...

地域ベンチャーファンドの可能性 - 信金中金 地域・中小企業研究所

by user

on
Category: Documents
4

views

Report

Comments

Transcript

地域ベンチャーファンドの可能性 - 信金中金 地域・中小企業研究所
SCB
SHINKIN
CENTRAL
BANK
産業企業情報
20−1
(2008.4.30)
総合研究所
〒103-0028 東京都中央区八重洲 1‐3‐7
TEL.03-5202-7671 FAX.03-3278-7048
URL http://www.scbri.jp
地域ベンチャーファンドの可能性
−出資を実りあるものとするために、グリーンシートなど多様なEXITの模索を−
視
点
地域経済活性化の担い手としてのベンチャー企業への期待は根強い。国や自治体による後押し
もあって、「地域ベンチャーファンド」の設立が続いており、リレバン対策の一環として、地域
金融機関が出資する例も増えている。地方企業の新規株式公開は必ずしも多いとは言えない現状
の中で、出資を実りあるものとするためにはどのような対応が求められているのか、ベンチャー
キャピタル業界の現状や、株式公開環境の変化などを踏まえつつ考えてみたい。
要
旨
地域ベンチャーファンドが大きく増えたのは、
「有限責任組合法」によって、ベンチャーフ
ァンドの透明性が高まり、さらに、
「新事業創出促進法」により、中小企業総合事業団(現・
中小企業基盤整備機構)等による半額出資が「呼び水」となったことによる。現在、136 に
上る同機構出資総ファンドのうち、地域密着型は約6割を占めるようになってきている。
ベンチャーキャピタル業界では、従来からの金融機関系に加え新規株式公開実績を持った独
立系ベンチャーキャピタルも増えてきた。投融資残高は 1 兆円弱に達しているが、半分以上
のファンドの内部投資収益率がマイナスであるなど、投資成果は必ずしも良いとは言えない。
一方、2000 年前後から、マザーズやヘラクレスなどの新興市場が相次いで設立され、上場
基準が大きく緩和された結果、ベンチャー企業の株式公開数自体は大きく増加し、新興市場
に上場している企業は現在 1,500 社に上るまでになっている。
さらに、新たな店頭登録市場とも言えるグリーンシートでは、最低の時価総額で2億円程度
と、極めて小規模な未上場企業の株式公開が可能となっている。これは、情報開示を外部の
専門家に依頼して信頼性を高めつつ、経営者、従業員の親族、知人、取引先、顧客などを対
象とした「拡大縁故募集」という方式を採っていることが多いことによるものだ。
地域ベンチャーファンドに出資した場合には、少しでも実りあるものにすべきだろう。その
ためには、地域金融機関としても、出資意義を十分に確認し、ベンチャーキャピタルに任せ
切りにするのでなく、有望企業の発掘、早い段階からの融資協力、人材の派遣などを通じて、
協働していくことが求められよう。
さらに、取引所上場だけでなく、大企業との戦略的提携、M&A、さらには、グリーンシー
トへの株式公開など、多彩なEXITを模索することも必要だろう。
キ−ワード
地域ベンチャーファンド、ベンチャーキャピタル、新興市場、グリーンシート
©信金中央金庫 総合研究所
目次
はじめに
1
1.
「地域ベンチャーファンド(地域密着型ベンチャーキャピタル)
」設立の系譜
2
(1)ベンチャー企業育成支援への流れ
(2)中小機構による「地域ベンチャーファンド」への出資
2.ベンチャーキャピタル業界の全体像
8
(1)ベンチャーキャピタル業界の特徴
(2)ベンチャーファンドの運用状況
(3)ベンチャーファンドの投資成果
3.大きく変わった株式公開環境
12
(1)新興市場拡大を担ってきたジャスダック
(2)2000 年前後に相次いで開設された新興市場
(3)小規模企業の株式公開に道開いたグリーンシート
4.地域ベンチャーファンドへの出資を実りあるものにするために
18
(1)出資意義の確認とベンチャーキャピタルとの協働
(2)多様なEXIT(投資回収)の模索
はじめに
わが国ベンチャー企業のIPO(新規株式公開)を取り巻く環境は、2000 年前後を境
に大きく変化した。
その第1は、98 年の「投資事業有限責任組合法」施行等に支えられて、独立系ベンチ
ャーファンドの立ち上げが容易になったことだ。これによって、それまで主流を占めて
きた金融機関等を出資母体としたベンチャーキャピタルに加え、経験と実績を持ったベ
ンチャー・キャピタリストによるハンズオン投資(ベンチャー企業の経営に積極的に関
与する投資手法)が本格化してきた。
第2に、2000 年前後から相次いで新興市場が整備され、上場基準が大幅に緩和された
結果、株式公開が容易になった。折からの「ITバブル」の発生も手伝い、2000 年には
IPOが大きなブームとなった。ITバブル自体はほどなくして崩壊したものの、株式
公開数は順調に増加し、00 年以降新規公開した企業は実に 1,200 社に上る。このなかに
は、ベンチャーキャピタルがアーリーステージ(成長初期段階)で投資してからわずか
数年でIPOを実現したベンチャー企業も少なくない1。
1
とはいえ、新興市場では、06 年1月の「ホリエモン・ショック」に象徴されるような不祥事が相次いで発生し、さら
に 07 年夏以降は、米サブプライム・ローン問題に端を発する米国景気の後退によって世界的に株価が急落したため、
株価指数は算出来の安値圏まで下落した。このため、08 年にかけて新規公開は不振に陥っている。
だが、元来、ベンチャービジネス投資は 10 年のタームで果実を生むものであり、その成否は、より長い視野に立って
判断されるべきだろう。
1
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
こうした中、疲弊した地域経済を活性化する担い手としてのベンチャー企業への期待
は根強く、国や自治体による後押しもあって、
「地域ベンチャーファンド(地域密着型ベ
ンチャーキャピタル)」の設立が続いている。地域金融機関が、03 年度から始められた「リ
レーションシップバンキングの機能強化計画」実施の一環として、これに出資する事例
も増えてきた。
もちろん、
「地域ベンチャーファンド」は初めての試みではない。90 年代半ばにも、地
銀を中心に数多くのベンチャーキャピタルが設立されてきた。00 年以降の違いは、中小
企業総合事業団(現・中小企業基盤整備機構、以下「中小機構」という。)が、「新事業
開拓促進出資事業」により、
(自治体等からの出資も含め)半額までの出資に応じるとい
うスキームが機能し始めてきたことだろう。中小機構は、99 年以降すでに 136 ファンド
の設立を支援しているが、このうち約6割が何らかの意味で地域密着型である。地銀等
が主体となったものもあるが、上述の独立系ベンチャーキャピタルが業務執行組合員に
なるケースも増えてきているのが新しい特徴である。
とはいえ、わが国ベンチャーキャピタルのパフォーマンス自体は総じてあまり芳しい
とはいえない。しかも、これまでのところ、新規公開企業のほぼ半数は東京に集中して
おり、地域限定型のベンチャーキャピタルでは公開実績に乏しいことが多いようだ。
新規公開が容易になってから8年余りが経過し、すでに投資を完了し育成段階に入っ
た地域ベンチャーファンドも多く、これからその成果が問われる時期を迎える。一方、
今後も、地域活性化の観点から自治体の後押しもあり、地域ベンチャーファンドの組成
は進められていくだろう。地域金融機関としては、こうした地域ベンチャーファンドに
対してどのように対応していくべきなのだろうか。
本稿ではこの点について考えるために、まず第1章で、地域ベンチャーファンドが増
えてきた背景と中小機構が出資しているファンドの概要を説明し、独立系ベンチャーキ
ャピタルが業務執行組合員を務めるケースが増えていることに鑑み、第2章で、ベンチ
ャーキャピタル業界の全体像を俯瞰する。ついで、第3章で、新興市場整備の推移を振
り返るとともに、特に地域ベンチャーファンドにとってひとつの有効なEXIT(投資
資金の回収)の選択肢となりえるグリーンシート市場について紹介する。最後に、第4
章で地域ベンチャーファンド出資を実りあるものにするための方策について、ベンチャ
ーキャピタルや出資金融機関への取材をもとに、考え方をまとめてみたい。
1.「地域ベンチャーファンド(地域密着型ベンチャーキャピタル)」設立の系譜
(1)ベンチャー企業育成支援への流れ
イ.70 年代と 80 年代のベンチャーキャピタル設立ブーム
地域ベンチャーファンド設立の動きは、90 年代後半から活発化した。初めに、この間
の経緯を振り返っておこう。
ベンチャーキャピタル業界には、これまで、少なくとも3次にわたるブームがあった
2
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
とされている。第1次ブームは、72 年から 74 年にかけてのわが国ベンチャーキャピタル
の創成期のものである。わが国初の民間主導のベンチャーキャピタルは、72 年 11 月に京
都で産声を上げたKED(京都エンタープライズ・デベロップメント)であった2。つい
で、73 年にはNED(日本エンタープライズ・デベロップメント、現・安田企業投資)
や、日本合同ファイナンス(野村証券系、現・JAFCO)が設立されている。しかし、
これらは、74 年秋に勃発した第一次石油ショックのあおりを受けて壊滅的打撃を受け、
ベンチャーキャピタル活動はいったん下火となってしまった。
次に、ベンチャーキャピタルがブームを呈したのは、80 年代になってからであり、82
年から 86 年にかけての時期が第2次ブームとされている。
これには、ふたつのきっかけがあった。ひとつは、82 年になって、JAFCOが「J
AFCO方式」と呼ばれた日本初の「投資事業組合」を立ち上げたことである。これは、
