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GML 開発小史
GML 開発小史 中井 章文 ㈱NTT データ 〒212-0058 川崎市幸区鹿島田 890-12 三井ビル西館 29F Tel: 044-540-4345 , E-mail: [email protected] 抄録: GML(Geography Markup Language)は、Open GIS Consortium が中心になって開発 を進めている、XML によって地理情報を転送及び格納するためのコード化仕様のことである。 GML は、今年の 12 月にバージョン 3.0 に更改しようとしているが、そのバージョンでは日本で規格 化が進められている G-MXLとの整合化を図る等、日本の GIS 関係者にも関わる事項が最近にな って現れつつある。筆者は、GML の前身である Simple Features XML の時代から、その開発に 関わる機会に恵まれてきた。本稿によって、この GML のバージョン 3.0 に至るまでの開発小史を紹 介するとともに、日本の GIS 関係者の視点から見れば妙に感じるところがないわけでもない、GML 開発者コンセプトや思いを伝えられれば幸いである. The history of GML development Akifumi Nakai NTT DATA CORPORATION Mitsui Bldg., West 29F, 890-12, Kashimada, Saiwai-ku, Kawasaki-shi, 212-0058, Japan Tel: 044-540-4345 , E-mail: [email protected] Abstract: GML(Geography Markup Language) is the coding specification by XML for transmitting and storing geographic information which Open GIS Consortium is developing. Although GML is going to renew to the version 3.0 in Dec. 2001, in the version, the way also related to the Japanese GIS persons concerned is recently appearing, such as attaining harmonization with G-XML which is going to be standardized in Japan. The writer has been blessed with opening in connection with the development from the date of Simples Features XML which is the past of GML. With this paper, the development short history to version 3.0 of GML is introduced. Moreover, the writer wants to tell a GML developer's concept and thought. It may be strangely felt, if it sees from the view of the Japanese GIS persons concerned. 情報の転送と格納のための XML[2]によるコード 1. 誕生の経緯と最近の動向 化仕様のことです。最近は、日本で開発が進めら GML───日本で標準化が話題となってい れている G-XML[3]との仕様整合化を目指すこと る G-XMLとは、名前が似ていますが、違います。 が、OGC と、G-XML の仕様を取り纏めている 正式名称は、Geography Markup Language、 (財)データベース振興センターとの間で合意さ GIS の標準仕様“OpenGIS”を推進する組織 れたと報道されたこともあって、GML の三文字を [1] OGC が中心になって開発を進めている地理 耳にした方もいらっしゃるかと思われます。 -1- OGC の中では、この GML の仕様を専門的に 効なのでしょうか?最近は、様々な組織から、地 開発するための部会として、GML SIGが組織化 理情報の XML 化のための様々な規格が出てき されており、議長のロン・レイク氏(Galdos inc 社 ており、XML 利用の気運という面では賑やかな 長)を中心に機能しています。 のですが、市場で盛大にブレイクしている話は聞 ロン・レイク氏によると、OGC における GML の きません。大体、XML そのものが最近になって 起源は、表 1に示す通りです。 