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報告 (PDF形式, 231.72KB)
別紙
報
1
告
は じ め に
地方公務員法(昭和 25 年法律第 261 号。以下「地公法」という。)第 26 条は、給料表に
関する報告及び勧告についての規定を設けている。すなわち、人事委員会は、毎年少なく
とも一回、給料表が適当であるかどうかについて、地方公共団体の議会及び長に同時に報
告するものとし、給与を決定する諸条件の変化により、給料表に定める給料額を増減する
ことが適当であると認めるときは、あわせて適当な勧告をすることができるとするもので
ある。
また、人事委員会の事務として、同法第 8 条第 1 項第 2 号は、給与、勤務時間その他の
勤務条件、研修及び勤務成績の評定、厚生福利制度その他職員に関する制度について絶え
ず研究を行い、その成果を地方公共団体の議会若しくは長又は任命権者に提出することと
規定するほか、同法第 14 条は、給与、勤務時間その他の勤務条件が社会一般の情勢に適応
するよう、適当な措置について地方公共団体の議会及び長に勧告することができると規定
しているところである。
本委員会は、上記規定に基づき、昨年 9 月、職員の給与に関し報告するとともに勧告し
た後も、引き続き職員の給与の実態、民間の給与をはじめとする職員の給与決定の諸条件
等について調査研究を行ってきた。これらの結果に基づき、本報告に及ぶものである。
-1-
2
職 員 の 給 与
(1) 平均給与月額
本委員会が、本年実施した「職員給与実態調査」によると、本年 4 月 1 日現在におい
て職員の給与に関する条例(昭和 26 年名古屋市条例第 5 号。以下「給与条例」という。
)
に定める給料表の適用を受ける職員(再任用職員を除く。)は、16,629 人であり、その
平均給与月額は、次表のとおりである。
給
料
335,113 円
(335,499 円)
扶 養 手 当
9,072 円
管理職手当
5,775 円
地 域 手 当
35,098 円
住 居 手 当
1,716 円
そ
の
他
計
560 円
387,334 円
(387,720 円)
なお、上記職員の給料については、市長等及び職員の給料の特例に関する条例(平成
25 年名古屋市条例第 29 号。以下「特例条例」という。
)による減額措置(給料について
局長級及び部長級職員△2%、課長級職員△1%)が実施されており、上表の(
)内は、
当該減額措置がないものとした場合の額である。
また、上記職員の平均年齢は 42.5 歳、平均勤続年は 18.3 年、平均扶養親族数は 0.9
人であり、性別構成は男 64.1%、女 35.9%、学歴別構成は大学卒 50.1%、短大卒 9.3%、
高校卒 26.1%、中学卒 14.6%である(なお、数値の小数点以下の端数処理のため、学歴
別構成の計が 100 と一致しない。
)。
このうち、行政職給料表の適用を受ける職員の状況は、次表のとおりである。
-2-
行政職給料表の適用を受ける職員
項目
職
員
うち民間給与との
比較対象となる職員
数
9,516 人
8,955 人
平 均 年 齢
41.0 歳
41.8 歳
平均勤続年
17.9 年
18.8 年
給
料
328,771 円
(329,251 円)
336,408 円
(336,915 円)
平 均 給 与
扶 養 手 当
7,503 円
7,830 円
管理職手当
7,139 円
7,539 円
地 域 手 当
34,427 円
35,269 円
住 居 手 当
1,599 円
1,649 円
33 円
35 円
そ
の
他
計
379,472 円
(379,952 円)
388,730 円
(389,237 円)
(注) 「民間給与との比較対象となる職員」とは、行政職給料表の適用を受ける職員から新
規学卒者等を除いたものである。
なお、(
)内は、特例条例による減額措置がないものとした場合の額である(参考資
料第 1 表、第 2 表)。
-3-
その上、本年 7 月より特例条例の一部改正が実施されたところであるが、その改正が
本年 4 月の人員配置状況で実施されたと仮定して試算した職員給与の状況は、次表のと
おりである。
行政職給料表の適用を受ける職員
項目
うち民間給与との
比較対象となる職員
給
平 均 給 与
料
318,898 円
326,305 円
