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いま時代は大きく変わっている。旧時代から新時代へ。いままでの企業
経営技術レポート「現代の企業革新」 仮説の経営技術 いま時代は大きく変わっている。旧時代から新時代へ。いままでの企業経営 は、これから通用しない。かといって、どのような経営がこれからの経営かと 問われても答えられない。答えられるのは、これからの時代に通用する企業に 革新していく方法論にすぎないと思っている。 新時代 旧時代 現代の認識 革新する構造の理解 ビジネスモデルの構築・革新 構造変化把握技術の修得 ここに紹介する、この企業を革新する方法論というか技術らしいモノは、B SOが産業界の第一線で死に物狂いで頑張っている中堅・中小企業の経営者と ともに悩み、また試行錯誤したモノである。 標題は、「現代の企業革新」である。別の言い方をすると、「ビジネスモデル の革新」あるいは「ビジネスモデルの創造」ということになるのかもしれない。 4つの内容から成り立っている。 ・変化する現代の受け止め方 ・革新する企業構造の理解 ・ビジネスモデルの構築と革新 ・構造的変化の把握技術/トレンド分析 これらについて次に述べる。 経営技術レポート「現代の企業革新」 1.社会が構造的に変化している/変化する現代の受け止め方 1)企業は環境適応有機体 企業は環境適応有機体である。有機体である以上老化する。老化しないよう にすることが、企業存続の基本的な要件の一つとなる。もうひとつの基本的要 件に環境適応体というものがある。すなわち、環境に適応することが出来なけ れば企業は存在できない。 また、適応行動が「体」、すなわち構造体を成しており、構造体として適応し なければならない。さらに、環境適応という捉え方の中には、環境が静的では なく動的であるということが、また重要になる。現代の企業にとって、動的な 環境に適応するという命題的なものを横に置いて検討することはできない。 存続させるためには 企業は環境適応有機体 老化の問題 企業環境への適応の問題 構造体 動的 2)非可逆的な変化の中での経営 経験したことのない変化 教科書に載ってない変化 未知への対応という「考え方」を持つ 発生しているところで 変化を科学的に視る 「開の問題」としてとらえる 構造的に捉える 世界のひとつ化 変化への適応 対応しなければならない変化 非可逆的な構造変化 試行錯誤で 経営技術レポート「現代の企業革新」 現在起こっている構造的な変化は、我々が今まで経験したことのないような ものである。このような変化への対応は、理論や原理原則に基づくことを無視 するわけではないが、仮説を立て試行錯誤的にならざるを得ない。 また、すべての企業に、規模の大小や業種に関係なく、環境の変化は、知恵 と行動力の対応を迫っているし、それが出来なければ生き残ることすら出来難 い時代である。 3)現代の経営問題は、構造的で開の問題 現代の経営問題は、色々な環境条件などを仮定したり一定として解く、いわ ゆる「閉の問題」として扱っても現実の問題としてはあまり役立ち難い。現代 の経営問題は、「開の問題」として扱うものと考えることが無難である。このよ うな問題を解くのが当りまえになった現代にあっては、企業であっても個人で あっても、「気づき力」の大小で生命力に大きな違いが出てくる。「気づき力」 の小さい企業は、時代や社会の変化と乖離することが酷くなり存在性を弱める ことになる。 また、現代の経営問題は、一見局部的な問題でありその部分でのみ対処する ことで済むような問題であると思われても、部分最適化の問題として扱ってい ては、全体的に矛盾が拡大したり、全体最適化にとってはマイナスで働くこと になることすら起こる。現代の経営問題は、程度の差はあっても、殆どが全体 最適化の問題と考えていた方が無難である。 また、現代の経営問題は、企業環境の構造的な変化の中での対応という特質 がある。構造体は外部と多面的に接し、色々な環境変化に対応している。その ために、単に「開の問題」「全体最適化の問題」というだけでなく、殆どの問題 が構造的に変革することが求められているといって良い。 現代の経営問題 開の問題 全体最適化 構造的体系的な検討 気づき力 経営技術レポート「現代の企業革新」 2.BSOの企業づくり・企業変身の起点 1)経営戦略とは、構造的な環境変化に適応すること 現代の企業は、社会の構造的な変化に適応するよう変身していかなければ生 きていけない。 生き残ったビジネス 世の中から消えた旧時代のビジネス 新しく誕生しているビジネス 超恐慌前 産業規模 の産業規模 現代の 萎縮した産業 この社会の顕在的潜在的変化に適応することが現代企業の存続の必要条件で ある。この適応のための企業考働をBSOでは「経営戦略の構築と取組み」と 云っている。 経営戦略は、基本的には事業構造の範疇に限られているように受け止められ る嫌いがあるが、一般的な既定の経営構造では最適な取組みが出来難い。いわ ゆる「事業構造の革新」→「革新する事業構造を最適なものにするための経営 構造の革新」を行うことが不可欠になっている。 流通 商品 市場 経営構造の革新 財務・収益 人財 管理方式 生産 技術 社会と共存共栄 企業づくり・企業変身 社会の構造的変化 事業構造の革新 経営技術レポート「現代の企業革新」 2)与件的変化と選択的変化の中で活きる 経営問題は、程度の差はあっても「開の問題」としてとらえることになる。 「開の問題」とは、課題を無限の広がりで検討するということになる。これ らの課題のなかには、企業経営に直接関係がなくても時代的な特性として前 提にせざるを得ないものがある。これらは「時代的特性」として考慮する要 素とするが、企業づくり・企業変身の課題を検討するに当たっては、社会の 構造的な変化を、与件的として考えておかなければならない変化すなわち与 件的変化と、積極的にというか意図的に時代の変化を企業づくり・企業変身 に活かすものすなわち選択的変化の2つに分けて捉えたものが実務的に関係 するものとなる。 関係しそうな変化の抽出 社会の 構造的変化 与件的変化 選択的変化 時代的特性 変化の組合せによる検討 戦略課題案の抽出 3)個性的で累積効果を目指す理念をベースにする企業経営 これからは、企業ブランドが重要な役割を果たす時代になる。