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日米におけるヒバクシャ研究の現状と課題

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日米におけるヒバクシャ研究の現状と課題
121
日米 にお ける ヒバ ク シ ャ研 究 の現 状 と課 題
竹本
恵美
NuclearVictimsIssuesinJapanandtheU.S.
TAKEMOTOEmi
は じめ に
2010年12月22日,米
上 院 は ロ シ ア との 新 戦 略 兵 器 削 減 条 約(新START)
の批 准 承 認 を可 決 し,核 軍 縮 へ の 大 きな 流 れ を 開 始 した。2009年4月,プ
ラ
ハ で の 演 説 で,「 米 国 が 核 兵 器 の な い 世 界 の 平 和 と安 全 を 実 現 す る た め に取
り組 ん で い く と,は
っき り と信 念 を 持 っ て宣 言 す る」 と語 っ た オ バ マ 大 統 領
は,核 軍 縮 と脱 原 子 力 に 向 け て努 力 す る姿 勢 を 見 せ て い る。 そ の背 景 に は,
国 内 の 原 子 力 ヒバ ク シ ャ に対 す る補 償 問 題 や,放 射 能 汚 染 に よ る環 境 問 題 の
深 刻 さ,低 線 量 ヒバ クの リス ク に 関 す る研 究 や,エ
を経 済 や 環 境 保 護 の 面 か ら見 直 す 研 究 の 進 展,国
ネ ル ギ ー と して の 原 子 力
民 の原 子 力 利 用 へ の 不 信 感
や ヒバ ク に対 す る不 安 感 が 存 在 す る。
米 国 同様,日
本 の ヒバ ク訴 訟 や 低 線 量 ヒバ ク ・リス クの 問 題 は 深 刻 で あ る。
しか しな が ら 日本 政 府 は原 子 力 立 国 計 画 を 掲 げ,「 エ ネ ル ギ ー 安 定 供 給 と低
炭 素 社 会 実 現 に 原 子 力 発 電 は不 可 欠 で あ る … … 新 増 設 の推 進,設 備 利 用 率 の
向上 及 び核 燃 料 サ イ クル の 確 立 に 取 り組 む と と も に,将 来 の リプ レー スや 高
速 増 殖 炉 サ イ クル の 実 用 化 に 向 け て 中 長 期 の 技 術 開 発 を推 進 す る。 ま た,世
界 的 な 原 子 力 発 電 導 入 拡 大 に 向 け た 原 子 力 の 国 際 協 力 を推 進 す る」 と して,
原 子 力 開 発 と原 発 輸 出 に力 を 注 い で い る')。 ヒバ ク シ ャの 救 済 や 原 子 力 政 策
の見 直 しを避 け て い る よ う に も見 え,日 本 国 内 に は ヒバ ク シ ャが い な い と見
な して い る か の よ う に も見 え る。
122
脱 原 子 力 へ の 歩 み は,欧 州 が先 導 し,よ うや く米 国 も開 始 した。 原 子 力 利
用 の 不 経 済 性 や 非 人 道 性 が 明 らか とな り,世 界 は 原 子 力 利 用 の拡 大 を 停 止 し,
再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー へ と移 行 し,原 子 力 産 業 は 急 速 に斜 陽 化 して い る。 しか
し 日本 政 府 は な ぜ,こ
の 潮 流 に逆 らい,40年
間 変 わ らな い 原 子 力 エ ネ ル ギ ー
政 策 や 原 子 力 優 遇 策 に執 着 し,再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の利 用 に積 極 的 な 姿 勢 を
示 して い な い の だ ろ うか 。 そ の こ と に対 す る 国 民 か らの 批 判 の声 は,な ぜ 弱
い の だ ろ うか。 この よ うな 問 題 意 識 の も と,本 稿 で は,米 国 に お け る原 子 力
や ヒバ ク に 関 す る論 議 と,日 米 両 国 が 抱 え る ヒバ ク シ ャ問 題 を検 討 し,残
さ
れ て い る 問題 と研 究 課 題 を 考 察 した い 。
な お,本
稿 で 使 用 す る用 語 につ い て は,次
の よ う な認 識 で 用 い る 。 「ヒバ
ク」 と は,放 射 線 か らエ ネ ル ギ ー を 受 け取 る こ と を意 味 し,一 般 的 に は,放
射 線 を 浴 び る こ と を 指 す 。 原 爆 の 炸 裂 に よ る被 害 や 被 害 者 を 指 す 場 合 は,
「被 爆 」,「被 爆 者 」,放 射 線 に よ る被 害 や 被 害 者 を 指 す 場 合 は,「 被 曝 」,「被
曝者 」,そ の 両 者 を 指 す 場 合 は,「 ヒバ ク」,「ヒバ ク シ ャ」 と表 記 す る。 原 子
力燃 料 はエ ネ ル ギ ー を生 み 出す 際 に,必 ず 放 射 能 を持 つ核 分 裂 生 成 物 を放 出
し,原 子 力 利 用 は必 ず ヒバ ク と ヒバ ク シ ャを 伴 う。 原 子 力 の 軍 事 利 用 と平 和
利 用 と い った 区 分 は原 子 力 利 権 者 側 に と って の違 い で あ り,被 害 を 受 け る側
か ら見 れ ば,ヒ バ ク源 が 何 で あ れ,そ の 恐 ろ しさや 被 害 に は大 差 が な い と考
え る。 ヒバ クに よ る主 な 健 康 被 害 は,死 亡,脱
が ん や 白血 病 な どの 晩発 障 害,子
1.米
毛 や 造 血 障 害 な どの 急 性 障 害,
孫 に生 じる遺 伝 的 影 響 で あ る。
国 に お け る 原 子 力 利 用 の経 済 性 と環 境 保 護 効 果 の 見 直 し
米 国 は1979年3月,ペ
ン シ ル ベ ニ ア 州 ス リー マ イル 島 の 原 子 力 発 電 所 で 発
生 し た 事 故 を 経 験 し て 以 降,原
大 統 領 は2001年5月
発 の 新 規 建 設 を 行 な って い な い。 ブ ッ シ ュ元
の 演 説 で,「 ク リ ー ン か つ 供 給 面 で 制 約 が な い 原 子 力 発
電 を 拡 大 し な け れ ば な ら な い 」 と 強 調 し,16件
か し2010年10月,米
プ 社 が エ ネ ル ギ ー 省 に 対 し,経
こ と を,オ
の 原 発 建 設 が 計 画 され た 。 し
大 手 電 力 会 社 の コ ン ス テ レ ー シ ョ ン ・エ ナ ジ ー ・グ ル ー
済 的理 由 に よ り原 発 建 築計 画 の凍 結 を 伝 え た
バ マ 政 権 関 係 者 が 明 ら か に し た1丁)。
日米 に お け る ヒ バ ク シ ャ研 究 の 現 状 と課 題123
近 年 米 国 で は,原
子 力 利 用 の デ メ リ ッ トが 公 に 論 議 さ れ て い る 。 原 子 力 規
制 委 員 会(NRC)の
元 委 員 の ピ ー タ ー ・ブ ラ ッ ドフ ォ ー ドは,2007年1月
に パ ン フ レ ッ トを 発 行 し,「 新 し い 原 子 力 発 電 所 の 建 設 は,気
に 必 要 な,よ
候 を守 るた め
り 安 く容 易 に 得 ら れ る オ プ シ ョ ン か ら民 間 及 び 公 的 投 資 を そ ら
す こ と に な る 」 と 主 張 す る'8)。世 界 原 子 力 協 会(WNA)の
戦 略 ・調 査 デ ィ
レ ク タ ー は2008年8月,「NuclearEngineeringInternational』
サ イ トに 投 稿 し,「 現 在,新
の ウ ェブ
し い 原 子 力 の コ ス トに 関 し て,確
固 と した 推 定
値 を 出 す こ と は 全 く不 可 能 で あ る 」 と 指 摘 す る'9)。エ ネ ル ギ ー 研 究 所 の ロ ッ
キ ー マ ウ ン テ ン研 究 所(RMI)は2008年12月,「
あ る い は 愚 行?」
の は,そ
の1ド
原 子 カ ー 気 候 問 題 の 解 決 策?