扶 養 手 当
7,503 円
7,830 円
管理職手当
7,139 円
7,539 円
地 域 手 当
41,009 円
42,004 円
住 居 手 当
1,599 円
1,649 円
33 円
35 円
376,181 円
385,362 円
そ
の
他
計
(2) 期末・勤勉手当
給与条例に規定されている職員の期末手当及び勤勉手当の概要は、次のとおりである。
職員の区分
基準日
期末手当
勤勉手当
計
6月1日
1.225 月
0.675 月
1.9 月
12 月 1 日
1.375 月
0.675 月
2.05 月
6月1日
1.025 月
0.875 月
1.9 月
12 月 1 日
1.175 月
0.875 月
2.05 月
一般職員
3.95 月
特定管理職員
3.95 月
(注) 特定管理職員とは給与条例第 20 条第 3 項の「市長の定める管理又は監督の地位にあ
る職員」をいう。
-4-
3
給与決定の諸条件の動向
「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者
の給与その他の事情を考慮して定められなければならない」
(地公法第 24 条第 3 項)とさ
れている。これら職員の給与決定の諸条件について、本委員会の行った調査研究結果は、
次のとおりである。
(1) 生計費
名古屋市における生計費等の動向にかかる国の労働経済指標は参考資料第 17 表のと
おりであり、総務省統計局の家計調査における本年 4 月の全世帯(世帯人員 3.00 人、世
帯主年齢 57.5 歳)の消費支出は 310,509 円であり、同局による本年 4 月の消費者物価指
数は、昨年 4 月に比べ 1.0%減少している。
(2) 国家公務員の給与
国家公務員の給与については、一般職の職員の給与に関する法律(昭和 25 年法律第
95 号)等に定められているところであり、さらに、本年 8 月 8 日、人事院は、国会及び
内閣に対し、次のように報告を行った。
【1】
[1]
官民給与の比較
月例給
較 差
給与減額支給措置による減額前
76 円
0.02%
給与減額支給措置による減額後
29,282 円
7.78%
減額支給措置は民間準拠による改定とは別に東日本大震災に対処するため、本年度末までの間、
臨時特例として行われているものであることを踏まえ、昨年同様、減額前の較差に基づき給与改
定の必要性を判断したところ、減額前の較差(0.02%)が極めて小さく、俸給表等の適切な改定
が困難であることから月例給の改定は行わない
[2]
期末・勤勉手当
民間の支給割合 3.95 月 (公務の支給月数 3.95 月(減額前)
)
公務の期末・勤勉手当(ボーナス)の支給月数は、民間と均衡しており、改定は行わない
-5-
【2】
給与制度の総合的見直し等
[1] 民間の組織形態の変化への対応
・ 部長、課長、係長等の間に位置付けられる従業員についても来年から官民比較の対象とする
方向で検討
[2] 地域間の給与配分の在り方
・ 地域の公務員給与が高いとの指摘。地域における官民給与の実情を踏まえ、更なる見直しに
ついて検討
[3] 世代間の給与配分の在り方
・ 地域間給与配分の見直しと併せて、民間賃金の動向も踏まえ、50 歳台、特に後半層の水準の
在り方を中心に給与カーブの見直しに向けた必要な措置について検討
[4] 職務や勤務実績に応じた給与
・ 人事評価の適切な実施と給与への反映
人事評価の適切な実施が肝要。昇給の効果の在り方等について検討
・ 技能・労務関係職種の給与の在り方
業務委託等により行政職(二)職員の削減が一層進められることが必要。直接雇用が必要
と認められる業務を担当する職員を念頭に民間の水準を考慮した給与の見直しを検討
・諸手当の在り方
公務の勤務実態や民間の手当の状況等を踏まえ必要な検討
* 給与構造改革における昇給抑制の回復
平成 26 年 4 月 1 日の昇給回復は、45 歳未満の職員を対象とし、最大 1 号俸上位の号俸に調整
【3】
雇用と年金の接続
[1] 雇用と年金の確実な接続のための取組
・ 職員に対する周知、希望聴取
・ 再任用職員の能力と経験をいかせる職務への配置等
・ 再任用に関する苦情への対応
・ 高齢期雇用を契機とした人事管理及び行政事務の執行体制の見直し等
[2] 再任用職員の給与
・ 再任用職員の俸給水準や手当の見直しについては、公的年金が全く支給されない民間再雇用
