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手形保証 手形保証と人的抗弁 手形行為独立の原則
手形保証 • 手形行為の一つとして、保証である旨を明示して行 われる手形保証がある。 商法Ⅱ 第11回~第12回 11/13,17 – 附従性あり – 独立性あり • 通常の民事保証もありうる。 • 実際に使われるのは、隠れた手形保証。隠れた手 形保証と対比して、上記の手形保証を公然の手形 保証という。 • 手形保証がなされている=その債務者(主として振 出人)の信用が怪しいということを示すものであり、 実際には使われない。 (公然の)手形保証 • 手形保証の独立性 – 保証債務は手形債務から独立である – 被保証債務が方式の瑕疵以外の瑕疵で無効となっても、 手形保証は無効とならない(77条3項、32条2項)。 – 手形行為として見れば手形行為独立の原則(77条2項、7 条)から当然の帰結だが保証債務の従属性との関係で問 題となりうるので規定した。 – 独立性は、債務発生面の規律であり、それ以外の種類・ 性質・消滅などは、手形保証の従属性に従う。 手形保証と人的抗弁 • AがCに対して手形を振り出し、Bが公然の手 形保証を行った。Cが売買契約を履行しない ため、Aは解除権を行使した。CがAに対して 人的抗弁を主張し手形金請求を拒んだため、 CはBに保証債務の履行を求めた。 • このような手形金請求は権利濫用(Ⅶ―25) • 後者の抗弁と同様の状況? 手形行為独立の原則 手形行為独立の原則 請求不可 物的抗弁 • 手形行為は、先行する手形行為を前提に行われる。 • 同一の手形上に行われる手形行為は、それぞれ独 立にその効力を生じ、他の手形行為が、方式の瑕 疵以外の瑕疵で無効であったとしても、効力を否定 されないことを、手形行為独立の原則という(手7)。 – 例:AがBに対して振り出した手形を、BがCに譲渡した。 実はAが未成年であり、振出しが取り消された場合(意思 表示の瑕疵の場合と異なり、未成年取消は人的抗弁とは ならず、物的抗弁であり、Cに対抗できる)、CはBに遡求 できるか? → BがCに行った裏書は、Aの手形行為とは独立であり、 従って、Aの取消如何に関わらず、手形債務を負担する ので、CはBに遡求できる(Bは拒めない)。 遡求不可 A 遡求可 B 振出 未成年取消 C 裏書譲渡 ・Aの振出は未成年取消(物的抗弁)なので、B・Cのいずれにも責任を負わない。 ・Aの取消しにより、この手形振出は無効になる(振出人の債務が消滅)はずだが、 Aの後に裏書を行ったBは、Cに対する遡求義務を免れない。 1 隠れた手形保証 隠れた手形保証 • 手形保証の目的で、手形保証以外の手形行為(通 常は、譲渡裏書)をすることを、隠れた手形保証とい う。 • 形式は通常の裏書であり、隠れた手形保証 であることは、保証人と被保証人との間の人 的抗弁事由となる。 • もちろん保証目的の裏書であるので、隠れた 手形保証であることを知って手形を取得した 者に対して、当然には人的抗弁は対抗できな い。この点に注意。 – 例:CはAから手形を振り出してもらうことにしたが、Aの信 用が怪しいので、Bに保証してもらいたい。このとき、Aが Bに振り出し、BがCに裏書譲渡をする形式をとれば、Cは、 Aが支払わないときはBに遡求を通じて請求できる。 – 裏書の担保的効力(手形法77条1項1号、15条1項)により、 手形保証という方式でなくとも、手形保証の機能を果たす ことになる。 隠れた共同保証 (参考)百選66 • 複数の保証人がいる場合の法律関係。 – 例:AのDに対する債務をBとCが保証する • 通常の保証なら、BとCの負担割合は民465 • 隠れた手形保証だと、どちらかが先 (A→B→C→D)になるため、形式上は、 D→Cの遡求後、C→Bは全額請求できそう。 – 判例:民465条1項適用、再遡求でも、Bは、自己 の負担部分を超えて応じる必要なく、特約がなけ れば負担部分は平等である A Y 隠れた 手形保証 X B 隠れた 手形保証 YとXは、共同で Aの手形債務を保証 →全額遡求に応じる必要なく 半額のみでよいはず 争点 難点? • 形式:A→B→C→Dの裏書で、手形上の権利関係と しては、C→Bは全額遡求可能 • 実質:BもCも、Aの手形振出の際の信用不足を補う ため、隠れた手形保証を行っていた。つまり、二人 は共同保証を行っているわけで、Bは自己の負担部 分のみを支払えばよい。 • 判旨:第1裏書人(B)は、民法465条1項の規定の限 度においてのみ遡求に応じれば足りる旨を主張す ることができ、右の遡及義務の範囲の基準となる裏 書人間の負担部分につき特約がないときは、負担 部分は平等であると解するのが相当である。 • B→Cの、負担部分の抗弁 • A→B→C→D→Eの事例で、B・C・Dの3人が 共同保証の場合。Bが共同保証人の存在を 認識しておらず、かつ、D→Bの遡求の場合 は? • A→B→C→Dで、Dが直接Bに遡求した場合、 BからCには遡求不可(上流には戻れない)。 そうだとすると、誰が先に請求を受けるかで 変わってくる。 2 手形保証と原因関係 • 隠れた手形保証をした場合、手形債務のみ の保証なのか、原因債務も保証するか。 – 判例:保証人は保証の範囲を狭めるのが通常な ので、原則として原因債務の保証までしたとは認 めない。ただし、事実関係によっては、原因債務 の保証を行ったと推認することもある。 手形割引 • 受取人が直ちに銀行に持ち込んだ例だと、手形割 引により、 – 銀行は、受取人から手形を預かり、割り引くか否かを決定 する(振出人が不渡りを出していたり、出しそうな手形は 割り引かない) – 割り引くのであれば、銀行は、受取人に、手形金額-αを 支払う(αは利息を控除したものであり、また振出人の信 用によっても変わる) – 方式は、裏書譲渡である。 • 受取人は遡求義務を負うし、銀取約定には、銀行が手形の買い 戻しを請求できる権利が入っている。 手形割引とは • 約束手形の受取人は、満期まで待って自分 で請求してもよい。しかし、すぐに現金化した いとき、第三者に裏書譲渡する他に、自らの 取引銀行に持ち込んで現金化してもらうこと もできる。 • このことを称して、手形割引という。 手形割引の法的性質 • 銀行実務は、手形割引を手形を使った貸付と考え ている。 • 手形の売買だと考えると、割引の際のαは自由にな るが、手形を担保に銀行が受取人に手形割引代金 相当額を貸し付けているものと見ると、αの金額は 利息制限法の適用を受ける。 • 判例・通説は、これを手形の売買と理解する [Ⅶ―34]。もっとも、売買だと理解するとしても、その 故に利息制限法の適用を完全に免れると演繹的に 考えて良いかは疑問である。 取立委任裏書と手形保証 (公然の)取立委任裏書 • 取立委任裏書は、代理人に手形金を取り立 ててもらうための裏書。 • 手形保証は、手形債務を保証するために行う 裏書。 • いずれも、その旨を手形面上に明示して行う 「公然の」バージョンもあるが、同様の効力は 通常の裏書でも可能であり、通常の裏書の 形式をとる「隠れた」バージョンもある(特に保 証は、「隠れた」ものだけが使われる)。 • 取立委任裏書とは、手形上の債権者が、所持人(通 常は銀行)に対し、手形金の取立権限を与えるため に行う特殊な裏書をいう。 • 「回収のため」「取立のため」などの文言を記載。 • 手形法は、取立委任裏書をすることを認めている (手77条1項1号、18条1項)。 • 取立委任裏書は、通常の裏書と違い、 – 権利移転的効力がない – 担保的効力がない – 資格授与的効力はある 3 取立委任裏書の効力 • 取立委任裏書をしても、その被裏書人に権利が移 転するわけでもなく、裏書人が債務を負担するわけ でもない。ただ、被裏書人に、手形金取得のための 代理権を与えるものであり、被裏書人は、裏書の連 続する手形を有していることで、手形上の権利に関 する一切の代理権を有しているものと推定される。 • 代理権の存在・代理権の範囲(包括的)について推 定が及ぶ。 • 債務者が主張できる人的抗弁は、裏書人(取立を委 任した者)に対して主張できる抗弁に限られる。 (公然の)取立委任裏書の場合 B Cに害意なければ 切断:対抗不可 A B 振出 人的抗弁 C 譲渡裏書 ・Cのところで人的抗弁が切断され、Aは、 Cの手形金請求に対しA→Bの抗弁対抗不可 ・もし、AがCに支払えず、C→Bの遡求後、 B→Aの遡求の段階になった場合、Aは、 A→Bの人的抗弁を対抗できる。 隠れた取立委任裏書 • 隠れた取立委任裏書とは、形式的には通常 の裏書譲渡であるが、手形授受の当事者間 において取立委任の趣旨でなされる裏書を いう。 Cの害意の有無にかかわらず 切断されないので対抗可能(手18②) A 確認:人的抗弁:譲渡裏書の場合 C 取立委任裏書 人的抗弁 隠れた取立委任裏書が 使われる理由 • 形式が簡便である • 満期前に手形割引により資金を回収する権 限も付与する目的があるときに便宜である • 支払を受けた手形金を裏書人の被裏書人に 対する債務に充当する約定がなされることも ある – その実質は、取立委任である – その形式は、譲渡裏書である – つまり、形式と実質が乖離している 隠れた取立委任裏書の法的性質 • 判例の信託裏書説を押さえておけばよいが、論理 的に混乱しないよう、比較して説明する。 • 信託裏書説(判例) – 形式を重視 – 手形上の権利は被裏書人に移転 – 取立委任の合意は当事者の人的抗弁となるにすぎない • 資格授与説 – 実質を重視 – 権利は裏書人に留保される – 被裏書人は、自己の名をもって裏書人のために手形上の 権利を行使する資格・権限を有するのみ 4 それぞれの学説から考えよう • AがBに約束手形を振り出し、BがCに隠れた取立委任裏書 をした。 – AはBに対して人的抗弁を有していた。CがAに請求した。 – AはCに対して人的抗弁を有していた。CがAに請求した。 – Cが破産手続開始決定を受けた。Aは手形を取り戻せる か? – Cが事情を知らないDに裏書譲渡をした。DはAに手形金 を請求できるか?その法律構成は? 変造 • 手形債務の内容を無権限で変更すること。 – 偽造・無権代理と混乱しないように • 変造前の署名者は原文言に、変造後の署名 者は現文言に従った責任を負う(77条1項7号、 69条)。 白地手形の不当補充 白地手形の不当補充 • 通説的な理解としては、白地手形の要件であ る白地補充権は合意によって与えられる。 • 合意に従った補充をすれば問題なし。合意と 異なる補充(不当補充)が問題となる。 • 補充後に取得した者と債務者の関係→手形法10条 で問題なし。 – 満期 – 手形金額 • 合意違反の補充があったとしても、所持人に 悪意・重過失がない限り対抗できない(77条2 項、10条) – Aは、Bに対して、満期を白地とする約束手形を振り出し た。AはBに対し、満期を平成26年12月25日以降とする 条件を付けていた。Bは、満期を平成26年12月15日と補 充したうえで、この約束手形をCに裏書譲渡した。12月15 日、CはAに対して支払呈示を行った。Aは手形金を支払 う義務を負うか? – Aは、Cが補充合意違反について悪意・重過失でない限り、 Bが合意に反して補充を行ったことをCに対抗できないた め、12月15日に満期が到来することになる。 白地手形の不当補充 余談:「重過失」 • 白地手形取得後、自ら補充した者と債務者の関係 は?→10条の問題(Ⅶ―20) • 判断枠組みは同じでも、重過失の存否の判断基準 は異なりうる。 • 手形法には、「重過失」概念が複数登場する (10条、16条2項、40条3項。これに加えて、 17条但書に「害意」) • 「重過失」の内容を理解するうえでは、抽象的 な規範を押さえるだけではなく、個々の状況 を具体的に理解することが必要。 • 具体例とセットにするとわかりやすいだろう。 – 先ほどの例で、Bが補充した後にCに裏書譲渡した場合、 Cが取得した時点で完成手形になっているのだから、合 意違反を知ることは困難(そもそも白地手形で振り出され たこと自体知らないことも多い)。 – Cが、満期白地のまま取得して、Bが「12月10日以降を満 期として補充していい」と伝えていたとすれば、満期のよう な重要な要素を債務者に確認しないことは通常考えづら いため、重過失が認定されやすいだろう。 – 怪しむべき状況がある – 確認する必要があるほど重要な事項である等 5 支払・遡求・権利の消滅 支払呈示 • 満期に振出人が手形金を支払えば、これにより手 形上の全ての権利が消滅する(このことを確保する ために、振出人は、手形と交換でなければ手形金を 払わないことができる→受戻証券性、39条1項)。 • 振出人が満期に手形金全額を支払えなければ、所 持人は、その前者に遡求することができる(77条1 項1号・15条、77条3項・43条・44条)。 • 支払がなされず、消滅時効等で権利が消滅した場 合、公平の見地から、利得償還請求権(85条)とい う制度が設けられている。 • 約束手形の振出(→譲渡)→決済、その決済 を行うために所持人が行うのが「支払呈示」。 • 支払呈示の相手方は振出人であるが、支払 担当者を定めた場合、銀行に対し支払呈示 が行われる。 • 統一手形用紙を使う以上、振出人が当座勘 定契約を締結した取引銀行が支払担当者と して指定されている(統一手形用紙に最初か ら印刷)。 呈示 現実には • 確定日払であれば、満期またはこれに続く2取引日 が支払呈示期間となる(77条1項3号、38条1項)。 • 満期日が休日ならば、休日明けの最初の日が支払 期日となり、そこから呈示期間を起算(77条1項9号、 72条1項)。 • 呈示場所は、支払担当者を置いている限り、支払担 当者の営業所(銀行の支店)となる。 • 支払担当者を置く=支払委託 • 支払呈示期間経過後は、債務者の営業所・住所に おける呈示が必要(Ⅶ―26)。 • 所持人は、自分の取引銀行に取立てを依頼 する。 • 取立委任裏書または隠れた取立委任裏書を 銀行に対して行い、銀行に形式的資格を与え、 手形交換を通じて手形金を取り立てる。 支払呈示の効力 支払 • 付遅滞効(債務者が履行遅滞になる) • 遡求権保全効(遡求権を保全する要件。呈示 しないと遡求ができなくなる) • 時効中断効(消滅時効の進行を中断する) • 手形債務者である振出人による弁済である • 手形金を支払い、手形を受け戻して完了。 • 手形を受け戻さずに支払った場合、支払ったことは、所持人 に対する人的抗弁になるにすぎない→二重弁済の危険 – 支払を受けた手形所持人が手形を返却せず、第三者に譲渡した場 合、手形面に現れていない支払という事情は人的抗弁となるから、第 三者がそのことを知らなければ、振出人は再度手形金を支払う必要 がある。もちろん、支払った後、不当利得の問題となる。 • 手形金額の一部のみの支払もできる(裏書譲渡の場合はで きない)→その旨の記載+受取証書の交付請求可 6 支払の法的問題 • 弁済である以上、真の権利者に弁済する必要があ る。 • 真の権利者でないものが支払呈示してきた場合、弁 済の効力は生じない。 • 権利者推定が働く(裏書の連続する手形を有する) 所持人が実は権利者でなかった場合どうか? – 40条3項で、裏書の連続する手形の所持人に支払った場 合、振出人に悪意・重過失がない限り免責。 – 悪意・重過失の意義は?(Ⅶ―27) – 16条2項の悪意・重過失と違うのはなぜだろう? 