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外航海運セミナー(航行安全_環境問題)(PDF 形式)

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外航海運セミナー(航行安全_環境問題)(PDF 形式)
1
外航海運の航行安全・環境
問題への取り組み
2015年7月
一般社団法人日本船主協会
水島 大二郎
一般社団法人日本船主協会は、当協会のあらゆる活動においてわが国独占禁止法及び関係法令並びに諸外国の競争法令(以下「競争法」という)
を十分に尊重しこれを遵守するとともに、当協会の全ての会議が競争法に照らして、問題または疑念を惹起させることのないよう努めます。
日本船主協会 2015年度基本方針
(抜粋)
2
船舶の安全運航の確保および環境に関する取り組み
は海運企業にとり当然の責務であり、安全対策の拡充
や海洋・地球環境の保全に努め、広く社会に貢献して
いく必要がある。
第68回通常総会決議
(2015年6月17日採択)
3
1.航行安全への取り組み
航行安全を脅かす外的要因
(1) 海賊問題
(2) マラッカ・シンガポール海峡航行安全問題
(3) 不法移民・難民問題
(1) 海賊事案
4
最近の海賊等事案の発生状況
海賊発生事案の広域化

2009年、ソマリア国内情勢等を背景にソマリア沖・アデン湾における
海賊事案が急増。

わが国をはじめとする各国の海賊対処活動に加え、同海域を航行す
る各商船の自衛措置や民間武装警備員の配乗により、2012年以降
ソマリア周辺
の事案は大幅に減少。ただし、不審船情報が絶えず報告されており、
西アフリカ
また、ソマリア情勢が依然として不安定な状態にあることなどから、
海賊の潜在的な脅威は依然として大きい。

西アフリカでは誘拐事件が多発している他、東南アジア海域(特にイ
ンドネシア)では「サイフォニング」(注1)目的のハイジャック事件が増
加している。
注1:海賊が手配したタンカーを本船に横付けして積み荷の油をポンプで移し替えること。
アデン湾の地理的状況
5
○ スエズ運河を経由しアジアと欧州を結ぶ極めて重要な海上交通路
○ 非常に広大(長さ約1,000km、最大幅約400km)で海賊対策が講じにくい
*:マラッカ・シンガポール海峡は長さ約500km、最大幅約140km
地中海
スエズ運河
アデン湾
ソマリア沖・アデン湾におけるわが国の海賊対処 活動①
2009年3月
海上警備行動発令 護衛艦2隻派遣
(同年6月より、P-3C哨戒機2機派遣)
2009年6月
海賊対処法成立
骨子
海賊行為を犯罪として処罰
日本関係船舶に限らない、外国船の護衛
6
護衛艦出国・帰国行事の際に感謝の意を表明する
当協会関係者
民間船舶に著しく接近するなどの海賊船に対する停船射撃
(毎年7月に同法に基づく対処要項(1年間有効)の1年延長を閣議決定)
2011年6月
ジブチにおける自衛隊独自の派遣航空隊のための拠点開設
2013年9月にジブチを訪問する当協会朝倉会長(当時)
2013年11月
海賊多発海域における日本船舶の警備に関する特別措置法の制定
海賊行為が多発している海域を航行する日本船舶(原油タンカー等)において
小銃を所持した民間警備員による警備の実施等の措置を規定。
ソマリア沖・アデン湾におけるわが国の海賊対処活動 ②
出典:防衛省HP
