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仙台市環境影響評価技術指針 マニュアル

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仙台市環境影響評価技術指針 マニュアル
仙台市環境影響評価技術指針
マニュアル
平成11年11月
仙
台
市
目
序
次
本マニュアルの性格と使い方
■本編
1
技術指針の解説
●第1章
総論
第1
趣
第2
環境影響評価の基本的事項
3
1
環境影響評価を実施する時期
3
2
環境影響評価の対象とする地理的範囲
3
3
環境影響評価実施の基本方針
3
●第2章
第1
旨
2
環境影響評価の手順
事前調査書作成に係る手順
9
1
事前調査の実施
9
2
保全等に配慮すべき対象等の検討
13
3
事前調査書の作成
15
環境影響評価方法書作成に係る手順
19
1
環境影響評価の項目の検討
19
2
調査, 予測及び評価手法の検討
29
3
環境影響評価方法書の作成・提出
31
環境影響評価準備書作成に係る手順
45
1
選定項目並びに調査, 予測及び評価手法の見直し, 決定
45
2
調査の実施
45
3
予測の実施
50
4
環境保全対策等の検討
58
5
評価の実施
58
6
事後調査計画の策定
62
7
環境影響評価準備書の作成・提出
62
第4
環境影響評価書の作成に係る手順
63
1
住民等及び市長からの意見への対応の検討
63
2
環境影響評価書の作成・提出
64
事後調査報告書作成に係る手順
64
1
事後調査の実施
64
2
事後調査実施後の検討
67
3
事後調査の報告書の作成・提出
67
第2
第3
第5
●第3章
環境の保全及び創造のための措置
第1
環境の保全及び創造のための措置の範囲
69
第2
環境の保全及び創造のための措置の考え方
69
第3
環境の保全及び創造のための措置の検討等における留意点
72
■各論編
●第1章
1
地域別の環境影響評価の考え方
山地地域
73
1-1
地域の特性
73
1-2
スコーピングの基本的考え方
73
2
丘陵地地域
74
3
市街地地域
75
4
東部田園地域
77
5
海浜地域
78
●第2章
1
事業別の環境影響評価の考え方
道路
79
<対象事業の概要>
79
<立地の特性>
79
<影響要因の特性>
79
2
ダム, 堰又は放水路
80
3
鉄道又は軌道
81
4
飛行場
81
5
工場, 事業場又は研究所
82
6
電気工作物
83
7
廃棄物最終処分場
83
8
廃棄物処理施設
84
9
下水道の終末処理場
85
10
住宅団地又は別荘団地の造成
85
11
工業団地, 研究所団地又は流通業務団地の造成
86
12
学校用地の造成
87
13
スポーツ施設又はレクリエーション施設の造成
87
14
浄水施設又は配水施設の造成
88
15
都市公園の造成, 墓園の造成
88
16
畜産施設
89
17
土石の採取
90
18
土地区画整理事業
90
19
公有水面の埋め立て又は干拓
91
20
大規模建築物又は高層の建築物・工作物の建設
92
21
その他の造成事業, 複合開発事業
92
●第3章
1
環境影響要素別の手法の解説
大気質
93
1-1
基本的考え方
93
1-2
地域概況の把握
95
1-3
スコーピング
97
1-4
調査
98
1-5
予測
102
1-6
環境保全対策
109
1-7
評価
110
1-8
事後調査
111
2
騒音
112
3
振動
129
4
低周波音
144
5
悪臭
155
6
水質
174
7
底質
195
8
地下水汚染
203
9
水象
212
10
地形・地質
237
11
地盤沈下
250
12
土壌汚染
260
13
電波障害
270
14
日照阻害
277
15
風害
283
16
植物
294
17
動物
322
18
生態系
339
19
景観
353
20
自然との触れ合いの場
369
21
文化財
382
22
廃棄物等
390
23
温室効果ガス等
397
参考文献・資料一覧
404
■資料編
1
序
1
本マニュアルの性格と使い方
1-1
本マニュアルの目的
・本マニュアルは,仙台市環境影響評価条例(平成10年仙台市条例第44号)第5条第1項の規定
に基づく技術指針の内容について,具体的な解説を行うものである。
1-2
本マニュアルの性格
・本マニュアルは,環境影響評価に係る調査を実施する事業者及び調査会社等を主な対象として
おり,読者が環境影響評価に関する知識や技術を有することを前提にする。
・本マニュアルは,環境影響評価に係る調査の基本的な手法等を示すが,具体的な適用について
は個々の事業特性や事業予定地の環境特性により事業者自らが検討,判断するものである。
また,新たな知見や技術等により,より適切な手法等を選択することを妨げない。
・本マニュアルは,今後の調査・研究の進展や,環境影響評価の実績の積み重ね等により,技術
指針の見直しととも整合を図りつつ,適宜必要な改訂を行うべきものである。
1-3
本マニュアルの構成と使い方
序
・本マニュアルの
性格と使い方
マニュアルを使う前に
本マニュアルの構成等
を理解する。
本
編
・本編-技術指針の解説
環境影響評価を実施す
環境影響評価全般に係
る際の基本的な手法を
る事項を手順に沿って
説明
示しており,事業や地
域の特性に応じてこれ
を応用する。
・各論編-地域別,事業
各論編
別の考え方,個別環境
項目ごとの手法
資
料
編
・参考文献・資料一覧
環境影響評価(特に事
前調査及び方法書作成
段階)実施に当たって
の参考資料。
-1-
本編
技術指針の解説
第1章
総論
第1 趣 旨
〈技術指針第1章第1〉
1
この仙台市環境影響評価技術指針(以下「技術指針」という。)は,仙台市環境影響評
価条例(平成10年仙台市条例第44号)第5条の規定に基づき,環境影響評価が科学的かつ
適正に実施されるために必要な技術的事項を定める。
2
この技術指針は,基本的かつ一般的な事項を定めるものであり,対象とする事業の特性
及び地域特性等を勘案して,必要に応じ取捨選択,追加等を行うものとする。
3
この技術指針は,今後の事例の積重ねや科学的知見の進展等により,適宜必要な改訂を
行う。
・環境影響評価条例は,環境影響評価の手続のあり方を定めるものであり,環境影響評価を実施
するに当たっての技術的な事項は技術指針において定めている。1は,事業者は,技術指針に
従って事前調査,環境影響評価項目の選定及び調査,予測及び評価の手法の選定,調査,予測
及び評価の実施,事後調査の計画・実施を行うものであることを示している。
・ただし,環境影響評価において実施すべき内容は,個々の事業の特性及び予定する地域の特性
に応じて異なるものである。このことから,2では,画一的な環境影響評価の実施を避けるた
めに,技術指針においては,最低限従うべきルールや一般的な手法の枠組み,事業者が自ら検
討する際の考え方等「基本的かつ一般的な事項を定める」にとどめていることを示している。
従って,環境影響評価の項目や,調査の内容,予測の内容等について,技術指針に定めるもの
をすべての事業で実施するものではないとともに,技術指針に記載していない事項を選定して
も差し支えない。また,調査や予測の手法についても,技術指針に記載した手法以外のもので
あっても,地域特性や事業特性に適する科学的手法であれば,積極的に新たな手法を導入した
り開発しても差し支えない。
・しかしながら,技術指針のみでは具体的に何をどの程度実施すればよいかがわかりにくいこと
から,技術指針の具体的な適用方法等を示すものとして,本解説を作成した。ただし,本マニ
ュアルについても,必ずしもここに記載したとおりに実施すればよいというものではなく,こ
れを参考として,事業者自らが十分考え,適切な項目や手法を選定し,環境影響評価を実施す
ることが重要である。
・3は,環境影響評価の技術的手法については,科学技術の進展や事例の集積により,進歩して
いくものであることから,技術指針も適宜見直していくものであることを示している。特に,
生態系や自然との触れ合い,環境への負荷に係る項目等については,従来の環境影響評価の中
での技術的蓄積が少なく,今後の具体的な案件の中で積極的な取組みや創意工夫が期待される
ものである。
-2-
第2 環境影響評価の基本的事項
1
環境影響評価を実施する時期
〈 技 術 指 針 第 1 章 第 2 -1 〉
環境影響評価を実施する時期は,対象事業の内容が概ね特定され,かつ当該事業の計画が
変更可能な時期とし,事前調査については,計画のできるだけ早期から取組むこととする。
・本市の環境影響評価制度は,事業の実施段階に行ういわゆる事業アセスであるが,環境保全と
事業を効果的に両立させるために,事業計画の早い段階から環境面の検討を行い,事業者自身
が事業計画に反映することが重要である。
・このことから,環境影響評価は,事業計画に調査結果を反映することが可能な早期の段階から
開始することが必要であることを示している。方法書手続は,事業の概ねの位置や内容が決ま
ったできるだけ早い時期に実施し,調査結果をみながら計画を検討していくことが期待される。
・さらに,環境影響評価の手続きに入る以前から,地域の環境特性の理解に努め,環境保全の面
から事業の立地や内容を検討することが重要であり,このことから,本市の制度においては,
方法書作成の前に事前調査を導入している。事前調査においては,事業者の内部的な検討作業
として,事業の立地や実施の可否等を含めて検討することが重要である。
2
環境影響評価の対象とする地理的範囲
〈 技 術 指 針 第 1 章 第 2 -2 〉
環境影響評価の対象とする地理的範囲は,原則として仙台市域(海域を含む)のうち当該
事業により環境影響が及ぶ可能性のある範囲とし,必要に応じて仙台市の隣接地域を含んで
実施することができる。
・ 本市域外に及ぼす環境影響については,本市の環境影響評価制度の対象外とするところである。
しかしながら,環境は行政の境界によって区分されるものではないことから,本市に及ぶ環境
影響を予測評価するためには,市域外の環境情報を必要とする場合も想定される。
このようなことから,本市域への影響を予測する上で必要となる場合には,調査地域及び予測
地域に本市域以外の地域を含んで実施する場合があることを示している。
3
環境影響評価実施の基本方針
〈 技 術 指 針 第 1 章 第 2 -3 〉
(1)事業計画の策定に当たっては,仙台市環境基本計画との十分な整合を図り,地域環境
の保全及び地球環境の保全について配慮する。
(2)環境影響評価の各段階において,環境影響の回避・低減に配慮し,事業計画に反映す
る。
(3)環境影響評価の実施に当たっては,客観的かつ科学的な手法により行うものとし,必
要に応じ専門家等知見を有するものの助言を得るものとする。
-3-
(1)仙台市環境基本計画との整合
・環境影響評価制度は,環境基本計画が目指している環境像を実現するための重要な手段の1
つであることから,環境影響評価の実施において,以下のような整合を図ることが必要であ
る。
①
環境基本計画における「第5章
土地利用における環境配慮の指針」の内容を,環境影
響評価の項目の選定や環境保全対策の検討等に反映させる。
②
環境影響の評価においては,環境基本計画の目標(環境基本計画第2章第2節の「目指
すべき都市像」及び同第3章第1節の「環境施策の重点目標」)を実行可能な範囲で達
成するよう努める。
・ただし,ここで「環境影響評価の実施に当たっては」とせずに「事業計画の実施に当たって
は」としているのは,環境影響評価はもともと,事業が環境にあたえるネガティブな影響の
回避・低減を検討するものであることから,環境の改善等の事業によるプラスの効果は評価
の対象とはしない。しかし,環境基本計画においては,自然とふれあえる場の創出等,地域
環境の改善のための配慮も求めており,事業計画の検討においては環境基本計画の目指すべ
き都市像の達成に貢献するため環境の改善等の配慮についても求められるものであることか
ら,このような表現としたものである。なお,環境の改善等の配慮については,事業計画を
記載する際に述べること。
(2)環境影響の各段階における事業計画への反映
・事業計画は,立地や構想の段階から,土地利用や施設の配置,具体的な施設の計画,工事計
画等,順次精度を高めていくものである。環境影響評価は,このような計画の各段階におい
て,調査・予測結果を踏まえ,計画を環境面から最適化していくものである。
従って,環境影響評価の技術的な流れは,事業者自らが事前に環境の現況及び事業が環境に
与える影響について調査・予測し,その結果に基づき,環境影響の回避・低減に配慮する,
即ち環境の悪化を未然に防止する措置を事業に組み込むという過程を繰り返すというところ
に特徴がある。
・従来の環境影響評価では,多くの場合,最終的に採択された単独の計画案についての予測評
価の結果のみが示されていたため,環境影響評価の意義や効果についての批判がなされた。
今後の環境影響評価においては,環境影響評価の結果を計画に反映した過程を示し,これが
適切であるかどうかについて住民等の意見を求めることが重要である。
・また,本市の環境影響評価制度は,環境影響評価法や他の地方公共団体の制度と同様,個々
の事業の実施に対して実施する「事業アセス」とよばれるものであることから,事業の立地
等*について本制度の中で直接的に複数案検討の対象とすることは一般的に困難である。そ
こで環境影響評価手続きに入る以前の構想段階から環境に配慮することが重要であると考え,
事前調査を導入し,この段階における立地等の配慮を促すものである。
*:ある目的をもって事業を実施する場合は,立地の選定が非常に重要である。一方,事業
の中には跡地利用の場合のように用地があってその利用を検討する場合がある。この場
合は,事業内容の基本方針(機能等)を定める段階が非常に重要であることから,「立
地等」としている。
-4-
(3)客観的かつ科学的手法
・環境影響評価が説得力を持つためには,客観的かつ科学的な方法論に基づく調査,解析を行
うことが不可欠である。また,できるだけ定量的な解析を行い,定性的なものについても影
響の比較検討を行うためには定量化を行うことも必要である。さらに,客観的な事実と推論
は明確に区別して記述することが重要である。
・一方,環境影響評価を通じて幅広い人々の叡智を集め,よりよい事業を実現させるためには,
情報の完全な公開(ただし,希少生物の分布については盗掘等の防止のために公表の方法等
への配慮が必要)が重要である。また,重大な影響が予想される場合には,それを明確にす
るとともに,それでもなお当該事業が必要である理由や影響を回避・低減することが困難な
理由等を明らかにし,議論を重ねることが重要である。
-5-
参考
杜の都環境プラン
目標の概要(環境面からみた目指すべき都市像と環境施策の重点目標)
■環境負荷の少ない循環型の都市
大気,水,土壌,動植物などの環境が,貴重な限りあるものであることを認識し,大都市としての成長・成
熟へのダイナミズム(潮流)との調和を図り,都市が持続的に発展することにより,将来にわたって地域と
地球の環境の恵みを享受するために,環境負荷の少ない循環型の都市を目指します。
○
水の循環システムの健全性の確保と,環境にやさしい水資源の利用
・定量目標:2010年度の雨水の地下浸透(地下水の涵養)能力を現在のレベルで維持
・定量目標:2010年度の一人当たり水道使用量を現在のレベルで維持
○
エネルギーの消費抑制,有効利用,自然エネルギーの積極的活用による地球温暖化対策の推進
・定量目標:2010年の一人当たり二酸化炭素排出量を1990年のレベル〔2.03t(炭素換算) 〕以下に低減
○
廃棄物の減量とリサイクルの強力な推進
・定量目標:2010年度の一人当たりごみ排出量を1995年度のレベル(1,217g/日)以下に低減
・定量目標:2010年度のごみの資源化率を30%以上に
■自然生態系を重視する都市
生物の種の多様性をどれだけ保全できるかは,自然生態系の保全性を示す尺度であり,さらには21世紀社
会の文化度を示す尺度ともいえます。本市の自然特性を保ち,生物の多様性が確保されるような都市を目指
します。
○
山,里山,田園,海岸線,河川と河岸段丘といった「杜の都・仙台」の基本構造を将来にわたって貴重
な財産として良好に保つ
○
身近に自然に親しみ,ふれあうことができるように,緑地の保全,都市公園整備,道路緑化等を推進,
水辺空間を整備。その際,ビオトープの復元・創造,ネットワーク化を意識。また,市街化区域内の高い
水準の緑被面積を確保
・定量目標:2010年度末の一人当たり都市公園面積を20m2
・定量目標:2010年度の身近な生き物の認識度を,市内のあらゆる地区において1994年のレベルより向上
(対象は,セミ,モンシロチョウ,トンボ,ウマオイ,ホタル,ツバメ,アゲハチョウ)
■地域の多様性・個性をいかしていく都市
魅力ある大都市とは,地域がそれぞれに特性を持つ多様性に富んだ都市であると言えます。地域の生活,
文化,景観等の特性を支える自然や歴史などの地域環境資源が保全され,いかされていく都市を目指しま
す。
○
地域の身近な自然や地域に伝わる歴史的文化的所産を大事にし,それをいかした景観形成,地域づくり
○
地域住民が身近な環境に親しみや愛着を感じとれるような地域づくりのしかけ
■生活環境が健康で安全かつ快適に保たれる都市
大都市として成長・成熟していく本市の状況の中で,健康で安全かつ快適な生活環境を確保することは今
後とも重要な都市の課題です。高齢化などの社会条件の変化を踏まえて,より質の高い,ゆとりとぬくもり
のある生活環境を持つ都市を目指します。
○
大気汚染,水質汚濁,土壌汚染,騒音,振動,地盤沈下,悪臭といった人の健康又は生活環境に係る被
害を未然に防止
・定量目標:国の環境基準を非達成の場合は速やかに達成,既に達成の場合は現状より悪化させない
(ただし,二酸化窒素は,「1時間値の1日平均値が0.04ppm 以下」とする)
○
自動車公害防止対策を積極的に推進
・定量目標:2010年の自動車からの窒素酸化物排出総量を1990年レベル(4,383 t)より20%以上削減
・定量目標:2010年度末の市の所有する車両中の低公害車及び低公害型車両の割合を30%以上に。また,
民間事業者に対しても低公害車等の普及,エコステーションの設置促進
-6-
参考
杜の都環境プラン
配慮指針の概要
■地域別の環境の現状と土地利用面からの環境配慮の基本的な考え方
保全対象等,事業の立地段階等早期の配慮が必要な事項を抽出,整理した。
地域区分
主な自然環境の豊かな地域
環境配慮の基本的な考え方
(環境影響の回避・低減に係る主なもの)
山地地域
・蔵王国定公園
・県立自然公園船形連峰
・県立自然公園二口峡谷
・この地域の環境を基本的に現状のまま保全
・原生的な森林や貴重な生物資源の保護
丘陵地域
・県立自然公園二口峡谷
・太白山県自然環境保全地域
・権現森緑地環境保全地域
・蕃山・斎勝沼緑地環境保全地域
・高館・千貫山緑地環境保全地域
・根白石地区等の農地
・無秩序な市街地の拡大を防止し計画的な都市づくり
・自然環境の連続性や水環境への影響に留意した限定
的土地利用の転換
・市街地からの眺望や市民の身近な緑地空間として極
力保全
・集落と農地との一体的環境は原風景として継承。特
に屋敷林の保全
市街地地域
・丸田沢緑地環境保全地域
・青葉山
・保存緑地(青葉山他46か所)
・その他,台原森林公園,野草園等
のまとまった緑
・青葉山等の保存緑地など身近な貴重な緑地は積極的
に保全
・コリドー(回廊)を意識した緑のネットワーク化
・水生生物や水辺植物等の生息・生育空間の確保,
水辺の活用と創造
・歴史的文化的資源を生かした地域づくり
東部田園地域
・県民の森緑地環境保全地域
・六郷,七郷地区等の農地
・湖沼群
・無秩序な市街地の拡大を防止し計画的な都市づくり
・多様な生物の生息・生育空間としての農地の保全
・集落と農地との一体的環境は原風景として評価し,
配慮
海浜地域
・仙台湾海浜県自然環境保全地域
・貞山堀
・潮害防備の森林は多面的な環境保全機能を評価し基
本的に現状のまま保全
・エコトーンとしても重要な自然地形の残る海岸線の
保全
■開発事業等の種類に応じた土地利用面からの環境配慮の指針
「避ける」,「残す」といった配慮が必要なものを抽出,整理した。
「避ける」,「残す」といった
配慮の対象
自然度の高い地域は避ける
水源に影響を及ぼす事業は避ける
周辺から目立つ斜面や尾根部の樹林
水辺や谷筋等の自然景観資源は残す
歴史的文化的資源の保存に影響を及
ぼす事業は避ける
大造成工事を要する斜面地等は極力
避ける
住宅,学校等への隣接は避けるよう
努める
自然に親しむ場として多くの人に
利用されている場所は避けるよう
努める
住
宅
系
事
業
工
業
系
事
業
農
林
業
系
事
業
交
通
系
事
業
○
○
○
商
業
・
業
務
系
事
業
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
河
川
・
海
岸
系
事
業
○
系廃
事棄
業物
・
下
水
処
理
レ
ジ
ャ
|
系
事
業
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
-7-
別図 1
環境影響評価及び事後調査の手順フロー
立
早期段
階での
対 応
地
事
場
前
所
調
等
の
査
検
の
討
実
施
保全等に配慮すべき対象等の検討
事
方法書
の作成
前
事
調
業
査
計
書
画
の
案
作
の
検
成
討
環境影響評価項目及び調査等の手法の選定
環境影響評価方法書の作成・提出
住民等の意見
(事前調査書を添付)
市長の意見
事
準備書
の作成
業
計
画
案
の
策
定
環境影響評価項目及び調査等の手法の決定
事
調
査
予
測
評
価
後
調
査
の
計
画
の
検
環境保全対策
の
検
討
代償措置の検討
討
環境影響評価準備書の作成・提出
住民等の意見
評価書
の作成
住民等の意見についての事業者見解の作成
市長の意見
環境影響評価準備書内容の再検討・修正
環 境 影 響 評 価 書 の 作 成 ・ 提 出
評価書
公告後
の対応
事業計画の決定・事業の実施
事
予
後
測
調
評
価
査
結
の
果
実
の
検
施
証
事 後 調 査 報 告 書 の 作 成 ・ 提 出
-8-
追 加 的 な
環境保全対策等
の
検
討
(適切な時期・頻度)
第2章
環境影響評価の手順
(別図1参照)
第1 事前調査書作成に係る手順
1
事前調査の実施
(1)事前調査の目的
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 1 -1 -⑴ 〉
事前調査は,地域の環境特性を把握することにより,立地段階において回避等の配慮を行
うことが必要な対象を明らかにし,事業の早期段階における適正な環境配慮に資することを
目的とする。
・事前調査は,いわゆる概況調査とは以下のような点で異なっている。従って,事前調査は,方
法書作成より前に,特に早期の配慮が必要な項目に絞って,概況調査とは別に実施する。
<本市制度における事前調査と概況調査の相違>
事前調査:方法書作成よりさらに早期の段階において,地域の環境の特性を把握し,立地等
計画の早期に配慮すべき事項を明らかにするための調査。従って,立地上の配慮
等を要する項目に限定する。
概況調査:影響評価項目並びに項目ごとの調査,予測及び評価の手法を選定するために必要
な地域の環境特性を把握するための調査。従って,環境要素及び関連する社会条
件等を広く対象とする必要がある。
(2)事前調査の対象項目
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 1 -1 -⑵ 〉
事前調査は,上記の目的を達成するため,以下に示す地域の自然環境等の状況及び地域の
環境保全の状況について実施する。
ア水象(水源地,湧水の状況,自然性の高い水辺地の状況等)
イ地形・地質(注目すべき地形・地質の状況,大規模な造成を要する斜面地の状況,災害履
歴等)
ウ植物(注目すべき植物種の状況,植生及び注目すべき植物群落の状況等)
エ動物(注目すべき動物の状況,注目すべき生息地の状況等)
オ景観(自然的・歴史的景観資源の状況,眺望の状況等)
カ自然との触れ合いの場(自然との触れ合いの場及びその利用の状況)
キ文化財(指定文化財等の状況。ただし,土地と一体となったものに限る。)
その他,事業の種類及び地域特性に応じ,事業の早期段階において配慮すべき対象又は事
項を明らかにする。
また,環境の保全等の状況(自然環境保全に係る法指定等の状況,土地利用に係る計画,
環境基本計画その他環境の保全等に係る計画における環境の保全等の方針等)についても確
認する。
-9-
・事前調査で対象とする項目は,立地段階で回避等の配慮を行うことが望ましい対象や,今後の
事業計画の策定及び環境影響評価の実施において特に配慮すべき事項に係るものである。基本
的には,影響が不可逆的であり立地段階における配慮が非常に重要である自然環境に関する項
目(アからキ)が中心となる。具体的な内容については,環境基本計画の土地利用に係る配慮
指針を踏まえること。
・その他としては,工業系事業等近隣への大気汚染や騒音が懸念される事業については,住宅地
や学校等の環境配慮を要する土地利用の状況についても対象とすること。
・「また」以降に示した,環境保全に係る指定や計画等の状況は,構想段階からこれらとの整合
を図っておくことが重要であることから,ここに掲げるものである。
(3)事前調査の実施方法
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 1 -1 -⑶ 〉
事前調査は,事業予定地及びその周辺地域において,主に既存資料の収集・解析により実
施するものとし,必要に応じて聞き取り調査,現地踏査を実施する。
・事前調査の対象とする,事業予定地及びその周辺とは,事業予定地を中心としておおむね10km
四方程度の範囲又は事業予定地から5km程度の範囲を目安とし,地形的な一体性等を考慮して
設定する。
・事前調査に使用する既存資料は,「自然環境基礎調査」(平成7年3月,仙台市)の情報(基
本的に1/25,000図情報)を中心に,関連する既存資料,各種法令等の指定関係資料を収集する。
参考として,「自然環境基礎調査」における該当情報を表にまとめた。ただし,この資料も基
本的に既存資料を整理したものであることから,情報年,情報精度等において問題のあるもの
もある。また,貴重な動植物等については,必ずしも十分な情報があるわけではない。従って,
自然環境については,概略の現地踏査が実施されることが望ましい。
・必要に応じ実施する現地踏査とは,既存資料から得られた情報の確認と,既存資料には特に保
全を要する対象が存在しない場合であっても事業予定地の環境の状況(特に相観植生に着目)
から周辺にある保全対象と同様のものが存在する可能性がないか,等を確認するためのもので
ある。従って,現地踏査は事前調査を行う全域について実施するのではなく,事業予定地及び
その近傍について,1~数日程度実施する。また,地域の情報に詳しい専門家等への聞き取り
を行うことも重要である。
*現地踏査のレベル・内容例:動物,植物それぞれ1~2日の概査を実施。
1/5,000~1/10,000程度の相観植生又は土地利用図(沢,ため
池等水辺の位置情報含む)の作成。最新の空中写真添付。
・なお,既存資料や現地踏査等の調査結果は,あくまで立地段階で配慮すべき対象等を明らかに
するためのものであって,この段階で特に保全対象がないからといって当該項目を環境影響評
価の対象項目からはずせるというものではない。
-10-
参考
項
事前調査における項目別の主な調査対象及び主な調査方法等
目
①水
象
主な調査対象
調査方法・該当する情報等
水源地
・自然環境基礎調査報告書
水文図(水道水源流域地域
等)
湧水
・自然環境基礎調査報告書
水文図(湧水)
自然性の高い水辺地等
・自然環境基礎調査報告書
水文図(河川及び池沼)を
参考に現地踏査等による
その他事業の立地上配 ・その他既存資料及び現地踏査による
慮を要する水象
②地形・ 注目すべき地形・地質
地質
・自然環境基礎調査報告書
保全上重要な地形・地質
分布図(学術上重要な地形・地質・自然現象)
大規模な造成を要する ・地形図又は標高データ(国土地理院発行の数値地図
斜面地等(30度以上の
等)の解析により,30度以上の斜面地を抽出
急斜面,谷密度が高い ・土地分類基本調査の土地分類図,傾斜区分図,谷密
場所等)
災害の危険箇所
度図等による
・自然環境基礎調査報告書
保全上重要な地形・地質
分布図(防災上の注目域:急傾斜地崩壊危険区域,
地すベり防止区域,砂防指定地,崩壊危険箇所,地
すベり危険箇所,土石流危険渓流,崩壊地,地すベ
り地形,活断層,軟弱層厚さ)
その他事業の立地上配 ・その他既存資料及び現地踏査による
慮を要する地形・地質
③植
物
植生(自然性の高い地 ・自然環境基礎調査報告書
域)
現存植生図により,自然性
の高い地域(例えば植生自然度9,10の地域等)を
抽出する
・事業予定地については,空中写真及び現地踏査による
注目すべき植物種
・自然環境基礎調査報告書
保全上重要な植物分布図
(保全上重要な種の分布地(まとまりのある区域))
注目すぺき植物群落
・自然環境基礎調査報告書
保全上重要な植物分布図
(保全上重要な植物群落の分布地)
その他事業の立地上配 ・その他既存資料及び現地踏査による
慮を要する植物
④動
物
注目すべき動物種
・自然環境基礎調査報告書
保全上重要な動物分布図
(保全上重要な哺乳類,鳥類,両生・は虫類,淡水魚
類,昆虫類分布地)
注目すべき生息地
・自然環境基礎調査報告書
保全上重要な動物分布図
(保全上重要な鳥類,両生・は虫類,淡水魚類,昆虫類
分布地のうち重要な地域)
その他事業の立地上配 ・その他既存資料及び現地踏査による
慮を要する動物
-11-
項
⑤景
目
主な調査対象
観
調査方法・該当する情報等
自然的・歴史的景観資 ・自然環境基礎調査報告書
源
保全上重要な地形・地質分
布図(景観上重要な地形・地質・自然現象)
・自然環境基礎調査報告書
文化財等分布図(指定文化
財,その他の地域環境資源)
眺望(市民等に親しま ・自然環境基礎調査報告書
れている眺望,地域の
文化財等分布図(仙台市内
で自然に親しんでいる場所や好きな風景)
眺望を構成する上で重 ・観光パンフレット等に記載された展望台,眺望にすぐ
要なスカイラインや斜
面等)
れた場所(そこからの眺望は現地踏査で把握)
・地形解析や現地踏査により,スカイラインを構成する
尾根,眺望上重要な斜面の緑等を抽出
その他事業の立地上配 ・その他既存資料及び現地踏査による
慮を要する景観
⑥
自然との触れ合いの場
・自然公園,県自然環境保全地域,県緑地環境保全地
自然との
域,風致地区,都市公園等で自然との触れ合いの場と
触れ合い
して利用されている場所
の場
・自然環境基礎調査報告書
文化財等分布図(仙台市内
で自然に親しんでいる場所や好きな風景)
・その他地域や学校等で自然との触れ合いの場として活
用されている場所について,聞き取り,現地踏査等に
より抽出
その他事業の立地上配 ・その他既存資料及び現地踏査による
慮を要する自然との触
れ合いの場
⑦文化財
指定文化財(ただし, ・自然環境基礎調査報告書
土地と一体となった,
文化財等分布図(指定文化
財)
史跡,名勝,天然記念
物,有形文化財のうち
建造物)
指定文化財に準じる文 ・自然環境基礎調査報告書
化的資源
文化財等分布図(その他の
地域環境資源)
その他事業の立地上配 ・その他既存資料及び現地踏査による
慮を要する文化財
-12-
参考
環境保全の状況として対象とする主な法指定等及び計画
自然環境保全に係る主な法 自然公園(国定公園,県立自然公園)
指定等
県自然環境保全地域,県緑地環境保全地域
史跡,名勝,天然記念物等
鳥獣保護区
緑地保全地区
風致地区
保安林
保存緑地(杜の都の環境をつくる条例)
環境保全区域(広瀬川の清流を守る条例)
保護林,レクリエーションの森等国有林内の制限林等
防災に係る主な指定地域等
地すべり防止区域
急傾斜地崩壊危険区域
砂防指定地
その他市の防災関連情報における危険箇所等
環境保全関連計画
杜の都環境プラン(仙台市環境基本計画)
仙台市水環境プラン
ビオトープ復元・創造ガイドライン
仙台21プラン(仙台市基本計画)
都市計画の方針
仙台グリーンプラン21
杜の都景観基本計画
その他市の環境保全に係る計画
2
保全等に配慮すべき対象等の検討
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 1 -2 〉
事前調査における地域の自然環境等についての整理・解析結果に基づき,以下の点を明ら
かにする。この際,仙台市環境基本計画に示された土地利用における環境配慮の指針等との
整合性を確保する。
⑴
事業予定地及びその周辺地域において,自然環境の保全,生活環境の保全の観点から,
事業の立地を回避することが望ましい地域又は対象
⑵
事業予定地において,自然環境の保全,生活環境の保全の観点から留意すべき事項又
は環境配慮の方向性
<⑴立地を回避することが望ましい地域又は対象の抽出>
・既存資料で得られた情報は,以下のような整理・解析を行う。
◎項目ごとの事前調査結果
○調査項目ごとの概況(どのような特性のある地域か)
○調査項目の項目別の個々の保全対象等の名称,内容,分布(図表の作成)
-13-
○調査項目の項目ごとの,立地を回避することが望ましい地域又は対象(個別の保全対象等
の重要性の検討や個別の保全対象の重なり合いの解析等から,3段階程度に評価する。)
◎回避すべき地域・対象等の抽出
○調査項目を総合し,立地を回避することが望ましい地域又は対象を明らかにする。その方
法としては,項目ごとの回避することが望ましい地域又は対象の解析結果(例えば3段階
評価)を重ね合わせ,総合的に解析・評価する。重ね合わせの手法としては,以下のよう
なものがある。
*合計得点をさらに3段階程度に区分する。その際,調査地域全体の得点の分布(平均値
や標準偏差)を勘案して区分する方法,環境に対する既存の評価や位置づけ(自然公園
や自然環境保全地域等の指定状況等)を勘案しつつ基準を検討する方法等が考えられる。
*個々の項目における重要な対象は,それぞれ独立して重要であると考え,各項目の最も
高い評価を当該地域の評価とする。
*なお,これらの重ね合わせには,メッシュを用いる方法,GISデータをそのまま重ね合
わせる方法等があるが,既存資料による重要な対象の分布情報には精度的な制約がある
ため,GISデータをメッシュ化して用いるといった方法が,この段階の地域評価には適
する。この場合のメッシュの大きさは,解析する範囲や地域特性,既存情報の状況にも
よるが,50m程度が一つの目安となる。(国土地理院から50mの標高データ等が販売さ
れており,これとあわせた解析も可能である。)
<⑵
環境配慮の検討>
・⑴の結果を踏まえ,配慮すべき内容を検討する。その内容は,大きくわけて以下の2つに分か
れる。
◎回避が望ましい対象,事象への配慮
○立地を回避することが望ましい地域又は対象は,この段階の計画に反映しておく(即ち,
これらを回避する)ことが重要である(ただし,環境影響評価の中で,立地の複数案検討
を行う場合はこの限りではない)。
◎事業計画作成及び環境影響評価の実施において配慮すべき事項,環境保全の方針等
○事前調査の結果,回避することが望ましい地域や対象について事業の必要性等からみて回
避が困難である場合,又は回避までは要しないが,十分な配慮が必要な地域や対象が存在
する場合に,今後の配慮の方針を明らかにする。なお,後者についても,可能なものはこ
の段階で計画に反映する(即ち,回避する)ことが望ましい。
○これらは一般的には,今後の環境影響評価実施における環境保全の方針となるものであり,
以後,供用段階までこの配慮すべき事項や方針を継承していくこととなる。
○今後配慮する方針については,あわせてその際に検討する保全対策(代替案)検討の範囲
についてもできるだけ記載する。とりわけ,事業の必要性や情報不足等の理由から,この
段階で十分な立地上の配慮を行うことが困難な場合には,今後,立地や配置に関する複数
案検討が求められる。
-14-
3
事前調査書の作成
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 1 -3 〉
以上の過程により得られた結果をとりまとめ,事前調査書を作成する。
・事前調査書の記載事項については,技術指針第4章の環境影響評価関連図書の作成方法を参照。
・この段階で,先の⑴の立地を回避することが望ましい地域又は対象については,その結果をど
のように計画に反映したかを記載しておくことが望ましい。
・その方法の例としては,以下のようなものが考えられる。
①単独の立地案の場合:立地を回避することが望ましい地域又は対象の総括図において,計画
する立地案が可能な限り回避していることを明らかにする。
②複数案の比較の場合:同上の立地を回避することが望ましい地域又は対象の総括図等をもち
いて,複数の立地案やルート案の比較を行い,最も影響の少ない案を
選定する。
-15-
参考例
単独案の検討イメージ
・計画予定地の北部一体は,自然公園で
あると同時に,貴重な動植物の生息地
であり,自然環境保全重要な地域であ
る。
・計画予定地の東南部には,集落等が立
地し,周辺の水辺は身近な自然との触
れ合いの場ともなっている。
・計画予定地の北にある尾根は,市街地
からみた眺望のスカイラインを形成
し,その南側は景観上重要な斜面とな
っている。
・計画予定地は,景観上重要な斜面の一
部にかかるものの,保全上重要な地域
をほぼ回避している。
・なお,計画検討にあたっては特に市街
地からの景観に配慮することとする。
参考例
仙台市におけるレクリエーション開発の立地適性評価例(一部抜粋)
レクリエーション開発の立地適性評価を,以下の指標の評価値を総合し,行っている。なお,これら指標
の評価は,基本的に既存資料に基づいて実施し,候補地の現状について若干の現地確認を行っている。
立地適性評価指標
■上位計画との整合
仙台市基本計画上の位置づけ
仙台市グリーンプラン21上の位置づけ
宮城県環境管理計画における自然環境質指数等の状況
■自然環境の保全
自然関連法指定
植生の自然性
重要種生育・生息可能性
■水環境の保全
候補地内水源流域面積
水源の水質・水量への影響可能性(水源流域にしめる割合,取水口からの距離)
河川水質・水量への影響の可能性(下流河川の水質等)
■防災
防災関連法指定
災害危険地形
洪水可能性(下流河川の流下能力等)
■造成の可能性
起伏量
傾斜
谷密度
■生産環境の保全
農業関連法指定
農業生産環境(ため池,水利権受益地,公共投資農地等)
林業生産環境(林道整備状況,利用森林)
■景観保全
広域からのみられやすさ
近隣からのみられやすさ
景観資源(骨格の尾根,地形的な景観資源,歴史・文化的資源)
-16-
参考例 仙台市内における道路のルート選定
この例では、路線をA、Bの二つの工区に分け、それぞれ複数の路線案を想定し、既存資
料等に基づき各路線案の評価を行って、最も影響が少ないと考えられるルート案を選定し
ている。
1.路線案の想定
複数路線案の想定
2.環境条件の把握
既存資料整理
A工区3案,B工区4案を想定
↓
既存資料により「道路建設が望ましくない地
域」と「配慮が必要な地域」を抽出
↓
現況の環境評価
国土保全性、自然環境保全性、景観保全性、
生活環境保全性の観点から、現況の環境を点
数化(50mメッシュによる評価)
↓
3.路線案の比較評価
影響の算定
上記の観点ごとに各路線案の通過メッシュの
点数を合計し、それらの総合計を算定
↓
最適案の選定
総合計により、A,Bそれぞれの工区の最適
案を選定
-17-
■通過メッシュ数による路線案比較(A工区の例)
この結果、A工区では、①のルートを選定
①ルート(メッシュ数 29)
得点
総合環境保全
(評価点最高点 20)
103
国土保全
(評価点最高点7)
35
土地安全性
(評価点最高点6)
35
法令等
(評価点最高点2)
0
自然環境保全
(評価点最高点 13)
43
自然性
(評価点最高点4)
得点
10
9
1
2
6
5
4
3
2
1
3
2
1
3
2
1
1
1
4
12
4
4
4
3
17
4
3
17
144
-
-
6
5
1
3
評価点 メッシュ点
③ルート(メッシュ数 31)
得点
10
9
8
7
6
5
4
3
3
4
1
1
2
2
4
7
1
3
2
1
3
2
1
4
9
5
10
9
5
10
0
-
-
0
77
6
5
4
2
1
5
5
1
1
16
37
47
47
評価点 メッシュ点
9
2
5
4
3
2
1
3
2
1
3
2
1
2
4
19
1
3
4
5
21
4
5
21
-
-
5
2
2
1
1
25
106
43
43
2
1
1
20
13
1
13
12
1
12
15
1
15
学術性
(評価点最高点7)
5
1
5
10
1
10
4
1
4
法令等
(評価点最高点5)
4
4
10
1
12
2
55
4
3
1
4
25
18
1
10
1
9
0
-
-
0
-
-
0
-
-
0
-
-
0
-
-
0
-
-
0
-
-
0
-
-
0
-
-
0
-
-
0
-
-
0
-
-
25
2
1
2
21
20
1
20
26
1
26
生活環境
(評価点最高点3)
4
2
2
0
-
-
0
-
-
生活資源
(評価点最高点1)
21
1
21
20
1
20
26
1
26
景観保全
(評価点最高点6)
資源性
(評価点最高点2)
利用性
(評価点最高点2)
視認性
(評価点最高点2)
生活環境保全
(評価点最高点4)
注)
評価点 メッシュ点
②ルート(メッシュ数 28)
各ルートのうち環境保全上最も影響が小さい得点
(仙台市資料による)
-18-
第2 環境影響評価方法書作成に係る手順
1
環境影響評価の項目の検討
(1)地域概況の把握
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 2 -1 -⑴ 〉
環境影響評価の項目(以下「影響評価項目」という。)の選定並びに調査,予測及び評価
の手法検討を行うに当たって必要な情報を得るため,表1に示す地域の環境の自然的状況や
社会的状況等についてその概況を把握する。
地域概況の把握は,主に既存資料の収集・解析により実施するものとし,必要に応じて聞
き取り調査,現地踏査を実施する。
地域概況の記述に当たっては,影響評価項目並びに調査,予測及び評価の手法選定の根拠
が明らかになるよう留意する。
<概況調査のねらいと考え方について>
・概況調査は,スコーピング,即ち,環境影響評価項目の選定とそれぞれの調査,予測,評価の
手法の選定を目的として行うものであり,環境影響評価を適切かつ効果的に実施する上で非常
に重要な役割を担っている。なお,事前調査を実施した項目については,事前調査と概況調査
はほぼ重複する。
・概況調査の結果は,方法書に記載する。方法書は環境影響評価の実施計画が適切であるかどう
か住民等の意見を求めるためのものであることから,単に地域環境の概況に係る情報を列記し
ても意味はなく,項目選定や手法選定の根拠が住民に理解されるよう,論理的かつ,わかりや
すく記述する必要がある。
・環境影響評価の項目(重点化や簡略化の区分含む)の選定において特に重要な地域特性は,①
環境影響を受けやすい地域又は対象の有無(弱い),②環境の保全を目的として法令等により
指定された地域又は対象の有無(大事),③環境が既に著しく悪化し又は悪化する恐れがある
地域(悪い)の3点にまとめることができる。概況調査の実施に当たっては,まず広域的な特
性を把握し,事業予定地がこのような地域に該当するか否かを明確にすることを意識して行う。
・次に選定した項目について調査手法や予測手法を具体的に検討するためには,事業予定地及び
その近傍を中心に,項目選定の段階よりより詳細な環境の特性や社会条件の把握が必要となる。
<概況調査項目と観点>
・自然的状況のうち大気環境,水環境,土壌環境,その他については,汚染物質濃度の状況や苦
情等の状況,発生源の状況等について情報を収集し,現在環境の悪化が生じていないかという
観点と,事業によって影響を受ける可能性がある対象は何かという観点から特性を把握する。
・生物環境,景観等については,自然環境の状況や利用の状況について情報を収集し,主として
保全を図るべき重要な対象は何かという観点から特性を把握する。
・社会的状況については,現在の環境の状況に影響を与えている可能性のある社会的特性(交通,
人口,産業等),配慮すべき保全対象の状況(人口,学校・病院等の施設,土地利用や水利用
等),環境の目標や水準等に関する情報(環境保全上の指定・規制等),将来の環境の状況を
推定する際の参考(人口や産業の動向,開発動向,下水道整備の計画等)といった観点で特性
を把握するものであり,環境影響評価の実施に関係しない単なる統計資料の羅列を行わないこ
と。
-19-
表1
自
項
大気環境
然
的
状
水 環 境
況
地域概況について把握すべき項目及び内容(技術指針)
目
気 象
大気質
騒 音
振 動
低周波音
悪 臭
水 質
底 質
地下水汚染
把 握 す べ き 内 容
気温,降水量,風向・風速等の状況
大気汚染の状況,発生源の状況,影響を受ける施設等の状況等
騒音の状況,発生源の状況,影響を受ける施設等の状況等
振動の状況,発生源の状況,影響を受ける施設等の状況等
低周波音の状況,発生源の状況,影響を受ける施設等の状況等
悪臭の状況,発生源の状況,影響を受ける施設等の状況等
水質汚濁の状況,発生源の状況,影響を受ける施設等の状況等
底質の状況,発生源の状況,影響を受ける施設等の状況等
地下水汚染の状況,発生源の状況,影響を受ける施設等の状況
等
水
象
河川・湖沼・地下水・湧水等の分布の状況,流域,流量又は水
位の状況,水源地その他影響を受ける施設等の状況等
地形・地質
地形・地質の状況,注目すべき地形・地質の状況,災害履歴,
災害等により影響を受ける施設等の状況等
地盤沈下
土壌汚染
地盤沈下の状況,沈下の原因,影響を受ける施設等の状況等
土壌汚染の状況,発生源の状況,土地利用の履歴,影響を受け
る施設等の状況等
植
物
植物相及び注目すべき植物の状況,植生及び注目すべき植物群
落の状況等
動
物
動物相及び注目すべき動物の状況,注目すべき動物の生息地の
状況等
生態系
景 観
地域を特徴づける生態系の特性等
自然的景観資源及び歴史的・文化的景観資源の状況,眺望の状
況等
自然との触れ合いの場
文化財
自然との触れ合いの場及びその利用の状況等
歴史・文化特性,指定文化財等の状況等
電波受信の状況(電波の到来方向及び電波障害の状況),日照
阻害の状況,風害の状況,その他地域の自然的な特性を示すも
のとして重要な項目の状況
人
産
人口の分布,密度,世帯数等の状況,人口等の推移・動向等
産業構造の特性,産業構造の推移・動向等
現況土地利用,土地利用の推移・動向,法令等に基づく用途区
分の状況等
等
土壌環境
生物環境
景 観 等
そ の 他
社
人口及び
会
土地利用
的
状
水 利 用
況
等
社会資本
整備等
口
業
水利権の設定及び利水の状況,漁業権の設定の状況,その他河
川,湖沼及び海域の利用並びに地下水の利用の状況等
交 通
上水道・下水道
廃棄物処理施設等
道路・鉄道等の交通網及びその利用の状況,将来計画・安全等
上水道・下水道の整備の状況,将来計画等
廃棄物処理施設の整備の状況,将来計画等
その他,関連する社会資本の整備状況等
環境の保全等についての配慮が
特に必要な施設等
学校,病院,文化施設,福祉施設の配置の状況,住宅の配置の
状況,将来計画
環境の保
全等を目
的とする
法令等
法令等に基づく指定
・規制
自然環境保全に係る指定地域等の状況,公害防止に係る指定地
域,環境基準の類型指定等の状況,災害防止に関する指定地域
等の状況等
行政計画・方針等
地域の環境基本計画等環境保全に係る方針,環境保全等の施策
の実施状況等
そ の 他
事業予定地周辺における留意すべき関連開発計画等
注)自然的状況等における各項目の環境の状況については,当該項目に係る苦情等の状況を含む。
自然的状況等における影響を受ける施設等の状況とは,住宅,学校等の環境の保全等について配慮が必
要な施設等の配置・分布状況のほか,当該環境の変化により影響を受けるおそれのある水利用や土地利
用等の環境利用及び動植物等の自然環境も含む。
-20-
<概況調査の手法について>
・概況調査は広域を対象とするため,既存文献等を基本とするが,計画地の特性を的確に把握す
るためには,必要に応じて現地踏査や聞き取り調査を行うことが重要である。特に自然環境の
把握については,事前調査でもふれたとおり,聞き取りや現地踏査の必要性が高い。
・範
囲―環境の一体性と事業による影響の程度を考慮して設定するが,環境要素に応じて範
囲を変える必要がある。一般的には,対象事業を実施しようとする地域を中心に約
5km~10km程度の範囲が目安である。
・調査方法―<既存文献等>
既存文献等は,国,県,市の統計資料や調査報告書等のほか,学術論文,市史,郷
土関係の出版物等はばひろく収集,整理すること。また,空中写真も既存文献とし
て活用すること。
情報は極力最新のものとし,可能な限り年次を統一する。ただし,必要に応じ経年
的な比較や長期間の平均の把握等を行う。
資料は,データの信頼性等について検討を行った上で使用する。既存資料を使用し
た場合は調査年,出典等を必ず明記する。
<聞き取り及び現地踏査>
既存資料が十分でない場合,又は信頼性が低い場合は,聞き取り又は現地踏査を実
施する。特に,事業予定地及びその近傍の状況については,現地踏査等を行い,調
査,予測等の手法の検討に反映する。
動植物の状況では,広域の情報のほか,事業予定地及びその近傍について,空中写
真及び現地踏査により,1/10,000程度の相観植生図又は土地利用図を作成しておく。
・地図情報―1/25,000程度の地図上に整理することを基本とする。
(ただし,事業予定地及びその近傍の相観植生図又は土地利用図は別)
・なお,動植物や生態系等については,適切な調査計画を立案するためには,動物相や植物相に
ついて相当程度わかっていることが理想的である。そこで,方法書作成のために動物相,植物
相,植生等に関する現地調査を先行的に実施することは可能である。その場合,先行して実施
した調査の結果についても,環境影響評価の調査の結果として使用することは差し支えない。
・ただし,様々な条件から先行的な調査が困難な場合も想定され,また,調査を実施するために
環境影響評価の手続きの開始が遅れることは制度の趣旨に反する可能性もあることから,先行
的な調査はすべての事業に求めるものではなく,個々の事業の特性等に応じ事業者が判断する
ことである。
-21-
(2)環境影響要因の抽出
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 2 -1 -⑵ 〉
対象事業に係る全ての行為のうち環境影響が想定される行為(以下「環境影響要因」とい
う。)を抽出する。
環境影響評価の対象とする行為の範囲は,当該事業に係る工事,工事が完了した後の土地
及び工作物(以下「土地等」という。)の存在,土地等の供用に伴い行われる事業活動その
他の人の活動とする。
・この段階の事業計画に基づき,環境影響要因を抽出する。この段階では事業内容の未確定部分
が多いと考えられるが,後に調査の手戻りが出ないよう,安全側にたって,可能性のあるもの
をすべて洗い出す。また,直接的に影響が生じる要因だけでなく,間接的に影響を及ぼすと考
えられる行為についても考慮する。ただし,環境影響の予測,評価を一体的に実施するものは,
まとめることができる(例えば,造成,建築等様々な工事について,これによる騒音や大気汚
染はまとめて予測,評価を行うため,重機の稼働としてまとめるなど)。
・工事による影響とは,影響が工事中に限定されるものとし,工事の結果生じる土地等の状況に
よる影響は,その後長期にわたって継続するものであることから,存在による影響としてとら
える。
・存在による影響とは,工事が完了した後の土地及び工作物の存在によるものをさし,伐採,造
成等による自然環境への影響はこれにあたる。なお,工事用道路や工事ヤードのための伐採に
よる影響についても,自然環境への影響は容易に回復するものではないことから,存在影響に
含めて影響評価の対象とすること。
・供用による影響は,各種造成事業についても対象とする。工事後分譲等が行われるなど,主体
が異なったり,環境影響評価の時点では上物の計画が未定の場合も想定されるが,造成等は将
来の利用を目的として実施されるものであるから,原則として整備後の土地や施設における活
動についても対象とする。ただし,埋立等において,上物の事業が単独で環境影響評価条例の
対象となる事業の場合は,別途上物のみの環境影響評価を実施することができる。
・環境影響要因の把握に際して,最低限明らかにすべき計画内容(方法書に記載する事項)は,
以下のとおりである。ただし,事業の種類により環境影響評価を開始する時期には幅があるこ
とから,方法書段階での計画の内容や精度は一律に決めうるものではなく,概略的にしか定ま
っていない場合には,概略の表現で差し支えない。
①事業者の氏名及び住所
②事業の名称,種類,目的(事業の背景や必要性の記述を含む)
③事業の位置及び区域(周辺の状況がわかる1/25,000程度以上の図。最新の空中写真。
なお,位置及び区域が未確定の場合は立地を検討する範囲を示すこと。)
④事業の内容(事業の基本的な規模,開発フレーム,主な施設の内容及び規模等)
⑤工事計画の概要(工事着工予定時期,供用開始予定時期,工期の区分等)
⑥環境の保全・創造等に係る方針(立地選定に当たって環境保全上の検討を行った場合はその
内容又は検討経緯)
⑦その他事業に関する事項(環境影響の内容及びその重大性を想定する上で必要と認められる
事項)
-22-
・事業別に明らかにすべき④の内容は,以下のとおり。面積その他については概略で差し支えな
いが,この時点で定まっている範囲において記載すること(例えば,最大○○程度等)。
事業種別
最低限明らかにすべき内容
道路の建設
・道路の長さ
・車線数
・設計速度
・計画交通量
・構造の概要(盛土,切土,トンネル,橋梁,高架等の別)
・休憩施設等の有無,位置
ダムの建設
・貯水又は湛水区域及びその面積
・ダム又は堰の構造(コンクリートダム,フィルダムの別,
固定堰,可動堰の別等)
・ダム又は堰の供用に関する事項
鉄道の建設
・鉄道の長さ
・本線路の数
・最高速度
・列車の運行本数
・構造の概要(盛土,切土,トンネル,橋梁,高架等の別)
駅舎,車庫,車両検査施設等の有無,位置
飛行機の建設
・滑走路の長さ
・利用を予定する航空機の種類及び数
工場・事業場の建設
・敷地面積
(研究所含む)
・製造する製品の種類,内容等。研究所の場合は研究の内容
・使用する主なエネルギー源
・排出ガス量(1時間当たりの最大量)
・排出水量(1日当たりの平均的な量)
・使用又は発生の可能性のある有害物質の種類及び量
電気工作物の設置
・変電所の場合敷地面積
・送電線路の場合電圧,送電線路の延長,鉄塔の平均的高さ
・関連する発電・送変電の経路の概要
廃棄物最終処分場の建設
・埋立面積及び敷地面積
・処分する廃棄物の種類,内容等
・埋め立て容量,埋立に供する年数,埋立後の処理又は利用等
の方法
廃棄物処理施設の建設
・敷地面積
・処理する廃棄物の種類,内容等
・焼却施設の場合処理能力(1時間当たり)
・し尿処理施設の場合処理能力(1日当たり)
-23-
事業種別
最低限明らかにすべき内容
下水道終末処理場の建設
・敷地面積
・計画処理人口
・排出水量(1日当たり)
住宅団地の造成
・施行区域の面積
・主な土地利用の用途とその面積
・計画人口
・戸建て・集合の別,最大の建物高さ(又は階数)
・区画数及び1区画の平均的面積
工業団地,研究所団地,
・施行区域の面積
流通業務団地の造成
・工業用,研究施設用,流通業務用等及びその他の主な用途の
別とその面積
・予定する主な業種(研究所の場合は研究内容)及び主な施設
の種類,規模,件数等
・予定する従業員数
・予定する自動車交通量
学校用地の造成
・施行区域の面積
・整備する学校の種別
・生徒数
・整備する主な施設の内容及び規模
スポーツ施設又はレクリエ
・敷地面積
ーション施設用地の造成
・整備する施設の種類,数量等
・予定する日最大利用者数
浄水施設又は配水施設の
・敷地面積
用地の造成
・貯留等の施設の構造,規模,容量等
・その他付帯して整備する施設等の概要
・関連する取水・導水の経路
墓地又は墓園の造成
・敷地面積
・整備する墓地の形状,数量等
・その他付帯して整備する施設等の概要
・予定する日最大利用者数
畜産施設の設置
・敷地面積
・飼育する家畜の種類,数量
・畜舎の構造・規模
・その他付帯して整備する施設等の概要
・し尿等の処理方法
-24-
事業種別
最低限明らかにすべき内容
土石の採取又は鉱物の掘採
・採取又は掘採の用に供する場所の面積
・土石又は鉱物の種類,量,期間
・採取又は掘採の方法
・採取又は掘採後の処理又は利用等の方法
土地区画整理事業
・施行区域の面積
・主な土地利用の用途とその面積
・計画人口
・最大の建物高さ(又は階数)
公有水面の埋め立て又は
・埋め立て又は干拓の事業の種類
干拓
・埋め立て又は干拓を実施する区域の面積
・埋め立て又は干拓した後の土地の利用方法の概要
・工法の概要
大規模建築物,高層建築物
・敷地面積
・工作物
・大規模建築物の場合延べ床面積
・高層建築物・工作物の場合高さ
・建築物・工作物の主たる用途
・建築物・工作物の構造
・その他付帯して整備する施設等の概要
その他の造成事業
・他の造成事業に準じる
複合開発事業
・それぞれの開発種類に準じる
(3)環境影響要素の抽出
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 2 -1 -⑶ 〉
規則で定める一般的な影響評価項目を踏まえながら,環境影響要因により影響を受けるこ
とが予想される環境の要素(以下「環境影響要素」という。)を表2の中から抽出する。
なお,表2は,一般的に想定される環境影響要素の細区分を示すものであるため,各事業
の特性及び地域の特性に応じて,適切な細区分の追加,削除を行うこととする。
・表2の中から,概況調査の結果を踏まえ,かつ,事業の特性(影響要因)を勘案し,影響を受
ける可能性のある環境要素の抽出を行う。直接的に影響を受ける環境要素だけでなく,間接的
に影響を受ける環境要素についても考慮する。
・なお,表2に示した環境項目以外の環境要素についても,対象事業及び地域環境の特性に応じ
て項目として選定してもさしつかえない。特に,有害化学物質については,今後調査研究の進
展や,関連法令の変更等が想定されることから,調査時点における法令等の対象物質に限定す
ることなく,科学的知見の集積の動向等を踏まえて選定する必要がある。
-25-
(4)影響評価項目の選定
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 2 -1 -⑷ 〉
抽出された環境影響要因,環境影響要素について,事業特性及び地域特性等を勘案して影
響の程度を検討し,影響評価項目を選定する。
選定した影響評価項目(以下「選定項目」という。)について,必要に応じて,重点的に
環境影響評価を行う項目(重点化項目),簡略化して環境影響評価を行う項目(簡略化項目),
影響が軽微である又は予測等が困難である等の理由から調査,予測を行わず環境配慮によっ
て対応する項目(配慮項目)の区分を行う。
選定結果については,表3を参考として,環境影響要因と環境影響要素の関係,選定項目
及び重点化等の結果がわかる表を作成する。また,選定項目についての選定理由及び重点化
等の理由並びに選定しなかった影響評価項目についてその理由又は根拠をとりまとめる。た
だし,間接的な影響を根拠として影響評価項目を選定する場合等においては,環境影響の関
連図を作成するなどにより選定根拠の内容を明確にする。
・抽出した影響要因及び環境要素について,影響の有無及び重大性について客観的かつ科学的に
検討し,環境影響評価の対象項目とするか否かを決定し,対象とする場合には影響検討の重要
度を区分する。この段階が,いわゆるスコーピングとよばれるものである。
<スコーピングのねらい>
・スコーピングとは,環境影響評価に係る調査を開始する際,住民等の意見を幅広く聞いて,具
体的な評価範囲を個別的に絞り込んでいく手続をさす。環境影響評価法では,方法書に係る手
続として導入された。
・スコーピングのねらいは,個々の事業において地域特性や事業特性に応じた適切な項目や手法
を選定することにより,メリハリの効いたオーダーメイドのアセスを行うことである。このこ
とは,市民にとってわかりやすい環境影響評価とする上で重要であるとともに,事業者にとっ
ては,限られた時間と経費の中で効率的なアセスを実施できることとなる。また,スコーピン
グプロセスを通じて,事業者自身がどの影響が重要であるかを十分認識し,事業計画策定過程
における環境への配慮が適切になされることが期待されるものである。
・従って,影響の可能性のあるものをすべて項目として選定するのではなく,明らかに軽微な影
響にとどまると想定されるものや,一般的な配慮で十分対応できるようなものについては,項
目からははずすことが重要である。これが,「影響の程度」を検討して選定するとしたところ
の意図である。なお,軽微な影響等であっても配慮を行うことは重要であるので,これらは「配
慮項目」として区分し,環境保全措置の中で,選定項目以外の環境配慮としてまとめて記載す
ること。
<標準的な項目例を参考としたインパクトマトリックスの作成>
・項目選定に当たっては,表3の環境影響要因と環境影響要素のマトリックス表を参考として,
インパクトマトリックスを作成し,項目選定及び重点化,簡略化項目の区分等を行う。
・表3において,事業種類ごとに標準項目を表示していないのは,項目選定が硬直化することを
防止し,事業者自らが個々の事業において検討することを促すためである。
・なお,代表的な事業種類について,標準的な項目選定例を示すが,あくまで例であることから,
事業特性,地域特性に応じた検討を行うこと。
-26-
<具体的な物質ごと,対象ごとのマトリックス>
・大気質,悪臭,水質,土壌汚染,地球温暖化物質等については,インパクトマトリックスにお
いて対象とする物質名等を具体的に明らかにし,物質ごとに検討する。表2及び表3では有害
物質としてまとめているものについても,具体的な物質名を記載すること。
・また,動植物の重要種,生態系の注目種等についても,できるだけ具体的に記載する。方法書
の段階で,貴重種等の存在の可能性について住民等から情報を得るためには,事業者がこの段
階で既存文献その他聞き取りや現地踏査により想定する貴重種等を明らかにしておく必要があ
る。なお,動植物の重要種は,主要なもののみ種名を示し,それ以外は,「その他重要種」と
いった記載でも差し支えない。
・また,動植物の重要種や生態系は,選定した種等に応じ想定される影響が異なるものであるこ
とから,個別に影響要因との関係を検討する必要がある。この場合,重要種等が多数にわたる
場合,全体のマトリックスとは別に,重要種のみのマトリックスを作成してもよい。
<影響の相互関係の補足>
・ある行為の環境への影響は,直接的なものもあれば間接的なものもあり,複雑な相互関係があ
る。間接影響や影響の相互関係については,インパクトマトリックスでは表現しきれない面も
あるため,必要に応じネットワーク図を作成したり,インパクトマトリックスに注記を加える
等の手法で補完すること。
<重点化,簡略化項目等の区分>
・選定した項目は,以下の重点化,簡略化等の区分を行う。
重要度の区分:①調査・予測・評価を詳細に行う項目
②調査・予測・評価を標準的に行う項目
③調査・予測・評価を簡略化して行う項目
④環境配慮で対応し,調査・予測・評価を行わない項目
・なお,④は一般的な環境配慮(保全対策)で対応し,調査・予測・評価を行わない項目である。
従って,事後調査の対象としても想定しない。一方で,例えば有害物質等を使用・保管するた
め項目として選定し,外部へ排出しないようにすることを保全方針とするような場合には,い
わゆる状態の予測は適当でなく,管理に係る保全対策の記述をもって予測に代えることとなる。
しかし,この場合は影響が軽微であるため環境配慮で対応するものとは異なり,事後調査の対
象とする必要があり,④とすることは適切ではない。すなわち,配慮をもって予測に代えるよ
うな場合であっても,配慮の内容を検討するにあたり現況の調査・解析や,配慮の効果等につ
いて事後の確認を要するような場合には,④には区分しないものとする。
<重点化,簡略化の条件>
・重点化,簡略化を行う場合の条件としては,以下のようなものが想定される。なお,これは相
対的なものであり,一般的に想定される取り上げ方より重点化又は簡略化することをさしてい
るにすぎず,以下に該当する場合必ず簡略化項目,あるいは重点化項目とするものではない。
(簡略化できる場合の例)
・環境への影響の程度が小さいと想定される場合
・影響を受ける地域又は対象が相当期間存在しないことが明らかな場合
・類似の事例により影響の程度が明らかな場合
・調査については,既存資料等により環境の状態が既に相当程度把握されている場合等
-27-
(重点化する場合の例)
・事業特性により同種の一般的事業に比べ影響要因が大きいと想定される場合
・環境影響を受けやすい地域又は対象が存在する場合(弱い)
・環境の保全の観点から法令等により指定されているなど保全上重要な地域又は対象が存在
する場合(大事)
・既に環境が著しく悪化している又はそのおそれが高い地域が存在する場合(悪い)等
・上記の条件のうち,重点化を要する「弱い」,「大事」,「悪い」については,以下のような
地域特性が想定される。
①
環境影響を受けやすい地域又は対象(弱い)
気象,水象等の自然的状況,土地利用等の社会的状況から,以下のような環境影響を受け
やすい地域又は対象が,現在又は将来において存在する場合。
・大気が滞留しやすい地形,湖沼等閉鎖性の高い水域等,汚染物質が滞留しやすい地域
・学校,病院,住居が集合している地域,水道原水の取水地点周辺等,人の健康の保護又は
生活環境の保全について特に配慮すべき地域又は対象
・原生的な自然の地域,湿地,岩壁等,人為影響に弱い自然環境
・崩壊その他の自然災害が生じやすい地形・地質の地域
②
環境保全上重要な地域又は対象(大事)
希少性その他学術的な観点から,あるいは地域住民にとって,その地域の環境がどのよう
な価値を持っているか,周辺地域と比較して価値の重要度はどうかを検討し,以下のような
保全上重要な地域又は対象が存在する又は存在する可能性が高い場合。
・希少性その他学術的な観点又は地域住民に親しまれている等の観点から重要な地形・地質,
動植物,景観,文化財,自然とのふれあいの場等
・重要な自然環境等の保全を目的として指定された地域等
③
既に環境が悪化している地域(悪い)
現在の大気質・水質等の状況,人口や産業,土地利用等の社会的状況から,以下のような
環境の悪化を現在既に生じている又は将来において生じる可能性がある場合。
・大気,水質,騒音,土壌汚染に係る環境基準を達成していない地域
・騒音規制法,振動規制法の要請限度を超過している道路沿道
・地盤沈下が生じている地域
・過去の土地利用等からみて土壌汚染の可能性のある地域
・その他人の健康の保護又は生活環境の保全上の問題が生じている地域
<項目選定結果のまとめ>
・項目選定や,重点化,簡略化について,その理由や根拠をできるだけ具体的かつ分かりやすく
示すことが重要である。特に,表3や事業別標準項目例に示した項目を選定しない場合,又は
簡略化して行う場合には,概略影響検討(影響の程度,範囲の概略検討)を行い,影響が軽微
である根拠を明確にすること。
-28-
■とりまとめ表のイメージ
選
環境要素
大気質
NO2
定
◎(重点化)
影響要因
理由・根拠
供 用 時 の 運 搬 及 び 通 短時間に相当数の自動車利用が集
勤の自動車交通
中する可能性有り。
周辺が住宅地であり,保全上の配慮
を要する。
粉じん
△(簡略化)
工事中の資材運搬等
―――――
による粉じんの発生
水質
BOD
選定しない(標 供 用 時 の 事 業 所 に 伴 発生する排水は生活排水のみであ
準項項目からの う生活排水の発生
り,公共下水道に接続するため。
簡略化)
<環境影響評価の実施過程における項目見直しの必要性>
・項目は方法書段階(あるいは,市民や市長意見を受けて見直しを行った段階)で固定されるの
ではなく,柔軟な対応が必要である。方法書段階で行うスコーピングは,あくまで既存資料等
に基づいたものであることから,実際には調査を実施していく中で,あるいは事業計画の熟度
が高まっていく中で,項目や手法を適宜見直していくことが必要である。
・特に,動植物や生態系については,調査の結果により,重要種や注目種を適宜見直し,追加調
査の実施その他適切な対応を行っていく必要がある。
2
調査,予測及び評価手法の検討
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 2 -2 〉
選定項目について,第3の2(調査の実施),3(予測の実施)及び5(評価の実施)の
内容並びに表4及び表5を参考として,調査,予測及び評価の手法を検討する。
表4及び表5はすべての事業に共通するものとして策定したものであるため,手法の検討
に当たっては,事業の特性,地域概況を踏まえ,影響評価項目の選定で行った重点化,簡略
化の区分に応じて適切な手法を検討する。
なお,表4及び表5に記載した手法と同等又はそれ以上の信頼性のある手法であればそれ
以外の手法を用いても差し支えない。
(1)調査手法の検討
調査手法は,以下の事項について検討する。
ア調査内容
イ調査方法
ウ調査地域及び調査地点
エ調査期間,時期,頻度等
(2)予測手法の検討
予測手法は,以下の事項について検討する。
ア予測内容
イ予測地域及び予測地点
ウ予測対象時期
エ予測方法
-29-
(3)評価手法の検討
評価手法は,以下の事項について検討する。
ア回避・低減を図る環境影響の内容又は観点
イ整合を図るべき環境の保全等の目標又は基準等
・選定した項目について,重点化,簡略化に応じ,具体的な調査,予測及び評価の手法を検討す
ることを求めている。
・例えば,重点化を行った場合には,調査の頻度,地点数,期間等を増やし精度を高める,予測
に精緻なモデルを使用するといったことが,簡略化した場合には,調査の頻度,地点,期間等
を減らしたり,影響の有無についての定性的な記述や一般的な保全対策により予測に代えるな
ど簡略な予測手法を用いる,といったことが考えられる。
<調査手法の検討について>
・調査内容についてはできるだけ具体的に示し,調査方法については調査すべき情報に対応して
記載すること。なお,既存資料を活用する場合は既存資料名を明らかにする。また,既存資料
や先行的な調査の結果を用いることとして新たな現地調査を実施しない場合には,既存調査等
の結果を資料として別途添付すること。
・調査地域,地点等については,地図上に示すこと。
・調査期間,時期,頻度等については,一般的には年数,季節又は年間の頻度,各調査期ごとの
日数等について示す。また,調査全体について実施する年月を調査工程表としてとりまとめる。
なお,この時点で具体的な調査地点,調査時期等について計画がたてられない場合には概略の
内容又は地点等選定の考え方について示すこと。
<予測手法の検討について>
・予測の手法については,手法により調査すべき情報が異なるものであることから,その時点で
想定している指標や予定するモデルを記載する。
・予測地域及び予測地点,予測対象時期等は,調査の結果や事業計画の進展に伴い変わっていく
ものであることから,この時点では基本的な考え方を示す程度で差し支えない。
<評価手法の検討について>
・評価の手法のうちアについては,「回避・低減による」といった記載ではなく,影響の回避・
低減を図る観点や対象を明らかにする。また,その際,今後環境影響評価の過程で検討する環
境保全対策の幅や検討方針についても,できるだけ明らかにする。(例えば,「敷地内の土地
利用計画について複数案を比較検討することなどにより,自然性の高い森林への影響の回避・
低減の観点から評価する。」等の表現。)
・また,イでは,整合をはかる必要のある環境基準や目標等の名称,数値等について記載する。
・環境項目ごとの手法の解説については,各論を参照のこと。
-30-
3
環境影響評価方法書の作成・提出
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 2 -3 〉
この時点における事業計画の内容,地域環境の概況,影響評価項目の選定結果,調査,予
測及び評価手法の検討結果を,環境影響評価方法書(以下「方法書」という。)としてとり
まとめ,事前調査書とともに市長に提出する。
-31-
表2
環境影響要素の区分の細目と予測・評価すべき環境影響の内容
環 境 影 響 要 素 の 区 分
環境の自然的構
成要素の良好な
状態の保持を旨
として調査,予
測及び評価され
るべき項目
大気環境
大気質
環 境 影 響 の 内 容
二酸化
窒素
自動車の走行,重機の稼働,施設の稼働等に伴う空気中の
二酸化窒素濃度の変化による影響
二酸化
硫黄
施設の稼働等に伴う空気中の二酸化硫黄濃度の変化による
影響
浮遊粒子
状物質
自動車の走行,施設の稼働等に伴う空気中の浮遊粒子状物
質濃度の変化による影響
粉じん
自動車の走行,重機の稼働,土地の造成に伴う空気中の粉
じんの濃度の変化による影響
有害物質
施設の稼働等に伴い空気中に排出される有害物質の濃度変
化による影響
また,工事又は供用時の有害物質の使用,保管,処分等に
際しての事故等非意図的な空気中への排出の可能性及びこ
れに対する対応措置
有害物質とは,環境基準設定項目,大気汚染防止法等によ
る規制物質,その他科学的知見等により人間又は自然環境
に対して影響を及ぼすとみられる物質をさす
その他大気質に係わる項目について,対象事業の実施に伴
い相当程度の変化又は影響が想定される場合,その(変化
に伴う)影響
その他
水環境
騒
音
工事,自動車の走行,鉄道又は飛行機の運行,施設の稼働
等に伴って発生する騒音による影響
振
動
工事,自動車の走行,鉄道の運行,施設の稼働に伴って発
生する振動による影響
低周波音
工事,自動車の走行,施設の稼働に伴って発生する低周波
音による影響
悪
臭
工事又は施設の稼働に際しての物質の燃焼,合成,分解,
その他に伴う臭気指数の変化による影響。また,悪臭防止
法の特定悪臭物質等悪臭原因物質の濃度変化による影響
その他
その他大気環境に係わる項目について,対象事業の実施に
伴い相当程度の変化又は影響が想定される場合,その(変
化に伴う)影響(例:ヒートアイランド現象等)
水
質
水の汚れ
施設の稼働,土地及び施設の利用,水の貯留等に伴う水の
汚れ(河川においてはBOD (生物化学的酸素要求量),海
域・湖沼においてはCOD (化学的酸素要求量))の変化に
よる影響
水の濁り
土地造成その他の工事,施設の稼働,水の貯留等に伴う水
の濁り(浮遊物質量)の変化による影響
富栄養化
施設の稼働,土地及び施設の利用等に伴う排水が閉鎖性水
域等に排水される場合,水の貯留等が行われる場合,汚水
の処理施設を設置する場合等における,全窒素,全燐を指
標とした富栄養化よる影響
溶存酸素
水の貯留が行われる場合等における,溶存酸素の変化によ
る影響
-32-
環 境 影 響 要 素 の 区 分
環境の自然的構
成要素の良好な
状態の保持を旨
として調査,予
測及び評価され
るべき項目
水環境
水
質
環 境 影 響 の 内 容
有害物質
水
温
その他
底
水質に係る環境基準の生活環境項目(ただし,上記のもの
を除く)について,施設の稼働,水の貯留,工事中のコン
クリートプラントの稼働等に伴い相当程度の変化が想定さ
れる場合,これによる影響
その他水質に係わる項目について,対象事業の実施に伴い
相当程度の変化又は影響が想定される場合,その(変化に
伴う)影響
工事又は施設の稼働に際して有害物質(底質の処理処分の
暫定指針項目その他の有害物質)を閉鎖性水域に排出する
場合,土壌又は底質が有害物質により汚染されているおそ
れがある場所の造成又はしゅんせつを行う場合,有害物質
を含むおそれのある土壌又は物質により埋立を行う場合等
における,底質の有害物質汚染による影響
質
地下水汚染
水
象
工事又は施設の稼働に際して使用,保管,処分等を行う有
害物質(地下水に係る環境基準項目その他の有害物質)に
よる地下水汚染の可能性及びこれに対する対応措置
水
源
水道水源域の土地の形状の変更(樹木の伐採を含む。),
工作物の存在,工事,施設の稼働等による水源水量や水質
等の変化による影響
河川流
・湖沼
土地の形状の変更(樹木の伐採を含む。)による透水性の
変化,施設の稼働による排水又は取水等に伴う河川流量,
湖沼水位等の変化による影響
地下水
・湧水
土地の形状の変更(樹木の伐採を含む。),工事,地下構
造物の存在,施設の稼働等に伴う地下水又は湧水の揚水,
排除,遮断等によって生じる地下水位の変化や湧水量の変
化による影響
海
埋立等の工事,工作物の存在,流入する河川流量の変化等
に伴う潮流,潮汐,波浪等海域の流況の変化による影響
域
水辺環境
その他
施設の稼働に伴い水中に排出される有害物質の濃度変化に
よる影響
また,工事又は供用時の有害物質の使用,保管,処分等に
際しての事故等非意図的な水中への排出の可能性及びこれ
に対する対応措置
有害物質とは,環境基準の健康項目,要監視項目,水質汚
濁防止法等による規制物質,農薬その他科学的知見等によ
り人間又は自然環境に対する影響があるとされる物質のう
ち,当該事業により使用,保管,処分,生成,排出等が想
定されるもの
施設の稼働等による排水,取水等大幅な流量変化等に伴う
水温の変化による影響
土地の形状の変更,取水,湛水等に伴う河川,湖沼,海岸
の水辺地の形態及び自然性の変化等による影響
その他水環境に係わる項目について,対象事業の実施に伴
い相当程度の変化が想定される場合,これによる影響
-33-
環 境 影 響 要 素 の 区 分
環境の自然的構
成要素の良好な
状態の保持を旨
として調査,予
測及び評価され
るべき項目
土壌環境
その他の
環境
地形
・地質
環 境 影 響 の 内 容
現況地形
土地の形状の変更に伴う現況地形の変化による影響
注目すべ
き地形
土地の形状の変更,工作物の存在,水象の変化等に伴って
生じる,典型性,学術性,希少性等より注目すべき地形・
地質・自然現象への影響
土地の
安定性
土地の形状の変更(樹木の伐採を含む,工事中の一時的な
状態を含む。),水象の変化等に伴う斜面崩壊その他土地
災害の危険性の変化による影響
地盤沈下
工事,地下構造物の存在,施設の稼働等に伴う地下水の揚
水,排除,遮断等によって生じる地下水位の低下による地
盤沈下による影響
軟弱地盤上の構造物その他の存在による地盤の圧密による
影響
土壌汚染
工事又は施設の稼働に際して使用,保管,処分等を行う有
害物質(土壌汚染に係る環境基準項目その他の有害物質)
による土壌汚染の可能性及びこれに対する対応措置
また,有害物質を含むおそれのある土地の改変工事,残土
の処分等に伴う影響
その他
その他土壌環境に係わる項目について,対象事業の実施に
伴い相当程度の変化が想定される場合,これによる影響
電波障害
工作物の存在,鉄道や航空機の運行等に伴って生じるテレ
ビ電波受信の障害による影響
日照阻害
土地の形状の変更,工作物の存在等に伴う日照(日影)の
変化による影響
風
害
高層建築物等工作物の存在に伴う局所的な強風の発生によ
る影響
その他
上記以外のその他の環境に係わる項目について,対象事業
の実施に伴い相当程度の変化が想定される場合,これによ
る影響(例:光害等)
-34-
環 境 影 響 要 素 の 区 分
生物の多様性の
確保及び自然環
境の体系的保全
を旨として調査
,予測及び評価
されるべき項目
植
物
環 境 影 響 の 内 容
植物相
及び注目
すべき種
植生及び
注目すべ
き群落
樹木・
樹林等
動
物
森林等の
環境保全
機能
土地の形状の変更(樹木の伐採を含む。)による森林等の
植生が有する水源涵養や洪水防止,土砂災害防止等の環境
保全機能の変化による影響
動物相
及び注目
すべき種
土地の形状の変更(樹木の伐採を含む。),湛水等による
陸生及び水生の動物相(ファウナ)変化の可能性
希少性,学術性,地域住民の生活との関わり等の観点から
注目すべき種に対する土地の形状の変更(樹木の伐採を含
む。),湛水等による生息地の直接的改変による影響。ま
た,土地の形状の変更,工作物の存在,水象の変化,工事
や施設の稼働・利用による騒音等に伴って生じる生息環境
の変化による注目種への影響
干潟,湖沼や湿地等,動物群集の生息地として重要な場所
に対する土地の形状の変更(樹木の伐採を含む。),湛水
等による直接的影響。また,土地の形状の変更,工作物の
存在,水象の変化,工事や施設の稼働・利用による騒音等
に伴う注目すべき生息地(動物群集)への影響
注目すべ
き生息地
生態系
土地の形状の変更(樹木の伐採を含む。),湛水等による
陸生及び水生の植物相(フロラ)変化の可能性
希少性,学術性,地域住民の生活との関わり等の観点から
注目すべき種に対する土地の形状の変更(樹木の伐採を含
む。),湛水等による直接的影響。また,土地の形状の変
更,工作物の存在,水象の変化等に伴って生じる生育環境
の変化による注目すべき種への影響
土地の形状の変更(樹木の伐採を含む。),湛水等による
植生の変化による影響
自然性,希少性,学術性,地域住民の生活との関わり等の
観点から注目すべき群落に対する土地の形状の変更(樹木
の伐採を含む。),湛水等による直接的影響。また,土地
の形状の変更,工作物の存在,水象の変化等に伴って生じ
る生育環境の変化による注目群落への影響
土地の形状の変更(樹木の伐採を含む。)による都市内の
緑の観点から重要な大径木や樹林,屋敷林等に対する直接
的影響
また,土地の形状の変更(樹木の伐採を含む。)に伴う周
辺地域の緑の量(緑被率等)や視覚的な緑の量(緑視率等
)の変化による影響
地域を特
徴づける
生態系
当該地域を特徴づける生態系について,土地の形状の変更
(樹木の伐採を含む。),湛水,工作物の存在,水象の変
化等に伴う生息・生育環境及び生物相互の関係への直接的
,間接的影響
-35-
環境影響要素の区分
人と自然との豊
かな触れ合いの
確保及び歴史的
,文化的所産へ
の配慮を旨とし
て調査,予測及
び評価されるべ
き項目
環境への負荷の
少ない持続的な
発展が可能な都
市の構築及び地
球環境保全への
貢献を旨として
予測及び評価さ
れるべき項目
景
観
環 境 影 響 の 内 容
自然的
景観資源
土地の形状の変更(樹木の伐採,既存工作物の撤去含む)
に伴う自然的景観資源(山,海岸,河川,湖沼,樹林等の
自然物)の消失又は改変による影響。また,土地の形状の
変更,工作物の存在,土地又は施設の利用等に伴う自然的
景観資源の周辺の環境変化による影響
文化的
景観資源
土地の形状の変更(樹木の伐採,既存工作物の撤去含む)
に伴う文化的景観資源(歴史的文化遺産,まちなみ,ラン
ドマークとなる工作物等の土地と一体となった人工物の
他,祭り,伝統芸能等の場等を含む。)の消失又は改変に
よる影響
また,土地の形状の変更,工作物の存在,土地又は施設の
利用等に伴う文化的景観資源の周辺の環境変化による影響
眺
土地の形状の変更,工作物の存在等に伴う不特定多数の人
が利用する眺望の変化(景観資源の眺望の阻害含む)によ
る影響
望
自然との
触れ合いの場
自然との
触れ合い
の場
市民の自然との触れ合いの場として日常的及び非日常的に
利用されている自然に対する,土地の形状の変更(樹木の
伐採を含む。),湛水等による直接的影響。
また,工事,施設の存在等による利用現況,アクセス等へ
の影響
文化財
指定文化
財等
指定文化財又はこれに準じる歴史的資源に対する,土地の
形状の変更(樹木の伐採を含む。)等による直接的影響。
また,工事,施設の存在等による文化財等周辺の雰囲気そ
の他の間接影響
廃棄物等
廃棄物
工事中及び施設の供用に伴う廃棄物の発生による影響(発
生量の抑制,物質の循環利用,適正処理)
残
土
土地の形状の変更に伴って発生する残土による影響(発生
量の抑制,適正処理)
水利用
施設の供用に伴う水の使用量(水の使用量抑制,雨水・処
理水等の有効利用)
その他
その他資源の利用及び廃棄に係わる項目について,対象事
業の実施に伴い相当程度の発生量,使用量等が想定される
場合,その発生量,使用量(抑制措置や有効利用)等
二酸化
炭素
施設の供用に伴う二酸化炭素発生量(発生量の抑制)
その他の
温室効果
ガス
メタン,亜酸化窒素,代替フロン等二酸化炭素以外の温室
効果ガスの使用量,排出量(使用量,排出量の抑制)等
オゾン層
破壊物質
工事中及び施設の供用に伴うフロン等オゾン層破壊物質の
使用量,排出量(使用量,排出量の抑制)
熱帯材
使用
工事中及び施設の供用に伴う熱帯材の使用量(使用量の抑
制や有効利用等)
その他
その他の地球環境への負荷に係わる項目について,対象事
業の実施に伴い相当程度の発生量,使用量等が想定される
場合,その発生量,使用量(抑制措置や有効利用)等
温室効果ガス等
-36-
表3 環境影響要因と環境影響要素のマトリクス表
工事による影響 存在による影響
環境影響要因の区分
環境影響要素の区分
環境の自然的構成要素の良 大気環境
好な状態の保持を旨として
調査、予測及び評価される
べき項目
水環境
生物の多様性の確保及び自
然環境の体系的保全を旨と
して調査、予測及び評価さ
れるべき項目
人と自然との豊かな触れ合
いの確保及び歴史的、文化
的所産への配慮を旨として
調査、予測及び評価される
べき項目
環境への負荷の少ない持続
的な発展が可能な都市の構
築及び地球環境保全への貢
献を旨として予測及び評価
されるべき項目
大気質
騒音
振動
低周波音
悪臭
その他
水質
資
材
等
の
運
搬
重
機
の
稼
動
切
土
・
盛
土
・
発
破
・
掘
削
等
建
築
物
等
の
建
築
供用による影響
工 そ 改 樹 改 工 そ 自 施 人 有 農 資 そ
事 の 変 木 変 作 の 動 設 の 害 薬 材 の
に 他 後 伐 後 物 他 車 の 居 物 ・ ・ 他
・ 稼 住 質 肥 製
の 採 の 等
伴
鉄 働 ・ の 料 品
地 後 河 の
う
道
利 使 の ・
形 の 川 出
排
状 ・ 現
等
用 用 使 人
水
態 湖
の
用 等
走
の
沼
行
運
搬
・
輸
送
二酸化窒素
二酸化硫黄
浮遊粒子状物質
粉じん
有害物質
その他
騒音
振動
低周波音
悪臭
水の汚れ
水の濁り
富栄養化
溶存酸素
有害物質
水温
その他
底質
底質
地下水汚染 地下水汚染
水象
水源
河川流・湖沼
地下水・湧水
海域
水辺環境
その他
土壌環境 地形・地質 現況地形
注目すべき地形
土地の安定性
地盤沈下
地盤沈下
土壌汚染
土壌汚染
その他
電波障害
その他の 電波障害
環境
日照阻害
日照阻害
風害
風害
その他
植物
植物相及び注目すべき種
植生及び注目すべき群落
樹木・樹林等
森林等の環境保全機能
動物
動物相及び注目すべき種
注目すべき生息地
生態系
地域を特徴づける生態系
自然的景観資源
景観
文化的景観資源
眺望
自然との触れ合いの場 自然との触れ合いの場
指定文化財等
文化財
廃棄物等
廃棄物
残土
水利用
その他
二酸化炭素
温室効果ガス等
その他の温室効果ガス
オゾン層破壊物質
熱帯材使用
その他
選定項目に○をつける。(ただし、重点化項目には◎、簡略化項目には△、配慮項目には※をつける。)
大気質(有害物質、その他)、悪臭、水質(有害物質、その他)、底質、地下水汚染、土壌汚染、その他については、具体的な
物質名等を記載すること。また、植物、動物、生態系についてもできるだけ具体的な種名等を明らかにすること。
-37-
影響のネットワーク図の例
凡例
工事による影響要
二酸化窒素
自然との
触れ合い
の場
動物
騒
音
振
動
粉じん
植物
:影響要因
資材の運搬(工
事車両の走行)
:影響評価項目
重機の稼働
切土・盛土・
掘削等
発
残 土
既存建物解体等
破
低周波音
樹木伐採
工作物の工事
水の濁り
地下水・湧水
地下掘削
水素イオン濃度
コンクリート工
水の汚れ
廃棄物
工事に伴う
排水(汚水)
存在による影響要因
改変後の地形
河川流・
湖沼
雨水流
出の変
化
地下水
脈分断
土地の安定性
植物相・
注目種
樹木伐採後の
状態
植生・
注目群落
水源
地下水・
湧水
注目地形
現況地形
生態系
動物相・
注目種
改変後の
河川・湖沼
移動の阻害
水辺環境
工作物の出現
景観資源
自然との触れ合いの場
眺
望
供用による影響要因
二酸化炭素
二酸化窒素
自動車の走行
その他大気汚染物質
列車の走行
省エネ、自然
エネルギー利用
廃棄物
資源の
有効利用
水使用
雨水利用、
水の有効利用
騒 音
施設の稼働
動物
生態系
人の居住・利用
振 動
有害物質の使用
悪 臭
農薬・肥料の
使用
水の汚れ、そ
の他水質汚
濁物質
植物
自然との触
れ合いの場
地下水汚染
資材・製品・人
等の運搬・輸送
(車の走行)
意図的・
非意図的排出
-38-
土壌汚染
■事業種別標準項目例 ( 道路 )
工事による影響
工
事
に
伴
う
排
水
存在による影響
供用による影響
そ改 樹改
そ自施 人有農資 そ
工
の変 木変
の動設 の害薬材 の
作
他車の 居物・・ 他
他後 伐後
物
・稼 住質肥製
の 採の
等
工地 後河
鉄働 ・の料品
事形 の川
道
利使の・
ヤ
等
状・
用用使人
態湖地高ト
の
用等
ド
休
沼上架ン
走
の
式式ネ
等
憩
行
運
ル
設
所
搬
置
の
・
工
利
輸
事
用
送
)
)
)
環境の自然的構成要素の良 大気環境
好な状態の保持を旨として
調査、予測及び評価される
べき項目
水環境
大気質
騒音
振動
低周波音
悪臭
その他
水質
二酸化窒素
二酸化硫黄
浮遊粒子状物質
粉じん
有害物質
その他(炭化水素類等)
騒音
振動
低周波音
悪臭
水の汚れ
水の濁り
富栄養化
溶存酸素
有害物質
水温
その他
底質
底質
地下水汚染 地下水汚染
水象
水源
河川流・湖沼
地下水・湧水
海域
水辺環境
その他
土壌環境 地形・地質 現況地形
注目すべき地形
土地の安定性
地盤沈下
地盤沈下
土壌汚染
土壌汚染
その他
電波障害
その他の 電波障害
環境
日照阻害
日照阻害
風害
風害
その他
植物相及び注目すべき種
生物の多様性の確保及び自 植物
然環境の体系的保全を旨と
植生及び注目すべき群落
して調査、予測及び評価さ
樹木・樹林等
れるべき項目
森林等の環境保全機能
動物
動物相及び注目すべき種
注目すべき生息地
生態系
地域を特徴づける生態系
人と自然との豊かな触れ合 景観
自然的景観資源
いの確保及び歴史的、文化
文化的景観資源
的所産への配慮を旨として
眺望
調査、予測及び評価される 自然との触れ合いの場 自然との触れ合いの場
べき項目
指定文化財等
文化財
廃棄物
環境への負荷の少ない持続 廃棄物等
残土
的な発展が可能な都市の構
築及び地球環境保全への貢
水利用
献を旨として予測及び評価
その他
されるべき項目
二酸化炭素
温室効果ガス等
その他の温室効果ガス
オゾン層破壊物質
熱帯材使用
その他
○一般項目 ◎重点化項目 △簡略化項目 ※配慮項目
☆:地域特性又は事業特性により選定されるべき項目
-39-
)
)
)
ト
ン
ネ
ル
掘
削
(
建
築
物
等
の
建
築
ー
(
環境影響要素の区分
切
土
・
盛
土
・
発
破
・
掘
削
等
(
(
(
重
機
の
稼
動
(
環境影響要因の区分
資
材
等
の
運
搬
○ ○
○
○
※ ☆ △
☆
◎
○
☆
○ ○
○ ○
☆
○
☆
☆
○
☆
○
○
☆
☆
☆
○
※
※
○
○
☆
○
○
※
※
※
※
○
※
○
○
○
○
○
○
○
○
○ ※
○
※
※
○
○
○
○
○
○
○ ○
○ ○
※ ※
○
☆
☆
☆
☆
※
☆
※
☆
※
■事業種別標準項目例 ( 廃棄物最終処分場 )
工事による影響 存在による影響
環境影響要因の区分
資
材
等
の
運
搬
重
機
の
稼
動
環境影響要素の区分
環境の自然的構成要素の
良好な状態の保持を旨と
して調査、予測及び評価
されるべき項目
大気環境
水環境
生物の多様性の確保及び
自然環境の体系的保全を
旨として調査、予測及び
評価されるべき項目
人と自然との豊かな触れ
合いの確保及び歴史的、
文化的所産への配慮を旨
として調査、予測及び評
価されるべき項目
環境への負荷の少ない持
続的な発展が可能な都市
の構築及び地球環境保全
への貢献を旨として予測
及び評価されるべき項目
大気質
騒音
振動
低周波音
悪臭
その他
水質
二酸化窒素
二酸化硫黄
浮遊粒子状物質
粉じん
有害物質
その他
騒音
振動
低周波音
悪臭
水の汚れ
水の濁り
富栄養化
溶存酸素
有害物質
水温
その他
底質
底質
地下水汚染 地下水汚染
水象
水源
河川流・湖沼
地下水・湧水
海域
水辺環境
その他
土壌環境 地形・地質 現況地形
注目すべき地形
土地の安定性
地盤沈下
地盤沈下
土壌汚染
土壌汚染
その他
その他の 電波障害
電波障害
環境
日照阻害
日照阻害
風害
風害
その他
植物
植物相及び注目すべき種
植生及び注目すべき群落
樹木・樹林等
森林等の環境保全機能
動物
動物相及び注目すべき種
注目すべき生息地
生態系
地域を特徴づける生態系
景観
自然的景観資源
文化的景観資源
眺望
自然との触れ合いの場 自然との触れ合いの場
文化財
指定文化財等
廃棄物等
廃棄物
残土
水利用
その他
二酸化炭素
温室効果ガス等
その他の温室効果ガス
オゾン層破壊物質
熱帯材使用
その他
○一般項目 ◎重点化項目 △簡略化項目 ※配慮項目
☆:地城特性又は事業特性により選定されるべき項目
注)その他の温室効果ガスについてはメタン
-40-
切
土
・
盛
土
・
発
破
・
掘
削
等
建
築
物
等
の
建
築
供用による影響
工 そ 改 樹 改 工 そ 自 施 人 有 農 資 そ
事 の 変 木 変 作 の 動 設 の 害 薬 材 の
に 他 後 伐 後 物 他 車 の 居 物 ・ ・ 他
・ 稼 住 質 肥 製
伴
の 採 の 等
鉄 働 ・ の 料 品
う
地 後 河 の
利 使 の ・
道
排
形 の 川 出
用 用 使 人
等
水
状 ・ 現
用 等
の
態 湖
の
走
沼
運
行
搬
・
輸
送
○ ○
※
○
△
○ ○
○ ○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
◎
○
◎
○
○
☆
○
☆
☆
○
○
○
○
○
※
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
※
○
■事業種別標準項目例 ( スポーツ施設・レクリエーション施設 )
工事による影響 存在による影響
環境影響要因の区分
資
材
等
の
運
搬
重
機
の
稼
動
環境影響要素の区分
環境の自然的構成要素の良 大気環境
好な状態の保持を旨として
調査、予測及び評価される
べき項目
水環境
大気質
騒音
振動
低周波音
悪臭
その他
水質
二酸化窒素
二酸化硫黄
浮遊粒子状物質
粉じん
有害物質
その他
騒音
振動
低周波音
悪臭
水の汚れ
水の濁り
富栄養化
溶存酸素
有害物質
水温
その他
底質
底質
地下水汚染 地下水汚染
水象
水源
河川流・湖沼
地下水・湧水
海域
水辺環境
その他
土壌環境 地形・地質 現況地形
注目すべき地形
土地の安定性
地盤沈下
地盤沈下
土壌汚染
土壌汚染
その他
電波障害
その他の 電波障害
環境
日照阻害
日照阻害
風害
風害
その他
植物相及び注目すべき種
生物の多様性の確保及び自 植物
然環境の体系的保全を旨と
植生及び注目すべき群落
して調査、予測及び評価さ
樹木・樹林等
れるべき項目
森林等の環境保全機能
動物
動物相及び注目すべき種
注目すべき生息地
生態系
地域を特徴づける生態系
自然的景観資源
人と自然との豊かな触れ合 景観
いの確保及び歴史的、文化
文化的景観資源
的所産への配慮を旨として
眺望
調査、予測及び評価される 自然との触れ合いの場 自然との触れ合いの場
べき項目
指定文化財等
文化財
廃棄物
環境への負荷の少ない持続 廃棄物等
残土
的な発展が可能な都市の構
築及び地球環境保全への貢
水利用
献を旨として予測及び評価
その他
されるべき項目
温室効果ガス等
二酸化炭素
その他の温室効果ガス
オゾン層破壊物質
熱帯材使用
その他
○一般項目 ◎重点化項目 △簡略化項目 ※配慮項目
☆:地域特性又は事業特性により選定されるべき項目
-41-
切
土
・
盛
土
・
発
破
・
掘
削
等
建
築
物
等
の
建
築
供用による影響
工 そ 改 樹 改 工 そ 自 施 人 有 農 資 そ
事 の 変 木 変 作 の 動 設 の 害 薬 材 の
に 他 後 伐 後 物 他 車 の 居 物 ・ ・ 他
・ 稼 住 質 肥 製
の 採 の 等
伴
鉄 働 ・ の 料 品
地 後 河 の
う
道
利 使 の ・
形 の 川 出
排
等
用 用 使 人
状 ・ 現
水
の
用 等
態 湖
走
の
沼
行
運
搬
・
輸
送
○ ○
※
○
△
○ ○
○ ○
○ ○
○ ○
○
○
○
○
☆
☆
☆
☆
○
☆
☆
○
○
☆
☆
☆
○
○
☆
☆
○
○
○
○
※
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○ ○
○ ○
○ ○
☆
☆
☆
○ ○
○
○
○
※
○
■事業種別標準項目例 ( 土地区画整理事業 )
工事による影響 存在による影響
環境影響要因の区分
資
材
等
の
運
搬
重
機
の
稼
動
環境影響要素の区分
環境の自然的構成要素の良 大気環境
好な状態の保持を旨として
調査、予測及び評価される
べき項目
水環境
大気質
騒音
振動
低周波音
悪臭
その他
水質
二酸化窒素
二酸化硫黄
浮遊粒子状物質
粉じん
有害物質
その他
騒音
振動
低周波音
悪臭
水の汚れ
水の濁り
富栄養化
溶存酸素
有害物質
水温
その他
底質
底質
地下水汚染 地下水汚染
水象
水源
河川流・湖沼
地下水・湧水
海域
水辺環境
その他
土壌環境 地形・地質 現況地形
注目すべき地形
土地の安定性
地盤沈下
地盤沈下
土壌汚染
土壌汚染
その他
その他の 電波障害
電波障害
環境
日照阻害
日照阻害
風害
風害
その他
生物の多様性の確保及び自 植物
植物相及び注目すべき種
然環境の体系的保全を旨と
植生及び注目すべき群落
して調査、予測及び評価さ
樹木・樹林等
れるべき項目
森林等の環境保全機能
動物
動物相及び注目すべき種
注目すべき生息地
生態系
地域を特徴づける生態系
人と自然との豊かな触れ合 景観
自然的景観資源
いの確保及び歴史的、文化
文化的景観資源
的所産への配慮を旨として
眺望
調査、予測及び評価される 自然との触れ合いの場 自然との触れ合いの場
べき項目
文化財
指定文化財等
廃棄物
環境への負荷の少ない持続 廃棄物等
的な発展が可能な都市の構
残土
築及び地球環境保全への貢
水利用
献を旨として予測及び評価
その他
されるべき項目
温室効果ガス等
二酸化炭素
その他の温室効果ガス
オゾン層破壊物質
熱帯材使用
その他
○一般項目 ◎重点化項目 △簡略化項目 ※配慮項目
☆:地域特性又は事業特性により選定されるべき項目
-42-
切
土
・
盛
土
・
発
破
・
掘
削
等
建
築
物
等
の
建
築
供用による影響
工 そ 改 樹 改 工 そ 自 施 人 有 農 資 そ
事 の 変 木 変 作 の 動 設 の 害 薬 材 の
に 他 後 伐 後 物 他 車 の 居 物 ・ ・ 他
伴
の 採 の 等
・ 稼 住 質 肥 製
う
地 後 河 の
鉄 働 ・ の 料 品
排
形 の 川 出
利 使 の ・
道
水
用 用 使 人
等
状 ・ 現
用 等
の
態 湖
沼
の
走
運
行
搬
・
輸
送
○ ○
○
※ ☆ △
○ ○
○ ○
○
○
☆
○
○
○
○
○
☆
☆
○
☆
☆
☆
○
☆
☆
☆
○
○
○
△
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
※
○
○
○
○
○
○
※
○
■事業種別標準項目例 ( 学校用地の造成 )
工事による影響 存在による影響
重
機
の
稼
動
環境影響要素の区分
切
土
・
盛
土
・
発
破
・
掘
削
等
建
築
物
等
の
建
築
供用による影響
工 そ改 樹 改 工 そ自 施 人 有農 資 そ
事 の変 木 変 作 の動 設 の 害薬 材 の
に 他後 伐 後 物 他車 の 居 物・ ・ 他
・ 稼 住 質肥 製
伴
の 採 の 等
鉄 働 ・ の料 品 利
う
地 後 河 の
道
排
形 の 川 出
利 使の ・ 用
等
水
状 ・ 現
用 用使 人 者
の
用 等 の
態 湖
走
沼
の 自
行
運 動
搬 車
・ 交
輸 通
送
(
環境影響要因の区分
資
材
等
の
運
搬
)
環境の自然的構成要素の良 大気環境
好な状態の保持を旨として
調査、予測及び評価される
べき項目
水環境
大気質
騒音
振動
低周波音
悪臭
その他
水質
二酸化窒素
二酸化硫黄
浮遊粒子状物質
粉じん
有害物質
その他
騒音
振動
低周波音
悪臭
水の汚れ
水の濁り
富栄養化
溶存酸素
有害物質
水温
その他
底質
底質
地下水汚染 地下水汚染
水象
水源
河川流・湖沼
地下水・湧水
海域
水辺環境
その他
土壌環境 地形・地質 現況地形
注目すべき地形
土地の安定性
地盤沈下
地盤沈下
土壌汚染
土壌汚染
その他
電波障害
その他の 電波障害
環境
日照阻害
日照阻害
風害
風害
その他
植物相及び注目すべき種
生物の多様性の確保及び自 植物
然環境の体系的保全を旨と
植生及び注目すべき群落
して調査、予測及び評価さ
樹木・樹林等
れるべき項目
森林等の環境保全機能
動物
動物相及び注目すべき種
注目すべき生息地
生態系
地域を特徴づける生態系
自然的景観資源
人と自然との豊かな触れ合 景観
いの確保及び歴史的、文化
文化的景観資源
的所産への配慮を旨として
眺望
調査、予測及び評価される 自然との触れ合いの場 自然との触れ合いの場
べき項目
指定文化財等
文化財
廃棄物
環境への負荷の少ない持続 廃棄物等
的な発展が可能な都市の構
残土
築及び地球環境保全への貢
水利用
献を旨として予測及び評価
その他
されるべき項目
二酸化炭素
温室効果ガス等
その他の温室効果ガス
オゾン層破壊物質
熱帯材使用
その他
○一般項目 ◎重点化項目 △簡略化項目 ※配慮項目
☆:地域特性又は事業特性により選定されるべき項目
-43-
○ ○
☆
※ ☆ △
☆
○ ○
○ ○
☆
☆
○
○
☆
☆
○
☆
○
○
○
☆
☆
○
☆
○
○
○
○
※
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
※
☆
■事業種別標準項目例 ( 鉄道・軌道 )
工事による影響
存在による影響
供用による影響
工
そ自施 人有農資 そ
そ改 樹改
作
の動設 の害薬材 の
の変 木変
物
他車の 居物・・ 他
他後 伐後
等
・稼 住質肥製
の 採の
工地 後河
鉄働 ・の料品 利
事形 の川
利使の・ 用
道
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状・
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態湖地高地
の
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ド
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沼上架下
式式式
等
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行
運 自
設
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工
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(
工
事
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水
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)
)
)
)
地
下
掘
削
(
建
築
物
等
の
建
築
ー
(
環境影響要素の区分
切
土
・
盛
土
・
発
破
・
掘
削
等
(
(
(
重
機
の
稼
動
(
環境影響要因の区分
資
材
等
の
運
搬
)
)
)
)
環境の自然的構成要素の良 大気環境
好な状態の保持を旨として
調査、予測及び評価される
べき項目
水環境
大気質
騒音
振動
低周波音
悪臭
その他
水質
二酸化窒素
二酸化硫黄
浮遊粒子状物質
粉じん
有害物質
その他
騒音
振動
低周波音
悪臭
水の汚れ
水の濁り
富栄養化
溶存酸素
有害物質
水温
その他
底質
底質
地下水汚染 地下水汚染
水象
水源
河川流・湖沼
地下水・湧水
海域
水辺環境
その他
土壌環境 地形・地質 現況地形
注目すべき地形
土地の安定性
地盤沈下
地盤沈下
土壌汚染
土壌汚染
その他
電波障害
その他の 電波障害
環境
日照阻害
日照阻害
風害
風害
その他
植物相及び注目すべき種
生物の多様性の確保及び自 植物
然環境の体系的保全を旨と
植生及び注目すべき群落
して調査、予測及び評価さ
樹木・樹林等
れるべき項目
森林等の環境保全機能
動物
動物相及び注目すべき種
注目すべき生息地
生態系
地域を特徴づける生態系
自然的景観資源
人と自然との豊かな触れ合 景観
いの確保及び歴史的、文化
文化的景観資源
的所産への配慮を旨として
眺望
調査、予測及び評価される 自然との触れ合いの場 自然との触れ合いの場
べき項目
指定文化財等
文化財
廃棄物
環境への負荷の少ない持続 廃棄物等
的な発展が可能な都市の構
残土
築及び地球環境保全への貢
水利用
献を旨として予測及び評価
その他
されるべき項目
温室効果ガス等
二酸化炭素
その他の温室効果ガス
オゾン層破壊物質
熱帯材使用
その他
○一般項目 ◎重点化項目 △簡略化項目 ※配慮項目
☆:地域特性又は事業特性により選定されるべき項目
-44-
○ ○
☆
※ ☆ △
○ ○
○ ○
○
○
☆
☆
☆
○
☆
○
☆
○
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☆
☆
☆
☆
☆
○
○
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○
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○
○
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○
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○
☆
☆
○
○
○
○
○
○
○ ○
○ ○
※ ※
○
☆
☆
△
△
※
☆
第3 環境影響評価準備書作成に係る手順
1
選定項目並びに調査,予測及び評価手法の見直し,決定
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -1 〉
方法書に対する住民意見及び市長意見に基づき選定項目並びに調査,予測及び評価手法の
見直しを行う。
なお,調査,予測及び評価の手法は,その後の調査等の結果及び事業計画の検討状況に応
じ,適宜見直すものとする。また,植物,動物における注目すべき種等についても,調査等
の結果に応じ適宜見直すものとする。
・この段階で,環境影響評価の実施方法を一応確定する。ただし,項目並びに調査,予測及び評
価の手法はこの段階で固定されるものではなく,調査の進行,事業計画の具体化に応じ,適宜
見直しを行う必要があることを示している。
・特に,植物,動物等の自然環境に係る項目は,調査の実施に伴い,注目すべき対象等が明確に
なっていくものであることから,その結果に応じ,追加調査を実施していくこととなる。
・ なお,これ以降に調査を開始するのが通常の手順であるが,方法書作成のための資料が十分で
ない場合や,事業予定によっては,市長意見その他による変更の可能性を考慮の上で,予め
調査を開始しても差し支えない。
・
2
調査の実施
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -2 〉
選定項目について,適切に予測,評価を行う上で必要な情報を得るため,選定項目の特性
事業の特性及び地域環境の特性を踏まえ,表4を参考として適切な調査手法を設定し,調査
を実施する。
・調査は,予測,評価に必要な情報を得るためのものであることを明記したものであり,影響評
価を行わない項目について単に現状把握のための調査を実施するといったことは不要であるこ
とを示している。
(1)調査内容
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -2 -⑴ 〉
調査内容は,選定項目に係る環境要素の状態並びにこれに関連する自然環境及び社会環境
の状況のうち,予測に必要な事項とする。
・調査すべき情報は,どのような予測手法をとるかによって異なる。従って,予定する予測の方
法に応じた調査を計画することが重要である。特に,予測モデルを用いる場合には,どのモデ
ルを使用するかにより必要となる情報が異なる。
・しかしながら,例えば動植物等の予測では,まずどのような動植物が生息・生育しているかを
調査し,その結果により予測を行う対象に応じたさらに詳細な調査を実施する必要がある。ま
た,前述の予測モデルについても,ある程度現状が把握できていないと決められない場合もあ
る。このようなことから,調査は基本的に現状を把握するための調査と,予測や保全対策検討
-45-
に必要ナ詳細な調査にわかれることが多いことに留意する必要がある。
(予測や保全対策に必要な詳細調査の例)
○公害事象等
・既に汚染等がみられる場合,その原因や汚染等の広がりを把握するための調査
・モデル構築及び現状再現性確認に必要な発生源情報,各種パラメータ等の調査(使用
するモデルに応じて調査すべき内容が異なる)等
○自然環境等
・予測対象とする種の個体数や行動圏等の詳細な調査
・予測対象とする種の生育・生息地の環境条件,同様の環境条件の広がり等(例えば,
営巣可能木の分布調査,生育・生息可能地調査等)
・代償措置を検討するような場合には,損なわれる場所と,代償措置を実施する場所の
詳細な環境調査等
・なお,方法書の段階では,予測等に要する詳細な調査の内容については決められない可能性も
高い。そのような場合,まずどのような調査を実施するのかを明らかにし,その結果からどのよ
うな場合にどのような詳細調査を予定するのかを明らかにしておく。
(2)調査方法
〈技 術 指 針 第 2 章 第 3 - 2 - ⑵ 〉
既存文献,専門家や地域住民からの聞き取り,現地調査により必要な情報を収集し,これ
らを整理,解析することによる。
調査又は測定の方法は,科学的知見等を踏まえ,信頼性の高い適切な方法によるものとし
法令等により調査又は測定の方法が定められている場合には,これを踏まえて実施する。
なお,既存文献の利用に当たっては,情報の信頼性,精度その他について十分な検討を行
うこととする。
・調査の基本的方法については,現地調査を実施することを原則とする。ただし,環境とは長期
的な状況の把握が重要な場合が多いことから,文献・資料や聞き取りの結果等を十分分析し,
現地調査結果の位置づけを行うことが重要である。なお,気象,水象等長期的な連続測定が必
要なものについては,基本的に既存資料を活用することとする。
・専門家や地域住民からの聞き取りは,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ合いの場,文
化財等の項目では非常に重要である。これは,自然環境については環境影響評価の調査で一般
的な1年程度の調査では十分な情報が得られない可能性が高いとともに,これらの注目すべき
対象の抽出等に当たっては専門家や地域住民の意見等を踏まえることが不可欠であるためであ
る。とりわけ景観及び自然との触れ合いの場は,自然環境に対する人の意識や感覚に基づくも
のであり,地域住民や利用者等の行動や意見に関する調査が必要である。
・調査又は測定の方法が法令等で定められている場合は,既存の測定結果との比較や基準等との
整合の検討が可能となるよう,定められた方法による。ただし,予測及び評価の方法等によっ
てはそのようなレベルの情報を必要としない場合もあること,また,平面的な分布や偏りを把
握することを目的とするような場合にはむしろ簡易な手法で多数の地点の情報を得ることが望
ましい場合もあり,必ずしも法令等に定められた手法を用いなければならないわけではない。
-46-
・個別の技術的な事項については,各論編を参照のこと。
(3)調査地域及び調査地点
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -2 -⑶ 〉
調査地域は,対象事業の実施により選定項目に係る環境要素の状態が一定程度以上変化す
る範囲及び予測,評価に必要な情報を得るために調査を実施する必要のある地域とする。
調査地域の設定に当たっては,必要に応じ,概略の影響検討結果を踏まえることとする。
調査地点等を設定して調査を実施する場合は,調査内容及び特に影響を受けるおそれがあ
る対象の状況等を踏まえ,地域を代表する地点その他調査の実施に適切かつ効果的な地点を
設定する。
<調査範囲について>
・調査地域は,対象事業により「環境要素の状態が一定以上変化する」即ち影響を受けるおそれ
のある地域が基本である。ただし,環境の現状の特性を把握し,又は予測に必要な情報を得る
ために,それ以外の地域についても調査範囲に含める必要があることを示している。このよう
な例としては,水質や水象に係る上流側の情報の必要性があげられる。また,動物や生態系で
移動性の大きい動物等を対象とする場合には,行動圏を把握するため広い範囲を対象とする必
要性がある。また特に規模の小さい事業では,当該事業の敷地内だけでは予測・評価や保全対
策の検討が困難である可能性が高いことから,周辺の自然環境との関係等を把握できるよう調
査範囲を設定する必要がある。
・影響を受けるおそれのある範囲は,基本的に概略の影響の検討を行い,範囲を設定することが
望ましい。自然環境については直接的な改変を受ける範囲が基本であるが,間接的な影響が想
定される場合や対象とする生物種の行動圏が広い場合等には周辺にまで広げる必要がある。大
気質,水質,騒音等については,類似事例等から影響要因の大きさを想定し,簡易な計算を行
って設定することが望ましい。また,景観についても,想定される工作物等の高さ等も踏まえ,
どの範囲で見える可能性があるか等について標高データを用いた可視解析等を行った上で設定
する必要がある。
<調査地点について>
・調査地点等については,必ずしもすべての項目において設定するものではなく,調査を効率的
に行う上で地点やルートを定めて調査することが適当である場合に設定するものである。地点
を設定する場合は,主に以下のような観点に留意する。
○調査地域の代表的な状況を的確に把握できる地点。
・自然的,社会的条件により地域の環境条件が類型化されるような場合には,類型ごと
に設定する。
・公害系の事象の場合は,特定の発生源の影響を受けないような場所を設定する。
○特異な立地条件を代表する地点
・大気質における谷筋,水質における閉鎖性水域等,気象・水象等の条件から影響が生
じやすいと想定される地点。
・自然環境では,水辺,湿地,尾根筋,岩壁等特異な立地条件に特有な生物の生息・生
育が想定される地点。
-47-
○既に環境の悪化が想定される地点
・既存の発生源の周辺等に設定する。
