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【課題】 活性炭を用いたアマドコロエキスを脱臭する際の脱臭時間を短縮す
JP 2007-63239 A 2007.3.15 (57)【 要 約 】 【課題】 活性炭を用いたアマドコロエキスを脱臭する際の脱臭時間を短縮する。 【解決手段】 アマドコロ属に属する植物の抽出物の水溶液を用意する工程と;前記水溶 液量の25∼50%の活性炭を前記水溶液に投入する工程と;前記水溶液量の3%∼10 %のユキノシタ属に属する植物の抽出液を前記水溶液に加える工程と;当該活性炭とユキ ノシタ属に属する植物の抽出液を加えた水溶液を放置する工程と;を具えるアマドコロ属 に属する植物の抽出物を脱臭する方法を提供する。 【選択図】 なし (2) JP 2007-63239 A 2007.3.15 【特許請求の範囲】 【請求項1】 アマドコロ属に属する植物の抽出物を脱臭する方法において: アマドコロ属に属する植物の抽出物の水溶液を用意する工程と; 前記水溶液量の25∼50%の活性炭を前記水溶液に投入する工程と; 前記水溶液量の3%∼10%のユキノシタ属に属する植物の抽出液を前記水溶液に加える 工程と; 当該活性炭とユキノシタ属に属する植物の抽出液を加えた水溶液を放置する工程と; を具えることを特徴とするアマドコロ属に属する植物の抽出物を脱臭する方法。 【請求項2】 10 アマドコロ属に属する植物の抽出物を脱臭する方法において: アマドコロ属に属する植物の抽出物とユキノシタ属に属する植物の抽出液を10:1の割 合で混合した混合抽出液の水溶液を用意する工程と; 前記水溶液量の20%∼50%の活性炭を前記水溶液に投入する工程と; 前記活性炭を加えた水溶液を放置する工程と; を具えることを特徴とするアマドコロ属に属する植物の抽出物を脱臭する方法。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は生薬成分の脱臭方法に関するものであり、特にアマドコロエキスの脱臭に好適 20 な脱臭方法に関する。 【背景技術】 【0002】 アマドコロはユリ科の多年草で、根茎を食すると淡い甘みがあるのでアマドコロと呼ば れる。中国では、玉竹、あるいはイズイと呼び、その根茎を古くから滋養強壮、美顔(し み、そばかす、荒れ肌当の改善)に利用してきた。中国の古典薬草解説書である「神農本 草経」には、アマドコロを久しく服用すると、顔のシミ、黒斑をとり、顔色が良くなり、 潤いと艶をだし、生き生きとさせ、身も軽くなって老いを知らないとある。 【0003】 アマドコロの含有成分としては、コンバラマリン、コンバラリンといった強心配糖体、 30 また、ケリドリン酸、ニコチン酸、フラボノール、ステロイドサポニン、イソフラボン類 、オドラクタン、フルクタンが確認されており、これらの成分が相乗的に働いて肌の保湿 、抗炎、抗アレルギー、美白に寄与するのではないかと考えられている。 【0004】 本発明者の実験によれば、アマドコロは、メラニン合成の差異に触媒として働くチロシ ナーゼの活性を75.35%の良く成立をもって抑えることが確認されている。また、メ ラニン合成を促進する酸化反応の抑制の度合いを示すSOD活性をアマドコロについて調 べたところ、1.3×10 4 単位/gという高い抑制値がみられた。すなわち、アマドコ ロの有効成分であるコンバラリン、コンバラマリン等の配糖体あるいは、ステロイドサポ ニン、イソフラボン、オドラクタンなどの水溶性繊維によって新陳代謝が促進されて基底 40 細胞の分裂が活発になり、シミが角質層まで持ち上がり、薄くなるかあるいは消失すると 考えら得る。また、アマドコロのチロシナーゼ阻害作用、抗酸化作用によって、シミがで きにくくなるものと考えられる。 【0005】 このようなアマドコロの作用を利用してアマドコロを主成分とした皮膚症状を改善する 組成物が開発されており、化粧品の材料などに広く利用されている。 【 特 許 文 献 1 】 特 開 平 7− 277944号 公 報 【 特 許 文 献 2 】 特 開 2003− 121749号 公 報 【 特 許 文 献 3 】 特 開 2005− 170841号 公 報 【発明の開示】 50 (3) JP 2007-63239 A 2007.3.15 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 このように、アマドコロはすばらしい効果を奏する生薬であり、特にシミ、脂肌、乾燥 肌など、肌のトラブル改善には経口で用いても外用で用いても絶大な効果があることが臨 床調査で判明している。