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全ページ - 県立自然博物園

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全ページ - 県立自然博物園
自然博物園ブナの森情報誌
発行:山形県立自然博物園
2013年9月 179号
ネットワーク 月山
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
9月のブナの森に思う
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一難去ってまた一難、幸いと転じ
9月前半は、秋雨前線の影響で曇りや時々雨などパッとしない日
が多かったのですが、後半は台風一過晴れ晴れとした日がようや
く続きました。夏から多かった雨はキノコに勢いをつけて、特に
ツキヨタケが早々と成長して、所々で光り出し闇夜のブナ林で存
在感を出しています。存在感と言えばウエツキブナハムシ。ブナ
林を我がもの顔にしていたこのハムシは、いよいよ終息に向かっ
ているように感じます。大発生前の様に戻ったわけではなく、博
倒れたブナに、たわわに稔るブナの実と茂る葉っぱ
物園内のブナ林では少なくなったと言うだけで、月山山麓のブナ
林では異常な光景が依然として見られます。飛んでくる成虫の数、葉っ
ぱやシードトラップに落ちる糞、摂食されたブナの葉っぱ、地面やブナ
の幹を這う幼虫などが激減したことを実感しています。これで、ブナも
一安心か!と思っていた矢先、ブナの森を台風18号が通過して行き、
園内の散策路では8か所に倒木や幹倒れがありました。見えないところ
にも倒木などがあったと思います。なぜこんなにも折れたのか?ブナの
木を処理しながら様々な要素が見えてきました。まずはこの森が、老齢
期を迎えたブナが多いことです。しかし今年一気に老けた訳ではないの
でなぜ?二つ目は近年大きな台風が通過していなかった。三つ目はウエ
ツキブナハムシの減少。四つ目はブナの実が豊作であること。これらの
要因が絡み合って今回の現象が成り立ったと推理しました。それは、老
いたブナは次世代に後を継がせたいと思っていたが、気象と条件が折り
新たな命を育む場所
合わず大豊作の時期を決め兼ねており8年が過ぎていた。そうこうしている内に、月山山麓には大量のハム
シが襲来してブナの葉っぱを食い荒し始めて7年が過ぎていた。しかし、台風の季節には、ハムシによる摂
食で葉っぱは枯れ始め落葉しかけていたか、落葉していて風のダメージを受け難くなっていて倒れるまでに
至らなかった。ようやくハムシの猛威から逃れることになるこの年、ブナは大量の花を咲かせて今秋たくさ
んの実を稔らせた。成熟したブナの木になる実の数は、数万個から数十万個。一個の殻斗に2個の種、これ
で1g強になることを考えると、人間を一人から二人分程抱えた重さの樹冠にもなる。さらに今年はハムシ
の影響を受けていない青々した葉っぱがたくさん茂っており、この状態で強風を一気に受けてしまった老齢
期のブナは倒れずにはいられなかったと言うことです。しかし、
これは老齢期の森にとっては重要なこと。枝折れや幹折れした
木の周りには光が入りやすくなり成長過程の樹木には好条件
になり、根っこ返りして倒れた所では休眠していた種子が発芽
し、パイオニア植物の進入があり劇的な変化が現れる。来春誕
生するブナの実生も救われるだろう。今年の9月は、動かない
植物と変化の少ないような原生林が、ダイナミックに変化して
さらに成長する兆しを見せてくれたのです。 (まなべ)
ギャップには大量の陽が差し込む
9月23日(祝日)開催 参加者13名
コース:四ツ谷山の神∼弓張茶屋跡∼弓張平オートキャンプ場∼石畳∼石塔坂∼志津温泉∼玄海(ネイチャーセンター)
行楽日和の3連休の最終日、6月に続いて第2回目の六十里越街道トレッキングも気持ちよく歩くことができました。春と違うのは、7月の豪
雨で四ツ谷川に架かる橋が流出してしまい、スタートを一本木茶屋跡からではなく、四ツ谷川右岸の「四ツ谷山の神」からになったことです。2
キロ弱短縮されましたが、その分ゆっくり街道を堪能できました。今回の街道沿いには秋の実りが多く、目で見て楽しみさらに食すことで秋の味
覚を十分に楽しむことができました。宝の山であるブナの森、そして山
の恵みやありがたさを感じられたことが一番の収穫だったようです。
また、1400年の歴史があり内陸と庄内を結ぶ交易の道として、時
には軍道として移り変わり、江戸時代中後期には湯殿山信仰とともに隆
盛を誇った六十里越街道の一端には、御宝前に近づいていく楽しさとそ
れを支えた民衆のパワーを感じ、今も石に歴史がしっかり刻まれている
ことも実感できました。
(マナベ)
9月8日(日)開催
参加者8組22名
今回は親と子、別々の行動です。子供たちだけで湧き水を飲みにいきました。集合時間のころは雨脚が