・特に,事業が既存の施設等の変更である場合や,既存施設と当該事業による複合的
な影響が想定される場合には,現在の施設等からの影響の程度と広がりを把握でき
るよう設定する。
○特に影響を予測する必要がある地点
・注目すべき自然等が存在する地点。
・住宅地,学校,病院等環境保全上の配慮を要する地点。
・水や水域の利用地点,その他環境の自然的構成要素を利用している地点
○環境監視上適当な地点
・既存の大気汚染,水質等の監視地点
・将来的に環境監視を実施する上で適当な地点
(4)調査期間,時期,頻度等
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -2 -⑷ 〉
調査の期間,時期,頻度等は,調査内容,地域の気象又は水象等の特性,社会環境の状況
等に応じ,適切かつ効果的に設定する。
調査の期間等の設定に当たっては,季節変動,日変動等に留意する。
・具体的な期間や頻度は,調査すべき情報,調査の重点化の程度,地域の自然的,社会的環境の
特性によって異なるため,一概には決めがたいものである。
・基本的には,期間は一年間が基本となり,必要に応じ延長する。延長する必要がある場合の例
としては,調査年が気象等の条件からみて異常な年であると想定される場合,猛禽類等特に注
目すべき動植物の生息・生育状況や,生息・生育環境を把握する必要がある場合等が想定され
る。自然環境では,毎年は繁殖しない鳥類や,結実の状況が年により大きく異なる植物もあり,
特に貴重な対象や影響が特に大きいなど重点化する場合には,連続した2か年以上の調査が望
ましい。
・時期及び頻度では,我が国の環境は,四季の変化が顕著であり,これに着目する必要性が高い。
また,既存の大気汚染や騒音等を測定する場合は,人間活動の単位として1週間の変化や一日
のうちの時間帯による変動に着目することが重要である。
・なお,動植物については,動物相や植物相等の概要を把握する段階では四季(鳥類ではさらに
繁殖期を考慮)を基本とし,注目すべき種等対象が決まった段階で,個々の種等に応じた適切
な時期を設定し詳細な調査を行うことが必要となる。(ただし,植物の冬季の調査は省略する
ことができる。)
-48-
(5)調査結果の整理
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -2 -⑸ 〉
調査によって得られた情報は,その信頼性や妥当性を明らかにできるよう,調査対象地域
及び地点並びに調査期間等の設定の根拠を明らかにするとともに,当該情報が記載されてい
た文献名,調査の前提条件,調査実施者(委託した調査者又は調査会社),調査の日時等に
ついて整理する。また,現地調査については,フィールドにおける記録,標本,写真等,調
査の信頼性の検証等に必要な資料について求めに応じて提出可能なように整理を行って
おく。
希少生物の生息・生育に関する情報については,必要に応じ公開に当たって種及び場所を
特定できない形で整理する等の配慮を行う。
既存の長期間の観測結果が存在し,かつ現地調査を行った場合には,これらの結果を比較
検討できるよう整理する。
・第一点目は,調査の信頼性を確保するために必要な留意点である。動植物等については,同定
のミス等に対応できるよう,必要に応じ標本を採取したり,写真を撮影すること。ただし,標
本の採取に当たっては,⑹に示すように調査による影響の回避・低減に留意すること。また,
既存資料を使用する場合は,その信頼性を十分検討した上で使用すること。
・第二点目は,情報を公開したことによる盗掘,採取等による影響を防止するためのものである。
ただし,市に対しては,詳細な分布図等の情報を別途提出すること。
・第三点目は,環境影響評価で実施する調査とはごく限られた期間のものであることから,長期
的な観測結果との比較検討が重要であることを示している。特に,大気質や水質では,気象や
水象の条件に大きく左右されること,測定値を拡散計算の条件としたり将来の環境の状態とし
て使用する場合があることから,調査年が平均的な気象条件等にあったかどうかについて検討
を行っておくことが重要である。
(6)調査実施に当たっての留意点
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -2 -⑹ 〉
調査の実施そのものに伴う環境影響を回避・低減するため,可能な限り環境影響の少ない
調査方法を選定する。
調査の結果得られた情報については,適宜検討を加え,必要に応じ,調査の追加,補足を
行うこととする。
・第一点目は,環境の保全を目的とした調査のために環境が破壊されるというような本末転倒を
避けることを目的としている。特に,ボーリング調査や調査等のための伐採等は,環境への影
響に十分留意する必要がある。
・第二点目は,調査は単に実施するだけでなく,その結果を解析することが重要であること,さ
らに,その結果に応じ,調査内容でもふれたような予測や保全対策に必要な詳細な調査を実施
することが必要であることを示している。
・調査結果の解析としては,自然環境では現況の自然の価値や機能の評価,大気質や水質等では
気象や水象等との相関の解析や汚染等の原因の分析が重要である。
-49-
3
予測の実施
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -3 〉
対象事業が,選定項目に係る環境要素に及ぼす影響について,その内容及び程度を把
握し,環境保全対策を検討するための情報を得るため,選定項目の特性,事業の特性及
び調査結果を踏まえ,表5を参考として適切な予測手法を設定し,予測を実施する。
・予測の基本的な考え方を示すものである。予測とは,事業の実施が環境に及ぼす影響(環境影
響)を予測するものである。
・一般的には,環境の状態の変化を予測することをもって予測としている。環境への影響という
観点からは,環境の状態の変化を明らかにすれば足りる訳であるが,環境が変化した結果が人
間にとってあるいは自然環境にとってどのように影響するか,ということを把握するとなると,
状態の変化予測の次に影響の程度の予測が必要であるともいえる。ここでは,予測とは,物理
的な状態の変化までとし,これによる人間や自然環境への影響については評価において勘案す
ることとする。
■予測の概念整理
事
業
計
画
例
・自動車の走行台数
有害物質等の予測
・土地利用計画,造成計画
・管理方法,監視方法等,
配慮内容や対策の記述
による。
事業による負担量の予測
例
・自動車の走行によるNO2
排出量
・事業により発生する負荷
・土地の直接改変面積
状態の変化の予測
例
・事業による変化量(寄与量)
・自動車の走行によるNO2
寄与濃度
・バックグランドを含めた環境
の状態
廃棄物,CO2等の予測
の程度による。
一般的な予測
・事業による将来の環境
バックグランドと合わせた
の状態の変化の程度に
NO2将来濃度
よる。
・群落区分別の減少面積
重要種の固体数又は分布
面積の減少量
状態変化による影響の予測
例
・NO2が一定濃度以上に
なる範囲内の居住人口
・濃度変化による健康影響
・地域個体群の存続に対する
影響
-50-
評価の段階で検討
・状態の変化による人や
自然環境への影響
・一方,温室効果ガス等や廃棄物等の項目(環境への負荷の少ない持続的な発展が可能な都市の
構築及び地球環境への貢献を旨として予測及び評価されるべき項目)は,当該事業による状
態の変化により影響の程度を把握することは適切ではなく,事業からの負荷を極力少なくす
ることに意義がある。この場合,予測は状態の変化ではなく,事業からの負荷の大きさを予
測することとなる。
・また,有害物質の使用に伴う地下水汚染や土壌汚染のような影響は,本来負荷として排出され
てはならないものであって,状態の変化や事業による負荷の程度を算出することは適切では
ない。漏出等が生じないようどのような管理を行うか,万一漏出した場合等にどのような対
応策を整備しておくのか,どのような監視体制をとるのか,といった配慮や対策をもって,
予測評価を行うこととなる。
環境要素の区分ごとの予測の考え方
項
全
目
般
予測の考え方
予測は,環境の状態の変化又は環境への負荷の量につ
いて,定量的に把握することを基本とする。
環境の自然的構成要素の良好な状 人の健康,生活環境及び自然環境に及ぼす影響を把握
態の保持を旨として調査,予測及 するため,環境要素の汚染の程度及び広がり又は環境
び評価されるべき項目(大気質, 要素の状態の変化(構成要素そのものの量的な変化を
水質,地形・地質等)
含む。)を予測する。
生物の多様性の確保及び自然環境 重要種の分布及び生息・生育状況,重要な群落の分
の体系的保全を旨として調査,予 布,地域を特徴づける生態系(生態系を指標する種又
測及び評価されるべき項目
は生物群集を複数選び,これらの生態,他の生物との
(植物,動物,生態系)
関係及び生息・生育環境に着目)に対する影響の程度
を予測する。
人と自然との豊かな触れ合いの確 眺望の状態及び景観資源,野外レクリエーション及び
保及び歴史的,文化的所産への配 日常的な自然との触れ合い活動が一般的に行われる施
慮を旨として調査,予測及び評価 設及び場,文化財及びこれに準じるものに対する影響
されるべき項目(景観,自然との の程度を予測する。
触れ合いの場,文化財)
環境への負荷に区分される項目
温室効果ガスや廃棄物の発生量等,環境への負荷の程
度を予測する。
(1)予測内容
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -3 -⑴ 〉
予測内容は,環境影響の程度及び広がりを適切かつ効果的に把握するため,環境の状態又
は環境への負荷の程度を表す適切な指標を検討し,設定する。
・予測を実施するに当たっては,何を指標として環境の状態等の変化を予測するのかを検討する
ことが重要である。また,この場合,本来影響を検討したいものと,予測可能なものが必ずし
も一致しない場合がある。例えば,地下水の量への影響を検討することを目的として,地下水
-51-
位を指標とする場合がこれに当たる。また,生態系において注目する種等を設定することも,
生態系への影響を評価するうえで,生態系全体の調査や予測は困難であることから代表するよ
うな種等に着目して関係性や変化の程度を予測しようとするものである。
・環境要素の区分ごとの内容は,表5に示したとおりである。
・公害系の事象では,汚染物質の濃度を指標とすることが多いが,長期的な濃度か,短期的な濃
度か,平均値とするかパーセンタイル値とするか等により,予測の手法や結果は大きく異なる。
事業の特性等を踏まえ,適切な指標を設定することが必要である。
・なお,従来は環境基準との照合を行うために,二酸化窒素については98%値を用い,また騒音
では L50 等を用いていたが,パーセンタイル値は,予測上の問題が多い。今回,環境基準との
整合は二次的になったこと,騒音においては環境基準が Leq に変更になったこと等も踏まえた
指標の選定が必要である。
・また,自然環境については,定量的な予測が困難な場合も多いが,少なくとも直接改変の程度
については定量的な指標化が可能である。単に改変面積だけでなく,対象の重要度区分別の改
変の程度等,影響の程度を極力定量化するような努力が重要である。
(2)予測地域及び予測地点
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -3 -⑵ 〉
予測地域は,対象事業の実施により選定項目に係る環境要素の状態が一定程度以上変化す
る範囲とし,調査地域のうちから適切に設定する。
予測地点を設定して予測を行う場合は,保全すべき対象の状況,地形,気象又は水象の状
況等に応じ,地域を代表する地点,特に影響を受けるおそれのある地点,環境の保全等につ
いての配慮すべき対象等への影響を的確に把握できる地点等を設定する。
・予測を行う地理的範囲(予測地域)は,事業の実施に伴い環境への影響が想定される地域とす
るのが基本である。
・予測地域と調査地域は,概ね同じであるが,調査地域の場合,予測評価に必要な情報を得るた
めに,影響が想定される範囲を超えて,情報を必要とする範囲として広域が設定されている場
合がある。また,調査を行った結果,環境への影響は生じないと想定される場合もある。この
ようなことから,予測地域は,調査地域のうちから適切に選定するとしている。
・一般的な予測地域の考え方は以下のとおりである。
○大気質等の環境汚染に係る項目:事業予定地及び周辺で汚染物質濃度等の変化が想定さ
れる地域
○動植物等の自然環境に係る項目:主として事業予定地内。ただし,水等を介して周辺地
域においても影響を及ぼす場合はこれを含む。また,
周辺地域(広域)における関係や位置づけを踏まえた
予測が必要。
○景
観
:事業予定地の周辺で景観の変化が想定される地域。即
ち,事業予定地(事業により出現する工作物を含む)
が見える範囲。ただし,景観資源は事業予定地内
-52-
○廃棄物,温室効果ガス等
:影響が想定される範囲という概念は不適切。負荷を検
討する範囲としては事業予定地内。
・この場合,従来,大気質や水質,騒音等については,事業予定地内の濃度変化については予測
の対象とされなかったが,これらの変化による人の健康,生活環境への影響とともに,自然環
境への影響も検討するとなれば,事業予定地内についても予測を行っておく必要がある。
・予測地点については,調査地点設定の考え方に準じる。
(3)予測対象時期
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -3 -⑶ 〉
予測の対象とする時期は,事業特性,地域の気象又は水象等の特性,社会的状況等を十分
に勘案し,予測内容ごとに工事,存在,供用による環境影響を的確に把握できる時期を設定
する。
工事による影響については,工事による影響が最大になる時期又は工事終了時を基本とす
るが,選定項目によっては工事着手時等にその影響が最大となるものもあることを念頭にお
き,適切な時期を設定する。
存在影響については存在による影響がほぼ確定する時期,供用による影響については事業
活動や利用が定常状態になる時期を基本として,供用後の適切な時期に設定する。
ただし,影響の大きさの変動が著しい場合,存在及び供用による影響が上記のような状態
に達するまでに長期間を要する場合等にあっては,補足的な予測時点を設定する。
予測の期間,時間帯等については,予測内容に応じて,環境の変化やそれに伴う影響の程
度を適切かつ効果的に把握できるよう設定する。
・影響の予測対象時期は,影響要因の変動等の特性,影響の表出のしかたや自然的な変動等の環
境要素の特性を考慮して設定する必要がある。
・予測対象時期には,年レベルの時期,対象とする期間や時閘帯等様々な側面があるが,一般的
には,マクロな時期として以下のような考え方がとられている。
・工事影響については,一般的に期間が限定され,かつ,影響要因に変動が大きいことから,工
事による影響が最大となる時とし,工事最盛期等影響要因が最大の時期とすることが一般的で
ある。ただし,工事騒音による動物影響等は,工事の最初の時期に最大となる可能性が高いな
ど,影響が最大となる時期を適切に選ぶよう留意する必要がある。
・一方,存在・供用影響のうち,存在影響については,工事が完了した時点でよいわけであるが,
自然環境に対しては影響が出るまでに期間を要する場合があるため,事業による影響がほぼ確
定すると想定される時期を設定することが望ましい。しかしながら,自然環境は自然状態にお
いても変化しているものであり,どの時点で影響が確定するかの判断はきわめて困難である。
従って,基本的には工事完了時を予測時点とし,事後調査において一定程度の期間のモニタリ
ングを行うことが適当である。
・供用影響については,施設や土地における活動が定常状態に達する時期をさし,例えば計画交
通量に達する時期や計画人口に達する時期等が該当する。
・ただし書きは,予測時点が非常に遠い将来に設定されるようなケースを想定している。予測時
点を遠い将来においた場合,事後調査は予測時点を基本とするため,事後の監視等が十分に実
施できない可能性がある。また,その時点で問題があると判断されても,既に影響が長期開放
-53-
置される可能性もあることから,定めている事項である。
・予測の時期,時間帯等ついては,影響の予測は,基本的に将来の平均的な状態を予測する長期
的予測と「安全側にたった予測」という考え方から,最悪の条件下のおける状態を予測する短
期的予測を行なう必要がある。前者の場合は,年間の平均値等が想定され,後者の場合は,事
業からの負荷,気象・水象等の条件,影響が生じやすい時期(騒音における夜間や鳥類の繁殖
期等)を考慮して設定する。
(4)予測方法
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -3 -⑷ 〉
予測の方法は,評価において必要とされる情報の水準が確保されるよう,数理モデルによ
る数値計算,模型等による実験,類似事例の引用又は解析,科学的知見に基づく推定等の方
法のうちから,適切な方法を選定して行う。
この場合,定量的に把握することを基本とし,定量的な把握が困難な場合は定性的に変化
の程度を把握する。
ただし,選定項目の特性によっては,負荷の程度及び環境保全対策の記述等によって予測
に代えることができる。
・予測は数値モデル等による定量的把握を基本とし,定量的な把握が困難な場合は定性的に変化
の程度を把握する,ということが基本的な考え方である。その際,当然ながら最新の科学的知
見を踏まえ,信頼性の高い科学的手法を採用する必要がある。
・一般的な予測手法の種類としては,以下のようなものがある。
<一般的な予測手法>
・数値モデル
・実験
・類似事例の引用・解析(類似例,経験則(回帰式含む))
・科学的知見
・環境保全対策の記述
・従来,汚染物質の濃度や騒音レベルは定量的な予測が行われてきたが,動植物等の自然環境に
ついてはほとんど予測といったものが行われていない場合が多い。しかしながら,少なくとも,
植物群落区分別の改変量,貴重な植物種の個体数又は分布域の改変量,貴重な動物の主要な行
動域の改変量や食草の分布地の改変量といった,直接的改変の程度について定量的な予測は可
能であり,また実施する必要のあるものである。ただし,このような予測を実施するためには,
断片的な確認情報だけでは不十分であり,影響評価を行う必要のある種や群集については個体
数や生息密度,利用頻度等の定量的情報の把握が必要となる。
・事例の引用・解析による手法とは,事業内容及び立地条件が類似した既存の事例の状況を引用
(類似例の測定等を含む)することのほか,複数の事例について統計的に解析することにより
回帰式を導くといったことをさすものである。また,事業内容等が異なっても,騒音レベルと
動物の逃避行動というように,影響要因の類似性に着目した事例や研究結果の収集,解析等を
含むものである。
-54-
・予測手法が十分確立されておらず,事例の引用・解析によらざるを得ないような場合には,事
業者は文献等の収集,事例地での測定等を積極的に実施する必要がある。
・環境保全対策の記述は,厳密には予測とはいえないが,前述の通り,有害物質の排出を行わな
いことを保全方針とするような場合には,この手法によることとなる。ただし,その場合,単
に「適正に管理する」といったことではなく,管理体制や管理方法についてできるだけ具体的
に記述する必要がある。
・なお,個々の技術的な事項については各論編を参照。
(5)予測の前提条件の明確化
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -3 -⑸ 〉
予測に当たっては,予測の前提となる事業計画及び環境保全対策の内容を明確にする。ま
た,予測で用いた原単位及びパラメータ,将来の環境の状態等の設定内容及びその根拠,予
測地域等の設定の根拠,予測手法の特徴及びその適用範囲等について,地域の状況等に照ら
し,妥当性を明らかにできるように整理する。
なお,予測で用いる原単位等について,適切な既存情報がない場合には,実測等を行うこ
ととする。
・予測の信頼性,妥当性を判断できるよう,予測の前提条件等を明確にすることが必要であるこ
とを示している。また,事業計画からの予測条件の設定についても,わかりやすく整理するこ
とが必要である。
・なお,予測に必要な条件としては,以下のようなものがあり,どのような予測方法をとるかに
よって異なってくる。
予測に必要な事項
内
容
(前提条件)
①選定した環境要素の
現況
影響評価項目として選定した環境要素
状態の 負荷の 配慮・
予測
予測
対策
○
―
△
○
―
△
の状態又は汚染物質の濃度等の現況
(「調査」により把握)
②物質の移送等に係る
条件(気象,水象等)
気象,水象,地盤条件等汚染物質の
移送,拡散等に係る条件
(「調査」により把握)
③事業計画
影響要因に係る事業計画内容
○
○
○
④各種原単位
事業計画から負荷の程度を算定するた
○
○
△
○
―
―
○
―
○
めの原単位。
原単位としてまとまったものがない場
合は,既存の事例等から設定。
⑤将来の環境の状態
当該事業以外の諸活動等による将来
の環境の状態(バックグランド)
⑥保全対象の状況
住宅,学校,病院等生活環境の保全を
特に要する施設,貴重な動植物等(「地
域概況」又は「調査」により把握)
-55-
予測に必要な事項
内
容
状態の 負荷の 配慮・
(前提条件)
⑦影響に関する知見
予測
予測
対策
○
―
△
環境の状態の変化による人又は自然環
(評価を念頭において予 境への影響の発生状況に関する知見
測内容を決める上で必要) (既存事例,実験結果等)
○:必要,△:必須ではない(参考としてあってもよい),―:原則として不要
(6)将来の環境の状態の設定のあり方
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -3 -⑹ 〉
環境の状態の予測に当たっては,当該対象事業以外の条件によりもたらされる将来の環境
の状態を勘案して行うものとする。
将来の環境の状態は,環境の将来推計結果,将来の人口等の動向,今後実施される環境保
全施策,事業予定地周辺の開発計画等について,市又は宮城県が有する情報を収集し推定す
る。
ただし,将来の環境の状態の推定が困難な場合は,現在の環境の状態をもって将来の状態
に代えることとする。その際,推定される将来の変化の方向性等について可能な限り明らか
にする。
なお,将来の環境の状態の推定に当たって市,宮城県又は国による環境保全施策の効果を
見込む場合には,当該措置の内容,見込まれる効果及びその確実性を明らかにする。
・将来の環境の状態を予測する場合,当該事業による影響だけを予測するのではなく,それ以外
の諸活動によってもたらされる状態と合わせた場合にどのような状態になるのかを検討する必
要があることを示している。
・例えば,道路の整備を行う場合に,当該道路による大気汚染だけでは特に問題はないが,隣接
する既存の道路からの大気汚染とあわせた場合には人の健康への影響が懸念されるといった問
題,あるいは,周辺環境を考慮して緑地を残したにもかかわらず,隣接する別の事業により周
りの自然が失われてしまうといった問題が生じることがあるが,将来の環境の状態を考慮した
予測を実施すれば,そのような問題を予め予測することができる。
・将来の環境の状態は,一事業者が決定し得るものではないことから,市や県等の資料や情報を
収集して推定することとなる。この場合,勘案すべき情報としては,市等が将来の環境の状況
を推計した資料,将来の人口や産業活動の動向に関する資料,今後実施される環境保全に関す
る施策,事業予定地周辺の開発事業,土地利用等の状況といったものが考えられる。
・しかしながら,将来の環境の状況を推定したような資料は数少なく,各種の情報を収集したと
しても将来の環境の状況を推定することは実際には非常に困難である。そのため,現在の環境
の状況をもって将来の環境の状況とする場合が多い。ただし,このような場合には,将来の状
況が現状より悪くはならないという根拠を示すか,あるいはどのような変化の動向が想定され
るかを示し,将来の状況についても安全側に設定しておく必要がある。
-56-
・なお,従来から環境汚染に係るような項目では,将来のバックグランド値についてある程度の
検討がなされているものの,自然環境に係る周辺の開発等による変化の可能性や,自然そのも
のの遷移等については検討がなされていないことが多い。自然環境についても,他の事業等に
より周辺環境がどの程度改変される可能性があるか,自然の遷移等によりどのように変化して
いく可能性があるかなど,将来の状態を推定することが重要である。
・なおで示したものは,不確実な対策の効果等は予測に組み込まないよう求めるものである。
(7)予測の不確実性の検討
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -3 -⑺ 〉
科学的知見の限界,予測条件の不確定性等に伴う予測の不確実性について,その程度及び
それに伴う環境への影響の重大性について整理する。
なお,予測値の変動の幅や現象発生の確率等,予測の不確実性の程度についても可能な限
り定量的な表現を行うよう努める。
・予測の不確実性に関することであり,基本的に予測とは不確実なものであるという認識が必要
である。
・従って,予測結果のごくわずかな数値の相違をもって評価を行うことは適切ではない。また,
特にモデル等を用いて定量的な予測を行った場合は,その数値が絶対的な意味をもつようにと
られがちであるため,複数の手法で予測を行ったり,ある幅をもった予測を行う,そのような
現象が生じる確率を求めるといったことも必要であることを示している。
-57-
4
環境保全対策等の検討
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -4 〉
予測の結果に基づき,対象事業が環境に及ぼす影響について,第3章
環境の保全及び創
造のための措置の内容を踏まえ,影響を回避・低減するための環境保全対策を検討する。
保全対策を検討した場合には,必要に応じ再予測を実施する。
なお,評価の結果やむを得ず生じる影響について,必要に応じ,事業の実施により損なわ
れる環境要素の持つ環境保全上の価値又は機能を代償するための措置を検討する。
・環境保全対策には,影響を軽減するための設備等を付加するものから,区域や土地利用の見直
し等計画を抜本的に見直すようなものまで,幅広く含むものである。
・環境保全対策の検討においては,第3章でより詳しく示すが,回避,低減を優先し,やむを得
ない場合に代償を検討するものであることをここでも示しているものである。
・環境保全対策を検討した場合には,原則として再度予測を行うが,区域変更を行う場合等にあ
っては,方法書手続きのやり直し,調査等の再実施が必要となる場合も想定される。
・環境保全対策の検討は,再予測の結果,影響の程度が極めて小さいと判断されるか,あるいは,
それ以上の環境保全対策が事業者としては実行困難であると判断されるまで,繰り返し実施す
る。準備書に記載する際には,当初計画案と検討した環境保全対策に係る予測結果を,複数案
として比較検討が可能なようにとりまとめる。
5
評価の実施
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -5 〉
評価は,表5を参考として,事業者により実行可能な範囲で環境影響が最大限に回避・低
減されているかどうかによることとし,あわせて環境の保全等に係る目標や基準がある場合
にはこれらとの整合に努める。
・環境影響評価法においては,評価は,従来のような保全目標設定型ではなく,事業者が自ら実
行可能な範囲で,影響が回避・低減されているかどうかにより判断することとし,環境基準や
地方公共団体の環境基本計画等で保全すべき目標水準が定められている場合には,それらとの
整合を図ることとしている。本市においても,制度のあり方の中で,法と同様,実行可能な範
囲で環境への影響を回避・低減することを評価の基本としている。
・回避・低減による評価を実施するためには,施設の配置,工事の方法等幅広い環境保全対策を
対象として,複数案を比較することが必要になる。
・しかしながら,実施アセスの段階においては検討可能な複数案には制約が予想される。特に,
事業を実施しない案や,立地の代替案については,一般的に困難であると想定され,本制度の
中では検討を義務づけるものではない。このことから,事前調査を行い,その結果として立地
選定までの経緯を明らかにすることを求めているものである。なお,環境影響評価の結果,事
業者自らの判断により事業を中止したり,立地を変更することは可能性として想定される。
・一方,環境基準や市の環境基本計画等における保全すべき環境の水準については,それらを充
たす努力がなされるべきである。本市の場合,市の環境基本計画その他市の環境関連計画の目
標との整合を図るとともに,県の環境基本計画についても整合を図る必要がある。しかしなが
-58-
ら,基準まで汚染してもいいというものでもないことから,回避・低減による評価に対してこ
れらの目標は,二次的なものと位置づけることが適当である。
・「事業者が実行可能な範囲」とは,①技術的に実行可能であること,②事業目的あるいは事業
の採算性に照らして実行可能であること,③事業者が将来にわたって責任がもてるものである
こと(他者に引き継ぐ場合は,それが確実であることを事業者が示すこと)の観点から,事業
者自身が実行可能であると判断するものであり,事業者として最大限の努力をするということ
を意味する。
・なお,環境影響評価における評価とは,事業者が自らの見解を示すことをさす。それに対し,
住民等の意見や市長の意見が出される。事業者はそれらの意見を勘案し,必要に応じさらに環
境保全措置を検討したり,調査,予測及び評価をやりなおすこととなるが,これもあくまで事
業者が必要であるかどうかを判断するものである。
(事業者の実行可能な範囲が示すもの)
①技術的な実行可能性
現時点の科学技術の水準において,ある程度安定的に利用できる範囲のものであること。
②事業目的からみた実行可能性
費用面あるいは事業の目的からみて,事業が成立する範囲内であること。ただし,この
観点が影響やむなしとの免罪符に使われてはならないものであり,十分な対策をとること
が困難で回避・低減が十分図り得ない場合は,事業者としては,環境への影響が大きいと
いうことを明確にすることが重要である。
③事業者が責任が持てるという意味での実行可能性
影響の回避・低減のための措置が,事業者自らが責任をもって実施できるもの,あるい
は他者によって実施される措置についてはそれが確実に実施されることを事業者が明らか
にできるものでなければならない。よって,事業者の権限が及ばない計画区域外の事項を
含めた評価は行わない。(例えば,計画区域外にも貴重種が分布しそれが残る,計画区域
以外への移植といったもの。)
またこのことは逆にいえば,例えば既に環境基準を超えているような環境における環境
基準の達成等,他者の取組や広域的な取組なくしては達成できないような水準を事業者に
求めるものではないことを示している。
(1)評価項目ごとの評価の方法
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -5 -⑴ 〉
ア
回避・低減の観点からの評価は,選定項目ごとに,事業を実施する区域,造成計画,建
造物の構造・配置,環境保全設備,工事の方法等,複数の計画案又は環境保全対策案の比
較検討により行う。
評価に当たっては,予め回避・低減の対象とする影響の内容又は観点を明確にする。
イ
目標又は基準との整合の観点からの評価は,環境基準,仙台市環境基本計画の目標等,
市,宮城県又は国によって環境の保全の観点からの基準又は目標が示されている場合に,
これらとの整合が図られているか否かについても検討する。
-59-
<ア回避・低減による評価>
・評価はまず回避・低減の観点から評価するものとする。代償措置についてはこの段階では考慮
しない。回避・低減の観点からの評価とは,相対的評価である。
・まず,回避・低減する影響を明確化し,当初計画において影響が回避されている場合には,回
避できた旨を明らかにする。回避できていない場合には,回避するための対策を検討する。回
避することが困難な場合には,低減するための対策を検討する。複数の保全対策案等を比較検
討し,最も影響の小さい案を選択することにより低減を図る。この段階で,影響が十分低減で
きなかったと事業者が判断する場合にはその旨を明らかにし,回避・低減が困難な理由,影響
が生じてもなお当該事業を実施することの必要性等を明確にする。なお,評価の結果残る影響
について,必要に応じ代償の措置を検討する。なお,代償による効果は,評価には含めない。
■回避・低減による評価の流れ
調
査
結
果
保全方針(回避・低減を図
るべき影響)の設定
予
測
回避の観点の評価
計
NOの場合
画
案
回避のための対策検討
回避が困難な場合
YESの場合
(理由の明記)
NOの場合
低減の観点の評価
低減のための対策検討
これ以上の低減困難な場合
YESの場合
(理由,事業の必要性の明記)
代 償 措 置 の 検 討
以上の検討過程を「回避・低減の評価」結果としてとりまとめ
-60-
<回避・低減の対象とする影響の明確化の必要性>
・事業を実施する場合,何らかの影響が生じることは避け得ない。影響評価の対象として選定し
た項目は,影響が生じると想定される項目であるから,すべての影響を回避できる訳ではない。
・評価に当たっては,どのような観点から影響の回避・低減を図ろうとしているのか,あるいは
何に対して影響を回避・低減しようとしているのかを明確にする必要がある。
・なお,回避・低減の対象の明確化については,同じ対象に対して回避・低減を図る場合もあれ
ば,回避するもの,低減するものをおのおの明確にするという場合もあり得る。
参考
回避・低減対象の明確化の例
騒音
植物
回避・低減を同じ対象 ・学校,病院への影響を回避・ ・クリンソウ等貴重な種に対す
として記述する例
低減
る影響を回避・低減
・沿道の住宅に対する影響を ・良好な二次林等への影響を回
回避・低減
避・低減
回避・低減を分けて記 回避:学校,病院への影響
述
回避:クリンソウ,サクラソウ
専ら住居の用に供される
への影響
地域への影響
モミ・イヌブナ林への影響
低減:その他の沿道の住宅への 低減:その他の貴重な植物への
影響
影響
良好な二次林への影響
<イ環境基準等との整合による評価>
・環境基準等,公的に定められた環境保全水準(規制基準含む)との整合についても配慮する。
・従来は,このような絶対的な基準(保全目標)との比較検討により評価を行ってきた。しかし,
環境基準が設定されていない項目については予測評価が十分おこなわれなくなり,二酸化硫黄
のように環境基準に比べ現況が十分良好な場合には環境基準達成以上の努力がなされなかった。
一方騒音のように環境基準を既に超過している場合も評価があいまいであった。このような反
省に立って,今回,環境基準その他の目標については,これを絶対的な評価の基準とするので
はなく,あくまで「整合」を図る対象としたものである。整合を図るとは,これら基準や目標
の達成にむけて努力をすることとするが,基準の達成,非達成にかかわらず,前述の回避・低
減を基本として,計画の最適化を検討するものである。
・整合を図るべき基準又は目標としては以下のようなものが考えられる。
①環境基準,環境保全の水準を示す国等の指針
②仙台市の環境基本計画,その他環境保全に係る計画等(以下環境基本計画等という)にお
ける定量的目標又は基準(ただし,環境の水準に係るもの)
③法,条例等による規制基準,指導基準等(排出基準,緑化基準等)
④国,県,市における保全すべき自然等に関する情報(レッドリスト等)
⑤県の環境基本計画等における定量的目標又は基準(ただし,環境の水準に係るもの)
⑥市の環境基本計画等における定性的な方針等
⑦県の環境基本計画等における定性的な方針等
⑧地域住民による協定等
-61-
(2)総合評価の方法
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -5 -⑵ 〉
選定項目ごとの調査,予測及び評価結果に基づき,結果の一覧表を作成する等の整理を行
い,影響評価項目の選定の際の項目の重点化,簡略化の検討結果を勘案し,対象事業に係る
総合的な評価を行う。
・環境影響評価においては,総合的な評価を行うことが必要であることを示している。
・個別項目別の調査・予測・評価の結果を一覧に整理(調査・予測・評価の一覧表の作成等)す
ることにより,総合的な影響を評価する。この時,項目間相互の関係(間接影響),保全対策
の実施等による項目間の整合性の確認を行う。
・複数の環境保全対策案の比較を実施する場合,それぞれの案の各項目の評価(影響の程度や順
位等)を一覧化した表や図を作成し,わかりやすく案の比較評価を行う。予測・評価はなるべ
く定量的であることが望ましい。
・その際,項目選定で実施した,項目間の重点化,簡略化等項目ごとの影響の重要度に応じて,
重みをつけた加算や比較等を行う。
6
事後調査計画の策定
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -6 〉
予測評価の結果を検証し,必要に応じて追加的な環境保全対策を実施するため,事後調査
計画を策定する。
事後調査計画は,第5
事後調査報告書の作成に係る手順を参考として,以下の事項につ
いて定める。
⑴事後調査の項目
⑵事後調査の内容
⑶事後調査の対象時点,時期,頻度等
⑷事後調査の地域及び地点
⑸事後調査の方法
⑹事後調査報告書の提出時期及び頻度
⑺事後調査の全部又は一部を他の者に委託して行った場合には,その者の氏名及び住所
(法人にあっては,その名称,代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)
・事後調査計画は,準備書に記載し,市民意見や審査会の検討を受けた市長意見を踏まえ,決定
されるものである。
・事後調査を実施した結果よっては,再度,事後調査計画の見直し,実施を行うこととなる。
・なお,事後調査報告書は,1回提出するだけのものではないことから,提出時期や頻度につい
て計画に記載することを求めている。
7
環境影響評価準備書の作成・提出
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 3 -7 〉
以上の過程により得られた結果をとりまとめ,環境影響評価準備書(以下「準備書」とい
う。)を作成し,市長に提出する。
-62-
第4
1
環境影響評価書の作成に係る手順
住民等及び市長からの意見への対応の検討
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 4 -1 〉
準備書についての住民等および市長からの意見に基づき,必要に応じて,事業計画を見直
し,環境影響評価を再実施する。
なお,準備書についての住民等からの意見に対する事業者の見解をとりまとめ,予め,市
長に提出しなければならない。
・準備書への意見について,どこまで対応するか,事業計画の見直しが必要であるか否かは,事
業者が判断するものである。これは,環境影響評価制度そのものが,事業者による自主的な配
慮を促すための手続きを定めるものであることによる。
・しかしながら,準備書中の単なる記載ミスや表現上の問題ではなく,環境影響評価の考え方そ
のものに対する重大な意見が出された場合には,事業者は,できるだけ事業計画や環境保全対
策の再検討を実施することが望まれる。この場合,必要に応じ,調査を再実施する場合もあり
得る。
・見解の段階では,意見について,評価書作成までに事業者としてどのような対応を行うかを明
らかにする。その際,計画の見直しを行う場合には,どのような見直しを行うかの概要を示す
こと。また,追加の調査や予測評価の再実施を行う場合には,その手法を見解の中に示すこと。
・住民意見への事業者の見解については,意見個々に対してではなく,同義の意見をまとめたも
のに対しての見解として差し支えない。
・住民意見のうち,事業に関係しない環境上の問題や,事業者の責任の範囲外の問題等について
の意見については,事業とは関係ないということを明らかにすることをもって,見解とする。
・事業の可否や必要性等についての意見については,直接的には環境影響評価への意見ではなく,
事業者として見解を書き得ない場合もあるが,事業計画の説明や事業計画決定の経緯の説明が
不十分でないかどうかを検討し,必要に応じ説明を補足すること。
2
影響評価書の作成・提出
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 4 -2 〉
準備書についての住民等及び市長からの意見に関する事項,環境影響評価を再実施した場
合には,再実施した環境影響評価の結果に基づいて準備書内容を修正した環境影響評価書
(以下「評価書」という。)を作成し,市長に提出する。
・評価書とは,住民及び市長意見の内容とそれに対する見解を記述し,必要に応じて準備書の内
容を修正したものである。
・その際,準備書からの修正部分が明確にわかるようにする。
-63-
第5 事後調査に係る手順
1
事後調査の実施
(1)事後調査の目的
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 5 -1 -⑴ 〉
事後調査は,事業者自らが工事中及び供用後の環境の状況等について調査を実施し,予測
評価結果の検証を行うことにより,必要に応じて追加の環境保全対策を適切に講ずるととも
に,事業者自らによる環境影響評価結果に基づく適正な事業実施,市長による適切な指導,
今後の予測評価技術等の向上に資することを目的とする。
・事後調査は,以下のような効果が期待され,環境影響評価制度の実効性と信頼性を確保する上
で非常に重要なものである。
<事後調査導入のねらい>
①予測結果と実態が合っているかどうかの検証を行うことにより,環境影響評価の結果に基
づく適正な事業実施が期待される。
②予測結果の検証が義務づけられることにより,精度の高い予測評価の実施が期待される。
③事業が適正に実施されなかった場合や予測結果と異なる重大な影響が生じた場合に,影響
の排除や事業の改善を市長が指導することができる。
④予測の不確実性が高いものについて,影響の状況等に応じて更なる保全対策を講じるなど
事業の適正化を図ることができる。
⑤データの蓄積により予測技術や保全対策に係る技術の向上を図ることができる。
・事後調査の実施主体については,事業の監視という観点から,第3者機関が実施すべきという
考え方もあるが,環境評価制度そのものが事業者のセルフコントロールを基本とした制度であ
ること,また,法においても,他の地方公共団体の制度においても事業者自身が実施すること
としていることもあり,本市においても事業者自身が実施するものとしている。
(2)事後調査の項目
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 5 -1 -⑵ 〉
事後調査の項目は,原則としてすべての選定項目とする。
・事後調査は,予測結果の検証のためすべての予測評価項目について実施するものと,予測の不
確実性等に対応するために必要に応じて実施するというものとの,大きく2つに分けることが
できる。
・本市においては,条例の基本的あり方についての環境審議会の答申にも,環境影響評価の不確
実性への対応とともに,制度全体の信頼性確保の観点からも,事後調査を位置づけることが必
要であるとされており,原則としてすべての予測評価項目の検証を行うものとして位置づけて
いる。
-64-
(3)事後調査の内容
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 5 -1 -⑶ 〉
事後調査の内容は,以下のとおりとする。
ア
影響評価項目の対象とした環境の状況
イ
上記の環境の状況に係る対象事業の状況及び対象事業による負荷の状況
<ア環境の状況>
・環境の状況とは,事後調査の対象として選定した項目(即ち影響評価項目)に係る環境の状態
をさし,予測評価結果と対照するためのものである。
・なお,廃棄物,温室効果ガス,その他環境の状態の予測が困難なため事業による負荷の程度に
よって予測評価を行った項目については,環境の状態の事後調査は実施せず,次に示す,対象
事業により発生する負荷の状況をもって予測評価結果との比較検討を行うこととなる。
<イ事業の実施状況>
・対象事業の状況及び発生する負荷の状況は,環境の状態との関連を検討する上で必要な項目に
ついて実施する。具体的には,予測の際に条件とした事業計画に係る事項について実施する。
・内容としては,対象事業そのものの整備等の状況と,それに伴う負荷の状況の2段階に分けら
れる。
○対象事業の状況:施設等の整備状況,稼働状況,利用者数,車両走行台数等
○対象事業による負荷の状況:汚染物質等の排出濃度,廃棄物の発生量,エネルギーの使用
量等
(4)事後調査の対象時点,時期,頻度等
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 5 -1 -⑷ 〉
調査の時期は,原則として予測時点とする。
ただし,影響の出現に時間を要するもの,影響の程度に経時的な変動が想定されるもの等
については,必要に応じて一定期間のモニタリング調査等を行う。
調査の時期及び頻度等は,調査手法に準じるものとする。
・事後調査は,環境影響評価の結果との比較検討ができるよう,予測時点を基本とする。ただし,
必要に応じてその他の期間等の状況も把握する。
・本市の事後調査は,予測の検証を第一の目的としており,すべての項目について,予測時点に
対応した調査を実施する。ただし,影響の出現に時間を要するもの,影響の程度に経時的な変
動が想定されるもの,その他重大な影響が想定され継続的な調査を要するものについては,モ
ニタリング調査を実施するものとする。
<予測時点に対応した調査>
・予測は,基本的に,工事中においては影響が最大となる時期,供用後においては定常的な状態
及び必要に応じて影響が最大となる時期に実施するものであり,事後調査は,原則として予測
時点に実施する。供用後の予測時点が特に明記されていない場合には,工事完了後1年以内に
実施するものとする。
・なお,供用後の予測時点が,工事完了後相当程度年数を経た時点に設定されている場合には,
工事完了後1年以内に,予測時点に加えて調査時点を設定することとする。
-65-
<モニタリング調査等>
・自然環境のように安定的な状態に達するのにある程度の時間を要する場合,あるいは事業の特
性により供用後徐々に環境影響が増していくことが想定される場合等については,工事完了後
一定程度の期間モニタリング調査を実施する。
・他の地方公共団体等における実例としては,自然環境について,1年後,3年後,5年後とい
ったモニタリング調査が実施されている場合がある。
・有害物質の適正管理や,廃棄物最終処分場からの水質等,期間を定めず監視等を行うことを保
全措置として定めるような場合についても,環境影響評価の事後調査としては供用後の一定期
間のみとし,その後については,住民との協定を締結するなど,事後調査とは切り離して実施
するものとする。
(5)事後調査の地域及び地点
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 5 -1 -⑸ 〉
事後調査の地域は,原則として予測地域とする。
事後調査の地点は,予測地点がある場合はこれを基本とし,予測地点がない場合は,地域
の環境を代表する地点,影響が最も大きいと想定される地点等適切かつ効果的な地点を設定
する。
・事後調査は,環境影響評価の結果との比較検討ができるよう,事後調査の地域及び地点につい
ても予測地域及び地点を基本とする。
・ただし,予測の結果から,影響がないか軽微であることが明らかになった地域又は地点は省略
し,影響が大きいと想定される地域,地点に限定することは可能である。
(6)事後調査の方法
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 5 -1 -⑹ 〉
事後調査の方法は,原則として現地調査によるものとする。
測定方法等現地調査の方法は,調査手法に準じるものとする。
・事後調査は,環境影響評価の検証を行うものであるから,当然のことながら現地調査によるも
のである。調査方法は,環境影響評価の結果との比較検討ができるよう,環境影響評価で実施
した調査方法を原則とする。
・ただし,現況に関する調査の結果,季節変動や日変動等の変動が少ない等簡略な手法を採用し
てもよいと考えられる理由がある場合で,簡略な手法によっても,予測結果との照合が可能な
情報が得られる場合には,調査手法等を簡略化することができる。
・また,現況調査と同様,事後調査の実施のために環境への影響を及ぼすようなことあっては本
末転倒であることから,環境への影響の少ない調査手法を選ぶことが重要である。
-66-
2
事後調査実施後の検討
(1)予測評価結果の検証
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 5 -2 -⑴ 〉
事後調査の結果を,予測評価結果と比較検討する。その結果が予測評価結果と著しく異な
る場合には,事業の状況等を勘案し,その理由を検討する。
・環境影響評価で行った予測結果と,事後調査の結果を比較検討し,著しく異なる場合は,その
理由を明記する(予測条件と発生条件が異なる,予測手法上の問題,対策等が十分機能してい
ない,バックグランドが異なる(他の事業等の影響)等)。
・実際には,当該事業が原因であるか,他の要因によるものかの判定は困難な場合も多いが,事
業の実施状況等と合わせて検討し,記載すること。
(2)追加的環境保全対策等の検討
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 5 -2 -⑵ 〉
事後調査の結果が予測評価結果と著しく異なり,環境への影響が大きい場合には,必要に
応じて追加的環境保全対策を検討し,実施する。その場合,追加的環境保全対策による効果
及び環境影響について,予測評価を実施する。
また,事後調査の結果に基づき,追加的環境保全対策を実施する場合,又は,環境影響の
継続的観察が必要と認められる場合には,再度,事後調査計画を策定し,実施する。
・事後調査は,単に調査を実施するためのものではなく,予測結果と事後調査の結果を比較検討
し,必要な措置を講ずることを求めているものである。
・追加的な措置を講ずることとした場合は,事後調査計画を再度策定し,実施する。
・また,当初の計画に基づく事後調査結果により,環境保全対策の効果等が十分確認されればそ
の時点で事後調査を終了するが,効果の確認等が十分行えない場合等には必要に応じ,事後調
査の期間を延長する場合がある。
・また,明らかに環境影響が回避・低減されていると判断された場合等,事後調査の継続が不要
となった場合,その他事業者の責任に帰することができない理由により調査の継続が不可能と
なった場合には,当初の事後調査計画を短縮することができる。
・なお,事後調査計画の変更,追加的保全措置の実施の際には,必ず市と協議を行うこと。
3
事後調査の報告書の作成・提出
〈 技 術 指 針 第 2 章 第 5 -3 〉
事後調査の実施状況に応じ,適宜,以上の過程により得られた結果をとりまとめた事後調
査報告書を作成し,提出する。
なお,事後調査の結果が予測評価結果と著しく異なり,環境影響が大きい場合には,調査
実施後できるだけ速やかに結果を報告することとする。
・事後調査の結果は,それに応じて適切な対応を実施するためには,事後調査実施後できるだけ
速やかに事後調査報告書としてとりまとめ,提出することが重要である。
-67-
・提出時期は,基本的に評価書に記載した事後調査報告書の提出時期によるが,調査の結果,問
題がある場合には,報告書の提出を待たずに,市に対し調査結果を報告し,必要な措置につい
て協議するものとする。特に,工事中の影響については,速やかな対応が求められる。
・なお,事後調査の報告の時期は,一概には決められないが,少なくとも,工事中と供用後に各
1回以上提出すること,一年に一度程度はとりまとめて提出することが望ましい。
-68-
第3章
環境の保全及び創造のための措置
第1 環境の保全及び創造のための措置の範囲
〈技術指針第3章第1〉
環境の保全及び創造のための措置とは,予測の結果に基づき,環境影響を回避・低減する
ために検討する環境保全対策に加え,事業計画検討の段階における環境への配慮,評価の結
果なお残る環境影響について講じる代償措置,事後調査の結果に基づき講じる追加的環境保
全対策等を包含するものとする。
・環境の保全及び創造のための措置とは,事前調査等の段階から,環境影響評価の段階,工事の
段階,供用の段階まで,幅広くすべてを包含するものであることを示している。
・なお,ここでいう創造のための措置とは,条例で定義しているように,「環境への影響を回避
し,又は低減することが困難である場合に,損なわれる環境の代償として講じられる環境の創
出」をいう。
第2
環境の保全及び創造のための措置の考え方
〈技術指針第3章第2〉
環境の保全及び創造のための措置は,事業の計画及び実施の各段階に応じ,以下の回避・
低減,代償の考え方にそって,事業者が実行可能な範囲において検討を行うこととする。
環境の保全及び創造のための措置の検討は,回避・低減を優先し,その結果を踏まえ代償
を検討する。
①
回避
事業の全体もしくは一部の配置又は内容を変更すること,又は事業の一部を実行しないこ
と等によって,影響の発生を回避する。
②
低減
事業の程度又は規模を制限すること,事業の実施方法を変更すること等によって,汚染物
質量や自然の損壊等影響要因の発生の程度を最小化する。
また,汚染物質の除去装置の設置や修景緑化等適切な対策を講ずることにより,発生した
影響要因からの影響の程度を最小化する。
③
代償
事業の実施により損なわれる環境要素について,損なわれた環境要素を同一の場所で
修復,再生する。
また,事業の実施により損なわれる環境要素について,損なわれた環境要素と同等又はそ
れ以上の機能,価値を有する環境要素を近傍において確保,提供又は創出するなど代替の環
境要素により影響を代償する。
・環境の保全及び創造のための措置とは,事業によって生じる環境影響を極力最小化することを
目的とするものである。近年,欧米における「環境影響緩和(ミティゲーション)」という考
え方が導入された。ただし,そのうち,回避できなかった影響についてそれに替わる環境の創
造を行う「代償措置」の事例に特に注目が集まり,あたかもミティゲーション=代償措置とい
うように誤解されて用いられることも少なくない。
-69-
・自然環境の保全について,移植や新たな生息環境の創造,水辺の創造といった対策が盛んに行
われている,それ自体は良い傾向ではあるが,十分な回避・低減のための検討を行わないまま,
代償措置だけが先行して検討されるような風潮がある。失われる自然環境を代償することは本
質的に不可能であることを認識し,環境保全対策は,あくまで環境の回避・低減を優先するべ
きであることを認識する必要がある。
・また,代償措置を検討する場合においても,同一の場所での修復,再生することを優先し,そ
れが困難な場合について,できるだけ近い場所での確保や提供を図ることとし,全く新たに創
出すること,特に事業地以外での実施は,最後の手段であることを示している。
参考
NEPA(アメリカ国家環境政策法)におけるミティゲーションの考え方
回避
行為の全体又は一部を実行しないことによって影響を回避す
ること
最小化
行為の実施の程度又は規模を制限することにより影響を最小
化すること
矯正
影響を受けた環境そのものを修復,再生又は回復することに
より影響を矯正すること
低減・除去
行為期間中,環境を保護及び維持管理することにより影響を
低減又は除去すること
代償
代替の資源又は環境を置換又は提供することにより影響を代
償すること
・環境保全措置は,回避・低減と代償に分けて整理する。
<回避>
・立地選定,ゾーニングの段階などの事業の初期段階で行う。自然環境の保全では,回避が最も
効果的である。
・動物や植物等の自然環境の保全を目的とする場合は主に立地の問題となる。公害防止では,立
地の問題と同時に,活動そのものや使用物質の変更等により要因の発生をなくすことが重要で
ある。
・事業の中止や立地代替案の検討を義務づけるものではないが,環境影響評価の結果として,そ
のような措置を講じる可能性は否定するものではない。
例:・事業の一部の中止
・事業計画地の位置の変更
・施設の位置の変更
・道路(鉄道)等の線形変更
・事業内容の変更による影響要因の除去(使用物質の変更等)
-70-
<低減>
(発生の程度を低減)
・自然環境の保全では,施設等の配置や構造の変更による改変区域の変更が主となる。公害では,
計画フレームの縮小,活動内容の変更等により,排出のレベルを下げる。
例:・土地利用,施設配置等の変更(改変区域の変更)
・道路(鉄道)等の構造の変更(高架化,地下化,橋梁化,車線数変更等)
・景観に配慮した施設構造(高さを押さえる,高さをそろえる等)
・煙突の位置,高さの変更
(発生した影響の程度を低減)
・自然環境に関しては,緑化等が想定できる。公害では,排出後の対応策で,除去装置の設置,
汚水の高次処理,防音壁,住宅の防音工事等があげられる。
例:・表土復元
・のり面緑化
・カルバートボックス,オーバーブリッジ,魚道の設置等,動物の移動路の確保
・林縁部の植生復元
・防音壁の設置
・汚水の高次処理
・有害物質除去装置の設置
(事業を実施する際の管理等による影響の緩和)
・工事や供用の段階で,適正な実施や管理等により影響を緩和するものである。
例:・雨水の地下浸透
・光害に配慮した照明の調節
・作業員の教育
・焼却炉の適正な温度での運転
<代償>
・自然環境では,事業地内又は外で生息・生育環境を再生又は創出する。なお,移植・移殖を行
う場合は,単に個体を移植・移殖するだけでは代償措置とはなりえず,生息・生育環境の確保
又は創出が必要である。
・事業地以外での代償を実施する場合,事業者がその整備,維持管理に責任をもてることが前提
条件である。また,地理的に近い位置に確保するよう努め,原則として仙台市内とする。
・管理等が他の主体に引き継がれる場合には,代償として整備された環境の管理がどのように引
き継がれるのかを明記する。将来にわたる管理が保証されないものは代償と認められない。
例:・移植・移殖
・営巣地環境創出
・ふれあいの場として利用される水辺の創出等
-71-
第3 環境の保全及び創造のための措置の検討等における留意点
1
基本的な留意点
〈 技 術 指 針 第 3 章 第 3 -1 〉
検討に当たっては,環境の保全及び創造のための措置の内容,実施期間,実施主体等の実
施の方法を極力具体的に示すとともに,環境の保全及び創造のための措置の効果(環境の保
全及び創造のための措置にもかかわらず存在する環境影響の程度を含む。)及び不確実性の
程度,環境の保全及び創造のための措置の実施に伴い生ずるおそれのある環境影響等を一覧
できるよう整理する。
・環境の保全及び創造のための措置といえども,整備等を行う場合には環境への影響が生じるこ
ととなることから,必ず,他の環境要素への影響等について検討しておくことが重要であるこ
とを示している。また,環境の保全及び創造のための措置は,項目ごとの予測・評価の部分で
記載されるが,項目間の不整合等を防ぐため,一覧できるように整理するものである。
・ただし,内容的には,予測の結果と大部分重複するものであることから,予測結果を再整理す
ることとする。
・なお,代償措置は,評価の後に検討するものであることから,代償措置についてのみ,「環境
保全措置」の項で,内容,効果,影響等について詳細に記載すること。
2
代償措置の検討に関する留意点
〈 技 術 指 針 第 3 章 第 3 -2 〉
環境影響を回避・低減するための検討を行ったが,その結果やむを得ず残る影響について
代償のための措置を講じようとする場合には,影響の回避・低減のための措置を講ずること
が困難であることを明確にするとともに,損なわれる環境要素と代償される環境要素につい
て,十分な調査を実施し,措置の内容を慎重に検討する。
・代償措置は,その効果に不確実性が高いことや,代償措置実施のために新たな環境影響が生じ
る可能性があることなどから,安易に実施されることがないようにするための記載である。
-72-
各
論
編
第1章
地域別の環境影響評価の考え方
第1章
1
地域別の環境影響評価の考え方
山地地域
1-1
地域の特性
この地域は,蔵王国定公園や県立自然公園船形連峰,同二口峡谷(一部,丘陵地地域にも点在)
を含み,脊梁山地にはブナ林が残る,自然の極めて豊かな地域である。この豊かな自然の中で,
登山や野外レクリエーション等の自然とのふれあい行動が盛んに行われている。また,本市の水
源である七北田ダム,大倉ダム,青下ダムがこの地域に存在する。この地域の多くは自然公園や
保安林等に指定されており,今後とも,泉ヶ岳山麓等市民と自然とのふれあい空間の整備を進め
つつ,この地域に生息・生育する野生動物を保護し,また,生活に不可欠な水資源の確保や地球
温暖化の原因である二酸化炭素の吸収源の確保のために,自然環境を保全していく必要がある。
1-2
スコーピングの基本的考え方
このように自然の極めて豊かな地域であることから,植物,動物,生態系,景観,自然との触
れ合いの場,水象(水源)等を特に重視する必要がある。この地域の自然の価値は,従来から着
目されている自然性や学術性の観点から比較的とらえやすい。ただし,大型哺乳類に代表される
ような広大な森林地域に依存する生物に着目し,広域的な生息環境の連続性の保全を図るといっ
た観点も今後重要となる。
地域特性からみて,特に留意すべき環境項目の例としては,以下のようなものがある。(なお,
これはあくまで一例であり,他の項目が不要なわけでも,また,この項目すべてが必要なわけで
もない。)
○水質
・水の汚れ(源流部の清流を保全するため。また,下水道等が整備されておらず事業
者が自己処理する可能性が高いため)
○水象
・水源地(水源地の保全)
○地形・地質
・注目すべき地形・地質(渓谷,岩壁等)
・土地の安定性(斜面地等)
○植物
・注目すべき種(高山性のもの,湿地性のもの等特異な立地に依存するもの等)
・植生及び注目すべき群落(特に,自然性の高い森林)
・森林等の環境保全機能(水源のかん養や山地災害の防止等)
○動物
・注目すべき種(イヌワシ・クマタカ等猛禽類,中・大型哺乳類,高山性の動物,渓
流の動物,その他特異な立地に依存するもの等)
・注目すべき生息地
○生態系
・森林生態系(猛禽類,中・大型哺乳類等。上位種,特に広大な森林の広がりに依存
するもの等)
・河川生態系(魚類,サンショウウオ類等。清流と健全な河川環境を指標するもの等)
-73-
○景観
・自然景観資源
・眺望(非日常的な眺望)
○自然との触れ合いの場
・自然との触れ合いの場(優れた自然との触れ合い)
○廃棄物等
・廃棄物(伐採木の削減,有効利用,適正処理)
2
丘陵地地域
2-1
地域の特性
この地域は,山地地域に連なる,都市近郊にあって豊かな自然環境を有している地域であり,
太白山県立自然環境保全地域や権現森,蕃山・斎勝沼,高館・千貫山緑地環境保全地域,県立自
然公園二口峡谷の一部を含んでいる。この地域は中間温帯とよばれ,生物相が非常に多様な地域
である。この地域の森林の多くは人の手が入ることで形成された二次林や植林からなり,農山村
集落が点在するいわゆる里山の景観を形成している。しかし,市街地に隣接する部分では大規模
な住宅団地等として既に市街化しており,西部丘陵地域では現在でも開発需要が高い。また,森
林の多くは,産業構造や生活様式の変化により維持管理が低下している。このようなことから,
カタクリやヒメギフチョウ等の雑木林の生物,ハッチョウトンボ等の湿地の生物等の生息環境が
著しく減少した。山地地域との自然環境の連続性の確保や景観保全等の面から重要な地域である
が,自然環境保全を目的とした法令等による指定は一部に限られており,都市的な土地利用の転
換に当たっては,立地調整段階での慎重な対応が求められる。
2-2
スコーピングの基本的考え方
このように,山地地域と市街地地域の緩衝帯であるとともに,身近な自然として重要な領域で
あることから,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ合いの場,水象等を特に重視する必要
がある。この地域は,一部をのぞいて既存の調査等の情報が少なく,また,かつてはありふれた
環境であった里山の環境が危機的な状況にあるなど,従来のいわゆる自然性や学術性といった価
値基準ではその重要性は十分把握できないことに留意する必要がある。
地域特性からみて,特に留意すべき環境項目の例としては,以下のようなものがある。(なお,
これはあくまで一例であり,他の項目が不要なわけでも,また,この項目すべてが必要なわけで
もない。)
○水質
・水の汚れ(生活環境と身近な生き物の保全の観点。新たな市街地の拡大に当たって
事業者が自己処理する可能性が高いため)
○水象
・地下水・湧水(健全な水循環の維持,地下水等の涵養)
・水辺環境(河川,湖沼等良好な水辺環境)
○地形・地質
・土地の安定性(地すべり地形等)
-74-
○植物
・注目すべき種(雑木林や湿地,放棄水田に立地するもの等)
・植生及び注目すべき群落(良好な雑木林,二次草地,残存するモミ-イヌブナ林等)
・森林等の環境保全機能(森林や農地の保水機能,地下水のかん養機能,森林の山地
災害防止機能等)
○動物
・注目すべき種(オオタカ,カッコウ(市の鳥),カワガラス,カワセミ,ヤマセミ,
トウホクサンショウウオ,ゲンジボタル,ハッチョウトンボ,ヒメギフチョウ等)
・注目すべき生息地(雑木林や湿地,放棄水田,渓流等)
○生態系
・森林生態系(オオタカ等猛禽類,森林性鳥類,タヌキ・キツネ等中型哺乳類等)
・水辺生態系(カエル類,トンボ類,ホタル類,カワセミ等)
○景観
・自然景観資源(地域のシンボルとなる山,川,里山・田園の景観,市街地から眺め
られる稜線や緑等)
・眺望(身近な自然との触れ合いの領域からの眺望,幹線道路等からの眺望,農村集
落からの眺望,市街地からの眺望等)
○自然との触れ合いの場
・自然との触れ合いの場(週末等の身近な自然との触れ合い)
○廃棄物等
・廃棄物(伐採木の削減,有効利用,適正処理)
3
市街地地域
3-1
地域の特性
この地域は,商業,業務,工業・流通,学術・文化,住宅等の様々な都市機能が集積しており,
今後とも,東北の中枢都市としての高次都市機能の集積が求められる。特に,泉中央や長町地区
は副都心として著しい発展を見せている。一方,市街地を拡大することは,自然環境の消失だけ
でなく,エネルギー消費の非効率化等にもつながるため,この地域,特に都心部の低・未利用地
を活用することが期待されている。
本市が「杜の都」と呼ばれる所以は,武家屋敷の屋敷構えの庭木,社寺を取り巻く鎮守の杜,
農家における居久根と呼ばれる屋敷林の緑であるといわれるが,現在では街路樹や青葉山がシン
ボルとなっている。都市のうるおいや景観の観点から,都市内の緑を保全するとともに,青葉山
や水の森,台原等の公園緑地,わずかに残る屋敷林や社寺林等,市街地に残された貴重な生物の
生息空間を核としたビオトープネットワークを形成することが重要である。
また,市街地には歴史的,文化的資源が多く残るとともに,かつては四ツ谷用水等の用水や数
多くの湧水がみられた。今日までの雨水を排除するような都市づくりを反省し,健全な水循環を
回復する取組みも必要である。
さらに,市街地においては,自動車の排出ガスや騒音等の自動車交通公害が大きな環境問題と
なっている。
-75-
3-2
スコーピングの基本的考え方
市街地における事業では,周辺生活空間への大気汚染や騒音等の影響の低減,市街地に残る貴
重な自然環境や歴史・文化的資源の保全が重要であるとともに,都市の再整備に当たっては従来
に比べ環境への負荷の少ない社会基盤の整備が求められる。また,環境影響評価の本来の目的で
はないものの,地域の環境の向上のために,ビオトープネットワークの形成やよりよい景観の形
成に配慮することも重要である。
地域特性からみて,特に留意すべき環境項目の例としては,以下のようなものがある。(なお,
これはあくまで一例であり,他の項目が不要なわけでも,また,この項目すべてが必要なわけで
もない。)
○大気質
・窒素酸化物(新たな自動車交通の発生,工事中の工事車両等による大気汚染等)
○騒音
・騒音(新たな自動車交通の発生,工事中の騒音等)
○水象
・地下水・湧水(雨水の地下浸透等による健全な水循環の維持・回復,地下工事によ
る地下水流の阻害等)
○電波障害
・電波障害(テレビ電波受信に対する建築物等による遮蔽,反射障害等)
○日照阻害
・日照阻害(周辺住宅等に対する建築物等による日照の阻害)
○風害
・風害(建築物等によるビル風等)
○植物
・注目すべき種(都市内に残存する緑地等において事業を行う場合,河川敷の植物等)
・樹木・樹林(良好な樹木,樹林の保全,地域における緑の量の確保等)
○動物
・注目すべき種(河川,河川敷の鳥類,昆虫類等)
・注目すべき生息地(鎮守の杜,河川敷等)
○生態系
・都市における生態系(周辺との連続性等の観点から)
○景観
・文化的景観資源(歴史的文化遺産,まちなみ,ランドマークとなる工作物等)
・眺望(日常生活空間からの眺望等)
○自然との触れ合いの場
・自然との触れ合いの場(日常的な身近な自然との触れ合い)
○廃棄物等
・廃棄物(既存建物の解体等に伴う建設廃材の有効利用・適正処理,供用時の廃棄物
の減量化設備の組み込みによる廃棄物削減等)
・水使用(供用時の雨水・中水等利用設備の組み込みによる水使用量の削減等)
-76-
○温室効果ガス等
・二酸化炭素(省エネルギー,新エネルギーの利用等による排出量削減等)
4
東部田園地域
4-1
地域の特性
この地域は,本市の産業基盤の一つである農業用地,特に水田が広く分布している地域である。
都市化の進展や仙台東部の道路の開通とともに,この地域の開発需要も高くなりつつあり,また,
農業後継者の不足等から,農地の維持に困難が予想される。しかし,水田等の農地は,貯水池と
保水機能や洪水調節機能等を有するとともに,屋敷林に囲まれた家々や鎮守の杜,水辺等の多様
な環境により生物の生息空間として,また,風景として重要な価値を有している。このような環
境面から水田等の価値を再認識し,都市的な土地利用の転換に当たっては慎重な配慮が必要であ
る。
この地域で特に留意すべき事項としては,大沼をはじめとする大小の湖沼群の存在があり,周
辺の農地等とともに,カモ類等の越冬地となっている。
4-2
スコーピングの基本的考え方
田園地域における事業では,水田等の有する機能に留意し,水象,植物,動物,生態系,景観,
自然との触れ合い活動の場等を対象とする必要がある。また,軟弱層が厚く分布する地域がある
ことから,地盤沈下にも留意を要する。
地域特性からみて,特に留意すべき環境項目の例としては,以下のようなものがある。(なお,
これはあくまで一例であり,他の項目が不要なわけでも,また,この項目すべてが必要なわけで
もない。)
○水象
・河川流・湖沼(洪水時の内水氾濫防止の観点から,水田等の洪水調節機能の変化等)
・水辺環境(湖沼,用水等の水辺の変化)
○地盤沈下
・地盤沈下(軟弱層における盛土,構造物等による地盤沈下等)
○植物
・注目すべき種,注目すべき群落(ヨシ,マコモ群落,湖沼水辺の植物,河川敷の植
物等)
・樹木・樹林(屋敷林,鎮守の杜等の樹木・樹林)
○動物
・注目すべき種(湖沼の鳥類・昆虫類,河川敷の鳥類・昆虫類等)
・注目すべき生息地(湖沼,河川敷等)
○生態系
・田園における生態系(湖沼,田園の水路等)
○景観
・文化的景観資源(屋敷林,鎮守の杜,田園の風景等)
・眺望(集落等の日常生活空間からの眺望,幹線道路からの眺望等)
-77-
○自然との触れ合いの場
・自然との触れ合いの場(湖沼における水辺の自然との触れ合い等)
5
海浜地域
5-1
地域の特性
この地域は,仙台湾海浜県自然環境保全地域を含み,七北田川,広瀬川,名取川が太平洋に注
ぎ,そこから供給される土砂と海岸流によって砂浜が形成され,クロマツの防潮林とともに白砂
青松の美しい景観を呈している地域である。また,蒲生干潟や井戸浦の干潟が形成されており,
シギやチドリ等の水鳥の飛来地として有名であり,とりわけ蒲生干潟では,国の天然記念物であ
るコクガンもみられる。海岸に沿っては,藩政期に北上川と阿武隈川を結ぶ交通路として整備さ
れた貞山堀がある。この地域は,これらの資源を活用し,釣り,海水浴,野鳥観察等で親しまれ
ており,今後とも自然環境の保全とレクリエーション等の利用の両立を図っていくことが重要で
ある。
5-2
スコーピングの基本的考え方
海浜部における事業では,貴重な自然とこれらを活かした自然との触れ合い活動に留意し,水
象,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ合い活動の場等を対象とする必要がある。
地域特性からみて,特に留意すべき環境項目の例としては,以下のようなものがある。(なお,
これはあくまで一例であり,他の項目が不要なわけでも,また,この項目すべてが必要なわけで
もない。)
○水象
・海域(海岸部の工作物等による潮流の変化等)
○地形・地質
・注目すべき地形・地質(砂浜等)
○植物
・注目すべき種(海浜部の植物)
・注目すべき群落(砂浜植物群落,塩生植物群落)
○動物
・注目すべき種(干潟等の鳥類,イトヨ等魚類等)
・注目すべき生息地(干潟,クロマツ林,名取川河口の汽水域等)
○生態系
・干潟生態系(シギ・チドリ等と餌生物)
○景観
・自然的景観資源(砂浜海岸等)
・文化的景観資源(貞山堀等)
・眺望(海浜部等レクリエーション空間からの眺望等)
○自然との触れ合いの場
・自然との触れ合いの場(釣り,海水浴,野鳥観察等)
-78-
第2章
事業別の環境影響評価の考え方
第2章 事業別の環境影響評価の考え方
1 道路
<対象事業の概要>
・道路は,高速自動車国道から林道まで種類が様々で,かつ,平面線形はもとより高
架・橋梁,トンネル等構造によっても影響特性は大きく異なる。
・ただし,概括的にみると,自然性の高い地域の道路と,それ以外の地域における幹
線道路(4車線以上又は自動車専用道等)にわけることができる。
<立地の特性>
・様々な道路を含むため,自然性の高い地域から,田園地域,市街地内まで多様な立
地の可能性が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。一般的な造成事業等に比べ,敷地の緩衝帯がないため,市街地内の事
業等では周辺への騒音等の影響が想定される。自然性の高い地域における道路では
生物への騒音影響等が想定される。
・造成による自然環境への影響は存在影響として扱い,造成工事に伴う紛じん,河川
の濁りを対象とする。
・林道等自然的な地域内においては,資材等の運搬による騒音等の生物への影響にも
留意する。また,工事用の道路を整備したり,ヘリ等を利用する可能性にも留意す
る。
(存在・供用時)
・自動車の走行による大気質(主に二酸化窒素,浮遊粒子状物質),騒音,振動等の
影響が生じる。一般的には4車線以上又は自動車専用道のため,相当量の交通量が
想定される。一方,自然性の高い地域における道路は走行量は少ないと想定される
が,生物への騒音影響等が想定される。また,山間部の谷筋の道路においては,大
気汚染物質の滞留等地形による非拡散への影響に留意する。さらに,山間部の道路
では,動物の事故(夜間の光に誘引されるものを含む)にも留意する。トンネル抗
口,堀割部,インターチェンジ周辺等の特殊部では,大気質や騒音の予測を重点的
に実施する。
・なお,道路の影響評価に当たっては,当該道路だけでなく,これに接続する道路の
整備,道路整備により誘発される周辺の交通量の増加等についても留意する。
・一般的に道路においては,水質は対象としないが,休憩施設等を整備する場合にお
いては対象とする。
・なお,融雪剤散布による水質,その他自然環境へ影響にも留意する。
・高架構造の道路においては,日照阻害,電波障害,低周波音等にも留意する。
・道路の存在により,一般的に植物,動物,生態系,自然との触れ合いの場等への影
響が生じる。また,道路は線状の構造物であることから,動物の生息域の分断,人
と自然との触れ合いの動線への影響等が想定される。
・道路照明による植物,動物への影響にも留意する。
-79-
・山間部の道路(法面の出現等),高架や盛土の道路においては,景観を対象とする。
また,田園地域等における一般道については,道路建設に伴って誘発される沿道の
景観の混乱について留意する。なお,整備した道路から見た景観(いわゆる道路の
内景観)については,環境影響評価の対象とはしない。
2
ダム,堰又は放水路
<対象事業の概要>
・ダム及び堰は,湛水面積が一定規模以上のもの,放水路では直接改変面積が一定規
模以上のものを対象としている。
<立地の特性>
・ダムについては,河川上流部の自然性の高い地域への立地が想定される。
・堰については,河川の中流部から下流部,放水路は下流部の河口付近における立地
が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。一般的な造成事業等に比べ,敷地の緩衝帯がないため周辺への騒音等
の影響が想定される。ダム等自然性の高い地域における事業では生物への騒音影響
等が想定される。
・河川に係る工事であるため,濁水やコンクリート工事に伴う水素イオン濃度の変化
が想定され,河川内や水辺の生物への影響が想定される。また,工事に伴う紛じん
に配慮する。
・ダムでは,自然的な地域内に立地するため資材等の運搬による騒音等の生物への影
響にも留意する。また,骨材の採取,工事用の道路を整備,ヘリの使用の可能性に
も留意する。なお,骨材の採取,工事用道路の整備により自然環境の直接的改変に
ついては,本体工事と同様,存在影響として取り扱う。
(存在・供用時)
・工作物の存在,湛水域の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ合
いの場等への影響が生じる。特に,ダムにおいては良好な自然環境の地域に立地す
ること,平野部等においては,周辺の土地利用が進む中で河川は貴重な自然の残る
場であること等から,自然環境への影響は重要である。
・ダム及び堰の存在により,河川における魚類の遡上,降下等河川生態系に影響を生
じる。
・ダム及び堰の存在及び供用により,下流域の水量の減少が生じ,下流の水質や水温
変化,生物や利水,景観,自然との触れ合いの場等への影響が生じる。
・ダム及び堰では,貯水池の存在により,貯水池内の水質の変化(富栄養化,溶存酸
素量の低下,水温の変化)等が生じ,これらの放水により下流部の水質や水温が変
化し,生物や利水,自然との触れ合いの場等への影響が生じる。
・ダムの放水等による低周波音に留意する。
-80-
3
鉄道又は軌道
<対象事業の概要>
・基本的にすべての鉄道・軌道と,一定規模以上の操車場・車庫等を対象としている。
<立地の特性>
・鉄道又は軌道については,市街地又は新市街地における立地が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。一般的な造成事業等に比べ,敷地の緩衝帯がないため特に市街地にお
ける工事による周辺への騒音等の影響が想定される。
・市街地での立地の場合は造成による影響は紛じん程度にとどまると想定されるが,
丘陵地等で実施する場合は,造成による水の濁りについても対象とする。
・地下鉄の場合,地下工事による地下水の排出等の影響が想定される。
(存在・供用時)
・列車の走行により騒音,振動が生じる。
・鉄道敷や駅舎,操車場等の工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然
との触れ合いの場等への影響が生じるが,立地条件により,現状において樹林等が
存在しないような場合には植物,動物,生態系,自然との触れ合いの場については
簡略化したり対象から除外することができる。
・高架構造においては,日照阻害,電波障害にも留意する。
・水質は,駅舎等からの排水が想定されるが,市街地においては下水道に接続するこ
とを想定し,一般的には対象としない。
・地下鉄の場合は,地下水の流れの阻害等が想定される。
・鉄道利用のために誘発される交通による影響についても留意する。
4
飛行場
<対象事業の概要>
・飛行場及び陸上のヘリポートを対象としている。
<立地の特性>
・飛行場については平野部の田園地帯等が想定されるが,ヘリポートについては,山
地,丘陵,市街地等多様な立地が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。飛行場については,工事の規模が大きく影響も大きいと想定される。
ヘリポートの場合は,工事の規模が小さいため簡略化や除外が可能であるが,住宅
地等に近接する場合は対象とする。自然的な地域に立地する場合は生物への影響に
留意する。
・造成等の工事については,紛じん,水の濁りに留意する。
-81-
・自然的な地域に立地する場合は,資材等の運搬,工事用道路の設置等についても留
意する。
(存在・供用時)
・航空機の運行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影響が生じる。
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる。
・飛行場施設からの排水による水の汚れ,飛行場施設からの廃棄物について対象とす
る。
・飛行場の場合,利用のために誘発される交通による影響についても留意する。
5
工場,事業場又は研究所
<対象事業の概要>
・工場又は事業場では,製造業,ガス供給業又は熱供給業に係るもので,敷地が一定
規模以上のもの,排出ガス又は排出水量が一定量以上のものを対象としている。
・研究所は,科学技術に係る研究,試験施設で,敷地が一定規模以上のものを対象と
している。
<立地の特性>
・丘陵地又は田園地域への立地が想定される。山地地域や市街地への立地は可能性が
少ないと想定する。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。
・造成を伴う可能性が高く,紛じん,水の濁りに留意する。
(存在・供用時)
・工場・事業場の稼働に伴い,大気質(主に二酸化窒素,浮遊粒子状物質),騒音,
振動,水質(水の汚れ)等の影響が生じる。また,悪臭の発生,有害物質の使用や
発生の可能性についても留意する。研究所についても,同様の可能性が高く,特に
有害物質について留意する必要がある。
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる可能性が高い。
・工場・事業場については,製造に伴う廃棄物や水使用,二酸化炭素の排出の削減に
留意する。
-82-
6
電気工作物
<対象事業の概要>
・一定規模以上の変電所及び送電線を対象としている。
<立地の特性>
・変電所については,丘陵地又は田園地域又は市街地への立地が想定される。送電線
については,山地地域から市街地まで立地の可能性は広い。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。
・造成を伴う可能性が高く,紛じん,水の濁りに留意する。
・自然的な地域において送電線を設置する場合は,資材等の運搬による騒音等の生物
への影響にも留意する。また,工事用の道路を整備したり,ヘリ等を利用する可能
性にも留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる可能性が高い。特に,送電線は連続性を有することや,
いずれも施設の形状から,景観への影響に十分留意する。
・大気質,水質等については,一般的には特に大きな影響は想定されない。
7
廃棄物最終処分場
<対象事業の概要>
・廃棄物の埋め立て処分場を対象としている。
<立地の特性>
・山地,丘陵地域の谷部,又は海浜部への立地の可能性が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。
・造成を伴う可能性が高く,粉じん,水の濁りに留意する。特に,谷部や海域の工事
の可能性が高く,水域の生物や利水等に十分留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる。特に,水域や水辺の生物に十分留意する。
・廃棄物の埋め立てに伴い,大気質(主に紛じん),騒音,悪臭,水質(水の濁り,
汚れ,有害物質)等の影響が生じ,また,地下水汚染,土壌汚染が生じる可能性が
ある。特に,水質,地下水汚染については,重点化する。
・廃棄物の運搬に伴い,大気質(主に窒素酸化物,紛じん),騒音,振動等の影響を
生じる。
-83-
8
廃棄物処理施設
<対象事業の概要>
・ごみの焼却施設その他ごみ処理施設,産業廃棄物の中間処理施設を対象としている。
これらの主体は,廃棄物の焼却処理を行う施設として想定する。また,し尿処理施
設を対象としている。
<立地の特性>
・ごみの処理施設は,丘陵地域,田園地域,市街地への立地の可能性が想定される。
産業廃棄物処理施設は,丘陵地域,田園地域への立地の可能性が想定される。また,
し尿処理施設は,下水道等の整備が進む中,新規の整備の可能性は低いと想定され,
現施設の改良が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。
・造成を伴う場合は,紛じん,水の濁りに留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる。焼却施設では,煙突が出現することから,景観に特
に留意する。
・焼却施設においては,大気質(窒素酸化物,浮遊粒子状物質,ダイオキシン等有害
物質),騒音,振動,悪臭等の影響が生じる。特に,ダイオキシン等の発生につい
ては,重点化する。
・その他廃棄物の処理施設においては,騒音,振動等が生じる可能性がある。
・焼却施設においては,消却灰の保管,処理により,大気質(主に紛じん),水質(水
の濁り,汚れ,有害物質),土壌汚染,地下水汚染等が生じる可能性がある。
・廃棄物の運搬に伴い,大気質(主に窒素酸化物,紛じん),騒音,振動等の影響を
生じる。
・廃棄物の資源化やし尿処理施設による汚泥の有効利用等により,処理・処分量の削
減に留意するとともに,エネルギーの有効活用等により,二酸化炭素排出量(電力
消費等に伴う排出量を含む)の削減に留意する。
-84-
9
下水道の終末処理場
<対象事業の概要>
・下水道の終末処理場を対象としており,汚泥焼却施設を含む。
<立地の特性>
・下水道の終末処理場は,下流部での立地が想定され,田園地域又は海浜部での立地
が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。
・造成を伴う場合は,紛じん,水の濁りに留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる。
・処理施設の稼働により,水質(水の濁り,汚れ,富栄養化)影響が生じ,騒音,振
動,悪臭等が生じる可能性がある。特に,窒素,リンの負荷の増大,海域の富栄養
化の可能性について重点化する必要がある。また,汚泥の焼却に伴う大気質(窒素
酸化物等)についても留意する。
・汚泥の有効利用等により,処理・処分量の削減に留意するとともに,エネルギーの
有効活用等により,二酸化炭素排出量(電力消費等に伴う排出量を含む)の削減に
留意する。
10
住宅団地又は別荘団地の造成
<対象事業の概要>
・住宅団地の場合,これに付随する緑地,道路,学校,店舗,公園等を含む。別荘団
地についても緑地,道路等を含む。
<立地の特性>
・住宅団地については,丘陵地域,田園地域への立地が想定される。別荘団地につい
ては,山地地域又は丘陵地域の自然が良好な地域への立地が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。山地や丘陵地域の自然環境が良好な地域では,騒音等による生物への
影響に留意する。
・造成による自然環境等への影響は存在影響として扱い,工事中は,紛じん,水の濁
りに留意し,特に,河川の生物への影響に留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる。造成事業による影響は,この直接改変による影響が
最も重要である。
-85-
・居住等により,水質(水の濁り,汚れ),新たな交通の発生に伴う大気質(主に二
酸化窒素),騒音,振動等の影響が生じる可能性がある。特に,別荘団地等,下水
道区域外に整備する場合には,水の処理について十分留意する。また,住宅団地に
あっては,自動車交通が走行する道路沿道の影響を検討するのみならず,自動車交
通削減のための対策案等を検討すること。
・なお,新たに整備された住宅地内における騒音や景観等については,環境影響評価
の対象とはしない。
・居住等による廃棄物の発生,水の使用,エネルギー使用による二酸化炭素の発生等
について,これらの負荷削減の観点から対象とする。
・別荘団地については,特に,水の確保,アクセスのための道路等の整備等関連施設
整備に伴う環境への影響について,十分留意すること。また,別荘団地についてご
みを自己処理する場合には,ダイオキシンその他有害物質の発生等ごみの処理・処
分に伴う影響についても対象とすること。
11
工業団地,研究所団地又は流通業務団地の造成
<対象事業の概要>
・工業団地,研究所団地又は流通業務団地と,これらに付随する緑地,道路,公園等
を含む。
<立地の特性>
・これらについては,丘陵地域,田園地域への立地が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。山地や丘陵地域の自然環境が良好な地域では,騒音等による生物への
影響に留意する。
・造成による自然環境等への影響は存在影響として扱い,工事中は,粉じん,水の濁
りに留意し,特に,河川の生物への影響に留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる。造成事業による影響は,この直接改変による影響が
最も重要である。
・工業団地,研究所団地の稼働による影響は,工場又は事業場に同じ。
・これらの事業では,通勤,資材・製品の運搬等に伴う自動車交通の発生が想定され,
これに伴う大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影響が想定される。これら
の事業においては,自動車交通が走行する道路沿道の影響を検討するのみならず,
自動車交通削減のための対策案等を検討すること。
-86-
12
学校用地の造成
<対象事業の概要>
・学校,専修学校等の施設と,これらに付随する緑地,道路,公園等を含む。
<立地の特性>
・これらについては,主に丘陵地域,田園地域への立地が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。丘陵地域の自然環境が良好な地域では,騒音等による生物への影響に
留意する。
・造成による自然環境等への影響は存在影響として扱い,工事中は,紛じん,水の濁
りに留意し,特に,河川の生物への影響に留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる。造成事業による影響は,この直接改変による影響が
最も重要である。
・施設の供用による騒音の影響が想定される。また,下水道区域外にあっては,水質
(水の濁り,汚れ)影響を対象とする。大学にあっては,研究施設(工場・事業場
に含まれる)と同様の影響が想定される。
・これらの事業では,通学,職員の通勤等伴う自動車交通の発生が想定され,これに
伴う大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影響が想定される。
13
スポーツ施設又はレクリエーション施設の造成
<対象事業の概要>
・スポーツ施設,レクリエーション施設には,自然公園内の施設等を含む。
<立地の特性>
・これらについては,山地地域から丘陵地域,田園地域,市街地まで幅広い立地が想
定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。山地や丘陵地域の自然環境が良好な地域では,騒音等による生物への
影響に留意する。
・造成による自然環境等への影響は存在影響として扱い,工事中は,紛じん,水の濁
りに留意し,特に,河川の生物への影響に留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる。造成事業による影響は,この直接改変による影響が
最も重要である。
-87-
・施設の供用による騒音の影響が想定される。また,照明その他による光害の可能性
がある。下水道区域外では,水質(水の濁り,汚れ)を対象とする。
・これらの事業では,利用に伴う自動車交通の集中的な発生が想定され,これに伴う
大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影響が想定される。これらの事業にお
いては,自動車交通が走行する道路沿道の影響を検討するのみならず,自動車交通
削減のための対策案等を検討すること。
・利用に伴い,廃棄物を発生することから,廃棄物の減量化に留意する。
・自然環境が良好な地域では,人の利用に伴う周辺自然環境への影響についても留意
する。
14
浄水施設又は配水施設の造成
<対象事業の概要>
・一定規模以上の造成を伴う浄水施設及び配水施設を対象としている。
<立地の特性>
・これらについては,市街地に近い丘陵地域の山の上における立地が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。山地や丘陵地域の自然環境が良好な地域では,騒音等による生物への
影響に留意する。
・造成による自然環境等への影響は存在影響として扱い,工事中は,紛じん,水の濁
りに留意し,特に,河川の生物への影響に留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる。造成事業による影響は,この直接改変による影響が
最も重要である。また,立地から,景観影響に特に留意する。
・処理に伴うエネルギー使用の効率化,二酸化炭素排出量の削減に留意する。
・また,環境影響評価にはなじみにくいが,浄水処理方法の改善により,トリハロメ
タン等上水中の有害物質の生成に留意する。
15
都市公園の造成,墓園の造成
<対象事業の概要>
・一定規模以上の都市公園を対象としている。
<立地の特性>
・これらについては,主に丘陵地域における立地が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。山地や丘陵地域の自然環境が良好な地域では,騒音等による生物への
影響に留意する。
-88-
・造成による自然環境等への影響は存在影響として扱い,工事中は,紛じん,水の濁
りに留意し,特に,河川の生物への影響に留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる。造成事業による影響は,この直接改変による影響が
最も重要である。特に,これらの事業は相当程度の緑地を残すことが可能な事業で
あることから,現状の自然環境の特性や価値を十分ふまえた土地利用を行う。
・施設の供用による騒音の影響が想定される。下水道区域外では,水質(水の濁り,
汚れ)を対象とする。
・これらの事業では,利用に伴う自動車交通の発生が想定され,これに伴う大気質(主
に二酸化窒素),騒音,振動等の影響が想定される。走行する道路沿道の影響を検
討するのみならず,自動車交通削減のための対策案等を検討すること。
・利用に伴い,廃棄物を発生することから,廃棄物の減量化に留意する。
・自然環境が良好な地域では,人の利用に伴う周辺自然環境への影響についても留意
する。
16
畜産施設
<対象事業の概要>
・一定規模以上の牛房,豚房,鶏の飼育施設を対象としている。
<立地の特性>
・これらについては,主に丘陵地域における立地が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。山地や丘陵地域の自然環境が良好な地域では,騒音等による生物への
影響に留意する。
・造成による自然環境等への影響は存在影響として扱い,工事中は,紛じん,水の濁
りに留意し,特に,河川の生物への影響に留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる。
・施設の供用による悪臭,水質(水の汚れ,富栄養化)影響が生じる。
・廃棄物の有効活用,減量化に留意する。
-89-
17
土石の採取
<対象事業の概要>
・土砂,岩石,砂利等の採取を対象としている。
<立地の特性>
・これらについては,山地地域,丘陵地域,河川敷における立地が想定される。
<影響要因の特性>
(存在・供用時)
・採取を行う敷地の存在,工作物・機械類等の存在により,植物,動物,生態系,景
観,自然との触れ合いの場等への影響が生じる。特に,景観の影響に留意する。
・採取に伴う大気質(紛じん,二酸化窒素),騒音,振動,水の濁り等の影響が生じ
る。山地や丘陵地域の自然環境が良好な地域では,騒音等による生物への影響に留
意する。
・土石の運搬車両の走行により大気質(紛じん,二酸化窒素),騒音,振動等の影響
が生じる。
・廃棄物の有効活用,減量化に留意する。
・採取後の跡地の植物,景観等に留意する。
18
土地区画整理事業
<対象事業の概要>
・一定規模以上の土地区画整理事業を対象としている。
<立地の特性>
・土地区画整理については,丘陵地域,田園地域への立地が想定される。また,市街
地内における再開発を目的とした事業が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。
・造成による自然環境等への影響は存在影響として扱い,工事中は,紛じん,水の濁
りに留意し,特に,河川の生物への影響に留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,植物,動物,生態系,景観,自然との触れ
合いの場等への影響が生じる。造成事業による影響は,この直接改変による影響が
最も重要である。
・居住等により,水質(水の濁り,汚れ),新たな交通の発生に伴う大気質(主に二
酸化窒素),騒音,振動等の影響が生じる可能性がある。自動車交通が走行する道
路沿道の影響を検討するのみならず,自動車交通削減のための対策案等を検討する
こと。
・なお,新たに整備された市街地内における個々の事業活動による騒音や景観等につ
いては,環境影響評価の対象とはしない。
-90-
・居住等による廃棄物の発生,水の使用,エネルギー使用による二酸化炭素の発生等
について,これらの負荷削減の観点から対象とする。
・とりわけ,都市の再開発として実施される場合には,従来の土地利用に比べ,廃棄
物の発生,水の使用,エネルギー使用による二酸化炭素の発生等において改善に努
める。
19
公有水面の埋め立て又は干拓
<対象事業の概要>
・一定規模以上の埋め立て又は干拓事業を対象としている。
<立地の特性>
・海浜部における事業が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。
・工事による自然環境等への影響は存在影響として扱い,工事中は,水の濁りに留意
し,特に,海浜,海域の生物への影響に留意する。
(存在・供用時)
・造成後の敷地及び工作物の存在により,水象(海域),地形・地質(砂浜等の注目
すべき地形・地質),植物,動物,生態系,景観,自然との触れ合いの場等への影
響が生じる。海浜部は自然環境のすぐれた地域であり,この影響が最も重要である。
・敷地の利用に伴う影響は,敷地の利用の方法によることから,利用方法に応じ,関
連する事業種別の影響を参考に検討すること。
-91-
20
大規模建築物又は高層の建築物・工作物
<対象事業の概要>
・一定規模以上の延床面積を有する建築物又は100m以上の建築物・工作物を対象と
している。
<立地の特性>
・主に市街地における事業が想定される。
<影響要因の特性>
(工事中)
・重機の稼働,工事車両の走行により大気質(主に二酸化窒素),騒音,振動等の影
響が生じる。市街地内の事業等では一般的な造成事業等に比べ敷地の緩衝帯が少な
いと想定され,周辺への騒音等の影響が大きいと想定される。
・大規模な建築物等では,地下部分も大きい可能性があり,地下水の排除等による影
響の可能性がある。
(存在・供用時)
・工作物の存在により,景観,風害,日照阻害,電波障害等の影響が生じる。また,
立地条件によって,植物,動物,生態系,自然との触れ合いの場,文化財等への影
響を対象とする。
・施設の供用により,新たな交通の発生に伴う大気質(主に二酸化窒素),騒音,振
動等の影響が生じる可能性がある。なお,自動車交通については,走行する道路沿
道の影響を検討するのみならず,自動車交通削減のための対策案等を検討すること。
・施設の供用による廃棄物の発生,水の使用,エネルギー使用による二酸化炭素の発
生等について,これらの負荷削減の観点から対象とする。また,水循環の改善のた
め,水象を対象とし,雨水の地下浸透等に留意する。
21
その他の造成事業,複合開発事業
・これらについては,関連する事業種別を参照。
-92-
第3章
環境影響要素別の手法の解説
1
大気質
1
大気質
1-1 基本的考え方
(1)考え方
大気汚染物質は,主に燃焼に伴い発生し,化学物質や金属などの物理的処理過程や
揮発によっても発生する。発生源には工場・住宅などの固定発生源,自動車などの移
動発生源がある。大気汚染物質は,人の健康への影響をはじめ,植物や農作物の枯損,
生育不良,建造物の腐食,降下ばいじんによる生活環境の悪化など,さまざまな影響
を引き起こす。
大気汚染は,かつての工場・事業場のばい煙に起因する問題から,自動車交通を主
な要因とする問題に変化してきており,さらに近年では,低濃度でも長期的な暴露に
より影響が懸念される有害化学物質による汚染が新たな社会問題となってきている。
環境影響評価においても,このような大気汚染の動向を踏まえて実施していくことが
重要である。
本市の大気環境は,全般的には比較的良好な状態にあるものの,二酸化窒素につい
はほぼ環境基準の上限に近い値で推移し,浮遊粒子状物質では幹線道路沿線において
環境基準を超える地点もあるなど,市の中心地や主要幹線道路沿道等において自動車
交通公害が深刻化しつつある。このような中,市の環境基本計画では,環境基準を非
達成のものについては速やかに達成し,すでに達成しているものについては現状より
悪化させないこと,また,二酸化窒素については1時間値の日平均値が0.04ppm (国
の環境基準のゾーンの下限値)以下であることを目標としている。このようなことか
ら,環境影響評価の実施に当たっては,道路事業のみならず,施設の稼働等に伴う業
務用車や利用者の車利用についても十分留意する必要があり,単に特定の地点や経路
における大気汚染防止ではなく,より広域的な交通流等を勘案した検討が望まれる。
なお,地球温暖化やオゾン層の破壊,酸性雨等も大気汚染に起因する問題であるが,
温室効果ガス及びオゾン層破壊物質は事業による地球環境への負荷を低減するという
観点から「温室効果ガス等」に係る項目として別枠で扱うこととし,酸性雨は主たる
酸性物質の一次物質である二酸化硫黄及び二酸化窒素を調査対象とすることにより代
える。
(2)環境影響要素
大気質における環境影響要素は,以下のうちから適切に選定する。
一般的には,二酸化窒素(窒素酸化物),二酸化硫黄,浮遊粒子状物質,粉じん,
その他有害物質のうちから,事業により発生,使用等が想定されるものとする。
その他有害物質の例としては,以下のようなものがある。
-93-
環 境 影 響 要 素
表
2
の
物
質
有
害
物
質
備
考
・二酸化窒素
・二酸化窒素に係る環境基準について
(昭和53年 環告第38号)
・二酸化硫黄
・大気の汚染に係る環境基準について
(昭和48年 環告25号)
・浮遊粒子状物質
・大気の汚染に係る環境基準について
(昭和48年 環告25号)
・粉じん
・大気汚染防止法第2条第4項(粉じん)
・一酸化炭素
・大気の汚染に係る環境基準について
(昭和48年 環告25号)
・なお,光化学オキシダントは環境基準が設定
されているが,予測等の技術的問題と,一事
業において講じうる対策の限界等を勘案し,
一般的には対象としないものとする。
・ベンゼン
・トリクロロエチレン
・テトラクロロエチレン
・ベンゼン,トリクロロエチレン及びテトラク
ロロエチレンによる大気の汚染に係る環境基
準について(平成9年環告第4号)
・石綿
・大気汚染防止法第2条第5項(特定粉じん)
・カドミウム及びその化合物
・塩素及び塩化水素
・フッ素,フッ化水素及び
フッ化珪素
・鉛及びその化合物
・大気汚染防止法第2条第1項第3号
(有害物質)
・ポリ塩化ジベンゾフラン及
びポリ塩化ジベンゾ-パラ
-ジオキシン(別名ダイオ
キシン類)
・アクリロニトリル
・アセトアルデヒド
・塩化ビニルモノマー
・クロロホルム
・1,2-ジクロロエタン
・ニッケル化合物
・ヒ素及びその化合物
・1,3-ブタジエン
・ベリリウム及びその化合物
・ホルムアルデヒド
・マンガン及びその化合物
・六価クロム(当面,クロム
及びその化合物を測定)
・ジクロロメタン
・水銀
・ベンゾ(a) ピレン
・大気汚染防止法附則第9項第3号
(指定物質)(前出の物質を除く)
・その他の有害物質等
・その他,科学的知見により人の健康,自然環
境等への影響が認められる物質
・有害大気汚染物質モニタリング指針について
(平成9年環大規第26号)のモニタリング
対象物質(前出の物質を除く)
-94-
1-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,大気汚染物質のうち環境影響評価を行う対
象を定め,かつその対象ごとに調査,予測,評価の手法(保全対策検討の方針を含む)
を定める(以上,方法書に記載する事項)ために必要な情報を得ることにある。その
ために,事業予定地及び周辺地域(ある程度広域)における大気汚染の概況を把握す
るとともに,大気の拡散に係る気象の特性,特に保全を要する施設等の存在,大気質
の現状や将来の動向に係る人口及び産業の状況や交通の状況等を把握する。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①の大気質の状況を基本とし,②から⑤の他関連
項目について,大気質の観点から以下のような事項を把握する。
概況調査項目
①大気汚染の状況
調 査 内 容
・大気汚染物質濃度の概況,特徴(既存の発生源の有無,
種類等を含む)
・大気質に係る苦情の状況
②気象の状況
・風向・風速等
・地形による逆転層の発生等特殊な気象の有無
③保全上配慮が必要な
施設の状況
④法令等による指定・
・事業予定地周辺の住宅地,病院,学校等,特に配慮が必要
な施設の分布
・県,市の大気質に関する規制,計画,目標等の有無,内容
規制等
⑤その他
・大気質の現状や将来の大気質に影響を与えると想定される
人口,産業,交通,開発等の動向等
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業予定地周辺の大気質の広域的にみた位置づけが可能な範囲
とし,極力複数の測定地点を含むよう設定する。ただし,発生源の状況等からみて大
気質が良好なことが明らかであり,近傍に複数の測定地点が存在しない場合はこの限
りではない。
なお,保全上配慮が必要な施設の状況については,広域への大気汚染が想定される
ような事業を除いては,事業予定地及び関係車両の走行経路周辺に限定しても差し支
えない。
-95-
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,既存文献等によるものとし,必要に応じ市への聞き取り等を行
う。
なお,大気汚染の状況については,事業予定地周辺には測定局が存在しない可能性
も高い。そのような場合は,道路や事業所等の主要な発生源の分布の状況等から,現
状において汚染が想定されるか否か等について推定する。
なお,窒素酸化物については,「仙台市窒素酸化物将来予測調査」(1995)を参考と
すること。
調 査 項 目
①大気汚染の状況
調 査 方 法
・大気汚染測定結果等既存文献の収集,整理
・苦情については,必要に応じ市の聞き取り
②気象の状況
・県気象年報,市資料,大気常時測定局データ等既存文献
等の収集,整理
③保全上配慮が必要な
施設の状況
④法令等による指定・
・市資料,地形図等既存文献の収集,整理
・必要に応じ,現地確認
・県,市資料の収集,整理
規制等
⑤その他
・地形図,土地利用図,都市計画図,その他市資料等既存
文献の収集,整理
・開発等動向については市への聞き取り
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
●大気質の概況記述内容及び作成図表例
1.事業予定地及び周辺の大気質の概況
・大気汚染物質濃度及び苦情の状況等により,大気質の広域的な位置づけ,動向等
を記述
図表:既存の大気質測定地点位置図
既存の大気汚染測定結果図又は表
2.大気質保全上の留意点
・上記の内容及び関連する②から⑤の内容を勘案し,事業予定地周辺における大気
質保全上の留意点を記述(②から⑤の関連事項のうち,大気質に係る内容につい
ては概要を記述すること)
-96-
1-3
スコーピング
<事業特性と大気質の現状を踏まえたスコーピング>
・大気質のスコーピングにおいては,影響要因(造成,重機の稼働,車両の走行,燃
料の使用,廃棄物の焼却(伐採木の焼却,供用後の自家処理等含む)等)の内容及
び大きさ(量)に応じて対象物質を選定するものであるが,大気質の現状を勘案す
ると,一般的には,二酸化窒素や浮遊粒子状物質を主に対象とし,二酸化硫黄,一
酸化炭素は特に大量の排出が想定される場合に対象とする。
・一方,近年問題となっている有害化学物質については,法規制物質だけでなく,科
学的知見に基づき,広く対象とする必要がある。その際,事業により使用又は発生
する物質を対象とするが,ダイオキシン類のように,非意図的に生成される物質に
ついても,既存事例等から推定し対象とすること。
・なお,光化学オキシダントについては,生成のメカニズムが複雑で予測手法が確立
されておらず,また,広域にわたる現象であることから,環境影響評価において対
象とすることは困難である。
・スコーピングでは,対象とする具体的な物質名を明らかにする。
<重点化項目,簡略化項目の明確化>
・事業特性では,工場,廃棄物処理施設等で高煙突を伴う事業,流通団地造成やレク
リエーション施設等で大量の発生交通が生じる事業等,特に負荷が大きい事業では
重点化する。
・立地条件では,逆転層が生じやすいなど,大気が滞留しやすい地形条件,気象条件
の場合重点化する。また,主として住宅等の集中する市街地における事業において
は重点化する。
・項目では,造成による粉じん,重機の稼働や工事用車両の走行に伴う二酸化窒素等
は簡略化する。ただし,市街地内での工事においては,必要に応じ標準的に実施す
る。
・有害化学物質については,一般的に予測等は不可能なため保全対策で対応すること
となるが,影響の重大性が低いわけではなく,「配慮項目」にはあたらない。管理
体制,監視体制等を明確にすることをもって調査,予測とする。
-97-
環境影響要素
選定に際しての考え方
重点化・簡略化
環境基準項目
・一般的には,窒素酸化物を選
・自動車交通の量,使用する燃料
定
の種類及び量,煙突の高度等に
・自動車の走行量等が多い場合
や工場・事業場等において,
浮遊粒子状物質を選定
応じ,重点化,簡略化
・大気が滞留しやすい地形等の場
合重点化
・大量の化石燃料を使用する場
合に二酸化硫黄を選定
・主として住宅等の集中する市街
地内で重点化
・著しく自動車交通量が多い場
合等に一酸化炭素を選定
・ベンゼン,トリクロロエチレ
ン等は使用,発生する場合に
・重機の稼働や工事用車両の走行
に伴う二酸化窒素は簡略化
・ただし,市街地内では必要に応
じ標準的に実施する。
選定
粉 じ ん
・造成工事を伴う場合選定
・解体に伴い石綿の発生が想定
される場合に石綿を選定
・通常は,簡略化又は配慮項目で
対応。ただし,市街地内では標
準的に実施する。
・土石の採取の場合重点化
・解体に伴い石綿が発生する場合
は留意
そ の 他
・有害化学物質の使用,保管,
生成等が想定される場合選
定
・廃棄物焼却施設の場合,ダイオ
キシン類を重点化
・主として住宅等の集中する市街
・非意図的生成物にも留意
地内では重点化
1-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1.大気汚染物質濃度
選定した項目に係る汚染物質の大気中濃度
2.気象
① 汚染物質濃度測定時の風向・風速
② 濃度予測に必要な風向・風速,気温,日射収支量,雲量等
3.その他
必要に応じて発生源の状況,拡散に影響を及ぼす地形等の状況,周辺の人家・施設
等の社会的状況についても把握する。
・項目として選定した物質の大気中濃度を調査する。現状を把握することにより,将
来の状態の予測におけるバックグランド濃度設定,大気拡散条件の設定等の基礎資
料とする。そのため,大気汚染物質の大気中濃度を調査対象した場合,原則として
濃度測定時の気象条件をあわせて対象とする。
-98-
・予測において拡散計算を予定する場合,年間を通じた地上風向・風速,日射量,夜
間雲量又は放射収支量を対象とする。また,高煙源(概ね50m以上を目安とする)
が想定される場合や逆転層が発生しやすいと想定される場合は,上空の風向・風速,
気温の鉛直分布を対象とする。また,複雑な地形等でダウントラフトが想定される
場合にも上空の状況を把握することが望ましい。
・粉じんについて,風の条件から影響を推定する場合には,必要な期間の地上風向・
風速を対象とする。
・予測において模型実験を予定する場合,地形等を対象とする。
・自動車交通の増加による既存道路沿道への影響を予測評価する場合,現状の交通量,
車種構成(大型車の混入状況等),走行状態,道路構造等を把握する。
・他の発生源の状況,周辺の人家・施設の状況等は,調査結果の解析や予測地点選定
等に必要な情報であるが,基本的には概況調査の結果を活用するものとし,必要に
応じて補足調査を行う。
・なお,著しい大気影響が想定され,地域シミュレーションモデルを構築する場合は,
他の発生源のデータを対象とする。
(2)調査方法
① 調査方法は大気測定局,気象台等の既存資料や文献により調査するとともに,必
要に応じ現地調査を実施する。
② 測定方法は,大気汚染物質濃度については「大気汚染に係る環境基準について」
に定める方法等,気象については「地上気象観測指針」に定める方法等とする。
<標準手法・簡略化・重点化項目の調査方法>
・標準的には,大気汚染物質濃度及び気象(風向・風速等)の1年間以上にわたる既
存調査結果を収集,解析するとともに,一定期間の現地調査を実施する。
・重点化項目では,必要に応じ現地調査の期間をより長くしたり,調査地点を増やす。
・簡略化項目では,現地調査を省略することができる。
<既存文献等調査>
・大気質や気象の既存の測定結果は,1時間値等のデータの形で収集し,気象条件と
大気汚染物質濃度の関係,既存の測定結果との相関その他の解析を行う。
・既存道路の交通量等の状況は,道路センサスを基本とし,必要に応じ現地調査,現
地確認等を実施する。
<現地調査>
・現地調査を行う場合は,技術指針に示したものの他,以下の調査方法等に準拠して
調査を行う。
○基準項目→「大気の汚染に係る環境基準について」(昭和48年環境庁告示第
25号),「二酸化窒素に係る環境基準について」(昭和53年環境庁告示第38号),
「ベンゼン,トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンによる大気の汚染に
