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大学英語教育における小規模 e-Learning システムの理論と実践

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大学英語教育における小規模 e-Learning システムの理論と実践
岐阜市立女子短期大学研究紀要第 58 輯(平成 21 年 3 月)
大学英語教育における小規模 e-Learning システムの理論と実践
Theory and Practice for small-scale e-Learning System in College English Instruction
山本 健一 *武田 康雄 **山田 善久 ***磯本 征雄
***長谷川 信
大橋 真由美
****小島京古
Kenichi YAMAMOTO
*Yasuo TAKEDA
**Makoto HASEGAWA
*名古屋経済大学短期大学部
**Yoshihisa YAMADA
Mayumi OHASHI
*Yukuo ISOMOTO
***Kyoko KOJIMA
***聖徳学園大学
**岐阜経済大学
****理化学研究所
Abstract
The authors have been trying to improve the college students’ working knowledge of English as well as English
communication ability using e-Learning system since late 1990’s when e-Learning system of universities and companies of the
United States was dominant and influential over the instructional world of information technology. Influenced by their elaborate
theory and practice, we developed computer software for learning English vocabulary which supported easy handling for
beginning students in the first stage. Secondly, in order to strengthen their English proficiency, we composed computer software
on the web to support English grammar skill. Thirdly, we made an electronic message board system called “Cross Culture
Forum” on the web, which enabled our students to communicate with foreign students (Thomas More College in U.S.A. and
Kings High School in New Zealand) through the Internet. In the fourth stage, in the process of creating digital contents, we built
digital database for haiga-picture (seasonal poem-picture of Japan) and searching system on the website. In this paper, we trace
the theory and practice for small-scale e-Learning system of our making and discuss instructional effect and efficiency as well.
Keywords : e-Learning、電子掲示板、検索システム、
はじめに
本稿では、第1章で欧米の大学や企業における e-Learning
の発展過程とそれに影響を受け、e-Learning に取り組み始めた
日本の大学の現状とこれまでの研究を展望する。第2章では
e-Learning 事業の理論的支柱となった考え方であるインスト
テキスト、
ーディオカ
送、ファック
ターネット、
ラジオ、テ
セット、ビ
ス、コンピュー
テレビ会議
レビ
デオ
タ
システム
一方向型
一方向型
双方向型初期
双方向型
(1)
表 1:e-Learning 発展の歴史
ラクショナル・デザイン(教育デザイン)の理論と技術的側面
について述べ、第3章ではインストラクショナル・デザインを
