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「細胞モデリング技術の開発」(公開)
資料5-4 プロジェクトの詳細説明資料(公開) 細胞モデリング技術の開発 「細胞モデリング技術の開発」 サブプロジェクトリーダー 冨田 勝 1 「細胞モデリング技術開発」の研究開発テーマ 研究開発テーマ 開発対象とした技術 位置付け 細胞モデリング技術の開発 (担当:慶應義塾大学) 様々な変異株や培養条件の大腸菌の メタボローム・プロテオーム・フラックス を網羅的に測定する それらのデータをもとにE-CELLシス テムを使ってモデリング・シミュレー ションを行った 定量的なデータ収集、 およびそれらに基づい たモデリング手法の開 発 大腸菌細胞のモデル化に向けた 基盤構築 (担当:奈良先端科学技術大学院 大学) 世界で最も正確な大腸菌の塩基配列 を有する大腸菌単一遺伝子クローン ライブラリー、単一遺伝子欠失株ライ ブラリーを作成 定量的なデータ収集の ためのリソース作り 大腸菌主要エネルギー代謝の遺 伝子発現・代謝ネットワークモデル の作成 (担当:九州工業大学) 代謝・遺伝子制御ネットワークを詳細 細胞モデル化を効率化 に記述するソフトウエア(CADLIVE)を する汎用ソフトウエアの 開発 開発した 生産プロセスにおける酵母代謝経 路モデリング (担当:大阪大学) バイオインフォマティクスデータ統合に よる酵母代謝経路モデリングによる育 種法の確立とストレス耐性、特に浸透 圧耐性株の育種 真核細胞(酵母菌)にお いても各種データを統 合した 2 1 大腸菌細胞モデリングの研究開発内容 達成目標 研究の意義 遺伝子発現制御を含んだ主要エネル ギー代謝系の動的シミュレーションモ デルの構築 代謝の動的な振舞いを理解し予測す ることができる 細胞代謝全体の静的モデル(代謝流 束モデル)の構築 測定の難しい速度パラメータを用いず に,化学反応量論式から数学モデル を構築して,野生株や変異株の代謝 流束を予測する 動的・静的モデルを統合した細胞シ ミュレーション用ソフトウェアの開発 代謝の動的モデル構築に用いる酵素 反応速度式を削減でき、パラメータ測 定にかかる時間と費用を大幅に低減 することができる 代謝経路の最適化とプロセス効率の 予測(宿主細胞設計に資する) より効率的に宿主細胞設計を行うこと ができる 3 成 果 • 大腸菌代謝全体の定性的モデリング – ゲノム配列/酵素DBからのモデル自動生成 • 「GEMシステム」を完成した。 – CE/MSによる代謝物質の網羅的解析 • 技術を確立し、協和発酵分室の 宿主細胞 MGF株を測定した。 – バイオインフォマティクスによる代謝解析 Gとの 連携 • WTとの比較から協和発酵分室 MGF株の代謝特性を推定した。 4 2 成 果 • 主要エネルギー代謝系動的シミュレーション モデリング – マルチオミックスデータの収集 • WTと単一遺伝子欠損株24株について収集 完了 – これらに基づいてシミュレーションモデルを構築 • E-Cellシステムを用いてプロトタイプ完成 • 大規模シミュレーションにむけての技術開発 – ハイブリッド法、MASK法を開発 5 マルチオミックスデータの網羅的収集 研究項目 目 標 成 果 目標 達成度 成果の 意義 論文数 (件) メタボローム測 定技術の開発 CE-MS, CETOFMSによ る代謝物質の 一斉定量法を 開発する 代謝物質の測 定法、推定法、 酵素の機能同 定法を確立し た ◎ モデリングに必 要な代謝物質濃 度データの収集 に有用 9 プロテオーム測 定技術の開発 LC-MSを用い たタンパク質 の一斉定量法 を開発する タンパク質の絶 対量を一斉・迅 速に測定する 手法を開発し た ○ モデリングに必 要なタンパク質 濃度データの収 集に有用 2 大腸菌マルチオ 定量的手法、 ミクスデータの 定性的手法を 収集 併用し、様々 な状態の大腸 菌のマルチオ ミクスデータを 得る 24欠損株, 5比 増殖速度(野 生株)のデータ を収集した。 ○ 代謝経路の変化 に関する定性 データやシミュ レーションに必要 な定量データが 揃い、今後のモ デリングに有用 0 6 3 メタボローム • CE-MS(イオン性物質の測定) – 代謝物質の 高速一斉定量法 CE MS Soga, T. et al. (2002) Anal Chem. 74, 2233-2239 7 CE-MS標準データベース z合計859種類 (陽イオン性452, 陰イオン269, ヌクレオチド類 86) Compound Glyoxylate Propionate Glycolate Crotonate Butyrate Isobutyrate Pyruvate Oxamate Lactate