どんな会社も、 「名無しの権平」では存在性を認めてもらえなくなると思っていた方が良いだ ろう。 企業ブランドは、企業経営の信頼性と個性が重要な役割を果たす。この原点 に位置するものが、理念である。理念には、事業理念と経営理念がある。事業 理念とは、その企業が営んでいるビジネスのフィロソフィというか想いといっ たもので、社会に価値を提供する原点的なものである。経営理念は、社是社訓 経営技術レポート「現代の企業革新」 など企業や社員の行動規範である。この事業理念と経営理念を合体させたもの をBSOでは企業理念と云っている。 企業ブランド 企業の信頼と個性 マネージメント しくみ ブランド 理念 この企業理念は、最高の精神的よりどころとするものであり、ある意味では 企業経営の究極の到達域でもある。 企業理念 事業理念 経営理念 この企業理念を持って、企業づくり・企業変身することは、とりもなおさず、 それぞれの取組みが累積され、個性化が進み、かつ皆の精神的よりどころを創 り企業としてのパワーとなる。これからの時代は、この理念の共有化に努める か努めないかがおおきなき企業考働力の差となるであろう。 良性化は幹部・ 管理者の役割 社会との共存共栄にロマン 企業を動かす精神的構造 ビジネスエンジン 理念・考働規範など エンジンの出力 ビジネスマン 仕事が楽しいから会社に来る 良性 理念を供して仕事を楽しむ 悪性 理念に関係なく仕事を楽しむ サラリーマン 給料を貰 いに来る 良性 給料分は働いている 悪性 給料分働いていない <精神的共存共栄クラスタリング・マップ> 企業理念の共有化 協働:異質能力人財群の合目的組み合わせ ベクトル合せ :相乗効果 理念経営:累積効果 D A 社員の C B 企業の心臓 企業の生命力 戦略力 総合力の発揮 D A 戦略の展開 C B 充実感 総合力の発揮 <共存共栄のクラスタリング・マップ> 精神的共存共栄 D A C B 社員の活性化 総合力 企業経営には「勢い」が不可欠 経済的 共存共栄 経営技術レポート「現代の企業革新」 これは、技術論的な言い方をすると、考働の精神的ベースが共有化出来るこ とになり、企業を形成する社員の合成ベクトルが最大化し、自走型で機動力の 発揮できる企業づくり・企業変身が可能になる。 3.ビジネスモデルの構築(企業革新) 1)ビジネスモデルの構築技術 (1)検討する構造 従来の新規事業開発は、従在の企業体質なり経営の仕組みを前提に、ある いは延長して取組むことが多かった。しかし、現代のように社会が構造的に 変化しているなかにあっては、この構造変化に対応できるビジネスモデルを 構築することが不可欠である。従来の構築では、時代や社会に適応する革新 が出来ず、ギャップに無理して対応し、時代の流れに乗れない企業を創って しまう危険性がある。 インターフェイス活動 新規事業 経営の方式革新 企業の構造革新 現代人の変質 時代・社会の構造的変化 (2)検討するにあたって関係しそうな時代・社会の構造的な変化 構造的変化 現代の特性 与件的変化 企業変身 選択的変化 企業づくり・ トレンドデータ 経営技術レポート「現代の企業革新」 時代・社会の構造的な変化は、新聞などの公開されている断片的なデータ を収集し、親和集約してから捉える事が出来る。親和集約されたデータをト レンド情報と称している。 このトレンド情報を、ビジネスチャンスとして活かす「選択的変化」と、 制約条件とせざるを得ない「与件的変化」とに区分けするのは企業の意思で 行う。また、いずれにも属さないか、いずれにも属するようなもので企業づ くり・企業変身で考慮しておかなければならないモノを「現代的特性」とし て捉える。 トレンド情報は、「事業」構造の、また「経営」構造の、そして「現代的特 性」のどの部分に関係するかを検討し、下記のマトリックスの各ランに保存 する。 このマトリックスで整理したトレンド情報は、それぞれの分野の次のステ ップの検討原資とする。 トレンド情報マトリックス 事業 経営 財務・収益 人財 管理方式 生産 技術 流通 商品 市場 選択的変化 与件的変化 現代的特性 (3)検討する「現代人の特性」 企業づくり・企業変身の主役は、人財である。すべての企業の在り方は、 この人財によって規定されるといっても過言でない。すなわち、戦略を立て るのも、組織的に企業が動く仕組みを創るのも、社員をやる気にさせるのも、 すべて人財の考働にかかっている。このように見てくると、時代・社会の構 造的変化の中でも、特に人財と云う視点からの現代的特質を捉えておく必要 がある。 現代人の特性については、多くの研究がなされている。これらの研究成果 から得るモノとトレンド情報に見られる「現代的特性」の「人財」の構造変 経営技術レポート「現代の企業革新」 化とを統合化し、「経営」の仕組みや風土、さらには経営構造そのものの革新 に反映させることになる。 (4)企業環境の構造的変化に対応する事業構造の革新 「市場」・「商品」・「流通」の3つによって構成される「事業」に関係する 構造的変化を捉える。とはいえ、表層的には勿論、環境が構造的にも激動し ている現代にあっては、求められている商品の変質(ETC商品が政治的に 広がったり、高速道路の土日料金が格安になったりで、ビジネスモデルの革 新要求が起こるなど)や流通の構造的変化(インターネットの普及は流通の あり方を変え、ビジネスモデルを革新させる)が革新の起点になることがあ る。いずれにせよ、これらの構造的変化は、トレンド情報・マトリックスの 「事業」のなかにある構造的変化のデータとして、まずは蓄積される。 新規 既存 商品 流通 商品 商品 流通 流通 既存 現在 新規 新規 市場 既存 市場 事業構造の革新 事業関係の構造的変化 市場 既存 新規 ⅰ.市場構造の革新 「市場」とは、企業がターゲットとする個客の集合である。この個客は、 同じニーズを持つ人あるいは企業である。最近では、静的な捉え方であるニ ーズから発展して、ウォンツという多次元的で動的な捉え方をする必要が出 て来ている。