歴史的に見ても、e-Learning は欧米、特にアメリカで大きく
応用して、筆者らが実践してきた英語教育における小規模
発展を遂げてきた。アメリカの社会人教育で有名な e-Learning
e-Learning の展開過程を概観し、本研究の今後の発展と展望に
がアリゾナ州のフェニックス大学である。1976 年に創設以来、
ついて述べる。
受講生は 25 カ国 75000 人に及び、その内、オンライン・コース
(1989 年から発足)で学位を取得する学生は、12000 人を越え
1. e-Learning の歴史
るという。教育プログラムとしては、ビジネス関係を中心に、
1.1 アメリカにおける e-Learning 発展の歴史
経営、情報技術、看護学、教育学などであり、学位としても博
もともと e-Learning は遠隔学習から進化してきた学習形態
士号まで在宅学習だけで取得可能となっている。また、MIT(マ
であり、以下のように大きく言えば4つの世代に分けることが
サチューセッツ工科大学)は、今後 10 年間で 2000 コースに及
できよう。
ぶ全ての講座を e-Learning 用教材として利用できるよう、
イン
第1世代
第2世代
第3世代
第4世代
1840 年代~
1960 年代~
1985 年代~
1995 年代~
1960 年代
1985 年代
1995 年代
2005 年代
新聞、郵送
テレビ、オ
テレビ、衛星放
CD-ROM、イン
ターネット上に無料で公開すると、2002 年度に公表している。
1.2 企業における e-Learning 発展の歴史
企業に於ける e-Learning では、
ネットワーク機器大手のシス
コシステムズでは、1990 年代末から営業マンや SE(システムエ
大学英語教育における小規模 e-Learning システムの理論と実践
ンジニア)向けに約 500 コースの e-Learning を導入した結果、
携し、カナダのブリティッシュコロンビア大学で開発された
教育コストが従来型の集合研修に比べて約 50%削減されたと
e-Learning 用 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム で あ る WebCT ( Web
のことである。これは主として WBT(Web-Based Training)の
Communication Tool)の日本語化活動に着手(1998 年)し、そ
手法により、教材やテストをプログラム化し、講義をビデオ・
の後、大学教育に於ける WebCT を利用した e-Learning 事業を
オンデマンド化したものを提供している。このように、教育コ
理論と実践の両面から強力に推進している。
ストの削減効果が大きいということが e-Learning による教育
これら大学や企業の e-Learning 事業への取り組みに対し、
研修の利点のひとつに上げられており、多くの企業が
e-Learning に関する研究は後追いの状態であり、日本に於ける
e-Learning 研修を導入する理由ともなっている。
e-Learning 研究は、現在のところ教育システム情報学会の取り
IBM も顧客企業の研修計画、教育デザイン、コンテンツ開発、
組みが他の学会に比べ、一歩先んじている状況である。教育シ
そして研修の実施に至るまでを統合的にプロデュースする総合
ステム情報学会では、2001 年に e-Learning 解説特集(教育シ
ソリューション事業を開始し、アメリカのみならず日本におい
ステム情報学会学会誌、Vol.18, No.2, 2001)を組み、その後、
ても日本 IBM 新入社員研修には e-Learning の手法が導入され、
第2回 e-Learning 解説特集(Vol.18, No.3.4, 2001)
、第3回
教育効果を上げている。
e-Learning 解説特集(Vol.19, No.1, 2002)
、第4回 e-Learning
解説特集(Vol.19, No.2, 2002)
、第5回 e-Learning 解説特集
1.3 日本の大学における e-Learning 発展の歴史
(Vol.20, No.2, 2003)を連載しているように、e-Learning 研
日本に於ける高等教育、
特に大学に於ける e-Learning の導入
究を重視し始めており、いくつかの優れた実践的研究論文(不
および取り組みは、まだ始まったばかりである。その中でも先
破ら、2003)
、
(大倉、2003)が出始めているが、今のところ「解
進的な取り組みを始めている大学に早稲田大学、信州大学、名
説」が中心であり、本格的な研究体制は今後の課題というのが
古屋大学、岐阜大学などがある。
現状である。
早稲田大学ラーニングスクエアではインターネットを活用し
たオンデマンドスタィルの授業の実践と普及をめざし、現在
2. e-Learning とインストラクショナル・デザイン