者の給与の実態を把握した上で、再任用職員の職務や働き方等の実態等を踏まえ検討
・ 民間では、公的年金が全く支給されない再雇用者の給与水準を一部支給される再雇用者の給
与水準から変更しない事業所が多く、転居を伴う異動の場合に単身赴任手当を支給する事業所
が大半
* 年金支給開始年齢が 62 歳に引き上げられる平成 28 年度までには、再任用の運用状況を随時検
証しつつ、本院の意見の申出(平成 23 年)に基づく段階的な定年の引上げも含め再検討がなさ
れる必要
【4】
適正な給与の確保の要請
給与減額支給措置が終了する平成 26 年 4 月以降の給与については、本年の報告に基づく民間準
拠による給与水準が確保される必要。国会及び内閣に対し、勧告制度の意義・役割に深い理解を示
し、民間準拠による適正な給与を確保するよう要請
【5】
そ
の 他
[1] 国家公務員制度改革についての基本認識
(1) これまでの改革の経緯を踏まえた留意点
・ 全体の奉仕者である公務員の人事管理の特性を踏まえ、人事行政の公正確保や労働基本権制
約の代償機能の確保の観点からの十分な議論が必要
-6-
・ 制度官庁や各府省人事当局の実務家等の知見を活用して実効性ある制度設計を行う必要
・ 公務員制度は行政の基盤となる制度であり、改革は広く関係者の合意に基づいて行う必要
(2) 今後の国家公務員制度改革の検討に当たっての論点
① 幹部職員人事の一元管理
内閣人事局の役割と各省大臣の組織・人事管理権との調和等を考慮して適切な制度設計を行
う必要。中立・第三者機関が選考基準設定等に関与する必要
② 内閣人事局の設置と人事院の機能移管
・級別定数は重要な勤務条件であり、労働基本権制約の下では、級別定数に関する機能は中
立・第三者機関が代償措置として担う必要
・任用の基準、採用試験及び人事院が所掌している研修は、人事行政の公正確保の観点から
特に重要な事務であり、これまでどおり中立・第三者機関が担う必要
③ 自律的労使関係制度
本院はこれまで自律的労使関係制度について議論を尽くすべき重要な論点を提起。十分な議
論は行われておらず、未だ国民の理解は得られない状況
[2] 人事行政上の諸課題への取組
(1) 能力・実績に基づく人事管理の推進
① 幹部職員等の育成・選抜に係る人事運用の見直し等
管理職へは採用年次により一律的に昇任させるのではなく、幹部職員等として必要な能力・
適性を判断して選抜を行うなど、能力・適性に基づく人事運用が一層進められるよう各府省に
働きかけ
② 人事評価の適切な実施・活用
公務組織の活力を保つためには、各職員の勤務実績が人事評価に的確に反映され、その結果
を活用した人事管理を推進する必要。政府における人事評価制度・運用の改善等の検討に協力
(2) 採用試験等の見直し
① 国家公務員採用試験への英語試験の活用
平成 27 年度総合職試験から外部英語試験を導入。本年秋を目途に全体の概要を公表できる
よう検討
② 就職活動時期の見直しへの対応
民間の就職活動後ろ倒しを踏まえ、平成 27 年度試験日程等について検討。平成 26 年度試験
日程の発表と合わせて周知
(3) 女性国家公務員の採用・登用の拡大と両立支援
① 女性国家公務員の採用・登用の拡大
女性職員を対象とする管理能力向上のための研修の拡充等の新たな取組を推進
② 両立支援の推進
・配偶者帯同休業制度の導入についての意見の申出。育児・介護を行う職員へのフレックス
タイム制や短時間勤務制の適用の拡大等について早期に成案を得るよう検討
・男性職員の育児休業の取得が進まない要因等を職員の意識調査で把握し、必要な対応を実
施
・超過勤務の縮減には、厳正な勤務時間管理などが肝要。国会関係業務などは関係各方面の
理解と協力を得ながら改善。超過勤務手当については、必要に応じた予算の確保が必要
(3) 民間の給与
ア 平成 25 年職種別民間給与実態調査の概要
本委員会は、職員の給与と民間の給与との精確な比較を行うため、人事院及び愛知
県人事委員会等と共同して、「平成 25 年職種別民間給与実態調査」を実施した。また、
-7-
本年調査より人事院が対象産業の見直しを行ったところであり、本委員会においても、
対象を公務等を除く全産業に拡大して実施した。
この調査は、企業規模 50 人以上で、かつ、事業所規模 50 人以上の市内民間事業所
1,675 事業所のうちから、層化無作為抽出法(参考資料 33 頁4(1)参照)により 266