民法上(667∼688 条)の任意組合を設立して出資を募り、長期安定資金を確保したうえ
でベンチャービジネス投資を行おうとしたものである。もうひとつは、83 年 11 月に、店
頭登録基準や東証二部の上場基準が一部緩和され、株式公開がそれまでに比べれば活発
化したことである。
この結果、折からの金融緩和も手伝い、ベンチャーキャピタルの設立ラッシュが到来
した。86 年にかけて、都銀等に限らず、中堅証券会社や大手地銀など各種の金融機関が、
競ってベンチャーキャピタルを設立し、その数は 60 数社にまで一挙に増加した。この時
期に設立された代表的なベンチャーキャピタルとしては、NIF(日本インベストメン
ト・ファイナンス、大和証券系、現エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ)や、日興キ
ャピタル(現・日興アントファクトリー)などが挙げられる。
ただし、この頃までの投資は、レイターステージ(株式公開が間近い成長後期段階)
のベンチャービジネスを中心に、広く浅く投資するというスタイルが一般的だった。公
開直前の中堅企業からの資本政策依頼に協力するといった色彩が濃く、単なる未公開株
投資に近かったとも言われている。
この第2次ブームも、85 年のプラザ合意後の円高不況によりいったん終息する。その
後のバブル景気の到来により、89 年から 90 年にかけてベンチャーキャピタルの投資能力
を上回るほどのファンドが設定されたが、不動産融資などに手を出したファンドも少な
くなく、それらはバブル崩壊によって大きな痛手を負った。
ロ.90 年代後半に始まったベンチャーキャピタル「支援ブーム」
(イ)「創造法」に基づく「創造的中小企業創出支援事業」
再びベンチャーキャピタル業界が活気づいてきたのは 90 年代半ば以降のことで、「第
3次ベンチャーキャピタルブーム」と呼ばれている。95 年から 97 年にかけて、合計 56
本(出資総額 1,824 億円)のファンドが設定され、97 年3月末の投融資残高は 9,224 億
2
これより先の 63 年、
「中小企業投資育成株式会社法」に基づき、中小企業の自己資本充実を主目的として、東京と大
阪、名古屋にそれぞれ、中小企業投資育成株式会社が設立されており、今日に至るまで重要な役割を担ってきている。
3
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
円に達した。
この時期からの特徴は、
「平成不況」下の長引く景気低迷、空洞化の進行や、開業率の
低下の中で、わが国経済を活性化させる新たな活力の担い手としてベンチャービジネス
への期待が高まり、政府主導による不況打開策として、ベンチャー企業支援策が進めら
れた点にある。このため、ベンチャー「支援ブーム」が始まったと言われることもある。
その出発点となったのは、95 年4月に施行された「中小企業の創造的事業活動の促進
に関する臨時措置法」
(以下「創造法」という。)だった。同法自体は、創業支援や既存
の中小企業における研究開発を支援することなどを目的とした多角的なものであったが、
96 年4月改正の同法に基づき、地方公共団体が設立したいわゆる「ベンチャー財団」3に
よる投資事業(「創造的中小企業創出支援事業」)が始められたのである。
これにはふたつの手法が採られた。その第1は、同法に基づき「研究開発等事業計画」
の認定を受けた株式会社等に対し、ベンチャー財団と契約したベンチャーキャピタルを
経由して投資(株式または社債の引受)を行う間接投資である。具体的には、ベンチャ
ー財団が投資を行うベンチャーキャピタルを特定して、案件ごとに資金を預託する形を
とった4。第2は、ベンチャー財団自身が、1,000 万円を上限として、直接、株式または
社債を引受けるという直接投資であった。
これにより、それまで地元で活動するベンチャーキャピタルが存在していなかった地
方圏においてもベンチャー投資が活発になった意義は大きかった。このスキームを活用
すべく、地銀等によるベンチャーファンド設立が相次いだのである。また、レイタース
テージに偏った投資が多かった民間ベンチャーキャピタルに対して、アーリーステージ
投資を促した点も評価されよう。
ただし、公的機関にはベンチャービジネス投資についての十分なノウハウの蓄積がな
く、必ずしも成功したとは言えなかった。ベンチャーキャピタル側としても、投資対象
企業要件が、事実上、創造法の認定を受けた研究開発型の製造業を中心とした企業に限
られたため、使い勝手が悪かったとの指摘もある5。
(ロ)「有限責任組合法」の施行
ついで、98 年 11 月には、
「中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律」(以下
「有限責任組合法」という。
)が施行された。それまでの投資事業組合では、法律上、各
出資者の有限責任は担保されておらず、組合員に対する情報開示ルールも明確でなかっ
た。業務執行組合員(ベンチャーキャピタル)と一般の組合員(投資家)との間で交わ
3
小企業総合事業団の高度化資金を原資に都道府県が財団をつくり、投資したり、社債の保証を引き受けたりするもの
で、個別の名称は、産業振興財団、中小企業支援センターなど様々であった。
4
預託金額は1億円以内であり、社債の場合は、利率:長期プライムレート以下、償還期限:10 年以内などとされた。
なお、一定の要件に該当する場合には、社債元本の 70%以内が債務保証(保証料率:年 0.5%)された。
5
「創造法の認定を受けている企業、またはそれに準ずる企業」とされてはいたが、実質上、創造法の認定が大前提で
あったという。中小企業総合事業団(2002)pp.120-122 参照。ベンチャーファンドとしては、案件の都度、委員会に
かけて認定してもらう必要があり、手間がかかる一方、投資先が破綻しても3割の自己負担で済んでしまう。そもそも、
損失補填される資金を元手にして投資するのでは、ベンチャーキャピタル業務とは言えないとの批判もあった。
4
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
される組合契約を通じて、実務上は問題が生じないようになっていたものの、法的な担
保がなく、透明性も確保されていなかったため、年金基金や海外投資家が投資事業組合
への出資を躊躇する大きな原因のひとつとなっていた。
そこで、民法上の組合の特例法として同法が施行され、業務執行組合員以外の一般組
合員の有限責任を法的に担保するとともに、一般組合員が組合業務の情報を入手する権
利も積極的に規定されたのである。
同法の施行により、一般の投資家からも出資を募ることが容易になったため、大手ベ
ンチャーキャピタルからスピンオフした独立系のベンチャーキャピタルが見受けられる
ようになった。
ベンチャービジネス育成には投資経験の長さがモノを言う。かつてのように、母体金
融機関から数年単位でベンチャーキャピタルに職員を出向させるという手法では、本格
的なベンチャービジネス育成は容易でないと言われてきた。地域金融機関としては、十
分なノウハウを持たずにベンチャーキャピタルを組成してきたことが多かったが、こう
した独立系のベンチャーキャピタルなどと組むことによって、それなりにノウハウを共
有していくことが可能になったといえる。
(ハ)「新事業創出促進法」に基づく新事業開拓促進出資事業
さらに、99 年2月に施行された「新事業創出促進法」も、ベンチャーファンド組成の
急増、特に独立系のそれに大きく貢献した。同法に基づき、中小企業総合事業団(現・
中小機構)等が、民間のベンチャーキャピタルが設立する有限責任組合に直接出資する
ことにより、ベンチャー企業の資金調達を支援する「新事業開拓促進出資事業」が始め
られたからである。その第1号は、99 年3月に設立された「投資育成1号投資事業有限
責任組合」であった。これには、政府系の3つの中小企業投資育成株式会社が業務執行
組合員として出資した。
こうした結果、2000 年以降毎年 30 本以上、06 年末までで総計 297 本と、ファンドの
設立が急増した(図表1参照)。ファンド出資総額も、それまで年間 1,000 億円以下だっ
たのに対し、00 年にはITバブルによる株価の高騰も手伝って、一挙に 3,170 億円に達
している。その後の株価下
図表1. 開始年別ファンド数と出資総額の推移
落期においても、02 年を除
(本)
(億円)
4,000
80
き 1,000 億円台を維持し、
ファンド数(右軸)
3,500
70
ファン出資総額
平均総額設立 期間満了
東証株価が上昇に転じた 04
3,000
60
出資総額(左軸)
2,500
50
年には 2,619 億円を記録し
2,000
40
た。金額ベースで見ても
1,500
30
1,000
20
2000 年以降に組成されたフ
500
10
ァンドが圧倒的な比重を占
0
0
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
02
04
06
めていることが見て取れよ
う。
(備考)VEC「ベンチャーキャピタル等投資動向調査」各年度版より作成
5
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
(2)中小機構による「地域ベンチャーファンド」への出資
以上、2000 年前後から、わが国産業の活性化を目的とした政策的支援も後押しとなっ
て、ベンチャーファンドの組成が急増してきたことを述べてきた。この中で、中小機構
による半額出資のスキームは、
「呼び水」として大きな効果を発揮してきた。そこで、次
に中小機構出資ファンドに絞って、この間の組成状況を見てみよう。
イ.地域密着型ファンドおよび産学連携型はあわせて4割弱
もとより、中小機構自体は、多角的な視点に立った中小企業の支援育成を政策目的と
しており、
「ベンチャーファンド」組成の政策目的も、基本的にはアーリーステージから