Chloroacetate Tiglate Isovalerate Valerate b-Hydroxybutyrate a-Hydroxybutyrate 2-Hydroxyisobutyrate Malonate Glycerate Carbon 2 3 2 4 2 4 3 3 3 2 5 5 5 4 4 4 1 3 m/z 73 73 75 85 87 87 87 88 89 93 99 101 101 103 103 103 103 105 MT MT/MT(IS) Area Area/Area(IS) S/N 13.834 0.745 19156 0.026 4.515 14.868 0.773 37112 0.033 9.297 10.099 0.784 59370 0.067 30.675 15.709 0.817 52279 0.046 19.357 16.625 0.849 58502 0.072 23.046 17.668 0.853 98571 0.092 33.499 11.632 0.736 97905 0.089 10.317 13.326 0.718 56725 0.025 47.119 14.976 0.796 157643 0.177 71.197 10.198 0.792 17615 0.020 27.051 20.897 0.844 148596 0.102 28.467 14.715 0.932 291806 0.230 25.713 16.847 0.907 166577 0.200 14.756 20.683 0.863 247710 0.170 74.924 11.647 0.904 164987 0.161 114.899 16.565 0.846 345230 0.390 260.227 11.008 0.531 18123 0.014 7.250 15.332 0.815 315357 0.284 176.393 Height 3906 7397 15631 9868 7469 14884 9837 13951 31706 4739 20205 52298 22547 24253 36482 69004 2338 49048 8 4 LC-MS標準データベース •中性物質815種類のデータ ベース作成 9 その他未知物質の特定 ①CE-TOFMS法の開発 データ処理ソフトウェアの開発:全質量物質の一斉 表示・比較が可能 ②CE-MS/MS法で在られたMS/MSスペクトルから構 造式を推定 ③ニューラルネットワークによるCE-MS測定時間の 予測 これらの方法を組み合わせて物質を特定 10 5 プロテオーム • ショットガンプロテオミクス(SGP) – 67酵素 • ウェスタンブロット (WB) – 26酵素 • 二次元ディファレンスゲル電気泳動 (2D-DIGE) 11 フラックソーム • 13Cでラベルしたグルコースを使用 • 菌体を加水分解、GC-MSおよびNMRで アミノ酸の同位体分布を測定 • CE-MSで遊離の代謝物質の同位体分布を 測定 12 6 トランスクリプトーム • Real time RT-PCR –中央代謝系遺伝子 85 –rRNA 2 (絶対値のコントロールとして用いる) –中央代謝系のレギュレーター 8 • DNAマイクロアレイ 13 試験条件・測定項目 • Escherichia coli BW25113 • 野生株 (WT) or Keio コレクション • 炭素源 : グルコース • 連続培養 • 希釈率 : 0.2 [hr-1] – 2倍時間 = 3.5 [hr] に相当 • 温度:37℃ • pH:7.0 • メタボローム – CE-TOFMS à 578化合物 • プロテオーム – ショットガンプロテオミクス à 67酵素 – ウェスタンブロット à 26酵素 – 2D-DIGE • フラックソーム – GC-MS, NMR – CE-MS • トランスクリプトーム – Real time RT-PCR à 95遺伝子 – DNAマイクロアレイ 14 7 E. coli K-12 中央代謝経路 15 大腸菌モデリング向けデータ取得対象 • 野生株 希釈率変更 – 0.1, 0.2, 0.4, 0.5, 0.7 [hr-1] • 一遺伝子欠損株(Keio コレクション)※ (希釈率=0.2 [hr-1]) – 解糖系 à galM,glk,pgi,pfkA,pfkB,fbp,fbaB,gapC,gpmA,gpmB, pykA,pykF,ppsA,pgm – ペントースリン酸経路 à zwf,pgl,gnd,rpe,rpiA,rpiB,tktA,tktB,talA,talB ※奈良先端大(森)の大腸菌単一遺伝子欠失/単一遺伝子クロー ンライブラリーに係る知見を利用。 