...

社会保障給付が可処分所得を継続的に押し上げ 所得からの分配に加え

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

社会保障給付が可処分所得を継続的に押し上げ 所得からの分配に加え
第 1 章 経済財政の現状と課題
第 1 - 1 - 34 図 賃金の動向
雇用形態によって異なる高齢者の就業行動による賃金への影響
(2)賃金カーブの動向(所定内給与)
(1)所定内給与の累積寄与度
(2005 年Ⅰ期比寄与度、%)
1.0
(千円)
700
パート
2005 年
0.0
600
-1.0
500
一般
-2.0
08 年
400
12 年
合計
-3.0
300
パート比率
歳
歳
64
60
∼
59
歳
55
∼
54
歳
50
∼
49
∼
45
40
∼
44
歳
歳
歳
39
∼
35
歳
12 13(年)
34
11
∼
10
30
09
29
08
24
07
∼
06
20
2005
歳
100
Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ(期)
∼
-5.0
200
25
-4.0
(3)高齢者(60 ∼ 64 歳)の就業行動による平均賃金(所定内給与)への影響
(%)
1.0
一般労働者
パート・
アルバイトの退職
嘱託等
の退職
(%)
20
正社員の退職
15
パート労働者
パート・アルバイト
正社員として として継続雇用等 嘱託等として
継続雇用等
継続雇用等
0.0
10
-1.0
5
-2.0
パート・アルバイト
として継続雇用等
嘱託等として
正社員として
継続雇用等
継続雇用等
-4.0
2005 06 07 08 09 10 11 12 (年)
-3.0
0
-5
正社員の退職
嘱託等の退職
パート・
アルバイトの退職
2005 06
07
08
09
10
11
12 (年)
(備考)1.厚生労働省「毎月勤労統計調査」、「賃金構造基本統計調査」
、総務省「国勢調査」
、
「人口推計」
、労働政策
研究・研修機構(2010)「高年齢者の雇用・就業の実態に関する調査」により作成。
2.(1)は 5 人以上事業所の値。2005 年を始点に累積している。
(2)以降は 10 人以上の事業所の値。
3.(2)は比較に当たり、属性をコントロールする必要があるため、男性、大卒の標準労働者(学校卒業後直
ちに企業に就職し、同一企業に継続勤務しているとみなされる労働者)の値となっている。
4.計算方法は付注 1−5 を参照。
5.パート労働者とは、常用労働者のうち、
①1 日の所定労働時間が一般の労働者より短い者、
②1 日の所定労働
時間が一般の労働者と同じで 1 週の所定労働日数が一般の労働者よりも短い者のいずれかに該当する者。
パート・アルバイトとは、勤め先での呼称により分類された非正規の職員・従業員の分類の一つである。
●社会保障給付が可処分所得を継続的に押し上げ
所得からの分配に加えて、政府による社会保障給付などを通じた所得の再分配が可処分所得
を押し上げた可能性もある。統計の利用が可能な 2012 年 1 - 3 月期までの可処分所得と主要項
56
第 1 節 我が国経済の立ち位置
第 1 - 1 - 35 図 可処分所得の推移
社会給付が可処分所得の押上げに寄与
(前年比寄与度、%)
6.0
所得・富に課される経常税
社会負担
社会給付
(現物)
可処分所得(純)
勤め先収入
社会保障給付
その他
の収入
2.0
0.0
0.0
-2.0
-2.0
非消費支出
その他の経常移転(純)
営業余剰混合所得(純)
-4.0
財産所得(純)
-6.0
4.0
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
2008
Ⅱ
雇用者報酬(受取)
Ⅲ
09
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
10
Ⅲ
11
可処分所得
-4.0
Ⅳ
-6.0
Ⅰ (期)
12 (年)
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
12
Ⅳ
Ⅰ (期)
13 (年)
(備考)1.内閣府「国民経済計算」、総務省「家計調査」
、
「国勢調査」
、
「人口推計」により作成。
2.社会負担、所得・富に課される経常税、非消費支出は増加するとマイナス寄与。
3.右図は「家計調査」の総世帯の内、勤労者世帯 1 世帯当たりの可処分所得に世帯数をかけたもの。
「国民経
済計算」ベースで作成した左図の可処分所得とは定義が異なる点に注意が必要。
4.右図で使用した世帯数は、「国勢調査」を線形補完。間の期間は「人口推計」を使用している。
目の推移を見ると、雇用者報酬がリーマンショック後に大幅に減少し、その後も緩やかな増加
にとどまったのに対し、主に年金からなる社会給付(除現物)や高齢者が主な受給者となる医
療や介護の社会給付(現物)は継続的に可処分所得を押し上げ、その伸びも総じて雇用者報酬
より高かった(第 1 - 1 - 35 図)。勤労者世帯に限られるものの、2012 年以降の可処分所得の
推移を家計調査で確認すると、その後も社会保障給付が総じて可処分所得を押し上げているこ
とが分かる。一般に、退職した高齢者を含めれば社会保障給付の可処分所得への寄与はより高
まると見られる。政府による年金などを通じた所得再分配が高齢者の可処分所得を継続的に押
し上げてきたことが先に見た高齢者消費の強さの背景にあったと考えられる。
