...

PDFダウンロード[8ページ、1.45MB]

by user

on
Category: Documents
8

views

Report

Comments

Transcript

PDFダウンロード[8ページ、1.45MB]
日薬業発第273号
平成25年12月25日
都道府県薬剤師会会長
殿
試験検査センター所長
殿
日 本 薬 剤 師 会
会 長
児 玉
孝
平成24年度いわゆる「健康食品」等の成分均一性調査の結果報告について
平素より、本会会務につき格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、標記調査につきましては、全国の都道府県薬剤師会関係試験検査セン
ターのご協力のもとに実施いたしましたが、今般、本会環境衛生委員会におい
て結果報告をとりまとめましたため、別添の通りお送りさせていただきます。
ご活用いただければ幸甚に存じます。
なお、別添の報告書は日本薬剤師会雑誌に掲載を予定しております。また、
報告書のとりまとめに先立ち、調査結果の概要につきましては、去る9月22・
23日に大阪府大阪市にて開催された第46回日薬学術大会において口頭発表
(一般演題)を行ったところです。
末筆ながら、業務ご繁多の折、本調査へのご協力に厚く御礼申し上げます。
第66巻 第1号 平成26年1月1日
委員会・部会等の動き
いわゆる「健康食品」等で販売されている
ウコン製品の成分均一性調査報告
公益社団法人日本薬剤師会環境衛生委員会
1.目的
ウコンは,日本薬局方では「ウコン」及び「ウコ
ン末」として収載されている。
一方,
「医薬品の範囲に関する基準」では医薬品
的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない
成分本質(原材料)に挙げられており,多くの商品
が市販されている。
特に,いわゆる健康食品として販売されるウコン
末及びウコン含有ドリンク剤等は,消費者が健康向
上を意識して購入するものであり,薬局等でも販売
されうることから,天然物由来の健康に良いとされ
ることに耳目を集め,ウコンもその例外ではなく消
費者の関心は高い。また,国内におけるウコンの生
産地は沖縄・九州地方を中心に広域に地産のウコン
由来製品が製造・販売されていることが推測される。
そこで,品質管理の一環として全国の試験検査セ
ンターの協力を仰ぎ,市販されているウコン及び加
工製品のクルクミノイド分析を行い,得られたデー
タの共有をはかることを目的とする。
2.はじめに
ウコンはショウガ科の植物で(図1),インド,
中国,インドネシア,タイ及びその他の熱帯のさ
まざまな国で栽培されているといわれる1)。名称
にウコンが含まれうる植物として,一般に,アキ
ウコン(Curcuma longa),ハルウコン(Curcuma
aromatica),ムラサキウコン[ガジュツ]
(Curcuma
zedoaria),クスリウコン/ジャワウコン(Curcuma
xanthorrhiza)があるが2 ~ 4),
和名のウコンはアキウコン
(Curcuma longa)を指し,鮮
やかな橙赤色を呈している(図
2)。これはクルクミンとその
類縁体であるデメトキシクル
クミン及びビスデメトキシク
ルクミンによるものであり,
これらの化合物はクルクミノ
図1
イドと総称され,日本薬局
方 ウ コ ン に つ い て は1.0 ~
5.0%のクルクミノイドを含
むとされる4)。しかし,系統,
品種によって成分含量に差
異がある5)。
クルクミノイドは抗酸化
図2
性を示し,抗炎症,腫瘍形
成阻害,血清コレステロール低下体脂肪蓄積抑制効
果等の作用が報告されている6)。特にアキウコンは,
ドイツでウコン製剤の消化機能不全への使用が承認
され,また,スペインでもアキウコン製剤が販売さ
れている。ただし,欧州医薬品庁の生薬製剤に関す
る委員会による報告書によるとヨーロッパ域内では