係る環境基準について」(平成9 年環境庁告示第4 号)
-99-
○じん→「石綿に係る特定粉じんの濃度の測定法」(平成元年年環境庁告示第93
号)「JIS-Z-8814 ロウボリウムエアサンプラ及びロウボリウムエアサンプラに
よる空気中浮遊粉じん測定方法」
○害物質→「大気汚染防止法施行規則」(昭和46年厚生省通令1号)第15条に定
められた方法,「有害大気汚染物質測定方法マニュアル」(平成9年環境庁大気
保全局大気規制課)
○その他の適切な方法
・なお,気象については,「地上気象観測指針」(平成5年気象庁)又は「高層気象
観測指針」(平成7年気象庁)によることを基本とするが,複雑な地形での上空の
空気の流れの状況については,発煙筒による煙流の観測等の簡易な手法によること
もできる。
<調査結果の解析>
・大気質や気象の測定結果は,現状の汚染構造の把握や予測条件の設定のため,適切
な解析を行い,経時的変動,季節変動,気象条件による変動等を明らかにしておく
必要がある。(以下,解析例)
○年平均値,月(季節)平均値,日平均値,1時間値の最高値
○環境基準達成状況
○曜日別,時間帯別平均濃度
○風向,風速階級別平均濃度
○高濃度出現時の風向,風速等条件
(3)調査地域等
①
調査地域は対象事業により大気質の変化が想定される地域とし,既存の事例や簡
易な試算等により推定し設定する。
② 調査地点は既存の発生源や保全対象の分布を勘案し,調査地域の大気質の現状を
適切に把握し得る地点とする。
<調査地域>
・事業に伴う大気汚染物質の発生源が固定発生源である場合,サットン式,ボサンケ
・ピアソン式等により最大着地濃度地点を推定し,その範囲をもとに十分な安全率
を見込んだもの(例えば最大着地濃度出現距離の2倍程度を目安とするなど)を調
査範囲とする。
・道路等の事業に係る調査範囲は,道路構造が平面,掘割等の場合,道路端から150
~200mの範囲が目安とされているが,周辺の土地利用や事業による負荷の状況等を
考慮して必要に応じ広く設定する必要がある。高架,トンネル換気塔などの場合は
サットン式,ボサンケ・ピアソン式等により最大着地濃度地点を推定し,その範囲
をもとに十分な安全率を見込んだものを調査範囲とする。
・大気質への影響が工事中のみの場合,事業予定地境界及び主な工事用車両通行経路
周辺の比較的狭い範囲に限定して差し支えない。
-100-
<調査地点>
・調査地点は,調査地域内において次の地点を考慮して設定する。
・標準的には1~2地点程度とし,地形条件や保全対象,事業計画の状況に応じて必
要に応じて追加する。
○特定の煙源の影響を受けにくく,調査地域のバックグラウンド値を的確に把握で
きる地点
○地形,地物,気象条件等により高濃度の汚染が予想される地域
○事業予定地周辺の住宅地,病院,学校等,特に配慮が必要な地点(将来的に住宅,
病院,学校等が立地することが明らかな地点も含む)
○交通量,地形,地物等の状況,気象状況などから大気質の状況が典型的であると
予測できる地点
○環境基準点及びその他常時監視点(既存文献等調査による調査)
○その他適切な地点
○なお,大気汚染物質濃度の測定位置は人が通常呼吸し生活する範囲とし,原則と
して地上1.5m程度の高さとするが,周辺に高層住宅等がある場合にはこれを勘案
する。
参考:煙源の種類による最大着地濃度距離と調査範囲例
煙源の種類
設定方法
最大着地濃度距離
調査範囲
ばい煙発生源
50m未満
最大着地濃度
0.5km(20m)~2km(100m)
1 ~4km
(煙突高さ)
50から150 m
距離の2倍
2km(100m)~9km(200m)
4 ~18km
9km(200m) ~15km(500m)
18~30km
―
1 ~2km
150 m以上
自動車発生源
船舶発生源
―
ばい煙発生源の
1 ~4km
50m未満に準じ
る
航空機
1,000mへ上昇す
10km程度
るまでの水平
距離
その他の固定発生源
ばい煙発生源の
工事中等
50m未満に準じ
―
る
1 ~4km
注)( )内は対応する有効煙突高さを示す。
出典:環境影響評価技術マニュアル~大気環境・水環境・土壌環境・その他~
(社団法人環境情報科学センター,1999)
-101-
(4)調査期間等
① 1年間以上にわたる大気質の現状を把握し得る期間とする。
② 頻度の設定に当たっては季節による変動等を考慮する。
<既存資料等調査>
・既存資料の収集対象期間は,1年間以上とし,過去の資料がある場合には,経年変
化を把握しておく。
・気象の測定結果は,長期間(10年間程度)の平均を把握するか,又は調査対象とし
た年が特異な年ではないことを確認しておくこと。(調査対象年の異常年検定等を
実施する。異常年検定とは,当該年風向等が過去10年程度のばらつきの範囲内に入
っているかどうかを統計的に検定するもので,詳しい手法は「窒素酸化物総量規制
マニュアル」参照。)
<現地調査>
・調査期間は,大気質の状況を的確に把握できる期間とし,原則として1年とする。
・調査時期は標準的には,四季又は冬季・夏季の各1週間程度の連続測定とする。
ただし,既存の測定結果との相関を解析することを前提に,高濃度出現期に1カ月
程度の連続測定とすることもできる。
・重点化項目では,必要に応じ現地調査の期間を長くする,あるいは1年間の連続測
定を行う。
・ただし,有害物質等の調査は,周辺の発生源の状況等を勘案し,測定回数を減じる
ことができる。
1-5 予測
(1)予測内容
大気汚染物質の環境中濃度の状況について予測する。
・予測の内容はスコーピングで選定した物質の将来における大気中の濃度を基本とす
る。
・年平均値等の長期的,平均的な状態の予測及び最悪条件時の短期的濃度(最大負荷,
現況における高濃度出現条件等)の予測を基本とする。
・ただし,有害物質等意図的に排出するものではないもの(排出条件を設定できない
もの)については,排出しない(あるいは排出を最小限にとどめる)ための保全対
策を明らかにし,その効果を検証することにより予測・評価に代える。
(2)予測地域及び予測地点
<予測地域>
・予測地域は,大気質の変化の程度を十分に把握できる範囲とし,調査の範囲に準じ
る。
・必要に応じ,工事中及び供用後の区分ごとに設定する。
-102-
<予測地点>
・予測は,予測地域全体における濃度の平面的な分布を予測する(等濃度線図の作成)
ことを基本とする。
・ただし,最悪条件の把握や将来の事後調査との関連で,特に地点を設け重点的に予
測を行う場合は,以下の事項を考慮して設定する。
○現況調査地点(現地調査地点又は既存の大気汚染測定地点)
○最大着地濃度が予想される地点
○地形,地物,気象条件等により高濃度の汚染が予想される地域
○事業予定地周辺の住宅地,病院,学校等,特に配慮が必要な地点(将来的に住宅,
病院,学校等が立地することが明らかな地点も含む)
○その他特に重点的な予測を要する地点
(3)予測対象時期等
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 供用後にあっては,事業活動が定常状態に達した時期
<工事中>
・工事による影響が最大となる時期とする。一般的には,工事用機械等の使用が最大
となる工事最盛期を基本とする。ただし,工事による負荷が大きくかつ長期間にわ
たる場合には,必要に応じ工事最盛年の年平均値等長期的な平均値についても予測
を行う。
・工事計画において工期・工区が設定され,それぞれの工事が間隔をおいて実施され
る場合には,各工期・工区ごとの予測を行う。
<供用後>
・事業計画において予定されている施設等が通常の状態で稼動する時期とする。
・施設等の稼動が段階的に行われ,その間隔が長期に及ぶ場合は,それぞれの段階ご
とに予測する。また,通常の稼働状態になるまでに長期を要する場合は,供用開始
後1年目,その他中間的な時期についても予測を行う。
・供用後の大気質の状況は,年平均値等の長期的平均値を基本とし,必要に応じ最悪
条件の短期濃度の予測を実施する。
・なお,環境基準との整合を図る場合は,統計的な手法等により98%値等の推定を行
う。
-103-
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・プルーム式,パフ式を基本とした拡散モデル
・その他の物理モデル(JEAモデル等)
・風洞実験・野外実験
・事例の引用・解析
・保全対策
①
拡散モデルによる数値式
(モデル適用の考え方)
・二酸化窒素,二酸化硫黄,一酸化炭素,浮遊粒子状物質等の予測は,原則として拡
散モデルによる数値式による。拡散モデルは,標準的には,プルーム式(有風時)
とパフ式(無風時)を基本とした手法によるものとし,移動発生源においては,
JEA モデル等を用いる。
プルーム式,パフ式は,計算が簡単であり,応用性も大きいことから広く使用され
ており,拡散パラメータに関する知見も多く存在する。一方,水平方向の拡散場が
一様であると仮定したモデルであるため,複雑な地形や建物等により複雑な気流が
生じる場合には本来使えない。ただし,あまり複雑でない地形の変化やダウンウオ
ッシュ等に対しては有効煙突高や拡散パラメータを修正して適用することができる。
・自動車による影響の予測に用いられるJEA (Japan Environment Agency)モデルは
非正規型のプルームモデルの一種であり,各種パラメータは拡散実験結果から与え
られたものである。このモデルの適用範囲は道路端から概ね200m程度までであるた
め,それより遠方を予測する必要がある場合にはプルーム式と組み合わせて用いる。
・山間地の非常に複雑な地形や,市街地のストリートキャニオン(煙源が建物に囲ま
れた状態)において重点化して予測する必要がある場合(重大な影響が想定される
場合)は,拡散の微分方程式を数値的に解く数値解法を用いる。数値解法は,計算
量が多く,環境影響評価ではまだあまり実施されていないが,コンピュータの性能
の向上等により適用が可能となってきている。
・また,地形を考慮して重点的に予測を行う場合,数値流体力学の方法で流れの方程
式を解き,拡散係数に反映させる方法も適用が可能となってきている。
・なお,拡散モデルによる予測を行う場合,その結果の不確実性や変動幅を明らかに
するため,排出係数等の幅による予測値の変動幅について記述する,複数のモデル
による予測を行うといった配慮が必要である。
・数値式の詳細等については,「窒素酸化物総量規制マニュアル」(環境庁大気保全
局大気規制課編,1995),「浮遊粒子状物質汚染予測マニュアル」(環境庁大気保
全局大気規制課監修,1997)等を参照のこと。
-104-
プルーム・パフモデルの特殊条件への適用方法
特殊条件
逆転層出現時
適用方法
備
考
・地表面と同様,逆転層の下面に
・排煙が逆転層を突き抜ける場
おいても完全反射するものとし
合は地上への影響は小さくな
て計算を行う。
るが,逆に突き抜けない場合
は地上への影響が大きくなる
可能性があるため,突き抜け
判定を行うことが重要。
ダウン
ウオッシュ
ダウンドラフト
・有効煙突高を下げる方法と拡散
・排出ガスの速度が風速の1.5
パラメータを大きくする方法が
倍以上あればダウンウオッシ
ある。
ュは生じない,また,煙突の
・有効煙突高を下げる方法は窒素
高さが周囲の建物の高さの
酸化物総量規制マニュアル参
2.5 倍以上高ければダウンウ
照。
オッシュの出現する可能性は
・拡散パラメータを大きくする方
小さいといわれている。
法は,Gifford の方法がごみ焼
却施設環境アセスメントマニュ
アルに紹介され,U.S.EPA のIS
C3モデルが悪臭防止法の規制基
準設定に関する方式案に取り込
まれている。
(対象物質による留意点)
・二酸化窒素の予測の場合,窒素酸化物から二酸化窒素濃度に変換する必要がある。
変換方法には,指数近似モデル(実験等による知見に基づいて指数関数で変換を行
うモデル),統計モデル(地域の実測値に基づいて最小二乗法により関係式を導く
モデル),定常近似モデル(一酸化窒素のオゾンによる酸化についての反応拡散方
程式求めるモデル)の3つのモデルがあり,環境影響評価では,指数近似モデルが
用いられることが多い。
・浮遊粒子状物質の予測では,粒子の重力沈降,粒子あるいはガス状物質の沈着,二
次粒子の生成を考慮する必要がある。ただし,このうち沈降,沈着は数10km以上の
広い地域における拡散シミュレーションにおいて考慮する必要がある。二次粒子の
生成の主なものとしては,硫酸塩,硝酸塩,塩化物,有機化合物等があり,プルー
ムモデル,パフモデルと組み合わせて計算する二次粒子推計のモデルが提案されて
いる。
・ベンゼン等の有害大気汚染物質については,未解明の点も多いが,通常のプルーム
・パフ式による長期平均値の予測を基本とする。ただし,低煙源である場合が多い
と想定され,ダウンウオッシュ等を考慮する必要がある。
・ダイオキシン類は,類似事例等から排出条件を設定し,通常のプルーム・パフ式に
よる長期平均値の予測を基本とする。ただし,その際,設定した排出条件を保つた
-105-
めの燃焼管理の方法,将来の監視の方法等を明らかにする。
(高濃度予測における留意点)
・高濃度の短期予測は,事業の特性や地域特性から,必要に応じて行う。
・高濃度予測条件は,事業の負荷が最大となる場合と,拡散条件等から高濃度となる
場合を設定する必要がある。事業の負荷については,事業計画から設定する。高濃
度が生じると推定される場合とは,高煙源では対流不安定時,疾風時,逆転層発生
時,ダウンウオッシュ・ダウンドラフト等が,低煙源の場合は弱風時,逆転層発生
時,ダウンウオッシュ・ダウンドラフト等がある。この場合の代表的な気象条件を
設定して計算を行うか,設定が困難な場合は全時間の気象条件について計算する。
・高濃度の予測では,単に濃度の予測を行うだけでなく,その出現の頻度等について
も予測すること。
標準的手法
モデル名
プルーム式
・パフ式
特
徴
適応対象
・計算が容易
・平坦地の固定発生源
・有風時の予測(プルーム式),微風
・積分を用いることで線煙源
や無風時の予測が可能(パフ式)
にも適応可
・平坦地に適応
JEA モデル
・発生源の高さを想定しない
・平面,掘割等の構造の道路
・有風時,無風時の予測が可能
②
風洞実験・野外実験
・主として地形,工作物等により汚染物質の移流,拡散に特殊な状況が生じると推定
される場合には,地形模型等をもちいた風洞実験を実施する。
・また,上記のような場合,気象特性や拡散パラメータの推定のために,トレーサー
物質を用いる野外拡散実験を実施する方法もある。
③
事例の引用・解析
・粉じんについては,風向,風速の状況,土地の改変の方法等が類似する条件下の既
存事例等に基づき予測する。
・農薬の散布や非意図的生成物についても,類似事例等に基づき予測する。
・その他,発生源の種類,規模,気象条件等が類似する事例がある場合,数値式によ
る手法に代えて,類似事例により予測することができる。
④
保全対策の検討による手法
・有害物質等は,排出しないための,あるいは発生を最小限に抑えるための管理・運
用方法等の明確化,類似事例等によるその効果の検証,将来の監視体制とデータの
公表方法の明確化等,保全対策を明らかにすることにより予測,評価を行う。
・なお,この場合の将来の監視体制は,環境影響評価条例に基づく事後調査とは別に
扱うこととし,事後調査終了後も継続的に実施するものとする。
-106-
参考:大気汚染に係る定量的予測手法の概要,適用条件等
概
要
プルームモデル
パ フ モ デ ル
拡
JEAモデル
散
計
算
ボックスモデル
数 値
解
適 用 状 況
移流,拡散を煙流で表現する。
気象条件や拡散係数,排出量等
を一定としたときの濃度分布の
定常解として求められる。
基本的な式は,発生源強度が定常,
流れの場が定常,ある程度の風があ
る,正規型式は高さ方向に風向風速
一定を前提としている。非正規型式
は高さ方向に風向は一定,風速はべ
き関数近似が与えられているものも
ある。計算が簡単である。
年平均値の算出は,正規型拡散式を用いて有風
時での点源,線源,面源を対象に多例にわたり
用いられている。短期予測にも拡散幅 (σy)
を修正して用いる例がある。正規型を修正する
ことで,混合層高さが無視できない気象条件,
起伏のある地形,建物の影響を受ける範囲でも
適用可能な場合がある。減衰係数等を用いて反
応や沈着効果を考慮した式に修正する場合もあ
る。
プルームモデルの煙流を細切れ
にし,一つ一つの煙塊として移
流・拡散を表現する。移流効果
も考慮した弱風パフ式と無風時
を想定した積分簡易パフ式があ
る。
基本的な式は,高さ方向に風向風速
が一定,高さ方向に拡散係数が一定
を前提としており,水平面内の風向
風速の分布・変化,発生源強度の時
間変化に対応できる。計算が簡易で
ある。
年平均値の算出では,プルームモデルと供用し
て無風時における点源,線源,面源を対象に採
用されている。無風時の計算に積分簡易パフ式
が多例にわたり採用されているが,弱風パフ式
の利用も増えている。対象範囲が狭く地形の効
果を考慮する必要があるような中小発生源(ご
み焼却場等)での短期予測に採用が増えている。
道路(地表の線煙源)向けに作
成された式。風速や拡散係数を
鉛直方向高さのベキ乗で与えた
線煙源拡散式により求める。直
角風時,並行風時,無風時の式
がある。
煙源が地表にあり道路沿道条件を考
慮する他は,有風時はプルームモデ
ル,無風時はパフモデルの同様の前
提条件を持つ。大気安定度として放
射収支量と風速を使用する。
道路について有風時,無風時の双方の場合を対
象に採用されている。特に予測濃度の精度が問
題にされる場合に適用されることが多い。道路
の近傍(200m程度)に適用される。
空間を箱として取り扱い,その
内部濃度は一様として,箱内へ
の流入流出,箱内での生成消滅
により濃度を算出する。箱の数
が一つの単純なものと複数のも
のがある。
対象とする系内は一様で系の境界で
の物質移動,風向風速が明確にされ
ていることが前提条件。非定常場で
の濃度変化,化学変化を含む濃度変
化の予測に適している。
研究レベルでの利用がほとんどで,環境影響評
価に用いられることは少ない。系内での化学反
応を考慮することが容易なため,比較的長時間
の移流や二次生成物質の予測評価に対して適用
されることが多い。
拡散の微分方程式を,差分式等
に変換して数値的に解を求める
もの。
風向・風速の三次元的分布が明確に
されており,モデルの分解能が適切
であり,数値計算誤差の少ないこと
が前提条件である。海陸風,山間部
等の複雑地形,ストリートキャニオ
ン等風の分布や拡散係数が空間的に
変化する場に適用が可能。年平均値
を求めるには計算量が大となる。
ストリートキャニオン,山間部等の風の挙動が
複雑な場所の濃度分布を解析するような,研究
レベルでの利用が行われており,環境影響評価
で用いられることは少ない。
回帰モデルと分類による方法に
分けられる。過去の濃度や気象
との関係等について統計分析し
て,確率的に濃度を予測する。
正確な実測データが十分あり,将来
の状況が現状データの範囲内にある
ことが前提条件である。
濃度の予測については,環境影響評価に用いら
れていることは少なく,光化学汚染の予報など
に用いられている。環境影響評価では,年平均
値と日平均値との換算,NOx→NO2 の変換などに
用いられる。
風洞装置に地形や建物と煙源の
模型を入れ,気流やトレーサー
ガスの濃度を実験的に計測する
ことにより実際をシミュレート
する。
実物と模型との間で相似則が成立す
ることが前提条件である。
複雑な地形地物の数値モデル化の困
難な要因の影響を調べるのに適して
いる。
拡散計算を補って拡散現象に及ぼす地形や建物
の相対的な影響を調べるのに用いられる場合が
ある。
気象測定と同時に野外でトレー
サーガスの濃度を実験的に計測
することにより実際をシミュレ
ートする。
実験時の気象条件が代表性を持って
いること,測定系が十分であること
が前提条件である。実大気での現象
を直接把握するのに有効である。
現地での気象特性や拡散パラメータの推定に使
われることがある。例えば,複雑地形を対象と
する場合,その地点での拡数幅に既存の線図が
利用できるかの確認に使われることがある。
数値流体力学の方法で流れの基
礎方程式を解き,同時に拡散の
数値を求めるもの。
数値モデルの分解能,数値計算の誤
差の少ないことが前提条件である。
リアルタイムの値を求めるのに適し
ている。風向・風速の三次元分布が
明らかでないところに適用する。な
お,流れの基礎方程式を解くとき,
計算労力に大きな負荷がかかる。
建物周り,山間部等の風の挙動が複雑な場所の
濃度分布を解析するために,研究レベルでの利
用が行われており,環境影響評価で用いられて
いることは今のところない。風洞実験結果とモ
デルによる計算結果の比較によってモデルの検
討がされている段階であるが,計算機の能力の
飛躍的向上で将来有望な手法。
法
適用条件・特徴
統計的方法
風 洞 実 験
野外実験
数 値 流 体 力 学
(窒素酸化物総量規制マニュアル(環境庁),東京都環境影響評価技術指針関係資料集(東京都),
大気環境シミュレーション(横山長之他),公害防止の法規と技術(産業公害防止協会),その他資料より作成)
出典)環境影響評価制度総合研究会技術専門部会関連資料集,環境庁企画調整局環境影響評価課,1996
-107-
<バックグランド濃度>
大気汚染物質濃度の将来予測を行う場合には,バックグランド濃度と事業による寄与
濃度を合算することを基本とする。
既存資料等により,計画地周辺の将来濃度が設定されている場合は,予測時期との関
係を検討した上でこれを用いる。(窒素酸化物については,仙台市窒素酸化物将来予
測調査(1995)を参考とする。)ただし,その場合にあっては,計画等の確実性を十分
に検討すること。一般には,将来値が明らかでない場合が多く,現況の濃度をもって,
将来のバックグランド濃度とする場合が多い
なお,その場合,将来の開発動向等により,将来大気質の変化の可能性について検討
しておくこと。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 大気汚染物質等を排出する施設における汚染物質濃度,排出量等
② 道路・鉄道等の交通量,構造等
③ 事業活動に伴い発生する交通量
④ 工事用車両等の台数,走行経路,施工方法等
2 将来環境条件
① 気象,地形等の状況
② 周辺発生源の状況
③ 土地利用,保全対象等
<事業計画による排出条件の設定>
・①は,大気汚染物質を排出する施設について,施設の種類(大気汚染防止法又は公
害の防止に関する条例に係る施設はその区分を記載),能力,構造,台数,配置等
を明らかにし,使用する燃料及び原材料の種類及び量等に基づき,大気汚染物質の
種類ごとに排出量を算定する。なお,各種造成事業においては,対象事業完了後に
設置される工場,事業場等による排出も同様に明らかにする。
・有害物質等については,物質の種類ごとに使用量,保管量,発生が想定される条件
等を明確にする。
・②は,道路の計画交通量や鉄道の走行列車本数,自動車の走行速度,道路や線路の
構造,勾配等から,排出量を明らかにする。また,航空機については,航空機の種
類ごとの離着陸回数を明らかにし,アイドリング,離陸,着陸等のモード別に,進
入上昇経路等における排出量を明らかにする。
・③の自動車交通については,事業計画の実施に伴い新規に発生する交通量,主な走
行経路を明らかにし,自動車の種類及び速度に基づき排出量を算定する。
・④の工事中は,造成等を行う範囲,土工量,工法,工期等を明らかにした上で,工
事用車両及び建設機械の種類,台数,走行経路等に基づき窒素酸化物等の排出量,
粉じんを発生する可能性のある区域等を明らかにする。
・その他,大量の農薬散布による大気影響についても留意する。
-108-
・なお,排出係数等について,既存資料が不十分な場合は,類似施設の調査等により
適切に設定する。
<将来の環境条件>
・①は,拡散の条件に係るもので,基本的には現在の状況を用いる。
・②は,将来のバックグラウンド条件を推定するためのもので,特に道路計画等将来
において想定される発生源に留意すること。
・③は,予測地点の設定や評価に係るもので,特に将来における新たな保全対象の出
現の可能性に留意すること。
1-6
環境保全対策
大気質に係る環境保全対策は,予測結果に基づき,次の事項を考慮して適切に行う。
1
回避
・電気,ガス等の使用
・代替物質使用や生産工程の変更等による有害物質の使用又は発生の回避
・道路のルート変更
2
低減
・良質な燃料の使用
・煙突等高さ,設置場所等の変更
・人や物資の輸送手段の変更,効率化等による自動車交通量の削減
・燃料使用量の削減,効率化
・集じん装置,有害物質処理装置等の設置
・造成面及び工事用車両等からの粉じんの飛散防止対策
・厳格な燃焼管理
・有害物質の使用,保管等の管理の徹底
・環境監視の実施と公表
・事故時,災害時等の対応体制の整備
・苦情処理体制の整備
-109-
1-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・環境基準(環境基本法)
・排出基準(大気汚染防止法,宮城県公害防止条例,仙台市公害防止条例)
・仙台市環境基本計画における定量目標(二酸化窒素)
等
①
影響の回避・低減の観点
・評価項目ごとに,回避/低減に係る保全対策を盛り込んだ複数案について,住宅地
その他保全対象に対する著しい影響が回避されているか,濃度の変化の程度の低減
が図られているか,濃度変化が生じる地域の面積又はこれにより影響を受ける人口
の低減が図られているか,有害物質による影響発生の可能性が回避されているかと
いった観点から比較検討することにより,事業者が実行可能な範囲において,最大
限の回避・低減が図られているか否かを判断する。
・複数の評価項目がある場合,項目ごとの影響の重大性(重点化,簡略化の状況)を
勘案し,評価項目ごとの結果を総合的に比較検討する(項目の重大性の程度に応じ
て影響の程度に重みづけをして合計し,最も影響の小さい計画案又は対策案を選定
する等)ことにより,大気質の総合評価を行う。
・なお,道路の路線,造成事業における区域や用途区分等について複数案の比較を行
う場合は,これらに係る検討を優先し,その結果を受けて,工事中の影響等の比較
を行う。
②
基準や目標との整合
・以下の基準や目標との整合を図る。
○環境基準(環境基本法)
○排出基準(大気汚染防止法,宮城県公害防止条例,仙台市公害防止条例)
○仙台市環境基本計画における定量目標(二酸化窒素)等
○ダイオキシン類等の指針値
○その他,人の健康の保護,生活環境の保全,自然環境の保全上望ましい水準に係
る科学的知見
・このうち排出基準等の規制基準は,これを満たすことが当然である。環境基準等に
ついては,極力これを達成するように事業者として最大限の努力をすることが求め
られる。また,既に達成している場合には,極力悪化させないよう,影響の最大限
の低減が求められる。
・なお,市の環境基本計画では,次のような定量目標を掲げている。
○国の環境基準について,環境基準を非達成の場合は速やかにこれを達成し,既に
達成している場合には現状より悪化させないように努める。
○二酸化窒素については,「1時間値の1日平均値が0.04ppm (国の環境基準のゾ
ーンの下限値)以下であること」を目標とする。
-110-
1-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に以下のような場合に
ついては詳細に行う。
○予測条件,モデルの適用条件等からみて予測の不確実性が高い場合(ただし,影
響の程度が著しく小さい場合は除く)
○環境保全対策として新たな技術や設備を用いるなど,環境保全対策の効果の不確
実性が高い場合
○有害物質が排出される場合
○環境基準を超える等,影響が大きい場合
○他の同種事業より相当程度排出量が多い場合
(2)事後調査の内容
・予測対象物質の濃度(あわせて風向,風速等気象条件も測定)
・事業の実施状況及び事業に伴う負荷の状況
(3)事後調査の方法
・調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。ただし,予測対象時期が供用開始後
3年目以降の場合,供用開始1年目等に事後調査を計画する。
・調査期間は,原則として工事中は予測対象時期に1週間の連続測定,供用後は年単
位とし四季又は夏季・冬季の各1週間の連続測定,ただし,影響の程度に応じて減
じることができることとする。
・なお,住民との協定等による継続的なモニタリングについては,環境影響評価の
事後調査とは切り離して考える。
-111-
2 騒音
2
騒音
2-1 基本的考え方
(1)考え方
騒音は,聴力障害,睡眠妨害などの生理的影響,うるささや会話妨害,作業能率低
下などの心理的影響,精神的ストレスによる身体的な影響等,様々な影響を人に与え
る。また,人に対する影響以外にも野生生物の生息環境や家畜等に与える影響が問題
となる場合がある。何に対する影響,あるいはどういう観点で影響を考えるかによっ
て,問題となるレベルはそれぞれ異なるものであり,このことから,騒音は感覚公害
と呼ばれている。
本市においても,公害苦情の中で騒音に関する苦情は例年高い割合を占めている。
一方,本市における騒音の測定結果では,道路沿道における環境基準の達成率は1割
にも満たないなど,自動車交通による影響が顕在化している。また,市では,快適な
音環境や音風景の保全を目的に,「いい音残創(のこそう)事業」を実施してきてお
り,このような地域を代表する音環境の保全にも十分留意する必要がある。
騒音の環境影響評価にあたっては,前述のように騒音が感覚公害であることに鑑み,
人の反応や生物の反応とよく対応する尺度を用いることが重要である。しかしながら,
騒音の評価尺度は,従来,発生源の種類によって様々なものが用いられてきた。その
ため,個々の騒音の検討はできても,種類の異なる騒音の比較や総合的に評価をする
ことは不可能であった。人の反応との対応性に優れ,複数の騒音の合成が可能で,か
つ国際的にも一般的に用いられている等価騒音レベルが環境基準の評価尺度として採
用されたことから,今後は,環境影響評価においても,等価騒音レベルを基本として,
特定の騒音の個別的な評価尺度は補足的に取り扱うことが適当であると考えられる。
(2)環境影響要素
騒音は,発生源を特定しない環境騒音と特定の発生源による特定騒音の2つに分け
られる。
環境騒音とは,観測しようとする場所での総合された騒音を意味し,特定騒音とは,
特定の音源の寄与による騒音を意味する。
環境影響要素
内容
環境騒音
その地点での総合された騒音
特定騒音
自動車交通騒音
自動車の走行による騒音
鉄道騒音
鉄道・軌道等の運行による騒音
航空機騒音
航空機の運航による騒音
工場・事業場騒音
工場・事業場による騒音
建設作業騒音
建設作業による騒音
-112-
2-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,対象とする騒音の種類を定め,かつその対
象ごとに調査,予測,評価の手法(保全対策検討の方針を含む)を定める(以上,方
法書に記載する事項)ために必要な情報を得ることにある。そのために,事業予定地
の周辺地域(ある程度広域)における騒音の概況(発生源の状況を含む)を把握する
とともに,騒音の伝搬に係る地形・地物の特性,特に保全を要する施設等の存在,騒
音の現状や将来の動向に係る人口及び産業の状況や交通の状況等を把握する。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①の騒音の状況を基本とし,その他関連項目につ
いて,騒音の観点から以下のような事項を把握する。
概況調査項目
①騒音の状況
調 査 内 容
・騒音レベルの概況,特徴(既存の発生源の有無,種
類等を含む。)
・騒音に係る苦情の状況
②環境保全について配慮が必
要な施設の状況
・事業予定地周辺の住宅地,病院,学校等,特に配慮
が必要な施設の分布
・受音点として配慮すべき中高層住宅に留意
③土地利用の状況
・騒音の伝搬に影響を与えるような構造物の有無,建
物の密集度,樹林地の分布等
④法令による指定及び規制等
の状況
⑤その他
・環境基準の類型あてはめ状況,騒音規制法の指定,
その他県及び市の騒音に係る規制,計画,目標等
・騒音の現状や将来の騒音に影響を与えると想定され
る人口,産業,交通,開発動向
・将来の騒音防止施策
・野生生物,家畜等,②以外の配慮すべき対象等
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業の種類及び規模を勘案し,騒音に係る環境影響を受けるお
それがある地域を含み,やや広範な範囲を対象とする。
なお,環境保全について配慮が必要な施設の状況については,事業予定地及び関係
車両等の走行経路周辺に限定しても差し支えない。
-113-
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,既存文献等によるものとし,必要に応じ市への聞き取り等を行
う。
調
査
項
目
①騒音の状況
調
査
方
法
・自動車交通騒音測定調査結果等既存測定データの
収集,整理
・発生源については,地形図等及び現地確認
・苦情については,必要に応じ市への聞き取り
②環境保全について配慮が
必要な施設の状況
③土地利用の状況
・市資料,地形図等既存文献の収集,整理
・必要に応じ現地確認
・市資料,地形図等既存文献の収集,整理
・必要に応じ現地確認
④法令による指定及び規制等
・県,市資料の収集,整理
の状況
⑤その他
・都市計画図,その他市資料等既存文献の収集,整理
等
・開発動向,将来の保全施策等については,市への聞
き取り
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
●騒音の概況記述内容及び作成図表例
1.事業予定地及び周辺の騒音の概況
・既存の騒音測定結果,発生源の状況及び苦情の状況等により,当該地域における
騒音の状況,特性(変動特性等)の記述
・特に,予測においてバックグランドの騒音が考慮すべきレベルにあると想定され
るか否かを明らかにできるよう整理
図表.既存の測定点等がある場合,その位置,測定結果等
2.騒音防止上の留意点
・上記の内容及び関連する②から⑤の内容を勘案し,事業予定地周辺における騒音
防止上の留意点を記述(②から⑤の関連事項のうち,騒音に係る内容については
概要を記述すること)
2-3
スコーピング
<騒音に係る影響要因>
・スコーピングにおいては,事業の実施に伴う行為(環境影響要因)を把握し,その
行為により騒音影響が想定される場合選定する。
・騒音に係る影響要因としては,工事中は,①機材等の運搬,②土地造成その他各種
工事(工事機械の稼働としてまとめて予測する。ただし,発破工事については別途予
測する。)が想定される。環境影響評価の対象となる大規模な事業においては,工
事中の騒音は通常選定する。
-114-
・供用時は,①工場等の機械の稼働,②事業により発生する自動車の走行,③列車,
航空機等の運行,④レクリエーション施設,店舗等からのスピーカー騒音や人が集
まることによる騒音等,が主なものとして想定される。このうち,②は,道路事業
だけでなく,施設の稼働や人の居住等に伴って発生する自動車交通にも着目するが,
その場合発生する交通量に応じて選択するか否かを決定する。
<立地条件によるスコーピング>
・事業予定地周辺に,現在及び将来の相当程度の期間において,住宅その他環境保全
に留意すべき施設等が立地しないことが明らかな場合は,騒音を選定しないことが
できる。
・ただし,上記のような自然的な地域においては,野生生物(特に猛禽類等)や自然
との触れ合い活動等への影響が想定されないか否かを慎重に検討すること。
<環境騒音(等価騒音レベル)を主とした影響評価>
・従来騒音の影響評価は,事業によって発生する騒音の種類に応じ,個別の特定騒音
として取り扱われることも多かった。
しかしながら,騒音の環境基準に等価騒音レベルが採用されたことに鑑み,今後は,
環境騒音の予測を主とし,個別の基準等との整合を検討する必要がある場合や,発
生源の特性からピークレベルについても予測しておく必要がある場合等において,
補足的に特定騒音を選定することとする。
<重点化項目,簡略化項目の明確化>
・事業特性では,鉄道,交通量の多い道路,運搬等に大量の発生交通が想定される廃
棄物処理施設や流通団地,大量の利用者が集中するレクリエーション施設等,特に
負荷が大きい事業において重点化する。
・また,道路におけるインターチェンジ部,トンネル抗口,掘り割り構造部等や,工
事において発破騒音を対象とする場合等,特殊な条件が想定される場合には,予測
手法に検討を要するという意味から,重点化が必要となる。
・立地条件では,住宅地内や学校,病院等特に静穏を要する施設の近傍で工事が実施
される場合,既に騒音が問題となっている可能性の高い地域に立地する場合,猛禽
類等の重要な野生生物の生息環境や自然との触れ合い活動の場として重要な地域へ
の影響が想定される場合等において重点化する。
・影響要因が一般的な事業に比べて小さい場合,類似事例から影響の程度が比較的小
さいことが想定される場合等においては,簡略化することができる。また,現況騒
音のレベルが非常に低くバックグランドとしての合成が不要と考えられる場合,現
況騒音の調査を省略又は簡略化することができる。
・工場等の機械の稼働による騒音は,環境影響評価の対象となるような大規模な事業
では問題となる場合がむしろ比較的少なく,かつ,騒音規制法の対象ともなること
から,事業内容を検討した上で,類似事例によるなど簡略化を行うことができる。
-115-
環境影響要素
環境騒音
選定に際しての考え方
重点化・簡略化
・一般的には,工事中の運搬,
・自動車交通の量,稼働する施設
工事機械の稼働について選
の内容や数量,人の活動の内容
定
や程度に応じ重点化,簡略化
・供用時は,列車や航空機の運
・道路のインターチェンジ,トン
行,道路事業における自動車
ネル抗口,掘り割り部等は重点
の走行は選定
化
・工場等の施設の稼働,自動車
交通の発生,スピーカー騒音
や人が集まることによる騒音
等は,その程度に応じ選定
特定騒音
・住宅地内や保全対象の近傍で実
施する事業は重点化
・現況騒音レベルが非常に低いと
想定される場合は調査を簡略化
・鉄道騒音,航空機騒音におい
・特定騒音としての現況騒音レベ
・鉄道騒音
て環境基準との整合を検討す
ルの測定は不要(ただし,通常
・航空機騒音
るために,また,工場・事業
は,環境騒音を基本とするため
・工場・事業場
場騒音において規制基準との
等価騒音レベルの測定は行う。)
騒音
・建設作業騒音
整合を検討するために選定
・また,間欠騒音,衝撃騒音に
ついて選定
・影響要因が一般的な事業に比べ
て小さい場合,類似事例からみ
て影響は小さいと想定される場
合は簡略化
2-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1.騒音レベル
現況騒音レベル
2.交通量等
道路沿道の騒音を測定する場合,車種別交通量,走行速度,道路構造等
3.その他
必要に応じて発生源の状況,伝搬に影響を及ぼす地形等の状況,周辺の人家・施設
等の社会的状況についても把握する。
<騒音レベル>
・騒音レベルについては,環境騒音について調査を行う。環境騒音を把握する指標は,
等価騒音レベル(LAeq,T 又は単にLeqと表記)による。
・等価騒音レベルは,平成10年 9月30日の「騒音に係る環境基準について」の環境庁
告示によって,従来の中央値(L50)に代わって騒音の評価手法として採用された。
等価騒音レベルが採用されて理由は以下のとおりであることから,環境影響評価に
おいても,基本的に等価騒音レベルを評価指標として用いることが適当である。
・騒音の総暴露量を正確に反映し,住民反応との対応が良好
-116-
○交通量等のデータから沿道の騒音レベルを推計する方法が明確化し,環境アセス
メントにも適す
○国際的にも広く採用されている
・道路交通による影響を予測評価対象とし,沿道の騒音レベルの調査を行う場合には,
騒音測定時の交通量を把握する。
・特定騒音を項目として選定した場合であっても,一般的には現況の特定騒音を測る
必要はない。
<その他の項目>
・騒音レベル以外については,以下の項目について調査を行う。
○他の発生源の状況:現状における他の発生源の状況は,調査及び予測の地点,
調査の時期及び頻度を設定する上で必要な情報。従って,他の発生源の有無
種類,発生する騒音の変動等の特性を把握する。基本的に,概況調査の結果
を活用する。
○地形等の自然的状況:予測時の回折減衰,反射等,伝搬条件に関するデータ
を得るもの。地形や森林の存在,構造物等,騒音の伝搬に影響するものを把
握する。
地形等騒音の伝搬に影響するものが存在する場合,その位置,規模,断面等,
回折減衰,反射等の予測に必要なレベルの情報を把握する。このレベルの情
報は,地形図等にもとづいた現地調査を必要とする。特に,予測地点を定め
て予測を行う場合,その周辺については詳細な調査を行う。(例えば,運搬
等に用いる道路沿道の予測を行う場合,当該道路の構造,沿道の建物その他
の状況等)
○周辺の人家・施設等の社会的状況:調査地点及び予測地点を設定し,影響を
評価する上で必要な情報。特に騒音の影響が問題となる住宅,学校,病院,
療養施設等について,その施設の種類,規模,位置等を把握する。基本的に,
概況調査の結果を活用する。ただし,騒音影響の程度を,暴露人口や家屋数
等で比較する場合,住宅地図や現地確認等により,家屋の分布状況等の詳細
な把握を行う。
(2)調査方法
① 調査方法は,現地調査を実施するとともに市等が実施した測定データ等により文
献調査を実施する。
② 測定方法は,「騒音に係る環境基準について」,「新幹線鉄道騒音に係る環境基
準について」,「航空機騒音に係る環境基準について」,「騒音規制法」に定める
方法等とする。
・騒音レベルについては,騒音の現状を知り,予測を行う際の暗騒音レベルを求める
目的で行うものであり,騒音は局所的に状況が異なる場合が多いこと,既存の測定
地点等が十分とはいえないことから,原則として現地調査によるものとする。なお,
既存の測定データは参考として用いることができる。
・測定方法は,以下の告示,調査方法に準拠して行う。
-117-
○「騒音に係る環境基準について」(平成10年環境庁告示第64号)
○具体的な測定方法については,日本工業規格
Z8731
・なお,特定騒音については,基本的に調査を要しない。ただし,予測に用いる類似
事例等として特定騒音を測定する場合や,事業が増・改築等であって現状の特定騒
音を把握する場合等には,発生源の種類に応じて法令等に定める方法による。
(3)調査地域等
① 調査地域は対象事業により騒音レベルの変化が想定される地域とし,既存の事例
や試算等により推定し設定する。
② 調査地点は既存の発生源や保全対象の分布を勘案し,調査地域の騒音の現状を適
切に把握できる地点とする。
<調査地域>
・調査地域は,当該事業の実施に伴って発生する騒音の種類及び程度を勘案して設定
するものとし,周辺の地形・地物及び土地利用状況,特に学校,病院,住宅地等の
分布状況に十分に配慮する。
・範囲の設定は,既存の事例又は単純な距離減衰の試算によるものとする。
・一般的には,航空機による騒音を除いて,沿道(沿線)又は敷地境界から200 m程
度の範囲を対象とする場合が多い。
・なお,調査範囲の設定にあたっては,工事中や供用後の運搬・利用等の経路につい
ても留意する。
<調査地点>
・特定の騒音の影響を受けず,調査地域の騒音レベルを的確に把握しうると予想され
る地点を設定する。
・騒音影響が特に問題となる地点,たとえば学校,病院,住宅地及び住宅予定地,野
生動物の生息地,野外レクリエーションの利用地点等については,必要に応じて調
査地点を追加する。
・既存の発生源により既に騒音影響を受けているおそれがある場合は,必要に応じこ
れらの周辺でも調査を行う。ただし,現況において建設作業騒音の影響を受けてい
る場合で,予測時点においては当該騒音が存在しない場合は,この影響を受けない
よう地点等を設定する。
・なお,通常は,地上1.2 ~1.5 mの高さの屋外で測定するが,必要に応じ,中高層
階における状況,屋内における状況等についても把握する。地点の設定についても,
日本工業規格Z8731を参考とすること。
-118-
(4)調査期間等
① 騒音レベルの実態を適切に把握しうる期間とする。
② 既存の発生源の状況からみて,曜日による変動,季節変動等が大きい場合にはそ
れらについても考慮する。
・騒音は,一般的に季節変動は小さいと想定される。従って,特に季節変動は通常考
慮せず年1回の調査によることが多い。ただし,道路沿道の騒音を測定する場合等
で,季節による交通量の変動等が大きい場合は,通常期とピーク期等に調査を実施
する。
・騒音は,交通量,施設の稼働等,既存の発生源の状況が曜日により変動する可能性
が高いため,平日,休日の代表的な1日を調査期間とする場合が多い。ただし,予
測対象が,建設作業や工場・事業場による影響であって,休日の作業や稼働が想定
されない場合は,平日のみの調査とする。
・対象とする時間帯は1日の全時間を原則とするが,予測対象とする要因が昼間(午
前6時から午後10時まで)に限定される場合は,昼間のみの調査とする。
2-5 予測
(1)予測内容
対象事業による騒音レベルの状況について予測する。
・予測内容は,環境騒音レベルを基本とし,予測指標には等価騒音レベルを用いる。
・通常の各種予測モデル等により算出する予測値は,対象事業による単独の騒音レベ
ルである。従って,これとバックグランドの騒音(暗騒音)を合成する必要がある。
また,対象事業により複数の騒音の影響要因が想定される場合には,これらの予測
結果も合成する必要がある。評価指標に等価騒音レベルが採用されたことにより,
このような合成が可能となった。
・ただし,バックグランドの騒音(暗騒音)が予測対象の騒音レベルに対し,相対的
に低い場合は,予測対象の騒音レベルを環境騒音とみなすことができる。
・また,航空機騒音又は鉄道騒音を環境基準と比較する場合,工場・事業場騒音又は
建設作業騒音を規制基準と比較する場合には,それぞれの基準等で用いられている
評価指標を用いることとし,バックグランドを加算する必要はない。
-119-
予 測 内 容
環境騒音
予測に用いる指標
等価騒音レベル(L
eq)(騒音レベルが時
間とともに変化する場合,測定時間内の騒
音レベルのエネルギー平均値を意味する)
特定騒音
特定騒音
航空機騒音(環境基準等と比
WECPNL(航空機騒音のピークレベルと基数
較,離着陸回数10回/日を超
を基に,夕方・夜間に重みをつけて求めた
)
量)
航空機騒音(小規模飛行場環
L
境保全暫定指針と比較。離着
騒音レベルの24時間値を基に,夕方・夜間
陸回数10/日以下)
に重みをつけて求めた量)
新幹線鉄道(環境基準と比較
ピークレベル(新幹線騒音はピークレベル
)
が一定時間持続し,運行便による差が少な
den
(変動する騒音の暴露量を示す等価
いため)
鉄道騒音(在来鉄道の新設又
等価騒音レベル(L
eq)
は大規模改良に際しての騒音
対策の指針)
工場・事業場騒音,建設作業
・変動のない又は少ない騒音は,騒音計の
騒音(規制基準との比較)
支持値
・不規則かつ大幅に変動する騒音,周期的
又は間欠的に変動する騒音で指示値の最
大値が一定でない場合は,90%レンジの
上端値(L5)
・周期的又は間欠的に変動する騒音で指示
値の最大値が概ね一定の場合,指示値の
最大値の平均
(2)予測地域及び予測地点
<予測地域>
・予測地域は調査地域に準じる。必要に応じ,工事時及び供用時の区分ごとに設定す
る。
<予測地点>
・予測は,予測地域内を平面的に予測する(等騒音コンター図等を作成する)ことを
基本とし,必要に応じ,以下のような観点から特に重点的に予測する地点を設定し,
予測する。
○敷地境界
○住宅,学校,病院等の施設,野生動物の営巣地,野外レクリエーション利用地点
等,環境保全上特に留意を要する地点
○その他重点的に予測を要する地点
・地点を設定して予測する場合は,全体を平面的に予測する場合より,回折や反射等
についてより詳細に検討する。
-120-
(3)予測対象時期等
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 供用後にあっては,事業活動が定常状態に達した時期
<工事時>
・工事による影響が最大となる時期とする。一般的には,工事用機械等の使用が最大
となる工事最盛期が基本となる。
・ただし,特定の保全対象が存在する場合には,その対象に対する影響が最大となる
時期を設定すること。
例:周辺の保全対象施設;そこに最も近い場所で工事が行われる時期
猛禽類等野生生物
;工事の開始時,繁殖期(特に造巣期,抱卵期)等敏感に
なる時期
・工事計画において工期・工区が区分され,それぞれの工事が間隔をおいて実施され
る場合には,各工期・工区ごとに予測を行う。
<供用時>
・事業計画において予定されている施設等が定常状態で稼働する時期を基本とする。
・定常状態で稼働する時期とは,例えば道路では計画交通量,工場・事業場等では計
画生産量(又は処理量)に達した時期,造成事業では建築物の整備やそこにおける
居住や事業活動等が計画目標量に達した時期とし,いずれも年単位を基本として設
定する。
・施設等の稼働が段階的に行われ,その間隔が長期に及ぶ場合は,それぞれの段階ご
とに予測する。また,定常状態になるまでに長期間を要する場合や,年変動が大き
いと想定される場合には,供用開始後1年目,その他適切な時期についても予測を
行う。
・上記により設定した予測対象年において,平均的な一日及び影響が最大となる日等
を選定し予測する。なお,レクリエーション施設等日変動が大きいと想定される事
業においては,設定条件ごとの出現頻度等についても予測する。
・予測する時間帯は,昼間,夜間の区分ごとの状況,影響が最大となる時間帯におけ
る状況等を予測する。
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・ASJ
Model 1998その他音の伝搬理論による計算
・模型実験
・事例の引用・解析
・保全対策
・予測においては,数値モデルによる定量的予測手法を原則とし,騒音発生源の種類,
周辺の地形及び建物の状況を勘案し,適切な手法及び予測条件を選択する。定量的
な予測が困難な場合には定性的手法によることとし,事業の種類・規模等を勘案し,
既存の類似事例との対比などにより影響の程度を予測する。
-121-
・なお,新たに等価騒音レベルが導入されたことにより,音源ごとの算定結果を合成
することが理論的に可能となり,道路騒音等の計算原理が単純化されるなど,定量
的手法が適用しやすくなった。
<予測手法>
●伝搬理論による計算
①
自動車交通による騒音の予測手法
・日本音響学会により提案された等価騒音レベル(LAeq
)を予測するための式
(ASJ Model 1998)を基本とする。(参考資料参照)。
・このモデルは,道路一般部(平坦,盛土,切土,高架)の直線区間で,断面構造が
一様な箇所を対象としている。なお,エネルギーベースの予測モデルであるので,
インターチェンジ部,掘り割り部,トンネル抗口部等においても応用が可能である。
②
鉄道による騒音の予測手法
・鉄道騒音の予測は,伝搬の理論式,回帰モデル,類似事例の測定結果により予測す
る方法のうちから,計画の内容や予測式の特徴,適用条件等を勘案して予測する。
・等価騒音レベルは,個々の列車の運行による単発騒音暴露レベル(LAE)を求め,
予測対象とする時間帯における運行本数から,エネルギー平均を求めることにより
算定する。
③
航空機による騒音の予測手法
・航空機騒音の予測は,機材の種類,飛行経路,推力の区分(地上時を含むものもあ
る)等から,空中-地上の伝搬減衰量,地上-地上(航路直下からのずれ)の伝搬
減衰量を,伝搬の理論式又は経験則により予測する。
・ICAO(国際民間航空機構)のWECPNL(加重等価平均感覚騒音レベル)あるいは時間
帯補正等価騒音レベル(Lden
) についても,機種別の飛行回数により算出する。
・なお,ヘリコプター等パワーレベルのデータが十分でない場合や,予測結果の検証
を行う場合には,既存事例の実測を行う。
④
工場・事業場の機械による騒音の予測手法
・工場・事業場騒音の予測は,騒音発生源からの伝搬過程を考慮した距離減衰式を基
本とする。その際,音源は一般的に室内にあるため,室内の吸音効果,建物内から
から外部への透過損失等を加味し,距離減衰を算定する。
・工場・事業場の騒音については,事例の解析によって算定している事例が比較的多
い。
⑤
建設作業による騒音の予測方法
・建設作業による騒音の予測は,騒音発生源からの伝搬過程を考慮した距離減衰式を
基本とする。
・この場合,建設作業の音源には,定常性の音源と間欠性又は衝撃性の音源があるこ
と,音源が固定されるものと一定軌道上を移動する場合があるため,それぞれ,作
業の内容に応じて適切に設定する。なお,一定軌道上を移動する場合は,道路交通
の場合と同様,軌道を設定しユニットパターンを求める。
・定常音源については音響パワーレベルから受音点の音圧レベルを算定,間欠性又は
衝撃性の音源については音響エネルギーレベルから受音点の音圧暴露レベルを算定
-122-
し,予測対象とする時間帯におけるそれらのエネルギー総和(総音圧暴露量)を時
間平均することによって,等価騒音レベルを算定する。
・なお,建設作業による騒音は,音源により周波数特性が異なるため,本来は各周波
数帯域ごとに等価騒音レベルを算定し,A特性の重み付けを行うことが望ましい。
・ただし,建設作業による騒音の予測手法については,音源の時間特性等についても
周波数特性についても十分なデータが蓄積されていないことから,想定される影響
が小さい場合等簡略化を行う場合には,既存資料等に基づくピークのパワーレベル
を用いて理論伝搬式により特定騒音として算定する従来の手法のみの予測とするこ
とができる。
●類似事例による手法
・類似する既存の発生源について,距離減衰の状況を含めて実測を行ったり,既存の
測定結果を収集し,これらを統計的に解析することにより,予測を行うことができ
る。
・ただし,予測の精度を高めるためには,事業の類似性及び伝搬条件の類似性につい
て十分な検証を行うか,あるいは多数のデータを解析する必要がある。
●模型による手法
・道路の掘り割り部等,複雑な伝搬特性を有する場合には,縮尺模型実験を行うこと
ができる。しかしながら,一般的に,騒音の模型実験では再現性を高めることが困
難な場合が多い。
<バックグランド騒音>
・騒音の予測を行う場合,基本的には,バックグランドとなる騒音(暗騒音)と事業
による騒音を合成する。この場合,現況騒音の実測値をバックグランドの騒音とし
て用いる場合が多い。ただし,バックグランドの騒音(現況騒音)が事業による騒
音に比べ相当程度小さい場合には,合成しなくともよい。
また,特定騒音について規制基準等との整合を確認する場合には,バックグランド
の騒音との合成は不要である。
・なお,現況騒音をバックグランドとして用いる場合,将来の道路や事業所等の動向,
将来の騒音防止対策等について市等から聞き取りを行い,将来の騒音の変化の可能
性を検討しておくこと。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 騒音を発生する施設の内容,稼働時間,騒音特性等
② 道路・鉄道等の交通量,構造等
③ 事業活動に伴う発生する交通量
④ 工事用機械の種類,稼働状況
2 将来環境条件
① 伝搬に影響する地形等の状況
② 土地利用,保全対象等
-123-
・数値モデルにより予測を行う場合は,音源を設定し,これの伝搬計算を行う。この
とき,以下のような条件の設定が必要となる。
・音源のパワーレベル等の設定においては,既存資料を基本とするが,データが十分
でない場合は類似事例の実測により設定する。
・伝搬の条件としては,障害物等による回折や反射,地面や壁面による吸音について
は考慮する。風や気温等の気象条件については,現在のところ考慮しないものとす
る。
予測に必要な条件等
内
容
情
報
源
音源に関する条件
音源の種類,数量
事業計画による
(1の事業計画)
音源の稼働位置,経路,移動
事業計画で明らかにならない
範囲等
場合,類似事例による
音源のパワーレベル(間欠性,
既存資料(調査事例)
衝撃性の場合エネルギーレベル
類似事例の測定
)等
伝搬に関する条件
回折,反射に係る障害物の位置
(2の①)
規模,形状等
地形図等をもとに現地確認
地面,壁面等の吸音特性
既存資料(調査事例)
受音点に関する条件
受音点位置(住居,施設,野生
現地確認
(2の②)
生物生息地等)
室内の予測を行う場合,窓等
中高層階,防音対策を講じた
の防音性能の実測
室内等の特殊条件
2-6
環境保全対策
騒音の環境保全は,予測結果に基づき,次の事項を考慮して適切に行なう。
1.回避
・立地位置の変更,道路のルート変更(保全すべき住宅や施設,対象等の近傍を
回避)
・道路,鉄道等の地下化
・工法の変更(著しい騒音を発生する工法を避ける)
2.低減
・供用時の生産工程の変更,工法や工事工程等の変更
・低騒音型の機械,機材等の使用(工事中,供用時とも)
・交通輸送手段の合理化,効率化等による発生交通量等の削減(工事中,供用時と
も)
・配置計画の変更等による緩衝(緑地)帯の確保
・発生源サイドにおける防音設備,吸音設備等の整備
・工事時間,運行時間,操業時間,その他騒音を発生する時期の配慮による影響の
低減
・工事中,供用時の車両等の分散
・工事機器,供用時設備,自動車等の整備点検
-124-
・工事中,供用時の適切な交通の規制,誘導
・スピーカーその他日常的騒音への配慮
3.代償
・受音点サイドにおける二重サッシ等防音工事
2-7評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・環境基準(環境基本法)
・規制基準(騒音規制法)
・小規模飛行場環境保全暫定指針
等
① 影響の回避・低減の観点
<回避・低減を図る影響の明確化>
・影響の回避・低減の観点からの評価を行うためには,まず,何に対する影響を回避
あるいは低減しようとしているのかを明確にする必要がある。
影響の明確化の例.
・事業予定地近傍の住宅への影響の低減
・事業予定地周辺に存在する可能性のあるオオタカの営巣地への影響の回避
・騒音の予測は,将来における騒音レベル又は事業により発生する騒音のレベルを予
測するにすぎない。影響を評価するためには,何に対する騒音影響を評価しようと
しているのかを明らかにする必要がある。人の一般的な生活環境への影響か,病院
その他特に静穏を要する場への影響か,猛禽類への影響か,家畜への影響かなど,
何に対する影響かによって,問題となる騒音レベルが異なってくる。
・なお,何に対する影響を評価するのかについては,方法書に記載する評価の手法に
おいて明確にしておくものであり,その後の調査結果等に応じ,必要に応じ変更す
る。
<予測結果にもとづく影響の程度の検討>
・影響の程度の検討には,以下の2段階の検討が必要である。
Ⅰ
予測した騒音レベルに対する人間,動物等の反応
Ⅱ
騒音レベル区分ごとの暴露人口や戸数,又は面積等
・Ⅰについては,何に対する影響を検討するのかに応じ,騒音レベルと人間等の反応
との関係についての既存知見や調査結果等を収集,整理する。また,既存の知見や
調査結果等が存在しない場合で,極めて重要な影響評価項目である場合には,必要
に応じ実験等を検討する。ただし,その場合,人の健康や生活環境,自然環境への
影響が少ない方法を十分検討すること。
・Ⅱについては,Ⅰの反応内容を踏まえた騒音レベルの区分ごとに,その予測された
範囲内の人口や戸数,面積等を算定することによる。環境基準においても,個別住
戸ごとの基準の対応を把握する考え方がとられたことから,このような影響の考え
方をとる必要がある。
-125-
・Ⅰで定めた影響の対象が,特定の施設等点的な場合には,Ⅱのような検討は不要で
あるが,住宅地に対する影響を軽減するといった場合には,騒音レベル別の暴露人
口等の検討が必要である。
<複数案の比較による回避・低減の検討>
・評価は,原則として,検討の対象とする影響ごとに複数の計画案又は保全対策案の
比較検討を行うことによる。複数の影響について,共通の複数案を比較する場合は,
対象とした影響の重要度を勘案し,騒音の総合評価を行う。
・影響が回避できているという判断は以下のような場合が考えられる。なお,当初案
で影響が回避できている場合には,複数案の検討は要しない。
○騒音の変化が予想される範囲内に騒音影響を受けるような人間や動物等の保全対
象が存在しない場合
○保全対象の分布する範囲においてを予測された騒音レベルが現状レベルからほと
んど変化しない場合
○保全対象の分布する範囲における騒音の変化の程度が,人間や動物の反応を引き
起こすレベルに比べはるかに低い場合
・影響の回避が困難な場合は,実行可能な範囲で低減ができているかどうかを判断す
る。その判断は以下のような場合が考えられる。
○保全すべき対象が点的な場合は,そこにおける騒音変化が当初案あるいは通常用
いられる技術等を用いた場合より相当程度低減されている場合
○保全すべき対象が面的な場合,人間や動物の反応に影響する騒音レベル内にある
戸数,人口,個体数,面積等が当初案あるいは通常用いられる技術等を用いた場
合より相当程度低減されている場合
・なお,本来回避すべき影響が回避できない場合には,重大な影響が回避できていな
いことを明記し,回避が困難な理由を明らかにすること。
-126-
■比較検討イメージ例
対象とす
第1案
第2案
第3案
る影響
Aに対す
Aの予測地点
Aの予測地点の騒音レベル変化
Aの予測地点の騒音レ
る影響
の騒音レベル
なし
ベルは変化するが行動
(回避を
高い
影響がでるレベルより
図る)
著しく低い
-回避
×
Bに対す
(以下,検討
る影響
せず)
(低減を
-回避
○
-回避
影響大のレベル変化地域内人口
x
2
図る)
y
2
2
3
人
y
3
人
z
3
人
同
人
Bへの影響度
x
同
人
影響無のレベル変化地域内人口
z
同
人
影響有のレベル変化地域内人口
○
同
E2=ax2+by2
+cz2
E3=ax3+by3
+cz3
このとき,a>b>c として設定
ここで,E2>E
評価
3
の場合
Aへの影響が
Aへの影響は回避できている
Aへの影響は回避でき,
回避できてい
が,Bへの影響が相対的に大
Bへの影響も第2案に比
ないため不採
きいため,不採用
べ相当程度低減している
用
②
ため採用
基準や目標との整合
・以下のものを達成しているかどうかを記述する。達成していない場合,できるだけ
達成するよう保全対策を検討する。
○騒音に係る環境基準(平成10年)
○新幹線鉄道騒音に係る環境基準(昭和50年)
○航空機騒音に係る環境基準(昭和48年)
○小規模飛行場環境保全暫定指針(平成2年)
○在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針(平成7年)
○騒音規制法の規制基準(特定建設作業,特定工場等)
○その他国,県又は市が定める目標等
・市の環境基本計画では,次のような定量目標を掲げている。
○国の環境基準について,環境基準を非達成の場合は速やかにこれを達成し,既に
達成している場合には現状より悪化させないように努める。
・また,基準や目標とは異なるが,市では市民自らが地域に埋もれている音環境資源
を発掘し,快適な音環境や音風景の保全を推進することを目的に,「いい音残創(
のこそう)事業」を実施してきている。このような地域を代表する音環境に対して
は,著しい影響を与えないこと。
-127-
2-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に以下のような場合に
ついては詳細に行う。
○予測条件,モデルの適用条件等からみて予測の不確実性が高い場合(ただし,影
響の程度が著しく小さい場合は除く。)
例:インターチェンジ,トンネル抗口,掘り割り等道路の特殊構造部,
イベント,スピーカー等による著しい騒音
利用者交通による騒音等
○環境保全対策として新たな技術や機械を用いるなど,環境保全対策の効果の不確
実性が高い場合
○発破工事による騒音影響が想定される場合
○猛禽類等貴重な動物への影響が想定される場合
○環境基準を超える等,影響が大きい場合
○他の同種事業より相当程度影響要因が大きい場合
(2)事後調査の内容
・騒音レベル(等価騒音レベル及びその他予測に用いた指標)
・道路の騒音を測定する場合,測定時の交通量
・事業の実施状況及び事業に伴う負荷の状況(稼働している建設機械の種類・台数,
発生交通量,列車・航空機の種類及び本数,機械の稼働状況等)
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。ただし,予測対象時期が供用開始後
3年目以降の場合,供用開始1年目等に事後調査を計画する。
・調査期間は,原則として工事の最大時又は供用時を代表する1日とし,曜日,季節
等により変動の可能性がある場合は,これらの状況を把握できるよう調査回数を設
定する。ただし,夜間の影響が想定されない場合は,夜間の測定を省略できる。
-128-
3 振動
3
振動
3-1 基本的考え方
(1)考え方
振動は,自動車,鉄道,生産機械,建設工事等によって発生した振動が地盤を伝わ
り,さらに住宅等の構造物に伝搬した振動が中に生活する人に主観的,心理的影響を
与える現象である。特に大きな振動の発生源に近接している場合には,壁,タイル等
のひび割れ,建付けの狂い等の物的被害もみられるが,一般的には感覚的な被害の面
から評価される。
振動は,騒音とは異なり地盤中又は地盤上を伝搬するため,土質条件等による複雑
な伝搬特性を示す。そのため,定型的な予測は困難であり,現地における各種パラメ
ータの測定や,現況予測による予測モデルの精度の検証等が必要となる。
また,構造物に伝搬した振動は,構造物の種類により増幅の程度や被害発生の状況
が異なるため,一般的には,構造物の中ではなく,屋外の値で評価される。
振動の大きさは,振動数の違いに依存せず,振動の感覚との反応もよい「振動レベ
ル」が用いられる。振動レベルは,計量法に規定され,人体にとっての振動感覚補正
を行った振動の加速度実効値をdBで表したものである。現行法等における振動レベル
の評価は,環境振動や道路交通振動など80%レンジの上端値(L10)が比較的多く用
いられているが,鉄道,工場・事業場,建設作業では異なる評価指標が用いられるた
め,発生源の種類により個々に特定振動として取り扱わざるを得ないのが現状である。
個別法の規制の場合は,個々の発生源ごとの規制が基本であることから個別に扱うこ
とに問題はないが,環境影響評価の場合,事業による影響を総合的にとらえるととも
に,当該事業以外の影響も含め,将来の状態(環境振動レベル)を予測し,評価する
ことを目的としていることからすると,現状の影響評価手法は十分ではなく,今後の
手法の改善が望まれるものである。
(2)環境影響要素
振動レベルは発生源を特定しない環境振動と特定の発生源による特定振動の大きく
2つに分けられる。また,特定振動は発生源によって細分される。
環境影響要素
内容
環境振動レベル
観測点での総合された振動
特定振動レベル
自動車交通振動
自動車の走行の寄与による振動
鉄道振動
鉄道・軌道等の運行の寄与による振動
工場・事業場振動
工場・事業場の寄与による振動
建設作業振動
建設作業の寄与による振動
「環境振動」とは,観測しようとする場所での総合された振動を意味し,「特定振
動」とは,振動発生源を特定した場合,環境振動の中で特にその発生源の寄与による
振動を意味する。
-129-
3-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,対象とする振動の種類を定め,かつその対
象ごとに調査,予測,評価の手法(保全対策検討の方針を含む)を定める(以上,方
法書に記載する事項)ために必要な情報を得ることにある。そのために,対象事業実
施予定地の周辺地域における振動の状況を把握するとともに,保全を要する施設等の
存在,振動に係る法規制等の状況,その他振動の現状や将来の動向に係る人口及び産
業の状況や交通の状況等を把握する。
振動の状況については,現状のレベルや伝搬の特性等についての既存データが存在
することは少なく,周辺地域における主要な発生源の状況や苦情の状況等から把握す
る。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①の振動の状況を基本とし,その他関連項目につ
いて,振動の観点から以下のような事項を把握する。
概況調査項目
①振動の状況
調 査 内 容
・振動レベルの概況,特徴
・既存の発生源の有無,種類等
・振動に係る苦情の状況
②環境の保全等について配慮
が必要な施設等の状況
③地形・地質の状況
・事業予定地周辺の住宅地,病院,学校等,特に配慮
が必要な施設の分布
・振動の伝搬に関わる地質の状況(類似事例の選定等
の参考とする)
④法令による指定及び規制等
の状況
⑤その他
・振動規制法の指定
・その他県及び市の振動に係る規制,計画,目標等
・振動の現状や将来の振動に影響を与えると想定され
る人口,産業,交通,開発動向
・将来の振動防止施策
・野生生物,家畜等,②以外の配慮すべき対象等
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業の種類及び規模を勘案し,振動に係る環境影響を受けるお
それがある地域を含み,やや広範な範囲を対象とする。振動に係る環境影響は,発生
源から比較的近傍に限られるが,資材の運搬等事業により発生する交通による影響も
想定されるため,周辺の道路網等を勘案し,事業予定地を含む数km四方程度を目安と
する。
なお,環境保全について配慮が必要な施設の状況については,事業予定地及び関係
車両等の走行経路周辺に限定しても差し支えない。
-130-
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,既存文献等によるものとし,必要に応じ市への聞き取り及び現
地確認を行う。
概況調査項目
①振動の状況
調 査 方 法
・既存測定データの収集,整理
・発生源については,地形図等及び現地確認
・苦情については,苦情関係資料の収集,必要に応じ
市への聞き取り
②環境の保全等について配慮
が必要な施設等の状況
③地形・地質の状況
・市資料,地形図等既存文献の収集,整理
・必要に応じ現地確認
・土地分類基本調査又は土地分類図等既存資料の
収集,整理
④法令による指定及び規制等
・県,市資料の収集,整理
の状況
⑤その他
・都市計画図,その他市資料等既存文献の収集,整理
等
・開発動向,将来の保全施策等については,市への聞
き取り
(5)
調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
●振動の概況記述内容及び作成図表例
1.事業予定地及び周辺の振動の概況
・既存の振動測定結果,発生源の状況及び苦情の状況等により,当該地域のおける
振動の状況,特性を記述。
・特に,予測においてバックグランドの振動が考慮すべきレベルにあると想定され
るか否か明らかにできるよう整理。
図表.既存の測定点等がある場合,その位置,測定結果等
2.振動防止上の留意点
・上記の内容及び関連する②から⑤の内容を勘案し,事業予定地周辺における振動
防止上の留意点を記述(②から⑤の関連事項のうち,振動に係る内容については
概要を記述すること)
3-3
スコーピング
<振動に係る影響要因>
・スコーピングにおいては,事業の実施に伴う行為(環境影響要因)を把握し,その
行為により振動影響が想定される場合選定する。
・振動に係る影響要因としては,工事中は,①機材等の運搬,②土地造成その他各種
工事(工事機械の稼働としてまとめて予測。ただし,発破工事については別途予測
),が想定される。環境影響評価の対象となる大規模な事業においては,工事中の
振動は通常選定することが望ましいが,資材等の運搬については,大型車両等の走
-131-
行量が相当程度大きい場合,住宅地や集落内等を通過する場合,既に振動影響が生
じていると想定される地域を通過する場合等,影響がある程度大きいと想定される
場合に選定する。
・供用時は,①工場等の機械の稼働,②事業により発生する自動車の走行,③列車の
運行,が主なものとして想定される。このうち,②は,道路事業だけでなく,施設
の稼働や人の居住等に伴って発生する自動車交通にも着目するが,その場合,発生
する交通量や走行経路の特性に応じて選択するか否かを決定する。
・環境振動は,特定振動を選定した場合には選定することとする。ただし,技術手法
の現状からは,環境振動を定量的に予測することは困難であり,発生源の種類に応
じた特定振動を対象とし,環境振動については,各特定振動の予測結果や現状の振
動レベル等を勘案し,定性的に考察することを基本として,選定する。
<立地条件によるスコーピング>
・事業実施区域周辺に,現在及び将来の相当程度の期間において,住宅その他環境保
全に留意すべき施設等が立地しないことが明らかな場合は,振動を選定しないこと
ができる。
・ただし,上記のような自然的な地域においては,野生生物(特に猛禽類等)や自然
との触れ合い活動等への影響が想定されないか否かを慎重に検討し,自然環境への
影響が想定される場合には選定すること。なお,保全対象としては,家畜(畜舎)
にも留意すること。
<重点化項目,簡略化項目の明確化>
・事業特性では,鉄道,交通量の多い道路,運搬等に大量の発生交通が想定される廃
棄物処理施設や流通団地等,特に負荷が大きい事業において重点化する。
・また,工事において発破による振動を対象とする場合には,予測手法に検討を要す
るという意味から,重点化が必要となる。
・立地条件では,住宅地内や学校,病院等特に保全を要する施設の近傍で工事が実施
される場合,既に振動が問題となっている可能性の高い地域に立地する場合,猛禽
類等の重要な野生生物の生息環境への影響が想定される場合等において重点化する。
・影響要因が一般的な事業に比べて小さい場合,類似事例から影響の程度が比較的小
さいことが想定される場合等においては,簡略化することができる。
・工場等の機械の稼働による振動は,環境影響評価の対象となるような大規模な事業
では,敷地の外周に緑地等を確保する場合が多いことから,問題となるケースはむ
しろ少なく,かつ,振動規制法の対象ともなることから,事業内容を検討した上で,
類似事例によるなど簡略化を行うことができる。
環境影響要素
環境振動
選定に際しての考え方
重点化・簡略化
原則として,下欄の特定振動を
・基本的に,定性的な記述による
選定した場合及び現況振動レベ
ルにおいて問題があると想定さ
れる場合,選定
-132-
環境影響要素
選定に際しての考え方
重点化・簡略化
・工事中の資材の運搬等による
・影響要因が非常に大きい場合,
・鉄道振動
影響は,相当程度の大型車両
既に振動が問題である地域にお
・工場・事業場
等の走行が想定される場合,
ける事業,住宅地内や保全対象
資材等の運搬経路が住宅地や
施設近傍における事業,猛禽類
集落を通過するなど相当程度
等注目すべき動物への影響が想
の影響が想定される場合選定
定される場合等は重点化
特定振動
振動
・建設作業振動
・重機の稼働等工事機械による
影響は,一般的に選定
・また,相当量の発破を使用す
る場合,発破についても選定
・影響要因が一般的な事業に比べ
て小さい場合,類似事例からみ
て影響は小さいと想定される場
合は簡略化
・供用時は,鉄道事業,道路事
業,工業団地造成,工場・事
業場等において一般的に選定
・廃棄物処理施設,流通団地そ
の他大量の発生交通が予想さ
れる場合選定。
3-4
調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1.振動レベル
現況振動レベル
2.交通量等
道路沿道の騒音を測定する場合,車種別交通量,走行速度,道路構造等
3.その他
必要に応じて発生源の状況,伝搬に影響を及ぼす地盤等の状況,周辺の人家・施設
等の社会的状況についても把握する。
<振動レベル及びその関連調査>
・調査は,調査地域における振動のバックグランドの把握であり,この目的のために
は,一般環境振動(振動レベルの80%レンジの上端値)を対象とする。ただし,対
象事業の影響要因に応じて特定振動の予測・評価を実施するに当たって,既存施設
の増・改築である場合は,周辺に類似の発生源が存在するような場合には,特定振
動レベルについても調査を行い,現況の振動レベルを評価しておく必要がある。
・特定振動について調査を実施する場合には,予測モデルの現況再現性のチェックや
パラメータの設定が可能なように,あわせて発生源の特性の把握,振動の距離に応
じた減衰の状況の把握等を行う。特定振動の種類に応じた調査内容例は,以下のと
おりである。
-133-
特定振動の種類
振動レベルの指標等
発生源の特性として調査すべき事項
自動車交通振動
振動レベルの80%レンジの
交通量,車種構成,走行速度,道路
上端値(L10 )
構造,横断構成,縦断勾配,舗装種
地盤卓越振動についても,
別等
あわせて把握する※1
鉄道振動
補正加速度レベル※2
列車運行回数,運行速度,軌道構造
,路盤構造等
工場・事業場振動
ピーク値等(測定器の指示
業種,振動発生施設,操業時間帯等
値の変動の状況に応じて,
指示値,指示値の最大値の
平均値,測定値の80%レン
ジの上端値(L10)
建設作業振動
同上
作業の種類,振動発生機械,作業時
間帯等
※1:地盤卓越振動とは,対象車両の通過ごとに振動加速度レベルが最大を示す周波数
帯域の中心周波数。
大型車の単独走行を対象とし,10台以上の測定の平均値を求める。
※2:補正加速度レベルとは,鉛直振動の振動数をf(単位Hz)及び加速度実効値を
2
2
A(単位m/s )とするとき,Aの基準値A0(単位m/s )に対する比の常用対数
の20倍,即ち,20log(A/A0)(単位dB)で表したものをいう。
<振動レベル以外の調査>
・地形,地質及び土質は振動の伝搬に影響を及ぼすため,予測条件として必要である。
用いる予定の予測モデルに応じ,地形・地質調査結果等より,地形及び地質の区分,
N値等について把握する。
・予測地点等の設定のため,周辺の土地利用の状況(将来の状況を含む)や,学校,
病院等の分布を把握する。これは,概況調査の結果で十分である。
<予測のために必要な調査>
・以上の他に,現況調査とは異なるが,予測を行うために,類似施設の発生振動レベ
ル,類似地点における振動の距離減衰等の状況を実測しておく必要がある。振動レ
ベルの減衰の状況を類似事例による場合は,発生源の特性だけではなく,伝搬条件
の類似性にも留意すること。
(2)調査方法
① 調査方法は,現地調査を実施するとともに聞き取り調査等を実施する。
② 測定方法は,「振動規制法」に定める方法等とする。
・振動レベルについては,原則として現地調査により実測するものとする。また,既
存の観測データが存在する場合は,参考として用いることができる。
・測定方法は,以下の告示,調査方法等に準拠して行う
・環境振動→「特定工場等において発生する振動に関する基準」
-134-
・自動車交通振動→「振動規制法施行規則」
・鉄道振動→「環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策について」
・工場・事業場振動→「特定工場等において発生する振動の規制に関する基準」
・建設作業振動→「振動規制法施行規則」
(3)調査地域等
① 調査地域は対象事業により振動レベルの変化が想定される地域とし,既存の事例
や試算等により推定し設定する。
② 調査地点は既存の発生源や保全対象の分布を勘案し,調査地域の振動の現状を適
切に把握できる地点とする。
<調査地域>
・調査地域は,当該事業の実施に伴って発生する振動の種類及びその距離減衰を勘案
して設定するものとし,周辺の既存の振動発生源の種類・位置,地形・地盤,土地
利用状況及び学校,医療施設,住宅地等の保全を要する対象の分布状況に十分に配
慮する。
・振動の調査範囲は,一般的には,事業予定地及び自動車の走行経路の周辺100~
200m程度が目安となる。
<調査地点>
・環境振動については,特定の振動の発生源の影響を受けず,調査地域の振動レベル
を的確に把握しうると予想される地点を設定する。
・振動影響が特に問題となる地点,たとえば学校,病院,療養施設,住宅地及び住宅
予定地,野生動物の生息地,野外レクリエーションの利用地点等については,必要
に応じて調査地点を追加する。
・既存の発生源により既に振動影響を受けているおそれがある場合は,必要に応じこ
れらの周辺でも調査を行う。ただし,現況において建設作業振動の影響を受けてい
る場合で,予測時点においては当該振動が存在しない場合は,この影響を受けない
よう地点等を設定する。
・振動レベルは,通常は屋外で測定し,以下のような場所にピックアップを設置する。
○緩衝物がなく,十分締め固め等の行われている堅い場所
○傾斜及び凹凸がない水平面を確保できる場所
○温度,電気,磁気等の影響を受けない場所
・特定振動については原則として,自動車振動は路肩端,工場・事業場振動は敷地境
界,建設作業振動は工事区域の敷地境界とする。また,予測に必要な情報を得るた
め,土地利用状況,地形・地盤等の状況を勘案しつつ,距離による減衰の状況を把
握できるよう地点を設定する。
(4)調査期間等
① 振動レベルの実態を適切に把握できる期間とする。
② 既存の発生源の状況からみて,曜日による変動,季節変動等が大きい場合にはそ
れらについても考慮する。
-135-
・調査期間は,調査地域の振動の実態を把握しうる期間及び頻度とし,原則として地
域の振動の状況を代表しうる一日とする。ただし,道路交通量や施設の稼働状況に
季節変動や曜日の変動が想定されるような場合には,その状況が把握できるよう時
期及び頻度を設定する。
・一日の測定は,振動規制法による時間区分(昼間,夜間)ごとに1時間当たり1回
以上の測定を4時間以上行うことを原則とする。
・また,既存の特定振動を対象とする調査は,次の事項を考慮して行う。
○鉄道振動については,原則として連続して通過する20本の列車について測定を行
う。
○建設作業振動については,建設作業が行われる時間帯を考慮して調査する。
3-5 予測
(1)予測内容
対象事業による振動レベルの状況について予測する。
・予測内容は,特定振動について定量的な予測を実施し,環境振動については,特定
振動の予測結果及び現況の振動レベルより,定性的に予測する。
・特定振動に用いる予測指標は,調査の場合に用いたものと同じとする(調査参照)。
(2)予測地域及び予測地点
<予測地域>
・予測地域は調査地域に準じる。また,必要に応じ工事時及び供用時の区分ごとに設
定する。
<予測地点>
・具体的な振動レベルを予測する地点は,発生源の特性等を踏まえ,予測地域におけ
る当該事業による振動の影響が十分に把握できる地点とし,以下の事項を考慮して
設定する。
○現地調査における振動実測地点
○住宅地,学校,病院等の保全対象施設が分布する地点。また,重要な野生生物生
息地や重要な自然との触れ合いの場等環境保全上特に留意を要する地点
(3)予測対象時期
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 供用後にあっては,事業活動が定常状態に達した時期
<工事中>
・工事中は,工事用重機等の稼働状況や工事用車両の走行台数から発生振動レベルが
最大となる時期及び工事実施位置から周辺の住宅等への影響が最大となる時期とす
る。なお,猛禽類等野生生物への影響を想定する場合には,工事開始時期や,対象
生物の繁殖期等敏感になる時期等について留意する。
-136-
<供用後>
・供用時は,計画されている施設等がすべて通常の状態で稼働・供用される時期とす
るが,その時期に達するまで長期を要するような場合には,それまでの間に補足的
な予測時期を適宜設定する。
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・振動の伝搬理論による計算
・模型実験
・事例の引用・解析
・保全対策
・予測においては,定量的予測手法を原則とし,振動発生源の種類,周辺の地形及び
地盤の状況を勘案し,適切な手法及び予測条件を選択する。なお,定量的な予測が
困難な場合には定性的手法によることとし,事業の種類・規模等を勘案し,既存の
類似事例との対比などにより影響の程度を予測する。
・振動の場合,土質条件等により伝搬の状況の差違が大きいため,予測モデルの選定
やパラメータの設定に当たっては,再現性の確認等,予測精度の確認を行い,その
結果を明記すること。
・類似事例を用いて予測を行う場合には,参考とした類似事例の発生源及び伝搬条件
等と当該事業の状況を明記するなど,条件の類似性を明確にすること。
<予測方法>
・特定振動の種類ごとに,一般的に用いられる予測手法は以下のとおりである。
○自動車交通振動の予測手法は,土木研究所式を基本とする。なお,その他に,埼
玉県公害センターによる予測式等がある。
○鉄道振動については,一般的に適用しうる手法は確立されておらず,類似事例の
実測データから,回帰式を作成するなどの方法により予測する。
○工場・事業場振動の予測は,機器,建築物の構造等によって振動レベルは大きく
異なるため,予測式としての一般化は困難である。従って,振動発生源からの伝
搬過程を考慮した距離減衰式を基本とした物理計算,あるいは,類似事例による
予測を行う。
○建設作業振動の予測は,一般的な建設機械による振動の場合,工場・事業場振動
と同様に,振動発生源からの伝搬過程を考慮した距離減衰式を基本とした物理計
算,あるいは,類似事例による予測を行う。発破による振動は,予測地域におい
て,少量の火薬による試験発破を実施し,実験式を求めて適用する方法により予
測する。ただし,試験発破を行う場合には,周辺環境に影響を与えないよう十分
留意する。特に,自然地域において猛禽類等への影響が想定される場合には,時
期等について慎重に検討し,必要に応じ専門家等の意見を聞くこととする。
-137-
参考:振動の予測モデル等一覧
対
象
モデル名
道
路
土木研究所式
交
通
備
モデルの概要等
考
一台の自動車が走行したときの発生
平面道路のほか,
振動レベルを設定して,モンテカルロ
盛土道路,切土道
法による交通流を用いてシミュレーシ
路,掘割道路,高
ョンを行い,各種の補正項を組み合わ
架道路に併設され
せて一般性を持たせた土木研究所が提
た平面道路に適用
案した式であり,建設省所管道路事業
可
の環境影響評価に採用されている。
この予測式の検討に当たっては,ま
ず平面道路の予測基準点における振動
レベルL′10(平)をとりあげ,交通
量,車線数,車速,路面平坦性及び地
盤条件データをもとに回帰分析手法を
用いて振動レベルを予測する式を作成
し,これを基本として,補正項の形で
道路構造の影響及び道路からの距離の
影響を予測式に反映させている。
埼玉県公害セン
類似道路等での速度振幅の実測値を
速度振幅,路面の
ターによる予測
もとに,発生・伝搬要因の変化から補
平坦性,走行速度
式
正を加えて予測を行なうもので,振動
大型車交通量の実
の発生要因としては路面の平坦性,走
測値,地盤のS波
行速度,大型車交通量を,伝搬要因と
速度の実測値又は
しては地盤の硬さを取り上げて,各要
地盤のN値が必要
因の補正倍率を求めて予測を行なう。
その他
畠山式
距離による減衰が表面波であると考
え,鉛直方向の自動車走行による振動
レベルを予測する。
地盤卓越周波数が8Hz以上の条件
で,振動速度からレベルへ変換する。
時田式
垂直方向の振動レベルを規定する要
因として,路面状態,走行速度,車体
重量の3変数を取り上げ,実測データ
をもとに重回帰分析を行って回帰係数
を求め定式化している。
-138-
対
象
道
路
交
通
モデル名
その他
畑中式
モデルの概要等
幹線道路での実験結果をもとに,大
型車,中型車,乗用車といった車種と
振動源からの距離の2変数で定式化
し,最大鉛直方向の振動速度を予測す
る。
振動源からの距離が増大すれば指数
的に減少するが,車が大型化すれば振
動も増大するという式になっている。
鉄
道
一般的に適用し得る予測手法は確立
されておらず,既存の知見及び実測デ
ータからの類推によっているのが現状
であり,類似の実測事例や回帰式等を
参考として予測を行う。
鉄道振動の大きさを決定する要因と
しては,列車の走行速度と軌道の構造
と振動レベルと影響の範囲を推定す
る。
距離減衰については路盤の構造によ
っては距離減衰の性行は異なり,更に
周辺の地盤の状況と振動レベルと影響
の範囲を推定する。
工場・
工場・事業場の振動は,機器,建屋
事業場
の構造,機器の設置状況等によって振
動のレベルが大きく異なり,予測式と
して一般化するのは難しい。
予測に当たっては,各種の作業機械
や防振対策別の振動レベルの測定結果
をもとに,類似例から振動レベルとそ
の予測範囲を推定する。
-139-
備
考
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 振動を発生する施設の内容,稼働時間,振動特性等
② 道路・鉄道等の交通量,構造等
③ 事業活動に伴い発生する交通量
④ 工事用機械の種類,稼働状況
2 将来環境条件
① 伝搬に影響する地盤等の状況
② 土地利用,保全対象等
・数値モデルにより予測を行う場合は,振動発生源を設定し,これの伝搬計算を行う。
このとき,以下のような条件の設定が必要となる。
・発生振動のレベル等の設定においては,既存資料を基本とするが,データが十分で
ない場合は類似事例の実測により設定する。
・伝搬の条件としては,土質条件を考慮する。
予測に必要な条件等
内
容
情 報 源
発生源に関する条件
・発生源の種類,数量
事業計画による
(1の①~④
・発生源の稼働位置,経路,
事業計画で明らかにならない
事業計画)
移動範囲等
場合,類似事例による
・発生源の発生振動レベル
保全対策
・振動防止対策
事業計画による
・道路構造等も対策としてと
らえる
伝搬に関する条件
(2の①)
・地形及び地質区分,N値,
地形・地質調査結果
S波速度等(予測モデルに
現地における測定その他現地
よる)
確認による
・地盤卓越振動数
・路面平坦性等
受振点に関する条件
(2の②)
・予測地点位置(住宅地,保
現地確認
全施設,野生生物生息地
等)
3-6
環境保全対策
・予測結果に基づき,環境の回避・低減の観点から,環境保全対策を検討する。振動
に係る環境保全対策は,発生源における対策,伝搬経路における対策,受振側での
対策が考えられるが,発生源及び伝搬経路における対策を基本とする。
1.回避
・立地位置の変更,道路のルート変更(保全すべき住宅や施設,対象等の近傍を回避)
・工法の変更(著しい振動を発生する工法を避ける)
-140-
2.低減
<発生する振動の低減>
・道路事業の場合,路面平坦性の確保,舗装構造の改善(コンクリート板厚を大きく
),段差の解消等による振動発生の抑制等
・鉄道では,ロングレールの設置,バラストマットの敷設等軌道構造対策,低振動車
両の開発・使用等
・工場・事業場では,振動の少ない機械や作業工程の採用,
・建設工事では,振動発生の少ない工法の採用,振動発生が小さい機械の使用等
・交通輸送手段の合理化,効率化等による発生交通量等の削減(工事中,供用時とも)
<伝搬経路対策による発生した振動影響の低減,工事や稼働時の適正管理等>
・配置計画の変更等による緩衝(緑地)帯の確保
・道路事業では,盛土構造による軽減等伝搬経路対策,供用時の路面の維持管理,交
通抑制や大型車の走行車線の限定,速度規制等
・鉄道事業では,線路や車両の保守点検,運行速度の制限,運行時間の調整等
・工場・事業場では,防振用ばね等弾性支持対策,施設設置位置の変更(受振点から
遠い位置等),操業時間の調整,機械等の整備点検等
・建設工事では,使用機械設置位置の変更(受振点から遠い位置等),防振装置の使
用,作業時間の調整等
・工事中,供用時の車両等の分散,自動車等の整備点検
3-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性がはかられるか
・規制基準(振動規制法)
等
①
影響の回避・低減の観点
<回避・低減を図る影響の明確化>
・影響の回避・低減の観点からの評価を行うためには,まず,何に対する影響を回避
あるいは低減しようとしているのかを明確にする必要がある。
影響の明確化の例
・事業予定地近傍の住宅への影響の低減
・事業予定地周辺に存在する可能性のあるオオタカの営巣地への影響の回避
・この場合,回避,低減を図る対象に応じ,振動レベルと人の反応,振動レベルと野
生生物の逃避行動の関係等,予測された振動レベルとその影響について,既存の知
見の収集等を行い,整理すること。
<複数案の比較による回避・低減の検討>
・評価は,原則として,検討の対象とする影響ごとに複数の計画案又は保全対策案の
比較検討を行うことによる。複数の影響について,共通の複数案を比較する場合は,
対象とした影響の重要度を勘案し,振動の総合評価を行う。
-141-
・影響が回避できているという判断は以下のような場合が考えられる。なお,当初案
で影響が回避できている場合には,複数案の検討は要しない。
○振動の変化が予想される地理的範囲内に振動影響を受けるような人間や動物等の
保全対象が存在しない場合
○保全対象の分布する範囲において予測された振動レベルが現状レベルからほとん
ど変化しない場合
○保全対象の分布する範囲における振動の変化の程度が,人間や動物の反応を引き
起こすレベルにくらべはるかに低い場合
・影響の回避が困難な場合は,実行可能な範囲で低減ができているかどうかを判断す
る。その判断は以下のような場合が考えられる。
○保全すべき対象が点的な場合は,そこにおける振動変化が当初案あるいは通常用
いられる技術等を用いた場合より相当程度低減されている場合
○保全すべき対象が面的な場合,人間や動物の反応に影響する振動レベル内にある
戸数,人口,面積等が当初案あるいは通常用いられる技術等を用いた場合より相
当程度低減されている場合
・なお,本来回避すべき影響が回避できない場合には,重大な影響が回避できていな
いことを明記し,回避が困難な理由を明らかにすること。
②
基準や目標との整合
・以下のものを達成しているかどうかを記述する。達成していない場合,できるだけ
達成するよう保全対策を検討する。
○道路交通振動の限度(振動規制法)
○新幹線鉄道振動について,「環境保全上緊急を要する新幹線振動対策について」
に定める勧告の指針(昭和51年環大特第32号)
○工場・事業場については「特定工場等において発生する振動の規制に関する基準
」(昭和51年環境庁告示第90号)
○建設作業振動については「特定建設作業に伴って発生する振動の規制に関する基
準」(振動規制法)
○その他国,県又は市が定める目標等
-142-
3-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に以下のような場合に
ついては詳細に行う。
○予測条件,モデルの適用条件等からみて予測の不確実性が高い場合(ただし,影
響の程度が著しく小さい場合は除く)。なお,振動については伝搬特性等が複雑
で,一般的に不確実性は高い。
○振動について,重点化を行った場合
○環境保全対策として新たな技術や機械を用いるなど,環境保全対策の効果の不確
実性が高い場合
○予測された振動レベルが道路交通振動の限度を超える等,影響が大きい場合
(2)事後調査の内容
・振動レベル(特定振動レベル及びその環境振動レベル)
・道路の振動を測定する場合,測定時の交通量
・事業の実施状況及び事業に伴う負荷の状況(稼働している建設機械の種類・台数,
発生交通量,列車の種類及び本数,機械の稼働状況等)
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。ただし,予測対象時期が供用開始後
3年目以降の場合,供用開始1年目等に事後調査を計画する。
・調査期間は,原則として工事の最大時又は供用時を代表する1日とし,曜日,季節
等により変動の可能性がある場合は,これらの状況を把握できるよう調査回数を設
定する。ただし,夜間の影響が想定されない場合は,夜間の測定を省略できる。
-143-
4 低周波音
4
低周波音
4-1 基本的考え方
(1)考え方
低周波音とは,人の耳には聞き取りにくい低い周波数の空気振動であり,ガラスや
戸ががたつくなどの物理的影響や,いらいらする,睡眠が妨害される,頭痛,耳鳴り,
めまいなどの心理的・生理的影響が生じる。
人の耳で聞こえる音(可聴音域)は,個人差はあるものの概ね20~20,000Hzといわ
れている。この可聴音域の下限以下の音が一般的に低周波空気振動又は超低周波音と
呼ばれている。しかしながら,建具のがたつき等の現象は,可聴音域の低音域におい
ても生じることが明らかとなっており,可聴音域の低音域を含んで,低周波音として
扱われる場合もある。
ここでは低周波音として,20Hz以下のものを中心に,可聴域の低音部も含んで概ね
100Hz 以下のものを対象とする。
低周波音の発生機構は,板の振動,回転,空気圧縮等の容積変化,燃焼,気柱の共
鳴等に分けられ,雷や噴火,風等の自然現象,工場等のコンプレッサやボイラー等の
機械類,工事用の重機,鉄道,道路,橋梁,ダム,発破等,様々なものから発生して
いる。
低周波音は,空気を媒質として伝わる波動現象である。従って,伝搬速度等の基本
的な物性は音と同様であるが,周波数が小さい(即ち波長が長い)ことから,一般の
音に比べ塀等による回折や遮蔽による減衰は小さく,伝搬経路対策を講じることが困
難である。また,空気や地表面による吸収等も小さく,低周波音は騒音に比べ影響範
囲が大きくなることが多い。さらに,逆転層の発生等の気象条件によっては,遠方で
逆に大きくなる場合もある。
4-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,低周波音を対象とするか否かを定め,かつ
調査,予測,評価の手法(保全対策検討の方針を含む)を定める(以上,方法書に記
載する事項)ために必要な情報を得ることにある。そのために,事業予定地の周辺地
域(ある程度広域)における低周波音の状況(発生源の状況を含む)を把握するとと
もに,特に保全を要する施設等の存在,その他関連する人口及び産業の状況や交通の
状況等を把握する。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①の低周波音の状況を基本とし,その他関連項目
について,低周波音の観点から以下のような事項を把握する。
概況調査項目
①低周波音の状況
調 査 内 容
・低周波音レベルの概況,特徴
・既存の発生源の有無,種類等
・低周波音に係る苦情の状況
-144-
概況調査項目
②環境の保全等について配慮
調 査 内 容
・事業予定地周辺の住宅地,病院,学校等,特に配慮
が必要な施設の分布
が必要な施設等の状況
・受音点として配慮すべき中高層住宅に留意
③その他
・低周波音の現状や将来の低周波音に影響を与えると
想定される人口,産業,交通,開発動向
・将来の低周波音防止施策等
なお,現在のところ,低周波音について,基準や目標等を定めているものはないが,
将来,基準や目標等が設定されたり,低周波音防止のための計画等が策定された場合
には,これらについても把握する。
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業の種類及び規模を勘案し,低周波音に係る環境影響を受け
るおそれがある地域を含み,やや広範な範囲を対象とする。低周波音の場合,騒音に
比べ影響範囲が広くなる傾向があるが,対象事業実施予定地及び車両の走行経路を含
む数km四方程度を目安とする。
なお,環境保全について配慮が必要な施設の状況については,事業予定地及び関係
車両等の走行経路周辺に限定しても差し支えない。
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,既存文献等によるものとし,必要に応じ市への聞き取り等を行
う。低周波音については,既存の測定データ等はほとんどない可能性が高く,市や周
辺住民の苦情に関する聞き取り,低周波音を発生するおそれのある発生源の分布状況
についての現地確認等が必要となる。
概況調査項目
①低周波音の状況
調査方法
・既存測定データの収集,整理
・高架道路,トンネル,ダム,工場等低周波音の発生
の可能性のある施設についてその分布状況とそれに
係る苦情の有無等について把握する
・発生源については,地形図等及び現地確認
・苦情については,必要に応じ市への聞き取り
②環境保全について配慮が必
要な施設の状況
③その他
・市資料,地形図等既存文献の収集,整理
・必要に応じ現地確認
・都市計画図,その他市資料等既存文献の収集,整理
等
・開発動向,将来の保全施策等については,市への聞
き取り
-145-
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
●低周波音の概況記述内容及び作成図表例
1.事業予定地及び周辺の低周波音の概況
・既存の測定結果,発生源の状況および苦情の状況等により,当該地域における低
周波音の状況,特性を記述
・特に,予測においてバックグランドの低周波音が考慮すべきレベルにあると想定
されるか否かを明らかにできるよう整理
図表.既存の測定点等がある場合,その位置,測定結果等
2.低周波音防止上の留意点
・上記の内容及び関連する②及び③の内容を勘案し,事業予定地周辺における低周
波音防止上の留意点を記述(②及び③の関連事業のうち,低周波音に係る内容に
ついては概要を記述すること)
4-3
スコーピング
<低周波音に係る影響要因>
・スコーピングにおいては,事業の実施に伴う行為(環境影響要因)を把握し,その
行為により低周波音の影響が想定される場合選定する。
・低周波音に係る影響要因としては,工事中の影響要因は,①工事用の重機の稼働,
②発破工事が想定される。ただし,これらについては,影響要因が相当程度大きい
場合に選定することとする。
・供用時は,①工場等の機械(コンプレッサ,送風機,削り機,製粉機,製紙機,ボ
イラー,バーナー,コンクリートミキサー等)の稼働,②高架道路の設置(高架道
路における大型車両の走行等),③鉄道におけるトンネル(トンネルへの列車の突
入),④ダム(ダムの放水),⑤航空機の運行等が主なものとして想定される。
<立地条件によるスコーピング>
・事業予定地周辺に,現在及び将来の相当程度の期間において,住宅その他環境保全
に留意すべき施設等が立地しないことが明らかな場合は,選定しないことができる。
・ただし,上記のような地域の場合,野生生物(特に猛禽類等)や自然との触れ合い
活動等への影響が想定されないか否かを慎重に検討し,自然環境への影響が想定さ
れる場合には選定すること。なお,保全対象としては,家畜(畜舎)にも留意する
こと。
<重点化項目,簡略化項目の明確化>
・事業特性では,運行本数の多い鉄道,交通量の多い高架道路,低周波音を発するお
それのある機械が多数稼働する工場等,特に負荷が大きい事業において重点化する。
・立地条件では,住宅地内や学校,病院等特に保全を要する施設の近傍で事業が実施
される場合,既に低周波音が問題となっている可能性の高い地域に立地する場合,
猛禽類等の重要な野生生物の生息環境への影響が想定される場合等において重点化
する。
-146-
・影響要因が一般的な事業に比べて小さい場合,類似事例から影響の程度が比較的小
さいことが想定される場合等においては,簡略化することができる。
環境影響要素
・低周波音
選定に際しての考え方
重点化・簡略化
・工事中の重機の稼働,発破工事
・影響要因が非常に大きい場合,
による影響は,相当程度影響要
既に低周波音が問題である地域
因が大きい場合に選定
における事業,住宅地内や保全
・供用時は,道路事業(高架橋)
対象施設近傍における事業,猛
,鉄道事業(トンネル),工業
禽類等注目すべき動物への影響
団地造成及び工場・事業場等(
が想定される場合等は重点化
低周波音を発生する機械が想定
・影響要因が一般的な事業に比べ
される場合),飛行場(航空機
て小さい場合,類似事例からみ
の運行)において選定
て影響は小さいと想定される場
合は簡略化
4-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1.低周波音の音圧レベル
音圧レベル,周波数特性
2.その他
必要に応じて発生源の状況,伝搬に影響を及ぼす地形等の状況,周辺の人家・施
設等の社会的状況についても把握する。
<低周波音の調査>
・調査の目的は,対象地域における低周波音の状況について把握することにある。調
査内容は,オーバーオール音圧レベル及び周波数特性(1/3 オクターブバンドレベ
ル)とする。
・現状における低周波音の発生源が特定可能な場合は,対象とする発生源の特性,距
離減衰及び鉛直方向の測定等を行い,予測に必要なパラメータを把握する。
<低周波音以外の調査>
・地形,気象(風)等は低周波音の伝搬に影響を及ぼすため,予測に必要なパラメー
タを得るための調査を実施する場合には対象とする。
・予測地点等の設定のため,予備調査の結果から,周辺の土地利用の状況(将来の状
況を含む)や,学校,病院等の分布を把握する。
<予測のために必要な調査>
・以上の他に,現況調査とは異なるが,予測を行うために,類似施設の発生低周波音
の音圧レベル,類似事例における低周波音の距離減衰等の状況を実測しておく必要
がある。低周波音の音圧レベルの減衰の状況を類似事例によって予測する場合は,
発生源の特性等の類似性に留意して調査対象施設等を設定すること。
-147-
(2)調査方法
① 調査方法は,現地調査を実施するとともに聞き取り調査等を実施する。
② 測定方法は,科学的知見を踏まえ適切な方法とする。
・低周波音の状況については,既存の測定データが存在しない場合が多く,基本的に
現地調査による。
・低周波音の測定方法は,法令等により定められた方法はないため,一般的に次のよ
うな方法によっている。低周波音の音圧レベルの測定方法は,低周波空気振動測定
用マイクロホンを振動レベル計に接続する方式又は低周波騒音レベル計による。周
波数分析器は1/3 オクターブ分析器を用いる。
・また,日本騒音制御工学会推奨の,低周波音測定方法(平成4年
日本騒音制御工
学会報告)がある。
・低周波音は,屋外で測定することを基本とする。ただし,低周波音は風の影響を受
けやすいため,風がないか極めて弱い時を選んで測定する。
(3)調査地域等
① 調査地域は対象事業により低周波音の音圧レベルの変化が想定される地域とし,
既存の事例や試算等により推定し設定する。
② 調査地点は既存の発生源や保全対象の分布を勘案し,調査地域の低周波音の現状
を適切に把握できる地点とする。
<調査地域>
・調査地域は,当該事業の実施に伴って発生する低周波音の大きさ及びその距離減衰
を勘案して設定するものとし,必要に応じ周辺の既存の低周波音発生源及び土地利
用状況や学校,医療施設,住宅地等の保全を要する施設等の分布状況に留意する。
・低周波音の減衰は,回折や遮蔽による効果が小さいため,距離による減衰により感
覚閾値以下となること又は現況レベル(既存の測定データ等により現況値が予め想
定できる場合)を目安として設定する。
<調査地点>
・調査地点については,調査地域の中から低周波音に係る地域特性を代表する地点を
選定するものとし,必要に応じ複数の地点を設定する。
・低周波音の影響が特に問題となる地点,たとえば学校,病院,療養施設,住宅地及
び住宅予定地,野生動物の生息地,野外レクリエーションの利用地点等については,
必要に応じて調査地点を追加する。
・既存の発生源により既に低周波音の影響を受けているおそれがある場合は,必要に
応じこれらの周辺でも調査を行う。
(4)調査期間等
① 低周波音のレベルの実態を適切に把握できる期間とする。
② 既存の発生源の状況からみて,曜日による変動,季節変動等が大きい場合にはそ
れらについても考慮する。
-148-
・調査期間は,調査地域の低周波音の実態を把握しうる期間とし,一般的には,平均
的な状況を示す1日を対象とし,時間帯ごとの状況を把握する。
・ただし,既存の発生源が存在する場合で,低周波音の発生の季節,曜日等により変
動が想定される場合には,それらの変動を把握できるよう調査頻度を設定する。
4-5 予測
(1)予測内容
対象事業による低周波音の有無及びその音圧レベルについて予測する。
・予測項目は低周波音の有無及びその発生の状況とする。特に生活環境の保全を必要
とする住居地,学校,病院,療養施設等の主要な地点については,低周波音の音圧
レベルについて予測するものとする。
(2)予測地域等
<予測地域>
・予測地域は調査地域に準じ,必要に応じ工事時及び供用時の区分ごとに設定する。
<予測地点>
・具体的な低周波音の影響を予測する地点は,予測地域における当該事業による低周
波音の影響が十分に把握できる地点とし,以下の事項を考慮して設定する。
○現地調査における低周波音実測地点
○住宅地,学校,病院等の保全対象施設が分布する地点(将来予定されている地点
を含む)。また,重要な野生生物生息地や重要な自然との触れ合いの場等低周波
音の影響の防止を図るべき地点
(3)予測対象時期等
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 供用後にあっては,事業活動が定常状態に達した時期
<工事中>
・工事中は,工事用重機等の稼働状況や工事用車両の走行台数から発生する低周波音
が最大となる時期及び工事実施位置から周辺の住宅等への影響が最大となる時期と
する。なお,猛禽類等野生生物への影響を想定する場合には,工事開始時期や,対
象生物の繁殖期等敏感になる時期等について留意する。
<供用時>
・供用時は,計画されている施設等がすべて通常の状態で稼働・供用される時期とす
るが,その時期に達するまで長期を要するような場合には,それまでの間に補足的
な予測時期を適宜設定する。
-149-
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・音の伝搬理論による計算
・模型実験
・事例の引用・解析
・保全対策
・予測においては,対象とする低周波音発生源の種類,周辺の地形及び建物の状況等
を勘案し,類似事例や経験則等適切な手法及び予測条件を選択する。
・一般的には,類似事例における実測結果や経験則等を踏まえ,伝搬理論式等により
音圧レベルの距離減衰を計算する手法と,類似事例により低周波音の発生の有無等
を定性的に予測する手法が一般的である。
・類似事例や経験則に基づいて予測を行う場合には,参考とした類似事例等の発生源
の状況と当該事業の状況を明記するなど,条件の類似性を明確にすること。
<予測方法>
・一般的に用いられる予測手法は以下のとおりである。
○類似事例における実測結果や既存の調査結果をもとに,発生源と受音点までの伝
搬距離及び発生源の特性を考慮して,音圧レベルの距離減衰を計算する。計算は,
騒音の伝搬理論式を用いる。
○周辺の地形等が複雑な場合には,発生源や予測地域の縮尺模型による予測を行う。
○事例の引用・解析では,複数の測定結果から求めた回帰式等により予測を行う。
あるいは,類似事例から,低周波音発生の可能性を定性的に判断する。
○なお,高速道路の高架橋から発生する低周波音についても,工場・事業場の低周
波音についても,音圧レベルの距離減衰の調査結果は,発生源近傍ではばらつき
があるものの,離れるに従い倍距離6dBの減衰を示している。
○工場等の機械による低周波音の場合,地盤振動もあわせて生じる。このとき,工
場壁面の固有振動数,低周波音の卓越振動数及び地盤の卓越振動数が一致すると,
壁全体が振動面となり,面音源としての特性を有するようになる。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 低周波音を発生する施設の内容,稼働時間,振動特性等
② 道路の交通量,構造等
③ 事業活動に伴い発生する交通量
④ 工事用機械の種類,稼働状況
2 将来環境条件
① 伝搬に影響する地形等の状況
② 土地利用,保全対象等
・減衰計算を行う場合は,振動発生源を設定し,距離減衰を計算する。このとき,以
下のような条件の設定が必要となる。
-150-
・発生振動のレベル等の設定においては,既存資料を基本とするが,データが十分で
ない場合は類似事例の実測により設定する。参考となる資料は以下の通り。
○工場機械の発生源データについては,「工場機械の低周波音について」(昭和54
年愛知県公害調査センター所報7号)
○航空機からの低周波音については,「低周波防止技術解説書」(昭和58年通商産
業省)
○発破作業から発生する低周波音については,「トンネル発破の特性と予測」(船
津引一郎 INCE/JAPAN
昭和62年9月),「トンネル発破から発生する低周波
音の性状について」(塩田正純 日本音響学会騒音研究会資料 1986-11-22),
「ベンチカット発破音特性とその予測方法」(国松 直 INCE/JAPAN
低周波
音分科会資料1989-02-09)
予測に必要な条件等
内容
情報源
発生源に関する条件
・発生源の種類,数量
事業計画による
(1の①~④)
・発生源の稼働位置等
事業計画で明らかにならない
・発生源の発生する低周波音
場合,類似事例による
の音圧レベル
伝搬に関する条件
・地形等
地形図,現地確保等
障害物による回折効果は小さ
(2の②)
い
受音点に関する条件
・予測地点位置(住宅地,保
(2の②)
保全対策
4-6
現地確認
全施設,野生生物生息地等)
・発生抑制対策等
事業計画による
環境保全対策
・予測結果に基づき,環境保全対策を検討する。低周波音に係る環境保全対策は,可
聴音に比べて波長が長いことから,伝搬経路における対策,受振側での対策は効果
が小さく,発生源における対策を基本とする。
1.回避
・立地位置の変更,道路のルート変更(保全すべき住宅や施設,対象等の近傍を回避)
・生産工程等の変更(生産工程の変更等により,著しい低周波音を発生する機械の使
用を避ける等)
・低周波音を発生するような構造の回避(高架橋やトンネルの回避。ただし,これら
は他の環境要素への影響を回避,低減するためにとられた対策である場合も多く,
他の要素への影響にも留意)
2.低減
<発生する振動の低減>
・橋梁の剛性を増したり,ジョイント部の段差や遊隙を解消する等発生を抑制
・鉄道では,列車のトンネルへの突入によるトンネル内空気の圧力上昇を除々に行う
よう,トンネル抗口にフードを設置
-151-
・ダムの水流落下の頂部に突起物を設ける等により水膜をカットしたり水膜の形成を
妨げる
・1回の発破作業に用いる発破の量を減らす。
<発生した低周波音影響の低減,工事や稼働時の適正管理等>
・配置計画の変更等による緩衝(緑地)帯の確保
・機械等への消音器の設置
・機械等の保守点検,適正運転等
4-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか。
①
影響の回避・低減の観点
<回避・低減を図る影響の明確化>
・影響の回避・低減の観点からの評価を行うためには,まず,何に対する影響を回避
あるいは低減しようとしているのかを明確にする必要がある。
影響の明確化の例
・事業予定地近傍の住宅への影響の低減
・事業予定地周辺に存在する可能性のあるオオタカの営巣地への影響の回避
・この場合,回避・低減を図る対象に応じ,低周波音と人の反応等,予測された音圧
レベルとその影響について,既存の知見の収集等を行い,整理すること。
・人の反応については,20Hzでは音圧レベル85dB程度が感覚閾値又は気にならない限
界であり,10Hz付近では100dB 程度,5Hz付近では115dB 程度となっている。
(出典:「超低音(聞こえない音)」(中村有朋 技術書院))