事業所を抽出し、これら事業所において、事務・技術関係職種をはじめ公務に類似す
る 78 職種に該当する実人員 10,122 人に対し、本年 4 月分として支払われた給与月額
等について行ったものである。
イ 調査結果
平成 25 年職種別民間給与実態調査の結果は次のとおりである。
(ア) 職種別給与
本年 4 月の事務・技術関係 16 職種をはじめ 59 職種の平均給与月額は参考資料第
9 表のとおりである。
(イ) 初
任 給
新規学卒者の本年 4 月の初任給は参考資料第 10 表のとおりであり、事務員・技術
者の平均額は、大学卒 202,603 円、短大卒 178,981 円、高校卒 162,021 円である。
(ウ) 扶養(家族)手当
扶養(家族)手当の支給状況は次表のとおりであり、配偶者にあっては月額 14,410
円、配偶者と子 2 人にあっては月額 25,734 円である。
扶養家族の構成
支
配
偶
者
配 偶 者 と 子 1 人
配 偶 者 と 子 2 人
給
月
額
1 4 , 4 1 0
2 0 , 3 5 5
2 5 , 7 3 4
円
(注) 扶養(家族)手当の支給につき配偶者の収入に対する制限がある事業所を対象とした。
備考 職員の場合、扶養手当の現行支給月額は、配偶者については 14,200 円、配偶者以外
については、1 人目及び 2 人目それぞれ 6,000 円である。なお、満 15 歳に達する日後
の最初の 4 月 1 日から満 22 歳に達する日以後の最初の 3 月 31 日までの間にある子が
いる場合は、当該子 1 人につき 5,000 円が加算される。
-8-
(エ) 住居(住宅)手当
住居(住宅)手当は、全体の 53.9%の事業所において支給されており、住居の所
有区分に応じた支給状況等は次表のとおりである。
区
分
事業所の割合
借 家 ・ 借 間 に 支 給
51.6
自
35.8
宅
に
支
給
%
(注) 各割合は、全事業所を 100 とした割合である。
備考 職員の場合、住居手当の現行支給月額は、2,500 円である。
(オ) 特
別 給
昨年 8 月から本年 7 月までの 1 年間に支払われた特別給(ボーナス)の支給状況
は次表のとおりであり、平均給与月額の 3.97 月分に相当している。
下 半 期
1 . 9 8
上 半 期
1 . 9 9
月分
特別給の支給割合
年
間
の
平
均
3 . 9 7
月分
(注) 下半期とは平成 24 年 8 月から平成 25 年 1 月まで、上半期とは同年 2 月から 7 月ま
での期間をいう。
備考
職員の場合、現行の年間支給割合は 3.95 月分である。
-9-
4
給 与 の 改 定
(1) 基本的考え方
職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者
の給与その他の事情を考慮して定められなければならないとされていることは、既に述
べたとおりである。これらの諸要素を、具体的にどのように考慮し、適用していくかに
ついて、本委員会の基本的考え方を、給与制度面(給料表の構造、手当の種類、内容等)
及び給与水準面に分け、以下に整理する。
ア 給与制度面
公務にふさわしい給与制度として、地方公務員と同様に情勢適応の原則や職務給の
原則の下にあり、人事院等の専門的な体制によって制度設計されている国家公務員の
給与制度を基本とする。
イ 給与水準面
地方分権の進展を踏まえ、地域の労働市場における人材確保の観点や、住民等の納
得を得られる給与水準にするという要請がより重視されると考えられることから、地
域の民間給与をより重視する。
職員給与と民間給与の比較に当たっては、特例条例による職員の給与の減額措置が
時限的、例外的な措置であることから、特例条例による減額措置がないものとした場
合の職員の給与に基づいて行うことが適当である。
なお、この際、職員の生活保障がなされているかどうかといった点から、生計費も
考慮の対象とする。
(2) 本年の給与の改定
ア 民間給与との較差
(ア)月例給・特別給それぞれの比較方法は、次のとおりである。
- 10 -
a
月例給
給与較差は、本市の行政職給料表適用職員と、名古屋市内の民間企業において、
事務・技術関係の職に従事する者の給与を比較して算出する。
比較に当たっては、本市職員と民間企業従業員の同種・同等の者同士の比較を基
本としているが、本市と民間企業においては、それぞれ職種、役職段階の人的構