しかしながら、アマドコロエキスは酵母製剤のようなアミノ酸系 の匂いを放つため、外用剤として肌に塗る場合に悪臭が鼻につき、化粧品の材料としての 使用が敬遠されている。この悪臭を断つために香料によるマスキングが試みられているが 、満足する結果は得られていない。 【0007】 マスキングに代えて脱臭することが考えられるが、アマドコロの用途は直接肌に塗る化粧 10 品や医薬部外品であるため、化学薬品を避けると共に、アマドコロエキスの有効成分を変 性させないようにする必要がある。このような要求を満足させる脱臭剤として活性炭があ る。 【0008】 本発明者が、各種活性炭を用いて実験を行ったところ、強いアミノ酸系の匂いをもつア マ ド コ ロ エ キ ス を 完 全 に 無 臭 に す る に は 大 体 24時 間 以 上 の 時 間 が 必 要 で あ る こ と が わ か っ た。通常、化粧品を製造する場合には、主原料を完全に溶解させるために、蒸留水中に化 粧品の主原料を投入して放置しておく、仕込みと呼ばれる工程を踏む。アマドコロを使っ た化粧品を製造する際に、この工程において活性炭を投入して、仕込みと同時に脱臭を図 る こ と が 可 能 で あ る 。 し か し 、 こ の 仕 込 に か か る 時 間 は 、 化 粧 品 の 製 造 の 場 合 通 常 12時 間 20 程度であるが、脱臭に24時間かかるとなると、仕込時間も24時間かかることになり、 製造効率が上がらないという問題がある。 【0009】 さらに、活性炭を用いて脱臭した後のアマドコロエキス水溶液中の細菌数を調べたところ 、脱臭前より有意に増加していることがわかった。このため、活性炭で脱臭を行ってアマ ドコロを主成分とする化粧品を製造する場合には、活性炭によるアマドコロエキスの脱臭 工程に加えて、殺菌工程も必要になる。 【0010】 細菌が繁殖したアマドコロエキスを化粧品あるいは医薬部外品に適用可能な状態にする ためには、例えば殺菌作用のあるエタノール等を添加することが考えられる。しかしなが 30 ら、エタノールは皮膚への刺激性があるため、皮膚に直接塗る化粧品や、医薬部外品に用 いるのは好ましくない。 【0011】 本発明はこのような問題を解決するべくなされたものであり、脱臭工程に時間をかける ことなく、細菌の繁殖を抑えてアマドコロエキスを脱臭することができる方法を提供する ことを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0012】 上記課題を解決するために、本発明のアマドコロ属に属する植物の抽出物を脱臭する方法 は: 40 アマドコロ属に属する植物の抽出物の水溶液を用意する工程と; 前記水溶液量の25∼50%の活性炭を前記水溶液に投入する工程と; 前記水溶液量の3%∼10%のユキノシタ属に属する植物の抽出液を前記水溶液に加える 工程と; 当該活性炭とユキノシタ属に属する植物の抽出液を加えた水溶液を放置する工程と; を具えることを特徴とする。 【0013】 また、本発明の好適な実施例におけるアマドコロ属に属する植物の抽出物を脱臭する方法 は: アマドコロ属に属する植物の抽出物とユキノシタ属に属する植物の抽出液を10:1の割 50 (4) JP 2007-63239 A 2007.3.15 合で混合した混合抽出液の水溶液を用意する工程と; 前記水溶液量の20%∼50%の活性炭を前記水溶液に投入する工程と; 前記活性炭を加えた水溶液を放置する工程と; を具えることを特徴とする。 【発明の効果】 【0014】 本発明によれば、活性炭を用いた脱臭工程で、酸性を示すユキノシタエキスを適宜加え ることによって、アマドコロエキスのアルカロイド成分による弱アルカリ性が中和され、 脱臭時間を従来の約半分程度まで短くすることができる。また、ユキノシタエキスは抗菌 作用を有するため、脱臭工程における細菌の繁殖を好適に抑えることができる。更に、ア 10 マドコロエキスの効能を保ったまま、そのpHを肌に親和性のある弱酸性に保つことがで きる。