-152-
<複数案の比較による回避・低減の検討>
・評価は,原則として,検討の対象とする影響ごとに複数の計画案又は保全対策案の
比較検討を行うことによる。複数の影響について,共通の複数案を比較する場合は,
対象とした影響の重要度を勘案し,低周波音の総合評価を行う。
・影響が回避できているという判断は以下のような場合が考えられる。なお,当初案
で影響が回避できている場合には,複数案の検討は要しない。
○低周波音の発生が予想される地理的範囲内に影響を受けるような人間や動物等の
保全対象が存在しない場合
○保全対象の分布する範囲において低周波音の音圧レベルが現状レベルからほとん
ど変化しない場合
○保全対象の分布する範囲における低周波音の変化の程度が,人間や動物の反応を
引き起こすレベルに比べはるかに低い場合
・影響の回避が困難な場合は,実行可能な範囲で低減ができているかどうかを判断す
る。その判断は以下のような場合が考えられる。
○保全すべき対象が点的な場合は,そこにおける低周波音変化が当初案あるいは通
常用いられる技術等を用いた場合より相当程度低減されている場合
○保全すべき対象が面的な場合,人間や動物の反応に影響する低周波音の音圧レベ
ル内にある戸数,人口,面積等が当初案あるいは通常用いられる技術等を用いた
場合より相当程度低減されている場合
・なお,本来回避すべき影響が回避できない場合には,重大な影響が回避できていな
いことを明記し,回避が困難な理由を明らかにすること。
-153-
4-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に以下のような場合に
ついては詳細に行う。
○予測条件,モデルの適用条件等からみて予測の不確実性が高い場合(ただし,影
響の程度が著しく小さい場合は除く)。なお,低周波音については,一般的に予
測の不確実性が高い。
○低周波音について,重点化を行った場合
○環境保全対策として新たな技術や機械を用いるなど,環境保全対策の効果の不確
実性が高い場合
○予測された低周波音の音圧レベルが人が不快に感じるレベルであるなど,影響が
大きい場合
(2)事後調査の内容
・低周波音の音圧レベル(周波数特性含む)
・道路の低周波音を測定する場合,測定時の交通量,車種構成等
・事業の実施状況及び事業に伴う負荷の状況(稼働している建設機械の種類・台数,
列車の種類及び本数,機械の稼働状況等)
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。ただし,予測対象時期が供用開始後
3年目以降の場合,供用開始1年目等に事後調査を計画する。
・調査期間は,原則として工事の最大時又は供用時を代表する1日とし,曜日,季節
等により変動の可能性がある場合は,これらの状況を把握できるよう調査回数を設
定する。ただし,夜間の影響が想定されない場合は,夜間の測定を省略できる。
-154-
5 悪臭
5
悪臭
5-1 基本的考え方
(1)考え方
悪臭は不快な臭いにより生活環境を損なう,いわゆる感覚公害である。
悪臭は大気中の化学物質によって生じ,原因となる化学物質の大気中の挙動は,基
本的に大気質で扱う物質と同じと考えることができる。従って,特定の物質の拡散に
ついては大気質と同様の手法を用いることができる。しかしながら,悪臭には,①低
濃度多成分の物質の混合体であり各成分間に相乗作用や相殺作用があること,②感覚
量であることから,臭いの感じ方は刺激の大きさ(悪臭物質の濃度)の対数に比例す
ること,③悪臭の感覚は短期的な現象であること,という特徴があるため,大気汚染
とは異なる手法で環境影響評価を実施する必要がある。
そこで,悪臭の影響評価は,多成分複合の臭気指数(又は臭気濃度)を基本とし,
事業特性から物質を特定できる場合には,特定悪臭物質の濃度を対象とする。なお,
後者の場合であっても,評価に当たっては,臭気としての閾値や臭気強度等の感覚量
との対応により判断することが重要である。
悪臭は,各種製造業や畜産農業,廃棄物処理施設等が主な発生源として想定され,
悪臭防止法や市の要綱により工場・事業場等の指導を行っている。しかし,本市にお
いては,サービス業等に対する苦情が最も多くなっており,このような点にも留意し
て環境影響評価を実施していく必要がある。
(2)環境影響要素
悪臭における環境影響要素は,以下のとおりである。
環境影響要素
①臭気指数
(又は臭気濃度)
内 容 , 観 点
・人の嗅覚に感知される臭気を表す指標。においのある空気を
臭気が感じられなくなるまで希釈した場合の希釈倍数(臭気
濃度)の常用対数を10倍した値。複数の悪臭物質が複合した
臭気を扱うことができ,人の感覚量との対応がよい。
②特定悪臭物質等
・悪臭防止法施行令(昭和47年政令207 号)で指定されている
特定悪臭物質の濃度
アンモニア,メチルメルカプタン,硫化水素,硫化メチル,
二硫化メチル,トリメチルアミン,アセトアルデヒド,
プロピオンアルデヒド,ノルマルブチルアルデヒド,
イソブチルアルデヒド,ノルマルバレルアルデヒド,
イソバレルアルデヒド,イソブタノール,酢酸エチル,
メチルイソブチルケトン,トルエン,スチレン,キシレン,
プロピオン酸,ノルマル酢酸,ノルマル吉草酸,イソ吉草酸
・その他対象事業により排出,発生,使用,保管等を行う物質
であって悪臭が生じるおそれのあるものの濃度
悪臭防止法において規制している特定悪臭物質は上記の22物質であるが,化学物質
の中でにおいを持つ物質はおよそ40万種類ともいわれる。特定悪臭物質に限らず,事
業特性により必要に応じその他の物質も対象とする。
-155-
5-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,悪臭を対象として環境影響評価を行うかを
定め,かつ調査,予測,評価の手法を定めるとともに,保全対策の方針を検討する(
以上,方法書に記載する事項)ために必要な情報を得ることである。そのため,事業
予定地の周辺地域(ある程度広域)において,現在悪臭が生じているかどうか,事業
により悪臭が生じた場合被害を受ける可能性のある対象は何か,という観点から主に
把握する。
(2)概況調査の項目
概況調査の項目では,①の悪臭の状況を中心とし,②以下の関連項目についても,
悪臭の観点から以下のような事項を把握する。
なお,悪臭の状況については,既存の測定結果等はない場合が一般的であるため,
苦情の有無や周辺における発生源の有無等から推定する。
概況調査の項目
①悪臭の状況
調査の内容
・悪臭の有無(悪臭に関する苦情の状況や,悪臭を発生する
おそれのある主要な発生源等より推定)
・地域を特徴づける香り(自然の香りや生活・文化に密着し
た香り等当該地域を特徴づけたり大切にすべき香り)
②気象の状況
・風向・風速,気温・湿度等
・地形等による特徴的な気象の有無
③環境の保全等につい
て配慮が必要な施設
・事業予定地周辺の住宅地,病院,学校等,特に配慮が必要
な施設の分布
等の状況
④法令等による指定・
規制等
⑤その他
・悪臭防止法による悪臭防止区域,仙台市悪臭対策指導要綱
等悪臭に関する規制,計画,目標等の有無,内容
・悪臭の現状や将来の大気質に影響を与えると想定される
人口,産業,交通,開発等の動向等
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業予定地周辺の悪臭の状況や事業によって悪臭被害をうける
可能性のある対象の推定が可能な範囲とし,事業予定地を含む5km四方程度の範囲を
目安として設定する。
悪臭被害は,比較的狭い範囲の現象として発生する場合が多いため,対象範囲は大
気質の場合より狭く設定しても差し支えない。また,環境の保全等について配慮が必
要な施設等の状況については,事業特性から広域への悪臭被害が想定されるような場
合を除いては,事業予定地周辺に限定しても差し支えない。
-156-
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,既存文献等を中心とするが,悪臭の状況については既存文献等
がない場合が多く,市への聞き取り,事業予定地及び周辺における聞き取りや現地確
認を実施することとする。
調査の項目
①悪臭の状況
調 査 の 方 法
・既存文献の収集,整理
・事業予定地及び近傍の聞き取り,現地確認による悪臭の
有無,悪臭発生源の有無等
・苦情については,市の資料収集及び聞き取り
・地域を特徴づける香りは,聞き取り,現地確認
②気象の状況
・県気象年報,市資料,大気常時測定局データ等既存文献等
の収集,整理
③環境の保全等につい
て配慮が必要な施設
・市資料,地形図等既存文献の収集,整理
・必要に応じ,現地確認
等の状況
④法令等による指定・
・県,市資料の収集,整理
規制等
⑤その他
(5)
・開発等動向については市への聞き取り
調査結果のとりまとめ(方法書における地域概況の記述)
● 悪臭の概況記述内容及び作成図表例
1.事業予定地及び周辺の悪臭の概況
・現地確認結果及び苦情,発生源等の状況より,悪臭の有無,悪臭発生の可能性を
記述
・地域を特徴づける良い香り等,香りの保全の観点からの特性を記述
2.悪臭防止上の留意点
・上記の内容及び関連する②から⑤の内容を勘案し,事業予定地周辺における悪臭
防止上の留意点を記述(②から⑤の関連事項のうち,悪臭に係る内容については
概要を記述すること)
5-3
スコーピング
<臭気指数が基本>
・人の感覚量としての視点を重視して,臭気指数(又は臭気濃度)を対象とすること
を基本とし,主な原因物質が特定できる場合等において,個別物質の濃度を補完的
に対象とする。
<事業特性によるスコーピング>
・悪臭のスコーピングにおいては,事業による影響要因の有無,程度によることが基
本となる。
-157-
・悪臭を発生するおそれのある事業としては,クラフトパルプ工場,飼肥料製造工場,
化学工場等の工場の建設や工業団地造成事業(製造過程),廃棄物の最終処分場や
処理施設(燃焼等の処理,保管,埋め立て,運搬過程),下水道終末処理場(処理
過程),畜産施設の設置が主要なものである。また,特殊な例としては,レクリエ
ーション施設において動物等の飼育を行う場合には対象とする。
・この他に,汚水の排水,農薬・肥料の使用,敷地内の廃棄物の保管や処理等による
悪臭が想定される。これらは,各種の事業においても要因として存在し得るが,項
目として選定するのは影響要因が非常に大きい場合に限るものとする。さらに,工
事中の重機の稼働や走行,舗装工事,塗装工事等における悪臭があるが,これにつ
いても影響要因が非常に大きい場合や事業が住宅地等の中で実施され緩衝帯が存在
しない場合等に限るものとする。
・なお,悪臭被害は,一見快いにおいであっても,それを一日中かぐこととなる周辺
住民にとっては不快なにおいとなる場合があることに留意すること。
・立地による特殊要因としては,地域で大切にしたい香りが存在する場合には,悪臭
の影響要因が比較的小さい場合であっても選定する。
・スコーピングでは,類似施設における悪臭苦情の状況等既存事例を参考として項目
選定を行う。
・また,影響要因から悪臭の主要な原因物質が特定かつ限定できる場合には,特定の
物質を対象として選定し,具体的な物質名を明らかにする。
<重点化項目,簡略化項目の明確化>
・工場,廃棄物処理施設等で特に処理能力が大きい事業や,住宅地内において実施さ
れる事業,病院等特に悪臭の防止に配慮すべき施設に近接する事業においては重点
化する。
・汚水の排水,農薬・肥料の使用,敷地内の廃棄物の保管や処理等に伴う悪臭,工事
中の悪臭,森林の伐採による良い香りの減少等は,特に影響の程度が大きい場合を
除いて,一般的な保全対策で対応したり簡略化項目として選定する。
環境影響要素
選定に際しての考え方
臭気指数(又は
・廃棄物最終処分場,廃棄物処理
・廃棄物処理施設,下水道終末
施設,下水道終末処理場,畜産
処理場,工場等で影響要因が
施設,悪臭その他のにおいを発
非常に大きい場合,また住宅
生すると予想される工場の建設
地内や病院と隣接する事業等
又は工業団地造成
で重点化
臭気濃度)
・多数の動物を飼育するレクリエ
ーション施設
重点化・簡略化
・汚水の排水等による悪臭や工
事中の悪臭は,影響要因が非
・汚水の排水,農薬・肥料の使用
常に大きい場合を除いて,一
,敷地内の廃棄物の保管や処理
般的な保全対策による対応や
等の影響要因が相当程度大きい
簡略化が可能
事業
-158-
環境影響要素
選定に際しての考え方
臭気指数(又は
・工事中の重機の稼働や走行,舗
臭気濃度)
重点化・簡略化
装工事,塗装工事等の影響要因
が相当程度大きい事業
・その他,地域を特徴づける香り
への影響が大きい事業
特定悪臭物質等
・悪臭の主な原因物質が特定され
・選定した物質の嗅覚の閾値等
る場合,当該物質。
を勘案し相当程度大量に排出
・臭気指数を基本とし,個別物質
の濃度は補完的な指標とする。
する場合,住宅地内や病院に
隣接する場合等に重点化
参考:悪臭防止法における特定悪臭物質と主な発生源
特定悪臭物質
主な発生源となる工場等
アンモニア
畜産事業場,鶏糞乾燥場,複合肥料製造業,
でんぷん製造業,化製場,魚腸骨処理場,
フェザー処理場,ごみ処理場,し尿処理場,下水処理場
等
メチルメルカプタン
クラフトパルプ製造業,化製場,魚腸骨処理場,
ごみ処理場,し尿処理場, 下水処理場等
硫化水素
畜産事業場,クラフトパルプ製造業,でんぷん製造業,
セロファン製造業, ビスコースレーヨン製造業,
化製場,魚腸骨処理場,フェザー処理場,ごみ処理場,
し尿処理場,下水処理場等
硫化メチル
クラフトパルプ製造業,化製場,魚腸骨処理場,
ごみ処理場,し尿処理場, 下水処理場等
二硫化メチル
クラフトパルプ製造業,化製場,魚腸骨処理場,
ごみ処理場,し尿処理場, 下水処理場等
トリメチルアミン
畜産事業場,複合肥料製造業,化製場,
魚腸骨処理場,水産缶詰製造工場等
アセトアルデヒド
アセトアルデヒド製造工場,酢酸製造工場,
酢酸ビニル製造工場,クロロプレン製造工場,
たばこ製造工場,複合肥料製造工場,魚腸骨処理場等
プロピオンアルデヒド
塗装工場,その他の金属製品製造工場,自動車修理工場
ノルマルブチルアルデヒド
印刷工場,魚腸骨処理場,油脂系食料品製造工場,
イソブチルアルデヒド
輸送用機械器具製造工場等
ノルマルバレルアルデヒド
イソバレルアルデヒド
-159-
特定悪臭物質
主な発生源となる工場等
イソブタノール
塗装工場,その他の金属製品製造工場,自動車修理工場
酢酸エチル
木工工場,繊維工場,その他の機械製造工場,
メチルイソブチルケトン
印刷工場,輸送用機械器具製造工場,鋳物工場等
トルエン
スチレン
スチレン製造工場,ポリスチレン製造工場,
ポリスチレン加工工場,SBR 製造工場,
FRP 製品製造工場,化粧合板製造工場等
キシレン
トルエンに同じ
プロピオン酸
油脂酸製造工場,染色工場,畜産事業場,化製場,
でんぷん製造工場等
ノルマル酪酸
畜産事業場,化製場,魚腸骨処理場,鶏糞乾燥場,
ノルマル吉草酸
畜産食料品製造工場,でんぷん製造工場,し尿処理場,
イソ吉草酸
廃棄物処分場等
出典:ハンドブック悪臭防止法(1993,環境庁大気保全局監修)
5-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1.悪臭濃度
選定した項目の濃度
2.気象
① 悪臭測定時の風向・風速
② 必要に応じ濃度予測に必要な風向・風速,気温,日射量,放射収支量,雲量等
3.その他
必要に応じて発生源の状況,拡散に影響を及ぼす地形等の状況,周辺の人家・
施設等の社会的状況についても把握する。
・臭気指数又は選定した特定悪臭物質の大気中濃度を対象とする。現状を把握するこ
とにより,将来の状態の予測における悪臭のバックグランド設定の基礎資料とする。
また,臭気指数等を測定する場合,原則として測定時の気象条件(天候,気温,風
向・風速)をあわせて記録する。
・予測において拡散計算を予定する場合,年間を通じた地上風向・風速,日射量,夜
間雲量又は放射収支量を対象とする。また,拡散計算を行わない場合であっても,
年間の風向・風速について把握する。
・その他に,調査結果の解析や予測地点選定等に必要な情報として,他の発生源の状
況,周辺の人家・施設の状況等を把握する。これらは,基本的に概況調査の結果を
活用するものとし,必要に応じて現地確認等補完調査を行う。
-160-
(2)調査方法
① 調査方法は既存資料や文献等により調査するとともに,現地調査を実施する。
② 測定方法は,「悪臭防止法」に定める方法等とする。
・悪臭については,既存の測定結果等はほとんどないと想定され,基本的に聞き取り
及び現地調査による。事業予定地における臭気の分布を把握するため聞き取り及び
現地概査を予め実施し,その結果を踏まえ,調査時期や調査地点を選定して現地調
査を実施する。
・なお,臭気の分布を把握するための聞き取り及び現地概査は,概況調査として実施
した結果を活用することができるが,必要に応じ地域住民へのアンケート調査,パ
ネル(臭気判定士)による現地概査を実施する。現地概査では,パネルが2~3人
一組となり,調査地域を踏査,調査地域内の臭気の平面分布を把握する上で十分と
考えられる地点(メッシュ等に区画し,代表点を設定。少なくとも20~30地点は確
保)において,においの有無,においがある場合はその臭気強度や臭気頻度等と,
あわせてにおいの原因について可能な限り記録する。
・特定悪臭物質等の濃度については,ガスクロマトグラフィ等の機器を用いて成分濃
度を測定する。一般的には,単一物質の濃度とし,「特定悪臭物質の測定の方法」
(昭和47年環境庁告示第9 号)に物質ごとに資料の採取や分析方法が定められてい
るので,これに準拠する。ただし,総還元性硫黄,全炭化水素等,一つのグループ
の濃度で表示する方法もある。
・人間の嗅覚を用いて臭気を数量化する方法として,臭気指数によって把握すること
を基本とする。臭気指数の測定方法は,「臭気指数の算定の方法」(平成7 年環境
庁告示第63号)によることとする。ただし,調査地域内の臭気の有無や平面的な分
布を把握するためには,より簡易な臭気強度や臭気頻度を現地で判定する方法を併
用する。
また,低濃度の臭気については従来の方法では測定できなかったが,吸着剤を用い
て臭気を一度濃縮し,それを従来の方法で希釈して測定する方法が実用化されてき
ている。
・汚水による悪臭を予測評価対象とし,水中の臭気について測定する必要があるとき
は,日本工業規格(JIS-K0102 )に定める方法による。この方法は,フラスコに希
釈した検水を入れ,これを軽く振ってパネルが臭いの有無を判定するもので,大気
中の場合と同様,無臭に至るまでの希釈倍数値を求める。ただし,大気とは異なり
希釈倍数値を2の指数で表す「臭気度」が用いられることが多い。
・気象については,気象台の調査結果,県等の大気測定局の調査結果等を収集,整理
することを基本とする。現地調査を行う場合は,「地上気象観測法」(昭和46年気
象庁観測部長通知)に準拠して実施する。
-161-
参考:人の嗅覚を用いた悪臭の指標(官能試験法)
指
標
指標の定義等
臭気濃度及び
臭気濃度とは,正常な嗅覚を有する複数の人(パネル)に,にお
臭気指数
いのある空気で臭気が感じられなくなるまで希釈した場合の希釈
倍率。
臭気濃度の常用対数を10倍したものが臭気指数で,人の感覚量を
よりよく表す。
N=10×log S
N:臭気指数 S:臭気濃度
臭気強度
人の嗅覚に感知される臭気の強さを直接数量化するもの。パネル
がそのにおいをかぎ,においの強さをカテゴリで表す。強度を表
すカテゴリには,6段階のものがよく用いられるが,他に3段階
,4段階のものなどがある。
なお,悪臭防止法における敷地境界の規制基準値は,6段階臭気
強度の2.5 から3.5 に対応する濃度の幅の中で決められている。
6段階臭気強度表示法
0:無臭
1:やっと感知できるにおい(検知閾値)
2:何のにおいであるかがわかる弱いにおい(認知閾値)
3:楽に感知できるにおい
4:強いにおい
5:強烈なにおい
快・不快度
臭気の快・不快度を表すもので,臭気強度と同様,パネルが直接
的に数量化する。5段階,7段階,9段階等の表示法があるが,
我が国では9段階のものがよく用いられる。
一般に臭気強度が増すと不快度が強くなるが,両者の関係は物質
によって異なる。
9段階快・不快度表示法
+4:極端に快
+3:非常に快
+2:快
+1:やや快
0:快でも不快でもない
-1:やや不快
-2:不快
-3:非常に不快
-4:極端に不快
-162-
指
標
臭気頻度
指標の定義等
においを感じる頻度に着目して数量化するもの。臭気指数や臭気
強度,快・不快度が短期的な尺度であるのに対し,これは,長期
的な尺度である。
臭気頻度
0:いつでもにおわない
1:たまににおう(月に1回程度)
2:ときどきにおう(週に1回程度)
3:しょっちゅうにおう(日に1回程度)
4:いつでもにおっている
(3)調査地域等
① 調査地域は対象事業により悪臭の変化が想定される地域とし,既存の事例や簡易
な試算等により推定し設定する。
② 調査地点は既存の発生源や保全対象の分布を勘案し,調査地域の悪臭の現状を適
切に把握できる地点とする。
<調査地域>
・調査地域は,既存事例における悪臭被害の発生状況や臭気の到達距離等を参考とし
て,地域の主たる風向や周辺における住宅地,病院等保全対象の分布状況等を考慮
して設定する。
・主な発生源の業種,規模と臭気の到達距離に関する知見を参考として示す。ただし,
ここに示されていない発生源や,最近の施設・設備において臭気の状況が異なると
考えられる場合には,類似例や周辺における臭気の到達範囲の測定等により設定す
る。
<調査地点>
・調査地点は,調査地域内において次の地点を考慮して設定する。
○調査地域の悪臭の状況を代表していると考えられる地点
○地形,地物,気象条件等により高濃度の臭気が予想される地点
○既存の発生源の状況から,現状において高濃度の臭気が想定される地点
○事業予定地周辺の住宅地,病院等,特に配慮が必要な地点(将来的に住宅,病院
等が立地することが明らかな地点も含む)
○その他,調査地域の悪臭の状況を把握する上で必要な地点,予測に必要な地点等
・測定位置は人が通常生活する範囲に設定し,原則として地上1.5m~10mとするが,
周辺に高層集合住宅等がある場合,状況に応じて変更する。
-163-
(4)調査期間等
① 悪臭の状況を適切に把握しうる期間とする。
② 既存の発生源の状況からみて,曜日による変動,季節による変動等が大きい場合
にはそれらについても考慮する。
・調査期間は,調査地域の悪臭の概況を把握できる期間とし,原則として1年1回以
上とする。調査時期は夏季・梅雨期を原則とし,季節による変動が予想される場合
は夏季・梅雨期以外にも調査を行うこととする。
・調査は1 日1回を原則とするが,1 日のうちに変動が予想される場合は朝,昼,夜
の三回とする。
・気象については,1年間以上の長期的な状況を主に既存資料により把握する。ただ
し,悪臭測定時の気象状況(微気象)は,悪臭の調査と同時に行う。
-164-
参考:発生源の業種,規模と臭気の到達距離との関係
業
種
製 紙 工 場
クラフト
パ ル プ
工
場
T.O.E.R 臭気到達 推定有効
(Nm3/分)距離(Km) 高(m)
化 学 工 場
規模(工程)
公害対策(脱臭)
(連続蒸解)
最も進んでいる
(工程改善,薬液,
既設火室,直燃)
106-107
1-3
30-120
進んでいる
(工程改善,
既設火室)
107-108
2-4
30-120
進んでいない
109-1010
6-10
30-120
3-6
30-60
1-2
―
1-3
―
3-4
―
1-3
10-50
3-4
―
2-4
10-40
1
0-5
2-3
0-5
1
0-5
1-3
0-5
3-5
0-10
106
1
5-10
8
SCP 工 場
(セミケミカルパ
ルプ)
―
―
10 -10
地 球 釜
(プロー時)
―
107
セロファン
工 場
レーヨン
工 場
―
―
進んでいる
(工程改善,薬液)
6
10 -10
進んでいない
108
進んでいる
(工程改善,薬液)
6
進んでいない
10 -10
7
畜 産
―
―
10 -10
養 豚 場
10-50頭
―
106
―
7
養 鶏 場
へ い 獣 処 理 施 設
魚 腸 骨
骨
フェザー
都市清掃施設
し
尿
処 理 場
7
10 -10
8
8
6
3,000-10,000羽
―
10
30,000羽以上
―
106-107
原料20t/日以下
(従来の方式)
―
(工程改善,直燃)
原料40t/日以下
(アトラス方式,ミーレン方式,
油温脱水方式等)
獣
7
108
石油化学
工
場
200頭以上
9
8
10 -10
9
原料20t/日以下
(従来の方式)
―
108
2-4
0-10
原料30t/日以下
(デューク方式,オールブライト
方式,油温脱水方式)
(工程改善,直燃)
106
1
5-10
原料10t/日以下
(従来の方式)
―
108
2-4
0-10
原料20t/日以下
(ダグラスロンソン方式,
オールブライト方式,
油温脱水方式)
(工程改善,直燃)
106
1
5-10
最も進んでいる
(直燃,樹脂,活性炭)
105
0.5以下
10-30
進んでいる
106-107
(直燃,薬液,オゾン)
1-3
10-25
107-108
2-4
5-20
―
進んでいない
-165-
業
種
都市清掃施設(つづき)
下
水
処 理 場
規 模(工程)
公害対策(脱臭)
―
進んでいる
(薬液,活性炭,オゾン)
(特に汚泥乾燥排気
のあるとき)
団地等の
下水処理場
―
ご
み
焼 却 炉
連続機械炉
ごみピット・
灰ピット等
進んでいない
―
(焼却炉の改善)
―
パッチ固定炉
燃焼排ガス
上記ピット等
火 葬 場
有機溶剤関係工場
グラビア
印刷工場
塗装工場
(自動車等)
飼・肥料工場
飼料工場
(フィッシュソリープル工場)
10-30
105
0.5以下
5-20
105
0.5以下
0-30
106-107
1-3
0-60
0.3以下
10-50
1-2
25-50
0.5-1
5-30
1-2
5-30
0.5-1
5-25
1-2
5-25
0.5-1
5-25
2-3
5-25
1-2
5-20
10
6
進んでいる
(直燃,キャタコン)
5
10 -10
6
6
進んでいない
107
進んでいる
(直燃,キャタコン)
5
10 -10
進んでいない
107-108
―
10
6
6
進んでいる
(電気法,薬液)
106-107
1-3
10-30
進んでいない
108-109
3-6
10-30
6
薬品工
場
―
10
1-2
10-30
―
6
7
1-3
20-60
7
9
2-6
5-20
1-3
20-30
1-2
10-30
2-4
10-30
1-2
10-50
2-4
10-50
10 -10
鶏糞乾燥所
(大規模直火ロータリーキルン)
―
10 -10
(配合飼料工場)
―
106-107
―
進んでいる
(直燃,薬液)
進んでいない
医 薬 品
製造工場
1-3
107
(スターチ飼料工場)
鋳 造 工 場
106-107
進んでいない
(配合飼料工場)
肥料工場
10-30
進んでいる
10 -10
(直燃,キャタコン,活性炭)
―
(造船,バスタブ,
浄化槽,ダクト等)
0.5以下
5
―
FRP 工場
105
進んでいる(再燃焼) 104-105
―
進んでいない
金
属
印刷工場
T.O.E.R 臭気到達 推定有効
(Nm3/分) 距離(Km) 高(m)
―
進んでいる
(薬液,酸化法)
進んでいない
10
6
107-108
10
6
107-108
(注)T.O.E.R.;1分間当たりの排出ガス量に臭気濃度を乗じたものをO.E.R. (Odor Emission
Rate)といい,いくつかの臭気発生源のO.E.R.の総和をT.O.E.R. (Total Odor Emission
Rate)という。1分間当たりどれだけの体積の無臭空気を付臭できるかを示す。
(環境庁:「環境影響評価共通技術資料集」(悪臭編),昭和52年3月より引用)
-166-
5-5
(1)
予測
予測内容
悪臭物質又は臭気指数の状況について予測する。
・予測内容はスコーピングの結果により,臭気指数又は選定した特定悪臭物質の濃度
とする。
(2)予測地域及び予測地点
<予測地域>
・予測地域は原則として調査地域に準じ,工事中及び供用後の区分ごとに設定するも
のとする。
<予測地点>
・予測地点は,以下の事項を考慮して設定する。
○現況調査地点
○地形,地物,気象条件等により高濃度の汚染が予想される地域
○事業予定地周辺の住宅地,病院等,特に配慮が必要な地点(将来的に住宅,病院
等が立地することが明らかな地点も含む)
○その他特に重点的に予測を要する地点
・ただし,上記の予測地点の予測結果だけでなく,予測地域全体を対象としたコンタ
ー図の作成又は距離減衰図(又は表)の作成を行う。
(3)予測対象時期等
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 供用後にあっては,事業活動が定常状態に達した時期
<工事中>
・悪臭に係る影響要因が最大となる時期とする。工事計画において工期・工区が設定
され,それぞれの工事が間隔をおいて実施される場合には,各工期・工区ごとの予
測を行う。
<供用後>
・事業計画において予定されている施設等が通常の状態で稼動する時期とする。施設
等の稼動が段階的に行われ,その間隔が長期に及ぶ場合は,それぞれの段階ごとに
予測する。
・上記に相当する時期において,平均的な状況を予測するとともに,悪臭に係る影響
要因が最大の条件又は気象条件からみた最悪条件(風の条件,悪臭被害のでやすい
夏季等)についても予測を行う。
-167-
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・T.O.E.R.の到達距離に関する知見等事例の引用・解析
・大気拡散モデル
・保全対策
<予測手法>
・悪臭は数秒から数分程度の短期的な現象であるのに対し,短時間の予測手法が十分
確立していないため,悪臭の予測手法は現在のところ確立しているとはいえない。
従って,現時点では,悪臭の予測手法としては類似事例の調査,解析による手法が
最も信頼性が高い。類似事例による手法を基本とし,参考として可能なかぎり拡散
モデルによる手法を併用し,事後調査による検証を実施していくこととする。
・また,トレーサーガスや,風洞実験による手法もあるが,一般的な環境影響評価に
おいてはここまでは求めない。
・TOERから臭気の到達距離や苦情範囲を経験的に予測する手法は,概略的な予測であ
り,調査地域や予測地域の設定段階の手法として用いるべきものである。これのみ
をもって予測とすることは,できるだけ避けることが望ましい。
3
注)OER (臭気排出強度)=臭気濃度×排ガス量(m N/min )
TOER(総臭気排出強度)とは,複数の排出源の個々の臭気排出強度を加算した
もの。
-168-
参考:悪臭予測手法1
予測手法
類似事例の
引用・解析
概
要
備
・既に完成している類似の施設等を選
定し,そこにおける以下の調査結果
から類推する。
考
・類似事例の選定が予測の
精度を左右する。
・類似事例としては,過去
・発生源の臭気総排出強度(OER 又
はTOER)とその時間変動
・発生源の排出状況(煙突高,有効
煙突高)
の環境影響評価事例(事
後調査結果)等が考えら
れるが,既存のデータは
不足することが想定され
・環境における臭気指数,臭気強度
等
,類似事例の現地調査を
行うことが望ましい。
・気温,風等の気象条件
・解析の手法は,以下のようなものが
・なお,地点の類似性は,
発生源の種類・規模のほ
ある。
か,年間の気象条件,地
・臭気強度の距離減衰曲線を描く
形等の類似性についても
類似した施設の風下側での臭気強
度を測定し,風下距離と臭気強度の
関係を曲線等により示し,その曲線
を対象事業の発生源の臭気強度に適
用して予測する。臭気指数の予測に
は,臭気強度減衰曲線を臭気濃度減
衰曲線に変換して使用し,臭気濃度
から臭気指数を算定する。
・臭気濃度の拡散希釈率を求める
類似した施設の発生源の臭気濃度
と風下側の臭気濃度を測定し,臭気
濃度の拡散希釈率を求め,対象事業
の発生源の臭気濃度に適用し,臭気
濃度から臭気指数を算定する。
・統計モデルを作成する
発生源データ,環境臭気データ,
気象条件等の調査結果から,環境臭
気データを説明する統計モデルを作
成,対象事業に係る発生源及び気象
条件等をあてはめて臭気濃度を予測
し,臭気濃度から臭気指数を算定す
る。
-169-
考慮すること。
参考:悪臭予測手法2
予測手法
大気拡散モデル
(プルーム式
・パフ式)
概
要
備
考
・大気拡散モデルにより,臭気濃度又
・OER (又はTOER)又は悪
は悪臭物質濃度の最大値とその出現
臭物質濃度と排ガス量が
場所等を予測する。
特定できる場合に適用で
・拡散モデルとしては,一般的にプル
ーム式(有風時),パフ式(無風時
きる。
・大気汚染物質及びも悪臭
はともに発生源から環境
)が用いられる。
・有効煙突高の算出は,コンケイウ式
への希釈倍数を求めるも
ブリッグス式,モーゼル・カーソン
のであるため,予測手法
式等が用いられる。
は同じものが適用できる
・大気拡散モデルにより求められる濃
が,悪臭は短期的な現象
度は瞬時の値ではないため,試料採
であることから,評価時
取時間と濃度の関係の補正を行う。
間の問題がある。時間の
・補正式
補正の手法があるが,未
r
Cs=(Tm/Ts) ・Cm
Cs:試料採取時間Tsに対する濃度
Cm:試料採取時間Tmに対する濃度
だ開発途上であるといえ
る 。
・また,微地形や建築物等
地表の状況による変化が
r:定数
・rは,悪臭防止法第4条第1項第2
再現されないところに問
号の規制では0.2 を採用している。
題がある。ダウンウオッ
・プルーム式で一般的に用いるパスキ
シュ等の影響を考慮した
ル・ギルフォードの予測評価時間は
予測式も提案されてお
3分。臭気の評価時間を30秒とする
り,一部は悪臭防止法第
と,Tm=3,Ts=0.5
4条第1項第2号の規制
にも採用されている。
模型
風洞
・風洞実験により悪臭物質濃度等の最
実験等
実験
大値,到達距離等を予測する手法。
トレー
サーガ
ス
・トレーサーガスにより,現地での拡
散実験により予測する方法。
・トレーサーガスには,六弗化硫黄が
(現場
よく用いられていたが地球温暖化物
実験)
質として使用が問題となっている。
TOERを用いた
・事業の規模や種類から経験上得られ
経験則による
ているTOER(又はOER )と,その到
概略予測
・地形・地物のデータ
達範囲を概略予測する。
・調査範囲の設定等に有効。
-170-
・経験則
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 悪臭を排出する施設における特定悪臭物質の濃度,排出量,臭気排出強度等
② 悪臭を排出する作業の内容,原材料使用料等
③ 廃棄物の埋立の範囲,方法等
2 将来環境条件
① 気象,地形等の状況
② 周辺発生源の状況
③ 土地利用,保全対象等
<事業計画の把握>
・事業計画により臭気排出強度等が設定できる場合には,これを条件とする。ただし,
悪臭の場合,非意図的に発生するなど,事業計画での条件設定が困難な場合が多く,
既存類似事例のデータ等から設定する。
・この場合,対象事業及び類似事例の施設の諸元を明確にするなど,設定の根拠を明
確にすること。
<将来環境条件>
・気象,地形等については,現況の調査結果を用いることを基本とする。
・周辺の発生源や保全対象については,将来計画されているものについても留意する。
<バックグランド濃度>
・悪臭の場合,複合するにおいの相乗効果等についての知見が十分でないため,事業
による寄与の予測結果とバックグランドの臭気との重ね合わせは困難である。ただ
し,現状において臭気が存在する場合等は,その程度と,当該事業以外の要因によ
る将来の状況に関する定性的な推定を行い,記載すること。
5-6
環境保全対策
悪臭に係る環境保全対策は,予測結果に基づき,次の事項を考慮して適切に行う。
1
回避
・代替物質使用や生産工程の変更等による悪臭物質の使用や発生の回避
2
低減
<悪臭原因物質発生量の低減>
・生産工程の効率化等による悪臭原因物質の使用量の削減
・建築物の機密性向上,出入り口の構造の工夫,排水処理槽の被覆,原材料・廃棄物
等悪臭発生の可能性のある物質の保管設備の改善等,悪臭の外部への漏洩防止
・排出口の高さ,位置,方向等の変更
<発生した汚染物質の影響の除去>
・臭気除去装置の設置。臭気除去方法には,直接燃焼法,触媒酸化法,吸着脱臭法,
低温凝縮法,湿式吸収法,生物脱臭法,マスキング法等があり,発生源の種類等に
応じ適切な手法を選定,組み合わせる。
-171-
<供用時等の管理等>
・資材運搬等の車両の走行ルート変更による悪臭被害発生の回避
・生産,処理等の工程管理の徹底
・揮発性物質等の使用,保管等管理の徹底(蒸発の防止等)
・環境監視の実施と公表
・事故時,災害時等の対応体制の整備
・苦情処理体制の整備
5-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・ 規制基準(悪臭防止法,仙台市悪臭対策指導要綱)等
①
影響の回避・低減の観点
・住宅地,病院等における臭気が嗅覚閾値以下に抑えられているか(回避)
・住宅地,病院等における臭気ができるだけ抑えられているか(低減)
・一定程度の臭気影響を受ける暴露人口等ができるだけ抑えられているか(低減)
・低減の観点の評価は,複数の計画案や保全対策案の比較によること。
・物質の濃度で予測した場合は,物質ごとに臭気強度との関係,快・不快度との関係
等について検討した上で評価すること。
・評価に当たっては,臭気頻度にも留意すること。
②
基準や目標との整合
・悪臭防止法の規制規準(悪臭防止区域以外の場所であっても準用する)
・仙台市悪臭対策指導要綱
・県及び市の環境基本計画等における悪臭の保全目標(定性的目標を含む)等
なお,仙台市環境基本計画では,悪臭の被害を未然に防止することを目標としてい
る。
-172-
5-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は,原則としてすべての選定項目とする。
(2)事後調査の内容
・臭気の状況(臭気指数,臭気強度等。予測地点の状況だけでなく,距離減衰の状況
等についても把握すること。)
・天気,気温,風等の気象の状況
・事業の実施状況及び負荷の状況(臭気排出強度等)
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。ただし,予測対象時期以外にも必要
に応じて適切な時期に調査を行うことを妨げない。
・なお,住民との協定等による継続的なモニタリングについては,環境影響評価の事
後調査とは切り離して考える。
-173-
6 水質
6
水質
6-1 基本的考え方
(1)考え方
水質では,工場・事業場等からの産業排水及び人の利用・居住による生活排水等の
排出,造成工事等に伴う濁水の発生並びに取水や貯留等の水象の変化等によって引き
起こされる公共用水域(河川,湖沼,海域)の水質その他の水の状態の悪化(水温の
変化,着色等)を対象とする。
ここで,水質の汚濁は人の健康や生活環境,動植物等に重大な影響を及ぼすおそれ
がある。人の健康の保護に関しては,重金属,揮発性有機塩素化合物,農薬等による
汚染が想定される。生活環境や自然環境の保全の観点からは,有機汚濁,濁り,富栄
養化に係る項目や水温,外観,陰イオン界面活性剤等による問題が想定される。水質
の状態は,このような汚濁物質の濃度等を指標として把握されるとともに,水生昆虫
や魚類等の生物の状態をもって知ることもできる。なお,底質や地下水汚染について
は,本項目とは独立して取りあげることとする。
水質汚濁による影響は,下流域において水道水源や農業用水としての利用がある場
合,内水面漁業に利用されている場合,貴重な動植物が生息・生育する場合又は湖沼
等の閉鎖性水域に流入する場合には,特に留意を要する。
本市には,広瀬川,名取川,七北田川の3本の河川を主軸として,梅田川,笊川,
芋沢川等の中小河川が流れる。これらの河川の多くは,その源流から河口までが本市
の市域となっており,水道源水,農業用水,工業用水,発電,水産業等の水利用をは
じめ,様々な形で市民の生活に密接な関わりを持っている。とりわけ,広瀬川は本市
のシンボルとして市民に親しまれるとともに,「広瀬川の清流を守る条例」により厳
格な規制が行われてきた。これらの河川の水質は,大河川では概ね良好な状態であり,
かつては生活排水等による汚濁も見られた中小河川についても,下水道の普及により
改善の傾向にある。しかし一方では,流域の保水力の低下等による河川水量の減少や,
一部の海域における富栄養化等が懸念されている。また,水源である河川上流部のダ
ム湖,丘陵部のため池,歴史的な資源でもある貞山運河,平地の水路等も重要な環境
の要素であり,環境基準の設定の有無に関わらず,これらの水域における水質の保全
にも十分留意する必要がある。
水質は,汚染物質やその調査方法の種類が多く,事業によりそれぞれ排出される物
質が異なる。効果的な調査を行うためには,事業の特徴を把握し適切にスコーピング
を行うことが重要である。
(2)環境影響要素
水質における環境影響要素は,以下のうちから適切に選定するものとする。なお,
有害物質については,環境基準設定項目や法による規制物質以外の物質であっても基
準の変更及び最新の研究の成果等により,必要に応じて対象とする。
なお,水質の予測に必要となる河川,湖沼,海域の水量,水位等については,水象
で扱うものとする。
-174-
(平成11年2月現在)
環境影響要素
水の汚れ
内容,観点
河川においては生物化学的酸素要求量(BOD)
湖沼・海域においては化学的酸素要求量(COD)
水の濁り
浮遊物質量(SS)
富栄養化
全窒素(T-N),全燐(T-P)
溶存酸素量
溶存酸素量(DO)
有
人の健康の保護に
カドミウム,全シアン,鉛,六価クロム,砒素,総水銀,ア
害
関する環境基準項
ルキル水銀,PCB ,ジクロロメタン,四塩化炭素,1,2-ジク
物
目
ロロエタン,1,1-ジクロロエチレン,シス-1,2- ジクロロエ
質
チレン,1,1,1-トリクロロエタン,1,1,2-トリクロロエタン
,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,1,3-ジクロ
ロプロペン,チウラム,シマジン,チオベンカルブ,ベンゼ
ン,セレン,ほう素,フッ素,硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素
水質汚濁に係る環
クロロホルム,トランス-1・2-ジクロロエチレン,1・2-ジク
境基準についての
ロロプロパン,p-ジクロロベンゼン,イソキサチオン,ダイ
一部を改正する件
アジノン,フェニトロチオン(MEP ),イソプロチオラン,
の施行について(
オキシン銅(有機銅),クロロタロニル(TPN ),プロピザ
平成5年環水管21
ミド,EPN ,ジクロルボス(DDVP),フェノブカルブ(BPMC
号)の要監視物質
),イプロベンホス(IBP ), クロルニトロフェン,トル
エン,キシレン,フタル酸ジエチルヘキシル,ニッケル,モ
リブデン,アンチモン
水質汚濁防止法第
カドミウム及びその化合物,シアン化合物,有機燐化合物(
3条第2項の有害
パラチオン,メチルパラチオン,メチルジメトン及びEPN に
物質(有害物質)
限る。),鉛及びその化合物,六価クロム化合物,砒素及び
その化合物,水銀及びアルキル水銀その他水銀化合物,アル
キル水銀化合物,PCB ,トリクロロエチレン,テトラクロロ
エチレン,ジクロロメタン,四塩化炭素,1,2-ジクロロエタ
ン,1,1-ジクロロエチレン,シス-1,2- ジクロロエチレン,
1,1,1-トリクロロエタン,1,1,2-トリクロロエタン,1,3-ジ
クロロプロペン,チウラム,シマジン,チオベンカルブ,ベ
ンゼン,セレン及びその化合物
-175-
環境影響要素
内容,観点
有
「ゴルフ場で使用
アセフェート,イソキサチオン,イソフェンホス,クロルピ
害
される農薬による
リホス,ダイアジノン,トリクロルホン(DEP ),ピリダフ
物
水質汚濁の防止に
ェンチオン,フェニトロチオン(MEP ),イソプロチオラン
質
係る暫定指導指針
,イプロジオン,エトリジアゾール(エクロメゾール),オ
について」(平成
キシン銅(有機銅),キャプタン,クロロタロニル(TPN )
2年環水土第77号
,クロロネブ,チウラム(チラム),トルクロホスメチル,
)で通知された農
フルトラニル,ペンシクロン,メタラキシル,メプロニル,
薬
アシュラム,ジチオピル,シマジン(CAT ),テルブカルブ
(MBPMC ),トリクロピル,ナプロパミド,ピリブチカルブ
,ブタミホス,プロピザミド,ベンスリド(SAP ),ペンデ
ィメタリン,ベンフルラリン(ベスロジン),メコプロップ
(MCPP),メチルダイムロン
「公共用水域等に
イプロジオン,イミダクロプリド,エトフェンプロックス,
おける農薬の水質
エスプロカルブ,エディフェンホス(EDDP),カルバリル(
評価指針について
NAC ),クロルピリホス,ジクロフェンチオン(ECP ),シ
」(平成6年環水
メトリン,トルクトホスメチル,トリクロルホン(DEP ),
土第86号)で通知
トリシクラゾール,ピリダフェンチオン,フサライド,ブタ
された農薬
ミホス,ブプロフェジン,プレチラクロール,プロベナゾー
ル,ブロモブチド,フルトラニル,ペンシクロン,ベンスリ
ド(SAP ),ペンディメタリン,マラチオン(マラソン),
メフェナセット,メプロニル,モリネート
(水道水に関する
一般細菌,大腸菌群,カドミウム,水銀,セレン,鉛,ヒ素
)「水質基準に関
,六価クロム,シアン,硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素,フッ
する省令」(平成
素,四塩化炭素,1,2-ジクロロエタン,1,2-ジクロロエチレ
4年12月21日厚令
ン,ジクロロメタン,シス-1,2- ジクロロエチレン,テトラ
69)に基づく項目
クロロエチレン,1,1,2-トリクロロエタン,トリクロロエチ
レン,ベンゼン,クロロホルム,ジブロモクロロメタン,ブ
ロモジクロロメタン,ブロモホルム,総トリハロメタン(ク
ロロホルム,ジブロモクロロメタン,ブロモジクロロメタン
及びブロモホルムのそれぞれの濃度の総和),1,3-ジクロロ
プロペン,シマジン,チウラム,チオベンカルブ,亜鉛,鉄
,銅,ナトリウム,マンガン,塩素イオン,カルシウム,マ
グネシウム等(硬度),蒸発残留物,陰イオン界面活性剤,
1,1,1-トリクロロエタン,フェノール類,有機物等(過マン
ガン酸カリウム消費量),pH値,味,臭気,色度,濁度
その他
上記以外の物質であって,科学的知見により人の健康又は自
然環境に有害であるとされるもの
-176-
環境影響要素
水 温
そ
既出の物質以外の
の
環境基準生活環境
他
項目
その他
内容,観点
水 温
大腸菌群数,水素イオン濃度(pH)
透明度,外観等
水質汚濁の指標となる水生生物
・水生昆虫及びその他底生動物(カワゲラ類,カゲロウ類,
トビケラ類,トンボ類,双翅類,甲虫類等の水生昆虫,
ミミズ類,ヒル類,貝類,プラナリア類)
・魚類
・環境基準の生活環境の保全に係る項目は,河川,湖沼,海域における利水,水域の
利用,自然環境の保全等の水域の特性に応じて,有機汚濁や濁り,富栄養化等に係
る項目の基準が設定されている。環境影響評価において,将来の状態の予測は,こ
れらの項目が中心となる。
・有害物質とは,健康の保護に関する環境基準項目環境基準の要監視項目,水質汚濁
防止法に定める有害物質,農薬等があげられる。また,水道水の水質基準等,利水
目的に応じ個別に定められている基準の対象項目についても,当該水域の特性に応
じ対象としていく必要がある。
・環境基準のうち,人の健康の保護に関する項目は,汚濁された水の飲用や汚染され
た農作物,魚介類等の摂取による健康被害を防止するため,重金属,揮発性有機塩
素化合物,農薬等に係る有害物質が対象となっており,今後,表に掲げた有害物質
はさらに対象が増えると想定される。これらの有害物質の多くは,基本的に水域に
排出されないことが求められるものであり,環境影響評価においては,将来濃度の
予測を行うというより,排出しないための対策をいかに講じるかが視点となる。
・水温は,魚類等水生生物への影響の観点から重要である。
・その他の項目としては,水の色や外観,水生生物等が想定される。水生生物は,こ
こでは,水質を総合的に表す指標として取り上げるものであり,水生昆虫等の水生
動物と魚類を主な対象とする。この項目は,類似事例等より予測を行うこととする
が,現時点では,予測評価を行うことよりもむしろ事後調査における指標としての
役割を重視して取り上げる項目である。なお,水域における保全を図るべき動植物
等への影響は,水質の予測結果を踏まえ,動物,植物又は生態系で取り扱うことと
する。また,水辺のヨシ等の水生植物の改変に伴う水質浄化能の低下が想定される
場合は,その他として取り上げる。
-177-
6-2 地域概況の把握
(1)目的
概況調査の目的は,水質のうち何を対象として環境影響評価を行うのかを定め,か
つその対象ごとに調査,予測,評価の手法(保全対策検討の方針を含む)を定める(
以上,方法書に記載する事項)ために必要な情報を得ることである。そのため,事業
予定地の周辺地域(ある程度広域)における水質の概況を把握するとともに,汚濁物
質の移送に係る水象の状況,保全のあり方に係る水利用の状況や水に依存する動植物
等の状況,水質の現状や将来の動向に係る人口,産業,環境整備の状況等を把握する。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①の水質の状況を基本とし,その他関連項目につ
いて,水質の観点から以下のような事項を把握する。
概況調査の項目
①水質の状況
調査の内容
・河川,湖沼,海域に係る汚濁物質の濃度,汚濁の特徴(過去
5か年程度の経年変化を含む)
・発生源の状況
・水質に係る苦情の状況 等
②水象の状況
・河川,湖沼の位置,流域,流量又は貯水量,海域の潮位,
潮流等
③水利用の状況
・河川,湖沼及び地下水の利用の状況(取水等の地点,利用
用途,利用実態等。特に水道水源位置に留意)
・内水面漁業その他水域の利用状況
④社会資本整備等の
・下水道,農村集落排水施設等の整備状況及び整備計画
状況
⑤法令等による指定
・規制等の状況
・環境基準設定状況,水質汚濁防止法,仙台市公害防止条例,
広瀬川の清流を守る条例等
・その他県,市における水質,水環境に係る計画
⑥その他
・水質の現状や将来の水質に影響を与えると想定される人口,
産業,開発の動向等
・水質や水環境保全等に係る地域活動等
・水域の貴重な動植物等
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業予定地周辺の水環境の広域的にみた位置づけが可能な範囲
とし,事業予定地の水系に係る流域及び下流の環境基準点位置等を考慮して設定する。
-178-
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,既存文献等によるものとし,必要に応じ市への聞き取り等を行
う。
概況調査の項目
①水質の状況
調査の方法
・県や市の水質測定結果等既存文献の収集,整理
・苦情については,必要に応じ市への聞き取り
②水象の状況
・水域の分布については,地形図,河川図等
・流量については,流量年表,水質測定結果等
③水利用の状況
・上水道,水利権,漁業権等に係る県及び市資料
・必要に応じ市等への聞き取り
④社会資本整備等の状況
・下水道等に係る市資料
⑤法令等による指定
・県及び市資料
・規制等の状況
⑥その他
・地形図,土地利用図,都市計画図,その他市資料等
既存文献の収集,整理
・開発動向については,市への聞き取り
・水域の貴重な動植物については,動物・植物の概況
調査による
なお,事業予定地内の水系及び水域については,既存資料による把握が困難な場合
も多いため,現地概査により水系の位置及び水外観の把握を行うとともに,集水域の
状況,人為的発生源の有無等について把握しておくこと。
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
●水質の概況記述内容及び作成図表例
1.事業予定地及び周辺の水質の概況
・水質汚濁物質濃度及び苦情の状況から,有機汚濁の現状及び動向,有害物質等に
よる汚染の可能性,推定される発生源等について記述
図表.水域の分布及び既存の水質則定点位置図
既存の水質測定結果表,グラフ等
2.水質保全上の留意点
・上記の内容及び関連する②から⑥の内容を勘案し,事業予定地周辺における水質
保全上の留意点を記述(②から⑥の関連項目のうち,水質に係る内容については
概要を記述すること)
-179-
6-3
スコーピング
<事業特性によるスコーピング>
・スコーピングにおいては,事業の実施に伴う行為(環境影響要因)と,それにより
影響を受けるおそれのある環境影響要素を把握し,環境影響要因の大きさ,影響の
重大性の程度に応じ,影響評価項目として選定する。その際,具体的に物質名まで
明らかにすること。
・想定される主な環境影響要因は,以下のようなものである。
○工事中
・造成工事による濁水の発生
・水域におけるコンクリート工事
○供用時
・施設の稼働,人の利用等に伴う排水
・有害物質等の使用,保管等
・廃棄物の埋立処分
・農薬の使用
・処理水等の地下浸透
・水の貯留
・取水等による水量の低下
・近年問題となっている有害化学物質については,法令等による規制物質だけでなく,
科学的知見に基づき,広く検討対象とする必要がある。その際,事業により使用又
は発生する物質を対象とするが,生産や処理・処分等の過程で非意図的に生成又は
排出される物質についても十分留意すること。
<立地条件によるスコーピング>
・事業予定地が公共下水道の処理区域であり,公共下水道に接続する場合,供用時の
水質影響については項目として選定する必要はない。ただし,その場合には,公共
下水道の整備状況,接続の条件等について明記する。また,接続に当たって除害施
設等を設置するなどの一定の処理を行う場合は,対象として選定すること。
<重点化項目,簡略化項目の明確化>
・事業特性では,下水道終末処理施設,大規模なダム,廃棄物の最終処分場,水を大
量に消費するかあるいは有害物質の使用量又は発生量が多い工場や工業団地,農薬
を大量に使用するようなレクリエーション施設等,特に負荷が大きい事業において
重点化する。
・立地条件では,水道水源流域や取水地点近傍等の利水上の影響が大きい地域,非常
に良好な水質の地域や貴重な水生生物の生息地近傍の地域,既に生活排水等により
水質が問題となっている地域,自然要因又は過去の土地利用に起因する重金属等の
汚染の可能性がある地域等に立地する場合,環境基準が設定されているなど水質保
全上重要な湖沼に排水が流入する場合等において重点化する。
・一方,影響要因が一般的な事業に比べて小さい場合,類似事例から影響の程度が比
較的小さいことが想定される場合等においては,調査,予測,評価を簡略化するこ
とができる。
-180-
・周辺の土地利用等からみて,現況における汚濁の可能性が低い場合,現況調査を簡
略化することができる。
環境影響要素
・水の汚れ
選定に際しての考え方
重点化・簡略化
・公共用水域へ排水する場合は
・排出量が極めて少ない場合,簡
BOD 又はCOD を選定(下水道
略化することができる。
へ接続する場合は,下水道の
・水道水源流域,貴重な動植物の
整備状況,下水道投入の条件
生息域及びその周辺,非常に良
等を明記した上で項目からは
好な水域,水質保全上重要な湖
ずすことができる)
沼,すでに汚濁が著しい水域等
・水の貯留,取水による水量の
に排出する場合,重点化する。
減少等が生じる場合,BOD 又
はCOD を選定
・水の濁り
・造成を行う場合,SSを選定
・富栄養化
・下水道終末処理施設,ダム事
・ダム事業の場合,重点化する。
業の場合,また,閉鎖性水域
・それ以外では,負荷の増加量の
に排水する場合等は全燐,全
把握等簡略な手法による。
窒素を選定
・溶存酸素
・ダムの場合,貯留による水質
の変化の指標として選定
・有害物質
・該当物質の排出,使用又は生
・水道水源流域及びその他取水地
成が想定される場合に,その
点周辺,貴重な動植物等の生息
物質を選定
域及びその周辺の水域に排出す
・自然条件又は過去の土地利用
・水温
等に起因して,土地の造成等
・廃棄物最終処分場,農薬を大量
に伴い汚染が想定される場合
に使用するレクリエーション施
選定
設等においては重点化する。
・大量の排水がある場合,ダム
の場合(低温水の排水)選定
・ダム等水位の大幅な変動があ
る場合選定
・貴重な動植物等の生息域及び
その周辺に排水する場合選定
・その他
る場合,重点化する。
・水域において大量のコンクリ
(水素イオン
ート工事を行う場合pHを選定
濃度)
・公共用水域に排水する場合
(水生生物)
で,影響の程度が相当程度大
きいと想定される場合に選定
・道路の供用による融雪剤等の
散布による影響
-181-
6-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1.公共用水域の水質
選定項目に係る汚濁物質の濃度等
2.水象
① 河川の流量,流速等
② 湖沼の水位,貯水量,流入・流出量,滞留時間,成層状況等
③ 海域の潮位,潮流,流入河川流量,滞留時間,成層状況等
3.その他
必要に応じて発生源の状況,気象の状況,利水の状況,水生生物の状況等につい
ても把握する。
・水質については,影響評価項目として選定した物質の濃度を測定する。
・現況において,汚濁が問題となっている場合には,推定される発生源の状況等を把
握する。
・将来の汚濁物質濃度の予測を行う場合には,河川においては,流量,流速等,湖沼
においては,水位,貯水量,流入・流出量,滞留時間,成層状況等,海域において
は,潮位,潮流,流入河川流量,滞留時間,成層状況等を把握する。また,予測に
用いるモデルに応じ,必要な予測条件を測定する。
・利水や保全を要する水生生物等が存在する場合,必要に応じその内容,影響を受け
る可能性のある対象の面積,人口,個体数等について把握しておくとともに,求め
られる水質の水準についても既存文献等を収集する。なお,保全を要する生物等へ
の影響について,既存文献等が十分でなく,かつ,重大な影響が想定されるような
場合には,必要に応じ調査の実施等を検討する。
・将来の水質に影響を及ぼすおそれのある開発計画等について,把握しておく。
(2)調査方法
① 調査方法は国,県等の測定結果等既存資料や文献等により調査するとともに,
現地調査を実施する。
② 測定方法は,「水質汚濁に係る環境基準について」に定める方法等とする。
・水質については,1年間以上における県,市等の既存の測定結果を収集,解析する
とともに,年間の変動を把握できるような現地調査を実施することを基本とする。
・簡略化項目の場合は,調査の頻度,地点数等を減らすことができる。
・重点化項目では,調査の頻度,地点数等を増やすとともに,精度の高い予測手法を
用いることとし,そのため予測に必要な条件の調査が必要となる。また,評価に当
たっての影響に関する文献,事例等の収集,解析等を重点的に実施する必要がある。
・流量その他水象については,流量年表等の既存資料による長期的な状況の把握を行
う。既存資料で不十分な場合は,現地で測定する。なお,水質を測定する場合には,
併せて流量等を把握しておくこと。
-182-
<河川・湖沼・海域の水質の測定方法>
・測定方法は,以下の告示,調査方法等に準拠して行う。
○健康項目,生活環境項目→「水質汚濁に係る環境基準について」(昭和46年環境
庁告示第59号),「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準の測定方法
及び要監視項目の測定について」(平成5年4月28日環水規第121 号環境庁水質
保全局水質規制課長通達)
○要監視項目→「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準の測定方法及び
要監視項目の測定について」
○有害物質→「排水基準を定める総理府令の規定に基づく環境庁長官が定める排水
基準に係る検定方法」(昭和49年環境庁告示第64号)
○流量測定等→「水質調査方法」(昭和46年9 月30日環境庁水質保全局)
○その他の適切な方法
<水生生物>
・水生昆虫その他底生動物については,コドラート法とよばれる,50cm×50cm程度の
コドラートを設置し,サーバーネット,フルイ等を使用して枠内の水生昆虫や底生
動物を採集する。採集したものについて,同定(この場合,水質の指標として用い
るレベルの区分で差し支えない)及び個体数のカウント等を行い,生物指標による
水質の判定を行う。生物指標による水質判定には,いくつかの手法があるが,既存
事例との比較等を実施することを想定すると,市において実施している水生生物調
査の手法に準じることが効率的である。
・魚類については,網等による捕獲,潜水観察等の手法によるとともに,漁業協同組
合等の聞き取りを実施する。現地調査の場合は,将来の事後調査との比較が可能な
ように,魚類相を把握するだけでなく,個体数を含めた量的な把握を行っておく。
(3)調査地域等
① 調査地域は対象事業により水質の変化が想定される地域とし,既存の事例や簡易
な試算等により推定し設定する。
② 調査地点は既存の発生源や保全対象の分布を勘案し,調査地域の水質の現状を適
切に把握できる地点とする。
<調査地域>
・河川・湖沼については,事業予定地を集水域に持つ水域(ダム等の場合は,湛水予
定水域を含む)のうち,上流は隣接部まで,下流は単純混合による寄与濃度の計算
等により判断して設定する。その際,原則として下流側の環境基準点を含むように
設定する。
<調査地点>
【河川】
・調査地点は,調査水域内において次の地点を考慮して複数地点を設定する。
○事業による排水が河川に流入した後に十分混合する地点及び流入前の地点
○支川が合流後十分混合する地点及び合流前の本川及び支川の地点
○流水の分流地点
-183-
○農業用水,水道等の取水地点
○環境基準点及びその他既存資料による調査地点
○注目すべき水生生物が存在する地点
○その他必要な地点
【湖沼】
・調査地点は,調査水域内において次の地点を考慮して複数地点を設定する。なお,
小規模な水域の場合は,湖心一点を調査地点として設定する。
○湖心
○湖沼水の流出地点
○湖水の利水地点
○事業による排水が湖沼に流入した後に十分混合する地点
○環境基準点及びその他既存資料による調査地点
○注目すべき水生生物が存在する地点
○その他必要な地点
【海域】
○事業による排水が海域に流入した後に十分混合する地点
○環境基準点及びその他既存資料による調査地点
○注目すべき水生生物が存在する地点
○その他必要な地点
(4)調査期間等
① 1年間以上にわたる水質の現状を把握し得る期間とする。
② 頻度の設定に当たっては,季節による変動等を考慮する。
・調査期間は,公共用水域の年間を通じた水質の状況を的確に把握できる期間とし,
原則として1年とする。調査回数は原則として年6回程度とするが,次の事項を考
慮して実施する。なお,流量と水質は,同時測定とする。
○健康項目及び有害物質については原則として年2回程度(夏,冬)とする。なお,
当該物質が検出された場合は,適宜調査回数を増やす。
○生活環境項目についても,現状において人的な発生源がほとんどなく,水質が良
好な河川においては,状況に応じ適宜調査回数を減じても差し支えない。
○灌漑等で社会的条件により水質・流量が変化する場合は,それを考慮して調査時
期を設定すること。
○調査日は,晴天が2~3日続いた後の流量及び水質が安定した日を選定するもの
とする。
○工事によるSSを対象として調査を行う場合は,降雨後にも調査日を設定する。
○湖沼については停滞期,循環期を含めること。
・人為的な排水その他により,流量,水質の日間変動が想定される河川,湖沼の場合
は,朝,昼,夕等時間帯を考慮して1日複数回の採水を行う。
-184-
6-5 予測
(1)予測内容
水質汚濁物質の環境中濃度の状況について予測する。
・予測の内容はスコーピングで選定した項目とし,環境中の濃度を予測することを基
本とする。
・ただし,有害物質等であって,基本的に排出しないことを保全の方針とする場合は,
保全対策をもって予測に代えることができる。
(2)予測地域及び予測地点
<予測地域>
・予測地域は現況調査の範囲に準じ,工事中及び供用後の区分ごとに設定するものと
し,水質の変化の程度を十分に把握できる範囲とする。
<予測地点>
・予測する地点は,現況調査地点,環境基準点,水生生物の生息地点,取水地点,そ
の他適切な地点とする。
・意図的に排出する物質以外の物質で,環境中の濃度の定量的予測が困難なものにつ
いては,排水口等における排出量を確定することとする。
(3)予測対象時期等
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 供用後にあっては,事業活動が定常状態に達した時期
<工事中>
・工事による影響が最大となる時期とする。造成による影響は,造成中の面積が最大
となる時期,コンクリート工事等による影響は,当該工事による負荷が最大となる
時期を基本とするが,放流先水域での利水状況や,魚類の産卵その他影響を受けや
すい時期が想定される場合には,これらも考慮し予測時期を設定する。
・工事計画において工期・工区が設定され,それぞれの工事が間隔をおいて実施され
る場合には,各工期・工区ごとの予測を行う。
<供用後>
・事業計画において予定されている施設等が通常の状態で稼動する時期とする。施設
等の稼動が段階的に行われ,その間隔が長期に及ぶ場合は,それぞれの段階ごとに
予測する。
・負荷の発生条件は,年間の平均的な状態及び最も影響が大きい状態等とし,BOD 又
はCOD の環境基準との適合をみる場合には,年間の75%値(又は低水流量時の濃度)
についても予測する。
-185-
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・各種モデルによる理論計算
・模型実験
・事例の引用・解析
・保全対策
・予測は,原則として定量的予測手法を用いるものとし,予測項目及び事業の種類・
規模及び水域の状況等を考慮して,以下の標準的手法を参考として適切なものを選
択し,必要に応じてこれらの手法を組み合わせて行う。
・なお,定量的な予測が難しい場合には,類似事例等の統計的解析,事業からの排出
負荷量と他の発生源から排出される負荷量との比較検討等の定性的手法による。
・また,有害物質等であって,基本的に排出しないことを保全の方針とする場合は,
使用,保管,発生等の量を明らかにした上で,外部に排出しないための管理や処分
等の方法,万一事故等により排出された場合の対応策,排出されていないことの監
視の方法やそれらについての情報公開の方法等,保全対策を明確にすることをもっ
て,予測に代える。
・農薬の影響については,濃度の予測は,以下のような拡散計算によることとするが,
調整池等水域への農薬成分の流出量については,降雨の土層内での貯留,浸透等を
考慮した水収支計算によるものとし,土中,水中等における農薬の分解速度等につ
いても勘案すること。
・海域において重点化した予測を行う場合は,流況モデル(二次元一層モデル等)と
物質の拡散,移流,内部生産等を併せた数値シミュレーションを行う。また,海域
における温排水の予測には,電力中央研究所のモデルが一般的に用いられる。また,
干潟の浄化量には干潟生態系モデル等が考えられている。
-186-
水質の予測手法
対
象
BOD ,COD 等
手
法
河川:
・山間地の小河川や影響の小さい事業では完全混合式
・自然浄化が期待されるある程度の規模の河川では
Streeter-Phelps の式
湖沼:
・小湖沼では,完全混合式
・規模の大きい湖沼の場合Joseph-Sendner式
海域:
・Joseph-Sendner式を基本とする
・重点化する場合は,数値シミュレーションや
干潟生態系モデル等
富栄養化(全リン,全窒素)
・Vollenweiderのモデル
・ダム事業や重要な湖沼等,重点化項目の場合は,
ボックスモデル,メッシュモデル等に富栄養化
モデルや生態系モデルを組み合わせた手法
有害物質,工事中のpH,
・類似事例の解析
工事中のSS等
・保全対策の記述
水生生物
・汚濁物質の濃度の予測結果を踏まえ,類似事例の
解析等により,種構成等の変化の可能性を推定
-187-
参考:各種予測モデルの概略
■河川(非感潮河川)の代表的な水質予測手法
予測手法
概略予測手法
完全混合式
概要
対象項目
予測に必要な項目
水域に放流された排水が水域に
BOD
・河川の流量,水質
完全に混合する仮定し,単純希
T-N
・排出量,濃度
釈計算により濃度を求める方法
T-P
SSなど
Streeter-Phelps 式
その他概略予測手法
生分解等の河川の自浄作用を考
BOD
・河川の流量,水質
慮した拡散方程式の解析解であ
DOなど
・排出量,濃度
り,BOD 濃度等の予測に用いら
・流達時間又は平均流速
れる
・自浄係数,再曝気係数
その他河川水質の概略予測手法としては,南部式,岩井・井上の方法
等がある
詳細予測
数値計算手法
流動方程式及び拡散方程式を数
BOD
・上流の物質濃度
値解法により解くことで濃度分
DO
・河川の流量
布を求める方法。非感潮河川の
農薬
・自浄係数
場合は,主として二次元単層定
T-N
・河川勾配
常モデルが用いられる。
T-P など
・河床粗度係数
・支川流入量等
■湖沼・海域(貯水池含む)の代表的な水質予測手法
予測手法
概略予測手法
概略予測
完全混合式
Joseph-Sendner式
概要
対象項目
予測に必要な項目
水域に放流された排水が水域に
COD
・湖沼の水量,水質
完全に混合する仮定し,単純希
pH
・排出量,濃度
釈計算により濃度を求める方法
農薬など
点源から連続放出される排水の
COD
・湖沼・海域の水質
拡散について,拡散係数が汚染
・排出量,濃度
源からの距離に比例すると仮定
・混合層の厚さ
して解いた,拡散方程式の解析
・拡散速度
解である
Vollenweiderモデ
湖沼の水理特性をパラメータと
T-N
・湖沼の水理特性(平均
ル
してリン又は窒素の流入負荷量
T-P
滞留時間,平均深度)
と湖沼の富栄養化度を経験的に
クロロフィル-a
求めたモデル
・流入水量
・全リン又は全窒素の流
入負荷量
詳細予測
数値計算手法
流動方程式及び拡散方程式を数値解法により解くことで濃度分布を求
める方法(モデルについては別表参照のこと)
水理模型実験
現地の水象を再現できる水槽中に現地水域の模型を設置し,この模型
上で,流況変化や排水の挙動を解明しようとる方法
*:数値計算手法において用いられるるモデルについては下の表を参照のこと
-188-
■数値計算手法において用いられるモデル
予測手法
水質予測計算
概要
ボックスモデル
ボックスモデルは,水域をいくつかのボックスに分割して,各ボッ
クス内の水質を均一と仮定して水質を予測する方法である。
各ボックス間の水の移動は,メッシュモデル等による流動計算の結
果から推定するのが普通である。
ボックス内の水質は,物質変化過程を定式化し,連立微分方程式と
して解く方法が一般的である。
メッシュモデルに比べて,水質分布(水平・鉛直分布)予測の精度
が粗いが,計算の負荷が少ないので,年間を通した水質の予測計算あ
るいは複雑な物質変化過程についても対応が可能であるという利点を
持つ。
湖沼等においてボックスモデルは,主として富栄養化等の水質予測
の検討に用いられる。成層(温度躍層等)が形成されている場合には
,2層以上のモデルとする必要がある。
物質が保存系物質(SS等)の場合は,物質変化過程に沈降項のみを
入れて計算する。
非保存物質の場合は,物質の変化過程を定式化して計算する「富栄
養化モデル」や生物による物質変化過程を定式化する「生態系モデル
」がある。
メッシュモデル
メッシュモデルの場合,流動計算と水質の拡散方程式とを同時に解
く場合が多い。
このような数値計算を行う場合においては,流れの場を表現するモ
デルが用いられる。例としては,2次元単層モデル,2次元多層モデ
ル,3次元モデル等であり,水域の特性を踏まえ適切なモデルが選定
される。たとえば,非感潮河川においては通常2次元単層定常モデル
を用いる。湖沼においては成層状態を無視できる場合には2次元単層
モデルを,また成層が形成されている場合には2次元多層モデルが用
いられる。鉛直分布については鉛直2次元モデル等を使用して予測が
行われる。物質変化過程の計算はボックスモデルと同じ考え方であ
る。
ボックスモデルに比べて水質の分布状況を精度よく把握することが
できる。一般的には,夏期等の一時期あるいは年平均値等を求める場
合に適用される場合が多い。
物質が保存系であるか,非保存系であるかの違いによる計算の考え
方は,ボックスモデルと同じである。
物質の変化過程
富栄養化モデル
のモデル
栄養塩の供給と,植物・動物プランクトンによる吸収・同化,死亡
・沈降,分解・溶出等,富栄養化に係る物質循環の諸過程をモデル化
したもの。予測に当たっては,対象水域で生産・分解・溶出等の速度
係数を実測調査することが必要である。
生態系モデル
上記のモデルを,動植物プランクトンそれぞれの増殖と死亡,枯
死,デトリタスの増減等,生物群集のレベルにまで掘り下げて記述し
たモデル。モデルを詳細にすれば現象の細かな検討が可能となるが,
モデル内の諸係数や検証データには実測困難なものも多くなる。
-189-
参考:水質階級と指標生物
水 質 階 級
Ⅰ(きれいな水)
指 標 生 物
1.ウズムシ類
2.サワガニ
3.ブユ類
4.カワゲラ類
5.ナガレトビゲラ,ヤマトビゲラ類
6.ヒラタカゲロウ類
7.へビトンボ類
Ⅰ・Ⅱ
8.5以外のトビゲラ類
9.6,11以外のカゲロウ類
Ⅱ(少し汚れた水)
10. ヒラタドロムシ類
Ⅲ(きたない水)
11. サホコカゲロウ
12. ヒル類
13. ミズムシ
Ⅲ・Ⅳ
14. サカマキガイ
Ⅴ(大変きたない水)
15. セスジユスリカ
16. イトミミズ類
参考:淡水魚類と水域の自然性
イワナ
アユ
ヤマメ
トゲウオ類
非常によい環境
良い環境
やや良い環境
注意を要する環境
カジカ類
ホトケドジョウ
ウグイ
カマツカ
カワムツ
タナゴ類
スナヤツメ
(淡水産二枚貝)
ウナギ
シマドジョウ
オイカワ
アブラハヤ
ナマズ
ハゼ類
タモロコ
ヨシノボリ
メダカ
ウキゴリ
チチブ
フナ類
カダヤシ
ドジョウ
モツゴ
出典:生物指標-自然をみるものさし-
財日本自然保護協会編集・監修
-190-
1985
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 汚濁物質を排出する施設の内容,稼働時間,排水濃度,排水量等
② 農薬その他有害物質の使用状況,使用方法等
③ 土地改変の範囲,施工方法等
④ 河川の形状の改変状況等
2 将来環境条件
① 河川流量,流速,自浄能力等
② 周辺発生源の状況
③ 利水の状況等
<事業計画>
・予測に用いる排出負荷量は,事業計画に示された工事計画・施設計画に基づき設定
する。ただし,事業計画において排出負荷量等が明らかでない場合は,各種の原単
位,類似事例等を参考に推計する。
・供用時の,排水によるものは,排水する施設の種類,規模,能力,構造,用途,配
置,排水口の位置,稼働又は使用の状況,排水の量,排出する物質の濃度等を明ら
かにする。
・有害物質等の使用,保管等が要因となる場合には,使用,保管等を行う物質の種類,
量,使用等の用途及び方法等について明らかにする。
・水の貯留による影響については,貯留する水の量,年間の水位変動等運用の方法,
滞留時間,排水の量,方法及び位置等について明らかにする。
・取水等による影響については,年間の取水の量,方法,河川維持流量及びその設定
の根拠等について明らかにする。
・農薬の使用による影響については,使用する農薬の種類,使用目的,量,使用する
時期,散布の方法等について明らかにする。
・廃棄物の埋立によるものについは,埋め立てる廃棄物の種類,量及びこれらの管理
の方法,埋立の方法,侵出水の処理の方法と処理の水準等について明らかにすると
ともに,廃棄物の種類等による有害物質等の溶出等の可能性について,既存事例等
より推定する必要がある。
・工事中の造成に伴うものは,造成等の行為を行う範囲,面積,施工方法を明らかに
する。
・その他,流量や流速,自浄能力等に影響する河川の形状の変更についても明らかに
する。
<将来環境条件>
・河川流量等については,一般的には現況の値を用いるが,必要に応じ水象の予測結
果を踏まえる。
・周辺発生源及び利水については,将来の計画についても勘案する。
-191-
<バックグランド濃度>
・水質の将来予測を行う場合には,バックグランド濃度と事業による寄与濃度を合算
することを基本とする。
・既存資料等により,事業予定地周辺水域の将来濃度が設定されている場合は,予測
時期との関係を検討し,予測のバックグランド濃度とする。ただし,その場合にあ
っては,計画等の確実性を十分に検討すること。一般には,将来値が明らかでない
場合が多く,現況の濃度をもって,将来のバックグランド濃度とする場合が多い。
・なお,その場合,将来の開発動向等により,将来水質の変化の可能性について検討
しておくこと。
6-6
環境保全対策
水質に係る環境保全対策は,予測結果に基づき,次の事項を考慮して適切に行う。
1
回避
・排水地点の変更による,水道水源,貴重な動植物分布地,取水地点,すでに汚染が
著しい地域等への排水の回避
・有害物質の代替物質への転換等による使用の回避
2 低減
・規模の縮小,生産工程の変更,水の循環使用等による排出負荷の低減
・農薬の使用量の削減,溶解度の高い農薬の使用回避
・生活排水,その他排水の高度処理による汚濁負荷の低減
・廃棄物最終処分場における水の浸透防止策の徹底,侵出水の処理の向上
・工事中の沈砂池の設置,早期緑化等濁水流出防止対策
・汚染物質等の厳格な管理
・生物モニタリング
-192-
6-7
評価
① 影響の回避・低減が図れるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・環境基準(環境基本法)
・排出基準(水質汚濁防止法,広瀬川の清流を守る条例)
・農業用水基準
・水産用水基準
・水道水質に関する基準
等
①
影響の回避・低減の観点
・第1に,重大な影響について回避が図られているかを検討する。回避を図るべき影
響としては,水道水源,貴重な動植物分布地,農業用水の取水地点,すでに汚染が
著しい地域等への影響があげられる。
・その他の影響は,上記の影響のうちやむを得ず回避が困難なものについて,最大限
の低減が図られているかを検討する。
・複数の影響評価項目がある場合,項目ごとの影響の重大性(重点化,簡略化の状況)
を勘案し,評価項目ごとの影響の程度を重み付けをして合計するなどの方法により,
総合的に最も影響の小さい計画案又は保全対策案を選定することをもって,水質の
総合評価とする。
・なお,予測はあくまで汚濁物質濃度を予測したにすぎず,影響の程度を検討するた
めには,予測した汚濁物質濃度が,人の健康,農業その他の利水,水生生物等につ
いてどのような影響を及ぼすかの科学的な知見について,収集,整理し,影響を評
価する必要がある。
・影響の回避の判断は以下のような場合が考えられる。
○利水や重要な生物への影響が想定される地点において,現況の水質からほとんど
変化しない場合
○水質の変化の程度が,人の健康や生物への影響を及ぼすレベルに比べてはるかに
低い場合
・影響の低減の判断は以下のような場合が考えられる。
○利水や重要な生物への影響が想定される地点において,当初案あるいは通常用い
られる技術を用いた場合より,水質の変化の程度が相当程度低減されている場合
○一定以上水質の変化する水域の面積や区間が,当初案あるいは通常用いられる技
術を用いた場合より,相当程度低減されている場合
②
基準や目標との整合
・上記の基準等の他に,本市の環境基本計画及び水環境プランにいおいて,以下のよ
うな定量目標が定められている。
○国の環境基準について,非達成の場合はできるだけ速やかに達成し,既に達成さ
れている場合には現状より悪化させないように努める。(環境基本計画)
-193-
○河川,湖沼,海域の生活環境項目に関する環境基準の設定されている水域につい
て環境基準が達成されていない場合は達成を目指し,達成されている場合及び環
境基準が設定されていない水域については,現状水質が悪化しないことを目指す。
(水環境プラン)
○河川の上・中流部において,指標生物による水質階級Ⅰを維持することを目指す。
(水環境プラン)
・なお,環境基準が設定されていない水域については,流入先の水域の環境基準につ
いても勘案すること。
6-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に以下のような場合に
ついては詳細に行う。
○予測条件,モデルの適用条件等からみて予測の不確実性が高い場合(ただし,影
響の程度が著しく小さい場合は除く)
○環境保全対策として新たな技術や設備を用いるなど,環境保全対策の効果の不確
実性が高い場合
○有害物質が排出される場合,又は管理等が不適切な場合排出が懸念される場合
○排出先に水道水源,貴重な動植物分布地,重要な湖沼等,影響を回避すべき重要
な保全対象が存在する場合
○環境基準を超えるなど影響が大きい場合
○他の同種事業より相当程度排出量が多い場合
(2)事後調査の内容
・予測対象物質の濃度,水生生物の状況(あわせて,流量,水位等についても測定)
・事業の実施状況及び負荷の状況
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。ただし,予測対象時期が供用開始後
3年目以降の場合,供用開始1年目等に事後調査を計画する。
・調査期間は,原則として工事中は予測対象時期に複数回の測定,供用後は年単位と
し四季各1回程度の測定とする。ただし影響の程度に応じて増減を行うこと。
・保全対策の効果の不確実性が高い場合や,農薬使用や廃棄物の埋立等,常に適正な
運用状況が維持されるべきものについては,供用開始後3か年程度を目安として,
継続調査を実施する。
・ただし,その後の継続的なモニタリングについては,住民との協定等の方策を講じ
ることし,環境影響評価の事後調査とは切り離して考える。
-194-
7 底質
7
低質
7-1 基本的考え方
(1)考え方
有害物質による河川,湖沼,海域の底質の汚染は,それらの水域における水質の汚
染と密接に関係しているが,有害物質の中でも特に重金属類等は底質に蓄積しやすく,
底質の状況を把握することは水域における重金属等の汚染状況を把握する有効な手段
の一つでもある。また,底質に蓄積された重金属類等は,水中に再度溶出する可能性
をもっており,水質を予測・評価の対象とした場合,必要に応じて底質も対象とする
必要がある。こうしたことから底質の汚染状況を把握することは水域における重金属
類等の汚染の状況を把握するための有効な手段の一つともなっている。
(2)環境影響要素
底質における環境影響要素は,以下の有害物質のうち,底質に蓄積しやすい重金属
類等を主対象とし,これらの中から適切に選定するものとする。
環 境 要 素
底質の暫定除去基準
内 容 , 観 点
水銀,PCB
(昭和50年10月28日
付環境庁水質保全局
長通達) 対象項目
有
害
海洋汚染及び海上災
アルキル水銀化合物,水銀又はその化合物,カドミウム又
害の防止に関する法
はその化合物,鉛又はその化合物,有機燐化合物,六価ク
律に基づく水底土砂
ロム化合物,ひ素又はその化合物,シアン化合物,PCB
判定基準対象項目
銅又はその化合物,亜鉛又はその化合物,フッ化物,トリ
物
クロロエチレン,テトラクロロエチレン,ベリリウム又は
その化合物,クロム又はその化合物,ニッケル又はその化
質
合物,バナジウム又はその化合物,有機塩素化合物,ジク
ロロメタン,四塩化炭素,1,2-ジクロロエタン,1,1-ジク
ロロエチレン,シス-1,2- ジクロロエチレン,1,1,1-トリ
クロロエタン,1,1,2-トリクロロエタン,1,3-ジクロロプ
ロペン,チウラム,シマジン,チオベンカルブ,ベンゼン
,セレン又はその化合物,
その他
水質の項目で選定した有害物質等
7-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,底質のうち何を対象として環境影響評価を
行うのかを定め,かつその対象ごとに調査,予測,評価の手法(保全対策検討の方針
を含む)を定める(以上,方法書に記載する事項)ために必要な情報を得ることであ
る。そのため,事業予定地の周辺地域(ある程度広域)における底質の概況を把握す
るとともに,汚染物質の移送に係る水象の状況,保全のあり方に係る水利用の状況や
-195-
水に依存する動植物等の状況,底質の現状や将来の動向に係る人口,産業,環境整備
の状況等を把握する。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①の底質の状況を基本とし,その他関連項目につ
いては,「水質」で掲げた項目②~⑥に準じる。ただし,底質については法令等によ
る地域の指定等は想定されない。
概況調査の項目
①底質の状況
調査の内容
・底質に係る汚染物質の濃度,汚濁の特徴(過去5か年程度
の経年変化を含む。),発生源の状況等
②水象の状況
・河川,湖沼,海域の位置,流域,流量又は貯水量,海域の
潮位,潮流等
③水の利用の状況
・河川,湖沼,海域の利用の状況(取水等の地点,利用用
途,利用実態等。特に水道水源位置に留意)
・内水面漁業その他水域の利用状況
④社会資本整備等の
・下水道,農村集落排水施設等の整備状況及び整備計画
状況
⑤その他
・底質の現状や将来の水質に影響を与えると想定される人
口,産業,開発の動向等
・水域の貴重な動植物等
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業予定地周辺の水環境の広域的にみた位置づけが可能な範囲
とし,事業予定地の水系に係る流域及び下流の環境基準点位置等を考慮して設定する。
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,既存文献等によるものとし,必要に応じ市町村等の聞き取り等
を行う。
調査の項目
①底質の状況
調査の方法
・底質測定結果等既存文献の収集,整理
・水質測定結果等からの推定
②水象の状況
・水域の分布については,地形図,河川図等
・流量については,流量年表,水質測定結果等
③水の利用の状況
・上水道,水利権,漁業権等に係る県及び市資料
・必要に応じ市等の聞き取り
④社会資本整備等の
・下水道等に係る市資料
状況
-196-
調査の項目
調査の方法
⑤その他
・地形図,土地利用図,都市計画図,その他市資料等既存文献
の収集,整理
・開発動向については,市への聞き取り
・水域の貴重な動植物については,動物・植物の概況調査によ
る
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
●底質の概況記述内容及び作成図表例
1.事業予定地及び周辺の底質の概況
・有害物質等による汚染の可能性,推定される発生源等について記述
2.底質保全上の留意点
・上記の内容及び関連する②から⑤の内容を勘案し,事業予定地周辺における底質
保全上の留意点を記述(②から⑤の関連項目のうち,底質に係る内容については
概要を記述すること)
7-3
スコーピング
<事業による行為から具体的に選定>
・スコーピングにおいては,事業の実施に伴う行為(環境影響要因)と,それにより
影響を受けるおそれのある環境影響要素を把握し,環境影響要因の大きさ,影響の
重大性の程度に応じ,影響評価項目として選定する。その際,具体的に物質名まで
明らかにすること。
・法令等により基準等が定められている物質だけでなく,水質で選定した有害物質を
踏まえて検討する必要がある。その際,事業により使用又は発生する物質を対象と
するが,生産や処理・処分等の過程で非意図的に生成又は排出される物質について
も十分留意すること。
<重点化項目,簡略化項目の明確化>
・底質の重点化,簡略化は,水質の有害物質の選定状況に準じる。
・埋立により潮流の変化が想定され,汚濁物質が堆積しやすくなる可能性がある時は
重点化する。
環境影響要素
底 質
選定に際しての考え方
重点化・簡略化
・人の健康の保護に関する環境
・水源流域及びその他取水地点周
基準項目の物質,その他有害
辺,貴重な動植物等の生息域及び
物質の排出,使用又は生成が
その周辺の水域に汚濁物質が堆積
想定される場合に選定
するおそれがある場合,重点化す
る。
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環境影響要素
底 質
選定に際しての考え方
重点化・簡略化
・自然条件又は過去の土地利用
・埋立により潮流が変化し,汚濁物
等に起因して,土地の造成等
質が堆積しやすくなると想定され
に伴い汚染が想定される場合
る場合,重点化する。
に選定
・浚渫等により,既存の汚染さ
れている底質が攪乱されるお
それのある場合に選定
7-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1.公共用水域の底質
選定項目に係る物質の濃度
2.その他
必要に応じて発生源の状況,気象の状況,水象の状況,水生生物の状況等につい
ても把握する。
・現況において,汚染が問題となっている場合には,推定される発生源の状況等を把
握する。
・底質は,水質汚濁の進行に伴って生じるため,関連する水象の状況等についても把
握する。
・将来の底質に影響を及ぼすおそれのある開発計画等について,把握しておく。
(2)調査方法
① 調査方法は国,県等の測定結果等既存資料や文献等により調査するとともに,現
地調査を実施する。
② 測定方法は,「底質調査方法について」に定める方法等とする。
・測定方法は,以下の告示,調査方法等に準拠して行うものとする。
○カドミウム,全シアン,鉛,六価クロム,砒素,総水銀,アルキル水銀,PCB →
「底質調査方法の改訂について」(昭和63年 9月環境庁水質保全局)
○その他の物質→適切な方法
(3)調査地域等
① 調査地域は対象事業により底質の変化が想定される地域とし,既存の事例等によ
り推定し設定する。
② 調査地点は調査地域の底質の現状を適切に把握できる地点とする。
・調査地域は,水質の変化,潮流等の変化が想定される範囲とし,水質,水象の調査
範囲を勘案して設定する。
・調査地点は,水質調査地点及び当該事業の排水口下流の汚泥の堆積しやすい地点を
考慮して設定するものとし,「底質調査方法」(昭和63年 9月環境庁水質保全局)
に準じて複数地点を設定する。
-198-
(4)調査期間等
① 底質の現状を把握し得る期間及び頻度とする。
・調査回数は1 回以上とする。なお,当該物質が検出された場合は,調査回数を適宜
増加する。
7-5 予測
(1)予測内容
底質の汚染の有無,程度について予測する。
・有害物質等について,基本的に排出しないことを保全の方針とする場合は,保全対
策をもって予測に代えることができる。
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域は現況調査の範囲に準じ,工事中及び供用後の区分ごとに設定するものと
し,底質の変化の程度を十分に把握できる範囲とする。
・予測地点は,現況調査地点,環境基準点,水生生物の生息地点,取水地点,その他
適切な地点とする。
・意図的に排出する物質以外の物質で,底質中の濃度等の定量的予測が困難なものに
ついては,排水口等における排出量を確定することとする。
(3)予測対象時期等
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 供用後にあっては,事業活動が定常状態に達した時期
<工事中>
・工事による影響が最大となる時期とする。造成による影響は,造成中の面積が最大
となる時期を基本とする。
・ただし,底質への影響は経時的に蓄積されていくものであるため,工事完了時を予
測対象時期とすることが望ましい。
<供用後>
・事業計画において予定されている施設等が通常の状態で稼動する時期とする。施設
等の稼動が段階的に行われ,その間隔が長期に及ぶ場合は,それぞれの段階ごとに
予測する。
・ただし,底質の場合,長期的な影響が問題となることに留意する必要がある。
-199-
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・事例の引用・解析
・各種モデルによる理論計算
・模型実験
・保全対策
<予測手法>
・底質の予測は,定量的な予測が難しく,水質の予測結果や潮流の予測結果から,定
性的に推定する。
・また,有害物質等について基本的に排出しないことを保全の方針とする場合は,使
用,保管,発生等の量を明らかにした上で,外部に排出しないための管理や処分等
の方法,万一事故等により排出された場合の対応策,排出されていないことの監視
の方法やそれらについての情報公開の方法等,保全対策を明確にすることをもって,
予測に代える。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 汚濁物質の排出量,使用量等
2 将来環境条件
① 河川流量,流速,河川形態等
・底質の予測の前提条件は,水質の前提条件に準じる。
・なお,埋立等による潮流の変化等が想定される場合は,水象における潮流等の予測
の前提条件に準じる。
7-6
環境保全対策
底質に係る環境保全対策は,基本的に水質の保全対策に準じる。
1 回避
・排水地点の変更による,水道水源,貴重な動植物分布地,取水地点,既に汚染が著
しい地域等への排水の回避
・有害物質の代替物質への転換等による使用の回避
2 低減
・規模の縮小,生産工程の変更,水の循環使用等による排出負荷の低減
・廃棄物最終処分場における水の浸透防止策の徹底,浸出水の処理の向上
・汚染物質等の厳格な管理
・生物モニタリング
・埋立地の形状の工夫による,潮流の滞留等の低減
-200-
7-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・底質の暫定除去基準
等
①
影響の回避・低減の観点
・回避・低減に係る保全対策を盛り込んだ複数の案を比較することにより,事業者が
実行可能な範囲において,最大限の影響の回避・低減が図られているか否かを判断
する。
・底質の予測は定性的なものになる可能性が高いため,底質への有害物質等の堆積の
可能性又は既に汚染されている底質の攪乱の可能性が,回避・低減されているかど
うかによる。
②
基準や目標との整合
・底質の暫定除去基準(昭和50年10月28日 環水管第119 号)のほか,
海洋汚濁及び海上災害の防止に関する法律に基づく水底土砂判定基準等
-201-
7-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に以下のような場合に
ついては詳細に行う。
○予測条件,モデルの適用条件等からみて予測の不確実性が高い場合(ただし,影
響の程度が著しく小さい場合は除く。)
○なお,底質の予測は不確実性が高い。
○環境保全対策として新たな技術や設備を用いるなど,環境保全対策の効果の不確
実性が高い場合
○周辺に水道水源,貴重な動植物分布地等影響を回避すべき重要な保全対象が存在
する場合
○水質の予測において,有害物質による影響が相当程度あると予測された場合
(2)事後調査の内容
・底質の汚染の有無,汚染物質濃度,水生生物の状況,底質を対象とする場合は,(
あわせて,水質も対象とする)
・事業の実施状況及び負荷の状況
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。ただし,底質は,長期的,継続的な
把握が重要であることから,汚染がみられた場合等にあっては,一定期間のモニタ
リング調査を行う。
・調査期間は,原則として年単位とし各年1回以上の測定とする。
-202-
8 地下水汚染
8
地下水汚染
8-1 基本的考え方
(1)考え方
地下水汚染は,地中に有機塩素系化合物や,鉛,ひ素,水銀,六価クロム,その他
の汚染物質が侵入,滞留することにより引き起こされるもので,水質の汚濁又は土壌
汚染にひきつづいて生じる。
地下水汚染の特徴としては,一度汚染されると浄化することが非常に困難であるこ
と,地下水の流れの把握が困難であること,汚染源の特定が困難であること等があげ
られる。このように地下水は一旦汚染されると,その影響が長期にわたり,かつ対策
には多大な時間と費用を要することから,未然防止が重要である。
本市においては,有機塩素系化合物が検出されている井戸があるが,原因の特定に
は至っていない。本市では,地下水は農業用水,建物用水,工業用水の他,一部飲料
水として利用されており,また,湧水は地域住民にとっての重要な資源でもあること
から,環境影響評価における十分な対応が望まれる。
(2)環境影響要素
地下水汚染における環境影響要素は,以下のうちから適切に選定するものとし,こ
れ以外の物質であっても基準の変更及び最新の研究の成果等により,必要に応じて対
象とする。
(平成11年2月現在)
環境影響要素
地下水汚染に係る
環境基準項目
内容,観点
・「地下水の水質汚濁に係る環境基準について」(平成9年
環告第10号)に定める物質
カドミウム,全シアン,鉛,六価クロム,砒素,総水銀,
アルキル水銀,PCB ,ジクロロメタン,四塩化炭素,1,2-ジ
クロロエタン,1,1-ジクロロエチレン,シス-1,2- ジクロロ
エチレン,1,1,1-トリクロロエタン,1,1,2-トリクロロエタ
ン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,1,3-ジク
ロロプロペン,チウラム,シマジン,チオベンカルブ,ベン
ゼン,セレン
その他必要な項目
・「水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件の
施行等について」(平成5 年環水管21号)の要監視物質
・水質汚濁防止法第3 条第2 項の有害物質(有害物質)
・「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る
暫定指導指針について」(平成2 年環水土第77号)で通知
された農薬
・「公共用水域等における農薬の水質評価指針について」
(平成6年環水土第86号)で通知された農薬
・水道水に関する「水質基準に関する省令」(平成4年厚令
69号)に定める項目
・その他有害物質等
(以上についての詳細は,「水質」の解説を参照)
有
害
物
質
・上記の有害物質は,基本的に地下水(又は土壌中)中に排出されないことが求めら
れるものであり,環境影響評価においては,将来濃度の予測を行うというより,排
出しないための対策をいかに講じるかが視点となる。
-203-
・対象項目は,環境基準が設定されている項目をはじめ,重金属や揮発性有機塩素化
合物,農薬等の有害物質を主な検討対象とするが,地下水が水道水源に利用されて
いる場合には大腸菌その他必要な項目を検討対象とするなど,利用状況に応じた検
討を行うこと。
8-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,地下水汚染を選定するか否か,選定する場
合,何を対象として環境影響評価を行うのかを定め,かつその対象ごとに調査,予測,
評価の手法(保全対策検討の方針を含む)を定める(以上,方法書に記載する事項)
ために必要な情報を得ることである。そのため,事業予定地の周辺地域(ある程度広
域)における地下水汚染の概況を把握するとともに,汚染物質の移送に係る水象(主
に地下水)の状況,保全のあり方を左右する地下水利用の状況,地下水汚染の現状や
将来の動向に係る人口,産業,環境整備の状況等を把握する。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①から③の地下水及び地下水汚染の状況を基本と
し,その他関連項目について,地下水汚染の観点から以下のような事項を把握する。
概況調査の項目
①地下水汚染の状況
調査の内容
・地下水に係る汚染物質の濃度,汚染の特徴(過去5か年
程度の経年変化を含む)
・発生源の状況
・地下水汚染に係る苦情の状況 等
②水象の状況
・地下水(井戸,湧水等)の分布状況
・地下水の水位,流動等
③地下水の利用状況
・取水等の地点,利用用途,利用実態等
④法令等による指定・
・環境基準
規制等の状況
⑤その他
・県,市における水質,地下水に係る計画・規制等
・地下水汚染の現状や将来の水質に影響を与えると想定さ
れる人口,産業,開発の動向等
・土地利用の履歴,地質の状況
・地下水の保全等に係る地域活動等
・湧水に依存する貴重な動植物等
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業予定地周辺の地下水の広域的にみた位置づけが可能な範囲
とし,地形・地質の状況等を勘案して設定する。
-204-
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,既存文献等によるものとし,必要に応じ市への聞き取り等を行
う。
調査の項目
①地下水汚染の状況
調査の方法
・地下水の水質測定結果等既存文献の収集,整理
・苦情については,必要に応じ市への聞き取り
②水象の状況
・県及び市資料
・必要に応じ市及び地元への聞き取り
③地下水の利用状況
・県及び市資料
・必要に応じ市等への聞き取り
④法令等による指定
・県及び市資料
・規制等の状況
⑤その他
・地形図,土地利用図,地質図,都市計画図,その他市資料等
既存文献の収集,整理
・開発動向については,市への聞き取り
・湧水に依存する貴重な動植物については,動物・植物の概況
調査による
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
●地下水汚染の概況記述内容及び作成図表例
1.事業予定地及び周辺の地下水汚染の概況
・地下水の分布及び利用状況,地下水質測定結果並びに苦情の状況から,有害物質
等による汚染の可能性,推定される発生源等について記述
図表.井戸,湧水等の分布及び既存の地下水質則定点位置図
既存の地下水質測定結果表,グラフ等
2.地下水汚染防止上の留意点
・上記の内容及び関連する②から⑤の内容を勘案し,事業予定地周辺における地下
水汚染防止上の留意点を記述(②から⑤の関連項目のうち,地下水汚染に係る内
容については概要を記述すること)
-205-
8-3
スコーピング
<事業特性によるスコーピング>
・スコーピングにおいては,事業の実施に伴う行為(環境影響要因)と,それにより
影響を受けるおそれのある環境影響要素を把握し,環境影響要因の大きさ,影響の
重大性の程度に応じ,影響評価項目として選定する。その際,具体的に物質名まで
明らかにすること。
・対象とする物質は,地下水に係る環境基準設定物質だけでなく,科学的知見に基づ
き,広く検討対象とする必要がある。その際,事業により使用又は発生する物質を
対象とするが,生産や貯留,処理・処分等の過程で非意図的に生成又は排出される
可能性のある物質についても十分留意すること。
・事業としては,廃棄物の最終処分場,有害物質の使用,貯留又は発生等の可能性の
ある工場・事業場・研究所や工業団地・研究所団地・廃棄物処理施設,農薬を大量に
使用するようなゴルフ場等のレクリエーション施設等の事業において選定する。
<地域特性によるスコーピング>
・鉱脈の存在等の自然要因又は過去の土地利用からみて,汚染された土壌の地域にお
いて造成等を行う場合,選定する。
<重点化項目,簡略化項目の明確化>
・事業特性では,有害物質の土壌中への浸透の可能性の高い廃棄物最終処分場や大量
の農薬を使用するゴルフ場等のレクリエーション施設等において重点化する。
・有害物質を使用,貯蔵するなど環境要因が想定される事業予定地周辺に,比較的浅
い井戸,湧水が存在する場合,あるいは地下水のかん養域として重要な地域である
ことが明らかな場合,調査,予測,評価を実施する。そのうち,水道水源や農業用
水として利用されている地下水がある場合,動植物の生息環境や地域の資源として
重要な湧水がある場合等において重点化する。どのような地域においても有害物質
の地下浸透は未然に防止すべきであるが,地下水の流動等に係る現況調査や事後調
査の可能性を考えると,調査の実施等は周辺に比較的浅い井戸や湧水が存在するな
どの場合に限定することが適当である。それ以外の事業にあっては,保全対策の検
討によるなど,簡略化を行うこととする。
・周辺の土地利用等からみて,現況における汚染の可能性が低い場合,現況の汚染状
況に関する調査を簡略化することができる。
環境影響要素
地下水汚染
選定に際しての考え方
・地下水に関する環境基準項目
の物質,その有害物質の排
出,使用,貯留又は生成が想
定される場合に選定
・自然条件又は過去の土地利用
等に起因して,土地の造成等
に伴い汚染が想定される場合
に選定
-206-
重点化・簡略化
・周辺において地下水,湧水を水道
水源としている場合,湧水に依存
する貴重な動植物の生息地がある
場合,重点化する。
・農薬を大量に使用するレクリエー
ション施設等においては重点化す
る。
・周辺に比較的浅い井戸や湧水が存
在しない場合,簡略化することが
できる。
8-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1.地下水の水質
選定項目に係る物質の地下水中の濃度
2.水象
地下水の水位,流動等
3.その他
必要に応じて土地利用の履歴,地質,発生源の状況,気象の状況,地下水利用の
状況等についても把握する。
・現況において,汚染が問題となっている場合には,推定される発生源の状況等を把
握する。
・将来の予測を行う場合には,地下水の水位,流動等の変動の状況を把握する。地下
水汚染の調査では,地下水の流動等の調査が最も重要である(水象において地下水
を選定する場合はその結果を引用する。)。地下水の流動をモデル化する場合は,
使用するモデルに応じ,必要な変数等を測定する。(地下水のモデルについては水
象を参照)
・生物等が存在する場合,必要に応じその内容,影響を受ける可能性のある対象の面
積,人口,個体数等について把握しておくとともに,求められる水質の水準につい
ても既存文献等を収集する。
・また,事業予定地周辺の地盤の透水性や亀裂の有無等について把握しておく。なお,
これらについて,既存文献等が十分でなく,かつ,重大な影響が想定されるような
場合には,必要に応じ調査の実施等を検討する。
・将来の地下水の水質に影響を及ぼすおそれのある開発計画等について,把握してお
く。
(2)調査方法
① 既存資料や文献調査及び現地調査により把握する。
② 測定方法は,「地下水の水質汚濁に係る環境基準」に定める方法等とする。
・調査方法は,以下の告示,省令等に準拠して行うものとする。
○地下水の環境基準→「地下水の水質汚濁に係る環境基準について」(平成9年環
告第10号)
○健康項目→「水質汚濁に係る環境基準について」,「水質汚濁に係る人の健康の
保護に関する環境基準の測定方法及び要監視項目の測定について」
○水道水の水質→「水質基準に関する省令」(平成4 年厚生省令第69号)
○有害物質→「排水基準を定める総理府令の規定に基づく環境庁長官が定める排水
基準に係る検定方法」
○その他の適切な方法
-207-
(3)調査地域等
調査地域は対象事業により地下水に対する影響が想定される地域とし,地形・地質
の状況等を考慮して設定する。
・調査地域は,基本的に事業予定地周辺とし,上流側より下流側を広くとる。地下水
の状況については,既存資料等では把握が困難な場合が多いが,聞き取りその他に
より周辺の井戸,湧水等の分布の把握に努め,これらの分布と地形の状況を勘案し
て設定する。
・調査地点は,調査地域内において次の事項を考慮して設定する。
○周辺地域での地下水の利用地点(水道取水地点,井戸等)
○周辺地域の湧水地点
○湧水に依存する水生生物が存在する地点
○その他必要に応じて設定する地点
(4)調査期間等
① 地下水の水質の現状を把握し得る期間とする。
② 頻度の設定に当たっては,地下水位の季節による変動等を考慮する。
・調査回数は原則として年2回程度(夏,冬)とする。なお,当該物質が検出された
場合は,調査回数を適宜増加する。
・なお,地下水そのものの調査については,水象の中の地下水で取り扱うこととする。
8-5 予測
(1)予測内容
地下水汚染の有無,程度について予測する。
・地下水汚染はまず,発生させないことを前提としているため,発生の可能性の有無
について予測を行い,次に,万一事故等が生じた場合の汚染の拡大経路等について
予測する。
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域は現況調査の範囲に準じ,工事中及び供用後の区分ごとに設定するものと
し,地下水の水質の変化の程度を十分に把握できる範囲とする。
・予測地点は,現況調査地点(井戸,湧水地点等),その他適切な地点とする。
(3)予測対象時期等
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 供用後にあっては,事業活動が定常状態に達した時期
<工事中>
・工事による影響が最大となる時期とする。造成による影響は,汚染が想定される土
壌付近の造成時期又は工事終了時。
-208-
<供用後>
・事業計画において予定されている施設等が通常の状態で稼動し,一定期間が経過し
た時期とする。この時,水質,土壌汚染の予測結果等を勘案して設定する。
・なお,本来は発生させないことを基本とするものであるため,事故や災害発生時に
ついても検討する。
(4)予測の方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・地下水の状況の解析を踏まえ事例の引用・解析
・拡散モデル計算
・保全対策
<予測手法>
・定量的な予測は一般的に困難であるとともに,本来発生させないことを目的とする
ものであるため,有害物質の保管等に係る保全対策,地下水の状況等を総合的に勘
案し,地下水汚染発生の可能性の有無を検討する。詳細な予測を必要とする場合等
については,万一汚染が生じた場合の拡散について,地下水の流動モデル等により
予測する。
・有害物質を排出しないための保全対策については,使用,保管,発生等の量を明ら
かにした上で,外部に排出しないための管理や処分等の方法,万一事故等により排
出された場合の対応策,排出されていないことの監視の方法やそれらについての情
報公開の方法等を明確にする。
・なお,予測に当たっては,水象の地下水の調査結果,地下水汚染に関連する土壌汚
染,水質の予測結果を踏まえる。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 汚染物質の排出量,使用量等
2 将来環境条件
① 地下水位,地下水の流動等
② 地下水利用の状況
<排出条件の設定>
・有害物質等の使用,保管等が要因となる場合には,使用,保管等を行う物質の種類,
量,使用等の用途及び方法等について明らかにする。
・廃棄物の埋立によるものについては,埋め立てる廃棄物の種類,量及びこれらの管
理の方法,埋立の方法,侵出水の処理の方法と処理の水準等について明らかにする
とともに,廃棄物の種類等による有害物質等の溶出等の可能性について,既存事例
等より推定する必要がある。
・供用時の,排水によるものは,排水する施設の種類,規模,能力,構造,用途,配
置,排水口の位置,稼働又は使用の状況,排水の量,排出する物質の濃度等を明ら
かにする。
-209-
・農薬の使用による影響については,使用する農薬の種類,使用目的,量,使用する
時期,散布の方法等について明らかにする。
・工事中の造成に伴うものは,造成等の行為を行う範囲,面積,施工方法を明らかに
し,汚染されている箇所との位置関係を明らかにする。
<将来の環境条件>
・地下水の状況等については,水象の地下水の調査及び予測結果を活用する。
・地下水利用の状況は現状を基本とするが,将来利用状況が変化することが明らかな
場合はこれを勘案する。
8-6
環境保全対策
地下水汚染に係る環境保全対策は,予測結果に基づき,次の事項を考慮して適切に行
う。
1
回避
・有害物質の代替物質への転換等による使用の回避
・既に土壌が汚染されている場所の造成の回避
2
低減
・有害物質の取扱い施設における地盤の遮水措置
・廃棄物最終処分場における水の浸透防止策の徹底,侵出水の処理の向上
・農薬の使用量の削減,溶解度の高い農薬の使用回避
・汚染物質等の厳格な管理
8-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・環境基準(環境基本法)
等
①
影響の回避・低減の観点
・回避・低減に係る保全対策を盛り込んだ複数の案を比較することにより,事業者が
実行可能な範囲において,最大限の影響の回避,低減が図られているか否かを判断
する。
・まず,通常時において,地下水の汚染を発生させない対策がとられているかどうか
を判断する。
・次に,事故や災害時においても,地下水汚染を生じさせないための対策が講じられ
ているかどうかについて判断する。
②
基準や目標との整合
・実際には,濃度の定量的予測は困難であることから,基準との比較は困難である。
この基準については,事後調査の結果の検討の際に重要である。
-210-
8-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に以下のような場合に
ついては詳細に行う。
○予測条件,モデルの適用条件等からみて予測の不確実性が高い場合(ただし,影
響の程度が著しく小さい場合は除く)
○なお,地下水汚染の予測は一般的に不確実性が高い。
○環境保全対策として新たな技術や設備を用いるなど,環境保全対策の効果の不確
実性が高い場合
○周辺に水道水源,貴重な動植物分布地等への水の供給源となっている地下水や湧
水が存在する場合
○他の同種事業より有害物質の使用,貯蔵等の量が相当程度多い場合
(2)事後調査の内容
・地下水汚染の有無,対象汚染物質の地下水中濃度,保全対象となっている湧水周辺
の生物の状況等(あわせて,地下水の水位等についても測定)
・事業の実施状況及び負荷の状況(有害物質の使用量,使用方法等)
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。ただし,予測対象時期が供用開始後
3年目以降の場合,供用開始1年目等に事後調査を計画する。
・調査期間は,原則として工事中は予測対象時期に1回以上,供用後は年単位とし各
年1回以上の測定とする。ただし影響の程度に応じて増減を行うこと。
・地下水汚染が土壌汚染等から二次的に生じる場合が多いことを勘案し,供用開始後
3か年程度を目安として,継続調査を実施する。ただし,その後の継続的なモニタ
リングについては,住民との協定等の方策を講じることし,環境影響評価の事後調
査とは切り離して考える。
-211-
9 水象
9
水象
9-1 基本的考え方
(1)考え方
水象とは,河川,湖沼,地下水・湧水,海域等の水の状態やそれに関わる諸現象及
びそれらで構成される水辺環境の状態等を指す。これらは,降雨や蒸発散も含めると,
水循環そのものを構成している。言うまでもなく水はあらゆる生物にとって生きてい
くための基礎であり,この面からだけでも,環境の重要な要素であることは明らかで
ある。また時として,河川の氾濫など水象に関する災害は,人間の社会生活に大きな
被害をもたらすことから,その制御については古来より重要なテーマとして取り扱わ
れている。
本市においても広瀬川をはじめとする河川,平野部の用水,丘陵部に多いため池.
