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アクトソフトウェア
「タグ付けられた世界での行動を認識する携帯型アシスタント」の開発 ―誰もが利用できるユビキタス基盤を目指して― 1.背景 近年、「どこにいても、ネットワーク・端末・コンテンツを自在に、意識せずに、 ストレスなく安心して利用できる」ユビキタス社会実現のために、高速ネットワーク や無線技術、情報家電など、ユビキタス基盤環境の整備が進められている。しかし現 状は、携帯電話や PDA などの IT 端末を使いこなす人のみがユビキタス基盤からのサ ービスを享受できる段階であり、誰もが「意識せずに、ストレスなく安心して利用で きる」段階へと進めるには、まだ多くの課題が残されている。 またサービスは「繋がる」「見られる」だけでなく、個人ごとのサービスや先行的 なサービスなど、より付加価値の高いサービスへと移行して行くことが想定される。 ユビキタス環境が整備された公共の空間における個人ごとのサービスなど、次世代の ユビキタス社会の実現には、行動を細かく検知し、かつ厳重にプライバシー管理ので きる方式の開発が急務となっている。 2.目的 個人ごとのサービスや先行的なサービスを享受するため、壁や家具、家電等に電子 タグを貼り散りばめられた TaggedWorld 空間を構築し、電子タグへのアクセスログか ら個人の習慣や癖をパターン化する。行動パターンと実際の行動のマッチングを取る ことにより、個人に最適なサービスを提供する環境を実現する。 図 1 Tagged World 実用化イメージ TaggedWorld 内で電子タグを読み取り、行動パターンを抽出するために、ユーザは電 子タグリーダを搭載した、あらかじめ個人ごとの行動の習慣や癖をパターン化して記 憶させたマイクロサーバ(ポケット・アシスタント)を携帯する。記憶した行動パタ ーンと実際の行動のログを比較することによって、ユーザの意図を推定し、ネットワ 1/4 ークを通じてユビキタス基盤上のサーバにアクセスし、各ユーザに最適なサービスを 先行的(proactive)に提供する。これにより、自分専用のアシスタントがあたかも傍 にいるかのような「気がきく」電子環境を実現することができる。 3.開発の内容 本プロジェクトでは、以下のソフトウェア: z TaggedWorld 構築機能ソフトウェア z ポケット・アシスタントソフトウェア z 行動パターン作成ソフトウェア を開発し、 z TaggedWorld 構築機能実験 z 行動パターン作成及びポケット・アシスタントに関する実験 を行うことによって、開発ソフトウェア及びアルゴリズムの有用性を示した。 1) TaggedWorld構築機能の開発 A) タグ設置支援ツール RFIDの電子タグと電子タグリーダは、それらが相対する向きや距離によって認識 率が大きく変化するので、行動をアクセスデータとして取得するのに効果的な電 子タグの貼りつけ位置を見つけるツールを開発。 B) タグとアクトの対応管理ツール 複数の電子タグへのアクセスがひとつのアクトに対応していることがあり、これ らを関係付けるツールを開発。 C) タグ設置情報XML化機能 設置位置や電子タグへのアクセスとアクトの対応付けをXML形式で表現する手法 と、その手法に則った宣言的記述を作成する作業を支援するツールを開発。 2) 実験用プラットフォームの開発 A) 行動ログ収集機能 各ユーザの電子タグへのアクセス履歴をデータ・ストリームとして収集する機能 を開発。 B) 実験用パターン照合機能 実験室内での行動に対し、行動ログと行動パターンを照合し、一致すればその旨 通知する機能を開発。 C) 実験用ポケット・アシスタント 三菱電機社が開発中の小型計算機マイクロサーバをハードウェア・プラットフォ ームとして、その上で動作する行動ログ収集機能及び、実験用パターン照合機能 をソフトウェアで実装。 3) 行動パターンについての開発 A) 行動パターンXML化機能 2/4 指定された状況での人間の振る舞いを同時並行的に実施されるアクションの組と 考え、そのアクションのそれぞれをアクトの並びと考える。各アクトに対しては、 アクション内の順序、開始タイミング、継続期間などの特性があるものとする。 このような特性をパラメータ化したものを行動パターンと呼ぶことにする。本開 発では、行動パターンをXML形式で宣言的に表現する方法を開発。 B) 行動パターン雛形生成機能 電子タグへのアクセスをアクトと捉え、その並びで人間の振る舞いを表現する。 無意識に頭の中に描かれるアクションのそれぞれを、振る舞いの中から切り出し、 アクトの並びとして表現する。得られたアクトの並びは、多くの人の行動ログの 中からマイニングされ、アクションの一般的特性を示している。この並びを、ア クションのパターンの雛形として生成する機能を開発。 