強かったので、まずは館内で森のクリップを作りました。材料は春にみんなで拾ったウサギのうんち、名付け
て「ラビットボール」を使いました。それから葉っぱのカルタで遊んでいるうちにだんだんと晴れてきたので、
いよいよ森へ出発です!お父さんやお母さんは子供たちと離れてそっと後ろを歩きます。7月の集中豪雨で流さ
れてしまった橋を見て自然の威力に驚き、薬草になる苦い葉っぱをかじ
り、ミズナラの大木の下ではドングリをたくさん拾い、色とりどりのキ
ノコを見ながらやっと湧水にたどり着きました。大人に頼らずに自分の足で歩いた分、冷たい湧き水がと
ても美味しく感じたのではないでしょうか。帰りはブナの木のシーソーで遊び、センターに戻ってちょっ
と遅いお弁当になりました。雨の影響で周海沼まではいけませんでしたが、子供たちはしっかりと自分の
足で森を歩いて、一歩成長したのではないでしょうか。次回はいよいよ最終回「ブナの実拾いと焼いも作
り」で今年を締めくくりましょう。
(クラモトコウキ)
9月7(土)∼8日(日)開催
参加者7名
やっぱり今年も雨に見舞われてしまいました・・・。スタッフと男の子たちは楽しみにしていた森の中での野
宿ができずにがっかりですが、女の子たちはニコニコ。その訳は、夜のネイチャーセンターで鬼ごっこや肝試しが出来るからです。それでも野宿
を予定していた「ブナ林広場」までみんなで歩き、ゴロンと寝転がってちょっとだけ野宿気分を味わいました。その後はセンターで「落ち葉でお
絵かき」をしました。乾燥した押し葉を利用して切ったり重ねたりして自由に描きます。完成した作品は額に入れて飾れば立派な「落ち葉アート」
です。さて、来館者の帰ったセンターはとても静かです。ここからはいよいよ子供たちの時間!食後は真っ暗な館内で肝試しの始まりです。懐中
電灯を使わずに歩くと真っ暗闇の世界。ナイトミュージアムさながらの緊張感でドキドキです。就寝時間ギリギリまで大いに盛り上がりました。
野宿を諦めきれない男子は、屋根のあるピロティーに寝袋を持ち込んで寝ました。9月初旬でも雨の日は冷え込みます。寒くてなかなか寝付け
なかったようです。それもそのはず、明け方の気
温は11℃でした。獣の気配もなく、鳥の声で目
覚めることも出来ませんでしたが、寒さを味わっ
ただけでもいい経験だったかもしれません。
(クラモトカオリ)
9月の初旬は台風も通過しましたが、暑さも過ぎ、
後半は秋晴れの中、爽やかな散策が楽しめました。 花より実の生りに目が移る時期になり、緑の葉 の間に色鮮やかな膨らみが見え隠れしています。 水生生物
観察広場
マユミ ナンブアザミ 石
跳
川
ウチワドコロ コマユミ ツノハシバミ 親水広場
サルナシ オオカメノキ NC
管理者
道
ミズキ ウワミズザクラ この森で観察する植物1つ、1つに名前が付いていますが、近年はその植物の呼び名がいくつか
変わってきています。植物学ではゲノム(遺伝子情報)の解析が日々進む事によって様々な植物が分
類上で科や属が訂正され、変種も多く見つかるようになってきました。机上での自然科学が進歩す
る中で、自然を実際にじっくりと観察して歩いてきた人々は戸惑いを覚える状況です。 ですが、植物の継統や生態を解明していく事で私たちが自然から授かる恩恵もだいぶ形が変わっ
ているのも現実です。元々は自然に育った果実1種が品種改良されて、商店に並んだ品種を選んで
購入している私たちにとって品種は美味なモノを選択する為の記号です。 情報が氾濫した現代で
は植物の名前とは多くのモノを区別をする記号として使われるだけで充分な意味があります。 一方で、ブナの森をゆっくり観察し、植物の名前の由来を知ると豊かな気持ちになります。 例えばコクワヅルは別名『サルナシ』ですが、猿がこの実の食べ滓を木の股に捨てたモノが醗酵し
て良い香りがした事から人が果実酒を仕込む事になった。とか地元西川町の間沢には明和7年に建
立された庚申塔に三山参詣者が川で溺れた猿の親子を救ったお礼に猿酒を伝授された。などの昔話
も残っています。 ミズキは成長が早く、枝が八方に広がり、冬には枝が 紅くなる事から縁起モノとして村山地方では旧正月の団子刺しに用いる事 旧正月の団子 刺し
から『ダンゴギ』、『ダゴノキ』と呼ばれます。 オオカメノキは葉っぱの 虫食いが目立ち別名『ムシカリ』と呼ばれますが、信州では焚きつけに使 用できない悪臭から『クソッキ』『狐の尻拭い』とも呼ばれました。 昔の日本人の植物に対する親しみ方は、地方ごとの古い呼び名から 見える事があり、大切に学び伝えていきたいと思います。 (細谷) 2013 年 10 月 県立自然博物園 催し物案内
10 月 6 日(日) ・ 20 日(日)
10 月 25 日(金)
樹木の観察会
還暦シニアクラブ 『黄金の森に触れる』
(ブナの森楽園 共催事業)
秋の涼しさに慣れる頃、山はもう紅葉の時季に入ります。通常、
NC 周辺では 10 月初旬に色付き始め、10 月下旬には葉が落ちて
しまいます。ダイナミックに変化するこの 10 月の樹木を、NC でじっ
くり観察しませんか?