と 題 し た 報 告 書 を 発 表 し,「 新 し い 原 子 力 に1ド
ルを使 う
ル を 新 し い 石 炭 火 力 に 使 う の よ り も気 候 に 対 し て 悪 い 効 果 を
持 つ 」 と 結 論 づ け る と と も に,「 原 子 力 は ま た,長
滅 的 事 故 の 可 能 性,テ
寿 命 の 放 射 性 廃 棄 物,壊
ロ 攻 撃 に 対 す る脆 弱 性 な ど の 特 別 な 問 題 も 抱 え て い る 」
と 指 摘 す る2。)。マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 工 科 大 学(MIT)は2009年5月,「
の 将 来 」 と 題 し た 調 査 研 究 報 告 書 を 発 表 し,日
本 と韓 国 で の 実 際 の 原 発 建 設
コ ス トか ら米 国 で の 新 規 原 発 建 設 の コ ス トを 推 定 し た 結 果,コ
で2倍
に 上 昇 し,年15%の
う に,こ
原子力
ス トは6年
間
上 昇 を 見 せ て い る と 報 告 す る2')。 こ れ ら の 例 の よ
れ ま で 原 子 力 開 発 の 中 心 部 に い た 者 た ち が,現
在,原
子 力 利 用 に疑
問 を 呈 して い る 。
他,10万
人 の 会 員 を 有 す る 「憂 慮 す る 科 学 者 同 盟 」 は,2007年3月
に 「原
発 と 温 暖 化 」 と 題 す る 方 針 書 を 発 表 し,「 ま ず は 一 番 大 き な 削 減 を 一 番 早 く,
そ し て 低 コ ス トで,そ
して リス クが 少 な い方 法 で 実 現 で き る もの か ら初 め て
い く必 要 が あ る 。 原 子 力 は こ れ ら の 基 準 を 満 た さ な い 」 と 明 言 し て い る22)。
NPO団
体 の
「キ ー ス トー ン ・セ ン タ ー 」 は2007年6月,「
査 」 と題 す る 報 告 書 を 公 表 し,「 法 治 が 弱 い 国,建
安 全 ・保 全 文 化 の 乏 し い 国,規
原子力共 同実態調
設 技 術 が 未 熟 な 国,運
転 ・
制 の 甘 い 国 に原 子 力 発 電 が 広 が る こ とを 懸 念
す る 」,「原 発 の 拡 大 ・拡 散 と と も に,非
核 保 有 国 で の 核 燃 料 施 設 が 広 が り,
核 拡 散 リ ス ク が 高 ま る 」,「 商 業 用 の 再 処 理 は 不 経 済,高
速 炉 は不 経 済 か つ 信
頼 性 に 劣 る 」 な ど の 見 解 を 示 し て い る23)0
原 子 力 利 用 の 経 済 分 析 は,本
格 的 に行 な わ れ て い る。 投 資 情 報 会 社 の ス タ
124
ン ダ ー ド&プ
ア ー ズ は2006年1月
に 作 成 した 欧 米 の 原 子 力 の 信 用 度 評 価 報
告 書 に お い て,「 原 子 力 を 抱 え る電 力 会 社 は,そ
れ を 持 た な い会 社 よ り も,
信 用 評 価 が 低 く,信 用 の た め に余 分 に払 う こ と に な り得 る」 と結 論 づ けて い
る24)。格 付 け 会 社 の ム ー デ ィー ズ ・イ ンベ ス ター ズ ・サ ー ビス は2009年6月,
「新 原 子 力 時 代 一格 付 け圧 力 の 増 加 」 と題 した 所 感 を 発 表 し,新 規 原 発 建 設
を積 極 的 に追 求 して い る債 権 発 行 体 に対 し否 定 的 な評 価 を 採 用 し,新 規 原 発
を 建 設 す る電 力 会 社 の 債 権 価 格 が25∼30%低
界銀 行 は2009年10月,『
落 す る こ と を示 して い る25)。世
世 界 開 発 報 告 』 を 発 刊 し,「 原 子力 に は相 当 の 資 本 と
高 度 の 熟 練 職 員 が 必 要 で あ り,運 転 開 始 ま で の リー ドタ イ ムが 長 く,短 期 の
炭 酸 ガ ス排 出 削 減 の 効 果 は限 られ て い る。 一 基 の 原 子 力 発 電 所 の計 画 ・許 認
可 ・建 設 に は,普 通,10年
か そ れ以 上 の 時 間 が か か る」 と指 摘 して い る26)。
シテ ィ グ ル ー プ 証 券 の投 資 研 究 分 析 部 門 は2009年11月,英
政 府 が新 規 原 発 電
計 画 を 促 進 させ る た め の 政 策 を 発 表 した こ と を 受 け,「 新 規 原 発?エ
ス トは ノ ー:英 国 が 新 規 原 発 に青 信 号 と は本 当 か?」
コノ ミ
との 報 告 書 を 発 行 した。
英 国 政 府 が 融 資 支 援 な く,民 間企 業 に リス クを 担 わせ る こ と を前 提 に,新 規
原 発 に青 信 号 を 出 した こ と につ い て,建 設,電
力 価 格,運
営 の3点 か ら リス
ク を 検 討 し,「 新 規 原 子 力 を望 む な ら,支 援 の 手 を 差 し出 さ な けれ ば 原 発 は
建 設 され ず,建
設 さ れ た と して も,経 済 面 で 持 続 可 能 に な ら な い」 と結 論 づ
け て い る2%こ
れ らの 研 究 に よ り,原 子 力 が 経 済 や環 境 保 護 の 面 で 再 生 可 能
エ ネ ル ギ ー に 劣 って い る こ と が 明 らか に な った。
現 在 米 国 で は,バ
イ オ マ ス発 電所 の開 発 や ノー ス カ ロ ライ ナ州 で の実
験28)な ど,再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー に 関 す る先 端 的 な 研 究 が 進 め られ て い る。
再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の実 用 化 に お い て は,欧 州 が 先 導 して い る。 ス ウ ェ ー デ
ンは 大 量 の ウ ラ ン鉱 を有 しつ つ も,国 民 が原 発 に頼 らな い エ ネ ル ギ ー 政 策 を
選 択 し,国 内 で は電 力 が 自 由化 さ れ,多 様 な 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー を 利 用 した
発 電 が 盛 ん に な って い る。 国 民 は 自分 の 意 志 で 発 電 方 法 と会 社 を選 ん だ り,
電 気 を 販 売 した りす る こ とが で き,自 治 体 に よ るエ ネ ル ギ ー 自給 な ど に よ り
電 気 料 金 は 一 気 に下 が り,政 策 は好 意 的 に 受 け入 れ られ て い るss)。2010年 に
入 り,欧 州 の複 数 の 公 的 機 関 か ら,自 然 エ ネ ル ギ ー 依 存 率100%に
向 けた 具
体 的 シ ナ リオ が 公 開 され た こ と に よ り,自 然 エ ネ ル ギ ー を 基 本 とす る社 会 へ
日米 に お け る ヒ バ ク シ ャ研 究 の 現 状 と課 題125
の転 換 が 現 実 に 構 想 さ れ る と と もに,そ
の産 業 経 済 的 な 成 長 と恩 恵 を 展 望 し,
「第3の 産 業 革 命 」 と して の可 能 性 も議 論 され る よ う に な って い る30)。
2.欧
米 に お け る低 線 量 被 曝 リス ク に関 す る研 究
放 射 線 ヒバ ク に よ る 障 害 の 事 例 は,X線
録 され て い る2)。1930年 代 ま で にX線
発 見 か ら1900年 ま で に170以 上 記
の 誤 用 ・乱 用 に よ るX線 関 連 労 働 者 の
死 亡 が 急 増 し,放 射 線 学 者 の パ ー シー ・ブ ラ ウ ン はX線 被 曝 者 に 関 す る研 究
書 「X線 で 科 学 の 犠 牲 に な った ア メ リカ 人 』 を著 わ した3)0他 に も,X線
曝 に関 す る先 駆 的 な研 究 が 出 版 さ れ た。1927年,遺
マ ラー はハ エ に よ る実 験 にお い て,低
被
伝 学 者 の ハ ー マ ン ・J.