アキウコンの消化機能不全への適応は伝統的使用と
して分類され,消化不良等に対するヒトでの有効
性のデータの評価は必ずしも確立されていない7)。
安全性については,アキウコンは本剤に対し過敏症
の既往歴のある人及び胆道閉鎖症の人には禁忌とさ
れ,胆石がある人は医師に相談することとされて
いる1)。さらに,薬剤性肝障害の報告例8 ~ 11)もある
ことに注意が必要である。ちなみに,クルクミンに
ついては,FAO/WHO合同食品添加物専門家会議
(JECFA)における食品添加物としての評価により,
一日許容摂取量(ADI)は0~3mg/kgbw(mg/
kg 体重/日)と設定されている12)。
3.調査方法
3.1 対象
ウコン製品中,クルクミンまたはその類縁化合物
を含有する旨が表示されているウコン末・根茎,及
び液状(ドリンク等)製品。
3.2 収集基準
1)製品種別:食品
2)形状:根茎・末・液体
3)食品表示:ウコンまたはクルクミンを含有す
る旨表示されている。クルクミン含有量が表
― 53 ―
p053-059 委員会・部会等の動き.indd
53
(53)
2013/12/17
13:12:07
日本薬剤師会雑誌
末試料と同様。
4.1.3 根茎
試料を水洗,スライスし,ホモジナイズ後真空凍
結乾燥(24時間)後,粉末試料と同様。
4.1.4 錠剤試料
1錠(重量測定)にメタノール10 mLを加え,以
降は粉末試料と同様。
4.1.5 カプセル試料
1カプセルを開封後,内容物重量測定。以降は錠
剤試料と同様。
示されていることが望ましい。
4)購入:ウコンの生産地が試験検査機関所在地
の都道府県内または近隣地域の市販製品(例:
道の駅で販売されている製品)
選定・購入後分析機関へ送付
3.3 収集期間
平成25年2月~3月
3.4 内訳
種類
件数
末
37
錠剤
9
液体(ドリンク) 4
カプセル
1
根茎
1
合計
52
4.2 試 薬
リン酸:関東化学製(特級)
メタノール:関東化学製(液体クロマトグラフ用)
アセトニトリル:和光純薬製(液体クロマトグラフ用)
クルクミノイド標準品:ナカライテクス製
クルクミン1:クルクミン
クルクミン2:デメトキシクルクミン
クルクミン3:ビスデメトキシクルクミン
3.5 分析項目
クルクミノイド類
1)ビスデメトキシクルクミン
2)デメトキシクルクミン
3)クルクミン
4.3 HPLC分析条件
装 置:Waters2695
検出器:PDA検出器W2998(420 nm)
カラム:Inertsil ODS-3(4.6ID×150 mm,5μm)
移動相:アセトニトリル:0.1%リン酸混液(50:
50)
流 速:1.0 mL/min
注入量:10μL
カラム温度:40℃
3.6 分析機関
一般社団法人青森県薬剤師会衛生検査センター
4.分析方法 13)
4.1 試料の調整
4.1.1 粉末試料
試料0.4±0.05 gにメタノール50 mLを加え,超音
波抽出を行う。遠心分離後,上清を0.45μmのメ
ンブランフィルターでろ過後試料溶液とした。
4.1.2 液体試料
試 料5mLにメタノール30 mLを加え,以降は粉
4.4 分析例
分離された物質は保持時間から特定する。定量に
は標準品を用い,クロマトグラムのピーク面積から
濃度を算出する。標準品のクロマトグラフは図3の
とおり。
0.90
ビスデメトキシクルクミン
Rt: 7.4 min
0.80
デメトキシクルクミン
Rt:8.2 min
0.70
クルクミン
0.60
Rt: 9.2 min
100 mg/L
0.50
AU
50 mg/L
0.40
25 mg/L
0.30
10 mg/L
0.20
5 mg/L
0.10
0.00
0
1
2
3
4
5
6
7
min
8
9
10
11
12
13
14
図3 クルクミノイド標準品クロマトグラム
― 54 ―
(54)
p053-059 委員会・部会等の動き.indd
54