成、年齢構成等が異なっているため、相互の給与の単純平均を比較することは適
当ではない。そこで、一方の人員構成を他方に合わせ、両者の構成を同一とした
上で、それぞれの支給総額にどの程度の差があるかを算出する。具体的には、主
な給与決定要素である役職段階、年齢階層、学歴別の本市職員の平均給与と、こ
れと条件を同じくする民間の平均給与を、同一の人員構成で累計して総額を算出
し、両者の水準を比較する。
(参考) 比較における役職段階の対応関係表
行政職給料表
9 級 局長
8 級 部長
7級
企業規模 500 人
以上の事業所
企業規模 100 人
以上 500 人未満
の事業所
支店長 工場長
部長 部次長
―
課長
支店長 工場長
部長 部次長
括弧内の課長
7 級 課長
6 級 総括係長
企業規模 100 人
未満の事業所
―
課長代理
支店長
部長
工場長
部次長
課長
5 級 係長
課長
係長
4 級 主任
課長代理
課長代理
3 級 係員
係長
係長
主任
主任
係員
係員
主任
2 級 係員
1 級 係員
係員
- 11 -
b
特別給
特別給の支給額が平均給与月額(月例給)の何月分に相当するかによって比較
を行う。
(イ)上記の方法により、本年 4 月分の月例給を比較した結果は次表のとおりである。
また、職員、民間ともに本年度の新規学卒者等は含まれていない。
民間の給与
職員の給与
較
差
[減額前]
389,237円
[減額前]
39円
(0.01%)
[減額後]
388,730円
[減額後]
546円
(0.14%)
389,276円
備考
職員の給与及び較差の上段の「減額前」は特例条例による減額措置前のもの、下段の「減額
後」は同措置による減額後のものをいう。
なお、本年 7 月の特例条例改正後による職員の給与(4 月の人員配置状況で実施
されたと仮定して試算)と比較した結果は次表のとおりである。
民間の給与
職員の給与
389,276円
385,362円
較
差
3,914円
(1.02%)
次に特別給については、民間の特別給の年間支給割合(3.97 月)は、職員の期
末・勤勉手当の年間支給割合(3.95 月)と均衡している。
- 12 -
イ 給与改定
(ア)月例給
a
月例給については、民間の給与と特例条例による減額措置がないものとした場
合の本市職員の給与を比較した結果、上記ア(イ)に記載した較差が生じていた。
職員の給与の改定に当たっては、給与水準を民間給与に均衡させることが原則で
あるが、本年の公民較差が極めて小さいことから、改定を見送ることが適当であ
るとの結論に達した。
b
また、本委員会は昨年の報告において、地域手当について国家公務員に準じた
支給割合に引き上げ、較差内給与の配分を変更することを検討する必要があると
言及した。地域手当の支給割合の引き上げは、現在、特例的に措置されているが、
特例措置終了後は、制度的な対応として実施されることが適当であり、この場合
における較差内給与の配分変更については、すべての職務の級の給料月額につい
て、同率を基本に引き下げを行うことが適当である。
c
本年 7 月より、特例条例の一部改正により実施された給料月額の減額措置は、
臨時的な措置として実施されたものであり、また昨年の報告で言及したとおり、
課長級以上の管理職の数年にわたって継続された給料月額の減額措置は、もはや
時限的、例外的な措置と言えるものではなく、いずれも適切な対応を望むもので
ある。
(イ)特別給
特別給については、本市職員と民間の支給水準が均衡していることを勘案して
改定を見送ることが適当であるとの結論に達した。
- 13 -
5
公務運営における課題
(1) 職員が「やりがい」を高めるために
ア
少子高齢化などの社会構造の変化により、公務を取り巻く環境が大きく変
化し、市民ニーズの多様化や地域の新たな問題などこれまで以上に複雑で困
難な行政課題の解決が求められる一方、公務への厳しい視線や近年の給与の
引き下げなどにより職員の意欲を減退させ、ひいては住民サービスの低下を
招く恐れがあることについて、本委員会は過去の報告で言及し、その上で、
職員の使命と責任をあらためて再確認するとともに、職員の「やりがい」を
問い質し、あわせて住民自治を推進する役割を確認して、任命権者において、
職員が「やりがい」を高めるための方策を、積極的に講じるよう促してきた
ところである。
イ
職員の「やりがい」を向上させるためには、職員の発揮した能力や実績を