200 科目を超える授業がこの方式実施されており、オンデマン
2.1 インストラクショナル・デザインの理論
ド授業のコンテンツ制作、システム運用サポート、授業運営支援
これまで上記のように、関連研究の概要として大学や企業の
等を担っており、今後はこの経験と実績を活かし、大学の高校向
e-Learning 事業への取り組みおよび e-Learning に関する研究
けサービスならびに校友向けサービスの充実、さらには国内外
について述べてきたが、世界中で実施されつつある e-Learning
教育機関との連携強化の方向性を打ち出している。
事業の理論的支柱となった考え方がインストラクショナル・デ
岐阜大学総合情報メディアセンターは大学の情報化と学習管
ザイン(教育デザイン:学習者・社会・組織の求める目標に合
理システム(LMS)の構築化に取り組んでおり、LMS(e-Learning
った学習を効率的、効果的に実施する組織的な検証可能な学習
用プラットフォームは Blackboard を採用)は大学における教
の開発方法)であり、その代表的なものに、アメリカの Dick and
授・学習の基盤的な支援システムとして位置付けている。
全教職
Carey (1978)によるシステムアプローチ・モデルがある。この
員と学生が指導・履修科目において LMS を利用し、学務等の事務
理論はその後、
理論と実践のフィードバックを経た改良により、
基盤システムとの連携を基本要件とした全学的な情報化の視点
1994 年にはアメリカ教育工学・コミュニケーション学会
からシステム構築を進めており、特に教師教育にテレビ会議シ
( AECT:Association for Educational Communication and
ステムを利用した遠隔教育は、
岐阜大学の e-Learning 事業の中
Technology)において、Seels & Richey(1994)の Instructional
核に据えられている。
Technology の理論としてまとめられ、世界中に広まっていった
文部省の大学審議会は 2000 年に設置基準を改定し、124 単位
のである。その理論によれば、
「教育工学とは、学習の過程と資
のうち 60 単位をインターネットによる双方向の授業で取得可
源についての設計、開発、運用、管理、ならびに評価に関する
能とし、通信制の大学ではある一定の単位は対面授業のスクー
理論と実践である」、すなわち原文では「Instractional
リングを義務づけていたが、これを全単位遠隔講義で取得でき
Technonology is the theory and practice of design,
るようにした。これを受けて、信州大学情報工学系では 2002
development, utilization, management, and evaluation of
年度から修士課程において、全単位を教材、講義、論文提出も
(2)
processes and resources for learning.”」
と定義されて
インターネットを利用した双方向の e-Learning 授業とする本
いる。
格的なインターネット大学プロジェクトを開始した。
名古屋大学では、名古屋大学情報メディア教育センター、高
等教育研究センター、情報連携基盤センターの3センターが連
2.2 インストラクショナル・デザインにおけるシステマティ
ック・モデル
大学英語教育における小規模 e-Learning システムの理論と実践
この教育工学の理論は教育機関や企業内研修などに取り入れ
改良し、以下のようなモデルを構築した。自前の小規模な個人
られ、実践と改善を経ながら、インストラクショナル・デザイ
のウェブサイトを利用した e-Learning 支援システムを構築する
ンの基本理論が形成されてきた。すなわち様々な環境で最適な
場合、標準化されたモデルよりも現実的、実践的、そしてわか
学習効果を上げる教育方法の設計思想である。標準化された ID
りやすく、簡便なモデルであると考えている。
のシステマティック・モデルは以下のようになる。
インストラクショナル・デザインの
システマティック・モデル
1.Analysis
2.Design
分析
設計
インストラクショナル・デザインを参考にした
小規模 e-Learning 用システマティック・モデル
1. 学習者の特徴
ニーズ調査と分析
インストラクショナル・デザイン
2. 学習目標の設定
開発
教育コースに使うマルチメディ
3. 学習課題の設定
配布
5.Evaluation 評価
教材配信システム
4. 教材作成
学習課題を実行し、具体化するための
学習材料と共に、学習ツールの開発と
開発した教育コースの評価
教材作成が必要
表 2:ID のシステマティックモデル(3)
5.教育効果の評価
開発した教育コース及び学習効果の評
価と改善
ここで提示されたインストラクショナル・デザインのシステ
