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題 目 民間 Web 病院検索サイトの医療広告・口コミ情報に関する研究 氏
平成 27 年度 卒業研究 (要約) 題 目 民間 Web 病院検索サイトの医療広告・口コミ情報に関する研究 氏 名 石田 勝彦 (学籍番号 1.研究目的 2007 年度より各都道府県が提供する「医療機能情 報提供サイト」とは患者の病院選択に役立つ情報、 全 84 項目を集約したものであり、これにより近く の病院や専門病院を容易に検索できるようになった。 近年では各都道府県が運営主体となる公的情報サイ トの他に、民間企業が運営する複数の病院検索サイト が存在している1)。 厚生労働省は 2007 年に策定した「医業若しくは歯 科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る 事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針」 (以下、医療広告ガイドラインと略す)で医療機関が 作成したホームページは原則「広告規制の対象外」と している2)。 なお「医療広告ガイドライン」では、広告に該当す る不適切な内容を「比較広告」、「誇大広告」、「虚 偽広告」、「客観的な事実を証明できない内容」に区 別し、不適当な事例等を紹介している。 今日、民間企業が運営する病院検索サイトで「医療 広告ガイドライン」に則していない掲載方法や、意図 的に口コミ情報を選別しているサイトも伺える。 本研究の目的は、民間企業が運営する病院 Web 検 索サイトの掲載内容が患者にとって適正な情報提供 になっているのか、また医療広告ガイドラインに則し ているかを医療機能情報提供制度の公開項目の達成 率とサイト内検索で明らかにした3)。 2.方法 調査対象は、Google 検索で「病院検索」のキーワー ドで検索した時 1 ページ目に出てくる「Caloo」、 「EPARK 病院」、「goo ヘルスケア」、「hosupi 病 院・医院の口コミサイト」、「Yahoo!ヘルスケア」、 「お医者さん.jp」、「ここカラダ」、「病院検索 MEDWEB」、「病院検索 Qlife」、「病院・歯科検索 HOSPITA.jp」、「病院の通信簿」、「病院なび」の 12 の民間 Web 病院検索サイトであり以下の内容を 目視で確認した。 1)運営会社と情報提供会社の企業名、運営会社のサ イト運営以外のそのほかの事業の調査をした。 2)84 項目のアウトプットが存在するかを確認した。 また、重要項目中の基本情報以外のその他の項目の 達成数も併せてサイト内検索で調査した。 3)優先表示、写真等の情報付加が有料になっていな いか。 4)「医療広告ガイドライン」で標榜する診療科名に 認められないものの具体例をサイト内検索し、各例 で何件がこれらの診療科名で広告されているか。 5)「医療広告ガイドライン」で禁止されている広告 に該当する「比較広告」はあるか。 6)患者や家族の口コミ情報が意図的に選別されてい ないか。 3.結果 上記の調査より以下のことがわかった。 1)12 サイト中 5 サイトは、(株)ウェルネス情 報センターから情報提供を受けており、3 サイ トは(株)フィードバック・ジャパンから情報提 供を受けていた。 2)医療機能情報提供サイトの重要 27 項目件数/ 公開 84 項目件数、(重要項目達成率)は、多い 順に「Qlife」が 8/15(9.5%)、 「Yahoo! ヘルス 120781109) 指導教員 酒井 順哉 ケア」 が 6/7 (7.1%)、 「病院なび」 が 5/10 (6.0%) 、 「HOSPITA」5/9(6.0%)、 「Caloo」 が 5/8 (6.0%)、 「ここカラダ」が 5/6(6.0%)、 「goo ヘルスケア」 が 4/7(4.8%)、「病院の通信簿」が 4/6、(4.8%) 「EPARK 病院」が 4/5(4.8%)「hosupi」が 4/5 (4.8%) 、 「MEDWEB」が 4/5(4.8%)、 「お医者 さん.jp」が 4/5(4.8%)であった。 3)優先表示、写真等の情報付加が有料になって いるものが「goo ヘルスケア」、「病院・歯科検索 HOSPITA.jp」、「病院検索 MEDWEB」、「お医 者さん.jp」、 「病院の通信簿」の 5 サイト(41.7%) で確認することができた。 4) 「医療広告ガイドライン」で標榜する診療科名 として認められない具体例を多い順にすると 「Caloo」3,905 件、「hosupi 病院・医院の口コ ミサイト」2,681 件、「EPARK 病院」1,712 件、 「病院検索 Qlife」193 件、「病院・歯科検索 HOSPITA.jp」123 件、「お医者さん.jp」44 件、 「goo ヘルスケア」10 件、「病院なび」10 件、「病 院の通信簿」8 件、「Yahoo!ヘルスケア」5 件、「病 院検索 MEDWEB」3 件、「ここカラダ」1 件を確 認することができた。 5) 「医療広告ガイドライン」で禁止されている「比 較広告」は、「Caloo」、「hosupi 病院・医院の 口コミサイト」、「お医者さん.jp」であった。 6)「Caloo」、「病院検索 Qlife」は、口コミ情報 を投稿することにより、ポイントが付与され、 それを商品券と交換できることが確認できた。 4.考察 今回の結果から医療情報機能の公開項目(84 項 目)の平均達成率は 7.3(8.7%)であり重要項目の 平均達成率は 4.8(5.7%)であり低い水準となっ た。また、医療広告の観点からみても、標榜する診 療科名として認められないものがあることや、比 較広告にあたるランキングの掲載をしている問題 のあるサイトが存在する。 このことから、民間 Web 病院検索サイトの表現 に不適切な内容が多い理由は、サイトの運営会社が医 療法の広告規制の内容をあまり理解していないか、営 利に走しるのではないかと考えられる。 また、患者や家族からの口コミ情報は主観的なもの ではあるが、掲載に際して過度な選定は、サービス利 用者に誤解を与えてしまう恐れがあり、利益が絡むこ とのないよう慎むべきである。 5.まとめ 患者や利用者が正確な病院情報を得るためには、 各民間 Web 病院検索サイトの口コミ情報等を過信 するのではなく、 「医療機能情報提供サイト」さら には各病院ホームページの掲載内容も総合評価し、 受診する病院を決定する必要があろう。 【参考文献】 1)厚生労働省:医療機能情報提供制度について 2)厚生労働省:医業若しくは歯科医業又は病院 若しくは診療所に関して広告し得る事項等及び 広告適正化のための指導等に関する指針(医療 広告ガイドライン) 3)村田知憲、酒井順哉 ほか:患者から見た医 療機能情報提供サイトのユーザビリティの比較 研究、病院設備、51(5), pp.153, 2009.