海域,地下水等の水環境は,農業や漁業に密接に関係し,また,それ自体が景観を構
成する重要な要素であり,自然との触れ合いの重要な場でもあるなど,市民の生活に
密接に関わっている。
一方,都市化の進行により,市街地内の農地や山林は大幅に減少し,その結果,雨
水の地下浸透量が減少,河川の晴天時流量の低下,地下水の減少や湧水の枯渇,内水
型洪水の発生等,様々な問題が生じつつある。このようなことから,本市では,環境
基本計画において現在の雨水の地下浸透能力を低下させないことを定量目標とすると
ともに,水循環の健全化を目指して,「仙台市水循環プラン」を策定している。
このようなことから,水象の項目では,河川,湖沼,地下水・湧水,海域等におけ
る水の状態・諸現象及びそれらで構成される水辺環境への直接的,間接的影響を予測
・評価する。
水辺の改変や水量,水位等が変化することにより,そこに生息,生育する動植物や
生態系に対する影響,景観への影響,人と自然との触れ合いの場への影響等が生じる
可能性があるが,これらについては水象の予測評価結果を踏まえ,それぞれの項目に
おいて予測することとする。また,河川,湖沼,地下水・湧水,海域等における水量,
水位,水の流動等は,水質(水温含む)や土壌汚染,地盤沈下等の予測の条件でもあ
る。このようなことから,水象は,関連する項目の予測評価の基礎情報ともなるもの
であることを意識して実施する必要があり,関連項目に係る影響の重要性が高い場合
には水象についても重点化を行うなど,スコーピングにおいて関連項目に十分留意す
る必要がある。
なお,温泉,鉱泉等の現象は,水象の一現象ではあるが,地形・地質の中で取り扱
うこととし,ここでは除外した。
-212-
(2)環境影響要素
水象における環境影響要素は,以下のうちから適切に選定する。
環境影響要素
内容,観点
水源
水道水源の流域の改変,水源への影響の有無,程度。
河川流・湖沼
河川及び湖沼の水量に対する影響。河川では,流量を中
心とし,流況,水深等,湖沼では,水位を中心とし,貯
水量,水域の面積等により把握。
水量に対する影響は,大きくわけて造成等に伴う流出特
性の変化による影響と,取水・排水等による影響が想定
される。造成等に伴う影響は,標準的には,長期的観点
(特に流況の変化や基底流量の低下等)を主とし,必要
に応じ短期的観点(主に洪水時の防災的観点)について
も対象とする。
地下水・湧水
湧水の直接的改変。
地下水及び湧水の水位・水量や流動に対する影響。造成
等に伴う流出特性の変化によるかん養量の変化,地下掘
削工事等に伴う地下水の排除,地下構造物の存在等によ
る地下水流動の変化,地下水の取水等による影響が想定
される。
海域
海岸線の直接的改変。
潮流,潮汐,波浪等海域の流況に対する影響。
水辺環境
河川,湖沼,海岸等の水辺環境の自然性,親水性に対す
る影響。
9-2 事前調査及び地域概況の把握
(1)目的
事前調査は,地域の水象の状況等を把握することにより,立地段階において回避等
の配慮を行うことが必要な対象を明らかにし,事業の早期段階における適正な環境配
慮に資することを目的として実施する。
地域概況の把握(概況調査)は,事前調査の成果を踏まえて取りまとめる。概況調
査の目的は,水象のうちどの項目を対象として環境影響評価を行うのかを定め,その
対象ごとに調査,予測,評価の手法を定めるとともに,保全対策検討の方針を検討す
る(以上,方法書に記載する事項)ための必要な情報を得ることにある。
(2)事前調査の内容
・事前調査では,以下のような対象について,立地段階において回避することが望ま
しい対象の抽出を主な目的として実施する。
・方法は,既存資料の収集,整理を基本とするが,調査年,調査精度の制約により不
十分な場合もあるので,市への聞き取り等により情報の更新,補完等を行うこと。
また,事業予定地が概ね決まっている場合には,事業予定地及びその周辺について
-213-
現地踏査等を行い,既存資料に記載されているものに準じる水源地,湧水,自然性
の高い水辺地等が存在しないかどうかについて確認を行う。とりわけ,湧水や水辺
地(自然性の高い河川,沢,湖沼等)は,現地踏査による確認が必要である。
水象における事前調査対象及び方法
項目
水象
主な調査対象
調査方法・該当する情報量
水源地
・自然環境基礎調査報告書 水文図(水道水下流域地
域等)
湧 水
・自然環境基礎調査報告書 水文図(湧水)
自然性の高い水辺地等
・自然環境基礎調査報告書 水文図(河川及び湖沼)
を参考に現地踏査による
その他事業の立地上
・その他既存資料及び現地踏査による
配慮を要する水象
(3)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①水象の状況を基本とし,その他関連項目につい
て,水象の観点から以下のような事項を把握する。
調査項目
①水象の状況
調査内容
・河川の状況
河川(沢,水路等含む)の位置,規模,形態,集水域,
流量,流況,下流河川の流下能力,河川改修等の計画等
・湖沼の状況
湖沼・ため池等の位置,形状,湖水面積,集水流域,
貯水量,水深等
・地下水・湧水の状況
地下水分布の概況,井戸・湧水等の位置,水位,水量等
・海域の状況
潮位,潮流,流入河川の状況等
・水辺の状況
河川,湖沼,海岸の位置,延長,護岸形態等
水辺環境の構成(動植物の概要,地形等)
・水源地の状況
水道原水取水位置,取水量 等
②水利用の状況
・利水
河川,湖沼,地下水・湧水,海域の利水(上水道用,農業
用,工業用等)の取水位置,用途,利用実態等。
・水面利用
漁業権の設定状況及び利用の状況(位置,季節,漁獲量,
利用者数等),その他水域の利用状況等
-214-
調査項目
③地形・地質の状況
調査内容
○地形
地形区分,尾根・谷の分布,傾斜,等
○地質
表層地質,地質構造,帯水層・不透水層の分布等水理地質
等
④気象の状況
・降水量(降雨量,降雪量)の状況
⑤土地利用・植生の
・流域ごとの土地利用又は植生(雨水の浸透能別)の特性,
状況
⑥法令等による指定
・規制等の状況
・河川法
・宮城県公害防止条例等,地下水・湧水等に係る条例・要綱
・県,市の環境基本計画,水環境に係る計画等
⑦水象の変化により
・水象の変化により影響を受けるおそれのある注目すべき動
影響を受けるおそ
植物及び生態系,主要な景観資源及び眺望,自然との触れ
れのある関連環境
合いの場の有無
影響項目の有無
⑧その他
・地下水汚染の可能性の有無
・将来の水象や水利用に影響を与えると想定される人口,産
業,開発の動向
・過去の水害の発生状況,水象に関する問題の発生状況
・水環境保全に係る地域活動
・水象の変化により影響を受ける施設等の状況等
(4)概況調査の範囲
事前調査の範囲は,事業予定地の水象の広域的にみた位置づけが可能なように,地
形・地質や流域に留意して設定する。概況調査の範囲は,基本的にその中で,事業予
定地の水系が合流する一級河川等主要な河川,対象事業に伴う水象の変動により影響
を受ける可能性がある対象,事業予定地の集水域等を含むよう設定する。
(5)概況調査の方法
概況調査の方法は,既存文献等の収集,整理を基本とし,必要に応じ聞き取り,事
業予定地及び周辺の現地確認による。
調査項目
①水象の状況
調査方法
・河川の状況
・位置,規模,形態,集水域等は地形図,河川図,現地
確認等
・流量・流況は流量年表等の既存資料の収集,整理
・流下能力,計画等は県・市その他関係機関の聞き取り
-215-
調査項目
調査方法
①水象の状況
○湖沼の状況
・地形図,市資料,現地確認等
○地下水・湧水の状況
・概況は市史等既存資料
・井戸,湧水等は市資料,聞き取り等,現地確認等
○海域の状況
・地形図,県・市その他関係機関資料等
○水辺の状況
・地形図,植生図,県・市資料等
○水源地の状況
・市資料,市への聞き取り等
②水利用の状況
・上水道,水利権,漁業権等に係る県及び市資料
・必要に応じ市への聞き取り等
③地形・地質の状況
・土地分類図,土地分類基本調査,地形図,地質図,市誌
等既存資料の収集,整理
④気象の状況
・県気象年報,気象官署及びアメダスデータ,市資料等の
収集,整理により年間の降雨特性を把握
⑤土地利用・植生の
・土地利用図,地形図,植生図等の収集,整理
状況
⑥法令等による指定
・県,市資料の収集,整理
・規制等の状況
⑦水象の変化により
影響を受けるおそ
れのある関連環境
・関連項目の概況調査結果
・既存資料の収集,整理だけでなく,現地確認,聞き取り
を行うこと
影響項目の有無
⑧その他
・市資料等の収集,整理,聞き取り等
・開発動向,地域活動等については市への聞き取り
(6)調査結果とりまとめ(事前調査書及び方法書における地域概況の記述)
事前調査書の取りまとめに当たっては,特に以下の点を明らかにする。
①
事業予定地及びその周辺地域において,水象の保全の観点から,事業の立地を
回避することが望ましい地域又は対象
②
事業予定地において,水象の保全の観点から留意すべき事項又は環境配慮の方
向性
-216-
また,方法書における地域概況の記述例を示すと以下のようになる。
●水象の概況目次例及び作成図表例
1.事業予定地及びその周辺の水象の概況
1)河川・湖沼の概要
・事業予定地の河川,湖沼の状況と,その広域的な位置づけ,流域の流出特性
等について記述
図表: 1/50,000 程度の河川・湖沼分布図(集水域含む)
必要に応じて,大縮尺の事業予定地河川・湖沼分布図
流量模式図,流況表等
2)地下水・湧水の概要
・広域的にみた地下水の賦存状況の概要,井戸・湧水等の状況から推定される
事業予定地及び周辺の地下水の賦存状況,流動等について記述
図表:地下水の賦存状況の概念図(断面図等)や地下水予察図(地質等からみ
た地下水の涵養,貯留,流動,流出の領域の大まかな区分等を図化した
もの),事業予定地周辺の井戸・湧水等分布図等
3)海域の概要
・事業予定地周辺の海域の状況(潮位,潮流,流入河川の状況等)とその広域
的な位置づけ等について記述
4)水辺の概要
・事業予定地周辺の水辺の状況(河川,湖沼,海岸の位置,延長,護岸形態,
水辺環境の構成(動植物の概要,地形等)等)と,その広域的な位置づけ等
について記述
5)水源地の概要
・事業予定地周辺の水源地の状況(水道原水取水位置,取水量等)と,その広
域的な位置づけ等について記述
2.水象保全上の留意点
・上記の内容及び関連する②から⑧の内容を勘案し,事業予定地周辺における
水象保全上の留意点を記述(②から⑧の関連項目のうち,水象に係る内容に
ついては概要を記述すること。)
-217-
9-3
スコーピング
<事業特性によるスコーピング>
・スコーピングにおいては,事業の実施に伴う行為(環境影響要因)を把握し,その
行為により水象への影響が想定される場合,影響の大きさ,水象の変化により影響
を受けるおそれのある利水や水域利用,動植物等の存在の有無やその重要度等に応
じて選定する。
(河川流・湖沼に係る環境影響要因)
・河川・湖沼に係る工事中の主な影響要因としては,工事用の取水があげられる。な
お,工事による水域等の直接改変,流路の変更,流域の土地改変による影響は,通
常は工事中のみならずその後も影響が存続するものであるため,基本的には存在影
響として予測評価を行う。
・供用時(存在影響含む)は,①水域や水辺の直接的改変,②土地の造成工事,植物
の伐採,工作物の設置,舗装等による流出特性の変化,③河川・水路等の流路変更
や造成による集水域の変更,④取水,⑤排水,⑥ダムの存在・供用(による下流流
量の低下),⑦ダムにおいて取水した水の他の水系への放水等,が主なものとして
あげられる。このうち①及び②は,面的な造成を行う場合には標準的に対象とする。
ただし,特に重点化する場合を除いては,比較的簡易な手法をもって,直接改変域
の明確化や雨水の浸透能の変化の予測評価を行うものとする。
(地下水・湧水に係る影響要因)
・水象のうち地下水・湧水に係る工事中の主な環境影響要因としては,①トンネル工
事等大規模な地下掘削工事(地下水の排水),②土地の造成工事や比較的浅い地下
掘削(浅層の地下水の排水)があげられる。なお,工事による湧水地の直接改変や
流域の土地改変による影響は,通常は工事中のみならずその後も影響が存続するも
のであるため,基本的には存在影響として予測評価を行う。
・供用時(存在影響含む)は,①湧水地の直接的改変,②土地の造成工事,植物の伐
採,工作物の設置,舗装等による流出特性の変化(浅層の地下水・湧水のかん養量
の低下),③トンネル,地下室,ダム等の大規模地下構造物の存在(地下水の挙動
への影響),④地下水の揚水,⑤ダムの存在(堤体上流域の水位上昇,下流域の水
位低下),が主なものとしてあげられる。このうち②は,河川及び湖沼の供用時に
②と連動するものであるが,地域の自然条件や社会条件から地下水や湧水に留意す
る必要がある場合には別途選定し,予測評価を実施する。
・なお,事業特性により,地下水汚染を選定する必要がある場合には,地下水を項目
として選定する。
(海域に係る影響要因)
・海域への影響要因としては,埋立地その他構造物の存在があげられる。従って,公
有水面の埋立又は干拓事業において選定する。
・流況の変化(潮流,恒流等)を主な影響評価項目とするが,必要に応じて漂砂等に
よる地形の変化,台風時等の高潮等についても対象とする。
-218-
<立地条件によるスコーピング>
・河川・湖沼等については,山地・丘陵部は水資源のかん養域であるとともに雨水の
直接流出の制御が重要であり,低地部の農地等では遊水機能を有することから内水
氾濫防止の観点が重要であるとともに農地等から浸透した水は河川や地下水をかん
養することもふまえ,面的な造成を行う場合は基本的に対象とし,簡易な手法で予
測評価を行うこととする。
・地下水については,地形・地質の状況等から推定される地下水の分布の可能性に留
意して選定する。地下水は,一般的に,扇状地や谷底平野その他低地部に分布する。
低地部の地下水は,不圧地下水が多いが被圧地下水もあるため,立地と掘削の深度
等に応じ選定する必要がある。また,台地の段丘崖や山地・丘陵部の斜面の遷緩線
付近,火山地の山麓等では不圧地下水が湧出する場合が多い。さらに,地すべり地
においても地下水に留意する必要がある。
・湧水は,水道水源等の利用のほか,地域住民等に親しまれているもの,かつては利
用されていたもの,信仰や伝説の対象となっているもの等(これらは,自然との触
れ合いの場として選定しても差し支えない)にも留意する。
・水源地は,事業予定地の近傍に水源地が存在する場合に選定する。
・このほかに,水象に関連する注目すべき動植物や生態系,景観,自然との触れ合い
の場等がある場合には,それに関係する水象の項目を選定する。なお,この場合,
水象の変動は水象の項目において予測評価するが,それに伴う動植物等への影響の
予測評価は,それぞれの項目で実施する。
<重点化項目,簡略化項目の明確化>
(事業特性)
・事業特性では,河川を直接改変するダムの建設,地下水脈に直接影響を及ぼす可能
性の高いトンネル事業や地下構造物事業等,特に負荷が大きい事業において重点化
する必要がある。
(立地条件)
・立地条件では,水源として利用されている地下水は重点化する。また,事業実施に
よる水象の変動によって注目すべき動植物や生態系,景観,自然との触れ合いの場
等が影響を受ける可能性のある場合には,これに係る水象の項目は重点化する。
・自然公園の特別地域,県自然環境保全区域内の河川,湖沼,海岸については重点化
する必要がある。
・下流域で浸水被害等が生じているような地域,下流河川の流下能力が低い水系等に
おいては,河川流量について重点化し,洪水防止の観点から短期的流出についても
予測評価の対象とする。
・その他河川,湖沼,地下水・湧水,海域等について既に問題が生じている場合,水
質が既に汚濁している水域の水量の減少が生じるおそれがある場合等についても,
重点化する必要がある。
-219-
環境影響要素
選定に際しての考え方
重点化・簡略化
河川流・湖沼
・面的な造成を行う場合,選定
・ダムの建設,取水量・排水量
・相当程度の取水又は排水,流
が著しく大きい場合重点化
路及び流域の変更,ダムの存
・影響を受ける注目すべき動植
在等により,流量,水位等に
物,景観,自然との触れ合い
変化を及ぼす可能性がある場
の場等がある場合は重点化
・下流域で浸水被害が生じてい
合に選定
・一般的には,供用時を対象に
る場合,下流河川の流下能力
が低い場合は重点化
実施
・その他水象で問題が生じてい
る場合,減水する可能性のあ
る水域で水質汚濁が進行して
いる場合等は重点化
海 域
・公有水面の埋立又は干拓にお
・左記の場合は重点化
いて選定
地下水・湧水
・トンネル工事等大規模な地下
・影響を受ける地下水が水道水
掘削工事を行う場合,その他
源等として利用されている場
大規模な地下構造物が想定さ
合は重点化
れる場合に選定
・影響を受ける注目すべき動植
・地下水・湧水が豊富であると
推定される場所で造成等工事
物,自然との触れ合いの場等
がある場合は重点化
を行う場合に選定
・湧水を涵養していると想定さ
れる場所での大規模な土地造
成等の場合に選定
・地下水の揚水等を行う場合に
選定
水辺環境
・河川,湖沼,海岸等の水辺環
・自然公園特別地域内,県自然
境の自然性,親水性に対する
環境保全地域内では重点化
影響が想定される場合に選定
・その他,景観,自然との触れ
合いの場として重要な水辺の
場合は重点化
水源
・水道水源の流域の改変その他
水源への影響が想定される場
合に選定
-220-
9-4
調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1.河川の状況
① 河川の位置,規模,流域,断面構造等
② 河川の流量
③ 流域の雨水等の流出・浸透の状況
2.湖沼の状況
① 湖沼の位置,湖水面積,流域,水深等
② 湖沼の水位,貯水量,流入出量,滞留日数等
③ 流域の雨水等の流出・浸透の状況
3.地下水・湧水の状況
① 地下水の賦存形態,水位,流動等
② 湧水の位置,水量等
③ 地下水利用の状況
4.海域の状況
① 潮位,潮流,流入河川の状況,海水の成層・循環等
5.水辺の状況
① 河川,湖沼,海岸の位置,延長,護岸形態等
② 水辺環境の構成(植物,動物,地形等)
6.水源地の状況
① 水道原水取水位置,取水量等
7.その他
必要に応じて,降水量,地形・地質,植生,土地利用,水利用等の状況について
も把握する。
・造成等に伴う流出特性や浸透能の変化を予測評価する場合は,標準的には,河川等
の位置・形状と,事業予定地の浸透能を把握し,必要に応じ事後調査における検証
のため,流量(事業予定地からの流量)と雨量について把握する。
・造成等に伴う流出特性や浸透能の変化の予測評価を重点的に実施する場合は,事業
予定地の小流域区分ごとの流量,降水量,流出特性等について調査する。また,基
底流量や水資源の涵養に重点を置く場合は水収支の観点からの解析を,洪水流量の
抑制に重点をおく場合は降雨後の流出の解析を行うなど,予測評価の目的に応じた
解析を行う。
・ダムの減水影響や,取水・排水等による流量変化の影響を予測評価する場合は,基
本的には事業予定地より下流部の流量(流入等の状況含む)や河川形状等を把握す
る。
・地下水では,標準的には,地下水位と地下水の流動,かん養域等の把握を主とする。
地下水流をモデル化する場合は,地層の水理特性等(透水係数,透水量係数,貯留
係数等)の調査を実施する。地下水流動の数値モデル化は,特に重大な地盤沈下や
地下水汚染が想定される場合等において検討する。
-221-
・海域を対象とする場合は,潮流等の現況のほかに,海岸及び海底の地形,淡水(河
川)の流入状況等を把握する。
(2)調査方法
① 既存資料や文献調査及び現地調査により,河川,湖沼,地下水・湧水,海域及び
水辺の状況を把握する。
② 既存文献,聞き取り等により水源地の状況,その他を把握する。
<河川の状況・湖沼の状況>
①
位置,規模,流域,断面構造等
・地形図,空中写真,現地での確認により,図化する。地形図は,1/5000程度のもの
を使用し,既存のものが存在しない場合には,航空測量等を実施すること。
・河川においては,淵,瀬の分布,中州の存在,河床の岩や礫の状況等,河床形状に
ついても把握する。
・取水やダム等による流量変化の予測評価を行う場合,下流部での生物(特に魚類)
や景観への影響を検討するため,事業実施後の流量に対応する水位や水面幅,淵や
瀬の変化等を予測する必要があるため,主要な地点や区間を代表する地点の横断面,
河川勾配等を計測,図化しておく。
・湖沼の貯水量等は,関係機関の資料収集等による。
②
流量,水位等
(長期的な流量変動(流況))
・長期的な流量変動(流況)は,豊水量,平水量,低水量,渇水量,年平均流量等に
より把握する。ただしこれらは,最低1年間のデータがないと把握することはでき
ず,また,その年の降水量により変動があることから,少なくとも5~10年程度
の平均的な状況を把握する必要がある。従って,環境影響評価の中で,十分な調査
を実施することは現実的ではなく,事業予定地に最も近い既存の測水所のデータか
ら比流量を求め,流量を算定する。
・ただし,既存の測水所は一般的に大河川の下流部にあり,箇所数も限られているこ
とから,対象事業が山間部や中小河川流域の場合,実態とは合わない可能性が高い
ことを認識した上で,あくまで目安として使用すること。
(調査地域の流量)
・上記の既存資料からの把握結果を踏まえた上で,調査地域の流量を把握する。
・造成等による影響は,標準的には浸透能(流出係数)の変化により予測評価するこ
ととし,予測条件として流量を用いないため,必要に応じて事後調査結果と比較で
きるよう,低水期等の一定期間のデータを得ておくことが望ましい。
・造成等による影響を重点的に実施する場合は,事業予定地内の流出解析ができるよ
う,小流域ごとに一年間以上の連続的なデータを把握する。なお,その場合,調査
年の降水量が平年にくらべてどのような状況であったかを把握しておくこと。結果
については,流量と降水量を対比できるよう図化するとともに,小流域ごとに月別
等の平均流量,比流量,総流出量,降雨に対する流出率等を算出する。
-222-
・ダムや取水等による流量変動の影響の場合は,取水等の地点より下流側での流量や
流入量等相対的な流量の関係が把握できるよう調査を実施する。
・流量の測定には,基本的に流速と断面積から算出する方法,河道内に堰等構造物を
設置し定型的な断面とすることにより測定する方法,水位流量曲線を用いて算定す
る方法がある。流速計を用いる方法が一般的ではあるが,流量の少ない渓流等では
堰等の手法を用いるほうがよい場合がある。また,水位計の観測方法には,フロー
ト式,水圧式,電気式,超音波式等がある。流量や水位は自記記録計による連続測
定を行うことが望ましい。
流量の測定方法
種
類
流速・断面積法
測定方法
流速計測法
浮子測法
超音波測法
航測法
流量測定構造物による方法
堰測法
フリューム法
薬品濃度の希釈を利用する方法
薬品(食塩)濃度法
水位
水位流量曲線法
流量関係を利用する方法
(降雨後の流量)
・洪水流量の予測等を行う場合は,降雨時のハイドログラフの作成等により解析を行
う。
③
雨水等の流出・浸透の状況
・標準的には,植生調査結果等を用いて,一般的な流出係数から事業予定地における
流出係数を算定する。一般的な流出係数としては,日本内地河川の洪水時の流出係
数として物部が与えている値*1,「河川砂防技術基準」の流出係数標準値,「下水
道施設設計指針と解説」における工種別の流出係数及び用途別総括流出係数の標準
値等がよく用いられる。
*1 土木学会「水理公式集」参照
・重点化する場合は,流量と雨量の実測結果から,降雨ごとに流出量を求め流出係数
を算定し,降雨の状況等を検討した上で,流出係数を設定する。
④
降水量
・流量同様,長期的なデータで把握する必要があるため,標準的には,近傍のアメダ
スデータや,気象庁観測平年値メッシュ統計値の降水量(地上気象資料及びアメダ
ス資料等から多変量解析により約1km のメッシュごとの平年値を推定したもの。
(財)気象業務支援センターで販売している)等により把握する。アメダスデータ
等既存の観測地点のデータを用いる場合は,標高が高くなると降水量が増加するこ
とを勘案し,使用する観測地点を選定すること。
・重点化する場合は,雨量計を設置し,連続測定を行う。
・なお,地下水の流動等を把握する際にも,雨量の測定を行う。
-223-
<地下水・湧水の状況>
①
地下水の賦存形態,水位,流動等
(平面分布(一斉観測))
・地下水の賦存状況や動態を把握するため,ある広がりを持った地域に対して短期間
に一斉に地下水位の観測を行う。
・一般に数日間無降雨が続き,地下水位が安定した時期に実施する。
・既存の井戸を使用するほか,必要に応じ観測井を設置して調査を行う。観測井は地
形・地質の状況等から地下水の流動を推定し,位置を設定する。低地部の地下水位
の面的分布を把握する場合等には,格子状に観測井を設置することも有効である。
観測井の孔径は,揚水試験等を行う場合は大きくなるが,浅層の地下水位を短期間
観測するだけであれば小孔径でよい。なお,観測井の設置に当たっては,周辺の地
下水や井戸に影響を与えないよう十分留意すること。
・なお,一斉観察と同時に湧水量,表流水の流量(河川流量)及び降雨量の調査を実
施する。
・この結果は,等地下水位線図,主要断面図等として整理する。
(長期的な変動(長期観測))
・地下水位の長期的な変動を把握するため,原則として一年以上の水位の連続測定を
行う。観測には,自記水位計を使用する。
・あわせて降水量,表流水の流量(河川流量)の調査を行う。
(地下水質(陽イオン,陰イオン,トリチウム等))
・地下水の涵養・流動機構を把握するため,地下水質の調査を実施する。地下水は,
雨が地中に浸透し,地中を流れる間に様々な溶存物質をもつため,溶存物質の量や
パターンにより地中の流動時間の長短や流動系を推定できる。そのため,あわせて
雨水,表流水の水質も分析しておく。
・対象とする主な物質は,ナトリウムイオン(Na+),カリウムイオン(K+),カル
シウムイオン(Ca2+),マグネシウムイオン(Mg2+),塩素イオン(Cl-),重
炭酸イオン(HCO3-),硫酸イオン(SO42-)及び珪酸(SiO2)等の主要成分と,
電気伝導度,鉄(Fe),マンガン(Mn),硝酸イオン(NO3-),アンモニウムイ
オン(NH4+)である。
・結果は,2物質の相関図や,陰イオンと陽イオンに分けたバーグラフ(要素棒グラ
フ),濃度を放射状にプロットして水質をパターンで表すヘキサダイヤグラム(シ
ュティフダイヤグラムともよばれる),イオンのパーセント組成によるキーダイヤ
グラムやトリリニアダイアグラム等に整理する。
・このほかに,トリチウム濃度や水温を用いた流動の推定も可能である。
②
湧水の位置,水量等
・既存資料,地域住民の聞き取り結果及び地形・地質の状況を踏まえ,湧水の可能性
のある地域を踏査し,湧水の平面的位置,標高を記録する。
・湧水量は,湧出口近傍や,湛水池の流出部等に堰等を設置し測定する。
・長期的な変動を把握する場合は,堰上流部に自記記録装置を設置する。
-224-
③
降水量(河川等の調査と一体的に計画する)
(河川流量及び降水量)
・河川・湖沼等で重点化した場合と同様,連続調査を実施する。期間等は地下水の長
期観察に合わせる。なお,この調査は,河川の調査と一体的に計画する。
(水理地質構造(帯水層,難透水層,基盤等))
・地形・地質の調査結果(既存資料収集及び現地踏査,ボーリング調査等の結果)等
をもとに,必要に応じ地表面から地下の地質構造を調査する物理探査,ボーリング
孔を用いた物理検層を行い,水理地質構造を把握する。
区
分
物理探査
調査・試験等
電気探査,地震探査(屈折法・反射法)
放射能探査,温度探査,電磁探査,重力探査,磁気探査
物理検層
電気検層,速度検層,放射能検層(密度検層),地下水検層
温度検層,キャリパー検層
(地層の水理特性等)
・地下水流動の数値解析を行う場合等には,物理試験により透水係数,透水量係数,
貯留係数等の諸定数を求める。
・また,地下水の取水を行う場合には,現場の揚水試験を行っておく。
<海域の状況>
・潮位,潮流,海水の成層・循環の状況等,海域の流況について,「海洋観察指針」
又はこれに準じる方法によって観測する。
・流入する河川の状況は,流量年表等既存の資料により把握することを基本とするが,
必要に応じて現地調査を行う。
・海岸及び海底の地形の状況は,地形図,海図,空中写真等より把握し,必要に応じ
て現地調査を行う。
・流況の状況は,潮流(天文の運動に起因して周期的に変化する流れ),恒流(定常
的な流れ)の別に流向・流速を図化しておく。
<水辺地の状況>
・河川,湖沼,海岸の位置,延長については,地形図,空中写真,現地での確認によ
り,図化する。地形図は,1/5,000 程度のものを使用し,既存のものがない場合に
は航空測量等を実施すること。
・護岸形態については,現地調査により自然護岸(海岸の場合は,砂浜,岩浜,崖地
等の別),石積み護岸,蛇篭,鋼矢板,コンクリート等の区分を把握し,延長を計
測,河川毎や区間毎等の集計を行っておく。
・水辺環境の構成は,現地調査により主に地形や植生の状況を把握する。また,動植
物等の調査結果を踏まえ,注目すべき動植物の分布等を把握する。
・これらの結果より,自然性や親水性等の特性解析や,評価を行っておく。
-225-
<水源地の状況>
・主に概況調査で収集した資料の整理と,取水状況の聞き取り等により把握する。
・現地調査により,周辺の環境条件等を把握する。
(3)調査地域等
① 調査地域は,対象事業により水象に対する影響が想定される地域とし,流域,地
形等を考慮して設定する。
② 調査地点は,地形図等の既存文献に基づき,調査地域を適切に把握できる地点及
び数を設定する。
③ 調査地域,地点等の設定に当たっては,必要に応じて概査を実施し,現地の概況
を把握する。
<調査地域>
・調査地域は,流量や水位の変化が想定される下流側の地域を中心に,概況調査で把
握した水系や地下水分布,地形・地質,利水及び水面利用の地点,水象の変動によ
り影響を受ける可能性のある動植物,景観,自然との触れ合いの場等の分布を考慮
して設定する。その際,既存事例を参考としたり,概略の影響算定等により変化が
想定される範囲を設定する。
・なお,事業予定地の上流側は,集水域に留意して適宜含めるものとする。また,既
存の流量や雨量測定点等,既存資料に係るものも適宜含める。
・ただし,ダムでは,堤体の上流側の湛水による地下水位への影響,地下構造物等で
は,地下水流の遮断による上流側への影響等が想定されるため,このような点にも
留意して設定すること。
<調査地点>
・水象に係る調査のうち,地点を設定して実施するのは,流量,地下水位,降水量等
である。これらの調査地点は,選定した項目の特性,重点化の程度や予測手法に応
じて設定する。
(流量調査地点)
・土地の造成等による影響を標準的に実施する場合は,事後調査における検証等を考
慮し,事業予定地全体からの流出量を把握できる地点(1地点で把握可能な場合1
地点で可)とし,事業予定地の最下流部等。事業予定地の水系が複数にわかれ事業
予定地の近傍の下流地点で合流するような場合で他の事業等の影響が想定されない
ような場合は合流後の地点としても差し支えない。
・土地の造成等による影響を重点的に実施する場合は,事業予定地内の小流域区分ご
との流量を把握できる地点
・影響を受けるおそれのある注目すべき動植物や景観,自然との触れ合いの場等があ
る場合には,これらの地点
・下流側の流下能力に問題がある等の場合は,問題となる区間を代表する地点
・ダムや取水・排水等による影響の場合,堤体位置や取水・排水地点,下流の支川流
入地点や合流点等の地点
-226-
(地下水位等)
・既存の井戸,湧水地点
・別途地質調査等でボーリングを行った地点
・地形等の条件からみて,調査地域内の地下水位の分布を状況を把握するのに適した
地点(格子状の交点等)
・影響を受けるおそれのある注目すべき動植物や景観,触れ合いの場等がある場合に
は,これらの地点
・一斉観察は多数の地点を設定し,その中から,地下水の流域の代表性,長期継続観
察が可能かどうか等を勘案し,長期観察地点を設定
(降水量等)
・対象地域の降水量を代表する地点(通常の場合,1地点で可)
(海域の流況)
・モデルの検証を行うのに十分な地点を設定
(4)調査期間等
① 年間を通じた状況を把握できる期間とする。
② 頻度の設定に当たっては,季節による変動等を考慮する。
・既存資料による河川流量,降水量等の把握は,5 ~10年程度の長期的な平均値を把
握する。また,井戸の状況の聞き取り等による地下水位の把握については,できる
だけ過去の状況や近年の変化の状況等について把握する。
・造成等の影響を標準的に予測する場合の現地における河川等の流量及び湖沼の水位,
降水量等の調査は,事後調査結果との対照を想定し,渇水期に相当する時期に1カ
月程度の連続測定を行う。渇水期の設定は,最も近い既存の流量又は水位測地点等
のデータを参考として設定する。
・その他影響を重点的に予測する場合の現地における河川等の流量及び湖沼の水位,
地下水位,降水量等の調査は,一年以上の連続測定を基本とする。ただし,地下水
位の一斉調査は,豊水期,渇水期に留意し,年2回以上行うこととする。
・利水や水域利用がある場合の河川等の流量及び湖沼の水位等の調査は,取水期,非
取水期等に留意して設定する。
・海域の調査についても季節変動に留意する。また,流入する河川の流量は,河川の
場合と同様,既存資料等により長期的な平均流量の把握に努める。
・影響を受けるおそれのある動植物,景観,自然との触れ合いの場等がある場合には,
これらの利用時期,魚類の産卵・ふ化の時期等影響が特に大きいと想定される時期
に留意して実施する。
-227-
9-5
(1)
予測
予測内容
選定項目に応じ,直接的・間接的影響による次の項目の変化の程度を予測する。
① 河川流量及び流域の水循環(雨水等の流出・浸透・保水)の状況
② 水辺環境の自然性,親水性
③ 地下水の水位,湧水の量
④ 海域の潮流等
⑤ 水道水源の流域の改変,水源への影響の有無,程度
・河川流量及び流域の水循環は,以下のような予測を基本とする。
○標準的には,浸透能(流出係数)の変化
○重点化する場合,年間の流況の変化,基底流量,洪水流量等
○必要に応じ,流量変化に対応した水深,水面幅,河川形態等(魚類,景観等への
影響を予測する必要がある場合等)
○湖沼の場合,標準的には,浸透能(流出係数)の変化により水位・水量の変化。
重点化する場合,年間の水位変動,渇水時,洪水時
・水辺環境は河川及び湖沼等の水域及び水辺の直接的改変の程度から自然性,親水性
等の変化の程度を予測する。
・地下水・湧水については,以下のような予測を基本とする。
○地下水位の変化,湧水量の変化
○湧水地の直接的改変
・海域の潮流等は,以下のような予測を基本とする。
○流況(潮流,恒流)の変化
○必要に応じ,浸食,漂砂等による海岸地形の変化
○必要に応じ,波浪,台風時の高潮等
・水源地への影響は,以下のような予測を基本とする。
○水道水源流域の土地利用等の変化の程度及びそれに伴う水量等の変化
○上記に伴う水源への影響の有無や程度
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域は調査地域に準ずる。
・予測地点は調査地点に準ずる。
(3)
予測対象時期等
① 原則として,工事が完了した時点
<工事中>
・水辺の直接的改変等による永続的な影響の予測は,原則として存在影響として扱う。
・工事中の取水等影響が工事中の一時的な期間に限定される場合については,工事に
よる影響が最大となる時期とする。
-228-
<供用後>
・一般的には,造成後の土地や構造物の存在による影響が主であり,工事が完了した
時点を予測対象事期とする。
・ただし,地下水への影響の出現はある程度の時間的なずれが予想されるため,工事
完了後一定期間が経過した時点とする。
・地下水の取水等施設の稼働等の供用による影響が想定される場合については,施設
等が通常の状態で稼動する時期とする。
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
① 河川流量
・流出係数の算定
・水収支モデル計算
・事例の引用・解析
② 地下水・湧水
・地下水流の流動の解析又は事例の引用・解析
・保全対策
③ 潮流
・数理モデル計算
・模型実験
・事例の引用・解析
・保全対策
④ 水辺環境
・水辺の現況解析結果と事業計画の重ね合わせ
・事例の引用・解析
・保全対策
<河川流量>
(流出係数の計算)
・土地の造成や土地利用による河川及び湖沼等への影響(地下水の涵養も含む)を標
準的に行う場合は,事業予定地における開発前と開発後の雨水の浸透能(流出係数
)の変化又は浸透能の変化による直接流出の増加及び地下浸透分の減少の程度を把
握することによる。浸透能(流出係数)は,標準的には,一般的な知見の値により,
事業計画における土地利用面積,雨水貯留浸透施設等の保全対策より算定する(調
査における浸透能(流出係数)の算定の部分参照)。
(水収支モデル計算)
・重点化して実施する場合には,雨水の流出のモデル化により実施する。モデルには,
短期流出を扱うモデルと長期流出を扱うモデルがある。また,物理法則を依拠とす
る物理モデルと,降水量と流出量の応答特性だけに着目した応答モデルがあるが,
応答モデルは測定値のモデル化を行うものであり,土地改変等の物理的構造の変化
に対応できるものではないため影響評価には適用できない。従って,物理モデルの
-229-
中から,予測評価の目的,地域特性に応じて選定する必要がある。また,必要に応
じ,複数のモデルによる検討を行ったり,条件設定等により想定される将来値の幅
について予測するなど,予測の不確実性に対応するとともに,使用したモデルの再
現性について明確にしておくこと。
・なお,洪水時のピーク流量の予測には,一般的に合理式が用いられることが多い。
合理式において用いる洪水到達時間を求める方法には,等流流速法,土研式,角屋
式がある。また,洪水時のピーク流量予測では,降雨強度をどのように設定するか
が問題であるが,100 年確率の降雨強度を設定することを基本とする。
<地下水・湧水>
・地下水については,標準的には,地下水位の分布及び流動の推定結果と,工事や地
下構造物の位置,深度等から影響が生じる可能性を定性的に検討する,又は小流域
ごとの水収支の状況と計画による浸透能の変化等から地下水や湧水の涵養に与える
影響を定性的に検討する方法による。
・地下水について重点的に行う場合は,地下水流動モデルにより地下水位や湧水量の
変化の程度を定量的に予測する。地下水のモデルについても,モデルの再現性の検
証や,必要に応じ複数のモデルにより予測するといった不確実性への対応を行うこ
と。
・湧水地の直接改変は,事業計画による改変区域図を作成し,湧水地の分布図と重ね
合わせることにより予測する。
<潮流>
(数理モデルの計算)
・海域の流況モデルとしては,水平二次元一層モデルと水平二次元多層モデルがある。
・二次元一層モデルは,水深方向には流速分布を一様と仮定するもので,海域の流れ
の予測に,一般的に用いられている。
・二次元多層モデルには,レイヤーモデルとレベルモデルがあり,レイヤーモデルで
は水深方向にいくつかの層を設定し層ごとの水平流域を求める。レベルモデルは,
鉛直方向にも数層に区分し,各格子点,各層の水平流速,鉛直流速及び推移を計算
するもので,構造物周りの局所的な流れや,水温・塩分等による鉛直循環流等を問
題とする場合にはこれを用いる。
(模型実験)
・現地の潮汐や潮流などの現象を再現できる機能を持つ水槽の中に対象海域の模型を
設置し,この模型上で流況変化等を解明するもの。
・水平方向と垂直方向の縮尺が等しい模型を用いる場合と,通常水深を誇張したひず
み模型を用いる場合がある。
<水辺環境>
・河川,湖沼,海岸等水辺環境の予測は,事業計画による改変区域図を作成し,水辺
環境の分布図や自然性,親水性の解析結果図等と重ね合わせることにより予測する。
・この場合,直接改変により失われる水域の面積,水辺の延長(必要に応じ,護岸形
態別の変化の状況や自然性,親水性の評価区分別の変化)等を計測し,図表にまと
める。
-230-
河川等の流出モデルの分類
区
短期流出モデル
長期流出モデル
分
モデル名
物理モデル
合理式
タンクモデル
貯留関数法
Kinamatic wave モデル
Dynamic wave モデル
浸透流モデル
応答モデル
単位図法
流出関数法
貯水池モデル
物理モデル
タンクモデル
応答モデル
情報理論的モデル
べき乗変換法
非線形応答モデル
注:影響予測には,応答モデルは適用できない。
参考
区分
河川及び湖沼等の流出予測モデル等一覧①
モデル
特
徴
適用条件
短期流出 合理式
モデル
(最大洪
水流量の
予測)
・ある強度の雨が流域に一様に, ・中小河川,下水道等で,洪水調
洪水到達時間の間降ったときの 節施設を含まない場合の排水計
画に一般的に用いられている。
ピーク流量を求める。
・ピーク流量を,流域面積,ピー ・一般に強度が時間的に変化する
ク流出係数,洪水到達時間内の 雨に対しては,この式は厳密に
は成立せず,近似式である。
平均有効降雨強度で表した式。
・洪水到達時間を求める手法に
は,等流流速法,土研式,角屋
式がある。
( 洪 水 時 タンク
の地表流, モデル
中間流の
予測)
・流域をタンクに置き換え,雨量 ・タンクの流出孔での浸透係数,
をタンクに流入させるとき,タ 流出孔の位置,初期水深を定数
ンクの側壁に設けられた孔から として与える。
流れ出す流量が流域末端からの ・これらの定数は,試行錯誤的に
決定するため,タンクの数が多
流出量となるようにしたもの。
・複数個のタンクを直列,並列に いと複雑となり,一般的には直
連結して複雑な流出機構に適合 列2段又は3段の構造を用いる
場合が多い。
させることができる。
貯留関数法 ・流域内の降雨による流出を,流 ・降雨量と流出量の関係よりモデ
れの連続式と運動方程式により ルの定数を同定する必要があ
非線形として扱うモデルであ る。
る。
Kinamatic ・流域内で雨水の流れを追跡し, ・このモデルは,主に山腹斜面,
wave モデル
流域末端から流出する流量を算 河道が急勾配の流域に適用す
る。
出する。
・開水路の非定常流に用いられる
浸透流
基 本 式 を 運 動 波 ( Kinamatic
モデル
wave)近似した方程式を用いる。
・流域の地形,地質,植生等の特性
をパラメータとして組み込め
る。
-231-
参考
区分
河川及び湖沼等の流出予測モデル等一覧②
モデル
特
徴
適用条件
( 洪 水 時 Dynamic
・Kinamatic wave モデルと同様, ・このモデルは,主に低平地流域
の地表流, wave モデル
流域末端から流出する流量を算 に適用する。
中間流の
出する。
予測)
・開水路の非定常流を近似せずに
そのまま用いる。
・流域の地形,地質,植生等の特性
をパラメータとして組み込める。
( 洪 水 時 浸透流
・流域内の土壌への雨水の浸透, ・二次元モデルは,斜面流下方向,
の中間流
モデル
大気への蒸散による流下斜面の 土壌垂直方向への二次元化のた
め,流域斜面の横方向の起伏が
の予測)
下端での流出量を算出する。
・森林による樹冠遮断,蒸発・蒸 一様で,横方向への浸透が少な
散,土壌内での水の移動等,降 い場合に適用する。
雨が流出に至る過程が評価でき ・三次元モデルは,流域の起伏が
複雑で雨水が流域斜面の横方向
る。
・Richardsの不飽和浸透方程式を にも浸透する場合に適用する。
二次元化して用いる二次元モデ
ルと,そのまま用いる三次元モ
デルがある。
長期流出
モデル
(低水
流量の
予測)
タンク
・短期流出のタンクモデルと基本 ・モデル自体に雨水の保留機構を
モデル
的に同じであるが,洪水流出が 持っているため,特に有効雨量
1サイクル内の現象が対象であ の算定の必要がない。
るのに対し,長期流出ではハイ ・直列4段(表面流出,中間流出,
ドログラフ全体の波形や低水下 地下水流出,下部帯水層)のタ
の解析が可能である。
ンクで表現する例が多い。
参考
区分
海域の流況予測モデル等一覧
モデル
特
徴
適用条件
数 理 モ デ 水平二次元 ・水深方向には流速分布を一様と ・海洋では鉛直方向に比べ水平方
ル解析
一層モデル
仮定するもの。
向の広がりが大きいため,本モ
・海域の流れの予測に最も一般的 デルの適用が可。
に用いられている。
水平二次元 ・水深方向にいくつかの層を設定 ・温度密度流,夏季の温度成層形
多層モデル
し,層ごとの水平流域を求める。 成時の流れ,吹送流等を取り扱
(レイヤー
最も簡単で実用的なものとし う場合に用いる。
モデル)
て,上下二層に分けた二層モデ
ルがある。
・このモデルでは,内部境界面摩
擦係数等のパラメータ設定が難
しい。
水平二次元 ・鉛直方向にも数層に区分し,各 ・構造物周りの局所的な流れや,
多層モデル
格子点,各層の水平流速,鉛直 水温・塩分等による鉛直循環流
等を問題とする場合にはこれを
(レベル
流速及び水位を計算するもの。
モデル) ・現実に近い流れが再現可能であ 用いる。
るが,計算する必要のある未知
数が他のモデルに比べて多く,
演算時間も長い。
-232-
参考
区分
地下水の予測モデル等一覧
モデル
特
徴
適用条件
数値解法 平面二次元 ・帯水層の水位変動をシミュレー ・対象領域が広域の場合に適する
( 地 下 水 地下水流動
トする。
が,鉛直方向の地質等の相異に
流動のモ
モデル ・三次元の微分方程式において鉛 より精度が左右される。
デル)
直方向(帯水層厚)の変化を一
様として二次元化したもの。
・どの位置でどの程度地下水を採
取すれば地下水位がどの程度低
下するかを把握するのに適して
いる。
断面二次元 ・平面上の一方向の地下水の流れ ・対象領域での地下水系が平面的
地下水流動
を無視して,断面方向のみの地 に方向性があり,鉛直方向に多
モデル
下水流動を扱うモデル。
層帯水層系の場合に適する。
準三次元
・帯水層の流れを表す平面二次元 ・加圧層(粘土層)と帯水層(砂
地下水流動
モデルと,加圧層の流れを表す 礫層)が連続して互層となって
モデル
鉛直一次元モデルを連立させた いる場合に適す。
もの。
・ただし,帯水層では水平方向の
み,加圧層では鉛直方向のみに
限定して扱っている。
三次元
・地下水流動を三次元的にとらえ ・基本的に地層構造等の制約がな
地下水流動
たもの。
い。
モデル ・計算量が膨大であり,かつ,変
数が多いため,必要なデータを
得ることが困難。
理論解法
複素関数論 ・微分方程式を比較的単純な境界 ・一般的な地下水流の特性が把握
等角写像
条件等を仮定して解いた解析解 できる。
ホドグラフ
・従って,影響範囲等の概略検討
法
に有効である。
・複雑な境界条件等では解けない
場合もある。
図解法
フロー
・土構造物(ダム,河川堤防,地 ・理論式と同様,概略検討に適し
ネット解法
盤等)への浸透流を求めるとき ており,境界条件の制約が少な
に広く用いられる方法を地下水 い。
流に応用した解法。
・非定常地下水流や三次元問題へ
・フローネットを描いて水位(水 の適用が困難である。
頭)や流量を求める。
模型実験
砂モデル
・実地形と模型との間に物理的な ・複雑な地形や境界条件への対応
電気相似
相似率を設定し,模型での流量, が考慮できる。
モデル
水位(水頭)を測定,相似率を ・ただし,設定条件の変更には手
ヘル・ショウ
用いて実地形の値に換算する方 間がかかる。
モデル
法。
ゴムモデル
細管網
モデル
-233-
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 土地改変の範囲,施工方法等
② 排水路の位置,構造,排水量等
③ 水辺地の改変の範囲,施工方法等
④ 地下掘削,地下構造物の位置,規模等
⑤ 地下水の揚水の位置,量等
⑥ 湛水する範囲,水位変動等
2 将来環境条件
① 流域の土地利用
② 利水等の状況
③ 気象の状況
・事業計画からの予測条件設定は,予測する内容に応じて上記のものより選定する。
・将来環境条件は,基本的に現在の状況をこれに当てることが多いが,流域の土地利
用や利水の状況等について,将来の開発構想や計画が明らかな場合は,これを勘案
する。
9-6
環境保全対策
予測結果に基づき,環境に対する影響緩和の考え方から,積極的に環境保全対策を検
討する。水象に係る環境保全対策は,次の事項を考慮して適切に行う。
1
回避
・事業区域,施設配置の変更(保全すべき水辺等を回避)
・表流水の流域の変更,水源や生物の生育・生息基盤として重要な地下水涵養域の改
変を回避するため,造成計画等を変更する。
2
低減
・水の涵養機能等に留意し,涵養機能の高い地域の改変の低減,地形改変及び植生改
変面積の低減
・十分な能力を持つ調整地の設置
・取水,排水量の見直し
・動植物,生態系や自然との触れ合いの場等としての重要度に留意し,重要度の高い
河川・湖沼等の改変の低減,自然的な河川・湖沼等の改変量の低減
・利水や水面利用,景観などに配慮した放水の実施
・改変した河川・湖沼等の復元・再生
-234-
9-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・ 仙台市環境基本計画の目標(雨水の地下浸透能力)
等
①
影響の回避・低減の観点
・改変区域は適切か
・排水位置は適切か
・排出量は下流河川の流下能力以下となっているか等
なお,事業の実施により水象に関して現況を改善することができる場合は,その内
容と程度を示すことができる。
<回避・低減を図る対象の明確化>
・影響の回避・低減の観点から評価を行うためには,何に対する影響を回避・低減し
ようとするのかを明確にする必要がある。
対象の明確化の例
・事業予定地下流域の水源ダムの水量への影響の低減
・事業予定地下流域の湧水の水量への影響の低減
回避,低減を図る対象を明確にした上で,事業の内容から適切な調査計画を立て,
必要なデータを得た上で予測を行う必要がある。
<複数案の比較による回避・低減の検討>
・評価は原則として複数の計画案または保全対策の比較検討を行うことによる。比較
検討に当たっては影響の程度の比較とともに実際には対費用効果の検討も必要であ
る。保全対策の内容が実行可能なものあることが担保されない限り,比較検討は意
味を持ち得ない。影響の回避が困難な場合に,低減を図り,その内容効果が十分か
否かを判断する。判断の基準としては,その対策が技術的に有効なものか否か,そ
の対策によって影響が可能な限り低減できるか否か等をあげることができる。
・なお,本来回避すべき影響が回避できない場合には,どの程度の影響が発生するか
を明確にした上で,回避が困難な理由を明らかにすることが必要である。
②
基準・目標との整合
・仙台市環境基本計画の定量目標(雨水の地下浸透能力)は以下のとおり。
○2010年度( 平成22年度) における雨水の地下浸透( 地下水の涵養)能力について,
現在のレベルで維持することを目指す。
・また,仙台市水環境プラン(仙台市,平成11年3月)では,以下のような指標を
用いて望ましい方向を示している。
○保水指標:河川水量と降水量から算出したもの。保水指標の向上を目指す。
○地下水位:ボーリングデータや井戸の水位。地下水位の向上を目指す。
○市街地地下浸透能力:土地利用状況から把握できる市街化区域内の雨水浸透能力,
地下浸透能力の向上を目指す。
○市街地蒸発散能力:土地利用状況からみた市街化区域内の蒸発散能力。低下して
いる市街地の蒸発散能力の回復を目指す。
-235-
・なお,事業予定地域が,水道水源,農揚水その他の取水地等の上流域に当たり,か
つ,事業により水量等に影響を及ぼす事が予測により明らかになった場合,下流域
での必要水量との調整を行いこれを満足するか否かを指標とした評価を行う必要が
ある。
9-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に以下のような場合に
ついては詳細に行う。
○予測条件,モデルの適合性から見て予測の不確実性が高い場合(ただし,影響の
程度が著しく小さいことが明白な場合を除く)
○環境保全対策として新たな技術を用いるなど,環境保全対策の効果の不確実性が
高い場合
○大規模な取水や土地改変,植生改変等が予定されている場合
○事業予定地の下流域等に取水堰,井戸,湧水,温泉等の水利用が見られる場合
○下流で浸水被害が生じている地域,既に水循環が悪化している市街地内等,既に
問題が生じている地域で行われる事業の場合
(2)事後調査の内容
・予測対象項目
・事業の実施状況及び事業に伴う負荷の状況
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。
・ただし,地下水への影響は,出現までに時間がかかることも想定されるため,必要
に応じ工事完了後5年間程度を目安に,継続的なモニタリング調査を実施すること。
-236-
10 地形・地質
10
地形・地質
10-1 基本的考え方
(1)考え方
地形・地質は,生態系や人の生活,生産の基盤を形成する重要な要素である。また,
自然景観を成立させている重要な要素であり,かつ,それ自身で学術的教育的な価値
が認められる。一方で,地形・地質は一度改変されるとその復元は不可能であり,ま
た,不適切な地形改変は自然災害の原因ともなる。これまでは,天然記念物に指定さ
れているような希少なあるいは特異な地形・地質については,その保護が図られてき
た。しかし,我が国の自然を特徴づけている典型的な地形といった観点や,動植物の
生息場所といった観点からの保全は十分になされてきたとはいえない。
本市は,西の脊梁山地から丘陵,台地,沖積平野,海岸まで多用な地形によって構
成されている。山地における二口峡谷はじめ,数多くの渓谷,丘陵地に突出する太白
山等の山々,台地を縁取る急崖,平野の湖沼,海岸の干潟等,特徴的な地形・地質が
各所に見られる。一方,地すべり地形や崩壊地も多く,長町-利府線等の活断層も通
っており,防災面での配慮も重要である。
このような特徴を踏まえ,地形・地質においては,動植物や生態系,人の生活の基
盤として,まず現況の地形・地質の改変の程度を影響評価の対象とし,さらに学術性
や典型性等の観点から注目すべき地形・地質の改変の程度,土地の安定性の変化を対
象とする。ただし,地形・地質の改変による影響は,水象,植物,動物,生態系,景
観,自然との触れ合いの場等に直接的あるいは間接的な影響を引き起こす。このため,
地形・地質の影響の予測結果を踏まえ,必要に応じこれら関連する項目の予測・評価
を行う必要がある。
(2)環境影響要素
地形・地質における環境影響要素は,以下のうちから適切に選定する。
環境影響要素
1
現況地形
内容,観点
事業予定地及び周辺の地形・地質の調査を行い,事業
実施に伴う現況地形への影響を予測・評価する。
なお,この結果を踏まえ,必要に応じ関連する環境影
響要素の予測評価を実施すること。
2
注目すべき地形・地質
(自然現象を含む)
事業予定地及び周辺の注目すべき地形・地質を把握し
,事業実施に伴う地形への影響を予測・評価する
注目すべき地形・地質とは,文化財・自然環境保全関
連法令等により指定されているもの,既存調査等により
希少性や典型性等の観点から重要とされているもの,地
域のシンボルとなるなど地域住民との関わりが深いもの
等。
3
土地の安定性
地すべり地形,不安定土砂,崩壊地,災害履歴等から
不安定性の高い箇所を把握し,事業実施に伴う土地の安
定性への影響を予測・評価する
-237-
10-2 事前調査及び地域概況の把握
(1)目的
事前調査は,地域の地形・地質の状況等を把握することにより,立地段階において
回避等の配慮を行うことが必要な対象を明らかにし,事業の早期段階における適正な
環境配慮に資することを目的として実施する。
地域概況の把握(概況調査)は,事前調査の成果を踏まえて取りまとめる。概況調
査の目的は,地形・地質のうちどの項目を対象として環境影響評価を行うのかを定め,
その対象ごとに調査,予測,評価の手法を定める(以上,方法書に記載する事項)た
めの必要な情報を得ることにある。
(2)事前調査の内容
・事前調査は,以下のような対象について,立地段階において回避することが望まし
い対象の抽出を主な目的として実施する。
・方法は,既存資料の収集,整理を基本とするが,調査年,調査精度の制約により不
十分な場合もあるので市への聞き取り等により情報の更新,補完等を行なうこと。
また,事業予定地が概ね決まっている場合には,事業予定地及び周辺について現
地踏査等を行い,既存資料に記載されているものに準じる注目すべき地形・地質や,
災害の危険個所等が存在しないかどうかについて確認を行う。とりわけ,崩壊地や
過去の災害の履歴については,聞き取りや現地踏査が必要である。
地形・地質における事前調査対象及び方法
項
目
地形・地質
主な調査対象
注目すべき地形・
地質
調査方法・該当する調査方法等
・自然環境基礎調査報告書 保全上重要な地形・地
質分布図(学術上重要な地形・地質・自然現象)
大規模な造成を要
・地形図又は標高データ(国土地理院発行の数値地
する斜面地等(30
図等)の解析により,30度以上の斜面地を抽出
度以上の急斜面,
・土地分類基本調査の土地分類図,傾斜区分図,谷
谷密度が高い場所
密度図等による
等)
災害の危険個所
・自然環境基礎調査報告書 保全上重要な地形・地
質分布図 (防災上の注目域:急傾斜地崩壊危険
区域,地すべり防止区域,砂防指定地,崩壊危険
箇所,地すべり危険箇所,土石流危険渓流,崩壊
地,地すべり地形,活断層,軟弱層厚さ)
その他事業の立地
・その他既存資料及び現地踏査による
上配慮を要する地
形・地質
-238-
(3)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①の地形・地質の状況を基本とし,②以下の関連
項目について,地象の観点から以下の事項を把握する。
調査項目
①地形・地質の状況
調査の内容
・地形・地質の状況
標高,地形分類,傾斜の状況,表層地質区分,岩石の硬
さや風化の程度,断層の存在等
・注目すべき地形・地質
注目すべき地形・地質・自然現象の分布,内容
・災害履歴
地すべり地形,崩壊地,活断層等の分布,土砂災害・地
震等の履歴等
・災害等により影響を受ける施設等の状況
土地の安定性の変化等により影響を受ける可能性のある
事業予定地周辺の農地,森林,住宅,道路等のの存在
②法令による指定・規制
等の状況
・地すべり防止区域,急傾斜地崩壊等危険区域,砂防指定
地,土砂崩壊防備保安林,土砂流出防備保安林,地すべ
り危険箇所,急傾斜地崩壊危険箇所,土石流危険渓流,
その他土砂災害防止に関する指定地域等
・天然記念物のうち地形・地質に係るもの(国,県,市指
定)
③その他
・地形・地質に大きく依存する湧水,植物,動物,生態系
景観,自然との触れ合いの場等保全対象の存在
・将来の地形・地質に影響を与えると想定される開発動向
等
(4)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業予定地を含む5~10km四方程度の範囲を目安として,地形
的な一体性を考慮して設定する。
-239-
(5)概況調査の方法
概況調査の方法は,既存資料等の収集,整理を基本とするが,既存資料による広域
的な位置づけを踏まえ,事業予定地の地形・地質の状況について,聞き取り,現地確
認を行う。
調査項目
調査の方法
①地形・地質の状況
・主として以下の既存資料の収集,整理
・地形図,国土基本図(国土地理院)
・標高データ(国土地理院)
・土地分類図(1/20万地形分類図,表層地質図,
傾斜区分図,起伏量図・谷密度図等.国土庁等)
・土地分類基本調査(1/5万地形分類図,表層地質図等.
国土庁等)
・土地条件図(国土地理院)
・地質図(工業技術院地質調査所)
・自然環境基礎調査報告書(及びその元資料)
・日本の地形レッドデータブック第1集(日本の地形レッ
ドデータブック作成委員会)
・市誌,市の防災関係資料等
・周辺地域に関する既存文献等の収集,整理結果を踏まえ
,空中写真判読,聞き取り,現地確認
②法令による指定・規制
等の状況
・県,市の防災関連及び文化財関連資料の収集,整理
③その他
・事前調査・概況調査の他の項目の調査結果
・県,市資料の収集,整理
・県,市等への聞き取り
(6)調査結果のとりまとめ(事前調査書及び方法書における地域概況の記述)
事前調査書の取りまとめに当たっては,特に以下の点を明らかにする。
①
事業予定地及び周辺において,地形・地質の保全の観点から,事業の立地を回避
することが望ましい地域又は対象
②
事業予定地において,地形・地質の保全の観点から留意すべき事項又は環境配慮
の方向性
また,方法書における地域概況の記述例を示すと以下のようになる。
●地形・地質の概況目次例及び作図表例
1.事業予定地及び周辺の地形・地質の状況
・地形(標高,地形分類,傾斜の状況等)の概要についての記述
・地質(表層地質,地質構造等)の概要について記述
・注目すべき地形・地質の分布及び特性の記述
・災害危険地形,その他災害履歴等の概要についての記述
図:周辺地域の1/50,000~1/25,000程度の地形分類図,表層地質図,注目すべき
地形・地質等分布図,災害危険地形分布図等
2.事業予定地及び周辺の地形・地質の状況
・事業予定地及び周辺の標高,地形分類,傾斜の状況等の記述
・注目すべき地形・地質,災害危険地形等の有無又は存在の可能性
3.地形・地質保全上の留意点
・上記の内容及び関連する②,③の内容を勘案し,地形・地質保全上の留意点を記
述(②,③の関連事項のうち,地形・地質に係る内容については概要を記述する
こと)
-240-
10-3
スコーピング
・現況地形は,他の項目の予測の基礎条件ともなる基本的要素であり,地形改変をほ
とんど行わない事業を除いて,原則としてすべての事業で選定する。
・注目すべき地形・地質及び土地の安定性については,行為の特性よりも立地条件に
より選定するべきものである。概況調査の結果,注目すべき地形・地質や災害危険
地形が事業予定地に存在する,またはその可能性がある場合に選定する。
・注目すべき地形・地質及び土地の安定性を選定する場合は,注目すべき対象や対象
とする土地災害の種類を可能な限り具体的に明らかにする。
・なお,災害の危険性のある地形・地質については,法令による指定地や危険個所の
調査等があるが,これらは,住宅,道路,農地等の保全対象が存在する場所に限ら
れている。このため,周囲に保全対象がないような地域では指定地等が存在しない
からといって危険性がないとは限らないことに留意すること。
・重点化,簡略化について,現況地形は基本的な変化量を把握するものであるため,
重点化や簡略化は想定しない。注目すべき地形・地質は,天然記念物に指定されて
いるなど,存在する対象の価値が高い場合重点化する。土地の安定性については,
地すべり,土石流等が現に生じていたり,過去に災害が生じたことがある場所にお
いて重点化し,災害危険地形が存在しても地形の改変が小規模である場合は簡略化
する。
・事業特性では,ダム,危険物を扱う施設等,当該施設の災害により二次的な災害を
引き起こす危険性のある事業では,土地の安定性に特に配慮すること。また,道路,
住宅団地,その他供用後に不特定多数の人が利用する事業等においては,周辺への
影響に加え,事業予定地における土地の安定性にも配慮する。
環境影響要素
①現況地形
選定に際しての考え方
重点化・簡略化
・地形の改変をほとんど伴わな
いもの以外は選定
②注目すべき地形
・地質
・事業予定地に注目すべき地形
・天然記念物の指定その他対象
・地質が存在する場合又はその
の重要度が高い場合は重点化
可能性がある場合は選定
③土地の安定性
・事業予定地に地すべり地形,
・地すべりや土石流等が現に生
崩壊地形,土石流の危険性の
じている,あるいは過去に災
ある地域,活断層,その他不
害の履歴がある場合は重点化
安定な地形・地質等が存在す
・活断層が存在し,ダム,危険
る場合又はその可能性がある
物を扱う施設,その他特に安
場合は選定
全性に留意すべき事業の場合
・大規模な地形や植生の改変を
行う場合は選定
は重点化
・災害危険地形が存在するが,
地形の改変の程度が小さい場
合は簡略化が可能
-241-
10-4
調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1.地形の状況
① 地形分類
② 傾斜区分
2.表層地質
なお,必要に応じて深層地質についても把握する。
3.土地の安定性
① 崩壊地,地すべり地,大規模な断層等
4.注目すべき地形・地質
学術上の重要性のみならず,必要に応じて歴史的・文化的背景,地域住民の意識等
についても把握する。
5.その他
必要に応じて,災害履歴,気象,土地の安定性に係る植生の状況等について把握す
る。
(2)調査方法
① 地形図・地質図,空中写真等の既存文献により調査を行うとともに,災害履歴に
ついても調査する。
② 現地調査により,地形の状況,表層地質を確認し,崩壊地等の分布を把握する。
③ 既存文献,聞き取り調査,現地調査により,対象地域における注目すべき地形・
地質を把握し,その状況,価値等を把握する。
<地形>
・1/5,000 程度の地形図により,地形分類図,傾斜区分図等を作成する。航空測量又
は現地測量により作成した地形図又は既存の地形図,空中写真に基づく室内作業を
基本とするが,必要に応じ現地確認を行う。
・地形分類は,既存資料等を参考としながら,調査地域の地形の特性を十分反映でき
るよう,小地形~微地形の地形単位に着目した区分を行う。
・地形分類は,土地の安定性や注目すべき地形・地質の基礎条件となる。
・一般的に傾斜の急な場所では崩壊等の危険性が高いとともに,土工量が大きくなる
可能性が高い。このようなことから,自然公園の特別地域においては,傾斜が急な
場所(30%を超える場所)での施設整備は認めないなどの規制があり,このような
点にも留意した傾斜区分を行うこと。
<表層地質>
・既存資料,現地踏査,ボーリング調査等により,表層地質図,地質断面図等を作成
する。
-242-
・地質は,土地の安定性や注目すべき地形・地質の基礎条件となるとともに,動植物
の生息・生育環境,水象等の基礎資料ともなる。従って,区分された地質ごとに,
土地の安定性,透水性等地下水かん養上の特性,生物の基盤(土壌の基盤)として
の特性等を把握する。
・また,空中写真判読,現地踏査等により,顕著な断層の位置を明らかにする。
・なお,現地測量やボーリング調査を実施する場合には,動植物その他自然環境への
影響が生じる恐れがあることから,動植物等の調査結果を踏まえつつ,慎重に実施
の可否,調査地点,調査時期等の検討を行うこと。
<土地の安定性>
・地形,地質の調査結果,既存資料,聞き取りの結果を踏まえ,空中写真判読及び現
地踏査により,地すべり地形,崩壊地形,土石流の危険箇所(不安定土砂の存在),
活断層,その他災害危険地形等の分布図を作成する。
・これらの危険地形等は,防災関連の指定地域や危険個所を参考とする。ただし,こ
れらは,住宅,道路等保全対象が存在する場合に指定等が行われていることから,
住宅等の存在しないような地域においては,これらの指定用件や調査基準に準じて
抽出したり,地質条件等から危険性の有無について検討する。
・これらのうち,特に重点的に検討する必要のあるものについては,物理的,力学的
性質に関する土質試験等を実施する。調査の方法は,「土質試験の方法と解説」(
土質調査法改訂編集委員会),「地盤調査法」((社)地盤工学会)等に準じる。
・活断層については,必要な場合には,活動周期と最後の活動時期の把握を行い,危
険度を推定する。空中写真の判読により,断層崖の位置を特定し,測量を行う。活
動周期の決定は,トレンチ調査による地層の乱れの観察,年代測定等による活動間
隔及び最終活動時期の把握等による。
<注目すべき地形・地質>
・地形・地質の調査結果,既存資料,聞き取りの結果を踏まえ,現地踏査により,注
目すべき地形・地質の分布図を作成する。
・注目すべき地形・地質の選定に当っては,参考として示した選定基準を考慮して検
討するとともに,地域のシンボルとなっているものや地域住民に親しまれているも
のも取り上げる。選定に当っては,必要に応じ専門家等の意見を聞くこと。
・これらについて,現地調査により,位置,範囲,規模,特性,保存状態,法令等に
よる指定の状況,歴史・文化的背景や住民との関わり,住民の意識(住民に親しま
れているかなど)等を把握する。また,これらの成立の条件や保全のための条件に
ついて検討し,必要に応じてこれらの条件に係る現地調査を実施する。例えば,滝
における集水域,河川流量の把握等がこれにあたる。
・上記の結果から,個々の対象についての個票を作成するとともに,注目すべき理由
とその重要度を整理する。注目すべき対象が複数存在する場合や面積的に大きい場
合等にあっては,注目すべき対象の重要度の評価を行い,評価図を作成する。
<その他>
・その他については,基本的に概況調査結果や,他の項目の調査結果を活用する。
-243-
(3)調査地域等
① 調査地域は対象事業により地形・地質に対する影響が想定される地域として設定
する。
② 調査地点は,地形図,地質図,空中写真等の既存文献に基づき,調査地域を適切
に把握できる地点とする。
③ 調査地域,地点等の設定に当たっては,必要に応じて概況調査を実施し,現地の
概況を把握する。
<調査地域>
・調査地域は,事業の実施により地形・地質に影響を及ぼすと予想される地域とし,
事業予定地から200 mから数百m 程度の範囲を基本とする。ただし,地形・地質の
一体性等を勘案し,適宜拡大する。
<調査地点>
・地形・地質の調査地点は,既存資料等を参考としつつ,調査地域の地形や地質区分
を確認できるよう,踏査ルートを設定する。
・土地の安定性や注目すべき地形・地質については,災害危険地形や注目すべき地形
・地質の分布箇所を調査地点とする。
(4)調査期間等
地形・地質の状況を適切に把握できる期間及び時期とする。
・地形・地質については,基本的には季節的な制約を受けないが,植物の葉が比較的
すいて,地形が見通しやすく,移動が容易な時期で,積雪期を避けて設定すること
が一般的である。
・ただし,自然現象については,季節的に出現するものや季節変動がある場合もある
ため,対象に応じた時期を検討する。
参考
注目すべき地形・地質の選定基準
対象
選定基準
第1回自然環境保全基礎調
査 すぐれた自然の調査
(地形・地質・自然現象)
①点又は線的分布をするものについては,模式的または
記念物的意味をもつ岩石,鉱物,化石などの露頭,典
型的な地形種類(小地形),火山現象,水文,気象,
海象現象で,限られた分布をするものであること。
②面的分布をするものについては,①のうち大規模なも
の,および地形,地質,自然現象などのさまざまな要
素の組み合わせにより,地球化学的意味を持った景観
を構成するものであること。
日本の地形レッドデータブ
ック
①日本の自然を代表する典型的かつ希少,貴重な地形
②①に準じ,地形学の教育上重要な地形もしくは地形学
の研究の進展に伴って新たに注目したほうが良いと考
えられる地形。
③多数存在するが,なかでも最も典型的な形態を示し,
保存することが望ましいもの。
④動物や植物などの生育地として重要な地形。
-244-
参考:すぐれた自然の調査の地形,地質,自然現象事例表
(1)地形
円錐状火山,鐘状火山,楯状火山,台状火山,搭状火山,
臼状火山,熔岩台地,熔岩侵蝕山地,カルデラ,火口,火口丘,
熔岩原,熔岩流,熔岩樹形,熔岩洞窟,熔岩隧道,風穴,
準平原遺物,氾濫原,カルスト地形,氷(雪)蝕地形,堰止湖,
扇状地,河成段丘,自然堤防,マール断崖,岩崖,岩峰,岩柱,
土柱,岩門,天然橋,V字谷,峡谷,渓流,滝,淵,瀞瀬,湍,
甌穴,鍾乳洞,石筍,ドリーネ,ポノール,ウバーレ,
カルレンフェルト,カール(圏谷),U字谷,堆石丘,羊群岩,
懸谷,賽の河原(亀甲原を含む),海蝕地形,溺谷,海成段丘,
三角州,海蝕崖,海蝕洞,海蝕棚(波蝕台地),岩礁,潮吹穴,
砂州,中州,サンゴ礁,砂嘴(礫嘴),砂丘,岬角,陸繋島
(2)地質
①岩石,鉱物の露頭
②地質構造(例~各種褶曲(背斜,向斜,横臥等),各種断層(
正,逆,垂直等),整合,不整合,偽層,隆起,沈降,層理,
節理,石理,波痕,漣痕,雨痕,岩株,餅盤,岩床,岩脈)
③化石産地
(3)自然現象
噴火,噴泥,泥火山現象,噴泉,噴泉塔,噴気,地獄現象,間歇泉
温鉱泉,湧泉,瀑布,渓流,瀬,淵,渦流,潮流,波涛,潮吹現象
干潮,積雪,雪田,雪渓,結氷,霧氷,雲海,一般気象
参考:防災上の指定地域等留意すべき場所
項
目
急傾斜地崩壊危険区域
(急傾斜地の崩壊による
災害の防止に関する法律)
崩壊危険箇所
内 容 等
崩壊のおそれのある急傾斜地(傾斜度が30度以上の土
地)であって,居住者等に危害が生ずるおそれのあるも
のを指定。
工作物等の設置,切土・盛土,木竹の伐採,土石の採
取,水の浸透水を助長する行為等が規制されている。
これに準じる危険のある箇所が,崩壊危険箇所として
調査されている。
地すべり防止区域
(地すべり等防止法)
地すべりが発生している区域又は地すべりが発生する
おそれのきわめて大きい区域及び隣接地で地すべりを助
長・誘発するおそれのきわめて大きいものを指定。
工作物等の設置,切土,地下水を増加させる行為,地
表水の浸透を助長する行為等が規制されている。
これに準じる危険のある箇所が,地すべり危険箇所とし
て調査されている。
地すべり危険箇所
砂防指定地
(砂防法)
土石流危険渓流
活断層
土砂等の生産,流送若しくは堆積により渓流,河川,
もしくはその流域に著しい被害を及ぼす区域を指定。
工作物等の設置,切土・盛土,木竹の伐採,土石の採
取等が規制されている。
これに準じる危険のある箇所が,土石流危険渓流とし
て調査されている。
活断層とは,最近の地質時代(第四紀あるいは第四紀
後期)に繰り返し活動し,かつ,将来も活動する可能性
が高いと考えられる断層をいう。活断層は,いわゆる内
陸直下型地震の震源となることから,近年注目を浴びて
いる。
活断層の周辺200 ~300 m程度以内の範囲では,これ
らの活断層を震源とする地震が発生した場合,被害が特
に大きくなる可能性がある。
-245-
10-5
(1)
予測
予測内容
選定項目に応じ,直接的・間接的影響による次の項目等の変化の程度を予測する。
① 現況地形
② 注目すべき地形・地質
③ 土地の安定性
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域は調査地域に準ずる。
・予測地点は,現況地形においては設定せず全域について実施する。注目すべき地形
・地質及び土地の不安定性については,全域について実施した上でこれらの対象が
存在する地点について詳細な予測を行う。また,土地の安定性については,大規模
な法面が生じる地点,周辺の住宅等の保全対象の存在地点等についても必要に応じ
予測地点を設定する。
(3)
予測対象時期等
① 原則として,工事が完了した時点
・現況地形,注目すべき地形・地質については,改変後の土地の存在による影響を予
測するため,工事完了後の適切な時期を予測時期とし,一般的に工事完了時として
差し支えない。なお,この場合,供用後の土地利用には現れないが,工事実施のた
めに改変される地形等についても含むものとする。ただし,注目すべき地形・地質
については,土砂の流出,取水や一時的な流路の変更等により工事中の影響がある
場合には,影響が最大となる時期を適切に設定する。
・土地の安定性の変化に関しては,上記同様の工事完了後の適切な時期及び工事期間
中とする。工事完了後は,土地の安定性への影響の出現と保全対策等の効果が安定
する期間を勘案し,一定期間後とする。工事中は,造成工事が最大の時期等,影響
が最大となる時期を設定する。
(4)
予測の方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
① 現況地形及び注目地形
・注目地形等の現況解析結果と事業計画の重ね合わせ
・事例の引用・解析
・保全対策
② 土地の安定性
・斜面の安定計算等土質工学的手法
・事例の引用・解析
・保全対策
-246-
・現況地形,注目すべき地形・地質,土地の安定性の直接的影響は,事業計画による
改変区域図(この場合,工事のために改変する区域を含む)を作成し,土地分類図,
傾斜区分図,災害地形等分布図,注目すべき地形・地質分布図等の調査成果図と重
ね合わせることにより,改変される区分の面積,割合等を算定する。その結果によ
り,想定される影響について検討する。
・土地の安定性の変化については,斜面における安定計算(円弧すべり計算等),類
似事例の解析等により,詳細な予測を行う。活断層について重点化して実施する場
合には,地震発生による影響のシミュレーション等を実施する。
・注目すべき地形・地質等については,改変区域に係るものについてさらに詳細な予
測を行うとともに,周辺地形,水象の変化等に伴う間接影響について,他の予測結
果等を踏まえ,類似事例の解析等により予測する。
(5)
予測の前提条件
1.事業計画
① 地形改変の範囲,施工方法等
② 湛水する範囲,水位変動等
③ 構造物の配置,規模,構造等
2.将来環境条件
① 周辺の土地利用
② 気象,水象等
・事業計画のうち,地形改変の範囲には,工事中のために改変する部分を含むこと。
・将来環境条件のうち,周辺の土地利用では,当該事業以外の開発計画による改変の
可能性,将来の開発による新たな保全対象の可能性等について留意する。
・気象・水象等には,土地の安定性に係る降雨等の条件として必要なものと,注目す
べき地形・地質を成立させている条件としての観点がある。後者では,他の項目の
予測結果を受けて,注目すべき地形・地質への間接的な影響がないかどうかを検討
するものである。
10-6
環境保全対策
地形・地質に対する影響は土地造成や施設建設に伴うものであり,改変区域における
直接的影響や,地形の改変等に伴う間接的影響は避けがたい。従って,改変区域を適切
に選択することや適切な構造の選択等,計画の初期段階での配慮が特に重要である。地
形・地質に係る環境保全対策は,次の事項を考慮して適切に行う。
1
回避
・注目すべき地形・地質のうち極めて価値が高いものが分布する場合は,原則として
その場所を改変区域から除外するとともに,その周辺環境も保全し,周囲と一体に
残存させる。
・地すべり,崩壊,土石流等の危険性の高い地域や,近い将来活動する可能性のある
活断層の区域を改変区域から除外する。
-247-
2
低減
・地形を生かし,造成面積及び土工量を最小化する。特に急斜面地その他災害危険地
形等に配慮する。
・道路等の場合には,トンネル,陸橋等構造の変更により保全を図る。なお,橋梁と
する場合は橋脚の位置に配慮する。
・法面の勾配の変更,適切な崩壊防止工法の選定,排水工,緑化工等により,崩壊そ
の他の危険性を防止する。
・早期緑化等により,工事中の崩壊や土砂流出を防止する。
・法面の定期的な観察を行う
10-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合が図られるか
・仙台市自然環境基礎調査の保全上重要な地形
等
①
影響の回避・低減の観点
・注目すべき地形・地質への影響の回避・低減が図られているか。
・災害危険地形等の改変による影響の回避・低減が図られているか。
・地形の改変を低減する構造,工法がとられているか,土工量の低減が図られている
か。
・地形・地質の状況に応じた適切な造成計画,工法となっているか。
・動植物や生態系,水象その他への影響との関連で,地形等の一体的保全が図ら
れているか。また,関連する項目について影響の予測評価が行われているか。
②
基準・目標との整合
・天然記念物等法令等で指定されている注目すべき地形・地質等の保全が図られてい
るか。
・仙台市自然環境基礎調査の保全上重要な地形の保全が図られているか。
・斜面の安定性等に関して,開発指導等の基準を満たしているか
-248-
10-8
事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は,原則としてすべての選定項目とする。
(2)事後調査の内容
・現況地形
・注目すべき地形・地質の状況
・土地の安定性の状況
・事業の実施状況
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期及び期間は原則として予測対象時期とし,現況地形及び注目すべき地形・
地質については,供用開始後1年目,土地の安定性については必要に応じて供用開
始後3~5か年程度の継続観察を行う。
・調査の季節等は,注目すべき自然現象等で特に季節が問題となるもの以外特に選ば
ない。
-249-
11 地盤沈下
11
地盤沈下
11-1 基本的考え方
(1)考え方
地盤沈下は,大きく分けて,地下水の揚水,掘削工事における湧出水の排除,地下
水脈の遮断等を原因とした地下水位の低下によって生じるものと,軟弱地盤上の盛土
等の加重によるものに分けられる。狭義の地盤沈下では前者をさし, 後者は地盤変形
とよばれる場合もある。これらの地盤沈下は,建築物,水路,ライフライン施設等の
損壊,災害に対する安全度の低下等の影響がある。
本市では、東部の平野部には,粘土層,シルト層,砂層,砂礫層が厚く堆積した軟
弱な地盤が広く分布する。昭和40年代後半には,工場等の地下水の汲み上げにより地
盤沈下が生じた。その後,地下水の汲み上げ規制等により地盤沈下は鎮静化してきた
が,一部にはなおゆるやかな沈下を示す地点もある。また,軟弱地盤地域における都
市開発により新たな沈下を生じさせる可能性もある。
(2)環境影響要素
地盤沈下については,沈下の有無又は沈下量を環境影響評価の対象とし,細目は区
分していない。ただし,要因としては,前述のように地下水位の低下によるものと,
軟弱地盤上の加重によるものに分けられる。
11-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,地盤沈下を対象として環境影響評価を行う
かを定め,かつ調査,予測,評価の手法を定めるとともに,保全対策検討の方針を検
討する(以上,方法書に記載する事項)ために必要な情報を得ることである。
地盤沈下は,地形・地質の条件により生じやすさが異なるため,地盤沈下が生じや
すい地形・地質の把握を主に行う。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①及び②を基本とし,その他関連項目の把握を行
う。
概況調査項目
①地盤沈下の状況
②地形・地質の状況
調
査
内
容
・地盤沈下の範囲,沈下量,沈下の原因等
・地盤沈下による被害,苦情等の状況
・地盤沈下により影響を受ける可能性のある建物,道路,
地下埋設物等の把握
・地盤沈下が生じやすい地形・地質の分布(沖積低地の粘性質
,砂質,泥炭質,腐植土質からなる地盤)
③水象の状況
・地下水の分布の状況
④法令等による指定
・規制等
・地下水の揚水等に関する規制等
⑤その他
・将来の地盤の状況に影響を与える可能性のある開発動向等
-250-
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業予定地及び周辺の地質や地下水の特性を把握できる範囲と
し,事業予定地を含む 5~10km四方程度の範囲を目安として設定する。ただし,地盤
沈下により影響を受ける可能性のある施設等については,事業予定地近傍に限定して
差し支えない。
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,以下を基本とする。なお,特に軟弱層が厚く分布する地域につ
いては,自然環境基礎調査報告書(仙台市,1995)の付図に示している。
概況調査項目
①地盤沈下の状況
調査方法
・水準測量結果等の既存文献の収集,整理
・苦情については,市資料及び市への聞き取り
・影響を受ける可能性のある施設等については,地形図,
都市計画図,その他市資料及び現地確認
②地形・地質の状況
・既存の地質図等の収集,整理
・自然環境基礎調査報告書(及びその元資料)
・土地分類基本調査(1/5万.国土庁等)
・土地条件図(国土地理院)
・地質図(工業技術院地質調査所)
・市史,地域防災計画,その他市資料等
・その他周辺地域の開発等に際しての地質調査結果等
③水象の状況
・県,市資料等既存文献の収集,整理
(地下水の分布)
④法令等による指定
・宮城県公害防止条例等県,市資料の収集,整理
・規制等
⑤その他
・県,市資料等既存文献の収集,整理及び市への聞き取り等
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
●地盤沈下の概況目次例及び作成図表例
1.事業予定地周辺における地盤沈下及び地形・地質の状況
・現状における地盤沈下の状況
・地盤沈下が生じやすい地形・地質の分布の状況
図表.地盤沈下が生じやすい地形・地質の分布図
2.地盤沈下防止上の留意点
・地盤沈下が生じる可能性の有無と,生じる可能性がある場合は影響を受ける可能
性がある施設等の状況,その他地盤沈下防止上の留意点を記述(②~⑤の関連項
目のうち,地盤沈下に係る内容については概要を記載すること。
-251-
11-3
スコーピング
・地下水位に影響を及ぼすおそれのある事業において選定する。地下水位に影響を及
ぼすおそれのある要因は以下のようなものがある。
○供用後の地下水の揚水
○工事中の掘削等による地下水,湧出水の排水
○地下構造物の存在による地下水流の遮断
・地盤沈下が生じやすい軟弱地盤が分布し,盛土等を行う又は地下水位の低下が生じ
る場合,選定する。軟弱地盤では,盛土等又は地下水位の低下による荷重によって
粘土層の圧密が生じ,地盤沈下を発生する。軟弱地盤の明確な定義はないが,主に
沖積低地にあり,粘土質,砂質,泥炭質,腐植質からなり,自然含水量が多く,構
造物等に対する支持力が極めて低い地盤をいう。一般には,沖積層の厚さが10m前
後を超えると沈下しやすくなる傾向があり,沖積層の厚さが 5~10m程度を目安と
して選定を行う。
細
目
選定に際しての考え方
重点化・簡略化
地盤沈下(地下水
・相当量の地下水の揚水,地
・地下水位の大幅な低下が予想さ
位の低下によるも
下掘削工事等による地下水
れ,かつ周辺の住宅等に相当程
・湧水の排水,地下構造物等
度の影響が想定される場合は重
の)
による地下水流の遮断等に
地盤沈下(軟弱地
盤上の盛土等)
点化
よる地下水位の低下が想定
・地盤沈下が生じるおそれがある
され,地盤条件等からみて
が,相当程度の期間被害を受け
地盤沈下が生じるおそれが
る対象が存在しない場合は簡略
ある場合に選定
化が可能
・軟弱地盤上に盛土等による
荷重を行う場合に選定
・現在地盤沈下が生じている地域
周辺の場合,軟弱地盤層が非常
に厚いと想定される場合は重点
化
・盛土等の荷重が小さい,周辺に
被害を受ける対象が存在しない
などの場合は簡略化が可能
-252-
11-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1.地盤沈下の状況
地盤沈下の範囲,沈下量
2.地形・地質の状況
軟弱地盤の分布,土の工学的特性
3.地下水の状況
地下水位,地下水の流動等
4.その他
必要に応じて,周辺土地利用等について把握する。
・現在地盤沈下が生じている場合は,長期的な沈下の状況を把握する。その他の場合
にあっては,地盤沈下の状況は,周辺の聞き取り等による。聞き取り等の結果,地
盤沈下が生じている場合には,沈下量についての調査を実施する。
・地下水位の低下による地盤沈下を対象とする場合は,地下水位,流動,地下水利用
等について調査を行う。ただし,地下水位の低下が想定される場合には,水象にお
ける地下水を環境影響評価項目として選定することを基本とし,地下水位の予測に
ついては,基本的に水象において行うこととする。
・軟弱地盤上の盛土等による影響を対象とする場合は,軟弱地盤層の厚さ,強度,粒
度分布,含水量,圧密係数等の把握を行う。地下水位の低下による影響を対象とす
る場合であっても,沖積層等における地下水位の低下に伴う圧密を予測する場合に
は,同様の土質の調査を行う。
(2)調査方法
① 調査方法は,現地調査を実施するとともに聞き取り調査等を実施する。
② 測定方法は,水準測量等とする。
<地盤沈下の状況>
・既に沈下が生じている地域においては,水準測量等既存調査結果を収集,解析し,
長期的な沈下の状況等を把握する。
・その他の場合は,聞き取り等により周辺地域における地盤沈下の有無を確認する。
・その結果,地盤沈下がある場合には,水準測量又は沈下計を用いる方法により,現
地調査を行う。
<地下水の状況>
・地下水については,地下水位の調査と地下水に係る地質構造,地下水利用状況等を
把握する。
・地下水位は,既存の井戸や観測井の水位を観測する。地下水位については,賦存状
況と動態をあきらかにするための短期一斉調査と,水位の変動特性等を把握する長
期継続調査がある。
-253-
・地質構造は,ボーリング調査(水文地質構造の把握と土質試験のコアサンプル採取)
物理探査(電気探査,弾性波探査による帯水層,難透水層,基盤等の地質構造の把
握)等により把握する。
・地下水利用状況は,既存文献等より,井戸等の位置,利用者,揚水量等を把握する。
<軟弱地盤等の土質調査>
・地質調査により,軟弱層の分布,厚さ等を把握する。
・土質試験により,地盤沈下を予測する上で必要なパラメータを把握する。土質試験
には,間隙比や含水比等を求める物理的性質試験と,圧密試験等の力学的性質試験
がある。
(3)調査地域等
①
調査地域は対象事業により地形・地質に対する影響が想定される地域として,地
形・地質の状況等を勘案して設定する。
② 調査地点は,地形図,地質図等の既存文献に基づき,調査地域を適切に把握でき
る地点とする。
③ 調査地域,地点等の設定に当たっては,必要に応じて概況調査を実施し,現地の
概況を把握する。
<調査地域>
・地下水位の影響範囲は,掘削の深度,透水係数等により左右される。地下水位の影
響については,以下のような知見や経験式がある。
○揚水井戸による地下水位の影響は,最も透水係数の大きい粗礫で1,500m程度の範
囲(土質調査法)。
○掘削による地下水位低下が10cmの場合に地下水位低下が2cm になる範囲は,粘土
層で,約100~200m程度,砂層では400~1,000m程度(「地下掘削工事による地
下水障害を防止するための調査報告書」建設省,昭和56年)
○掘削の場合の影響範囲は,掘削深度と同程度から,地盤によっては掘削深度の3
~5倍(「土留め構造物の設計」土質工学会編)
○地下水影響範囲の概略設定の方法(Sichart の式)
R=3000×s×√K
(R:影響範囲(m) s: 掘削による地下水位変化(m )
K:透水係数(m/sec ))
・軟弱地盤状の盛土等による圧密沈下を想定する場合は,その影響範囲は軟弱地盤上
の盛土等の荷重地点周辺で,地下水位の影響範囲より狭い範囲に限られる。地形条
件や既存文献等から軟弱地盤が分布すると想定される範囲を勘案し,設定する。
<調査地点>
・調査地点は,調査地域内において地下水の状況や地質の状況を的確に把握できる地
点とし,複数地点設定する。
・地下水の流動を詳細に把握する場合には,格子状に地下水調査地点を設定するなど,
重要度の程度に応じて設定する。ただし,観測井の設定等により自然環境等に影響
を及ぼすおそれもあるため,地点の設定は慎重に行う。
-254-
(4)調査期間等
① 地盤沈下の状況及び地下水の状況を適切に把握できる期間及び時期とする。
② 地下水に係る調査を実施する場合は,1年間以上にわたる地下水の状況が把握で
きる期間とし,頻度等の設定に当たっては季節による地下水位の変動を考慮する。
・地盤沈下の状況は,既存文献等による場合は,数年以上の状況を対象とする。それ
以外の場合で,現地調査を行う場合は,1年以上の状況を把握することとし,季節
による水位の変動を考慮して調査時期を設定する。
・地下水に関する調査は,年間を通じた状況を把握する。短期一斉の調査は,季節の
変動を考慮し,年2回から4回程度実施する。また,長期の変動に関する調査は,
1週間に1度程度の観測や自記記録計による連続測定とする。
11-5 予測
(1)予測内容
対象事業による地盤沈下の範囲及び沈下量の状況について予測する。
・予測内容としては,沈下量及び沈下の範囲を定量的に予測することとするが,これ
が困難な場合は,沈下の発生の可能性を定性的に予測したり,保全対策の記載によ
り予測に代える。
(2)予測地域及び予測地点
<予測地域>
・予測地域は原則として調査地域に準じる。ただし,地質や地下水に係る調査結果に
応じ,予測地域を限定しても差し支えない。
<予測地点>
・予測は,特に地点を設けずに面的な広がりを予測することを基本とする。
・ただし,必要に応じ,特定の地点について重点的な予測を行う場合,住宅その他保
全対象の分布地点等に予測地点を設定する。
-255-
(3)予測対象時期等
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 供用後にあっては,事業活動が定常状態に達した時期
<工事中>
・掘削工事等による地下水及び湧水の排水が最大となる時期とする。工事計画におい
て工期・工区が設定され,それぞれの工事が間隔をおいて実施される場合には,各
工期・工区ごとの予測を行う。
<供用後>
・土地等の存在による影響の場合は工事完了後の適切な時期,供用時の揚水による影
響の場合は事業計画において予定されている施設等が通常の状態で稼動する時期と
する。ただし,地盤沈下は,影響の出現に時間を要する現象であり,影響が累積す
るものであるため,供用後,1年目,2年目,3年目等,年次による変化を長期的
に予測すること。
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・圧密理論等理論的解析
・事例の引用・解析
・保全対策
・地下水位の低下による沈下については,地下水位の低下の程度を予測した上で,圧
密理論式等により予測する。また,長期的な予測は,圧密理論式の結果を用いた重
ね合わせ法による。地下水位の予測は,地下水の流動モデルによる数値シミュレー
ション,経験則,既存事例の解析等による。地下水の流動のモデルは,近年の知見
の蓄積や計算機の性能の向上等により適用の可能性は高まっているが,実際には,
モデルを構築するための地下水や地質に関する調査が膨大なものとなるため,困難
な場合が多い。
・軟弱地盤上の盛土等による影響は,圧密理論式により予測する。
・簡略化を行った場合等には,地盤沈下発生の可能性の有無について調査結果や類似
事例等から定性的に検討を行ったり,地下水の排水を極力抑える工法の採用等保全
対策を記述することをもって予測に代えることができる。ただし,保全対策による
場合は,その内容について具体的に記載し,効果について信頼できるデータ等を添
付すること。
-256-
地盤沈下予測手法
手法名
圧密沈下理論式
特
徴
適応対象
・土質工学における圧密理論に基づ
・軟弱地盤における圧密沈下
き,地下水位の低下や盛土等の荷
・地下水位低下による地盤沈
重に対応する地盤の有効応力の増
下
加と,土質試験等によって得られ
る土質定数により沈下量を予測す
る方法。
・土質試験によって得られた間隙比
と荷重の関係をどのような定数で
表すかにより,e c 法,C c 法,
m v 法がある。
・荷重による周辺への影響範囲は,
圧密沈下の影響係数と軟弱層の層
厚から求める手法がある。
重ね合せ法
・圧密沈下理論式の結果に圧密時間
係数-圧密度曲線(圧密試験によ
り得られる)を重ね合わせ,n年
目の沈下量を計算する方法。
・軟弱地盤における圧密沈下
・地下水位低下による地盤沈
下
その他
・揚水量と沈下量の相関関係を利用
した予測手法等がある。
・地下水位低下による地盤沈
下
地下水流動のシミュレーションモデル
モデル名
特
徴
適用対象
平面二次元地下水
流動モデル
・帯水層の水位変動をシミュレートする。
・圧密沈下理論式との組み合わせで沈下量
を予測することができる。
・どの位置でどの程度地下水を採取すれば
地下水位がどの程度低下するかを把握す
るのに適している。
・地下水位の予測
断面二次元地下水
流動モデル
・平面上の一方向の地下水の流れを無視し
て,断面方向のみの地下水流動を扱うモ
デル。地盤沈下の実態解明に有効。
・地下水位の予測
・帯水層を含む
地層別の収縮量
の計算が可能
準三次元地下水流動
モデル
・帯水層の流れを表す平面二次元モデルと
,加圧層の流れを表す鉛直一次元モデル
を連立させたもの。
・加圧層(粘土層)と帯水層(砂礫層)が
連続して互層となっている場合に適す。
・地下水位の予測
・加圧層の圧密
沈下量も計算
可能。
三次元地下水流動
モデル
・地下水流動を三次元的にとらえたもので
,基本的に地層構造等の制約がない。
・計算量が膨大であり,かつ,変数が多い
ため必要なデータを得ることが困難。
・地下水位の予測
-257-
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 土地改変の範囲,施工方法,法面の形状等
② 地下水揚水の位置,量等
③ 地下掘削,地下構造物の位置,規模等
2 将来環境条件
① 地下水の状況
② 周辺の土地利用
・将来環境条件の地下水の状況については,水象において地下水の予測を行い,その
結果を用いる。
・このほかに,予測手法に応じて,土質特性等のパラメータの整理が必要となる。
11-6
環境保全対策
地盤沈下に係る環境保全対策は,次の事項を考慮して適切に行う。
1
回避
・水源の転換等による地下水の揚水の回避
・位置の変更,施設計画の変更等による帯水層に影響する掘削等工事の回避
・位置の変更,土地利用計画の変更等による軟弱地盤上への盛土等の回避
2
低減
・水の循環利用等による地下水揚水量の削減
・地下掘削工事における密閉型シールド工法等,地下水の排出を極力少なくするよう
な工法の採用
・地盤改良等による軟弱地盤における圧密沈下の防止対策
・供用時の節水による地下水使用量の削減
・雨水の地下浸透の促進
・地下水位等の監視
11-7
評価
① 影響の回避・低減が図れるか
①
影響の回避・低減の観点
・地盤沈下の発生が回避されているか
・地盤沈下の発生の回避が困難な場合は,地盤沈下による周辺の住宅その他の建物
等に対する影響の回避・低減が図られているか
②
基準や目標との整合
・環境基本計画では,地盤沈下の定量目標はないが,地盤沈下を未然に防止すること
を目標としている。
・地下水の揚水については,県公害防止条例による規制基準がある。
-258-
11-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に以下のような場合に
ついては詳細に行う。
○地盤沈下の発生が予測されている場合
○地下水の揚水,掘削等に伴う地下水・湧水等の排出,地下構造物による地下水流
の遮断等が想定される場合で,地下水位に関する予測結果の不確実性が高い場合
(地下水位に関する予測は一般に不確実性が高い場合が多い。)
○現在地盤沈下が生じている地域における事業の場合
○軟弱地盤の層厚が10mを超えるような場合
○採用した工法等の保全対策について,その効果等に不確実性がある場合
(2)事後調査の内容
・地盤沈下の状況(沈下量)
・地下水位の低下による地盤沈下の場合,地下水位
・事業の実施状況及び事業に伴う揚水量,地下水排水量,盛土等の荷重量等負荷の状
況
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。ただし,地盤沈下の影響は,発現ま
でに時間を要する場合もあることから,事業完了後3~5か年程度の継続観察を行
うこととする。
・調査頻度は,年1回程度の調査とするが,地下水位の変動による場合は,季節によ
る水位変動を考慮し,年2~4回程度の調査を実施する。
-259-
12 土壌汚染
12
土壌汚染
12-1 前 提
(1)考え方
土壌汚染は,事業活動その他の人の活動に伴い,土壌が有害物質により汚染される
ことをいい,農作物や地下水などの水環境の汚染を通じて,人の健康や生活環境に悪
影響を及ぼすおそれがある。このような汚染は,一旦生じると除去や無害化に膨大な
時間と経費を要する可能性が高い。
土壌汚染は,対象事業の実施に伴う有害物質の排出(事故等による非意図的な排出
や,ダイオキシンのように非意図的に生成されるものも含む。),汚染された土地の
造成,汚染された土壌の持ち込みによって生じる可能性がある。
なお,土壌汚染は蓄積性の汚染であることから,季節変動や経時的変動は特段考慮
しないが,事故や災害等の突発的,非意図的排出の影響が考えられることから,事業
の定常的な状態だけでなく事故時等について考慮する必要がある。また,土壌汚染は,
大気や水を媒介として生じたり,地下水を通して影響が発生したりするため,予測の
不確実性が非常に高い項目である。そのため,影響が想定される場合には,事後の監
視が重要となる。
(2)環境影響要素
土壌汚染における環境影響要素は,以下のようになっている。
土壌汚染に係る環境基準は,重金属や有機塩素化合物等について設定されている。
ただし,これら以外にも土壌の汚染を防止すべき有害物質は他種類にわたり,大気質,
水質に係る有害物質等を勘案し,幅広く検討対象とする必要がある。
環境影響要素
土壌の汚染に係
る環境基準項目
内容,観点
・土壌の汚染に係る環境基準について(平成3年環告46号)で
指定されている物質
カドミウム,全シアン,有機燐,鉛,六価クロム,砒素,
総水銀,アルキル水銀,PCB ,銅,ジクロロメタン,
四塩化炭素,1,2-ジクロロエタン,1,1-ジクロロエチレン,
有
シス-1,2- ジクロロエチレン,1,1,1-トリクロロエタン,
害
1,1,2-トリクロロエタン,トリクロロエチレン,
物
テトラクロロエチレン,1,3-ジクロロプロペン,チウラム,
質
シマジン,チオベンカルブ,ベンゼン,セレン
その他の
有害物質等
・農薬
・ダイオキシン類
・その他大気質,水質で対象としている有害物質,
PRTR対象物質等
-260-
12-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,土壌汚染を対象として環境影響評価を行う
かを定め,かつ調査,予測,評価の手法を定めるとともに,保全対策検討の方針を検
討する(以上,方法書に記載する事項)ために必要な情報を得ることである。そのた
め,①事業予定地の土壌が汚染されている可能性があるか否か,②対象事業の実施に
伴って土壌汚染が生じる可能性がある場合の保全すべき対象がどこに存在するかの把
握を主な目的として実施する。①の事業予定地の土壌の汚染の可能性については,過
去の土地利用の履歴による人為的汚染の可能性と,自然起因の重金属等の偏在の可能
性について把握する。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①の土壌汚染の状況を基本とし,②以下の関連項
目について土壌汚染の観点から以下の事項を把握する。
概況調査項目
①土壌汚染の状況
調査内容
<事業予定地の土壌が汚染されている可能性の把握>
○事業予定地の過去の土地利用状況の把握
・工場,研究施設等の跡地である場合は,事業種別,操業時期,
使用した有害物質の種類及び処分方法等を把握のこと。
・廃棄物最終処分場その他廃棄物が処分されていた場合は,廃棄
物の種類,埋立時期,遮断構造等を把握のこと。
○自然起因の重金属等の分布の把握
・鉱山跡,鉱区,鉱脈等の存在,鉱物の種類
・過去,水質等における自然起因の重金属等検出の有無
<周辺地域において土壌汚染が生じている可能性の把握>
・過去の土壌汚染発生の有無,苦情の状況
・ゴルフ場等の農薬を使用する施設,廃棄物処理施設,
その他有害物質を使用する施設の有無
②土地利用,水域
利用(保全すべ
・農地の分布,農業用水取水地点等
・地下水の利用
き対象)
③その他
・土壌汚染の現状や,将来の土壌汚染に影響を与えると想定され
る産業,開発動向等
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業予定地を含む 5~10km四方程度の区域を目安とするが,土
地利用の履歴については事業予定地及びその近傍とする。
-261-
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,以下を基本とする。
調査項目
①土壌汚染の状況
調査方法
・土地利用の履歴については,地形図,住宅地図,土地登記簿,
周辺地域の聞き取り等による。
・工場等の利用が明らかになった場合には,過去の所有者,管理
者の聞き取り,資料収集による。
・廃棄物処分場等であった場合には,県・市の廃棄物担当または
事業者の聞き取りや資料収集によるが,不明な場合は周辺住民
の聞き取り,現地確認による。
・自然起因のものについては,鉱区設定等に係る資料収集,国・
県等の関係機関の聞き取りや資料収集,地質図等による。
・周辺の土壌汚染の可能性については,市への聞き取り,苦情関
係資料収集,過去の水質測定結果(健康項目),地下水調査結
果等による。周辺発生源の可能性については,地形図,聞き取
り,現地確認等による。
②土地利用等
・地形図,土地利用図等の資料,農業用水の取水等の状況につい
ては,水利権関係資料の収集,水利組合等関係者の聞き取り等
による。
③その他
・市への聞き取り等による。
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
記述の目次及び作成する図表等の例は以下のとおり。
●土壌汚染の概況目次例及び作成図表例
1.土壌汚染の状況
・事業予定地の土壌が汚染されている可能性
過去の土地利用履歴からみた可能性,自然条件からみた可能性
・周辺地域において土壌汚染が生じている可能性
発生源となりうる施設,苦情,水質調査結果等からみた可能性
2.土壌汚染防止上の留意点
・上記の内容及び関連する②及び③の内容を勘案し,事業予定地周辺における土壌
汚染防止上の留意点を記述(②及び③の関連事項のうち,土壌汚染に係る内容に
ついては概要を記載すること)
12-3
スコーピング
<事業による行為からのスコーピング>
・対象事業により土壌汚染に係る物質を排出する可能性がある場合に選定する。想定
される主な要因としては,以下のもの。
-262-
○環境基準に係る物質,その他有害物質等を大気中又は水域に排出する場合。この
場合,ダイオキシン類のように,非意図的に生成されるものも含む。(工場,工
業団地造成,廃棄物処理施設等)
○環境基準に係る物質,その他有害物質等を使用又は保管する場合。この場合,事
故や災害等による排出,漏洩等も考慮する。(工場・研究所,工業団地・研究所
団地造成,学校(大学等)等)
○環境基準に係る物質,その他有害物質等を含む可能性のある廃棄物の埋立処分又
は一時的な保管を行う場合。(廃棄物最終処分場,廃棄物処理施設,その他廃棄
物の自家処理等を行う場合等)
○農薬を大量に使用する場合(ゴルフ場等レクリエーション施設)
○工事において薬液注入工法を採用する場合(鉄道,道路,発電施設等)
○工事において汚染された土壌を外部から移入する可能性がある場合
・上記のような要因があり,項目として選定する場合は,対象とする物質名まででき
るだけ具体的に明らかにすること。また,汚染の経路(大気を経由するものか,表
流水を経由するものか,地下水を経由するものか等)について明らかにする。
・なお,自動車の走行,重機の稼働等によって有害物質が生じ,土壌汚染を発生する
可能性はあるが,地域社会全体として取り組むべき課題であり,一事業による影響
の程度は比較的小さいと考えられるので,一般的には対象としないことととする。
<立地条件からのスコーピング>
・事業予定地の土壌が汚染されている可能性がある場合,対象とする。
○過去に工場,研究施設,クリーニング事業所,ガソリンスタンド等として利用さ
れていた場合であって土壌汚染の可能性がある場合
○過去に廃棄物処分場であった場合,又は廃棄物の投棄等が行われた場所である場
合
○鉱山跡である場合,その他地質条件等からみて自然起因の重金属の偏在が想定さ
れる場合。
環境影響要素
有害物質
選定に際しての考え方
・事業により有害物質等の大気
中,水域等への排出や,使用,
保管等がある場合
重点化・簡略化
・排出量,使用量等が特に多い場
合重点化
・影響可能性の高い地域が農業生
・有害物質等を含む可能性のある
廃棄物等を処理,処分する場合
・大量の農薬を使用する場合
産上重要な地域である場合,重
点化
・土壌の汚染により,地下水を通
・薬液注入工法を採用する場合
じて水源等への影響が想定され
・汚染されている可能性のある土
る場合,重点化
壌を持ち込む場合
・事業予定地の土壌が汚染されて
・事業予定地の土壌が,人為的又
は自然的要因により汚染されて
いる可能性のある場合
-263-
いる可能性が高く,造成の規模
が大きい場合,重点化
12-4 調査
(1)調査内容
対象事業の実施により土壌汚染または汚染土壌の移動の可能性がある場合は,以下
の項目から必要に応じて選定する。
1.土壌汚染物質濃度
① 土壌の汚染に係る環境基準項目
② その他の有害物質等
2.その他
必要に応じて土壌,地質,河川の状況,地下水の状況,土地利用の履歴,周辺の
土地利用等についても把握する。
・調査対象項目は,スコーピングで選択した物質とする。
・事業予定地の土壌が汚染されている可能性がある場合は,事業予定地における土壌
の汚染状況を調査する。
・事業において有害物質を排出,使用する等により土壌汚染が想定される場合には,
影響を受ける可能性のある地域において土壌汚染の現状を調査しておくことが望ま
しい。これは,事後調査において調査した結果の解釈を行う上で必要である。しか
しながら,概況調査において,現在周辺地域で土壌汚染が生じている可能性が低い
場合には現況調査を省略しても差し支えない。
・なお,土壌汚染は,大気や水(表流水,地下水)を通じた二次的影響として発現す
る場合が多いため,影響が生じる可能性のある地点(上記の観点から現況調査を実
施しておくことが望ましい地点)は,大気質や水質の予測結果をまたなければ想定
しがたい場合が多い。また,土壌汚染の予測は,定量的な予測が困難であるため,
予測条件として現状の汚染濃度を把握しておくことは,不可欠な条件ではない。従
って,周辺地域の土壌の状況については,予測,評価を行った後に,影響が予測さ
れた地点に絞って,事業着手前の状況を事後調査として実施しておくことで十分で
ある。
・土壌汚染の予測に当たっては,想定される影響の経路に応じ,気象,水象(河川,
湖沼,地下水)等の条件を調査しておく必要があるが,事業からの排出等により土
壌汚染を対象とする場合には,関連する大気質,水質,水象等を当然項目として選
定する必要があり,これらの項目により調査,予測した結果を活用することとする。
(2)調査方法
① 調査方法は既存資料や文献等により土地利用の歴史的背景を調査するとともに,
現地調査を実施する。
② 測定方法は,「土壌の汚染に係る環境基準について」に定める方法等とする。
・現地調査の方法は,以下の告示,調査方法等に準拠して行う。