のベンチャービジネス投資を促進することにあった6。
とはいえ、当初から中小機構は、地方におけるベンチャービジネスを活発化させるた
めに、一定の地域内の企業を主な投資対象とすることを特徴とするファンド、すなわち
「地域密着型」を、政策目標のひとつに明確に位置づけてきた。同機構は、07 年3月末
現在の「ベンチャーファンド」76 本(総額 1,229 億円、投資済み企業 1,664 社)を対象
とした分析を行っている7が、ここでは、
「地域密着型」を 23 ファンド(ファンド総額の
15%)と捉えている。また、
「産学連携型」として 11 ファンド(同 20%)を挙げている
が、その多くは、一定地域の大学と連携したものであり、広い意味では、
「地域密着型」
に含めることも可能だろう。残りは、
「アーリーのみ」
(同 33%)
、
「業種特定型」
(同 32%)
となっている。
ロ.次第に対象を広げるファンド事業
図表2のとおり、中小機構によるファンド事業は、現在は5つの制度で構成され、計
136 に上るファンドが一括して管理されている。
このなかで歴史が一番長く残高も多いのが、上述の「ベンチャーファンド」である。
これまでに、90 ファンドが組成され、そのうち、39 ファンドが新規投資の受付を終了し、
投資済み企業の育成の段階に入っている。このうち、地域密着型は、産学連携型を合わ
せれば、47 ファンドまで増えている。
一方、
「がんばれ!中小企業ファンド」が 04 年度からスタートしており、08 年3月末
現在 24 ファンドが設立されている。同ファンドでは、
「設立7年未満」という投資対象
における制限がはずされており、既存中小企業や第二創業8の中堅企業等も対象としてい
る9。このうち 14 ファンドは地域密着型といってよい10。
6
「ベンチャーファンド」事業は、
「設立後7年未満のアーリーステージ(成長初期段階)にある企業への投資を投資総
額の 70%以上とすること」を条件としている。
7
中小機構(2007)参照。同報告によれば、07 年 10 月末現在、投資済み企業からのIPOは 83 社に及び、総計 7,000
億円を超える売上、および2万人を超える雇用を達成している。
8
既存企業の2代目などの後継者が、業態転換を図ったりや新規事業に進出したりすることをいう。
9
これは、地方公共団体側の要望によって設立された色彩が濃く、必ずしも株式公開に拘らないとしているものも多い。
10
なお、95 年施行の創造法は、10 年間の時限立法であったため、05 年3月には廃止され、
「中小企業新事業活動促進
法」に一本化された。このため、各地のベンチャー財団による従来のような直接投資事業は実施できなくなったことも、
6
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
図表2.中小機構が出資するファンドの主な要件と現況
地域中小企
がんばれ!中小
業応援ファ
企業ファンド
ンド
新事業展開・第二 国内の一定
設立7年未満の
投資対象(投資
アーリーステージ 創業にチャレンジ の地域に所
総額の70%以上
にある中小・ベン する既存の中小 在する中小
を占めること)
企業
企業
チャー企業
1号ファンド設立
99.3
04.9
07.6
年月
ファンド数
90
24
2
ベンチャーファンド
ファンド形態
ファンド運営者
投資先への支援
中小企業再
生ファンド
事業継続ファンド
後継者不在等により
再生に取り
新事業展開等が困難
組む中小企
となっている中小企業
業
(※1)
06.11
03.10
4
16
投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく組合
民間投資会社(ベンチャーキャピタル等)
無限責任組合員による経営支援
中小機構の中小企業・ベンチャー総合支援センターによる各種支援
商社やメーカー等
との提携による販
路開拓支援等
中小企業再生支援協
議会との連携(再生計
画策定支援等)
ファンド総額の1/2以内(地方公共団体が出資を行う場合は、その出資額と合わせて
中小機構の出資
1/2以内)
限度額
(※2)
7年以内(3
ファンド運営期間 12年以内(3年以内の延長可)
年以内の延
長可)
一括払い又は分割払い
一括払い又
払込方法
(出資約束金額が10億円を超える場合は分割払い方式のみ)
は分割払い
組合契約に盛り込んだ投資形態から発生する有価証券譲渡益又は配当収入による利
再投資の禁止
益の再度投資の禁止
(※1)経営権の取得による投資(当該企業の議決権の過半数を取得し、かつ当該企業における経営者が交代するこ
とを要件とします。)が投資総額の50%以上を占めること
(※2)地方公共団体が出資を行う場合は、中小機構出資分と合せて7割以内。一定の要件(格差是正対象地域〈財
政力指数が0.5を下回る都道府県〉)内に事務所を有する中小企業者に重点的に投資を行う)を満たせば、地方公
共団体の出資額に応じて、中小機構はファンド総額の最大6割までの出資が可能
(備考)中小機構ホームページより一部追加して作成
さらに、07 年度には、
「地域中小企業応援ファンド(チャレンジ企業応援型)
」が新た
に加わった。これは、地方公共団体の出資も促すとともに、投資対象を地域中小企業に
絞り込んでいる点に特徴がある。
すなわち、同ファンドの新しい特徴は、中小機構出資は、従来と同様、ファンド総額
の2分の1以内と変わらないものの、地方公共団体が出資した場合には、合わせてファ
ンド総額の最大7割まで、公的資金の受け入れ枠を拡大した点にある。一方、投資対象
については、投資総額の 70%以上を、
「一定の地域内に所在する事業所で事業を行う中小
企業者であって、地域資源を活用するなどして創業又は経営の革新を図り、域外新市場
への新事業展開に向けて株式公開などを志向する又は成長段階にある者」としている。
これに基づいて、「あおもりクリエイトファンド」と、
「とっとりチャレンジ応援ファン
ド」が 07 年度中に設立されている。
05 年度から地域ベンチャーファンドの設立が相次いだ一因となっている。
7
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
これらの中で、地域金融機関の出資が確認できるファンドを本稿末尾に参考表として
示した。
なお、このほか 03 年度から「中小企業再生ファンド」が 16 本組成されているが、う
ち 15 本はそれぞれの特定地域を対象としている。また 06 年度から「事業継続ファンド」
が4本組成されているが、うち1本は九州を対象としたものである。これらをすべて合
わせると、広い意味での地域密着型ファンドは全部で 79 本となり、全ファンドの約6割
を占めていることになる。
2.ベンチャーキャピタル業界の全体像
ところで、こうした地域ベンチャーファンドの運営主体である業務執行組合員には、
地銀など地域金融機関主体のベンチャーキャピタルのほかに、大手金融機関を出身母体
とするベンチャーキャピタルや、事業会社系ベンチャーキャピタル、独立系ベンチャー
キャピタルなどが就任している。今後、地域金融機関が有限責任組合員として出資を検
討する際には、業務執行を委託する無限責任組合員であるベンチャーキャピタル、さら
にはベンチャーキャピタル業界の実態といったものについて、ある程度の知識が求めら
れてこよう。そこで本章では、ベンチャーキャピタル業界の全体像を俯瞰しておきたい。
(1)ベンチャーキャピタル業界の特徴
イ.これまでは大手ベンチャーキャピタルが寡占
ベンチャーキャピタルが最初に設立されてからすでに 30 年以上経つが、
「日本ベンチ
ャーキャピタル協会」という業界団体が設立されたのは、意外に新しく 02 年のことであ
り、現在、110 社弱が参加している。しかし、大手ベンチャーキャピタルで不参加のベン
チャーキャピタルもあり、同協会に未参加の中小ベンチャーキャピタルも含めれば、お
よそ 200 社程度のベンチャーキャピタルが存在しているとされている。
ただし、投融資残高で見ると圧倒的な寡占状態にある。100 億円以上の残高を有する大
手 15 社で実に全体の8割以上を占めており(図表3
図表3.投融資残高の分布 (2007年3月末現在)
参照)
、上位3社の投融資残高は 1,000 億円を超えて
社数 合計投融資残高
いる。
構成比(%)
(億円)
1,000超
3 4,286
43.6
このうち、JAFCO、SBIインベストメント(旧
500∼1,000
2 1,219
12.4
ソフトバンク・インベストメント)
、日本アジア投資、 100∼500
10 2,779
28.3
50∼100
12
841
8.6
エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ、フューチャ
10∼50
25
582
5.9
ーベンチャーキャピタルの5社が、証券取引所に上場 10以下
21
115
1.2
合計
73 9,822
100
している。
(備考)VEC「平成19年度ベンチャー
キャピタル等投資動向調査」より作成
ロ.依然、金融機関系が圧倒的
前章で述べてきた歴史的経緯から、ベンチャーキャピタルの出資母体としては、依然、
8
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
金融機関系が、数の上では6割強と圧倒的である。
一般に、金融機関系ベンチャーキャピタルは、親会社からの出向者が多く、数年の定
期異動で交代しがちであり、レイターステージ向けを中心とした分散投資を主力として
きたとされている。
多くの場合、ハンズオン能力のあるものは少ないとされており、「ファロワー」(他の
ベンチャーキャピタルと協調して投資する共同投資するもの)が多いと言われてきた。
ハ.近年存在感を増してきた独立系ベンチャーキャピタル
一方、近年、大手ベンチャーキャピタルでIPOを成功させるなどして実力をつけた