知れ渡ってきた技術であり、地理情報ビジネス以 外の分野においてもXMLの成功は今後に期待 表 1 GML の起源 1997 年 1997 ∼ 1998 年 1999 年 1999 年 OGC 副社長のカート・ビューラ氏による、地 理情報記述の XML 利用の試み Web Mapping SIG の立ち上げ(GIS を Webインフラで利用できるようにすることが不 可欠になってきた) XML による地理情報記述の規格化の提案† (NTT データ、Galdos Inc それぞれから) OGC が提唱する空間データの抽象モデル である Simple Features に基づく XML 仕 様である SFXML(Simple Features XML) の開発 といったところですから、しようがないかもしれま せん。したがって、筆者の独断的な予測でしかな いのですが、地理情報ビジネスモデルのブレイク スルーを伴うならば、YES。そうでない場合はデ ータ交換手段の一つとして利用される程度の普 及、というのが筆者の見解です。 この理由を以下に段階的に説明します。 まず、ハブデータ仕様の必要性です。これまで 表 1の†は、筆者にとっても思い出深いイベン の GIS は、エンジニアリング指向・小規模・スタン トです。XML 1.0 の勧告が W3C から出て 1 年 ドアロン型が中心であったため、空間データ交換 立つか立たないかという頃でして、XML 利用を が必要になったとしても、相手に応じた手作業中 訴えるプレゼンを行ったはいいが、会場の反応 心のフォーマット変換で対応する方式でやり過 は、 「よく分からないけど XML は本当に使える ごすことができました。しかし、Webの爆発的な普 の?」といった感がなきにしもあらずでした。 及に伴い、電子化された地理情報を、イージー しかし、結局は、SFXML という GML の叩き にネットワークで交換できることが近年求められ 台仕様の開発に、OGCとして取り組むことになり、 るようになってきました。実のところ、それが その SFXML を発展させた、GML の勧告書は OpenGIS を後押しするトレンドなのですが、この 今や 2.0 版[4]を数え、GML SIG の参加者は、 交換のために、一々相手に応じた変換をするの OGC の部会の中でも最大になっています。 は非効率であり、共通のルールを決めて、皆それ 更に、2001 年中には、GML 3.0 を出す予定 に則って空間データを入出力できるようなハブ になっています。この GML 3.0 の狙いのひとつ データ仕様を定めようじゃないかという話になる は、G-XML との仕様整合化です。GML も G- のはもっともなことです。(図 1) XML も地理情報を XML によってコード化して 計算機システムで活用するといった点で目的は 一致しています。今日では、GML、G-XML、何 れの関係者もかなりの数になっていますが、両者 協力して、利用者を混乱させることなく、両者の 長所を同時に使えるような仕様整合化に進んで 欲しいものと思っています。 2. XML は本当に使える? さて、XML は本当に地理情報ビジネスに有効 -2- 地理情報ビジネスモデル自体を変革しないと、 共 通 的 な ハ ブ デ ー れ ば 、 ど の 相 手 に 類 の イ ン タ フ ェ ー ハ ブ デ 仕 様 を 地理情報コミュニティにおける XML のブレイク はないと思います。 ー 導 この予想の根拠は、HTML の Web ビジネス における位置付けと用途からのアナロジーにあり 相 手 毎 に 仕 ど の 相 手 に 対 し ます。HTML が、昨今の Web ビジネスブームを 生む上で重要な役割を果たしたことに異論があ 図 1 ハブデータ仕様の効果 る人はいないでしょう。誰でも、HTML を使用す では、このハブデータの記述のために、XML を利用することは正解なのでしょうか?XML は、 れば、世界に対して電子コンテンツを発信できる。 任意のデジタルコンテンツの構造と内容を、Web ちょっとしたコツを覚えれば、クールなホームペ に分散させて簡易に利用できるようにする技術 ージを作って、広告ビジネスをしたり、商品を売る です。HTML 同様に、タグで囲まれた文字列で ための仮想商店を開くこともできる。このようなホ 記述されるため、可読性が高く、あらゆる計算機 ームページがネット上で連携して、相乗効果を生 環境で処理可能であり、ネット流通するオープン んで、様々な新たな Web サイトが出てくる。当然、 なハブデータを記述するにはぴったりです。 利用者も増えてくるので、Web にアクセスするた めのハードウェアやインフラサービスが売れる. . . 。 反面、データ量が大きくなりがちで、かつ、セキ ュリティ保証が難しいという短所があります。この とまぁ、ビジネスの輪がごろごろ自転しながら 短所を引き合いに出して、現在の一般的なスタイ 大きくなっていくのですが、さて、HTML で記述 ルに則って空間データの整備をされている方か した電子コンテンツそのものは売れているでしょ らは、 『自分たちは様々なデータ交換手段を既に うか?というか、作者は売るつもりがあるのでしょ 持っている。大容量のコンテンツを同業の相手に うか?否。