把握・評価するとともに、これらを給与等の処遇に適切に反映していくこと
が重要である。国や他の地方自治体と同様に、役職者だけではなく、非役職
者を含めた全職員に対して勤勉手当に勤務成績を反映させることの必要性に
ついては昨年の報告でも言及したところであるが、適正な給与配分を確保す
ることは、職員の「やりがい」だけでなく組織活力の維持・向上や、有為の
人材の確保にもつながると考える。
ウ
また、上司からの評価が職員の「やりがい」と密接に関係しており、努力
や実績が正当に評価される仕組みが必要であると感じている職員が多いこと
から、昨年度から実施された人材育成評価制度をより積極的に活用すること
により、能力や実績に基づく適正な人事管理を進め、組織の活性化を推進し
ていく必要がある。
- 14 -
そのためには、制度が十分に周知されているか、結果が適切にフィードバッ
クされているかなどの検証を行うとともに、制度に対する信頼性・納得性の確
保に努めることが必要である。さらには、評価者と被評価者とが制度の趣旨を
理解した上でコミュニケーションをとれる体制を構築し、目標の設定等を通じ
て、職員一人ひとりの果たすべき役割と責任を引き出しながら、組織や個人の
目標の共有化を図り、職員の「やりがい」を高めることで、組織の活力はより
一層高まると考える。特に、職場を管理監督する重要な立場にある管理監督職
員は、後述する公務員倫理や超過勤務縮減、ワークライフバランス推進におけ
る取り組み等に、率先垂範して、リーダーシップを発揮されたい。そのために、
コミュニケーションの活発な風通しの良い職場風土づくりに積極的に努める
ことが望まれる。
(2) 公務員倫理について
行政組織において公務員倫理を保持することは、市民と行政の信頼関係を
構築し、市民とのパートナーシップを基調とした市政運営を進める上で必要
不可欠なものである。これは、職員一人ひとりが常に意識しなければならな
いものであるが、特に管理監督職員は、率先垂範して服務規律の遵守に努め
るとともに、部下へ倫理観保持の重要性を認識させるなど、職場における公
務員倫理を確立する上で極めて重要な役割を担っている。
公務員倫理の重要性については、これまでの報告において繰り返し指摘し
たところであるが、昨年、国民健康保険料滞納整理嘱託員の不正採用問題が
発覚し、関係した幹部職員が処分を受けることとなった。本委員会は、この
問題発覚後ただちに文書で、任命権者に、厳正な職員採用を徹底し、不正の
再発防止等に努めるよう通知したところである。
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このような不祥事が管理監督職員によって引き起こされたことは、市政や
行政組織に対する市民の信頼を著しく失墜させるだけでなく、真面目に職務
に取り組んでいる職員の誇りや「やりがい」を阻害し、さらには職員のモラ
ールの低下を招きかねないものであり、管理監督職員自らが公務員倫理を否
定する行為と言わざるを得ない。
また、今回の不祥事は、本市における職員採用全般に対する市民の信頼を
根底から損なう問題であり、任命権者は、職員の採用という極めて重要な手
続の中で、職員のコンプライアンス機能が働かなかったことを深刻に受け止
める必要がある。
人事委員会であれ、任命権者であれ、全ての職員採用については、一般職、
特別職の別を問わず、公平かつ公正に行わなければならない。任命権者にお
いては、厳正な職員採用を徹底し、不正の再発防止と市民の信頼回復を図る
よう努められたい。
公務員倫理とは、職員が公務員として市民の信頼や期待に応えるための行
動規範である。職員一人ひとりが全体の奉仕者であることを改めて認識する
とともに、高い倫理観と使命感を保持し、法令遵守の意識を強く持って行動
することにより、市民の信頼回復に努めていくことが重要であり、特に管理
監督職員は、今一度自らの職責を自覚し、危機感を持って公務員倫理の確立
に努められたい。
(3) 昇任意欲の向上について
係長昇任選考の受験者は減少傾向にあり、平成 24 年度において見てみると、
受験者が最も多い行政職事務の区分における有資格者に対する受験率は
11.2%であった。平成 23 年度が 10.2%であったことに比べるとやや持ち直した
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印象はあるものの、依然低い数字であると言わざるを得ない。さらに、事務