2013/12/17
13:12:08
第66巻 第1号 平成26年1月1日
表1 市販ウコン製品中のクルクミノイド含有量
原材料名
形状
含量表示
原産地また
は製造者
(所在地)
1
2
1
秋ウコン
末
0.98g/100g
沖縄県
2.14
2
秋ウコンエキス
末
17.6 mg/g
なし
1.26
3
秋ウコン
カプセル
なし
山梨県
4
粉末ウコン
錠剤
なし
5
秋ウコン
錠剤
6
秋ウコン
7
秋ウコン
8
№
クルクミノイド(mg/g)
3
総クルクミ
ノイド
2.71
8.63
13.48
2.86
17.87
21.99
2.50
3.25
10.20
15.95
山梨県
0.25
0.55
2.49
3.29
なし
なし
2.08
2.79
9.50
14.37
末
なし
千葉県
0.43
1.04
3.92
5.39
末
なし
佐賀県
0.23
0.57
2.26
3.06
秋ウコン
末
なし
なし
5.27
6.48
19.89
31.64
9
秋ウコン(95%),ナタネ硬化油(5%)
錠剤
95%
長野県
1.86
2.46
7.62
11.94
10
秋ウコン
末
なし
群馬県
0.19
0.49
2.24
2.92
11
秋ウコン
末
なし
静岡県
0.25
0.63
1.96
2.84
12
秋ウコン
末
なし
静岡県
0.24
0.53
1.81
2.58
13
秋ウコン
錠剤
なし
なし
2.50
3.33
11.01
16.84
14
秋ウコン
末
なし
なし
2.22
2.79
9.00
14.01
15
秋ウコン
末
なし
愛媛県
0.33
0.78
3.44
4.55
16
有機秋ウコン
末
なし
福岡県
0.26
0.68
2.64
3.58
17
秋ウコン
末
なし
なし
3.69
4.81
15.46
23.96
18
秋ウコン
末
なし
熊本県
0.56
1.23
5.17
6.96
3gに滅菌ウコン
100%
なし
2.28
2.84
9.12
14.24
4.02
19
秋ウコン
末
20
秋ウコン
末
なし
熊本県
0.29
0.74
2.99
21
秋ウコン
末
1.8 mg/g
なし
2.11
2.03
5.41
9.55
22
春ウコン
末
なし
なし
2.06
2.77
8.83
13.66
23
春ウコン
末
なし
静岡県
0.02
1.16
1.33
2.51
24
春ウコン
末
なし
大阪府
不検出
0.03
0.04
0.07
25
春ウコン
末
なし
鹿児島県
0.58
1.19
4.39
6.16
26
春ウコン
末
なし
鹿児島県
不検出
0.17
0.16
0.33
27
春咲きウコン
錠剤
2 mg/錠
なし
0.41
2.03
13.16
15.60
28
春ウコン
末
なし
群馬県
不検出
0.29
0.32
0.61
29
春ウコン
末
なし
なし
2.22
3.06
9.92
15.20
30
春ウコン
末
なし
なし
2.08
2.84
9.22
14.14
31 春ウコン:紫ウコン:秋ウコン=7:5:3
末
なし
東京都
0.12
0.45
1.43
2.00
32
春ウコン
末
なし
大分県
不検出
0.03
0.02
0.05
33
春ウコン
末
なし
熊本県
0.06
0.54
0.86
1.46
34
春うこん・秋ウコン
末
なし
福岡県
0.18
0.42
1.36
1.96
35
春うこん・秋ウコン
末
なし
広島県
0.11
0.40
1.36
1.87
36
ウコン,ウコン抽出物
ドリンク
なし
福岡県
3.74
3.38
9.04
16.16
37
なし
末
なし
佐賀県
0.06
0.14
0.59
0.79
38
なし
根茎
なし
大阪府
0.59
1.36
5.12
7.07
39
ウコン
末
なし
岡山県
0.44
0.93
3.57
4.94
40
ウコン
末
なし
岡山県
5.15
6.32
18.31
29.78
2.13
41