16 8 メタボローム 100 Metabolite conc. (Mutant) [mM] 10 1 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 100 0.1 0.01 0.001 galM glk pgi pfkA pfkB fbp fbaB gapC gpmA gpmB pykA pykF ppsA pgm zwf pgl gnd rpe rpiA rpiB tktA tktB talA talB 0.0001 Metabolite conc. (WT) [mM] 欠損株と野生株の比較 17 プロテオーム (Shotgun Proteomics) 100.00 Protein conc. (Mutant) [mg/g-dry cell] 10.00 0.01 0.10 1.00 1.00 10.00 0.10 0.01 100.00 galM glk pgi pfkA pfkB fbp fbaB gapC gpmA gpmB pykA pykF ppsA pgm zwf pgl gnd rpe rpiA rpiB tktA tktB talA talB 0.00 Protein conc. (WT) [mg/g-dry cell] 欠損株と野生株の比較 18 9 フラックソーム 200 Flux (Mutant) [%-substrate uptake] 150 100 50 0 0 50 100 150 200 galM glk pgi pfkA pfkB fbp fbaB gapC gpmA gpmB pykA pykF ppsA pgm zwf pgl gnd rpe rpiA rpiB tktA tktB talA talB -50 Flux (WT) [%-substrate uptake] 欠損株と野生株の比較 19 トランスクリプトーム (定量PCR) 1.E+12 mRNA conc. (Mutant) [copy number/μg-total RNA] 1.E+11 1.E+10 rpiAの欠損でrpiBが上昇 1.E+09 1.E+08 1.E+07 1.E+06 1.E+05 1.E+04 1.E+03 1.E+02 galM glk pgi pfkA pfkB fbp fbaB gapC gpmA gpmB pykA pykF ppsA pgm zwf gnd rpe rpiA rpiB tktA tktB talA talB 1.E+01 1.E+00 1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08 1.E+09 1.E+10 1.E+11 1.E+12 mRNA conc. (WT) [copy number/μg-total RNA] 欠損株と野生株の比較 20 10 大腸菌中央代謝系の基本モデル作成 研究項目 目 標 成 果 定常状態にお ける代謝物質 パラメータ 濃度実験デー チューニング マルチオミクス に用いなかっ データを用いたダ タを再現する た代謝物質 イナミックモデル データをある の作成 動的な挙動が 程度表現でき ある程度実測 た 値に一致する 目標 達成度 成果の 意義 論文数 (件) ○ マルチオミクス データを用い てダイナミック モデルを作成 する基本的な プロトコルを確 立した 投稿中 1 21 モデル構築のストラテジー (酵素反応速度式のチューニング) チューニング対象(代数的に計算) フラックソーム (Flux解析) プロテオーム (ショットガンプロテオミクス or ウェスタンブロット) ⎛ P ⎞⎟ kcat Et ⎜ S − ⎜ K eq ⎟⎠ ⎝ v= ⎛ P ⎞⎟ ⎜ K m , S ⎜1 + ⎟+S K m, P ⎠ ⎝ (一基質、一生成物の 可逆Michaelis-Menten式の例) メタボローム (CE/MS) in vitro測定値 or 文献値 22 11 モデルの検証 • E-Cell 3を使用 • 希釈率0.1, 0.2, 0.5 [hr-1]のマルチオミクス データでモデル構築 • 希釈率0.4[hr-1]のタンパク質濃度データを与 えてシミュレーション、定常時の代謝物質計 算値を実測値と比較 • 矛盾を見つけることによって代謝を考察する。 23 遺伝子欠損のシミュレーション(zwf) (左のグラフの結果をマッピング) ペントースリン酸経路の酵素反応速度 Zwf (G6PDH) = 0 1.20E+04 Reaction rate [molecules/sec] 1.00E+04 8.00E+03 G6PDH PGDH Rpe Rpi Tkt (1) Tkt (2) TA 6.00E+03 4.00E+03 2.00E+03 流束=0となる経路 通常と逆行する経路 0.00E+00 0 10 20 30 40 50 60 -2.00E+03 反応速度<0 -4.00E+03 Time [sec] 菌体合成に必要なR5Pを確保するため、 ペントースリン酸経路の逆行が起きる。 