なお、ユキノシタエキスは化粧品素材としての使用実績があり、その安全性が確立 されている。 【発明を実施するための最良の形態】 【0015】 本発明者は、アマドコロエキスを活性炭で脱臭するに際して、ユキノシタエキスを添加 してみたところ、活性炭だけで脱臭を行った場合の約半分の時間(12時間)でアマドコ ロエキスを無臭にすることができた。また、脱臭後の水溶液の細菌数を調べたところ、細 菌の増殖も見られなかった。さらに、この水溶液のpHは、肌に親和性のある弱酸性に保 たれることがわかった。 20 【0016】 脱臭に用いる活性炭の量は、重量比でアマドコロエキスの水溶液の20%以上、好まし くは30%∼40%、特に好ましくは30%が好ましい。活性炭の量が20%以下では、 脱臭効果があがらず脱臭時間が長く係りすぎる。また、活性炭の量が40%を超えても、 脱臭効果は変わらない。 【0017】 活性炭を投下したアマドコロエキスの水溶液に加えるユキノシタエキスの量は、重量比 で水溶液の3∼10%であることが好ましい。ユキノシタエキスの量が3%以下では、脱 臭時間を効果的に短縮することができず、また、脱臭後の細菌数を有意に抑えることがで きない。なお、ユキノシタエキスの量を10%以上にしても、それ以上の脱臭時間の短縮 30 効果は望めないし、殺菌効果も変わらない。 【0018】 最も好ましくは、アマドコロエキスの水溶液:活性炭:ユキノシタエキスの重量費が1 00:30:3とする。この混合比で脱臭すると、ユキノシタエキスの量がわずかである にもかかわらず、脱臭時間を従来の約半分に短縮することができ、細菌数を化粧品や医薬 部外品に適用できる程度に有意に抑えることができ、さらに、水溶液のpHを弱酸性に保 つことが可能である。 【0019】 ユキノシタエキスの添加は、アマドコロエキスとは別にユキノシタエキスを抽出して、 活性炭と共にアマドコロエキスの水溶液に加えても良いし、アマドコロとユキノシタを最 40 初に混合してアマドコロ/ユキノシタエキスを抽出して、その水溶液に活性炭を加えるよ うにしても良い。 【0020】 アマドコロ属に属する植物としては、例えば、ウスギワニグチソウ、ナルコユリ、ハナ クレナルコユリ、ワニグチソウ、マルバオオセイ、コウライワニグチソウ、ドウモンワニ グチソウ、コワニグチソウ、ヒメイズイ、ミヤマナルコユリ、ミドリヨウラク、オオナル コユリ、カギクルマバナルコユリ、クルマバナルコユリ当を挙げることができる。又、ユ キノシタ俗に属する植物としては、例えば、ユキノシタ、アジザイ、アマチャズル等を挙 げることができる。 【実施例】 50 (5) JP 2007-63239 A 2007.3.15 【0021】 実験1 30%のアマドコロエキス水溶液を用意して、その水溶液量(g)の40%、30%、 20%、10%に当たる活性炭(g)をそれぞれ投入し、各試料についてアマドコロエキ スの匂いが完全に脱臭されるまでの時間を調べた。また、脱臭後のアマドコロエキス水溶 液中の細菌数とpHを調べた。その結果を表1に示す。 【表1】 10 【0022】 この中では、活性炭を30%以上投入した水溶液が、無臭になるまでの時間が20時間と 比較的短く、アマドコロエキスの製造に好ましいことがわかった。しかしながら、活性炭 を30%投入した水溶液も、40%投入した水溶液も、いずれも細菌数が10×10 3 と 多いため、脱臭作業に加えて殺菌作用が必要であることがわかった。なお、これらの水溶 20 液のpHを測定したところ、いずれも弱いアルカリ性を示した。なお、活性炭を30%以 上 投 入 し た 場 合 で も 、 脱 臭 時 間 は 20時 間 か か る の で 、 上 述 し た 仕 込 の サ イ ク ル に 合 わ せ る には時間がかかりすぎていることがわかる。 【0023】 実験2 アマドコロエキスを30%溶かした水溶液を用意して、それぞれの組にその水溶液量( g)の30%に当たる活性炭(g)を投入し、さらに、前記水溶液量(g)の1%、2% 、3%、6%、8%に当たるユキノシタエキス(g)を加え、各々の試料について、アマ ドコロエキスの匂いが完全に脱臭できるまでの時間と、脱臭後の細菌数およびpHを調べ た。この結果を表2に示す。 