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諸外国の建築コストブックの実態に関する文献的調査(平成 20 年度) 第
諸外国の建築コストブックの実態に関する文献的調査(平成 20 年度) 主席研究員 第1章 1.1 岩松 準 調査研究の目的と概要 目的 事情はそれぞれであろうが、諸外国の建築コスト管理等において、コストブックは一定 程度の役割を果たしていると考えられる。それは一般に建築プロジェクトでは事前の個別 原価計算(積算)が発注側でも受注側でも必要であり、その根拠となる何らかのコスト情 報が求められるからである。事実、諸外国(とくに先進国)において多くの建築のコスト ブックが刊行されている。 日本では財団法人建設物価調査会、財団法人経済調査会がいくつかの物価資料を刊行し ており広く知られているが、公共発注者が定める予定価格算定根拠の提供を主な目的とし ているという事情から、諸外国のものとはやや異なる位置づけにあるとも考えられる。 以上のような観点から、本調査は第一にひろく諸外国のコストブックを探索し、その実 態(歴史や背景、発行状況、利用実態、コスト情報の内容や精度、ほか)について知るこ とを目的とする。これは日本の建築コスト管理の位置づけを明らかにするためにも有益な ことと考えられる。 1.2 調査内容 上記の目的に照らして、本調査では下記の取り組みをする予定であるが、まだ緒に就い たばかりであり、現在は主要国のコストブックの収集を行っている段階である。数年の期 間をかけて順次探索的調査を進める予定である。 (1)各国での建設物価情報誌の発行状況等に関する調査 資料(コストブック)の収集を探索的に行い、必要に応じて発刊者に対して郵送アン ケート調査を行うこと等で、発行状況・利用者・調査方法等についての実態を調査する。 なお、収集するコストブックは価格情報誌そのもののほか、付属するガイドブック等を 含めたものとする。 (2)入手した価格情報誌の内容分析 価格情報の種類(区分・内容)、量、改訂頻度、データの加工法、活用方法、コード化、 一般的資材価格情報・労務費情報についての比較、などを行う。 1.3 今年度の報告内容 今年度は以下の報告を行う。 (1)諸外国の建築コストブックの刊行状況の概要を簡単にまとめる。 (2)米国の刊行物より型枠工事のデータの見方について検討する。 - 88 - 第2章 諸外国の建築コストブックの例示 以下は網羅的ではなく探索的に確認した、諸外国の建築コストブックの例示である。主 要国や地域別にそのタイトルなどをごく簡単に紹介する。 2.1 米国 米国は非常におおくのコスト刊行物がある。代表的なものは R.S.Means の名前で広く知 られている刊行物であり、2009 年版の Building Construction Cost Data は第 67 版を数 える。R.S.Means 社はボストンに本拠を置く建設コスト専門の調査会社である。同社のコ スト刊行物のうち年刊発行のものは表 2-1 の通りである。新築用、改修工事用、住宅用途 に絞ったもの、土木関係、設備関係、概算算出用、労務単価などかなりのバリエーション がある。また図 2-2 にあるようにこれらのコスト刊行物を読み解くためのガイドブックも 充実している。 表 2-1 R.S.Mean のコストブック(2009 年版)の一覧 タイトル RSMeans Assemblies Cost Data 2009※ RSMeans Building Construction Cost Data 2009※ RSMeans Concrete & Masonry Cost Data 2009 RSMeans Contractor’s Pricing Guide: Residential Detailed Costs 2009 RSMeans Contractor’s Pricing Guide: Residential Repair & Remodeling Costs 2009 RSMeans Contractor’s Pricing Guide: Residential Square Foot Costs 2009 RSMeans Electrical Change Order Cost Data 2009 RSMeans Electrical Cost Data 2009 RSMeans Facilities Construction Cost Data 2009 RSMeans Facilities Maintenance & Repair Cost Data 2009 RSMeans Heavy Construction Cost Data 2009 RSMeans Interior Cost Data 2009 RSMeans Labor Rates for the Construction Industry 2009※ RSMeans Light Commercial Cost Data 2009 価格 概要 $254.95 UNIFORMAT II ナンバリングシステムを使用し て、建物アセンプリと平方フィート概算とユニッ トプライス積算に利用する。 $154.95 最も使われ、引用され、尊重されている単価ガイ ドであり、23,500 の建物のユニットコストを提供 $139.95 コンクリート・れんが工事の積算資料 $39.95 住宅用の詳細な積算関係資料 $39.95 住宅用の修繕とリモデリングのための詳細な積算 関係資料 $39.95 住宅用の平方フィート概算に利用する積算資料 $154.95 $154.95 $368.95 $336.95 電気改修工事用の積算資料 電気工事用の積算資料 設備機器工事用の積算資料 設備機器改修工事用の積算資料 $154.95 土木工事関係の積算資料 $154.95 インテリアの積算資料 $336.95 建設労働単価情報(ユニオン) $132.95 アパート、モーテル、オフィスビル、小売り店、 倉庫、社会教育施設、医療施設などの商業建築用 RSMeans Mechanical Cost Data 2009 $154.95 空調機器用の積算資料 RSMeans Open Shop Cost Data 2009 $154.95 建設労働単価情報(オープンショップ) RSMeans Plumbing Cost Data 2009 $154.95 配管工事、消防工事用の積算資料 RSMeans Repair & Remodeling Cost Data 2009 $128.95 修繕工事、リモデリング工事用の積算資料 RSMeans Residential Cost Data 2009 $132.95 住宅価格コスト RSMeans Site Work & Landscape Cost Data 2009 $154.95 外構関係工事用の積算資料 RSMeans Square Foot Costs 2009※ $168.95 平方フィート概算のための資料 Yardsticks for Costing 2009 $154.95 メートル法を利用する地域のための資料(カナダ を含む) (注) http://www.reedconstructiondata.com/rsmeans/cost‐data‐books/ より作成。※印は当研究所で入手したもの で、主要な刊行物である。 このほか、西海岸に本拠を置く Saylor 社の刊行物、同じく西海岸の Craftsman 社(何れ - 89 - も出版社)のコストブックが比較的有名である。また公刊されるものではないが、コンサ ルタントのニューズレター類(当研究所では international construction intelligence, Faithful+Gould with RSMeans 編集を購読している)も多くあり、充実したコスト関係の レポートを提供している。 図 2-1 R.S.Means の主なコストブック 図 2-2 R.S.Means のガイドブック (注)その他に、積算リファレンスガイドブ ック類が多数発行されている。 図 2-3 Saylor のコストブック (注) http://www.saylor.com/ よ り 引 用 。 サンフランシスコをベースに活動す る Saylor Consulting Group が編集。 図 2-4 Craftsman のコストブック (注) 2009 年の年刊刊行物は全部で 11 冊ある。 http://craftsman‐book.com/products/info/cbccostbooks.htm より引用。 - 90 - 2.2 英国 英国には SPON、Wessex、Laxton、Hutchins、Griffiths など各社のコストブックがある。 これらは何れも QS を商売とするコンサルタントが編集に関わっている。ほとんどが年刊で ある。なかでも SPON(出版社名)は有名で、実際の編集は Davis Langdon という QS コン サルタント会社他が担当している。Spon's Architects' and Builders' Price Book の 2008 年版は第 133 版であり、18 世紀から毎年発行されている刊行物である。Wessex の本は QS をはじめとする建設専門職能団体である RICS の子会社 BCIS が編集に協力している。 • Sponʹs Architectsʹ and Buildersʹ Price Book • BCIS Wessex Comprehensive Building Price Book • BCIS Wessex SMM7 Estimating Price Book • Laxtons Building Price Book • Hutchins UK Building Costs Black Book *and CD‐ROM • Griffiths Complete Building Price Book* & CD‐ROM 図 2-5 2.3 英国の各社のコストブック オーストラリア・ニュージーランド 両国とも英国系であり、建設分野の仕組みも本 国に類似していると考えられる。種類はそれほど 豊富ではないが、コスト刊行物は表 2-2 のものが ある。 図 2-6 表 2-2 国 名 Rawlinson 社のコストブック オーストラリア・ニュージーランドのコストブック 書 名 発 行 所 豪州 Rawlinsons Australian Construction Handbook Rawlhouse Publishing Pty.Ltd. 豪州 Rawlinsons Construction Cost Guide Rawlhouse Publishing Pty.Ltd. 豪州 Cordell Building Cost Guide Commercial/Industrial Cordell Building Publications 豪州 Cordell Building Cost Guide Housing Cordell Building Publications 豪州 Cordell Building Materials Price Index Cordell Building Publications ニュージー New Zealand Construction Handbook Rawlhouse Publishing Pty.Ltd. C/O Rawlinson & ランド Co. (注)財団法人建設物価調査会の調査資料等より作成。書名や発行所は現在変更となっている場合もある。 - 91 - 2.4 アジア地域 アジア地域の主な国におけるコストブックは表 2-3 のようなものがある。このうち韓国 については、公共調達制度の歴史が日本の仕組みを入れてきたという経緯があるため、日 本に使われている物価版に非常によく似たものが出版されている。また、シンガポールは 他国のものと違って、民間ではなく BCA(Building and Construction Authority)という 政府機関の刊行物である。図 2-7 のコストブックは 90 年代半ばから刊行開始されたものの ようであり、まだ歴史は浅い。(PWD は Public Works Department:公共事業省の略称) 表 2-3 国 アジアのコストブック 名 書 名 発 行 所 シンガポール PWD Cost Information Quarterly PWD Consultants, BCA シンガポール Construction price update. Singapore: Monthly Building and Construction Authority 韓国 月刊 物價資料 社団法人 韓國物價協會 韓国 総合積算資料 社団法人 韓國物價協會 韓国 建設工事歩掛り(土木・建築・機械) 社団法人 韓國物價協會 韓国 建設工事歩掛り(電気・通信) 社団法人 韓國物價協會 韓国 総合物価情報 Korea Price Information Corp 韓国 月刊 流通物價 社団法人 韓國應用統計研究院 韓国 月刊 去来價格(工事費・管理資料) 大韓建設協会 韓国 月刊 建設物価 大韓建設協会 韓国 綜合物価総覧 社団法人 韓国物価情報 台湾 物価統計月報 行政院主計処 台湾 商品価格月報 行政院主計処 台湾 建築徴信 台湾 営建物価 財団法人台湾建設研究院 中国 遼寧省建築装飾工程予算定額 遼寧省建設庁・遼寧省財政庁編/ 沈阳出版社 中国 遼寧省装飾装修工程消耗量定額 遼寧省建設庁編/ 沈阳出版社 中国 遼寧省建築消耗量定額 遼寧省建設庁編/ 沈阳出版社 中国 建築工程、建築装飾装修工程 消耗量定額参考价目表 沈阳出版社 中国 簡明建築工程予算 中国建材工業出版社 中国 大連工程造价 大連市工程建設造管理処 中国 市場信息 大連市工程建設造管理処 中国 遼寧省工程造價信息網 大連市工程建設造管理処 (注)財団法人建設物価調査会の調査資料等より作成。書名や発行所は現在変更となっている場合もある。 図 2-7 PWD Cost Information Quarterly (シンガポール) 図 2-8 (物価資料) (韓国) - 92 - 図 2-9 建筑装饰工程概预算 (中国) 第3章 3.1 米国 Means 社の物価版資料にみる型枠工事の生産性 検討の概要 収集した各国の物価版資料から読み取るべきことは多く、研究材料の宝庫といえる。