実際の欠損株のフラックス解析結果 通常と逆行する経路 24 12 遺伝子欠損のシミュレーション(pgi) 定常時の代謝物質のWTに対する比 (②/①) 減少 Case 1 Case 2 増加 2.68 2.22 2.14 157.93 0.48 1.01 0.53 0.97 シミュレーションで 1.85 8.38 はAcetyl CoAが大 3.82 21.21 実測 Glucose 6-phosphate Acetyl CoA Succinyl CoA Succinate Ribulose 5-phosphate Sedoheptulose-7-phosphate 0.43 2.53 0.76 1.95 3.07 0.91 量に蓄積 Case 1:WTの酵素濃度を入力し、pgiを欠損(×1/7)させたシミュレーション Case 2:pgi欠損株の酵素濃度を入力し、pgi酵素活性を0にした時のシミュレーション 3.5 0.9 G6P F6P FDP DHAP 3PG PEP PYR AcCoA CIT ICT AKG SucCoA SUC FUM MAL 6PG RIB5P RIBU5P SED7P E4P 0.7 ② 0.5 0.4 ① 0.3 0.2 0.1 G6P F6P FDP DHAP 3PG PEP PYR AcCoA CIT ICT AKG SUCCoA SUC FUM MAL 6PG RIB5P RIBU5P SED7P E4P 2.5 2 1.5 ① 1 0.5 0 0 0 200 400 600 Time [sec] 800 1000 0 1200 Case 1 KO 200 400 600 Time [sec] 800 1000 1200 Case 2 KO 25 遺伝子欠損のシミュレーション(rpe) 定常時の代謝物質のWTに対する比 (②/①) 実測 Glucose 6-phosphate Fructose 6-phosphate Fructose 1,6-diphosphate 3-Phosphoglycerate Phosphoenolpyruvate Acetyl CoA Succinate Fumarate Malate Ribulose 5-phosphate Ribose 5-phosphate Sedoheptulose-7-phosphate 3.97 13.71 15.04 0.27 0.15 1.09 0.92 1.33 0.98 66.82 35.07 1.45 Case 1 Case 2 0.99 0.89 0.97 1.16 0.86 0.27 0.88 0.40 0.75 1.00 1.50 3.85 0.78 0.61 0.77 0.96 0.78 1.48 1.33 3.97 1.51 2.39 0.55 0.88 減少 増加 実測では中間代謝物質 が多量に蓄積 Case 1:WTの酵素濃度を入力し、rpeを欠損させたシミュレーション Case 2:rpe欠損株の酵素濃度を入力し、rpe酵素活性を0にした時のシミュレーション 0.25 ② 0.25 g6p f6p fdp dhap _3pg pep pyr accoa cit ict akg succoa suc fum mal _6pg ribu5p rib5p sed7p e4p 0.15 0.1 0.05 0.2 Concentration [mM] ② ① 0.2 Concentration [mM] Concentration [mM] 0.6 ② 3 Concentration [mM] 0.8 G6P F6P FDP DHAP 3PG PEP PYR AcCoA CIT ICT AKG SUCCoA SUC FUM MAL 6PG RIB5P RIBU5P SED7P E4P ① 0.15 0.1 0.05 0 0 0 200 KO 400 600 Time [sec] Case 1 800 1000 1200 0 200 KO 400 600 Time [sec] Case 2 800 1000 1200 26 13 遺伝子改変のシミュレーション(pfkA) • PfkA(解糖系の律速酵素と言われる)の酵素濃度、 キネティックパラメータ(Km for F6P)を変更したときの変化 0.20 0.20 PFK濃度: × 1/10 0.18 0.16 0.16 0.14 0.14 G6P F6P GAP 3PG 2PG PEP 0.12 0.10 0.08 Conc. [mM] Conc. [mM] PFK: Km for F6P × 3 0.18 G6P F6P GAP 3PG 2PG PEP 0.12 0.10 0.08 0.06 