レベ ルX線 被 曝 に よ る遺 伝 的 損 傷 を確
認 し,遺 伝 子 の 損 傷 に 関 し被 曝 に 安 全 な レベ ル は 存 在 しな いで あ ろ う こ と を
示 した4〕
。1956年,医
師 で あ り疫 学 者 で もあ る ア リス ・ス チ ュ ア ー トら は,
妊婦 のX線 照 射 に よ って 胎 児 の が ん 発 生 率 が 倍 増 す る との 研 究 結 果 を 発 表 し
た5〕
。1977年 に は,ハ
ン フ ォー ドで数 年 以 上 働 き平 均3レ
ム被 曝 した 労 働 者
に,膵 臓 や 多 発 性 骨 髄 腫 の 発 生 率 が 統 計 的 に 有意 に増 加 して い る こ と を報 告
した6〕
。1964年,原
子 力委 員 会 は,保
健 衛 生 研 究 の パ イ オ ニ ア と して 名 高 い
トマ ス ・マ ン クー ゾ に,同 委 員 会 直 属 の 核 関 連 施 設 に お け る労 働 者 の 被 曝 被
害 の 調 査 を委 託 した。 マ ン ク ー ゾ は 職 業 被 曝 が あ ま りに 多 す ぎ る こ とや,原
発 や 核 実 験 か ら 出 る放 射 性 物 質 が 人 間 に与 え る影 響 や害 は 予 想 を は るか に超
え て 大 き い こ とな ど を実 証 した。 ス チ ュ ア ー トら と と もに,デ
解 析 した 調 査 は,低
ー タを 綿 密 に
レベ ル の 電 離 放 射 線 の被 曝 を 受 け た正 常 成 人 人 口 に関 す
る世 界 最 大 の調 査 研 究 と な っだ)。 原 子 化 学 者 で あ り医 師 で もあ る ジ ョ ン ・
ゴ フマ ンは原 子 力 委 員 会 の 放 射 線 に 関 す る健 康 調 査 プ ロ グ ラ ム の責 任 者 を務
め,「 た った1個
あ る い は 数 個 程 度 の 放 射 線 の 飛 跡 で も,人 間 にが ん を 起 こ
す」 こ とを 明 らか に したn)0米 コ ロ ン ビア大 学 の ヘ イ博 士 の 研 究 グ ル ー プ は,
放 射 性 の ア ル フ ァ粒 子1個
が 細 胞 を 死 滅 させ る こ と を報 告 した9)。1950年 代,
ノ ー ベ ル 化 学 賞 を 受 賞 した 量 子 化 学者 ・生 化 学者 の ラ イ ナ ス ・カ ー ル ・ポ ー
リ ン グ と,後 に ノー ベ ル 平 和 賞 を 受 賞 す る ソ ビエ ト連 邦 の 理 論 物 理 学 者 の ア
ン ド レイ ・ ド ミ トリエ ヴ ィ ッチ ・サ ハ ロ フ は,核 実 験 に よ って 何 百 万 人 もの
126
人 々 が 死 ぬ こ とを 警 告 した'0)。
放 射 線 物 理 学 者 の ア ー ネ ス ト ・J.ス タ ー ン グ ラ ス は,1978年
に原 発 周 辺
住 民 が 原 子 力 規 制 委 員会 と政 府 を相 手 に起 こ した 訴 訟 で原 告 側 の証 人 と して,
数 多 くの疫 学 調 査 結 果 を提 示 した")。 ス タ ー ン グ ラ ス は,原 子 炉 が あ る州 で
低 体 重 乳 幼 児 率 と乳 幼 児 死 亡 率 が 高 い こ とを 示 し,ネ バ ダ 核 実 験 の 死 の 灰 に
よ る影 響 で,米
国 で 約100万 人 の 乳 幼 児 が 死 亡 した と結 論 づ け た12)。X線 と
低 レベ ル 放 射 線 の 影 響 に 関 し,米 最 高 の 権 威 と見 な さ れ る ラ ッセ ル ・モ ー ガ
ンは,ス
タ ー ン グ ラ ス の 論 文 を賞 賛 した 。 元 ロー レ ンス ・リバ モ ア 核 兵 器 研
究 所 研 究 員 で あ り地 質 学 者 の ロ ー レ ン ・モ レは,低 体 重 乳 幼 児 の身 体,精 神,
知 的 問 題 を 研 究 して い る。 米 大 学 進 学 適 性 試 験(SAT)の
点 数 を 調 査 し,
平 均 点 と ネ バ ダ 核 実 験 の 規 模 と の相 関 関 係 を 明 らか に し,平 均 点 下 降 の 原 因
は核 実 験 が 放 出 した 放 射 能 の 影 響 を 胎 児 時 に 受 け た こ と と結 論 づ け た 。 ま た,
カ リフ ォル ニ ア 州 で 自閉 症 が 核 実 験 開 始 に合 わ せ て 出始 め,チ
ェル ノ ブ イ リ
事 故 や原 発 の発 電 量 の 増 加 に従 って上 昇 して い る こと を明 らか に した。 ス タ ー
ン グ ラ ス と モ レ は共 同研 究 を 行 な い,7∼8歳
の 子 供 か ら取 れ た乳 歯 に含 ま
れ る放 射 性 物 質 の ス トロ ン チ ウ ム90の 含 有 量 を 調 査 し,が ん を患 う子 供 は健
康 な 子 供 の2倍 の ス トロ ン チ ウ ム90を 有 して い る こ とを 明 らか に し,原 発 の
日常 運 転 も核 実 験 と 同様 に悪 影 響 を 及 ぼ して い る こ とを 指 摘 した。 他 に もス
タ ー ン グ ラ ス は,放 射 性 物 質 に よ る人 体 へ の 影 響 調 査 研 究 を 広 範 囲 に 行 い13),
ヒバ ク に よ って 糖 尿 病 発 症 率 や,乳 が ん,肺
が 高 ま る こ とを 示 し,1950∼99年
が ん,白 血 病 な ど に よ る死 亡 率
の 間 に 米 国 で 約1,930万 人 が 死 亡 した と結
論 づ けた 。 調 査 結 果 は米 国 議 会 で も発 表 さ れ,そ れ を き っか け と して 部 分 的
核 実 験 禁 止 条 約(PTBT)が
締 結 され た 。 統 計 学 者 のJ.M.グ
ー ル ド博 士 は,
全 米3,053郡 の40年 間 の 乳 が ん 死 亡 者 数 を 分 析 し,増 加 した1,319郡 が 原 子 炉
か ら100マ イ ル(約160km)以
内 に位 置 し,乳 が ん 死 亡 者 の 死 因 に原 子 炉 が
関係 して い る こ とを 指 摘 した'4)。これ ら の研 究 に よ り,原 子 力 利 用 は 事 故 が
な くて も,人 類 と環 境 に 取 り返 しの つ か な い 害 を 与 え て い る こ とが,明
らか
に な った と言 え る。
米 国 科 学 ア カ デ ミー は2005年6月,第7報
よ る健 康 リ ス ク:BEIRVII-Phase2」
告 書 「低 線 量 電 離 放 射 線 被 曝 に
を公 表 し,「 被 曝 の リス ク は低 線 量 に
