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第2部(PDF:2.2MB) - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構

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第2部(PDF:2.2MB) - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構
第二部 ニットアパレルの生産管理
第 1 章 ニットアパレル生産管理とは
第 2 章 原価管理
1 コスト要素
2 コスト計算の実際
3 正確なコスト計算を阻害している要因
第 3 章 工程管理
1 日程計画
2 編立生産の日程管理
3 2 次加工(縫製、リンキング)の日程管理
4 工程管理を困難にしている要因
第 4 章 品質管理
1 ニットアパレル製品の品質内容
2 品質管理の実務
3 不良の原因と予防策
4 PL法に対応する社内体制
第 5 章 外注管理
1 ニットアパレル製品の外注生産
2 外注管理の問題点
第 6 章 情報管理
1 コンピュータによる情報管理
2 パソコンによるシステム事例
第二部 ニットアパレルの生産管理
50
第 1 章 ニットアパレル生産管理とは
ニットアパレル生産の管理上の難しさはその多様性にある。素材・受注構造・製品種類・製造過程
などに個別企業ごとの特徴があるので定型的なニットアパレル生産管理というものは存在しない。イ
レギュラーな要素データに詳細な管理数値を求めると管理のための費用を極端に押し上げてしまうこ
とになる。
管理の目的は個別製品の主要工程を掌握できること、生産実態の全体像を描けること、予測コスト
と実績コストの比較と問題点の把握ができることなどに絞り、その次のステップでさらに精度を段階
的に高めていくことを目指すべきものと考える。
生産管理者は一般的な管理技術についての知識を得るばかりでなく、パソコンによる分散処理的手
法も取り入れ、各企業にふさわしい独自の管理システムを構築していくことが求められる。
ニット製造企業は経営活動の大半が生産活動で、
を安く、早く、楽に作ることが可能となる。
それを管理する機能が生産管理である。
定番ものを量産したり、人手や時間に余裕があっ
た時代には、管理が雑で、精度が悪くても人手でカ
図表 2 − 1 はニットアパレルの生産業務の流れを示
バーし、どうにかこなすことができた。しかしなが
したもので、その生産形態は他のアパレル製品と同
ら、市場が拡がり、そのニーズに応じた高品質、高感
様、企画(アパレルメーカー)と生産(生産企業、工場)
度なものを迅速に、できる限り低価格で供給するこ
が分離しているケースが多いが、生産企業が編地や
とが求められ、しかも多様な品種を少量(月に数十種、
製品提案を行ったり、自社企画に取り組むケースも
1 ロット数十枚∼)でもこなしていかなければならな
みられる。
い状況のもとでは、そうした成り行き管理や人手に
企画をアパレルメーカーが行なう場合、生産企業
よるカバーには限界があり、科学的で綿密な管理が
における生産活動は、その依頼を受けて、サンプルを
必要となる。
試作することから始まる。原価見積を行い、単価交渉
広い意味での生産管理は生産の工程や生産方式を
の後、アパレルメーカーの展示会を経て受注となる。
無駄のないように設計、改善するとともに、企画・設
受注後、生産計画に入り、日程計画が立てられ、資材
計から生産・出荷までの活動を計画し、実施した結果
調達と生産準備がなされる。
をチェックし、対策を取り、改善を行なう活動であ
実際の生産は糸素材が編立工程に投入されて始ま
る。
り、品目によって不要な工程もあるが、編立準備、編
こうした管理の効果を上げ、生産目標や生産計画
立て、ソーピング・縮絨、編地セット、裁断、縫製・
の達成度を高めるには、高度で安定した固有技術と
リンキング、加工、仕上げ、検査、包装を経て製品が
それに関する技術データが整備されていることが前
完成し、出荷、納品される。
提であり、生産技術の向上と共有のものとして蓄積
このように生産企業としてのモノ作りは、糸素材
されていることが重要なことはいうまでもない。
から各パーツを編み、縫製によって組み立て、必要に
生産管理は具体的には顧客のニーズを満たす製品
よって加工を加えて製品化されるのであるが、工業
作りの過程で、生産の 3 要素(人、物、設備)を効率よ
としての生産活動は、単にモノを作る固有の技術の
く働かせ、需要の 3 要素である品質、工程、原価の各
みでできるわけではなく、それらを支え、うまく運用
管理をすることが基本となる。これらの管理項目の
するための管理の技術が加わって始めて、良い製品
内容とその関連を図表 2 − 2 に示す。
第二部 ニットアパレルの生産管理
51
図表 2 − 1 ニットアパレル生産業務のフローチャート
(1)商品企画∼生産計画
ニットアパレルメーカー
(卸商)
ニットアパレル生産企業
(工場)
提案
編地(製品)開発
(サンプル管理)
企画
(試作設計)
(サンプル用糸手配)
サンプル依頼
依頼
サンプル作成準備
(工場試作設計)
仕様書、パターン、
糸、副資材
サンプルチェック
自社企画
サンプル作成
一点見本、
展示会(各色)見本
工業設計、仕様の確定
『品質管理』
生産基礎データ(作業方法、 『工程管理』
時間)の把握
(作業改善、作業管理)
修正
仕入値決定
原価見積
『原価管理』
本生産用糸、資材手配
*
展示会
プレゼンテーション
展示会
プレゼンテーション
(発注)
小売
企業
〔 本生産 〕
・生産企業に対する工程管理、
品質管理等のチェック
・先上げ見本の確認
・生産品の検収
(染色業)
受注
本生産用仕様、パターン
(数量、納期)
小売企業
(消費者)
資材、工程、人員、日程、作業の計画
生産計画
『工程管理』
手順計画
工数計画
日程計画
(人員、設備、資材、外注計画)
生産計画表:
工程別、品番別着手、完了予定
内製、外製、
(外注計画、外注管理)
加工指図書:品番別、工程別加工明細)
資材の手配、
管理
糸商、原糸メーカー
資材調達、(資材管理)
*
資材問屋
生産
(2)生産工程
加工指示
生産工程
《外製》
《内製》
外注企業
自工場
『外注管理』
(受注)
*資材投入
《糸素材》
編立準備
巻返し、ワキシング
生産統制
実績報告 進捗管理(生産期日、数量、品質、コスト)
『工程管理』
『品質管理』
糸素材受入検査
不良品伝票
生産日報
(工程別、品番別)(各工程:中間検査)
編立
ガーメント、パーツ、付属
『原価管理』
糸重量ロス
糸素材ロス、
残糸
寸法、傷、汚
れ
ソーピング、縮絨
編地セット
仮縫い・下蒸し
編地カット
ロス
裁断
《副資材》
縫製
寸法、傷、汚れ、検針
リンキング
《副資材》
加工
刺繍、プリント
仕上げ
アイロン、プレス
検査
(補修)
《副資材》
包装、保管
下げ札付、袋箱詰
出荷(納品)
輸送
(先上げサンプル→
アパレルメーカーの確認)
(製品在庫管理、納品管理)
製品検査(完成品検査)
寸法、目付、品質、検針
不良品(返品)
ロス
第二部 ニットアパレルの生産管理
52
図表 2 − 2 管理項目とその関連
管理目標
管理要素
管理工程
原価管理
・製品コストの低減
・企業利益の確保
工程管理
・納期の確実化、迅速化・
数量の確実化
(目標原価)
・材料・資材費
・外注費
・労務費
・経費 直接(変動)費
間接(固定)費
(目標納期、数量)
・生産日程
・生産数量
企画・設計 ・原価計画
・負荷と能力のバランス配慮
(コストの低減:最適な材料、生
産方法の選定)
〔原価計算〕
生産計画
〔計画原価の維持(改善)
:作業工数、資材等の節減〕
〔納期、数量の確保〕
資材調達
・最適資材・調達ルートの選定
(資材費の低減)
〔計画原価の維持、改善〕
・資材管理
(遅れ、不足の防止)
〔納期・数量の確保、生産性の
改善〕
生産
(生産統制)
・実績原価の把握、検討
(計画原価と実績原価との対比
→処置)
(コスト低減) *
↓
企画・設計
生産計画
の初期段階での検討、改善が効果
的(源流管理)
品質管理
・市場ニーズに応じた
品質の確保
・品質の信頼性向上
(目標品質)
・定量的品質
寸法、重さ、度目、素材、色、
縫目伸び等
・定性的品質
風合い、素材感、バランス、
感性(品位)等
・品質設計
(要求品質の確保、信頼度の向
上)
〔設計品質の維持(改善)
:不良品質の防止、品質の均一
・手順計画(工程分析、工程設
化〕
計)
・工数計画
・日程計画等
・進捗管理
・余力管理、現品管理
(日程計画と生産実績
との対比 →処置)
・資材の品質確保
(資材受け入れ検査)
〔設計品質の維持・改善、
次工程への品質保証、
バラツキの低減〕
・品質検査
(設計品質と製品品質
との対比→処置)
* (品質保証)
*無駄の削減
設備の低可動、稼働率
資材の低歩留まり
手持ち、滞留
不良手直し等
アパレルメーカーが企画し、生産企業がモノ作り
イルを生産し(編立て)、さらに組立工程(縫製)によ
を担う場合、管理上でまず問題となるのは相互の意
り製品化するのに対し、紳士既製服ではテキスタイ
思の疎通と緊密な連携である。納期、原価、品質のい
ルは原料として与えられ、分解加工の裁断と組立加
ずれも生産段階では、計画の遂行と改善努力が求め
工の縫製を経て製品化される点である(図表 2 − 3)。
られるが、基本的なところは、企画設計段階の寄与が
横編ニットの生産が糸の編立てから始まることは、
大きいため、その源流段階での企画サイドと生産サ
織物などのテキスタイル素材に依存する他のアパレ
イドの綿密なツメが必要で、効果も大きい。
ル生産と違い、素材レベルからの差別化がはかれる
こと、糸素材があれば製品化ができ、追加生産も容易
生産段階におけるニットアパレル(横編)と他のア
なこと、また、この段階での企画変更にも対応しやす
パレル、例えば紳士既製服の大きな違いは、横編ニッ
いという弾力性のあることが大きな利点である。
トが糸原料を組み合わせ、パーツとしてのテキスタ
しかしながら、この編立工程の特殊性がその後工
第二部 ニットアパレルの生産管理
図表 2 − 3 ニットアパレルと他のアパレルの生産
工程の違い
53
ニットアパレルの生産においても生産管理の考え
方や一般的な手法は他業種と基本的に相違はないが、
原 料
ニットアパレル生産
糸
㎏単位
生産特性
他のアパレル生産
生産特性
第1工程
第2工程
第3工程
ニットアパレル生産の特性や各企業の規模、生産品
編立
裁断
縫製
目、生産方式などの業務形態に合わせて、手法や重点
1人単位
1人単位
管理項目を選定し、実態に即した形で工夫して管理
パーツ単位
組合せ→分解
組 立
織生地
裁断
縫製
m単位
1人単位
1人単位
分 解
組 立
を進めていく必要がある。
本書では横編ニット生産を中心として、生産をす
るうえで基本的に重要な原価管理、工程管理、品質管
理とニットアパレル生産で多く利用される外注加工
の管理、コンピュータを応用した情報管理について、
現場の実務に重点を置いて述べることとする。
程の裁断、縫製工程に管理上の問題点を与えており、
それらの内容は、どの企業にも当てはまる最善の
他のアパレル生産管理と際だった違いを発生させて
手法というわけではなく、実務から得られた一つの
いる。
具体的手法と理解されたい。各企業の業務のなかで
また、編立工程は糸からパーツを編む組み合わせ・
ノウハウをさらに蓄積し、管理水準をさらに上げる
分解型の工程で、そのなかの工程数は少なく、機械
よう努力されることを望みたい。
化、自動化が進んだ設備型生産といえ、縫製工程は
なお、布帛を中心としたアパレルの生産管理に関
パーツをアパレル製品にする組立型の工程で、作業
するテキストとしては、
『アパレル生産管理Ⅰ/生産
工程も多く、人手のかかる労働集約型生産である。こ
システムとメーカーの業務』
、
『アパレル生産管理Ⅱ/
のように両工程は性格もかなり異なり、管理のポイ
縫製工場の業務』(いずれも繊維産業構造改善事業協
ントにも違いがある。
会刊)があり、生産管理の基礎知識から実践的手法ま
図表 2 − 4 にニットアパレル生産と生産管理の特質
で詳しく言及されているので参考にされたい。
をまとめる。
第二部 ニットアパレルの生産管理
54
図表 2 − 4 ニットアパレル生産と生産管理の特質
商品企画
情報の収集、分析にもとづいて、どういうものを作るかを決める。
その仕様と概略設計を行なう。
○多くはニットアパレルメーカー(卸商)が企画を行い(見越生産)
、ニットアパレル生産企業が
受注して生産を行う(受注生産)ため、その発注形態もシビアになり、原価決定もアパレルメ
ーカー主導である。
ただし、ニットアパレル生産企業(工場)が素材持ちで製品売りの形態をとることが多く、企
画への関わりが強い。編地の提案はもとより、製品の提案を行う場合もある。また、自社企画
への取り組みも見られる。
○ファッション性と輸入品等との競合から、高い感性要素(感性的品質)、生産タイミング(クイ
ックレスポンス、短納期)
、製造コストが一層重視される。
○企画・設計はニットの特性、生産技術を十分理解し、それを踏まえて行なうとともに、生産サイ
ドへその意図を的確に伝えることが必要である。
試作
企画したものを実際の製品の形にして、確かめる。プレゼンテーション用の見本を作る。
その製作のなかで、作り方、必要な時間、品質、コストなど製造方法と仕様をツメる。
(本生産に向けての詳細設計、工業設計)
○企画から試作段階で品質や原価が概ね決まるため、ここでの改善、工夫の効果が大きい(源流管
理)
。
生産計画
工業的に本生産するための生産方法(材料、設備、人員、工程等)の設計とスケジューリングを
行なう。
○生産方法
・編立工程と縫製工程という異質の工程を含み(管理の二元性)
、全工程が複雑で長い。
編立工程は分解型、設備型生産で設備のバランス、予防保全による稼働率がポイント。
縫製工程は組立型、労働集約型生産で組立素材の品質、日程合わせ、労務管理、作業管理がポ
イント