40条3項の悪意・重過失の意義 • 悪意 – 単に所持人が無権利者であることを知っていることではな く、無権利者であることを容易に証明して支払を拒むこと ができるのに故意に支払を拒まないこと • 重過失 – 所持人が無権利者であることを証明して支払を拒まな かったことに重過失あること = わずかな注意を尽くせば無権利者であることを立証 する証拠方法を入手し得たのにそれを怠るか、そのよう な証拠方法を有していたにもかかわらず不注意に支払っ てしまった場合 40条3項の悪意・重過失の意義 • 16条2項と同様の文言だが、同じように考え てよいか? – いずれも、裏書の連続有り=権利者として推定 – 善意取得は任意に手形を取得される場面 • 怪しいと感じたら取得しないことも自由 – 支払免責は支払が強制される場面 • 怪しいとしても支払は強制される(取引停止処分もあ る) • 仮に無権利者であることを知っていたとしても、その立 証をしなければ支払を拒めない 手形交換 • 銀行間で互いに手形を取り立てる制度 • 手形交換所における呈示は、支払呈示と扱われる (77条1項3号、38条2項)。 • 銀行ごとに整理され、クリアリングを行い、交換尻を 算出して、日銀の当座預金を振り替えて決済。 • 不渡手形は、翌日の手形交換に組み入れるor午前 11時までに店頭に持参する。これがなければ、手形 は決済されたものと扱われる。 • 全体的なことは、教科書参照。 取引停止処分 遡求 • 6ヶ月間に2回不渡り→取引停止処分 • 手形交換所規則が根拠。共同ボイコットなので独禁 法上の問題もあるが、適法との高裁判例。 • 不渡りが全て処分の対象となるわけではない。 • 約束手形は、支払の信用力を高めるために、 裏書人に担保責任(77条1項1号・15条1項) を負わせる。 • 実質的要件と形式的要件が備わると、所持 人は、振出人以外の自己の前者の誰に対し ても、遡求権を行使できる。 • 小切手・為替手形以外の場合、振出人も遡 求義務により責任を負う。 – 0号不渡事由:形式不備等(そもそも払う必要なし) – 1号不渡事由:資金不足 or 取引無し – 2号不渡事由:正当な抗弁あり • 手形金を支払えないわけではなく、支払う必要がないから拒んで いることを証明するため、手形交換所に対して、取引銀行を通事、 異議申立提供金を提供する必要がある。 7 遡求の要件 • 実質的要件 – 振出人が満期に手形金を支払わないこと(支払 拒絶、77条1項4号・43条前段)。満期前に遡求を 認める例あり。 • 形式的要件 – 支払呈示 – 拒絶証書の作成( 77条1項4号・44条1項→統一 手形用紙で免除) 消滅時効 • 約束手形は手形金請求権を表章しているの で、その時効が問題となる。 – 手形金請求権そのもの • 原因債権の時効期間にかかわらず、3年(70条1項) – 遡求権 • 遡求義務は満期から1年、再遡求権は遡求に応じてか ら6ヶ月(77条1項9号・70条2項3項) – 白地手形については、白地補充権 • 争いあり 遡求の通知・内容 • 遡求権の通知は、遡求義務者に対して行う。 • 拒絶される→拒絶後4取引日以内に通知→通知を受ける→ 通知日後2取引日以内に通知→通知を受ける→通知日後2 取引日以内に通知・・・(と、順次前者に通知していく。45条1 項。) • 遡求を受けることを予め通知し、遡求義務者を保護(資金の 準備/請求を受ける前に遡求義務を履行して利息を節約、 など)。通知を怠ったことによる損害賠償責任を遡求義務者 は負う(45条6項)。 • 金額は、手形金額+満期日以降年6%の利息+手続費用 (48条)。効果は、手形を受け戻して、権利者となり、振出人 に権利行使や再遡求できる(50条・49条)。 注) 準用条文は77条1項4号 消滅時効中断 • 中断事由は、請求など民法一般と同じ – 手形の呈示を伴わない催告でも中断効あり – 中断のために手形を所持する必要はない (Ⅶ―29) – 白地を補充しないままでの白地手形の呈示にも 中断効あり(ただし、請求をするためには、口頭 弁論終結時までに白地の補充は必要。) – 時効中断は相対効 – 手形債権の時効中断は、原因関係上の債権に ついても時効中断効を有する。 