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屋外用の高耐久〟性木製遊具の開発

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屋外用の高耐久〟性木製遊具の開発
屋外用の高耐久性木製遊具の開発
矢田茂樹*1・星
Development
of the
Shigeki
I.緒
YATA*
恭博*1*2
Durable-Wooden
1
and
Playground
Tomohiro
Hos=Ⅰ*
Equipment
1 *
2
言
過去20-30年の間に子供の遊び方が群れ型から孤立型に変化し,そのために子供の人
格形成に不可欠な「社会性を育む+ことが困難になりつつある1).この問題は単に虚び場
とか遊び時間ではなく,社食構造的な問題なので解決は容易ではないが,子供の遊び環
境改善の努力は地道に進められている。例えば都市における公園整備事業がそれである。
とくに住区の基幹公園である児童公園は都市化と車社会の進行によって従来の遊び場を
失った子供たちにとって大切な外遊びの場になっている。ただし,子供が自発的に集ま
りたくなるような魅力的な公園でなければ誰も集まらない。ポール遊びできる広場,良
とりできる草むら,ままごと遊びのできる砂場,木登りできる樹木とともにアスレチッ
クのできる遊具が求められている2)。とくに遊具は複合化することによって,比較的狭い
空間の中で遊びを集約的にしかも多様に展開できるので,小面積になりがちな都市の児
童公園を魅力的なものにする舞台装置として重要性が増している.
遊具材料にはコンクリート,鉄・アルミニウム,プラスチック,木材などが使われる
が,なかでも木材は感覚的材料特性(視覚特性,接触特性,接触温冷感,硬軟感,歩行
感など)及び物理的材料特性(弾性率,衝撃吸収性,吸湿性など)が遊具素材に向いて
肌にやさしい遊具としての
いるoすなわちコンクリ--トや金属製遊具とは全く異質の,
しか,L,木
認識が高まりつつあり,各地の公園・緑地等に木製遊具が設置されているo
製遊具に対する設置者及び管理者の評価は高くない。その唾由は耐久性に欠けることと
日常の維持管理に手間がかかるからである。遊具設置にあたっては10年間の耐用年数が
求められるが,現実の耐用年数は4-7年と評価されている3)。
劣化の主原因は木材の腐朽であるが,腐朽には木材の干割れも関与する。屋外用の木
材は耐久性を高めるため一般に防腐・防虫剤を加圧注入される。しかし遊具の場合,丸
太または心持丸棒が使用されることが多いので使用中に激しい干割れが発生する。割れ
目から防腐処理されていない内部-雨水が侵入すると容易に内部腐朽を起こす5)。したが
*
*2
1教育学部技術学教室
現, KK名古屋テレビ
104
矢田茂樹・星
恭博
つて,腐りにくくするためには内部まで薬剤を注入するとともに割れにくくする工夫も
必要である。割れは耐久性ばかりでなくとげ,ささくれの原因にもなるので安全上も好
ましくない。
遊具の安全性に関して消費者の苦情相談にのっている国民生活センターは木製遊具の
問題点として耐久性不足のほか,部材が大きすぎて子供の手で揺れないこと,水に滞れ
ると滑りやすくなることを挙げている4)0
これらの問題を解決するため,これまでに公園遊具の劣化実態調査5),高耐久性・高安
全性部材の開発6)と接合方法の検討7)を行ってきたが,それら結果を踏まえて今回,複合
型アスレチック遊具を試作し実用に供することによって,実地に耐久性及び安全性を検
証することとした。なお,この試作は(財)日本・住宅木材技術センターの1990年度建
造物適用技術推進事業の一環として行ったものである。
2.高耐久性遊具の拭作
遊具は対象年齢,設置場所によってデザインが異なるので,
状況の実態調査ができること,
①継続的に使用及び劣化
②使用実績を定量的に把撞できること,
③不特定多数で
はなく,使用者の年齢層を特定できること,を基準に設置個所を選択することにした。
設置個所として,
b)幼稚園・保育園,
a)児童公園,
c)小学校などが検討された
が,これらの中で小学校は上記の条件を満たすばかりでなく,高学年の児童は身体も大