ウコン
末
なし
長崎県
0.21
0.40
1.52
42
ウコンエキス,ウコン色素
ドリンク
30 mg/340 mL
静岡県
不検出
0.94
7.83
8.77
43
生うこん
末
なし
長野県
0.18
0.45
2.39
3.02
44
ウコンエキス,ウコン色素
ドリンク
なし
長野県
不検出
不検出
不検出
─
45
なし
末
なし
なし
2.86
3.25
11.41
17.52
46
有機ウコン
錠剤
350 mg/100 g
愛媛県
0.28
0.68
2.81
3.77
47
ウコン
末(細切)
なし
愛媛県
0.11
0.34
1.06
1.51
48
─
末
なし
大分県
0.09
0.44
1.35
1.88
49
ウコン
末
なし
大分県
0.10
0.21
0.89
1.20
50
ウコン末
錠剤
なし
なし
1.65
2.23
6.44
10.32
51
醗酵ウコンエキス
ドリンク
なし
なし
不検出
不検出
不検出
─
52
ウコン末
錠剤
なし
なし
1.55
2.16
6.69
10.40
注意事項
1:ビスデメトキシクルクミン
2:デメトキシクルクミン
3:クルクミン
№ 36,42,44,51 は液体試料のため,単位は mg/100 mL とする。
― 55 ―
p053-059 委員会・部会等の動き.indd
55
(55)
2013/12/17
13:12:08
日本薬剤師会雑誌
検出下限値は,個体試料は0.0125 mg/g未満を不
検出,液体試料は0.07 mg/100 mL未満を不検出と
した。
表2 クルクミノイド定量値比較
単位:mg/g
項目
ビスデメトキシクルクミン
デメトキシクルクミン
クルクミン
総クルクミノイド量
5.結果
全国から52件の製品が収集された。内訳は,根茎
1件,末37件,錠剤・カプセル10件及びドリンク4
件であり71%がウコン末であった。
クルクミノイドの主な成分である,ビスデメトキ
シクルクミン,デメトキシクルクミン及びクルクミ
ンは黄色色素としてカレー粉の原料などでも知られ
ている。これらのクルクミノイドの含有量はアキウ
コン,ハルウコン,ムラサキウコン等の系統,品種
によって成分含量に差があり,アキウコンはハルウ
コンより含有量が高く,ムラサキウコンには含有し
ていない。また,アキウコンの特徴として,ビスデ
メトキシクルクミンとデメトキシクルクミンは同程
度含有されており,ハルウコンはデメトキシクルク
ミンに比べ,ビスデメトキシクルクミンの含有が少
ないとの報告がある14)。このことから,原材料別に
No. 1~ 21がアキウコン15県から,のべ21件の製品,
No.22 ~ 33がハルウコン11県,のべ12件,No.34以
降は混合製品,未記載及びエキス等の原材料を使用
した12県,のべ19件の試料として,製品中のクルク
ミノイドの分析結果を表1に示した。
5.1 アキウコンの特徴
アキウコンを原材料とした製品は,ビスデメト
キシクルクミン0.19~5.27 mg/g,デメトキシクル
ク ミ ン0.49~6.48 mg/g及 び ク ル ク ミン1.81~19.89
mg/g含有していた。代表的なクロマトグラムを図
4に示す。総クルクミノイド量としては2.58~31.64
mg/mgとなり12倍の濃度差であった(表2)。総ク
ルクミノイドが高濃度に含有しているウコンを高品
質と評価するならNo. 8の製品が31.64 mg/gで最も
高濃度に含有していたが,産地が未記載であったこ
とから産地を特定するに至らなかった。その他,産
地表示を記載した製品間で比較検討したが,特定の
ハルウコン
最小
最大
不検出 2.22
0.03
3.06
0.02
13.16
0.05
15.60
アキウコン
最小
最大
0.19
5.27
0.49
6.48
1.81
19.89
2.58
31.64
産地による品質の特徴は見いだせなかった。
5.2 ハルウコンの特徴
