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中城湾港の環境の現状と課題について 平成 18 年3月
平成 17 年度 第2回 中城湾港港湾環境保全計画検討委員会 資料−4 中城湾港の環境の現状と課題について (生物生息環境・良好な触れ合い環境の解析編) 平成 18 年3月 沖縄県土木建築部港湾課 目 次 第 1 章 生物生息環境の解析手法の方向性について.................................. 1 1 はじめに ................................................................ 1 2 生物とその生息環境の解析................................................. 4 2.1 中城湾港全体を対象としたマクロ的な視点での生物生息環境の把握 .......... 4 2.2 代表点での詳細な生物生息環境の把握.................................... 8 3 区分分けの検討.......................................................... 20 3.1 生物生息環境の支配要因............................................... 21 3.2 貴重種及び水産上重要な種の分布状況................................... 22 3.3 生物の生息状況と支配要因の重ね合わせ................................. 23 4 指標種の検討 ........................................................... 26 4.1 清浄な場を示す指標種の候補........................................... 27 4.2 汚濁指標種........................................................... 28 4.3 レッドデータブック等に記載されている貴重種........................... 31 4.4 主な出現種........................................................... 33 4.5 多様性指数........................................................... 34 第 2 章 良好な触れ合い環境の解析・検討の方向性について......................... 36 1 はじめに ............................................................... 36 2 住民アンケートの実施.................................................... 37 3 ハード整備にあたっての指針.............................................. 42 3.1 人工海浜 ............................................................ 42 3.2 人工干潟 ............................................................ 43 3.3 人工海浜及び緑地の造成に係わる検討................................... 44 3.4 人工干潟及び野鳥園の造成に係る検討................................... 45 4 環境利用学習に向けた利用の方向性........................................ 46 4.1 環境利用の方向性の検討、設定......................................... 46 5 環境利用の際のルール作り................................................ 52 第1章 1 生物生息環境の解析手法の方向性について はじめに 科学的に妥当なアクションプランを提示するためには、現状を正しく把握し、課題を 適切に抽出する必要がある。 広域な中城湾港において、環境上の課題を適切に抽出し、アクションプランを実施す るためには、中城湾港全体を対象としたマクロ的な視点と、代表地点を対象としたミ クロ的な視点が必要である。また、地域ごとに生物の生息状況は異なり、それらを考 慮してアクションプランを策定する必要がある。 そのため、アクションプランの策定にあたっては、①生物とその生息環境、②区分分 けの検討、③指標種の検討が必要となる。 1 1.現状 目的:資料調査により過去からの傾向を把握し、現地調査により最新の環境現況を把握する。 さらにヒアリング調査により、瞬時値である現地調査結果を補完し、現状を把握する。 ①資料調査 過去の現地調査結果の整理 ②現地調査 平成 17 年度現地調査結果、平成 18 年度現地調査結果を整理する。 (流末部及びその左岸・右岸でのメガロベントス、マクロベントス調査等) ③ヒアリング調査 地域住民、漁業従事者、行政担当者へのヒアリングにより、現地調査だけでは把握が困難 な情報として、水産資源等の状況の変化等を把握する。 2.課題 目的:現状の生物生息環境に係る課題を抽出する。 3.中城湾港における生物生息環境の解析 目的:港湾環境保全計画の策定以後に海域環境(生物生息環境)のモニタリングを行うにあたって、海域環 境の指標となる指標種の検討を行う。また、指標種の検討に当たっては、生物の生息環境が底質等の 生息環境に依存することを踏まえ、中城湾港の区分分け(ゾーニング)、生物の生息環境(水質、底 質等)と生物生育・生息種の関係について解析する。さらに、貴重種生息場の保全の検討を将来の水 環境の変化を踏まえたインパクトレスポンスフローによる解析を行い、環境保全目標に適合するかを検討する。 平成 16 年度 現況 生物の生息状況を把握するための解析 ①生物とその生息環境の解析 (一部、沖縄総合事務局資料を利用) 将来の水環境の予測結果 平成 29 年度 平成 17、18 年度現地 調査結果をもとに、 貴重種のみならず普 通に見られる種(代 表種)の生息環境を 把握する。 将来 ⑤インパクトレスポンスフローによる解析 水環境の将来予測結果を踏ま えた生物生息状況の将来予測 アクションプランの例 ⑦貴重種生息場の保全の検討 ・港湾計画で定められている事業実施区域 以外の海域における貴重種の生息環境を 保全する方策を検討する。例えば、海面 開発の抑制等。 ④生物の生育・生息状況(現況) ・生物の多様性等 ②区分分けの検討 生物の出現種・数はそ の生息環境に依存す る。そこで、海域環境 (特に、水環境、底質 環境)に応じ、海域の 区分(ゾーニング)を 行い、それぞれの区分 の特徴を整理する。 ③指標種の検討 (一部、沖縄総合事務局資料を利用) ・劣化した海域(区分)における海域環 境回復を示す指標種の検討 ・良好な海域(区分)における海域環境 維持を示す指標種の検討 ⑥生物の生育・生息状況(将来) ・生物の多様性等 イボウミニナ カンギクガイ イソハマグリ 環境保全目標 生物多様性の保持・回復 フィードバック ホソウミヒルモ ニライカナイゴウナ 図 1-1 環境の現状と課題に係る検討スキーム(生物生息環境) 2 ① 水質・底質汚濁に関する影響 生物への影響内容 水中光量の 低下 土地改良法 農業集落排水処理 植物の成長 阻害、枯死 プランクトン の発生増加 葉上への浮 泥堆積 公共下水道処理 水質汚濁防止法 下水道法 住民生活 (一般家庭 排水、公共 排水) 第二次生産 活動 (工場、食品 加工場等か らの排水) 水質汚濁防止法 海 域 の 環 境 浄 化 機 能 プランクトン 死骸の沈降 浮泥の堆積 生態系バラ ンスの変化 競合種、捕 食種の増加 水質の富栄 養化 生育・生息 数の減少 水質汚濁防止法 家畜排せつ物の管理の適正化 及び利用の促進に関する法律 畜産 (豚舎等から の排水) 底質の富栄 養化 底質の貧酸 素化 底生生物の 生息阻害、 致死 硫化水素の 発生 水質汚濁防止法 魚類の酸欠 海面養殖 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 有害物質の 水質汚染 有害物質の 蓄積 底生生物の 生理的阻 害、繁殖阻 害、致死 ゴミ不法投棄 農薬取締法 施設管理 (ゴルフ場、 運動場等) ② 泥 土 (赤 土 )流 出 、漁 業 に 関 す る 影 響 降 雨 (大 雨) 生物への影響内容 泥 土 (赤 土) 流出 裸地の存在 海 水 の濁 り 水中光量の 低下 植物の成長 阻 害 、枯 死 沖縄県赤土等 農地の荒廃 魚類の酸欠 流出防止条例 土地造成 葉上への浮 泥堆積 農業活動 (農地) 浮泥の堆積 施設管理 (ゴ ル フ場 、 運動場等) 競 合 種、捕 食種の増加 生態系バラ ンスの変化 堆積土の巻 き上げ 波浪 特定種の乱 獲 生 育 ・生 息 数の減少 漁業活動 漁具による 生息場の撹 乱 水産資源保護法 ③ 油脂類流出に関する影響 植物の成長 阻 害 、枯 死 油脂類の流 出 船舶活動 底生生物の 生 息 阻 害、 致死 油脂類の付 着 、堆 積 底生生物の 生 息 阻 害、 致死 海洋汚染及び海上災害の防止 に関する法律 影響発生源 海域での変化 保全区域での変化 図 1-1 環境の現状と課題に係る検討スキーム(インパクトレスポンスフロー) 3 2 生物とその生息環境の解析 中城湾港という広い海域における「生物 とその生息環境」の把握は、以下の 2 つ ①生物とその生息環境の解析 (一部、沖縄総合事務局資料を利用) の視点に基づき実施する。 ・中城湾港全体を対象としたマクロ的な 視点での生物生息環境の把握 ・代表点での詳細な生物生息環境の把握 平成 17、18 年度現地 調査結果をもとに、 貴重種のみならず普 通に見られる種(代 表種)の生息環境を 把握する。 2.1 中城湾港全体を対象としたマクロ的な視点での生物生息環境の把握 (1) 生物の生息に支配的な要因 中城湾港全体を見て、マクロ的に生物の生息環境を区分する場合に、支配的な要因と しては以下の 4 項目が考えられる。 表 1-1 中城湾港の生物生息環境の支配要因 支配的な要因 種類 水質 海域、汽水域 生息基盤 サンゴ、藻場、砂、礫、泥 水深 潮間帯、潮下帯 背後陸域の状況 自然護岸、緩傾斜型護岸、直立護岸 (2) 生物生息状況のイメージ 支配要因及び実際の生物生息状況を踏まえ、中城湾港をマクロ的に区分し、それぞれ の生物生息状況について図 1-3∼1-5 に示すイメージ図(泡瀬地区の事例)を作成し現 状を把握する。 4 5 図 1-2 生物生息状況(+1.2m以上) 6 図 1-3 生物生息状況(+0.5∼1.2m) 7 図 1-4 生物生息状況(+0.5m以深) 2.2 代表点での詳細な生物生息環境の把握 (1) モデル河川の位置及び流域の特徴 背後陸域の土地利用状況等を踏まえ、平成 17 年度において 43 ある河川のうち 9 河川 (以下、モデル河川)で現地調査を実施している。モデル河川の位置を図 1-6 に、モ デル河川の流域の特徴は表 1-2 に示すとおりである。 N10 N15 N20 S4 S9 S10 S13 S21 S23 :市郡界 :流域界 :町村界 :河川・小排水路 図 1-5 流域区分及び9河川の位置 8 :港湾区域 表 1-2 9 河川流域の特徴 番号 市町村名 河川・排水路名 特徴 N10 うるま市 農業排水路 汚濁負荷大、畑は多いが自然が少なく下水道がない。 N15 沖縄市 N20 北中城村 S 4 中城村 S 9 西原町 小波津川 S10 西原町 兼久川 S13 旧与那原町 雨水排水路 自然が少なく市街化しており、下水道接続率が低い。 S21 旧佐敷町 農業排水路 流域小、畑が多く下水道がない。 S23 旧知念村 知名大川 泡瀬第一雨水幹線 汚濁負荷大、市街化しており、悪臭の苦情もある。 雨水排水路 土地利用は平均的だが、下水道接続率が低い。 北浜区雨水排水路 汚濁負荷大、畑が多く下水道接続率が低い。 流域大、負荷量大、耕地も多く悪臭の苦情もある。 負荷量大、悪臭や濁水苦情がある。 土地利用は平均的であるが、農業集落排水で処理 (2) 代表点における生物の出現状況と生息環境 ① 概要 本調査を実施した 22 調査地点(河川流末部、海浜部、河川汚濁流入点)におけるメ ガロベントス出現種データを用い、統計的手法(TWINSPAN)によって場の区分を行っ た。その結果、調査地点は表 1 に示すような I∼Ⅳの 4 つのグループに区分された。 グループ I∼Ⅳにおける底質状況及び主な出現種を表 2 に示す。グループⅠは、底質 の砂・礫分が多く、グループⅡとグループⅢはシルト・粘土分が多い傾向にあった。 グループⅢは下水臭が強く、COD が高い傾向にあった。河川汚濁流入点は全てグループ Ⅳとしてまとまった。 表 1-3 TWINSPAN による分析結果 レベル1:ヤドカリ亜目が確認された。 TWINSPAN レベル2:アマオブネガイ、オキナワイシ による区分 ダタミガイ、ヨウラクレイシガイダマシ、 の指標 シマベッコウバイ、ミナミクロフジツボが 比較的多く確認された。 S4 海 浜 S21 S23 海 海 浜 浜 調査地点 グループ Ⅰ S4 河 川 流 末 レベル2:アマオブネガイ、オキナワイシダタミガイ、ヨウラクレイシガイダマシ、シマ レベル1:ヤドカリ亜目 ベッコウバイ、ミナミクロフジツボがあまり確認されなかった。 が確認されなかっ た。 レベル3:フタバオサガニ、イボ レベル3:フタバオサガニ、イボウミニナ、マルア ウミニナ、マルアマオブネが比較 マオブネがあまり確認されなかっ 的多く確認された。 た。 S21 S23 N10 N15 N20 河 河 海 海 海 川 川 浜 浜 浜 流 流 末 末 S9 海 浜 Ⅱ N10 S10 S13 N15 N20 河 海 海 河 河 川 浜 浜 川 川 流 流 流 末 末 末 Ⅲ 9 S9 河 川 流 末 S10 S13 N15 河 河 河 川 川 川 流 流 汚 末 末 濁 流 入 点 S9 河 川 汚 濁 流 入 点 S10 S13 河 河 川 川 汚 汚 濁 濁 流 流 入 入 点 点 Ⅳ 表 1-4 グループごとの底質状況と主な出現種 グループ I Ⅱ Ⅲ Ⅳ 調査地点 S4(河川流末) S21(河川流末) S23(河川流末) S4(海浜) S21(海浜) S23(海浜) N15(河川流末) N20(河川流末) S9(河川流末) S10(河川流末) S13(河川流末) S10(海浜) S13(海浜) N10(河川流末) N10(海浜) N15(海浜) N20(海浜) S9(海浜) N15(河川汚濁流入点) S9(河川汚濁流入点) S10(河川汚濁流入点) S13(河川汚濁流入点) 底質状況 主な出現種 【性状】砂、サンゴ片等 【泥色】黄褐、オリーブ黄、灰オリーブ等 【臭気】無臭、微下水臭、下水臭 【泥・シルト分】0.9∼7.9% 【COD】1.5∼10.0 mg/g ヤドカリ亜目 アマオブネガイ オキナワイシダタミガイ ヨウラクレイシガイダマシ シマベッコウバイ ミナミクロフジツボ等 【性状】泥、砂泥、砂、礫、サンゴ片等 【泥色】緑黒、青黒、黒、暗オリーブ、オリーブ黒等 【臭気】無臭、微下水臭、下水臭、強い下水臭 【泥・シルト分】4.7∼43.1% 【COD】4.3∼15.4 mg/g ヤドカリ亜目 フタバオサガニ イボウミニナ マルアマオブネ ゴカイ綱等 【性状】泥、砂泥、砂、礫、サンゴ片等 【泥色】暗オリーブ、灰オリーブ、オリーブ黒、黒等 【臭気】無臭、微下水臭、下水臭 【泥・シルト分】2.7∼33.7% 【COD】3.0∼10.8 mg/g ヤドカリ亜目 オキナワハクセンシオマネキ ツノメチゴガニ ゴカイ綱等 底質調査を実施していない。 サカマキガイ ユスリカ科 ② 地点別 各調査地点における生物生息環境の把握にあたって、生息状況のイメージを以下の表 に示す。当該地点の状況を環境学習の資料としての利用も可能である。 10 表 1-5 河川流末の特徴(N10) 調査地点名 N10 河川流末 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 臭気 主な底質 生物の生息環境 特徴的な場所 主な出現種及び出現場所 出現種類数 弱下水臭 弱硫化物臭 礫混じり砂泥 砂泥上に礫が点在 マングローブ 自然石護岸 流れ込み(コンクリート) リュウキュウウミニナ(全域) フタバカクガニ(転石・礫下) ・ 23 種類 調査地点模式図 イタボガキ科 ヘナタリガイ 砂泥上 に礫 (全域) リュウキュウ ウミニナ 礫混じりの砂泥 礫混じりの砂泥 砂泥上に礫 × (礫下) フタバカクガニ アオノリ類 アオノリ類 マングローブ マングローブ 凡 例 : 植生 : 水の流れ : コンクリート護岸 : 水の流れ(流量少) : 自然石護岸 : 消波ブロック : 汚濁した場所 : 石積み : 水際 : 岩盤 11 × :マクロベントス採取地点 表 1-6 河川流末の特徴(N5) 調査地点名 臭気 N15 河川流末 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 主な底質 生物の生息環境 特徴的な場所 主な出現種及び出現場所 出現種類数 下水臭 細砂 黒変した粗砂 礫 消波ブロック コンクリート護岸 黒変した水のよどみ ミナミコメツキガニ、ツノメチゴガニ、 ゴカイ綱、ミミズ綱(砂中) ・ 15 種類 調査地点模式図 凡 例 : 植生 : 水の流れ : コンクリート護岸 : 水の流れ(流量少) : 自然石護岸 : 消波ブロック : 汚濁した場所 : 石積み : 水際 : 岩盤 12 × :マクロベントス採取地点 表 1-7 河川流末の特徴(N20) 調査地点名 臭気 N20 河川流末 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 弱下水臭 礫混じり粗砂 砂泥 泥 黒変した水のよどみ コンクリート護岸 流れ込み(コンクリート) ミナミアシハラガニ、ヒメシオマネキ、 ツノメチゴガニ(マウンド状粗砂中) ・ ゴカイ綱(全域) 主な底質 生物の生息環境 特徴的な場所 主な出現種及び出現場所 出現種類数 ・ 14 種類 調査地点模式図 凡 例 :植生 :水の流れ : 水 の 流 れ (流 量 少 ) : コンクリー ト護 岸 :自然石護岸 : マ クロベ ントス 採 取 地 点 : 消 波 ブロック : 汚 濁 した 場 所 :石積み :水際 :岩盤 13 × 表 1-8 河川流末の特徴(S4) 調査地点名 臭気 S4 河川流末 ・ 弱下水臭 ・ 礫混じり粗砂 ・ 粗砂 主な底質 生物の生息環境 特徴的な場所 ・ 細砂 ・ 岩盤 ・ 黒変した水のよどみ 主な出現種及び出現場所 ・ ゴカイ綱、ヤドカリ亜目(礫混じり粗砂) 出現種類数 ・ 27 種類 調査地点模式図 凡 例 :植生 :水の流れ : 水 の 流 れ (流 量 少 ) :コンクリー ト護 