きく運動能力も発達し遊具の劣化環境として最適なので,小学校に設置することとし,
横浜市教育委貞合に候補地推薦を依頼した。その条件は以下の通りである。
①遊具周辺部を含め11×13m以上のスペース(平坦地)があること。
②設置後4年間にわたって継枕的に劣化実態調査(2-3ヶ月に1臥約2時間/
回)を行わせていただけること。
③設置後,定期的に使用実態調査を行わせていただけること。
④体育その他の授業で使用した時は使用実績を記録していただけること。
その結果,横浜市若葉台北小学校(横浜市旭区若葉台2-14-1,児童数910人)が推薦され
た。当該校は高層住宅群の中にあり児童の遊戯・体育活動に対する住民の関心が高く,
しかも設置予定個所が元来砂場であったことから,設置に最適と判断された。
具体的な設計については,児童へのアンケート(図1)をもとに,教師の意見及び校
地の立地条件を考慮に入れて図2を作成した。この遊具は学痩遊具なので安全性ととも
に児童の運動能力の向上及び仲間づくりに役立つよう,次の点に特に留意した。
①高学年の児童も満足するプレイアクセサ))-を入れるo
②同時に複数の児童が互いに協力しつつ,時には競争しつつ遊べる(例えば滑り
台は幅広,ロープウェイは2連)0
③転落事故に対処するため,デッキレベルは1.8m以下にし,地面は砂場にする。
遊具の部材設計については,これまでの性能実験の結果6・
果5)を踏まえて表1の仕様書を作成した。
7)と遊具の劣化実態調査の結
105
屋外用の高耐久性木製遊具の開発
なお,遊具の製作は㈱三英・遊器具事業部において行い,施工は1991年2月5日-2
月13日に行った。そして2月14日から使用を開始した。使用開始直後に児童の遊び動態
の観察から,安全に係わる問題点が発見された。すなわち①吊り橋下から走り出た児童
②滑り台着地部と丸太ステップ部
が,ロープウェイ遊びの児童に衝突する恐れがある。
材が近接しすぎているため,滑り方によっては衝突する恐れがある。このため①につい
②については該当のステップ部材の
ては吊り橋下に飛び出し防止用の横棒を取り付け,
位置をずらすことで解決した。
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敬
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ヽ一
再き
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図1児童-の遊具希望調査
106
矢田茂樹・星
恭博
表1試作遊具仕様書(抜粋)
I
使用する木材
I.1 木材は国産のスギ材とし、腐れのない通直材を使用する。
i.2 デッキ・階段を除く構造部材は心持ち丸棒加工材を使用し、表面さまけばだち,ささくれを生じ
ないよう滑らかに仕上げる。部材直径は以下の通りとする。
①t?-プウェイ部材:直径200±2mm
〝
②その他の構造部材:〝
180
③丸太わたり、吊橋の疎み材:
1 20±2mm
1.3 デッキ、階段部材は厚板または平割を使用し、表面を平滑に仕上げる。仕上り厚さは4
上で均等厚さとし、端部及び角部は面取する。
0dⅦ以
2
使用する金属類
2.1 金属フェンスはステンレス鋼を使用し,艶消しとする。
2.2 接合金具類はステンレス網(SUS
304)を使用し、ボルト・ナットは弛み止め仕様とする。
2.3 丸太わたり・吊稿疎み材と吊り金具との著合は,見地最旦ではなく呈ね上皇畳
屋旦とする。また、チェーン取り付け金具には脱落防止処置を施す。
2・4デッキ普合用の釘はフロアー釘(長さは板厚の2.
(囲噂)
5倍を標準とする)を使用する。
3
木材の宙加エ
3.I 丸棒と丸棒との音合部はすベて下図のような切り欠きをする。
(囲打別
3.2 人の手の触れない最上部の水平構造部材(紺Of弧2本、
¢180mm 2本)には9峻間隔で4個
所から幅3Ⅷl.深さ20mnの背割り華人れる。
3.3 デッキを支える水平構造部材はた吐こ藍と立とする。
3.4 デッキ部材は上下両面にインサイジング加=牒さI
cmlイ州ジング密劉000*/m2以上ける。
3.5 手摺り・梯子となる水平丸棒(中120nn
)には次図のような切り込みを入れ、 30cm毎に貴通穴
をあけ・る.