0.06 0.04 0.04 0.02 0.02 0.00 0.00 0 20 40 60 80 100 0 120 20 40 60 80 100 120 Time [sec] Time [sec] ●キネティックパラメータの方が小さな変化で影響が大きい →単に発現量を変えるだけでなく、酵素自体の性質を変えたほうが有効な場合も ある ●G6P以外の物質濃度はあまり変化しない→代謝系のロバスト性 27 ダイナミックシミュレーション(1) Chassagnole(2002)の実験との比較 FDP FDP F6P F6P G6P G6P 1.8 2.5 4.5 2 3.5 1.6 4 1.4 1.2 3 1.5 1 0.8 2.5 2 1 0.6 1.5 0.4 1 0.5 0.2 0.5 0 -20 -10 0 0 10 20 30 40 50 -20 -10 0 0 GAP GAP 10 20 30 40 50 -20 -10 0 PEP PEP 2.5 3 2 2.5 10 20 30 40 50 30 40 50 PYR PYR 2.5 2 2 1.5 1.5 1.5 1 1 1 0.5 0 -20 -10 0.5 0.5 0 0 10 20 30 40 50 -20 -10 0 0 10 20 30 40 50 -20 -10 0 10 20 PYR生合成の別経路がactivateされている 可能性を示唆 6PG 6PG 1.8 1.6 1.4 D = 0.1 [hr-1]の定常状態より、 グルコースを3倍濃度になるようパルス投与 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 -20 -10 0 10 20 30 40 50 ● 実測値 X軸:Time [sec] 計算値 Y軸:Normalized concentration [-] 28 14 ダイナミックシミュレーション(2) Hoque et al. (2005) の実験と比較 G6P F6P FBP 2.5 4 10 2 3 8 1.5 6 2 1 0.5 1 0 0 0 100 200 300 400 4 2 0 0 100 200 300 400 6 4 2 0 100 200 300 2 200 300 400 0 0.5 0 200 300 400 200 ● 実測値 計算値 1 100 100 2PG生合成の別経路がactivateさ れている可能性を示唆 2 0 400 0 100 1.5 0.5 300 1 2.5 1 400 0.5 PYR 1.5 300 2 0 400 200 1.5 PEP 0 100 2PG 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 8 0 0 GAP DHAP 0 100 200 300 400 X軸:Time [sec] Y軸:Normalized concentration [-] 29 モデルの精度向上に向けて(今後の課題) • さらに多くの条件におけるマルチオミクスデータを収 集する • 現状のモデルで考慮していない、もしくは簡略化し ている要素を改善する – 酵素反応速度式 – 以下の様な要素 • Crabtree effect(好気的発酵) • グルコース以外の細胞外物質(NH4、Pi)の能動輸送系 • PTS以外のグルコース取り込み系 • パラメータチューニング法の改善 – kcat以外のパラメータをチューニング – データに含まれる誤差を考慮したフィッテイング法の開発 30 15 大規模シミュレーションのための技術開発 研究項目 目 標 成 果 モデル自動 生成 ゲノム塩基 パスウェイモデルの 配列からモ 自動構築を可能とし デルを自動 た 生成すること HDS法 代謝の動的 モデル構築 に用いる酵 素反応速度 式を削減す る メタボロームデータ を用いることで、合 理的に50%以上の 反応速度式を削減 できた MASK法 遺伝子ネット ワークの大 規模シミュ レーションを 実現する DNAマイクロアレイ 情報を用いた大規 模遺伝子制御シミュ レーションを可能と する手法を考案した 目標 達成度 成果の 意義 論文数 (件) ○ 自動構築を可能 としたことで、モデ ル開発について、 コストと人的ミス を低減させること を可能とした 発表済 1 ○ 実験を削減する ことで、モデル構 築にかかる時間 と費用を大幅に 低減することがで きる 発表済 1 投稿中 1 ○ 理論上、規模に 限界がなく、非常 に高精度な遺伝 子シミュレーショ ン手法を実現した 発表済 1 準備中 1 31 ゲノム配列/酵素DBからのモデル自動生成 Escherichia coli K12 MG1665 Metabolites: 940 Enzymes: 1178 Reactions: 