キャピタリストが自ら設立した独立系ベンチャーキャピタルの台頭が見られる。投融資
残高といった面ではまだ小さな存在だが、投資を受けるベンチャー企業側からは評価さ
れているベンチャーキャピタルも少なくないようだ。
彼らは、一般に数多くのIPO実績に裏付けられ、「リードインベスター」(投資育成
において中心的役割を担っていくベンチャーキャピタル)として、アーリーステージか
らハンズオンを進めるケースが多いようだ。
(2)ベンチャーファンドの運用状況
イ.出資者内訳の推移
次に、こうしたベンチャーキャピタルによるベンチャーファンドの運用状況を見てみ
よう。まず、図表4によって、ベンチャーファンドに対する出資者の内訳を見ると、従
来、出資者の半分は広義の金融機関(預金取扱金融機関、保険会社、証券会社、年金基
金等)であるとされてきた。しかし、年によってかなり大きなばらつきはあるものの、
近年は金融機関のシェアが次第に低下傾向にある。その一方、事業会社、個人のシェア
が上昇しているように見える。特にかつては微々たるシェアに過ぎなかった個人が、07
年3月末では 14.6%を占めている11。
図表4.ファンドの金額別出資者内訳(%)
年月
02.9
03.9
04.3
05.3
06.3
07.3
サンプ
無限責 その他
ル社
任組合 組合員 国内計
数
個人
員
計
(件)
49
53
55
53
50
52
16.7
15.9
25.5
21.5
18.3
13.9
83.2
81.6
74.5
78.5
81.7
85.1
82.1
80.6
61.5
77.1
79.1
71.7
2.9
0.3
2.4
14.1
4.1
14.6
銀行・信
他の 事業
保険
用金庫・
VC 法人
会社
信用組合
2.5
1.2
1.4
0.3
0.9
1.7
17.7
12.7
12.9
20.1
18.7
24.0
30.2
35.0
28.6
17.6
28.3
11.2
14.0
5.3
2.9
8.8
13.8
6.7
証券
会社
7.0
6.6
0.8
4.7
2.4
5.6
年金
基金
1.2
2.4
0.8
0.0
5.4
1.2
その他 その
基金・財 他国
団
内
1.6
3.9
8.1
1.7
1.1
1.8
海外
計
5.0 1.0
13.4 1.1
3.7 13.0
9.6 1.5
4.4 2.6
4.9 13.4
(備考)図表1に同じ
ロ.1兆円弱の投融資残高
ベンチャーファンドによる投融資残高(ベンチャーキャピタル自身による本体投資を
11
あくまで推測の域を出ないが、ITベンチャー創業者などが、上場後、豊富な個人資産の運用先として、ファンド
に出資する事例があるようである。
9
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
含む。
)は、図表5に見られるとおり、90 年 12 月末に 5,000 億円を超えた後、93 年 12
月末には若干減少したものの、第3次ブームが始まった 97 年3月末には、9,000 億円台
に達した。
その後、金融危機の到来と
図表5.ベンチャーキャピタル投融資残高の推移
(投融資残高、億円)
(年間投融資額、億円)
ともに若干減少したものの、
10,000
組合投融資残高(左軸)
9,000
本体投融資残高(左軸)
ITバブルの余韻が残ってい
年間投融資額(右軸)
8,000
た 01 年9月に、初めて1兆円
7,000
6,000
台を超えた。ただし、その後
5,000
は小泉改革に伴う景気の減速
4,000
3,000
を受けて、05 年3月末まで減
2,000
1,000
少が続き、ようやく、06 年3
0
月末から1兆円近くに回復し
87.12 89.12 91.12 93.12 96.3
98.3
00.6
02.9
04.3
06.3 (年月)
(備考)図表1に同じ
てきている。とはいえ、いま
だに1兆円は超えておらず、基本的に大きな増加はないといえる。
一方、年間投融資額の推移をみると、01 年9月末に 2,895 億円の投資が行われた後は、
04 年3月末の 1,503 億円まで減少を続けている。その後増加に転じているものの、07 年
3月末でも 2,790 億円にとどまっており、01 年9月のピークは超えていない。
ちなみに、わが国の状況を欧米と比較すると、米国の投融資残高は約 30 兆円、欧州で
も約 24 兆円に達しており、極端な格差が続いている。
5000
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
ハ.業種はITとバイオテクノロジーに偏り
次に、図表6によって、投資先の業種分布をまず金額ベースで見てみると、04 年3月
末までは、IT関連が4割以上と圧倒的だったことがわかる。
図表6.新規投資先企業の業種分布
ただ、05 年3月末以降は、IT関連はや (金額別構成比、%)
03.9
04.3
05.3
06.3
07.3
44.0
49.1
33.7
34.8
30.1
や下火になり、代わりにバイオテクノロジ IT関連計
バイオ/ヘルスケア計
14.1
14.3
23.5
18.0
12.8
バイオテクノロジー
8.3
9.1
18.4
9.9
7.9
ーが急増した。しかし、そのIPO実績は
医療/ヘルスケア
2.7
2.0
5.1
8.2
5.0
8.6
9.3
10.3
14.5
15.1
まだ限られているのが現状である。バイオ 産業/エネルギー計
製品/サービス計
25.3
16.3
20.5
25.1
39.3
ビジネスサービス
15.2
5.4
8.3
6.4
5.2
テクノロジーは、投資規模が大きく、開発
消費者関連
5.7
4.6
7.2
14.2
17.3
金融/保険/不動産
1.3
3.5
5.0
4.5
16.9
までに長い時間がかかり、技術への専門的
その他
5.1
0.7
2.9
2.1
0.5
0.0
1.0
0.4
0.3
0.2
な理解力が求められるなどにより、一時の VBへの直接投資以外
(件数別構成比、%)
03.9
04.3
05.3
06.3
07.3
投資ブームは冷めてきているようである。
IT関連計
36.5
34.3
28.6
33.0
33.0
19.4
19.1
22.4
17.2
13.3
一方、07 年3月末で見ると、
「製品/サー バイオ/ヘルスケア計
バイオテクノロジー
11.0
12.0
17.0
8.5
7.7
医療/ヘルスケア
4.9
4.1
5.4
8.7
5.6
ビス」が 39.3%と最大のシェアに達してい
産業/エネルギー計
13.3
15.5
12.0
15.9
17.5
る。その内訳は、
「消費者関連」や「ビジネ 製品/サービス計
21.5
22.0
21.2
27.0
30.3
ビジネスサービス
10.0
9.4
8.7
7.8
8.1
スサービス」等である。06 年1月の「ホリ
消費者関連
6.7
8.2
8.9
14.3
15.8
金融/保険/不動産
2.2
3.0
3.6
4.9
6.4
エモン・ショック」以降、ITを中心とし その他
3.1
2.0
2.5
0.8
0.8
VBへの直接投資以外
0.0
1.1
0.8
0.3
0.4
た新興市場株価の不振が始まったため、ベ (備考)図表1に同じ
10
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
ンチャーキャピタル側も、ITやハイテクベンチャー以外への投資を増やしてきている
ことを反映しているといえよう。
ニ.近年は、アーリーステージからやや分散傾向
一方、新規投資先が設立されてからの年数を
見ると、03 年9月末では、5年未満が 61.6%
を占めていたが、07 年3月末で見ると、5年以
上 10 年未満が 32.1%まで増加している(図表
7参照)。依然として、設立5年未満が約4割
と最も多いものの、このところややエクスパン
ションステージ(成長段階)へのシフトが見ら
れること、および設立後 15 年以上といったレ
イターステージにある企業が2割前後を占め
ていることも注目に値しよう。
図表7.新規投資先企業の
設立年数別金額構成比
設立
5年以 10年以
設立 後∼5
15年 分類
上∼10 上∼15
投資 年未
以上 不能
年未満 年未満
満
02.9
03.9
04.3
05.3
06.3
07.3
1.5
2.2
1.3
0.8
2.3
2.1
52.0
61.6
48.5
47.7
45.8
40.2
15.3
8.3
14.6
15.9
21.9
32.1
8.7
4.9
7.2
8.0
6.4
7.1
22.5
23.0
19.2
19.5
19.7
17.5
0.0
0.0
0.9
1.2
0.2
0.8
(備考)図表1に同じ
ホ.EXITの手法
わが国の場合、投資回収の方法として、株式公開は、4割前後から、時として5割に
(単位:件、%)
も達している。M&Aを通 図表8.EXIT社数と構成比の推移
売却、経営者
倒産、解散、
株式公開
計
などへの売り
その他
じた大企業等への売却が多
償却
戻しなど
い米国などと比べると、わ 02.9 386 50.4 130 17.0
79 10.3
171 22.3
766 100.0
03.9
384
44.8
99
11.5
365
42.5
10
1.2
858 100.0
が国の株式公開依存は極め
04.3
427 46.0
186 20.0
286 30.8
30 3.2
929 100.0
4 0.4 1041 100.0
て高いといえる(図表8参 05.3 495 47.6 159 15.3 383 36.8
06.3
328 38.1
131 15.2
359 41.7
43 5.0
861 100.0
照)。
07.3
345 44.9
179 23.3
229 29.8
15 2.0
768 100.0
(備考)1.出所は図表1に同じ、単純集計ベース
2.02.9調査までは、「経営者などへの売り戻し」は「その他」に含めていた。