ほとんどの HTML 文書は、文書その 出す場合だけならば、わざわざ、手持ちのシステ ものだけでビジネスすることを考えて作られてい ムを改良するコストまで掛けて、XMLで出すほど ません。ブラウザで“ソースの表示”コマンドを実 のメリットはない』とのご意見を訊かされるときが 行すれば、その HTML 文書の中身を見たり、コ あります。 ピーすることは簡単にできちゃいます。文書に妙 なセキュリティガードを付けたり、不透明な独自の ごもっとも。実は、筆者もその通りだと思います。 XML ベースではありませんが、ずいぶん前から、 バイナリフォーマットにして流通しにくくするよりも、 GIS の世界には、ハブデータ仕様相当のものが 開けっ広げにして何処にでも流通できるようにす いくつかあり、その中には、標準化団体によって ることを優先するのが Web 流です。そうやって、 きちんと規定されたものや、市場においてもそこ この HTML 文書を介して、より多くの人にプレゼ そこ普及しているものもあります。XML ベースの ンテーションできるサービスの方でビジネスをす ハブデータ仕様を、これらの従来からの空間デ ることを目的にしているからです。今や流行遅れ ータを整備する同業者間での交換手段と同様の の言葉かもしれませんが、HTML 文書は、Web 一方式に過ぎないと考えてしまうと、前述のネガ とサービスとのバリューチェーンを生むきっかけ ティブな視点を覆す勢いが付かない程度の普及 にしか過ぎません。 で終わるでしょう。XML の利用が、これまでの空 この成功モデルを、XML と地理情報ビジネス 間データの交換作業だけでなく、新たなビジネス に当てはめるには、そのビジネスモデルの変革 チャンスの獲得に繋がるということに気付き、地 が必要です。つまり、XML で記述した空間デー -3- タを売買する等のビジネスばかりを考えているだ が起きるのではないでしょうか?そのときは、 けでは、現状通りの方式が効率的かもしれませ XML が持つポテンシャルを巧く活かして、その んが、地理情報ビジネス市場も現状のまま広がら 機会を脅威でなくビジネスチャンスと捉えたいも ないでしょう。空間データは、ビジネスをするため のです。 の呼び水にすぎないのであって、XML を介して、 3. 果てしなき(?)標準化への道 空間データから連携できる、その他の様々なネタ XML 1.0 の技術勧告が出てから、まだ 3 年し でビジネスすることを指向するべきだと思います。 (図 2) かたっていませんが、地理情報の XML 化のた めの仕様は、GML だけでなくかなり色々出てい ます。OGC 内部では、ここ最近は、空間データ の XML 化は、GML で一本化しようとしています が、それでも時折、OGC 参加者から体系を異に するものが提案されることがあるぐらいですから。 まぁ、見方を変えると、それだけ XML 活用意欲 が旺盛ということなのでしょうか。 実際、今年のリエージュで開かれたOGC 技術 ビ ジ ネ ス 委員会では、GMLとは異なる二種類の XML 化 の 仕様が紹介されました。ひとつは、ISO の中で、 地理情報の電子化に関わる標準を検討するた XML XML XML XML めの第 211 番技術委員会(ISO/TC211 [5])にお ける、第 19118 番プロジェクト Geographic バ リ ュ ー チ information - Encoding[6]です。もうひとつは、 同じくISOの中で、交通情報とその制御システム 空 間 デ ー の標準を検討するための第 204 番技術委員会 (ISO/TC204)で検討されている GDF と呼ぶ地 図 2 XML を活かした地理情報ビジネス 理 デ ータファイルの仕様の XML 版である しかし、これは、GIS 業界のタブーに触れてし XGDF です。 まうかもしれないラジカルな提案ではあります。空 特に、前者の ISO/TC211 19118 については、 間データの大部分は、たくさんのお金と手間暇を 掛けて作られたものです。これまで通り、空間デ わざわざ(会場が欧州だったから、わざわざという ータを有料にしたコンテンツビジネスを狙うのが、 ほどでないかもしれません)技術委員会に参加し 当面はローリスクでリーズナブルだとは思います。 にきた ISO/TC211 のオラフ・アステンセン議長と、 しかし、最近よく訊く『公共で整備している電子地 19118 のプロジェクトリーダであるデビッド・スコ 図のフリー化は自然な潮流であり、それと同じ地 ガン氏両名から説明され、GMLとの仕様整合化 図を持っているだけではビジネスにならなくなる』 を検討することを提案していました。これについ という話や、空間データそのものでなく、空間デ ては、OGC 側のメンバーからいろんな意見(ポジ ータに関連する非 GIS 的なサービスでビジネス ティブ、ネガティブ何れも)が出たのですが、 『この することにシフトしつつある最近の GIS 市場のト テーマについては、今回が初めての議論であり、 レンドを見ていると、遅かれ早かれ何時かは、 纏めるのは無理だ。まぁ追々考えていこう』という GIS 市場の構造まで立ち入った変革が起きるの ような感じで締めくくられていました。 -4- 大体、ISO/TC211 19118 は、ISO/TC211 る。各プロパティは、名前・型・値を持つ。地物を 19100 番台の各プロジェクト仕様に基づいた地 構成するプロパティの数や、名前・型は、地物の 理情報を交換するときに必要となるコード化ルー 種類(地物型)によって異なるが、必ず、点・線分 ルを示すものであり、使用するためには、他の 列・多角形等の幾何形状を表現する型のプロパ 19100 番台の各プロジェクトで定めている仕様 ティを持つ。地物の集まりを特に、地物集合と呼 に則ることを前提にしています。ここでいう、各プ ぶが、地物集合それ自身も地物と見なされ、独自 ロジェクトの仕様には、地理情報の概念モデル のプロパティを持つことができる。 や、その応用の図式(アプリケーションスキーマ) 分かったような分からないような、何か禅問答 も含みます。片や、GML は、XML 化対象のオ の受け答えのような感を受けますが、要するに、 ブジェクトの概念モデルやアプリケーションスキ 地物とは、名前の付いたプロパティのリストであり、 ーマは、OGC 内での他の部会で検討されている 中でも特に、幾何形状プロパティが重要なのか ものを使用しています。このあたりは、互いの根っ なというぐらいは何となく分かります。実際、GML こに相当する部分であり、ISO/TC211と OGC そ 1.0 で記述する文書の型を定める主な文書型定 れぞれで大分違う面があるし、各組織の関係者 義(DTD)は二種類あり、幾何形状プロパティだ の思い入れも違います。従って、ISO/TC211 けを纏めた Geometry DTD を、各プロパティを 19118と GMLを仕様整合化するということは、こ 組み合わせて成り立つ地物の構造を定める の根っこにまで辿って調整する議論が必要であ Feature DTDとは別に定めています。 以上のことから、XML 1.0 に関する基礎的な り、仕様整合化するためには、かなりの時間を要 XML 知識があれば、GML 1.0 による文書は大 することでしょう。 体、図 3に示すような構造になるのかなと想像で グローバルレベルで一本化した標準なぞ、夢 きます。 物語だとも言われますが、各標準候補それぞれ 長所・短所があるので、巧く良いとこ取りした規格 < 地物集合> < 地物> が出て欲しいものです。 < 幾何形状を示すプロパティ> 幾何形状 4. Simple Features をコード化する 1.0 版 </ 幾何形状を示すプロパティ> < その他のプロパティ> それでは、GML の特徴を、バージョンを追っ その他のプロパティ てご紹介します。GML 1.0 は、冒頭でお話しした </ その他のプロパティ> とおり、空間データを可能な限り単純に抽象化し </ 地物> たモデルである simple features に基づいて、 < 地物> < 幾何形状を示すプロパティ> 地理情報を流通及び格納する XML 化の仕様 幾何形状 であり、利用者の指向に応じて三つのプロファイ </ 幾何形状を示すプロパティ> ルを認めています。 < その他のプロパティ> その他のプロパティ simple featuresとは、GML 1.0 の技術勧告 </ その他のプロパティ> 書によると、次のような説明になります─── </ 地物> ・ ・ (中略; 地物を示す要素が並ぶ) ・ feature(“地物”と訳される)は、実世界の現象を 抽象化したものである。狭義には、地球における </ 地物集合> 場所と結びつけられている現象を指す。従って、 図 3 GML 1.0 による文書の構造のイメージ 実世界のデジタル表現は、地物の集合といえる。 もう少し、突っ込んで考えてみます。例えば、 地物の状態は、プロパティの組合せで定義され “道路”という地物を明確に表現したい場合は、 -5- どうすればいいのでしょう。GML 1.0 において、 Schema を使用して、幾何形状、地物それぞれ 利用者が最も労力少なくして利用できる方式で に分類される様々なデータ型を定義してあり、利 あるプロファイル 1 では、 “地物”要素の属性として、 用者はこのデータ型を継承して新たなデータ型 “型名=”道路” ”を与えるとしています。(図 4) を拡張できます。つまり、GML 1.0 のプロファイ ル 2∼3 で実現しようとしていた、利用者側での < 地物 型名= ”道路”> ・ ・ (中略; “道路”を示すプロパティが並ぶ) ・ </ 地物> サブタイピングによるデータ型の拡張を、定式化 できているわけです。また、DTD より強力な型付 け機構である XML Schema で記述したスキー マ情報も合わせて、交換相手のシステムに教え 図 4 プロファイル 1 における“道路”の XML 化 でも、可読性が高い点が、XML の長所の一つ ることで、文書化した空間データの応用構造を伝 だったはずです。もう少し、直感的に分かりやすく えることができます。このあたりのメカニズムは、 するために、図 5に示すような記述が考えられま ISO/TC211 19118 におけるコード化サービスの す。