言 語の問題もあり、収集した物価版資料の横断的な比較にまでは至っていない状況であるこ とは第 1 章でも述べた。以下は、試行的な検討として、数多い米国 Means 社資料から、下 記の文献の型枠工事の部分を読み解く作業をしてみたものである。 参照資料名: RS Means Building Construction Cost Data 2009, 67th Annual Edition 03 11 Concrete Forming(コンクリート型枠)の価格データの項(pp.42-50) R0311 Concrete Forming(コンクリート型枠)の解説資料の項(pp.756-758) 図 3-1 コンクリート型枠関係の解説記事(部分) (注)Means building construction cost data2009, p.757 3.2 コスト構成要素(Cost factor) 上記資料の解説の記述(図 3-1)をみると、コンクリート型枠工事のコストを構成する 要素として、①材料、②労務の中身があげられている。その内容は日本と大差はない。 (1)Material(材料) 1. lumber 材木 - 93 - 2. rent for metal pans or forms 金属パンや金属型枠のレンタル費用 3. nails くぎ 4. form ties フォームタイ 5. form oil フォームオイル(はく離剤) 6. bolt ボルト 7. accessories アクセサリー(スペーサー、ほか?) (2)Labor(労務) 労務は 2 種類ある。 1. carpenters(大工)・・・erect, remove, repair(組立て、撤去、修理) 2. common labor(普通作業員)・・・clean and move(片付け、小運搬) また、コスト変動要因として、下記をあげている。 ・ 梁や柱のサイズをできるだけ同一とする。 (断面を変える場合には、梁幅ではな く梁の高さを変える) ・ 板仕上げの場合は合板より労務費が 10%高い。 ・ 型枠材の整理や状態管理が悪いと仕上がりコストを高める。 (フォームオイルを 付けすぎると拭き取るのに手間取る、など) 3.3 転用について(Reuse) 型枠の転用に関する積算について、次のような記述がある。 ・ 床や柱の型枠は転用が可能。過度な補修無しに4回か、何とか5回。 ・ 1回の転用ごと 10%の損失を見込む。 ・ モジュールサイズの外壁型枠の場合、20 回以上の転用が可能。 ・ 転用時には、組立て、撤去、片付け・小運搬のコストは初回と同じであるが、10% の材木の損失と 100 平方フィートあたり 1 人工の大工手間分を加算。 ・ 月単位でレンタルされているアクセサリー類の再利用は、初回利用よりも安い。 ・ 5 回の転用を過ぎると、新しい材料が必要になったり、修理が必要になったりす るなどして、それ以上使うことは不合理となる。 以上から、Means 資料では、2~4回の転用の場合の 1 回当たりのコストを下記のよう に計算している。 (なお、日本の積算では「転用率」として標準歩掛り(参考歩掛り)に組 み込まれている項目である。) avg. cost/2 uses =(1st Use + Reuse)/2 avg. cost/3 uses =(1st Use + 2 Reuse)/3 avg. cost/4 uses =(1st Use + 3 Reuse)/4 - 94 - 表 3-1 型枠工事の労務歩掛り(リファレンス・セクションの記述) (注) Means building construction cost data 2009, p758。この表は型枠工事の労務歩掛りを記述するものである。表側 の「Item」は型枠工事のさまざまな部位を表しており、表頭の Hours Required の部分は、型枠製作(Fabricate)、 組み上げ(Erect & Strip)、解体(Clean & Move)の各作業での Unit 単位当たりの作業時間の内訳を示して いる。その合計値が「Total Hours(1USE)」の部分に記入され、本文に説明した要領で 2~4USE の「Multiple Use」部分の作業時間が計算されている。なお過去の Means 社の同タイトル資料と比べてみても、この表の 数字はほとんど変化していない。 - 95 - 3.4 労務歩掛り 労務歩掛りを示しているのは、前ページ表 3-1 であるが、その 1 行目の「Beam and Girder, interior beams, 12” wide」(室内小梁・12 インチ=305mm 幅)を抜き出してみた。 