}
_j■
1_
.._I_
■■l
㊨
幅12mdI、深さ20w
(Ⅴみぞ含む)
3・ 6ボルト穴をあける場合,ボルトとのクリアランスは3Iyn以下とする。
4
4.1
4.2
4.3
木材の妨鹿加工
注入に先立ってプレカットし、仮組立及び調整を行う。
部材杜全数、含水率25∬俵屠1 c血の平均値)以下に乾燥する。
加圧注入は次の3撞とする。
①吊楕・ネットクライム材・ロッククライム材:KK秋田ハイテクのハイコン勉乳
②丸太わたり・階使手摺材: KKコシイブレザービングのレザック+干割れ抑制剤勉取
③その他の部材:山陽木材防腐(秩)のニューBM処乳
4・ 4注入量は500kg/ma以上とし,浸潤長は表面から1
cm以上とする。
5
先
王
基礎工事は下図の通りとする。 (図喝)
ボルト・ナットは木材表面から1cm以上内部に叔まるようにする.
デッキ部材は木裏を上にし、相互に6-8nynの間隔をあけて固定する。
階段の踏み材と側板の者合は豊迫蛙望珪金とする。
木材の木口面及び3・2の水平構造器材のネリット部はシリコーンシーラント(クリヤー)で見
え掛かりよく防水する。
5・ 6施工後,雨水が滞留するボルト穴は埋め木または樹齢充填する。
5.1
5.2
5.3
5.4
5.5
107
屋外用の高耐久性木製遊具の開発
ワイド計り台
車ットクライム
ー「
ステップ
吊構
0
0
重く<り_
.i・
丸太渡り
ロッククライム
ロープウェイ
\
ク二
##
『
図2
完成した構想図
3.利用状況と劣化状況の網圭
3.
1利用状況の調査
試作遊具の利用頻度を知るために,
1991年5月2日(木),
8月25日,
11月2日(土),
1992年1月16日(木)の4回,調査した。この他,日曜日についても数回調査したo調
査方法は,所定の時刻に遊具上の各プレイユニットにいる児童数を調査員がカウントす
ることによって行った。また,必要に応じ写真及びビデオ撮影を行った。
3.
2
児童に対するアンケート調査
児童が試作遊具で普段どのように遊び,どのような危険を感じ,この遊具に対してど
のような要望を持っているかを知るためにアンケート調査を行うことにした。各学年2
②危険と感じた事例, ③具体的な
クラス,計12クラス380名の児童を対象に①利用頻度,
遊び方, ④遊具に対する要望,
⑤校庭にある他の運動具との比較,
⑥鉄製遊具との材質
比較の6項目について質問した。実施時期は1991年11月10日-15日である。
3
3.
劣化状況の調査
部材の摩耗,干割れ及び腐朽について, 1991年5月2日,
7月17日,
11月2日,
年1月16日の4回,調査した。また,接合部のがたつき,金具の弛み等についても随時,
点検した。各劣化項目の測定方法は以下の通りとし,毎回同じ個所を測定した。
1992
108
矢田茂樹・星
恭博
垂垂:摩耗しやすいと思われる12個所を選び,部材の厚さをノギスで測定した。同一
部材で摩耗の可能性のない個所があれば,比較用にその部分の厚さも測定した。
王塾生:割れを生じやすい心持ち丸材について16個所を選び,円周上に表れた干割れ
本数及び,そのなかで最も大きな割れの幅(最大幅)をノギスで計測した。
昼担:試作遊具部材はまだ腐朽を生じていないが,将来の発生に備え超音波診断を開
始することとしたoすなわち,
6個所の構造部材について,超音波伝搬時間を測定器(フ
ジクラ, WoodPoleTester,75KHz)で計測した。腐朽度に対応して伝搬時間が長くな
るので・内部腐朽を非破壊的に診断することができる。なお,伝搬速度は含水率に依存
するので,木材含水率を水分計(ケット,
HM-520型)で測定した。
4.明査の結果と考嚢
4.