マティックモデルは標準化されてはいるが、あくまでモデルで
学習目標に沿って、学習者が学ぶべき
具体的な学習課題を記述する
アの開発
4.Deliver
授業の目指すところ、到達すべき目標
を大まかに記述したもの
の企画
3.Develop
対象者(教材利用者)の一般的な特徴
を分析、特定する
表 3:小規模 e-Learning 用システマティック・モデル
あって、このモデルを各自の大学や企業で開発する教育コース
に合わせて工夫し、改良して利用することが前提となる。
これまで、小規模な個人のウェブサイトを利用した英語学習
欧米では大学による教材作成への組織的な協力体制を得て、
支援システムを構築し、それを利用して学習効果を上げること
すでに Learning 教材がある程度作成されており、
インストラク
の方が教育的に見て有意義であると考え、特に、学生の文章創
ショナル・デザインの専門家、グラフィック・デザイナー、メ
作力や英語コミュニケーション能力を増進させるウェブ上の学
ディア編集者、著作権の専門家などがチームを構成し、教材を
習方法や英語学習ソフトの開発を行い、これらのシステムを利
作成する支援体制が確立しているが、日本ではいまだ教材開発
用して自主的に学習することの効果や学習ソフトの有効性を明
に関する研修制度さえ準備されていないのが実状である。確か
らかにしながら、実践研究に取り組んできた。これを図式化す
に、コース管理システム(CMS)や学習管理システム(LMS)を
れば、以下のようになる。
導入して、
ある程度の成果を上げている大学などの例もあるが、
CMS や LMS の導入にはインフラ整備のための費用や維持費がか
なりかかり、しかも教材開発や維持のためのスタッフ確保が難
e-learning 支援システム の構成概念図
学習設計
学習設計
しい、などがネックになり、約 1100 以上ある日本の大学・短大
学習教材配信機能
で、導入事例はそれほど多くないことなどを考えるとき、学習
遠隔学習支援機能
学習支援管理機能
効果を有効に機能させるためのインストラクショナル・デザイ
コンピュータ室での集団学習
学習評価
教材提示支援
ンを導入し、対面授業との共同作業によって、自前の小規模な
個人のウェブサイトを利用した英語学習のための e-Learning
システムをむしろ積極的に構築すべきだと判断した。これが筆
者らの主張するインフラ整備のための費用や維持費があまりか
学習者
教材開発
遠隔学習支援
so-net,
so-net, nifty,
nifty,
tsplaza
tsplaza
学習者
インターネット
学習支援環境
学習支援環境
電子掲示板
電子掲示板
からない e-Learning システムの独自性であり、
これまでこの独
8
自性を生かした e-Learning 教材の作成と授業の実施に関する
実践研究に取り組んできた。
2.3 e-Learning 用ステマティック・モデルの展開
筆者らは、標準化されたインストラクショナル・デザインの
システマティック・モデルを独自の e-Learning 支援システムに
図1:e-Learning 支援システムの構成概念図
3.小規模 e-Learning 用システマティック・モデルを利用し
た英語学習用 e-Learning システムの構築
3.1 英語俳句と俳画CGの実作
大学英語教育における小規模 e-Learning システムの理論と実践
1992 年からは短期大学の英語教育に情報技術を取り入れ、パ
ている。英語力判定の評価基準として英単語・熟語はこれら検
ソコンを利用した英語情報教育という複合領域または学際領域
定試験の基本であり、英語英文学科学生の英語運用能力向上に
に最も力を置き、研究・教育に取り組んでいる。国際化、情報
少しでも資するため、英検2級用・TOEIC600 点用英単語学習ソ
化の時代潮流の中で、英語教育に情報科学技術を導入すべく、
フト(ドリル型 CAI システム)を共同開発した。開発後、英語
本学英語英文学科では専門科目の授業にパソコンを取り入れ、
英文学科1年生の学生を対象に、本ソフトを利用して英単語の
学生にCGソフトを自己表現の道具として利用し、マルチメデ
プレテストを実施した。約一ヶ月の学習後、ポストテストを行
ィア教育を指向した表現手段である「デジタル俳画」
(コンピュ
い、どの程度学習効果が向上したかを中心に分析した結果、英
ータ・グラフィックスと英語俳句の結合)を学生に作成させて
語語彙において学習回数と学習効果との間に高い正の相関関係
いる。すなわち丁寧な、手作りのデジタル・コンテンツの充実
を確認した。また本ソフトの使用に関するアンケート調査を実
を意図している。
これまで 10 年以上にわたって学生の俳画CG
施し、その調査結果をまとめた。これらの結果は外国語教育メ
をデジタルコンテンツ化し、ウェブ上に掲載しているが、この
ディア学会誌(5)に発表した。
ウェブサイトでは、英語版も作り、国際交流の一環として外国