個客を生活者について捉えるとき、ニーズはライフスタイルと いう捉え方になり、ウォンツはライフステージという捉え方になる。 また、市場は、顕在しているモノ(顕在市場)だけでなく、顕在化状態に あるモノ(ミカケの潜在市場)、兆しもないがいずれは顕在化するであろうと 思われる潜在状態にあるモノ(真の潜在市場)との3つで構成される。特に、 この「真の潜在市場」がこれからの企業づくり・企業変身に重要な意味を持 つ。 経営技術レポート「現代の企業革新」 市場とは ターゲットとする個客 の集合である 顕在市場 ニーズ 生活者 ライフスタイル 海面 ミカケの潜在市場 ウォンツ ライフステージ 真の潜在市場 さて、事業構造の革新は、市場の構造的変化から検討することになる。こ れからの事業展開に当たっては、どのようなターゲット市場、すなわちどの ようなニーズやウォンツに応える事業を営むか模索する。ターゲット市場が 何であるかは、市場が求める機能を明確にすることで捉えられる。このター ゲット市場は、大きく捉えて、既存市場と新規市場という2つの選択肢のい ずれか、あるいは両方を捉えて検討されることになる。 ⅱ.商品の開発 「商品」とは商いする有形無形のモノであり、「製品」はビジネスとして使 われる可能性のある製造されたモノである。 さて、求められる機能を満たせる商品を具現化することが次のステップで ある。商品が具備すべき機能や特性は、一般的な「現代の特性」を加味しな がら、ターゲット市場の求めている機能の抽出から始める。抽出した機能は、 優先度を検討して範囲を決め、これらの機能を満足する商品の設計へと進む ことになる。 また、たとえば、従来ユーザーは提供されたものをそのまま使用するとい うよりは、工夫して、自分の使い勝手が良いようにハード的にもソフト的に も改造したり追加したりすることが珍しくなかった。現代では、殆どすべて のモノを提供してもらうような商品になっていることが少なくない。これら は商品の「現代的特性」と見て良いのではないか。 経営技術レポート「現代の企業革新」 市場 魅力機能 商品 協創による完成度追求 基本機能 具現化・商品設計 機能の重要度評価 機能抽出 時代・社会の構造変化 商品は、最初から完成されたモノが出来ることは殆どない。現代は、市場 と一緒になって完成度を上げていく、いわゆる「協創」が重要な活動となる。 これを怠る企業は、時代・社会の変化にマッチしたビジネスが出来ず、脱落 する危険性が大きくなる。 ⅲ.流通構造の革新 提供者が使用者に商品を供給する活動を流通という。流通は社内の営業部 門と代理店や販売店などの中間業者が行う営業活動を包括するものである。 また、流通機能は、提供者と市場、そして商品によって本来規定されるもの であるが、これらから規定される以外に、時代・社会の構造的な変化から独 自に影響を受けたり選択したりして、革新することがある。 流通 商品 市場 時代・社会の構造変化 さらに活動は、商流、物流、金流、情報流の4つで構成される。これらの 構造を時代的社会的変化に適するよう革新していく必要が出てくる。 経営技術レポート「現代の企業革新」 流通 使用者 提供者 営業・中間業者の活動 商流 物流 金流 流通業界 情報流 の構造変化 時代・社会の構造変化 (5)企業環境の構造的変化によって生じる経営構造の革新 「需要>供給」時代のビジネスモデルの開発は、単に「商品」開発と同義 語であったと云っていいだろう。ところが、「世界がひとつ化」し、規模の大 小に関係なく、地球規模で企業間競争が起こり、以前は局部的に起こってい た産業社会の問題も、いまや激動化し「盥の水」的現象となり、地球上のあ らゆる企業を巻き込むことも珍しくなくなった。このような状況の中での企 業は、スピードと全社的な機動力・行動力を持たないと生きていくことすら 儘ならなくなっている。 また、非可逆的で構造的変化のなかで企業経営を行わなければならない現 代企業は、局部的に取り組むことでは対処できなくなってきており、いわゆ る企業づくり・企業変身といった規模と構造的革新で対処せざるを得なくな ってきつつある。 従来の中堅・中小企業での新規事業の開発は、市場・流通まで広げた、い わゆるBSOで「事業革新」と云っている範囲までといったことではなかっ たかと思う。 現代での新規事業は、商品だけとか事業の範囲で考えたらそれでビジネス が成り立つといった甘い話はない。従来から営んでいるビジネスまでも包括 した範囲で新規事業への企業として取組むことを検討しないと成功する確率 は小さくなっている。 経営技術レポート「現代の企業革新」 近代産業社会の誕生時代(需要>供給) ビジネス・モデルの開発=商品の開発 現代のビジネスモデル構築の検討範囲 時代 社会 従来のビジネスモデル構築検討の範囲 品 流 通 技 術 生 産 経営革新 商 企業環境 場 構造的変化の察知 事業革新 市 管理方式 財務・収益 人材の確保と育成 理念 すなわち、前図の赤のボックス・矢印が従来型の新規事業の開発の一般形 である。これに、「構造的変化への察知」が加わり、「経営革新」と行ってい る技術・生産・管理方式・人財の検討が加わることになる。 ⅰ.技術構造の革新 企業経営の本質は、心と技で企業を運営し、事業を通して、社会と共存共 栄することである。「心」は企業の理念のなかに現れるし、風土となるし、文 化となる。そして、企業力の源泉になる。 「技」は、実現する方法である。企業経営のあらゆる場面で、技術が機能 する。その時の社会で最適な環境適応有機体を追求するためには、それをも たらすことのできる技術を活用することが必要になる。とはいっても、技術 的優位性は、最先端の技術を用いることではない。大げさに云えば古代から 存在する、使える技術を最も適した状態で活かすことである。 経営技術レポート「現代の企業革新」 時代・社会の構造的な変化 これから必要となる技術 従来の技術領域 これからも活きる技術 特に、現代は、提供する商品に関わる技術を充実し、社会から賞賛され求 められる独自性のあるビジネスに仕立て上げることが必要である。 風土 文化 心 実現力 理念 技 実現する方法 時代・社会の構造的変化 商品の開発改良に必要な技術の必要性は、最も顕著である。コア技術とい うのは、一般的には、商品のバックボーンとなっているモノであるといって よいであろう。