1利用状況の調査結果
季節毎の利用状況調査結果を表2
5に示す。季節により利用者数には大きな差が認
められる。春季の5月2日は延べ300人近くが利用し,夏休み明け直前の8月25日は延べ
-
26人に過ぎない。秋季(ただし土曜日)と冬季は延べ100人琴度となっている。冬季の利
用頻度があまり低下しないのは比較的温暖な横浜市内という立地条件と好天によるもの
であろう。また,遊具素材の熱伝導率が低いことも寄与している可能性がある。ちなみ
に同じ校庭内にある鉄製のジャングルジムは冬季にはまったく利用されていない。
日曜日の利用状況については,校庭が休日開放され少年サッカーチームの練習が行わ
れているので,休憩中の子供たちやついてきた幼児たちが遊具を利用している。最大時
で15人程度,一日で延べ70人-80人の子供たちに利用されている.サッカーチームの子
供たちはスパイク靴を履いて遊具上を激しく走り回るので部材表面の損耗が激しい。
利用時間常については,
10 : 20-10
:
40分の中休みに集中的に利用され,次いで昼休
み,登下校時となっている。夕刻の利用者は下校後に再登校して遊ぶ児童である。
利用者の男女比を見ると常に男子の利用が多く,全体を通してみると女子の3倍に達
している。フィールド・アスレチック風のこの遊具は女子よりも男子にとって魅力的な
ものになっていることは明白である。小学校では男女の性差なく総合的な運動能力の向
上が求められているので,今後の課題として女児にとって魅力的な遊具のデザイン開発
が必要であろう。ただ,高学年の女子は休み時間になってもほとんど校庭に出ない8)と言
われているので,十分な事前調査が必要であろう。
各プレイユニットの利用頻度については,当初の予想通りロープウェイが高い人気を
保っており,中休みには順番待ちの行列ができている。ロープウェイのダイナミックな
動きには冒険心がかきたてられるのであろうo上下揺らし,左右揺らし,ねじり揺らし,
逆さづり,多人数乗り,
2対のロープを結んでブランコ乗りなど種々の遊びパターンが
工夫されている。滑り台,ロッククライミング,ステップは同じ程度に利用され,これ
らのプレイユニッ、トでは『天国と地獄』, 『じゃんけん遊び』等のゲームが頻繁に行われ
ているoとくにクライミングロープは自由度が高く児童の想像性を刺激するようで『ブ
109
屋外用の高耐久性木製遊具の開発
ランコ・ジャッキ・人間ロープウェイ遊び』などの創作遊びが行われている(写真1)。
吊り橋や丸太渡りも利用されるが,横揺らし,前後揺らししかできないため児童の創
意工夫の余地が少ないoこの他,ネットクライミングはほとんど利用されていない。こ
れは目立たない位置にあることとサイズが小さく変化に欠けるためであろう。
写真1クライミングロープを使った創作遊び
表2
春期の利用状況(平日)
1991年5月2日(木)
男子
02
0
8
10
8
a)
30
5
9
5
8
10
a
10
30
岳
40' J35
30
16
26
40
1
50
6
50
ll
0)
13
10
a)
5
30
3
40
7
50
5
CK)
2
10
4
:犯
4
0
30
10
・13
13
13
14
15
15
15
15
.15
15
16
16
16
16
18
監人款 Z∋0
l
各部の人数
合計人数
時刻
-8
人間ロープウェイ
b
ブランコ・ジャッキ遊び
a
女子
唱イ舛もク亨♭
吊島闇
ステヮ7 ネりト テサキ
備考
熱り闇費
開門
■0・
6
■l
6
8
・3
3
8
15
・6
 ̄・9■ 14
9
12
1
10
I.4
o■
0
1-
0
0
3
4
2
2
2
8
10
2
授業開始チャイム
3
5.
3
2
3
2
9
1
3
3
3
1
1
7
8
I
4
8
2
3
4
6
7
l
2
2
2
a)分休み終了
低学年下校開始
4
1
2
4
12
8・
4
2
6
3
2
2
2
59
137
2
1
4
7
6
3
5
2
2
1
ー了
2
1
3
5
2.