C) 行動パターン雛形洗練機能 計算機で個人の行動を認識するには、アクション内のアクトの発生の順序、発生 と終了のタイミング(期間の長さ)、どのアクトの発生を重要とみなすかを示す 重要度など細かい特性を指定し、実際に収集された個人の行動ログを使って各人 向けに行動パターンを洗練する機能を開発。 4) TaggedWorld 構築機能実験 電子タグを貼付する際の指標データと、実際に電子タグを貼付するデータを取得し、この 結果を「貼付する位置(電子タグと電子タグリーダとの向きや距離)や材質・障害物・周辺 温度や湿度・同時アクセス数」から成るタグ設置支援機能 XML データとして表現し、電 子タグに関する実験や開発を行うための基盤データとしてまとめた。 5) 行動パターン及び実験用プラットフォームに関する実験 立命館大学びわこ・くさつキャンパス内防災システムリサーチセンタに構築した Tagged World の生活空間において、被験者が「外出」、「帰宅」及び「来客」というシチュエーショ ンを仮定し、ポケット・アシスタントを携帯しながら実際の行動をとり、行動パターンに関す るデータを取得した。 このような実験環境のもと、アクト、アクション、ふるまいの 3 層構造に基づくベイジアン・ ネットワークによる行動ログのフィルタリング機能が有効に機能し、さらに、このフィルタリ ング機能が順序対集合雛形洗練機能により強化されていることを実証することができ た。 4.従来の技術(または機能)との相違 TaggedWorld を構築し、電子タグへのアクセスの時系列ログから人間の癖や習慣に 基づく行動パターンを抽出する機能を開発した。抽出された行動パターンと時間や環 境を照合し、ユーザの行動を推定することにより、ユーザが欲するサービスを先行的 に提供することができる。TaggedWorld を構築するために効果的な電子タグの貼り付 け位置やその管理方法及び、人間の行動パターンを XML で記述することによって、電 子タグを利用したアプリケーションにおける基礎データとなる。 また、ユビキタス基盤からのサービスを受けるのに必要な各人の個人情報はポケッ ト・アシスタントが必要なものだけを選別し、適切に加工してユビキタス基盤に提供 3/4 する。個人情報はポケット・アシスタントが管理するので、ユビキタス基盤側で管理 する方式と比較して、プライバシー管理をより厳重に行うことができる。 5.期待される効果 電子タグの設置方法及び行動パターンのカタログを XML ファイル及びスキーマとしてオ ープン化して、製品やシステムの開発におけるプラットフォームとして、利用できる。 また、テストを行って行く中でブラッシュアップを行いながら、ポケット・アシスタントの開発 へフィードバックし、ポケット・アシスタントによる先行的なサービス提供をサービスビジネス として立ち上げることができ、あらかじめ指定された行動パターンを認識し、同じ行動パタ ーンを複数箇所で行った場合に同様のサービスが受けられる。 一般的なユーザが、携帯電話や名札を携行するように、違和感なくポケット・アシスタン トを携行、戸惑うことなく操作でき、ユビキタス基盤からサービスを受けられる。 6.普及(または活用)の見通し 本開発の成果物である、タグ設置情報 XML 及び行動パターン XML、また、構築する パターン認識に関するデモアプリケーションそれぞれによって、ターゲットユーザを設定し ている。 <タグ設置情報 XML> タグメーカ等電子タグを使用してサービスを企画する企業、タグを貼付することを想定し た製品開発やソリューション提供を行う企業 <行動パターン XML> ナビゲーションシステムや危険防止システムなど、人間の行動パターンを読み取った上 で解析するためのシステムを開発している企業や団体 <パターン認識アプリケーション> 一定の IT スキルを有し、本プロジェクトの目的を理解している学生もしくは開発者 次年度以降、IT プロフェッショナルではないが、一般的な PC に関する知識を保有する 学生や社会人、PC に対する違和感や嫌悪感などのない人々、及び家庭・オフィスにて生 活をしたり仕事に携わっている人々をターゲットとして普及させていく。 7.開発者名(所属) ・ 金秀一(財団法人 京都高度技術研究所) ・ 星野寛(株式会社 オクトパス) ・ 島田幸廣(株式会社 ゴビ) ・ 島川 博光(立命館大学) ・ 村 浩二(株式会社 内田洋行) (参考)開発者URL ・ (財)京都高度技術研究所: ・ (株式会社 オクトパス): ・ 島田幸廣(株式会社 ゴビ): ・ 島川 博光(立命館大学): ・ 村 浩二(株式会社 内田洋行): http://www.astem.or.jp/ http://www.octopath.co.jp/ http://www.go-v.co.jp/ http://www.de.is.ritsumei.ac.jp/ http://www.uchida.co.jp/ 4/4