(3)ベンチャーファンの投資成果
それでは、ベンチャーファンドの投資実績はいかがなものなのだろうか。ベンチャー
ファンドの本数は、現在 451 本、出資総額は累計 1.7 兆円に達している。このうち、80
年代に設立されたものを中心に、すでに 115 本が期間を満了し清算されているので、現
在も存続しているのは 336 本ということになる。
これらのうち、投資実績の詳細を回答している 402 本のファンドについてみた図表9
によれば、10%以上のIRR(内部投資収益率)12を計上しているファンドは、実は 50
本に過ぎない。実に、236 本がマイナスなのである。
ただし、設立後間もないファンドは、IPO等に至った投資先が少ないのは当然なの
12
Internal Rate of Return。投資利回りを計算する手法の一つで、投資金額に対していくらの分配金が戻ってきたの
かを計測するために、分配金を現在価値に引き直して複利計算し、その結果を年率で表示したもの
11
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
図表9.運用期間の長短別IRRの分布 で、一般にIRRが低いのは当然で
ファンド数 (右欄:%)
IRR
ある。しかし、02 年3月以前に運
02年以前開始
03年以降開始
全体
60%∼
7
1.7
6
2.4
1
0.7
用を開始し、少なくとも5年を経過
50∼60%
1
0.2
1
0.4
0
0.0
40∼50%
0
0.0
0
0.0
0
0.0
したファンドに絞ってみても、マイ
30∼40%
4
1.0
3
1.2
1
0.7
ナスのファンドが 48%を占めてい
20∼30%
7
1.7
6
2.4
1
0.7
15∼20%
8
2.0
7
2.8
1
0.7
る。確かに、50%以上のIRRを示
10∼15%
23
5.7
17
6.8
6
3.9
10%以上小計
50
12.4
40
16.0
10
6.6
している超優秀ファンドも散見さ
5∼10%
37
9.2
28
11.2
9
5.9
れる一方、-20%を下回るマイナス
0∼5%
79
19.7
62
24.8
17
11.2
0%以下小計
236
58.7 120
48.0 116
76.3
に沈んでいるファンドもある。ファ
-5∼0%
105
26.1
52
20.8
53
34.9
ンドごとのばらつきは非常に大き
-10∼-5%
76
18.9
46
18.4
30
19.7
-15∼-10%
23
5.7
15
6.0
8
5.3
いといえる。
-20∼-15%
17
4.2
6
2.4
11
7.2
-30∼-20%
6
1.5
0
0.0
6
3.9
02 年以前開始のファンドの約3
-40∼-30%
1
0.2
0
0.0
1
0.7
分の1が、プラスではあるものの
∼-40%
8
2.0
1
0.4
7
4.6
合計
402 100.0 250 100.0 152 100.0
10%以下のIRRにとどまってい
(備考)VEC「平成19年度ベンチャーキャピタル・ファンド等ベンチマーク調査」より作成
るというあたりが、現時点で、ベン
チャーキャピタルに期待しえる現実的水準と言えそうである。
3.大きく変わった株式公開環境
さて、2000 年頃からファンド組成が急増してきたことのもうひとつの背景として、新
興市場が整備されてIPOが急増した結果、EXITがかつてに比べ容易になってきた
点が挙げられる。
一般に、株式上場は「千三つ」といわれてきた。新規開業したベンチャー企業のうち、
上場まで漕ぎ着けることのできる企業は、1,000 社に3社程度であり、きわめて特異、例
外的なものとされてきたのである。
しかし、かつてに比べ今日では大幅な改善が見られるようになったのも事実である。
現在、株式公開している企業は 4,000 社を超えている。これらについて、現在の取引所
に上場した年代を調べると、90 年代が3割、
2000 年代に入ってからが4割を占めている。
近年、上場企業数は大きく伸びてきているのである。実際、今日、7つの新興市場には
合わせて 1,500 社が株式公開するに至っている13。
そこで、本章では、どのような経緯を辿って上場基準が緩和され、新興企業の株式公
開が容易になってきたのかを整理しておきたい。
(1)新興市場拡大を担ってきたジャスダック
2000 年に至る頃までは、ほとんどの新興企業にとって、株式公開を果たす場は、日本
13
こうした新興市場の現況については、拙稿「裾野広がる新規株式公開(IPO)企業の実像 −ハイテクだけでな
く、卸小売業やサービス業でも株式公開は活発−」信金中金総合研究所「産業企業情報」19-8を参照されたい。
12
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
証券業協会(以下「日証協」という。)が運営する「店頭登録市場」(現在のジャスダッ
ク証券取引所)に限られていた。
これは、かねてから証券会社が仲介していた未上場株式の「店頭売買」を、日証協が
正式に認め、その管理・監督の下に市場を創設したもので、1963 年2月、138 銘柄でス
タートした。ただし、
「株式公開」の場として発行市場の機能を有するようになったのは、
店頭登録基準を「経常利益3億円」程度まで引き下げるとともに、公募増資の実施も認
めるなどして、本格的な整備を図った 83 年6月のことである。
こののち、同市場は、ベンチャー企業等成長期待が高い企業が早い段階で株式公開を
目指すための取引所上場への登竜門の役割を担い、そのための予備的・補完的市場と位
置づけられてきた14。店頭登録市場における株式公開企業数は 90 年8月の 300 社から、
94 年 10 月には 500 社、96 年6月には 700 社へと増大していった。この間、売買高も増
大し、東証第二部を凌駕するまでになり、次第に独立した市場へと成長していったので
ある15。
一方、長引く平成不況の中で、急成長し雇用の創出も期待されるベンチャー企業の株
式公開を活発化させようとの官民一致した努力が始まり、95 年 7 月に「店頭特則市場」
(いわゆる第二店頭市場)が創設された。
これは、従来からの店頭登録基準に「特則」を設け、研究開発型のベンチャー企業な
どが株式公開しやすいよう、将来の収益拡大が見込めれば登録時点では赤字であっても
よいとするなど、登録基準を緩めたものだったが、ほとんど実効を挙げなかった。
(2)2000 年前後に相次いで開設された新興市場
イ.「ナスダック・ジャパン(現・大証ヘラクレス)」の創設
わが国新興市場開設に向けて飛躍的なきっかけをもたらしたのは、米ナスダックと提
携した孫正義氏(ソフトバンク社長)が、99 年6月、大証と組んで、
「ナスダック・ジャ
パン」を創設するとの構想を発表したことだった。1年後の 00 年6月に開設されたナス
ダック・ジャパンは、同年中に早くも 40 社、01 年にも 43 社の新規株式公開を実現した。
しかし、ITバブルは 2000 年をピークとして崩壊に向かい、東証株価が急落するなど
証券市況は悪化の一途を辿り、新規株式公開も次第にジリ貧となった。このため、02 年
8月には、米ナスダックが出資を引き上げてしまったので、ナスダック・ジャパンは営
業活動の中止を余儀なくされ、同年 12 月から「大証ヘラクレス」と改称して営業を再開
することになった。
ヘラクレスの特徴は、様々な成長段階の企業が上場できるように、
「スタンダード基準
(第1号から第3号まで)」と「グロース基準」のふたつを設けていることだ。特に、
「グ
14
出繩(2003)p.49 参照
これを踏まえて、同市場は、01 年2月、
「日本店頭証券(株)
」から商号変更した「
(株)ジャスダック」に市場運営
業務を移管し、01 年7月には、公式名称も「JASDAQ市場」に変更した。さらに、04 年 12 月には、証券取引所と
しての免許を受け、
「
(株)ジャスダック証券取引所」という「取引所上場有価証券市場」に組織変更を遂げるに至って
いる。
15
13
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
ロース基準」では、財務数値基準について、
「税引前利益 7,500 万円以上、または純資産
4億円以上、または時価総額 50 億円以上」としており、次に述べる「東証マザーズ」ほ
どではないにしろ、かなり緩いものとなっている。
ロ.「東証マザーズ」の創設
上述のナスダック・ジャパン構想の発表は、わが国証券業界に大きな衝撃を与えた。
そこで東証は、わずか3か月後の 99 年9月、新市場として構想していた「マザーズ」の
設立を発表し、同 11 月には市場を開設してしまった。同 12 月には、早くも第1号とし
て、新興企業2社の上場を実現させている16。
マザーズの特色としては、財務数値基準については、
「上場対象として認められる理由
となる事業について売上高が計上されていること」とし、他の市場では一般的な基準と
して求められる純資産の額等は不問としており、上場時時価総額5億円以上(当時、現
在は 10 億円以上)を求めているのみである点が挙げられよう。
なお、ジャスダックにおける上場基準は、主要な「形式基準」として、「時価総額 10
億円以上」、「純資産2億円以上」、「当期純利益の計上または経常利益5億円以上(ただ
し、上場時時価総額が 50 億円以上の場合は利益の額は問わない)
」といったものになっ
ている。
東証二部の上場基準は、上場時時価総額 20 億円以上、純資産 10 億円以上、直前期の
利益4億円以上などとなっているので、これら新興3市場の上場基準のほうが緩いこと
は間違いない17。図表 10 に、これら3市場における主要な上場基準を示しておく18。
以上のようにして、00 年にかけて、次々と新興市場が創設され、上場基準が緩和され
た結果、株式公開へのハードルは低くなった。
かつては、株式公開とは、
「できるかできないか」の問題だった。暗黙ながらも、売上