岸 :自然石護岸 :マ クロベ ントス 採 取 地 点 :消 波 ブロック :汚濁した場所 :石積み :水際 :岩盤 14 × 表 1-9 河川流末の特徴(S9) 調査地点名 S9 河川流末 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 臭気 主な底質 生物の生息環境 特徴的な場所 主な出現種及び出現場所 出現種類数 弱下水臭 弱硫化物臭 砂泥上に転石 砂泥 自然石護岸 流れ込み ツノメチゴガニ(砂泥中) ゴカイ綱、ヤドカリ亜目(全域) リュウキュウフナムシ(護岸) ・ 23 種類 調査地点模式図 人工石 ミナミトビハゼ ウズラタマキビガイ 砂泥上に転石 (転石下) フタバカクガニ × 砂泥 ツノメチゴガニ ヒメシオマネキ 橋 (転石下) フタバカクガニ 砂泥上に転石 (護岸) リュウキュウフナムシ 凡 例 :植生 :水の流れ : コンクリー ト護 岸 : 水 の 流 れ (流 量 少 ) :自然石護岸 : マ クロベ ントス 採 取 地 点 :汚濁した場所 :石積み :水際 :岩盤 15 × :消 波 ブロック 表 1-10 河川流末の特徴(S10) 調査地点名 S10 河川流末 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 臭気 主な底質 生物の生息環境 特徴的な場所 主な出現種及び出現場所 出現種類数 弱下水臭 硫化物臭 コンクリート内に礫 ・ 黒変した砂利 砂泥 ・ 黒変した砂泥 コンクリート河床 流れ込み フタバカクガニ(礫間) トウガタカワニナ(黒変した砂利) ・ 15 種類 調査地点模式図 凡 例 : 植生 : 水の流れ : コンクリート護岸 : 水の流れ(流量少) : 自然石護岸 : 消波ブロック : 汚濁した場所 : 石積み : 水際 : 岩盤 16 × :マクロベントス採取地点 表 1-11 河川流末の特徴(S13) 調査地点名 臭気 S13 河川流末 ・ ・ ・ ・ ・ 主な底質 生物の生息環境 特徴的な場所 強い下水臭 砂礫 砂礫上に転石 落差工 コンクリート河床 主な出現種及び出現場所 ・ ヒメシオマネキ、ツノメチゴガニ(砂礫) 出現種類数 ・ 10 種類 調査地点模式図 17 表 1-12 河川流末の特徴(S21) 調査地点名 臭気 S21 河川流末 ・ 弱下水臭 主な底質 ・ 粗砂上に転石 特徴的な場所 ・ コンクリート護岸 生物の生息環境 主な出現種及び出現場所 ・ オキナワイシダタミガイ(転石下) ・ シロス ジフジツボ 、タテジマ フジツボ (護岸) 出現種類数 ・ 30 種類 調査地点模式図 凡 例 : 植生 : 水の流れ : コンクリート護岸 : 水の流れ(流量少) : 自然石護岸 : 消波ブロック : 汚濁した場所 : 石積み : 水際 : 岩盤 18 × :マクロベントス採取地点 表 1-13 河川流末の特徴(S23) 調査地点名 臭気 S23 河川流末 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 主な底質 生物の生息環境 特徴的な場所 主な出現種及び出現場所 出現種類数 下水臭 岩盤 礫混じり砂泥 黒変したよどみ 自然石護岸 サカマキガイ、モノアラガイ属(よどみ) ゴマフニナ(礫、護岸) ・ 19 種類 調査地点模式図 19 3 区分分けの検討 アクションプランを実施する際には、地域 ごとの特性を配慮することが望ましい。そこ で、海域の区分分けが必要となる。 区分にあたっては、生物の生息状況による 区分及びその支配要因の重ね合わせ等を実 施することにより、検討を行うこととする。 ②区分分けの検討 生物の出現種・数はそ の生息環境に依存す る。そこで、海域環境 (特に、水環境、底質 環境)に応じ、海域の 区分(ゾーニング)を 行い、それぞれの区分 の特徴を整理する。 本資料では、一例として、貴重種や水産上重要な種の分布状況や、それらの支配要因を 示した。 特に生物生息状況の支配要因としては、生息基盤、地盤高、護岸、汚濁負荷の流入状況 が考えられることから、それらを整理した。 これらを整理することにより、背後陸域におけるアクションプラン実施にあたっての優 先度検討の一材料になると考えられる。 20 3.1 生物生息環境の支配要因 凡例 :市郡界 :自然海岸 :町村界 :直立型護岸 :港湾区域 :傾斜型護岸 :サンゴ礁 :混成型護岸 :藻場 :干潟 出典.「中城湾港泡瀬地区環境保全・創造検討委員会委員会資料(2004)」「海図第 6508 号」 「ジュゴンと藻場の広域的調査」「中城湾港(泡瀬地区)環境現況調査業務(1996)」他 図 1-6 支配要因重ね合わせ(生息基盤、地盤高、護岸、汚濁負荷の流入状況) 21 3.2 貴重種及び水産上重要な種の分布状況 凡例 :市郡界 :町村界 :港湾区域 :トカゲハゼ分布箇所 :クビレミドロ分布箇所 :オカヤドカリ分布箇所 :ウミヒルモ類 分布箇所 :ニライカナイゴウナ 分布箇所 :ヒジキ :オサガニヤドリガイ 分布箇所 :リュウキュウズタ :鳥類分布箇所 出典.「中城湾港泡瀬地区環境保全・創造検討委員会委員会資料(2004)」 「中城湾港[新港地区]水路部周辺鳥類調査(平成 14 年) 「中城湾港新港地区トカゲハゼ生息地の試験造成地追跡調査」(平成 16 年)他 図 1-7 生物生息状況の重ね合わせ(貴重種、水産上重要な種) 22 3.3 生物の生息状況と支配要因の重ね合わせ (1) オカヤドカリ 凡例 :市郡界 :自然海岸 :サンゴ礁 :町村界 :直立型護岸 :藻場 :港湾区域 :傾斜型護岸 :干潟 :オカヤドカリ 分布箇所 出典.「中城湾港泡瀬地区環境保全・創造検討委員会委員会資料(2004)」「海図第 6508 号」 :河川・小排水路 :混成型護岸 「ジュゴンと藻場の広域的調査」「中城湾港(泡瀬地区)環境現況調査業務(1996)」他 「中城湾港新港地区トカゲハゼ生息地の試験造成地追跡調査」(平成 16 年) 図 1-8 オカヤドカリと支配要因重ね合わせ図 23 (2) 鳥類 凡例 :市郡界 :自然海岸 :サンゴ礁 :町村界 :直立型護岸 :藻場 :港湾区域 :傾斜型護岸 :干潟 :河川・小排水路 :混成型護岸 :鳥類分布箇所 出典.「中城湾港泡瀬地区環境保全・創造検討委員会委員会資料(2004)」「海図第 6508 号」 「ジュゴンと藻場の広域的調査」「中城湾港(泡瀬地区)環境現況調査業務(1996)」他 「中城湾港[新港地区]水路部周辺鳥類調査(平成 14 年)他 図 1-9 鳥類と支配要因重ね合わせ図 24 (3) 貴重種及び水産上重要な種 凡例 :市郡界 :サンゴ礁 :町村界 :港湾区域 :ウミヒルモ類 分布箇所 :藻場 :ニライカナイゴウナ 分布箇所 :干潟 :自然海岸 :直立型護岸 :トカゲハゼ分布箇所 :傾斜型護岸 :クビレミドロ分布箇所 :混成型護岸 :ヒジキ :オサガニヤドリガイ 分布箇所 :リュウキュウズタ 出典.「中城湾港泡瀬地区環境保全・創造検討委員会委員会資料(2004)」 「中城湾港[新港地区]水路部周辺鳥類調査(平成 14 年)他 図 1-10 貴重種及び水産上重要な種と支配要因重ね合わせ図 25 4 指標種の検討 中城湾港の場を評価する一手法として、指 標種の利用が挙げられる。 ここでは、現地調査を実施する中で確認さ れた生物の中から、指標種の候補を例示した。 ③指標種の検討 (一部、沖縄総合事務局資料を利用) ・汚濁した海域(区分)における海域環 境回復を示す指標種の検討 ・良好な海域(区分)における海域環境 維持を示す指標種の検討 候補としては、①清浄な場を示す指標種、② イボウミニナ 汚濁指標種、③レッドデータブック等に記載 されている貴重、④主な出現種の観点からの 指標種を検討する。これらの特定の種の出現 カンギクガイ に加え、生物の多様性も場を評価する上で重 要な要素となることから、⑤多様性指数によ る検討を行う。 イソハマグリ 26 4.1 清浄な場を示す指標種の候補 比較的汚濁の進んでいない正常な場に出現する種としては、河川流末部及び海浜部で はリュウキュウナミノコガイ、イソハマグリ、オキシジミ、リュウキュウアサリ等を、 河川汚濁流入点ではアオモンイトトンボを候補に挙げた。清浄化清浄指標候補種の生 態的特徴を表 1-14 に示す。これらの種は環境汚染の影響を受けやすいことから生息環 境が清浄化するに伴って生息数が増加すると考えられる。今後、既往文献調査や現地 調査によって、さらなる清浄指標種の検討が必要である。 表 1-14 清浄な場を示す指標の候補種の生態的特徴 候補種 生態的特徴 イソハマグリ 干出する渚の砂底に生息。 リュウキュウナミノコガイ 渚付近の砂底に生息。 オキシジミ 内湾や干潟の泥∼泥砂底に生息。 アラスジケマンガイ 内湾や干潟の砂泥礫∼砂礫底に生息。 リュウキュウアサリ アマモ場、モートの礫砂底に生息。 ヤエヤマスダレガイ 内湾や干潟の砂泥底に生息。 イオウハマグリ 内湾や干潟の泥礫∼泥砂底に生息。 ヒメアサリ 内湾や干潟の砂礫∼礫底に生息。 アオモンイトトンボ 人家周辺に最も多いイトトンボ。ヤゴは止水域に生息。 平成 14 年6月 29 日(土) 沖縄タイムス(朝刊)玉城 村は 1996 年に下水道設 置事業を始め優先的に新 原、玉城、中山地域の工 事を進めた。9割の世帯 が接続を完了した新原地 区前のビーチでは、ハマ グリ等の貝類が再び多数 採れるようになり、新原 区民を喜ばせている。 27 4.2 汚濁指標種 場が汚濁していることの指標種として、アナアオサ、ヒル類、サカマキガイ、ユスリ カ類、イトミミズ類等を候補に挙げた。汚濁指標補種の生態的特徴を表 1-15 に示す。 これらの種は汚染の進んだ場所に生息することから、場所の汚濁度を表現する種とし て適している。