1
2 ̄
2
34
34
18
16
22
5
13
3
 ̄■■7
110
矢田茂樹・星
表3
恭博
夏期休業中の利用状況
1991年8月25日(日)
合計人数
各
部
人
の
数
時 刻
備
男子 女子 か1
Iぺり タライ 吊り 丸太 ステ77 i?i
ウェイ 台
ミ?F
檎 披ウ
9
10
10
30
00
30
ll
00
ll
30
12
(泊
30
CK)
30
00
30
00
30
12
13
13
14
14
15
15
16
延人款
表4
0
0
0
2
2
0
1
0
0
0
0
1
O
10
0
0
1
階段
くくウ
1
.2
0
2
.(氾
30
17 00
17
30
18 EX)
16
0
0
0
0
1
2
0
T∼?+ 壁
1
8
1
2
アールの帰路■
1
0
0
I
0
1
5
0
0
2
1
3
23
3
15
5
0
0
I
0
0
3
.・3
秋期の利用状況(土曜)
1991年11月2日(土)
・各部.の人数
・ト合計人数
lD-7iすべ=タラJi即i丸太i神,1j如=紬f塁 i階段
lくぐぅ
I
li男子!好 暮叫!削ミ捌橋!脚!・!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄1
I
i備考!
8:CO
8:10
・8:20
8:30
10:a)
10:30
10:40
ll:覧)
12:(刀
12:30
13:00
13:30
14:〔氾
14:30
15:α)
15:30
16:【氾
16.・30
17:(カ
延人数
2
3
0
2
0
2・
0
3
4
4
2
4
0
0
12
1
0
2
0
2
0
o■
0
,9
ll
0
0
5
8
0.
3
2
3
56
開門
朝自習
ll
5
2
2
2
3
7
1
劫分休み終了
放課後
4
2
1
1
0
0
1
5
0
5
3
2
3
兎
1
5
6
5
5
4
2
2
2
3
i8
2
3
7
9
7
.3
.7
腰業開始チャイム
:犯分休み開始
、1.
111
屋外用の高耐久性木製遊具の開発
表5
冬期の利用状況(平日)
合計人数
 ̄各部の人.数
時刻
男子 女子
8:03
8:10
8:20
8:25
8:知
10:2O
10:30
10.・40
10:45
10:50
13:10
13:30
13:40
13.・45
14:48
15:00
延人数
2
1
9
17
16
0
5
2
7
0
0
4
4
15:a)
15:40
16:00
16:30
4.
0
0
5
8
0
1992年1月16日(木)
すべりタライ吊り
屯イ
台
ミング 檎
lト1
備考
符ワ7 わト
額
デーキ壁
・く(り
搾肝弓
朝自習
0
0
0
5
8
0
0
0
10
10
1
0
2
2
3
0
5
0
0
3
0
3
0
84
33
階段
授粟詞姶チャイム
劫分休み開始
1
7
5
1
13
8
5
3
4
■l
I
4
5
4・
2
6
1
.26 ̄
畳拝み開始
7
2
2
1
:狐分休み終了
1
昼休み終了
放課後
2
2
4
3
0
0
3
57
13:
10
13
22/I
2
児童に対するアンケート調査の結果
児童に対するアンケート調査結果を図3に示すo
まず利用頻度については全体的に見
ると65%の児童が週に1回以上利用している。学年別に見ると1
度が高いが,高学年の5
-
-4年生までは利用頻
6年生は50%に低下している。
遊ぶ時間帯は低学年では中休みが多く,高学年になるにつれ放課後が多くなっている。
一回に遊ぶ時間は低学年ほど長く,高学年ほど短くなっている。全体としては10分程度
が50%, 30分程度が30%となっている。
『何人で遊ぶか』という質問に対しては学年が上がるにつれ多人数になると答えている
が,全体的には2.
3入で遊ぶことが多い。
『遊んでいる時に危機を感じたことがあるか』という質問に対しては40%の児童が『あ
る』と答えている。その報告例を見ると不注意や悪戯によるものが多いが,中にはクラ
イムロープによる首吊り遊びが2伴食まれている。これはロープを首に巻いてデッキか
ら飛び降りる遊びで,低学年の女子が1名首に擦り傷を負って保健室に運ばれている。
この遊びは極めて危険で重大な事故を招く恐れがあるので,全児童に対して教師から厳
重な注意を促すとともに,¢22mmのテトロンロープを¢30mmのクレモナロープに交換した。
その後このような危険遊びは報告されていない。安全にはなったが,太くしかも重くな
ったため,低学年児童には使いにくいものとなった.ロープの危険性と使い易さの関係
についてはさらに詳細に検討する必要がある。
112
矢田茂樹・星
質問A
恭博
「一週間にどれくらいアスレチックで遊ぶか+
ほぼ毎日
金
).4E]
55
l伴
1.2日
t
12.0
あそばない
l
47.2
不明
)4.!
