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二次曲線近似を用いた太陽光発電システムの最大電力点追従制御
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title 二次曲線近似を用いた太陽光発電システムの最大電力点追従制御 Author(s) 泉, 勝弘; 辻, 峰男; 山田, 英二; 小山, 純 Citation 長崎大学工学部研究報告 Vol.29(53) p.193-197, 1999 Issue Date 1999-07 URL http://hdl.handle.net/10069/5073 Right This document is downloaded at: 2017-03-29T21:25:43Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp 長崎大学工学部研 究報 告 第2 9巻 第5 3号 1 93 平成 1 1 年 7月 二次 曲線近似 を用 いた太陽光発電 システム の最大電力点追従制御 泉 山 田 勝 英 弘 *・辻 二 *・小 峰 山 男* 純* Ma xi mum Po we rPo i ntTr a c ki ngCo nt r o lo fPV Sys t e mwi t hQua d r a t i cAppr o xi ma t i o n by Ka t s u h i r oI Z UMI *,Mi n e oTSUJ I *,Ei j i YAMADA* a n dJ u nOYAMA* Thi spa perpr e s e nt sama xi mumpowe rpoi ntt r ac ki ngc o nt r o lme t hodwi t hqua dr a t i ca ppr o xi ma t i o n. Toge ne r a t ema xi mumpo we rf r om t hes ol a rc e l l ,at e r mi na lvo l t a geoft hec e l li so bt a i ne df r o mpa r a bol i c c ur vet hr o ug ht hr e epoi nt sne a rope r a t i ngpo i nt . Thee xpe r i me nt ls a ys t e mi sc o ns t uc r t e dwi t ht hi sme t hod andDSPc o nt r ol l e r .Thes o l a rpo we ri sc o nve r t e di nt ot hr e e pha s eACo nebyI GBTvo l t a ge t ypePWM i nve r t e r . t まえがき 我 が国のエネルギー使用量は年 々増加の一途 をた ど 価 格 を販売電 力料 金 と同程度 に設定 され る ようにな り, より一層の普及が見込 まれてい る。 っているが,エネルギーの大半 は依然 として石油,石 太陽光発電のエネルギー源である太陽の 日射量 は時 顔,天然 ガスな どの化石燃料 を消費す ることによって 間的な変動 が大 き く,従 って得 られ る電力 も不安定で 得ている。我 が国ではオイルシ ョックを契榛 として, ある。我 が国では時間による変動以外に,季節 に よる 様 々な新 エネルギーの研究 ・開発が進め られた。特 に 変動 ,地域差 もきわめて大 きい。 また,太陽電池 は低 最近 では,地球環境問題 との観点か ら太陽光発電や風 価格 にな った とはいえ,まだまだ高価であ る。 このた 力発電な どの 自然 エネルギーが,その ク リーンさか ら め,常 に太陽電池 か ら最大の電力を引 き出す最大電力 改めて見直 されてい る 1)・2)。太陽光発電 では,結 晶 点追従制御 が広 く研究 されてい る。 これ らの最適 な動 系シ リコンの太陽電池 が実用化の段階にあ り,多結晶 作点 を求める方法 には,太陽電池両端の電圧 または電 8%を達成 している。 これに よ り シ リコン も変換効率 1 流 を常 に小刻みに変化 させ る方法 と,太陽電池のモデ その応用分野 も広 が り,ク リーンなパ ワーを供給 す る ル を 用 意 し て こ の モ デ ル か ら求 め る 方 法 が あ 自然発電の中で も特 にその利用法の研究 は活発 にな っ る 6)∼9㌧ 後者 の方法では,モデル を実際 の太陽電池 て きてい る 3)∼ 5)。 