管理単位が変わるため、数量管理がしにくく、工程の収率や歩留りの見込が難しい。
・糸素材は不安定さがあり、使用糸量の正確な予測が難しい。また、難編成素材は編機の稼働率を
落とし、編地不良を起こしやすい。
・編機はゲージにより汎用性が低く、機種により機能、性能に差が大きい。ミシンは手作業が必要
であり、自動化は極めて難しい。
・糸素材、編組織等により、編地は極めて多様であり、標準化が困難である。また、裁断、縫製に
独特のノウハウが必要である。
・オペレーターの個別技術に依存する比率が高い。
・生産工程の中で、外注委託加工の利用が比較的多く、内製と混在している。
○日程計画
・生産品のシーズン性
・受注時期(期近、期中、飛び込み)
○生産品の複雑な混在、同時進行の調整
・品種(服種、シーズン別、取引先別)
・本生産(新規、追加・リピート、飛び込み)
、見本生産
○小ロット化
・立ち上がりロス(段取りの工夫、習熟度の向上)
生産、
企画・設計したものを、計画通りにきちんと生産する。
生産統制
計画
(生産計画)
処置
(期日、数量、品質等の
トラブルがあれば対処)
検討
(計画と実績の差
をチェック)
指示
作業分配
日程計画(表)
加工指図(書)
指示
改善策、計画変更
報告
生産実績
数量、時間
不良品(伝票)
実施
(生産)
内製各工程
外注委託加工
第二部 ニットアパレルの生産管理
55
第 2 章 原価管理
ニットアパレル生産企業においても、国際化にともないコスト競争力は極めて重要な課題となって
いる。
原価管理の目的は原価を低減し、計画した原価を維持していくことにあるが、そのためには原価の
構成内容とその算出方法を十分に把握する必要がある。
しかしながら、ニットアパレルの生産では、糸素材の見積りなど極めて不確定な多くの要因があり、
それらを合理的に、精度よく算定し、原価を管理していくことによって、収益性を向上させていくこ
とが望まれる。
製品の原価を下げることは一つにはユーザーに安
このような企業環境のなかで社内的に対応する手
い製品を供給でき、二つには企業にとっては利益に
段としては、できる限り損益分岐点を下げる企業の
つながる極めて重要な管理となる。原価管理は物や
経営的対応と、生産現場においては可能な限りのコ
労力の節約や稼働率の向上等によるコストの引下げ
スト削減をするとともに、そのような努力の結果発
を第一に、次いで好ましい目標の原価を上回らない
生した合理的な原価項目を正確に把握し、その算出
よう維持することが狙いである。管理としては原価
されたコストを営業活動により確実に回収するよう
を計画し、実際の発生原価と対比し、フィードバック
にすることである。
して改善していく作業である。コストを低減し、利益
この章では現在一般的に実務で行われている手法
を確保することが最も基本的な企業目標の一つであ
を各費用項目に応じて紹介する形で記述する。した
るとすれば、そのベースとなるコストの算出は最重
がって個別の企業においては若干異なる方法をとっ
要項目であることはいうまでもない。しかしニット
ているケースもあり、本書の手法がベストというわ
アパレル生産企業の原価算出のプロセスには正確な
けではない。例えば編機の技術開発などで原料デー
計算を阻害するさまざまな難問が存在するのも事実
タを編機の管理データから算出する方法も可能にな
である。それらのなかには一企業の業務活動では解
るなど、今後もその手法がさらに多様になると思わ
決できないものも多々あり、ニットアパレル生産企
れる。しかしながら現状では、目付データの取得方法
業の低収益体質の原因ともなっているのが現状であ
としてどんなケースでも当てはまるオールマイティ
る。
な方法はなく、編組織の種類などで最適な方法を選
本来正確な原価計算にもとづいて製造コストを計
んでいるのが実状である。
算し、販売管理上の諸経費と適正な利益にもとづい
て販売価格を設定し、固定費をまかなうだけの稼働
1 .コスト要素
率を維持できれば、企業運営はさほど困難ではない
はずである。しかしながら昨今のニットアパレル生
企業の原価構成要素の分類は、企業の大小や原価
産企業の収益性は全業種のなかでも際立って低い水
計算の目的により異なるが、一般的には売上高や生
準になっている。それは原価計算の困難さだけでな
産高に対して
く、国際分業による低コスト地域への生産拠点の移
増減する原価→直接原価(変動費)
転とそれにともなうコスト競争力の弱さが、市場価
増減しない原価→間接原価(固定費)
格の大幅下落とあいまって損益分岐点を下まわる販
に区分され、売上高と損益の関係をはっきりさせる
売価格を余儀なくさせていることによる。
特徴がある。これらの原価は、内容別に細部費用に分
類される。
第二部 ニットアパレルの生産管理
図表 2 − 5 コスト要素のリストアップ
要 素
間 接
直 接
内 容
原
料
費
○
生産・見本に投入した主原料代
資
材
費
○
釦、ネーム、テープなど製品付属品の使用額
包
装
費
○
製品の内装外装用の袋、下札、ケース等の使用額
○
生産・見本作りに支払った外注代金
(副材費を含む)
外 注 加 工 費
生産部門の給料、賃金、賞与引当金(役員は除く)
総 労 務 費
○
退職引当金、法定福利費(各保険料の事業主負担分)
部門の福利費・通勤費等の合計額
経
費
①
経
費
②
金
利
①
金
利
②
○
減価償却費、租税公課(保険料)
○
輸送・通信、交通、光熱、動力、修繕、賃借、交際の各費用
○
固定借入金の支払利息
○
割引料
図表 2 − 6 ニット企業の管理組織図例
社 長
総務課
営業課
生産課
要 素
総務部門
営業部門
生産部門
原料費
○
資材費
○
包装費(副材費を含む)
○
外注加工費
○
○
総労務費
○
○
○
経費①
○
○
○
経費②
○
○
○
工 場
資材係
技術係
生産管理係
品質管理係
外注係
C営業係
B営業係
A営業係
労務係
経理係
庶務係
図表 2 − 7 原価要素の部門別分類
56
第二部 ニットアパレルの生産管理
57
図表 2 − 5 はコスト要素をリストアップしたもので
個別品番レベルにおいては経営管理的視点の固
ある。各要素はさらに経営管理組織別に捉えるため、
定費の他に個別品番の広義での生産活動において、
例えば図表 2 − 6 の組織の企業の場合、図表 2 − 7 の
受注数量に関係なく決定しまう固定費的コストが
ように分類され、原価コントロールの基礎となる。
存在する。しかもこの種のコスト負担は近年の顕著
実務面では部門別はさらに細分され経営管理組織
な傾向である多品種小ロット生産になればなるほ
の部、課、係単位で原価の発生を把握される。また間
ど相対的に比重が高まる。提案型企業を志向する
接コストの各部門への配分は各企業で定める一定の
ことはこの部分の業務活動に多大の経営資源を投
ルール、すなわち配賦基準で行われる。したがってあ
入する結果となり、そのためこの経費をいかに消化
る製品の原価はその製品を加工するための「直接コ
するかが今後の提案型企業の将来展望をする場合
スト+配賦間接コスト」の合計となる。
のキーポイントである。
ただし、企業規模によっては部門別に分けず、間接
この個別品番レベルでの主な固定費的経費には以
経費を売上高に応じた比率により設定することも多
下のようなものが含まれる。
い。
企画担当者やデザイナーなどの情報収集活動、テ
また、変動費、固定費の区分に際しては一般経営管
キスタイル開発業務、素材選択、デザインワーク
理的に捉えるときと個別品番レベルで計算するとき
編地データ作成業務(コンピュータデータ、風合な
とは若干異なるので、本項では特定の製品をコスト
どの編地試験など)
計算するという観点から具体的に記述することにす
パターン作成(仕様検討含む)
る。
サンプル作成(準備作業から一点サンプル、各色サ
ンプル作成)
(1) 固定費並びに固定費コスト(間接経費)
各企業の業務特性や各得意先あるいは対象ブラ
個別品番レベルにおいても経営管理的な固定費
ンドにより、この業務内容は大きく異なり、上記の
の算入は当然必要である。これは企業全体におけ
ような統計データによる平均値的データの利用な
る間接部門の経費(例えば一般管理販売費に分類さ
どができないため、これらの固定費的経費はその性
れる項目)や営業経費(情報、企画、営業労務費な
格上個別品番において金額算定することが非常に
ど)、金融コストなどが含まれる。これらの経費項
困難である。このことがこの経費を製品売価に反
目は個別品番に対して正確に配分することは極め
映し難い最大の理由の一つとなっている。
て難しく、通常では個別企業の決算時の経費率な
しかしながら、個別品番に設定するべき金額をで
どを基準に売上の(個別製品売価の)何%に設定す
きる限り実態に近く算出することは重要であり、
るかを予め定めておくのが普通である。
各経費項目に応じて算定基準は設けるべきであ
また、個別企業によりこの係数はかなり違いが
る。
出るので、公的機関から発表される業界平均値な
対象ブランドによっては情報収集活動がほとん
どの係数を基準値とするケースもある。中小企業
ど必要のない場合もあれば、素材情報の収集、選択
庁や各都道府県単位で発表される中小企業の原価
など対象シーズンの 1 年前から企画活動を開始する
指標などのデータが、業界平均や地域における水
ものもあるので、企画担当者、デザイナーなどの
準などの把握に利用できると思われる。個別企業
人件費なども含め、コスト項目のなかに概算金額
の実態に即した係数を使用するべきか、一般標準
で入れておくべきものと考える。
の係数を設定すべきか、個別の企業の経営判断に
編地データ作成などは当該品番に関わった時間を
依存することになるが、当該企業のコスト競争力
概ねつかむことができるので、タイムデータがあれ
に直接関わることなのでその判断は経営トップの
ば分単価などにより金額計算が可能である。
戦略的見地から慎重に設定すべきである。
ただし、この場合もデータ作成のエンジニアの
第二部 ニットアパレルの生産管理
58
力量に応じて同一のデータ作成でもかかる時間が
に関係なく 1 人単価が計算できる場合と
異なるので、その評価も2次的に必要となる。(コ
で対応を分けた方が、現実的と思われ
ンピュータ編機の各機能を最大限活用するような
る。
複雑な編地では、高度なノウハウを持つエンジニ
資材費…釦、ファスナー、肩パット、芯地、伸止
アと経験不足のオペレーターとではタイム差が大
めテープなど。
きい)
ワッペンなどのような場合、購入資材と
パターンやサンプル作成では、そのサンプルの
して分類したときは資材費にあたるが、
素材・仕様などにより、現場での消費時間は大き
ワッペン作成を外注して作成したとすれ
く異なるのが通常である。そのためスタイルなど
ば外注費に相当する。
の単一の項目ではサンプル作成経費を算出できず、
( 必要資材を支給したかどうかにより判
正確な掌握を難しくしている。
断できるが、どちらにすべきかはコスト
また、サンプル作成時においては季節的に集中
計算現場において判断すればよい)
することが多く、時間測定などのデータ収集が充
縫い糸などもこのなかに含まれるが、資
分にできない事情も重なり、算定の困難性を一層
材コストを算定するときは 1 人分使用量
増加させているのが現状である。
を割り出すことが難しいので、実務上は
1 人当たりの概算金額を計上するのが一
(2) 変動費(直接経費)
個別品番の受注数量に応じて変動する経費のこ
般的である。
副材費…天ネーム、洗濯品質ネーム、下札、袋、ハ
とで、購入資材費と労務費(外注加工費も含む)と
ンガーなど。
に大きく分けることができる。
これらは包装材料的要素を持っているの
購入資材費には 原料費、資材費、副材費、包
で包装費として分類しているケースもあ
装費などが、労務工賃経費には 直接労務費、外
るが、各対象ブランド特有の物件である
注加工費などが含まれる。
ケースが多く、共通資材として使用でき
原料費、資材費などの名称や対象範囲は厳密な
ないということと、同一のブランド資材
基準による分類はなく、各企業で便宜的に分類し
として扱う方が実務的に利点があるので
ているため、ここに取り上げる項目も個別企業の
この分類にまとめた。
なかには違うという場合もあるが、原料計算、資
包装費…梱包関連の購入資材。
材計算などの本質については異なるものではな
い。
② 労務費
原糸などの糸原料は原料費に分類していること
直接労務費…個別品番の生産工程に応じて、所要
が多く、釦・ファスナー・肩パットなどは資材費
時間に応じて算定されるものである。編
や付属品費などの名称に分類し、下札、袋、ケー
立工賃算定と縫製工賃算定は基本的に資
スなどは副材費や包装費にしている場合がある。
本装備率が異なるので計算方法も当然全
ここでは便宜的に以下のような名称で分類する
く違うことになる。
ことにした。
① 購入資材費
原料費…主な原料として糸原料などを対象にす
る。
外注加工費…外注加工賃の算定はその協力工場の
地域、発注時期、発注形態などさまざま
なケースがあり、同一作業においても妥
当な加工賃の計算は多種多様というのが
捨糸、ストレッチなどの補助的材料は、
実態である。しかしながら、各コスト要
原料に準ずる計算が必要な場合、サイズ
素を加味しながら、原則として工賃算定
第二部 ニットアパレルの生産管理
ルールは社内的に確立しておく必要があ
る。
59
を使用して 1 人目付は計算できる。
例
丸首セーターのケース
③ データ取得・計算法
編地は単一素材の単一色で編成されている。
直接経費について主要なもののデータ取得、計
身頃(前・後)幅 58 ㎝×丈 68 ㎝= 39.44d ㎡
39.44 × 3.044 (デシデータ)= 120.07g
算方法を記述する。
○原料費
袖
幅 55 ㎝×丈 56 ㎝= 30.80 d㎡
糸原料の場合
30.80 × 3.044 (デシデータ)=
全コストのなかで通常最も高い比率を占めるた
衿
データ編地 実測値
め、このコストを正確に把握することは最重要課
目付データ→(身頃× 2)+(袖× 2)+衿
題である。にも関わらず糸という不安定な素材を
93.76g
20.