河川環境においては環境庁水質保全局によって汚濁指標種が設定され ているが、海域環境においては設定されていないのが現状であり、今後の検討が必要 である。 表 1-15 汚濁指標補種の生態的特徴 候補種 生態的特徴 アナアオサ 河口等に繁茂する。富栄養化に伴って増殖する。 ヒル類 淡水性ヒル類は底石の下や枯死して沈んだ枝葉または水草上にみられる。 汚染の進んだ低酸素状態の水中にも生息できる。 サカマキガイ 全国各地の水田、細流、本流の淀み、池沼と生息域は広く、かなり汚れた 水域まで生息する。礫や水草などに付着する。 ユスリカ類 幼虫は汚れた河川水域の泥の中に生息する。貧酸素な場所でも生息できる。 イトミミズ類 汚れた河川水域の泥の中に生息する。貧酸素な場所でも生息できる。 全長 40cm 以上(通常の大きさは 10∼15cm) 写真−1 沖縄市泡瀬 3 丁目排水口付近の海藻写真 28 【参考】汚濁指標種による評価例 河川環境においては「簡易法参考文献 1」を用いた評価が可能である。マクロベントス調査 結果を基に汚濁流入点(N15、S9、S10、S13)における汚濁評価を行った。簡易水 質調査のランクと、その指標となる生物は参考-図 1 に示す。 簡易法による水質判定の結果および方法を参考-表 1 に示す。今回の調査では、汚濁 流入想定点では、イトミミズ類やサカマキガイ、ユスリカ類等が優占しており全ての 調査地点で「Ⅳ 大変汚い水」となった。 1.ウズムシ類 Ⅰ き れ い な 水 Ⅱ 少 し 汚 れ た 水 Ⅲ 汚 い 水 5.ナガレトビケラ類 ヤマトトビケラ類 2.サワガニ類 3.ブユ類 6.ヒラタカゲロウ類 (めったに採集されない) 4.カワゲラ類 7.ヘビトンボ類 8.5以外のトビケラ類 9.6、11以外のカゲロウ類 10.ヒラタドロムシ (分布せず) 11.サホコカゲロウ (分布せず) 12.ヒル類 13.ミズムシ 14.サカマキガイ Ⅳ 大 変 汚 い 水 15.ユスリカ類 16.イトミミズ類 参考−図.1 簡易水質調査のランクと、その指標となる生物 参考文献:「琉球列島の陸水生物」(西島、2003)より、一部改編 29 参考-表.1 底生生物(マクロベントス)による汚濁流入想定点の水質判定 水質階級 Ⅰ Ⅰ・Ⅱ Ⅱ Ⅲ Ⅲ・Ⅳ Ⅳ 調査地点名 指標生物 1.ウズムシ類 2.サワガニ類 3.ブユ類 4.カワゲラ類 5.ナガレトビケラ類・ヤマトトビケラ類 6.ヒラタカゲロウ類 7.ヘビトンボ類 8.5以外のトビケラ類 9.6、11以外のカゲロウ類 10.ヒラタドロムシ 11.サホコカゲロウ 12.ヒル類 13.ミズムシ 14.サカマキガイ 15.ユスリカ類 16.イトミミズ類 出現した指標生物の種類数 (○+●) N15 1回目調査 2回目調査 S9 S10 S13 N15 S9 S10 S13 ○ ○ ● ① 最も数が多かった指標生物の種類数(●) 水質階級 ② の判定 合 計 ③ 水質階級 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ ④ 地点の水質階級 注1)ヒル類はヒル綱の合計個体数を使用した。 注2)ユスリカ類はユスリカ科の合計個体数を使用した。 注3)イトミミズ類はイトミミズ科の合計個体数を使用した。 ○ ● ○ ○ ○ ● ○ ○ ● ● ● ○ ○ ● ○ ● ○ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 2 1 2 3 3 2 1 1 3 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 2 1 3 4 4 2 2 2 4 4 Ⅳ Ⅳ Ⅳ Ⅳ Ⅳ Ⅳ Ⅳ Ⅳ <方法参考文献 1> 出現した指標生物に○印、最も個体数の多かったものに●印をつける。 出現した指標生物の全種類数(○+●)を各水質階級に記録。 ●印をつけた指標生物の種類数を各水質階級に記録。 2 つの水質階級の共通の指標種は、両方の水質階級に属するものとして重複して数える。 2)と 3)の種類数を合計し、最も多い水質階級をその地点の水質階級とする。 2 つの水質階級が同じ数値になった場合は 2 つの階級の間とする。 参考文献:「水生生物による水質の調査法」(環境庁水質保全局、1992) 30 4.3 レッドデータブック等に記載されている貴重種 今回の調査で確認された貴重種を指標種として場の変化状況を把握する。今回の調査 における貴重種の確認状況を表 1-16 に示す。 これらの貴重種は絶滅のおそれの高いことや存続基盤が脆弱であることといった観 点から選定されているものであり、生息環境の変化が生息数等に反映されやすい種で あると考えられる。 表 1-16 貴重種の選定基準 注)表中の貴重種の指定状況における凡例を以下に示した。ただし、以下の判例には表内に出てこない区分も示した。 注) 天然記念物『昭和25年法律第214号「文化財保護法」』 特別:国指定特別天然記念物 天然:国指定天然記念物 県:県指定天然記念物 市町村:市町村指定天然記念物 注)種の保存法『絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年6月5日 法律第75号)』 国内:(国内希少野生動植物種)本邦に生息し又は生育する絶滅の恐れのある野生動植物の種。 国際:(国際希少野生動植物種)国際的に協力して種の保存を図ることとされている絶滅のおそれのある野生動植物の種。 注)環境省RDB『「改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物−レッドデータブック-(汽水・淡水魚類)」(環境庁、2003年)』 注)環境省RL『「日本の絶滅のおそれのある野生生物−レッドリスト-」(環境庁,2000年)』 絶滅(EX):我が国ではすでに絶滅したと考えられる種。 野生絶滅(EW):飼育・栽培下でのみ存続している種。 絶滅危惧I類(CR+EN):絶滅の危機に瀕している種。 絶滅危惧IA類(CR):絶滅の危機に瀕している種-ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。 絶滅危惧IB類(EN):絶滅の危機に瀕している種-ⅠA類ほどではないが,近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの。 絶滅危惧Ⅱ類(VU):絶滅の危険が増大している種-現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合,近い将来 「絶滅危惧Ⅰ類」のランクに移行することが確実と考えられるもの。 準絶滅危惧(NT):現時点では絶滅危険度は小さいが,生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種。 情報不足(DD):評価するだけの情報が不足している種。 絶滅のおそれのある地域個体群(LP):地域的に孤立しており,地域レベルでの絶滅のおそれが高い個体群。 注) 水産庁RDB『「日本の希少な野生水生生物に関するデータブック」(水産庁、2000年)』 絶滅危惧種:絶滅の危機に瀕している種・亜種。 危急種:絶滅の危険が増大している種・亜種。 希少種:存続基盤が脆弱な種・亜種。 減少種:明らかに減少しているもの。 減少傾向:長期的に見て減少しつつあるもの。 注) 沖縄県RDB『「改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(動物編)レッドデータブックおきなわ」(沖縄県、2005年)』 絶滅(EX):沖縄県ではすでに絶滅したと考えられる種。 野生絶滅(EW):沖縄県では飼育・栽培下でのみ存続している種。 絶滅危惧I類(CR+EN):沖縄県では絶滅の危機に瀕している種。 絶滅危惧IA類(CR):沖縄県では絶滅の危機に瀕している種-ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。 絶滅危惧IB類(EN):沖縄県では絶滅の危機に瀕している種-ⅠA類ほどではないが,近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの 絶滅危惧Ⅱ類(VU):沖縄県では絶滅の危険が増大している種。現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、 近い将来「絶滅危惧Ⅰ類」のランクに移行することが考えられるもの。 準絶滅危惧(NT):沖縄県では存続基盤が脆弱な種。現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては 「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの。 情報不足(DD):評価するだけの情報が不足している種。 絶滅のおそれのある地域個体群(LP):沖縄県で地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれの高いもの。 注) WWF『「WWF Japanサイエンスレポート 第3巻」(WWF((財)世界自然保護基金)、1996年)』 絶滅:野生状態では、どこにも見あたらなくなった種。 絶滅寸前:人為の影響の如何に関わらず、個体数が非常に減少し、放置すればやがて絶滅すると推測される種。 危険:絶滅に向けて進行しているとみなされる種。今すぐ絶滅という危機に瀕するということはないが、 現状では確実に絶滅の方向に向かっていると判断されるもの。 希少(希少種):特に絶滅を危惧されることはないが、もともと個体数が非常に少ない種。 