1.0
12.I
侶学年
19.4
4l.0
25.)
2.2
中学年
12.1
l
5l. 0
28.9
2.2!
0.9
J一一■
帯革年
44. 5
〟
48. 6
2.2
1
質問B
21
40
i1
80
101
(X)
「アスレチックでいつ遊ぶことが多いか+
あさ
全
中休み
体
A休み
28. 6
u
放PL洗
練日
不切
”.I
ll. 1
S2
2.i
催事年
lJ
18. 7
80
17.2
川.1
∼.I
-・--●
●
[
!o.6
中学年
./
17.5
!2.2
18. ∼
1.4
”
高学年
67.8
0
質問C
20
11
13.8
ll.1
80
101
80
(I)
「アスレチックで何分くらい遊ぶか+
11分社よ
全
体
)l分塩Z(
SO.3
低学年
1時両種よ
!0.0
!2.3
8β
!7. i
I
12.8
不明
ll.丁
17.3
ー-
l'.■・--・
■
中学年
7dE学年
!o.o
l
80.i
0
質閉D
l
58.1
20
41
s5J朗
l弘
22.I
iO
ll.I
1gl (i)
80
「アスレチックで何人程度の友達と遊ぶのが多いか+
l人以上
全
体
4.5人
軸
2.3人
28. 2
1人不明
5l.S
”
4.8
低司丘年
糾
18.2
5l.6
I
I
ll.i Si
・ヽー・ー_.ー、_\≠
中学年
ll.0
24.5
57.4
軸
1.5
l′ー■■■---、ー/.r1
有司亡年
42. 0
8
20
17.4
10
61
7.6
王8
81
101
(A)
図3
アンケート調査結果
若葉台北小学校各学年2クラス計12クラス,
・低学年(1,
・高学年(5,
2年)
132名・中学年(3,
6年)
122名
380名を対象としたもの
4年)126名
113
屋外用の高耐久性木製遊具の開発
質問E
「アスレチックで遊んでいるとき危険を感じたか+
何回も
7.5
体
全
1
不明
1国もかl
1.2回
58. 2'
34.0
2.3
(Table.6-I-4-7)
きの理由
危険と感じたと
:.件数
専任卓例
50
ターザンロープ汁尭中に人が耕切った
ターザンロープのナウが当たった
ターザンロープに大井で*った
全学年
捕
12
!
ll
不箆まで拝下した
クライムt)こ7・をつなげプランコをしていた
4
2
クライムローブを一に巷さ付けていた
ロ-アで曇っているとき放からひっばられた
塔に曇ろうとしている人がいた
吊り排の下のネットに入り込んでいた
ターザンローブの汁+の辞分に寺わっていた
溝#で平均点あそぴをしていた
杜かに突き拝と暮れそうになった
篭
I
I
I
I
隻
1
1
1¢l
合計
(我敢回筈)
質問F
「アスレチックでどんな遊びをするか+
全学年
(T&ble. 6-I-4111)
d
串良卓例
・;件数
249
”ターザンロープで裁争
班すぺり台で天田と地政書
”見ごっこ
94
51
25
18
丸太ステ・アブでi}ヤンケン並び
3B
つりばしゆらし
クライムロープでジャッキ
”陣青物t)レー
”たかおに*+書
捕こおりおに軸
I1丸太わたり
プランコ並び
l
l
8
ポコペン書***-
班
≠不明
托特になし
Ⅶ東国寄
a
牡合計
12
6
4
4
I
i
4
10
19
49&
(複軌回答)
I
)すべり色の上下に子供がbかれ、互いに引っ襲りあう遊び
榊)鬼ごっこの一斗(丸に締まると#Iナな(なる)
耕*
)鬼ごっこの一種(見よりも高い所にいなけ九ぱならかl)
事事糾)カンナリのこと
図3
アンケート調査結果(続き)
114
矢田茂樹・星
恭博
この遊具での『具体的な遊び』についてはロープウェイでの競争がぬきんでて高い値