○「土壌の汚染に係る環境規準について」(平成3年環境庁告示第46号)
○その他の適切な方法
・土壌汚染の調査は,基本的に,土壌中含有量の調査と,溶出の程度を把握するもの
である。
-264-
・事業予定地の土壌の状況を調査する場合は,汚染の平面分布,垂直分布を把握する。
そのため,次の地点選定においてメッシュを切る等の手法により,平面分布を適切
に把握するような手法を採用する。
(3)調査地域等
① 調査地域は事業予定地及びその周辺地域とする。
② 調査地点は調査地域の土壌汚染の範囲を適切に把握できる地点とする。
<調査地域>
・調査地域は,対象とした土壌汚染の発生の経路に応じて,影響を受けると想定され
る範囲を適切に設定する。一般的に,排ガス,排水を通じて発生する場合は,影響
範囲が広域にわたる可能性がある。
・事業に伴い外部の地域で土壌を採取し,その場所の土壌が汚染されているおそれが
ある場合は,土壌採取場所及び周辺についても調査地域とする。
<調査地点>
・調査地点は,調査地域内において次の地点を考慮して複数地点を設定する。
○過去に土壌汚染の可能性がある土地利用が行われた地点(事業予定地内)・大気
,河川水,地下水等を通じて汚染が生じるおそれのある地点(特に農地)
○事業予定地に搬入する土砂等の採取場所,もしくは残土の処分地
○周辺に汚染源がある場合,汚染源との位置関係を考慮した地点
○その他必要に応じて設定する地点
・事業予定地内の汚染状況の調査を実施する場合は,平面分布を十分把握できるよう,
30~50m程度の区画ごと,あるいは1,000m2 程度ごとに1箇所程度の地点を設定
する。各地点において,複数の資料を採取し,これを混合して分析を行う。また,
必要に応じ垂直分布を把握するため,深度別のサンプリングを行う。
(4)調査期間等
土壌汚染の状況を適切に把握できる期間及び時期とする。
・調査期間は,土壌汚染は蓄積性の汚染で,経時的変動はあまり想定されないため,
原則として1 回とする。
-265-
12-5 予測
(1)予測内容
土壌中の汚染物質の状況について予測する。
・土壌汚染の場合,汚染を未然に防止することが重要であること,技術的にも汚染濃
度の予測は困難であることから,汚染が生じる可能性の有無,可能性がある場合,
その影響の広がりの可能性について推定する。
(2)予測地域及び予測地点
<予測地域>
・予測地域は原則として調査地域に準じる。
<予測地点>
・予測を行う地点は,原則として現地調査地点とする。
・必要がある場合は,事業計画に基づき汚染濃度が高くなる可能性のある地点を予測
する。
(3)予測対象時期等
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 供用後にあっては,事業活動が定常状態に達した時期
<工事中>
・造成による影響の場合は汚染土壌に係る工事が最大となる時とする。ただし,土壌
汚染は蓄積性のものであるので,造成による影響も含めて,工事完了時として差し
支えない。
<供用後>
・事業計画において予定されている施設等が通常の状態で稼動する時期とする。
・ただし,土壌汚染は生じさせないことが重要であるため,通常時だけでなく,事故
や災害時についても予測対象とすることが望ましい。
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・事例の引用・解析
・保全対策
<予測手法>
・予測は定性的手法によることとし,既存の類似事例との比較等により影響の程度を
予測する。なお,汚染の経路に応じ,関連する大気質,水質・水象(特に地下水)
等の予測結果を明記すること。また,土壌汚染のある地域を改変する場合は,平面
的,垂直的な汚染の分布と改変区域の状況を明記すること。
・非意図的排出や事故時等の影響については,保全対策の記載による。保全対策の記
載とは,以下の事項を明確にすることをいい,適切な管理を行う,法に定める方法
によるといった記載は予測を行ったこととはならない。
-266-
○使用等を行う物質の種類,量,当該物質の毒性等の知見
○通常の管理等の場所,方法,施設・設備の構造,適正な管理の確認方法
○人為的ミスに対するフェイルセーフ機構の内容,事故・災害等に外部に流出しな
いための機構,万一外部に流出・漏洩した場合被害を最小限にとどめるための対
策,流出・漏洩した物質の回収・対策等の方法,事故時等の関係機関や周辺住民
への連絡体制
○汚染等が生じていないことの監視(事後調査とは異なる)の内容,体制,結果の
公表方法,苦情等への対応体制等
・事業予定地の土壌が汚染されている場合には,除去,封じ込め等の保全対策の記載
による。対策の記載とは,法や指針にそった適正な手法による,といった記載では
なく,その方法,効果等を明確にすること。
・なお,一般的に,法等の基準は最低限守らなければならないレベルや内容を示すも
のである。従って,これを遵守することは最低限の義務であって,環境影響評価に
おいては,事業者が実行可能な範囲で,より一層の対策等を検討することも必要で
ある。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 汚染物質の排出量,使用量等
② 土地改変の範囲,施工方法
③ 残土の量,処分方法
2 将来環境条件
① 河川,地下水の状況
② 周辺の土地利用
・排水や排ガスに起因する汚染が想定される場合には,大気質や水質の予測結果を前
提条件として必要となる。
・汚染土壌の攪乱や水等を経路とした汚染が生じる可能性がある場合には,河川・地
下水等の水象や,風等の気象の状況が前提条件として必要となる。
<バックグランド濃度>
・土壌汚染においては,定量的な予測が困難な場合が多いため,バックグランド濃度
は設定しない。ただし,開発動向その他により,将来の状況が変わると想定される
場合,定性的に記述しておくこと。
-267-
12-6
環境保全対策
土壌汚染に係る環境保全対策は,予測結果に基づき,次の事項を考慮して適切に行う。
1
回避
・有害物質の代替物質使用等による使用等の回避
・鉱脈等の自然起因の重金属等が偏在する場所の造成の回避
・なお,事業予定地の土壌が汚染されている場合には,造成等を回避してもそのまま
放置していたのでは問題の解決とはならないため,回避にはあたらない。
2
低減
・汚染された土壌の除去,封じ込め等
・汚染物質の管理の徹底(定常時,事故・災害時)
12-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・環境基準(環境基本法)
・農用地の土壌の汚染防止等に関する法律に基づく指定用件
等
①
影響の回避・低減の観点
・土壌汚染では,まず生じさせないことが重要であり,事故時等も含めて,発生の可
能性が極力回避されているかどうかが重要である。
②
基準や目標との整合
・土壌汚染の場合,定量的予測は困難であるため,これらの基準は評価段階よりも,
むしろ事後調査結果検討において参照すること。
-268-
12-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に以下のような場合に
ついては詳細に行う。
○土壌汚染物質が検出された場合
○事業に伴い土壌汚染が生じる可能性が予測された場合
○事業予定地の汚染された土壌を他の場所へ移動する場合
(2)事後調査の内容
・土壌汚染の状況
・事業の実施状況及び事業に伴う負荷の状況
・汚染された土砂の移動先およびその周辺の現況を把握
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。ただし,予測対象時期以外にも必要
に応じて適切な時期に調査を行うことを妨げない。
・住民との協定等による継続的なモニタリングについては,環境影響評価の事後調査
とは切り離して考える。
・なお,現況において土壌汚染の可能性がない地域において事業により汚染が生じる
可能性のある場合や汚染土壌を域外に搬出する場合の搬出先の土壌の状況を,現況
の調査で把握することは効率的ではないため,事業着手前に事後調査の一環として
初期条件の調査を行っても差し支えない。
-269-
13 電波障害
13
電波障害
13-1 基本的考え方
(1)考え方
電波障害は広義では,テレビ,ラジオ及び無線通信などにおける画像,音声の障害
(乱れ)を指すが,最近では特に高層建築物や鉄道,航空機の運行等によるテレビの
受信障害を指すことが多い。
電波の伝わり方は光とよく似た性質をもっており,例えば伝搬路に建造物があれば
電波が遮られるため,建物の後ろ側では電波の強さが低下し,テレビ電波であれば,
雪降り状のスノーノイズやゴースト画面になったりする。このような建造物による電
波障害には,建造物によって送信アンテナからの電波が遮られ既にあった反射波の影
響が顕在化する遮蔽障害と,建造物による強い反射波によって生じる反射障害の2種
類がある。
また,電波障害は,列車の走行や航空機の運行等に伴うフラッター障害と呼ばれる
現象や,工事中の大型建設機械の稼働等によっても引き起こされる可能性がある。
(2)環境影響要素
環境影響要素は,建築物や工作物等の設置,工事中の大型機械の稼働,供用開始後
に運行する鉄道,航空機等に伴うテレビ放送の受信障害とする。
なお,テレビ放送は,地上波(VHF,UHF)だけでなく,衛星放送(BS)や
通信衛星による放送(CS)も対象とする。
13-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,電波障害を対象として環境影響評価を行う
かを定め,かつ調査,予測,評価の手法を定めるとともに,保全対策検討の方針を検
討する(以上,方法書に記載する事項)ために必要な情報を得ることである。
なお,事業の特性から電波障害を生ずる可能性がない場合,電波障害に係る概況調
査そのものを省略することができる。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①を基本とし,その他関連項目の把握を行う。
概況調査項目
①電波受信の状況
調査の内容
・受信可能なテレビ放送の種類,送信アンテナの位置,電波
の到来方向
・電波の受信条件(既に共同受信設備を設置しているか等)
・電波障害の状況
②地形の状況
・電波の伝搬経路の地形,既に電波障害の原因となっている
地形条件等
-270-
概況調査項目
③土地利用の状況
調査の内容
・周辺の土地利用の状況(電波障害を受ける可能性のある住
宅等の状況)
・電波障害を生じさせている可能性のある周辺の高層建築物
等の状況
④その他
・将来の開発動向等
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業予定地と送信アンテナの位置等より電波障害の及ぶ可能性
のある範囲を考慮して,事業予定地から5~10km程度の範囲を目安として設定する。
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,以下を基本とする。
概況調査項目
①電波受信の状況
調査方法
・放送局の送信条件に関する資料の収集,整理による。
・電波の受信条件や電波障害の状況は,既存資料,現地での
聞き取り,現地確認による。
②地形の状況
・地形図及び現地確認による。
③土地利用の状況
・地形図等の既存資料及び現地確認による。
④その他
・市への聞き取り等による。
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
●電波障害の概況目次例及び作成図表例
1 電波受信の状況
・テレビ電波の到来方向及び現在の受信条件,電波障害が生じている可能性等に
ついての記述
図.電波の到来方向図等
2 電波障害防止上の留意点
・上記の内容及び関連する②~④の内容を勘案し,事業予定地周辺における電波
障害防止上の留意点を記述(②~④の関連事項のうち,電波障害に係る内容に
ついては概要を記載すること)
13-3
スコーピング
・大規模な建築物・工作物等を設置する場合,タワークレーン等の大型建設機械を使
用する場合,鉄道や航空機の運行を予定している場合等において選定する。
・なお,目安として,建築物等の高さが10mを超えると遮蔽障害が,30mを超えると
反射障害が生じ,この両者を合わせた面積は,送信アンテナの1/2以下の場合,
およそ建築物等の高さの3乗に比例し,これを超えると指数関数的に急増する。
-271-
・電波障害が想定される範囲内に,住宅等被害を受けるおそれのある対象が相当期間
存在しないことが明らかな場合,簡略化することができる。
・電波障害が想定される範囲内で,既に共同受信施設が利用されている場合は,簡略
化することができる。
13-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1 テレビ電波の受信状況
① テレビ電波の状況(チャンネル ,送信場所,送信出力,事業予定地との距離等)
② 受信状況(端子電圧,受信画質,ゴースト波の状況等)
2 その他
必要に応じて,周辺の地形,土地利用,電波障害を発生させていると思われる建
築物等の状況について把握する。
・テレビ電波の状況については,既に電波障害が生じている場合,それを発生させて
いる要因についても把握する。
(2)調査方法
① テレビ電波の状況については,既存文献により調査を行う。
② テレビの受信状況は,現地調査による。
③ 受信状況の測定方法は,電波測定車による路上調査等とする。
・テレビ電波の状況については,基本的に概況調査により把握した内容による。
・受信状況は,その地域で受信されている全チャンネルについて,アンテナ端子電圧
を測定し,受信画像を評価する。受信画像は必要に応じて写真撮影する。ゴースト
については,必要に応じ,PDUR計等によるDU比(希望波と妨害波の強さの比)
の測定,ゴーストの評価等を行う。
・画質の評価,ゴーストの評価とも,人によって感じ方の個人差があるため,調査に
当たっては,専門技術者が評価するなど,評価が一定になるよう留意する。
・あわせて,現地調査により,調査地域内の住宅等の分布状況,一般の受信者が使用
している受信アンテナの状況(アンテナの素子数,地上高等),共同受信設備の有
無及びアンテナ対策の実施対策等特殊な受信設備について把握する。
・その他の項目は,概況調査の結果を活用するとともに,必要に応じ現地調査を行う。
参考 受信画質の5段階評価基準
評価
評語
評価基準
5
優
妨害が認められない
4
良
妨害があるが気にならない
3
可
妨害が気になるがじゃまにならない
2
不可
妨害がひどくてじゃまになる
1
受信不可
+
-
注)評価3については,必要により3 ,3,3 と評価する。
-272-
参考
ゴーストの5段階評価基準
評価
5
4
3
2
1
評価基準
ゴーストが認められない
ゴーストがあるが気にならない
ゴーストが気になるがじゃまにならない
ゴーストがひどくてじゃまになる
受信不能
注)評価3については,必要により(+)又は(-)を付する。
(3)調査地域等
① 調査地域は,対象事業の実施に伴い,遮蔽,反射等により電波障害が生じるおそ
れのある地域として,テレビ電波の状況等を考慮し,類似事例や簡易な計算等によ
り設定する。
② 調査地点は,調査地域内の状況を適切に把握できるよう設定する。
・調査地点に関しては,調査範囲内にほぼ均一に分布するよう設定する。ただし,高
層建築物等で影響が遠方まで及ぶ場合は,障害地域を横断するラインを設定し,ラ
イン上に地点を設定する。
・なお,既存の建物等による障害が想定される場合には,既存の影響を把握できる地
点も設定する。
・地点は,遮蔽障害で30~50m四方に1地点程度,反射障害で 100~ 200m四方で1
地点程度を目安とする。
(4)調査期間等
テレビ電波の受信状態を適切に把握できる期間及び時期とする。
・調査は1回,時期は特に選ばない。
13-5 予測
(1)予測内容
建築物等の遮蔽,反射障害,列車の走行等によるフラッター障害による影響の範囲
等について予測する。
・対象事業の内容を勘案し,以下の中から必要に応じて予測する。
○建築物,工作物等によるテレビ電波障害が及ぶ範囲
○工事中に使用される大型建設機械等によるテレビ電波障害が及ぶ範囲
○列車の走行,航空機の飛行等によるテレビ電波障害が及ぶ範囲及び頻度
等
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域及び予測地点は,調査地域及び調査地点に準じる。
・なお,電波障害の予測は,各予測地点の計算結果より障害の範囲を予測することと
する。ただし,特に留意すべき地点がある場合には,その地点の詳細な予測を行う。
-273-
(3)予測対象時期等
① 工事が完了した時点。ただし,鉄道の運行等に伴うものについては,事業活動が
定常状態に達した時期。
・建築物,工作物等の存在による影響については,工事が完了した時点とするが,鉄
道の走行や航空機の運航等については,事業活動が定常状態に達した時点とする。
・また,タワークレーン等の大型建設機械等による電波障害が想定される場合には,
工事中についても予測対象とし,それらの最大使用時等とする。
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・遮蔽障害,反射障害に関する理論式による計算
・事例の引用・解析
・保全対策
・建築物による電波障害は,遮蔽障害及び反射障害について理論式により計算(遮蔽
障害については遮蔽損失,反射障害についてはD/U比)し,その結果から障害の
範囲及び程度を求める。なお,衛星放送については,周波数の高い電波を用いるた
め光の性質に似ており,遮蔽障害のみを対象とすればよい。
・中高層建築物については,統計的処理によりモデル化された実用式があり,使用範
囲の限定に留意してこれを使うことができる。
・列車や航空機によるフラッター障害等についての障害の範囲は既存の類似事例から
推定し,頻度については運行計画から予測する。
・予測結果は,電波の遮蔽障害や反射障害の程度及び範囲を地図上に示す。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 構造物の配置,規模,形状
② 鉄道又は航空機の運行状況
③ 大規模な盛土法面の位置,規模等
2 将来環境条件
① テレビ電波の状況
② 周辺の土地利用
・事業計画のうち,構造物の配置は,反射面の正確な方向がわかる詳細な図面(1/200
~1/1,000 程度)が必要である。また,形状については,外形,反射面の構造,反
射面の材質等に係る情報が必要である。
・この他に,工事中にタワークレーン等の大規模機械を使用する場合は,その機械の
種類,使用する位置,使用する期間等を明らかにする。
-274-
13-6
環境保全対策
電波障害に係る環境保全対策は,次の事項を考慮して適切に行う。なお,建築物等の
高さが30mを超えると,反射障害の面積が急増し,70~90%に至るため,反射障害対策
が特に重要となる。
1
回避
・建築物の低層化
・鉄道の地下化
2
低減
・建築物・工作物の高さ,配置(向き)形状の変更(凹凸壁面や湾曲壁面の採用),
壁面材料の変更
・高性能アンテナやゴースト除去装置の設置
・航空機の運行経路の変更
3
代償
・共同受信設備の設置,既存ケーブルテレビ(CATV)への加入,SHF放送局の
設置
13-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合が図られるか
・受信画質の評価基準等(日本放送協会)
等
①
影響の回避・低減の観点
・電波障害による影響範囲及び程度の低減が図られ,影響が明らかな範囲について対
策が講じられているか
②
基準や目標との整合
・受信画質の評価基準(日本放送協会)又は受信品位の評価(放送局の検査及び検査
に伴う措置に関する事務規定(昭和33年3月郵政省電波監理局長通達))に照らし
て,支障が生じないこと。
-275-
13-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査は,影響評価項目として選定した場合には,必ず行うこととし,特に以下
のような場合については詳細に行う。
○予測条件等から見て予測の不確実性が高い場合(ただし,影響の程度が著しく小
さい場合は除く)
○保全対策の不確実性が高い場合
(2)事後調査の内容
・受信状況(アンテナ端子電圧,受信画質,DU比等)
・事業の実施状況
・ただし,共同受信施設等の対策を行った範囲内の調査については,当該施設につい
ての調査で代替できる。
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。
・ただし,必要に応じ工事中についても調査を行い,障害が生じている場合には仮設ア
ンテナの設置等の対策を講じること。
-276-
14 日照阻害
14
日照阻害
14-1 基本的考え方
(1)考え方
日照阻害とは,建築物や構造物により日照が遮られる現象をさし,一般的に良好な
住環境を確保するという観点から,住宅等への日当たりの問題としてとらえられるこ
とが多い。1970年代には中高層建築物の増加に伴い,全国各地で日照を巡る問題が顕
在化した。このような問題に対処するため,1976年,建築基準法が改正され,中高層
建築物の日影規制が制度化された。建築基準法による日影の規制は,都市計画の用途
に応じて,冬至日の真太陽時の午前8時から午後4時までの間に,一定時間以上の日
影を生じさせてはいけないというもので,具体的な対象地域や時間の規制値は地方公
共団体が定めることとなっている。このような規制により,一定の日照条件が確保さ
れるようになってはいるものの,現在でも規制対象外の建築物等による問題が依然生
じることもある。また,日照阻害においては,このような住環境に対する影響だけで
なく,農作物に対する影響についても留意する必要がある。
(2)環境影響要素
環境影響要素は,工作物の設置,地形の改変等,対象事業の実施によって発生する
日影による日照阻害とする。
14-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,日照阻害を対象として環境影響評価を行う
かを定め,かつ調査,予測,評価の手法を定めるとともに,保全対策検討の方針を検
討する(以上,方法書に記載する事項)ために必要な情報を得ることである。
日照阻害は,現在の日影の状況と周辺の土地利用の状況等により影響が生じる可能
性があるかどうかを把握する。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①及び②を基本とし,その他関連項目の把握を行
う。
概況調査項目
調査の内容
①日照阻害の状況
・日影の状況
・現在の日影を生じさせている地形,建築物等の状況
・日影に関する苦情等の状況
②土地利用の状況
・日照阻害についての配慮を要する事業予定地周辺の住宅,
学校,病院,農地,森林等の存在
③地形の状況
・標高,土地の高低,傾斜の状況等
④法令による指定・規
制等の状況
・建築基準法による日影の規制基準(都市計画法に基づく用
途地域,条例による指定地域及び規制基準)
・その他
⑤その他
・将来日影に影響を与えると想定される開発動向等
-277-
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業予定地周辺のうち日影の及ぶ範囲を考慮して設定する。日
照阻害の概況調査範囲は,事業予定地の比較的近傍に限ることができる。
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,以下を基本とする。
概況調査項目
①日照阻害の状況
調査方法
・日影の状況及び現在の日影を生じさせている地形,建築物
等の状況は,現地確認による。この段階では,日影の測定
を行うのではなく,地形や建築物の状況から推察する。
・苦情の状況は,既存資料,市への聞き取り等による。
②土地利用の状況
・地形図,都市計画図等の既存資料及び現地確認による。
③地形の状況
・地形図(1/2500程度)及び現地確認による。
・地形図は必ずしも最新とは限らないため,現地での確認を
行うこと。
④法令による指定・規
・市の資料による。
制等の状況
⑤その他
・市への聞き取り等による。
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
●日照障害の概況目次例及び作成図表例
1 事業予定地周辺における日照阻害の状況
・地形,既存の建築物等の状況を踏まえ,現在日照阻害が生じている可能性の
記述
図:日照阻害に係る周辺の土地利用,建築物等
2 日照阻害防止上の留意点
・上記の内容及び関連する②~⑤の内容を勘案し,事業予定地周辺における日照
阻害発生の可能性と防止上の留意点(②~⑤の関連事項のうち,日照阻害に係
る内容については,概要を記述すること。)
14-3
スコーピング
・大規模な建築物・工作物等を設置する事業において選定する。また,大規模な造成
(盛土等)を伴う事業において,それによる日影の影響が懸念される事業において
選定する。
・事業予定地の近傍に保全を要する住宅,学校等の施設や農地等が存在しない場合,
選定しないことができる。ただし,この場合,事業による日影の範囲(概略でも可)
を示し,その範囲内にこれらの施設等が存在しないことを明示すること。
-278-
14-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1 日影の状況
日影の範囲,時刻及び時間等
2 その他
必要に応じて,周辺の地形,土地利用,日影を生じさせている建築物等の状況につ
いて把握する。
・地域の日影の状況を調査する。事業予定地周辺の主要な既存建築物や地形等による
日影の範囲,日影となる時刻及び時間数を調査する。日影の状況は,冬至日の状況
の把握を基本とし,必要に応じ春秋分,夏至,その他必要な季節における状況を把
握する。
・地形の状況その他については,基本的に概況調査の結果によるものとするが,事業
予定地及び周辺地域の土地の高低,既存建築物等の状況について,必要に応じて詳
細な調査を行う。
・特に,日影の影響は地盤の高低差が重要な要素となる。計画地より北側地域の標高
が計画地より低い場合には日照阻害の影響が大きくなることに留意する。
・なお,日影に関する資料は,真の北(真北といい磁北とは異なる)を基準として作
成するので,敷地測量図に記入されている北の方位の表示が真北かどうかを確認す
る必要がある。
(2)調査方法
① 既存資料及び現地調査による。
② 影響時間の測定結果から,冬至日における日照状況を把握する。
・日影の状況は,原則として現地調査を実施する。日影の状況についての調査結果は,
時刻別日影図,等時間日影図等として整理する。
・現状で日影を生じさせている地形や建築物等の位置,高さ,形等の情報を,地図
(都市計画図,地形図,住宅地図等)情報を踏まえ,現地調査により整理する。
・必要に応じて,画角 180度の魚眼レンズで天空写真を撮影しておく。
(3)調査地域等
① 調査地域は,事業の実施に伴って,冬至日に日影が生じるおそれのある範囲とし
て設定する。
② 調査地点は,調査地域内の土地利用を勘案し,適切に設定する。
・調査地域は,事業により日影が生じる可能性のある範囲を概略検討した上で設定す
る。
・調査地点は,日照阻害の影響を受けるおそれのある住宅その他の施設,農地等の位
置を勘案して設定する。
-279-
(4)調査期間等
日影の状況を適切に把握し得る期間及び時期とする。
・冬至日の日影の状況を把握することを基本とするが,調査は必ずしも冬至日に実施
する必要はない。
14-5 予測
(1)予測の内容
対象事業による冬至日の日影の範囲,日影となる時刻及び時間の変化を予測する。
・対象事業の実施により設置される建築物や土地造成等に伴う日影について,事業実
施前からの変化の状況を予測する。
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域及び予測地点は,調査地域及び調査地点に準じる。
(3)予測対象時期等
① 工事が完了した時点
・日照阻害は,土地や建築物等の存在影響を予測するものであるため,工事が完了し
た時点以降であればよい。ただし,植栽により日影が生じる可能性がある場合には,
それらがある程度生育した時期を対象とする。
・日影の影響が最大となる冬至日の状況を予測することを基本とするが,保全を図る
べき対象に応じて,その他の時期や年間の状況を予測する。
・なお,農地に対する影響が想定される場合には,そこで主に栽培されている作物の
生育特性等を踏まえ,予測対象とする季節等を適切に設定する。
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・理論的解析による日影図等の作成
・模型実験
・事例の引用・解析
・保全対策
・一般的には,コンピュータシミュレーションにより,1時間又は30分ごとの日影の
範囲を計算し,予測地域における時効別日影図,等時間別日影図等を作成する。
・特に保全を要する地点については,必要に応じて上記の計算結果から冬至日や年間
の日影時間帯バーチャートを作成する。
・また,特定地点の日影となる時間帯を予測する手法としては,天空写真や天空図に
太陽軌道線を記入する方法がある。
-280-
・事業予定地周辺の地形が複雑な場合等には,周辺の現状を再現した模型等を作成し,
模型実験による方法もある。
・日影の発生による農作物等への影響の程度については,既存文献,事例等を収集,
整理することにより推定する。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 構造物の配置,規模,形状
2 将来環境条件
① 周辺の敷地との高低差
② 周辺の土地利用,建物条件
・事業計画では,建築物のほか,高架橋その他の構造物等の高さ,形状とともに,こ
れらが立地する造成計画(地盤高等)について把握する。また,盛土等による影響
にも留意する。
・将来予測とは,既存の建築物や地形等により生じる日影と合わせた将来の日影の状
況を予測するものであることから,既存の建築物等の条件が必要となる。
・なお,将来における周辺の建築物の立て替え(新たな日影の発生)が明らかな場合
には,これも前提条件として予測を行う。
14-6
環境保全対策
日照阻害に係る環境保全対策は,次の事項を考慮して適切に行う。
1
回避
・事業区域,施設配置の変更による周辺への日影の発生の回避
2
低減
・建築物・工作物の高さ,位置,向き,形状の変更による日影の範囲,時間の低減
・セットバックの採用
3
代償
・太陽光集光装置の設置
11-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・建築基準法による基準
等
①
影響の回避・低減の観点
・影響が回避できていると判断できる例としては,以下のような場合が考えられる。
○敷地外への日影を生じさせない場合
○住宅,学校等の施設や農地等保全を図るべき対象が存在する範囲(将来存在する
ることが予想される範囲を含む)への日影を生じさせない場合
-281-
・影響の回避が困難な場合には,複数案の比較等により,事業者が実行可能な範囲内
で最大限の低減ができているかどうかを判断する。その判断には次のような場合が
考えられる。
○事業予定地周辺に日影が生じるが,公共性の高い施設その他日照阻害の影響を特
に防止すべき地点における日影の影響が回避できている場合
○公共性の高い施設その他日照阻害の影響を特に防止すべき地点における日影の時
間が極力低減できている場合
○日影が生じる地理的範囲の面積又はその中の人口(又は世帯数)が極力低減でき
ている場合
○影響を受ける可能性のある農作物に重要な時期における,日影の時間又は日影と
なる農地の面積が極力低減できている場合
・なお,本来回避すべき影響が回避できていない場合や低減が十分とはいえない場合
は,影響の回避,低減が十分ではないことを明記し,その理由を明らかにすること。
②
基準や目標との整合
・建築基準法による基準は,建築物が当然遵守すべき基準であることから,これに整
合していることは,環境影響評価としては十分ではない。
11-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査は,環境影響評価項目として選定した場合には,必ず行うことを基本とす
るが,特に以下のような場合については詳細に事後調査を行う。
○農作物への影響が想定される場合や,周辺の土地利用の状況が変化する可能性が
高いなど,予測の不確実性が高い場合(ただし,影響の程度が著しく小さい場合
は除く)
○日影による影響が大きい場合
(2)事後調査の内容
・日影の範囲,時効及び時間帯
・事業の実施状況(周辺の建築物等の状況が調査時から変化している場合は,これに
ついても調査する。)
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。
-282-
15 風害
15
風害
15-1 基本的考え方
(1)考え方
風害とは,一般的には強風や通風阻害による被害全般のことをいうが,環境影響評
価で対象となるのは特に,高層建築物や高架などの工作物の設置等によって生じる強
風現象による歩行者や周辺家屋等への影響のことをいう。
超高層ビル群の周辺等ではよくビル風が問題として取り上げられるが,ビル風が発
生するその多くのケースは,低層建物群の中に目立って大きな高層建物が建設される
場合であり,図に示すように,上空の速い流れが高層建物によりせき止められて地上
に流れ込み,強風を発生させる。しかし,強風による環境障害は決して高層建築物の
周辺に限られるものではなく,建物相互の位置関係によっては10階程度の建物の周辺
でも発生することも明らかになっている。
強風発生の典型的なパターンには,①建物の角部に発生する強風,②ピロティなど
の狭い場所を通過する強風,③風上の低層建物と風下の高層建物との間に生じる回転
流と呼ばれる強風,の3つがある。
参考文献:都市と環境,編集代表中村英夫,ぎょうせい,1992
環境アセスメントハンドブック上巻,環境技術研究協会,1987
都市の風環境評価と計画,日本建築学会,1993
(2)環境影響要素
環境影響要素は,高層建築物や高架などの工作物の設置等によって生じる強風現象
による被害等(風害)とする。
-283-
15-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,風害を対象として環境影響評価を行うかを
定め,かつ調査,予測,評価の手法を定める(以上,方法書に記載する事項)ために
必要な情報を得ることである。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①を基本とし,その他関連項目の把握を行う。
概況調査項目
①風害の状況
調査の内容
・地域における風害の状況,風の特性
・風に影響を及ぼしていると考えられる地形,建築物等の状
況
・風害に関する苦情等の状況
②地形の状況
・標高,段丘・崖地,谷,水面等
③土地利用の状況
・周辺の建築物の平均的な高さ
・風害についての配慮を要する事業予定地周辺の住宅,学校
,病院,福祉施設,公園,ペデストリアンデッキや歩道橋
等の存在
④その他
・将来風害に影響を与えると想定される開発動向等
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業予定地周辺のうち,風の状況を把握する上で適切な範囲を
設定する。その際,既存の気象の観測点の位置を考慮する。なお,土地利用の状況に
ついては,事業予定地近傍に限定して差し支えない。
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,以下を基本とする。
概況調査項目
①風害の状況
調査方法
・風害の状況及び風の特性は,現地確認による。この段階で
は,風の測定を行うのではなく,地形や建築物の状況から
推察する。
・苦情の状況は,既存資料,市への聞き取り等による。
②地形の状況
・地形図及び現地確認による。
・崖地上部や川沿い,海辺等は風が強い可能性が高いことか
ら,このような地形に注目する。
③土地利用の状況
・地形図,都市計画図等の既存資料及び現地確認による。
④その他
・市への聞き取り等による。
-284-
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
●風害の概況目次例及び作成図表例
1 風害の状況
・地形や既存の建築物等の状況を踏まえ,地域の風の特性及び風害が生じている
可能性の記述
図:風害に係る周辺の地形,土地利用,建築物の高さ等の図を必要に応じて作成
2 風害防止上の留意点
・上記の内容及び関連する②~④の内容を勘案し,事業予定地周辺における風害
発生の可能性と防止上の留意点(②~④の関連事項のうち,風害に係る内容に
ついては,概要を記述すること。)
15-3
スコーピング
・大規模な建築物・工作物等を設置する場合,大規模な土地造成を行う場合等におい
て選定する。
・その際,高層建築物(一般に40~50m以上でビル風が発生すると言われている。)
だけでなく,周りの建築物の高さや,地形条件等も考慮する。
環境影響要素
風 害
選定に際しての考え方
・40~50m以上の建築物等にお
いて選定
・周辺の建築物の平均的な高さ
の5~6倍を超える高さの建
築物等の場合に選定
・川沿い,海辺,崖地の上部等
の風が強い場所に立地する場
合,上記より低い建築物等に
ついても選定を検討
重点化・簡略化
・高層の建築物(本市の条例におい
て,高さの要件( 100m以上)で
対象事業となったもの)について
は重点化
・周辺に風害の影響を受ける住宅地
その他の施設等が相当期間存在し
ないことが明らかな場合は簡略化
が可能
15-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1 風の状況
① 地表付近の風(風向,風速等)
② 上空風(風向,風速等)
③ 強風の発生(発生場所,頻度等)
2 その他
必要に応じて,周辺の地形,土地利用,風に影響を及ぼすと想定される大規模な建
築物等について把握する。
・地表付近の風は,地上1.5 ~3.0 m程度の高さにおける風の風向,風速,最大風速
等を調査・把握する。
・上空風は,気象官署等で通常測定している風のデータ,年間の風向,風速,最大風
速の発生頻度等を調査する。また,必要に応じて,季節別や月別の状況も把握する。
-285-
・強風の発生は,強風が発生する可能性のある場所,発生時期,風向,風速,発生頻
度等を把握する。
・地形の状況及び土地利用の状況については,概況調査結果を用いるが,必要に応じ
て詳細な状況を把握する。
・風に影響を及ぼすと想定される大規模な建築物等については,その位置,形状,高
さ等を把握する。
(2)調査方法
① 既存資料及び現地調査による。
② 現地調査による観測は,地上気象観測指針に準拠する。
地表付近の風の状況は,上空風に準じて現地調査を行うか,上空風の観測結果から
風洞実験,シミュレーション等の方法により把握する。
<風の状況>
〔上空風〕
・上空風の状況の調査は,気象官署等の観測資料や既存資料の整理・解析又は現地観
測の方法による。
・既存資料としては,気象官署(管区気象台,地方気象台,測候所等)及び地域気象
観測所(通称アメダス),大気測定局,消防署,その他既存の高層建築物や煙突等
で行われている風向・風速等の観測データを使用する。これらの観測データを用い
て風環境の予測と評価を行う場合には,測定地点の高度等を把握し,測定データは
平均値ではなく,毎時等のデータを収集する。
・調査地域が気象官署と相当離れているなど,気象官署等で観測した風の状況が調査
地域の上空風を代表していないと考えられる場合,又は,調査地域の地形等が複雑
である場合などには,現地で実測を行う。
・現地調査を行う場合は,「地上気象観測指針」に準拠する。
〔地表付近の風〕
・地表付近の風の状況の調査は,予測を風洞実験又は数値シミュレーションで行う場
合にあっては,現況についても風洞実験又は数値シミュレーションで行う。
・それ以外の場合には,既存の気象官署の観測資料や,最寄りの地点で得られた観測
資料等の整理・解析又は現地観測の方法による。現地観測の方法は,上空風に準じ
る。
〔強風の発生〕
・強風の状況調査は,気象官署等の上空風の観測資料を基に,風洞実験,数値シミュ
レーション等により地表付近の強風の状況を推定する。また,最寄りの地点で得ら
れた観測資料等がある場合は,それらの整理・解析を行う。
<その他>
・風に影響を及ぼすと想定される大規模な建築物等の調査は,地形図(1/2500程度),
住宅地図,航空写真等の既存資料の整理・解析の方法による。なお,資料調査だけ
では判断できない場合が多いので,必要に応じて現地調査を行い実測等により確認
する。
-286-
(3)調査地域等
① 調査地域は,対象事業により風の影響が生じるおそれのある範囲として,類似事
例等より設定する。
② 調査地点は,地域の代表的な風の状況を適切に把握できる地点とし,特に強風発
生の可能性のある場所,周辺土地利用等を勘案して設定する。
・建物によるビル風の影響範囲は,一般の市街地では概ね建物の高さ相当の水平距離
の範囲であることから,安全を見込んで計画建物の外縁から測って計画建物の高さ
の少なくとも2~3倍以上の水平距離を設定する。
・調査地点(シミュレーション等により検討する地点を含む)は,周辺の歩道のほか,
学校,公園,ペデストリアンデッキ,歩道橋等保全上配慮を要する地点に留意して
設定する。
(4)調査期間等
年間の風の状況を適切に把握しえる期間とする。
・既存資料については,1年間を単位とし,5~10年間の長期的なデータを対象とし
て収集,解析することが望ましい。
・現地調査を行う場合も,長期間であることが望ましいが,最低1年間とする。
15-5 予測
(1)予測内容
対象事業による地表付近の風の平均風速,平均風向,強風発生状況等の変化につい
て予測する。
・地表付近とは,地上1.5 ~3m程度とする。ただし,近接して高層集合住宅等があ
る場合で,バルコニーや外廊下に影響の及ぶおそれが予想される場合には,それら
の場所も対象とする。
・強風とは,日最大瞬間風速又は日最大風速をいい,それらの年間における出現頻度
の変化等を予測する。
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域及び予測地点は,調査地域及び調査地点に準じる。
(3)予測対象時期等
① 工事が完了した時点。
・風害は,建築物等の存在による影響であるため,工事完了後であれば基本的に差し
支えない。
-287-
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・風洞実験
・数値モデルによる計算
・事例の引用・解析
・保全対策
・予測方法については,上記の中から適切なものを選択する。又は,組み合わせるこ
ととするが,計画建築物が周辺の建築物に比べ高層・大規模で周辺に対する環境影
響が大きいと想定される場合は,少なくとも風洞実験又は数値モデルによる計算を
選択することが望ましい。
<地表付近の風向・風速>
〔風洞実験〕
・計画建築物及びその周辺地域を模型に再現し,風洞装置を用いて上空風の風向別に
地上の風向,風速を実験的に予測する。
・風洞内で実際の風の状況をできるだけ正確に再現するため,模型の寸法・形状,風
洞内気流の性状,測定方法に十分注意し,また,予測結果が予測地点の風の性状を
十分把握できるよう風向や測定点の選定に配慮する。
〔数値モデルによる計算〕
・三次元空間全体を多数のメッシュで分割し,流体力学の基礎方程式を用いて数値的
に解析することにより風向・風速を予測する。コンピュータの性能が飛躍的に向上
したことにより,適用幅が広がった。この方法の特徴は空間全体を可視化できるた
め,風の流れの状況を容易に把握できること及び風洞実験と同等以上の内容がコン
ピュータのみで作成できることであり,今後の風環境予測・評価方法の主流となる
ものである。
〔事例の引用・解析〕
・計画建物の配置,規模及び周辺地域の地形,建物等の状況を勘案して,類似した条
件下での既存の観測事例,風洞実験事例,数値モデルによる計算事例又は基本的な
建物形状をもとにした風洞模型実験による増風領域図データなどを参考にして,机
上で増風の範囲と程度を予測する。予測精度は条件の類似の程度により大きく左右
されるので,できるだけ類似性の高い事例を使用する必要がある。あくまでも概略
の予測であることを認識しておく必要がある。
〔保全対策〕
・防風対策の実施による効果を,類似事例の実測結果や計画建物単体の風洞実験結果
等をもとに定性的に判断する。
<強風発生状況>
・強風の出現頻度の予測は,風洞実験で測定した予測地点の風速と上空風の気象観測
点(例えば気象台)との風速の比を求め,気象観測点での強風の出現頻度をもとに
予測地点における強風の超過頻度を算定する。この算出には精度が要求されること
から,類似事例からの推定等による簡易な方法による予測結果を用いることは適切
でない。
-288-
・強風とは,ビューフォート風力階級をもとにした気象庁の風力階級で不快と感じら
れる8m/sや,日最大瞬間風速でごみが舞い上がったり干し物がとぶ10m/s等
を目安とする。
<予測結果のとりまとめ>
・予測結果のとりまとめに当たっては,以下のような点に留意する。
○風向は,各測定点の風向を水平面に投影された形(水平面内風向)で図面上に表
示する。
○風速は,代表性のある点に対する割合(比率)として表わし,必要に応じて風向
の資料を用いてベクトル的に表示(ベクトル図)する。また,必要に応じて建設
後の平均風速を建設前の平均風速に対する比を示すものとする。
○強風の出現頻度は,各点の風速超過確率分布により示すものとする。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 構造物の配置,規模,形状
② 地形改変の範囲,規模等
2 将来環境条件
① 気象条件
② 周辺の土地利用,建物条件
・将来における周辺の建築物の立て替え(新たな風害の発生)が明らかな場合には,
これも前提条件として予測を行う。
・風洞実験や数値シミュレーションにより予測する場合は,以下のような予測条件を
明らかにすること。
○風洞実験
①
風洞装置の形式,測定断面の寸法及び長さ,測定部長さ
②
模型の縮率,再現範囲,閉塞率,風洞内模型写真
③
気流条件(平均風速の垂直分布,乱れの垂直分布等)
④
測定方法(測定機器名称,形式等の概要,記録方式,解析方法の概要等)
○数値モデル
15-6
①
計算条件(使用コンピュータ,使用プログラム等)
②
乱流モデル・方法
③
解析メッシュ(総メッシュ数,最小メッシュ幅等)
④
境界条件など(風速鉛直分布等)
環境保全対策
風害に係る環境保全対策は,次の事項を考慮して適切に行う。
1
回避
・建築物の低層化,施設配置の変更による敷地外へのビル風の影響の回避
2
低減
・建築物・工作物の高さの変更
-289-
・配置,向きの変更(強風の卓越方向に対して建築物の長辺を向けないなど)
・建築物相互の位置関係の変更(棟間を広くするなど)
・建築物の形状の変更(平面形状に丸みをつける,セットバック,壁面に凹凸をつけ
るなど)
・植栽,フェンス,ひさし,アーケード等の設置
15-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
・影響が回避できていると判断できる例としては,以下のような場合が考えられる。
○敷地外への風環境の変化を生じさせない場合
○歩道,住宅,学校,公園等の保全を図るべき対象が存在する範囲(将来存在する
ことが予想される範囲を含む)への風環境の変化を生じさせない場合
・影響の回避が困難な場合には,複数案の比較等により,事業者が実行可能な範囲内
で最大限の低減ができているかどうかを判断する。その判断には次のような場合が
考えられる。
○事業予定地周辺に風環境の変化が生じるが,公共性の高い施設その他風害の影響
を特に防止すべき地点における風環境の変化による影響が回避されている場合
○風環境の変化が生じる地理的範囲の面積又はその中の人口(又は世帯数)が極力
低減されている場合
○周辺における風環境の変化の程度が極力低減されている場合
○風環境の変化の程度あるいは変化による影響については,各種の風環境評価尺度
を参考として検討すること。
・なお,本来回避すべき影響が回避できていない場合や低減が十分とは言えない場合
は,影響の回避,低減が十分ではないことを明記し,その理由を明らかにすること。
<風環境の評価尺度>
強風の発生頻度を考慮した評価尺度として,村上らの風環境評価尺度,ダベンポー
トの評価尺度があり,前者は最も一般的に利用されている。また,単純な指標で,簡
便に使用されるものとして,ビューフォートの風力階級をベースとした気象庁風力階
級表があるが,強風の発生頻度が考慮されていない。なお,年平均風速をもとにした
風工学研究所の風環境評価尺度も利用されている。
なお,これらの評価指標は,基本的に地表付近の歩行者や商店等に係る風環境評価
を対象としている。従って,集合住宅のバルコニーやビル屋上などの上空における風
環境評価にそのまま適用することは適切でない。
-290-
参考:強風の出現頻度に基づく風環境評価尺度(村上他)
評価する強風のレベルと許容さ
れる超過頻度
日最大瞬間風速(m/ 秒)
強風による影響の頻度
対応する空間用途の例
10
15
20
日最大平均風速(m/ 秒)
10/G.F.
15/G.F.
20/G.F.
ランク1
最も影響を受けやすい用途
の場所
住宅地の商店街,野外レストラン
10%
(37日)
0.9%
(3日)
0.08%
(0.3日)
ランク2
影響を受けやすい用途の場
所
住宅地,公園
22%
(80日)
3.6%
(13日)
0.6%
(2日)
ランク3
比較的影響を受けにくい用
途の場所
事務所街
35%
(128日)
7.0%
(26日)
1.5%
(5日)
注)1.日最大瞬間風速:評価時間 2~3秒
日最大平均風速:10分間平均風速
地上1.5mでの定義
2.日最大瞬間風速の目安
10m/ 秒・・・ごみが舞い上がる。干し物が飛ぶ。
15m/ 秒・・・立て看板, 自転車等が倒れる。歩行困難
20m/ 秒・・・風に飛ばされそうになる。
3.G.F.:ガストファクター(突風率:地上 1.5m,評価時間2~3秒)
密集した市街地 ・・・・・・ 2.5~3.0
通常の市街地 ・・・・・・・ 2.0~2.5
特に風速の大きい場所 ・・・ 1.5~2.0
4.本表の読み方
例:ランク1の用途では,日最大瞬間風速が10m/ 秒を通過する確率が10%(年間37日)
以下であれば許容される。
出典:村上,岩佐,森川(1983年)「居住者の日誌による風環境調査と評価尺度に関する研究」
日本建築学会論文報告集,第No.325,80
参考:ダベンポートの評価尺度
快適性との相関
活
動
適用の場所
快 適
我 慢
できる
不 快
危 険
1.早足で歩く
歩道
5
6
7
8
2.立っている,スケートしている
公園,入り口,スケートリンク
4
5
6
8
3.立っている,座っている,
短時間
公園,広場
3
4
5
8
4.立っている,座っている,
長時間
戸外レストラン,野外音楽堂,
野外劇場
2
3
4
8
<1/ 週
<1/ 月
<1/ 年
容認性に関する代表的基準
(単位:ビューフォート階級,温度>10℃)
出典:環境アセスメントハンドブック 環境技術研究会(昭和62年3月)
-291-
参考:ビューフォートの風力階級をベースとした気象庁風力階級表
階
級
表
現
0
静 穏
な ぎ
0.0~ 0.2
静穏。煙はまっすぐ昇る。
風を感じない。
1
至軽風
0.3~ 1.5
風向は煙がなびくので分かるが
風見には感じない。
ほとんど風を感じない。
2
軽 風
そよ風
1.6~ 3.3
顔に風を感じる。木の葉が動
く。風見も動き出す。
顔に風を感じる。
3
軟
風
3.4~ 5.4
木の葉の細かい小枝が絶えず動
く。軽い旗が開く。
髪が乱れる。
衣服がばたつく。
4
和 風
5.5~ 7.9
砂ぼこりが立ち紙片が舞い上が
る。小枝が動く。
砂ぼこりが立ち紙片が舞い上が
る。髪が乱される。
5
疾 風
不快
8.0~10.7
葉のあるかん木がゆれ始め,
池,沼に波がしらが立つ。
風の力を体に感ずる。
6
雄 風
不 快 が
甚だしい
10.8~13.8
大枝が動く。電線が鳴る。傘が
さしにくい。
傘がさしにくい。
普通に歩くことが難しい。
7
強 風
13.9~17.1
樹木全体がゆれる。風に向かっ
ては歩きにくい。
歩くのに不自由さを感じる。
8
疾強風
17.2~20.7
小枝が折れる。風に向かっては
歩けない。
前進をさまたげる。
9
大強風
20.8~24.4
人家にわずかに損害が起こる。
瓦がはがれる。
突風が人を倒す。
10
24.5~28.4
陸地の内部では珍しい。樹木が
根こそぎになる。
11
28.5~32.6
広い範囲の破壊を伴う。
快適
危険
相当風速 (m/s)
地上10mでの値
陸上における状態
人体に与える影響
注:ビューフォート 風力階級表をベースにした気象庁風力階級表に Penwarden による人体への影響を加筆
参考:年平均風速をもとにした風工学研究所の風環境評価尺度
地域A:住宅地としての風環境、または
比較的穏やかな風環境が必要な場所
地域B:住宅地・市街地としての風環境
一般的風環境
地域C:事務所街としての風環境、または比較的
強い風が吹いても我慢できる場所
地域D:超高層建物の足元で見られる風環境、
一般的には好ましくない風環境
(注:主として東京都内が対象)
出典:風工学研究所(1989)新・ビル風の知識、鹿島出版会、東京
-292-
15-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査は,環境影響評価項目として選定した場合には必ず行うことを基本とする
が,特に以下のような場合については詳細に事後調査を行う。
○予測条件等から見て予測の不確実性が高い場合(ただし,影響の程度が著しく小
さい場合は除く)
○100m以上の高層建築物を建設するなど,大きな影響が予想される場合
○特に保全を要する施設等への影響が想定される場合
(2)事後調査の内容
・地上付近の風の状況,その時のビル風の影響を受けない上空風の状況
・事業の実施状況(周辺の建築物等の状況が調査の時点から変化している場合は,こ
れについても調査する。)
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
・ビル風の影響を受けない上空風の状況については,調査で用いた気象官署等のデー
タを用いることができる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。
・なお,1年間の測定等を行うことが望ましいが,詳細に行う場合を除いては,現状
の風の条件から,強風が生じやすい時期を選定し,1週間程度の連続測定とするこ
とができる。
-293-
16 植物
16
植物
16-1 基本的考え方
(1)考え方
植物は,立地環境特性に応じて生育する多様な種が相互に関連しつつひとつの系,
すなわち,植物社会-群落を形成しているという特性を有する。
この系は,野生動物の生息環境を維持する基盤となるとともに,景観や自然との触
れ合いの場を構成する,自然環境の中で最も基礎的かつ重要な要素である。また,古
くから食糧や生産物の原材料となるなど人の生活と深く関わるとともに,国土保全,
水源かん養,大気浄化,気象緩和等の環境保全機能を有し,また都市においては緑と
して生活環境にうるおいを与えている。
本市は,奥羽山脈から海岸までの広がりを持ち,かつ,温暖帯と冷温帯の間に位置
する中間温帯と呼ばれる領域が丘陵分の広い面積を占めていることから,極めて多様
な植物相を有している。また,植物面では,山地地域のうち船形山山頂付近など1350m
を超える地域ではハイマツ等の亜高山植生がみられ,その下部にはブナ林に代表され
る自然林や,クリ-ミズナラ等の二次林が広く分布している。一方,丘陵部は,かつ
てはモミ-イヌブナ群落等に広く覆われていたと考えられるが,現在ではこのような
自然植生はごくわずかに残るのみで,コナラに代表される二次林や,スギ・ヒノキ,
アカマツ等の植林に広く覆われているが,比較的標高の低い部分は,市街地の拡大に
より環境が大きく変化したところであり,今なお開発需要が高い。市街地の東部には
水田が広がり,大小の湖沼群,河川敷,海岸等の希少性,脆弱性の高い植物群落がみ
られる。
一方,市街地における緑地の割合は3割にみたず,「杜の都」の由来といわれる武
家屋敷の庭木,寺社の鎮守の杜等も多くは戦火や都市の成長によって失われ,定禅寺
通や青葉通のケヤキ並木や青葉山が現在の「杜の都」のシンボルとなっている。
植物についての影響評価を行うに当たっては,このような植物の特性を十分に勘案
し,多様な自然環境の地域特性に応じた保護・保全や,生物の多様性の確保の観点か
ら,地域の環境特性に応じた検討を行う必要がある。
ただし,植物は,種子植物,蘚苔植物,藻類,地衣類,菌類(便宜的に植物に含め
る。 )等の多くの群があり,膨大な数の種に分化しており,未だに分類学的な位置付
けが明確でないものも少なくない。このようなことから,環境影響評価の中で,これ
らすべての網羅的な調査を実施することは現実的でなく,対象は高等植物を基本とし
て地域特性に応じて適切に選定(スコーピング)していくこととが必要である。
-294-
(2)環境影響要素
植物における環境影響要素は,以下のうちから適切に選定する。
環境影響要素
1
植物相及び注目すべき種
内容,観点
対象地域の植物相の概要。定量的な予測評価を求める
ものではなく,あくまで,概略の定性的な記述のレベ
ル
注目すべき種は,絶滅のおそれや希少性,自然性等の
自然科学的観点に加え,地域で親しまれていたり採取
対象となっている植物も踏まえて選定する。
2
植生及び注目すべき群落
対象地域の現存植生。現存植生の評価に基づいて影響
の程度を予測評価
注目すべき群落は,絶滅のおそれや希少性,自然性等
の自然科学的観点に加え,地域で親しまれていたり採
取対象となっている植物も踏まえて選定する。
3
樹木・樹林等
大径木,古木や景観上すぐれた樹木・樹林等
緑の量(緑被率,緑視率等)
4
森林等の環境保全機能
植生が有する水源かん養,山地災害防止等の環境保全
機能
なお,下記のような観点からの影響評価は,植物の予測結果を踏まえ,それぞれの
項目において取り扱うこととする。ただし,植生等の評価の観点として一部概括的に
植物の中で取り扱うことは差し支えない。
・野生動物の生息環境としての植物:動物又は生態系
・景観構成要素としての植物:景観
・自然との触れ合いの対象としての植物:自然との触れ合いの場
16-2 事前調査及び地域概況の把握
(1)目的
事前調査は,地域の植物の状況等を把握することにより,立地段階において回避等
の配慮を行うことが必要な対象を明らかにし,事業の早期段階における適正な環境配
慮に資することを目的として実施する。
地域概況の把握(概況調査)は,事前調査の成果を踏まえ,植物のうち何を対象と
して環境影響評価を行うのかを定め,その対象ごとに調査,予測,評価の手法を定め
るとともに,保全対策検討の方針を検討する(以上,方法書に記載する事項)ための
必要な情報を得ることにある。
そのため,事業予定地の周辺地域(ある程度,広域)
における植物の概要を把握し事業予定地の植物からみた位置づけを行うことと,事業
予定地における植物の概要を把握し事業予定地において出現する可能性があると考え
られる注目すべき植物の推定を行う,2段階が必要である。
-295-
(2)事前調査の内容
・事前調査では,以下のような対象について,立地段階において回避することが望ま
しい対象の抽出を主な目的として実施する。
・・事前調査の方法は,既存資料の収集,整理を基本とするが,市への聞き取り等によ
り情報の更新,補完等を行うこと。特に貴重種の分布や地域の人々に親しまれてい
る植物,緑の状況については,既存資料からの把握は困難であり,事業予定地及び
その周辺について聞き取り調査や現地踏査を行う必要がある。
植物における事前調査対象及び方法
項目
主な事前調査対象
調査方法・該当する情報等
植物
植生(自然性の高い
・自然環境基礎調査報告書 現存植生図により,自然性
地域)
の高い地域(例えば植生自然度9,10の地域等を抽出
する
・事業予定地については,空中写真及び現地踏査による
注目すべき植物種
・自然環境基礎調査報告書 保全上重要な植物分布図
(保全上重要な種の分布地(まとまりのある区域))
注目すべき植物群落
・自然環境基礎調査報告書 保全上重要な植物分布図
(保全上重要な植物群落の分布地)
その他事業の立地上
・その他既存資料及び現地踏査による
配慮を要する植物
(3)概況調査の項目
区分
概況調査項目
調査内容
1事業予定地
①植物相の概要
植物区系上の位置づけを踏まえた地域の植物相の
周辺地域の
特性,植物相を特徴づける主要な植物種,既存資料
植物の概況
による植物種リスト作成等
②植生の概要
(事業予定
地を含む
広域)
2事業予定地
現存植生,植生又は土地利用の変遷,周辺住民と
の関わりの状況,植生の環境保全機能等
③注目すべき
植物の概要
注目すべき植物(種,群落及び大径木・景観木等
の樹木・樹林を含む)の分布,特性,立地条件等
①相観植生又は
1/10,000程度の相観植生図の作成,地域の植物相
の植物の概
土地利用,
の特性を踏まえた事業予定地の植物相の概要及び特
況
植物相の概要
性
②植物からみた
周辺との比較等による,事業予定地の植物の重要
(事業予定
対象事業実施
性の観点及び重要性の程度,地域住民との関わり,
地とその隣
区域の位置づ
事業予定地の改変により影響を受ける可能性のある
接地)
け
③注目すべき
植物等
周辺の植物等
事業予定地において出現する可能性のある注目す
べき植物(種,群落及び大径木・景観木等の樹木・
樹林を含む)の推定,当該地域において注目すべき
環境保全機能
-296-
また,関連項目として,植物の観点から以下の事項を把握する。
関連調査項目
調査内容
気象の状況
・植物の生育条件としての気温,降水量,積雪等の状況
地形・地質の状況
・植物の生育基盤としての地形,地質,土壌の状況
法令等による指定・規制
・自然公園,県自然環境保全地域等自然環境保全に係る
規制地域,天然記念物,保存樹等の指定の状況
等
・その他県,市の植物の保全に係る計画等
その他
・周辺地域における将来の植物の状態に影響を与えると想
定される開発動向等
(4)概況調査の範囲
事前調査及び概況調査の範囲は,事業予定地の植物について,広域的な位置づけが
可能なように,事業予定地を含む 5~10km四方程度の範囲を目安として,地形等環境
条件の一体性を考慮して設定する。
(5)概況調査の方法
概況調査の方法は,以下を基本とする。
概況調査項目
1 事業予定地周辺
(広域)植物の概況
①植物相の概要
調査の方法
・既存資料及び地元の研究者等の聞き取りによる
・主な既存資料は以下のとおり
・市史,その他県及び市資料
・周辺地域等における既存アセス事例等
②植生の概要
・仙台市自然環境基礎調査報告書(植生図)(1/25,000)
・変遷については過去の地形図及び空中写真等
③注目すべき植物
・「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する
法律」の国内希少野生動植物種
・植物版レッドリスト(環境庁,1997)
・仙台市自然環境基礎調査の保全上重要な植物
(及びその原資料)
・「国立・国定公園特別地域内指定植物図鑑」(昭和58
年環境庁)に記載の種
・植物群落レッドデータ・ブック(日本自然保護協会,
1996)
・「文化財保護法」に基づく天然記念物
・市史,その他市資料等
-297-
調査項目
2.事業予定地の植物
の概況
①相観植生又は土地利用,
調査の方法
・既存資料の整理・解析,空中写真の判読,地元の研究
者等の聞き取り及び現地概査による
・現地概査は,冬季以外の時期に1~2日程度
植物相の概要
②植物からみた対象事業
実施区域の位置づけ
③注目すべき植物等
(5)調査結果とりまとめ(事前調査書及び方法書における地域概況の記述)
事前調査書の取りまとめに当たっては,特に以下の点を明らかにする。
①
事業予定地及びその周辺地域において,植物の保全の観点から,事業の立地を回
避することが望ましい地域又は対象
②
事業予定地において,植物の保全の観点から留意すべき事項又は環境配慮の方向
性
また,方法書における地域概況の記述例を示すと以下のようになる。
●植物の概況目次例及び作成図表例
1 事業予定地周辺(広域)の植物相及び植生の概況
図:周辺地域の 1/50,000 程度の現存植生図
2 事業予定地周辺(広域)の注目すべき植物の概況
・注目すべき個体, 集団,種,群落についての記述。
図:必要に応じて 1/50,000 程度の分布図
3 事業予定地の植物の概況
図:事業予定地(隣接地含む)の 1/10,000 程度の相観植生図又は土地利用図
4 植物から見た事業予定地の位置づけ及び保全上の留意点
・周辺の植物の状況を踏まえた植物から見た事業予定地の位置づけ
・想定される注目すべき植物(個体,集団,種,群落)
・想定される注目すべき植物の立地条件の特性(地形・地質,土壌, 水象,日
照,気温,人為関与等)
・留意すべき環境保全上の機能
・その他植物保全上の留意点。
・既存資料による植物リストを参考資料として添付すること。
・また,空中写真は,事業の位置を示す資料として,事業計画上に盛り込むこと。
-298-
16-3
スコーピング
<無植生地以外は選定>
・植物については,自然環境及び生活環境の保全上非常に重要な環境要素であること
から,基本的に無植生地(人為裸地,人工面等)において実施する事業以外は対象
とすることを原則とする。
<細目まで選定,注目すべき植物は具体的に想定>
・スコーピングにおいては,細目の選定まで行う。
・細目の選定については,事業の行為特性よりむしろ立地環境の条件によって行うべ
きものである。概況調査の結果に基づき,次表を参考とし必要に応じて専門家の意
見を聞いた上で選定する。
・細目のうち,注目すべき種,群落,大径木,景観上すぐれた樹木・樹林等について
は,具体的にどのような対象に注目しようとしているかについて,概況調査からの
推定結果にもとづき方法書の段階で具体的な種名,群落名等を可能な限り明らかに
する。なお,これらについては,調査の過程において,随時必要なものを追加して
いく。
<重点化項目,簡略化項目の明確化>
・スコーピングにおいては,選定項目ごとに,重点化,簡略化を行うものを明らかに
する。特に,注目すべき種や群落等について,具体的に重点化すべき対象が想定さ
れる場合は,種や群落名まで明記する。
・重点化,簡略化についても,概況調査結果に基づく地域環境特性によるところが大
きく,具体的にどのような植物が対象として想定されるかを検討し,その対象ごと
に,対象の重要性,その存続に対して影響を及ぼすような行為の有無,程度を検討
することによって判定する。
-299-
環境影響要素
植物相及び注目すべき
選定に際しての考え方
無植生地以外は選定
種
重点化・簡略化
・特に植物相が豊かである,特
徴的である,注目種が多数存
在する等の可能性がある場
合は重点化
・芝生等の管理草地,集約的利
用がなされている農地等,人
為的な管理が強いところは簡
略化
植生及び注目すべき
無植生地以外は選定
群落
・自然性が特に高い,特徴的で
ある,注目すべき群落が存在
する等の可能性がある場合は
重点化
・芝生等の管理草地,集約的利
用がなされている農地等,人
為的な管理が強いところは簡
略化
・ただし,農地であっても自然
性が保たれている水辺地や耕
作放棄地がある場合は重点化
樹木・樹林等
都市的地域,田園地域等に
①大径木,景観上すぐ
おいて選定
れた樹木・樹林等
②緑の量(緑被率,
都市的地域において選定
緑視率等)
・市の計画等(グリーンプラン
21,環境基本計画など)にお
いて,緑の保全や緑化の重点
地域等となっている場合は重
点化
森林等の環境保全機能
森林が存在する場合には,
・地形,周辺土地利用等の条件
その森林に期待される機能
から,特に重要であると推定
を選定(一般的には,水源
される機能については重点化
かん養機能と,山地災害防
・改変が想定される森林や水田
止機能を対象とする)
の面積が極めて小さい場合,
また,水田については,洪
地形,周辺土地利用等からみ
水防止機能,地下水かん養
て森林や水田の果たしている
機能を選定することが望ま
機能が小さいと想定される場
しい。
合には簡略化
-300-
16-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1.フロラ(植物相)及び注目種
① 種組成
② 注目種等の分布,個体数等
なお,対象は高等植物とし,必要に応じて高等植物以外についても把握する。
2.植生及び注目群落
① 群落組成,構造
② 分布(現存植生図)
③ 遷移の状況
④ 注目すべき群落の分布,特性等
3.土壌の状況
① 土壌分類及び土壌生産力
4.樹木・樹林
① 大径木,景観上すぐれた樹木・樹林等
② 緑の量(緑被率,緑視率等)
5.注目種,注目群落等の生育環境
① 地形,土壌,水文,微気象等
6.保全機能
① 植生の有する水源かん養,防災等の保全機能
7.その他
必要に応じて歴史的・文化的背景,地域住民の意識や利用状況等についても把握す
る。
<フロラ(植物相)・注目種>
・高等植物(種子植物,シダ植物)以外の植物としては,蘚苔植物,藻類,地衣類,
菌類等があげられるが,これらについては同定が困難で,一般的に分布や生態に関
する情報も少ない場合が多い。このため,既存資料等により,調査地域において注
目すべき種が分布する,あるいは地域を特徴づけているといったことが知られてい
る場合に該当する種あるいは分類群を対象とする。
・環境影響評価における植物相調査は,地域の完全な目録を作成することを目的とし
て行っているのではなく,注目種を適切に選定するために行うものであることに留
意する。
・注目種は,概況調査及び植物相調査の結果から対象を抽出し,個々の注目すべき種
についての分布,個体数等を把握する。
<植生・注目群落>
・植生では,潜在自然植生についても調査を行っておくことが望ましい。潜在自然植
生とは,今一切の人間の影響を停止したときに,現在の気候下,現在の地形上にそ
の立地が支えることができる,最も発達した植物群落をいうが,緑化等の保全対策
を検討する上で,一つの目安となる。
-301-
・注目種すべき群落は,概況調査及び植物相調査の結果から対象を抽出し,個々の群
落の分布,特性等を把握する。
<土壌の状況>
・土壌の状況は,植生を対象として選定した場合に把握するものとする。
・土壌の分類及び分類ごとの分布を把握し,土壌図を作成する。
<樹木,樹林>
・大径木,景観上すぐれた樹木・樹林等については,一定基準以上の樹木の調査を行
い,個々の対象ごとに位置,樹種,生育状況等を把握する。
・緑の量は,緑被率又は緑視率を指標として地域の状況を把握する。樹木の調査を行
い,個々の対象ごとに位置,樹種,生育状況を把握する。
<注目種,注目群落等の生育環境>
・注目種,注目群落等の生育環境の調査は,対象とした種や群落等に応じて対象とす
る内容が異なるため,その種や群落等の生育条件に関する一般的な知見,調査地域
における分布の概要等から,調査すべき内容を検討する。
<環境保全機能>
・植物は多様な環境保全機能を有しており,機能に応じて推測方法が異なる。着目す
る機能に応じて,推測するために必要な地形・地質,水象等の情報を活用する。
<その他>
・歴史的・文化的背景,地域住民の意識や利用状況等とは,注目すべき対象の選定に
当たって,植物学的な観点だけでなく,住民の生活や地域の歴史・文化等とのかか
わりにおいて親しまれていたり,利用されてきた種等についても選定するために把
握すべきものである。
(2)調査方法
① 既存文献及び聞き取り調査等の結果を踏まえ,現地調査により把握する。
② フロラ及び注目種は,調査ルートに沿って種の同定を行い,記録するとともに,
環境の状況を把握する。その結果から,注目種を選定し,選定した種の特性に応じ
適切な時期,地域を設定し,分布,個体数等についての詳細な調査を実施する。
③ 植生は,コドラート調査により,群落の組成・構造・状況を把握し,空中写真判
読等により植生図を作成する。注目すべき群落については,植生調査結果の解析に
より,必要に応じ補完調査を実施する。
④ 対象地域における注目すべき種,群落,樹木・樹林等の選定は,既存文献,専門
家等の聞き取り調査等により抽出する。その際,地域で親しまれていたり採取対象
となっている植物についても把握する。
⑤ 土壌は,試坑断面調査及び現地踏査による。
⑥ 緑の量は,植生調査結果等を踏まえ,空中写真判読,現地調査,写真撮影等によ
り把握する。
⑦ 生育環境の状況は,地形・地質,水象等の調査結果を活用するとともに,必要に
応じて調査を実施する。
⑧ 保全機能は,地形・地質,水象,動物等の調査及び植生調査結果に基づき,植生
の有する諸機能を把握する。
-302-
<フロラ(植物相)及び注目種>
●フロラ(植物相)
・調査は,原則として現地調査によるものとする。
・植物相を特徴づける主要な植物種の生育の有無を目視観察により調査し,植物目録
を作成する。
・現地での同定が困難なものについては,標本を採取し,必要に応じて専門家による
同定を行う。ただし,標本の採取に当たっては,個体数が極端に少ないものへの配
慮等,調査による現地影響を極力少なくするよう配慮する。
・調査の信頼性を確保するため,必要に応じて,標本または,写真,確認地,確認日
時,確認者名の情報を提出できるようにしておくこと。
・調査対象は,自生種,逸出種を基本とし,環境の状況の把握のため,帰化植物につ
いても実施する。
・調査結果のとりまとめに当たっては,植物目録,科,種別の集計表等の作成を行う
とともに,事業予定地の植物相の特徴について,既存文献による周辺地域の状況や,
事業予定地の地形,植生等の立地との対応に留意して記述する。
・取りまとめ方法の例等については,「自然環境アセスメント技術マニュアル」(自
然環境アセスメント研究会,1995)を参照。
●注目種
・植物相調査の結果に基づき,レッドリスト対象種等の希少な種,その他学術上重要
な種,地域社会において住民の生活と密接なかかわりのある種等を抽出し,その選
定理由を明らかにする。
○希少な種
*種の保存法による国内希少野生動植物種
*レッドリスト(環境庁,1997)対象種
*仙台市自然環境基礎調査の保全上重要な植物
*その他地域レベルで希少な種(市資料,専門家の聞き取り等による)
○学術上重要な種
*分布限界種(南限,北限,隔離分布)
*孤立した地域個体群
*基準標本産地となった種,固有種
*特異な立地に特有な種
*人為的干渉に対して著しく感受性の高い種
*国立・国定公園特別地域内指定植物(近隣する場合に採用,指定理由に留意)
*その他学術上重要な種(市資料,専門家の聞き取り等による)
○生活と密接なかかわりのある種
*山菜,果実,キノコ等食用に供される種
*特産品の原料となる種
*その他
地域住民に親しまれたり大切にされている種
○その他,上記に準じる種
-303-
・抽出したものについて,詳細な現地調査を行い分布位置,分布の量(分布地の面積
または個体数),生育状況(活力度等)等を把握する。この場合,分布については,
対象種の生育環境に関する一般的知見及び調査地域内で既に確認されている地点の
状況等から,生育する可能性のある場所をある程度想定し,くまなく調査する。
・なお,特に重要な種であって,影響が想定される場合には,必要に応じて文献及び
聞き取り等による周辺地域の生育状況の確認を行う。
・生物多様性の概念には,遺伝子レベルの多様性の概念も含まれており,近年,技術
の進歩も著しいことから,特に重点化した調査を実施する場合においては,必要に
応じアイソザイム解析,DNA解析の実施についても検討する。
<植生及び注目群落>
●植生
・植生調査は,事業予定地全体の植物的自然の状態とそれに対する影響を把握する上
で非常に重要であり,また,植物のみならず,動物,生態系,景観等,自然環境全
般の基礎情報となるものでもある。
・植生調査は,植物社会学的手法またはこれに準じる手法によって,植生高,階層構
造,種数,種組成,被度,群度,成立立地,植生遷移上の位置づけ(自然植生,代
償植生各群落の時系列上の類縁関係)等を調査し,群落を識別・同定して,群落組
成表,群落特性表,現存植生図を作成する。
・植生図は,1/5,000 程度を基本とし,これに表記し得る100 ㎡以上の植物群落を対
象とする。なお,準備書等には 1/10,000 程度に縮小して記載してもさしつかえな
い。
〔植生の評価〕
・注目すべき群落の抽出及び植生の予測の基礎資料として植生の評価を行う。即ち,
評価の高い群落から注目すべき群落を抽出したり,植生の影響の評価においては,
評価区分別の植生の改変面積の比較によって,植生影響の回避低減の程度を計測す
ることが可能となる。
・植生の評価は,分布の特異性,種組成の典型性,群落形態の典型性,要保護植物の
包含性,自然性,規模の特異性,群落の再現可能性,立地の不安定性,人為に対す
る感受性等の多様な観点から評価することが望ましい。ただし,評価手法には,必
ずしも一定の手法があるわけではなく,個々のケースに応じて適切な項目の選定と
各項目の基準の設定が求められている。
・地域特性からみて,自然性の高い植生の保全を第一とすることが適当と判断される
場合には,植生自然度を基本とした自然性評価を用いることができる。ただし,植
生自然度の区分は,自然性からみても10段階評価ではない。植生自然度10と9,5
と4は自然性という観点からは同等であり,このような点に十分留意して使用する
必要がある。
・ただし,近年問題となっている里山の自然や草地の減少等を踏まえると,植生自然
度の評価だけでは十分ではないといえる。このため,前述したような,多様な観点
からの評価を行うことが重要である。
-304-
〔潜在自然植生の推定〕
・潜在自然植生は,主に植生調査結果と土壌調査結果に基づき,周辺地域に残存する
自然植生や代償植生の立地環境等から,現在加えられている人為が一切排除された
場合にその立地に理論的に成立しうる最も発達した植物群落を推定する。
・潜在自然植生の推定結果は,ある地域の植生の保全,復元を検討するに当たって,
目標となる植物群落の立地と群落構造を示すことができる。ただし,地域特性によ
っては,潜在自然植生が植物管理や緑化の目標として適切でない場合もある。
〔植生調査結果のとりまとめ等〕
・植生調査結果のとりまとめ等に当たっては,以下の点に留意する。
○植生図を作成する。
○植物群落ごとの植生高,階層構造,平均出現数,主要構成種,立地特性,群落及
び分布の解説等をまとめた群落特性表を作成する。
○必要に応じて群落の断面模式図を作成する。
○組成表については,資料編に掲載する。
○植生の評価の考え方,評価手法,評価結果についてまとめる。
○植生評価図を作成する。
○必要に応じて潜在自然植生図を作成する。
○事業予定地の植生の特徴について,既存文献による周辺地域の状況や,事業予定
地の地形,土壌等,立地との対応に留意して記述する。
○植生調査結果とりまとめの例等については,「自然環境アセスメント技術マニュ
アル」(自然環境アセスメント研究会,1995)を参照。
●注目群落
・植生調査結果(評価結果含む)に基づき,希少性,その他学術性,地域住民の生活
とのかかわり等の観点から注目すべき群落を選定し,選定理由を整理する。
○仙台市自然環境基礎調査の保全上重要な植物
○「第2回,第3回自然環境保全基礎調査」(環境庁)における特定植物群落及び
その選定基準に該当する群落
○天然記念物(特別含む)に指定されている群落
○「植物群落レッドデーターブック」(( 財) 日本自然保護協会,1996)に記載さ
れている群落
○その他,植生の評価で特に高い評価が得られた群落
○花,紅葉,新緑が美しい群落,食用に供する植物や特産品や原材料となる植物を
産する群落,その他地域住民に親しまれ又は大切にされている群落
○その他,上記に準じる群落
・抽出した群落について詳細な現地調査を行い,分布位置,分布面積,生育状況,遷
移の状況等を把握する。
・遷移の状況とは,遷移の過程のどの段階にあるかということで,二次的に成立した
ものであっても自然植生に近いものであるなど植生の評価に係る情報となるととも
に,放置すれば消滅する群落であるのか,定期的な自然の攪乱や人為的な管理によ
って維持されている群落であるのかといった,将来に植生の保全又は管理の目標に
-305-
係る情報となる場合もある。
<土壌の状況>
・土壌調査は,植物の影響評価を行うに当たっての生育環境を把握するものである。
また,潜在自然植生の推定や植生の環境保全機能評価の基礎資料となるとともに,
保全対策検討に当たっても基礎的条件として重要である。
・植生,地形・地質により想定される土壌の区分ごとの試坑断面調査及び現地踏査を
行い,土壌断面を観察,記録する。なお,調査に当たっては,周辺植生等への影響
を生じないよう留意するとともに,調査後の埋め戻しを行う。
・試坑断面調査は,幅,深さとも1m程度の試抗を掘り,土壌層位,層厚,土色,腐
植量,土性,石礫,水分状態,堅さ,根の分布等の断面の形態的特性を観察・記録
し,断面のスケッチ,周辺の写真撮影等を行う。なお,重点的な調査を実施する場
合は,必要に応じ,土壌層位別に試料を採取し,理化学特性の分析を行う。
・試坑断面調査の結果及び植生調査結果等に基づき,土壌タイプの分類及び生産力の
特性を把握する。なお,分類に当たっては「林野土壌分類」(林業試験場,1975)
「農耕地土壌分類」(農業技術研究所,1979)「土地分類基本調査による統一的土
壌分類」(経済企画庁,1970)を参考とする。
・現地踏査により,分類した土壌タイプの分布の境界線を確定し土壌図を作成する。
土壌図は,植生図の縮尺と極力合わせることとし,1/5,000 ~ 1/10,000 程度の精
度とする。
・土壌調査結果のとりまとめに当たっては,土壌断面図,土壌分類別特性表,土壌図
等を作成し,土壌の分布,生産力等の特性について記述を行う。
<樹木・樹林>
●大径木,景観上すぐれた樹木・樹林等
・学術的,歴史的,文化的,景観的等の観点から注目される樹木又は樹群(並木や樹
林)とし,天然記念物等に指定されている樹木,樹群,大径木等を対象とする。な
お,注目すべき種が単独で存在しているものは,注目種の中で扱う。
○天然記念物に指定されている樹木,樹群
○市の保存樹,保存樹林等に指定されている樹木,樹群
○第4回自然環境保全基礎調査の巨樹・巨木(地上約130cm で幹周 300cm以上)
○大径木(地上約 130cmで幹周150cm 程度以上のもの,ただし,大径木は森林域に
おいては,把握する必要はない。)
○その他,上記に準じる樹木,集団等
・選定した対象については,個々に,樹種,位置,規模(樹高,地上約130cm の幹周)
健全度(又は活力度),信仰の有無等地域社会とのかかわり,保護の状況(天然記
念物や保存樹等の指定の有無),周辺の状況等を調査する。
●緑の量(緑被率,緑視率等)
・都市地域内等にあっては,緑の量的な確保が問題となる場合が多いため,望ましい
水準の緑の量を確保することを目的として,地域における緑の実態を把握し,その
中で事業予定地が果たしている役割を明らかにする。
-306-
・緑被率については,植生調査結果及び空中写真判読等により,緑被の区分ごとの分
布を把握し,事業予定地内及び周辺地域における緑被面積及び緑被率を把握する。
・緑視率は,写真撮影を行い,画面上の緑の割合を計測することによる。なお,緑視
率把握のための写真撮影方法は特に定めないが,既存文献等のデータと比較するよ
うな場合には,準拠する文献の計測方法に合わせること。
・調査結果のとりまとめに当たっては,以下のような資料及び記述を盛り込む。
○緑被分布図,緑被面積及び緑被率集計表,地域の緑被量に果たす事業予定地の緑
の役割
○緑視率集計表,緑視状況写真,地域の緑視量に果たす事業予定地の緑の役割
<注目種,注目群落の生育環境>
・注目種,注目群落ごとに,その生育環境(地形,土壌,水文,微気象等)を,他の
項目の調査結果に基づき把握し,必要に応じて現地の詳細な調査を行う。
・生育環境の詳細な調査内容の例としては,以下のようなものがあげられる。
○土壌:土壌の分類,厚さ,理化学的特性等
○水文:地下水位,湖沼や河川の水深や冠水の頻度等。地下水や湧水が関係する場
合はこれらの賦存状況,流れの状況,かん養域等を推定できるよう,地下水位,
水質,地質の状況,降水量等の調査を実施する。
○微気象:相対照度,温度,風等
<環境保全機能>
・植生の有する環境保全機能は多様で,一般的に以下のようなものが考えられるが,
特に,植生の有する水源かん養や防災等の保全機能に着目し,地域の特性に応じ,
必要に応じて他の項目についても検討する。
○水保全:水量平準化(水源かん養),水質浄化等
○侵食防止:水食防止,風食防止,雪食防止
○自然災害防止:崩壊防止,洪水防止,雪崩防止等
○防火:延焼阻止,災害時の避難地
○大気浄化:二酸化炭素吸収・貯留,大気汚染物質吸収
○騒音防止
○野生生物種保全
○保健休養:景観構成,精神安定,快適性向上,レクリエーション等
○教養・教育
・既存文献等より,各機能を評価する適切な手法を選定する。手法の参考となる文献
の一例としては,以下のようなものがある。
○「森林の機能別評価実施要領」(林野庁,1977)
*水源かん養,土砂災害防止,木材生産等の機能について,土壌,表層地質,地
質構造,斜面形状等の条件により評価
○「森林の整備水準・機能計量等調査報告書(森林の整備水準の評価手法)」(林
野庁,1990)
*水源かん養,土砂災害防止,木材生産等の機能について,これらの機能を高め
るような森林整備のあり方を検討,評価
-307-
○「個別環境保全機能の評価.「農林水産業のもつ国土資源と環境の保全機能及び
その維持増進に関する総合研究」研究報告(第5集)モデル流域における国土資
源及び環境保全機能の維持増進方策の策定」(農林水産技術会議事務局,農業環
境技術研究所,1988,45-63 )
*水源かん養,水質浄化,土砂崩壊防止,洪水防止等の機能について,土壌,表
層地質,傾斜,降水量,土地利用等の条件により評価
○「開発に伴う植生の環境保全機能低下の量的推定の試み」(只木,1990,信州大
学環境科学年報 第12巻36-45 )
*植生の区分ごとに,経験的に諸機能の得点を設定
・調査結果のとりまとめに当たっては,各機能の評価結果により,機能評価図等を作
成する。
(3)調査地域等
① 調査地域は,事業予定地及びその周辺において,植物に対する影響が想定される
地域とし,地形,水系等を考慮して設定する。
② 植物相調査ルートは,既存文献,地形図,航空写真等に基づき,植生の分布状況
や地形,水系等を勘案し,調査地域を適切に把握できる踏査ルートを設定する。
③ 植生調査地点は,植物相調査に基づき,分布が想定される群落ごとに,可能な限
り複数地点設定する。
④ 土壌調査地点は,植生調査に基づき,分布が予想される土壌分類ごとに,可能な
限り複数地点設定する。
⑤ 調査地域,地点等の設定に当たっては,必要に応じて概査を実施し,現地の概況
を把握する。
<植物相調査>
・調査地域は,影響が想定される地域として,事業予定地とその周辺100 m程度を基
本とする。ただし,地形や植生等からみて,事業予定地と一体性の高い地域,表流
水や土砂の流動により影響が及ぶと想定される下流域等については,調査地域を拡
大して想定すること。
・調査ルートは事業予定地全体にわたって,地形,植生等の条件から想定される生育
環境を網羅するよう設定する。特に岩角地,崖地,崩壊地,湿地,水辺地等の特異
な立地については,注目すべき種の生育の可能性が高いことから,必ずルートに含
める。
<植生調査>
・調査地域は植物相調査に準じる。
・現地植生調査の調査区は,概況調査結果,空中写真判読,地形図判読等より想定さ
れる植物群落について,1区分につき1~5程度の調査区を設定する。広面積わた
る区分については,多くの調査区を設定する。
-308-
<土壌調査>
・調査地域は,植物相調査に準じる。
・土壌調査のルート及び地点は,植生,地形・地質等に応じて設定する。
<注目種,注目群落,大径木,景観上すぐれた樹木・樹林等の調査>
・抽出した個体,種,群落等の一般的な生育条件等から分布の可能性の高い場所を想
定し,詳細な踏査を行う。
・生育環境については,対象の特性に応じ分布地及びその周辺について調査を行う。
・土壌,水象(表流水,地下水),水質等について,それぞれの項目に係る調査を活
用することができるが,不十分な場合は,注目すべき植物の分布地に対応して別途
調査地点を設定し,測定等を行う。
<注目種,注目群落の生育環境>
・調査地域は,植物相,植生の調査範囲に準じるが,周辺まで拡大する必要がある場
合もある。
・調査地点は,注目種,注目種の分布地点,その他生育環境条件を把握する上で適切
な地点とする。
<環境保全機能>
・調査地域は,植物相調査に準じる。
・調査地点の設定は行わず,全域に関して推定を行う。
<緑視率>
・緑視率の調査地点は,周辺地域の緑視率を適切に把握できるよう,事業予定地周辺
の路上の代表地点に設定する。
(4)調査期間等
① 年間を通じた状況を把握できる期間とするが,生育状況や生育環境等を把握する
ため,必要に応じて延長する。
② 調査時期は,開花期,結実期,胞子のう形成期等を考慮して設定する。
<植物相調査>
・通常,春,夏,秋の3季各1回以上の調査を実施する。
・植物によっては,適切な時期を逃すと同定や発見が困難な種もあることから,概況
調査結果に基づき,予め地元の有識者等から生物季節に関する情報を入手して時期
を設定する。
・注目種となる可能性のあるものについて識別が困難であった場合には,調査期間を
延長し確認を行うこと。
<植生調査>
・植生調査は,植物の生育が盛んで,かつ種の確認率が高い夏季を中心に実施する。
ただし,季節的に確認可能な時期が限られる群落,十分な調査資料が得られていな
い群落等について,春または秋季に補足調査を行う。
<土壌調査>
・調査の時期は特に選ばない。
-309-
<注目種,注目群落,大径木,景観上すぐれた樹木・樹林等の調査>
・抽出した対象の特性に応じて,最も確認に適する時期を選定する。
・特に重要な対象については,年間を通じた生育環境や生育状況を把握するため,必
要に応じて調査期間を延長する。
<注目種,注目群落の生育環境>
・対象植物の生育の特性,対象とする環境条件の季節変動等を考慮して設定する。
<環境保全機能>
・調査の時期は選ばない。
<緑の量(緑被率・緑視率)>
・調査の時期は,緑の量を適切に把握できる春季から秋季の間に設定する。
16-5 予測
(1)予測内容
直接的・間接的影響による次の項目等の消滅の有無,変化の程度を予測する。
① 植物相及び注目種
② 植生及び注目群落
③ 樹木・樹林,緑の量
④ 保全機能
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域は調査地域に準ずるものとし,原則として直接的影響については事業予定
地内,間接的影響については,事業予定地内及びその周辺とする。
・植物相,植生,保全機能は調査地域全域とし,注目種,注目群落,大径木,景観上
すぐれた樹木・樹林等についての予測は,それぞれの対象の分布地を予測地点とす
る。
・特に,水象及び水質の変化等によって生じる間接影響は,広範囲に及ぶ可能性があ
るため,留意すること。
(3)予測対象時期等
①
原則として工事が完了した時点。ただし,供用による影響は,事業活動が定常状
態に達した時点
・予測対象時期は,原則として工事が完了した時点とするが,保全対策の効果に一定
の期間を要する場合等については,効果が現れる時期等も対象とする。
・供用による影響は,計画されている施設等が全て通常の状態で稼働し,植物が一定
期間を経て安定した時期とする。
・また,工事期間中に特に重大な間接影響が想定される場合は,植物への影響が最も
大きくなると考えられる時期についても予測を行う。
・なお,工事計画において工期・工区が区分され,それぞれの工事が間隔をおいて実
施される場合,又は,施設等の建設が段階的に行われその間隔が長期に及ぶ場合に
は,必要に応じてそれそれの工期・工区又は段階ごとに予測を行う。
-310-
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・注目種,植生の重要度等の現況解析結果と,事業計画の重ね合わせ,及び,事例
の引用・解析
・直接的な改変の程度を踏まえた緑被率等緑の量の算定
・各種機能の算定モデル
・保全対策
<直接的影響>
・植物相の直接的影響に係る予測は,改変区域の植生,地形等の状況及び植物相の特
性から,特定の種群が著しく減少するかなど,植物相全体としての変化の可能性を
定性的に記述する。
・植生の直接的影響に係る予測は,改変区域図と現存植生図及び植生評価図をオーバ
ーレイし,群落別,植生評価別の改変面積,改変率を算定する。
・注目種,群落等の直接的影響に係る予測は,改変区域図とそれぞれの対象の分布図
をオーバーレイし,それぞれの対象ごとに,改変される分布地,改変量,全体の現
現存量(分布面積,個体数等)に占める改変率,活力度や生育条件別の改変面積,
改変率等を算定する。
・植生の環境保全機能の直接的影響に係る予測は,改変区域図と各機能別の機能評価
図,または複数の機能の総合評価図をオーバーレイし,機能別の評価区分別改変面
積,改変率,総合的な機能評価区分別改変面積,改変率等を算定する。
<間接的影響>
・予測条件及び現況調査結果を考慮し,類似事例や学識経験者の意見等を参考にして
予測を行う。その際,類似事例選定の根拠,適用の限界や条件等を明確にする。
・特に,注目種,群落等の間接的影響に係る予測は,事後調査によりその結果を検証
できるよう,生育条件の変化等を極力定量的に予測した結果に基づくよう努める。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 地形改変の範囲,施工方法等
② 湛水する範囲,水位変動等
③ 構造物の配置,規模,構造等
④ 大気,水等の汚染物質の排出状況
2 将来環境条件
① 周辺の土地利用
② 地形,水象等
・直接的影響に係る予測条件として,事業計画による改変区域を明らかにする。その
際,切土・盛土等の区域だけでなく,工事実施のために伐開する範囲等も改変区域
に含める。また,緑化,移植等の復元,代償に係る保全対策は,予測条件として考
慮しても差し支えないが,現状のまま残るものと対策により復元,創出するものは
明確に区分すること。
-311-
・調査地域内で他の事業等により植物に変化を及ぼすことが想定される場合には,そ
の内容を予測条件として組み込むこと。
・間接的影響に係る予測条件は,環境影響要因ごとに,水象,水質,地形・地質等他
の項目の予測結果を踏まえ,想定される環境条件の変化等を明らかにする。
16-6
環境保全対策
事業の実施に当たっては通常土地造成を伴うものであり,これによる改変区域の植物
の直接的影響(消滅)や,生育条件の変化による間接的影響は避けがたいものである。
このため,植物の予測結果に基づき,環境に対する影響緩和の考え方から,積極的に環
境保全対策を検討する必要がある。植物に係る環境保全対策は,次の事項を考慮して適
切に行う。
・注目種,注目群落等のうち極めて価値が高いものが分布する場合は,原則として,
その生育場所を改変区域から除外するとともに,その生育環境の保全に必要な条件
(水象,日照等)を確保するなどにより,将来にわたって残存させる。
・生育環境の確保に必要な条件について技術的対応が可能である場合は,人工的な補
足手段を講じ生育環境の保全を行っても差し支えない。このような例としては地下
水位低下に対する水の注入,伐採地周辺への植栽による日影確保等が考えられる。
・上記以外の注目種,注目群落等については,それぞれの生育場所を最大限残存させ
ることを基本とする。
・これらが困難な場合には,同様な環境条件を有する区域への移植を行う。ただし,
移植は止むを得ない場合の代償的措置として行うものとし,安易に移植に頼らない
よう配慮する。また,移植を行う場合は,移植前の生育環境,移植予定地の生育環
境等について十分な調査を行い,適切な移植地の選定,移植までの適切な準備,移
植後の適切な維持管理及びモニタリング調査を実施する。
・その他,植物相,植生,土壌,保全機能等の影響は,できるだけ影響を小さくする
ことを基本とする。
・なお,具体的な保全対策の例としては,以下のようなものが想定される。
1
回避
・区域の変更,造成計画の変更等により,注目すべき対象の分布地,評価の高い植生
域,保全機能の評価が高い植生域等の直接改変域からはずす。
・植物の立地条件として地下水が重要な意味を持つ場合,地下水位に著しい影響を与
えるような地下構造物,地下工事等を避ける。
2
低減
・区域の変更,造成計画の変更等により,注目すべき対象の分布地,評価の高い植生
域,保全機能の評価が高い植生域等の直接改変部分を極力少なくする,又は核心部
分をはずす。
・造成区域の縮小,区域の変更等により,注目すべき対象植物の立地条件,植生,土
壌,保全機能等の減少,低下等を極力抑える。
・工法の工夫等により,改変区域周辺の工事による改変量を極力抑える。
-312-
・林縁部における植栽(気象害に強い森林育成)等による,改変部と未改変部の境界
の植生への影響を緩和する。
・沈砂池,土止め柵,造成地の早期緑化等による,工事中の濁水の流出や土砂の流亡
による影響を緩和する。
・造成計画の変更,工事計画の変更,採取した土砂の仮置き等により,表土を極力保
全し,緑化等に活用する。
・現存植生,潜在植生等を考慮した植栽及び緑化を行う(改変地から表土も含めた移
植を行う,周辺植生の構成等による緑化を行うなど)。
・大径木等を取り置き,緑化に活用する。
・改変した水辺等について,現在の自然の状態に近い形態での整備を行う。
・残存緑地,造成緑地等の適正な管理を行う。
3
代償
・注目すべき植物の生育地を造成し移植する。
・注目すべき植物を生育適地へ移植する。
・消失した環境保全機能について,必要に応じ代替地の確保,代償的機能を有する施
設の整備等を行う。ただし,施設整備による際は,それによる環境への影響を予測
し,極力影響の少ない方法を採用すること。
16-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・レッドリスト(環境庁)
・仙台市自然環境基礎調査の保全上重要な植物
・国立,国定公園特別地域内指定植物
・仙台グリーンプラン21の緑地の確保の目標,緑化の目標
等
①
影響の回避・低減の観点
・配置,工法等に係る環境保全対策を組み込んだ複数の計画案について,評価項目ご
と及び植物に係る項目総合の予測結果を比較することにより,事業者が実行可能な
範囲において最大限の回避・低減が図られているか否かを判断する。
・複数案及び複数の項目の予測結果に基づく影響の大きさの比較は,現況の評価結果
(重要度)と改変量を掛け合わせた数値の総和等の定量的指標を設定することが望
望ましいが,定量的な指標の設定が困難な場合は影響の大,中,小といった定性性
的な比較でも差し支えない。その際,複数ある評価項目や注目すべき対象のうち,
特に回避・低減を図るべき対象を設定して評価をおこなっても差し支えないが,そ
の場合,その対象,設定の理由等を明確にすること。
・複数案の比較を行わない場合は,その理由及び当該計画案により,十分影響の回避
が図られていることを明らかにすること。
-313-
②
基準や目標との整合
・レッドリスト(環境庁)対象種,仙台市自然環境基礎調査の保全上重要な植物,
国立,国定公園特別地域内指定植物対象種の保全が図られているかどうかを検討す
る。
・仙台グリーンプラン21については,以下の点での整合を検討する。
○都市計画区域内の緑地確保の水準(約30%)が満たされているか
○公共施設や民有地の緑化の目標が達成されているか
○「積極的に保全すべき緑地」,「保全に配慮すべき緑地」の保全が図られるか
○緑化重点地区の方針に整合しているか
・以下のような自然環境の保全を目的とした法令等による指定地域等の保全が図られ
ているか。
○自然公園(公園計画等との整合にも留意)
○県自然環境保全地域,緑地環境保全地域
○風致地区
○広瀬川の清流を守る条例の環境保全区域
○杜の都の環境をつくる条例の保存緑地
○保安林
○その他,自然環境の保全に係る指定地域等
・その他に,以下のような自然環境の保全に係る計画等についても留意する。
○仙台市環境基本計画
○ビオトープ復元・創造ガイドライン
○その他,市,県等が定める自然環境の保全に係る計画等
-314-
16-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての予測対象項目とするが,特に以下のような場
合については詳細に行う。
○代償に係る措置を講じる場合
○特に重要な注目すべき植物への影響が想定される場合(一部改変等を行う場合)
○その他相当程度の影響が想定される場合,予測の不確実性が高い場合等
(2)事後調査の内容
・注目種,注目群落,大径木等の状況及びその生育環境条件
・緑被率,緑視率
・環境保全機能算定の前提条件である環境条件の状況
・事業の実施状況,負荷の状況
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。
・ただし,代償的措置を講じた場合,相当程度の間接影響が想定される場合は,工事
完了後5年間程度を目安に,定期的なモニタリング調査(1年目,3年目,5年目
等)を実施すること。
・植物への影響は,基本的に存在影響が中心であり,これに係る事後調査は事業完了
後が主である。しかし,工事中の影響の未然防止,適正な事業実施の確認のため,
工事中にも適宜事後調査を設定する。
-315-
参
考
植
植生自然度評価基準
生
内
自然度
1
2
容
備
考
市街地,造成地
植生の殆ど残存しない地区
農耕地(水田,畑地)
水田,畑地等の耕作地。緑の多い住宅地
(緑被率60%以上)
3
農耕地(樹園地)
4
二次草原(背の低い草原) シバ群落等の背丈の低い草原
5
二次草原(背の高い草原) ササ群落,ススキ群落等の背丈の高い草原
6
造林地
常緑針葉樹,落葉針葉樹,常緑広葉樹等の植林地
二次林
クリ-ミズナラ群落,クヌギ-コナラ群落等,
7
8
9
果樹園,桑園,茶畑,苗圃等の樹園地
一般には二次林と呼ばれる代償植生地区
二次林
ブナ,ミズナラ再生林,シイ・カシ萌芽林等,
(自然林に近いもの)
代償植生であっても,自然植生に近い地区
自然林
エゾマツ-トドマツ群集,ブナ群集等自然植生
(極相林またはそれに近い のうち多層の植物社会を形成する地区
群落構成を示す天然林)
10
自然草原
高山ハイデ,風衝草原,自然草原等,自然植生
(自然草原・湿原)
のうち単層の植物社会を形成する地区
注)9,10は自然性の高さにおいて同じランク
-316-
参
考
植生の評価の方法
表-1:「自然保護上留意すべき植物群落の評価に関する研究」にあげられている評価項目
沼田案*1
大場案*2
・分布の希少性と限界 ・群落の分布域
性[Ⅰ]
分布特異性
種組織の典型性
群落形態の典型性
要保護植物種の包
含性
動物保謹上の重要
性
自然度
規模の特異性
群落に持続性
(再現可能性)
立地の不安定性
人為的撹乱に対す
る感受性
分布量の将来性
研究上の重要性
保護管理上の特性
コミュニティとの
結合性
有用性
・群集としての特性
[Ⅰ](種の組合せ)
・群落の土着性[Ⅰ]
(外来の帰化植物を
含む程度)
・階層数[Ⅰ]
・植生高[Ⅱ]
・植被率[Ⅲ]
……………
……………
中西案*3
・群落の分布域
[国]
・分布の限界性
[県]
菅沼案*4
・群落の水平分布域
との関係
・群落の分布域との
関係
・群落の分布の希少
性〕
……………
伊藤案*5
・分布の広狭性
[群落]
・群落地の県内ま
たは隣接地での
希少性[群落]
・種組織の完全性
[群落地]
・種組織の完全性
[群落地]
・種の特性
・木本種の進入
……………
・群落の土着性[県]
[草原]
・植栽樹の割合
……………
・種の構成
……………
・群落の階層構造[県] ・階層数と植被率
……………
……………
……………
……………
……………
……………
……………
……………
……………
……………
・高木層の最大木の
……………
……………
DBH[森林]
……………
……………
……………
・高木層の構成樹種数
……………
[森林]
……………
……………
……………
・優占種と亜優占種の被
……………
度の差[草原・荒原]
……………
……………
……………
・優占神の更新[森林] ……………
・構成種の希少性[Ⅰ] ・要保護生物種属の ・希少種の包含性
・貴重種の生育
・貴重種の包含性
[国]
[群落]
包含性
・貴重種の有無・多
少[群落地]
・動物保護上の重要性
・動物保護上の重要
……………
……………
度[国]
・遷移度[Ⅰ]
……………
……………
・森林の遷移状態
……………
・自然度[Ⅰ]
……………
……………
……………
……………
・一団地の面積[Ⅰ] ・群落の占める面積 ・群落構造の空間的 ・群落の占める面積
・隣接群落を含む団
安定性[国]
地の面積[群落地]
・群落の持続性[Ⅰ] ・群落の再現可能性 ・群落の再現可能性 ・群落の再現に要する
……………
(時間的安定性)
[国]
時間
・立地の角度[Ⅰ]
……………
……………
・立地の安定性
・地形の安定性
……………
[群落地]
・立地の特殊性[Ⅱ]
……………
・立地の特殊性[県] ・立地の特性・母岩
……………
……………
……………
……………
・地形
・人為的撹乱に対する感 ・環境汚染・破壊に ・人為的撹乱に対す
……………
……………
受性[Ⅱ]
対する抵抗性
る感受性[国]
……………
……………
・植物群落の将来予 ・現状に近い社会構造
……………
測[県]
で開発が進んだとき
面積または構造の変
化
……………
……………
……………
・学術上(研究対象と
……………
しての重要性)
・目標植生との対応
……………
……………
・群落(途中相)の持
……………
[Ⅱ](管理基準)
続性(管理実態)
……………
……………
……………
・管理体制(法制上の
……………
担保性)
……………
……………
……………
・環境保全上(の重要
……………
性)
・景観上の重要度[Ⅱ] ……………
・景観構成要素とし ・景観上
……………
ての重要性[字]
・畏敬の対象[Ⅱ]
……………
……………
……………
……………
・安らぎ感からみた順位
……………
……………
……………
……………
……………
……………
……………
・利用価値の高い種(園
……………
芸・薬用・食用等)
を企む
出典:「自然環境保全上留意すべき植物群落の評価に関する研究」
(第2回自然環境保全基準調査検討委員会植物群落評価分科会環境庁編,昭和55年12月より作成。)
*1:沼田真案は一次選考(項目に[Ⅰ]を付記),二次選考(項目に[Ⅱ]を付記)の評価項目からなり,一次選考におい
て学術的・自然保護的重要性から抽出された群落について二次選考の評価項目を目的に応じて適用するとしている。
*2:大場達之案はいずれも国レベルの重要性評価。
*3:中西哲案は国,県,字の各レベルの重要性評価に項目を区分している(各項目に[国][県][字]の種別を付記)。
*4:菅沼孝之案は,森林,草原,荒野及び全群落共通との種別に対応して各種目の評価内容を記載している。
*5:伊藤秀三案は,群落の全体を扱う項目と個別の植分(群落地)を扱う項目とに区分している(各項目に[群落][群落
地]の種別を付記)。
-317-
植物群落の評価に関する評価項目ごとの基準例(中西案の場合)
1.群落の分布・生育立地に関する基準
A.分布特異性
・群落の分布域(国レベル注))
1
世界に広く分布
2
日本に広く分布
3
日本のある地方(例えば関東地方等)に限定されるが,ほぼ連続して分布して
いる。
4
日本のある地方,またある特定の立地に隔離的に分布している。
5
日本の1~2カ所に限定
・分布の限界性(県レベル)
1
群落の分布領域の重心部(水平分布と垂直分布の中心部)に当たっている。
2
分布領域の周辺部に当たっている。
3
分布領域の限界近くに当たっている。
4
分布領域の限界(南限,北限,上限,下限)に当たっている。
5
群落の本来の分布領域より相当飛び離れた所に隔離分布している。
B.立地の不安定性
・立地の特殊性(県レベル)
1
壌土
2
埴土,砂土,岩礫地
3
岩崖地,蛇紋岩地,石灰岩地
4
湿地,塩沼地
5
高山,硫気孔原
2.群落の種組成に関する基準
A.要保護植物種の包含性
・希少種(要保護植物)の包含性(国レベル)
1
全く特色がない。
2
分布上多少注目すべき種を含む。
3
分布上地域に特徴的な種を含む。
4
分布限界にある種をいくつか含む。
5
分布の限られた種を多く含む。
B.種組織の典型性
・群落の土着性(県レベル)
1
近年異なったフロラ域(区系区レベル以上の差)から移入された帰化植物を主
体とした群落
2
上記帰化植物を少し含む群落
3
同じ区系区のものであるがその地域には自生していない栽植植物を含む群落。
帰化植物は含まない。
4
その地域の自然の植生から由来した二次的な植物群落
5
その地域の自然の植生で,継代的に同一の土地に存続してきた群落
-318-
3.群落の構造に関する基準
A.規模の特異性
・群落構造の空間的安定性(国レベル)
1
1団地の広さが群落の最小面積の100倍以上
2
群落の最小面積の10~100倍
3
最小面積の2~10倍
4
最小面積か,それよりやや小さい(2倍以下)
5
最小面積より小さい
B.群落形態の典型性
・群落の階層構造(県レベル)
1
本来あるべき階層の多くが欠けている群落
2
本来あるべき階層の一部が欠け,植被率も75%以下を示す。
3
本来あるべき階層の一部が欠けるが,植被率は75%以上を示す。
4
階層はそろっているが,植被率は75%以下を示す。
5
あるべき階層がそろっていて,植被率も75%以上を示す。
4.群落の遷移に関する基準
A.群落の持続性(再現可能性)
・群落再現可能性(国レベル)
1
群落は1年以内に形成される。群落の持続性は1年から数年以内
2
数年内に再現される。自然状態における持続性は数年から10数年程度
3
10数年で再現される。数10年程度の持続性をもっている。
4
20~100年程度(数10年)で再現されうる群落の持続性は数10年から100年以
内である。
5
群落の再現に100年以上を要する。群落は,100年以上持続する能力をもっている。
5.人間活動との係わりによって評価される基準
A.人為的撹乱に対する感受性
・人為的撹乱に対する感受性(国レベル)
1
人為的撹乱によって増大する植物群落
2
直接除去しない限り破壊されない植物群落。大気汚染,水質の富養化などに強
い影響を受けない群落
3
1,2と4,5以外の植物群落
4
貧栄養環境の陸上植物群落
5