の特性 に完全 に丁致 させ るのが難 し く,太陽電池系の 近年 にな って系統 連系技術 ガ イ ドラ イン が改訂 さ 制御 に高度 な演算 を必要 とす る。 れ,従来逆潮流な しで系統連系 していた ものが,逆潮 本論文では,太陽電池両端の電圧 を小刻みに変化 さ 流 も可能 とな り,太陽光発電システムを利用するこ と せ る方法を改 良 した二次曲線近似 を用 いた最大電 力点 が可能 となった。さ らに,炭酸 ガス発生抑制のために, 追従制御 を開発 した。 これは,現在 の動作点電圧 とそ 太陽光発電や風力発電 によって発生 された電 力の売電 の前後の動作点での 3個の電 力を二次曲線で近似 して 平成 1 1 年 4月2 3日受理 *電気電子工学科 ( °e pt .o fEl e c t r i c a la ndEl e c t r o ni cEngi ne e r i ng) 1 9 4 泉 勝 弘 ・辻 峰 男 ・山 田 英二 ・小 山 純 最大の電 力 を発生 す る動作点電圧 を求め る方式 であ る。 この方法を実際の系統連系用の太陽光発電 システ GBT 電圧 テムでは太陽電池で得 られた電力を三相 I 形 PWM インバー タに よ り三相交流に変換 し,電源 系統 に送 っている。 Fi g.1 0Ve r v i e wo fpho t o vo l t a i cs ys t e m. 0 ≡≡享 ≡ 二三 三 00 50 1 L N dd只■ ムに適用 して,実験 によりその有効性を示す。本シス 0 5 0 1 00 1 50 2 0 0 t圧 VM Fi g. 4 pVc uⅣeo fs o l a rc e l l . 2 最大電力点追従制御 太陽電池一個か ら得 られる電圧 は lV 以下 なので, Ta bl e1 Pa r a me t e r so fs o l a rc e l l . 三洋電撒株式会社 AMP1 8 6 0 1 8 W 6 0 V 型式 出力 最適動作電圧 セル1 個の大 きさ セルの数 l l mmx2 9 2 mm 2 8×4個 0. 3 61 ㌔ パネルの表面漬 これをい くつか直列に した ものをひ とつのモ ジュール に し,さ らにこのモジ ュールを直並列に接続 して太陽 光発電 に使用 している。 これをインバータで交流に変 換 して,電力系統 に接続 している。 この様子 を図 1に 示す。 本 システムで使用 した太陽電池 の仕様 を表 1に示 00, 0 001 X,外気温 す。 この電池 1枚 を太陽光下照度 1 塵l o. 0℃に置いた ときの特性 を図 2に示す。同国の特 性 は図 3に示す等価回路 10)∼12) のセルが直列に 11 2個 0. 4 接続 された もの として表す ことがで きる。実験では表 0. 3 鼠並列接続 している。 これにより三相 インバータを働 1のモジ ュールを 2枚直列接続 して,さらに これを 4 20 V の電圧 を得 ている。 これ ら かせ るのに十分 な約 1 の太陽電池を先 ほ どと同 じ条件 で測定 した ものを図4 5 0 ・ 2 に示す。 この図の ように最大の電力を発生する動作点 0 . 1 は一 つ存在す るが,最大点は素子の温度や 日射量 によ り絶 えず変化する。 0 0 20 t 40 60 80 圧V Fi g. 2 Cha r a c t e r i s t i co fs o l a rc e l l . この最大点を求め るために,従来,小刻みに太陽電 池両端電圧を変化 させて発電電力を測定 し,変化前後 で比較 を行い最大電力点付近 に追従す る方式が用い ら れていた。 この従来方式では,最大電力点近傍には到 達で きるが最大電力点 に到達するのは難 しく,小刻み な振動を常 に繰 り返 している必要がある。そ こで, 3 点の電力により最大電力点に追従する方式を新たに開 発 した。電圧指令値 l 甥 を刻み幅 AVの等間隔 にス テ ップ変化 させた ときの 3点の電圧 Vl-V2-AV, V2,Vl-V2+AV に対応す る電 力を Pl,P2,P3 とした とき, これ らの 3点 を通 る二次 曲線の橿地 γ は次式で表 される。 Fi g. 3 Eq ui va l e ntc i r c ui to fs o l a rc e l l . V-V2 -iI( v J2 _V Jl ' ) 2 c2 :p P;L-( ' v: :y v3) ) 2 w q2 rp Sj ( 1 ) 1 95 二次曲線近似 を用 いた太陽光発電 システムの最大電 力点追従制御 P3-Pl 2 P31 2P2+Pl ( 2 ) V - V2- 4L V しか し,実際のシステムでは A/ D コンバー タ等 か ら入力され る検 出値 に誤差や ノイズがあ るため,あ る 程度大 きな AVを使用 し, Pl<P2か つ P2>P3 ( 3) の範 囲で二次曲線近似 を行 う方 が望 ま しい。 