1179 Genome- based E-cell Set of Reactions = Metabolic Pathways Modeling Genome Sequence attgaacgct tgcttcgctg gataactact caccaaggcg GEM SYSTEM SWISS-PROT KEGG The GEM system automatically builds static cell models from genomic sequences using various databases. Arakawa , K. et al (2006) BMC Bioinformatics 7, 168 32 16 動的/静的ハイブリッドシミュレーション法 • キネティクスが必要な酵素の数を減らす技術 Dynamic model X2 X4 反応速度式 v1 物質量 Xn X1 X3 反応速度式などで 計算される流束 v2 v3 X5 X6 流束分布解析 X12 v9 X11 v8 Stoichiometric model 流束分布解析で計算さ れる流束 v4 X7 X10 X8 X9 v7 v5 dX5/dt = V2 + V3 dX11/dt = V8 + V9 v6 Yugi, K. et al. (2005) Theor. Biol. Med. Model. 2, 42 33 MASKによる 遺伝子発現シミュレーション Delay 1 min 6 REB1 array Regulated gene x Regulator gene Delay 5 min RB=Rx2 B 4 b Kb ⋅ [ RNAP ] ∏ [ A] ⋅ Ka ⋅ Kc ⋅ 1 + Kb ⋅ [ RNAP ] ∏ [ R] l Vsyn = 3 a gi i=0 m j=0 hj R [ m R N A ] / [ m R N A ]0 x Rx=2 A RA=3Rx 2.5 REB1 simulation ABD1 array 2 ABD1 simulation 1.5 1 0.5 0 0 60 120 180 240 300 360 time(min) S. Cerevisiaeのマイクロアレイデータでテスト (Spellman et al. (1998) Mol. Biol. Cell 9, 3273-3297) Yugi , Y. et al (2005) BMC Bioinformatics 6, 299 34 17 大腸菌中央代謝系の基本モデル作成 研究項目 目 標 成 果 代謝流束予測モ デル(ECFモデ ル)開発 エレメンタリ モードを用い て,酵素活性 を考慮した代 謝流束予測モ デル(ECF)を 開発する 複数の変異株 の流束を MOMAや FBAなどの他 法より正確に 予測すること ができた 目標 達成度 成果の 意義 論文数 (件) ○ 測定の難しい速 度パラメータを 用いずに、化学 反応量論式を 用いて数学モデ ルを構築し、変 異株の代謝流 束を予測するこ とに長所がある 投稿中 35 遺伝子発現/代謝ネットワークの コンピュータ支援設計システムの研究開発 研究項目 目 標 成 果 生命分子ネット ワーク設計支援 システム CADLIVE開発 遺伝子制御・ 代謝ネット ワークを詳細 に記述する方 法やそれを実 装したソフトウ エアを開発す る. 完成したソフト ウエアは CADLIVEとし て,フリーで公 開している. エレメンタリモード を用いた静的流 束予測法(ECF) 開発 変異株の流束 酵素活性を統 を,MOMAや 合して変異株 FBA等の手法 の流束を正確 より正確に予 に予測する. 測できた. 目標 達成度 成果の 意義 論文数 (件) ○ 細胞の分子ネッ トワークの記述 法を世界に先 駆けて提案し, ソフトウエアとし て実装した. 4 ○ 酵素活性の動 的変化を考慮し た静的シミュ レーションに世 界で初めて成 功した. 投稿中 36 18 遺伝子発現/代謝ネットワークの コンピュータ支援設計システムの研究開発 九州工業大学 倉田博之 37 研究成果 1.CADLIVE(反応経路マップを基にした簡易シミュレー ションモデル) の開発 → web公開 (http://www.cadlive.jp/) データベースからの自動レイアウト Nucleoc acods Res. 2003 ノックアウトと経路探索による システム解析 ポストゲノムデータの統合による 未知反応経路探索 Bioinformatics 2005 Genome informatics, 2004 38 19 2.