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コショウ科| コショウ Piper nigrum
■最近の研究成果 東南アジア・南太平洋地域で薬用利用される植物 コショウ科植物 植 物 学 原 産 名 コショウ 名 Piper nigrum 地 インド 植 物 ・ 生 薬 の 紹 介 コショウは熱帯・亜熱帯に分布し,8属約3,000種が知られており,その2,000種は Piper属である.つる性の木本常緑植物で,ほだ木に巻きつき,10 mにも達する.栽 培には伸びた芯を摘み,枝振りを多くして胡椒の収穫を多くする方法がとられている. 葉腋から10 cm程の花穂が下垂し,房状に成った果実が胡椒(ペッパー)である.緑 色の未熟果実を房ごと収穫し,天日で2日間乾燥したものが黒胡椒(Black Pepper) で,緑黄色から赤く完熟した果実を水に漬けて半醗酵させ,果皮を剥除した種子が 白胡椒(White Pepper). 胡椒は香辛料として用いられていただけでなく,古代ギリシャ時代に「医学の父」 といわれたヒポクラテスは婦人病などに医薬品として用いていた.その後,駆風薬, 消化促進薬,下痢止め薬,関節痛の鎮痛薬,かすみ眼の治療薬としても用いられて いる.また,『アラビアンナイト』には白胡椒を強精薬のひとつとして用いていたことも 記されている.中国・明代の李時珍は『本草綱目』の中で,「腸,胃を暖め,寒湿の反 胃,虚腸,冷積,陰毒,牙歯の浮熱で痛むを除く」と記している. 主 分 胡椒の辛辣な成分は樹脂状のチャピシンで,カーとくる後味はアルカロイドのピペリ ン(結晶状)で,芳香成分はピペロナールで黒胡椒の方が白胡椒より多く含む. 研究室の成果 論文①:Matsuda H., Kawaguchi Y., Yamazaki M., Hirata N., Naruto S., Asanuma Y., Kaihatsu T., Kubo M., Melanogenesis Stimulation in Murine B16 Melanoma Cells by Piper nigrum Leaf Extract and its Lignan Constituents, Biol. Pharm. Bull., 27, 16111616 (2004). 要 成 コショウの果実については数多くの薬効が知られているが,毛髪障害改善剤 として用いられた経緯はない.そこで,白髪予防あるいは治療素材の探索を 目的に,マウス由来B16メラノーマ細胞を用いて,メラニンの産生促進を指標 に検討した.その結果,コショウの果実,葉,茎にメラニン産生促進作用が認 められ,中でも葉に最も強い作用が見出された.さらに,コショウ葉中のメラ ニン産生促進作用成分を探索し,最も強いメラニン産生促進作用を示した(-)cubebinのメラニン産生促進のメカニズムについては,細胞内のシグナル伝 達が関与していることも明らかにした. 論文②:Hirata N., Naruto S., Ohguchi K., Akao Y., Nozawa Y., Iinuma M., Matsuda H., Mechanism of the melanogenesis stimulation activity of (-)-cubebin in murine B16 melanoma cells, Bioorg. Med. Chem., 15, 4897-4902 (2007). メラニン産生過程における(-)-cubebinの作用動態を明らかにするため,B16メ ラノーマ細胞を用いて,そのメカニズムについて検討した. 論文③:Hirata N., Tokunaga M., Naruto S., Iinuma M., Matsuda H., Testosterone 5αreductase inhibitory active constituents of Piper nigrum leaf, Biol. Pharm. Bull., 30, 2402-2405 (2007). コショウ葉の育毛作用を男性型脱毛モデルのテストステロン処置C57BL毛再 生障害マウスを用いて検討した.その結果,コショウ葉エキスに毛再生障害 を抑制する作用が認められた.その作用機序はメラニン産生を促進させる成 分である(-)-cubebinが5α-リダクターゼの活性を阻害し,その結果,毛再生障 害を解除していることが明らかになった. 論文④:Hirata N., Naruto S., Inaba K., Itoh K., Tokunaga M., Iinuma M., Matsuda H., Histamine release inhibitory activity of Piper nigrum leaf, Biol. Pharm. Bull., 31, 19731976 (2008). コショウ葉の抗アレルギー作用について検討した.コショウ葉エキスはⅠ型ア レルギー反応モデルであるDNFB誘発3相性皮膚反応試験において抗アレル ギー作用を示した.さらに,そのエキスはマスト細胞からのヒスタミン遊離を 抑制したので,その活性を指標に有効成分を探索した結果,(-)-cubebin,(-)3,4-dimethoxy-3,4-desmethylenedioxycubebinに強いヒスタミン遊離抑制作用 が認められた. 