ハルウコンを原料とした製品は,ビスデメトキ
シクルクミン不検出~2.22 mg/g,デメトキシクル
クミン0.03~3.06 mg/g及びクルクミン0.02~13.16
mg/g含有していた。代表的なクロマトグラムを図
4に示す。
その結果,総クルクミノイド量を比較しても,ハ
ルウコンはアキウコンより相対的に含有量が低い結
果が得られた。しかし,産地間での品質の違いの可
能性を検討したが,総クルクミノイド含有量は,0.05
~ 15.60 mg/gとなり312倍の濃度差(表2)が見ら
れ評価し難い。
例えば,No.22,
29及 び30に つ い て
は,ビスデメトキ
シクルクミン,デ
メトキシクルクミ
ハルウコン末
アキウコン末
ンの濃度分布はア
図5 色調の違い
キウコンの含有量
比率に近似してお
り,総クルクミノイド含量も他のハルウコンよりも
高濃度であった。さらに,他製品のハルウコンと色
調の相違(図5)が明確であることから,アキウコ
ンが混入していることが類推された。
また,ハルウコンが明らかに原材料として使用
されている製品(No.26)とアキウコンが使用され
ている可能性が高い,ハルウコン原材料表示製品
(No.29)の比較写真を図6に示すが,ハルウコンが
原材料であるとは判断し難い。
1.0
0.9
クルクミン
0.8
0.7
アキウコン№8
0.6
AU
0.5
デメトキシクルクミン
0.4
ビスデメトキシクルクミン
0.3
ハルウコン№23
0.2
0.1
0.0
0.0
1
0
2
3
5
6
7
8
9
10
11
12
13
min
14.
No.26
図4 秋ウコン及び春ウコンのクロマトグラムの例
No.29
図6 市販ハルウコン製品の色調
― 56 ―
(56)
p053-059 委員会・部会等の動き.indd
4
56
2013/12/17
13:12:08
第66巻 第1号 平成26年1月1日
また,ハルウコンでは総クルクミノイド含有量が
極端に少ない商品が多かったことから,ウコンを優
良製品のごとく販売することは消費者へ誤認を与え
る可能性も懸念される。
含量が,4.55及び6.96 mg/gであった。さらに,ア
キウコンを原材料として使用していることから,
たっぷりの根拠を同一他製品との相対表示,若しく
は客観的方法で示すことが求められるだろう。
5.3 その他混合原材料製品の特徴
原材料名をアキウコン,ハルウコンと明確に表示
をしてないことから品質評価判定をすることができ
なかった。
しかし,液体(ドリンク)製品であるNo.36,42,
44,51の4品中,No.36及び42はクルクミノイド類
が検出されたが,
No.44,
51は検出下限値未満であった。
当該商品のラベル表示は,ウコンを含有している
ことで訴求効果を求めていながら,クルクミノイド
が検出下限値未満であることから,一般消費者によ
る自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある
行為を禁止し,消費者の利益を保護する景品表示法
で禁じている不当表示の可能性を示唆する結果で
あった。
5.5 表示・広告
一般消費者向けの加工食品の表示はJAS法の加工
食品品質表示基準の規定により項目と表示順が定め
られており,容器または包装の見やすい箇所に一括
して表示することから適正表示の適否について検討
した。
その結果,52製品中16製品,31%に表示上の問題
があった。主なものとして,保存方法,賞味期限,
内容量等の欠落であった。さらに一括表示の原則を
大幅に逸脱していた3製品が存在した。
また,「肝機能が弱い方」などの表現は,臓器等
の特定部位への健康維持等を標ぼうし,当該部位の
改善,増強等ができる旨の表示により医薬品的な効
能効果に該当する製品が1製品あり,薬事法抵触の
可能性が示唆される。
5.4 含有量任意表示製品の特徴
総クルクミノイド含有量を任意表示している製品