この範囲 外 にあ る ときには,範囲内にな るように AV ご と Vl, V2, V3 をず らしていけば よい. た とえば ,Pl<P2 <P3 の とき, Vl - V2, V2 - V3, V3-V3+AV ( 4) とず らし,条件 を満たす ようにす る。本システムでは AVを太 陽電池 の最 適動 作 電圧 の約 8% にあた る10 [ Ⅴ] に している。 ( a) Hos t . ( b) DSPmai n. Fi g.7 Fl owc har t sofc ont r olpr ogr am. T T Maxi mum +. i ' Pld ao n To r , l , q ㍗■0 + 十 V' V' _V d c T l pl d 円 V .2 C v.PWM Fi g.5 Exper i ment a ls ys t em. l q i n P v W ○r M t Or l u l d . i 岳 l v Fi g. 8 Phot ovol t ai ccont r ols ys t em. ( b) I GBT i nve r t e r. 3 実験 3.1 実験装置 図 5に示す実験装置は電流値 を検 出す る A/ D コン F コンバー タ, バー タ,太陽電池電圧 を検 出す る Ⅴ/ A コンバー タお よび PWM 内部状態量 を出力す る D/ ( a) Cont r oluni t . ( C) So l arce l lpanel . Fi g.6 Phot ogr aphsofPV s ys t em. 発生回路 か ら構成 されてい る。 この装置全体 を図 6に 写真で示す。 また,制御 はパ ソコンの拡張 スロ ッ トに 挿 入 された DSP ボー ドで行 う。パ ソコン ( NEC PC )は DSP ボー ドへの制御 プ ログラムの ロー ド, 98 01 1 96 泉 勝弘 ・辻 峰男 ・山 田 英二 ・小 山 純 DSP の コン トロール ,制御指令の入 力,制御 ゲ イン の初期化 ,パ ソコン との通信 ,制御演算, インバー タ 表 1か ら 2枚直列の 4組並列で構成 された太陽電池 0 9 に示す。 p の制御 を担 当す る. この様子 を図 7のフローチ ャー ト % ︻ ] ^ouo !#山 の変 更,状態表示等 を担 当す る。DSP は制御用 回路 の最適太陽電池両端電圧 は 1 20 V であ る。 この直流動 作電圧 Vdc-1 2 0 V,変調率 1で三相正弦波 PWM イン バー タが出力で きる交流電圧 は 100 110 120 130 140 1 50 160 v ≦宗 u v1 vd c -73・ 5 V Vdc【 V】 ( 5) Fi g.9 Ef f i c i e nc yofPWM i nve r t e r . であ る。 このため,常 に電力を系統へ送電で きるよう に, インバー タの三相線間電圧 を少 し低 めの E-50 V としてい る。 これを変圧器 で昇圧 して三相 200V の配 電線 に接続 してい る。 図 8に示す本システムの制御系は 2重のループで構 成 され, メジ ャーループ として直流電圧 PI制御系が あ り,指令値 は太陽電池最大電力点追従制御 に よ り計 算 された値 が使用 され る。 この出力 と検 出 して きた電 源側電流 か ら PI制御 を行 い, インバー タ出力電圧指 令値 が清算 され る。 3.2 結 果 図 9に照度 11 0, 0001 Ⅹ 外気温度 1 0. 0℃の場 合の, 90% 以上の変換効率が得 られ るこ とが確認 で きる。 図1 0に二次 曲線近似 を用 いた太陽光発電システムの 0 0 ー20 2 4 ー ー P ^L N3P^ 出力電圧 が最大 にな る動作電圧付近 ( 1 20V) では, 0 4 ■ EO 系統連系用 インバー タの実測効率 を示す。太陽電池の Fi g. 1 0 Expe r i me nt a lr e s ul to fqua dr a t i c a ppr o xi ma t i o n. 最大電 力点追従制御 の実験結 果 を示 す。 同図 Vdc で ステ ップ変化 しているのが太陽電池両端電圧の指令値 で,振動 しているのが実際の両端電圧 であ る。 