代謝・遺伝子制御ネットワークのシミュレーション σ32 mRNA FF sensor Computer σ32 RNAP Actuator σ32 RNAP Heat Shock FB sensor σ32 DnaK σ32 DnaK FtsH 制御の観点から ネットワークのモジュール分解 PNAS, 2005 Plant σ32 FtsH DnaK HSP(DnaK, FtsH, Lon) genes 代謝・タンパク質・遺伝子層からなる 大規模ネットワーク(アンモニア同化システム) の動的シミュレーションとシステム解析 Genome Res. 2005 39 代謝流束と酵素活性のElementary Modeへの統合による 大腸菌主要代謝シミュレーション法の開発 With 冨田グループ(清水和幸) 40 20 宿主細胞創製グループへのフィードバック (連携) 研究項目 目 標 大腸菌の代 WT大腸菌W3110 謝物質数を とMGF-01のメタボ 測定し比較 ローム測定 する 成 果 MGF-01の方 が代謝物数が 多かった 目標 達成度 成果の 意義 論文数 (件) ○ 遺伝子破壊株 の方が代謝物 質数が多いこと が判明した これはバイパス 経路が発現して いる可能性を示 唆しているが、 再現性、培養条 件など更なる検 討が必要 0 41 協和発酵分室MGFの メタボローム解析 • 大腸菌 MGF株(MGF-01)と野生株 (W3110)を比較 • 慶應義塾大学(先端生命科学研究所)の代謝 スナップショット測定と同条件でサンプル調製 42 21 解析結果: バッチ培養 CE-TOFMS MGF-01 陰イオン 陽イオン WT (W3110) 43 W3110とMGF-01の比較 陽イオン 陰イオン 44 22 W3110及びMGF-01の検出されたピーク数 陽イオン WT MGF 942 1161 陰イオン WT MGF 579 1343 ヌクレオチド類* WT MGF 37 47 *; 測定した53成分(60質量数)中のピーク数 検出された全ピーク数 WT MGF 1558 2551 検出されたピーク数・・・S/N<3, Area<1000, 中性物質を除く 45 解析結果: 連続培養 CE-MS cAMP AMP ADP ATP NAD NADH NADP NADPH 1.25/1.09 (0.88) 46.15/35.31 (0.77) 81.27/62.72 (0.77) 481.54/405.62 (0.84) 188.88/184.21 (0.98) 2.95/3.87 (1.31) 44.04/44.04 (1.00) 22.92/28.48 (1.24) CMP-DG PA Glc Glycogen Glycerophosphate F1,6BP 8.58/6.99 (0.81) GA3P DHAP 0/28.10 (∞) CMP PS 2,3BPG Gly 13.23/13.53 (1.02) Cys 0/0 0/0 GLcn6P 6.03/1.75 20.67/23.33 (1.13) F6P (0.29) 4.51/4.46 (0.99) ② 30.01/22.66 (0.76) Glconate G6P G1P 0/0 Ser 15.40/24.36 (1.58) X5P Thr 5.52/9.03 (1.63) 測定不可・未測定 未検出 AcOH AcCOA Val 11.94/7.29 (0.61) Citrate 3.95/6.98 (1.77) cis-Aco GOX aKG 13.19/10.36 (0.79) Leu 11.34/5.38 (0.47) Ileとの区別が困難 なので参考データ Pro 11.31/7.84 (0.69) 0/0 IsoCit 0/0 Fumarate MGF-01で4/3倍以上高い MGF-01で2/3倍以下低い Ala 16.46/11.94 (0.73) 11.92/2.89 (0.24) Lys Malate Ile 29.92/19.56 29.95/15.57 (0.60) 0.53/0 (0) (0.65) Leuとの区別が困難なので参考データ 0/0 9.17/14.19 (1.55) Succinate 11.10/12.44 (1.12) SucCoA 7.34/6.63 (0.90) ①7.01/27.28 (3.89) Glycolate Trp 0/0 Tyr 3.25/0 (0) Lac Pyruvate Asp 0/0 His 3.30/2.85 (0.86) Phe 1.46/1.99 (1.36) 0/0 27.77/17.83 (0.64) OAA W3110の定量値(pM)/MGF-01の定量値(pM) ( )内の値はMGF-01÷W3110の値 SH7P G2P 8.77/9.17 (1.05) PRPP F6P E4P 53.47/38.41 (0.72) Asn 6.08/0 (0) Ribo5P 8.87/10.62 (1.20) GA3P PEP Met 4.55/6.86 (1.51) 3.21/0.66 (0.21) 23.51/14.24 (0.61) 1,3BPG G3P 2,3BPG Ribu5P Gln 22.00/21.40 (0.97) Glu 353.92/226.41 (0.64) CO2 Arg 12.70/8.00 (0.63) 46 23 結果の考察 多くの遺伝子を破壊したMGFの方が代謝物質は多く検出された. この理由を以下に考察する. ・遺伝子を破壊するとその酵素の前の代謝経路に存在する代謝物が いくつか蓄積することが知られている.MGFは多くの遺伝子を破壊 しているため,多くの代謝物質が蓄積し検出された. ・遺伝子の破壊によって,バイパスの代謝経路がいくつか発現したこと により,多くの代謝物質が検出された可能性がある. ・実験操作上の問題でサンプリングのタイミングが合わず、 W3110は定常期に対して MGFでは対数増殖期を比較した. (測定した細胞数は同じ) この違いが影響した可能性がある. 前述の点を考慮して今後さらなる検討実験が必要である. 47 実用化・事業化の見通し 実用化・事業化 展 開 論文数 (件) 発酵企業と共同研究を行い特定物質 の高生産法を新規に開発した 製薬企業と共同で新規バイオマーカー を発見した 6 プロテオーム/メタボロームの測定法 企業に特許を譲渡し、今後事業化され や遺伝子の機能同定に関して幾つか る見通しである の特許を出願した 4 メタボロームのデータ解析ソフトを開 発した 2 CE-MS法によるメタボローム測定法 を開発し、この技術をヒューマン・メタ ボローム・テクノロジーズ㈱に導出し た 企業に開発したソフトのライセンス契 約がなされる見通しである 48 24 Human Metabolome Technologies Inc. Since 2003 Keio invested HMT 2003.11.27 49 2004.6.18 読売新聞 2004.1.17 日経バイオテクオンラインより HMT社、微生物の新規代謝物探索で ミツカンと提携 メタボローム解析を行うベンチャー企 業であるヒューマン・メタボローム・テク ノロジーズは、1月16日、微生物の新規 代謝物の探索と同定について、ミツカン グループ本社と共同研究を開始したこ とを発表した。 50 25 生物機能を活用した生産プロセスの基盤技術開発 細胞モデリング技術の開発 研究開発テーマ 生産プロセスにおける酵母代謝経路 モデリング技術の研究開発 大阪大学 大学院工学研究科 塩谷捨明 研究開発目標 バイオインフォマティクスデータ統合による酵母代謝経路モデリン グによる育種法の確立とストレス耐性、特に浸透圧耐性株の育種 51 生産プロセスにおける酵母代謝経路モデリング技術の研究開発 バイオインフォマティクスデータを統合する代謝情報工学大阪大学・塩谷・清水グルー グ ル コ | ス 生理学的変化・適応 外的環境の変化 代謝物質レベル グ リ セ ロ | ル エ タ ノ | ル 30分 25分 20分 15分 10分 5分 代謝フラックス解析 タンパク質レベル 代謝物質解析 プロテオーム解析 (kDa) 3 97 66 45 遺伝子レベル トランスクリプトーム解析 微生物の多階層システム pI 10 30 20 14 タンパク質発現解析 各階層における状態量データの取得と統合 評価 細胞内状態を表現するモデルの構築 Control (Cy5) NaCl添加 (Cy3) 重ね合わせ (Cy5+Cy3) 情報科学技術 ・クラスタリング解析 ・統計解析 による有用遺伝子探索 物質生産に適した微生物育種への応用 遺伝子発現解析 52 26 研究開発成果のまとめ 1. 代謝システム解析: 環境ストレスに対して遺伝子、タンパク質、代謝のネットワークの応 答を解析する技術を整備した。 2. 代謝系モデリング技術 2-1 代謝経路モデリング: フラックス解析を行えるグルコースからエタノール生成に到る中枢代 謝経路のモデリングを行った。 2-2 SOMとクラスタリング技術: SOMサイズの決定に、AICを利用し、DNAアレイの実験誤差を指標に、 SOMと階層的クラスタリング法を結合した新しいクラスタリング法を 開発した。 3. ストレス耐性株の育種 3-1 浸透圧ストレスに対して、GPD1 の発現増強株 3-2 NaCl耐性:ENA1、CUP1 増強株 3-3 エタノール耐性株:TRP1、TRP5 遺伝子の発現増強株 成果物 酵母中枢代謝モデル ストレス耐性株 53 細胞モデリング技術開発の波及効果 発酵企業と共同で特定物質の高生産法を開発することや、 製薬企業と共同で新規バイオマーカーを発見することが 今後数多く行われることが期待される。 世界的にも国際メタボローム学会の設立やシステムバイオ ロジー国際会議などで、リーダーシップを発揮している。 54 27