このコア技術は、独創性を追求しがちになるが、まだしも「独 自性」の考え方を持って取組むことが現実的であるし、コストパフォーマン スが良い。 また、企業経営のあらゆる分野で、「時代・社会の構造的変化」が起こって おり、特に経営構造の分野での変化を見逃す嫌いがある。トレンドの目を企 業として養い、半歩先の革新が出来る企業を目指したい。トレンド分析を1・ 2カ月間隔で行い、半年か1年でその期間のトレンド分析を総括的に捉え、 時代・社会の構造的変化を察知する企業経営の仕組みを持ちたい。 経営技術レポート「現代の企業革新」 非競争の競争 時代・社会の 構造的変化に適応 独自性のある企業づくり 泥沼競争からの脱皮 ましてや 最先端技術だけではない 商品のコア技術 ×:独創技術の追求 ○:独自技術の追求 最も適した 活かし方がポイント コストパフォーマンすも良い 定期的なトレンド分析 異業種企業との交流など 同業種は独自企業づくりには役に立たない また、異業種企業との交流会や見学会などは、時間が許す限り参加し革新 のヒントを入手するよう努めたい。 「同業種の見学なら」という話が良くある が、独自性のある企業づくりにはあまり役立つ話でもなく、過当競争という か泥沼競争のなかにのめり込んで行くことになりかねない。 ⅱ.生産構造の革新 従来の生産構造で、これからの商品の生産、製品の製造を最適に行うこと は難しい。開発改良された商品の最適な生産構造を創造することがこれから はますます重要になってくる。また、競争力を高めるための商品の品質・タ イミング・値頃を供給する生産構造の追及が不可欠である。 注)生産企画とは、商品の最適な生産構造を創造すること。生産 技術とは、製品の最適な製造構造を創造すること。 とはいっても、提供する商品を生産するすべての資産やノウハウをすべて 保有することは出来なくってきた。自社でしか担当できない分野以外は外部 から調達することが不可欠になる。いや、ビジネスマッチングなど積極的に 検討する必要が出てきている。これからは自社の生産技術の追求とともに、 後述する外注管理を中心とした管理力が重要な意味を持ってくる。 特に、これからマネージメント・ブランドがビジネスで重要な意味を持っ てくる時代にあっては、この生産構造は、その中心的な意味を持つ。 経営技術レポート「現代の企業革新」 生産企画力 世界最強の生産力 生産技術力 時代・社会の構造的変化 開発改良された商品の生産 協力会社 値頃 管理力 タイミング 品質 競争力強化 構造的に変化する市場 ⅲ.管理方式の革新 管理とは、目的を効率良く必達するために工夫・努力することを云うとB SOでは定義している。 構造的に革新された事業活動や経営活動には、十二分に機能する管理方式 が必要になる。最適な管理方式とはどのようなものか、それは事業活動・経 営活動の結果として求めるモノを安定して効率良く出力することが出来るモ ノであるということが出来よう。しかし、この管理方式にすべてを期待する ということは本末転倒である。事業するうえで、管理はそもそも目的的機能 ではなく、補佐機能であり、悪い言い方をすると必要悪的存在とさえいえる。 目的を効率良く必達するために工夫・努力すること 動や経 営 活 動を 十二分 に機能させる 安定的に効率よく 出力する 最適な管理方式 構 造 革 新された 事業活 しくみ、しかけ、そして人間的努力 それなりのコストや人材がいる 事業や経営にとって目的的機能ではない 管理とは必要悪 目的的機能を果たす活動に管理機能を組み込む プールプルーフなど 管理は、「しくみ」、「しかけ」それに人間的努力で行われる。むしろ、この 経営技術レポート「現代の企業革新」 ような投資や努力が少ないことに越した事はなく、事業や経営の目的的機能 を果たすことそれ自体に管理機能を果たすモノが組み込まれていることが望 ましい。 人財の革新 事業・経営の構造革新 ⅳ.人財の革新 就社社員を長期的観点からの確保育成 時代・社会の構造変化を察知し、組織を束ね、変化 に適応する企業づくり・企業変身に取組む 必要能力の修得とレベルアップ 組織考働力 変化の察知力 企業づくり・企業変身の実現力 就職社員・就給社員は、質的量的に変化する 就職社員・就給社員の人財構造革新を 計画し対処する 社風や風土などの変質、モラルの低下 これからの企業の重要な経営課題 人財は、長期的観点から確保育成しなければならない者と、短期的流動的 に対処していく者とに分けて検討せざるをえない。BSOで云う就社社員は 前者、就職社員・就給社員は後者になる。 就社社員は、その企業の行っているビジネスや風土・理念に共感し、その 企業の組織の中核社員として役割を果たす人財である。この人財は、一般的 には、終身雇用となる。 この就社社員は、時代・社会の構造変化を察知し、組織を束ね、この変化 に適応する企業づくり・企業変身に取組むことになる。この就社社員が、組 織考働力、変化の察知力、企業づくり・企業変身の実現力を身に付け、これ らの能力をレベルアップしなければ企業の永続性が保証できない。 企業環境の構造的変化に適応するため、就職社員・就給社員の人財構造は 革新していかなければならない。すなわち、就職社員・就給社員は、質的量 経営技術レポート「現代の企業革新」 的に変化する。時代・社会の構造的変化を予測し、また事業・経営の革新を 仮説して、就職社員・就給社員の人財構造革新を計画し対処していくことに なる。この動きは、これからの企業では、仕組みとして整備する必要性が強 まる。 人財構造を質的量的に革新していくに当たって、社風や風土などが変質す る。また、モラルの低下が起こりかねない。革新経営の中での社員の精神的 不安定化することと併せて、これらへの対策は、これからの企業の重要な経 営課題となる。 ⅴ.財務・収益の構造革新 売上高は、存在を社会から認知されている規模と見ることができよう。ま た、粗利額は、事業戦略の成果を表す。時代・社会の構造的変化への適応が 適切であったかどうかは、この2つの数字の傾向をみることで捉える事が出 来る。 一方、経常利益は、対外的な努力の結果ではなく、まったく内部努力の結 果である。