の分析値との比較検討を実施した(表3)。
表3 任意表示量(含有量)と分析値
単位:mg/g
№
(表1)
1
表示量
分析値
差
9.80
13.48
+3.68
2
17.6
21.99
+4.39
21
1.80
9.55
+7.75
27
7.60
15.60
+8.00
42
8.82
8.77
-0.05
46
3.50
3.77
+0.27
含有量表示していた製品はNo. 1,2,21,27,
42,46であったが表示量に比較して差異の最小製品
はNo.42,最大商品はNo.27であった。特にNo.21は
表示量の5.3倍量超過しており,著しく事実に相違
する表示であり食品衛生法の飲食に起因する衛生上
の危害の発生を惹起する可能性を内包している。
ADIを逸脱するような過剰量含有する製品は存在し
なかったが,表示と分析値の著しい相違は看過する
ことができない濃度差であり製品の品質管理の徹底
が求められる。
また,任意表示とは別に,「クルクミンたっぷり」
といった表示が2製品あった。特定の栄養成分を特
に強調して著しく人を誤認させるような表示をする
場合は健康増進法の適用となるが,クルクミンは本
法で認められている表示可能成分ではないことから
強調表示を行うことは差し支えないとはいえ,誇大
な表示にならないよう十分注意が必要であるといわ
れている15)。しかし,当該製品は総クルクミノイド
5.6 品質規格評価
第 十 六 改 正 日 本 薬 局 方2) に よ る と,
「ウコン
(Turmeric)
」
(CURCUMAE RHIZOMA)
を粉末とし
た「ウコン末(Powdered Turmeric)」
(CURCUMAE
RHIZOMA PULVERATUM)は生薬の乾燥物に対
し,総クルクミノイドは1.0 ~ 5.0%含むと規定され
ている。
ウコン末及び根茎39検体,及びウコン末錠剤,カ
プセル9検体について規格適合性を評価した。その
結果,29検体60%が規格外製品であった。かつ,規
格外製品は全て1%未満の含有量であった。特に,
No.32は0.05 mg/g,0.005%の含有量であった。
ただし,加工食品として販売されていることから
局方の規格を外挿して当該製品の評価を行うことは
食品である以上適正を欠くことになることから,品
質評価上の科学的根拠として局方に依拠することで
評価に相当するであろう。
6.考察
この度の調査では,全国23都道府県の薬剤師会試
験検査センター 27機関から延べ52件の製品を入手
することができた。多くの原材料は植生から関東以
西で生産され,製品の70%超が道の駅や物産店等で
販売されていたことから,地域の特産品として販売
される場合が多いことがうかがい知れる。
ウコンは健康志向の高まりにより天然物に由来す
る,いわゆる「健康食品」として消費者からの需要
は増加の一途を辿っている。ウコン関連商品もテレ
ビコマーシャル等ではウコン含有を表現することで
― 57 ―
p053-059 委員会・部会等の動き.indd
57
(57)
2013/12/17
13:12:08
日本薬剤師会雑誌
高い訴求力が得られている。
一般にウコンと呼ばれているのはアキウコンを指
し,本調査においてもアキウコンと原材料表示が明
確に特定された製品は52件中23件であった。
今回はクルクミノイドの分別定量を実施したが,
アキウコンは総クルクミノイド含有量が高くハルウ
コンは低値であったことから,過去の報告14,16) を
追認する結果であった。しかし,ハルウコンを原材
料とした製品には,ハルウコンが本来有する組成と
は異なる含有量が定量された製品が3件判明し,色
調もハルウコンはアキウコンに比較して著明に退色
しているが,当該3製品は鮮やかな橙赤色を呈して
おり,アキウコンを原材料とした製品であることが
容易に推定された。つまり,品質管理上の問題を懸
念させる製品であった。
また,液体製品2件について総クルクミノイド含