高で 30 億円以上、
経常利益で3億円以上といった財務数値がひとつの目安になっており、
明らかにかなりの安定度に達した中堅企業にしか株式公開は許されてこなかったとも言
える19。
しかし、上場基準が緩和された結果、株式公開は極めて身近なものになり、成長見通
しの高い企業にとっては、極端に言えば「するかしないか」の問題、企業成長を巡って
の経営方針や、理念の問題になってきたのである。
16
マザーズとは、正式には、英語表記の「Markets of the high-growth and emerging stocks」の頭文字をつなぎ合
わせた略称であるが、
「新興企業を生み出す母親役になろう」との思いから付けられた愛称であるという。ちなみに、
市場に愛称をつけるようになったのは、世界的に見ても初の試みであったという。小林(2000)p.21 参照
17
ただし、
「ホリエモン・ショック」以降の相次ぐ不祥事により、新興企業に対する会計不信が強まってきたため、反
社会的勢力の関与がないことなど、内部統制を中心に、実質的には上場基準は厳格化されてきている。これも、08 年
にかけてIPO数が減少していることの大きな一因となっている。
18
なお、一連の新興市場創設の動きの中で一番早く創設されたのは、名古屋証券取引所の「セントレックス」で、99
年 10 月のことであった。このあと、00 年4月には、札幌証券取引所に「アンビシャス」
、同5月には福岡証券取引所
に「Q-Board」が創設されている。
19
小林(2000)pp.32-33 参照
14
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
図表10.新興3市場における主要な上場審査基準(形式要件)
ジャスダック
東証マザーズ
大証ヘラクレス(グロース基準)
当期純利益が計上されていること、
または経常利益5億円以上。ただ
なし
上場時純資産の額4億円以上、ま
し時価総額50億円以上の場合は、
たは同時価総額50億円以上、また
赤字も可
は税引前利益の額7,500万円以上
純資産の額
2億円以上
なし
上場時時価総額
10億円以上(自己株式を除く)
10億円以上
10年以下または事業の企業化に
1年前以前から取締役会を設置 1年以上(時価総額50億円以上の
設立経過年数等
要する費用の売上高に対する比率
して継続的に事業活動を継続 場合は、1年未満でも可)
が3%以上
流通株式2,000単位以上、流通 上場株式数の10%以上(最低1,000
上場時株式(自己株式を除く)数が
流通株式数
株式時価総額5億円以上など 単位)、時価総額5億円以上
1万単元未満の場合、300人以上
300人以上(上場時までに500単
など
公開時株主数
300人以上
位以上を公募)
最近2事業年度および申請事業年
2年間の監査報告書において、
虚偽記載を行っていないこと(2事
財務諸表、監査法人の監 度の有価証券報告書等に虚偽記
直前期無限定適正であること、
業年度)
載がなく、直前期監査報告書が無
査意見等
および虚偽記載がないこと
限定適正意見であること
利益の額
(備考)1.各証券取引所ホームページより、要約して作成
なお、基準の名称自体それぞれ異なっているので、正確な詳細規定については、各ホームページを参照されたい。
(3)小規模企業の株式公開に道開いたグリーンシート
イ.グリーンシートとは
ところで、株式公開が容易になったという点では、あまり一般には知られていないが、
日証協が 97 年に新たに開設した未上場企業に対する投資勧誘制度であるグリーンシート
も紹介しておく必要があろう。
一般に、未上場企業が発行する有価証券は、証券取引法(現・金融商品取引法)等に
よる義務が課せられている上場企業に比べ、企業内容の開示(ディスクロージャー)が
十分でないことが多い。このため、従来から日証協は、投資家に対し投資勧誘を行うこ
とを原則として禁止してきた。
しかし、97 年7月、証券会社による未上場株式に対する「投資勧誘」が解禁されたこ
とを受けて、日証協は、十分な企業内容の開示が行われ投資家が相応の投資判断材料を
入手できる場合は、売り・買いの気配を継続的に提示する証券会社に限って、投資勧誘
を行うことができることとし、グリーンシート市場を開設したのである。
すなわち、グリーンシート銘柄は、未上場株式ながら、投資勧誘を行うに足る一定の
ディスクロージャー要件を満たす「店頭取扱有価証券」のうち、証券会社が届出を行い
気配を公表・提示している株式を言う。
これにより、創業後間もないなど小規模なため、取引所への上場基準には達していな
い段階の未上場企業に対しても、公募増資など株式公開への道が開かれたのである20。
ロ.遜色ない発行・流通市場体制を整備
このように、グリーンシートは、より小規模な企業向けの新たな店頭登録市場とも言
20
なお、
「グリーンシート」の名称は、
「アメリカのピンクシートを範としつつ、若い樹木が若葉を次々と芽吹きなが
ら大きく成長していくように、ここに名を連ねる企業も若々しくいきいきと活動・成長していくようにとの願い」を込
めたもの(グリーンシート・ホームページ参照)という。従来「店頭登録市場」と呼ばれてきたジャスダック市場は証
券取引所に衣替えしたので、現在ではグリーンシートが実質的な店頭市場として機能してきているといってよい。
15
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
えるが、その使い勝手を良くするために、いくつもの改善が積み重ねられてきた。
まず、00 年には、証券コード審議会により、上場企業と同様の銘柄コードの付番が行
われることになった。さらに、02 年には、公認会計士監査について、登録初年度に限り
直前1期でよいことになった。この結果、この年、一気に 28 社が新たに届出を行い、計
62 社が銘柄指定を受けるに至っている。
金融庁も、
「証券改革プログラム」において、日証協に対しグリーンシートの拡充を要
請し、後押しを強めた。これを受けて、03 年には、
「代表取扱会員制度」が導入され、取
扱証券会社による審査責任が明確にされるとともに、上場企業に先駆けて、四半期報告
書の開示がいち早く義務付けられた。
加えて、同年7月には、日本証券代行(株)により、グリーンシート取引システム「S
TeP」が、運営されるようになった。これは、金融庁からPTS(私設取引システム)
としての正式認可を受けたものである。これにより、換金のための流通市場としての機
能も充実した。また、04 年には、グリーンシート銘柄21に対しても、ベンチャー企業同
様、投資優遇を認める「エンジェル税制」が適用されることになった。
さらに、05 年に改正された証券取引法では、グリーンシート銘柄を「取扱有価証券」
と定義して、上場企業と同等の流通市場規制を課すこととしたので、グリーンシートの
信頼性はいっそう高まった。
ハ.極めて小規模な企業でも株式公開が可能
以上のように、発行・流通市場としての機能や、情報開示等の市場規制については、
基本的に取引所上場と変わらない一方、グリーンシートは、いくつかの点で大きな特徴
を有している。
その第1は、他の新興市場上場と比べ、はるかに小規模な企業でも株式公開が可能な
点である。利益の額や、純資産額、時価総額といった形式基準は特にないので、最低の
時価総額で2億円程度と、一般的な新規上場企業の 10 分の1の程度の規模でも株式公開
できている。実際のグリーンシート企業の平均像を挙げるとすれば、時価総額は平均6
億円(ただし、最大で 60 億円の企業もある。
)、売上高の平均は 10 億円(最大で 100 億
円)、経常利益の平均は 20 百万円(最大で6億円)といったところである22。
募集金額は通常1億円以下と小規模であるが、私募と公募を合わせて 11 億円を調達し
た例もあり、募集金額に上限があるわけでもない。
ニ.「拡大縁故募集」に特色
このように小規模な段階でなぜ株式公開が可能になるのか。その秘密は、
「拡大縁故募
集」という形で公募することが多い点にあり、これが第二の特徴であるといえよう。拡
大縁故募集とは、公開企業の地元などを中心に、経営者・従業員の親族や知人、取引先、
21
22
ただし、成長性があると判断された「エマージング区分」の企業に限られる。
ディー・ブレイン証券資料による。
16
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
顧客など、周囲の人々に、株式を買っていただくというものである。
通常の取引所上場の場合、証券会社は公募金額全額をいったん引き受けた上で、不特
定の一般投資家や大手の機関投資家を念頭に販売活動を行うので、確実に公募が成功し、
しかも、上場後、活発に売買され大きな手数料収入が期待されそうな銘柄を選定しよう
とする。このため、新規上場企業には、新規性や話題性が豊富で、
「急成長ストーリー」
が魅力的に描かれていることが求められるし、市場環境が悪いときには、上場自体が延
期されたりすることになる。
これに対して、グリーンシートへの公開企業の場合は、何らかの「縁故者」の存在を
前提として募集を開始することが多いため、その企業を身近に知っていて応援してあげ
ようという人たちが株主になってくれることが多く、それほど市場環境には左右されな
い。その企業の成長にとって不可欠な資本増強を、必要な時期に実施することができる
のである。これこそ、発行市場がもつべき本来の機能であるといえよう。
グリーンシートは、ある程度の事業規模に達している中堅企業にとっても魅力的であ
る。たとえば、長年にわたって安定した収益を上げ、地元ですでに名声を得ている企業
が、事業承継上の必要等から株式公開したほうが良いといったケースがある。
しかし、上場基準は十分満たしているものの、上場したとたんに、短期収益志向の不
特定株主から常に株価上昇圧力を受けるなど、株式市場の荒波に揉まれることを警戒し
