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子どもの発達と病気(3) - 独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所

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子どもの発達と病気(3) - 独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所
子どもの発達と病気(3) 西牧 謙吾
この講義では、これから子どもが育っていく世の中がどのようになるのかがテーマです。
{合計特殊出生率の推移
{合計特殊出生率変化の要素分解
戦後の出生率安定期に何が起こったか
•
総人口が増加:出生率は人口置換水準前後の2.0∼2.2程度で安定、平均寿命が伸長
•
若年労働力が増加し,経済高度成長が持続
•
雇用者割合が増加し,日本型雇用慣行(年功序列,長期雇用)が普及
•
都市人口が増大し,都市郊外に住宅団地が形成(職住分離)
•
核家族化,専業主婦化が進行
•
高等教育が普遍化
子育ての方向性
夢や,夢を共有する社会全体での連帯感を持ちやすく,また,その夢に向かって努力す
れば報われると思える,熱い時代
合計特殊出生率の推移
戦後2回目の出生率低下は,晩婚化の進行
未婚女性の理想のライフコース役割分業型家庭生活の崩壊
コホート別の女子労働力率
子どもに何が起こっているか?
戦後、第4の波が来ている
少年犯罪の推移
1980年代後半∼現在までの女性と子育て
{ 雇用者化,生活空間の郊外化が,母親に子育て負担を集中させた
{ 仕事と家事・育児の両立を志向する女性には,極めて負担が重かった
{ 専業主婦にとっても,結婚の現実は「優雅」なものではなかった
{ 学(校)歴偏重社会は,母親にも大きな負担をもたらした
{ 結婚に積極的な夢や希望を感じられなくなってきた
{ 画一的・固定的な社会の状況が結婚や家庭の魅力をなくし,子育ての負担感を増してきた
子育て環境に影響を与える要素
家族・地域・職場・学校
家族形態が変化してきた
家庭に対して最も求める役割・
最も低下している役割
老親扶養に対する意識
離婚件数および離婚率の年次推移
様々な家族形態が出現
{ 母子家庭
{ 父子家庭
{ シングルマザー(非嫡出子)
{ 養子家族(キメラ家族)
民法上の問題
世界的には、様々な試み
子どもが生まれるまで
男女共同参画社会における男性の在り方
産む権利を,女性が主張し始めた
リプロダクティヴヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康/権利)の概念
{ 1994(平成6)年に開催された国際人口・開発会議において提唱
{ この概念は,子どもを産むか産まないか,産むとすればいつ,何人産むかを女性が自己決定
する権利を中心課題とし,広く女性の生涯にわたる健康の確立を目指す
{
女性は,妊娠や出産の仕組みが備わっている性として,妊娠・出産期のみならず,思春期・
更年期など生涯を通じて男性とは異なる健康上の問題に直面し,心身や生活の状況が大きく
変化し得る。こうした女性特有の問題を踏まえ,リプロダクティヴヘルス/ライツの概念を
踏まえた女性の生涯を通じた健康支援を図っていくことが重要である。
{ また,子どもを持つ、持たない,産む、産まないの決定については様々な議論が存在するが,
妊娠・出産が女性の心身に大きな影響を及ぼし,また,その人生設計を大きく左右し得るも
のであることにかんがみれば,女性の自己決定は十分尊重されるべきである。
{
同時に,その際には,女性の妊孕性(妊娠しやすさ)は,個人差はあるが一般には,年齢
が高くなれば低下が見られ,出産できる年齢にも一定の限界があることなどにかんがみ,
「望
むときに出産できる」ために必要な情報が適切に提供されることが求められる。
子どもの価値
意図しないで生まれた子どもの出現率
子どもの発達理論で、母子関係の発達理論は、いっぱいあるので、父親の役割に言及したお話
しします
家族のパワー構造(特に父子関係から)
ティンバーローン財団(テキサス州ダラス)の健康家族研究計画研究結果(中産階級の家庭調
査)
