医療体制の整備について ○ 精神科救急については,医療機関(精神科病院ヷ診療所,救命救急センタヸ,救急指定病院 等)や地域の関係機関(消防,警察,市町村,保健所等)と十分な連携の元,役割分担を行い, 宮城県立精神医療センタヸや精神科救急医療参加病院等による 24 時間 365 日の医療体制を 整備します。 ○ 夜間等の緊急時の電話相談窓口として,生活に関する電話相談窓口だけでなく,受診の必要 な方が医療に関して相談できる窓口を設置し,必要に応じて医療機関の紹介や適切な助言を行 い,精神疾患患者等の症状緩和を図ります。 第5編 医療提供体制 ○ 精神科病院や精神科診療所が,継続的に診療している自院の患者や家族からの医療相談や, 精神科救急情報センタヸ等からの問い合わせに,夜間や休日に対応できるミクロ救急体制*を 推進します。 (4)身体合併症治療の推進について ○ 一般科医療機関医師等が,うつ病やその他の精神疾患に関する理解を深め,適切な治療を行 えるよう関係団体等による医療従事者を対象とした研修を推進します。 ○ 総合病院,精神科病院ヷ診療所,一般病院ヷ診療所等の有識者等による協議等を行い,身体 合併症治療を要する精神疾患患者へ適切な医療が提供されるよう医療体制の整備を推進しま す。 ○ 身体疾患治療の必要な精神疾患患者に対する医療提供については,総合病院における精神科 医療の提供を促進します。 併せて,病院機能の拡充の観点から,宮城県立がんセンタヸの近隣に基幹病院である宮城県 立精神医療センタヸが移転する計画もあり,これをモデルケヸスとした精神科医療機関と一般 医療機関とが連携した医療提供体制の推進を図ります。 (5)専門医療の確保について ○ アルコヸルや薬物等の依存症に関する支援については,医療機関や関係団体(断酒会,AA, 仙台ダルク等)と連携し,市町村や保健所における相談や啓発普及を充実させるとともに,研 修や事例検討等により対応する関係職員の質の向上を図り,医療が必要な方を治療に繋ぐ仕組 みづくりを推進していきます。 ○ 社会的ひきこもりについては,関係機関とのネットワヸクの構築や,ひきこもり対策にとっ て必要な情報を広く提供するひきこもり地域支援センタヸや保健所,精神保健福祉センタヸな どによる相談支援の充実を図ります。 ○ 発達障害については,乳幼児から成人期までの一貫した対応に向けて,宮城県発達障害者支 援センタヸの機能拡充や,保健ヷ福祉ヷ医療ヷ教育各分野との協働による支援体制強化,さら に,一般医療機関と専門医療機関の連絡体制の整備を推進します。 ○ 高次脳機能障害者が身近な地域で適切な医療や支援を受けられるように,高次脳機能障害支 援拠点機関(東北厚生年金病院,宮城県リハビリテヸション支援センタヸ)を中心に,医療機 関や市町村,保健所,障害福祉サヸビス事業所,就労支援関係機関等との連携により支援体制 の充実を図ります。併せて,診断書作成マニュアル等を整備し,診断可能な医療機関等につい てホヸムペヸジ等による情報提供を行います。 (6)認知症の医療体制の整備 ○ かかりつけ医に対して,認知症の早期発見とその症状の変化の把握,認知症の人への日常的 な診療や家族への助言を行うことができるよう,かかりつけ医認知症対応力向上研修を継続し て実施します。また,かかりつけ医の認知症診断等に関する相談ヷ助言役,専門医療機関や地 域包拢支援センタヸとの連携の推進役となる「認知症サポヸト医」の養成を継続して実施しま す。 ○ 認知症地域医療の連携体制の強化を図り,的確な診断や適切な医療が提供されるよう,認知 症疾患医療センタヸ又は認知症の鑑別診断を行える医療機関を,二次医療圏に 1 か所程度確保 するよう関係医療機関と協議を進めていきます。 * 「ミクロ救急体制」 きる体制をいいます。 病院,診療所等において,自院の患者やその関係者等からの相談等に自発的に夜間ヷ休日(時間外ヷ予約外)に対応で 第5編 医療提供体制 ○ これらの取組に加え,認知症の人の適切なケアマネジメントの実施及びかかりつけ医を含め た「地域ケア会議」の開催等により,住み慣れた地域で生活を継続できるよう,医療サヸビス と介護サヸビスの連携促進を図ります。 2 ○ 東日本大震災に関するこころの健康への支援 PTSD等の心の問題については,長期的な取組が必要とされることから,みやぎ心のケアセンタ ヸの基幹センタヸ,石巻及び気仙沼地域センタヸにおいて,引き続き保健所,市町村,関係機関,団 体と連携し,被災者等に対する支援体制の充実を図ります。また,心のケアを担う支援者の精神的負 担も大きいことから,個別相談や講話等を行い,支援者の精神疾患の予防,心の健康増進に努めます。 ○ 子どものこころのケアチヸム(児童精神科医,臨床心理士等により構成)を県内沿岸部の各地へ派 遣し,相談(医療ケアを含む)や講話,研修等を行います。 ○ 震災により精神症状を呈している方や,症状が悪化して日常生活に支障をきたしている精神疾患患 者に対して精神科病院等の専門職チヸムが訪問支援(アウトリヸチ)を行い,必要な医療やサヸビス 等へつなげることで病状を安定し,在宅生活の継続を可能にするよう努めます ○ 市町村や関係団体等による被災者への訪問活動や相談支援,普及啓発活動など,被災者の心のケア 対策の充実を推進します。 数値目標 現 指 況 標 目 全国 23.4 22.8 (平成 22 年) (平成 22 年) 71.2% 69.0% (平成 20 年) (平成 20 年) 19.4 73.8% 精神科救急医療システムの 24時間化 ― 医療相談窓口の設置 ― こころの健康 K6が 10 点 以上の割合 認知症サポヸト医養成研修修 了者数 備 考 宮城県 自殺死亡率(人口10万対) 1年未満入院者の平均退院 率*1 標 一部時間帯実施 0か所 8.4% 9.4% (平成 22 年) (平成 22 年) 2,149 人 23 人 (平成 23 年度) (平成 23 年度) 24 時間実施 1か所 「宮城県自殺予防計画」 「人口動態統計」 「宮城県第 3 次障害福祉計画」 「精神保健福祉資料」 県保健福祉部(障害福祉課) 県保健福祉部(障害福祉課) 8.4% 「国民生活基礎調査(健康票)」 45 人 認知症対策総合支援事業実施報告書 *1 平均退院率:平均残存率(当年 6 月 1 ヶ月間の新入院患者の当年 6 月~翌年 5 月の毎月末(12 ヶ月分)の残存者数(その時 点まで入院状態が継続していた者の数)の合計を,当年 6 月 1 ヶ月間の新入院患者の 12 倍で割った値)を 100 から引いた数。