有量が検出下限値未満であった。原材料表示はウコ
ンエキスと記載されており本調査では抽出対象外で
あったが,その含有量も表示されていなかった。
さらに,含有量を任意表示していた6製品では最
大5.3倍超過していた製品もあり,含量を表示する
場合は一般消費者が購入時に判断できるよう科学的
根拠に基づいた表示が求められるだろう。
同様に局方規格を逸脱していた製品は60%にのぼ
り,そのほとんどが1%未満の微量検出であった。
ただし,加工食品であることから,規格を外挿する
ことに合理性を欠くことにはなるが品質評価を実施
する上では,科学的根拠として参考になるだろう。
また,表示でも31%もの不適切な表示が発見され,
JAS法及び薬事法に抵触の可能性を示唆する製品も
あった。
以上のことから,本調査において事実と著しく相
違する製品が存在することは,一般消費者へのウコ
ン製品への品質上の信頼を毀損する可能性も否定で
きない。また,健康被害の報告例も決して少なくな
いことから品質管理の徹底は喫緊の課題として提起
したい。
最後に,全国23の都道府県から収集した製品は道
の駅や物産店等からの購入が主な収集先であった
が,当該販売形態は,『特色のある原材料』として
地域の特産品販売されており,観光客等のお土産品
として購入される機会が多く,地域に限定すること
なく広域に製品が拡散していく可能性が高く,健康
被害発生時には対応に労力を強いられる可能性も否
めない。また,平成25年6月28日に食品表示法が公
布された。本法は食品を摂取する際の安全性及び一
般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確
保するため,従来の食品衛生法,JAS法,及び健康
増進法の食品の表示に関する規定を統合した一元的
な食品表示制度のもとでの表示義務付けを求めてい
る法律であり,一括表示中に栄養成分表示義務が追
謝辞
試料収集にあたり,沖縄県薬剤師会試験検査セン
ター,鹿児島県薬剤師会試験センター,宮崎県薬剤
師会試験検査センター,熊本県薬剤師会,長崎県薬
剤師会検査センター,佐賀県薬剤師会検査センター,
大分県薬剤師会検査センター,北九州市薬剤師会試
験検査センター,下関市薬剤師会検査センター,広
島県薬剤師会検査センター,岡山県薬剤師会医薬品
検査センター,愛媛県薬剤師会,大阪府薬剤師会試
験検査センター,岐阜県公衆衛生検査センター,愛
知県薬剤師会,浜松市薬剤師会,静岡県生活科学検
査センター,上田薬剤師会検査センター,上伊那薬
剤師会,長野市薬剤師会,長野県薬剤師会検査セン
ター,山梨県環境科学検査センター,群馬県薬剤師
会環境衛生試験センター,東京都薬剤師会,千葉県
薬剤師会検査センター,青森県薬剤師会衛生検査セ
ンター,北海道薬剤師会公衆衛生検査センターのご
協力に深謝いたします。
また,ウコンの写真を提供いただいた東京薬科大
学安田一郎教授に深謝いたします。
文 献
1)WHO monographs on selected medicinal
plants, Vol. 1, World Health Organization,
1999, pp.115-124.
2)牧野富太郎:牧野 新日本植物圖鑑:図鑑の北
隆館,1961.
3)独立行政法人国立健康・栄養研究所.
「健康食品」
の安全性・有効性情報 http://hfnet.nih.go.jp/
(参照2013-11-05)
4)厚生労働省:第十六改正日本薬局方
5) 葵 一 八, 鏑 木 紘 一 ほ か: ウ コ ン(Curcuma
longa L.)の栽培に関する研究(第1報)根茎
収集とクルクミン類含量との品種間差異,衛生
試験所報告 1986;No.104:124-128.
6)浅井明,宮沢陽夫:食品黄色色素クルクミノイ
ドの吸収代謝と体脂肪蓄積抑制作用,Foods &
Food Ingredients J.Jpn. 2003;Vol.208, No.2:
95-105.