実は、この方式が、プロファイル 2 です。地物 ものと似ています。 の XML 化については、GML 1.0 が提供する ISO/TC211 19118 では、概念モデルを記述 Feature DTD をそのまま使用せず、利用者が、 できる何らかの言語を使用して、コード化対象の 独自に文書モデルを拡張します。つまり、利用者 空間データのアプリケーションスキーマ情報を記 が、 “地物”のサブタイプとして“道路”という地物 述し、そのスキーマに則って、空間データをコー 型を定義するのです。 ド化します。このスキーマ情報と、コード化した空 間データ(“インスタンス”と表現している)を受け < 道路> ・ ・ (中略; “道路”を示すプロパティが並ぶ) ・ 取った相手は、スキーマ情報を基に、コード化さ れた空間データをデコードし、自分の側のシステ </ 道路> ム に 取り込 むというメカニズムで す。XML 図 5 プロファイル 2 における“道路”の XML 化 Schema は、この『概念モデルを記述できる言 しかし、このプロファイル 2 においては、 “道路” 語』に該当するというわけです。(図 6) という地物型の定義を利用者が勝手に行うだけ 概 念 モ デ ル を 記 であって、この型定義のためのフレームワークが 提示されていません。そこで、プロファイル 3 では、 内 部 ア プ リ ケー ス キ ー RDF Schema[7]を使用して、この問題を解決しよ うとしています。実は、後ほど述べるように、バー 内 部 デ ー タ ベ コ ー ド 内 部 イ ン ス タ ジョン 2.0 では、XML Schema[8]を使用して、問 ア プ リ ケー ス キ ー マ 内 部 ア プ リ ケー マ ス キ ー デ 化 コ ー イ ン ス タ 内 部 デ ー タ ベ 内 部 イ ン ス タ 題解決の決着を図ることになるのですが、GML 1.0 の勧告書が公開された当時(2000 年 5 月) 出 は、XML Schema 仕様の行き着くところがまだ す 側 の シ 交 換 受 け 取 る 側 の 図 6 ISO/TC211 19118 コード化サービス概念 不透明であり、この問題のソリューションとして、 6. G-XML と仕様整合化する 3.0 版 RDF Schema が一番良いと判断していたのでし ょう。 GML 2.0 の技術勧告書で述べられている設 計目標のひとつである、 『段階的にモジュールを 5. XML Schema で規定する 2.0 版 組み合わせ、あるいは拡張する、今風のやり方で 前述したとおり、バージョン 2.0 では、XML システム(インターネット GIS)を構築するための -6- マ ド の土台』は、バージョン 2.0 において XML Temporal Schema を使用することで、一応の達成ができて Spatial Locator いるものと思います。 だから、バージョン 3.0 では、このメカニズムを Unit of Measurement 踏襲し、表現力や機能を増強するためのモジュ ールを追加する(具体的には、XML Schema で 地物を構成する一属性である時 間を記述できるようにします。 住所・郵便番号や、場所に関連 するキーワードで、位置を特定で きるようにします。 単位系を記述できるようにしま す。 7. GML 開発者の興味深い指向 記述した何種類かの xsd ファイルを追加する)方 そして、この GML 3.0 では、G-XMLと仕様整 さて、OGC に関わる GML 開発者と作業を共 .. にしていると、何かノリが違うなと感じるときが 合化を図ることが目標として掲げられています。 多々あります。日本での GIS 関係者との議論で この点については、GML 側関係者と、G-XML はすんなり通じるはずの話が通じないことや、そ 関係者が協力し合って検討しているところであり、 んなことまで考える必要あるの?と不思議に思う まだその内容をご紹介できる段階ではありませ ことがあります。 向で、開発が進められています。 んが、ロン・レイク氏曰く、GMLと G-XML は、そ 筆者の個人的な見解との相違故という場合も れぞれの目的や開発のスタンスがかなり違い、そ ありますが、OGCという海外の GIS 関係者を中 れぞれ異なった長所や機能があるので、よく似て 心とするコミュニティ全体の指向と、日本の GIS いる場合よりも逆に仕様整合化しやすく、両者を 技術文化とのギャップではないかと興味深く感じ 組み合わせて互いに補完し合えるように仕様整 る場合もあります。参考までに、このような点をい 合化することで、より強力なサービスを提供でき くつかご紹介します。 るだろう、とのことです。 ① 地物絶対(?)主義 表 2は、GML 3.0 で追加しようとしているモジ 地理情報コード化のための、ほぼ全ての型が、 ュール群に相当する議論項目の一覧です。項目 スーパクラス「地物」を継承した派生型である は、今後の議論に応じて増減することになると思 べきだと考えています。 