経常利益が赤字になるのは、時代・社会の構造的変化に適合した 革新が出来ていないか、出すための全社員による努力が不足したということ になる。 借金経営は、経営基盤が貧弱になり、不安定な経営にならざるを得ない。 現代は、この傾向がますます強くなっている。経営基盤を強力にするための 財務力の向上は、現代の重要な経営課題の一つである。 (6)企業環境と企業とのインターフェイス機能の構造変化 企業環境 社会 市場 企業 経営 事業 社員 企業と社会とのインターフェイス機能には3つある。すなわち、市場と事 業を営む接点、企業環境との接点での経営活動、それと社員が社会と接する 処である。この3つの接触箇所の在り方が、社会との共存共栄する具体的な 関係として検討対象となる。 経営技術レポート「現代の企業革新」 ⅰ.事業を営む接点でのインターフェイスの革新 このインターフェイス活動は、通常営業活動とマーケティング活動という ことになる。市場・商品・流通の革新と、時代・社会の構造変化に適応する ために、最適化をめざしてこの2つの活動を構造的に革新していくことにな る。 営業活動の現代的特徴は、「個客」を対象とする活動である。従来の営業で は、とてもじゃないがコストパフォーマンスが悪すぎる。いや成り立つよう にはならないと云って良い。ということは、これからの営業は、従来のやり 方の延長にはないということになる。これからの時代に通用する営業手法を 開発することが、また重要な現代的経営課題の一つでもある。 また、市場からの信頼回復の営業が重要な課題である。これは、一方的な 自己責任追及の社会ではない。自己責任と供給の信頼性とをバランス化させ る、いわゆる「売る」から「買う」スタンスへの営業姿勢の革新から始め、 個客と提供者が最適な価値(商品)を協創する活動などとなる。また、この 両者の付合っている全期間を通して「提供する価値」を最大化し、損得の営 業ではなく共存共栄する営業を追求することになる。 個客 を対象とする時代 従来の方法の延長にはない これからの時代に通用する 営業手法の開発が必要 価値提供の期間最大化 価値の協創/信頼営業 現代マーケティング活動の特長 分散市場での共存共栄関係の創造 個客学習支援 発達している伝達技術やネットワーク技術などとともに 我々が持っている技術を総動員 マーケティング活動の現代的特徴は、 「分散する個客を相手に如何に共存共 栄するビジネスとして成り立つ営業活動の方式を編み出すか(分散市場での 共存共栄関係の創造)」ということと、「個客が商品を求めるための行動を起 こすために必要な学習を如何に支援するか(個客学習支援)」ということの2 つである。この2つを中心として、現代企業は、事業構造のなかの「流通」 経営技術レポート「現代の企業革新」 を革新するために、発達している伝達技術やネットワーク技術、物流技術な どとともに我々が持っている技術を総動員して再構築する必要がある。 ⅱ.企業環境との接点での経営活動の革新 企業も一市民である。また、企業は元来社会に能動的に働きかけて存在す るモノである以上、企業活動は常に社会から信頼される存在でなければなら ない。 とはいっても、いま強まっている性悪説に起点を置いての企業の在り方を 社会が規制する流れは、本質的な解決にはならない。企業自身が社会から信 頼を回復する考働を、さらには本来企業の存在する起点になっている「社会 と共存共栄する」ことを追求することに他ならない。そのためには、「事業を 通して社会と共存共栄する」という捉え方を「経営」の領域まで拡大し、当 為的な観点に留まるのではなく、 「ロマンの追求」という精神的な目的を持ち、 「信頼の経営」の企業づくり・企業変身に取組むことが解決の方向ではない かと思っている。 ⅲ.社員が社会と接する処での革新 社員は、社会の一員でもある。社会はクリティカル社会化がますます進ん でいる。このような変化から社会の色々な場面に種々の矛盾・歪が広がり拡 大している。特に、現代人に悪影響している矛盾・歪を放置することはもは やできなくなってきている。すなわち、現代人には、「小児性大人」などとい った言葉が作られるように、山積する問題がみれる。 社会のクリティカル化、社会運営の迷走 社員も社会の一員であり、 この矛盾・歪が現代人に多大な悪影響が出ている 健全な社会人であることに企業も責任を負う 「企業の個性化」「企業ブランドの構築」 「信頼の経営」にも大きく貢献できる これらの問題は、社会の不安をもたらし、不安定な社会になっている大き な要因にもなっている。社員が健全な社会の一員として暮らすことに、企業 も責任を負わなければならない時代になっている。これは、責任を果たすと 云う捉え方ではなく、「企業の個性化」ひいては「企業ブランド」の構築とか 「信頼の経営」にも大きく貢献でき、積極的に取組むことが、これからの企 経営技術レポート「現代の企業革新」 業づくり・企業変身の重要な課題の一つともいえる。 さらに進んで、社員が社会の一員として活動することに関心を持ち、 「身の 丈」的にならざるを得ないが、社員の活動を支援することもこれからの企業 の課題の一つになりそうである。 4.ビジネス開発の技術/トレンド分析の技術 ビジネスの開発には、シーズ型とニーズ・ウォンツ型とがある。シーズ型 は、社会の動きと関係なく個人的な動機でビジネスの種を持ち、その種をビ ジネス化しようとする。ニーズ・ウォンツ型は、社会が求めているニーズ・ ウォンツを察知し、それを満足させる商品を提供するビジネスを構築しよう とするものである。 シーズ型のビジネス開発も、一見社会が求めているモノと無関係のようで あるが、やはり何らかの形で社会が求めていることを反映していることが通 常であり、これなくしてはビジネスにならない。なるにしても多大な経済的 人財的知恵的努力が必要となる。また、このシーズ型のビジネス開発におい ても、一般には商品分野での「種」の場合が多く、市場・商品・流通の3つ の要素の、構造的に変化している社会を満足させる最適な組み合わせを探求 しなければならず、そのためには、やはりトレンド分析が重要な意味を持つ。 また、ニーズ・ウォンツ型のビジネス開発は、文字通り、トレンド分析に よってニーズ・ウォンツを探すことから始まる。 