論文⑤:Matsuda H., Hirata N., Kawaguchi Y., Naruto S., Takata T., Oyama M., Iinuma M., Kubo M., Melanogenesis stimulation in murine B16 melanoma cells by Kava (Piper methysticum) rhizome extract and kavalactones, Biol. Pharm. Bull., 29, 834-837 (2006). マウス由来B16メラノーマ細胞を用いてメラニン産生促進作用を指標にスク リーニングした結果,コショウ科植物の中でカバ根茎に強い活性が認められ た.さらにその有効成分の探索を行った. 論文⑥:Murata K., Nakao K., Hirata N., Namba K., Nomi T., Kitamura Y., Moriyama K., Shintani T., Iinuma M., Matsuda H., Hydroxychavicol: a potent xanthine oxidase inhibitor obtained from the leaves of betel, Piper betle, J. Nat. Med., 63, 355-359 (2009). 我々は天然植物資源から安全で効果の高い抗痛風素材の探索に着手した. 酸化酵素であるXODの阻害には,抗酸化作用を有する素材に阻害作用が期 待できるとの考えから,各種コショウ科植物には様々なカテコール類が含ま れているとの報告に着目し,スクリーニングを実施した.そこで,コショウ (Piper nigrum)の葉と茎,カバ(P. methysticum)の葉,茎および根茎,キンマ (P. betle)の葉などのコショウ科植物の様々な部位由来のエキスについて検 討した結果,キンマの葉に最も高いXOD阻害活性を見いだした.さらにキンマ の葉エキス中に含有する有効成分を探索した. 特 許 メラニン産生不全症治療剤(特許第4319417号) 登録日 2009年6月5日 メラニン産生促進効果に優れたものであり,皮膚外用剤,経口投与剤などとして好 適に使用することができ,白毛症および白斑症などのメラニン産生不全症の予防お よび/又は治療剤,あるいは,メラニン産生促進剤の提供. メラニン産生不全症予防治療剤(特許第4223723号) 登録日 2008年11月28日 メラニン産生促進剤,チロシナーゼ活性促進剤,並びにメラニン産生促進効果に優 れた白毛症および白斑症などのメラニン産生不全症を予防および/または治療する ための薬剤を提供すること. ■最近の研究成果 東南アジア・南太平洋地域で薬用利用される植物 コショウ科植物 植 物 学 原 産 名 コショウ 名 Piper nigrum 地 インド 植 物 ・ 生 薬 の 紹 介 コショウは熱帯・亜熱帯に分布し,8属約3,000種が知られており,その2,000種は Piper属である.つる性の木本常緑植物で,ほだ木に巻きつき,10 mにも達する.栽 培には伸びた芯を摘み,枝振りを多くして胡椒の収穫を多くする方法がとられている. 葉腋から10 cm程の花穂が下垂し,房状に成った果実が胡椒(ペッパー)である.緑 色の未熟果実を房ごと収穫し,天日で2日間乾燥したものが黒胡椒(Black Pepper) で,緑黄色から赤く完熟した果実を水に漬けて半醗酵させ,果皮を剥除した種子が 白胡椒(White Pepper). 胡椒は香辛料として用いられていただけでなく,古代ギリシャ時代に「医学の父」 といわれたヒポクラテスは婦人病などに医薬品として用いていた.その後,駆風薬, 消化促進薬,下痢止め薬,関節痛の鎮痛薬,かすみ眼の治療薬としても用いられて いる.また,『アラビアンナイト』には白胡椒を強精薬のひとつとして用いていたことも 記されている.中国・明代の李時珍は『本草綱目』の中で,「腸,胃を暖め,寒湿の反 胃,虚腸,冷積,陰毒,牙歯の浮熱で痛むを除く」と記している. 主 分 胡椒の辛辣な成分は樹脂状のチャピシンで,カーとくる後味はアルカロイドのピペリ ン(結晶状)で,芳香成分はピペロナールで黒胡椒の方が白胡椒より多く含む. 研究室の成果 論文①:Matsuda H., Kawaguchi Y., Yamazaki M., Hirata N., Naruto S., Asanuma Y., Kaihatsu T., Kubo M., Melanogenesis Stimulation in Murine B16 Melanoma Cells by Piper nigrum Leaf Extract and its Lignan Constituents, Biol. Pharm. Bull., 27, 16111616 (2004). 要 成 コショウの果実については数多くの薬効が知られているが,毛髪障害改善剤 として用いられた経緯はない.そこで,白髪予防あるいは治療素材の探索を 目的に,マウス由来B16メラノーマ細胞を用いて,メラニンの産生促進を指標 に検討した.その結果,コショウの果実,葉,茎にメラニン産生促進作用が認 められ,中でも葉に最も強い作用が見出された.