さらに、すでに開発した「英検2級用・TOEIC600 点用英単語
人に日本の短詩型文学の伝統を紹介している。その後、英語俳
学習ソフト」
(ドリル型 CAI システム)をウェブサイト上に公開
句と俳画CGの実作と研究は、アメリカの俳句・俳画研究ウェ
している。
ブサイト(Haiga Online)との共同研究に発展している。これ
らの結果は情報文化学会誌(4)に発表した。
3.3 英文法学習支援ソフト『基礎英語力診断』の開発
また、我々はウェブサイト上に『英単語実力診断』
、
『基礎英
語力診断』という双方向機能を持った学習支援ソフトを公開し
ている。
『英単語実力診断』
は、
マイクロソフト社の Visual Basic
で開発したものであるため、Active X を利用してインターネッ
ト上で利用出来るようにしている。しかし Active X の利用は初
歩レベルの学習者にとってやや取り扱いが難しいことが分かっ
た。そこで簡単なマウス操作だけで利用できる語学練習ソフト
として CGI を利用して用意したのが、この 4 者択一の文法練習
ソフト、
『基礎英語力診断』である。このソフトには採点結果と
図 2:学生の俳画作品1
月間の成績ランクが表示される機能があり、利用者の競争心を
刺激する予想外の効果を得た。しかも学習結果がウェブ上で自
3.2 英検2級用・TOEIC600 点用英単語学習ソフト(ドリル型
CAI システム)の開発
動的に回収できるため、学習評価の確認に適したシステムとな
っている。これら結果は本学の紀要論文(6)に発表した。
1998 年度から、岐阜市立女子短期大学英語英文学科では、英
語運用能力のレベルアップのための具体的な達成目標として、
英検、TOEIC または TOEFL などの検定試験受験を学生に奨励し
図 4:
「基礎英語力診断」のトップページ
http://hpcgi3.nifty.com/yuu-san/quiz1/quiz1.pl
図 3:英単語学習ソフト
大学英語教育における小規模 e-Learning システムの理論と実践
3.4 異文化交流のための英語による電子掲示板(Cross
Culture Forum)の作成
さらに 2002 年から、
本学英語英文学科の学生とアメリカ合衆
国オハイオ州、シンシナティ市の Thomas More College やニュ
ージーランド Dunedin 市の Kings High School の学生たち、ま
た、シンシナティ市の語学学校 Conversa Language Center の教
師や学生など、海外の大学、高校、教育機関の学生との間で異
文化交流を行ってきた。インターネットを利用した英語による
電子掲示板(Cross Culture Forum)を作成し、お互いの学生が
それぞれの地方独自の生活や文化、短詩や英語俳句、語学学習
の方法などを全て英語でウェブ上に紹介し、質問や回答、コメ
ントや感想などをインターネット掲示板や電子メールなどに英
語で書き込み、学生同士が楽しみながらインタラクティブな国
図 6:俳画検索システムの検索結果
際的遠隔学習を進めている。
http://mars.tsplaza.jp/haiga/index.html
終わりに
以上、e-Learning システムの発展の歴史と、インストラクシ
ョナル・デザインを導入し、個人ベースのホームページを利用
して構築した e-Learning 環境とその具体的な利用状況につい
て述べてきたが、全体として以下のことを付け加える。
現在、当 e-Learning システムは3つのサーバー(so-net、
nifty、そして ts-plaza)によって構成されている。この3サ
ーバー間には必要に応じてリンクを張り、いわゆるミニ
e-Learning ネットワークが出来上がっている。このことは、ホ
ームページが個人単位で開設されていても、インターネットと
いう情報網上に公開されることから、利用者側から見れば、公
開されている限り、インターネット上のサイト全体が図書館の
図 5:視聴覚電子掲示板上の異文化交流
書籍のようにデジタルコンテンツを備えた電脳空間になると
http://hpcgi3.nifty.com/yuu-san/clipbbs/clip.cgi
いうことである。このことを考えれば、ホームページ開設者に
求められるのは先ずコンテンツの作成であり、その内容である。
3.5 俳画検索システムの構築
今回本稿をまとめるに当たり、所属を越えたコラボレーション
またシニア向け市民公開講座を開催し、デジタル絵手紙・俳
という視点から、インターネット情報網が予想を超えた可能性
画を作成しているが、好評である。同時に、デジタル俳画のデ
を持つ電脳空間であり、その有効利用はさらに e-Learning シ
ータベース化と検索システムをウェブ上に構造化しつつある。
ステムの可能性を広げるものであることを学生共々実感しつ
現在 300 枚程度のデジタル俳画をウェブ上に載せており、毎年