て、上場をためらっている優良企業は少なくない。これに対して、グリーンシートでの
株式公開は、上述のとおり、比較的小規模な「拡大縁故募集」を主体としているため、
短期の売買益を目的として募集に応じる株主は少なく、長期にわたる安定株主作りに最
適であるという23。
将来の取引所上場を目指している場合も、グリーンシートで、比較的広範な個人株主
を当該企業の「ファン」として、長期安定株主にしておくことができれば、将来の上場
に向けて大きな安心材料になる。実際、上場に備えた準備期間と捉えている企業も少な
くなく、グリーンシートを経由して取引所に上場した企業は、これまでに9社に上って
いる。
ホ.公認会計士など外部の専門家が情報開示を支援
ところで、通常、中小企業が私募増資を行う場合には、引受け手は、役員等の親族に
限られてしまう。これは、企業の内情を知らない一般の人が私募に応じるには、不安が
あるためである。
これに対して、グリーンシートで「拡大縁故募集」が可能になるのは、代表取扱証券
会社が一定レベルの審査を実施し、外部の公認会計士が監査したディスクロージャー資
料を「会社内容説明書」として公表し、さらに、代表取扱証券会社に、年次のみならず四
23
ただし、グリーンシート取引システムにおける実際の取引量は極めて少ないのが現状である。したがって、短期売
買を目的としていない株主が多いとはいっても、換金は必ずしも容易でないという指摘はある。
17
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
半期開示まで指導することを義務付けることによって、信頼度を高めていることによる24。
こうした情報開示は株式公開に必要不可欠であるが、通常、上場するに当たっては、
3年程度の準備期間をかけて、自社内に内部統制体制を構築することが必要となるので、
人件費負担や外部監査等に1億円程度はかかってしまうケースも少なくない。これに対
して、グリーンシートでは、公認会計士等の外部の専門家が情報開示支援を行うことを
認めているので、取引所上場に比べ、一連の株式公開関係費用は 1000 万円程度と約 10
分の1で済むという。このように、比較的低コストで株式公開できることも魅力となっ
ているといえよう。
4.地域ベンチャーファンドへの出資を実りあるものにするために
さて、すでに述べたとおり、地域金融機関が出資している地域ベンチャーファンドは
少なくないが、地域金融機関側のファンドに対する姿勢は様々なようである。地方公共
団体からの要請を受けたいわば「お付き合い」出資であったり、リレーションシップバ
ンキング対策の実績作りとして出資したりといったケースも少なくなく、一般組合員に
とどまっている金融機関は、業務執行組合員にすっかり「お任せ」といったことも多い
ようである。
したがって、投資成果については、出資元本が戻ってくれば十分であり、投資先がI
POにまで至らなくても、将来的に優良な融資取引先になってくれればよいといったス
タンスが多いとも言われる。
しかし、仮にも資金運用の一部として出資する以上、できるだけの成果を追求すべき
だろう。とすれば、地域ベンチャーファンドへの出資を少しでも実りあるものにしてい
くためには、どのようなことが求められているのだろうか。最後にこの点を、いくつか
の地域ベンチャーファンドおよび出資金融機関への取材をもとに述べてみたい25。
(1)出資意義の確認とベンチャーキャピタルとの協働
イ.ファンドの役割、出資目的の確認
地域ベンチャーファンドは、有力なベンチャービジネスを育成してIPO企業を輩出
させ、地域の雇用に貢献することを目的としており、地域の活性化に果たす社会的役割
は大きい。
実際、ベンチャーファンドの運営を託されたベンチャーキャピタルは、それまでほと
んどベンチャー企業が存在していなかった地域において、ベンチャービジネス精神を植
えつけ、地域の活性化に一役買っているという点を強調している。
そもそも、多くの地域では上場しようとする風土がほとんどないという。そうした中
24
とはいえ、情報開示を適切に行っていても、業績不振により、グリーンシート銘柄としてのそうしたコスト負担が
重荷になり、銘柄指定の取消しを行った企業もある。
25
なお、取材先については、忌憚ない意見を伺ったこともあり明示しないこととした。快く取材に応じていただいた
方々に、この場を借りて、感謝の意を表したい。
18
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
で、経営者に対して、IPOを目指す気にさせるべく、ベンチャー投資を本気で実施し
ているファンドがあるということ自体が、地域への大きなメッセージになっているとい
うのである。
IPOの可能性を示すために、ファンドの側から、成長意欲はありながらも具体的な
アイデアに乏しい起業者に対して、全国各地の成功モデルを積極的に紹介し、動機付け
を行っているケースもある。
ロ.案件の発掘
とはいえ、地域ベンチャーファンドは、一般的には、地域において有望な投資先を探
すのに苦労している様子である。地銀系ファンドなどでは、地元の県内だけではどうし
ても案件が限られてしまうので、支店を出している近隣県も含めて投資対象を物色して
いる例もある。
そこで、地域金融機関側としても、案件の発掘をファンドに任せ切りにせずに、協働
していく努力が求められているようだ。たとえば、あるファンドでは、3か月に1回程
度、「案件評価委員会」(県、地域金融機関、学識者などで構成)を開催し、出資者を中
心に候補企業を挙げ、過半数の支持を得られたものについて、改めてファンドが詳細審
査を行う方式を採っている。
また、投資を成功させるためには、地域金融機関側でも、有望案件を目利きできる人
材を養成していくべきだという。取材したベンチャーキャピタルのなかには、
「地域金融
機関職員には担保付融資しか経験がなく、その業界の長期的な将来性を考えて投資を判
断するといった姿勢が弱いように感じられる」と述べた先もあった。
一方、ファンド側では、自治体等と協働して、
「ベンチャー・プラットフォーム」とい
った起業セミナーを定期的に開催し、公認会計士なども含め、ボランティアベースで、
シードステージ(事業計画の段階)の起業家への支援育成に努めているケースもある。
さらに、内部統制の強化策など、最前線情報などにも接してもらえるよう、投資先企業
経営者の上京時に合わせて、東京での投資先セミナーを実施しているケースもある。
ハ.案件紹介だけで終わらせない
さらに、ベンチャーキャピタル側からは、ベンチャー企業を紹介しただけで終わらせ
ずに、できるだけ早い段階から、運転資金の融資を開始するなど、もっとベンチャー企
業との付き合いを深めて欲しいとの要望もあった。
また、投資先企業には人材の補強・拡充が必要になるとして、地域金融機関からの優
秀な人材の派遣を求める声もあった。
(2)多様なEXIT(投資回収)の模索
イ.新株引受権付き社債による資金供給
多くの地域ベンチャーファンドでは、新株引受権付き社債による資金供給が併用され
19
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
ているが、社債による投資ではベンチャーキャピタルによる投資とは言えないとの意見
もあった。利息や配当収入だけでは、将来破綻を余儀なくされるであろう企業分の償却
費用は到底賄えないので、IPOを目指さない限り、ファンドとしては成功し得ないと
の意見ももっともといえよう。
しかし、現実には、IPOには至らないものの、事業は継続しているという投資先は
少なくない。ファンドの清算時における資金回収を考えると、求償権がある社債の引き
受けであれば買い取り交渉を進めやすいので、現実的な対応だとの声も多かった。
ロ.M&Aの活用
また、特に、事業承継などに関連して、大企業との戦略的提携による出資の斡旋など、
M&Aを促進すべきだとの声は多かった。実際、米国では、M&AによるEXITのほ
うがはるかに多い。わが国でも、持ち株会社の設立が容易になったので、企業買収はこ
れから増えていくのではないかという。
ハ.グリーンシートの活用
さらに、グリーンシートの活用も指摘された。グリーンシートへの株式公開は、一般
には、中途半端な状態と受け取られがちなようだ。いずれ上場するつもりならば、初め
から取引所上場を目指せばよく、業績の良い企業にとっては、グリーンシートを経由す
るメリットはわかりづらいとの声も多い。
しかし、グリーンシートでの株式公開は、地域ベンチャーファンドからの投資や創業
段階融資といった形で当初から支援してきた地域金融機関にとっても、リレーションシ
ップを維持・強化しつつ、有望な新興企業の資本調達を手助けしていく有力な手段にな
りえる。すでに述べたとおり、グリーンシートは、地元の取引先企業や顧客からの支援
を「拡大縁故者」として期待できる地域企業が株式公開するのに適している。地域金融
機関としても、その企業が優良であるとするなら、
「拡大縁故者」の一翼を担うことにや
ぶさかでないはずである。一方、地域ベンチャーファンドとしては、アーリーステージ
から投資育成してきたのであれば、グリーンシートへの公開時に売出しという形でその
果実を回収することも考えられよう。
急成長していくベンチャービジネスは、地元の雇用を増やし地域の活性化に役立つ貴
重な企業である。そうした新興企業を育成支援したという功績は、地域金融機関の企業
価値を高め、地域における存在意義を深めていくことにつながろう。
つづめて言えば、地域ベンチャーファンドに過大な期待を持つことはできないかもし
れないが、かといって全くの「奉加帳」と見るべきでもないだろう。そして、地域の活
性化という目的に沿って出資をするのであれば、ベンチャーキャピタル側に任せ切りに
するのでなく、地域金融機関側としても、上述のような様々な協働を通じて、少しでも
実りある成果を得られるよう努めて行くことが求められているといえよう。
20