を示している。ロープを平行に2つ取り付けた価値がここに表れている。この他,幅広
い滑り台を利用した「天国と地獄+や遊具全体を利用した「鬼ごっこ+など種々のゲー
ムがこの遊具を舞台に繰り広げられている.仙田9)によれば遊具遊びの発達段階には①機
能的段階, ②技術的段階,
③社会的段蝉があり,後段に進める遊具ほど優れているとさ
れている.この見地から見れば,今回q)試作遊具は小学校の校庭遊具として価値ある存
在になったと考えて良いであろう。
『この遊具に対する要望』としては,もっと大規模にして欲しい,もっと数多くのプレ
イユニットを取り付けて欲しいという要望があった.ブラン占は危険度が高いため,当
初から設置予定に無かった。しかし,要望が強いことを考慮するならば今後の施設設計
に当たってはタイヤブランコ等,安全性の高いものを取り付けるべきかも知れない。
この小学校の校庭には試作遊具の他,登り棒,うんてい,ジャングルジム,鉄棒等の
遊器具が設置されているので,相互間の楽しさの比較をアンケートしたところ60%の児
童は試作遊具が楽しいと答え,その理由として多くの種類のプレイユニットがあって様々
な遊びができる点を挙げている。単体遊暴具の中では鉄棒は比較的高い人気があり,そ
の理由として様々な技で楽しめることを挙げている。今後の学校用の複合型遊器具の中
には鉄棒をうまく取り込むことも必要であろう。
『金属と木材のどちらが遊びやすいか』という質問に対しては,
げ,その理由として「当たっても痛くない+,
「手触りが良い+,
75%の児童が木材を挙
「滑りにくい+などと答
えた。一方,
20%の児童は鉄製の遊具の方が遊び易いと答え,その理由として「ささく
れなどで怪我をしない+, 「丈夫である・腐らない+,
「細くてつかみやすい+ことを挙げ
た。これらの答えを見ると,児童は干割れやささくれによる手指の怪我の危険を認識し
ており,遊具で遊ぶ中で材料に対する鋭い観察眼をすでに身に付けているといえよう。
4.
3
劣化の測定結果
摩耗:測定結果を表6に示す。
デッキ部材では最大2mm/年の摩耗が認められる。丸
材の中で最も摩耗が激しかったのはロープウェイのスタート台後部の保護柵上面で,約
6mm/年もの摩耗が認められた.これは写真2に示すように,児童がこの保護柵をスタ
ート台とするためであり,同一個所が繰り返し砂のついた靴底でこすられる。これは溝
きりした円形断面の上部の摩耗であるから,今後は摩耗深さの進行が次第に低下するも
のと見込まれるが,それにしても砂場上に設置された木製遊具の摩耗は通常の建築物の
床材と比較してはるかに大きい。したがって,床となる水平部材に防腐処理を行う時は
深部に及ぶ処理が不可欠となる。
王型垂:測定結果を表7に示す. 4180mmの丸材は円周上に12-26本の割れを1年間に
生じ,その最大幅は溝きりした材で1.8mm,薄切りしない材で4.4mmであった。
i120nmの
部材では円周上に6 -23本の割れが1年間に発生し,その最大幅は溝切りした材で1.4mm,
薄切りしない材で2.7mmであった。一般に割れ幅が2
mmを越えると手指の怪我の危険性が
高まると言われているので,溝切りしない心持ち部材では1年以内に危険域に入ったこ
屋外用の高耐久性木製遊具の開発
表6
115
水平部材の摩耗(11ヶ月経過)
蕃材名
摩耗減量
苧-一宇驚喜軒TT ̄ ̄ ̄育 ̄百石蒜
1
2
(y
0.
3
u
0.
4
梯子薄み丸太
保護冊丸太3<
丸太渡り踏み材
0.
5.
0.
0.
5
6
7
8
9
〃
50
30
60
80
25
35
吊凍結み材
1.
70
o
0.