日米 に お け る ヒ バ ク シ ャ研 究 の 現 状 と課 題127
い た る まで 直 線 的 に存 在 し続 け,し
き い値 は な い 。 最 小 限 の 被 曝 で あ って も,
人 類 に対 して 危 険 を 及 ぼ す 可 能 性 が あ る」 と結 論 づ けた'5)。欧 州 放 射 線 リス
ク委 員 会(ECRR)は,2003年
勧 告 「放 射 線 防護 の た め の 低 線 量 電 離 放 射 線
被 曝 の 健 康 影 響 」 を発 表 し,1945∼89年
した 放 射 能 汚 染 は,6,160万
の 大 人,160万
て い る と指 摘 した 。ECRRは,チ
患,DNA突
然 変 異,セ
の 間 に核 実 験 や原 子 力 利 用 が もた ら
の 子 供,190万
の胎 児 の 死 因 に な っ
ェル ノ ブ イ リ事 故 に よ る 周 辺 地 域 で の 疾
ラ フ ィー ル ド再 処 理 工 場 周 辺 の 小 児 白 血 病 に 関 す る
研 究 な ど の低 レベ ル 放 射 線 の 内部 被 曝 に よ る 損傷 の証 拠 を 示 す 被 曝 研 究 に注
意 を 向 け,ヒ
バ ク ・リ ス ク を 国 際 放 射 線 防 護 委 員 会(ICRP)の100∼1000
倍 高 く評 価 し,ICRPの
方 法 論 と現 行 の法 令 を 批 判 した 。ECRRは
公 衆 の被
曝合 計 最 大 許 容 線 量 を0ユ ミ リシ ーベ ル ト,核 関 連 労 働 者 の場 合 は5ミ
リシ ー
ベ ル ト以 下 に規 制 す る よ う提 唱 して い る'6)。放 射 線 が 人 体 に与 え る リ ス ク評
価 は,1900年
以 来,科 学 的 な 研 究 が 蓄 積 す る につ れ て高 ま り続 け,提 唱 さ れ
る被 曝 制 限値 は 低 下 し続 けて い る。
3.米
国 の ヒ バ ク シ ャ補 償 問 題
1979年2月,ヒ
バ ク 退 役 軍 人 や遺 族 な どが 補 償 を 求 め て,「 全 米 被 曝 退 役
軍 人 協 会(NAAV)」
を 結 成 した 。1980年4月
に は市 民 グ ル ー プ が ワ シ ン ト
ンで 「全 米 放 射 線 犠 牲 者 市 民 公 聴 会 」 を 開 き,ヒ バ ク兵 士,ネ
の風 下 住 民,核
物 質 と核 兵 器 製 造 工 場 の 労 働 者,ウ
験 場 の マ ー シ ャル 諸 島 の 住 民,事
民,在
米 日系 人 被 爆 者,医
バダ核実験場
ラ ン採 掘 労 働 者,米
核実
故 を 起 こ した ス リー マ イ ル 島原 発 周 辺 の住
療 用 放 射 線 で 過 剰 被 曝 した 患者 な ど が参 加 し,健
康 被 害 に対 す る補 償 を訴 え た91)。
1980年8月,カ
ー タ ー 政 権 下 の 米 下 院 州 間 ・外 商 委 員 会 が 「見 捨 て られ た
モ ル モ ッ ト 合 衆 国 の核 爆 発 実 験 に よ る低 レベ ル 放 射 線 被 曝 に よ る健 康 へ の
影 響 」 と の報 告 書 を公 表 し,被 曝 退 役 軍 人 とネ バ ダ核 実 験 場 の風 下 住 民 に対
す る補 償 法 の早 急 な 制 定 を 勧 告 した。1984年10月,レ
ー ガ ン政 権 は 「退 役 軍
人 の た め の ダイ オ キ シ ン ・放 射 線 被 曝 補 償 法(VDRECS)」
を 制 定 し,規 定
の8種 の が ん罹 患 に認 定 され た者 に 補 償 を行 な っ た。 さ ら に1988年5月
に は,
128
退 役 軍 人 の み を 対 象 と した 「放 射 線 被 曝 退 役 軍 人 補 償 法(REVC)」
を制定
した 。 被 曝 退 役 軍 人 が21種 の が ん に 罹 る と 自動 で 補 償 対 象 と な り,疾 病 の程
度 に よ って 毎 月100∼2,400ド ル が 支 給 され,医
要 介 護 加 算,家
療 費 は 免 除 され る と と も に,
族 手 当,遺 族 手 当 な ど も あ る。 手 当 を受 給 した者 は 約25万 人
に上 る。 しか し,規 定 の21種 と は異 な る が ん で 申請 す る場 合 はVDRECS法
に沿 った 審 査 とな り,推 定 被 曝 線 量 値 や 既 往 症 な ど の 資料 を基 に が ん と放 射
線 との 因 果 関係 が 審 査 され る。2004年 ま で に 被 曝 退 役 軍 人 か ら手 当 が 申請 さ
れ た18,275件 の う ち,認
定 さ れ た の は約10%の1,875件
であ った。 非認 定 の
被 曝 退 役 軍 人 や そ の 遺 族 は,退 役 軍 人 省 や エ ネ ル ギ ー省 を 相 手 に,損 害 賠 償
を 求 め る訴 訟 を 起 こ した が,い ず れ も敗 訴 した。 米 国全 体 で 約40万 人 の 被 曝
退 役 軍 人 の うち,生 存 者 はす で に2万 人 以 下 とな り,救 済 の 間 口 を 広 げ る緊
急 性 が 指 摘 され て い る32)。
軍 人 以 外 を対 象 と した 補 償 と して,ブ
被 曝 者 補 償 法(RECA1990)」
の う ち,13種
ッ シ ュ政 権 は1990年10月,「
放射線
を制 定 し,ネ バ ダ核 実 験 場 の 風 下 地 域 の 住 民
の が ん 罹 患 に認 定 さ れ た 者 に5万
ドル,ウ
ラ ン鉱 山 の 採 掘 労 働
に従 事 し肺 が ん な ど を患 う者 に10万 ドル の補 償 を 行 な った 。1992年10月
には
「放 射 線 被 曝 退 役 軍 人 法 」 を一 部 改 定 し,補 償 対 象 の 疾 患 を15種 の が ん と し
た。 ク リ ン トン政 権 は ヒバ ク被 害 の 公 開 に積 極 的 な姿 勢 を 示 し,95年
にエ ネ
ル ギ ー 省 は,米 政 府 関係 研 究 機 関 が30∼70年 代 の40年 間以 上 に わ た り,計43
5件,約16,000人
2000年4月
を被 験 者 と し て 被 爆 人 体 実 験 を 行 っ た こ と を 発 表 し た 。
に は,「 過 去 の 過 ち を 正 し,政 府 の 責 任 で 最 大 限 救 済 す る」 と し
て,核 兵 器 製 造 に従 事 した ヒバ ク労 働 者 に 国 家 賠 償 し,が ん の発 病 に 最 高10
万 ドル を支 払 い,3年
年7月
間 で3億6千
に はRECA1990を