水質の化学的変化に鋭敏に反応して破壊される群落。特に貧栄養水域の水中と
沿岸の植物群落(湿原を含む)
B.分布の将来性
・植物群落の将来予測(県レベル)
1
植物群落の量が極めて多くなっているので,激増すると考えられる。
2
量は多くなっているので,増加するであろう。
3
量はほとんど変わってないので,変化しないだろう。
4
量は明らかに少なくなっているので,減少するであろう。
5
その群落は消息不明,または,極めて少なくなっているので将来消滅するであ
ろう。
-319-
C.コミュニティとの結合
・景観構成要素としての重要性(字レベル)
1
地域(字レベル)における群落集団の随伴群落で,最近10数年内にその地域に
出現してきて,景観上マイナスになるような群落
2
地域における群落集団の随伴群落で,景観要素としてはあまり大きな意味をも
たない群落
3
地域における群落集団の中で優占的な群落であるが,景観要素としては普通の
意味しかない群落
4
地域における群落集団の中の標微的な群落で,規模は小さいが景観要素として
重要なもの。時に畏敬の対象にもなる。
5
地域における群落集団の中の標微的な群落で規模も大きく,景観要素として極
めて重要なもの。地域の人々の畏敬の対象となっている。
6.動物の種属保存との関係で評価されるもの
A.動物保護上の重要性
・動物保護上の重要度(国レベル)
1
保護を要する動物の生活にマイナスになる群落
2
保護を要する動物の生活に直接関係のない群落
3
保護を要する動物が,その生活環の一部で依存している複数の植物群落の1つ
4
保護を要する動物が,その生活環において食および住を完全に依存している唯
一の植物群落
5
保護を要する最重要種が,その生活環において食および住を完全に依存してい
る唯一の植物群落
出典:「自然保護上留意すべき植物群落の評価に関する研究」(第2回自然環境保全基準
調査検討委員会植物群落評価分科会報告書)(環境庁編,昭和55年12月)の中西案
をもとに作成
注)なお中西案では,国,県,字の3つの地域レベルに応じて基準項目を分類している。
国レベルでの評価においては,上記の国レベルの基準項目の評点により評価を行い,
県レベルでの評価においては,これに県レベルの基準項目の評点を加えて評価を行う
ものとしている。また字レベルの評価においては,国,県,字全てのレベルの基準項
目の評点の総計により評価を行うものとしている。
-320-
参
考
潜在自然植生の推定方法
<推定の手順>
①-1 対象区域の群落情報の把握
・対象区域内の自然植生,代償植生を構成する全植物群落の種組成と分布(群落組成表
現存植生図の作成),種組成から推定される植生遷移上の位置づけ(自然植生,代償
植生各群落の時系列上の類縁関係)等を把握する。
①-2 対象区域の立地情報の把握
・対象区域内の立地(地質,土壌,日照,風衝等)とその分布(土壌図の作成)を把握
する。
②
現存植生とその立地の対応関係の把握
・①-1,①-2 から対象区域内の群落と立地の対応関係を把握する。
③
対象区域内の各立地に対応する自然植生の推定
・対象区域内の各立地に対応した自然植生を②の結果から推定する。
・但し人為的影響による立地の不可逆な変化(ex:造成による基岩の裸出,ダム建設に
よる河川水位の固定,地下水汲み上げによる水文環境変化等)が生じている場合と,
近未来には自然回復可能な貧化(ex:永年にわたる薪炭林施業による受蝕土*1 の形成
等)とは識別し,後者の場合は回復したものとして自然植生を推定する。
・立地によって対応した自然植生(またはその前生群落*2 にあたることが既知の代償植
生)が対象区域内に残存しない場合,同様の気候・地質等環境条件を持つ周辺地域を
対象に残存する自然植生の種組成・立地等の情報を収集し,推定を行う。
・現況で建築物や舗装道等となっている地点に関する潜在自然植生推定方法には現段階
では定説が無く,表土が存在すると仮定した場合等の前提条件を設けて推定するかま
たは推定不能として保留する等が行われている。
注*1:表土の内,A層またはB層の一部まで消失した土壌。
*2:ある立地の植生遷移において,時系列上,前に成立する群落をいう。因みに
後に成立するものは後続群落という。例えば,ミズナラ林の前生群落はノリ
ウツギ低木林,後続群落はブナ林となる場合等である。
-321-
17 動物
17
動物
17-1 基本的考え方
(1)考え方
動物は,植物や地形等の生息基盤の上に,多様な種が相互に捕食,対立,共存等複
雑な関係を有し,これらが関連した生物社会を形成している。従って,特定の動物種
に着目してその保全を図るということは,その関連する動物群集や基盤となる植物や
地形等を保全することを意味する。この点で,動物は,生物多様性を保全する上で非
常に重要な項目であるといえる。
しかし,動物には哺乳類,鳥類,は虫類,両生類,魚類,昆虫類,節足動物及び軟
体動物等多くの類があり,種の数は膨大な数にのぼるとともに,未だ分類情報さえ明
確でないものも少なくない。さらに,動物は移動するため,調査によりとらえられる
現象は一断面にすぎず,時期,季節,年等による変動が大きい。環境影響評価に必要
な属地的情報,量的情報を取得するには非常な困難を伴うものである。また,一般的
に,既存の動物に関する情報は量的にも精度的にも十分でない場合が多い。このよう
なことから,環境影響評価の中で,動物すべての網羅的な調査を実施することは非常
に困難であり,地域特性に応じて適切に対象や観点を選定すること(スコーピング)
が重要である。
動物の調査対象のスコーピングに当たっては,絶滅の危機に瀕しているような種だ
けでなく,分布特性や立地環境の特異性その他学術的な重要性,地域住民に親しまれ
ている,地域の産業や文化と結びついている等,幅広い観点から注目種を選定する必
要がある。また,動物種(又は種群)の保全を図ることによって,関連する動物社会
や生物社会,さらに,その立地環境の保全を図ることとなるため,動物調査の結果は,
生態系の影響評価における重要な情報となる。従って,生態系の予測評価も念頭にお
いた調査を計画しておく必要がある。
本市は,奥羽山脈から海岸までの広がりを持ち,豊かな森林や清流に恵まれている
ことから,大都市としてはまれにみる豊かな動物相を有している。山地には,イヌワ
シ,クマタカ等の猛禽類やツキノワグマ,ニホンザル,オオルリ,キビタキ,コルリ
等が生息しているほか,泉ケ岳周辺は県内でも代表的な蝶類の生息地となっている。
丘陵部では,オオタカ,ニッコウムササビや,市の鳥であるカッコウ等が生息し,ま
た,ニホンカモシカは山地から丘陵部にかけて広く分布している。さらに,太白山や
権現森,蕃山等は,市街地に近いところで多様な鳥類や昆虫類が見られる貴重な地域
である。海岸部や平野の田園地帯には,多数の水鳥が飛来し,特に蒲生干潟は鳥類の
繁殖地・飛来地として有名である。山地の沢にはイワナやヤマメ,トウホクサンショ
ウウオやカジカガエルが生息し,また,河川ではカワガラスやカワセミ等の鳥類が見
られる。また,広瀬川では市街地に近い急崖にチョウゲンボウが営巣している。
このように,多様な動物に恵まれる本市であるが,森林伐採,湖沼や溜池の埋立,
清流の減少や河川整備,雑木林の管理の低下等,様々な要因が動物の生息環境に影響
を与えている。また,平成6年度に実施した調査では,ここ20年間で,調査した身近
な生き物ほとんどの認識度が低下していた。
-322-
(2)環境影響要素
動物における環境影響要素は,以下のうちから適切に選定する。
環境影響要素
内容,観点
動物相
対象地域の動物相の種構成の概要。
定量的な予測評価を求めるものではなく,あくまで,
概略の定性的な記述のレベル。
注目すべき種
絶滅のおそれがあるなどの希少性,分布や立地環境の
特異性,環境の指標性,特に分布が多い等の優占性等,
主に自然科学的観点から注目すべき種。
また,地域住民の生活に密接に関わる種等。
注目すべき生息地
動物群集の生息地として注目される場所の環境条件,
生息種等。
17-2 事前調査及び地域概況の把握
(1)目的
事前調査は,地域の動物の状況等を把握することにより,立地段階において回避等
の配慮を行うことが必要な対象や地域を明らかにし,事業の早期段階における適正な
環境配慮に資することを目的として実施する。
地域概況の把握(概況調査)は,事前調査の成果を踏まえ,動物のうち何を対象と
して環境影響評価を行うのかを定め,その対象ごとに調査,予測,評価の手法を定め
るとともに,保全対策検討の方針を検討する(以上,方法書に記載する事項)ための
必要な情報を得ることにある。
(2)事前調査の内容
・事前調査では,以下のような対象について,立地段階において回避することが望ま
しい対象の抽出を主な目的として実施する。
・方法は,既存資料の収集,整理を基本とするが,市への聞き取り等により情報の更
新,補完等を行うこと。特に,貴重種の分布や地域の人々に親しまれている動物に
ついては,既存資料は十分ではない場合が多く,事業予定地及びその周辺について
聞き取り調査や現地踏査を行う必要がある。
項目
動物
主な調査対象
注目すべき動物種
調査方法・該当する情報等
・自然環境基礎調査報告書.保全上重要な動物分布
図(保全上重要な哺乳類,鳥類,両生・は虫類,
淡水魚類,昆虫類分布地)
注目すべき生息地
・自然環境基礎調査報告書.保全上重要な動物分布
図(保全上重要な鳥類,両生・は虫類,淡水魚
類,昆虫類分布地のうち重要な地域)
その他事業の立地上
・その他既存資料及ぶ現地踏査による
配慮を要する動物
-323-
(3)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,以下を基本とする。
区分
1 事業予定
概況調査項目
動物相の概要
調査内容
植生や,地形の概況を踏まえた地域の動物相の特
地周辺の動
性,動物相を特徴づける主要な動物種,既存資料
物の概況
による動物種リスト作成等
(事業予定地
を含む広域
2 事業予定
注目すべき動物及
注目すべき種の分布,特性,立地条件等。
び注目すべき動物
動物群集の生息地として注目される場所の位置,
の生息地の状況
環境条件,生息種等。
動物相の概要
植物で作成した1/10,000程度の相観植生図及び地
地の動物の
域の動物相の特性を踏まえた事業予定地の動物相
概況
の概要及び特性
(事業予定地
動物からみた事業
周辺との比較等による事業予定地の動物の重要性
予定地の位置づけ
の観点及び重要性の程度,地域住民との関わり,
とその隣接
事業予定地の改変により影響を受ける可能性のあ
地)
る周辺の動物等
注目すべき動物及
事業予定地において出現する可能性のある注目す
び注目すべき動物
べき動物(種及び個体群)の推定
の生息地
事業予定地における動物群集の生息地として注目
される場所の有無及び環境条件,生息種等の推定
また,関連項目として,動物の観点から以下の事項を把握する。
概況調査項目
調査内容
気象の状況
・動物の生息条件としての気温,降水量,積雪等の状況
地形・地質の状況
・動物の生息条件としての標高,傾斜等地形の状況
水象の状況
・動物の生息条件としての水域の存在,湧水等水象の状況
植物(植生)の状況
・動物の生息条件としての植生の状況
法令等による指定・規
・自然公園,県自然環境保全地域等自然環境保全に係る規制
制等
地域,天然記念物等の状況
・その他県,市の動物の保全に係る計画等
その他
・周辺地域における将来の動物の状態に影響を与えると想定
される開発動向等
(4)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,事業予定地における動物の生息状況の広域的な位置づけが可能
なように,事業予定地を含む5~10km四方程度の範囲を目安として,地形,植生,水
系等環境条件の一体性を考慮して設定する。
-324-
(5)概況調査の方法
概況調査の方法は,以下を基本とする。
概況調査項目
1 事業予定地周辺(広域
)の動物の概況
動物相の概要
調査方法
・既存文献及び地元の研究者等の聞き取りによる
・主な既存文献は以下のとおり
・仙台市自然環境基礎調査(及びその原資料)
・各種学術調査,学術論文等
・市史,市資料
・周辺地域における既存アセス事例等
注目すべき動物及
び注目すべき動物
の生息地の状況
・「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する
法律」の国内希少野生動植物種
・レッドリスト(環境庁)
・「文化財保護法」に基づく天然記念物
・仙台市自然環境基礎調査
・各種学術調査,学術論文等
・県・市資料等
2 事業予定地の動物の概
況
・動物相の概要
・既存資料(空中写真判読含む。),地元の研究者等の
聞き取り及び現地確認による
・現地確認は,冬季以外の時期に1~2日程度
・動物からみた事業予定地
の位置づけ
・注目すべき動物及び注目
すべき動物の生息地
なお,既存資料による情報の利用に当たっては,調査の精度,調査年,対象の選定
理由等を十分吟味して使用すること。
(5)調査結果とりまとめ(事前調査書及び方法書における地域概況の記述)
事前調査書の取りまとめに当たっては,特に以下の点を明らかにする。
①
事業予定地及びその周辺地域において,動物の保全の観点から,事業の立地を回
避することが望ましい地域又は対象
②
事業予定地において,動物の保全の観点から留意すべき事項,又は環境配慮の方
向性
-325-
また,方法書における地域概況の記述例を示すと以下のようになる。
●動物の概況目次例及び作成図表例
1 事業予定地周辺(広域)の動物相及び注目すべき動物の概況
・動物相,注目すべき動物の生息地についての記述。
図:周辺地域の1/50,000程度の注目すべき動物分布図
2 事業予定地の動物からみた事業予定地の位置づけ及び保全上の留意点
・地形,植生の状況を踏まえた事業予定地の動物相の概況(推定)
・周辺の動物の状況を踏まえた動物から見た事業予定地の位置づけ
・想定される注目すべき動物
・想定される注目すべき動物の生息地
(関連項目のうち,動物に関する事項については,概要を記載すること)
・なお,既存資料による動物リストは参考資料として添付すること
17-3
スコーピング
<無植生地以外は選定>
・動物については,自然環境の保全上非常に重要な環境要素であることから,基本的
に無植生地(人為裸地,人工面等)において実施する事業以外は対象とすることを
原則とする。
<細目まで選定,注目すべき動物は具体的に想定>
・スコーピングにおいては,細目の選定まで行う。
・細目の選定については,事業の行為特性よりむしろ立地環境の条件によって行うべ
きものである。概況調査の結果に基づき,必要に応じて専門家の意見を聞いた上で
選定する。
・注目すべき種等については,具体的にどのような種や生息地(群集)に注目しよう
としているかについて,概況調査からの推定結果にもとづき方法書の段階で具体的
な種名等を可能な限り明らかにする。
・なお,注目すべき種等は,調査の過程において,随時必要なものを追加していくこ
ととなる。
<重点化項目,簡略化項目の明確化>
・重点化,簡略化についても,概況調査結果に基づく地域環境特性によるところが大
きく,具体的にどのような動物が対象として想定されるかを検討し,その対象ごと
に,その存続に対して影響を及ぼすような行為の有無,程度を検討することによっ
て判定する。
-326-
環境影響要素
動物相及び注目すべき
選定に際しての考え方
無植生地以外は選定
種
重点化・簡略化
・特に動物相が豊かである,特徴的
である,貴重種が多数存在する等
の可能性がある場合,重点化
・管理草地,集約的利用がなされて
いる農地等,人為的な管理が強い
ところは簡略化
・注目すべき種は,その重要度(絶
滅の危険性の程度等)や分布状況
に応じて重点化,簡略化
注目すべき生息地
同上
・動物群集の生息地としての重要度
に応じて重点化,簡略化
17-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から,必要に応じて適切に選定する。
1 ファウナ(動物相)及び注目種
① 構成種
② 注目種等の分布,繁殖状況,行動圏等
なお,対象は脊椎動物,節足動物とし,必要に応じ他の種についても把握する。
2 注目すべき種の生息環境
① 地形・地質,水象,気象,植生,食草の分布等
3 注目すべき生息地
① 動物群集の生息地として注目される場所の位置,環境条件,生息種等
4 その他
必要に応じて歴史的・文化的背景,地域住民の意識,狩猟・漁業の状況等について
も把握する。
<ファウナ(動物相)>
・動物相の調査においては,全ての種を把握することは困難であることから,動物相
の概要を把握する程度で差し支えない。
・哺乳類のうち,翼手目については,同定するためには捕獲を要することから,地域
環境の特性に応じ,専門家の意見を聞きつつ,必要に応じ実施する。
・生態系の予測評価に資するよう,繁殖鳥類等適切な種群を対象とし,事業予定地内
の環境条件(環境単位区分)に対応した種構成及び個体数(構成比)の把握を行う。
※
生態系との関連で,小水系と相観植生等により,あらかじめ環境単位区分を
行い,環境単位内にセンサスルートや罠区を設定,環境単位ごとの特性把握を
行う。
-327-
この時の調査対象は,区分した環境単位の大きさとその環境の指標性を勘案
しつつ,現地での同定や個体数のカウントが容易な種群,トラップ等条件を統
一した調査が可能な種群を選定する。例としては以下のようなものがあげられ
るが,地域特性,調査者の技能等に応じ適切に選定すること。また,対象とす
る種群により生息空間の大きさが異なることから,環境単位の区分や調査地点
の設定は,種群に応じ適宜変更することが可能である。
○繁殖鳥類(ラインセンサス,テリトリーマッピング等)
○蝶類(鳥類と同様のラインセンサス等)
○水域におけるトンボ類,水生昆虫(目視観察,採集)
○小型ほ乳類,歩行性昆虫(トラップ)
○その他,時間及び方法を統一した採集等
<注目種>
・当初計画では,方法書でスコーピングを行った対象について,それぞれの種に応じ
た調査を企画する。
・動物相の調査結果により,適宜必要な対象を追加し,その対象に応じた調査を実施
する。
・選定した種について調査地域内における分布(又は行動圏,主たる移動経路等),
繁殖の有無及び繁殖場所(営巣位置等)を把握する。この場合,事業による影響の
種類の特定及びその程度の推定が可能なように,対象とした動物が調査地域内のど
の場所にどの程度分布しているのか,あるいは,どの場所をどのように利用してい
るのか等,場所と対応した情報が必要となり,また,その情報は,概略の生息数や
生息密度,利用密度又は高密度利用域等,極力量的な把握が必要である。その際,
季節による分布域の変化についても把握する。
・重点化した調査を実施する場合等必要に応じ,生息数,飛来の状況,繁殖状況等の
経年的な変化についても把握する。
<注目すべき種の生息環境>
・生息環境については,動物は移動性があるため,予測において確認位置の情報だけ
では適切な予測ができない。そのため,生息環境の把握が重要である。対象種の分
布や行動圏,繁殖状況等の調査結果,及び既存の知見より,生息環境としての条件
を推定し,当該条件について調査を実施する。具体例としては,植生との対応,食
草その他餌となる生物の分布,営巣木や産卵床等営巣地や繁殖場所となる条件の分
布,水質・水温・水深その他水域の条件,その他高密度利用域の物理的環境条件の
解析等があげられる。
-328-
(2)調査方法
① 既存文献及び聞き取り調査等の結果を踏まえ,現地調査により把握する。
② ファウナは,調査ルート・調査地点等における調査を行い,種の同定を行い,行
動を記録するとともに,環境の状況を把握する。その結果から,注目種を選定し,
選定した種の特性に応じ,分布,繁殖状況,行動圏等についての詳細な調査を実施
する。
③ 対象地域における注目すべき種,注目すべき生息地の選定は,既存文献,専門家
等の聞き取り調査等により抽出する。その際,地域で親しまれていたり採取対象と
なっている動物についても把握する。
④ 生息環境の状況は,植物,地形・地質,水象等の調査結果を活用するとともに,
必要に応じて調査を実施する。
⑤ 歴史的・文化的背景,狩猟,漁獲等の状況は,聞き取り調査等により把握する。
<動物相>
・動物相調査は,事業予定地の動物相全体像を把握し,注目すべき種等の選定を適切
に行うためのものである。
・既存文献及び地元の専門家への聞き取り等からある程度動物相の予想を立てた上で,
予想される動物に適した方法により,現地調査を実施する。動物の場合,対象とす
るものにより調査の方法が異なる。以下の主な動物相調査手法を参考として,これ
らを適宜組み合わせて実施する。
・なお,調査手法の選定に当たっては,調査による環境影響を極力少なくするよう配
慮する。
・調査の信頼性を確保するため,必要に応じて標本または写真,確認地,確認方法,
確認日,確認者名等の情報を提出できるよう整理しておくこと。
・調査結果のとりまとめに当たっては,以下の点に留意する。
○哺乳類,鳥類等の区分ごとに,動物目録を作成する。目録作成に当たっての和名
及び配列は,「日本産野生生物目録」(環境庁,1993)を基本とする。
○科,種別の集計表を作成する。なお,種数が多い昆虫類については,準備書等の
本編中には集計表のみを記載し,目録は資料編とする。
○事業予定地の動物相の特徴を記述する。記述に当たっては,既存文献による周辺
地域の状況や,事業予定地の植生,地形,水系等との対応に留意する。
○取りまとめ方法の例等については,「自然環境アセスメント技術マニュアル」
(自然環境アセスメント研究会,1995)を参照。
-329-
主な動物相調査の方法
対
象
調査の方法
内
容
備
考
哺乳類相 大・中型哺乳類 フィールド
可能な限り詳細に踏査し,フィールドサイン
主に秋季~春季
サイン法
(糞,足跡,食痕,巣,爪痕,クマ棚の生息痕
足跡の確認には積雪期。活動個体の目視や,
跡)により,生息する種を確認する。
死体等もこの結果として扱う。
小型哺乳類(ヒ トラップ法
餌をつけた小型はじき罠や,生け捕り可能な
主に秋季~春季
ミズ類,ネズミ
ライブトラップを1~数晩設置し,捕獲,確認
他に,トガリネズミ等食虫類はバケツ程度の
類等)
する。代表的な環境条件(植生)に複数区の罠 容器を地トラップ,モグラ類はモールトラッ
区を設置し,通常各罠区20~50個のトラップを プ,ヤマネはセキセイインコ用等の巣箱を用い
設置する。
る。なお,モグラについては,モグラ塚による
確認も可能
コウモリ類
鳥相
かすみ網等
洞窟の入り口や森林の開けたところに,かす
み網を設置し,捕獲,確認する。
夏季を中心
かすみ網による捕獲は,洞窟性のコウモリに
は適用が容易であるが,森林性のコウモリは捕
獲自体に困難が予想される。コウモリについて
は既存情報が非常に少なく,調査全般に困難が
予想される。
行 動 圏 の 広 い ラインセン
予め設定したセンサスルート上を歩き,一定
特に季節は問わないが,季節ごとに生息する
ワ シ タ カ 類 を サス法
範囲内に出現する鳥類を姿や鳴き声により識 鳥類が異なるため,各季節に実施することが望
除く鳥類全般
別,種別の個体数をカウントする。
ましい。
環境特性に応じてルートを設定するが,多く
早朝に実施
の環境が1ルート内に含まれるような設定は避
環境条件(ルート)間の比較に適する手法で,
けることが望ましい。
鳥相の把握には,センサス時やルート以外の踏
査等による補完が必要
湖 沼 等 観 測 距 ポイントセ
予め設定した,センサスポイントにおいて,
特に季節は問わないが,季節ごとに生息する
離の遠い場所
ンサス法
地上型望遠鏡等を用いて観察し得る鳥類を主に 鳥類が異なるため,各季節に実施することが望
姿で識別し,種類別個体数をカウントする。
ましい。
ワシタカ類の行動圏調査もこれに準じた手
法で,飛翔経路,時間等を記録する。
爬虫類, 爬虫類,両生類 直接観察
両生類相 全般
魚類相
昆虫相
可能な限り詳細に踏査し,各種の生体,卵,
幼生を確認する。
春季~秋季
両生類では,特に,各種の繁殖期が適する。
卵,幼生等はその数量も記録しておくこと。
全般
網等による
投網,たも網,セルびん等対象とする種や水
特に季節は問わないが,降下・遡上を行う魚
捕獲
域の特性に応じた用具により捕獲し,確認する。 類の生息が考えられる場合には種の特性及び
他に釣りによる方法もある。
環境条件に応じて適切な時期を設定する。魚類
については,特に管轄の漁協等の聞き取りが重要
全般
潜水観察
全般
任意採集,
対象地域を踏査しつつ,スウィーピングやビ
昆虫の活動時期として,春季~秋季に予想さ
直接観察
ーティング等の方法を用いて採集するか,直接 れる種の出現時期に応じて複数回実施する。
観察により種を確認する。
スウィーピングは捕虫網を水平に振り草本
や花の上の昆虫をすくい取る方法,ビーティン
グは樹上の昆虫を棒でたたき落とし白布で受
け採集する方法,他に,石や倒木を起こして採
集する方法,河川の水底の昆虫をサーバーネッ
トでとる方法等がある。
調査者が水中で魚類を直接観察し,種の確認
特に季節は問わないが,降下・遡上を行う魚
及び個体数のカウントを行う。
類の生息が考えられる場合には種の特性及び
環境条件に応じて適切な時期を設定する。生息
密度推定の資料としても活用できる。
夜行性昆虫(蛾 ライトトラ
夜間,白布のスクリーンに光を投射し,誘引
多くの種の確認には夏季が適する。ただし,
類 や コ ウ チ ュ ップ法
される夜行性昆虫を採集し確認する。投射光に 季節によって構成種が異なるため春季~秋季
ウ類,カメムシ
は,ブラックライト等の蛍光管を用いるのかよ に複数回実施することが望ましい。
類等)
い。
地表徘徊性昆
虫等(オサム
シ・ゴミムシ
類,アリ類等)
ベイトトラ
ップ(ベイ
ティッドピ
ットホール
トラップ)
法
糖蜜や腐肉等の誘引餌(ベイト)を入れたト
多くの種の確認には,夏季~初秋季が有効。
ラップ(プラスチックコップ等)を,口が地表 ただし,季節によって構成種が若干異なるため
面と同じになるように埋設し,落ち込んだ昆虫 春季~秋季に複数回実施することが望ましい。
を採集し,確認する。代表的な環境条件(植生)
に複数の調査区を設置し,通常各調査区20~50
個のトラップを1~数晩設置した後に回収する。
-330-
<注目すべき種,注目すべき生息地の選定>
・注目すべき種及び注目すべき生息地の選定に当たっては,概況調査及び動物相調査
の結果に基づき,レッドリスト対象種等の希少な種,その他学術上重要な種,地域
社会において住民の生活と密接な関わりのある種等を抽出し,その選定理由を明ら
かにする。
・その他学術上重要な種の選定においては,生態系の予測,評価を念頭におき,生態
系の上位に位置する種や環境の指標となる種等についても選定しておく。
・抽出に当たっては,確認種のうち上記の基準に合致するものであっても,動物相調
査における確認頻度,確認季節等を勘案し,繁殖の有無等より調査地域が当該種の
生息に重要な意味を持つと想定されるものに絞り込みを行う。特に,移動性の大き
い鳥類について,単に飛来したのみと考えられるものについては除外することがで
きる。
・注目すべき種及び注目すべき生息地の抽出において参考となる観点及び資料は以下
のとおり。
○希少な種・群集
*種の保存法における国内希少野生動植物種
*レッドリスト(環境庁)対象種
*天然記念物の指定を受けている種,群集
*仙台市自然環境基礎調査の保全上重要な動物
○学術上重要な種・群集
*分布限界種(南限,北限,隔離分布)
*基準標本種,固有種
*高山,湿原等特異な環境に依存する種
*猛禽類等,生態系の上位に位置する種
*良好な環境を指標する種
*人為的攪乱に対して感受性が高い種
*その他,学術上重要な種
○その他希少な種,学術上重要な種等関連資料
*第2回自然環境保全基礎調査動物調査のうち,両生・は虫類,指標昆虫,特定
昆虫(「第2回自然環境保全基礎調査 動植物分布図」(環境庁,1981))
*その他,学術調査報告書,論文,市資料等
なお,これらの既存資料の使用に当たっては,選定理由等について十分な検討
を加える必要があるとともに,現状では変化している可能性も高いことから,
専門家の意見等を聞いた上で,慎重な取扱いが必要である。
○生活と密接なかかわりのある種・群集
*食用に供される,特産品の原料となる種
*その他,地域住民に親しまれたり大切にされている種・群集
○注目すべき生息地
*注目すべき種が多数生息している地域
*多様な種が生息している地域
-331-
*渡り鳥の集団渡来地等動物の生息環境として重要な地域
等
<注目すべき種等の状況>
・抽出した対象について詳細な現地調査を行い,主に生息数又は生息密度等に関する
情報及び分布又は利用状況に関する情報を把握する。なお,ここでの調査内容は,
対象種の特性に応じ,予測,評価に有効と考えられるものを適宜選定する。
・この段階の調査は,動物相の調査より詳細な精度のものとなる。そのため,動物相
調査を終えてから,その結果を踏まえ調査を計画することが理想的ではあるが,概
況調査結果からの想定と動物相調査の結果を随時フィードバックすることにより,
動物相調査と同時に実施することが可能である。
・生息数や生息密度,分布や利用状況等に関する情報は,分布域の回避,より利用頻
度の高い場所や良好な生息場所の回避といったかたちで予測,評価に活用する。ま
た,生息数に関する情報は,将来のモニタリング(事後調査)の初期データとして
も重要な意味を持つ。
(分布又は利用状況)
*分布については,対象種の生息条件等から,生息の可能性のあるところについて
動物相調査より詳細に踏査等を行い,分布地を記録する。その際,可能な限り,
後に示すような方法で,生息数又は生息密度の把握に努める。
*営巣地,産卵地,採餌,ねぐら,対象種の保全上特に重要な場所について,分布
と同様,詳細な踏査等を行い,記録する。
*その他,どの場所をよく利用しているか,通り道はどこか等,利用の状況を把握
し,相対的に利用頻度が高い場所を明らかにする。
*利用状況の調査の方法としては,定点観察,痕跡調査等がある。重点的な調査を
行う場合等には,小型発信器の装着といった手法も考えられる。
(生息数又は生息密度等)
*直接観察によるカウント。例:ホタルの個体数,カエルやチョウの卵(卵塊)の
数等
*区画等を用いたカウントと全体数の推定。例:河川の魚類の数,哺乳類の定点観
察等
*糞や痕跡からの推定。例:哺乳類等。生息数の推定が困難な場合は,区画等の中
の痕跡の密度をもって相対的な生息密度とする。
<注目すべき種等の生息環境>
・抽出した種の特性及び事業特性を勘案し,生息環境についての調査を行う。調査に
当たっては,特に以下のような観点に留意し,対象に応じた項目を検討する。
○餌となる動植物の分布。可能な場合その量。特に,チョウのように食草が限定さ
れるものについては,動物そのものの分布域を詳細に調査するより食草の分布を
明らかにするほうが,予測,評価には有効な場合が多い。
○営巣木,産卵場その他営巣,繁殖の場となる条件について,現地調査により分布
を明らかにする。
○無機的生息環境条件。特に,河川等の水深,流速,水温,湧水位置等,水の条件
に留意する。
-332-
○その他,分布状況や行動圏の調査結果と,植生その他環境条件の関係性の解析等
○これらの調査は,植生,水象等の調査結果を適切に活用するとともに,必要に応
じ個々の現地調査,測定等を実施する。
(3)調査地域等
①
調査地域は,事業予定地及びその周辺において,動物に対する影響が想定される
地域とし,植生,地形,水系等を考慮して設定する。
② 調査ルート又は地点は,既存文献,地形図,航空写真等に基づき,植生の分布状
況や地形,水系等を勘案し,調査地域を適切に把握できるよう設定する。
③ 調査地域,地点等の設定に当たっては,必要に応じて概査を実施し,現地の概況
を把握する。
<動物相>
・調査地域は,一般的には,面開発の場合は周辺約 200m程度,道路等線開発の場合
は周辺約 500m程度を対象とすることが多い。ただし,概況調査により周辺地域に
影響を受けるおそれのある動物の生息が想定される場合には,それを含むよう設定
するものとし,特に河川等の水生生物については影響が一般的な設定より広域にわ
たる可能性があることに留意する。
・なお,中大型哺乳類や猛禽類その他鳥類等への影響が想定される場合には,広域的
な現況を把握しておく必要があるが,動物相調査全体を広域について実施すること
は,調査量が膨大になる可能性が高いため,注目すべき種や注目すべき生息地を対
象とした調査として広域の調査を計画することが望ましい。
・調査ルート及び調査地点の設定は,植生(相観植生等概略の区分で可),地形(標
高の相違にも留意),水系等を考慮し,調査地域内の様々な環境条件を網羅するよ
う設定する。その際,踏査可能な場所はできるだけもれなく対象とする。
・なお,生態系の項目において,動物調査結果を活用する事を想定する場合は,生態
系の環境単位区分に対応した調査ルート,調査地点を設定する。そのような手法の
例としては,調査地域の小流域区分に,必要に応じ植生の特性により補足的な区分
を設けたものを生態系の環境単位とし,環境単位ごとに鳥類のセンサスルートを設
定するといったことが考えられる。
<注目すべき種,注目すべき生息地>
・抽出した種・群集の一般的な生息条件等から分布の可能性の高い場所を想定し,詳
細な踏査を行う。
・生息環境については,対象の特性に応じ分布地及びその周辺について調査を行う。
・植生,地形,水象(表流水,地下水)等について,それぞれの項目に係る調査を活
用することができるが,不十分な場合は,注目すべき動物の分布地に対応して別途
調査地点を設定し,測定等を行う。
・猛禽類,中・大型哺乳類等行動圏の大きい動物を対象とするときは,動物相の調査
地域より,適宜調査地域を拡大する。
・また,特に分布が限定されているような種を対象とするときは,必要に応じ周辺地
域における個体群の状況についても対象とし,地元の専門家等の聞き取りを行う。
-333-
(4)調査期間等
①
年間を通じた状況を把握できる期間とするが,生息環境や繁殖状況等を把握する
ため,必要に応じて延長する。
② 調査時期は,繁殖期,渡り等の季節変動等を考慮して設定する。
<動物相>
・一般的に,四季及びそれぞれの対象動物の繁殖期を考慮した時期とするが,想定さ
れる対象動物に応じ,選定した手法ごとに,最も適切かつ効率のよい時期を選定す
る。具体的には,「主な動物相調査の方法」の備考欄を参考のこと。
<注目すべき種,注目すべき生息地>
・抽出した種等の特性に応じて,最も確認に適する時期を選定する。
・なお,特に重要な対象については,年間を通じた生育環境や生育状況を把握するた
め,必要に応じて調査期間を延長する。
・ただし,動物の発生や繁殖の時期については,地域による変動や年による変動が大
きいことから,地元の専門家や住民の聞き取り,現地の状況等を踏まえ,適宜,柔
軟な対応を必要とする。
17-5 予測
(1)予測内容
直接的・間接的影響による次の項目等の消滅の有無,変化の程度を予測する。
① 動物相
② 注目すべき種・群集
・動物相の変化については,主に直接的改変により,特定の動物相の大幅な減少や消
失がないかどうかといった,定性的な記述とする。
・予測の中心は,注目すべき種・群集に対するものとし,これらについては,直接的
改変のみならず,可能な限り間接的影響についても予測を行う。
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域は調査地域に準ずるものとし,原則として,直接的影響については事業予
定地内,間接的影響については,事業予定地内及び事業予定地周辺地域とする。
・動物に関する予測は,予測地点を設定しての予測にはなじまない。
・特に,水象及び水質の変化等によって生じる間接影響は,広範囲に及ぶ可能性があ
るため,留意すること。
(3)予測対象時期等
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 原則として工事が完了した時点。ただし,供用による影響は,事業活動が定常状
態に達した時点。
・工事中の間接的影響については,工事による動物への影響が最も大きくなると考え
られる時期とする。
・存在による影響については,原則として工事が完了した時点とし,保全対策の効果
-334-
等に一定期間が必要な場合については,効果が現れる時期も対象とする。
・供用による間接的影響については,計画されている施設等が,全て通常の状態で稼
働し,動物が一定期間を経て安定した時期とする。
・動物への影響は,工事開始直後に最も大きくなる場合も多く,また,動物の繁殖期
等,特に留意を要する時期が存在する場合は,その時期にも留意する。
・なお,工事計画において工期・工区が区分され,それぞれの工事が間隔をおいて実
施される場合又は施設等の建設が段階的に行われ,その間隔が長期に及ぶ場合には,
必要に応じてそれそれの工期・工区又は段階ごとに予測を行う。
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・注目種の生息密度,行動圏等の現況解析結果と事業計画の重ね合わせ及び事例の
引用・解析
・保全対策
<直接的影響>
・動物相の直接的影響に係る予測は,改変区域の植生,地形等の状況及び動物相の特
性から,特定の種群が著しく減少するかなど,動物相全体としての変化の可能性を
定性的に記述する。
・注目すべき種,注目すべき生息地の直接的影響に係る予測は,改変区域図とそれぞ
れの対象の分布図等をオーバーレイし,それぞれの対象ごとに,改変される分布地,
改変量,全体の分布面積や個体数等に占める改変率等を算定する。
<間接的影響>
・予測条件及び現況調査結果を考慮し,科学的知見,類似事例,学識経験者の意見等
を参考にして予測を行う。その際,類似事例選定の根拠,適用の限界や条件等を明
確にする。また,保全対策を講じることにより影響を回避・低減する場合について
は,保全対策の記述により予測に代えることができる。
・特に,注目すべき種,注目すべき生息地の間接的影響に係る予測は,事後調査によ
りその結果を検証できるよう,生息環境条件の変化等を極力定量的に予測した結果
に基づくよう努める。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 地形改変の範囲,施工方法等
② 湛水する範囲,水位変動等
③ 構造物の配置,規模,構造等
④ 大気,水等の汚染物質の排出状況,騒音の発生状況
⑤ 工事用機械等の稼働状況
2 将来環境条件
① 周辺の土地利用
② 植生,地形,水象等
-335-
・直接的影響に係る予測条件として,事業計画による改変区域を明らかにする。その
際切土・盛土等の区域だけでなく,工事実施のために伐開する範囲等も改変区域に
含める。また,緑化,移殖等の復元,代償に係る保全対策は,予測条件として考慮
しても差し支えないが,現状のまま残るものと対策により復元,創出するものは明
確に区分すること。
・調査地域内で他の事業等により動物に変化を及ぼすことが想定される場合には,そ
の内容を予測条件として組み込むこと。
・間接的影響に係る予測条件は,環境影響要因ごとに,植物,水象,水質,地形・地
質,騒音等他の項目の予測結果を踏まえ,想定される環境条件の変化等を明らかに
する。
17-6
環境保全対策
事業の実施に当たっては通常土地造成を伴うものであり,これによる改変区域の動
物の消滅や逃避,生息条件の変化による間接的影響は避けがたいものである。このた
め,環境に対する影響緩和の考え方から,以下の考え方にそって適切に環境保全対策
を検討する必要がある。
・注目すべき種や生息地のうち極めて価値が高いものが存在する場合は,原則として
その場所を改変区域から除外する。
・上記以外の注目すべき種等については,それぞれの生息場所,生息環境を最大限残
存させることを基本とする。
・これが困難な場合には同様な環境条件を有する区域(新たに生息環境を整備する場
合を含む。)への移殖を行う。ただし,移殖は止むを得ない場合の代償的措置とし
て行うものとし,安易に移殖に頼らないよう配慮する。移殖を行う場合は,移殖前
の生息環境,移殖予定地の環境等について十分な調査を行い,適切な移殖地の選定,
移殖までの適切な準備,移殖後の適切な維持管理及びモニタリング調査を実施する。
・広域の生息環境を有するものについては,生息環境の広域的な連続性を確保するた
めに,樹林等を適切に残存させる。やむを得ず,生息環境分断する場合は,樹林等
の復元・再生を行う。
1
回避
・区域の変更,造成計画の変更等により,注目すべき種の分布地や注目すべき生息地
等を直接改変域からはずす。
・動物の生息条件として地下水が重要な意味を持つ場合,地下水位に著しい影響を与
えるような地下構造物,地下工事等を避ける。
2
低減
・区域の変更,造成計画の変更等により,注目すべき種の分布地や注目すべき生息地
等の直接改変部分を極力少なくする,又は核心部分をはずす。
・造成区域の縮小,区域の変更等により,注目すべき動物の生息環境の減少,悪化等
を極力抑える。
・工法の工夫等により,改変区域周辺の工事による改変量を極力抑える。
-336-
・工事の騒音の低減に努めるとともに,猛禽類の繁殖期における工事を避ける等,必
要に応じ工事工程の調整を行う。
・水質の汚濁による水生生物への影響を低減するため,排水場所の変更,排水の高次
処理,農薬・肥料等の使用量の低減等を行う。
・工事中の濁水の発生を,適切な沈砂池の設置等位により抑えるとともに,工事中の
影響の回避が困難な場合は,必要に応じて,工事中の水生生物の避難を行う。
・植栽及び緑化を行うことにより減少した生息環境を修復する。ただし,その場合,
導入する樹種は周辺環境に存在する樹種にあわせる等十分留意し,動物の生息環境
の攪乱や変化が生じないようにする。
・構造物等により,動物の移動経路を分断する場合は,対象動物に応じた移動路を確
保する。ただし,その場合,現況の移動経路の状況の詳細な調査,対象動物が利用
しやすい構造の検討を行う。利用しやすい構造の検討に当たっては,類似事例の調
査や移動実験等により,利用が可能であることを明らかにすること。
・改変した水辺等について,現在の自然の状態に近い形態での整備を行う。
・残存緑地,造成緑地等の適正な管理を行う。
・工事中及び供用後において,ごみの放置,不適切な管理等による野生生物への影響
が生じないようにする。
・工事中及び供用後において,人工光による野生生物への影響が生じないよう,不必
要な照明は行わないようにするとともに,明るさに配慮する。
3
代償
・やむをえず改変する注目すべき動物を生息適地へ移殖する。
・注目すべき動物の生息環境を造成し移殖する。
・やむをえず改変する注目すべき動物の生息環境の代わりに同等以上の環境を確保し
保全する。
17-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか。
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか。
・レッドリスト(環境庁)
・仙台市自然環境基礎調査の保全上重要な動物
等
①
影響の回避・低減の観点
・配置,工法等に係る環境保全対策を組み込んだ複数の計画案について,評価項目ご
との予測結果及び動物総合の予測結果を比較することにより,事業者が実行可能な
範囲において最大限の回避・低減が図られているか否かを判断する。
・複数案及び複数の項目の予測結果に基づく影響の大きさの比較は,現況の評価結果
(重要度)と改変量を掛け合わせた数値の総和等の定量的指標を設定することが望
ましいが,定量的な指標の設定が困難な場合は,影響の大,中,小といった定性的
な比較でも差し支えない。その際,複数ある評価項目や注目すべき対象のうち,特
に回避・低減を図るべき対象を設定して評価をおこなっても差し支えないが,その
-337-
場合,その対象,設定の理由等を明確にすること。
・複数案の比較を行わない場合は,その理由及び当該計画案により,十分影響の回避
が図られていることを明らかにすること。
②
基準や目標との整合
・レッドリスト(環境庁)対象種,仙台市自然環境基礎調査の保全上重要な動物の保
全が図られているかどうかを検討する。
・動物保全に関連して,以下のような自然環境の保全を目的とした法令等による指定
地域等の保全が図られているか。
○自然公園(公園計画等との整合にも留意)
○県自然環境保全地域,緑地環境保全地域
○広瀬川の清流を守る条例の環境保全区域
○天然記念物
○鳥獣保護区
○国有林における保護林,自然維持林,その他保全を図ることとしている森林
○その他,自然環境の保全に係る指定地域等
・その他に,以下のような自然環境の保全に係る計画等についても留意する。
○仙台市環境基本計画
○ビオトープ復元・創造ガイドライン
○その他,市,県等が定める自然環境の保全に係る計画等
17-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての予測対象項目とするが,特に以下のような場
合については詳細に行う。
○代償に係る措置を講じる場合
○特に重要な注目すべき種や生息地への影響が想定される場合
○その他相当程度の影響が想定される場合,予測の不確実性が高い場合等
(2)事後調査の内容
・予測評価の対象とした種,群集等の状況(分布,個体数等)
・上記に係る生息環境の状況
・事業の実施状況,負荷の状況
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。ただし,一定期間定期的なモニタリ
ング調査(1年目,3年目,5年目等)を行うこととし,その期間は,繁殖が確認
されるまでを基本とする。
-338-
18 生態系
18
生態系
18-1 基本的考え方
(1)考え方
生態系は,環境影響評価法で新たに導入された要素である。従来,自然環境につい
ては,植物,動物,地形・地質,景観という項目で扱ってきた。しかしながら,この
ように個別の項目で実施する環境影響の評価には,限界がある。さらに,植物や動物
の項目では,どうしても希少であるなど貴重性の観点が中心となるとともに,個々の
種の分布地の議論だけにとどまりがちで,生物相互の関係や生息・生育環境との関係
についての考察には至りにくい。
そこで,これら自然環境の総合評価的な視点が必要であるとの考え方から,生態系
が項目として導入された。生態系の環境影響評価においては,次の2点に留意するこ
とが特に重要である。
まず第一には,生態系では,生物種間及び非生物環境(生息・生育環境)との関係
性に注目する。従来の植物,動物の項目は,主に単独の種に着目し,植物,動物を分
けてとらえてきた。これに対し,生物種間の相互関係,さらに,地形・地質や水象等
の非生物環境との相互関係に着目することに生態系導入の意義がある。すなわち,動
植物を中心とした自然環境の総合評価的意味を有する。
第二には,貴重な自然の保全だけでなく,地域を代表する自然の保全の観点を重視
する。従来の植物,動物では,学術的観点や希少性などから貴重な自然に主に着目し
てきた。生態系では,貴重な自然だけでなく,地域のありふれた自然の保全や生物多
様性の保全に着目することに意義がある。
しかしながら,生態系の環境影響評価に当たっては,技術的な面で困難な課題があ
る。生態系は,複雑かつ階層性を有するものであるが,現在の研究レベルでは,生態
系そのものの予測評価を行うだけの知見は十分ではない。そこで,環境影響評価にお
ける生態系では,生態系そのものを解明するという考え方ではなく,生態系的観点か
ら調査,予測,評価を行うという考え方をとる必要がある。
なお,環境影響評価法では,生態系に関して,「地域を特徴づける生態系に関し,
植物及び動物の調査結果等により概括的に把握される生態系の特性に応じて,生態系
の上位に位置するという上位性,当該生態系の特徴をよく表すという典型性及び特殊
な環境等を指標するという特殊性の観点から,注目される生物種等を複数種選び,こ
れらの生態,他の生物種との相互関係及び生息・生育環境の状態を調査し,これらに
対する影響の程度を把握する方法その他の適切に生態系への影響を把握する方法によ
る。」という手法が示されている。ただし,これはあくまで手法の一例として示され
たものであり,今後,個々の案件を通じて手法の確立を図っていこうとするものであ
る。
また,従来自然環境についての調査がリストを中心とした定性的なものにとどまり
具体的な予測評価が事実上ほんど実施されなかったという反省に立ち,極力定量的な
調査を実施し,試行的にでも可能な限り定量的な予測評価を行っていくことが重要で
ある。
-339-
(2)環境影響要素
生態系の環境影響要素は,地域を特徴づける生態系とする。
環境影響要素
地域を特徴づける生態系
内
容
上位性,典型性,特殊性等の観点から地域を特徴づける生
態系の地形基盤条件の変化,周辺の生態系との連続性等の
変化,注目種に代表される生態系の構成種等の変化
18-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,地域の生態系をどのような観点から把握し
ていくかを定め,かつそのために必要な調査,予測,評価の手法(保全対策検討の方
針を含む)を定める(以上,方法書に記載する事項)上で必要な情報を得ることにあ
る。
そのため,地域の動植物,地形・地質,水象の状況等から,地域の自然環境が総合
的に見てどのような特性をもっているかについて把握する必要がある。
(2)概況調査の項目
概況調査では,生態系の項目選定や調査,予測,評価の手法の検討を行う上での背
景となる認識を明らかにしておく必要があることから,自然環境の総合的な状況とい
う観点に立って,地域の生態系の特性について記載することとする。ただし,生態系
についての既存資料は現時点では十分ではないため,②以下の関連調査項目について,
生態系の観点から必要な情報を把握しておく。
概況調査項目
①地域の生態系の特性(自
然環境の総合的な状況)
・事業予定地を含む広域の
状況
・事業予定地の状況
②地形・地質,水象,気象
調査内容
・地形・地質,水象,気象等の状況を踏まえ,動植物の
状況の総合的な特性。
・生態系の基盤となっている環境条件の特性,自然性あ
るいは人為との関わりの程度,生態系を特徴づけるよ
うな立地環境・種・種群等に留意する。
・生態系の基盤としての非生物環境の特性,特徴的な立
地環境等
③動植物
・動物相,植物相の特徴,自然性や多様性の観点からみ
た特性,最も普通にみられる種・種群,特徴的な種・
種群等
④法令による指定・規制等
の状況
・自然公園,県自然環境保全地域等自然環境保全を目的
とした地域の指定状況
・その他県及び市の環境基本計画等における自然環境保
全の目標,当該地域の位置づけ等
⑤その他
・自然環境に影響を与えていると想定される人口,
産業,土地利用等
・将来自然環境に影響を与えると想定される開発動向等
-340-
(3)概況調査の範囲
概況調査の範囲は,動植物その他自然環境に係る概況調査の範囲と基本的にあわせ
ることとし,事業予定地を含む5~10km四方程度の範囲を目安として,地形,植生等
環境条件の一体性を考慮して設定する。
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,既存文献等によるものとし,必要に応じ専門家等の聞き取り,
現地確認を行う。
概況調査項目
①地域の生態系の特性(自
調査方法
・地形・地質,水象,気象,動植物等の概況調査結果に
然環境の総合的な状況)
・事業予定地を含む広域の
基づき把握。必要に応じ,専門家等の聞き取り。
・事業予定地の状況については,既存文献等から広域的
状況
な状況を把握した上で,必要に応じ事業予定地の植生
・事業予定地の状況
や土地利用その他の現地確認,専門家等の聞き取りに
より,その特性を推定する。
②地形・地質,水象,気象
・それぞれの項目の概況調査結果
③動植物
・それぞれの項目の概況調査結果
・必要に応じ現地確認,専門家等の聞き取り
④法令による指定・規制等
・県,市資料の収集,整理
の状況
⑤その他
・地形図,都市計画図,その他市資料等既存文献の
収集,整理等
・開発動向については,市への聞き取り
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
●地域の生態系の特性(自然環境の総合的な状況)の記述内容及び作成図表例
1 事業予定地周辺(広域)の生態系の特性
・当該地域における自然環境の総合的な状況とそこにおける事業予定地の位置づ
けを記述。
2 事業予定地の生態系の特性
・植生・土地利用等からみた事業予定地の自然環境の総合的な状況の推定
3 生態系の留意点
・上記の内容及び関連する②から⑤の内容を勘案し,事業予定地周辺における生
態系を保全する上での留意点を記述(②から⑤の関連事項のうち,生態系に係
る内容については概略を記述すること)
-341-
18-3
スコーピング
<植物・動物と連動>
・生態系は,動植物等自然環境を総合的にとらえるという視点から実施する項目であ
るため,基本的に植物,動物と連動させることとし,無植生地(人為裸地,人工面
等)において実施する事業以外は対象とすることを原則とする。
<生態系の着眼点を具体的に想定>
・生態系は,階層性を有する非常に複雑なものである。従って,すべての生態系,あ
るいは生態系を構成するすべての生物や要素を対象とした調査や予測は不可能であ
る。そこで,環境影響評価を行うに当たって,主に着目する観点や対象を決めてい
く必要がある。従って,方法書作成の段階での手続を有意義なものにするには,こ
の段階で可能な限り生態系をとらえる着眼点又は具体的対象を明らかにしておくこ
とが重要である。
・着眼点等の選定については,事業の行為特性よりむしろ立地環境の条件によって行
うべきものである。概況調査の結果に基づき,必要に応じて専門家の意見を聞いた
上で選定する。
・この段階で,環境影響評価法で採用しているような,ある種又は種群又は生息地を
選定することが望ましいが,その場合,単に種名のみをあげると,個々の種に対す
る影響評価を行うかのように誤解されるおそれがあるため,どのような生態系を代
表するものとして選定したのかをわかりやすく示す必要がある。
例:○ナラ林等を中心とした森林の生態系,渓流の生態系,湿地を中心と
した生態系,ススキ等の草地の生態系等(環境条件の均質性に着目)
○農地・斜面林一体の谷の生態系,丘陵部の森林の生態系,周辺の山地か
ら連続するより広域の生態系(生息空間としてのまとまりにに着目。生
態系は,重層性,階層性に着目し,事業予定地の中で完結する小規模な
まとまり,隣接地との連続性による中程度のまとまり,より広域のまと
まりといった点に着目)
○オオタカを頂点とする生態系,ホタルを指標とした水辺の生態系,繁殖
鳥類を指標とした森林生態系,○○池の生態系
等(指標とする種,種
群,又は生息地に着目)
・一方,事業特性では小規模な事業や線状の事業では一般的に生態系に関する調査・
予測も,また保全対策の検討も,事業区域内だけでは論じられない場合が多い。従
って,これらの事業においては,周辺環境との関係,連続性の確保といった点に特
に着目した生態系のとらえ方が重要となる。
<重点化項目,簡略化項目の明確化>
・重点化,簡略化については,生態系そのものを重点化,又は簡略化するかという観
点と,上記で述べた生態系の着眼点等を選定した場合にはそのうちどの着眼点等を
重点化,簡略化するかという観点がある。
-342-
・点化,簡略化についても,概況調査結果に基づく地域環境特性によるところが大
きい。都市地域においては簡略化することができる。一方,自然性が高い地域にお
いては,動植物の注目すべき種や群落等の観点からの環境影響評価を適切に実施す
ることにより一定程度の保全が期待されるが,二次林や植林地,二次草原,中・低
層湿原等の田園的環境については,地域のありふれた自然や多様性等の生態系の観
点が特に重要となり,丘陵地域や田園地域において重点化を検討する必要がある。
・なお,生態系の着眼点についての重点化,簡略化を行うということは,事業実施に
当たってどのような観点から生態系の保全を図っていこうとしているのかについて
の,事業者の考え方を明らかにするものである。
・種等の選定に当たっては,指標とする種と動植物の貴重種が重複する可能性がある。
両者の相違を明確にするためには,生態系では極力貴重種を避けることが望ましい
が,重複しても問題はない。動植物の貴重種と生態系の指標種は,それをとりあげ
る意図が全く異なるが,個々の種の保全においてもその生息・生育環境を保全する
ことを考えると,調査内容としては実態的には区分し難いものである。厳密にどち
らに入れるべきかといったことより,どこかで対象としていればよいと考えること
が適当である。
環境影響要素
地域を特徴づける
生態系
選定に際しての考え方
重点化・簡略化
・植物,動物の選定と連動さ
・都市地域,管理草地や集約的利
せることとし,原則として
用がなされている農地等人的な
無植生地以外ではすべて選
管理が強いところでは簡略化が
定
可。
・丘陵地域,田園地域では重点化
を検討。
18-4 調査
(1)調査内容
植物,動物の結果より,上位性,典型性,特殊性等の観点から地域の生態系を特徴
づける種等を選定し,その種等を中心とした生態系の特性を把握するため,以下の項
目から必要に応じて適切に選定する。
1 選定した種の分布,生態等
2 地域を特徴づける生態系の生物間の関係性
① 食物連鎖,餌生物の分布,現存量等
② 生物間の寄生・共生関係
③ 生物間の競合関係
3 地域を特徴づける生態系の基盤となる非生物環境
① 地形・地質,水象,気象等の状況
4 周辺の生態系との関係,連続性
・地域の生態系への影響を予測・評価する上で着目する種等を選定するに当たっては,
地形,土壌,水系,植生等に着目し,地域の生態系が基盤としている環境単位を区
分(以下,環境区とよぶ)し,それぞれの環境区の代表,あるいは環境区のまとま
-343-
りやつながりの観点から,指標とする種等を選定することが望ましい。
・これは,予測等のための指標種選定を論理的に行うための基礎となるものであると
ともに,事業による生態系への影響を概略的に把握するための材料ともなる。
・このような生息・生育環境を区分する概念は,景観生態学で用いられる概念に類似
しており,その中では,地形や土壌等の無機環境はゲオトープ(あるいはフィジオ
トープ)とよばれ,これに生物要素(ビオトープ)を加えたものはエコトープとよ
ばれる。
・このような区分に当たっては,動物に関する情報は,面的な情報の作成が困難であ
るため使用することは難しい。動物については,このような環境区を区分した後に,
それぞれの特性の把握において,対応関係を整理することとする。
・なお,このような環境区の区分については,概況調査の段階で概略設計し,生態系
の調査,予測,評価手法の設定の根拠とすることが望ましい。
(2)調査方法
①
植物,動物,地形・地質,水象等の調査結果や,既存文献等により把握するとと
もに,必要に応じて現地調査を実施する。
<調査の考え方全般について>
・生態系は,動植物等自然環境の総合の視点としていることから,地形・地質,水象,
植物及び動物等の調査結果を解析し,必要に応じ生態系としての補足調査を実施す
ることとする。
<地域の生態系が基盤とする環境単位の区分>
・生態系の調査,予測及び評価の前提条件として,地形,土壌,水象,植生等により
環境区の区分を行い,当該地域がどのような環境区から成り立っているか,各環境
区はどのような特性を有しているのかを把握する。
・区分に当たっては,生物の生息・生育環境として重要な意味を持つ環境条件に着目
する。一般的には,以下の組み合わせにより区分することが考えられるが,調査地
域の特性により,適切な条件を選定すること。
○地形(地形分類:地形・地質において作成)
○土壌(土壌分類:植物において作成)
○水象(水域(河川,湖沼,海域):水象で作成。他に地下水位,流域区分等)
○植生(現存植生:植物で作成)
・このうち,水象については,他の3条件とは若干位置づけが異なる。水域について
は,他の条件とは重ねず,別途とらえるほうがわかりやすい場合もある。その場合,
河川であれば,必要に応じ,河床勾配,河川形態等で細区分する。
・生態系には階層性があり,数㎡程度の小生息空間やさらに微小な生息空間から,数
十~数百km2にわたる大生息空間まで様々であるが,環境区に区分に当たっては,実
務的には,1~10ha程度の大きさを目安に,調査地域の広さや環境条件を勘案し,
調査地域内を数個から十数個程度の環境区に区分することが調査を実施しやすいと
考えられる。ただし,環境区を大きく設定する場合には,その中に存在する小規模
で特異な環境単位等の存在に留意し,内包される小環境単位について記述する必要
-344-
がある。
・環境区ごとの特性として,類型,立地,大きさ,区分に用いた地形等の環境要素の
状況,主な動植物の構成種,中に内包する特異な小環境単位等について整理する。
<地域の生態系を特徴づける種等の選定>
・地域を特徴づける生態系の把握及び影響予測を行うために,地域を特徴づける指標
種を設定し,その指標とする種等を中心に生物間の関係性や,非生物環境との関係
性等を解析・把握する。
・指標とする種等は,単独の種だけではなく,カエル類といった種群に着目したり,
池などの生息場所とそこに生息する生物群集に着目するという場合も想定される。
・抽出に当たっては,生態系の上位性,典型性,特殊性等の観点から複数抽出する。
なお,これらはあくまで抽出の観点であって明確に定義あるいは区分されるもので
はない。また,必ず3つの観点から抽出しなければならないというものでもない。
・その際,先に実施した環境区区分を勘案し,小さな生息環境のものから,計画地の
みならず周辺地域を含む広域を生息環境とするものまで,生態系の階層性を考慮する。
上位性:生態系の上位に位置する種。その種の存続を保障することが,おのず
と多数の種の存続を確保することを意味するもの。
典型性:当該地域の生態系の特徴をよく表す種,環境指標種(種群),キース
トーン種等。貴重種ではないありふれた種に特に着目する。
特殊性:特異な立地環境を指標する種,生活の重要部分を他の生物に依存する
種等。
・上位性の観点からは,食物連鎖の上位にある種のうちから,地域の生態系の特性を
とらえる上で適切,かつ,当該種又は餌生物の調査が容易であるものを選定する。
その場合,必要に応じ陸域と水域に分けて設定する。
例:猛禽類(イヌワシ,クマタカ,オオタカ等)
カワセミ,カイツブリ等
・典型性の観点からは,地域の主要な環境条件の指標として適切な種又は種群を選定
する。典型性の観点からの種の選定に当たっては,「ビオトープ復元・創造ガイド
ライン」(仙台市,1998)のふるさと種等も参考とする。
例:ニホンカモシカ,タヌキ,森林性鳥類群集等
ブナ林,コナラ林等
イワナ等渓流魚,トンボ類,カエル類,ホタル類等
・特殊性の観点からは,特殊な環境条件に依存する種(群)又は特殊な環境条件を呈
している生息場所(生物群集),その他当該地域の生態系の特殊性を形成している
種等を選定する。
例:トウホクサンショウウオ,ハッチョウトンボ等
<選定した種の分布,生態等>
・選定した指標種,又は種群の分布状況を把握するとともに,その繁殖行動,採食行
動,生活史等の生態について,一般的な知見を踏まえ,当該地域における状況につ
いて調査する。
-345-
<地域を特徴づける生態系の生物間の関係性>
・動植物相調査でリストアップした種をもとに,特に地域の生態系を特徴づける指標
種等に着目して,既存の知見や現地調査で得られた情報等に基づき,食物連鎖や寄
生・共生等の扶助関係,競合や緩衝関係等,生物種(群)間の相互関係を推測し,
図等に整理する。
<地域を特徴づける生態系の基盤となる非生物環境>
・地域の生態系を特徴づける指標種及びその存続を左右する生物種の生息・生育環境
の一般的条件を把握するとともに,必要に応じ当該地域における地形・地質,水環
境(河川,湖沼,海域,地下水の水質,水量,水温等),微気象等,その生育・生
息を規定する非生物環境について調査し,その状況を把握する。
<周辺の生態系との関係,連続性>
・調査地域では完結しない広い生息・生育空間を有する生物の生息・生育状況に着目
し,調査範囲を越えたより広域の自然環境との関係性を整理する。
・特に,大型哺乳類や猛禽類等の生息に着目する場合,周辺環境との連続性等(どの
範囲を利用しているか,移動路はどこか,森林等が物理的にどのように連続してい
るか等)が重要である。また,都市地域や田園地域では,生息環境が既に相当程度
人為影響を受けており,核となる生息空間と移動路等の緑地の連続性に特に留意す
る必要がある。
・また,周辺の生態系と物理的に連続していない場合であっても,生物の利用の面か
ら関係性をとらえておく必要がある場合もあるので留意すること。
(3)調査地域等
① 調査地域は,事業予定地及びその周辺において,生態系に対する影響が想定され
る地域とし,選定した種の特性,植生,地形,水系による環境のまとまり等を考慮
して設定する。
・生態系では,原則として植物,動物その他自然環境に係る調査結果を活用すること
としているため,調査地域等については基本的に植物,動物の調査範囲に準じて設
定する。
(4)調査期間等
① 年間を通じた状況を把握できる期間とするが,生息環境等を把握するため,必要
に応じて延長する。
② 調査時期は,動植物の季節変動等を考慮して設定する。
・生態系の調査を実施する場合は,植物,動物の調査の実施状況及び結果を踏まえ,
指標種その他の生態や当該地域における動植物の季節変動等を踏まえ,専門家や地
元の聞き取り等を行いつつ適切な時期を設定する。
-346-
18-4 予測
(1)予測内容
直接的・間接的影響による次の項目等の変化の程度を予測する。
① 地域を特徴づける生態系の地形等基盤条件の変化,周辺の生態系との連続性等の
変化
② 注目種に代表される生態系の構成種等の変化
・生態系そのものの変化の予測は,現在の知見においては実施が困難であるため,生
態系の基盤条件の変化や周辺の生態系との連続性等の変化,注目種に代表される生
態系の構成種等の変化の程度を予測することをもって生態系の予測にかえる。
・①は,生態系の基盤条件である,地形,土壌,植生,水象等の条件の変化及びそれ
に伴う調査で区分した環境区の変化について予測する。
・②は,これを踏まえ,指標として選定した種等に着目し,その種等の生育・生息状
況の変化,これらと関連する種との関係性の変化等について予測する。
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域は調査地域に準じる。
・小規模な生態系に着眼する場合,環境条件の変化を予測する必要がある場合などに
は,予測地点を設定する。設定に当たっては,環境条件の変化を適切に把握できる
地点とする。
(3)予測対象時期等
① 原則として工事が完了した時点。ただし,供用による影響は,事業活動が定常状
態に達した時点
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・指標とする種等の生育・生息環境解析結果と,事業計画の重ね合わせ及び事例の
引用・解析
・保全対策
<地形等,生態系の基盤条件の変化>
・地形,土壌,水質,水象等,生態系の基盤条件の変化を,現況調査結果と事業計画
の重ね合わせ等により予測する。
・これらの変化は,直接的改変による影響が大きいが,河川流の変化や海域の流況の
変化等については間接的影響も勘案する。これらの予測は,基本的に各項目の予測
結果を用いることとする。逆に,生態系で必要となる事項については,各項目で予
測しておくことが必要となる。
・上記の結果を受けて,環境区の変化について,主に以下のような観点から予測する。
○調査地域内の環境区区分の変化(将来の環境区区分図を作成する方法等による。)
○その結果,調査地域内で消滅する,あるいは著しく減少する環境区の類型(環境
区の類型ごとの変化量等を明らかにするなどの方法による。)
-347-
○その結果,調査地域内での環境区どうし,あるいは周辺の環境との連続性等に生
じる変化(配置等から定性的に予測する。)
<注目種に代表される生態系の変化>
・直接的改変及び水環境の変化等間接的な環境条件の変化により,指標種とその他の
生物種の関係性の変化,指標種の生息・生育を規定する環境条件の変化等について
極力定量的に予測する。
・上位性から食物連鎖に着目する場合は直接的・間接的影響による餌生物量の変化,
捕食者・被捕食者のバランスの変化等を予測する。
・典型性,特殊性のうち特殊な環境の指標という観点から抽出した種については,直
接的影響,間接的影響による指標種の生息・生育を規定する環境条件の変化を予測
する。なお,調査において複数の環境条件が抽出できた場合,それらの相互関係,
重要度等を整理しておき,その重要度等に応じた変化量を数量的に表すといった手
法もある。
・その他,特異な生物間の関係等については,直接的・間接的影響による指標種等の
減少の程度,指標種の生息・生育を規定する環境条件の変化の程度等を予測する。
・ここで,事業計画との重ね合わせにより予測する直接改変とは,指標とする種その
ものの確認地や分布地ではなく,これらの種等の生息上重要な地域(餌場等の重要
な行動圏や営巣可能地等)や,関係する種(餌生物等)の生育・生息環境に対する
改変の程度をさすことに留意する必要がある。
・水環境の変化等の間接的な環境条件の変化は,各項目の予測結果によることを基本
とするが,この段階の予測では,より詳細な予測を必要とする可能性が高い。必要
に応じ,各項目の手法を参考に,詳細な予測を実施する。
・環境条件や餌生物等関係する種に対する直接的,間接的影響が,指標とする種にど
のように影響するかについては,類似事例や既存の知見等から推定する。
・海域の生態系については,モデル化の検討もかなり行われており,必要に応じモデ
ル等を用いた予測を行う。
・なお,生態系に関する予測手法については,現段階では試行的なものであり,今後,
調査・予測・評価や事後調査等の事例の積み重ねにより,手法の充実を図っていく。
また,指標とする種を用いた手法以外の手法を用いることも可能であり,参考とし
ていくつかの考え方を示す。
-348-
参考
対
象
生態系の影響評価手法の考え方の比較
評価の基本的考え方
調
査
予
測
特徴,課題等
技術指針に示した手法 ・地域の動植物の特性を踏 ・既存資料,動植物の結果を ・地形,植生等の直接改 ・予め指標とする種の例示
(生態系を代表しうる まえ,地域を代表する生 踏まえ現地調査
変の状況等から,指標と を行うなどにより,動植
種を選定)
態系への影響を把握す 1.上位性,典型性,特殊性 する種の生息・生育環境 物の調査時に生態系を想
るのに適した複数の種 の観点から複数の指標とす の変化の程度等を予測
定した調査を実施するな
を選定し,これらの種と る種等を選定
・その結果及び事例の引 ど,ある程度の簡略化は
の関連において生態系 2.指標とする種等の分布, 用又は解析等により,指 可能
を調査・解析し,影響を 生態,他の生物種との関係, 標とする種の生息状況 ・指標とする種としては,
予測する。
基盤となる非生物環境,周 又は指標とする種と他 「ビオトープ復元・創造
・種の選定の観点は,上位 辺との関係。連続性等を調 の生物種との関係性の ガイドライン」のふるさ
性(生態系の上位),典 査例.
変化等の程度について, と種等を活用
型性(環境指標種,キー ・餌生物の量
複数の案を比較
・動植物の項目で対象とす
ストーン種等),特殊性 ・共生又は競合関係にある
る事項との仕分けが必要
(特異な立地環境を指
生物の生息状況
標)。
・水温,地下水位,相対照
度等生息・生育条件
生態系の基盤に着目した環境単位区分により予測評価する方法
①多様な生態系の ・生態系の基盤に着目して ・地形・地質,動植物等の結 ・地形,植生等の直接改変 ・この中では,最も簡略な
確保
環境単位に区分し,現在 果について以下の解析
による,環境単位ごとの 手法
(生態系の基盤の 存在している環境単位 1.地形・地質,(できれば 改変の程度を予測
・環境単位の区分の方法(ど
タイプ分け)
の種類を減らさないと 土壌も),河川・湖沼,植 ・その結果により,失われ の程度のスケールとする
いう観点から評価する。 生等により環境単位に区分
てしまう環境単位の有 か,どのように線を引く
・すなわち,現在ある環境 2.環境単位ごとに,主な動 無,環境単位の相互関係 か等)か課題であり,個々
の多様性を将来的にも 植物の構成種を整理
等から著しい影響を受 のケースに応じ適切な手
確保しようとするもの。3.環境単位相互及び周辺環 ける環境単位の有無等 法を検討することが重要
境との関係等を整理
について複数の案を比
較
②重要な生態系の ・生態系の基盤に着目した ・地形・地質,動植物等の結 ・地形,植生等の直接改変 ・重要度をどのように評価
確保
環境単位ごとにその重 果について以下の解析
による,環境単位ごとの するかが重要で,一般に
(生態系の基盤の 要度を評価し,重要な環 ・必要に応じて現地調査
改変の程度を予測
は,種の多様性の観点が
ランク付け)
境単位への影響の回避, 1.上記の1~3
・その結果より,重要度評 適当か
低減の観点から評価す 2.上記の解析結果により, 価別の改変量について ・観点については示してお
る。
環境単位ごとに重要度の評 複数の案を比較
く必要があるが,具体的
・すなわち,重要な生態系 価
な評価の手法は個々に検
を将来にわたってでき 評価の観点の例.
討することが重要
るだけ保全しようとす ・種の多様性
・環境単位ごとの評価のた
るもの。
・貴重種の出現数
めには,動植物の調査に
・重要性をどのような観点 ・地域の生態系としての典
おいて予め環境単位ごと
で行うかにより,めざす
型性(典型地域の種構成
のデータがとれるような
ところが変わる。
との類似度)
調査計画とするか,又は
別途環境単位ごとの調査
が必要
③指標種への影響 ・基盤の改変による生態系
(事後のモニタリ への影響の程度を,指標
ングを想定した 種を用いて把握する。
指標種設定) ・この手法は,予測評価の
段階より,事後のモニタ
リングに重点をおくも
ので,これ単独ではな
く,①又は②の手法と併
用する。
・地形・地質,動植物等の結 ・地形,植生等の直接改変 ・自然環境については,確
果について以下の解析
による,注目すべき生態 実な予測は困難であり,
1.上記の1~3
系の改変の程度を予測
事後調査等を通じて知見
2.環境区又は注目すべき生 ・その結果及び事例の引用 を蓄積していくことが重
態 系ご とに指 標種 を選 定 又は解析等により,指標 要(その点で,事後のモ
(指標種はできるだけ貴重 とした種の分布範囲,分 ニタリングを重視した手
種でないもの)
布密度の変化,消滅の可 法)
3.指標種の分布範囲,分布 能性等について推測
・技術指針の指標種とは差
密度等を整理,又は調査
別化(この手法の場合,
指標種により予測をしよ
うというのではない)
注目すべき生息・生育 ・生息・生育環境(ビオト ・地形・地質,動植物等の結 ・地形,植生等の直接改変 ・調査地域全体についての
環境を抽出
ープ)として注目すべき 果により抽出した生息・生 による,生息・生育環境 各種条件の重ね合わせに
(注目すべきビオト 場所を地形・地質や動植 育環境について現地調査
の改変の程度を予測
よる環境単位区分は行わ
ープを抽出し,そこに 物の調査結果等により 1.植物,動物,地形・地質 ・その結果及び事例の引用 ず,その点を簡略化する
ついて調査)
抽出する。
等の状況から注目すべき生 又は解析等により,生物 代わりに,注目すべき場
・これについて,動植物, 息・生育環境を抽出
種の構成,生息・生育状 所について,詳細に調査
地形・地質,土壌,水環 2.植物,動物の出現種,生 況の変化等について予 するもの
境その他の調査を行い, 息・生育状況,密度等につ 測
・注目すべきビオトープを
注目すべき生息
いて現地調査により把握 ・その結果及び周辺におけ 予めキーワードとして示
・生育環境に対する影響を 3.生物種の生息・生育環境 る同様の自然の存在状 しておく必要あり(キー
予測,評価する。
の状況を現地調査により把 況等より,適切な保全が ワードをあまり限定的に
・どのようなところを注目 握
図られているかについ すると,該当するものが
すべき生息・生育環境と 4.既存資料等により,周辺 て複数の案を比較
ないので検討しないとい
して選定するかが重要。 地域における同種の自然の
った対応が想定される)
存在の状況を把握
-349-
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 地形改変の範囲,施工方法等
② 湛水する範囲,水位変動等
③ 構造物の配置,規模,構造等
④ 大気,水等の汚染物質の排出状況
2 将来環境条件
① 周辺の土地利用
② 地形,水象等
・事業計画のうち,地形改変の範囲には,工事中のために改変する部分を含むこと。
・将来環境条件のうち,周辺の土地利用では,当該事業以外の開発計画による改変の
可能性,将来の開発による新たな保全対象の可能性等について留意する。
・間接的な影響については,基本的に他の項目の予測結果を受けて予測条件とするが,
その場合においても前提条件は明確にする。
18-6
環境保全対策
生態系の保全対策については,以下のような考え方を参考に,保全の対象とする種
又は種群等の特性,地域特性,及び事業特性(特に事業の敷地規模や残置する森林の
面積等)に応じ,適切な手法を選択すること。
1
回避・低減
・指標とした種等に応じて,生息環境条件,行動圏,餌生物量その他依存・競合等の
関係にある生物の量等に着目し,指標種等の保全を図る。(改変の回避,低減等)
・指標とする種等の生息環境の総体を将来にわたり維持可能な規模で保全する。
・指標とする種等の餌生物量の確保が可能な規模の緑地を保全する。
・指標とする種等の生息環境の主要な要件を明確にし,その要件に係る環境要素を保
全する。
・指標とする種等の生息環境の核となる一定程度の規模の緑地と周辺環境との連続性
を確保することにより保全する。
・事業予定地内のみで指標とする種等の生息環境の確保が困難な種等にあっては,生
息環境の連続性を確保することにより保全する。
2
代償
・影響の回避・低減がどうしても困難な場合,同一の場所で生息空間を復元する。
・影響の回避・低減がどうしても困難な場合,生息空間の条件を新たに形成する。こ
のとき,特に基盤となる環境条件の形成が重要である。基盤となる環境条件を全く
新たに創出することは困難が大きく,たとえば類似の基盤条件を有する表土ごとに
移殖するといった手法を検討するほうが望ましい。
・代償措置については,自然環境の創出は困難を伴うものであることを十分に認識し
た上で,事業者が将来にわたって担保できる場所において検討する。
・代償措置の検討に当たっては,「ビオトープ復元・創造ガイドライン」(仙台市,
1998)を参考とすること。
-350-
3
その他の配慮
・ごみ,餌付け等による,野生生物の生活習慣の質的変化の防止
・動植物の外部からの直接的,間接的移入による,在来種への影響,遺伝子の攪乱等
の防止
・既に都市化が進んでいる地域等における,小規模生息空間や移動路等の確保による
生息空間の創造・改善等
18-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
①
影響の回避・低減の観点
・土地利用及び施設等の配置計画,造成計画,工法等,主に生態系への存在影響に係
る複数の計画案を比較し,生態系への影響の回避,低減の程度を検討する。
②
基準や目標との整合
・生態系についての基準や目標は現在のところ特にないが,以下のものと整合してい
るかどうかを記述する。整合していない場合,できるだけ達成するよう保全対策を
検討する。
○県,市における環境基本計画等に掲げる自然環境保全の目標,方針等
○自然公園の特別地域,自然環境保全地域等自然環境保全に係る指定地域等の保全
-351-
18-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての予測対象項目とするが,特に以下のような場
合については詳細に行う。なお,生態系は,現時点で既存資料が不足しており,調
査や予測の手法も確立していないことから,事後調査の実施と,その結果の活用が
非常に重要である。
○生物間の相互関係に相当程度の影響が想定される場合
○代償に係る措置を講じる場合
○生態系を重点化項目として選定した場合等
(2)事後調査の内容
・選定した指標種等の状況(分布範囲,種構成,個体数等)
・指標種等とその他の生物種の関係
・指標種等に代表される生態系の基盤となる非生物環境(水質,水象,気象等)の状
況
・事業の実施状況(直接的な改変の区域,必要の応じて,水質,騒音等関連する環境
負荷の程度)
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。
・ただし,代償的措置を講じた場合,相当程度の間接影響が想定される場合は,工事
完了後5年間程度を目安に定期的なモニタリング調査(1年目,3年目,5年目等)
を実施すること。
・生態系の影響は,基本的に存在影響が中心であり,これに係る事後調査は事業完了
後が主である。しかし,工事中の影響の未然防止,適正な事業実施の確認のため,
工事中にも適宜事後調査を設定する。
-352-
19 景観
19
景観
19-1 基本的考え方
(1)考え方
景観は,人間を取り囲む地形・地質や植生,動物,建築物,土地利用等環境の総体
の,主に視覚を通した認識である。
景観については様々な学問分野において異なる定義,とらえ方がなされているが,
本市の環境影響評価における「景観」は,見られる対象と見る人間との相互関係によ
って成立する,視覚的印象としてとらえる。ただし,山岳や河川等によって構成され
る自然的な景観だけでなく,土地利用や街並み等によって構成される生活空間の景観
も対象とする。また,特定の視点からの眺めだけではなく,道路からの景観のように
連続した景観や,視点が特定できないような地域全体の印象としての景観も対象とす
る。
ここでは,人の興味対象となるような「景観」(視覚的印象)の図を形成するもの
を「景観資源」とよび,そのうち,地形や植物,河川等の自然の構成要素であるもの
を自然的景観資源,街並みや建造物等の人工的なものを文化的景観資源とよぶが,田
園景観のようにこれらが一体となったものもあり,自然的景観資源及び文化的景観資
源の区分は便宜的なものである。一方,特定の地点からの眺めを「眺望」とよび,こ
のうち,不特定かつ多数の人が眺望に利用する地点を「主要な眺望地点」,また,そ
こからの眺めを「主要な眺望」とよぶ。
本市は,奥羽脊梁山地から海岸まで,渓谷や磐司岩等の多様な地形,高山植物やブ
ナ林,広瀬川をはじめとする清流,優美な海岸線等,多様な自然景観に恵まれている。
一方,現在では大都市となった本市も,もともとは城下町や集落が基本単位となって
成長してきた町であり,地域地域の歴史的文化的所産や市街地を取り囲む緑の眺め,
人と自然の長い歴史の中で育まれた豊かな田園風景等が,現在の「杜の都」の個性や
魅力を形成している。従って本市においても,自然的な景観資源とともに,地域の風
土や個性を形成する歴史的・文化的な景観資源,豊かな緑や山並みの眺望等を大切に
していくことが重要である。
景観は,景観資源やその構成要素の直接的な改変,眺望地点の改変,対象と眺望地
点との間への障害物の発生による眺望の変化等によって影響を受ける。
なお,最近は,環境を総体としてとらえる景観生態学や景相生態学といった考え方
があり,環境影響評価の「景観」の項目においても視覚的な側面に限定するのは適切
ではないといった意見もある。しかし,このような考え方は,いわば自然環境の総合
評価の観点であるため,生態系の項目,あるいは総合評価として取り扱うことが適当
であり,「景観」については視覚的な側面に限定することとする。
-353-
(2)環境影響要素
景観における環境影響要素は,以下のうちから適切に選定する。
環境影響要素
景 観
内容,観点
傑出した自然景観である,地域を特徴づけたり,多くの人に
親しまれているなどの主要な景観への影響の程度。以下の2
つの観点から影響評価を行う。
なお,眺望地点そのものの改変や眺望地点周辺の環境の変化
(ただし,視覚的にとらえられるもの以外)による影響は,
触れ合いの場において対象とする。
自然的景観資源
景観資源は,見られる対象として重要なものの形状の物理的
文化的景観資源
な変化の程度。街並みの景観のように資源そのものの中に入
って利用する景観や,地域のシンボルである山のように視点
を定めず重要な景観などへの影響をみる上で特に重要。
眺 望
主要な眺望地点からの眺望の変化の程度。
この場合,影響を受ける主要な眺望地点は,事業予定地外で
あって,事業予定地又は事業により出現する工作物等が見え
る地点とする。(事業予定地内の地点からの眺望の変化は原
則として環境影響評価の対象としない。事業予定地内に主要
な眺望地点が存在する場合は,これに対する影響は触れ合い
活動の場で取り扱う。)
19-2 事前調査及び地域概況の把握
(1)目的
事前調査は,地域の景観の状況等を把握することにより,重要な景観資源等の立地
段階において回避等の配慮を行うことが必要な対象を明らかにし,事業の早期段階に
おける適正な環境配慮に資することを目的として実施する。
地域概況の把握(概況調査)は,事前調査の成果を踏まえ,景観のうちどの項目を
対象として環境影響評価を行うのか,またその具体的な資源や地点はどれかを定め,
その対象ごとに調査,予測,評価の手法を定めるとともに,保全対策検討の方針を検
討する(以上,方法書に記載する事項)ための必要な情報を得ることにある。
(2)事前調査の内容
・事前調査は,以下のような対象について,立地段階において回避することが望まし
い対象の抽出を主な目的として実施する。
・方法は,既存資料の収集,整理を基本とするが,市への聞き取り等により情報の更
新,補完等を行うこと。また,地域の人々に親しまれている身近な景観資源や地域
を特徴づける眺望等については,既存資料からの把握は困難であり,事業予定地及
びその周辺について聞き取り調査や現地踏査を行う必要がある。
-354-
景観における事前調査対象及び方法
項目
主な調査対象
調査方法・該当する情報等
景観
自然的・歴史的景観
・自然環境基礎調査報告書 保全上重要な地形・地
資源
質分布図(景観上重要な地形・地質・自然現象)
・自然環境基礎調査報告書 文化財等分布図(指定
文化財,その他の地域環境資源)
眺望(市民等に親し
・自然環境基礎調査報告書 文化財等分布図(仙台
まれている眺望,地
市内で自然に親しんでいる場所や好きな風景)
域の眺望を構成する
・観光パンフレット等に記載された展望台,眺望に
上で重要なスカイラ
インや斜面等)
すぐれた場所
・地形解析や現地踏査により,スカイラインを構成
する尾根,眺望上重要な斜面の緑等の抽出
その他事業の立地上
・その他既存資料及び現地踏査による
配慮を要する景観
(3)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①の景観の状況を中心とし,その他の関連項目に
ついては,景観の観点から以下のような事項を把握する。
調査項目
①景観の状
況
周辺の広域の
調査内容
・地域の景観の概要(地形や土地利用,
状況
植生等より把握)
・主な自然的・文化的景観資源の分布,特性
・主要な眺望地点の分布,特性,利用状況等
事業予定地の
・事業予定地の景観の概要
状況
・自然的・文化的景観資源の分布,特性
・周りからの見え方の概要(見られやすい方向等)
②地形・地質,水象,
・景観資源,眺望を構成する要素の基本的な特性
植物(植生),
土地利用等の状況
③人口,交通の状況
・眺望地点の状況の基礎条件(利用のしやすさ,利用上
の重要性等)
④法令による指定・規制等
の状況
・自然公園の指定,文化財の指定,風致地区の指定,景
観形成地区の指定・景観協定の状況,その他市の景観
に係る指導,計画等
⑤その他
・将来の景観や景観の利用等に影響を与えると想定され
る開発動向等
-355-
(4)概況調査の範囲
・概況調査は,事業予定地の広域的な位置づけが可能となるよう,これを含む10km四
方程度の範囲を目安として,地形的に一体的に見える範囲(稜線等に着目)や,主
要な眺望地点となりうる幹線道路,観光地,市街地等の分布を考慮して設定する。
・概況調査の範囲は,基本的に事前調査に準じるが,明らかに影響を回避した周辺の
景観資源等の範囲は除くなど,情報の種類によって範囲を変えることができる。
(5)概況調査の方法
・概況調査の方法は,既存文献等の収集,整理を基本とするが,①景観の状況のうち
事業予定地に係るものは,既存文献等に加え,聞き取り,現地確認による。
調査項目
①景観の状
況
調査方法
周辺の広域の
・主として以下の既存文献等の収集・整理
状況
・地形図,植生図,土地利用図等
・第3回自然環境保全基礎調査自然景観資源調査
・県,市の文化財関係資料
・全国観光情報ファイル
・観光便覧,観光パンフレット
・その他県,市史等
事業予定地の
・上記の既存文献等を踏まえ,現地確認により把握
状況
②地形・地質,水象,
・それぞれの概況調査の結果等より把握
植物(植生),
土地利用等の状況
③人口,交通の状況
・地形図,市資料等既存文献の収集・整理
④法令による指定・規制等
・自然公園の公園計画図及び計画書,文化財関連資料,
の状況
景観条例関連資料,風致地区指定関係資料等,
県,市資料の収集・整理
⑤その他(将来の開発動向
等)
・県,市資料の収集・整理
・市への聞き取り
(6)調査結果とりまとめ(事前調査書及び方法書における地域概況の記述)
事前調査書の取りまとめに当たっては,特に以下の点を明らかにする。
①
事業予定地及びその周辺地域において,景観の保全の観点から,事業の立地を
回避することが望ましい地域又は対象
②
事業予定地において,景観の保全の観点から留意すべき事項又は環境配慮の方
向性
-356-
また,方法書における地域概況の記述例を示すと以下のようになる。
●景観の概況目次例及び作成図表例
1 事業予定地周辺(広域)の景観の状況
・地域の景観の概況についての記述
・自然的・文化的景観資源,主要な眺望地点の分布及び特性の記述
図表:自然的・ 文化的景観資源,主要な眺望地点の一覧及び分布図
2 事業予定地の景観の状況
・事業予定地の景観の概要,景観資源の内容と特徴,眺望地点等から見た事業予定
地の位置づけ(景観資源としての利用(眺望)のされ方,重要度,事業予定地を
眺める周囲の眺望地点として主要なものの存在又は主要な方向)
図表:必要に応じ景観資源及び眺望地点分布図等(大縮尺)
3 景観保全上の留意点
・上記の内容及び関連する②から⑤の内容を勘案し,景観保全上の留意点を記述
(②から⑤の関連事項のうち,景観に係る内容については概要を記述すること)
19-3
スコーピング
<原則としてすべての事業で実施>
・景観では,自然公園の景観のような,いわゆる優れた景観だけでなく,生活空間に
おける景観についてもうるおいや個性等の観点から対象とするため,原則として,
全ての事業において項目として選定する。
・また,細目についても,景観資源と眺望の2つは,密接不可分の要素であり,両者
を同時に選定することを原則とする。
<重点化,簡略化>
・重点化は,以下のような場合に行う。
○事業予定地が景観資源の分布地又はその近接地である場合
○法令等により以下のような景観上重要な地域として指定されている場合
*自然公園区域
*県自然環境保全地域,緑地環境保全地域
*広瀬川の清流を守る条例の環境保全区域
*風致地区
*景観形成地区,景観協定,地区計画の対象区域
*その他市が景観の保全,形成上重要な地域として指定しているもの
○事業予定地が,周辺の主要な眺望地点から見える場所である場合
○事業予定地が,周辺から非常によく見える場所である場合
○高層建築物,煙突,高塔等,よく目立つ工作物の設置が予定されている場合
○その他,地域の景観特性又は事業特性からみて重点化が必要な場合
-357-
・以下のような場合には,簡略化することができる。
○事業予定地が,景観資源として位置づけられる可能性が極めて低い場合
○事業予定地が,周辺からほとんど見えない場所で,かつ,事業予定地が景観資源
として位置づけられる可能性が極めて低い場合
○その他,地域の景観特性又は事業特性からみて簡略化が可能な場合
19-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から必要に応じて適切に選定する。
1.景観資源の状況
① 自然的景観資源・文化的景観資源の分布
② 地形,植生,その他景観資源を構成する要素の状況等景観資源の特性
2.主要な眺望地点の状況
① 眺望地点の位置,利用状況,眺望特性
② 主要な眺望地点からの眺望の状況
3.その他
必要に応じて,地形,周辺土地利用,交通,歴史的・文化的背景,地域住民の意識
等についても把握する。
<景観資源の状況>
・景観資源の構成要素の状況,分布又は位置,景観資源としての重要度の評価等
・概況調査の結果から,事業予定地及びその隣接地に景観資源として位置づけられる
ものがある(又はその可能性がある)場合に実施する。
・把握すべき景観資源は,既存文献やパンフレットその他で景観資源や観光資源とし
て位置づけられているもの,聞き取り等により地域の住民に親しまれていたり地域
のシンボルとなっている景観資源,現地確認により市街地や集落,幹線道路等から
の眺望の対象となっている景観資源,地域の日常的景観を形成している景観資源等
とする。
<主要な眺望地点の状況>
・主要な眺望地点の調査は,項目として景観を選定した場合は必ず実施する。主要な
眺望地点の調査は,眺望地点の調査と主要な眺望の調査の2段階に分けられる。
・眺望地点の調査:眺望地点の種類,位置,利用の状況,眺望特性(眺望の内容・広
がり・事業予定地が見えるか否か等)
以上より,眺望地点としての重要度の評価及び主要な眺望地点の
抽出等
・主要な眺望の調査:主要な眺望地点における主な眺望の方向,眺望対象の景観資源
の重要度,見え方の状況,眺望としての重要度の評価等
-358-
(2)調査方法
景観の調査の方法は,技術指針で以下のように定められている。
① 既存文献及び聞き取り調査等の結果を踏まえ,現地調査により把握する。
② 既存文献,聞き取り調査,現地調査により,自然的景観資源,文化的景観資源を
抽出する。その際,地域で親しまれている景観資源や地域の日常的景観を形成して
いる景観資源についても把握する。
③ 抽出した景観資源について,現地調査及び地形や植生等の調査結果の解析等によ
り,その特性を把握する。
④ 既存文献,聞き取り調査等により対象地域における眺望地点を抽出し,地形デー
タ等を用いた事業予定地の可視状況の解析結果及び現地調査等によりその眺望地点
の特性を把握する。また,既存文献及び現地調査等により利用状況を把握する。そ
の際,地域住民に親しまれている眺望地点,日常的に利用する地点等についても把
握する。
⑤ 眺望地点の特性解析結果により,主要な眺望地点を抽出し,写真撮影等により眺
望の状況を把握する。
<景観資源の状況>
①
景観資源の調査
・抽出した景観資源については,範囲,規模,特徴,周囲からの見え方等について現
地調査を実施し,適宜写真撮影を行う。
・周囲からの見え方(目立ちやすさ)は,現地調査を実施するだけではなく,数値地
形モデル等により視認性の解析をおこなう。これに用いるメッシュの大きさは,事
業予定地及びその周囲の限られた範囲であり,その中での目立ちやすさの相違を把
握するものであるため,地形の再現性を考慮して50m 四方程度又はそれより小さい
ものが望ましい。(50m メッシュの地形情報は,国土地理院より販売されている。)
②
景観資源の評価
・必要に応じ抽出した景観資源について,その重要度を評価する。これは,できるだ
け価値の高い景観資源を保全するためのものである。評価の観点としては,傑出し
ている,典型的である,雄大である(規模が大きい),住民に親しまれている,歴
史的・文化的な意義がある,周辺からよく目立つ等がある。この際,各種法令の指
定の状況,指定の理由や基準等についても参考とする。
・特に重要な景観資源の場合,どこが景観として好ましいかなどについて現場実験や
写真を用いた評価実験等を実施し,景観資源としての評価を規定する構成要素や構
成要素の属性等を解析する(例えば谷の景観では,渓谷の深さ,斜面の植生(紅葉
や新緑の美しい落葉広葉樹か否か),河川の水面幅,河床の岩等の形状といった物
理的要因と,評価の関係についての多変量解析等)。
・調査結果については,景観資源特性表,景観資源分布図,景観資源評価図などにま
とめる。
-359-
参考
景観資源の種類の例
景観種別
自然的景観資源
火山景観
景観資源例
火山群(船形山火山,面白山火山),火山(黒鼻山
泉ケ岳,後白髭山),風穴,溶岩流末端崖,噴泉等
山地景観
山脈,丘陵,非火山性孤峰(太白山,戸神山等,
鎌倉山),非対称山稜(面白山,寒風山),
断崖・岩壁(磐司岩,岩傘山,見当山等),
岩峰・岩柱(仙台カゴ等)
河川景観
峡谷・渓谷(竜の口渓谷,大倉川,横川渓谷,二口
峡谷等),河岸段丘(落合・愛子・白沢広瀬河畔等
),断崖・岩壁(霊屋広瀬川面,定義・材木岩,
白岩等),滝(秋保大滝,姉滝等),
天然橋等(北石橋,南石橋)
湖沼景観
湖沼(蒲生干潟,井土浦,大沼等),湿原(大沼)
海岸景観
砂浜・磯浜(深沼海岸,長浜)
その他の地学景観
節理,岩脈,湧水群,その他際だった地形等
地被景観
森林,原野,湿原,お花畑,自生地,岩石地,
水田,畑,果樹園,集落等
文化的景観資源
生物,自然現
開花,新緑,紅葉,渡り鳥の渡来,霧氷,積雪,
象
樹氷,雲海等
社寺
神社,仏閣,霊廟等
遺跡・史跡
史跡,遺跡,城跡等
歴史的建築物
歴史的建築物,伝統的民家建築等
土木構造物
橋梁,石積み,その他歴史的土木構造物等
生産
農林作業,稲架,放牧等
樹林・樹木
樹林,屋敷林(居久根),並木,樹木等
なお,風俗,風習,祭り,音景観等については,自然との触れ合いの場の中で取り
扱う。
<主要な眺望地点の状況>
①
眺望地点の抽出
・地形図その他の既存資料等により,事業予定地が見える可能性のある範囲(調査地
域)内の眺望地点となりえる場所を広く抽出する。
-360-
眺望地点の種類の例
利用区分
来訪者の利用
種別
展望地
眺望地点例
備考
展望地,展望台,
展望台等の施設整備がなされたとこ
山頂,峠等
ろだけでなく,視界が開けた山頂や
峠等もとりあげる
活動の場
動線
地域住民の利
公共施設
用
散策路,園地,キ
触れ合い活動の場は,景観の視点と
ャンプ場,スキー
して取り上げる。施設整備がされた
場,河川敷,釣り
ところだけでなく,実態的に利用さ
場,宿泊地等
れている場を含む
登山道,歩道,観
主として旅行者が利用する動線。主
光道路,主要な幹
要な幹線道路や鉄道等は,地域住民
線道路,鉄道等
の利用地点でもある
学校,公民館,集
地域住民が利用する施設等。公共施
会施設等
設以外でも,地域住民が利用する社
寺,墓地等を含む
居住地
市街地,集落
住民の居住空間
動線
幹線道路,鉄道等
通勤,通学等に多数の住民が利用す
る動線
住宅地内の細街路は,市街地,集落
の視点として扱う
②
事業予定地が見える眺望地点の抽出
・数値地形モデル等により,事業予定地が見える範囲を解析し,どの方向,どの範囲
において見える可能性があるか,全体が広く見えるのか一部が見えるのか等を把握
する。この結果により,広く抽出した眺望地点のうちから事業予定地が見える地点
を抽出する。
・この場合,事業予定地内に被視点を設定し,周辺の各メッシュから見えるか否かを
計算する。その時,事業予定地に複数の被視点を設定し,これらの計算結果を重ね
合わせることにより,各メッシュ(あるいは各眺望地点)からの事業予定地の見え
方を推定することができる。
・この時の解析は,調査範囲全域にわたり比較的広域であるため,250m四方程度のメ
ッシュを用いても差し支えない。
③
眺望地点の特性把握
・上記で抽出した眺望地点について,現地調査により,眺望地点の状況,眺望地点か
らの眺望内容,事業予定地の見え方,利用の状況及び利用のための施設やアクセス
の状況について調査を行う。眺望の状況については必要に応じ写真撮影を行う。
-361-
④
主要な眺望地点の抽出
・上記で対象とした眺望地点について,上記の調査結果により,眺望地点の重要度及
び眺望の特性を評価し,数地点を主要な眺望地点として抽出する。この地点からの
眺望が主要な眺望であり,これについてモンタージュ写真等により眺望の変化を予
測する。
・眺望地点の重要度は,以下のような観点から適切に評価する。
*展望台がある,自然公園内の眺望点であるなど,眺望点としての重要性
*利用者の多少,アクセスが良いなど利用のしやすさ
・眺望の特性は,以下のような観点から評価する。
*眺望が開けるかどうか
*特定の視対象があるかどうか,また,その視対象の価値
*事業予定地がよく見えるかどうか,また,特定の視対象とともに見えるかどうか
・主要な眺望について,現地調査を実施し現況写真を撮影し,構成,構図,印象,事
業予定地の見え方等を整理する。この時の現況写真は,予測におけるモンタージュ
写真等の作成を前提として撮影する。
・また,重点化して実施するような場合には,眺望の印象(又は評価)と画面の物理
的な構成(例えば,森林,人工物,水面等の占める割合,構図,色彩等)の関係に
ついて評価実験等を行い解析する。
・調査結果については,以下の図表等を用いてとりまとめる。
*眺望地点及び主要な眺望地点分布図
*事業予定地の見える範囲図(どの程度見えるかを含む)
*主要な眺望地点抽出の過程及びその根拠(比較評価の表等)
*主要な眺望の特性,景観写真等
<参考
眺望写真の撮影に当たっての留意事項>
・写真撮影に当たっては,人が実際にその景観を眺めた時の,視覚的認識にできるだ
け近いものとするよう留意する必要がある。
・35mmフィルムの場合には,35mmから28mmの広角レンズで撮影すると撮影範囲が人間
の視野(約60度のコーン)に近くなる。ただし,このようにして撮影した写真は,
概ね四つ切り程度に引き延ばした時に実際の視覚的印象に近いものとなる。サービ
スサイズのプリントや縮小版で準備書に記載する場合は,過小な印象をあたえる可
能性があるため,この点を準備書等で明記する必要がある。
-362-
(3)調査地域等
① 調査地域は,事業予定地及びその周辺において,景観に対する影響が想定される
地域とし,植生,地形等を考慮して設定する。
② 調査地点は,調査地域の可視分析に基づき,調査地域を適切に把握できる地点と
する。
③ 調査地域,地点等の設定に当たっては,必要に応じて概査を実施し,現地の概況
を把握する。
・調査地域は,数値地形モデルによる解析や断面図の作成により,事業予定地がどの
範囲まで見えるかについての検討を行い,地形(稜線)や眺望地点の状況に応じて
設定する。その際,概略(想定される最大)の工作物の高さを考慮して解析する。
・調査地点は,景観資源分布地及び事業予定地が見える可能性のある眺望地点とし,
詳細な調査を実施する地点は,「主要な眺望地点の状況」の調査の方法で示した手
法により選定する。
(4)調査期間等
①
年間を通じた状況を把握できる期間とし,少なくとも四季の変化を把握できる頻
度で実施する。
・調査は四季を基本とし,それぞれの季節で最も典型的な景観を示す時期(例えば紅
葉の時期等)に調査を行う。
・景観資源については,簡略化して調査を実施する場合,最も代表的と思われる時期
に1回の調査とすることもできる。
・主要な眺望の調査は,四季を基本とするが,冬季に人の利用の可能性がほとんどな
いなど,利用の状況によっては,適宜変更しても差し支えない。
・写真撮影を伴う調査は,十分な視程が得られる晴天の日を選び,撮影方向に対して
順光,側光になる時間帯に行う。
-363-
19-5
(1)
予測
予測内容
直接的・間接的影響による次の項目等の変化の程度を予測する。
① 自然的景観資源,文化的景観資源
② 主要な眺望
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域は調査地域に準ずる。
・予測地点は調査地点に準ずる。ただし,この場合の地点はモンタージュ写真等を作
成する地点であって,その前に面的な影響の広がりの予測を行うこと。
(3)
予測対象時期等
① 原則として工事が完了した時点。
<工事中>
・一般的に工事中の景観は予測対象としない。ただし,特に工事期間が長い場合や,
景観資源又は眺望として非常に重要な場合など,特に検討が必要である場合には,
造成面(裸地面)が最大となる時期等影響が最大となる時期について実施する。
<供用後>
・工作物等の出現や改変後の地形など供用後も永続的に続く存在影響については,原
則として工事が完了した時点を予測対象時点とする。なお,植栽による修景を行う
場合であって,その効果が発揮されるまで長時間を要する場合等には,修景の効果
が安定的な状態に達した時点等についても予測対象時点とする。
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
① 景観資源
・景観資源の特性の解析結果と事業計画の重ね合わせ及び事例の引用・解析
・保全対策
② 眺望
・フォトモンタージュ等視覚的資料の作成
・視覚的指標(見えの角度,仰角等)の計測
・評価実験
・事例の引用・解析
・保全対策
・景観資源については,事業計画による改変区域図を作成し,景観資源分布図や景観
資源評価図等と重ね合わせることにより予測する。
・眺望については,以下に示す視覚的資料の作成を中心に,その他,出現する施設等
ごとの見える範囲,眺望地点ごとの見えの角度,仰角等の指標値の算定等の手法を
組み合わせて行う。
-364-
視覚的資料の作成手法
手
法
フォト・モンタージュ法
内
容
主要な眺望地点から撮影した現況写真に,事業の完成予
想図を合成し,景観の変化を示す。
コンピュータ・グラフィッ
数値地形モデルに空中写真等を用いたテクスチャーを張
クス数値地形モデル法
り込み,事業に伴う構造物を合成したもの。
一度地形を形成すれば構造物の構造・位置や眺望地点の
位置を柔軟に変更できることから,複数案の比較を行う
場合に有利。また,フォト・モンタージュにおいて事業
による影響の位置を確定する際にも利用できる。ある程
度のコンピュータの知識が要求される。
ビデオ合成法
ビデオ画面上にコンピュータグラフィックスで事業の構
造物を合成する。眺望地点の特定が困難なある地域の景
観印象や道路などのシークエンス景観の把握に適する。
画像の鮮明さはフォトモンタージュに劣る。ある程度の
コンピュータの知識が要求される。
・上記のような視覚的資料の作成は作成点数が限られる。そのため,視覚的資料の作
成の前に事業予定地が見える眺望地点(道路等においては,区間)の予測,それぞ
れの眺望地点や区間における対象事業の見えの角度(垂直見込み角等)や見えの面
積の計測,スカイラインの分断の程度等の指標について,シミュレーション等を実
施し算定する。
・視覚的な変化に伴う,人の感じ方や景観の評価の変化については,景観の善し悪し
を規定する要素や見えの大きさと印象の関係等に関する既存文献等を収集,解析し
て予測する。また,特に重大な影響が想定される場合には,モンタージュ写真等を
用いた評価実験を行う。
参考:予測に用いられる視覚的指標等
・全体の予測のための指標
○事業により影響を受ける眺望地点数,割合
・個々の眺望地点からの眺望影響の指標
○視距離
○見込み角(垂直視角,水平視角。自然景観では垂直視角が重要)
○仰角(圧迫感に影響)
○色彩(色相,明度,彩度等自然景観の中での目立ちやすさ,周辺の色彩との調和
等に関わる)
○画面の構成比(自然景観では,人工物の割合により印象が大きく左右される)
○スカイライン切断の有無等
-365-
参考:評価実験等の手法(感覚量の測定)
・景観の評価を行動等から把握する手法(主に現地実験)
○アイマークレコーダ(注視点)
○想起法,認知マップの作成,好きな箇所の写真を撮影させる方法等
・写真等視覚的刺激による評価手法(室内実験)
○選択法,一対比較法等
○評定尺度法(特定の価値概念等をあらわす尺度で評価)
○SD法(多数の形容詞を用いて,評価構造を把握する方法)
○極限法,調整法(印象が変わる点や閾値を求める方法)等
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 地形改変の範囲,施工方法等
② 湛水する範囲,水位変動等
③ 構造物の配置,規模,構造等
2 将来環境条件
① 周辺の土地利用
② 地形,水象等
・事業計画のうち,地形改変の範囲には,工事のために改変する部分を含むこと。
・景観への間接影響が想定される場合,それに係る地形・地質,植物(植生等),水
象(河川流量等)等に係る計画条件と関連する項目の予測結果を前提条件とする。
・将来環境条件のうち,周辺の土地利用では,当該事業以外の開発計画による改変や
構造物等の出現の可能性等について留意する。
19-6
環境保全対策
予測結果に基づき,環境に対する影響緩和の考え方から,環境保全対策を検討する。
1
回避
・事業予定地の変更,造成計画や施設配置計画の変更等により,景観資源の改変を避
ける。
・事業予定地の変更,造成計画や施設配置計画の変更,施設の高さの変更等により,
主要な眺望への影響を避ける。
2
低減
・事業予定地の変更,造成計画や施設配置計画の変更等により,景観資源の改変量を
低減する。
・スカイラインを形成する尾根部その他目立ちやすい場所の改変を避ける,目立ちに
くい場所(不可視深度が大きい場所)に施設を立地する,構図として不安定になる
場所(例えば山の山腹上部等)への施設立地を避けるなど,景観資源の改変による
視覚的影響を低減する。
・事業予定地の変更,造成計画や施設配置計画の変更,施設の高さの変更等により,
主要な眺望における主たる視対象への重なりを低減する。
-366-
・事業予定地の変更,造成計画や施設配置計画の変更,施設の高さの変更等により,
スカイラインを切らない,見かけの大きさを小さくする,主たる視対象からできる
だけ離す,主要な眺望における中央部分への影響を避けるなど,眺望への視覚的影
響を低減する。
・施設の配置,規模,形状,素材,色彩,修景緑化等により周辺景観との調和を図り
景観資源の視覚的印象や眺望への影響を抑える。
・上記のような観点から,自然景観においては,屋根勾配を背景のスカイライン形態
に合わせる,自然の素材を使用する,色彩は彩度の高いものを避け色数を抑える等
の配慮を行う。
・施設や緑地(残置した森林や植栽)の適切な管理により,良好な景観を維持する。
19-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・杜の都の風土を育む景観条例等(杜の都景観基本計画)
①
影響の回避・低減の観点
・配置,工法等に係る環境保全対策を組み込んだ複数の計画案について,評価項目ご
と及び景観に係る項目総合の予測結果を比較することにより,事業者が実行可能な
範囲において最大限の回避・低減が図られているか否かを判断する。
・複数案及び複数の項目の予測結果に基づく影響の大きさの比較は,景観資源や眺望