35
05
〝
60
11
n
12
0. 30
滋 ロープウエイのスタ-ト台として使用
10
写真2
o
1.
I.
ロープウェイ保護柵からのスタートの様子
とになる。溝切りした部材では2mmを越える幅の割れは発生していないので,・溝切りに
ょる干割れ抑制効果はあったと判断される。なお,これらの部材には収縮抑制剤を配合
した防腐剤が加圧注入されている。比較のため同種の丸棒3本について,薬剤を注入し
ないものを用意して1年間屋外に暴露したところ割れ幅は最大10mmに達した。したがっ
て,収縮抑制剤添加の効果はあったと判断されるが,まだ遊具部材として満足できる結
果には達していない。今後,更に改善の努力が必要であろう。
腐朽:まだ,腐朽は発生していないので超音波の測定値に目立った変化は認められな
い。なお,砂場上に設置されたこの遊具も,土の地面と同様に接地部は常に含水率が高
く,生物劣化を受けやすい環境にあると言える。
その他の劣化:
1年間の使用によって部材は灰白色に退色している。摩耗した部分は
元来の淡黄白色に近いままなので,全体としては色むらが日立つ。遊具の場合,色彩も
大切なので,摩耗を考慮した高浸透性塗料の開発が必要であろう。
丸太渡りの踏み材は揺れ動くので他の部材としばしば衝突する。この衝撃により,
-
116
矢田茂樹・星
表7
恭博
丸太の乾燥割れ(11カ月経過後)
丸太円周上の書Iれ
琴号
1
2
3
4
部材配管
直径
頼斜部材
最大値
1.25n
(r
26
//
26
I.10
4.4・0
180m
//
ケ
i//
0
p僻考
本数・
23本
28
18
2.30
1.15
1.10
16
I.60
24
1.60
15
2.10
26
1.80
0.95
0.90
12
0
6
7
8
9
P
〟
//
0
0
/7
//
(/
P
lJ
(/
12
0
13
(I
0
120
112
10
Q
[r
14
/r
〟
15
”
0
I6
23圭2.10
(/
(I
23 ̄;-.2.70
6
0.'3以下
19
1.40
滞切りせず
0
ir
0
0
P
〟
//
/7
溝切りあり
〟
〟
0
/y
溝切りせず
(/
部の部材は損傷を受けたが,ゴムかヾ-を取り付けたところその後の劣イヒは防止された。
接合部のがたつきについては今のところ発生していない。ただし,ロープウェイのワ
イヤーロープは激しい使用によって弛みを生じたので張り調整を行った。また,ワイヤ
ー固定部の保護かヾ-の固定ボルト2本中の1本が繰り返し衝撃で弛み脱落した。この
ため補充してしっかり締め付けたところ,その後は弛みを発生していない。これは機構
的な欠陥ではなく,施工時の締め付けが不十分だったためであろうo
以上試作遊具の利用状況と部材の劣化について1年間にわたって実態調査をしたが,
木製遊具の製造基準や保守管理マニュアル作成の資料を得るためには,さらに継続的な
調査が必要である。これまで日本には屋外遊具についての規格・基準がなく,現在,
(社)
公園施設業協会では建設省の指導を受けて業界としての基準作りを始めているが,子供
たちが安心して長く使えるよう基礎データを十分踏まえて立案していただきたいもので
ある。
文
献
1) 深谷昌志,深谷和子:子どもの世界の遊びと流行,
146(1990)大日本図書
2) 仙田 満:あそび環境のデザイン,
182(1987)鹿島出版会
3) 日本木材備蓄機構:外構部材利用増進可能性調査事業報告書(平成元年度)
6(1990)
No.
4) 国民生活センター:環境線化新聞,
174(1990)
5) 矢田茂樹: 木材保存, No.
17,150158(1991)
6) 矢田茂樹, 井口厚志 横浜国立大学教育紀要,
No.
32,263_-270(1992)
7) 平井卓郎, 上田恒司, 矢田茂樹:日本木材学食北海道支部講演集,
No.
22,28-31(1990)
8) 深谷昌志, 深谷和子
子どもの世界の遊びと流行,
46(1990)大日本図書
9) 仙田 滴: 子どもとあそぴ, 3ト32(1992)岩波書店
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