状況不明:最近の生息の状況が乏しい種。 31 表 1-17 河川流末及び汚濁流入想定点で出現した貴重種一覧(メガロベントス) 番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 和名 ヒメケハダヒザラガイ ヒメウズラタマキビガイ イボウミニナ カヤノミカニモリガイ ヨウラクレイシガイダマシ カニノテムシロガイ シイノミミミガイ アコヤガイ イソハマグリ タガソデガイモドキ オキシジミ リュウキュウアサリ ハナグモリガイ モクズガニ オキナワヒライソガニ ケフサヒライソモドキ オオヒライソガニ シオマネキ ヤエヤマシオマネキ キララハゼ マサゴハゼ トカゲハゼ 天然 種の 環境省 水産庁 沖縄県 記念物 保存法 RDB,RL RDB RDB NT NT NT NT NT 減少 減少 EN EN EN 減少傾向 DD NT VU LP CR 希少 CR 危急 VU EN CR 汚濁流入想定点 河川流末 N15 S9 S10 S13 N10 N15 N20 S4 S9 S10 S13 S21 S23 ○ ○ ○ ○ ○ 危険 ○ 危険 ○ 危険 ○ ○ ○ 危険 ○ 絶滅寸前 ○ ○ ○ ○ ○ 危険 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 希少 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 希少 ○ 危険 ○ ○ 希少 ○ ○ ○ 種 数 数 1 0 1 0 7 1 5 8 4 2 0 4 1 WWF 表 1-18 河川流末及び汚濁流入想定点で出現した貴重種一覧(マクロベントス) 番号 和名 1 オキナワミズゴマツボ 2 コオキナガイ 天然 種の 環境省 水産庁 沖縄県 汚濁流入想定点 河川流末 WWF 記念物 保存法 RDB RDB RDB N15 S9 S10 S13 N10 N15 N20 S4 S9 S10 S13 S21 S23 NT ○ ○ 危険 ○ CR 危険 種 数 数 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 表 1-19 海浜で出現した貴重種一覧(メガロベントス) 番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 和名 イロタマキビガイ ヒメウズラタマキビガイ イボウミニナ ヘナタリガイ カワアイガイ コゲツノブエガイ カヤノミカニモリガイ ヨウラクレイシガイダマシ カニノテムシロガイ アコヤガイ チヂミウメノハナガイ イソハマグリ イチョウシラトリガイ ユウシオガイ マスオガイ オキシジミ ヤエヤマスダレガイ イオウハマグリ ハナグモリガイ スジホシムシモドキ スジホシムシ オキナワヒライソガニ コウナガイワガニモドキ ケフサヒライソモドキ オオヒライソガニ ウモレマメガニ シオマネキ ヤエヤマシオマネキ ルリマダラシオマネキ マサゴハゼ トビハゼ トカゲハゼ 天然 種の 環境省 水産庁 沖縄県 WWF 記念物 保存法 RDB,RL RDB RDB NT 危険 危険 NT 危険 NT 危険 NT 危険 NT 危険 NT 危険 NT NT 危険 減少 NT 減少 NT 絶滅寸前 危険 NT EN NT NT 危険 EN 危険 普通/希少 普通/希少 DD NT 希少 希少 状況不明 NT 希少 CR 危険 希少 NT LP EN LP 希少 EN CR 危急 CR 種 数 数 N10 N15 N20 S4 S9 S10 S13 S21 S23 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 4 1 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 12 14 ○ 9 5 ○ 7 ○ 10 7 1 ○ ○ 7 8 2 6 1 0 2 3 表 1-20 海浜で出現した貴重種一覧(マクロベントス) 番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 和名 マンガルツボ フトヘナタリガイ ヘナタリガイ カワアイガイ コゲツノブエガイ カヤノミカニモリガイ イソハマグリ イチョウシラトリガイ オキシジミ イオウハマグリ ハナグモリガイ コオキナガイ 天然 種の 環境省 水産庁 沖縄県 記念物 保存法 RDB,RL RDB RDB NT NT NT NT NT NT 減少 NT EN NT EN CR WWF 危険 危険 危険 危険 危険 危険 N10 N15 N20 S4 S9 S10 S13 S21 S23 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 右岸 左岸 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 絶滅寸前 危険 危険 危険 ○ 危険 種 数 数 5 32 ○ ○ ○ ○ ○ 6 1 0 0 1 ○ 0 0 0 1 0 1 0 1 0 0 2 0 4.4 主な出現種 調査地点(22 地点)は TWINSPAN 分析によってグループⅠ∼Ⅳに区分された。それぞ れのグループにおける主な出現種を指標種として、場の変化状況を把握する。グルー プごとの主な出現種を表 1-21 に示す。 主な出現種はその出現場所を特徴づける種であり、場の環境が変化すると主な出現種 の種組成にも変化がみられると考えられる。今後、典型性、上位性、特殊性といった 観点からも種を選定していく必要がある。 表 1-21 グループごとの主な出現種 グループ 調査地点 S4(河川流末部) S21(河川流末部) I S23(河川流末部) S4(海浜部) S21(海浜部) 主な出現種 ヤドカリ亜目 アマオブネガイ オキナワイシダタミガイ ヨウラクレイシガイダマシ シマベッコウバイ ミナミクロフジツボ など S23(海浜部) N15(河川流末部) N20(河川流末部) S9(河川流末部) Ⅱ S10(河川流末部) ヤドカリ亜目 フタバオサガニ イボウミニナ マルアマオブネ ゴカイ綱等 S13(河川流末部) S10(海浜部) S13(海浜部) N10(河川流末部) N10(海浜部) Ⅲ N15(海浜部) ヤドカリ亜目 オキナワハクセンシオマネキ ツノメチゴガニ ゴカイ綱等 N20(海浜部) S9(海浜部) N15(河川汚濁流入点) Ⅳ S9(河川汚濁流入点) サカマキガイ ユスリカ科 S10(河川汚濁流入点) S13(河川汚濁流入点) 33 4.5 多様性指数 一般に水域が汚染等により生息環境が単純化すると、生息可能な生物は限られ種類数 は減少し、特定の種が増加する。多様性指数を用いて動物群集の安定性を評価するこ とができる。 メガロベントス調査結果を用いて多様性指数を調査地点ごとに算出した。ここでは便 宜的に目視観察結果を数値に変換し、多様性指数(Shannon-Weaver 指数)を求めた(表 1-22)。算出した多様性指数を表 1-23 に示す。 表 1-22 多様性指数算出法 多様性指数(Shannon-weaver 指数) H(s)=-Σ{(n/N)×log(n/N) } N:調査地点内の総個体数 n:1 種類の個体数 対数の底:e ※数値が大きいほど多様性が高いことを示す。 ※メガロベントス調査結果は以下のとおり変換し計算に用いた。 rr:1 r:6 +:55 c:550 cc:999 参考文献:「環境と指標生物 2−水界編−」(津田早苗・菊池泰二、1975) 表 1-23 多様性指数 調査地点 多様性指数 河川流末部 1.1∼2.5 S21 で最も高く、N15、N20、S23 で低かった。 海浜部 1.2∼2.3 S21 で最も高く、S10、S13、S23 で低かった。 河川汚濁流入点 0.3∼1.1 S10 で最も高く、S9 と S13 で低かった。 34 【参考】多様性指数による評価例 河川の水質と多様性数の関係を表 10 に示す。河川の水質を貧腐水性(OS)、β−中 腐水性(β−ms)、α−中腐水性(α−ms)、強腐水性(ps)の 4 階級に分けた。 表 1-24 水質と多様性数の関係 水質階級 BOD 多様性指数 貧腐水性 (きれいな水) <2 β−中腐水性 (少し汚れた水) 2∼5 α−中腐水性 (汚い水) 5∼10 強腐水性 (大変汚い水) 10< >3 2∼3 1∼2 1> これによると、河川汚濁流入点では、N15、S9、S13 で Sα−中腐水性(汚い水)、S10 で強腐水性大変汚い水)となる。 参考文献:「琉球列島の陸水生物」(西田 睦・鹿谷法一・諸喜田茂充、2003)一部抜粋 35 第2章 1 良好な触れ合い環境の解析・検討の方向性について はじめに 中城湾港は、人が憩い集える場としては他の海域に比べて相対的に高くはない事実を 踏まえ、その要因を解析し、触れ合いの場の回復・保全並びに利活用の促進を図る必 要がある。 特に泡瀬地区においては、下記の検討を行っており、本委員会においては基本的な方 向性を踏襲しつつ、中城湾港全体の特性に応じて、適宜調整を行う。 ・住民アンケートの実施 ・生物生息環境や良好な触れ合い環境の視点からのハード整備にあたっての指針 ・環境利用学習に向けた利用の方向性 ・環境利用の際のルールづくり 以降に平成 13 年度より実施してきた泡瀬地区での委員会での検討内容を抜粋し紹介 する。 