7
商船の自衛措置
8
マラッカ・シンガポール海峡航行安全問題
マ・シ海峡通峡量(隻数)実績と予測
 日本の輸入原油の9割近くが通峡するマ・シ海
峡はまさに日本の生命線。
 日本財団調査によれば、2012年の通峡量は
2004年と比べ、隻数ベースで約35%増、載貨
重量トン数ベースで約74%増と大幅に増加。
 さらに、2030年の通峡量(隻数ベース)は2012
年と比べ、最大で約1.8倍と予測。
マ・シ海峡が一層輻輳し、船舶航行リスクが高まる中、国際海事機関(IMO)や
沿岸3か国を中心とする航行安全対策の検討が急務!!
9
違法移民・難民問題
海上人命安全条約(SOLAS条約)第V章第33規則
船長は人が遭難しているとの情報を受けた場合は、全速力で遭難
者の救助に赴かなければならいないと規定
 地中海では北アフリカから地中海を渡る難民ボートが急増。
商船は2014年に地中海で約40,000人にものぼる違法移民・難民を救出。
事例:2015年8月
当協会加盟船社(日本郵船)のコンテナ船がスペインのバレンシアからエジプトの
ポートサイドに向け航行中、マルタ救助調整本部から救助協力要請を受け、257人
の遭難者を救助し無事マルタに引き渡した。
 マラッカ海峡付近でも、ミャンマーのイスラム系少数民族であるロヒンギャ
民族の大規模な難民問題が顕在化しており、アジア地域への問題拡大が
懸念される
 各商船による大規模な難民救助や支援は困難。本船そのものの安全運航
を阻害する恐れ
10
11
2.環境問題への取り組み
(1) 温室効果ガス問題への対応
(2) NOx / SOx問題への対応
(3) バラスト水問題への対応
(4) シップリサイクル問題への対応
12
ほかにも・・・
・船上ゴミ・汚水処理問題
・船体付着物問題
バラスト水
温室効果ガス
NOx(窒素酸化物)
SOx(硫黄酸化物)
船のスクラップ
(シップリサイクル)
(プロペラ音などによる)
水中騒音
13
(1) 温室効果ガス問題への対応
「海運」=「環境に優しい輸送モード」??
14
飛行機/トラック/船舶 CO2排出量対比表(単位:グラム/トン・キロ)
0
100
200
300
400
Source: NTM, Sweden
500
注:トン・キロとは、輸送トン数に輸送距離をかけた数値。1トンの荷物を1キロ運ぶと1トンキロ。
増加する世界の海上荷動き量
15
出典: (公財)日本海事センター
国際海運からのCO2排出量①
16
 国際海運から年間排出されるCO2排出量はどこの国の年間分に相当??
二酸化炭素(CO2)排出量の多い国 (2010年データ)
単位:百万トン
順位
国名
排出量
1
中華人民共和国
7,258.5
2
米国
5,368.6
3
インド
1625.8
4
ロシア
1581.4
5
日本
1143.1
6
○○○
761.6
7
韓国
563.1
8
カナダ
536.6
参考:外務省ホームページ
ヒント
国際海運からのCO2排出量 ②
17
 2007年における外航海運のCO2排出量は世界産業別で2.7%
2050年には…
出典 : IMO MEPC58/INF.6
IMO GHG Study
国際海運温室効果ガス排出削減への対策が急務
IMO最新レポートによれば外航海運が占めるCO2排出量の
割合(2012年)は2.2%に減少!
国連気候変動枠組条約 (UNFCCC)
京都議定書
UNFCCC