万 ドル を 支 出 す る 予算 を計 上 した 。2000
改 定 して 「RECA2000」
を制 定 し,ネ バ ダ核 実 験
場 風 下 地 域 を大 幅 に拡 大 し,補 償 対 象 の 疾 患 を19種 に 改定 した。 ま た,ウ
ラ
ン鉱 石 の 運 搬 と精 錬 に従 事 した労 働者 に も10万 ドル を補 償 し,核 実 験 場 で 働
い た 技 術 者 や 除 染 作 業 労 働 者 な どの 「現 場 参 加者 」 に は7万5千
を 行 な った 。2000年10月
ドル の 補 償
に は,「 エ ネ ル ギ ー 雇 用 者 職 業 病 補 償 法(EEOICP
A)」 を制 定 し,核 物 質 ・核 兵 器 製 造 施 設 の 労 働 者 で31種 の が ん に罹 った 者
を補 償 対 象 と し,3箇
所 の ウ ラ ン濃 縮 施 設 とア ラ ス カ州 で の 地 下 核 爆 発 実 験
日米 に お け る ヒ バ ク シ ャ研 究 の 現 状 と課 題129
に参 加 した者 に は15万 ドル の 補 償 を 行 な った。
2005年4月,米
め,核
上 下 両 院 議 員 がRECA2000に
よ る補 償 金 受 給 見 直 しの た
爆 発 実 験 に よ る 放 射 線 の 影 響 調 査 を勧 告 し,全 米 科 学 ア カ デ ミー
(NAS)は
「放 射 線 被 曝 適 正 検 査 と教 育 計 画 の た め の 科 学 的情 報 評 価 」 と の
報 告 書 を作 成 し,補 償 金 受 給 資 格 を 拡 大 す る こ と を勧 告 して い る。 米 国 に お
け る ヒバ ク シ ャ補 償 の範 囲 は,年 を 経 る ご と に拡 が り,財 政 負 担 は 増 加 の一
途 を た ど って い る。
全 米 放 射 線 被 曝 者 協 会 は,米 国 の ヒバ ク シ ャを 約90万 人 と推 定 して い る。
今 日,既 存 の被 曝 者 補 償 法 の 枠 に 入 らな い多 くの 米 国 人 ヒバ ク シ ャが,裁 判
で政 府 と争 って い る。 ヒバ ク シ ャの 補 償 問題 は,ヒ バ ク源 を根 絶 す る必 要 性
を 示 して い る。 地 球 上 か らす べ て の 放 射 能 が な くな る ま で,こ
の 問 題 は解 決
しな い と言 え る。
4.米
国の放射 能汚染 問題
オ バ マ 政 権 は2009年2月,「
ア メ リカ 復 興 ・再 投 資 法(ARRA)」
を成立
さ せ,再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 技 術 の 開 発,核 兵 器 関 連 施 設 の 解 体 や放 射 能 汚 染
物 質 の 除 去 作 業 を推 進 して い る。 ナ ホ バ 先 住 民 居 留 地 で は,1,300箇
所 以上
の す べ て の ウ ラ ン鉱 山 が 廃 鉱 と な り,土 地 の 除 染 作 業 が 開 始 した。 核 開 発 体
制 の 最 下 層 に 置 か れ,1940∼80年
代 に盛 ん に 行 な われ た ウ ラ ン鉱 採 掘 に よ り,
住 民 の 放 射 線 障 害 や 環 境 の 放 射 能 汚 染 が 深 刻 化 して い る。 そ の惨 状 は 先 住 民
の マ ニ ー ・ピ ノを は じめ とす る環 境 保 護 活 動 家 に よ って世 界 に伝 え られ,こ
の 問 題 は環 境 正 義 の 視 点 か ら環 境 社 会 学,環 境 倫 理 学,平
和 学 な どで 研 究 さ
れ て い る33)。
全 米 の 放 射 性 廃 棄 物 の6割 以 上 を 有 し,米 国 で 最 も汚 染 され た土 地 と さ れ
る ハ ン フ ォー ド ・サ イ ト核 施 設 で は,年 間2千
ワ シ ン トン州 環 境 部,米
国 エ ネ ル ギ ー 省,米
億 ドル の 国 家 予 算 を 費 や し,
国環境保護庁 の三者 が除染作業
と浄 化 技 術 の 研 究 を 続 け て い る。14年 間 の 浄 化 作 業 の 成 果 は 全 体 の0.3%に
過 ぎ ず,汚 染 され た 大 地 と水 を浄 化 す る技 術 は い ま だ 開 発 され ず,周
辺住民
の 被 曝 被 害 を 止 め る こ と が で きず に い る34)。1996年 の 報 告 書 に よれ ば,地
区
130
の環 境 清 浄 化 完 了 ま で に75年 以 上 の 期 間 が必 要 と見 られ て い る35)0
しか し,医 師 の ヘ レ ン ・コ ル デ ィ コ ッ トは,放 射 能 は そ の 半 減 期 の20倍 程
度 の 期 間,管
理(人
間 環 境 か らの 隔 離)が 必 要 で あ る と指 摘 す る9ti)O原子 炉
か ら出 る使 用 済 み 核 燃 料 や 劣 化 ウ ラ ン弾 の主 成 分 で あ る ウ ラ ン238の 場 合 は,
900億 年 とな る。 宇 宙 の 歴 史 を は る か に 超 え る900億 年 間,放 射 性 物 質 を管 理
す るの は不 可 能 で あ る。 私 た ち は 恐 ろ しい負 の 遺 産 を,ほ
ぼ永 久 的 に,子 孫
に残 す こ と に な る。
5.日
本 の ヒ バ ク シ ャ補 償 問 題
1945年8月
の米 国 の原 爆 投 下 に よ って,広
長 崎 で28±1万
人 が 被 爆,45年12月
万 人 が 死 亡 した37)。2010年8月
長 崎 は152,276名,加
い約7万
人,最
まで に広 島 で14±1万
差 ±1万 人),
人,長
崎 で7±1
の広 島 原 爆 死 没 者 名 簿 登 録 者 数 は269,446名,
え て 広 島 平 和 公 園 の 原 爆 供 養 塔 に 未 だ 氏 名 の 判 明 しな
柱 の遺 骨 が 納 め られ,被
て い る。2010年3月
島 で36万 人(誤
末 現 在,被
団 協 は な お10万 人 の 死 没 者 が 不 明 状 態 と 見
爆 者 手 帳 を所 持 す る 日本 在 住 者 数 は227,565
多 の80年 度 末 で は372,264人 で あ った 。
日本 政 府 は1994年,「 原 子 爆 弾 被 爆 者 に対 す る援 護 に 関 す る法 律 」 を 制 定
した 。 法 律 で被 爆 者 を,1.爆
2.原
心 地 か ら約3.5km以
爆 投 下 後 約100時 間 以 内 に爆 心 地 か ら約2km以
内 で の 直 接 被 爆 した 者,
内 に 滞 在 した 者,3.