【参考資料】 ・ 平成 13 年度 中城湾港泡瀬地区環境監視検討委員会 第1回 平成 13 年 6 月 11 日 委員会資料(各ワーキンググループにおける検討成果) ・ 平成 14 年度 中城湾港泡瀬地区環境監視検討委員会 第1回 平成 15 年 3 月 委員会資料(泡瀬地区の環境保全・施設整備方針) ・ 平成 15 年度 中城湾港泡瀬地区環境保全・創造検討委員会 第1回 平成 15 年 8 月 24 日 環境利用学習専門部会資料 (環境条件の現状と課題及び環境利用の方向性について) ・ 平成 15 年度 中城湾港泡瀬地区環境監視検討委員会 第1回 平成 15 年 8 月 24 日 委員会資料(環境条件の現状と課題及び環境利用の方向性について) 36 2 住民アンケートの実施 問1 泡瀬地区海岸域における環境悪化の状況、又はその原因について、どのようにお考 えですか。 〇泡瀬海岸・干潟について(重要と思うものを3つ以内で選択) 泡瀬海岸・干潟の現状として、「ゴミの散乱」、「生活排水流入による水質や底質の汚 れ」、「開発や海岸整備による自然環境悪化」の割合が高く、逆に「特に問題なし」とし た割合は僅となっており、環境が悪いと捉えている住民が多い。 33% 下水道未接続による生活排水等の流入が環境に負荷を与えている 17% 比屋根湿地の浄化機能が低下し汚水が十分浄化されずに海岸・干潟へ流入している 32% 流入した汚水により干潟底質が汚れている 17% 干潮時には悪臭が発生する 29% 埋立や道路建設、護岸整備により砂浜や植生が消滅・減少した 13% コンクリート護岸が生態系の連続性を分断している 22% 埋立等の開発により人工的な海岸となり海浜・海中景観が劣化している コンクリート護岸が干潟への地下浸透水の流れを阻害している 5% 38% 泡瀬海岸・干潟を訪れる人々のモラルが低く、不法投棄されたゴミが散乱している 26% 排水路や比屋根湿地からのゴミ、また漂流してきたゴミが海岸に散乱している 特に問題はなく良い環境である 3% その他 3% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 〇比屋根湿地について 比屋根湿地の現状として、「生活排水流入等による水質や底質の汚れ」、「悪臭の発生」、 「ゴミや雑草が多く管理が不十分」の割合が高く、また、海岸域と同様に「特に問題なし」 とした割合は僅となっており、環境が悪いと捉えている住民が多い。しかし、その環境悪 化が生物の生息・生育環境に対して影響があると感じている割合は比較的少ない。 29% 下水道未接続による生活排水等の流入が環境に負荷を与えている 21% 比屋根湿地から外海に通じる排水路出口に段差があり海水交換が悪く汚水が滞留している 15% 比屋根湿地の生態系のバランスが崩れ浄化機能が低下している 24% 生活排水等の流入により悪臭が発生し特に夏場は気になる 7% マングローブが繁茂しすぎて野鳥の餌場を狭めている 6% 背後の農地からの土砂流入により陸地化が進み比屋根湿地の生態系に影響を与えている 17% 背後からの汚濁負荷により多様な汽水域の生物の生息・生育場が悪化している 6% 野犬等の進入が野鳥等の生息に影響を与えている 9% 背後の市街化により雨水の地下浸透が妨げられ、比屋根湿地への地下水流入が減少している 18% 周辺の開発により歴史的風情(様子、風景)がなくなった 24% 比屋根湿地を訪れる人々のモラルが低く、不法投棄されたゴミが散乱している 31% 適切な管理が行われていないため雑草やゴミで景観が悪化している 特に問題はなく良い環境である その他 0% 37 3% 4% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 問2 泡瀬地区海岸域の利用についておたずねします。 〇泡瀬地区海岸域に行く頻度を教えてください。(1つを選択) 「行かない」の割合は低く、泡瀬地区海岸域に行き、何らかの目的で利用している状況 となっている。 7% ほぼ毎日 11% 週に数日 10% 週に1日程度 17% 月に数日 10% 月に1日程度 29% 年に数日 11% 行かない その他 2% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 〇泡瀬地区海岸域に行く目的は何ですか。(3つ以内で選択) 「行かない」の割合は低く、泡瀬地区海岸域に行き、何らかの目的で利用している状況 となっている。 19% 潮干狩り 4% 野鳥の観察 7% 干潟の観察 観察会参加 1% 10% 魚釣り 散策 35% 海の景色を見に 36% 18% 海辺のドライブ 4% サイクリング 38% 県総合運動公園に行った時に立ち寄った 行事 その他 0% 2% 7% 10% 20% 30% 38 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 〇行かない理由は何ですか。(1つを選択) 「行く」の割合に対し、「行かない」の占める割合は僅かであるが、内訳を見ると、「理 由がない」「魅力がない」と関心の無さが理由となっている。 2% 魅力がない 5% 理由がない 2% 時間がない 1% 他に遊びに行く場所がある 1% 遠い わからない 0% 1% その他 0% 問3 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 泡瀬地区海岸域を利用した際の問題点について。(重要と思うもの1つを選択) 利用時の問題点として、「木陰や休憩施設がない」を約半数の住民があげており、その 他「近づきにくい」、「駐車場がない」、「安全でない」の割合も高く、住民は現状を不 便、危険と感じており、利用頻度が低い要因として利用面への配慮が十分でないことがう かがえる。 26% 海辺(湿地や干潟)に近づきにくい 13% 釣りをできる場所がない 25% 駐車場がない 47% 木陰や休憩施設がない 車道に近く安らぐことができない 14% 案内板がなく周辺の状況がわかりにくい 16% 14% 野犬等の進入が見受けられ危険を感じる 22% 安全面に問題があり、子供を遊ばすことができない 14% 特に問題はない 11% その他 0% 10% 20% 39 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 〇行政が行う水質浄化等の水環境対策(施策)としてどのようなものを期待しますか。(3 つ以内で選択) 水質浄化対策としては、「公共下水道の整備」が圧倒的に多く、続いて「下水道接続等 に対する補助」、「家庭からの排水削減対策の義務づけ」、「事業所排水規制の強化」の 割合が高く、排水を流さないような対策が良いと考えていることがうかがえる。 また、「湿地や干潟の自然浄化機能の向上」、「比屋根湿地等への浄化施設整備」の割 合も比較的高く、自然の力を利用した浄化も対策の一つとして有望と考えていることがう かがえる。 52% 公共下水道の整備 33% 合併処理浄化槽設置に対する補助、下水道接続に対する補助 27% 家庭から出る排水・ゴミの削減対策の義務づけ 泡瀬海岸や比屋根湿地の一斉清掃 24% 比屋根湿地内や雨水排水路内への浄化施設の整備 22% 24% 事業所(工場)排水規制の強化 7% 水質改善をテーマとした講演会などの教育活動 4% 下水道接続の促進用のパンフの作成・配布 26% 湿地生態系や干潟生態系による自然の浄化機能の向上 12% 雨水の地下浸透域の確保(緑地の保全・創造、透水性舗装、浸透トレンチ、浸透ます) 7% 地下浸透水の流れの確保(透水性護岸) 2% その他 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 〇泡瀬地区海岸域にあったら良いと思う施設は何ですか。(3つ以内で選択) あると良い施設は「緑地・砂浜」、「トイレ」が多く、続いて、「木陰」、「散策路」、 「駐車場」、「案内板」、「休憩所」となっており、住民が利用時の問題点と感じている 不便さや、行く目的で割合の高い「散策等」を反映した結果となっている。 案内板・解説板 20% 散策路 20% 14% 海岸や湿地への階段やスロープ 25% 緑地・砂浜 21% 木陰 12% サイクリングコース 東屋 6% 19% 休憩所 12% 展望所 野鳥等の観察小屋 11% 環境学習施設 11% 19% 駐車場 15% 照明設備 26% トイレ 16% ウォークボード(比屋根湿地内を歩ける散歩道) その他 0% 5% 10% 20% 40 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 〇泡瀬地区海岸域の環境について(10 件) ・ 海岸域はゴミ等が多い。環境問題意識を持つような集会、情報提供等を望む。 ・ 湿地内のごみや悪臭対策を望む。夏場は特に悪臭の強さに悩まされている。 ・ 潮干狩りをしても臭くて食べられない。 ・ 沖縄の海のイメージがこわれた。特に泡瀬は下水排水により悪臭がひどい。ゴミも多い。 〇泡瀬地区海岸域の現状及び今後の利用について(4件) ・ 潮干狩り等ができる場として利用したい。 ・ 周辺施設等を考慮しながら散策等ができるような海岸整備をしてほしい。 〇泡瀬地区海岸域の将来像について(9件) ・ 悪臭やゴミの散乱をなくし、美しい場所にしたい。 ・ 子供達が安心して泳げるほどのきれいな海になってほしい。 ・ 海、砂、渡り鳥、小さい生き物等と地球を共存できる癒しの場となってほしい。 ・ 西の北谷、東の泡瀬で子供から老人まで楽しく快適に過ごせる場所にして欲しい。 〇泡瀬地区の海岸づくりへの意見・要望について(34 件) ・ 比屋根湿地、周辺のゴミの散乱に対する整備、水質改善に対する対策。休憩所やトイレ を作ってほしい。近くに交番が必要。 ・ インターネット等を通して情報提供し、掲示板等を設け議論の場を提供してほしい。 ・ きれいな海づくりに行政はもっと力を注いで欲しい。 ・ 下水道接続対策として自治会でチェックして各指導員や罰則を加えると良いと思う。 ・ 行政や一部企業などで進めず一般市民と未来の事も考えて整備活動してほしい。 ・ 自然を無くすのではなく、自然を生かした環境作りを早めに行ってほしい。 ・ 台風でも波立たないのでテトラポットの替わりに植木(リュウキュウマツ等)をした方 が良い。 ・ 市税を圧迫しないよう、長期的に見て利益のある海辺づくりをしてほしい。 〇泡瀬地区の海辺づくりへの住民参加について(3件) ・ 野犬侵入、不審者の休憩所占拠の問題点について市に要望したが変化なし。湿地帯など のゴミ拾いなどは市が先頭に立たないと住民参加はないと思う。 ・ ごみ拾い用袋を役場で無料配布してほしい。ボランティア等にも配布して見ては? 41 3 ハード整備にあたっての指針 3.1 人工海浜 既存海岸・陸域は埋立てによる直接的な改変を受けないことから、海岸・陸域にお ける機能は基本的には保全されると考えられるが、予測には不確実性を伴うためモニ タリングを行うこととしている。そうした中で、人工島の海岸・陸域はこれらの機能 を有する新たな場となり得ることから、泡瀬地区における海岸・陸域の機能向上を図 るため、陸―海間の連続性を確保する場として海浜整備を行い、オカヤドカリ類など 陸と海を移動して生活する生物の生息や、陸から海へのアクセスのしやすさを活用し た人の利用に適した場として整備する。 〈海浜整備の基本方針〉 ① オカヤドカリ類の生息を指標とし、陸と海が連続した海岸環境の整備を図る。 オカヤドカリ類は陸から海までの連続的な活動の場を必要とするため、海岸環境の物 理的・生態的な連続性を評価するうえで代表性があると考えられる。また、海岸域に おける食物連鎖の上位にあるため、その生息は生態系を幅広く指標する。そこで、オ カヤドカリ類の生息を指標とし、これらが生息可能な陸と海が連続した海岸環境の整 備を図る。 ② 海水浴に適し、地域の自然や文化にみあった景観をもつ海浜整備を図る。 泡瀬地区周辺では海水浴に適した水辺が乏しいことから、利用面では海水浴のできる 海浜整備への地元の要望が高い。そこで、アクセス面から人の動線の連続性に配慮す るとともに、人々の生活も含めた総合的な環境指標であることから、それらに配慮し て地域の自然や文化にみあった景観形成を図る。 42 3.2 人工干潟 埋立てにより、干潟域が成立する機能はそれぞれ面積変化に応じて縮小するが、特に クビレミドロの生育機能はほとんどが消失することとなる※。また、中城湾を国内唯一 の分布域とするトカゲハゼの生息地は埋立後も保全されると考えられるが、予測には 不確実性を伴うことからモニタリングを行うとともに、新港地区での成功の実績も考 慮して人工干潟の造成による生息環境の保全・拡大に努める。 〈干潟整備の基本方針〉 ① トカゲハゼ、クビレミドロの生息・生育する干潟整備により、泡瀬地区におけるこ れらの生息環境の保全・拡大を図るとともに、干潟の多様な底生生物や鳥類につい ても可能な限り生息可能な環境創出に努める。 トカゲハゼやクビレミドロが生息・生育する干潟は、他の底生生物や鳥類の生息場 でもある。そこで、可能な限りこれらの生息場としての機能の付加にも配慮し、多様 な生物が生息可能な干潟環境の創出に努める。 ② トカゲハゼ、クビレミドロをはじめとする干潟の生物とふれあい、干潟環境や生物 を学習する場として整備する。 干潟とともに観察施設等を整備し、干潟の生物観察をとおした学習機能を持つ場と して整備する。 ※ このため、クビレミドロの移植技術を確立し、保全するものとしている。 43 3.3 人工海浜及び緑地の造成に係わる検討 (1) 基本理念 人工海浜及び緑地の検討にあたっては、環境影響評価に際する知事意見を踏まえ、以 下の基本理念に基づいて進めることとする。特に、「オカヤドカリの保全」、「人の 利用」、「景観的配慮」、「自然的」、「連続性」等をキーワードに、整備計画の策 定を行う方針とする。 <基本理念(案)> 生態系の保全、人の利用、景観形成等に配慮した陸域と海域の自然的、一体的整備※ (※特にオカヤドカリ類の移動を妨げないよう配慮する。) ① オカヤドカリ類の生活史・生息場という観点から、陸域・海域を一体的に整備する。 オカヤドカリ類は、本地域の代表的な生物で、一つの食物連鎖の高位に位置しており、 生活史の中で、陸域と海域を移動しながら生息している。その生態特性に配慮し、餌 等も含めて、陸域・海域整備を一体的に進めることが重要である。 ② 人の利用において、水辺の親しみ易さ、水辺への近づき易さに配慮して、陸域・海 域を一体的に整備する。 人の動線の連続性や景観的な観点から、陸域・海域整備を一体的に進めることが重要 である。また、必要に応じてバリアフリーにも配慮する。 ③ 生態的な特徴、人の親しみ易さ等の観点から景観に配慮して、陸域・海域を一体的 に整備する。 景観は、その地域の地理的・地形的条件、気候や植生、生息する生き物等とともに、 人々の生活も含めた総合的な環境である。景観的に違和感がないということが重要で ある。 【参考】人工海浜及び緑地に関する環境影響評価に際しての知事意見(要旨) 埋立地の南側における海浜整備に当たっては、海域と陸域を移動して生息しているオ カヤドカリ類の生息環境及び海域の生態系を保全するため、海域と陸域との分断を生 じることが無いよう配慮すること。 44 3.4 人工干潟及び野鳥園の造成に係る検討 (1) 基本理念 人工干潟、野鳥園の造成に係る検討にあたっては、環境影響評価に際する知事意見を ふまえ、以下の基本理念に基づいて進めることとする。また、陸域から海域につなが る生態系の連続性に配慮し、一体的な整備計画の策定を行う方針とする。 <基本理念(案)> 周辺生態系の保全・向上に寄与し、鳥類やトカゲハゼ、クビレミドロをはじめとする 多様な干潟生物の生息環境を創出するとともに、人と自然のふれあいや環境教育の場 となる沖縄らしい生態系の創造を図る。 【参考】人工干潟・野鳥園の造成等に関する環境影響評価に際しての知事意見(要旨) ●人工干潟に関する意見 ・ トカゲハゼが生息可能な泥質干潟形成の工夫をすること。 ・ 野鳥園に関する意見 ・ 野鳥園の造成は、鳥類の採餌・休息の場としても利用できるよう人工干潟と連続 して設置すること。 ・ 人と自然とのふれあいの場及び環境教育の場としても十分な機能を有するよう 検討すること。 ●海域環境の保全・創造に関するその他の意見 ・ 埋立計画地の干潟に生育するクビレミドロを保全すること。 ・ 鳥類の良好な採餌・休息場であるほか、多様な生態系をもつ干潟の保護・保全に 努めること。 ・ 水路及び埋立地周辺に残される干潟について、浄化機能や生物生息状況の変化等 をふまえたより良い干潟環境創造に努めること。 45 4 環境利用学習に向けた利用の方向性 4.1 環境利用の方向性の検討、設定 以上までの検討結果を踏まえ、環境利用学習に向けた環境利用の方向性の検討、設定 について以下に整理する。 (1) 方向性1 環境利用学習推進のためのシステムの構築 近年の環境に関する意識の高まりに伴い、地域の自然環境を題材にして「総合学習」 が全国で行われている。また、観光においても見学型から参加型への変化に伴い、地 域の自然にふれあい、自然環境について学ぶ体験学習形式の観光形態、いわゆる「エ コツーリズム」が盛んになってきている。 環境利用学習では、干潟や森林・公園緑地などの「自然」と、それを活用する人材、 体制、施設、プログラムなどとの連携のための「システム」が不可欠である。特に、 語り部となるインタープリターとしての人材は、全国で実施されている環境利用学習 の中でも重要な要素となっている。 以上から、泡瀬地区における環境利用学習の実施にあたっては、自然の語り部である インタープリターの育成やその体制整備、学習プログラムの内容検討などのシステム の構築が重要である。そのためには、地域住民の参画や、研究者・利用者(観光客や 旅行業者などを含む)・行政などの連携を基本とした、以下に示すようなシステム構 築が重要である。 図 2-1 環境利用学習推進のためのシステム 46 (2) 方向性2 社会環境を活用した学習の推進 計画地周辺の海岸部には、比屋根湿地やトカゲハゼ・底生動物などの生息域等の良好 な自然環境が存在する。また、中城城跡、勝連城跡などの世界遺産も点在するととも に、沖縄市内には沖縄県総合運動公園や沖縄市総合運動公園などの公園緑地、東南植 物楽園や沖縄子どもの国などの動植物園、室川貝塚やカフンジャー橋、奉安殿などの 史跡がみられる。 さらに、県内でも有名な園田エイサーや琉球舞踊、過去において沿岸域が塩田等も行 われた歴史があり、これら文化的資源も存在する。 これらは、沖縄特有の歴史観や背景などを含めた総合的な環境利用学習を実施するに あたり、有効な学習素材となりうるものである。 したがって、人工島の整備によって創出される環境資源を有効活用するとともに、周 辺地域に点在する既存の文化財や歴史資産などの資源を包含した環境利用学習の実施 を推進していくことが重要である。 図 2-2 環境資源と社会環境とのつながりのイメージ 47 (3) 方向性3 自然環境を維持し、持続的に利用するための資源管理を行う 人工島の建設にあたっては、周辺の自然環境の保全に配慮した検討が行われており、 整備後にも、マングローブ林、干潟、藻場、サンゴ礁、自然海岸等の自然環境が残さ れるものである。 これらの自然環境は、地域の財産として将来にわたって維持されるべきものである。 また、環境利用学習の場として利用する場合にも、持続的な利用を可能とするための 資源管理を行う必要がある。 自然環境の資源管理では、定期的なモニタリング調査を行い、環境の変化(悪化)を 早期に把握し、対策を検討することが必要である。