120.07 × 2 + 93.76 × 2 + 20 =
g
約 450g
対象としているので、最終的に余裕率(ロス率、ア
このとき注意しなければならないのは、設定
ローワンス)を設定し、実態とかけ離れたものにな
すべき編地の寸法は指定上がり寸法(完成製品の
らないよう慎重に検討しなければならない。
部分寸法)からすぐに編地寸法を決定することは
余裕率を必要以上に大きく計算すると過大な原
できないことである。使用素材の物理特性や編
料費を予定単価に盛り込むことになり、販売価格
組織による伸長・収縮特性に大きな違いがある
を不当に押し上げてしまう。原料コストを正確に
ので、それらを加味したパターン寸法を基に編地
算出する作業は 1 人当たりの原料目付を高い精度
寸法を設定する必要がある(指定上がり寸法→パ
で割り出すことが必要となる。
ターン寸法→編地寸法)。さらに素材及び編組織
1) 使用素材別 1 人当たりの目付データの取得方法
のなかには編機の微調整をしても編端(みみ)に
〔単一素材の場合〕
編傷が出やすいものがあり( 例えば麻素材など) 、
単一素材の場合は 1 平方デシメーター( 1 d ㎡)
その分の余裕も含めて編地寸法を定める場合も
当たりの重量を基準データとする。
写真 2 − 1 ジャカード編地を色糸別にほぐす
a デシ計算
データ用編地の面積と重さから単位デシ平方
メーター当たりの重さを計算し対象編地のデシ
データとする。
このデシデータは 1 d㎡(10 ㎝× 10 ㎝)の重さ
を意味するが、このデータを計る編地はできる
だけ大きい方が精度があがるので、少なくとも
半身(前身か後身)ぐらいの大きさは欲しい。
例
編機 10 ゲージ
データ用編地
素材 2/24 梳毛糸
面積 幅 53 ㎝×丈 75 ㎝
編地 天竺
3975
加工 縮
絨 柔軟加工→ 39.75d ㎡(平方デシメーター)
重さ 121g
デシデータ 3.044 g / d ㎡
b
1 人当たりの原料目付計算
単一素材の場合は編地寸法と a のデシデータ
写真 2 − 2 各色糸の重さを電子天秤で測る
第二部 ニットアパレルの生産管理
あるので、編立技術者も含めた検討が不可欠で
ある。
〔多色または複数素材の場合〕
多色または複数素材の場合は各使用糸(グラン
ド色、配色A、配色B…)の糸の重量比率(以下
糸重比率という)が必要になる。
60
(ⅰ) 比較する対象の糸(糸管に巻かれた状態)
の重さをそれぞれ電子天秤などで正確に
測る。
ワインダーで二つの糸を同時に一つの糸
管に巻く。
適当な量(巻き取った方がおよそ 1 ㎝ぐら
そのデータ取得方法は、
いの厚さになった頃) ワインダーを止め、
a データ用編地を実際にほどいて使用糸量を電
残った糸の重さを測る。それぞれ減少し
子天秤等で正確に測る(写真 2 − 1、2 − 2)
。
た重量が巻き取られた糸量に相当し、巻
b 天竺系のボーダー、インターシャ等は面積か
き取られた糸長はほぼ等しいので計量し
ら計算する。
計測による面積計算→方形などの面積計算が
た糸重の比が相対比率のデータになる。
(ⅱ) 糸長を設定できるコンピュータ編機で同
容易なもの
一条件によって試編をし、それぞれの編
編目数による面積比率→具象的インターシャ
地の重さを測ることにより、相対比率を
柄のように面積計測が困難なもの
得る。
*各使用糸の目数データはニットCADから
c データ用の試作編地の編成直前に使用する各
配色別目付データを算出する方法が最も正
配色ごとの重量を正確に測り、編成直後に再
確かつ容易である。
度計測することにより、編地全体に使用され
ただし、異素材の交編編地の場合は事前に各
ている配色別重量比率のデータを取得するこ
素材の相対比重を計り、面積比率と相対比重の
とができる。
値により糸重比率を算出する。
d デジタル・ステッチ・コントロール装置など
相対比重値は比較する 2 種類の糸を同じ長さ
を使用して糸長計測ができる機種であれば、
( 5 mとか 10m)をとり、正確に重さを測ること
編地全体の糸長比率が内部データとして編成
により設定することになるが、この方法では正
と同時に取得することができる。
確に計ることは困難である(糸の張力を一定に
共通素材であれば糸長比率は糸重比率とし
して測る必要がある)。
てそのまま使用できるが、異素材の交編編地
実務上で行われている相対比重を計る方法を
の場合は b に記述した方法などで相対比重の
二つ紹介する。
数値で糸長比率を糸重比率に変換する必要が
ある。
写真 2 − 3 デジタル・スティッチ・コントロー
ラーによる編込糸長の測定
e 特殊なケースとして 2 重臼(プレーティング、
添え糸編)の編地の場合は、編成機構上表裏
とも同じ度目カムを使用しているので、糸長
としては同じ長さになる。
したがって共通素材のプレーティングの場
合はそれぞれ50%の糸重比率として計算する。
ただし異素材の場合は b の相対比重の数値を
使い糸重比率に変換する。
※ b、c、d の場合、キャリッジ(給糸口)ごとの
使用本数についても糸重比率データに関連
糸長→糸重量への計算は比重データによる
する。編目により割り出した面積比率がグラ
第二部 ニットアパレルの生産管理
ンド(G)色 70%、A配色 20%、B配色 10%の
延リスク
データが得られてもG色 2 本使い、A色 2 本使
後工程における生産分割による非効率
い、B色 3 本使いの場合はG色 63.6%、A色
余剰配色分の不良在庫発生
18.2%、B色 18.2%(共通素材の場合)となる。
釦などの資材関係の発注オーバーロス
以上の a、b、c、d、e のいずれかの方法により
61
以上からさらに関連する全体的なコストアップ
編地の使用配色及び素材別の糸重比率データを
3) 原料別ロス率の加算
確定する。このデータ取得には方法によってか
2)で得られた目付データを元データに原料別の
なり時間がかかることもあり、対象編地により
ロス率を掛けて原料計算に使用する各配色・素材
最も効率的な手法を選択して信頼性の高いデー
別の目付データを得る。
タを取得することが重要である。
ロス率は原糸の素材により大きく異なる。物理特
2) 本生産の条件を加味した目付データの調整
性として規定値が設定されているわけではなく、各
上記のデシデータ、編地寸法、糸重比率の各値
企業の担当者が経験により判断しているのが現状で
により各配色、素材ごとの目付データを算出する
ある。
が、本生産に使用する編地の場合、寸法上の修正
某企業の使用している概算値を参考として列記す
や柄の位置関係などの変更により、データ編地に
る。
より得られた数値を実態に合わせて調整する必要
梳毛 3%∼ 5% 紡毛 8%∼ 12%
がある。
麻 7%∼ 9% アクリル毛混 2%∼ 4%
また、最終修正において基本的な編組織そのも
綿 6%∼ 9%
のの変更などがある場合はデータ編地の編成から
ソーピング、縮絨などの2次加工をする場合はロ
再度やり直すことになる。
ス率にかなり影響するので数値設定ではその素材
慎重に合理的な数値を掌握したとしても、編立
特性を充分見極める必要がある。
ての本生産において環境条件や素材条件の変化は
混紡糸、交編編地の場合は複雑に要素が絡むの
編地目付に複雑に影響するので、経験にもとづい
でロス率の判断も慎重に検討しなければならな
て本生産におけるデータのバラツキを予測し、支
い。
障をきたさないようにする。
通常毛羽の多い素材(紡毛糸、アンゴラ、タムタ
素材の原糸が物性的に不安定なので数値上のバ
ム、麻など) はロスが大きいので注意が必要であ
ラツキをなくすことは不可能であるが、できるだ
る。
け条件を一定にするよう努めなければならない。
入荷形態の差も重要な要素である。実貫表示か
編立て現場を空調設備により定温定湿度にするこ
投入ベースかは入荷した実数量にかなりの差があ
とが望ましいが、現実は国内の編立工場でそれを
るので、糸商社と売買取引するときはその点を確
実行しているケースは希である。
認しなければならない。
このデータ取得業務は生産付加価値を生むわけ
「投入ベース」は生成(まだ染色していない)状
ではないが、無駄なコスト発生を防ぐ意味で極め
態の糸を染色釜に投入したときの重量を基準にし
て重要な業務であり、決しておそろかにできない
て契約するもので、染色上がりの重量は目減りする
ことを銘記しなければならない。充分に合理的な
ため投入の約93%から96%になってしまう。した
数値を基礎データとしないと本生産において歩留
がって目付データにそれを加算しておかないと原料
率が悪くなるばかりでなく、次のようなさまざま
不足になってしまう。
な追加コストが発生する。
しかも目減率は素材や色により一定でないため、
不足配色分の糸発注による原料コストアップ
入荷した表示重量に対して実際の重量は荷受後計
追加原料の入荷タイミングの遅れによる納期遅
量しなければわからないことになる。
第二部 ニットアパレルの生産管理
62
これはかつて染色指示はニットアパレルが社内
ルとすることはできない。個々の編地によるケー
業務として行っていた慣習の影響と思われる。
スバイケースで経験からの判断が要求される。
しかし、現場管理の視点から不確実な入荷重量
4) 目付データのサイズ展開
で生産管理することのマイナスを考えると、本来
目付データは通常1サイズを設定しておき、その
は実貫取引きに移行することが望ましい。
他の各サイズは標準的な係数を掛けて導くのが一
目付データを設定する担当者にはそのような項
般的である。
目も情報として確実に渡しておかないと、数値把
サイズ係数は固定的なものではないし、時代の
握の過程がいかに合理的であっても信頼性のある
変化にも応じて変動するので、各企業において数値
データを得ることはできない。これは企業のシス
を見極める必要がある。Mサイズを基準としてそ
テム上の問題でもある(必要な情報がそれを必要と
れに対してLサイズの寸法がどれだけ増加するかと
する人に必要なタイミングで提供されているか)。
いうことが判断基準となるが、対象ブランドによ
さらに原料ロスを軽減するためのテクニックと
りサイズ間の寸法格差は一様でない。
してグランド色よりも配色糸の原料ロス率を若干
面積の増加率が基本的には目付の増加率に一致
上乗せすることもある。これは小量の配色糸の不
することから、寸法の幅と丈の積をM、Lで比較
足により生産不能になってグランド色を残す方が
すれば使用可能なデータは得られる。
原料歩留を悪化させ、原料効率を極端に低下させ
メンズセーターにおいては最近では約9%がサイ
ることを防止するためである。
ズ間係数である。20数年前では7%から7.4 %の数
しかしながら、グランド色が配色に比べ圧倒的
字であり、全体の寸法が大きくなっただけではな
に使用比率が高いというわけでなく、むしろ配色
く、サイズ間の差も大きくなっている傾向があ
の方が余計に消費するケースもあり、固定的ルー
る。
図表 2 − 8 原料計算依頼票
第二部 ニットアパレルの生産管理
63
図表 2 − 8 は原料計算を行うために、品番ごと
れからd㎡当たりの重さを算出する。
の配色、サイズ別の受注数と目付データを記した
前身→ 74.5 ㎝× 62 ㎝のS(シングル…1 枚)
ものである。
で 173 g→ 3.745 g /d ㎡
以上の1)∼4)の手順により個別品番の原料計算
後身→ 71.5 ㎝× 61 ㎝のS(シングル…1 枚)
に使用する目付データを把握する。図表 2 − 9 に
で 158 g→ 3.623 g /d ㎡
目付データ記録を示す。
袖 → 29.5 ㎝× 58 ㎝のW(ダブル…2 枚)
データ編地は実際に存在するテスト編地で、こ
で 143 g→ 4.18
れは必ずしも目的の大きさである必要はない。こ
後身と袖は同じ天竺の同一素材なので本来なら
図表 2 − 9 目付データ記録書
g /d ㎡
第二部 ニットアパレルの生産管理
64
ば同一データになってもよいはずだが、実務上、袖
から、丈方向、幅方向の動きが完全に止まったと
の方が 0.3 ∼ 0.5 g /d ㎡重くなることが多い。
きに表示の有効幅が維持されているかを確認する
前身 68 × 57 → 38.76d ㎡は指定寸法を取るのに
必要がある。さらに布帛生地の場合は放反による
必要な丈、幅寸法で38.76 はそのデシ面積である。
動きは少ないが、蒸気による収縮がないかなども
38.76 × 3.745 = 145 g→(G)97%141 g
重要なチェック項目である。
3% 4 g
裁断開始時点で保証さている反幅でマーキング
145 g
をしないと設定用尺では 1 人分を作成できず直接
39.9 × 3.623 = 145 g(G)145 g
原料コストのアップにつながることになるので、
袖 11.58 × 4.18 × 2 = 98 g(G) 98 g
これらのデータは事前に必ず確認し、投入後にト
(A)
後身
ラブルが発生しないようにする。
ジャージー・布帛生地の場合
最近の新素材や新しく開発された生地やジャー
従来ニットアパレル生産企業では編立生産の原
ジーには充分な使用実績がないため、判断する側も
料である原糸以外は使用することがなかったが、
データをつかんでいない場合が多いので慎重に対処
最近は横編地と、布帛生地・ジャージーとの複合
しなければならない。
製品が増加するに従って、マーキング、延反によ
る裁断などカットソー製品や布帛製品の生産企業
○資材費
のノウハウも必要となり、1人当たりの原料費算定
資材コストの基本データは使用資材の 1 人当た
に際しては基本的な手法は押さえておかなければな
りの使用量、用尺である。各資材はその性格によ
らない。
り計算手順が異なるのでタイプ別に分類しておく
マーキングとは1人分の所定のパーツをとるのに
必要がある。しかも同一の資材でも品番によりタ
最も面積効率のより配置を見い出すことである。
イプが変わって使用する場合もあるので、品番ごと
如何にパーツ間の隙間を狭くするかということと、
に事前データとして把握しておかなければならな
組み合せやすいパーツ形態同志の選び方などは経
い。
験が必要であり、所要時間や面積効率に大いに関
使用資材に入れるべきか判断しにくいものもあ
係するものと思われる。特に配列条件などを加味
るので事前に判断をしておかなければならない
しながら、許される範囲内で地の目を多少調整す
ケースもある。例えば特殊なワッペンのような場
ることもあり、どの程度が許容範囲かは素材やグ
合、購入資材の範疇に入れるべきか、外注加工に
レードによって判断が異なる。これらの判断基準
入れるべきかはケースバイケースにより判定され
は経験にもとづかなければ身に付かないものであ
る。
る。最近の生産現場にはパターンCADが導入さ
刺繍外注先として取引きされている相手の場合
れるようになり、パターンデータを入力さえすれ
は帳簿上外注加工に入れる方が合理的であるし、
ば短時間にマーキング図を出力することが可能に
資材購入先に依頼した場合は購入資材として扱っ
なった。
た方がよい場合もある。この場合どちらに入れるべ
マーキングの具体的手法は他に譲るとして、コ
きかは表面的にはそれほど問題ではないが、生産
ストに関連することについては注意する必要があ
管理上の合理性を追求しようとすれば管理主体も
る。マーキングをする場合最も基本的なデータは
違うので、必ずその区別は予めしておくべきであ
反幅である。この場合有効幅ということで使用可
る。
能な最大範囲を意味しているが、ジャージーの場
1) 使用タイプの設定
合は解反(巻いてある反物を解して折り重ね状態に
a 全サイズ、全カラー共通仕様
する)してから通常一昼夜以上時間経過(放反)して
例 肩パット ワッペン メタル釦 力釦など
第二部 ニットアパレルの生産管理
b 全カラー共通、サイズ別仕様
65
2) 着分当たりの使用量(個数・用尺)
例 メタルファスナー、インサイドベルト、
釦などの必要個数については展示会終了後の修
ゴムベルトなど
正検討の時点で最終確認される。
c 全サイズ共通、カラー別仕様
また用尺については大きさや形の変更などによ
例 カラー釦、カラーテープ、コンシール る用尺データの見直しが必要となる場合がある。
ファスナーなど
使用量データは編地の糸原料目付データを算出
d サイズ別、カラー別仕様
するよりも容易だが、使用資材により、その特質が
例 カラーオープンファスナーなど
大きく異なるので使用量計算データの事前の確認
同一の資材でも必ずしもタイプが固定されるわ
作業が重要である。例えば釦などは一つの品番に
けではない。ある製品に使われているファスナー
複数の規格または種類のものを使用した場合にス
が、各色別、サイズ別寸法で使用されていればd
ペア釦をそれぞれ必要とすることもあれば、主に
タイプに分類され、同じファスナーも製品の色に
なる釦だけにスペアを必要とするなど基準はまち
関係なく固定した色で使用する場合はbタイプに
まちである。