表 3-2 米国の室内小梁の労務歩掛り(図 3-1 の 1 行目) Item Hours Required Unit Fabricate Erect & Strip 8.3 Clean & Move 1.3 Total Hours 1 Use Beam and Girder, interior 100S.F. 6.4 16.0 beams, 12” wide ・・・ (注)Means building construction cost data 2009, p.758。数字は Labor Hour(人時)。 Multiple Use 2 Use 3 Use 4 Use 13.3 12.4 12.0 労務歩掛りは以下の通りである。100S.F.当りの労務費の初回計算は、 Fabricate 6.4 + Erect & Strip 8.3 + Clean & Move 1.3 = 16.0 人時 と算出される。 転用回数を考慮した Reuse の計算(Multiple Use)は、図 3-1 の記述にあるように 1 時 間分の修理時間を足す。 Erect & Strip 8.3 + Clean & Move 1.3 + Add 1.0 = 10.6 人時 を用いて、 2 Use の場合 (16.0 + 10.6)/2=13.3 人時 3 Use の場合 (16.0 + 2×10.6)/3=12.4 人時 4 Use の場合 (16.0 + 3×10.6)/4=12.0 人時 などとなり、上表と整合的は計算となる。 1 square foot = 0.09290304 ㎡だから、100S.F.は 9.29 ㎡である。従って、日本の歩掛 りの単位に変換すると表 3-3 となり、日本の標準歩掛りの数値(次ページに図 3-2、図 3-3 を示す 1)とほぼ同じレベルの数字になっている。日米の労働生産性はこの工種・部位に限 り、ほとんど差がないということは興味深い事実である。 なお、日本側の歩掛りでは型枠の転用回数は、 「損料率」として計算することになってい るが、その値は図 3-2 関係(官庁営繕部)では、普通合板型枠において 27%、打ち放し合 板型枠については 30%であり、また、図 3-3 関係(住宅局)では材料毎に違うが合板 25% で考えることにすると、それぞれは 3.7 回転、3.3 回転、4 回転を意味している。米国の 3use と 4use の中間値である。 表 3-3 米国の転用回数別の労務歩掛り計算(表 3-2 を㎡当たりに換算) 転用回数 1use 2use 3use 4use 100S.F.=9.29 ㎡あたり 16.0 人時 13.3 人時 12.4 人時 12.0 人時 1 1 日=8 時間で換算 2.00 人日/100S.F. 1.66 人日/100S.F. 1.55 人日/100S.F. 1.50 人日/100S.F. 人/㎡ 0.22 0.18 0.17 0.16 図 3-2 は国土交通省大臣官房官庁営繕部、図 3-3 は国土交通省住宅局の監修に関わるものである。型 枠工の労務歩掛りについては前者が 0.18 人/㎡(はり)、後者が 0.16 人/㎡(梁)となっている。 - 96 - ㎡/人 4.65 5.59 5.99 6.19 図 3-2 日本の型枠工事の部位別の歩掛り(その1) (注) 国土交通省官房官庁営繕部監修・財団法人建築コスト管理システム研究所編集「平成 19 年基準・公共建築工 事積算基準の解説:建築工事編」,2007.10, p.341 を引用。 図 3-3 日本の型枠工事の部位別の歩掛り(その2) (注) 国土交通省住宅局住宅総合調整課監修・公共住宅事業者等連絡協議会編集「公共住宅建築工事積算基準・平 成 13 年度版」,2001.12, p.241 を引用。 3.5 投入労務単価の計算 Means 社資料のコンクリート型枠工事の実際単価情報の部分(図 3-4)をみると、Crew C-2 (内容を図 3-5 に示す)という 6 人のチームが施工する。「Interior Beam, job-built plywood, 12” wide, 4use」という最後の行部分で図 3-4 に示した表の見方を説明すると、 1 日の生産数量(Daily Output)は 377 SFCA(Square Foot Contact Area:型枠の見付け - 97 - 面積 S.F.)で、これを換算すると 35.02 ㎡にあたる。そして 1 時間当たり 0.127 人時とい う歩掛り(この値は表 3-2 の 100S.F.当たり 12.0 人時から求めたものと思われる)を採用 している。2009 Bare Cost と書いてある項目は、型枠工事の純工事費(2009 年時点)であ り、1S.F.あたり材料(Material)が 1.40 ドル、労務費(Labor)が 4.95 ドル、合計(Total) 6.35 ドルで、下請経費込み(Total Incl. O&P)で 9.25 ドルだと記述されている。 