また, Poc で振動 してい るのが, インバー タ出力電 力の推定 値 で,ステ ップ変化 してい るのが 250ms遅 れたその 平均電力であ る。本システムでは太陽電池の出力電流 を検 出 していないので,制御系 内部 で推定 された系統 電圧 e d m と d軸電流 i dの積 か らインバー タの出力電 力を求めている。 この とき,系統 の三相電圧不平衡等 Fi g. 1 1 Expe r i me nt a lr e s ul to ft r ac ki ngc o nt r ol . に よ り電源一周期の間では出力電力は一定 しない。 こ のため,電源のサ イクルで出力電力の平均値 を とる必 同国では,最初 の電圧 1 20V, 1 1 0 V,130V での電 力 要 があ る。 そ こで,追従 に必要 な電圧変化 の間隔 を P2,Pl,P3 が Pl<P2<P3 であ るか ら,10V だ け 500ms に してい る。 これは,太陽電池両端電圧 の ス ず らした 1 20V,1 30V,1 40V において二次 曲線近似 を テ ップ変化 に伴 う過渡現 象 が約 1 00ms持続 してい る 用 いた最大電 力点追従演算 を行 っている。 ため過渡現象終 了 に250ms待 ち,系統電源周期 の整 2. 0℃で照度 が95, 000か ら11 5, 000 図 11には温度 が 1 数倍 であ る250msの平均 インバ ー タ出力電 力 を太陽 1 Ⅹ へ変化 した時 の応答 を示 す。 この図で,太陽電池 電池の出力電力 とみな してい るか らであ る。 の電圧 Vdc は指令電圧 11Cに追従 しなが ら一定 に制 二次 曲線近似 を用いた太陽光発電 システムの最大電 力点追従制御 御 されてい るため,太陽電池 セル に直射 す る光 エネル ギーの変化 は太陽電池電流 Zd cの増減 で表 され る。 こ れ らの応答 よ り,二 次曲線近似 を用 いた太陽光発電 シ ステムの最大電 力点追従制御 が示 されている。 4 あとがき 本論 文 では ,DSP を用 いた系統連 系用 の太陽光発 1 9 7 SI CE,3 5 ,5, ( 1 9 9 6 ),3 3 3 3 5 9 5)石川 ・小用 :太陽光発電 に よる太陽 エネルギーの 有効利用 ,平成 6年電気学会全国大会 ,1 6 7 5 6)富 田 :特 集 太陽光発電 - 2 「太陽光発電 の周辺 技術」,電気学会論文誌 D,1 1 5 , 4, ( 1 9 9 5 ) ,2 2 0 2 2 2 7)大庭 ・岩淵 :太陽電池パネルア レイの最大 出力簡 電 システム を構築 した。 この システムに二次 曲線近似 易制御法 ,電気学 会論文誌 D,1 0 8, 2, ( 1 9 8 8) , を用 いた最大電 力点追従制御 を適用 し実験 を行 った。 この実験 に よ り,照度 が変化 して も本方式 に よ り最適 1 4 3 -1 5 0 8)大西 ・高 田 :太陽電池 の最大 出力制御方式の比較 な動作点が維持 で きるこ とが示 された。 また,交流側 と昇降圧 チ ョッパ 回路 を用いた制御特性 ,電気学会 電流,太陽電池両端電圧 の 3個の瞬時値 と一 つの時間 論文誌 D,1 1 2 ,3, ( 1 9 9 2 ) ,2 5 0 -2 5 7 ( 系統 の電源位相)のみを検 出す るだけで系統連系が 9)大庭 ・藤巻 ・依 田 :光発電 システムの最大 出力制 御 ,電 気学 会論 文誌 B,1 1 0,1 0, ( 1 9 91), 1 1 2 9 - 達 成で きる こ とが示 された。 1 2 3 5 参 考 文 献 1)大野 :太陽光発電技 術開発の歩み,電気学 会論文 誌 D,1 1 2 ,( 1 9 9 2 ) ,9 41 1 9 8 5 ) 2)桑野 :太陽電池 とその応用,パ ワー社 , ( 3)浜川 :特集 太陽光発電 - 1 「 太陽光発電 とその 意義 」,電気学会論文誌 D,11 5 ,4, ( 1 9 9 5 ) ,2 1 5 - 21 6 4)黒 川 ・他 :ミニ特 集 太 陽 光 発 電 シ ス テム ,∫. 1 0 )大庭 ・藤巻 ・江 田 :太陽電池モ ジ ュールの動 的等 価 回路 ,電 気 学 会 論 文 誌 D,1 09,8,( 1 98 9), 5 42 5 4 8 l l ) 大庭 ・藤巻 :太陽電池モ ジ ュールの シ ミュレー タ, 電気学会論文誌 D,1 1 0 ,4, ( 1 9 9 0 ) ,3 6 ト3 6 8 1 2 )田中 ・石谷 口 ・山田 :太陽電池 の出力特性 に基づ く模擬電源装置 ,電気学 会論文誌 D,1 1 3, ( 1 9 9 3 ) , 7 5 3