そのように見ると、シーズ型もニーズ・ウォンツ型にもトレンド分析は必要 である。 ここで紹介するのは、高度の能力や知識を必要とせず、作業量は多く手間 がかかるが、誰でもが確実に成果(程度の差はあるが)を得ることが出来る モノである。 以下、このトレンド分析の実務について紹介する。 ビジネスの開発改良の起点は、トレンド分析である。トレンド分析で構造 変化の本質を掴み、新発見を得ることに新しいビジネスの開発の醍醐味があ る。 経営技術レポート「現代の企業革新」 1)トレンド分析の手法 断片データの収集 ▽ ◇ 親和集約法 △ △ ○ △ ○ △ ○ 親和集約 トレンドA 断片データ 一般公開情報 □ トレンドのニオイを感じさせる ○ 新聞記事など ○ ▽ ○ ◇ ◇ ▽ ◇ ◇ ▽ □ ◇ □ □ □ □ (1)断片データの収集 断片的な定性データ(事象・現象を捉えた表現をしたもの)の中から、ト レンド臭いデータを集める。これが原資データとなる。「定性データ」とは、 多い/少ない、強い/弱い、きれい/きたない、快/不快など、直接には数 値化しにくい、言葉で表されたデータのことである。これに対するものとし て、 「定量データ」がある。これは、長さや重さなどの「数値化されたデータ」 のことである。 後述する手順でトレンド分析を進めていき、時代の構造的変化を捉えて、 この定性データに意味づけすることによって初めて、これが「情報」となる。 この「情報」は、我々のビジネスに役に立つものでなければならない。 原資データは、類似したものを集めても意味がない。一見、全くジャンル が異なる事象を集める。分類・グルーピングしようと思っても出来ないよう な事象を集めることがポイントである。また、新聞を見ていて、すぐ目に飛 び込んでくるような記事(情報)は基本的にトレンドではない。なぜなら、 そのような記事はもう既に答えが出ているものであり、また、その記事を書 いた人の考えに引きずられる危険性があるからである。また、直感的に新し さが感じられるものや、 「これから」が垣間見られる記事を出来るだけ多く抽 出することがポイントである。 経営技術レポート「現代の企業革新」 氷山という社会構造 ここで生きている 海面 社会構造を氷山に見立てたとき、 海面下で見えている 海面から出ている、目に見えてい る部分で我々は生きているという 目に見えていない ことが出来る。海面上の部分と、 海面下のある程度見えている部分 ここの構造的変化を捉える で起こっている変化は、既に答え が出ており、変化が見えているものである。ここのデータをいくら集めても 意味がない。重要なのは、海面下の見えない部分の変化を捉えることである。 つまり、トレンド分析で集めるデータというのは、原則として、「どんな答え が出るのか全くわからない」といったデータでなければならない。そして、 氷山の目に見えていない部分が変化をすれば、いずれ必ず見えている部分も 変化する。この変化を捉えることこそが、トレンド分析の目的である。 構造的な環境変化の視点には、以下の 4 つがある。この 4 つを大きく捉え ることで変化を捉えることが出来る。トレンドを察知するためには、これら の切り口でいろいろなものを見ることが重要である。 ① 生活の変化 生活様式(衣食住)が変化すると、それに関連して様々なものが変化す る。 ② 社会情勢の変化 社会情勢の変化は新たな需要を生み出す。 ③ 法律の変化 法改正が企業に与える影響は大きい。法律の変化に対して先手を打てば、 他社との差別化になる。 ④ 技術の変化 技術の変化があればビジネスの仕方が変わってくる。「新技術の誕生」 だけが変化ではなく、「その技術の使われる場面・分野が変わる」とい ったことも含めて考えなければならない。 (2)原資データをカード化する 通常は原資データをカード化して作業を行う。原資データから、ビジネス 環境の変化を感じさせるようなキーセンテンスを抜き出し、カードに記入す る。 カード化する際のポイントは、次の通りである。 ・20字以内の一節で表現する 経営技術レポート「現代の企業革新」 ・句点(。)がひとつになるように表現する ・あまりに文章が長すぎると、データの本質を捉えにくくなる。 ・1枚のカードにひとつの項目を記入する ・見る人によって価値や捉え方が変わらないように、出来るだけ具体的に 記入する ・先入観を持たないで、出来るだけ広い範囲や分野から集める (3)カードを並べる 縦に4∼5行 長机 横に 10∼15 列が適当 START 10 ㎝ <机の並べ方と周り方(例)> 手前を 10 ㎝空ける *疲れた時に手を突くため のスペース ①余裕のある大きさの机を用意する。 ・ カードを、真正面から読めるくらいの余裕をもつ。 ・ 長机の場合は、ロの字型(下図参照)になるように並べる。 ②カードをシャッフルする。 ③カードを読みやすいように配置する。 ・ 同じスピードで読んでいけるよう、均等に配置する。 ・ 並べ終わるまでは手を出して構わないが、カードの読み合わせに入っ たら、手をつく部分以外に手を出してはいけない。 (4)カードの読み合わせをする ①等間隔で並ぶ 経営技術レポート「現代の企業革新」 机の前に、カードに真正面に向き合うように並ぶ。 ②無言無手でカードの「意味」と「場所」が分かるまで集中して熟読する <読み方のポイント> ・ 目の前の一列を熟読する。 ・ 言葉は発してはいけない。(アイコンタクト・ボディランゲージも不 要。) ・カードを置き換えたり、並べ替えたりしない。(他の人の邪魔になる) ・机の周りを、時計回りに横に進みながら読む。読むのが遅い人がいて もせかさない。遅い人がいたら、その人を抜かして先に読む。(下図参 照)抜かされても、慌てなくて良い。 抜かして、同じカ ードを読む 遅い人 (5)原始データを読む 原始データがある程度集まったら、次はこの原資データを一つ一つ読み込 む。カードを何回も何回も読み込んで、どこにどんな内容が書いてあるカー ドがあるかわかるぐらい読み込んでいくと、一つひとつのカードが、書いて ある内容の裏に感じ取れる時代の変化の本質や背景などについて、あたかも 「俺はこういうことが言いたいんだ」というようにこちらに語り掛けてくる。 そこまで読み込まなければならない。