原 爆 投 下 後 に死 体 処 理 や 救 援 活 動 に 従 事 す る な ど放 射 能 の 影 響 を受 け る事 情
が あ った 者,4.1∼3の
いず れ か に該 当す る者 の胎 児 で あ っ た者 の う ち被
爆 者 健 康 手 帳 を 交 付 され た 者 と し,対 象 者 を 制 限 して い る。 米REVC法
は,1945年8月6日
か ら約1年
で
間 に 広 島 ま た は長 崎 の 市 街 地 か ら約16km以
内 の 地 域 に い た 兵 士 を対 象 に補 償 が 行 わ れ,日
は 米 国 よ り厳 しい 状 況 とな っ て い る。3.5km以
本 で 被 爆 者 と認 め られ る条 件
遠 で 被 爆 した者 や,手
帳を
取 得 して い な い 被 爆 者 は 少 な くな い。
被 爆 者 と認 定 さ れ,月137,430円
008年 度 末 現 在 で4,323人,日
の医 療 特 別 手 当 を 受 給 す る被 爆 者 数 は,2
本 在 住 被 爆 者235,569人 の 約1.8%,毎
月50,750
円 が 支 給 され る 特 別 手 当 を受 給 して い る 被 爆 者 数 は1,018人 で 約0.4%と
なっ
日米 に お け る ヒ バ ク シ ャ研 究 の 現 状 と課 題131
て い る。 申請 件 数 に対 す る認 定 率 は1957年 に は97%で
条 件 が 高 ま り,近 年 は20%前
あ った が,求
め られ る
後 に 落 ち込 ん で い る。 厚 生 労 働 大 臣 の 名 の 下 に
よ る 「原 爆 症 認 定 制 度 」 で は,DS86と
い う米 国 主 導 で 作 られ た 線 量 推 定 方
式 が 認 定 基 準 と して 採 用 され,爆 心 地 か ら近 距 離 で体 外 被 爆 した 障 害 が 重 視
さ れ,低
レベ ル 放 射 線 に よ る被 曝 や 内 部 被 曝 は 過 小 評 価 され て い る。
さ ら に 日本 に は,も
う一 つ の原 発 被 曝 者 集 団 が 存 在 す る。1970∼2005年
原 発 労 働 者 数 は169万7千
人,財
の
団 法 人 「放 射 線 従 事 者 中 央 登 録 セ ンタ ー 」
に 登 録 さ れ た 放 射 線 被 曝 者 は2000年 末 現 在 で 累 計35万2,888人
とな って い
る3A)0原 発 被 曝 者 は 原 爆 被 爆 者 と 同様 の 放 射 線 障 害 を 患 っ て い る が,援 護 法
の対 象 と見 な され な い。 被 曝 の責 任 は 国 家 で は な く雇 い主 に あ る と し,労 働
者 災 害 補 償 保 険 に よ る救 済 措 置 が 取 られ る こ と に な って い るが,現
責 任 は 雇 い主 側 で は な く労 働 者 自身 に あ る と され,労
実 に は,
災が認定 されな いケー
ス が ほ とん どで あ る。
これ らの ヒバ ク シ ャに 加 え,こ
れ まで 被 爆 地 域 と認 め られ て い な か っ た場
所 で 原 爆 に よ る 「黒 い雨 」 で 被 曝 した 者,1964年
グ ル 地 区 を訪 れ,中
以 降 に シル ク ロ ー ド ・ウ イ
国 の 核 実 験 の影 響 で 被 曝 した 者,旧
原 発 事 故 の影 響 が 日本 に 及 び被 曝 した 者,岡
ソ ・チ ェル ノ ブ イ リ
山 県 と鳥 取 県 の ウ ラ ン鉱 山で 採
掘 作 業 を行 い被 曝 した者 な ど,近 年 新 た な ヒバ ク シ ャが発 見 さ れ て い る。 国
内 で は 原 爆 症 認 定 訴 訟 や 原 発 被 曝 訴 訟 が 相 次 ぎ,今
日,ヒ バ ク シ ャ行 政 に お
い て,増 え 続 け る ヒバ ク シ ャへ の 補 償 問 題 に ど う対 応 す るか が,最
大の課題
とな って い る。
国 内 の 研 究 に お い て は,公 式 に 被 爆 者 と認 定 され な い被 爆 者 の救 済 に 向 け,
原 爆 と病 と の 因 果 関 係 を 明 らか に し よ う とす る研 究 が進 め られ,被
爆被害 の
実 態 や 内 部 被 曝 の 危 険 性 を 明 ら か に した研 究39)が 出版 され て い る。 他 方 で,
ヒ バ ク 体 験 や ヒ バ ク シ ャ の 思 想 を 残 す た め の 研 究 も 進 め ら れ,書
籍40)や ル ポ ル タ ー ジ ュ91)な どが 出 版 さ れ て い る。 近 年 の 研 究 の1つ
と して,イ
の潮流
ンタ ー ネ ッ トを 利 用 し,情 報 の収 集 ・発 信 や,多 様 な ネ ッ トワ ー
ク づ く りに よ り,こ れ ま で 権 力 に よ って 隠 さ れ て き た ヒバ ク被 害 や 加 害 の実
態 を 明 らか に し,ヒ バ ク シ ャ を救 済 しよ う とす る傾 向 が見 られ る。
132
6.日
本 の 被 曝 防 護 問題
六 ケ 所 村 再 処 理 工 場 は,通 常 型 原 発1基
の約320倍 の放 射 性 物 質 を 日常 的
に 放 出 す る こ と が 指 摘 さ れ て い る42)。2006年7月8日
の 記 録 で は,一 般 濃 度
規 制 値 の770倍 の放 射 性 物 質 が 海 洋 放 出 され て い る43)。
国 際 環 境 保 護 団 体 グ リー ン ピー ス は2008年2月,ロ
ン ドン大 学 の 放 射 線 生
物 学 者 で あ り環 境 放 射 能 コ ンサ ル タ ン トで あ る イ ア ン ・フ ェ ア リー に 委 託 し
た研 究結 果 報 告 書 「六 ヶ所 再 処 理 工 場:放
射 性 核 種 の推 定 放 出量 と集 団 線 量 」
を発 表 した。 報 告 書 で は,「 毎 年,世 界 で お よ そ370人 が,が ん で死 亡 す る と
計 算 され る」 と し,予 定 され て い る40年 間,再
休 み な く続 け た 場 合,「 世 界 全 体 で1万5千
処理工場 が最大能力 の運転 を
人 が,が
ん で 死 亡 す る」 と結 論
づ け た44も
欧 州 放 射 線 リス ク委 員 会(ECRR)は2003年,公
衆 の被 曝 合 計 最 大 許 容 線
量 をo.iミ リシ ー ベ ル ト,原 発 労 働 者 の 場 合 は5ミ
リ シ ー ベ ル ト以 下 に す る
よ う勧 告 した。 しか し 日本 は,職 業 上,放 射 線 を 浴 び る人 の 被 曝量 を 年 間50
ミ リシ ーベ ル トまで,公
衆 の 被 曝 量 を 年 間1ミ
リシ ー ベ ル トま で と規 定 し,