また、利用に伴う人為的な影響を 低減させるための利用人数やアクセス方法の制限、知識や指導力に富んだガイドの登 用が考えられる。 48 (4) 方向性 4 周辺の既存資源をも活用した環境利用学習プログラムの確立 計画地周辺の海岸部には、比屋根湿地やトカゲハゼ・底生動物などの生息域等の良 好な自然環境が存在する。また、中城城跡、勝連城跡などの世界遺産も点在するとと もに、沖縄市内には沖縄県総合運動公園や沖縄市総合運動公園などの公園緑地、東南 植物楽園や沖縄子どもの国などの動植物園、室川貝塚やカフンジャー橋、奉安殿など の史跡がみられる。これらは、泡瀬地区周辺の資源を対象とした環境利用学習を実施 するにあたり、有効な学習素材となりうるものである。 この素材を有効に活用し、泡瀬地区周辺における環境利用学習を実施するためには、 これらの環境利用学習の素材のもつ特性や、素材の点在する泡瀬地区周辺が有する特 性を考慮した環境利用学習のプログラムが重要である。 図 2-3 周辺の既存環境を利用した環境利用学習イメージ 49 参考(環境学習の場としての実現手法) 環境 テーマ ヒルギ類の観察 マングローブ林 マングローブ林 と湿地の観察 野鳥観察 体験 ○ ○ ○ 貴重な生物の観 察 学習の方法 ○ 図鑑や資料と実際のヒルギ類を見比べ て、種類による樹形、根、胎生種子の 違いを観察する。生育種の自然界の分 布とを比較する。 ○ ○ ○ 干 潟 カニの砂団子の 観察 ○ 転石下の生物の 観察 ○ 砂泥の中の生物 の観察 ○ 野鳥観察 ○ 海草の観察 藻場、サンゴ 海藻草類の藻場 の観察 文献 ○ ○ ○ サンゴの観察 ○ ○ 海 岸 サンゴ群集の観 察 ○ 植物の観察 ○ オカヤドカリの 観察 ○ 打ち上げ海藻、ゴ ミ等の観察 ○ ○ ○ 市街地に近い場所に残された貴重な湿 地と、沖縄の植物群落を代表するもの のひとつであるマングローブ林を観察 する。 野鳥は、留鳥、夏鳥、冬鳥、旅鳥に分 けることができ、干潟に訪れる鳥類も 季節により変化することを解説する。 学習効果 一見同じに見えるヒルギ類も種類が異な り、それぞれに形態や分布の異なることを 知る。人為的な分布の撹乱は、歓迎するも のではないことを、他の事例(外来植物の 繁茂)から学習する。 泡瀬に湿地やマングローブ林が存在するこ とから、郷土の自然の豊かさを実感する。 身近な干潟に生息する野鳥の中に、遥か遠 い国から海を渡ってくるものがいることを 学習する。泡瀬と世界の繋がりを生き物か ら感じる。 絶滅に属する野生生物が多いことを知る。 レッドリスト等の説明と、泡瀬地区に 地元に貴重な生物が存在することにより、 分布する種を紹介する。 誇りと郷土愛に目覚める。 干潟のカニが砂団子を作る意味(砂中 干潟の生物が食物連鎖によって、複雑に関 の有機物を食べる)ことを教える。そ 係し合っていることを知る。生物による物 の他の干潟生物の食物連鎖について解 質循環や干潟の浄化作用について学習す 説する。 る。 転石を起こし、石の裏や下の砂泥から、 小さな石の下に驚くほど多くの生物がいる カニ類、貝類、ヒトデ・ウニ類等を集 ことを知る。小さな命の大切さや、干潟の め、観察する。 生き物の多さを学習する。 干潟の砂泥を掘ってフルイで篩う。カ 普段、目にしない砂泥の中に多くの生物が ニ類、貝類、ゴカイ類、アナジャコ類 いることを知る。小さな命の大切さや、干 等を観察する。 潟の生き物の多さを学習する。 干潟で餌を採る鳥類を観察すると、種 類によって乾いた場所から水中まで、 鳥類が種類によって、採餌場所や餌の種類 利用する場所が異なる。また嘴の長さ を変えることで、干潟の中で棲み分けをし、 や形により、食べる餌が異なることを 共存していることを学習する。 解説する。 海草は花が咲いて種子ができること、 海草は波の穏やかな内湾や礁池に多いこ 地下茎で増えることなどを教える。ジ と、沖縄でも海草の分布地が減少している ュゴンやウミガメの餌になる。海草の ことを知る。地元、泡瀬の海に対する郷土 分布地が減っていることを教える。 愛に目覚める。 藻場は多くの魚介類の産卵場や、幼稚 藻場の機能や価値を知る。藻場が魚介類お 魚の生息場となっていることを教え よび人類にとって重要な場であることを学 る。その他、藻場の様々な機能や価値 習する。 を解説する。 サンゴは石のように見えるが、動物で サンゴの生態的特徴を知る。サンゴにとっ ある。一方、植物のように、光が必要 て、濁りや土砂が非常に悪影響を及ぼすこ であること等、サンゴの生態を教える。 とを学習する。 サンゴの分布地やサンゴの隙間には、 サンゴ群集の機能や価値を知る。サンゴ群 多様な魚介類が生息していることを教 集が魚介類および人類にとって重要な場で える。その他、サンゴ群集の様々な機 あることを学習する。 能や価値を解説する。 海岸から陸に向かい、グンバイハマヒルガオ、 自然な海岸の植生の分布、水面からの距 ハマゴウ、ハマユウ、クサトベラ、モンベノキ、アダンの 離・高さとの関係などを知る。人工的な海 ように植生が変化する様子を観察す 岸の植生と比較し、自然海岸の豊かを学習 る。 する。 オカヤドカリの生息場、生態的特徴等 オカヤドカリの生息場と生活史を知る。オ について解説する。特に海に幼生を放 カヤドカリの生息にとって海と陸上の植生 つことや、植生帯に生息することを示 帯が、生物的に連続している必要があるこ す。 とを学習する。 打ち上げられた海藻や魚の死骸は、ハ 普段気が付かない生き物がたくさんいるこ マトビムシ、ハマダンゴムシ等の掃除 とを知る。自然のゴミは自然が掃除してく 屋が食べてくれることを教える。人工 れるが、プラスチックやビニールなどは、 物は日本だけでなく、外国からの漂流 自然にはなくならないことを学習する。 してくることを示す。 50 (5) 方向性5 海事に関わる環境利用学習の展開 計画地には野鳥園、人工干潟、人工海浜などの近自然的な環境整備が計画されてい るとともに、プレジャーボートなどの係留施設や旅客船が入出港する港湾の機能の整 備も計画されている。このような港の存在は、地域の暮らしや生活に奇与するのみな らず、有効な学習素材となりうるものである。 したがって、人工島内に整備される港を、効果的に学習素材として取り込むことが重 要である。 そのためには、マリーナの機能を活用したディンギー体験や魚釣り体験、旅客船ふ頭 を活用したクルージング体験、さらには港の機能を学ぶ空間としていくことが重要で ある。 したがって、エコツーリズムや自然環境を活用した環境利用学習のみではなく、「港」 を素材とした環境利用学習を展開していくことが重要である。 図 2-4 海事と環境利用学習の関係イメージ 51 5 環境利用の際のルール作り 参考(小笠原における協定書) 適正な利用のルール等に関わる協定書 小笠原諸島における自然環境保全促進地域の適正な利用に関する協定書(平成14年7月9 日締結)第3条及び第5条の規定に基づき、東京都を甲とし、小笠原村を乙とし、甲乙間におい て次の条項により協定を締結する。 (適正な利用のルール) 第1条 適正な利用のルールは、別表のとおりとする。 2 甲及び乙は、連携して、自然環境保全促進地域の利用者に対し、適正な利用のルールの遵守 について、指導又は勧告を行うものとする。 3 適正な利用のルールは、甲が行うモニタリング調査の結果等を踏まえ、必要に応じ、甲及び 乙が協議の上、変更することができる。 (甲の役割) 第2条 甲は、次に揚げる事務を行う。 (1)都民及び観光客等に対する自然環境保全促進地域指定の意義の周知 (2)東京都自然カイドの養成及び認定 (3)モニタリング調査の実施 (4)適当な利用のルールの実施に対する支援 (乙の役割) 第3条 乙は、次に揚げる事務を行う。 (1)村民、観光客等に対する適正な利用のルールの周知 (2)適正な利用のルールの運営体制の整備 (3)地元関係団体等の取りまとめ及び適正な利用のルールの推進 (4)東京都自然ガイドからの報告の聴取等適正な利用のルールの実施状況の調査 (5)自然環境保全促進地域の利用実績(村民の利用を含む。)の甲への提出 (協議) 第4条 この協定の解釈に疑義が生じた場合及びこの協定に定めのない事項は、その都度、甲及 び乙が協議して定める。 上記協定締結の証として、甲及び乙は、本協定書を2通作成し、それぞれ記名押印の上、各々 1通を保有する。 甲 平成14年9月30日 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号 東京都 代表者 東京都知事 石原慎太郎 乙 東京都小笠原父島字西町 小笠原村 代表者 小笠原村長 宮澤 昭一 平成 15 年度中城湾港泡瀬地区環境保全・創造検討委員会 第1回環境利用学習専門部会資料 52 〔別表〕 適正な利用のルール 1.共通ルール 1 東京都自然ガイドの指示に従う。 2 東京都自然ガイドは、その身分を表示する胸章等を着用する。 3 定められた経路以外を利用しない。 4 植物、動物、木片類、石など自然に存在するものはそのままの状態にする。 5 動物、植物、種子、昆虫などの移入種を持ち込まない。 6 動物にえさを与えない。 7 動物を驚かしたり、追い立てたりしない。 8 岩石などに落書きをしない。 9 ごみは捨てず、すべて持ち帰る。また、海へ投棄しない。 2.個別ルール 名 称 利用経路 最大利用時間 1日当たりの 最大利用者数 制限事項 ガイド一人が担当 する利用者の人数 の上限 南 島 (省略) 2時間 100人(上陸1回当たり15人) 母島石門一帯 (省略) 認定しない 50人 (1回当たり5人) 年3か月間の入島禁止期間の設定 (当面、11月から翌年1月末日までとす る。ただし、年末年始の8日間を除く。 詳細な日程は年度毎に定める。) 鍾乳洞は立入禁止 15人 5人 53