分類される。aタイプのワッペンもカラー別に使
用すればcタイプとなる。
サンプル時点での使用方法が展示会終了後の検
討会で変更があり、分類タイプも移る場合もある
ので本生産のための資材計算をする前にその使用
方法については慎重に確認する必要がある。
3) タイプ別の資材計算の違い
a 全サイズ、全カラー共通使用の場合
b 全カラー共通、サイズ別仕様の場合
よって資材計算をする場合、タイプ別に条件分岐
サイズ別合計 × 着分使用量
c 全サイズ共通、カラー別仕様の場合
なぜこのような分類が必要かは3)の資材計算手
順の違いがあるためである。特にコンピュータに
全受注数量 × 着分使用量
カラー別合計 × 着分使用量
d サイズ別、カラー別仕様の場合
サイズ、カラー別数量× 着分使用量
させてそれぞれに応じた計算方法をとる方がプロ
図表 2 −10に資材計算の基礎データ例を示す。製
グラム作成も容易となるばかりでなく、必要デー
品に使用している資材の種類、コード、規格、着分
タの打ち込みも最小限にすむことになり、効率的
の必要量、色とタイプ等を記入する。
である。
タイプ別分類する場合に注意しなければならな
○副材費
いことは、例外的仕様がある場合、共通タイプに
最近は天ネームにさらにサイズネームを縫い付け
うっかり分類してしまいがちだが、発注ミスにつ
たり、下札もブランドをアピールするものだけで
ながるので慎重に見極める必要があるという点で
なく、さまざまな素材のメリット・デメリットを表
ある。
示したものを含め複数枚付ける場合も増加してい
例えば、ある製品に使用するファスナーが規格
る。
寸法、配色使用が以下の表のような場合
購入費用だけでなく製品にどのような仕様で付け
製品カラー
05 13 25 36 45 50 71 るかも作業コストに格差があるので、その仕様に
95
ついても事前に把握しておくべきである。
Mサイズ 規格寸法 65 ㎝ #105 #105 #105 #105 #105 #105 #105 #901
ニットアパレルからの指定資材のうち製品に直
Lサイズ 規格寸法 67 ㎝ #105 #105 #105 #105 #105 #105 #105 #901
接付与して、ブランドのイメージ伝達や品質保証
一見して共通項目が多数あるので共通タイプに分
の意味を持たせたものもある。
類されるようにみえるが、このケースの場合サイズ
天ネーム、下札などは店頭で製品とともに消費
別、カラー別のdタイプとなる。
者に直接ブランドイメージを伝えるものでニット
図表 2 − 10 資材計算基礎データ
第二部 ニットアパレルの生産管理
66
第二部 ニットアパレルの生産管理
アパレルから購入するケースが一般的である。
67
接作業者による個々の作業の所要時間(分単位)を測
定または予測して一作業の工賃を割り出すことにな
○包装・梱包費
る。
製品の種類や特性により包装関連資材は使用対
計算事例
象が違い、コスト的にも大きな格差があるので充
a 労務工賃の算出についてはその工場内の労務分
分検討する余地がある。
単価を最初に算出しておかなければならない。
ニットアパレルからブランド名などを印刷した
これは通常その工場の直接工が目標とする1日の
特定資材が指定されることがあり、袋、台紙、ハ
稼ぎ高を基本に計算する。
ンガー、ときにはダンボールケースも指定名入り
1 日の目標稼ぎ高は個々の企業の経営体質、従
の場合もある。これらは有償支給と無償支給とが
業員の作業レベル、地域格差などさまざまな要素
あり、それぞれの取引先によりさまざまなので当
の関連の中で決定されるものであるが、直接的
該製品の該当資材が購入資材としてコスト積算の
には決算書などにより、当該企業の直接工の日
なかに入れるべきかどうかは確認する必要があ
産目標生産額を計算する。
る。
例えば 1 日
典型的な横編ニット製品であるクルーセーターや
と 1 日 8 時間( 480 分)でこの生産額を達成しな
カーディガンのような場合、二つ折りに畳むか、さ
ければならない。さらに全時間を純粋生産のた
らに四つ折りに畳んで袋に入れるケースが通常であ
めに費やすのではなく、各種の余裕時間が存在
る。従来ニット製品はハンガーに掛けると自重で伸
し、生産以外の時間にも当てられることになる。
びてしまい、型くずれなどの原因になるため極めて
この余裕時間の算出もまた各企業の体質、作
少なかったが、近年ハンガー納品指定のケースも多
業者の意識などに影響されるもので、正確な時
くなってきている。ハンガーを使用しながら全く折
間を把握するのは難しいが、通常は 20%から 25
り畳まずそのまま横たえた状態に重ねてダンボール
%ぐらいを設定するものと思われる。
ケースに納める場合もある。製品によって種々の
したがって 480 分の内 96 分は計算外となり、
ケースがあり、納品形態によってそのコストも違う
分単価は
ので、コスト計算においても個々に応じることが重
要である。
16000円を日産目標生産額とする
16000 円÷ 384 分=約 42 円となる。
分単価をベースにして、作業工程のタイムを
予測し、全て分に換算することにより、作業工賃
○労務費・加工賃
を計算する。縫製に 750 秒(12.5 分) かかれば
編立てのような資本装備率が高く、編機の生産
525 円と算出される。裁断以降のほとんどの作業
性に依存する工程は当該編機における単位時間の
工程は全ては人件費コストになるので原則として
目標工賃を設定してそれを基準に算定することが
この計算方法により工賃算定がなされる。
多い。
ただし、ここに算出された工賃は基準工賃と
同じ編立工賃でも手動編立て(成型製品の編立て
考えられるが、営業政策的にこの算出工賃に手
など)の場合は人件費コストとして計算することに
を加え、若干安めに設定することによりより多
なり、 1 人当たりの単位時間目標加工高を算定し
くの受注ロットを確保する場合もあれば、季節
てそれを基準に算定することになる。
的な閑散期に受注を確保するために意識的に基
縫製やリンキング作業、仕上作業などの場合も
準工賃を下げて単価交渉に臨むこともある。
基本的にマンパワーコストなので単位時間目標加
ただし、分単価や基準工賃の計算にあたって
工高を基準にする。
は、
企業により違うケースがあるのでどれが正し
一般的には分単価を算定し、当該作業に要する直
いということではないので、自社に合った方式
第二部 ニットアパレルの生産管理
図表 2 − 11 中小企業の原価指標
68
第二部 ニットアパレルの生産管理
をとることが最適と思われる。
製造原価の間接費では
最も大きな違いが見られるのは直接工によりほ
間接材料費
ぼ全ての粗利を稼ぎ出すように計算する場合であ
販売管理の販売費では
り、
分単価が必然的に高く設定されることになる。
支払運賃 荷造費
反対に間接経費率などを別に設定し、その生
340 千円
25,100 千円
0 千円
販売管理の管理費では
1,038,747 千円
産に関わる直接工の労務費(労務関連費用全て)
のみを目標稼ぎ高に置き、集計結果に対し一定
69
総費用−差引金額=付加価値相当額 548,069 千円
この 548,069千円を編立生産及び2次加工生産で
の間接経費率を掛ける方法もある。
さまざまな基準の設定がされているなかで、
労務分単価のみで比較するのは危険である。
b 平成 7 年の中小企業庁発表の中小企業の原価指
稼ぎ出すことになる。その比率を
編立生産 60%
328,800 千円
2 次加工生産 40%
219,200 千円
標(図表 2 − 11)をもとに上記労務分単価を試算
とする。そして、直接工80人の内 編立部門30名 してみることにする。
2 次加工部門を50名とする。
2 次加工部門について
健全企業 8 社の平均として
売上高
平均機械装備額
1,748,662千円
150,576千円
平均従業員数
100 名
平均直接工
80 名
製品仕入高
80,646千円
原価指標データに掲載されている数値の範囲内
直接工 50 名
出勤率 95%(計算のために想定)
就業日数 260 日( 105 日)
実働 8 時間労働
余裕率 20%(計算のために想定)
として労務分単価を計算する。
で分単価を計算すると、分単価の考え方の一つと
1 人当たり付加価値相当額
して企業の付加価値(粗利に近い)を直接工の作業
219200 千円÷ 50
で稼ぎ出すことを目的に計算する場合もあるが、
出勤率を加味した 1 日総合額
4384 千円÷( 260 × 0.95)
ここでは総費用のなかの付加価値を直接工が稼ぎ
出すための目標設定にして計算する。
分換算(余裕率加味)
総費用から全購入資材、購入役務( 外注加工賃、
17749 ÷(8 × 60 × 0.8 )
運賃など)をすべて差し引いた金額を直接工が加工
生産作業を通じて稼ぎ出すとして計算する。
4,384 千円
17,749 円
46 円
※この計算結果は業界の現状相場を示したもので
はないので注意が必要。
原価指標からは編立部門と 2 次加工部門との区
分単価を算定する場合、直接作業者による作業
分がされていないのでこのまま全社平均で分単価
でさまざまな間接コストを含めて加工賃を目標にし
を算出するのは実態とかなりかけ離れてしまうの
なければならないので、提案型企業の情報収集か
で計算手法の実務のため適当に分類することにす
ら企画、デザインワーク、編地開発業務なども直
る。
接作業者の作業で負担することは極めて困難であ
編立部門は機械設備率が高く、機械生産(手動を
る。提案型企業における製造加工賃が一般的に割
除く)としての性格から機械稼働に対する賃率を設
高になることもここに原因がある。
定することになる。
原則としては提案業務に直接、間接に関わる費用
は、別途企画コストとして切り放して算定しない
差し引く金額
製造原価の直接費では
1,013,307 千円
と、高コスト体質としてコスト競争力が失われ
直接材料費 買入部品費 外注工賃
る。
その他直接経費
今後提案型企業がその位置を確固としたものに
第二部 ニットアパレルの生産管理
70
するためにはこの費用が市場のなかで認められる
D 社内生産能力を越えて負荷が発生した
ことが必要である。現状では充分とはいい難く、
等があり、また外注加工賃に影響する要素
提案型企業に脱皮しにくい背景となっている。
A 特殊技術や生産ノウハウを必要とする
分単価を算定する場合、原則としては当該企業
B 繁忙期、閑散期生産タイミング
における経費内容、財務体質を基準にするべきで
C 品質の良否
ある。ただし間接経費率や平均賃金など算定の重
D 地域特性(生産拠点が集中している産地など)
要な項目が業界標準と離れている場合は分単価そ
等がある。
のものが高水準になり、コスト競争力を失う結果
となるおそれもある。これは優れた経営的判断を
2 .コスト計算の実際
要求される問題であり、トップの判断で自企業の内
部基準と業界標準との間のどこに設定するかを決め
商業に比べ製造業は多くの原価要素に加え、間接
なければならない。
部門の費用の配分配賦など面倒な計算が必要となる。
原価の計画は「一定の条件下(品種・品質レベル・
○外注加工賃
作業方法・使用設備、生産数量及び組織人員など)で、
外注加工賃の算定は複雑な要素がからまり適切
みんなが努力すれば達成できる」標準時間や、余裕
な水準を算出するのは極めて難しい作業である。
率・歩留りと、間接部門費の配賦方法などの基準によ
外注加工を依頼する理由としては
り要素ごと、部門別に算出集計して決められる。
A 社内にその技術がない
例えばセーターを作る場合、要求される品質や機能
B 加工設備機械を所有していない
や生産数量などを前提に、その量及び歩留りから原料
C 社内加工賃より外注加工の方が安くできる
費はいくらと決める。編立てや縫製については、標準
図表 2 − 12 計画製造原価の算出法
標準または基準
原料別・製品別の必要量、生産ロット別ロス%
糸別ロス%・製品別必要量
原 価
標準量×(1+ロス%)×原料@/枚
必要量×(1+ロス%)×糸の@/枚の合計
付 属 品 費
包 装 品 費
付属品別の生産ロット別ロス%
包装品別の生産ロット別ロス%
付属品別@×(1+ロス%)の合計
包装品別@×(1+ロス%)の合計
編立 総労 務 費
〃 直課 経 費
〃 配賦 経 費
生産部門総労務費/人/H、生産数係数、標準時間
直課経費/人/H(経費/日÷人員÷8H)
配賦経費/人/H(経費/日÷人員÷8H)
総労務費/人/H×標準時間×係数
経費/人/H×編立標準時間×係数
経費/人/H×編立標準時間×係数
縫製 総労 務 費
〃 直課 経 費
〃 配賦 経 費
生産部門総労務費/人/H、生産数係数、標準時間
直課経費/人/H(経費/日÷人員÷8H)
配賦経費/人/H(経費/日÷人員÷8H)
総労務費/人/H×標準時間×係数
経費/人/H×標準時間×係数
経費/人/H×標準時間×係数
外
支払予定原価(品種別・仕様別)
支払予定原価
原
材
原価要素
料
費
料
費
(1枚当たり・1日8時間)
注
製造費計
費
原材料費+加工賃=製造原価
注 1) 標準又は基準は過去の実績や業界の客観情勢など、努力すれば達成できる最適なものとする。
2) 原価要素の区分は上表よりさらに細分される。例えば縫製工程なら、セット、部品作り、組立、後始末、
検品、包装など管理の方法により分けるとよい。
3) 経費は直課(当該部門に配賦されるべき経費、例えば償却費、電力費、光熱費、機械補足品費など…)分
も配賦分も通常の操業では変動が少ない、固定費的にとらえた原価とみる。
4) 操業度については、上表では考えていないが、アパレルの年間操業度からみて、計画原価に組み入れるこ
とが望ましい。
5) 生産ロット別ロス%は、生産をスムースに進める上に最低必要な余分や、不良品混入などで、生産数が小
さい程大きくなる。原料、材料の種類または付属品の品種などで差があるが、およそ1∼3%程度である。
6) 標準時間は標準的速さで作業した時間と疲労回復のための休けい時間(4∼7%)を加えた1枚当たりの
所要時間をいう。
7) 生産数係数は生産ロットの数量の大小によるそのロットの生産完了迄に要した総時間の単位枚数当たりの
時間比で計算される。即ち、その生産に切替えるために最低必要時間(編立なら機械掃除、柄替え、糸の
取替え、度目調節…)と標準時間×生産総数の時間との合計時間の1枚当たりの比で表す。生産ロット数
量の大小に拘わらず切替えに必要な時間はほぼ一定のため、
生産ロット数が小さくなればなるほど係数は
大きくなる性格をもつ。例えば 300 枚の受注ロットのものと、50 枚のものとでは作業の種類により異なる
が、300 枚を 1.00 とした場合 50 枚ロットでは 1.03 ∼ 1.06 位になる。
第二部 ニットアパレルの生産管理
71
時間(基本時間+余裕率)と生産部門 1 人当り総労務費
前提条件にもとづいて、製品A及び製品Bの
から労務費の工費を決める。さらに経費については編
コスト計算をそれぞれ図表 2 − 14、2 − 15 に示
立て・縫製別に直課される費用と生産部門の間接経費
すが、製造原価で、利益は含んでいない。
とをそれぞれ 1 人当りの基準により、経費としての工
一般の生産企業のように外作がほとんどない
費を決める。
ので、比較的原価が高い工場といえる。
このようにしてこのセーターの原価(原料費+労務
費+経費)は決められ、生産数量で除し、 1 枚当りい
② 紳士ポロ衿セーター
くらという目標原価とする。生産した上で実際にか
編立、加工等を外注委託しているB社について
かった原料費や工費を集計し、セーターを作るため
コスト表(図表 2 −16)を例にとり販売単価の計
の生産過程で費やした価格の実績計算することを一
算事例を示す。
般に原価計算といっているが、原価を計画すること
コストは大きく二つのジャンルに分割されてい
も原価計算の一つとみられる。
る。
左側は購入資材で有償の物的有形物、右側は加
(1) 計画原価の算出方法
工役務で人的コストに分類されるものである。
計画原価の算出につき、図表 2 −12にまとめて
購入資材の上段から糸原料番手1/25の糸(@¥
みる。
3230円)を 812gで2623円、1/17の糸(@¥3230
多品種、少量、短納期が要求されればされるほ
円)を70gで 227円、釦 20m/m規格(@¥46円)4個
ど、異なる品種の生産も増え、いわゆるプロダク
で 184円、縫い糸テープ等で30円、高伸縮補強糸
トミックスが多くなる。消費者への結びつきは強
5 0 円、ネーム下札類で9 3 円、外装箱( ダンボール
くなる反面、必要な利益を確保することはそれだ
ケース 300円20枚入り)15円、工場消耗品50円、芯
け難しくなり、当然ながら複雑で厳密な原価管理
地 100円、ポケットスレキ15円
が必要となる。管理システムを作り、機械化して
以上合計で購入資材費
計画と実績との差の要因、原因の究明とフィード