『樹木の観察会』は 2 回シリーズ。どちらかのみでも OK です。
■ 講
師
還暦を終え、第二の人生を模索しているシニア向けの野外体験
プログラム。毎月第 4 金曜日に、月山ブナの森を歩き、新しい自分
を探します。60 歳以上でガイド付なら森歩きを始めてもいいかなと
思っている方が対象です。今回は、周海上人がうっとりとした黄金
の森に触れます。
志鎌 節郎 氏
■ 時
間
■ 参 加 費
■ 持
物
(山形県立自然博物園 インタープリター)
■ 日
時
①10 月 6 日(日) 『落葉の訳を知る ・ 樹木の Q&A』
9:30 ~ 12:00 二次林にて野外観察会
13:00 ~ 15:00 レクチャーホールにて講義
10 月 27 日(日)
森を活用するクラブ 『杉林手入れ』
②10 月 20 日(日) 『彩る葉っぱを観察』
9:30 ~ 12:00 二次林にて野外観察会
■ 持
物
昼食(6(日)のみ) 飲物 雨具 長靴
11 月 10 日(日)
西川町カントリーウォーク 『海味探訪』
(NPO エコプロ 共催事業)
(山形県森林インストラクター会 共催事業)
かつては経済林と期待されたスギやヒノキの植林も、切られるこ
となく放置されているのが現状です。しかし、地球温暖化防止の観
点から、森林の適正な管理が必要と見直されています。
今回の森活部では、実際にスギの手入れ作業を通して、森林と
暮らしを考えます。
■
■
■
■
今回のカントリーウォークは、海味地区から間沢川を遡ります。
ここは、かつて鉱山で賑わい、何千人もの人々が暮らしていまし
た。秋深まる山手の集落のかつての賑わいの足跡を辿ってみまし
ょう。
■
■
■
■
■
時
間
集合場所
参 加 費
締
切
持
物
9:00 ~ 12:00
西川町交流センター あいべ
1500 円 (ガイド代・保険代)
11 月 7 日(木)
雨具 飲物 行動食
時
間
集合場所
参 加 費
持
物
HP・博物園広報には、上記を含めた催し物の詳細を掲載してお
ります。なお、お問合・お申込は、下記までご連絡下さい。
2013年9月14日の気温変化(NC・林間・山形市)
開館期間
開館時間
■ 入 園 料
■ 休 館 日
■
5/1 ~ 10/31
9:00 ~ 17:00
無料
月曜日(祝日の場合は翌日)
〒990-0734
山形県西村山郡西川町大字志津字姥ヶ岳 159
t e l : 0237-75-2010 f a x : 0237-75-2020
e-mail : [email protected]
U R L : http://gassan-bunarin.jp
34.0
32.0
30.0
28.0
気温(℃)
今号では、2013 年 9 月 14 日の気温変化を紹介します。
この日の NC は、23.3 ~ 27.3℃で推移しました。終日薄く曇ってお
り、時折、青空を覗くことができました。姥ヶ岳も、午前中は霞んでいた
ものの、午後は山頂を眺めることができました。当日姥ヶ岳に登った人
の話では、正午ごろの山頂から月山がはっきり見られたようです。
9 月前半の朝の気温の平均は、20.2±1.9℃でした。このことから、
当日朝の気温の 24.2℃は、この時期としては高かったと言えます。こ
れは、日本の南の海上にあった台風 18 号から暖かく湿った風が流れ
てきたため、と考えられます。NC では終日蒸し暑く、森をちょっと歩い
ただけでも、汗をかいてしまうほどでした。
また、NC と山形市の夕方の推移に注目すると、NC は山形市に比
べ、気温が大きく低下しています。秋の山では、日中よく晴れていても、
夕方などに急に冷えていく傾向があります。注意が必要です。(松木)
■
9:30 ∼ 14:00
西川町交流センター あいべ
500 円 (保険・資料代)
雨具 昼食 長靴 上下長袖 タオル 軍手
保険証の写し
考
ヘルメット・枝打ち鋸・大鎌は準備致します。
■ 備
気温のはなし
山形県立自然博物園 ネイチャーセンター
9:30 ∼ 14:30
1500 円
昼食 飲物 雨具 スパッツ 長靴 手袋
26.0
24.0
22.0
20.0
18.0
山形市
林間
NC
16.0
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
色彩の世界に、補色という色の組合せがあります。色の
変化を円形に並べたとき、対面に位置している色(例えば、
青と黄の組合せ)が、補色です。「合わないな…」と感じる組
合せ、と言えばいいでしょうか。
ところで、紅葉し始めの葉、例えばオオカメノキなどを観
察すると、色がじわじわと変わっていくのが分ります。瑞々し
い緑が、次第に赤に変わっていくグラデーションを、昨秋は
何度か見かけました。緑と赤はほぼ補色に近い関係なのだ
けど、どういうわけかとても綺麗に感じたものです。NC の見
頃は、神無月の半ば。見逃すまじ。(松木)
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