つある。
50 枚ほど増加している。このデータベースはウィンドウズ上の
今後の展望として、これらの研究を発展させれば、アメリカ
Web Server、SQL そして CGI を利用して画像検索システムを構
ではすでに市民権を得ている e-Leaning 環境をフルに活用した
築した。この検索システムは印象語の選択による感性情報を処
バーチャル大学などの新たな教育学習システムをどこの大学
理するシステムを目標として、そのシステムの特徴と有効効果
においても構築可能ではないか、またこれらの研究が大学の学
を分析しており、学生や一般市民、また外国人など、誰もがイ
生のみならず、地域社会の住民に対しても生涯学習教育などの
ンターネット上で利用できる俳画検索システムとして、その教
側面から学習機会をもたらすのではないかと考えている。
育的意義や評価の構築を目指している。これら結果は本学の紀
(7)
要論文
に発表した。
以上のように、北米の大学における CMS や LMS などのコース
管理システムの普及の成果を取り入れながら、小規模、省コス
ト、自主的対応の利便性などを生かした自主開発の e-Learning
大学英語教育における小規模 e-Learning システムの理論と実践
システムは、自ら学ぶ時代にあって必ず必要となるシステムで
あり、今後の発展が望まれる。
(13)日本イーラーニングコンソシアム編『eラーニング導
入ガイド』東京電機大学出版局、2004
(14)長谷川潔著『楽しく学ぶ英語の教材』大修館書店、1988
註
(15)林晴比古著『新 Visual Basic 入門ビギナー編』ソフト
(1) 大島淳俊著『わかる e ラーニング』ダイヤモンド社、
2001、p.55
(2) S. M. ロス著、向後千春訳『教育工学を始めよう』北
大路書房、2002、p.112
(3) ウィリアム W. リー著、清水康敬訳『インストラクショ
バンクパブリッシング、2001
(16)村山古郷『俳句用語の基礎知識』角川書店、1984
(17)マ-ク・ウォ-ショ-著、古谷千里訳『インターネッ
ト時代の英語教育』ピアソンエデュケ-ション、2001
(18)町田隆哉著『新しい世代の英語教育』松柏社、2001
ナルデザイン入門ん』東京電気大学出版局、2003、p.9
(19)森田正康著『e ラーニングの常識』朝日新聞社、2002
(4) 山本健一、磯本征雄、Jeanne Emrich、武田康雄、長谷
(20)矢沢久雄著
『プログラムはなぜ動くのか』
日経BP社、
川信、大橋真由美、A Creative Education Approach to
2001
Cross Cultural Communication using English Haiku
(21)薮本積穂著『俳画基礎入門』秀作社、1993
and Digital Haiga through the Internet、情報文化
(22)山本健一著『絵手紙・俳画の上手な作り方』技術評論
学会連合研究会雑誌
『情報文化学研究』
第 2 号、
p.41-46、
2003.12
(5) 山本健一、山田善久、武田康雄、磯本征雄、長谷川信、
ランダル・コットン「外国語学習ソフトウェアの開発
と利用」外国語教育メディア学会中部支部学会誌第 14
号、pp.28-41, 2003.3
(6) 山本健一・武田康雄・山田善久・大橋真由美・小島京古・
梅澤敏郎「検定試験における英文法学習について」岐
阜市立女子短期大学研究紀要、第 56 輯、pp.1-5, 2007.3
(7) 山本健一、磯本征雄、長谷川信、大橋真由美、小島京古
「俳画データベース検索システムの構築」岐阜市立女
子短期大学研究紀要第 57 輯、pp.7-11,2008.3
参考文献
(1) 入谷昭編『CAI 実践とソフト開発』大日本図書、1991
(2) 岩村圭南編『インターネットで英語学習』アルク、1995
(3) エミットジャパン編『WebCT:大学を変えるeラーニ
ングコミュニティ』東京電機大学出版局、2005
(4)大島淳俊著『わかる e ラーニング』ダイヤモンド社、2001
(5) 岡本敏雄編著『eラーニングの理論と実際』丸善株式会
社、2004
(6) 北尾謙治編『はじめての CAI』山口書店、1992
(7) 北尾謙治著『英語教育のためのパソコンとインターネッ
ト』洋販出版、1997
(8) 経済産業省商務情報政策局編『eラーニング白書
2005/2006』オーム社、2006
(9) 佐藤和夫『俳句からハイクへ』南雲堂、1987
(10)全国教育研究所連盟編『学校を開くeラーニング』ぎ
ょうせい、2004
(11)中野美知子編『英語教育とコンピュータ』学文社、1998
(12)永野和雄編『これからの情報教育』高陵社書店、1998
社、2003
(23)吉田文編著『模索されるeラーニング』東信堂、2005
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