バックが強く要求され、また、必要となる。
3387円
加工役務の上段からプリント加工 5 5 0 円、パ
ターン作成費10円、プリント出し準備で30円、編
立加工の内身頃・袖 841円、ポロ衿 200円、ポケ
(2) 原価計算の事例
① 婦人Y衿長袖カーディガン及び婦人成形長袖
タートルネックセーター
口ポケ袋50円、仮縫い下蒸しセット 140円、糸抜
き印付け25円、裁断(柄合わせ、ポイント針使用)
350円、縫製 875円、リンギング衿付け 198円、釦
編立て、縫製の一貫生産工場A社(若干の外注生
付け・釦ホール 128円、仕上げ 100円、ネーム付
産もある) におけるセーターのコスト計算例を示
け35円、検品 110円、運賃55円、梱包費 8円、出
す。
荷準備作業15円
前提条件
以上合計で加工役務費
3720円
人員 50 人(直接人員 42 人、間接人員 8 人)、月
コスト合計
7107円
産セーター平均 5,000 枚、編機 16 台、編立て∼
金利負担
3%
214円
縫製の一貫工場、操業度 100%の通常操業、1ヶ
粗利益率
22%
9385円
月 22 日操業、1 日の稼働時間、編立 8 H× 2 交替、
コスト表では9385円の販売単価として算出され
縫製 8 H、品種に対する多能工ありという工場。
たが、営業交渉の末、最終価格は9250円で決定さ
工場費を図表 2 − 13 Aに、その他の前提条件
れたことを示している。
を図表 2 − 13 B示す。
予定価格の積み上げ計算により算出された9385
コストの算出
円と9250円の決定価格との差 135円をできる限り
図表 2 − 13 A 工場費
原価計算
編立(15人)
縫製(35人)
金額/月
金額/日/人
4051.5
12.3
1,535円
経 費
1012.5
3.1
384円
外注費
0
−
−
計
5064.0
15.4
1,919円
総労務費
6247.5
8.1
1
3.0
380円
経 費
1002.7
3.0
1.2)
7250.2
11.1
1,394
12314.2
26.5
3,313
( AB
計
合 計
(単位 円)
金額/人/H
総労務費
外注費
図表 2 − 14 製品Aのコスト計算
(単位 千円)
−
−
註 1. 経費は直接、間接の配賦の合計
2. 人員には配賦人員編3人、縫5人含む
3. 外注は糸切り、かがり始末の全量
計算内訳
原
料
費
1枚当原価
3000円×0.41㎏×1.02×300枚
=
376,380円
( 1,255)
付 属 品 費
(5×20=10)×1.02×300×1.01
=
6,181円
( 21)
包 装 品 費
3円×300枚×1.01×1.02
=
927円
( 3)
編立労務費
1535円×300枚×1.01×35分÷60
=
271,311円
904
編 立 経 費
384円×300×1.01×35分÷60
=
67,872円
226
縫製労務費
1014円×300枚×1.01×70分÷60
=
358,449円
1195
縫 製 経 費
380×300×1.01×70÷60
=
134,330円
448
外
10円×300×1.01
=
3,030円
( 編 立 計 )
注
費
( 1,130)
10
( 縫 製 計 )
( 1,653)
合 計
( 4,062)
図表 2 − 13 B その他の前提条件
図表 2 − 15 製品Bのコスト計算
(単位 円)
A(婦人Y衿長袖カーデ)
使
用
原
B(婦人成形長袖タートル)
計算内訳
@¥3000
@¥20
@¥10
カシミヤ100%染糸仕入 @¥22,000
原
ネーム類合計仕入
@¥10
包
装
品 1枚袋下札合計仕入
@¥3
1枚袋下札合計仕入
@¥7
生
産
数 300枚×(1+Ⅱ等品率1.0%)
200枚×(1+Ⅱ等品率1.0%)
料
費
1枚当原価
22000円×0.35・×1.03×200枚
=
1,586,200
( 7,391)
付属 品 費
10円×1.02×200枚×1.01
=
2,060
( 10)
包装 品 費
3円×1.02×200×1.01
=
618
( 3)
編立労務費
1535円×200枚×1.01×22分÷60
=1
15
98,577
384×200×1.01×1.015
=7
8,732
原料のロットロス%
2%(300枚を基準)
2.5%
編立 経 費
生
0%(300枚を基準)
1.5%
( 編 立 計 )
編立の標準時間
35分/人/枚
22分/人/枚
縫製労務費
1014円×200枚×1.01×1.015
=
207,900
1,039
縫製の標準時間
70分/人/枚
50分/人/枚
縫製 経 費
380円×200枚×1.01×1.015
=
77,911
390
外
6円×200×1.01
=
1212
産
係
数
外 注 糸切りかがり始末与払
編上り目方g/枚
410g
@¥10
糸切りかがり始末与払
350g
註) 包装用カートンケースは経費に含む。付属品包装品ロスAB共2%
@¥6
注
費
394
( 971)
6
( 縫 製 計 )
( 1,435)
合 計
( 9,810)
第二部 ニットアパレルの生産管理
料 梳毛・防縮撚糸仕入
使 用 付 属 品 釦20λ蝶貝5個仕入
ネーム類合計仕入
72
図表 2 − 16 コストシート
第二部 ニットアパレルの生産管理
73
図表 2 − 17 積立工賃算出表
第二部 ニットアパレルの生産管理
74
第二部 ニットアパレルの生産管理
75
コスト削減して当初目標の粗利水準に到達できる
コストが確定する費用項目があるにも関わらず、
よう努めることになる。
現状の多くの取引形態は生産枚数(受注枚数) 確
コスト削減のポイントはコスト比率の高い順にそ
定前に販売価格をほぼ設定しなければならない。
の可能性を追求するべきである。最大のコスト項目
多くのニットアパレルにおける発注タイミング
である糸原料で5%削減が可能であればそれだけで
は展示会で各小売バイヤーが発注した数量を集計
142円の金額になり、粗利率は確保できることにな
して、ニット生産企業に発注する量を決定するシ
る。
ステムとなっている。展示会においては各製品の
ただ実務上簡単に原料費を落とせることはむし
小売上代価格を提示する必要があるため展示会開
ろ少なく、粗利の確保には常に困難な交渉を余儀
催前にニット生産企業からニットアパレルへの販
なくされるのが通常である。
売価格を提示しなければならないことになり、最
左側の購入資材欄については1人分の購入費に容
易に案分できるものは当該品番に対して直接計算
終コストが不明なまま販売価格を提示する結果と
なっている。
することになるが、購入資材について1人単位に算
出するものが困難なときは対象となる資材の年間
② ニットアパレルに対する納品形態がさまざまで
使用量とさらにその資材の生産量を集計計算して
納品関連コストを正確に把握することが困難で
平均値として計算する場合もある。
ある。
次に編工賃の算出について、編立工賃算出表(図
1 一カ所に納品する場合
表 2 −14)に記載されているように時間を基本にし
2 複数箇所(各支店)に振り分けして納品する場
て計算する。
最初に計算しておかなければならないのは当該
編機の分単価である。分単価については編機の価
格(またはリース料金)と稼働時間、関連エンジニ
合
3 セット組(各色各サイズを指定枚数でセット)
する場合
4 梱包形態の違い
アなどの人件費、メンテナンス費用、さらには占
定枚数の内装箱をさらに外装箱に梱包して発送
有面積などを考慮するときもある。
外装箱に袋詰で発送(この場合も外装箱が有償
占有面積などは通常では計算に入れる例は少な
支給、無償支給か)
いと思われるが、占める面積分の家賃相当分も目
ハンガー納品(チャーター可能な納品ロットか
標稼ぎ高に入れて計算していくほどの厳しい原価
混載か)
意識をもつことは重要である。ただし、現実問題
5 1製品の色サイズが全数揃って納品(一般的な
として割高工賃となってしまい、市場に受け入れ
ケース)か、1 枚でも完了すれば納品可能か
られるかは現在の経営環境では難しいのが現状で
ある。
③ サンプルコストの負担があいまいである。 受
地域、企業、編機など数多くの要素のなかで算出
注から生産開始までに、ニットアパレルで作成す
されるもので一概に現在の相場的な数字はつかみ難
るサンプルは種類も多い。受注を引き出すための
い。
提案見本、受注決定確認のための確認見本( 1 点
サンプルまたはカウンターサンプルともいう) 、
3 .正確なコスト計算を阻害している
要因
本体生産に先立って作る生産管理のためのもの
または再確認のための先行見本、それに得意先
の展示会の見本がある。
(1) 商習慣を要因とするもの
① 生産枚数が最終確定して始めて 1 枚当たりの
これら見本費は、売上の 2 ∼ 5%を占める大き
な費用になっているが、負担ルールは決まってお
第二部 ニットアパレルの生産管理
76
らず、先行見本を除く全てを得意先が負担する
特異なケースを除いてはその都度の話合いか、
② 横編製品はテキスタイル生産が含まれること
得意先の都合や方針で処理されるものが多い。
を特徴としており、編組織の変化と素材変化な
どちらかといえば、現状は製造企業負担が定着
どによる差別化を目指すことから、必然的に種々
の方向のようであるが、得意先別の差は大きく、
複雑な2次素材(ニットテキスタイル)を使用する
受注数の確定とともに原価の計算を難しくして
ことになる。
いる。
これは編立工程以後の裁断、縫製、リンギング
などの作業に大きく影響することになる。天竺
(2) 素材特性を要因とするもの
① ニット製品の原料として使用しているニット
組織によるカーリング、フロート組織による糸
飛び、引上げ組織やタック組織による目落ち(裁
糸は物理特性として安定しておらず、紡績工程、
断直後に目落ち発生)などが発生する。これらは
染色工程、撚糸工程などを通じて同じ糸でも紡
作業効率に大きく影響を与えるが、その程度は
績ロット、染色ロットなどにより微妙な相違が
組織変化の度合、素材、ゲージにより違うのが現
ある。
実で、それを事前には予測し難い。
編立工程におけるデータを参考にして原料コ
ストや編立工賃などを算定しているが、1 人当た
りの目付量も色によりバラツキが発生したり、
(4) 業界事情を要因とするもの
① ファッション製品は極めて季節性の高い商品
編機稼働率も色により大きく変化することが珍
である。小売店頭においても季節の変わり目に
しくない。
次季節のものを一時に必要とする。この次期に
ロス率、歩留率などを換算して算定してもさ
間に合わせるとなると生産時期も重なり、繁忙
らに大きく予測を越えることもある。
期には過剰な負荷オーバーにならざるを得ない
のが現実である。この負荷オーバー分は残業や
② 国内生産には新規素材や複雑な交編編地など
外注加工などに依存してカバーすることになる。
差別化された製品が要求されることが多く、そ
繁忙期の外注加工がコスト高になるのは当然で
れだけ原料関連のトラブル発生の危険度も高く、
残業による労務費もコストアップにつながる。
追加コストが避けられないこともある。
② ニット企業では多かれ少なかれ外注委託せざ
(3) 業務特性を要因とするもの
るを得ないのが実状である。しかしながら外注
① 編立工程は理想的には空調設備を完備した工
先の規模もいろいろで特色も異なることから管理
場内で一定の温湿度で管理された環境下で生産
レベルのバラツキや違いがある。さらに年間継
が行われることが望ましいが、現実ではそのよ
続して委託できにくいことから、外注先が複数
うな例はむしろ少ないのが現状である。
の得意先から受託している等種々の要因により
朝昼の温度差が編目の度目に影響し、寸法上
品質、工程などの管理面に必然的に差が出て、傾
のバラツキが発生したり、湿度の変化に敏感な
向としては全体的にはレベル低下によるトラブ
素材(麻など)は湿度不足の工場内では傷や機械
ルが多い。具体的には不良品の多発、再加工、納
トラブルの発生が頻発することになる。その結
期の大幅遅れ、コスト管理の不足による採算の
果ロス率の上昇や稼働率の低下をもたらし、原
悪化、加工価格の改訂要求などいずれも原価を計
料、加工賃などのコストアップにつながること
画する面で不安定な要素である。
になる。
第二部 ニットアパレルの生産管理
77
第 3 章 工程管理
海外生産との競合が激しくなるなかで、コストとともに必要なときに必要な商品をタイミングよく
提供できることが重要な課題である。
工程管理は納期に遅れないよう、できるだけ早く、決められた数量を生産するための管理で、受注
した仕事量の負荷と生産の能力を計算し、調整を行って、生産の着手と終了をスケジュール化し(日
程計画)、生産段階でその進捗状況をチェックし、目的を達成していくことである。
ニットアパレルの生産においては設備型の編立工程と労働集約型の縫製工程という異質の工程を含
み、管理のポイントも違いがある。それぞれの特性に応じた管理と両者の連動をはかることが重要と
なる。
90 年代前半の円高環境のなか、一気に進んだ生産
なお、生産計画を除いて生産統制だけを工程管理
拠点の国際化にともない、ニットアパレル業界がコ
と呼ぶこともある。
スト競争力を失ってきたことはすでに触れた。国内
厳しい経営環境の中では極めて重要な管理対象と
生産力の空洞化は労働集約型産業において顕著に表
位置づけられるが、ニットアパレル生産企業といっ
れることはいうまでもない。
てもその製品アイテムとその構成比などにより各社
しかし国内生産における差別的有利性を完全に
個々の実状が千差万別であり、工程管理も力点の置
失ったかというとニットアパレルがファッション産
き方で大きな違いが生じるものである。
業であることの性格から海外生産ではむしろ不利な
ここでは基本的なスケジュールの設定の仕方とそ
ケースがあることも事実である。
のデータの掌握方法などを中心に記述する。
国内生産であることによる的確なスケジュール管
海外生産との際だった違いを発揮するためにも納
理のもとにタイミングを失うことなく、必要なとき
期管理の信頼性を高めることは今日の最重要課題と
に必要な商品を提供する納期管理の重要性が増大す
いえる。
る。管理レベルの高い企業はコスト以上の時間価値
を提供することができ、流通段階から深い信頼を得
ることができるようになる。
図表 2 − 18 工程管理の実施手順
所定の製品を定められた期日までに決められたコ
ストや品質を保ちながら生産するために、材料、人や
設備、生産方法を合理的に運用するための管理を工
程管理という。また別のいい方をすれば生産計画と
生産統制のための実務的処理ともいえる。すなわち、
計画面では、手順、工数、日程、材料などがあり、統
制面では、作業配分、作業を統制する進度・管理、現
品管理、それに実績資料の管理などである。工程管理
の実施手順を図表 2 − 18 に示す。
工程管理の狙いは納期の確実化と迅速化であり、
生産管理の中心的なもので、その良否は企業運営の
成否に直結する大事な管理である。
基準値の掌握
↓
基準値にもとづく生産計画
↓
実績値の把握と伝達
↓
計画値と実績値の相違の認識と判断
↓
工程管理外との折衝と計画変更
第二部 ニットアパレルの生産管理
1 .日程計画
78
という製造システムになっていない。原料の仕入
から製品化までを一貫してスケジュール化する必要
ある製品の総数をいつまでに作り終えるかまたは
がある。まず管理対象としては、一つには使用する
作らねばならないかという計画は、その完成に必要
素材の投入スケジュールがある。素材には製品の
な期間や月単位に、そして日単位に細分化したもの
主要部に使用するものの他、機能性やデザイン上
から作られる。
のために主要部と組み合わせる複数の異素材があ
日々の生産が計画通りに達成すれば、必然的にこ
る場合が多い。これらの素材別、色別及び数量別
の製品の生産計画も達成されるという管理の考え方で
に揃える正確な計画が求められる。
ある。
スケジュールを組むうえでの考え方は、最終製品
日程管理には大日程管理( 3 カ月から半年の期間) 、
納期からみていつ投入すべきか、あるいは厳しい
中日程管理( 1 カ月から 3 カ月の期間) 、小日程管理(
投入予定を基準に後工程をいかに計画するか、2通
1 週間から 1 カ月以内の期間)がある。
りがある。望ましいのは前者の方だが、通常は後
策定する順序は大日程計画を設定し、それを根拠
者が比較的多い。製品の納期遅れの原因をみると、
に中日程計画さらに小日程計画と続くのが理想であ
原料投入が計画より遅れることによる場合が70%
るが、各企業の営業方針、得意先分野などにより長期
以上を占め、生産工程の理由による遅れよりはるか
的計画が策定できない場合もある。しかし、可能な限
に大きいのが実状である。
りの長期計画を概算予測の範囲でも設定し、そこか
必要な素材を時間的にも、量的にも計画にいか