読み込む際のポイントは、 「素直になる」 ことである。 ・ 先入観を外して、無心に、素直に読む。 ・ 最後まで必ず読む。先入観でカードの意味を決めつけ、カードの本質 経営技術レポート「現代の企業革新」 が分かる前に読むのをやめてしまうと、重要なキーワードでも抹殺さ れてしまう。 ・ 「表面的な言葉」だけで解釈しない。同じ字が並んでいるからといっ て、同じ意味であるとは限らない。本質を理解しようとすること。 ・ 疲れても休んではいけない。 かなり疲れるが、疲れた時が一番頭に入りやすい時でもある。 トレンド分析の第一ステップは、原始データを集めたり、原始データを 読み、集約したりしていく「作業」である。この作業を行うときに注意し たいのが、 「作業のための作業」になってはいけないということである。 「作 業のための作業」をしていては、面白さも新発見もない。時間の無駄であ る。逆に言えば、面白さや新発見が出てこなければ、手を抜いているとい うことである。この「作業」を一生懸命に「無」になってやることで、新 発見が出てきたり、面白さを実感できたりするようになるのである。これ が出来るようになれば、多くの人に共感を持ってもらえ、人を動かすこと が出来るようにな本質を掴むことが経出来るようになり、価値を認めても らえるようになる。これが出来る人が、次の時代のビジネスを展開できる 人になるのである。 素直に読めた人ほど新しい流れに気づき面白い発想が出来る。また、表 面的なキーワードで集めがちであるが、背景の持つ意味合いを考えなけれ ば面白みのないトレンドになる。類推される本質や背景は、いろいろな角 度からのもの、意外と思えるようなものでも良い。出来るだけ多人数で行 うと、さらに本質に接近できる可能性が強くなる。 (6)一次集約 次に、それぞれの原始データから類推された本質・背景を重み付けし、 一番重みのあるデータに着目して、グループ分けしていく。この作業を「一 次集約」という。一次集約のためのグループ化は、カード2∼3枚、多く ても7∼8枚程度である。前述の読込み作業を進めていき、 「私はあそこの カードと同じことを言っている」というところまで来たら、そのカードと 一緒のところに置く。それぞれのカードについてこれを繰り返しグループ 分けする。そして、それぞれのグループについて、さらに類推される本質・ 背景の集約表現を考え、再度カード化する。集約表現はこれからの時代の 変化が感じられ、自分たちのビジネスに役だつような表現でなければなら ない。これらの集約作業を「親和集約」という。これについては後述する。 経営技術レポート「現代の企業革新」 ⅰ.「似たもの」「同じような価値のもの」を小グループにまとめる 同じ意味合いを持つデータをグループ化し、共通の背景を見つけ出すこと によって、時代の流れの中での変化・面白さを発見するために行う。 グループ化のポイントとしては。以下のようなものがある。 ・ 無理にグループにするのではなく、カード自身が一緒になりたくなる まで待つ。 ・ 1グループ「7∼8枚以上」になってはならない。 ・ 「表面的な言葉」だけで集めようとしない。同じ字が並んでいるから といって、同じ意味を表しているとは限らない。 ・ 分類をしない、先入観でしない。 この親和集約でやってはならないことは、分類分けしたり、自分の 先入観でグルーピングし、定性データの「言わんとしていること」 に素直に耳を傾けないことである。このような誤りを犯すと、せっ かく仇しいトレンドがあるにもかかわらず、葬り去られてしまうこ とになることが多い。 ・ 人の意見に左右されてはいけない。 他の人がなぜグループ化したか分かった上で、自分が違うと捉えた 場合は、グループを崩しても良い(カードを元あった場所に戻す)。 ただし、理由が分からないのに、グループを崩してはいけない。 ・ 効率よくカードをまとめるには、 集中する…議論しない。議論すると、集中力が散る。 立ったまま作業する…疲れてくると素直になれる。 表現は無理をせず…出来るものから始める。出来ないものは放 っておく。 ⅱ.小グループの表題をつける グループ化されたカードを、台紙に貼る。 ・ グループの内容を確認し、OKと判断したものは、A4の紙にカード を仮貼りしていく。(後で確認して、間違えたと思ったら修正できる ように) ・ 小グループの全カードが言おうとしている事を表現する。 「類推される本質や背景」や、「共通する類似キーワード(「同じ言葉」 という意味ではない)」を元にする。 ・ 出来るだけ20字以内の1節で表現する。 ・ 本質の表現を大きく捉えすぎると、データが持つ本質がぼやけてしま 経営技術レポート「現代の企業革新」 い、トレンドが捉えにくくなる。 ・ 文章化する時に、データの意見が違うと感じたカードを見つけたら、 そのグループから外しても良い。他のグループにあてはまるものはな いかを確認する。 グループ化された本質を文章 (表題)で表現するスペース 25 ㎜ 1㎝ 25 ㎜ 集約カード シール部分を 5 ㎜剥がし、 仮貼りする ⅲ.小グループ表題カードをまとめていく ・ 表題をカード化して、再び集約作業を開始する。 (7)二次集約 一次集約で出来たカードを再度同じように読み込み、グループ分けして いく。これが「二次集約」である。この作業を繰り返し行って、トレンド 構造の体系図を作成する。これによって最終的に「究極の本質」に辿り着 く。この「究極の本質」は基本的に一つである。天才は一つの事象からこ の「究極の本質」に直接辿り着くことができるが、凡人がここまで行くに は、「作業量」でカバーするしかない。 (8) 親和集約を階層構造的に繰り返す トレンドデータの構造を体系的に捉えることが出来るようになり、トレン ドの本質や背景が明確になる。 経営技術レポート「現代の企業革新」 (原始データ) 第1次集約 第2次集約 第3次集約 2)いくつかの現代の経営方式 (1)信頼の経営 ⅰ.萎縮する日本経済のなかでの購買力の低下 日本経済の萎縮は、本当に「いる・欲しい商品」しか求められなくなって 来ている。また、個人的には財布の中との相談とローン返済で苦しんで、企 業にとっては借金の返済と先の読めない赤字経営から生き延びるのが先で、 購買力は落ちており、買わない我慢の中にある。 