¾ 健康な家族ではパワーの秩序づけが明瞭で、しかも最大の指導権は父親がもち、二番目にパ
ワーのある母親との間に良好な協調関係がある
¾ その上両親と子どもたちの間には、明確な境界線があって、子ども中心の家族の姿勢はない
¾ しかし、子どもたちは自分たちの意見が黙殺されたり、のけ者にされることなく、家族の決
定に加わることができるので、パワーが小さいことに不安を感じることも、防衛的に両親と
競い合うこともない。
重度障害型の家族の場合
¾ 父親がパワーをもたず、受動的で、主導的な役割が果たせなくなると、それだけ母子結合は
強くなりやすく、このような家族内人間関係のなかで子どもに明らか精神障害が認められる
例では、その多くが男子であった
¾ また子どもが両親より大きな支配力をもっている場合に、子どもに対して両親は同胞のよう
な立場をとり、家庭内には世代間の境界がなくなって、母親にとって父親も一人の子どもの
ようになる結果、両親の協調関係はなくなり、家族関係は秩序のない混沌とした精神心理的
構造に陥ってしまっている
¾ もっとも好ましくない家庭では、弱い父親と母子の強い結合が顕著で、子どもは青年期に至
ってもエディプス的愛着の成熟過程から脱しきれず、近親相姦の葛藤に苦しむような状態で
ある。
¾ 親が子どもの暴力的な要求に屈したり振りまわされたりするのも、こういう家族関係の結果
であり、精神分裂病圏の患者の家族にも、この型が多いと指摘している
中度障害型の家族の場合
¾ 世代間の境界はあっても、親子間でパワー関係が競争状態になっている
¾ その一つのタイプに、父親が権威的で頑固な支配をし続け、硬直化したパワー構造を維持し
ている場合がある。家庭の中の整理整頓や礼儀作法など、秩序は厳格に守られようとする雰
囲気はあるが、自発的な楽しい家族間の団欒はない。
¾ 子どもは父親に対して拒否的ないし逃避的な上に、母親も父親と同じような傾向を示し、あ
るいは協調ではなく競争的な力関係の葛藤をもっている。このような家族では、子どもが二
つのタイプの障害を示しやすい。
¾ その一つは、子どもの心理的エネルギーが家庭の内側に求心的に向かう場合で、彼らは自ら
の感情の表出を恐れて抑圧し、非社会的で自発性の乏しい行動様態を身につけて、神経症の
状態に陥りがちとなる。場面鍼黙、登校拒否、拒食症や過食症の青少年は、こういう状況か
ら生まれやすい。
¾
二つめのタイプは、子どもの行動エネルギーが家庭の外側に遠心的に向かう場合で、非行
などの反社会的な不適応行動を示すものであるが、この行動パターンに陥りがちな子どもの
両親の方が、相互にパワー葛藤を強くもっており、相手を自分の意志どおりに操作しょうと
競い合う緊張関係にあることを、観察結果は明らかにしている。
この調査の教訓
¾ このような家族システムにおける人間関係のなかで、父親のパワー機能が支配型ではない主
導型の場合、子どもの精神保健に関して健康や適応の状態がよく、神経症や精神障害と診断
されることがない。
¾家族構成員の間には、世代の壁や問題解決に関して指導的役割を果たすためのパワーの差が
あるほうが、精神心理的に健康で適応がよい
¾ 従って、おそらく男女を問わず子どもたちが、この時期の発達課題ともいえる葛藤を処理す
る過程(フロイトのエディプス・コンプレックス※)で必要とする要因は、結局のところ子
ども自身が両親から無条件に愛されているということと、両親が相互に信頼し合い共感し合
っているということを実感することになろう。(※両親が相互に愛し合っていることが、一
時的に同性の親に嫉妬や敵意を抱くこと)
¾ この研究が、両親の協調や連合関係と、両親と子どもの間の世代境界が明確に存在すること
を、父親のパワーとともに健康家族の最重要の要件としていることを再確認しておく
今の子どもに起こっていること
保育所の風景から
¾ 保育者や教師と1対1の関係を求める傾向が強く、その傾向が強い子ほど友達と共有し会う時
間を楽しめない
¾
理由:子どもたちはそれぞれが自分の親や祖父母など家族の大人や、地域社会の大人との個
人的関係に満足していない。そういう大人たちに、十分に依存し、愛され大切にされてきた
という経験や実感が不足している
z
思春期や青年期に至っても同じ状況では?!
このようなことは、近年の青少年が示す親やそのほかの他者への殺傷事件などによく反映さ
れているのでは?