従 来 の 規 定 を変 え よ う と しな い。 原 発 労 働 に よ る被 曝 が 原 因 で 死 亡 した労 働
者 の 被 曝 量 は,ほ
と ん どの 場 合 が 規 定 値 以 下 で あ った。50ミ リ シー ベ ル トと
の規 定 値 は,人 を 殺 す 可 能 性 の あ る値 で あ り,こ の規 則 は 労 働 者 の 命 を守 る
た め で は な く,産 業 利 益 を 守 る た め,危 険 性 の 高 い被 曝 を 労 働 者 に 強 い る た
め に あ る と言 え る。
WHOは2009年9月,「
ラ ドン ・ハ ン ドブ ック」 を発 行 し,屋 内 ラ ド ン濃
度 の 規 制 を 勧 告 した45)。国 際 放 射 線 防 護 委 員 会(ICRP)も,鉱
山労働 者 の
ラ ジ ウ ム被 曝 や,居 住 ・職 場 環 境 中 ラ ドン被 曝 の 実 態 や リス ク評 価 研 究 を踏
ま え,1993年
に刊 行 した 「Publication65」
直 した 。2009年11月
で 発 表 し た ラ ドン の リス ク を見
に 「ラ ドンに 関 す る声 明」 を 出 し,リ ス ク を従 来 の 約2
倍 高 く評 価 す る こ と を提 示 した46)0
これ に 呼 応 し,ICRPの
日本 支 部 を 有 す る 日本 保 健 物 理 学 会 は2010年9月,
この 声 明 に 関 す る討 論 会 を 開 催 した 。 討 論 会 で は,ICRPの
評 価 方 法 に疑 問
日米 に お け る ヒ バ ク シ ャ研 究 の 現 状 と課 題133
を呈 す る意 見 が 多 数 出 され,「 日本 に この 基 準 を適 用 した 場 合,年
人 肺 が ん 死 亡 者 を 低 減 で き る と思 わ れ る が,ラ
間2∼3
ドン温 泉 文 化 を持 つ 日本 に適
用 した 際 の社 会 的 経 済 的 損 失 を検 討 す れ ば,そ の 適 用 に は 疑 問 が生 じ る」 と
の趣 旨の 意 見 も 出 さ れ,被 曝 防護 基 準 改 定 へ の 慎 重 派 が 多 数 を 占 め た47)。
柏 崎 刈 羽 原 発 が 中越 沖 地 震 に よ って 事 故 を 起 こ した 際,CNNは
日本 で 相
次 ぐ原 発 事 故 と事 故 隠 しに対 し,「 政 府 と東 京 電 力 に よ る悪 質 な 隠 蔽 工 作 で
あ り,隠 蔽 体 質 が な くな らな い 限 り,日 本 の 放 射 能 事 故 は な くな らな い」 と
批 判 した。BBCは,「
原 発 を 林 立 させ,自
管 理 が で きず,原
世 界 に核 廃 止 を訴 え るべ き 被 爆 国 日本 が,狭
い国土 に
国 が 落 と さ れ た 原 爆 何 万 発 分 に も相 当 す る原 子 炉 の 危 機
発 周 辺 に住 民 が 住 ん で い る こ と は異 常 で あ り,そ れ は政 府
が情 報 を 隠 蔽 し続 け て き た こ と の結 果 で あ る」 と批 判 したdR)。日本 で は,原
発 推 進 派 の メ デ ィ ア が電 力 会 社 の ス ポ ンサ ー とな って い る こ と や,三 菱,日
立,東
芝 な どが 支 え る原 子 力 産 業 の 利 益 が重 視 され,ヒ
バ ク の危 険 性 に関 す
る報 道 は極 力 控 え られ て い る。
原 爆 被 爆 者 の 診 療 を続 け る肥 田 舜 太 郎 は,以 下 の よ うに 語 っ て い る。
原 発 の被 害 を 暴 い て 出 そ う とす る人 もい る け ど,発 表 で き る場 が な い。
僕 も体 験 した 。 電 力 会 社 や 大 手 広 告 会 社 の 圧 力 が あ る し,TV会
社 で も難
し くな って い る。 医療 の 教 科 書 に ヒバ ク の 問 題 は載 って い ま せ ん 。 未 だ に
米 国 の 資 料 隠 し も続 い て い ます 。 だ か ら,原 子 力 や核 の 平 和 利 用 の 危 険 に
つ い て も,人 々 は認 識 が 甘 い の で す 。 危 険 につ い て知 って い る人 も,政 府
や 企 業 の圧 力 が あ って,な
か な か 表 に は 出 せ な い の で 一}/9)。
少 しで も被 曝 被 害 を減 らす た め に,情 報 開 示 は 不 可 欠 で あ る。 人 命 を 最 重
視 した 被 曝 防護 体 制 が求 め られ て い る。
おわ りに
「被 爆 国 ア メ リカ』,「原 子 力 開 発 の 光 と影 』,「原 子 力 裁 判 」 な ど の 書 籍 に
は,米 国 に お け る ヒバ クを め ぐる論 議 が 克 明 に記 され て い る。 米 国 内 で は,
134
様 々 な レベ ル で,ヒ
バ ク被 害 に 関 す る開 か れ た論 議 が行 な わ れ て き た こ と が
わ か る。 そ の様 子 を撮 影 した ビデ オ が,多
くの ウ ェブ サ イ ト上 で公 開 され て
い る。 低 線 量 被 曝 に 関す る研 究 で は,名 高 い 研 究 者 が研 究 を行 な い,そ
の成
果 は 高 級 な学 術 誌 で 発 表 され て い る。
他 方,日
本 の 原 子 力 文 化 は,「 議 論 な し,批 判 な し,思 想 な し」 と言 わ れ
る50)0日 本 で ヒバ ク被 害 や ヒバ ク シ ャ問 題 を扱 う権 威 あ る 研 究 者 は少 な い。
ヒバ ク情 報 や 論 議 が不 足 して い る社 会 状 況 にあ って,実
は 日本 人 は 欧 米 人
よ り も,ヒ バ クの 恐 ろ し さや ヒバ ク被 害 の実 態 を 認 識 して い な い の で は な い
か と思 わ れ る。 私 た ち は,身 近 に ヒバ ク シ ャが 存 在 して い る こ とに 気 づ い て
い る だ ろ うか 。 ヒバ ク シ ャが どれ ほ どの被 害 を被 って い るか,何 が ヒバ ク シ ャ
を 苦 しめ て い るの か,そ
の 責 任 は 誰 に あ る の か を,知
もそ も ヒバ ク シ ャ 自身,自
って い る だ ろ うか 。 そ
分 が被 って い る被 害 の 全 体 像 を 把 握 で き て い る だ
ろ うかQ
ヒバ ク シ ャは,原 爆 の 炸 裂 や原 発 事 故 に よ る直 接 的 な被 爆 の み な らず,日
常 生 活 の 環 境 に 残 さ れ た 放 射 能 に よ って 被 曝 して い る場 合 が,ほ
とん どで あ
る。 ヒバ ク被 害 の 原 因 を,直 接 的 な ヒバ ク の み に求 め る こ と は,被 害 を総 体
的 に 把 握 す る こ と を妨 げ て しま う。 これ ま で の ヒバ ク シ ャ被 害 に 関 す る研 究