いますが、この中に、G-XML のアイデアに基づ 地図の上に、チョコチョコっと追記したメモって くものがいくつかあることに気付かれるでしょう とても有意な情報になることが多々ありますが、 か? これも電子化すると、 「地物」なのでしょうか? 表 2 GML 3.0 開発作業項目の一覧 GML Model and Syntax Geometry Extensions Topology Coverage Point of Interest/ Area of Interest Default Styling Metadata Support GML の仕様全体に関わる抽象 モデルやシンタックスを検討しま す。 記述できる幾何形状の種類を増 やします。 トポロジーを記述できるようにしま す。 カバレツジを記述できるようにし ます。 ある地点や、ある地域に関する情 報を簡易に記述するために特化 したデータモデルを考えます。 空間データを視覚化する際に参 照するスタイル情報を記述できる ようにします。 メタデータと連携できるようにしま す。 ② ストロング・タイピング 非常に厳格な型付けを行おうとします。徹底 的に地理情報を抽象化・モデリングし、それを そのまま実装仕様にも反映しようとします。 だから、これもあれもとごっちゃまぜにした型は 受け入れてくれません。例えば、G-XML では <POI>で、ある場所から撮影したデジカメ写 真をコード化できますが、彼らに言わせると、こ の デ ー タ は 、 <Feature> → <DynamicFeature> → → <POI> <PointOfView> → <ViewPoint>と脈々と 継承してきた型によってコード化されます。 「ク -7- ラスの爆発」って言葉がありましたが、それを危 . るのように繋がっている“あらゆる事象”を、オフィ 惧しなくても良いのでしょうか? ス、自宅あるいは出先の電子機器で、世界中何 処に行ってもシームレスにトラバースできる── ③ 標準型の提供まで/アプリケーション領 ─このようなサイバーワールドを実現するメカニ 域には踏み込まない ズムにおいてこそが、XML のポテンシャルが最 汎用性を追求します。だから、内容モデルが何 大限に発揮される、と思っています。 も決まっていない抽象型の提供のみの場合が OpenGIS の 最 近 の パ ン フレットには、 あります。具体的にすると、アプリケーション仕 “ 様を左右してしまうからというのが、その理由で Everything happens somewhere. Somewhere is everything...”という書き出しで す。 始まり、 『万物の事象は地理空間と必ず関係する だから、GML だけでは地理情報をコード化で ため、地理空間を処理する IT 分野を主流として きません。各アプリケーション領域毎にアプリ 見なし、高度化を図るべきである』と結構気合い ケーションスキーマの規格化が必要なのです。 が入ったキャッチコピーが示されていますが、 XML がこれを実現するためのソリューションにな ④ 実装し易さは二の次? る可能性はあると思います。 ①∼③だけで、そう思いませんか?この理由 参考資料 は、まだ、ありますが、紙幅の制約から挙げる [1] Open GIS Consortium, のはやめておきます。 http://www.opengis.org/ ちょっとネガティブに書きすぎた感があります [2] XML, が、このあたりの課題を、G-XMLと整合化するこ http://www.w3.org/XML/ とによって解決できれば良いものと思っています。 [3] G-XML, http://gisclh01.dpc.or.jp/gxml/ [4] GML 2.0, 8. 実用化は何時? http://www.opengis.net/gml/01- 冒頭でも述べたとおり、XML ベースの地理情 029/GML2.html 報を本格的にサポートし、ビジネス的に成功して [5] ISO/TC211, いると言える製品は、まだ出ていないと思います http://www.statkart.no/isotc211/ が、XMLで記述した空間データをインポートした [6] ISO/TC211 19118 り、エクスポートできるGIS が売れるようになれば、 Geographic information - Encoding, XML は地理情報マーケットにおいて実用化さ http://www.statkart.no/isotc211/pow.ht れたと言えるのでしょうか?それとも、XML で記 m#19118 述された空間データが世の中に出回れば、実用 [7] RDF Schema, 化されたと言えるのでしょうか? http://www.w3.org/TR/2000/CR-rdf- 筆者の考えを繰り返すと、XML で記述された schema-20000327/ 空間データに基づいて既存の GIS ソフトウェア [8] XML Schema, を利用することができるようになるよりも、XML で http://www.w3.org/XML/Schema 記述されたフリーな空間データが巷に出回り、そ ... れから得られる“何処か”を示す情報からいもづ -8-