1992年に気候変動枠組条約を採択。同年にリオデジャネイロ
定する京都議定書を採択。2005年発効。
いて署名。1994年発効。
• 先進国(付属書Ⅰ国)全体で2008年~2012年の5年間
目的は大気中の温室効果ガス(CO2、メタンなど)の濃度の安
「共通だが差異ある責任及び各国の能力に従う」という原則を
規定し、気候変動における先進国・途上国の取り扱いを区別。

COP3(京都)において先進国の温室効果ガス削減を規
において開催された「国際環境開発会議(地球サミット)」にお
定化すること。


18
条約自体は定量的・義務的な削減目標を規定せず。
で1990年比で5%の削減目標を設定。
• 各国毎に法的拘束力のある数値目標を設定。
※日本▲6%、米国▲7%、EU▲8%
途上国(非付属書Ⅰ国)には削減約束なし。
• 目標達成に利用できる措置として、京都メカニズム(排
出削減量を国際的に取引するメカニズム)の創設
国際海運からの温室効果ガス排出削減対策
19
出典:国土交通省資料
新造船CO2排出規制による効果
20
UNFCCC気候変動対策資金と国際交通
21
出典:国土交通省資料
国際海運からの資金拠出に係る問題点
22
出典:国土交通省資料
23
気候変動対策資金に関する交渉スケジュール
2015年 11月30日~12月11日 : COP21 (於:パリ)
2020年以降の新たな枠組みへの合意
海運業界が負担すべき額および徴収方法については、
専門的知見を有するIMOでの議論にゆだねるべき!!
Shipping Industry is not a cash cow!!
24
(2) NOx/SOx問題への対応
NOx・SOx規制~ MARPOL条約附属書VI ~
25
NOx規制
NOx新造船規制
■ 規制対象範囲
 130kWを超えるディーゼルエンジンを搭載する
船舶
■ 規制の仕組み
 エンジンの定格出力あたりのNOx排出量がエ
ンジンの定格回転数に応じて定められたNOx
基準値(g/kWh)を満足すること
■ 2次規制
 2011年から実施。
1次規制値より15%~22%削減
■ 3次規制*
 2016年から北米・カリブ海のNOx指定海域(NECA)
で実施。
 ECAにおいて1次規制値より80%削減。
 一部適用除外規定あり
① 24M未満のプレジャーボート
② 合計推進出力750kW未満で設計かつ、主官
庁が構造・設計上、適合困難と認める船舶
③ 2020年までに起工された、24M以上かつ
500GT未満のプレジャーボート
*NOx3次規制はNOx排出規制海域(NECA)を航行する
船舶のみ適用。NECA海域ごとの適用日は以下の通り。
① 北米・カリブ海NECA(2015年7月現在、世界唯一の
NECA海域):2016年1月1日以降
② 今後NECA指定される地域:当該指定の採択日以降
で個別に適用日を検討・設定。
NOx・SOx規制~ MARPOL条約附属書VI ~
26
燃料油中の硫黄分規制値 [%]
SOx規制
4.50
3.50
1.50
2018年に燃料油の
需要・供給等の調査
を行い、要すれば
2025年に変更
一般海域
1.00
0.50
排出規制海域
(ECA)
0.10
2010年
(7月1日)
2012年
(1月1日)
2015年
(1月1日)
2020年
(1月1日)
2025年
(1月1日)
NOx・SOx規制~ MARPOL条約附属書VI ~
27
排出規制海域(ECA)
米・加沿岸200海里海域
(NOxおよびSOx)
バルト海および北海海域
(SOxのみ)
*SOxECAとNOxECAは、別々に指定することも可能。
米国カリブ海海域
(NOxおよびSOx)
NOx・SOx規制~ MARPOL条約附属書VI ~
日本国内ECA指定検討
28
• 国交省は、2012年2月に「船舶からの大気汚染物質放出規制海域(ECA)
に関する技術検討委員会」を設置。わが国におけるECA設定の必要性、
必要な場合の適切なECA指定範囲を含めたIMOへのECA指定提案の基
礎データの検討を開始。
• 船舶からの大気汚染物質の排出量データの整備等を行い、シミュレー
ションによりECA指定による効果等の検証が行われた。
2013年7月19日に開催された同技術検討委員会において、国内ECA
設定による大気環境の改善効果は期待できない(船舶による寄与度
は低い)ことから、国内ECAの設定は行わないことを確認。
NOx・SOx規制~ MARPOL条約附属書VI ~
29
NOx三次規制(Tier III)に適合させるための削減技術
• 選択式還元触媒脱硝装置(SCR:Selective Catalytic Reduction)
• 排ガス循環システム
(EGR:Exhaust Gas Recirculation)
• エマルジョン燃料油の使用
• 給気加湿
SOx規制に適合させるための手段および削減技術
• 低硫黄燃料油の使用
• 硫黄分除去技術 (SOxスクラバー)
30
(3)バラスト水問題への対応
バラスト水に起因する生物移動に関する問題
31
出典:国土交通省資料
最も顕著な環境影響をもたらした10種の水生生物
32
出典:IMOホームページ
バラスト水管理条約の概要
33
締結国数: 44か国 (発効要件クリア)
合計商船船腹量 32.86% (2015年6月現在)
34
(4)シップリサイクル問題への対応
シップリサイクル(解撤)
35
 船の寿命(廃船に至る船齢)は、平均で25 ~30 歳程度
 老朽船舶の解体は、過去には日本でも実施されていたが、1970 年代から新興工
業国として台湾や韓国が担い、その後、1980 年代に中国が参入。1990 年代から
参入したインド、パキスタン、バングラデシュが現在主要な解撤国となっている。
2013年解撤実績
国別 (隻数)
シップリサイクル量(dwt)
船種(隻数)
1. インド
343隻
1. インド
280万
1. バルク船
387隻
2. 中国
239隻
2. バングラディッシュ
230万
2. 一般貨物船
245隻
3. バングラディッシュ
210 隻
3. 中国
170万
3. コンテナ船
180隻
4. トルコ
136隻
4. パキスタン
140万
4. タンカー
164隻
5. パキスタン
104 隻
5. トルコ
51.4万
5. Ro-Ro船
39隻
6. デンマーク
19隻
6. デンマーク
3.3万
シップリサイクル条約採択
36
出典:国土交通省資料
シップリサイクル条約の枠組み
37
出典:日本海事協会
 EUは加盟国に対してシップリサイクル条約批准を促すEU理事会決議を採択。
 わが国は同条約批准に向けた検討会を2013年12月に設置。
⇒ 各国がシップリサイクル条約を加速化させる可能性あり。
ご清聴ありがとうございました
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