は,ヒ バ ク シ ャ に特 有 の 被 害 や 問 題 につ い て 聞 き取 り,特 有 の被 害 に 焦 点 を
当 て て 進 め られ,被 害 の 総 体 を 明 らか にす る こ とが で き ず に い る の で は な い
だ ろ うか 。
本 来,ヒ
バ ク に よ る被 害 は,生 存 で き る か 否 か と い う生 命 や 健 康 と い う身
体 面 か らの み な らず,快
適 な 環 境 で 暮 らせ る か と い う生 活 面 か ら考 察 され る
べ き もの で あ る。 些 細 に 見 え る生 活 上 の 問題 も,ヒ バ クに 起 因 す る被 害 と捉
え,研 究 す べ き で あ る と考 え る。 生 活 環 境 に お け る被 曝 を 考 慮 す れ ば,ヒ
バ
ク被 害 は公 害 被 害 に近 い 側 面 を持 って い る。 ヒバ ク 問題 を 環 境 問題 と して 捉
え る視 点 が 重 要 で あ る と思 わ れ る。
社 会 学 者 の濱 谷 正 晴 は,著 書 「原 爆 体 験 』 にお い て,以 下 の よ うに 記 して
い る。
近 年,「
ヒ ロ シ マ と ナ ガ サ キ の 原 爆 投 下 に よ っ て,日
本 人 が 戦 後,自
ら
日米 に お け る ヒ バ ク シ ャ研 究 の 現 状 と課 題135
を こ の戦 争 の 『被 害 者 」 「犠 牲 者 」 と見 な す よ うに な った 」,「原 爆 の もた
ら した 悲 惨 は 言 語 に絶 す る が,そ の た め に 日本 が 被 害 者 で あ る か の よ う な
錯 覚 が 生 ま れ る」 とい った 言 説 が とみ に強 ま っ て い るよ う に思 わ れ る… …
国 が 被 爆 者 に原 爆 被 害 の 「受 忍」 を 強 い る に と どま らず,言 論 人 や 学 者
た ち を は じめ,国 民 世 論 が 被 爆 者 に 「沈 黙 」 を 強 い,戦 争 責 任 を 追 求 して
き た 運 動 を封 じ込 め る… …
苦 痛 を乗 り越 え て証 言 す る こ と に意 味 が 感 じ取 れ な くな れ ば,生 存 者 た
ち は 心 を 閉 ざす 。 そ うな れ ば,〈 原 爆 体 験 〉は,そ
な い ま ま,人
の 全 体 像 が 明 るみ に 出
び と の心 身 の 奥 深 く に閉 じ込 め られ て しま う。 語 る こ と に意
味 が 生 ま れ る。 そ の よ うな 社 会 を,わ
た した ち はつ く って い か な くて は な
るま い… …
こ と の重 み を 被 爆 者 の み に背 負 わ せ て は な る ま い51〕
。
ヒ バ ク 被 害 を 語 り た く な い 心 情 や 語 れ な い 事 情,ヒ
ら い 社 会 環 境,ヒ
バ ク被 害 を 公 に 語 りづ
バ ク被 害 に 関 す る 情 報 不 足 な ど に よ り,ヒ
欧 米 諸 国 の ヒバ ク シ ャ に 比 べ,被
バ ク シ ャ は 実 は,
害 者 意 識 が 薄 い の で は な い だ ろ う か 。 「ノ ー
モ ア ・ ヒ ロ シ マ ・ナ ガ サ キ 」,「 ノ ー モ ア ・ ヒ バ ク シ ャ」 と 声 を 発 す る 被 爆 者
や 核 廃 絶 運 動 は 人 類 の 生 存 を か な え,被
爆 二 世 の 平 和 活動 は私 た ち に 命 の大
切 さ を 実 感 さ せ て くれ て い る52)。私 た ち は ヒ バ ク シ ャ と と も に,ヒ
の 恐 ろ し さ の 本 質 を 公 に し,ヒ
バ ク被 害
バ ク シ ャの救 済 と原 子 力 廃 絶 を 目指 して い か
な け れ ば な らな い。
〈注>
1)資
源 エ ネ ル ギ ー 庁
「2010年
度
『原 子 力 立 国 計 画 』 関 連 予 算 案 の 概 要 」 平 成21年12月,
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100305aO8j.pdf,
2010年12月23日
2)「
参 照 。
国 際 放 射 線 防 護 委 員 会(ICRP)(13-01-03-12)」
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat
2010年12月23日
『ATOMICA」
_detail.php?Title_Key=13-01-03-12,
参 照 。
3)PercyBrown,AmericanMartyrstoScienceThroughtheRoentgenRay,publishedbyCharlesCThomasCo.in1936.
4)カ
ー ル
・Z.モ
ー ガ ン,ケ
ン ・M.ピ
ー タ ー ソ ン
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136
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。
原 書 は,KarlZieglerMorgan,KenM.
Peterson,KarlZ.Morang,TheAngryGenie:OneMan'sWalkThroughthe
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Communication:MalignantDiseaseinChildhoodandDiagnosticIrradiation
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H・
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サ イ
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員 委 員 会 で 証 言
energysolutions"と
21)
題 し,RMIの
公 開 さ れ て い る 。 加 え て,エ
し た ビ デ オ
題
イ モ リー
・B.ロ
ウ ェ ブ
ビ ン ズ が 米 国 議
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え ば,矢
同 研 究
40)例
え ば,奥
2010年
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ヶ 崎 克 馬
広 島
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え ば,NHK「
「原 爆 体 験
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