さらに,コショウ葉中のメラ ニン産生促進作用成分を探索し,最も強いメラニン産生促進作用を示した(-)cubebinのメラニン産生促進のメカニズムについては,細胞内のシグナル伝 達が関与していることも明らかにした. 論文②:Hirata N., Naruto S., Ohguchi K., Akao Y., Nozawa Y., Iinuma M., Matsuda H., Mechanism of the melanogenesis stimulation activity of (-)-cubebin in murine B16 melanoma cells, Bioorg. Med. Chem., 15, 4897-4902 (2007). メラニン産生過程における(-)-cubebinの作用動態を明らかにするため,B16メ ラノーマ細胞を用いて,そのメカニズムについて検討した. 論文③:Hirata N., Tokunaga M., Naruto S., Iinuma M., Matsuda H., Testosterone 5αreductase inhibitory active constituents of Piper nigrum leaf, Biol. Pharm. Bull., 30, 2402-2405 (2007). コショウ葉の育毛作用を男性型脱毛モデルのテストステロン処置C57BL毛再 生障害マウスを用いて検討した.その結果,コショウ葉エキスに毛再生障害 を抑制する作用が認められた.その作用機序はメラニン産生を促進させる成 分である(-)-cubebinが5α-リダクターゼの活性を阻害し,その結果,毛再生障 害を解除していることが明らかになった. 論文④:Hirata N., Naruto S., Inaba K., Itoh K., Tokunaga M., Iinuma M., Matsuda H., Histamine release inhibitory activity of Piper nigrum leaf, Biol. Pharm. Bull., 31, 19731976 (2008). コショウ葉の抗アレルギー作用について検討した.コショウ葉エキスはⅠ型ア レルギー反応モデルであるDNFB誘発3相性皮膚反応試験において抗アレル ギー作用を示した.さらに,そのエキスはマスト細胞からのヒスタミン遊離を 抑制したので,その活性を指標に有効成分を探索した結果,(-)-cubebin,(-)3,4-dimethoxy-3,4-desmethylenedioxycubebinに強いヒスタミン遊離抑制作用 が認められた. 論文⑤:Matsuda H., Hirata N., Kawaguchi Y., Naruto S., Takata T., Oyama M., Iinuma M., Kubo M., Melanogenesis stimulation in murine B16 melanoma cells by Kava (Piper methysticum) rhizome extract and kavalactones, Biol. Pharm. Bull., 29, 834-837 (2006). マウス由来B16メラノーマ細胞を用いてメラニン産生促進作用を指標にスク リーニングした結果,コショウ科植物の中でカバ根茎に強い活性が認められ た.さらにその有効成分の探索を行った. 論文⑥:Murata K., Nakao K., Hirata N., Namba K., Nomi T., Kitamura Y., Moriyama K., Shintani T., Iinuma M., Matsuda H., Hydroxychavicol: a potent xanthine oxidase inhibitor obtained from the leaves of betel, Piper betle, J. Nat. Med., 63, 355-359 (2009). 我々は天然植物資源から安全で効果の高い抗痛風素材の探索に着手した. 酸化酵素であるXODの阻害には,抗酸化作用を有する素材に阻害作用が期 待できるとの考えから,各種コショウ科植物には様々なカテコール類が含ま れているとの報告に着目し,スクリーニングを実施した.そこで,コショウ (Piper nigrum)の葉と茎,カバ(P. methysticum)の葉,茎および根茎,キンマ (P. betle)の葉などのコショウ科植物の様々な部位由来のエキスについて検 討した結果,キンマの葉に最も高いXOD阻害活性を見いだした.さらにキンマ の葉エキス中に含有する有効成分を探索した. 特 許 メラニン産生不全症治療剤(特許第4319417号) 登録日 2009年6月5日 メラニン産生促進効果に優れたものであり,皮膚外用剤,経口投与剤などとして好 適に使用することができ,白毛症および白斑症などのメラニン産生不全症の予防お よび/又は治療剤,あるいは,メラニン産生促進剤の提供. メラニン産生不全症予防治療剤(特許第4223723号) 登録日 2008年11月28日 メラニン産生促進剤,チロシナーゼ活性促進剤,並びにメラニン産生促進効果に優 れた白毛症および白斑症などのメラニン産生不全症を予防および/または治療する ための薬剤を提供すること.