区分において、有資格者に占める女性職員の比率は年々増加傾向にある一方
で、平成 24 年度の係長昇任選考における女性職員の受験率は 4.0%と、男性
職員の 16.6%と比較するとその低さは顕著である。
こうした係長昇任選考の受験率が低迷する状況が続けば、本市の組織力の
低下につながりかねない。本委員会では、これまでにも受験資格を緩和し、
より人物的側面を重視した選考制度とするなど、優秀な人材を確保すべく昇
任選考制度の見直しを進めてきた。さらに今年度、新たに職員全体に向けた
受験勧奨文書を作成し、制度変更や合格率などを示し、受験者にとって受験
しやすくなっていることを紹介するほか、給与面でのメリットを紹介するな
ど、様々な側面から広く職員に働きかけを行った。
また、これまでも役職者の職務の魅力や「やりがい」の積極的な発信が必
要であることは言及しているが、今後も引き続き昇任に消極的な職員の不安
を少しでも和らげ、昇任意欲の向上に取り組む必要がある。さらに、子育て
支援制度をより身近にイメージできるように浸透化を図るほか、女性役職者
からの情報発信の機会を増やすなど、これまで以上に女性職員への働きかけ
を強化することが求められる。
あわせて、この問題の解決には先述した役職者の職務の魅力発信等の取り
組みのほかに、給与に職務や職責を適切に反映させることが肝要となる。役
職者と非役職者の給与差が小さいことが役職者の魅力の低下につながり、昇
任意欲を抑制している原因のひとつとなっていることから、職務や職責を適
切に給与等に反映させる制度とすることにより、処遇面からも役職者の魅力
を高めていくことが重要である。
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(4) 高齢期の雇用問題について
公的年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられることを受け、雇用と年
金の接続を図る方策として、平成 24 年 8 月に高年齢者雇用安定法が改正され、
民間事業者は 65 歳までの雇用を確保するための措置の導入が義務付けられた。
また、国家公務員においては、平成 25 年 3 月に再任用を希望する職員につい
ては原則再任用するものとする方針が閣議決定され、地方公務員に対しても
この決定の趣旨を踏まえた必要な措置を講ずるよう要請があったところであ
る。これらの動きを受け、本市としても雇用と年金の確実な接続のための再
任用の実施が重要となる。
まず、再任用職員の意欲と能力を最大限活用することにより、組織全体の
活力向上を図るためにも、再任用職員を含めた職員全体のモチベーションの
維持向上に資する環境整備が急務である。そのためには、再任用職員に対し
ても能力や実績に基づく人事管理を行うとともに、公正かつ客観的な評価が
行われる仕組みが必要であると考えられる。また、定年後のライフプランや
健康状態等を踏まえた職員の意向をなるべく反映できるよう、短時間勤務な
ど多様な働き方に応える選択肢を用意することも重要である。さらには、今
後公的年金の支給開始年齢が引き上げられていけば、再任用職員として働く
期間と通算すると退職時に在職していた勤務場所での勤続年数が長期化する
ことも想定されることから、人員配置等についても柔軟な運用を期待すると
ころである。
今後、再任用制度の活用状況を検証していくなかで、長期的な高齢期雇用
のあり方について検討していくことも重要な課題であり、国や他都市等にお
ける動向を注視することとする。
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(5) 超過勤務の縮減について
超過勤務の縮減については、職員の健康管理、公務能率の向上、ワークラ
イフバランスの確保の観点から全庁的な取り組みが継続的になされていると
ころである。しかし、昨年度においても依然として年間 600 時間を超える超
過勤務を行っている職員が散見される。その一方で、本市の平成 25 年度予算
定員は、昭和 39 年 12 月に現在の市域になって以来、過去最低となっており、
効率的な業務執行体制の構築と業務量に見合った適正な職員配置を通じた体
制の整備や長時間勤務を抑制するための実効性ある取り組みが今後もより一
層求められる。
職員の超過勤務時間の多さは、日々懸命に努力しているという評価に必ず