ⅱ.企業に対する不信感は減ることはない よほど「いる・欲しい商品」でも、購買者は供給者を「兎に角売らんがた めの行動者」として懐疑的な目で見るようになってきた。「騙される」「押し つけられる」「危険な目に遭わされる」という懐疑心が強くなっている。中国 の餃子事件、偽装問題、宝塚線の脱線大量事故死などによる、いわゆる「企 業不信」の時代である。 この不信感は、簡単にはなくならない。ましてや購買者に、ますます不信 感を募らせるような事件がまだ続いている。企業が主体的に責任を果たすこ 経営技術レポート「現代の企業革新」 とに止まることなく、コンプライアンス(企業倫理)などが法的に強化され ている。厳しい経営の中で、多くの企業が、ソウシャルコストを負担できず、 コンプライアンスなどの取組みが結果的に軽視せざるを得なくなってい。企 業が社会と共存共栄する存在であることを起点にするなら、このような流れ にならないはずである。しかし、残念ながら、日本の産業社会も、性善説の 社会ではなくなりつつあり、特に性悪説をベースにしている日本以外の社会 では、自らこの不信感を強めさせる経営を行っている企業が後を絶たない。 ⅲ.不信感を払しょく経営 「安心・安全」は、業種に関係なく、現代社会が求めている要件の一つで ある。この要件は、強くなることはあっても、弱まることはないであろう。 (こ れは、ビジネスチャンスでもある。)この不信感を払しょくする経営、すなわ ち「信頼の経営」を行っていかなければ存在性をなくすことになる。 しかし、不信感を払しょくするための対策は、無限に続けて行かざるを得 ないことなる。果して、不信感の払しょく問題を次から次に解決させていく ことは適切なのだろうか。このような社会が納得する、あるいは満足するレ ベルを維持・向上させる取組みの経営負担は増大することになる。 我々は、「問題を潰す」というスタンスではなく、ターゲット市場と共存共 栄する企業づくり、すなわち共生社会を一緒に創っていくということで不信 感を払しょくする経営が出来るのではないかと仮説している。 購買者に好意・共感される理念を持ち、理念に基づく経営、すなわち「理 念の経営」を追求し、「心と技」でターゲット市場だけでなく社会から賞讃さ れる企業づくりに取組み、マネージメントブランドを大切にする風土と仕組 みを整備し、購買者から認知され、購買者とともに生きて行く経営を追求し ていくことが重要になって来ているように思う。 (2)感動の経営 ⅰ.タイムシェアーリングライフ 企業は、生活の糧を得るところだけではない。人には色々な生き方がある が、生活の中で最も多くの時間を過ごすところである。一回しかない人生の 充実感を得ることの出来る場でもある。 また、現代人は、好むと好まざるとに関わらず、色々な生活場面かある。 会社での生活、家庭での生活、個人的な生活、社会生活・・・・・色々な生 活があるが、どれかに絞った生き方は難しい。単純な生活は、しようと思っ ても出来るような環境ではない。色々な生活をすることが出来なければ、現 経営技術レポート「現代の企業革新」 代社会で生きていけないことになる。 それぞれの生活をしているとき、その生活を納得できるモノにしなければ ならない。すなわち、どちらの生活を大切にするかということではなく、す べての生活で満点を取るにはどうしたらいいかという考えを持たないと、中 途半端な生活になり自分としても納得が出来ずストレスのたまる生き方にな る。 このような生き方の技術論として、BSOはタイムシェアーリングライフ (時分割生活)というモノを提唱している。このタイムシェアーリングライ フというのは、一口で言うと、一つ一つの生活のコマを、一定の時間(タイ ムコア、30分とか1時間とか)の中で過ごして行くということである。逆 に云うと、タイムコアの中で出来る充実した生活をしようということである。 こうすることで、多くの生活が出来ることになる。 ⅱ.ワクワク経営 これは牟禮印刷の商標登録のようなものである。牟禮印刷は、色々な経営 課題をイベント化して取り組んだり、工場の中でファクトリーコンサートを やってみたり、色々なポスターを作って風土を作ったり、さらには残紙をコ ツコツためてその用紙でノートを作りラオスの子供たちプレゼントすること を続けている。これらの企画運営をプロジェクトチームみたいなものを作っ て取組ませさせている。 KDSというソフト開発会社がある。ここは、玄関に太鼓を置いて社員が 出入りする度にたたいて、元気の良い雰囲気を作っている。 朝日段ボールは、企業視察や訪問がある時など、1・2のQCサークルに 活動の発表機会を設けていた。 このように、社員が色々な機会に色々な形で経営に参画し、その中に喜び と充実感が得られるように配慮した経営が行われている。このような動きは、 訪問者に対しても、ある種の感動を与えている。 また、このような動きは、さらに進んで、個客と一緒に社会づくりに発展 している会社もある。自然派の化粧品メーカーのクレコスは、社員と個客が 協働する場面を色々と作って、ともに充実感のある生活を目指している。 おわりに 山椒魚みたいな生き方の経営がある。山椒魚は、山椒魚の生き方で生きてき た。しかし、この生き方は、企業にとっては、耐乏ということになる。環境が 経営技術レポート「現代の企業革新」 良くなるまで、消耗を最少にして生きて行くこの方法は、周期的な企業環境の 変化ではなくなった現代では難しいと見なければならない。 BSOでは変化する企業環境の時代にあって、 ・普遍的なものは何か ・なくなるモノは何か ・改造しなければならないモノは何か ・新しく誕生するモノは何か ・新しく誕生させたいモノは何か という視点で企業経営の革新を検討することにしている。 「新時代の企業経営」という大上段に構えて、このレポートを作成したが、 原稿を書き終わるまでにも、次から次へと舞い込んでくる「企業革新」の課題 に取組みながら、このレポートの内容では不足するモノ、改訂しなければなら ないモノがドンドン出てくる。しかし、満足の行くモノが提供出来なくても、 現代の企業経営の些かなりとも参考に出来ることはないかという想いで、この レポートを出すことにした。このレポートが少しでもお役に立ったら幸である。 以上