白地補充権と時効中断 利得償還請求権 • 理論的には争いがあるところ • 手形金請求権と白地補充権の消滅時効を独 立に考えるか、また、考えるとして何年か。 • 満期の記載のある手形→満期から3年で手 形債務自体が消滅するので、補充権を独立 に考える必要はない。 • 満期白地の手形→補充権の時効(5年)→補 充後手形債権の時効(3年) • 手形上の権利が消滅した場合でも、手形債務者のうち利得 を保持している者に対し、その利得の償還を請求できる(85 条)。 • 手続の欠缺or時効により、一旦成立した手形上の権利が消 滅したことが要件。 • 権利者は、手形の正当な権利者。手形の所持を失っていて も、実質的権利者なら、利得償還請求権の権利者となる。 • 全ての手形債務者に対する権利を失ったことが必要。原因 関係上の権利の消滅まで判例は要求。 • 債務者の利得が必要だが、その判定は困難。 • 指名債権であり、譲渡・行使は指名債権の原則による。 8 手形訴訟制度 公示催告・除権決定 • 民事訴訟法350条以下。 • 手形は、金銭債務の決済手段であり、簡易・ 迅速な権利実現が強く要求されるので、速や かに債務名義を得させることを目的とした特 別な訴訟手続が用意されている。 • 証拠調べが書証に限定。抗弁を主張するた めには、通常訴訟への移行。 • 細かくは、教科書参照。 • 手形は権利と紙が結合したものであるため、紙を失 うと、権利まで行使できなくなる。また、善意取得さ れる危険も生じる。 • このような場合に、権利と紙の結合を解くための手 続。 • 申立て→「公示催告」により権利者に名乗り出るよう 要求→名乗り出ない→証券を無効とする決定+申 立人の形式的資格を回復。 • 除権決定はあくまで形式的資格の回復であり、何か 新しい権利を得るわけではないし、除権決定までい 善意取得が成立していれば善意取得者が有効に権 利を取得する(Ⅶ―31)。 クレジットカード クレジットカード • イシュア(カードを発行、振込依頼人の取引銀行に 相当)・アクワイアラ(加盟店管理会社。加盟店がク レジットカードによる支払を受領できるようにする、 加盟店の取引銀行に相当)・決済ネットワーク (VISAやJCB)の3者が決済に関わる。 • VISAのTuoカードの例: – イシュアが、三井住友VISA – 提携カードの募集主体が大学生協 – カード保有者は、大学生協の組合員限定 VISAとかJCBと いう、ネットワーク (国際ブランド) イシュア アクワイアラ 提携カード ②支払 ③弁済 ①利用 加盟店 利用者 (カードホルダー) クレジットカードによる支払 抗弁の接続 • VISAやJCBとついているのは、そのブランド の決済ネットワークを利用できること。 • 原因取引に瑕疵があったり抗弁が成立して いる場合に、決済手段がその影響を受けな い(無因)のが今までの多くの決済手段。 • クレジットカードは、一定の場合にカード会社 からの請求を拒み、引落を止めるという意味 で、一定の条件付きながら有因の手段である。 • 詳しくは消費者売買で講義できればいいが・・ – 利用者がそのカードを持ち、 – 加盟店がそのネットワークで決済できれば、 – そのブランドを含むカードで決済可。 • 提携カードは、それを発行する主体でのみ使 える支払手段(ハウスカード)+VISAやJCB による加盟店で使える支払手段の組み合わ せで、「どこでも使える」となる場合がある。 9 抗弁の接続 • クレジットカードは、高額の買い物に使われる例が 多い(電子マネーと比較)。 • 問題のある事業者は、金額のみならず、件数の面 でも多くの損失を発生させうる。 • 購入時点で瑕疵の有無を判別できないことが多い。 • したがって、悪質な業者をシステムから排除するこ とのメリットが、他の支払手段と比べ類型的に高い。 • 有因だと決済システムから見てコストがかかるが、 そのコストは最終的には会員に転嫁(損失の最小化 とその配分は別の話であることに注意。損失を個々 人に負担させるのではなく、全体に分散する) 10