7)European Medicines Agency:EMA/
HMPC/456848/2008-Committee on Herbal
Medicinal Products(HMPC), Assessment
report on Curcuma longa L., rhizoma
h t t p : / / w w w . e m a . e u r o p a . e u / d o c s / e n _
― 58 ―
(58)
p053-059 委員会・部会等の動き.indd
加される。施行までに猶予はあるものの製品の厳格
な品質管理は地域差なく普遍的な対応が求められる
だろう。
58
2013/12/17
13:12:08
第66巻 第1号 平成26年1月1日
GB/document_library/Herbal_-_HMPC_
(JECFA), Rome, Italy, 10-19 June 2003:
assessment_report/2010/02/WC500070700.pdf,
Safety evaluation of certain food additives and
November 2009(参照2013-11-05)
contaminants, WHO Food Additives Series
No.52, World Health Organization, Geneva,
8)恩地森一,滝川一ほか:民間薬及び健康食品に
2004, pp.55-60.9)
よる薬物性肝障害の調査,肝臓 2005;Vol.46,
13)倉田忠男編:新・食品分析法〔Ⅱ〕:光琳,
No.3:142-148.
2006.
9)矢郷祐三,家研也ほか:ウコンによると考え
14)佐藤誠,志村恭子ほか:市販ウコン末の品質評
られる劇症肝炎の1例, 臨床消化器内科 価,三重保環研年報 2004;第6号(通巻第49
2009;Vol.24, No.3:363-371.
号):52-54.
10)武川直樹,迫田淑子ほか:ウコンあるいはノニ
15)東京都福祉保健局,東京都生活文化局編:健
により発症したと考えられた薬剤性肝障害の一
康食品取扱マニュアル第6版,薬事日報社,
例,甲南病院医学雑誌 2010;Vol.27:4-6.
2010, p.89.
11)石川哲也,各務伸一:「いわゆる健康食品」に
16) 松 尾 健, 豊 田 安 基 江 ほ か: 市 販 ウ コ ン の
よる肝障害の実態について,MINOPHAGEN
curcuminoid及びtuemerone類の含有量,第36
MEDICAL REVIEW 2005:283.
回全国衛生化学技術協議会年会講演集 1999:
12)The Sixty-first meeting of the Joint FAO/
98-99.
WHO Expert Committee on Food Additives
2014年度
大学院生募集
★東京青山・大田原の各キャンパスで学べます
★社会人に配慮したカリキュラムにより夕方以降にも多くの授業が履修可能です
★さらに一部の科目でVOD(ビデオ・オン・デマンド)方式でも授業を実施しています
薬学研究科 博士課程 医療・生命薬学専攻
入学定員
5名
修業年限
4年
取得できる学位
博士(薬学)
4年制
本専攻は、医療薬学、生命薬学の分野における高度な専門的知識と技術を有し、幅広い医療関連分野で活躍しうる、薬物治療学に精通した人材
を育成します。特に、がん・感染症・精神神経疾患の薬物治療において高度な臨床能力や、さらにはその領域に関する研究能力を備えた専門性の
高い薬剤師や研究者、またこれら人材の指導・教育に携わることができる人材の育成を目標としています。
薬科学研究科 修士課程 生命薬科学専攻
5名
入学定員
入学定員
修業年限
2年
取得できる学位 修士(薬科学)
2年制
生命薬学分野
生命薬学分野は、薬学研究における最先端の知見を学び、さらにライフサイエンスの広い分野に対応する高度の研究を
実施し、医薬品開発に携わる研究者・技術者の養成や、薬学・環境行政を担う人材さらには教育者の育成を行います。
医療薬学分野
医療薬学分野は、臨床薬学を中心に医療薬学の分野における研究能力の養成とともに、高度専門技術の実践や研究開発
を担う人材を養成します。本分野には、臨床薬学領域、がん薬物療法学領域を設置しています。
教育内容等に関するご相談 メール:[email protected](担当教員 山田治美)
学生募集要項は次のいずれかの方法でご請求ください
0120-36-5931
E-Mail [email protected]
HomePage http://www.iuhw.ac.jp/daigakuin/
〒324-8501 栃木県大田原市北金丸2600-1
― 59 ―
p053-059 委員会・部会等の動き.indd
59
TEL. 0287-24-3200 FAX. 0287-24-3199 URL:http://www.iuhw.ac.jp/
(59)
2013/12/17
13:12:08
Fly UP