ら短期計画を打ち出すことが重要と思われる。
に近づけられるか、極めて重要な管理である。
QR(クィックレスポンス)のなかでより長期の計
二つ目には各種パーツ編のスケジュール化があ
画を立てることは一見矛盾するようだが、一定期間
る。例えば横編でカーディガンを作るとすると、前
の繁閑レベルを把握しないとQRは一方的な現場へ
身頃、後身頃、両袖、衿ゴムまたは衿テープ、ポ
の“がんばり”依存に終始してしまうことになりかね
ケット口ゴムまたはテープ、ポケット生地など成
ない。
形編かガーメント編かにより差があるが、必要な
さらにニットの生産工程には編立てから仕上まで
パーツの全てが 1 着分単位に揃って、必要なときま
の一連の工程の中に、染色・縮絨や一部工程の外注生
たは最も効率的速さで完了するよう計画されるこ
産依存が避けられず、スケジュール管理の自社コン
とである。
トロールの及ばない部分があり、正確に把握するこ
特定のパーツ編だけが先行したり、各パーツごと
とを困難にしているのが現状である。
の能力差があったりしない編機の能力の日程計画
ただし、外注工程に対しても自社生産部分のスケ
が中心になる。
ジュール管理が充分機能していれば、外注生産内部
三つ目には各パーツの組立とそのスケジュール化
における工程管理を計画的に遂行することになるた
がある。いわゆる縫製工程の計画であるが、例え
め、工程管理の全般レベルを向上させるうえにも自
ばカットリンキング製品ならば、一般に、
社内の工程管理をより徹底することは重要である。
パーツ毎の筒縫→生地セット→裁断→部品縫→衿付リンキング
さらに近来の多品種小ロット化とQR志向は工程
→袖付→穴かがり→釦付→各ネーム付→製品アイロン
管理水準を高めなければ、企業としてその動向に対
のミシンや機械作業の他に人手による補助作業があ
応できないことになる。
る。成形製品についても、組立ての主要縫をリンキ
ングミシンという生産性が低く特別熟練を必要とす
(1) ニットアパレル生産のスケジュール管理の特性
る工程と多くの補助作業がある。
ニットアパレルは多くの製造企業のように部品
このように工程が多く、人手主体の組立部門の計
を外部から仕入れてそれを組み立てて製品化する
画はより綿密なものであること、さらに操業度を高
第二部 ニットアパレルの生産管理
79
めるのに必要最低限度の仕掛り量(2 ∼ 3 時間分、外
ワークに対する単位労働の量がスケジュール割り
注工程では 0 . 5 ∼ 1 日分) と縫着に必要な付属品
出しの基本数値となる。したがって編立てに関して
(ネーム類、釦など) の調達計画とを組み合わせた
は通常工数計算においては時間当たりで数値化す
日程計画が必要である。
る方が管理目的にかなっており、裁断以降の工程
次に管理単位の変化がある。これは日程計画の
では 1 人当たりの日産量を基準にするのが一般的
基礎の一つである数量管理( 1 人当り、 1 日当り、
である。
1台当り…)の単位が工程が進むにつれて変化する
生産品、主な設備、機械稼働率、機械作業者比
特色がある。すなわち編立工程では
㎏で投入した
率、単位生産進行数の格差など主な違いについて
原料がパーツ編上りでは枚数またはピース数(成型
まとめてみると図表 2 −19のようになる。
編なら必要パーツ数と同数で、ガーメント編では1
以上の違いを考慮した計画の作り方が編立て、縫
ピース編でとれる人数で除した数)でカウントされ
製に必要となる。例えば機械力に依存する編立てで
る。また枚数で受け入れた組立工程は裁断工程で
は機械の不調や故障は致命的である。それを防ぐ
人単位に変わる。この場合投入された
㎏の原料が
ため機械のメンテナンスが充分であること、また
それの定める指定の人数に100 %置換されるよう
欠勤にはそれに代わる人間(管理者、保全要員など)
な計画が求められる。そしてこの管理の良否はコ
がいるという前提で日程計画は組むべきである。
ストや生産性にも関連する大切なものである。
そして人的な要素の高い縫製では各作業熟練度の
ニット生産管理においては編立工程とそれ以降
高レベルが必要となり、そのための作業管理ができ
の加工工程とは大きな性格の違いがあり、それが
ていることや、欠勤率の高い(15%∼7%)この工程
工程管理をより複雑にするため、管理レベルの違
では1人で複数の工程に対応可能な多能工の確保が
いが工程管理の実務の違いに大きく関連してい
できているという前提の計画が必要である。
る。
前者は編立機械という編機による生産が主とな
(2)
日程計画の策定 受注が決まりその製品の生
り、編機単位の数値を中心に捉えることになる(手
産に着手するまでの作業の一つに、効果的な加工方
動編機による成型製品は違う)。
法とその順序を決める工程設計がある。すなわち生
一方、後者の裁断、縫製、リンキング、仕上に
産工程の順序と各々の工程に応じた機械設備、治
続く工程は人的生産力に負うところが多く、目的
具、標準時間、作業人員などを決める作業である。
図表 2 − 19 編立と縫製生産との性格の違い
項 目
編 立
縫 製
身生地、袖生地及びゴム編などの生地作り。 ミシン作業、手作業などで組立て。最終製
生産品
各パーツ別に1人分、1.5 人分、2人分など 品作り
で1枚
1枚=1人へ
コンピュータ自動編機、同一機で各パーツ ミシン(編機に比べ自動化少ない)縫目毎
主設備
主設備の
稼働率
機械運転者
の比率
単位生産
進行数の
格 差
編可、製品別にゲージ別必要。1人で5∼ にミシン異なる。製品別に多機種必要。1
6台運転可
人1台運転
生産ロット数により差があるが通常運転で 通常運転で機種別差大本縫ミシン 20%前後
85%以上。
(品種切替の度数による)
で最低、釦は穴かがりミシンで 40%∼60%
で最高
ミシン、プレスなど機械運転作業者比率は
80%以上(検品、マトメ含む)
70%∼75%と手作業比率が高い
機械条件の変更(度目調整、糸の立替え、 縫糸の切替、縫目の変更など事前に準備出
柄データ交換、機械掃除)など事前に準備 来ない非運転時間は少なくロット数の変更
出来ない非運転時間が小ロット生産程影響 には影響小さい。但し、色別の切替えは影
する。
響。
第二部 ニットアパレルの生産管理
そして使用する素材や製品の寸法、仕立などの条
80
手作業の工程での計算の基準は次の計算による。
件を前提にこの製品の生産完了までの工程別必要
 受注数 × 加工数 × 標準時間  +  余裕時間  =必要生産日数

 

 作業時間/日 × 作業人員   作業時間 
機械台数や工数( 人員) を把握する負担計算がい
る。
※加工数
セーターを自動横編機を使って作る場合の編立
部品作り段階では裁断数、組立工程・検査工程は
工程の計算の基準は次の通りである。
受注数
受注数 × 各必要ガーメント数 × 標準時間  +  余裕時間  =必要生産日数

 


  運転時間/日 
運転台数 × 運転時間/日
生産必要日数は製品の特性上、機械設備や工程が
※必要ガーメント数
偏ったりする場合、他の製品と組み合わせて生産す
前身、後身は 1 人取りのとき
受注数
るのが得策で、そのような負担計算をして決める
1.5 人取りのとき 受注数÷ 1.5
場合が多い。上記の計算式はまた納期から逆算し
袖は 0.5 人取りのとき 受注数× 2
ていつから生産をスタートさせたらよいか、いわ
1 人取りのとき
ゆるリードタイムを決める場合にも応用できる。
受注数
1.5 人取りのとき 受注数× 2 ÷ 1.5
その他、日程の圧縮などを検討する基準となる。
※標準時間
さらに、計画の策定のうえで留意すべきことは、
ガーメント1枚を編立てするのに必要な時間=正
通常連続して行わない作業、例えば穴かがり、釦
味編立時間+避けられない休憩などのロス時間
付け、刺繍、縮絨そして付属テープ編などは工程
※余裕時間
設計の段階で充分な対策を講じたうえの計画であ
加工前、検査・運搬などの各待時間
ることが必要である。工程の流れを乱し納期遅れ
(加工時間+標準時間=仕掛り時間)
となる大きな要因を含んでいるからである。
また縫製や検査など人手によるミシン運転や
次にその製品の生産着手がいつから始まり、何
図表 2 − 20 日程計画の基準
日数
27
30
33
3
リードタイム 32
29
26
23
20
17
14
11
8
凡例 加工前の準備や待ち時間 加工時間
5
2
0
工程
3
6
9
12
15
18
24
編立
(2)
生地整理
(1)
生地縫
(1)
プレス
(1)
裁断
(2)
部品作り
(3)
組立
(4)
製品検査
(2)
●内装
(1)
加工後の運搬待ち時間
・工程名の下の( )は工程数で工程数が多くなれば加工時間の総数も増える。
・工場企規 5,000 枚/月程度、品種ポロセーター、生産ロット 200 枚程度とみる。
・リードタイムは稼働日数で歴日ではない。
・ 部品作り組立工程は外作を含む。製品検品工程は補修手直しを含む。
第二部 ニットアパレルの生産管理
81
日に終わるという日程を具体的に明らかにする日
10日間というように区分して呼び、年度や月の予
程計画がある。
算と連動させて管理されることが多い。受注生産
日程計画には大別して三つがある。受注ごとに
ではその製品の納期や定められた期日を主体に区
仕様書を作り、原材料調達、編立て、組立て、検
分して呼ばれ、運用されることが多い。
査、出荷などの大工程別の日程を決める大日程計
画がまず作られる。この内容は比較的ラフに作ら
(3) 日程計画の実行統制
れるが、各部門や工程に仕事の予告をし、それに
日程計画通りに仕事を進めるための重要な管理
よって準備ができるという大切なものである。実
に進度管理がある。計画に示された作業が順調に
際にはいくつかの受注オーダーとの併行進行であ
予定通り進行しているかを調べ、判定し、遅れて
り、特定の日に仕事がかち合わないよう総合的な
いる場合には、その対策を迅速にとり進度を確保
大日程計画を作る必要がある。いいかえると個別
するという大切なもので、納期の確保と生産速度
のオーダー大日程計画を全部相互関係を調整して
の向上が目的である。
組み合わせて作るもので、上位の職位者が担当す
管理のポイントは、正しい実績をいかに早く把
べ き 計 画 で あ る 。したがっ て 部 の 計 画 と も い え
握するか、計画の達成度合(日程、数量、能率、品
る。
質歩留り)をどのように評価するか、そして進度対
次に大工程をさらに細分化した工程別に、その
策が各作業者へ的確に指示されたかである。特に
加工の着手から完了までを定める計画を中日程計
品質が不安定だと、不良品の発生、歩留りの悪化
画という。大日程計画で指示されたその工程の納
になる。不良品が発生すると、手直しや、作り直
期を全うするように初工程、次工程…最終工程別
しなどで納期(日程) が混乱し、材料や工数をムダ
に日程を計画する。ラフな大日程計画に比べいろ
使いし、結果としてコストも増加する。この関係
いろの条件を考慮した精度の高いもので、具体的
を充分承知のうえ、予防的管理という考え方で、
な生産活動を始めるための日程計画である。計画
現場の観察を強化する進度管理が好ましい。綿密
の作成担当は専門技術に詳しい職位の人がふさわ
に作ったつもりの日程計画も実際に生産では計画
しく、課単位の計画ともいえる。
通りいかない場合がよく起こる。
さらに、個々の仕事をグループや作業者に割り
ニットアパレル、なかでもセーターは編立て∼縫
当て、着手から完了までを指定した計画を小日程
製と生産工程が多く、生産期間も比較的長く、そ
計画という。実際に誰がいつからいつまでに、ど
のうえ、使用素材も多種で、計画達成のための遅
の機械や治具など使ってどれだけ作るかを定めた
延対策をとる場合が多い。遅延の要因を大別する
もので、その基準は 1 人当りや時間当りまたは機
と次の四つが大きなウエイトを占め、それぞれに応
械 1 台当りである。
じた対策が必要となる。
中日程計画通りに仕事を進めていかねばならな
1 番目として原料が日程計画通りに入手できない
いが、実際には予期しないトラブル、例えば欠勤
場合がある。
者が出たり、必要な原材料の遅れや、不良品の多
これは最も困ることで、初工程である編立工程
発など計画通りにいかない場合が起こる。日常的
の日程計画か、また遅れの日数によっては、編立
に起こる情況の変化のもとで、決められた完了期
てから最終の縫製までの各日程計画を全面的に組み
日を達成するための調整や適応の計画である。必
直さなければならない大変な作業となり、ハード
要なことは生産現場のリーダー(係または班)の必
な対策が必要である。その対策の基本は余裕時間を
要な対策を講ずるための判断力である。
極度に圧縮することであり、なお不足なら、運転台
※計画生産や見越生産を行なう企業では、大、中、
数(人員)を増加する(外注)などである。
小の計画を期間、例えば半年∼ 1 年、1 ヶ月、7 ∼
2 番目は品質の不安定による手直しや作り直しが
第二部 ニットアパレルの生産管理
82
起こる場合である。
すなわち300枚の編立てをする場合の編立工程の
日程を早めようと手抜き作業をしたり、チェッ
負荷は 285時間である。
クをおこたると、かえって進行を遅らせる原因と
次に縫製工程で脇縫、袖縫及び袖付に使われる 2
なる。小さなトラブルなら、その工程での小日程
本針オーバーロックミシンの負荷を調べると次の通
計画の再作成と実施が、仕様や加工間違いなどの
りとなる。
中トラブルの場合は中日程計画の組み直し実施が
その対策となるが、作業標準の徹底が基本にな
る。
3 番目に生産性が確保できない場合である。小ロッ
ト受注生産下での特有のもので、管理の事前の準備
機械別負荷計算表
ミシン 工 程 標準時間 工 数
脇縫い E
60
5.0 H
袖縫い F
40
3.3
袖付 G
80
6.7
合計
180
15.0 H
工程別負荷集計表
工 程 作業名
E 脇縫い
F 袖縫い
G
袖付
合計
工数
5.0 H
3.3
6.7
15.0 H
を含む作業段取りや各作業者のモラルが大きく影響
すなわち 300枚の縫製工程の 2 本針オーバーロッ
する。小または中日程計画の再構築と時間当りか日
クミシンの負荷は15時間になる。
単位の実績の周知徹底が必要である。
負荷の集計ができると次は能力計算により負荷
4 番目に設備機械のバランス不良の場合がある。
と能力との調整が必要となる。一般に用いられる
例えば、身頃は予定通り編立が進んでいるが、袖
能力計算式は次の通り。
と付属生地が遅れている場合などである。運転時
能力(人員、機械)/日程
間の延長、機械台数の増加など一刻も早い対応が
=1日平均実働時間×稼働率×人員数(台数)
必要である。
例えば編機 4 台の能力は条件として 1 日の平均実働
一般に編立工程の遅れを縫製工程でとり返す、
時間 8 時間、稼働率80%とすると
またはとりかえさざるを得ないと考える工場が多
能力=8H×0.8 ×4=25.6時間となる。
くみられるが、進捗管理の基本である早期発見、
これから、 300枚の編立てを完了する日数は
早期対策から、原料、編立ての初段階の工程管理
負荷集計数÷1 日当り能力=所要日数 で計算され
に重点をおくべきである。
る。
すなわち 285 H÷25.6H=11.13 日ほどの生
産期間となる。
(4) 工程管理の実務
受注した製品の負荷(仕事量)がどれだけか、そ
納期との関係や、中日程計画との対比で1日の実
れに対して生産の能力はどうか、納期までに終わ
働時間や運転台数の調整などが行われる。
るには問題ないかなどを計算しなければならない。
縫製についても同様の計算と対応が行われる。
負荷の計算には機械別と工程別の方法がある。例
次に参考までにいろいろの管理指標で生産性に関
をあげて計算をしてみる。
連するものをリストアップしてみる。
条件として婦人物のセーター(長袖ハイネック)
300枚を自動横編機でガーメント編した場合の負荷
産出量
生産性= ――――
投入量
は次のようになる。
ただし、標準時間は前身、後身及び衿ゴムは 2 人
取り、袖は 1 人取りの機械を使用する場合の時間
生産量
原材料生産性= ―――――――
原材料使用量
を表わす。
機械別(部品別)負荷計算表
工程別負荷集計表
機 械 工 程 標準時間 工 数 工 程
前身 A
0.25
75 H A
後身 B
0.25
75
B
袖
C
0.35
105
C
衿
D
0.1
30
D
合計
0.95
285 H
合
品名
前身
後身
袖
衿
計
工数
75 H
75
105
30
285 H
生産量 生産量
設備生産性= ――――― または ―――――――
機械台数 機械運転時間
生産量
労働生産性= ―――――
従業員数
第二部 ニットアパレルの生産管理
計画工数
作業能率= ―――――――
正味実績工数
83
測定し、その数値と予測される稼働率との関連か
ら時間当りの生産数を計算し、その逆数とする。