の評価結果(重要度)と改変量や影響量(見込み角の大きさ等)を掛け合わせた数
値の総和等の定量的指標を設定することが望ましいが,定量的な指標の設定が困難
な場合は,影響の大,中,小といった定性的な比較でも差し支えない。
・複数案の比較を行わない場合は,その理由及び当該計画案により十分影響の回避が
図られていることを明らかにすること。
②
基準・目標との整合
・杜の都の風土を育む景観条例については,以下の点での整合を検討する。
○大規模建築物等指針との整合
○景観重要建築物等に指定されているものの保全
○景観形成地区内における地区景観整備計画(景観形成の目標,公共施設の景観形
成に関する方針,地区景観形成基準等)との整合
○景観協定が締結された区域内における当該協定との整合
・そのほかに,以下の計画等についても留意する。
○自然公園内である場合は公園計画や管理計画との整合
○仙台市杜の都景観基本計画との整合
○その他,市等が定める景観の保全,形成に関連する計画との整合
-367-
19-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に以下のような場合に
ついては詳細に行う。
○重要な景観資源や眺望への影響が予測される場合(景観資源の評価結果や,主要
な眺望の選定過程における評価結果に応じて判断する)。その他,景観の項目を
重点化した場合。
○高層建築物,高架構造物等相当程度の影響が予測された場合
○予測における事業計画や環境保全対策の熟度が低いなど,予測の不確実性が高い
場合
(2)事後調査の内容
・景観資源及び主要な眺望の状況
・事業の実施状況(実際に造成等を行った区域,工作物の諸元等)
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。
・基本的には,供用開始後1年目に実施。年2季(夏と落葉期)程度を基本とする。
・相当程度の影響があり,修景緑化等の対策を講じることとした場合は,5年程度以
内を目安に修景緑化の効果が安定したと思われる時期に再度調査を実施する。
-368-
20 自然との触れ合いの場
20
自然との触れ合いの場
20-1 基本的考え方
(1)考え方
自然との触れ合いの場はアセス法制定に伴い新たに導入された項目である。
従来の閣議アセスやいくつかの地方公共団体で対象とされていた「野外レクリエー
ション地」という項目は,自然公園や,公的なキャンプ場等,野外レクリエーション
の場として整備された施設や地域を対象としてきた。また,地域的にはすぐれた自然
の地域における利用を主に対象としてきた。このため,施設を伴わない野鳥観察や山
菜採り等に利用されている森林や水辺等は対象とはされず,また,地域住民が日常的
に利用する身近な自然も対象とされてこなかった。
これに対し,近年,身近な自然との触れ合いや,里山の環境保全等,地域住民の生
活や文化に密着した自然の重要性への認識が高まってきた。
このようなことから,法においては,従来のような野外レクリエーション地として
整備された場所だけでなく,地域住民等に自然との触れ合いの場として利用されてい
る場を広く保全することを目的として,「触れ合い活動の場」が導入されることとな
った。
「触れ合い活動の場」においては,原生的な自然地域から,農林業地域,都市地域
まで,地域の自然的・社会的条件に応じた触れ合い活動に着目し,適切に把握するこ
とが必要である。これは,自然地域だけでなく,農林業地帯や都市地域においてもそ
れぞれの自然的・社会的条件に応じて自然との触れ合い活動が行われており,また,
触れ合いの場が確保される必要があるためである。また,触れ合い活動とは,自然を
利用した活動だけに限るのではなく,地域の生活や文化のなかで密接な関わりを持ち,
大切にされてきたものも対象にしていくことが重要である。
本市は,船形連峰や泉ケ岳,二口峡谷,秋保や作並の温泉など,山地の豊かな自然
に恵まれ,登山や野外レクリエ-ション,保養など,市民の利用のみならず観光資源
としても広く自然との触れ合いの場として利用されている。また,丘陵部は市街地の
拡大や生活様式の変化等に伴い近年環境が大きく変化した地域であるが,太白山や蕃
山,斎勝沼等,身近な自然環境として親しまれたり,学習の場として活用されている
ところが数多くみられる。一方,本市が「杜の都」と呼ばれる由来は,武家屋敷の屋
敷構の庭木,寺社を取り巻く鎮守の杜,農家における居久根と呼ばれる屋敷林等の緑
であるといわれるが,これら平地の自然は,戦火や都市の拡大によって多くが失われ,
現在残されたものは貴重な存在となっている。また,蒲生干潟に代表される海岸の自
然は,野鳥観察の場として著名であるとともに釣りや海水浴の場としても親しまれて
いる。このように,本市においても,山地から海岸まで,それぞれの地域において多
様な自然との触れ合いがみられる。このうち,山地や海岸では自然公園や自然環境保
全地域等として保全が図られている地域も多いが,丘陵部や市街地,田園地帯等にお
いては,自然との触れ合いの場としての重要性の認識や保全の措置が必ずしも十分と
はいえない。環境影響評価においては,このように既存の法体系において十分な保全
措置が講じられていないような場所に特に留意する必要がある。
また,植物,動物及び生態系の項目は,地域の自然環境を自然環境そのものとして
-369-
評価しようとするのに対し,自然との触れ合いの場では,景観と同様,地域の自然環
境を人間との関わりにおいて評価しようとするものといえる。このため,地域住民が
当該地域の自然に対してどのような認識を持っているのか,生活の中でどのように関
わってきたのか,あるいは利用者がどのような場を好んで利用しているかなど,住民
や利用者の行動や意識を把握する必要がある。この点で,環境そのものの状況を主な
調査対象とする他の項目とは,調査手法等が大きく異なるものである。
(2)環境影響要素
自然との触れ合いの場における環境影響要素は,以下のとおりである。
環境影響要素
自然との触れ合いの場
内容,観点
・市民の自然との触れ合いの場及びその利用に対する影
響を対象とする。
・触れ合いの場としては,自然公園や公的キャンプ場
等,野外レクレーション地として整備された施設や地
域等,優れた自然地域の利用に加えて,地域住民が日
常的に利用する里山等や,野鳥観察や山菜採りに利用
されている水辺や森林等の自然との触れ合いの場を広
く対象とする。
-370-
自然との触れ合いの場で対象とする活動等
区
分
内
自然と触れ合う活動の場
容
不特定多数の人による自然を活用した以下
のような活動が行なわれている場。
(活動内容)
観察・採集活動
自然観察,動物観察,植物観察,魚つり,
昆虫採集,植物採集,山菜・きのこ採り等
鑑賞活動
景色を眺める(写真,スケッチ等を含む)
花見,新緑・紅葉狩り,ホタル狩り等
遊び・体験
木登り,川遊び,草花遊び,農林漁業体験
等
歩行活動
登山,トレッキング,ハイキング,散策,
森林浴等
キャンプ・ピクニック
キャンプ,ピクニック,バーベキュー,
芋煮会等
野外スポーツ
カヌー,ボート,パラグライダー,山スキ
ー,歩くスキー等
休養,休息
生活・文化との関わりの深い場
信仰・精神性
温泉浴,夕涼み等
地域の生活や文化等と関わりの深い場
神社・仏閣等と一体となっている自然,信
仰の対象となっている自然,伝説・言い伝
え等の舞台,その他地域の象徴となるなど
地域住民に親しまれあるいは大切にされて
いる自然や場
祭り・行事
祭りや地域の伝統的行事の場,又はその背
景となっている自然等
生活・文化との関わりの深い種等
地域の生活や文化等と関わりの深い種等及
びその分布地
利用対象種
食用,加工品の材料,その他地域の生活や
産業等の中で利用されている種
信仰・精神性
信仰の対象,伝説や言い伝え,地域の象徴
その他地域住民に親しまれたり大切にされ
ている種や対象
・なお,景観と重複する場合があるが,景観は視覚面に着目した調査を行い,自然と
の触れ合いの場では利用状況等に着目した調査を行うこととし,同一の対象であっ
てもそれぞれ別個に対象とする。
-371-
20-2 事前調査及び地域概況の把握
(1)目的
事前調査は,地域の自然との触れ合いの場の状況等を把握することにより,立地段
階において回避等の配慮を行うことが必要な対象を明らかにし,事業の早期段階にお
ける適正な環境配慮に資することを目的として実施する。
地域概況の把握(概況調査)は,事前調査の成果を踏まえ,自然との触れ合いの場
として何を対象として環境影響評価を行うのかを定め,その対象ごとに調査,予測,
評価の手法を定める(以上,方法書に記載する事項)ための必要な情報を得ることに
ある。
そのため,地域一帯の自然環境の特性と人と自然との関わりの歴史等を踏まえ,ど
のような自然との触れ合いが行われているのか,その中で事業予定地はどのような位
置づけにあるのかを把握する。
(2)事前調査の内容
・事前調査は,以下のような対象について,立地段階において回避することが望ましい
対象の抽出を主な目的として実施する。
・方法は,既存資料の収集,整理を基本とするが,市への聞き取り等により情報の更新,
補完等を行うこと。また,自然との触れ合いの場については,既存資料が十分でない
可能性が高いため,事業予定地及びその周辺について聞き取り調査や現地踏査を行い,
身近な自然との触れ合いの場や地域住民に親しまれている自然が存在しないかどうか
について把握する必要がある。
自然との触れ合いの場における事前調査対象及び方法
項目
主な調査対象
自然との
自然との触れ合いの場
調査方法・該当する情報等
・自然公園,県自然環境保全地域,県緑地環境保全
触れ合い
地域,風致地区,都市公園等で自然との触れ合い
の場
の場として利用されている場所
・自然環境基礎調査報告書,文化財等分布図(仙台
市内で自然に親しんでいる場所や好きな風景)
・その他地域,学校等で自然との触れ合いの場とし
て活用されている場所について,聞き取り,現地
確認等により抽出
その他事業の立地上配
・その他既存資料,聞き取り,現地踏査による
慮を要する自然との触
れ合いの場
-372-
(3)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項は,①の自然との触れ合いの場の状況とし,②以下の
関連項目については,自然との触れ合いの場の観点から以下のような事項を把握する。
調査の項目
①自然との
触れ合い
調査内容
周辺の広域の状
・広域的な自然環境の概況
況
・人と自然との関わりの歴史の概要(いつ頃から人が
の場の状
住んできたか,どのように自然を利用してきたか,
況
現在どのように利用しているか等)
・主要な自然との触れ合いの場の分布及び利用の特性
(利用の 特性とは,非日常的利用か日常的利用か等)
事業予定地の状
況
・事業予定地の自然環境の概要(相観植生,水辺の分
布等)
・周辺住民の事業予定地の自然環境との関わり方(歴
史的経緯を含む)
・自然との触れ合いの場の有無,分布,場を形成して
いる自然環境の状況(潜在的な可能性のある場を含
む),利用の状況及び利用の特性(潜在的な利用の
場の場合は,可能性のある利用の内容,特性を推定)
②地形・地質,水象,植物,
動物,土地利用等の状況
・自然との触れ合いの場を構成する自然環境の基本的
な特性
③人口,交通の状況
・利用の基礎条件
④法令による指定・規制等の
・自然公園の指定,県自然環境保全地域・緑地環境保
状況
全地域の指定,文化財の指定,広瀬川の清流を守る
条例の環境保全区域,その他自然環境の保全に係る
指定地域
・その他県及び市の自然との触れ合いの場に係る計
画,目標等
⑤その他
・将来の自然との触れ合いの場の構成要素や利用等に
影響を与えると想定される開発動向等
(4)概況調査の範囲
概況調査の範囲(事前調査も概ね同様)は,事業予定地を含む5~10km四方程度の
範囲を目安として,地形的な一体性や,観光地,幹線道路,市街地の分布,学校区そ
の他社会的な地域のまとまりを考慮して設定する。
なお,事業予定地の状況については,事業予定地及びその近傍とする。
-373-
(5)概況調査の方法
概況調査の方法は,既存文献等の収集整理を基本とするが,①自然との触れ合いの
場の状況のうち事業予定地に係るものは,既存文献等に加え,聞き取り,現地確認に
よる。
調査項目
①自然との
周辺の広域の
触れ合いの
状況
場の状況
調査方法
・主として以下の既存文献等の収集・整理
・地形図,植生図,土地利用図等
・県,市の文化財関係資料
・全国観光情報ファイル
・観光便覧,観光パンフレット
・その他県,市誌等
事業予定地の
状況
②地形・地質,水象,植物
・上記の既存文献等を踏まえ,聞き取り,現地概査によ
り把握
・それぞれの概況調査の結果等より把握
動物,土地利用等の状況
③人口,交通の状況
・地形図,市資料等既存文献の収集・整理
④法令による指定・規制等
・自然公園の公園計画図及び計画書,文化財関連資料等
の状況
県及び市資料の収集・整理
⑤その他(将来の開発動向
等)
・県,市資料の収集・整理
・市への聞き取り
(6)調査結果とりまとめ(事前調査書及び方法書における地域概況の記述)
事前調査書のとりまとめに当たっては,特に以下の点を明らかにする。
①
事業予定地及びその周辺地域において,自然との触れ合いの場の保全の観点から,
事業の立地を回避することが望ましい地域又は対象
②
事業予定地において,自然との触れ合いの場の保全の観点から留意すべき事項又
は環境配慮の方向性
また,方法書における地域概況の記述例を示すと以下のようになる。
●自然との触れ合いの場の概況目次事例及び作成図表例
1 事業予定地周辺(広域)の自然との触れ合いの場の状況
・自然環境の概要についての記述
・人と自然との関わりの歴史的背景,現状等についての記述
・主要な自然との触れ合いの場の分布及び利用特性の記述
図表:主要な自然との触れ合いの場一覧
分布図(図のスケールは 1/25,000 ~ 1/50,000 )
必要に応じ土地利用等人と自然との関わりの変遷を示す空中写真,地形図
等の資料
-374-
2 事業予定地の自然との触れ合いの場の状況
・自然環境の状況を踏まえた,自然との触れ合いの場からみた事業予定地の位置づ
け,想定される自然との触れ合いの場及び利用等
図表:必要に応じ自然との触れ合いの場分布図(この場合は,スケールは
S= 1/10,000 程度のものを使用)等
3 自然との触れ合いの場の保全上の留意点
・上記の内容及び関連する②から⑤の内容を勘案し,自然との触れ合いの場保全上
の留意点を記述(②から⑤の関連事項のうち,自然との触れ合いの場に係る内容
については概要を記述すること)
20-3
スコーピング
・植物,動物を項目として選定する場合及び水辺が存在する場合,選定する。
・概況調査の結果,自然との触れ合いの場が存在しないことが明らかになった場合で
も,自然との触れ合いの場については既存情報が十分ではないこと,概況調査段階
の概査程度では利用がないとは言い切れないことから,むしろ,自然環境の状況に
着目し,自然との触れ合いの可能性がある場合(動植物等の対象とする自然環境が
存在する場合)は対象とする。従って,基本的にすべての事業で選定することが想
定される。
20-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から必要に応じて適切に選定する。
1.触れ合いの場の状況
① 触れ合いの場の分布
② 利用状況
③ 地形,植生,その他触れ合いの場を構成する要素の状況等触れ合いの場の特性
2.その他
必要に応じて,地形,周辺土地利用,交通,歴史的・文化的背景,地域住民の意識
等についても把握する。
(2)調査方法
① 既存文献,聞き取り調査等の結果を踏まえ,現地調査により把握する。
② 既存文献,聞き取り調査,現地調査により,触れ合いの場を抽出する。その際,
現在利用が明らかでないものであっても,水辺,緑等触れ合いの場としての利用の
可能性を有する場は調査対象とする。
③ 抽出した触れ合いの場について,既存文献,聞き取り調査及び現地調査により,
利用状況を把握する。
④ 現地調査及び地形・植生等の調査結果の解析等により,触れ合い活動に利用され
ている場の環境特性を把握する。
-375-
<自然との触れ合いの場の分布>
・概況調査の結果に基づき,自然との触れ合いの場の可能性のある場所について現地
調査を実施し,実際に自然との触れ合いの場として利用されている範囲を把握する。
・その場合,既存資料や聞き取り調査から,利用に関する情報がある場合は,その場
所を調査する。また,利用に関する情報がない場合であっても,環境条件から日常
的に自然との触れ合いの場として利用される可能性が高い場所に着目した調査を実
施する。以上,まとめると以下のとおり。
○概況調査により自然との触れ合いの場として利用情報が得られたものの利用範囲
の把握
○環境条件から見て日常的に自然との触れ合いの場として利用される可能性がある
場所の利用の有無,利用範囲の把握
・調査結果は,自然との触れ合いの場位置図,現況写真,自然との触れ合いの場一覧
表等を作成し,とりまとめる。
日常的な触れ合いの場として留意すべき環境条件
留意すべき環境条件
水辺
具体的な場所の例
・小動物のすむ川,用水,ため池
・広がりのある河原
・見晴らしのよい川沿いの道,土手
・湧水地等
緑
・鎮守の森
・林床が比較的疎な雑木林,新緑・紅葉の美しい雑木林
・斜面林と農地,集落などからなる里山,田園風景
・シンボルとなる並木,花木の並木,歴史的な並木等
地形的要素
・平野から眺められ,山頂からも見晴らしのよい裏山
・見晴らしのよい台地の肩,尾根の道
・渓谷,滝,淵,巨石等
歴史的,文化的環境
・神社の境内や広場
・遺跡や古墳等
<自然との触れ合いの場の利用状況>(住民,利用者の意識含む)
・既存資料及び現地調査により,利用者数,利用者の属性,利用(活動)内容,利用
している範囲又は場所,特に利用の多い場所や滞留時間の長い場所等を把握する。
・利用者がどういう環境を求めて来ているか,どういう環境条件を好んでいるか等に
ついて,利用状況の解析又は利用者への聞き取り等により把握する。
・利用者とは別に,地域住民が当該地域をどのように認識しているか,過去を含めて
どのような関わりをもってきたか等について,聞き取り,アンケート調査等により
把握する。
・また,現地調査,利用者のアンケート調査等により,自然との触れ合いの場への主
なアクセスのルートを把握するとともに,アクセスルート周辺の環境条件を把握す
る。
-376-
<自然との触れ合いの場を構成する要素,特性等>
・地形・地質,植物,動物等の調査結果及び現地調査により,自然との触れ合いの場
として利用されている場を構成する要素の内容,特性を把握する。その際,利用の
直接対象となっている要素の状況,利用者が特に多い場所や利用者に好まれている
場所の要素の状況を明確にするよう努める。
・また,自然との触れ合いの場として直接利用されてはいないが,背景となっている
環境や,利用対象の要素の存続に重要な環境等について明らかにする。
<留意点>
・施設等として整備されていない場の利用や,日常的な自然との触れ合いの場につい
ては,既存資料はほとんど期待されないため,場所の抽出から利用状況,その他に
関する調査まで,現地確認や地域住民の聞き取りが非常に重要である。
・利用者や地域住民が当該環境をどのように認識しているかを把握することが重要で
あり,聞き取りやアンケート調査等を実施することが望ましい。
(3)調査地域等
① 調査地域は,事業予定地及びその周辺において,触れ合いの場に対する影響が想
定される地域とし,植生,地形等を考慮して設定する。
② 調査地点は,動植物,地形,水象等の結果を踏まえ調査地域を適切に把握できる
地点とする。
③ 調査地域,地点等の設定に当たっては,必要に応じて概査を実施し,現地の概況
を把握する。
<調査地域>
・調査地域は,影響を受ける自然との触れ合いの場やそのアクセス等を含む地域とす
る。
<調査地点>
・調査地点は,事業により直接的,間接的に影響を受ける自然との触れ合いの場とす
る。事業が自然との触れ合いの場のアクセスに影響を与える場合,アクセスルート
だけでなくそのルートにより利用される自然との触れ合いの場も調査地点とする。
(4)調査期間等
① 年間を通じた状況を把握できる期間とする。
・調査は活動内容に応じて利用される季節ごとに実施するものとし,それぞれの季節
の利用がピークとなる時期(晴天の休日等)に調査を行う。
・利用のデ-タに関する既存資料がある場合には,1年以上のデ-タを収集する。
-377-
20-5 予測
(1)予測内容
直接的・間接的影響による次の項目等の変化の程度を予測する。
① 触れ合いの場の状況
② 触れ合いの場の利用環境
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域は調査地域に準ずる。
・予測地点は調査地点に準ずる。
(3)予測対象時期等
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 工事が完了した時点,事業活動が定常状態に達した時期
<工事中>
・工事による影響が最大となる時期とする。工事による影響としては,騒音,渇水の
発生等が想定される。工事工程及び自然との触れ合いの場の利用の季節・時期を勘
案して設定する。
<供用後>
・工事完了後一定期間を経て自然環境に対する影響が概ね安定した時期,又は事業計
画において予定されている施設等が通常の状態で稼動する時期とする。施設等の稼
動が段階的に行われ,その間隔が長期に及ぶ場合は,それぞれの段階ごとに予測する。
(4)予測の方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・触れ合いの場の特性解析結果と事業計画の重ね合わせ及び事例の引用・解析
・保全対策
・事業に伴う直接的影響は,事業計画による改変区域図を作成し,自然との触れ合い
の場位置図等と重ね合わせることにより予測する。
・直接改変以外の場合は,以下に示す観点から,既存の類似事例との比較等により影
響の程度を予測するか,又は保全対策の記述をもって予測とする。
①
周辺環境の改変や利用等に伴う自然との触れ合いの場の対象要素の変化の程度
・地形・地質,植物,動物,水象等の予測結果や事例の引用・解析等により,自
然との触れ合いの対象要素の分布,量等の変化を予測する。その際,利用上の
重要度等に応じて影響を整理する。
②
周辺環境の改変や利用等に伴う自然との触れ合いの場の利用環境の変化
・地形・地質,植物,動物,水象,騒音等の予測結果及び利用状況や利用者の意
識の解析結果を踏まえ,事例の引用・解析等により,快適性等利用者への心理
的影響を予測する。
③
周辺環境の改変や利用等に伴う利用者のアクセスの阻害やルートの変化
・アクセスルートへの物理的な影響を踏まえ,利用状況の変化や利用者への心理
的影響を予測する。
-378-
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 地形改変の範囲,施工方法等
② 湛水する範囲,水位変動等
③ 構造物の配置,規模,構造等
④ 大気,水等の汚染物質の排出状況,騒音の発生状況
⑤ 工事用機械等の稼働状況
2 将来環境条件
① 周辺の土地利用
② 触れ合い活動の動向
・事業計画のうち,地形改変の範囲には,工事のために改変する部分を含むこと。
・自然との触れ合いの場への間接影響が想定される場合,それに係る大気質,水質,
騒音等に係る計画条件と関連する項目の予測結果を前提条件とする。
・将来環境条件のうち,周辺の土地利用では,当該事業以外の開発計画による改変の
可能性,将来の開発による新たな保全対象の可能性等について留意する。
20-6
環境保全対策
予測結果に基づき,環境に対する影響緩和の考え方から,積極的に環境保全対策を検
討する。その際,複数の計画案を比較検討することが有益である。
(1)回避
・事業予定地の区域の変更
・施設等の配置の変更(自然との触れ合いの場に係る立地を避ける,自然との触れ合
いの場の周辺環境の改変を避ける,自然との触れ合いの場へのアクセスルートの直
接改変等を避ける)
(2)低減
・土地利用や施設の配置等改変区域の変更(重要度の高い自然との触れ合いの場への
影響の低減又は影響を受ける自然との触れ合いの場の面積等の低減)
・道路のトンネル化や橋梁化,施設の高さを下げる等,施設の構造や規模の変更
・工法や工事工程の変更(騒音の程度の低減,濁水の防止,利用上重要な時期の回避
等)
(3)代償
・失われる自然との触れ合いの場と同様の環境条件の場所に新たな自然との触れ合い
の場を確保する。(同様の環境条件の場所への代替の舗道等の整備等)
・失われる自然との触れ合いの場の自然環境要素を復元する。
・失われる自然との触れ合いの場と同様の環境条件を新たに整備する。
・失われる自然との触れ合いの場と同等の機能を別の場で確保又は提供する。(自然
環境の条件等は異なるものを確保又は提供するもの)
・ただし,代償措置を講じる場合,事業者が担保できる場所であること,一般の人が
自由に利用できることが条件である。また,自然との触れ合いの場を構成する自然
環境の要素の復元や整備は極めて困難であることに留意して検討すること。
-379-
20-7
評価
① 環境の回避・低減が図られるか
①
影響の回避・低減の観点
・影響が回避できていると判断できる例としては,以下のような場合が考えられる。
○自然との触れ合いの場そのものへの直接改変を生じさせず,かつ周辺自然環境の
改変,水質,騒音等により自然との触れ合いの場に利用されている自然環境の要
素への間接的影響を生じさせない場合
○上記に加え,直接的間接的影響により触れ合い活動の利用の快適性への影響,ア
クセスの阻害を生じさせない場合
・影響の回避が困難な場合には,複数案の比較等により,事業者が実行可能な範囲内
で最大限の低減ができているかどうかを判断する。影響の低減は,自然との触れ合
いの場そのもの又は自然との触れ合いの場を構成している自然環境の要素の変化の
程度を低減する方法と,より重要な自然との触れ合いの場や時期をさけることによ
って低減する方法が考えられ,低減の判断には次のような場合が考えられる。
○自然との触れ合いの場に影響が生じるが,特に多くの人が利用するなど利用の中
心的な場所への影響は回避できている,又は極力低減できている場合
○自然との触れ合いの場に影響が生じるが,自然との触れ合いの対象となっている
自然環境の要素のうち重要度の高いものへの影響は回避できている,又は極力低
減できている場合
○当該自然との触れ合いの場の面積が極力低減できている場合
○影響を受ける自然との触れ合いの場の面積が極力低減できている場合
○騒音の大きさや水質変化の程度等自然との触れ合いの場への負荷の程度が極力低
減できている場合
・なお,本来回避すべき影響が回避できていない場合や低減が十分とはいえない場合
は,影響の回避,低減が十分ではないことを明記し,その理由を明らかにすること
②
基準・目標との整合
・自然との触れ合いの場に関する基準や目標は想定されていないが,自然公園内であ
る場合は公園計画や管理計画との整合を図る。また,環境基本計画や市の関連計画
との整合を図ること
-380-
20-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に代償を実施した場合
は詳細に調査を行う。
(2)事後調査の内容
・自然との触れ合いの場の状況及び利用状況
・事業の実施状況及び負荷の状況(必要に応じて騒音等関連する環境の変化の程度)
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。
・ただし,相当程度の間接影響が想定される場合で,自然との触れ合いの場の修復等
の対策を講じることとした場合は,工事完了後3~5年間程度を目安に継続的なモ
ニタリング調査を実施すること。
-381-
21 文化財
21
文化財
21-1
(1)
基本的考え方
考え方
地域の歴史的文化的所産は,人が自然との関わりの中で長い時間をかけて築き上げ
てきたものであり,地域の多様性,個性を活かした都市づくりには欠かせない環境資
源である。
歴史歴文化的所産については,文化財保護法に基づき,国,県又は市の指定文化財
として保護が図られている。しかし,指定された文化財の周辺環境の変化や,近代の
建築物等指定されていないものの改変が問題となる場合もある。
本市が「杜の都」とよばれる所以は,豊かな自然とともに,歴史的,文化的な所産
に恵まれているからであり,大崎八幡神社,東照宮,陸奥国分寺をはじめ,国,県,
市指定を合わせると,市内には平成11年3月末現在で171件の文化財が指定され
ている。
指定文化財には,有形文化財,無形文化財,民俗文化財,記念物,といった種類が
あるが,このなかには,美術館等に所蔵されている美術工芸品や,無形のものも含ま
れているため,環境影響評価で対象とする必要があるものとしては,形あるものであ
って,土地や周辺自然環境と一体となったものに限定することが適当であると考えら
れる。
この考え方から,文化財では,指定文化財のうち記念物(史跡,名勝,天然記念物)
有形文化財のうち建築物を主に対象とする。ただし,これら指定文化財自体は法令等
により保護が図られているため,むしろこれら指定文化財の周辺環境や背景への影響,
あるいは文化財には指定されていないがこれらに準じるような歴史的,文化的価値を
有する資源への影響を対象とする。また,無形のものであっても,祭りや年中行事そ
の他の自然環境等が資源や背景として重要なものについては対象とする。
なお,文化財のうち,植物,動物,地形・地質に係るものはそれぞれの項目で取り
扱うこととする。
参考
指定文化財の種類
○有形文化財(建造物,美術工芸品等)
○無形文化財(演劇,音楽,工芸技術等)
○民族文化財(衣食住,生業,信仰,年中行事等)
○記
念
品(史跡,名勝,天然記念物)
○伝統的建造物群保存地区(本市には指定はない)
(2)環境影響要素
文化財における環境影響要素は,以下のとおりである。
環境影響要素
指定文化財等
内容,観点
・指定文化財又はこれに準じる歴史的資源に対する直接的な
影響,また,これらの周辺の雰囲気その他に対する影響
-382-
21-2 事前調査及び予備調査地域概況の把握
(1)目的
事前調査は,地域の文化財の状況等を把握することにより,立地段階において回避
等の配慮を行うことが必要な対象を明らかにし,事業の早期段階における適正な環境
配慮に資することを目的として実施する。
地域概況の把握(概況調査)は,事前調査の成果を踏まえて利用しつつ取りまとめ
る。概況調査の目的はどの文化財を対象として環境影響評価を行うのかを定め,その
対象ごとに調査,予測,評価の手法を定めるとともに,保全対策検討の方針を検討す
る(以上,方法書に記載する事項)ための必要な情報を得ることにある。
(2)事前調査の内容
・事前調査では,以下の事項について,立地段階において回避することが望ましい対
象の抽出を主な目的として実施する。
・方法は既存資料の収集,整理を基本とするが,調査年,調査精度の制約により不十
分な場合もあるので,市への聞き取り等により情報の更新,補完等を行うこと。ま
た,事業予定地が概ね決まっている場合には,事業予定地及びその周辺について現
地調査等を行い,既存資料に記載されているものに準じる歴史的資源が存在しない
かどうかについて確認を行う。とりわけ,近代の建築や遺産等については文化財と
して指定されていないものが多く,聞き取りや現地踏査が必要である。
項
目
文化財
主な事前調査対象
指定文化財(ただし,土地
と一体となった,史跡,名
調査方法・該当する情報等
・自然環境基礎調査報告書
文化財等分布図(指定文化財)
勝,天然記念物,有形文化
財のうち建造物)
指定文化財に準じる文化的
資源
・自然環境基礎調査報告書
文化財等分布図(その他の地域環境資源)
その他事業の立地上配慮を
・その他既存資料及び現地踏査による
要する文化財
(3)概況調査の項目
概況調査の項目は,①を基本とし,②以下の関連項目についても必要に応じ把握す
る。
概況調査項目
①文化財等の状況
調 査 の 内 容
・地域の歴史・文化特性
・指定文化財及びこれに準じる歴史的・文化的資源の位置,
指定の種別,内容及び特徴等
・上記の指定文化財等の利用状況及び周辺環境
②土地利用の状況
・指定文化財等の周辺の土地利用の状況
③交通の状況
・指定文化財等の周辺の交通の状況
④その他
・指定文化財の周辺における開発構想等
-383-
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,以下を基本とする。
概況調査項目
①文化財等の状況
調
査
方
法
・地域の歴史・文化特性は市誌その他既存資料による。
・指定文化財等の状況は,事前調査に用いた資料
その他既存資料,聞き取り,現地確認による。
・利用状況及び周辺環境は,聞き取り,現地確認による。
②土地利用の状況
・地形図及び現地確認による。
③交通の状況
・既存資料及び現地確認による。
④その他
・市への聞き取り等による。
(4)概況調査の範囲
・概況調査の範囲は,事業予定地及びその周囲1km程度とするが,周辺環境との一体
性等により必要に応じて拡大する。
(5)調査結果とりまとめ(事前調査書及び方法書における地域概況の記述)
事前調査書の取りまとめに当たっては,特に以下の点を明らかにする。
①
事後予定地及びその周辺地域において,文化財の保護・保全の観点から,事業
の立地を回避することが望ましい地域又は対象
②
事業予定地において,文化財の保護・保全の観点から留意すべき事項又は環境
配慮の方向性
また,方法書における地域概況の記述例を示すと以下のようになる。
●文化財の概況目次例及び作成図表例
1 事業予定地及び周辺の文化財等の概況
・地域の歴史的・文化的特性と文化財の内容,特性等について記述
図:文化財等の一覧表,文化財等位置図
2 文化財等の保全上の留意点
・上記の内容及び関連する②から④の内容を勘案し,文化財等の保全上の留意点を
記述(②から④の関連事項のうち文化財に係る内容については概要を記述するこ
と。)
21-3
スコーピング
・概況調査の結果,影響を受ける可能性のある文化財等が存在する場合に選定する。
・なお,この段階で,事業予定地内の指定文化財の有無だけで判断しないこと。地域
住民や専門家の聞き取り,現地確認等で,保全を図るべき歴史的,文化的資源がな
いかどうかを十分検討するとともに,周辺環境や背景として指定文化財等に間接的
に影響を及ぼすおそれがないかどうかについても十分検討すること。
-384-
21-4 調査
(1)調査内容
以下の項目から必要に応じて適切に選定する。
1.指定文化財等の状況
① 指定文化財及びこれに準じる歴史的・文化的資源の分布
② 指定文化財等の内容,特性,保存の状況等
2.文化財の周辺の状況
① 文化財周辺の環境の状況
② 文化財の利用状況
3.その他
必要に応じて,地形,周辺土地利用,交通,歴史的・文化的背景,地域住民の感情
等についても把握する。
・これらは,概況調査で概ね把握している事項であるが,現地調査等により,より詳
細かつ具体的に把握する。
(2)調査方法
① 既存文献及び聞き取り調査等の結果を踏まえ,現地調査により把握する。
② 既存文献,聞き取り調査等により指定文化財及びこれに準ずるものを抽出する。
③ 抽出した指定文化財等について,既存文献,現地調査,聞き取り調査等により,
その内容,特性,保存の状況等を把握する。
④ 抽出した文化財等について,現地調査,聞き取り調査等により,文化財等と一体
となった周辺環境の状況及び文化財等の利用の状況について把握する。
・文化財の調査においては,指定文化財に準じる資源を適切に抽出できるかどうかが
非常に重要である。これは,基本的には概況調査の結果を受けた方法書の段階の検
討事項であるが,その後の住民意見,市長意見等を踏まえ,必要に応じ現地調査等
を行った上で,再度,検討を行う。
・対象とする文化財等については,既存資料及び現地調査により歴史的背景,構造等
の特徴を把握する。必要に応じ他の項目の調査結果等も活用する。
・周辺状況では,対象とする文化財等について現地で写真撮影等の調査を行い,文化
財等の雰囲気を形成している要素を把握する。必要に応じ,植物等の調査結果も活
用する。雰囲気が季節により変動する場合は,その変化の状況や,利用が一番多く
なる時期の雰囲気を把握する。
・また,対象とする文化財等の利用状況について,既存資料等で把握する。必要に応
じ自然との触れ合いの場の調査結果を活用したり現地調査を実施する。
-385-
(3)調査地域等
① 調査地域は,事業予定地及びその周辺において,文化財等に対する影響が想定さ
れる地域とし,地形,土地利用等を考慮して設定する。
② 調査地点は,文化財等の状況を適切に把握できる地点とする。
③ 調査地域,地点等の設定に当たっては,必要に応じて概査を実施し,現地の概況
を把握する。
<調査地域>
・調査地域は,事業予定地及び対象とする文化財等を含み,対象とする文化財への影
響を検討する上で必要な情報を得るのに適切な範囲とする。
<調査地点>
・調査地点は,事業により直接的,間接的に影響を受ける文化財等の存在する地点と
する。ただし,周囲の樹林木や参道等,調査対象の文化財等と一体であると考えら
れる環境,文化財等の利用経路等も対象として設定する。
(4)調査期間等
対象の種類に応じて,文化財の状況が適切に把握できる期間とする。
利用については,年間を通じた状況を把握できる期間とする。
・季節により大きく雰囲気や利用の変動がある文化財等の場合(紅葉や桜等を要素に
持つ文化財等),これらの変化を適切に把握できる時期又は最も利用が多い時期に
調査を行う。
・上記以外の文化財等は特に調査時期を定めない。
21-5 予測方法
(1)予測内容
直接的・間接的影響による指定文化財等への影響の程度,文化財等の利用への影響
の程度を予測する。
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域は調査地域に準ずる。
・予測地点は調査地点に準ずる。
(3)予測時期対象時期等
① 工事中にあっては,影響が最大となる時期
② 工事が完了した時点,事業活動が定常状態に達した時期
<工事中>
・工事による影響が最大となる時期とする。工事中の影響としては,騒音による影響
が最も多いと想定され,他に工事による周辺の景観や雰囲気の悪化,利用者のアク
セスの阻害等の可能性があり,工事最盛期等を対象とする。
-386-
<供用後>
・存在影響(直接改変や施設の出現による景観や雰囲気の変化等)の場合は,工事完
了後であればいつでもよい。供用に伴う騒音その他の影響が想定される場合は,事
業計画において予定されている施設等が通常の状態で稼動する時期とする。施設等
の稼動が段階的に行われ,その間隔が長期に及ぶ場合は,それぞれの段階ごとに予
測する。
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・文化財の現況解析結果と事業計画の重ね合わせ及び事例の引用・解析
・保全対策
・事業に伴う直接的影響は,事業計画による改変区域図を作成し,文化財位置図等と
重ね合わせることにより予測する。
・直接改変以外の場合は,以下に示す観点から,既存の類似事例との比較等により影
響の程度を予測するか,又は保全対策の記述をもって予測とする。
①
周辺環境の改変や利用等に伴う,文化財等の雰囲気の変化の程度
・地形・地質,植物等の予測結果を踏まえて,事例の引用・解析等により,文化
財等の周辺の雰囲気を規定していると考えられる要素の量の変化等を予測する。
平面図上の構成要素の計測や緑視率等の写真の画面構成要素の計測等,なるべ
く定量的な指標を用いる。
②
周辺環境の改変や利用等に伴う,文化財等の利用環境の変化
・地形・地質,植物,騒音等の予測結果及び利用状況や雰囲気の要素の変化を踏
まえて,事例の引用・解析等により快適性等利用者への心理的影響を予測する。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 地形改変の範囲,施工方法等
② 湛水する範囲,水位変動等
③ 構造物の配置,規模,構造等
④ 大気,水等の汚染物質の排出状況,騒音の発生状況
⑤ 工事用機械等の稼働状況
2 将来環境条件
① 周辺の土地利用
② 文化財の利用状況
・事業計画のうち④については,それぞれ関連する項目の予測結果を活用する。
・将来環境条件の周辺の土地利用については,当該事業以外の開発計画等が明らかな
場合はそれらによる改革の状況(又は可能性)について前提条件とする。
-387-
21-6
環境保全対策
予測結果に基づき,以下の点に留意して環境保全対策を検討する。文化財等への直
接的影響については,回避以外の保全対策は極めて限定的な効果しか持たない。文化
財等の雰囲気や利用環境への影響は,複数の計画案を比較検討し,回避・低減を図る。
1
回避
・事業予定地の変更
・施設等の配置の変更
2
低減
・歴史的・文化的資源の一部を残し,新たな施設に利用する。
・施設の高さを抑える等工法の工夫
・施設の屋根や壁面の形状や意匠をを文化財等の雰囲気に合わせる
・工事により影響を受けた周辺環境等の修復
3
代償
・事業によって失われる文化財等の移築・移動
21-7
評価
① 影響の回避・低減が図れるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・指定文化財(文化財保護法,文化財保護条例,仙台市文化財保護条例)
①
影響の回避・低減の観点
・影響が回避できると判断できる例として以下のような場合が考えられる。
○指定文化財の改変を行わない場合
○周辺環境の変化による文化財等周辺の雰囲気や利用状況への影響を生じさせない
場合
・影響の回避が困難な場合には,複数案の比較等により,事業者が実行可能な範囲内
で最大限の低減ができているかどうかを判断する。その判断には次のような場合が
考えられる。
○指定されていない歴史的・文化的資源について,一部を保存・活用するなど,改
変程度が極力低減できている場合
○周辺環境の変化による文化財等周辺の雰囲気や利用状況への影響が極力低減でき
ている場合
○指定されていない歴史的・文化的資源について,それ自体は改変されるが,形態
等の要素が新たな施設等の中に活かされ,周辺環境との調和が図られている場合
・なお,本来回避すべき影響が回避できていない場合や低減が十分とはいえない場合
は,影響の回避・低減が十分ではないことを明記し,その理由を明らかにすること。
②
基準や目標との整合
・国,県,市の指定文化財については,基本的に原状を変更しないこと。
-388-
21-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とするが,特に代償を実施した場合
は詳細に調査を行う。
(2)事後調査の内容
・文化財等の状況並びにその周辺環境及び利用状況
・事業の実施状況及び負荷の状況(必要に応じて騒音の状況等関連する環境の変化の
状況)
(3)事後調査の方法
・現況調査手法に準じる。
(4)事後調査時期・期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。
-389-
22 廃棄物等
22
廃棄物等
22-1 基本的考え方
(1)考え方
廃棄物等は,大量消費大量廃棄型社会から持続可能な循環型社会への変革を目指し
て,環境影響評価法において新たに導入された項目である。
廃棄物については,近年の廃棄物の量の増大により,その処理・処分に伴う環境へ
の負荷の増大や資源採取に伴う環境影響が大きな社会問題となっている。
本市においても,びん,缶,古紙等の資源化が進みつつあるものの,市民生活や事
業所から出る廃棄物の量は,なお,増加傾向にある。また,ビルや家屋の解体から発
生する建設廃材や排水処理施設から出る汚泥等の産業廃棄物量も年々増加している。
このようなことを背景に,本市の環境基本計画では,環境負荷の少ない循環型都市の
構築に向けて,廃棄物の減量とリサイクルの強力な推進を図ることとしており,一人
当たりのごみの排出量やごみの資源化率の定量目標を定めている。
開発事業においては,事業実施に伴って発生する廃棄物の量の最小化と環境への負
荷の少ない適正な処理を行うことを目指す必要がある。
また,開発事業では造成に伴って残土を発生する可能性があり,これについても十
分配慮する必要がある。ただし,残土については事業区域内でバランスすることが必
ずしも自然環境にとって最善の案ではない場合があるため,動植物や生態系等への影
響も勘案しつつ検討する必要がある。
さらに,本市では上水道の需要と供給量が年々増加しているが,本市の環境基本計
画では,環境負荷の少ない循環型都市の構築に向けて,エネルギーの節約,下水道等
への負荷軽減,健全な水循環への貢献等の意味からも,節水や水の有効利用を進める
ことを目指している。
廃棄物等では,工事及び供用に伴う廃棄物(一般廃棄物及び産業廃棄物。ただし,
排水は水質汚濁で扱うためここでは除く。)のほか,工事に伴って生じる残土,さら
には事業活動,及び人の利用に伴う水使用を対象とする。
また,廃棄物等では,将来の環境の状態を予測するのではなく,事業により発生す
る廃棄物等の種類及び量や水使用量等を把握し,その低減がどの程度図られているか
によって評価する。このことから,原則として現況調査は行わない。ただし,予測に
必要な地域の廃棄物処理の体系や受け入れの可能性等については,概況調査において
実施する。
なお,事業に伴って廃棄物又は残土を区域内処理とする場合(事業者が自ら事業予
定地外に残土処分場を設置する場合,この場所も事業実施区域とみなす。),処理に
伴う影響は,影響評価項目としての廃棄物に含めるのではなく,廃棄物の処分を影響
要因としてとりあげ,大気,水質,動植物等影響が想定される項目を選定し,それぞ
れの項目で調査,予測,評価を実施することとする。
-390-
(2)環境影響要素
廃棄物等における環境影響要素は,以下のとおりである。
環境影響要素
廃棄物
内容,観点
・廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年
法律
137 号)において規定されている廃棄物(一般廃棄物
及び産業廃棄物)。ただし,排水については,水質に
おいて対象とするためここでは除外する。
廃棄物:ごみ,粗大ごみ,燃え殻,汚泥,ふん尿,廃
油,廃酸,廃アルカリ,動物の死体その他の汚物又は
不用物であって,固形状又は液状のもの
・工事に伴って発生する伐採木
・既設工作物の除去に伴って発生する廃棄物も対象
残土
・工事に伴って発生する残土
水使用
・事業活動及び人の利用等に伴う水使用
22-2 地域概況の把握
(1)目的
地域概況の把握(概況調査)の目的は,想定される廃棄物等について,減量化及び
適正処理等保全対策の方針を検討するため(以上,方法書に記載する事項)に必要な
情報を得ることにある。従って,市における廃棄物処理施設等の状況等を把握してお
く。
(2)概況調査の項目
概況調査の対象とすべき事項及びその調査方法は,以下を基本とする。
概況調査項目
調査方法
①廃棄物処理施設等の状況
・市の一般廃棄物処理の体系,処理施設の整備状況,
将来計画,受け入れ可能性等
・残土処分の状況,受け入れ可能地等
②土地利用の状況
・事業予定地の土地利用の状況(工事に伴う伐採木,
建築廃材等の発生の可能性を検討する観点から)
③法令等に基づく指定・規制
等の状況
・一般廃棄物,産業廃棄物の資源化等に係る基準・目
標等
(3)概況調査の範囲
・概況調査の範囲は市全体を基本とするが,土地利用については事業予定地内とする。
-391-
(4)概況調査の方法
概況調査の方法は,以下を基本とする。
概況調査項目
調査方法
①廃棄物処理施設等の状況
・市の既存資料,聞き取りによる。
②土地利用の状況
・地形図等及び現地確認による。
③法令等に基づく指定・規制
・市,県の廃棄物処理に係る計画等の既存資料による
等の状況
(5)調査結果とりまとめ(方法書における地域概況の記述)
記述の目次及び作成する図表等の例は以下のとおり。
●廃棄物等の概況目次例及び作成図表例
1 市内の廃棄物処理施設等の概況
・廃棄物等の処理体系についての記述
・廃棄物等の公的処理施設,処分地等における受け入れ可能性
2 廃棄物等対策検討上の留意点
・市の廃棄物処理の状況及び事業予定地の土地利用等を踏まえ,想定される廃棄
物とその減量化及び適正な処理・処分を検討する上で留意すべき事項
(②及び③の関連事項のうち,廃棄物等にかかる内容については概要を記述す
ること。)
22-3
スコーピング
・工事中の廃棄物等については,原則としてすべての事業において対象とする。とり
わけ,造成を伴う場合の残土,伐採木,既存建物等がある場合の建設廃材(コンク
リートがら等)に特に留意する。
・供用時は,工業団地や工場事業場等の生産活動を行う事業,スポーツ又はレクリエ
ーション施設や鉄道(駅),飛行場等人の利用を伴う事業,下水道終末処理場(主
に汚泥),廃棄物処理施設(焼却残さ,し尿汚泥等)等において主に対象とする。
また,土地区画整理等人の居住を伴う事業においても,廃棄物や水使用の抑制ある
いは有効活用のためのしくみといった配慮の観点から対象とすることが望ましい。
22-4
調査
・廃棄物等においては,原則として現況調査を行わない。
22-5 予測
(1)予測内容
廃棄物,残土の発生量,及びリサイクル等抑制策による削減状況等について予測す
る。
なお,あわせてその処理方法を明らかにする。
また,水の利用量削減状況について予測する。
-392-
(2)予測地域及び予測地点
・予測地域は事業対象区域とする。
(3)予測対象時期等
① 工事期間中
② 供用後は,事業活動定常状態に達した時期
<工事中>
・工事中の廃棄物等については,工事期間全体とする。工事計画において工期・工区
が設定され,それぞれの工事が間隔をおいて実施される場合には,各工期・工区ご
との予測を行う。
<供用後>
・事業計画において予定されている施設等が通常の状態で稼動する時期とする。施設
等の稼動が段階的に行われ,その間隔が長期に及ぶ場合は,それぞれの段階ごとに
予測する。
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・事業計画及び事例の引用・解析等により,事業実施に伴う種類別の廃棄物の排出
量,残土の発生量,水の使用量の算定
・あわせて,再資源化,雨水利用・処理水利用等のとりくみ状況を記述
①
廃棄物
工事中:工事中の建設廃材,伐採木等の廃棄物の種類ごとの発生量
供用時:事業活動及び人の利用に伴う廃棄物の種類ごとの発生量
・いずれの場合も工事に伴う作業(造成計画における切土・盛土量,樹木の伐採数,
既存工作物の撤去等),施設の生産計画,施設利用者の数及びその利用形態,従業
員の数,居住の形態などに基づき予測を行う。その場合の原単位等は,類似事業を
参考に決定する。
・原単位に係る参考資料として,以下のようなものがある。
○全国産業廃棄物の排出原単位(厚生省)
○建設系混合廃棄物の排出原単位(建設系混合廃棄物の組成・原単位調査報告書,
社団法人建設業協会,1994)
○事業系一般廃棄物の排出原単位(事業系一般廃棄物性状調査報告書,東京都清掃
局,1994)
・あわせて減量化等の対策内容,それによる減量化率,再資源化率等を明らかにする
とともに,発生する廃棄物の処分方法を明確にする。
・なお,廃棄物を敷地内処理する場合には,これに伴う影響を別途必要な項目におい
て予測する必要がある。
・また,廃棄物の一時的な保管の方法,廃棄物を業者等に委託して処理する場合は,
委託処理の内容(中間処理,最終処分等)とその管理の方法を明らかにする。
-393-
②
残土
工事中:工事による残土の発生量
・残土を発生する場合は,その処分方法を明確にするとともに,残土中に有害物質を
含むかどうかについて明らかにする。
・なお,事業者が事業予定地内において残土の処分を行う場合は,これに伴う影響を
別途必要な項目において予測する必要がある。また,事業者が自ら別に場所を確保
して残土の処分を行う場合には,残土処分地についても当該事業の一部として必要
な調査,予測及び評価が行われることが望ましい。
③
水利用
供用時:事業活動及び人の利用に伴う水の利用量
・施設の生産計画,施設利用者の数及びその利用形態,従業員の数,居住の形態など
に基づき予測を行う。その場合の原単位等は,類似事業を参考に決定する。
・あわせて雨水や再生処理水等の利用への取組内容,それによる上水使用量の削減率
等を明らかにする。
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 廃棄物の種類別の量,処理・処分方法
② 廃棄物の減量化,リサイクル等の種類,量,方法等
③ 残土の量,処分方法
④ 水の使用量,供給方法,水の再利用,雨水の利用量,方法等
2 将来環境条件
① 廃棄物処理施設等の能力,処理状況等
② 周辺の土地利用
22-6
環境保全対策
予測結果に基づき,廃棄物の減量等の対策を検討する。廃棄物等の場合,残土の場合,
造成計画によりその発生量は大きく左右される。複数の計画案を比較検討し,残土の発
生を回避・低減することが有効である。
1 回避
(残土)
・造成等事業計画の変更による土工量のバランス(バランスすることが自然環境の保
全上望ましくない場合もあるので留意すること。)
2
低減
(廃棄物)
・建設廃材の再利用(コンクリート破砕物の利用,伐採木のチップ化や燃料利用,建
設汚泥の骨材回収や土としての利用等)
・廃棄物の中間処理による減量化,減容化(汚泥の濃縮・調湿脱水,熔融等)
・廃棄物の再利用,再資源化による減量化・有効利用(事業所内,他事業者との連携
等)
-394-
・廃棄物発生量の少ない製造工程の導入
・廃棄物発生量の少ない素材・原材料等の選定,梱包材等の少ない納入業者の選定等
(残土)
・造成計画の変更による残土量の低減
・敷地内における残土の有効利用
・他の事業等との連携による残土の有効利用
(水利用)
・節水型機器の導入
・水使用量の少ない生産工程の導入
・水の循環利用,処理水の利用
・雨水の利用
22-7
評価
① 影響の回避低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・仙台市環境基本計画の目標(ごみ排出量及び資源化率)
評価の解説
①
影響の回避・低減の観点
・施設計画,工事計画,供用時の対策等,資源の有効利用や排出量の減量対策につい
て,複数案の比較,又は対策を講じない場合との比較(減量率)等により,事業者
が実行可能な範囲内で最大限の低減ができているかどうかを判断する。その判断は
次のような観点から総合的に検討すること。
○廃棄物,残土,水使用量が可能な限り低減されているかどうか
○減量だけでなく,資源化や再利用等を積極的に導入しているかどうか。
○周辺環境への影響の少ない処理・処分等の方法が選定されているか。委託により
実施する場合,委託者の適正な処理・処分を確保する方法を含む。また,処理等
までの保管に伴う周辺影響に配慮されているかどうかを含む。
・残土の影響評価に当たっては,土地利用や施設の配置計画,土地等の存在に係る複
数の案の比較による。ただし,土地等の存在影響に係る計画の案の評価は,原則と
して,残土の回避・低減の観点より,地形・地質,植物,動物,生態系,景観,触
れ合い活動の場等の評価を優先する。
②
基準や目標との整合
・仙台市環境基本計画では,以下のような定量目標を定めている。一人当りのごみの
排出量については環境影響評価における基準として整合を検討することは困難であ
るが,ごみの資源化率(この場合一般廃棄物)については,一般的な原単位から30
%以上の資源化を実現するための設備等を組み込むといったことが必要である。
○2010年度(平成22年度)における一人当りのごみの排出量について,1995年度
(平成7年度)レベル[1,217 g/日]以下に低減することを目指す。
○2010年度(平成22年度)におけるごみの資源化率について30%以上とすることを
目指す。[1995年度(平成7年度):16.4%]
-395-
・この他に,廃棄物の処理の方法が,廃棄物処理法に適合した適正な方法であるかど
うか,リサイクル法等に定める再生資源の利用目的等を達成しているか,その他法
令で定める適正な処理がなされているかについて検討する。あわせて,業界団体等
が定めている目標等がある場合には,これについても明らかにし,整合するように
努める。
22-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とする。
(2)事後調査の内容
・廃棄物の排出状況,処理・処分の方法
・残土の発生量,処分の方法
・水の使用状況,雨水・再生処理水等の利用状況
・事業の実施状況
(3)事後調査の方法
・廃棄物等の排出状況の把握
・処理状況の把握。処理フロー図を作成する。
・水の使用状況,雨水・再生処理水等の利用状況の把握
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。
・対象とする期間は予測結果を勘案し,1日,1か月,1年等適切な期間を設定する。
-396-
23 温室効果ガス等
23
温室効果ガス等
23-1 基本的考え方
(1)考え方
近年の地球環境問題は,人類共通の課題であり,あらゆる主体の積極的な取組が求
められている。個々の事業においても,二酸化炭素の排出削減等,地球環境への負荷
を削減する努力が必要である。このようなことから,環境影響評価法においては,温
室効果ガス等が新たな環境要素として導入された。
一般的に地球環境問題とは,地球温暖化,オゾン層破壊,海洋汚染,酸性雨,有害
廃棄物の越境移動,野生生物の種の減少,森林(熱帯林)の減少,砂漠化,発展途上
国の環境問題をさす。これらのうち,事業実施に伴って負荷の増大が予想され,かつ
地球環境に係る他の項目の中ではその影響がとらえ難いものをこの項目で対象とする
こととし,具体的には,二酸化炭素に代表される温室効果ガスの他,オゾン層破壊物
質,熱帯材の使用等を対象とする。
温室効果ガスとは大気中に存在し,地表から放出される赤外線を吸収し再び放射す
るガスをいう。この働きにより,温室効果ガスは地表面及び大気下層の温度を上昇さ
せる。本来,これらのガスは自然状態でも存在するが,近年の人為による温室効果ガ
スの排出量増加及び二酸化炭素吸収量の減少により,大気中の温室効果ガスの濃度が
高まり,地球規模の気温上昇が指摘されている。地球温暖化は,地球の気候システム
に攪乱を生じさせるものであり,予想される影響の大きさや深刻さから見て,人類の
生存基盤に関わる重要な環境問題の一つである。
地球温暖化問題に対処すべく国際社会では,1992年に「気候変動に関する国際連合
枠組条約」以下「気候変動枠組条約」という。)を採択し,我が国も1993年5月に加
入した。1997年12月に京都で開かれた気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)
において,我が国は,温室効果ガスを「2008年から2012年の第1約束期間に1990年レ
ベルから6%削減」することが必要となった。
本市の環境基本計画においても,地球環境の保全に寄与することを目指して,2010
年における一人当たりの二酸化炭素排出量を1990年レベル以下に低減することを目標
として掲げている。ただし,本市の環境基本計画は上記のCOP3より以前に策定し
たものであるため,その後の状況を勘案すると,より一層の削減が必要となってきて
いる。
温室効果ガスに代表される地球環境への負荷による影響は,原因と結果との間に時
間的,空間的な広がりがある。そのため,大気質,水質のように将来の地域環境の状
態を予測することによって事業の影響を評価することは適切ではない。そこで,これ
らの項目は,事業による負荷の程度を明らかにすることによって予測・評価を行うも
のとし,原則として環境の現況に関する調査は行わない。
-397-
(2)環境影響要素
温室効果ガス等における環境影響要素は,以下のとおりである。
環境影響要素
温室効果ガス等
・二酸化炭素
内容,観点
・気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)京都議定
書で定められた物質
・その他温室効果ガス
二酸化炭素(CO2
・オゾン層破壊物質
亜酸化窒素(N2O ),HFC (ハイドロフルオロカーボン),
・熱帯材使用
PFC (パーフルオロカーボン),SF6 (六フッ化硫黄)
・その他
),メタン(CH4
),
・オゾン層破壊物質
フロン,ハロン,トリクロロエタン,四塩化炭素等
・熱帯材,その他の外国産材
・HFC(ハイドロフルオロカーボン),PFC(パーフルオロカーボン)は,主に代替フロンとして使われてい
る。特にPFC(パーフルオロカーボン)は半導体の製造等に用いられている。
・SF6(六フッ化硫黄)は主にガス絶縁開閉装置(GIS) やガス絶縁変圧器などの電力機
器に用いられている
・なお,フロンも温室効果ガスであるが,モントリオール議定書によって生産・消費
全廃への日程が定められているため,気候変動枠組条約の対象温室効果ガスにはな
っていない。
23-2
地域概況の把握
地域概況の把握(概況調査)は,原則として実施しない。
23-3
スコーピング
・工事中は,相当程度のコンクリート工事を伴う場合,熱帯材の使用について対象と
する。
・供用時は,生産活動(エネルギー転換含む),その他の事業活動,人の居住等を伴
う事業,大量の新たな自動車交通を発生させる場合等において,二酸化炭素を対象
とする。
・その他,工事中又は供用時に相当程度の温室効果ガス,オゾン層破壊物質等を発生
又は使用する場合に対象とする。
-398-
参考
温室効果ガスの主な排出源
温室効果ガス
二酸化炭素
主な人為的発生源
スコーピングの留意点
・化石燃料の燃焼
・工場・事業場,工業団地,流通業
・廃棄物の燃焼
務団地,飛行場,廃棄物処理施
・工業プロセス(特にセメント
設,大規模建築物等で選定
や鉄鋼等の製造工程における
石灰石の分解等)
・電力を大量使用する場合,発電所
における排出を間接的に考慮す
・自動車の走行
る。
・他の建設機械の稼働,自動車の走
行によっても排出されるが,これ
らのみの場合,標準的には選定し
ない。大量の自動車交通を誘発す
る場合に選定
メタン
・ボイラー等における燃料の
燃焼
・工場・事業場,工業団地,廃棄
物,最終処分場,下水道終末処理
・燃料の生産,運搬時の漏出
施設し尿処理施設,畜産施設等で
・工業プロセス(カーボンブラ
選定
ック,エチレン等の製造工程
)
・農業(家畜の糞尿等)
・廃棄物の埋立,下水処理
一酸化二窒素
・ボイラ-等の固定燃焼施設
・自動車の走行
地,廃棄物処理施設(焼却施設)
・工業プロセス(アジピン酸,
等で選定
硝酸の製造プロセス)
・大量の自動車交通を誘発する場合
・医療用ガス(麻酔用)
考慮する。
・廃棄物の焼却,排水処理
・窒素肥料の施肥,家畜の糞尿
ハイドロフル
・冷媒(食品冷蔵,工場冷却装
オロカーボン
置,カーエアコン等)の充填
時,廃棄物の漏出
程,半導体洗浄工程等)
カーボン
六フッ化硫黄
・下水汚泥の燃焼を行う場合考慮す
る。
・工場・事業場,工業団地等で選定
・カーエアコンの廃棄,冷蔵庫等の
・工業プロセス(発泡材製造工
パーフルオロ
・工場・事業場,工業団地,流通団
・工業プロセス(半導体エッチ
ング,半導体洗浄等)
廃棄物の処分を行う場合考慮す
る。
・工場・事業場,工業団地等での選
定
・電気設備(変圧器等からの漏
出)
・工場・事業場,工業団地,電気工
作(変電所等)等で選定
・工業プロセス(半導体エッチ
ング,マグネシウムの鋳造等)
-399-
・特定の電気設備を設置する場合
考慮する。
23-4
調査
温室効果ガス等においては,原則として調査は行わない。
23-5 予測
(1)予測内容
二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス等の発生量,省エネルギー対策等による削
減量等について予測する。
また,熱帯材,その他外材の使用量及びその削減状況について予測する。
・地球環境への負荷については,地域環境の変化を予測しても適切な評価につながら
ない。よって,事業の負荷の程度を算定することをもって予測とする。
・なお,資源の再利用,エネルギーの有効活用等の取り組みについても,明確にする
ことが重要である。
・また,事業の種類によっては,使用する資材生産に係る二酸化炭素発生量や,製品
が使用又は廃棄される段階での二酸化炭素発生量への配慮など,ライフサイクルア
セスメントの視点も,可能な限り考慮することが望ましい。
(2)予測地域及び予測地点
・事業対象区域内とする。ただし,事業対象区域内で使用されるエネルギー等の生産
に伴う排出,アクセス交通に伴う排出を含む。
(3)予測対象時期等
① 工事期間中
② 供用後は,事業活動定常状態に達した時期
<工事中>
・工事期間中全体とする。ただし,工事が段階的に実施される場合には,必要に応じ
てそれぞれの段階ごとに予測する。
<供用後>
・事業計画において予定されている施設等が通常の状態で稼動する時期とする。施設
等の稼動が段階的に行われ,その間隔が長期に及ぶ場合は,それぞれの段階ごとに
予測する。
(4)予測方法
対象事業の特性等を考慮し,以下の方法により予測する。
・事業計画及び事例の引用・解析等により事業実施に伴う二酸化炭素の排出量,そ
の他地球環境への負荷に係る排出量又は使用量の算定
・あわせて,エネルギーの有効利用等のとりくみ状況を記述
・温室効果ガスの排出量の算定は,活動量に活動量当たりの排出原単位をかける方法
による。
・温室効果ガスについては,気候変動枠組条約に基づく我が国の温室効果ガス目録作
成に当たって使用されている排出係数を参考とすること。また,各温室効果ガスの
-400-
地球温暖化係数にも留意し,必要に応じて二酸化炭素換算を行う。
・なお,環境影響評価を行う計画の段階では,廃棄物その他の負荷の量について,詳
細な算定を行うほど計画の熟度は高くないと考えられる。よって,各種原単位や類
似事例の解析等により,種類及び量を概括的に把握し,それらについて,どのよう
な削減対策が可能かを検討することに意義がある。
①
二酸化炭素
供用時:事業活動及び人の利用に伴う二酸化炭素の発生量。電力使用に伴う二酸化炭
素についてもできるだけ対象とする。
・二酸化炭素の排出量の算定の原単位等の参考としては,以下のような資料がある。
○製造業のエネルギー使用量(敷地面積,従業員数等より算定):「工業立地基礎
調査工業立地原単位調査報告書」(財日本立地センター,1996)
○製造業の燃料使用料(出荷額より算定):「環境影響評価における原単位の整備
に関する調査報告」における製造品出荷額当たり燃料使用料原単位表(環境庁,
官公庁公害専門資料30-6,1995)
○事務所等における燃料使用料(床面積等から算定):「分散型電源システムの最
適化に関する調査」(財省エネルギーセンター,1985)
○一般家庭の燃料消費:「家計調査年報」(総務庁統計局)
○自動車排出ガスからの二酸化炭素排出原単位:「CO2 排出原単位(PM未規制)」
(環境庁大気保全局,1998),「車種別,燃料別排出原単位(案)」(財日本自
動車研究所,1992)等
(これらの詳細は,「環境アセスメントの技術~大気環境・水環境・土壌環境・そ
の他~」((社)環境情報科学センター,中央法規出版,1999)参照。)
・あわせて省エネルギー対策,自然エネルギーや未利用エネルギーの活用,自動車に
よる排出量の削減対策等の内容及びこれらによる二酸化炭素の排出量の削減率を明
らかにする。
・また,植物による二酸化炭素の吸収についても,極力考慮する。
・なお,二酸化炭素を重点化して実施する場合には,ライフサイクルアセスメント的
観点を導入し,原材料の生産・確保や製品の廃棄等に係る二酸化炭素発生量につい
ても対象とする。その場合,予測のための原単位は,「産業連関による二酸化炭素
排出量原単位」(地球環境センター)等を参考とする。
②
その他温室効果ガス,オゾン層破壊物質,熱帯材等
工事中及び供用時:工事並びに事業活動及び人の利用に伴う各物質等の発生量又は使
用量。
・あわせて発生量抑制策,他の物質への転換等の対策内容及びこれによる削減率を明
らかにする。
-401-
(5)予測の前提条件
1 事業計画
① 燃料,その他エネルギー使用量,種類等
② 自動車交通の発生量
③ 熱帯材,その他外材の使用量
23-6
環境保全対策
予測結果に基づき,環境に対する影響緩和の考え方から,積極的に環境保全対策を
検討する。温室効果ガス等の場合,その排出量を減らす工夫は数多い。先進事例等を
参考に積極的に取り組むことが求められる。
1
回避
・HFC(ハイドロフルオロカーボン),PFC(パーフルオロカーボン),SF6(六フッ化硫黄)等の不使用
2
低減
(二酸化炭素排出の低減)
・低炭素燃料への転換
・自然エネルギー,新エネルギーの利用
・コジェネレーションシステム等エネルギーの有効利用
・設備機器の効率向上
・生産工程の簡素化,工事の合理化・短期化
・建物の断熱化
・交通流の最適化(道路管制システム等)
・低公害車の使用
・モーダルシフト,物流の効率化
・通勤者,利用者の公共交通機関利用促進,自動車利用の抑制
・ごみの再資源化,ごみ処理におけるエネルギーの有効利用
・植栽等による二酸化炭素吸収対策
(その他)
・HFC(ハイドロフルオロカーボン),PFC(パーフルオロカーボン),SF6(六フッ化硫黄)等の厳格な管理
・熱帯材型枠の使用削減
23-7
評価
① 影響の回避・低減が図られるか
② 以下の基準・目標等との整合性が図られるか
・仙台市環境基本計画の目標(二酸化炭素排出量)
①
影響の回避・低減の観点
・施設計画,工事計画,供用時の対策等,エネルギーの有効利用や削減対策について,
複数案の比較,又は対策を講じない場合との比較(減量率)等により,事業者が実
行可能な範囲内で最大限の低減ができているかどうかを判断する。
-402-
②
基準や目標との整合
・仙台市環境基本計画では以下のような定量目標を定めている。
○2010年度(平成22年度)における一人当たりの二酸化炭素排出量について,1999
年(平成2年)レベル〔2.03t(炭素換算)〕以下に低減することを目指す。
・ただし,COP3の我が国の目標(2008年から2010年の第1約束期間に1990年レベ
ルから6%削減)にも留意すること。
・この他に,「仙台市地球温暖化対策推進計画」(仙台市,1995)との整合にも配慮
する。
23-8 事後調査
(1)事後調査の項目
・事後調査の項目は原則としてすべての選定項目とする。
(2)事後調査の内容
・温室効果ガス等の排出状況
(3)事後調査の方法
・温室効果ガス等の排出状況の把握
(4)事後調査期間等
・調査時期は,原則として予測対象時期とする。
・ただし,相当程度の間接影響が想定される場合は,工事完了後5年間程度を目安に,
継続的なモニタリング調査を実施すること。
-403-
資
料
編
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2号,125-130
M
「道路一般部を対象としたエネルギーベース騒音予測法」, 橘秀樹他,日本音響学会
1994
日本音響学会誌,50巻3号
M
騒音規制法の解説(三訂)
環境庁大気保全局編,新日本法規出版
M
開放型事業場騒音防止マニュアル
環境庁大気保全局大気生活環境室
1994
1994
M
建設作業騒音振動防止の手引き
東京都環境保全局,東京都環境保全局大気保
1994
M
低騒音化技術
中野有朋,(株)技術書院
1993
M
「鉄道騒音におけるSLOWピーク値と単発騒音暴露レベルの関
矢野博夫,日高新人,橘秀樹,日本音響学会
1987
(社)日本建設機械化協会
1987
全部
係」,日本音響学会講演論文集
M
建設工事に伴う騒音振動対策ハンドブック〔改訂版〕
M
実務的騒音対策指針・応用編
日本建築学会編,技報堂出版
1987
M
「道路特殊箇所の騒音の予測方法に関する検討―インターチェ
佐々木実,山下充康,日本音響学会
1984
佐々木実,山下充康,日本音響学会
1984
ンジ部周辺―」,日本音響学会誌,40巻8号
M
「道路特殊箇所の騒音の予測方法に関する検討―トンネル坑
口部周辺―」,日本音響学会誌,40巻8号
M
建設騒音の測定と予測
森北出版(株)
1984
M
騒音振動対策ハンドブック
日本音響材料協会編,技報堂出版
1982
M
衛生工学ハンドブック
庄司光,山本剛夫,畠山直隆編集,朝倉書店
1980
騒音・振動編
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-408-
振
動
題
名
編著者・発行者等
発行年
M
振動レベル測定方法解説,JIS Z 8735-1981
日本規格協会
M
二訂 公害防止の技術と法規 振動編
通商産業省環境立地局監修 公害防止の技術
※
M
発破による音と振動
1996
と法規編集委員会編,産業公害防止協会
(社)日本騒音制御工学会低周波音分科会編,
1996
山海堂
M
発破振動の測定と対策
チャールズ.H.タウンディン著
中川浩二
1995
ほか共訳,山海堂
M
建設作業振動防止技術指針
環境庁大気保全局特殊公害課
1994
M
建設作業騒音振動防止の手引き
東京都環境保全局,東京都環境保全局大気保
1994
M
工場・事業場振動防止技術マニュアル
環境庁大気保全局特殊公害課編集,公害研究
全部
1994
対策センター
M
「道路交通振動の予測」,騒音制御 Vol. 17. No. 6, 18-21
横田昭則,日本騒音制御工学会
1994
M
「工場振動の予測」,騒音制御 Vol. 17. No. 6, 13-17
高津熟,日本騒音制御工学会
1994
M
建設作業振動対策マニュアル
(社)日本建設機械化協会
1994
M
工場・事業場振動防止技術指針
環境庁大気保全局特殊公害課
1993
M
「道路交通振動対策事例」
,
騒音制御 Vol. 13. No. 3, 21-24
横山功一,日本騒音制御工学会
1989
M
騒音制御「特集 アセスメント」,Vol. 11, No. 2
日本騒音制御工学会
1987
M
建設工事に伴う騒音振動対策ハンドブック〔改訂版〕
(社)日本建設機械化協会
1987
M
公害振動の予測手法
塩田正純,井上書院
1986
M
道路交通振動防止技術マニュアル
環境庁大気保全局特殊公害課編集
1980
M
「地下鉄走行による地表振動予測」,日本音響学会講演論文
木村,織田,時田,日本音響学会
1978
M
振動規制技術マニュアル
環境庁大気保全局特殊公害課編集,
1977
集
ぎょうせい
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-409-
低
周
波
音
題
M
名
編著者・発行者等
「騒音・振動・低周波音の複合影響」,騒音制御 Vol. 22.
発行年
山田伸志,日本騒音制御工学会
1998
(社)日本騒音制御工学会
1997
No. 5, 239-242
M
低周波音影響評価調査(平成9年度環境庁委託業務結果報
告書)
M
超低音(聞こえない音)
中野有朋,技術書院
1994
M
「低周波音の評価」,騒音制御 Vol. 17. No. 6, 13-16
落合博明,日本騒音制御工学会
1993
M
「低周波音測定方法の提案について」,騒音制御 Vol. 16.
(社)日本騒音制御工学会技術部会
No. 4, 38-43
音分科会
「ベンチカット発破音特性とその予測方法」(INCE/JAPAN
国松直,日本騒音制御工学会
1989
船津引一郎,日本騒音制御工学会
1987
塩田正純,日本音響学会
1986
M
低周波音分科会資料
M
低周波
1992
1989-02-09)
「トンネル発破の特性と予測」(INCE/JAPAN
昭和62年
9月)
M
「トンネル発破から発生する低周波音の性状について」
(日本音響学会騒音研究会資料
1986-11-22)
M
低周波音の現状と対策について,技術レポート No. 6
日本騒音制御工学会技術部会
1986
M
「低周波空気振動防止対策事例集」,日本騒音制御工学会
藤原良二,日本騒音制御工学会
1986
時田保夫,日本音響学会
1985
技術レポート No. 6, 18-100
M
「低周波音の評価について」,日本音響学会誌 Vol. 41. No. 11,
806-812
M
「高速道路橋からの低周波音」,騒音制御「特集―低周波音」, 山田伸志他,日本騒音制御工学会
1984
第8巻3号
M
入門超低周波音工学(改訂版)
中野有朋,技術書院
1984
M
低周波音防止技術解説書
通商産業省立地公害局低周波音調査委員会,
1984
(社)産業公害防止協会
M
低周波空気振動調査報告書―低周波空気振動の実態と影響―
環境庁大気保全局
1984
M
「低周波空気振動の発生と対策」,騒音制御「特集―低周波
鈴木昭次他,日本騒音制御工学会
1980
小林理学研究所
1980
文部省科学研究費特別研究 超低周波音の生理・心理的影響
超低周波音の生理・心理的影響に関する研究
1980
に関する研究班報告書
班
音」,第4巻4号
M
低周波空気振動緊急防止対策調査(環境庁委託業務結果報告
書 昭和54年度)
M
M
「工場機械の低周波音について」,昭和54年
愛知県公害
愛知県公害調査センター
1979
「低周波音公害問題をめぐって」,日本音響学会誌,35巻7
時田保夫,日本音響学会
1979
環境庁
1977
調査センター所報7号
M
号
M
昭和52年度低周波空気振動等実態調査(低周波空気振動の家
屋等に及ぼす影響の研究)
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-410-
悪
臭
題
名
編著者・発行者等
発行年
M
臭気の嗅覚測定法
岩崎好陽,臭気対策研究協会
1997
M
悪臭防止対策の今後のあり方について(第二次答申)―臭気
中央環境審議会,環境庁
1997
環境庁大気保全局大気生活環境室編,
1996
指数規制に係る気体排出口における規制基準の設定方法につ
いて―
M
特定悪臭物質測定マニュアル
(財)日本環境衛生センター
M
臭気指数測定マニュアル
環境庁大気保全局大気生活環境室編,臭気対
1996
策研究協会
M
「一般環境臭気の評価方法の検討」,PPM, 25(3),36-40
岩崎好陽
1994
M
「工場排水試験法」,JIS K 0102
日本規格協会,「JISハンドブック10環境測
1993
M
臭気官能試験法 三点比較式臭袋式測定マニュアル 改訂版
岩崎好陽,臭気対策研究協会(公害対策技
定」に掲載
1993
術同友会)
M
ハンドブック悪臭防止法
環境庁大気保全局特殊公害課監修,
1993
悪臭法令研究会編著,株式会社ぎょうせい
M
M
「一般環境臭気の臭気濃度測定法の検討」,東京都環境科学
辰市祐久,岩崎好陽,上野広行,東京都環境
研究所年報,9-14
科学研究所
においの用語と解説
環境庁大気保全局特殊公害課監修,
1992
1990
(社)臭気対策研究協会編集(公害対策技術
同友会)
M
悪臭防止技術マニュアル総集編
悪臭防止技術マニュアル(総集編)
編集委
1988
員会編,公害対策技術同友会
M
地上気象観測法
※は最新版又は各年参照
気象庁,(財)日本気象協会
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-411-
1988
水質・底質・地下水汚染
題
名
編著者・発行者等
発行年
M
流域別下水道整備総合計画調査 指針と解説 平成8年版
(社)日本下水道協会
M
建設省河川砂防技術基準(案)調査編
建設省河川局監修,(社)日本河川協会編
1997
1997
M
改訂地下水の水質保全―地下水汚染防止対策のすべて―
環境庁水質法令研究会,土場環境センター・
1997
M
土壌・地下水汚染対策ハンドブック
中央法規出版
環境庁水質保全局水質管理課土場農業課監修,
1997
公害研究対策センター
M
「環境影響評価における原単位の整備に関する調査報告
環境庁
1996
(Ⅱ)」,官公庁公害専門資料 Vol. 31. No. 1, 1-40
M
五訂
公害防止の技術と法規
水質編
通商産業省環境立地局監修
M
河川の生物学的水域環境評価基準の設定に関する共同研究報
公害防止の技術
1995
と法規編集委員会編,産業公害防止協会
全国公害研協議会環境生物部会
1995
告書
M
漁場環境容量
平野敏行,恒星社厚生閣
1992
M
水理公式集
土木学会水理公式集改訂委員会,(社)土木
1992
M
地下水汚染調査の手引き
学会
環境庁水質保全局水質管理課,公害研究対策
1992
センター
M
改訂版
底質調査方法とその解説
環境庁水質保全局水質管理課編,
1991
(社)日本環境測定分析協会
M
地下水汚染論―その基礎と応用―
地下水問題研究会編,共立出版
1991
M
指標生物学
森下郁子,(株)山海堂
1986
M
指標生物―自然をみるものさし―
(財)日本自然保護協会,思索社
1985
M
湖沼の窒素及び燐に係る水質予測マニュアル
環境庁水質保全局
1985
M
水質試験法
日本工業用水協会
1984
M
富栄養化防止下水道整備基本調査の手引
(社)日本下水道協会
1984
M
漁業環境アセスメント(水産学シリーズ48)
吉田多摩夫,恒星社厚生閣
1983
M
湖沼環境調査指針
日本水質汚濁研究会編,公害対策技術同好会
1982
M
しゅんせつ埋立による濁り等の影響の事前予測マニュアル
運輸省第四港湾建設局
1982
M
貯水池流動形態のシミュレーション解析手法,電力中央研究
(財)電力中央研究所
生物モニタリングの考え方
改訂版
土木研究所
1979
所報告 研究報告:378022
M
環境影響評価報告書作成技法
L.W.キャンター,清文社
1978
M
数学モデル
現象の数式化
近藤次郎,丸善
1976
M
水文学講座
9
半谷高久編,共立出版
1975
M
薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針
建設省
1974
M
環境汚染と生物Ⅱ―水質汚濁と生態系―
手塚泰彦,共立出版
1972
D
公共用水域及び地下水水質測定結果報告書
宮城県
汚染水質機構
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-412-
※
水
象
題
M
改訂
名
編著者・発行者等
地下水ハンドブック
改訂地下水ハンドブック編集委員会,
発行年
1998
(株)建設産業調査会
M
建設省河川砂防技術基準(案)計画編
建設省河川局監修,(社)日本河川協会編,
1997
山海堂
M
建設省河川砂防技術基準(案)調査編
建設省河川局監修,(社)日本河川協会編,
1997
山海堂
M
建設技術者のための地形図読図入門第1巻読図の基礎
鈴木隆介,古今書院
1997
M
建設工事と地下水について
杉本隆男,基礎工
1996
M
「掘割構造物周辺の地下水流動保全に関する研究」,
大東憲二・植下協・市川悦男
1996
M
我が国の地下水
国土庁長官官房水資源部・地下水政策研究会,
1995
土木学会論文集,No. 535/Ⅲ-34
その利用と保全
大成出版社
M
地下水モデル
藤縄克之監訳,共立出版
1994
M
増補
建設省河川局都市河川室監修,
1993
M
地下水資源・環境論
水収支研究グループ,共立出版
1993
M
地下水調査及び観測指針(案)
建設省河川局監修,山海堂
1993
M
増補改訂
(社)日本河川協会
1988
M
道路土工―排水工指針
(社)日本道路協会
1987
M
地下水入門
地下水入門編集委員会編,土質工学会
1986
M
日本の地下水
「日本の地下水」編集委員会農業用地下水
1986
流域貯留施設等技術指針(案)
(社)日本河川協会
防災調節池等技術基準(案)解説と設計実例
研究グループ編,地球社
M
新版地下水調査法
山本荘毅,古今書院
1982
M
開発と水文環境アセスメント技法
高見寛,鹿島出版会
1980
M
最新地下水学
建設省水文研究グループ編訳,山海堂
1980
M
地下水盆の管理―理論と実際―
水収支研究グループ,東海大学出版会
1976
M
水の循環
榧根勇,共立出版
1973
M
農業水文学
金子良,共立出版
1973
D
流量年表
建設省河川局編,日本河川協会
D
ため池台帳・小規模ため池台帳
宮城県農政部農地計画課
D
仙台市普通河川調査 調査結果一覧(仙台市普通河川リスト) 仙台市
D
仙台市河川関係例規集
仙台市
1994
D
大仙台圏の地盤・地下水
奥津春生,宝文堂
1977
調査と実務のガイドライン(改訂新版)
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-413-
※
※
※
地形・地質
題
名
編著者・発行者等
発行年
M
建設技術者のための地形図読図入門第1巻読図の基礎
鈴木隆介,古今書院
1997
M
土質試験の方法と解説
土質試験法(第3回改訂版)編集委員会編,
1996
M
地盤調査法
土質調査法改訂編集委員会編,地盤工学会
M
土地・水情報の基礎と応用
国土調査研究会,古今書院
1992
M
宅地防災マニュアルの解説
建設省建設経済局民間宅地指導室監修
1989
M
道路土工―のり面工・斜面安定工指針
(社)日本道路協会
1986
M
空中写真の判読と利用
日本写真測量学会,鹿島出版会
1982
M
土質工学ハンドブック
土質工学会,技報堂
1982
D
土地分類基本調査(各図幅)
国土庁,経済企画庁,宮城県
D
地質図幅
地質調査所
D
日本の地形レッドデータブック
D
日本の活断層
活断層研究会
1991
D
第3回自然環境保全基礎調査 宮城県自然環境情報図(自然
環境庁
1989
D
第3回自然環境保全基礎調査
環境庁
1988
D
自然環境保全調査報告書(海域自然度調査・すぐれた自然調
環境庁
1976
環境庁
1976
地盤工学会
第1集
小泉武栄・青木賢人編,日本の地形レッド
1995
※
※
1994
データブック作成委員会
景観資源)
宮城県自然景観資源調査
査)
D
自然環境保全調査
宮城県すぐれた自然図(1/20万)
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-414-
地
盤
沈
下
題
M
名
土質試験の方法と解説
編著者・発行者等
発行年
土質試験法(第3回改訂版)編集委員会編,
1996
地盤工学会
M
「開削工事に伴う地盤沈下変位に関する評価手法と問題点」
杉本隆男・佐々木俊平
1992
土質工学会
1992
基礎工,Vol. 20, No. 11
M
山留めとシールド工事における土圧・水圧と地盤の挙動に関
するシンポジウム発表論文集
M
軟弱地盤の理論と実際
土質工学会
1992
M
地盤沈下とその対策
地盤沈下防止対策研究会編纂・執筆,環境庁
1990
M
建設工事に伴う公害とその対策(現場技術者のための土と
M
地盤沈下予測手法調査報告書
環境庁水質保全局企画課編
1982
M
地下掘削工事による地下水障害を防止するための調査報告書
建設省
1981
D
全国の地盤沈下地域~全国の地盤沈下地域の概況
環境庁
D
大仙台圏の地盤・地下水
奥津春生,宝文堂
水質保全局企画課監修,白亜書房
土質工学会
1983
基礎シリーズ6)
※は最新版又は各年参照
土
壌
汚
M:調査手法等に関する文献
※
1977
D:地域情報に関する文献
染
題
M
昭和56年度
名
土壌・地下水汚染対策ハンドブック
編著者・発行者等
発行年
環境庁水質保全局水質管理課・土壌農薬課監
1997
修,公害研究対策センター
M
土の環境圏
岩田進午,善田大三監修,
1997
フジテクノシステム
M
「汚染土壌の原位置ガラス固化処理」,資源環境対策,
村岡元司ら
1997
宮村彰
1997
日本地質学会環境地質研究委員会編,
1995
Vol. 33, No. 10
M
「テラスチーム法による土壌浄化技術」,資源環境対策,
Vol. 33, No. 10
M
地質環境と地球環境シリーズ②地質汚染の責任
東海大学出版会
M
環境土壌学~人間の環境としての土壌学~
松井健・岡崎正規編著,朝倉書店
1993
M
土壌汚染の現状と課題
浅沼智,産業公害
1990
M
土木工学ハンドブック
土木工学会編,技法堂出版
1989
M
土壌汚染の機構と解析―環境科学持論
渋谷政夫編,産業図書
1979
M
土壌汚染元素の定量法の解説
渋谷政夫他編,博友社
1978
M
土壌汚染・公害と防止対策
環境庁水質保全局土壌農薬課編,白亜書房
1973
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-415-
電
波
障
害
題
M
名
編著者・発行者等
建造物によるテレビ受信障害の調査と対策(平成7年3月
電波障害防止協議会
増補改訂版)
発行年
1995
改訂
M
建造物障害予測の手引き
NHK東京営業総局営業技術部
1988
M
電波障害ハンドブック
神戸幸生
1980
M
高層建築物による受信障害解消についての指導要領
郵政省
1976
郵政省
1958
(昭和51年3月,郵政省電波管理局長通達)
M
受信品位の評価(放送局の検査及び検査に伴う措置に関する
事務規定)(昭和33年3月28日,郵政省電波管理局長通達)
※は最新版又は各年参照
日
照
障
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
害
題
名
編著者・発行者等
発行年
M
日影規制の手引
(財)日本建築センター
1990
M
日照計画の知識
田中授,柳瀬正敏
1985
M
日影図作成の演習と実務
日照計画研究会,彰国社
1979
M
だれにもわかる日影規制とその対策
武井正昭
1978
M
日照の測定と検討
日本建築学会
M
公共施設の設置に起因する日影により生ずる損害等に係る
D
仙台市建築基準法に基づく条例規則集
1977
1976
費用負担について(昭和51年2月23日・建設事務官通達)
※は最新版又は各年参照
風
宮城県建築士会
M:調査手法等に関する文献
1994
D:地域情報に関する文献
害
題
名
編著者・発行者等
発行年
M
実務者のための建築物風洞実験ガイドブック
(財)日本建築センター編
1994
M
地上気象観測指針
気象庁
1993
M
都市の風環境評価と計画―ビル風から適風環境まで―
日本建築学会編
1993
M
これだけは知っておきたい
風工学研究所,鹿島出版会
1990
M
「風論」,新建築学大系8
村上周三
1984
M
「居住者の日誌による風環境調査と評価尺度に関する研究」
村上周三他
1983
日本建築学会環境工学委員会換気分科会
1981
日本住宅公団建築部
1981
新・ビル風の知識
日本建築学会論文報告集,No. 325, 80
M
「風害に関するケーススタディを対象とする風洞模型実験の
方法に関する申し合わせ」,建築雑誌,Vol. 96, No. 1181
M
高層建築物における周辺の気流の影響の予測・評価・対策に
関する指針(試案)
M
ビル風ハンドブック
(財)建設業協会周辺気流研究委員会
M
高層建築物における周辺の気流の影響とその対策に関する
日本住宅公団建築部
開発研究(その1, 2, 3)
D
~1978
気象庁観測データ
(財)日本気象協会(観測所ごとに,申込み
時点の2ヵ月程度前までのアークを,必要期
間について,FD等で提供,有料),
(財)気象業務支援センター(年単位の各種
気象データを,CD-ROMやMT等で提供,有料)
※は最新版又は各年参照
1979
1976
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-416-
※
植物(その1)
編著者・発行者等
発行年
M
植物版レッドリスト
題
名
環境庁
1997
M
植物群落レッドデータブック
我が国における保護上重要な植物種および
1996
植物群落研究委員会植物群落分科会,
(財)日本自然保護協会,
(財)世界自然保護基金日本委員会
M
日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料
水産庁
1994
~1995
M
「農耕地土壌分類 第3次改訂版」 農業環境技術研究所資
農耕地土壌分類委員会,農業環境技術研究所
1995
料,第17号
M
「日本産海藻目録」,藻類学会誌(43), 115-171
吉田忠生,吉永一男,中島泰
1995
M
日本植生便覧
宮脇昭ほか編
1994
M
森林の整備水準・機能計量等調査報告書(森林の整備水準の
林野庁
1990
評価手法)
M
海洋調査技術マニュアル~海生生物編~
(社)海洋調査協会
1990
M
日本植物群落図説
宮脇昭ほか編著
1990
M
我が国における保護上重要な植物種の現状
我が国における保護上重要な植物種および
1989
植物群落の研究委員会植物種分科会,
(財)日本自然保護協会
M
個別環境保全機能の評価「農林水産業のもつ国土資源と環
農林水産技術会議事務局,
境の保全機能及びその維持増進に関する総合研究」研究報告
農業環境技術研究所
1988
(第5集)モデル流域における国土資源及び環境保全機能の維
持増進方策の策定
M
農林水産業のもつ国土資源と環境の保全機能及びその維持増
農林水産技術会議
1987
進に関する総合研究 研究報告
M
土壌標準分析・測定法
土壌標準分析・測定法委員会編,博友社
1986
M
土壌調査ハンドブック
ペドロジスト懇談会編,博友社
1984
M
土壌・肥料学の基礎
江川友治他訳,養賢堂
1981
M
「自然保護上留意すべき植物群落の評価に関する研究」
環境庁編
1980
(第2回自然環境保全基準調査検討委員会植物群落評価分科
会報告書)
M
図説
日本の土壌
山根一郎他,朝倉書房
1978
M
草地調査方ハンドブック
沼田真編,東大出版会
1978
M
野外研究と土壌図作成のための土壌調査法
土壌調査法編集委員会編,博友社
1978
M
植物生態学講座4
沼田真編,朝倉書店
1977
M
森林の機能別評価実施要項
林野庁
1977
M
日本の植生
宮脇昭編,学習研究社
1977
M
図説
沼田真・岩瀬徹,朝倉書店
1975
M
土壌―土壌のみかた考え方
横井利直,東京農業大学社会通信教育部
1975
M
林野土壌の分類
林業試験場研究
1975
M
植物社会学2
ブラウン―ブランケ著
M
土壌分析におけるサンプリング
松尾嘉郎,博友社
1971
M
土地分類基本調査による統一的土壌分類
経済企画庁
1970
D
河川水辺の国勢調査年鑑(植物調査編)
群落の遷移とその機構
日本の植生
第280号
別刷
鈴木時夫訳,朝倉書
建設省河川局河川環境課監修,(財)リバーフロ
1971
※
ント整備センター編,山海堂
D
宮城の植物(第1号~)
宮城植物の会
1973
D
第5回自然環境保全基礎調査海辺調査
環境庁自然保護局
1995
安原修次
1993
東北大学理学部附属植物園
1993
~※
D
仙台の花
D
東北大学理学部附属植物園自生植物目録
※は最新版又は各年参照
第4版
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-417-
植物(その2)
題
名
D
宮城の野草
D
第4回自然環境保全基礎調査
編著者・発行者等
日本の巨樹・巨木林,
発行年
河北新報社
1992
環境庁編,大蔵省印刷局
1991
北海道・東北版(北海道・青森県・岩手県・宮城県・秋田県・
山形県・福島県)
D
日本の重要な植物群落Ⅱ
D
日本植生誌
東北版2
D
第3回自然環境保全基礎調査
東北
宮城県海域生物環境
環境庁編
1988
宮脇昭編著
1987
環境庁
1987
1984
調査報告書
D
野草園の四季
仙台市野草園監修
D
宮城野の四季―仙台の自然を探る―
高橋雄一
D
植生調査報告書
宮城県
D
国立・国定公園特別地域内
D
第2回自然環境保全基礎調査
D
日本の重要な植物群落
D
宮城の自然をたずねて―野山の植物
宮城植物の会編
1980
D
広瀬川の仲間たち
河北新報社
1977
D
仙台市とその周辺の現存植生図
仙台都市科学研究会
1974
D
宮城県動植物分布状況調査報告書
宮城県
1974
1982
1978
~1981
指定植物図鑑
東北編
動植物分布図
宮城県
東北版
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
環境庁
1981
環境庁
1981
環境庁編
1980
D:地域情報に関する文献
-418-
動物(その1)
題
名
編著者・発行者等
発行年
M
レッドリスト(汽水・淡水魚類)
環境庁
1999
M
レッドリスト(哺乳類・鳥類)
環境庁
1998
M
日本の希少な野生水生生物に関するデータブック
水産庁編,(社)日本水産資源保護協会
1998
M
オオタカの営巣地における森林の施業
日本林業技術協会
1998
M
レッドリスト(両生類・爬虫類)
環境庁
1997
M
猛禽類保護の進め方(特にイヌワシ・クマタカ・オオタカ
環境庁自然保護局野生生物課編,
1996
について)
(財)日本鳥類保護連盟
日本産野生生物目録―本邦産野生動植物の種の現状―無脊椎
環境庁自然保護局野生生物課編,
動物編Ⅱ
(財)自然環境研究センター
日本の希少な野生生物に関する基礎資料
水産庁編,(社)日本水産資源保護協会
M
M
1995
1994
~1995
M
M
M
日本産野生生物目録―本邦産野生動植物の種の現状―脊椎動
環境庁自然保護局野生生物課編,
物編
(財)自然環境研究センター
日本産野生生物目録―本邦産野生動植物の種の現状―無脊椎
環境庁自然保護局野生生物課編,
動物編Ⅰ
(財)自然環境研究センター
河川の生態学
補訂・新装版
水野信彦,御勢久右衛門共著,
1993
1993
1993
築地書館
M
日本の絶滅のおそれのある野生生物―レッドデータブック―
環境庁自然保護局野生生物課編,日本野生生
脊椎動物編
物研究センター
日本の絶滅のおそれのある野生生物―レッドデータブック―
環境庁自然保護局野生生物課編,日本野生生
無脊椎動物編
物研究センター
海洋調査技術マニュアル~海洋生物編~
(社)海洋調査協会
1990
M
鳥類の生活史
羽田建三
1986
M
指標生物学
森下郁子,(株)山海堂
M
指標生物―自然をみるものさし―
(財)日本自然保護協会,思索社
1985
M
日本の重要な淡水魚類(東北版)
環境庁編
1982
M
新水産ハンドブック
川島利兵衛他
M
日本の重要な昆虫類(東北版)
環境庁編
M
動物生態野外観察の方法
水野寿彦
D
鳥獣保護区等位置図
宮城県
D
みやぎインセクト(1)~
宮城昆虫同好会
D
自然百科シリーズ6
マリンピア松島水族館編,河北新報社
1993
D
宮城県昆虫分布資料10
宮城県の脈翅類
保谷忠良
1993
D
宮城県昆虫分布資料9
宮城県のクワガタムシ
児玉雅一ほか
1993
D
宮城県昆虫分布資料8
宮城県のシャチホコガ
保谷忠良
1993
D
自然百科シリーズ4
河北新報社
1992
D
宮城県昆虫分布資料7
D
トラップ大作戦
M
M
生物モニタリングの考え方
増補改訂版
編著,築地書館
編著,講談社
1991
1991
1986
1981
1980
編著,築地書店
1975
※
1980
~※
宮城の魚
宮城の野鳥
宮城県のハムシ
IN SENDAI FINAL PART
海の生き物地図
保谷忠良ほか
1992
保谷忠良
1992
D
第4回自然環境保全基礎調査
環境庁
1991
D
宮城県昆虫分布資料6
宮城県のゲンゴロウ
保谷忠良
1991
D
宮城県昆虫分布資料5
宮城県のシリアゲムシ
保谷忠良
1991
D
自然百科シリーズ2
河北新報社
1991
宮城の昆虫
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-419-
動物(その2)
題
D
宮城県昆虫分布資料1
名
編著者・発行者等
宮城県の半翅目
斉藤勝雄・保谷忠良
発行年
1990
改訂
D
宮城県昆虫分布資料2
宮城県丸森町の昆虫
仙台第二高校生物部
1990
D
宮城県昆虫分布資料3
宮城県の斑猫
保谷忠良
1990
D
宮城県昆虫分布資料4
宮城県のテントウムシ
保谷忠良ほか
1990
D
宮城県昆虫誌Ⅱ
D
宮城県のトンボ
D
第3回自然環境保全基礎調査
宮城県の甲虫
宮城県海域生物環境調査
日本鞘翅学会,渡辺徳
1989
高瀬雄一,ぶなの木出版
1988
環境庁
1987
報告書
D
第2回自然環境保全基礎調査
環境庁
1981
D
第2回自然環境保全基礎調査 宮城県海域生物調査報告書
動植物分布図
宮城県
環境庁
1979
D
第2回自然環境保全基礎調査 宮城県干潟・藻場・サンゴ礁
環境庁
1979
分布調査報告書
D
第2回自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書(哺乳類) 県自然環境保全調査委員会
1979
宮城県
D
第2回自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書(両生類・
(財)日本自然保護協会
1979
は虫類)宮城県
D
第2回自然環境保全基礎調査 宮城県海域環境調査報告書
環境庁
1978
D
仙台のこん虫
高橋雄一,宝文堂
1978
D
自然環境保全調査
環境庁
1975
~1976
D
宮城県野鳥分布調査報告書
田中完一他
1976
D
自然環境保全調査報告書(海域自然度調査・すぐれた自然
環境庁
1976
D
宮城県動植物分布状況調査報告書
宮城県
1974
D
宮城県昆虫誌Ⅰ
日本鞘翅学会,渡辺徳
1973
D
宮城県の蝶―その分布と生活環境
亀井文蔵・小野泰正
1971
調査)
宮城県の鱗翅
※は最新版又は各年参照
生
態
D:地域情報に関する文献
系
題
M
M:調査手法等に関する文献
名
編著者・発行者等
沿岸域における環境管理のあり方について,日本沿岸域学会
日本沿岸域学会
発行年
1998
調査研究報告 No. 5
M
保全生物学
樋口広芳
M
保全生態学入門
鷲谷いずみ,矢原徹一,文一総合出版
M
干潟の生物観察ハンドブック・干潟の生態学入門
秋山章男・松田道生,東洋館出版社
1974
M
生態学からみた自然
吉良竜夫,河出書房新社
1971
M
「動物の個体群」,動物生態学(宮地ほか著)pp. 163-262
森下正明,朝倉書店
1961
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
編著,(財)東京大学出版会
D:地域情報に関する文献
-420-
1996
1996
景
観
題
M
名
編著者・発行者等
都市の景観を考える
建設省都市計画課監都市景観研究会編,
発行年
1988
大成出版社
M
「既存データベースの活用による自然風景地の空間特性の定
下村彰男・前田豪・村田知厚
1987
油井正昭・石井弘,日本造園学会
1985
量的把握について」,造園雑誌 Vol. 50, No. 4, pp. 268-279
M
「森林の風致的類型化に関する研究」,
造園雑誌48(5), 258-263
M
「土木景観計画」,新体系土木工学59
篠原修,技報堂出版
1982
M
「自然風景地における垂直構造物の視角的影響」,
熊谷洋一,若谷佳史,日本造園学会
1982
造園雑誌45(5), 247-254
M
「自然景観地内建築物色彩イメージについての実験的研究」, 麻生恵,永嶋正信,進士五十八,西川生哉,
日本造園学会春季大会発表会要旨,57-58
児玉昇,日本造園学会
M
「道路の切土法面の景観評価に関する研究」,
山田順一,窪田洋一,小柳武和,中村良夫,
土木学会年次学術講演会講演概要集第4部,338-339
土木学会
M
「風景と建築の調和技術」,国立公園,356, 4-11/359, 17-22
進士五十八,麻生恵
1979
M
建築設計資料集成―1
日本建築学会編,丸善
1978
M
土木工学大系13
M
「土木施設景観の計量心理的評価手法に関する研究」,
M
「国立公園集団施設地区の景観評価に関する研究」,
環境
景観論
1981
1980
土木工学大系編集委員会,彰国社
1977
小柳武和,土木学会
1976
樋口忠彦,田口勤,長坂富雄,土木学会
1976
1975
土木学会年次学術講演会講演概要集第4部
土木学会年次学術講演会講演概要集
M
景観の構造
樋口忠彦著,技報堂
D
宮城県観光便覧
宮城県
仙台市観光協会
※
D
そぞろ歩き見て歩き
D
全国観光情報ファイル
D
杜の都
D
仙台松島地区ガイド
仙台・松島地区観光協議会
1994
D
仙台
仙台市観光協会
1994
南東北
運輸省運輸政策局観光部・各都道府県,
※
1995
日本観光協会情宣部
仙台タウンガイド
仙台市
D
第3回自然環境保全基礎調査
日本の自然景観
D
第3回自然環境保全基礎調査
宮城県自然環境情報図
東北版
D
宮城県自然景観図
1995
環境庁編
1989
環境庁
1989
宮城県
1981
(自然景観資源)
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-421-
自然との触れ合いの場
題
M
名
編著者・発行者等
「子供・親子・高齢者の身近な自然とのふれあい活動に関す
発行年
海津ゆりえ・宮川浩・真板昭夫・上杉哲郎
1997
小林昭裕
1997
海津ゆりえ・石光希代子・下村彰男
1996
山本・安部・増田・下村・岡本
1995
る研究」,ランドスケープ研究60(5)
M
「利用者の利用体験に対する態度に基づく自然公園の管理方
策」,ランドスケープ研究60(5)
M
「自然観察における動植物の認識構造に関する考察」,
ランドスケープ研究59(5)
M
「近隣居住者から見た「ため池」が保有する環境保全機能に
関する研究」,ランドスケープ研究58(5)
M
自然特性に着目した開発保全計画手法調査報告書
環境庁自然保護局
1993
M
「児童の風景描写からみた農村景観への意識化に関する
木下勇・中村攻,日本造園学会
1993
M
「子どもの自然遊びと緑地に関する研究」,
菅間記子・田端貞寿,日本造園学会
1986
環境庁自然保護局
1985
山田善之・田畑貞寿,日本造園学会
1985
1976
基礎的研究」,造園雑誌56(5)
造園雑誌49(5)
M
昭和59年度首都圏における緑地環境の整備保全計画調査
報告書
M
「世代間の自然要素に対する意識と遊びについて」,
造園雑誌48(56)
M
観光計画の手法
日本観光協会編
D
宮城県観光便覧
宮城県
※
D
観光統計概要
宮城県
※
D
そぞろ歩き見て歩き
D
全国観光情報ファイル
仙台市観光協会
南東北
運輸省運輸政策局観光部・各都道府県,
※
1995
日本観光協会情宣部
D
杜の都
D
仙台松島地区ガイド
仙台タウンガイド
仙台・松島地区観光協議会
1994
D
仙台
仙台市観光協会
1994
※は最新版又は各年参照
文
化
仙台市
M:調査手法等に関する文献
1995
D:地域情報に関する文献
財
題
名
編著者・発行者等
発行年
M
環境アセスメント・埋蔵文化財と法
日本土地法学会編,有斐閣
1982
M
「文化財の保護と再生」,ジュリストNo. 710
有斐閣
1980
M
文化財保護の実務
児玉幸多,仲野源一,柏書房
1979
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-422-
廃
棄
物
等
題
M
名
編著者・発行者等
産業廃棄物処理ハンドブック
厚生省生活衛生局水道環境部
発行年
※
産業廃棄物対策室編,ぎょうせい
M
廃棄物ハンドブック
廃棄物学会編,オーム社
1997
M
建築系混合廃棄物の組成・原単位調査報告書
(社)建築業協会
1996
M
廃棄物処理・リサイクル事典
新環境管理設備事典編集委員会,産調出版
1995
M
建設副産物・廃棄物のリサイクル
本多淳裕,山田優共著,
1994
M
建設副産物適正処理推進要綱の解説
(財)省エネルギーセンター
(財)先端建設技術センター編
1993
建設省建設経済局建設業課・事業調整官室
監修,大成出版社
M
再資源化技術の開発状況調査報告書(収集・運搬技術)
クリーン・ジャパン・センター
1992
M
「建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について」
厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策
1990
衛生第37号
室長通知
M
給排水・衛生設備の実務の知識(改訂第2版)
(社)空気調和・衛生工学会編,オーム社
1982
M
大規模住宅における家庭廃棄物処理システムに関する研究
日本住宅公団
1975
※は最新版又は各年参照
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
温室効果ガス等
題
M
名
編著者・発行者等
「地球温暖化物質・一酸化二窒素物性から対策技術まで
山崎裕康・守富寛・持田勲
発行年
1998
(3)低減化対策技術」,資源環境対策,34(3), 57-62
M
HFC等対策に関する報告書(平成7~8年度環境庁請負
(株)技術経済研究所
業務)
M
1996
~1997
「気候変動に関する国際連合枠組条約」に基づく
日本国政府
1997
泉邦彦
1997
第2回日本国報告書
M
「PFCと六ふっ化硫黄による地球温暖化」,人間と環境,
23(3), 182-187
M
地球温暖化対策技術評価検討会報告書
環境庁地球温暖化対策技術評価検討会
1996
M
地球温暖化対策技術評価調査(産業部門)報告書(平成7年
(財)日本システム開発研究所
1996
環境庁企画調整局
1993
渡辺征夫
1993
度環境庁請負業務)
M
温暖化対策を推進するための環境影響評価に関する技術的
手法調査
M
「固定燃料施設から排出されるメタン量の推定」,資源環境
対策,29(1), 47-58
M
地球温暖化防止対策ハンドブック 第1巻 総合評価編
環境庁企画調整局地球環境部,第一法規
1992
M
地球温暖化防止対策ハンドブック 第2巻 産業編
環境庁企画調整局地球環境部,第一法規
1992
M
地球温暖化防止対策ハンドブック 第3巻 民生編
環境庁企画調整局地球環境部,第一法規
1992
M
地球温暖化防止対策ハンドブック 第4巻 交通編
環境庁企画調整局地球環境部,第一法規
1992
M
地球温暖化防止対策ハンドブック 第5巻 エネルギー編
環境庁企画調整局地球環境部,第一法規
1992
M
オゾン層保護法
通商産業省基礎産業局化学品安全課,
1991
M
CO2・地球温暖化対策技術
境鶴雄著,(株)シーエムシー
1990
M
産業連関表による二酸化炭素排出原単位(Dos・Excel形式
環境庁国立環境研究所地球環境研究センター
1990
改正(逐条解説)
ぎょうせい
フロッピー添付)
※は最新版又は各年参照
(センターより入手可電話:0298-50-2349)
M:調査手法等に関する文献
D:地域情報に関する文献
-423-
仙台市環境影響評価技術指針マニュアル
平 成 11 年 11 月 発 行
仙台市環境局環境部環境計画課
〠 980- 8671
仙 台 市 青 葉 区 国 分 町 3- 7- 1
TEL 022- 214- 8243
FAX 022- 214- 0580
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