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
(澤山 弘)
本レポートのうち、意見にわたる部分は、執筆者個人の見解です。また当研究所が信頼できると考える情報源
から得た各種データなどに基づいてこのレポートは作成されておりますが、その情報の正確性および完全性につ
いて当研究所が保証するものではありません。
参考文献
石黒憲彦編著(2000)
「ベンチャー支援政策ガイド 詳解・新事業創出促進法改正」日経BP社
梅本晃ほか(2007)
「ベンチャー型新規開業事業の新動向」嵯峨野書院
京都大学(2006)
「わが国ベンチャーキャピタルの投資実態」
小林一博(2000)
「マザーズ、ナスダックで変わる 株式公開がわかる本」柴田書店
澤山弘(2008)
「裾野広がる株式新規公開(IPO)企業の実像 −ハイテクだけでなく、卸小売業や
サービス業でも株式公開は活発−」信金中金総合研究所「産業企業情報」19-8
鈴木博(2005)
「中小・ベンチャー企業の進展と政策課題」税務経理協会
田中利彦(2004)
「ベンチャー支援と地域経済振興」晃洋書房
中小企業基盤整備機構ファンド事業評価・検討委員会(2007)
「中小企業基盤整備機構ベンチャーファ
ンド事業に係る評価・検討 中間とりまとめ」
中小企業総合事業団創造的中小企業支援部(2002)
「ベンチャー企業に関する国内外の直接金融(投資)
環境状況調査」報告書
ディー・ブレイン証券株式会社編(2004)「グリーンシート 株式公開実務マニュアル」中央経済社
出縄良人(2003)
「グリーンシート 直接金融市場革命」文芸社
日本政策投資銀行四国支店(2003)
「地域ベンチャーファンド設立の現状と課題」
マネジメント社編(2006)
「7 番目の新興証券市場 グリーンシート」マネジメント社
VEC(財団法人ベンチャーエンタープライズセンター)
「ベンチャーキャピタル等投資動向調査」
、
「ベンチャーキャピタル・ファンド等ベンチマーク調査」各年度版
参考表.地域金融機関の出資が確認できる中小機構出資地域ベンチャーファンド
投資事業
有限責任組合名
ファンドの特徴
総額
設立
(加
入)
(総額:億円、設立(加入):年月)
ファンド運営者
出資が確認できる地域金融機関
ほか
ベンチャーファンド
みえ新産業創造第 主に三重県内に所在するベンチャー企業に投
10 0703 フューチャーベンチャー
2号
資。全業種を対象
キャピタル(株)
企業育成型ひろしま 主に広島県内及び県内関係の企業を対象とす
5 0512 (株)広島ベンチャーキャ
る。新事業展開に取り組む意欲ある中小・ベン
ピタル
チャー企業を支援
滋賀ベンチャー育成 主に滋賀県に本社や事業所、研究所等を置く 11.5 0512 フューチャーベンチャー
ファンド
ベンチャー企業に投資する。全業種を投資対
キャピタル(株)
象とし、投資先企業へのハンズオンを行う。
札幌元気テクノロ
主に札幌市に関連したIT、バイオ等の先端技
5 0511 北海道ベンチャーキャピ
ジー
術企業を投資対象とする。
タル(株)
島根新産業創出
主に島根県内及び県内関連のアーリーステー
5 0509 ごうぎんキャピタル(株)
ジ企業を中心に投資。全業全業種を対象とし、
地域の産業活性化に繋がる企業を投資育成
三重県、県内金融機関、主要企業
等
広島県、広島銀行、もみじ銀行、広
島信用金庫、ひろぎんキャピタル
滋賀県、滋賀銀行、びわこ銀行、長
浜信用金庫、滋賀中央信用金庫、
湖東信用金庫、信金中央金庫ほか
札幌市、北洋銀行、北海道銀行、
札幌銀行、札幌信用金庫
島根県、山陰合同銀行、島根中央
信用金庫、日本海信用金庫、出雲
信用組合、ごうぎんキャピタル
(次ページに続く)
21
産業企業情報
20−1
2008.4.30
©信金中央金庫 総合研究所
参考表(続き).地域金融機関の出資が確認できる中小機構出資地域ベンチャーファンド
投資事業
有限責任組合名
設立
ファンドの特徴
総額 (加
ファンド運営者
入)
やまとベンチャー企 主に奈良県に本社や工場等を置くベンチャー
5 0508 フューチャーベンチャー
業育成ファンド
企業に投資する。奈良県内の公的機関や金融
キャピタル(株)
機関と協力し、投資対象企業を発掘
ゆめファンド4号
主に神奈川県内に本社・事業所を置く、アー
10 0507 横浜キャピタル(株)
リーステージのベンチャー企業を投資対象
みえ新産業創造
主に三重県の県内企業へ投資し、現地に事務
10 0412 フューチャーベンチャー
所を開設して対応
キャピタル(株)
とくしま市場創造1 徳島県発のベンチャー企業の中からIT、バイ
8 0412 (株)日本テクノロジーベ
号
オ等の業種を中心に投資
ンチャーパートナーズ
いばらぎベンチャー 全業種を対象。茨城県内で設立後7年以内の 10.1 0404 (株)スカイスターファイナ
企業育成
企業を中心に投資し、経営・技術等総合的に
ンシャルマネジメント
支援
西武しんきんキャピ 西武信用金庫、TAMA協会等と連携し、東京及
10 0403 西武しんきんキャピタル
タルTAMAファンド2 び埼玉、神奈川の一部のバイオ、ナノテク、IT
(株)
号地域産業育成
等のハイテク関連業種を投資対象
ちばベンチャー
投資対象は千葉県内、及び県内関連のアー
5 0306 ちばぎんキャピタル(株)
リーステージ企業を中心とし、業種は全業種
オリーブ一号
香川県、愛媛県、岡山県を中心とした地域に
5 0303 (株)香川銀キャピタル
所在するスタートアップ及びアーリーステージ
のベンチャー企業が主な投資対象
いわてベンチャー育 主に岩手県に本社又は主な事業所を置く企業
10 0211 フューチャーベンチャー
成
に投資。対象は全業種
キャピタル(株)
大分ブイシーサクセ 大分県内のアーリーステージ企業を主な投資
5 0205 大分ベンチャーキャピタ
スファンド二号
対象とし、県内企業の活性化等に繋がる県外
ル(株)
企業へも積極的に投資
出資が確認できる地域金融機関
ほか
奈良県、南都銀行、奈良中央信用
金庫、大和信用金庫
横浜銀行、横浜キャピタル
三重県、県内金融機関、県内主要
企業等
徳島県、阿波銀行、徳島銀行、四
国銀行、徳島信用金庫
茨城県、常陽銀行、関東つくば銀
行、茨城銀行、水戸信用金庫、茨
城県信用組合、結城信用金庫ほか
西武信金、西武しんきんキャピタル
千葉県、千葉銀行、ちばぎん総合
研究所、双葉電子工業
香川銀行、香川銀キャピタル、地元
企業17社、学校法人1社
岩手県・地元金融機関等
大分銀行、大分ベンチャーキャピタ
ル
がんばれ! 中小企業ファンド
TONY2号
鳥取県等公的機関、山陰合同銀行グループほ
5 0803
か地域金融機関等の地域関係者と連携し、支
援を行う。
成長企業応援
主として九州圏内に所在する既存中小企業、
10 0703
第二創業企業等が対象
埼玉成長企業サ
埼玉県を中心とする関東エリアに事業展開す
20 0703
ポートファンド
る既存中小企業、ベンチャー企業が対象
九州技術開発1号 九州地域の技術開発型中小企業等に対して、
10 0703
プロジェクトファイナンス型投資を行う。
えひめガイヤファン 第一次産業とその関連業種を中心に四国経済
5 0611
ド
活性化のコア事業となり得る中小企業の成長
を支援
北海道しんきん地 北海道内に所在する既存中小企業、第二創業 12.2 0608
域活性
企業等が対象
チャレンジ山形産業 山形県を中心とした東北地域に所在する新事
振興
業展開及び第二創業を行う中小企業、新連携
認定企業等を支援
ティー・ハンズオン1 自動車関連分野や中部地域を中心とするベン
号
チャー企業、中小企業を支援
西武しんきんキャピ 東京都及び埼玉県・神奈川県の一部の商店
タル商店街ファンド1 街・中心市街地の小売・飲食・流通サービス業
号地域商業育成
を支援
がんばれ中小企業・ 新事業展開等行う近畿地方の中小企業を支
活き活き育成
援。様々な手法を活用して事業化の実現まで
サポート
ごうぎんキャピタル(株) 鳥取県、山陰合同銀行、米子信用
金庫、倉吉信用金庫、鳥取信用金
庫、ごうぎんキャピタル
㈱スカイスターファイナン 福岡銀行、福岡キャピタルパート
シャルマネジメント
ナーズ、ベンチャーラボ
日本ベンチャーキャピタ 埼玉りそな銀行
ル(株)
(株)パテント・ファイナン 福岡銀行、福岡キャピタルパート
ス・コンサルティング
ナーズ
ひめぎん総合リース
愛媛銀行、ひめぎん総合リース、日
(株)
立キャピタル
北海道ベンチャーキャピ 旭川信用金庫、稚内信用金庫、帯
タル(株)
広信用金庫、札幌信用金庫を含む
20以上の道内信用金庫
11.5 0510 フューチャーベンチャー 県企業振興公社、4銀行、5信用金
キャピタル(株)
庫、4信用組合、12企業
30.3 0510 ティー・ハンズオンインベ 豊田自動織機、豊田通商、十六銀
ストメント(株)
行、名古屋銀行、百五銀行
10 0508 西武しんきんキャピタル 西武しんきんキャピタル
(株)
10.1 0505 (株)スカイスターファイ
ナンシャルマネジメント
京都銀行、ベンチャーラボ
地域中小企業応援ファンド
とっとりチャレンジ応 鳥取県等公的機関、とっとり銀行グループほ
7.5 0803 とっとりキャピタル(株) 鳥取県、鳥取銀行、鳥取信用金
援ファンド投資事業 か地域金融機関等の地域関係者と連携し、支
庫、倉吉信用金庫、米子信用金庫
有限責任組合
援を行う。
あおもりクリエイト 主として青森県内に所在する企業成長性の高
22 0707 フューチャーベンチャー 青森銀行、みちのく銀行、県内企業
ファンド投資事業有 い企業へ投資。オール青森による産学官金の
キャピタル(株)
限責任組合
支援を行う。
(備考)1.中小企業基盤整備機構ホームページ、及び出資者一覧については各ファンドホームページ・プレスリリース等より作成
2.なおベンチャー財団等の名称については、紙幅の制約により、自治体名にとどめた。
22
産業企業情報
20−1
2008.4.30
Fly UP