図 3-4 コンクリート型枠工事の単価計算部分 (注)Means building construction cost data 2009, p.40 Crew C-2 は図 3-5 のようなもので、1 人の監督大工(Carpenter Foreman)と 4 人の大工 (Carpenter)と 1 人の普通作業員(Laborer)の 6 人チームである。この 6 人クルーあた りの労務コストは、Bare Cost(純工事費)で 1 日×6 人分(=48 時間分)で 1866.80 ドル、 Incl. Subs O&P ( 下請経費込み)で 2894.80 ドルとなり、48 時間で割った Cost Per Labor-Hour (1 人時当たりコスト)は前者(Bare Cost)が 38.89 ドル、後者(Incl. O&P)が 60.31 ドルである。なお、上の図 3-4 の 4.95 ドルという労務費は Crew C-2 の労務歩掛り値 0.127 ×38.89 ドルで求められるという関係になっている。 図 3-5 コンクリート型枠工事の Crew C-2 の単価積み上げ計算根拠 (注)Means building construction cost data 2009, p.681 - 98 - この図 3-5 から直ちに判明するのは、 ①1 日の労働時間・・・8 時間 ②Subs O & P・・・Bare costs の約 55%(例えば 65.05 ドル÷41.95 ドル≒1.5506 倍) という事実であるが、①は日本とほぼ同様だといえる。②は日本の下請経費率(その他経 費率)にあたるものではないかもしれないが、日本のその数字が各専門工種の材工あるい は工のみの 12%~20%程度(型枠工事では「材+労+雑」の 12~20%となっている)であ るのと比べると、かなり大きい数字である。米国側が 55%という大きな数字になっている 根拠としては、出版時期はやや古くなるが、Means 社の Means Estimating Handbook 1990, p.26 の Fig.1.15 Installing Contractor’s Overhead and Profit の表(表 3-4 に示す)で、 職種ごとのオーバーヘッドの計算が載っている。その内容は大工(carpentry)について取 り上げると次の通りであり、表 3-4 の E の集計値 51.8%がほぼ上述の 55%と同じレベルの 数字になっている 2。 (②の 55%の中身を示すものだが、詳細については別稿で後日の考察 としたい。) 表 3-4 大工(Carpenter)のオーバーヘッドの内訳 Trade Carpenters A Workers’ comp. Ins. B Average Fixed Overhead C Overhead D Profit E Total Overhead & Profit 15.1% 15.7% 11.0% 10% 51.8% (注)Means Estimating Handbook 1990, p.26 さて、話を戻して、図 3-4 の下 4 行分のコンクリート型枠工事のコストを抜き出して、 日本の単位に換算し、日本の価格と比べてみたい。1 ドル=100 円で換算すると、表 3-5 のようになり、日本の型枠工事市場単価が 3,500 円/㎡程度であることに比べると米国のコ ンクリート型枠単価はかなり高めになっている。 表 3-5 米国のコンクリート型枠工事の施工単価 ドル/S.F. 円/S.F. 円/㎡ 1 use 14.40 1,440 15,500 2 use 10.85 1,085 11,679 3 use 9.85 985 10,602 4 use 9.25 925 9,957 (注) Means building construction cost data 2009, p.40 の表を 1 ドル=100 円で換算。 1 square foot = 0.0929 ㎡である。 3.6 まとめ 以上はコンクリート型枠工事についての日米コスト比較にもなっている。価格情報誌か ら読み取れることはこのように数多いが、触れなかった情報もかなりあることは間違いな い。今後も継続して諸外国のコスト刊行物に関しての多角的な研究に取り組みたい。 2 労務部分の Sub’s O & P の値を 0.55 倍と仮定すると、図 3-4 の材料部分の Sub’s O & P は 0.127 倍程 度(約 12.7%)となっている。因みに、Means 2009, p.11 には、Sub’s O & P は、資材アイテムに対し て最小 5%、平均 10%、最大 15%とあるので、資材部分はこの範囲に入る。 - 99 -