(3)住宅投資
家計部門では個人消費の底堅さが目立ったが、住宅投資も底堅く推移してきた。住宅取得支
援施策の推移とともに、その動向を振り返る。
●住宅着工は住宅取得支援施策と復興需要の下支えで底堅く推移
住宅着工戸数は、リーマンショックの影響で 2008 年 10 - 12 月期から約 1 年間にわたって大
幅減が続き、リーマンショック後の底となった 2009 年 7 - 9 月期の住宅着工戸数はリーマン
57
1
章
2.0
社会給付
(除現物)
第
4.0
(前年比寄与度、%)
6.0
第 1 章 経済財政の現状と課題
ショック前の 64%の水準にまで落ち込んだ(第 1 - 1 - 36 図(1)
)65。その後は、住宅ローン金
利が低水準で推移する中で、住宅着工戸数は底堅く推移している。2009 年には住宅ローン減
税の拡充、2010 年にはフラット 35S の金利下げ幅拡大などの住宅取得支援施策がとられたこと
も住宅着工を下支えした。2011 年半ば以降は復興需要などで回復ペースがやや高まっている。
ただし、その回復テンポは総じて緩やかであり、2012 年 10 - 12 月期の水準はリーマンショッ
ク前の 8 割程度にとどまっている。
●住宅取得層の減少などを背景に住宅投資の回復テンポは緩やか
こうした住宅投資の水準の低さが日本に特有の現象なのかを確認するため、2008 年を 100 と
した住宅投資の指数の推移を主要先進国と比較してみよう。ドイツでは 2009 年以降、景気が
総じて底堅さを維持してきたことや堅調なリフォーム需要を背景に、住宅投資は 2010 年以降
回復基調にあり、2008 年の水準を回復している。これに対し、住宅バブルを経験したアメリ
カでは 2005 年、英国では 2007 年をピークに住宅投資が大規模な調整過程にあることもあり、
回復力は依然として弱く、水準も 2008 年を下回っている。
住宅バブルの崩壊を経験していないにもかかわらず、2008 年以降の日本の住宅投資の回復
テンポはアメリカや英国と大きな違いは見られない(第 1 - 1 - 36 図(2)
)
。この背景の一つ
として、日本では主な住宅取得者層である 30〜39 歳の人口が 2006 年をピークに減少している
ことが挙げられる(第 1 - 1 - 36 図(3)
)
。世帯当たり人数の減少に伴う世帯数の増加が住宅
着工を押し上げる面もあるものの、住宅取得者層の人口の減少は中長期に住宅着工を押し下げ
る要因となると考えられる。2013 年に入ってからは、景況感の改善が進むとともに、住宅ロー
ン金利の先高感、地価や住宅価格の下げ止まり、消費税率の引上げを見据えた駆け込み需要の
一部顕在化などから住宅取得マインド 66 は改善が続いている。こうしたことを背景に、短期的
には住宅投資の回復テンポが高まる可能性もある。一方、大震災以降、建設技能労働者の不足
が続いており、住宅投資の供給制約とならないかについても注意が必要である。
注 (65)住宅着工が 2007 年 7 - 9 月期に年率 40 万戸超の大幅減となったのは建築基準法改正の影響である。2006 年の構造
計算書偽装事件を契機として、建築物の安全性の確保を図るため、建築確認・検査の厳格化、建築士などに対す
る監督・罰則の強化などの措置を講じるため、建築基準法が改正された(2007 年 6 月 20 日施行)
。
(66)例えば、「今後 1 年間が不動産を購入するのに良い時か悪い時か」を示す不動産購買態度指数(日本リサーチ総合
研究所「消費者心理調査」)は、106(2012 年 12 月)から 116(2013 年 4 月)に上昇し、住宅展示場来場者組数(内
閣府による季節調整値)は、22 万人(2012 年 12 月)から 25 万人(2012 年 5 月)に増加した。
58
第 2 節 金融政策のレジーム転換と物価動向
第 1 - 1 - 36 図 住宅投資の動向
住宅建設は底堅く推移
(1)住宅着工戸数
(年率、万戸)
80
70
総戸数
120
第
(年率、万戸)
140
1
章
貸家(目盛右)
60
100
50
80
40
60
30
40
20
20
0
0
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ(期)
2007
08
09
10
(2)主要先進国との住宅投資の比較
12
11
13(年)
(3)住宅取得年齢人口の推移
(2008 年=100)
200
(百万人)
129
(百万人)
21
アメリカ
180
160
10
分譲(目盛右)
持家(目盛右)
日本
総人口
140
20
128
120
19
100
18
80
127
60
40
ドイツ
30 ∼ 39 歳人口
(目盛右)
17
英国
20
0
2000
02
04
06
08
10
(年)
12
126
2005 06
07
08
09
10
11
16
12(年)
(備考)1.国土交通省「建築着工統計」、OECD. Stat、総務省「人口推計」により作成。
2.(1)は季節調整値。
3.(3)における 30∼39 歳人口は、国勢調査結果により補間補正を行った総人口を、各年 10 月 1 日の年齢階級
別の推計人口の比率で按分したもの。
第2節
金融政策のレジーム転換と物価動向
本節では、まず、金融政策のレジーム転換を中心に日本銀行のデフレ脱却に向けた取組を整
理する。次に、緩やかな物価下落が続いてきた我が国の物価動向を概観し、デフレがもたらし
59
Fly UP