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災害時被害把握のためのリモートセンシング 技術の現状と課題

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災害時被害把握のためのリモートセンシング 技術の現状と課題
電力中央研究所報告
建 設 技 術
災害時被害把握のためのリモートセンシング
技術の現状と課題
−配電設備の災害復旧支援への応用可能性−
キーワード:リモートセンシング,配電設備,合成開口レーダ,
レーザ測量,災害復旧支援
背
報告書番号:N10023
景
当所では,地震や台風を対象とする被害推定システム(RAMP)を開発し,主に配電
設備の被害程度を早期に把握・推定するための技術開発を継続して行ってきた(図1)。
しかしながら,RAMP をより効果的に実務で活用するためには,災害時,配電設備に物
理的・機能的に障害を与える周辺施設被害の状況も迅速に把握・推定する技術開発が必
要となっている。これに対して,近年,広域な被災情報を短時間で把握する技術として
リモートセンシングの応用可能性に,大きな期待が寄せられている。
目
的
災害時被害把握のためのリモートセンシング技術の現状と課題を整理し,配電設備の
災害復旧への応用可能性について考察する。
主な成果
1. 被害把握・推定のためのリモートセンシング技術の現状と課題
地震時に広域にわたる周辺施設の被災状況を把握・推定する技術として光学画像の目
視判読,および光学,合成開口レーダ(SAR),レーザ画像の自動判読技術が検討されて
いる(図 2)。光学画像の目視判読は,時間がかかるものの現状でほぼ確立した被害抽出
方式である。一方,自動判読技術は,まだ発展途上であり技術的課題も多い被害抽出方
式である。今後,建物を立体的に計測した 3 次元画像や地震動強度分布などの異種情報
を効果的に活用することで,被害箇所の自動判読精度が向上する可能性がある。
2. 配電設備の災害復旧支援への応用可能性
これまでは,災害時のリモートセンシング情報の供給体制が十分に整備されていなか
ったことから,それらによる被害の把握・推定技術が実際の災害復旧に活用された事例
はほとんどない。このため,既往地震による被害事例を参考に,配電設備の応急復旧に
寄与する目標画像取得時間を 48 時間と設定し,リモートセンシングの各方式(組み合わ
せ)を,被害抽出精度と 48 時間以内の取得可能性という観点から比較した(図 3)。そ
の結果,「レーザ(3 次元計測)+航空機」と「SAR+人工衛星ⅱ」の両リモートセンシ
ング方式が,配電設備を対象とした災害復旧実務に応用できる可能性が高いことを明ら
かにした(図 4)。
今後の展開
本調査を踏まえ,配電設備を含む電力流通設備の災害対応等に,具体的にリモートセ
ンシングを活用する方策について検討する。
Risk Assessment and Management system for Power lifeline (RAMP)
電力中央研究所から複雑な
解析を伴う高度ハザード情
報を試験的に配信
電力会社に設置
電力情報
気 象 庁 HP
から直接
ハザード情
報を取得
入力データ1
①サーバー
(気象/地震 情報システム)
気象庁から
の地震情報
の受信
②クライアント
被害推定システム(RAMP)
冗長性の確保
電力基幹システムとリンク
被害推定
出力データ
被害推定結果
未巡視地域での被害予測
結果を表示・出力
気象/地震発生
1
図 1 被害推定システム(RAMP)の概念
RAMP は,気象・地震情報を基本入力情報
として,状況に応じて取得可能な停電情報,
巡視情報および衛星画像などの災害情報を
有効活用しながら配電設備の被害推定を行
えるところに特徴がある。
プラットフォーム
項目
人工衛星
航空機
ヘリコプター
無人飛行機
(UAV)
軌道の融通
性
悪天候時の
撮影
×
(固定軌道)
○
◎
○
○
×
×
×
撮影範囲
(飛行高度)
広域
(500km∼
1000km)
被害抽出精度
高い
中
狭い
局所的
(300m∼12km) (100m∼2km) (150m以下)
+
センサ
項目
図 2 被害箇所抽出のための画像処理の流れ
被害抽出で用いられるセンサは,光学セン
サ,マイクロ波センサ,レーザセンサである。
これらのセンサからの情報を基に被害抽出す
る方法は,目視判読,光学・SAR・レーザによ
る自動判読技術が現状で検討されている。
カメラ
悪天候時
×
の撮影
夜間撮影
×
SAR:合成開口レーダ
ビデオカメラ
スキャナ
SAR
レーザス
キャナ
×
×
○
×
△
×
○
○
図 3
光学衛星
(目視判読)
人工衛星+SAR
(SAR衛星)
光学衛星
(自動判読)
航空機+レーザ
(航空レーザ)
配電設備の災害復旧に活用できる可能
性の高いリモートセンシング
電力の災害復旧に活用できる可能性の高い
リモートセンシング方式(プラットフォーム+
センサの組み合わせ)は,悪天候や夜間でも撮
影できる可能性が高いものが望ましい。
SAR 衛星(技
術開発が進ん
だ場合)
48 時間以内
の取得可能性
低い
配電設備の災害復旧に活用できる可能性の高いリモートセンシング方式
(プラットフォーム+センサの組み合わせ)
人工衛星+カメラ
(光学衛星)
航空レーザ
(三次元計測)
高い
SAR 衛星
(後方散乱強度)
低い
図 4 リモートセンシングの被害抽出精度と目
標取得時間内での画像取得可能性
配電設備の応急復旧に効果的な目標画像取得
時間内(48 時間以内)にて画像取得の可能性が
もっとも高いプラットフォームとセンサの組み
合わせは,SAR+人工衛星ⅱとなる。被害抽出精
度のもっとも高い組み合わせは,航空機+レーザ
(3 次元計測)の組み合わせとなる。
関連研究報告書
N07027「地震後の災害情報を逐次処理する配電設備被害推定の基本モデル−ベイ
ジアンネットワークを適用した被害推定システムの開発−」(2008.5)
研究担当者
朱牟田 善治(地球工学研究所 地震工学領域)
問い合わせ先
(財)電力中央研究所 地球工学研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/よりダウンロード可能です。
[非売品・無断転載を禁じる] ©財団法人電力中央研究所 平成23年5月発行
10−005
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