実働時間−非生産時間 工程別、職場
稼働率= ――――――――――
総実働時間 別が対象
(
)
稼働率は特定の定数ではなく、素材、編組織、
受注ロット、季節、現場環境により異なるので、
各企業の中で蓄積されたデータなどにより実態に
実際生産量 工場全体の設備能力
操業度= ―――――
標準生産量 の利用度合を示す
(
)
近い数字を把握することが重要である。
例えば 10G インターシャ クルー衿セー
ターで計算すると
製品重量 目減り、ロス、
歩留率= ――――― 材料使用量 不良品に関係
(
)
使用糸 2 / 48 梳毛
前身:インターシャ、後身:無地天竺
袖:無地天竺成型、衿:1 × 1 リブ
2 .編立生産の日程管理
前身はインターシャ機能のついた編機を必要とし、
後身、袖は成形編立てが可能な編機で編成し、さらに
編立てにおける日程計画を策定するには最初に対
付属の衿は 12 Gの付属編機による。
象期間内の受注製品(実績と予測)と各製品のパーツ
前身 純編成時間 27 分 18 秒(27.3 分) 稼働率 90%
ごとの編成時間を把握することが必要である。
60 分× 0.9 ÷ 27.3 = 1.98 人/時間
製品によりその編成時間は大きく異なるので製品
逆数 1 ÷ 1.98 = 0.5051 工数→前身 1 枚の工数
受注数では客観的な仕事量を示すことはできない。
後身 純編成時間 10 分 25 秒(10.42 )稼働率 95%
そこで生産管理では基本概念である工数により仕事
60 分× 0.95 ÷ 10.42 = 5.47 人/時間
量を客観化する必要がある。
逆数 1 ÷ 5.47 = 0.1828 工数→後身 1 枚の工数
編立生産における工数把握の方法は対象編地を編
袖 純編成時間 12 分 48 秒(12.8 ) 稼働率 93%
成するのに要する時間を測る(または予測する)こと
60 分× 0.93 ÷ 12.80 = 4.36 人/時間
である。単純な計算式に表わせば
逆数 1 ÷ 4.36 = 0.2294 工数→袖 1 枚の工数
編成コース数×単位コースにかかる時間
0.4588 工数→袖 1 人の工数
=編成時間
衿 純編成時間 4 分 12 秒(4.2 分) 稼働率 95%
1 枚の編地のなかでも編組織の変化に応じて単位
60 分× 0.95 ÷ 4.2 = 13.57 人/時間
コースのキャリッジ速度も変化させるのが通常であ
逆数 1 ÷ 13.57 = 0.0737 工数→衿 1 枚の工数
り、全体の編成時間を正確に予測するのは極めて難
しい課題である。
合計工数1.220 となり、計算上では1.220 時間(
1 時間1 3 分1 2 秒) で 1 人分が生産できることにな
この編成時間を合理的に算出するにはさまざまな要
る。
素が関連してくる。また原料が糸という不安定な素
この製品を 350枚受注した場合、この製品の編立
材を対象としているので、一度算出した編成時間と
てに要する時間は
実績時間とが相違することは珍しくない。むしろ最
1.220 × 350枚
=427時間
近新しく開発された素材のなかには物性的に限界に
ただ、この製品はパーツにより使用する編機が
近いものが使用されることもあり、実質編成時間の
異なるので所要スケジュールを策定する場合は、
予測をますます困難にしているのが現状である。
さらに編機ごとの投入スケジュールを掌握しなけれ
ばならない。
(1) 工数計算
編地編成の工数(仕事量)は編地1枚(または1人)
に対して編立て開始から終了するまでのタイムを
このように受注された製品は全て工数計算によ
り、仕事量の負荷数量を把握する。
第二部 ニットアパレルの生産管理
84
(2) 日程計画
大日程計画や中、小日程計画においてもこの負
② 中日程計画
荷工数を基礎にしなければならない。
中日程計画ではかなり精度の高い投入計画が
① 大日程計画
前提となり、対象品番の原料投入から使用編機
大日程計画では、手持ちの各月の能力工数と予
の稼働スケジュールなどが計画策定の事前情報
測される投入負荷工数との対比から余剰工数に対
として必要となる。
する追加営業の必要性や過剰負荷に対する早期の
実務においては製品によってさまざまなケース
対応策など問題解決のための検討がなされること
があり、単純な場合は単一素材使いの単一編機
になる。
による進行などもあるが、通常 3 から 5 種類の素
大日程計画では通常工数山積表などを使用して、
材を組み合わせながら、さらに複数の編機を使用
能力工数と負荷工数をグラフ化し視覚的に分かり
しなければならないことも少なくない。管理業
やすく分析することが望ましい。
務面では最も複雑な運用を強いる品番を含めて
以下簡単に工数山積表の実例を示す。
共通の管理手法で扱っていかないと管理上だけ
図表 2 −21は負荷能力工数山積表(A)で、縦軸
でなく、現場を混乱させることになる。
に工数、横軸に日付をとった方眼に投入可能日を
特に1ヵ月程度の日程計画は生産を円滑に進行
基に面積で埋めて行く。一方眼一工数とする。埋
させるために最も重要なものと認識することが
め切れない部分は手持ち工数、スケジュールを前
必要である。
倒しにできる品番をピックアップして集中的に管
この場合は個別の編機のスケジューリングと
理して空き工数を埋める。手持ち工数を越えてる
個別の製品のスケジューリングの2面から日程計
部分は過剰工数なので納期延期、外注委託、時間
画を捉えることが重要である。
外労働等で工数消化をはかる。
図表 2 − 2 3 は編立生産工程の品番別スケ
図表 2 −22は班別・工数山積表(B)で納期管理
ジューリング表で、品番別に原料投入予定、生産
を目的にした詳細な表である。班別の能力工数を
開始可能日予測、工数データ、生産スケジュール
縦軸に日付を横軸にとって班ごとに投入品番を面
を示したものである。
積で埋めて行く。縫製工程の表を基に、リンキン
また、図表 2 − 24 は編機の日程計画とその実
グ工程の山積表Bを作成して、次の工程のスケ
行統制を含む差立管理表で、品番 1A4151、受注
ジューリングをする。
数 380 枚の前身の編立管理の事例である。
山積表から判断すると 6 月には 36 工数分(36 時
工 数 0.3115 → 3.21 枚/時間
間分)の仕事が必要であり、7 月は 28 時間、8 月は
総工数 0.3115 × 380 = 118.37 工数
48 時間分の過剰工数の外部消化(外注)が必要であ
1 日 16 時間 稼働率 90%として
ることがわかる。追加営業や外注生産による外部
16 × 0.9 ÷ 0.3115 = 46.2 枚/日
消化はできるだけ早期にその必要性を把握し、適
1 日の予定数量
当な対応策をとることが重要である。このときに
46.2 × 0.3115 = 14.4 工数
大事なことはその時期と過剰工数の絶対量を掌握
1 日の予定工数
することであり、業界全体の受発注サイクルが概
118.37 ÷ 14.4 = 8.22 日
ね同じだとすると過剰工数の出る時期は業界全体
所要日数
で発生することになり、時期に近づけば外注生産
以上までのデータを基に、生産開始前に記入
による工数消化も困難になる。
する。
したがって大日程計画は概算計算によって手持
生産実行段階では 1 日ごとに実績値を記入して
ち能力工数と負荷工数とのアンバランスの早期発
進行をチェックする。
見にその目的があるといえる。
図表 2 − 21 負荷・能力工数山積表A 〈事例〉
第二部 ニットアパレルの生産管理
85
図表 2 − 22 機械別・工数山積表B 〈事例〉
第二部 ニットアパレルの生産管理
86
図表 2 − 23 品番別スケジュール表A 編立て 〈事例〉
第二部 ニットアパレルの生産管理
87
第二部 ニットアパレルの生産管理
図表 2 − 24 差立管理表 〈事例〉
88
第二部 ニットアパレルの生産管理
③ 小日程計画
89
場合社内の日程管理のみならず外部生産のスケ
小日程計画は基本的には1週間程度の期間で
ジューリングも掌握していないと、
その後の 2 次加工
実績と密接にリンクした形で常に日々の実績
の日程管理の精度に大きく影響することになる。
に対応しながら、計画数値と実績値とのズレ
(1) 日程計画
を時間外勤務( 残業) などのような中日程計画
① 大日程計画
の基本スケジュールに変更をきたさない範囲
2次加工は主に人的作業に依存する工程であ
内での実行統制を含んだ現場実務に直結した
る。
ものといえる。
2次加工における日程管理においても概算計
編立生産は糸という物性上不安定な素材を
算によるおおまかな大日程計画を策定し、手
原料としているので、編立現場において設計
持ちの能力により消化可能な仕事量かどうか
された編条件で常に安定した生産が保証され
の評価がまず最初にあるべきである。
ていないのが現状である。したがって経験的
ただし、ニットアパレルの 2 次加工は上述し
に得られた稼働率データも必ずしも合理性の
たように外部生産の協力を得ながら進行させ
ある数値ではなく、むしろ同一素材、同一編機
るのが一般的なので、この部分の日程管理は
にも関わらず日々生産実績数が変化するのが
企業内で一方的な投入進行計画を立てることが
一般的である。
できない。そのため最終完成日程の予測を立
かつては編地生産は、前身、後身、袖、衿を
てることが極めて困難な事情にある。特に受注
それぞれ別々に編立てしていたが、最近では
から納品まで充分な日程的余裕があればよい
サイクルニットとかスケジュールニットなど
が、昨今のQR対応などに見られるように生
の表現で各パーツを順次連続して編立生産を
産期間が短期間であれば、このような社外生
進行し、1 人分が完了すると次の前身から編立
産によるスケジュールの相対的重要性が増大
てを始めることができるようになった。これ
してくることになる。このような傾向から内
はコンピュータ編機のメモリー容量の増大や
製化の方向に方針転換した企業もある。
各パーツデータの自動読み出しなどが可能に
いかに困難であっても概算による能力負荷計
なって実現したものである。( 衿などの付属
算による月別工数対比は事前に実行すべきで
パーツは別編立てが多い)
ある。編立進行後の投入予定から立てる山積
これは編立現場における糸のロット管理が
表は無理としても納期から逆算した山積表を
容易になったばかりでなく、生産管理におい
策定し、仕事量の過剰な時期を掌握しておく
ても各パーツごとの生産進行管理をしなけれ
ことは中・小日程計画をより精度の高いもの
ばならなかったのが、1 人単位で進行管理がで
にするために不可欠である。この山積表は納
きるようになり、管理対象がまとまった分だ
期逆算方式による作成と編立山積表から一定
け容易になったといえる。(前身、後身、袖の 3
のルールで導き出した山積表も作成することが
回生産進行管理から身頃袖 1 人分の進行管理)
望ましい。
編立てにおける山積表はその性格から編立
3 .2 次加工(縫製、リンキング)の日
程管理
ゲージ別に立てるのが望ましく、この 2 次加
工におけるそれは工程別に立てるのが実務に
即しているといえる。
編立工程が終了し、裁断・縫製・リンキングの 2 次
受注全体のおおまかな編立ての山積表から、
加工に移行する前に編地端の仮縫いや縮絨、ソーピ
編立て後平均何日後に縫製投入になるかの概
ング、刺繍等の外部委託加工が入ることも多く、その
算基準を基に編立ての山を 2 次加工の工程に移
第二部 ニットアパレルの生産管理
90
すことにより、 2 次加工の概算山積表を作成す
編立山積表は編機種別に作成し、それから編
る。これはかなり乱暴な決めつけであるが、個々
機別にスケジュールを立てる。編立てスケジュー
の品番評価を基に計算する作業量と実際の効果
ルにもとづいて概算の縫製工程の山積表を作成
を比較した場合、この段階ではやむを得ないと
し、さらに班別の工数割振りをして、生産計画と
思われる。
しての班別スケジュール表を完成させる。
以下簡単に編立山積表と 2 次加工における山
縫製の班別スケジュールに従ってリンキング
積表の関連を例示する。
工程の山積表を描くことができる。
図表 2 − 25 品番別スケジュール表B 二次加工 〈事例〉
第二部 ニットアパレルの生産管理
91
第二部 ニットアパレルの生産管理
92
リンキングミシンにはゲージ制約があるが、
うに常時在庫することはない。
ゲージ対応に柔軟性があればゲージ別にせずに、
これは原料投入予定が遅延する要因となり、生
人的能力工数で山積表を描くようにする。
産開始時期に対する不確定要素は工程管理の信頼
この山積表から、図表 2 − 2 5 の品番別スケ
性にも影響することになる。
ジュール表B( 2 次加工)の作成が可能となる。
素材投入計画は工程管理の精度に深く関わってい
生産管理の重要なテーマの一つに納期設定があ
ることはいうまでもなく、今後QRやSPA型の流
るが、この表により完了予定日が確定される。
通などを志向していく場合、この課題を解決しなけ
② 中 ・小日程計画
ればならない。
2 次加工の中・小日程計画は編立進行に順じて
作成されるもので、編立進行がいかに正確に管
(2) 素材特性を要因とする場合
理されているかが、その精度を決定するといえ
糸という物性的に不安定な原料のため稼働率(編
る。
機の稼働効率)や不良率の予測値にバラツキがでや
図表 2 − 25 に編立てから 2 次加工に至る中・小
すい。一定の稼働率にもとづき編機の工数計算を
日程計画の策定経過を例示する。品番別に工程
しても、素材の物性が色による染色条件の差など
順を追って設定するが、あまり細分化すると繁
で微妙に異なることもあり、特定の色が極端に低
雑になる。
い稼働率となることもある。
編立進行管理表 縫製工程のカレンダー型スケジュール表
また編傷の発生でも色別に異なることもあり、
↓ ⇒ 能力・負荷対応
生産計画を遅延させる原因となる。
↓ ↓
差別化されたニットテキスタイルの開発が編組
品番別編立進捗表 品番別 2 次加工進捗表
織をさらに複雑にするため、編成途中のトラブル
各企業の生産構造によって大いに生産進捗の
発生の機会を増大させることになるのも、稼働率予
管理方法は違ってくると思われるが、基本的に
測を非常に困難にする要素の一つである。
は能力をどのように把握し、負荷(仕事量)との
バランスをいかにとるかが課題であり、個別企
業に最も適合した手法をとることが肝要である。
(3) 業務特性を要因とする場合
稼働環境は空調設備を整えて一定にすることが
望ましいが、生産現場の多くがそこまで整備され
4 .工程管理を困難にしている要因
ていることはむしろ少ないのが、現状である。
麻などのように素材には乾燥状態では糸切れ発生
(1) 商慣習を要因とする場合
率が極端に高まるものもあり、充分な温湿度管理が
現在はアパレルメーカー(卸問屋)からの展示会
なされて始めて予測工数が維持できるものである。
発注方式が主流でそのため各社の発注時期が集中
求められる編地は編機のゲージ・機能を選択す
する結果、原料商社に対する発注も短期間に集中
ることになり、機械設備は保有していても当該編
せざるを得ない。素材商社は在庫リスクを回避す
機では編成不能というケースも少なくない。
る方法として、明確な発注指示がなされないと紡
また季節により、春夏物ではファインゲージ(12
績発注(原料生産開始)はしないので、ニットアパ
G∼1 4 Gなど) が主力になり、秋冬物ではコース
レル生産企業での受注確定∼原料計算∼原料発注
ゲージかミドルゲージ(5G∼10Gなど)が主力とな
∼紡績・染色・撚糸∼原糸投入までの期間がます
るため、保有機械の稼働率が季節により変動する
ます長期化せざるを得ない。
ことは避けられない。
個性的な差別化された素材を選択する傾向が強
裁断∼縫製などの 2 次加工分野においては工数計
くなっているので、商社段階での定番的素材のよ
算の基礎データであるタイム予測が編地特性により
第二部 ニットアパレルの生産管理
大きく異なると同時に、そのバラツキの幅が広い
93
(4) 業界事情を要因とする場合
のが特徴である。
季節的変動やファッション動向の変化により、
例えば天竺組織のカーリング特性についていえ
生産構造を柔軟にするため外注委託に頼る部分
ばその度合が千差万別であることがわかる。
が少なくない。
ゲージを指標にすれば
細かいゲージほど
これは社内の工程管理と違うレベルであるこ
その度合は強くなる。素材を指標にすればウール
とは当然であり、外注先の各々も異なる管理水
や綿などが強い。
準であり、外注工程の日程管理が不確定になれ
素材の構成比からはアクリルなどの混率が高い
ば納期管理にも悪影響を及ぼすことになる。
ほどセットでの矯正が可能である。
季節的な繁閑の格差はさらに拡大し、工程管
後加工からは縮縅・ソーピングによりかなり弱
理∼納期管理のうえで最も重要な繁忙期における
まる。
精度をむしろ低下させる結果となっているのが