子どもは自分が、保護者としての大人から、十分に大切に扱われ育てられてきたという体験
や実感がないうちは、自律的に他者と交わることができないし、相手の立場を思いやりなが
ら、しかも相手と楽しく交わるなどという自立的な行動は、決してとることはできない
¾
¾
仲間と遊び、人間を信じるためには
{ 子どもに限らず人間が、他者と安心して交わるためには、相手を基本的なところで信じるこ
とができるように、育てられてこなければならない
{ そのために、幼少期からの年上の子どもに導かれての友達や仲間との遊びが、 仲間がいた
から、こんなに楽しい時間を共有することができたのだという感情を、毎日友達と分かち合
うことが、非常に重要である
仲間と遊び、人間を信じるためには
{ 自分一人ではとうてい味わうことができない喜びや悲しみを、仲間がいてくれたから体験で
きたという感情を遊びをとおして共有し合うことは、子どもそれぞれが他者からありのまま
を承認され受容されること、裏を返せば他者のありのままを尊重し許容することを、各自の
人格のなかに刷り込んでいくことになる
{ 人間が自然なコミュニケーションの機能を身につけていくためには、このような幼少期が、
きわめて重要な意味をもっている
母なるもの
子どもは家庭という場で、日々家族によって、安らぎ、憩い、くつろぎというものを十分に
与えられ、「そのまま」でいることを受容されることが必要である。いわば、家庭のなかに
「包み込まれる」ことが大切。
{ こういう養育や生活の環境が幼少期に十分に与えられるということで、子どもに基本的な自
分の価値を実感させ、自信を育ててやれる。しつけが行われるのは、その後でなければなら
ないのです。
{ 母なるものは、子どもを基本的にはありのままでよいと「包み込む」ように承認するもので
すが、そのことを実現する育児は、できるだけ子どもが望んでいるようなやりかたで愛や育
児の行動を与えてやること。おんぶといえばおんぶを、抱っこといえば抱っこを、おっぱい
といえばおっぱいを、遊んでほしいといえば遊びを、それぞれ与えてやるのがよいと思いま
す。最初からこちらが望んでいるやりかたで、愛しているつもりの育児をするということで
はない。
{
父なるもの
{ 母なるものの働きで、子どもが家庭において安らぎ、くつろぎ、憩いの体験を十分に与えら
れ、自尊や自己肯定の感情を豊かに育てられると、初めて父なるものが子どもの心のなかに
働きやすくなる
{
{
{
{
父性とは、子どもに規則や規律を教える働き。人間は社会的な存在であるから、自分たちが
構成する社会の文化的な要請に従って、年齢相応の役割、責任、義務というものを自覚して
行動しなければならないということを、子どもに教え導く親の義務、責任、役割。
子どもは自分が十分に愛され、大切にされているという実感や自覚が芽生える前に、あれこ
れ禁止や強制の命令を受けても、そのことに積極的に意欲的に取り組むことはできません。
自尊心や自己肯定の感情がなければ、相手の指示や命令に従うことは、屈辱的なことです。
まして、十分な信頼や愛着を抱くことができていない相手のいいなりになるということは、
自分を卑下することになり、長い年月のうちには、人格の破壊にもつながる可能性がある。
父性性は、いわばしつけの重要な部分を受け持つものです。しつけの重要な原理は、子ど
もの自尊心を傷つけることなしに、社会的・文化的行動に積極的に取り組むことができるよ
うに導くということです。
しつけに限らず、子どもを育てるということは、まず母なるもの、それから父なるものとい
う手順が大切
幼児の遊びに見る家庭と家族
{ 子どものままごと遊びや家族遊びが成立しなくなった
¾ 母親役は・・・?
¾ 父親役は・・・?
¾ 人気の役は・・・?
今後の特別支援教育のあり方(最終報告書)の意義
地域の中で障害児の「子育て」を見れば
{
{
障害児が生まれた家族のSpecial Needsとは?
「子育てがつらい」家族には、
•
まず安心。知りたいことを、見通しをもって語る。最後まで付き合う気持ちが大切。
•
専門的な子育て相談(保健師、児童委員、子育て支援センター等の相談)から親の会まで。
専門職の姿勢、親の姿勢。
{
発達を保障する専門機関(保健所、児童相談所、福祉事務所、保育所、幼稚園、各種通園
施設、心身障害児総合通園センター)を上手に利用する
親として、この子の障害との付き合い方
{
早期療育。どうにかできる部分とどうにもできない部分。
{
障害像全体を管理できる専門家(医師?)の確保(難しい!)
{
家族の生活と療育の両立
{
在宅、通所(かつては入所)、レスパイト付
{
上手な制度利用も視野に入れて、決して金銭的にも損をしないように!
情報は、親の会。市町村により、行政の担当者により ち・が・う!
地域療育システム
{ 少子化の中、障害児数は実質的に減っていません。むしろ、重度・重複化が進んでいます。
{ 児童福祉の分野では、昭和50年代から、保健・福祉・医療が連携して、第1次、2次、3次
機関が重層構造を持ち、一定の圏域をカバーする原則的モデルを提起してきました。
{ しかし、教育は、この中に想定されていません。
{ 平成15年、特別支援教育の発想の中で、もっと大きなシステムを考えています。
では、教育の中に親は何を求めているのでしょうか?
{ すべての障害児は、基本的に義務教育を受けます。
{ 就学時、その障害はかなり多様化しています。
{ どのような家庭で育ち、どのような地域で「療育」を受けてきたかで、その児の発達が異な
ります。
{ 時代が、大きく動いています。
{ その中で、個々のSpecial Educational Needsに応じて教育を進めることが求められてい
ます。
{ 時代が進むにつれて、新たな障害を教育の中に取り込む必要に迫られています(LD、ADHA、
高機能自閉症等)。
個別の教育支援計画
−障害のある子どもを生涯にわたって支援−
機関の役割、職種の役割
{ 時代は、密かに動いている
{ 「LD、ADHA、高機能自閉症」ではなく、なんとなくクラスからはみ出している子どもを、誰
が対応しているのだろう?
{ 誰を巻き込んで、一緒にやるか?
¾ 小中学校であれば、養護教諭、そういう子どもに興味のある教諭。
¾ 教育センターの心理職などなど
おわり
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