30 【表2】 【0024】 この中では、ユキノシタエキスを3%、6%、8%加えた水溶液が、脱臭時間が12時 間と短く、仕込サイクルに好適に併せることができることがわかった。さらに、ユキノシ タエキス3%、6%、8%、を加えた水溶液では細菌数が10×10(個/g)と非常に 少 な く 、 p Hも 弱 酸 性 を 示 す こ と が わ か っ た 。 【0025】 実験3 アマドコロとユキノシタを10:1の割合で混合して抽出したアマドコロ/ユキノシタ エキスの30%の水溶液を用意して、その水溶液量(g)の40%、30%、20%、1 0%に当たる活性炭(g)を投入して脱臭を試みた。その結果を表3に示す。 40 (6) JP 2007-63239 A 2007.3.15 【表3】 【0026】 この表3に示すように、活性炭を30%以上投入した場合は、脱臭が完了するまでの時間 10 が12時間と短く、また、細菌数も10×10(個/g)と良好な結果を示した。なお、 活性炭の量が20%の場合は、脱臭が完了するまでの時間が15時間とやや長くなるもの の、細菌数は10×10(個/g)と低く抑えることができることがわかった。これらの 水溶液のpHは、活性炭の投入量が20%、30%、40%のものはそれぞれ弱酸性を、 10%のものは弱アルカリ性を示した。 【0027】 いずれの実験でも、完全に脱臭されたか否かは、健常者10名に直接匂いを嗅いでもら って判断した。 上記実験において、アマドコロエキスは、原料対応比5:1で熱水抽出したものを使用し た。一般細菌数は10個/100gである。ユキノシタエキスは、原料対応比5:1で熱 20 水抽出したものを用いた。一般細菌数は10個/100gである。アマドコロ・ユキノシ タ混合抽出エキスは、混合比10:1のアマドコロと、ユキノシタを原料対応比5:1で 熱水抽出したものを使用した。一般細菌数は10個/100gである。 活性炭には、ヤシガラ破砕炭、または石炭を用いた。一般細菌数は10個/100gであ る。 また、pH試験は、東洋濾紙株式会社製のブックpH試験しを使用した。細菌試験は、サ ン化学株式会社製のサンコリ一般細菌簡易試験紙と、株式会社テックジャム社製の恒温器 (KN3331410)を用いて行った。 【0028】 以上の実験より、 30 a) ア マ ド コ ロ エ キ ス を 活 性 炭 を 用 い て 脱 臭 す る 際 に ユ キ ノ シ タ エ キ ス を 加 え る こ と に よ って、脱臭が完了するまでの時間を短縮し、かつ、水溶液中の細菌の増殖を抑制すること ができる。また、pH値を肌に親和性のある弱酸性に保つことができる。 b) 最 適 条 件 ( 重 量 対 比 ) は 、 3 0 % ア マ ド コ ロ 水 溶 液 : 活 性 炭 : ユ キ ノ シ タ エ キ ス = 1 00:30:3(以上)である。 c) ア マ ド コ ロ と ユ キ ノ シ タ を 混 合 し て 抽 出 し た エ キ ス を 用 い て も 同 様 の 効 果 が 得 ら れ る 。 ことがわかった。 【0029】 上記の実験から、本発明を適用することによって、通常の化粧品等の製造における仕込 時間(12∼15時間)で、アマドコロの悪臭を完全に脱臭することができると共に、細 菌の繁殖を許容範囲内に抑えることができることがわかった。すなわち、就業時間が終了 する夕方に本発明を適用した仕込作業を行えば、翌朝には次の工程を行うことができるの で、作業効率にロスを生じさせることなく脱臭工程を行うことができる。また、適量の活 性炭と、ユキノシタエキスの使用で、脱臭、殺菌、pH調整を行うことができるので、製 造費を安価に抑えることができる。 【手続補正書】 【 提 出 日 】 平 成 17年 9月 21日 (2005.9.21) 【手続補正1】 【補正対象書類名】明細書 40 (7) JP 2007-63239 A 2007.3.15 【補正対象項目名】0023 【補正方法】変更 【補正の内容】 【0023】 実験2 アマドコロエキスを30%溶かした水溶液を用意して、それぞれの組にその水溶液量( g)の30%に当たる活性炭(g)を投入し、さらに、前記水溶液量(g)の1%、2% 、3%、6%、8%に当たるユキノシタエキス(g)を加え、各々の試料について、アマ ドコロエキスの匂いが完全に脱臭できるまでの時間と、脱臭後の細菌数およびpHを調べ た。この結果を表2に示す。 【表2】