しも結びつかず、さらに、中長期での行政サービスを期待する市民の市政に
対する評価に繋がっていないことを認識すべきである。
なお、管理監督職員においては職員の健康管理、業務の効率化、勤務時間
の適正管理を行い、特定の職員に業務が集中しないよう業務分担に配慮する
ことが大切であることは言うまでもない。その際には、いわゆるサービス残
業発生の防止という観点にも注意を払うべきであり、管理監督職員がリーダ
ーシップを発揮して、超過勤務の縮減に努める必要がある。
(6) ワークライフバランスについて
ワークライフバランス(仕事と生活の調和)は、仕事と私生活の両方を充
実させるものであり、職員自身が真剣に取り組むべき重要な問題である。職
員一人ひとりがワークライフバランスを自身の問題であると認識し、意識を
高め、自発的に取り組んでいくことが必要である。
また、職員が安心して働ける環境を整備する必要があり、本市では、次世
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代育成支援対策推進法に基づく「第2期名古屋市職員子育て支援プログラム」
(計画期間は平成 22 年度から平成 26 年度まで)に沿った取り組みが行われ
ている。昨年、プログラム策定後の職員の意識や行動変化を把握するため、
無作為抽出した職員 2,500 名を対象に、次世代育成支援に関する職員アンケ
ートが実施された。このアンケート結果では、制度の周知状況を尋ねた設問
において、様々な支援制度等を掲載した「職員子育て支援ハンドブック」を
知っている職員の割合は 50.4%であった。前回(平成 21 年に実施)の 37.4%
と比べるとその割合が増加したものの、まだ半数近くの職員が知っていない
状況である。また、男性が取得可能な分べん看護や育児参加についての制度
を利用しなかった理由として「制度を知らなかった」との回答が最も多かっ
たことから、今後、研修の機会を十分に活用するなどして、意識啓発に努め
るべきである。あわせて、制度的な側面からは、多様なライフスタイルが生
み出されている現状を踏まえ、職員が安心して働くために必要な育児支援制
度のさらなる充実を検討していくことも必要である。ワークライフバランス
を実現することは、公務能率向上、業務改善にも資するものであり、その取
り組みに一層力を入れることが重要である。
(7) メンタルヘルス対策について
職務内容の複雑化や多様化等により、職員のストレス要因は増大し、本市
におけるメンタルヘルス面の不調を理由とする病休者の状況は休職者のうち
7 割を超えて依然として高い水準にある。メンタルヘルス対策の推進につい
ては、職員の健康管理の側面はもちろん、職員がいきいきと仕事をすること
により、市民満足度の向上を図っていくためにも、重要な課題といえる。
このような状況の中で、職員自らがストレス要因に気付き対処できるよう
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セルフケアをより一層推進していくために、従来のストレスチェックとは別
に今年度から定期健康診断の問診項目に「こころの健康チェック」が新たに
追加された。ストレスは目に見えるものではなく、ささいなことの積み重ね
によってもたらされ、自分で気づかないことも多いため、このような仕組み
を活用するなどして、職員自身が自己の心と体の健康について見つめ直すこ
とが期待される。また、早期発見から復帰支援・再発防止までの総合的な支
援体制の充実も重要であり、職場内においては、相談しやすい雰囲気づくり
に努め、職員同士が互いに声を掛け合うなど、普段から適度なコミュニケー
ションをとることが求められている。
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お わ り に
人事委員会の給与勧告制度は、労働基本権を制約されている職員の適正な処遇を確保す
ることを目的として設けられたものであり、職員の給与水準を適切に設定することは、職
員の意欲向上や労使関係の安定などを通じて、公務の公正かつ効率的な運営の確保に寄与
するものであり、また、市民からの納得を得ることにもつながるものであると考える。
今後とも、このような勧告制度の意義・役割を一層深く理解され、対処されるよう要請
する。
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