これらからカーリングによる裁断効率や縫製タ
現状である。
イムへの影響度の予測は非常に難しくならざるを
得ない。
第二部 ニットアパレルの生産管理
94
第 4 章 品質管理
市場ニーズに合った品質と高い信頼性は国内生産にとって極めて有利な点である。
ニットアパレルにおいても寸法、重さなどの定量的品質に加えて、イメージ、風合い、バランスな
どの定性的品質が重視され、作り手の技術と感性が求められるところである。
また品質不良はコストや納期にも影響するため、その予防は品質管理の基本であり、対応方法を十
分把握し、組織的に取り組んで改善をはかっていくことが望まれる。
ニットアパレル生産において海外生産に対する国
のもあり、海外では理解しにくいこともあるからであ
内生産の有利性は、前章の工程管理による信頼性の
る。
高い納期管理があげられるが、もう一つの強力な有
ファッショントレンドに敏感で高感度商品を生産
利性として品質管理があげられる。品質管理でいう品
するための企業内努力を求められるのが、今後の国
質とは「買手の要求に合った品質」すなわち市場の品
内ニット生産企業であろう。
質を基準にしている。かつては品質は、物を作る側で
“MADE IN JAPAN”に求められる商品は、高感度商
決めていたが、今では使う側で決めるものとして定
品であることは当然であり、物性はもちろん感性的
着している。したがってその内容を的確に把握して、
にも不良品などは絶対に許されないという厳しい環
設計の品質、製造の品質へと展開していくことが、生
境のなかで、まずは予測不可能な不良品を防止する
産企業に求められる。品質管理は顧客が満足する製
ことは国内メーカー生き残りの必須条件といえる。
品を経済的に作り出す経営管理の一つであり、管理精
不良品を防止する最良の方法はQCによる社内組
度、手続き、管理基準などの仕組みを確立することが
織によるシステム化が考えられるが、専門的なQC
必要となる。
の手法については簡単に触れ、不良の種類とその対
品質管理に要求されることがらも、売手責任、消費
応策に関して具体的に記述することにする。
者優先、さらに管理項目の増加、要求水準の高まりな
どと変化している。
1 .ニットアパレル製品の品質内容
「品質」のうち特に目標値が設定される部分(寸法、
目付等)は基準値を明示することができるので問題な
ニットの製品特性から品質を構成する要素(品質特
いが、風合い、バランス、製品全体の感性的イメージ
性)は多種にわたり、特性を測定し数値化されるもの
など定性的な品質部分は具体的に指示しにくい分野
と、視覚触覚などの感覚的に捉えるものとがあり、ま
である。
た定量的品質と定性的品質とで把握することもある。
しかし、国内市場のなかで生活し、自ら消費者にも
これらの要素は製品の着用目的、性別、グレードや
なりうる作業者の判断でこれらの品質基準を設定でき
アパレルメーカーなどにより要求に差があり、重点
ることは、ニットアパレル製品のようなファッショ
度も異なるのが現状である。したがってニット企業
ン製品においては大きなメリットと考えられる。
は得意先の製品別に要求に合った管理項目を定めて
ニット製品の生産では作業者レベルでの技術、ノ
応えているのが一般的である。図表 2 − 26 は一般の
ウハウが大きく製品の出来具合いを決定することも
アパレルメーカーの品質の項目と基準を表したもの
ある。長年培ったノウハウが高感度な製品作りに必
であるが、要求水準のアップなどから、このほかの管
要な分野では今後とも国内生産に依存することにな
理すべき品質項目も求められる。主な品質内容につ
ろう。これらは文化や、生活習慣などから派生するも
いて述べてみる。
図表2−26 セーター類縫製標準
① 縫 製 ② 仕上整理
区 分
衿
項 目
衿 付
肩
肩継ぎ
袖
肩下りの違い
肩巾の違い
袖付縫い
左右袖丈差
袖脇下縫い
袖 口
裾
裾ゴム
前 立
重なり巾
前立て付け
ポケット
ポケット付け
ボタンホール 穴かがり
釦付け
釦つけ
基 準
イ
○ 衿ぐりと衿が同一寸法であること
ロ リンキング付けは目刺しがはずれないこと、また粗目
○
が目立たないこと。
ハ 衿の形態が左右均等でバランスがとれていること
○
ニ 衿廻りの伸度は大人 60 ㎝、子供 55 ㎝以上で脱着が容
○
易であり、見ばえが良好なこと
イ リンキングの目刺しがはずれていないこと
○
ロ ミシン縫いの場合は共生地で補強縫いをする
○
イ 左右差:成形品は2㎝まで、カット物は1㎝まで
○
イ 左右差:伸び易い編地2㎝まで、伸びない生地1㎝まで
○
イ リンキングの目刺しはずれのないこと
○
ロ ミシン付けは2本針オーバーを原則とする
○
ハ 左右の袖のよじれない縫い方とする
○
ニ いせ込みの配分適正で縫じわが目立たぬこと
○
イ 伸びやすい編地は2㎝以内、伸びの少い生地は1㎝以
○
内で違いが目立たないこと
イ リンキングの目刺しはずれのないこと
○
ロ 伸びの少い生地は本縫ミシンか環縫いでもよい
○
ハ 脇縫交点の縫はずれのないこと
○
イ リンキングの場合目刺しはずれのないこと
○
○ リンキングの場合目刺しはずれのないこと
イ
ロ 左右の縫止めをすること
○
イ 折り返し巾が均等で重なりが適正であること
○
ロ リンキングの目刺しはずれのないこと
○
イ 左右前立の長さ、巾は均等にすること
○
ロ 前立下の止めのツマミが目立たないこと
○
ハ リンキングの目落ちがないこと
○
イ 取り付け位置が正常でバランスがとれていること
○
ロ 縫始め、縫終りは閂、返し縫いをすること
○
イ ボタンホールはねむり穴か鳩目とする
○
ロ ボタンホールの大きさが釦の大きさに合っていること
○
イ 釦の取付け位置が正常であること
○
項 目 別・基 準
イ 形枠は使用素材、デザイン、編組織に適合したものを用い、仕上げセットすること
○
ロ 商品の形態、風合(フィーリング)、感覚等に注意した仕上げとする
○
ハ アイロン焼け、アタリ、テカリ、仕上ジワの欠点が目立たないこと
○
ニ 各部の寸法ばらつき、形態不同が許容範囲であること
○
ホ 縫糸、かがり糸の余り糸の始末を完全に行なうこと
○
ヘ 糸屑、毛羽、バー、その他の雑物を完全に除去すること
○
ト きず、鋏きず、目落ち、補修きず、うす切れきず等のないこと
○
チ 汚れ、しみ、染料とび、印跡等目立たないこと
○
③ 寸法許容差(指定寸法に対する仕上寸法の差)
製品の部位
大人用
0∼+1.0㎝
身巾
0∼+1.5㎝
身丈
0∼+1.5㎝
裄丈
0∼+1.0㎝
袖丈
−1.0∼+1.0㎝
肩巾
−1.0∼+1.0㎝
天巾
−1.0∼+1.5㎝
前下り
0∼+1.0㎝
アームホール
子供用
0∼+1.0 ㎝
0∼+1.0 ㎝
0∼+1.0 ㎝
0∼+0.5 ㎝
−0.5∼+0.5 ㎝
−1.0∼+1.0 ㎝
−0.5∼+1.0 ㎝
0∼+0.5 ㎝
※寸法測定個所は別に定める
④ 材 料
1) 主材料∼編糸及び編地は商品に適した優良なもので糸むら、編むら、編目曲りが目立た
ず、かつ、キズ、汚れ、縮絨ムラ、染ムラ、捺染不良等の品質、品位を損なう欠点がなく、
洗濯に耐え、収縮率の小さいものを用いること
2) 付属材料∼ボタン、グリッパー、スナップ等の付属材料は使用個所とデザインに適したも
ので、機能性にすぐれ、洗濯に耐えるものとする。
3) 縫糸∼縫糸は綿/エステル混、合繊糸、梳毛糸、またはこれと同等以上の強伸度をもつも
ので、使用編地や縫合個所に適合した太さ及び色相のものを使用すること。
第二部 ニットアパレルの生産管理
定量的品質
数値で表現できる品質基準で寸法、重量、度目、
96
のカシミヤ、キャメルなどのような素材は別に
して繊維構成比率は消費選択の決定的要素では
素材内容等。
ない。ただし、生産上において素材選択は極めて
① 寸法
重要なものである。製品の求めるイメージの編地
各得意先により同じMサイズでも各部の指定
を開発するにはどのような糸と糸を何本組み合わ
に違いがある。YシャツなどのようなJIS規
せたらよいか、はニットテキスタイルのイメージ
格が存在しないのはニット製品が伸縮性に富む
を決定する最大要素と考えられる。
素材であるばかりでなく、各製品の着用イメー
ジをどのように寸法的に表現するかは企画にお
④ 度目
ける極めて重要な要素であるからである。した
編地の粗密の程度は消費者がその差を判断す
がって製品の指定寸法に対する得意先のこだわ
ることは困難であるが、その微妙な差は編地特
りがあるので、最終寸法を指定範囲内に確保し
性に大きく影響し、製品イメージをも左右する
なければならない。
重大要素である。生産現場ではこの度目を各製
織物製品とは違い、形態安定性がないだけに
品で一定に保つためにいろいろと努力を重ねて
指定寸法に適合させるためにも少なからずノウ
きた。引き目( 一定のテンションで編地を引っ
ハウが必要である。素材特性、編組織、ゲージな
張ったとき一定の長さの中に何目あるか)などの
ど各要素が関連して全体の編地特性を構成して
ような方法は、
手動の編機で同一製品を同じ度目
いるので、パターンの作成においてもそれらを
で編成する方法として実際に行われてきた。ま
検討して部分補正をしなければならない。
たループ長管理などもその方法の一つで、最近
パターンにおいて適正な補正を加えても縫製
では編成環境により変化する実際のループ長を
作業現場で縫い伸びさせたり、縫い縮みさせる
自動的にコンピュータで計算して、度目カムを
と設計通りの寸法にならず、製品イメージから
微調整しながらループ長を一定に管理する技術
大きくかけ離れてしまう結果となりやすい。
も一般的になってきた。
② 重量
定性的品質
製品重量も製品を構成する極めて大きな要素
イメージ、風合い、素材感、バランス、感性、縫
である。かつては重量の重いものが、素材を十分
合適性などで、ニットアパレル製品ではこれらの
に使い高級な製品であると判断された時代も
定量的には測れない品質が相対的に重要である。
あったが、現在はその製品にマッチした重量感
① イメージ
にふさわしいことが重要になってきている。昨
編地が形態安定性がない分、でき上りイメージ
今ではむしろ着用時には軽さを感じるとともに
が、各工程作業者の感性的理解力に大きく依存
製品としてはボリューム感が求められるという
することになる。したがって、企画意図にマッチ
ように時代の変化が製品に求める要求内容も複
した最終製品を完成させるためには企業全体のブ
雑になってきた。
ランドコンセプトに対する十分な理解が必要で
ある。
③ 素材
製品の品質として表示が義務付けられている。
② 風合い
いわゆる毛、綿、アクリル、ナイロンなどの繊維
編地の手ざわりや見た感じで、数値化できない
別構成比率は消費者にとっては製品判断の一つ
感覚的要素を持つ。生地の折り曲げや指圧弾性の
の要素となっている。しかし、絹や高級獣毛素材
度合、生地表面のやわらかさの度合と見栄えの
第二部 ニットアパレルの生産管理
相乗的な起因から形成される品質である。
97
視される項目である。
2 .品質管理の実務
③ 素材感
素材の持つ特性要素のうち、伸び、ふくらみ、
艶、暖かさ、滑りなどが製品に仕上げられた度
製品の多様化にともない、不良または不良品発生
合、出来栄えである。これらは視覚、触覚、場合
要素も増加している。これに対応するため、工場の品
により聴覚で捉えられるが、それらの特性が充
質管理は組織的に統計的手法(ヒストグラム、特性要
分活かされれば素材感があることになる。
因図、パレート図、チェックシート…)を中心に実施
させているところが多い。特に作業の標準化などに
④ バランス
よる工程ごとのチェックに力を入れているが、不良の
製品の左右の対称度に起因するもので、袖、
発生も多岐多種にわたっている。
肩、衿などの寸法差や形の差が視覚で目立たな
原因要素別にまとめてみると図表 2 − 27 のように
い程度のものであること。実務では図表 2 − 26
なるが、原材料の受入れチェックの強化や、各工程の
のように許容差を具体的に表し管理する。この
予防策などにより不良の発生は、作業難度、生産ルー
他に身生地と付属生地(衿、袖、衿前立など)の
ト、そして原料の特性による集中的発生が多く、それ
厚みや伸びなどの釣り合い度合に起因するもの
以外の不良件数は散発的である傾向がある。図表 2 −
がある。
28、図表 2 − 29 に、ある工場の発生例を示すが、発
生する不良そのものは工場により差があると思われ
⑤ 感性
る。
流行性や感受性の度合に起因する感覚的な捉
以上のように生産段階で発生する不良は材料関係
え方で、製品の品質というより品位を意味する
に起因するものは選別仕分けし、加工関係に起因す
ものが大きい。工場の品質管理項目として運用
るものは、補修、手直し、初工程からの作り直しなど
しているところは、いまのところ少ないが、重要
で商品化することになる。いうまでもなく、不良の発
図表 2 − 27 不良の種類(原因要素別)
原 因
不 良
原 糸 不 良 糸ムラ、雑物混入(ネップ、バーなど)汚れ、染ムラ、編ムラ度目違い、
編キズ、引けキズ、生地目落ち、編目曲り、洗濯による伸び、縮み、混
紡ムラ
材 料
附 属 材 料 釦のバラツキ(厚み)
、釦の強度、釦やクリップの錆、刺繍糸やラメ糸の
不
良 色落ち、刺繍糸の縮み
副 材 料 不 良 裏地、芯地の伸び、ネーム類の表示違い、混入
縫 糸 不 良 リンキング目落ち(共糸双子のもの)
、糸切れ、縮み、針穴(縫)
、色違
い
編 不
良 編ムラ、針筋、編キズ、度目違い、目落ち、ロット混入、編上寸法差、サ
イズ混合、汚れ
裁 断 不 良 色違い、柄違い、ロット混合、サイズ混合、汚れ、色合せ不良柄合せ不
良、寸法不良(差)
、プレス跡残り
加 工
縫 共 通 不 良 汚れ、伸縫い、縫伸び不足、柄合せ不良、目落(リンキング)
パッカリング(縫シワ)、縫はずれ、縫代不足、縫目曲り、縫継不良、環
とび、針穴キズ、送り歯キズ、地糸切れ、いせ込み配分不良、縫付け印
跡、返し縫不良、かがり糸始末不良、柄物始末不良
伸び不良、左右寸法差、リンキング半目縫(双糸使い共糸)
衿 付 不 良
左右肩巾差、左右肩下りバランス不良
肩 継 不 良
袖形左右差、袖ぐり左右寸法差のアンバランス
袖 付 不 良 脇下の縫い外れ、左右両袖丈差
そ
の
前立重なり不良、ポケット取付位置不良、刺繍位置不良
他 ボタン取付位置不良、風合不良、アタリ、テカリ、各寸法不良
第二部 ニットアパレルの生産管理
図表 2 − 28 不良と発生率(成形品)
図表 2 − 29 不良と発生率(カット物)
80
80
70
70
60
60
50
46%
50
40
40
30
30
22%
20
32%
27%
18%
20
15%
10
原
原糸
糸不
不良良
シ
ミれ
汚 シ れミ
汚
目
落グ
リ ン キ ン
リ
ンキ
ン
グ落
目 不良
発生%
0
原
良良
原糸
糸不不
シ
ミれ
汚 汚シ れミ
目リ ン
キ
ン
落グ
リ
キ
ン
グ落
目ン
不良
発生%
10
0
98
生は生産進捗やコストに大きな影響を与えるため、
ントになる。いくら立派な再発防止策や管理図が
不良の予防や極少化を中心に不良対策がとられてい
あっても、実行活用されなければ結果は期待できな
る。対策の基本は以下の五つに集約され、一般に実施
いのである。
されている。問題解決策の考え方と全く同一である。
上記五つの対策(QC手法の活用)の他、もう一つ
① 作業の標準化
大切なことは精神的対策が並行的にどれだけ進めら
各作業の全てにつき、標準的な作業方法( 順序、
れているかであり、それにより効果が決まるといわれ
方法、使う器具治具)や、標準時間の設定、守るべ
ている。
き品質水準を定め、検査の方法、設備保全の方法
一つに品質はトップの品質に対する取り組み姿勢
などの作業を標準化する。
や熱意により決まるといわれ、工場長の姿勢や情熱
② チェック・測定
度合で、その工場の品質水準、不良の発生状況は想定
日常の不良の発生情況をチェック、測定し、結
できるとさえいわれる。例えばある工場では検査精
果をヒストグラム、特性要因、パレート図や
度も確立し、受入検査、工程検査、製品検査を行い記
チェックシート、散布図などにまとめて活用する
録もつかんでいるが、不良または不良品は、旧態依然
ことにより、現場の実態を明らかにする。
として減少せず手直し率が高い。また別の工場長は
③ 作業者の訓練
「私は納期対応に忙しく品質は現場でチェックさせて
不良発生作業者の作業情況をチェックし、標準
いるから、不良品は少ないと思う」…このようなこと
化作業の徹底を指導する。
では工場長としての任務が果たせず、作業員も適当
④ 不良の再発防止策の確立
になってしまい、結果として、コスト高にも泣かされ
現場の実態を把握し、原因の究明を行い、再発
ることになる。このような工場は意外と多いのであ
防止の具体策を作る。
る。
⑤ 対策の実施と確認
次に品質管理は人間関係がベースとしてある。
対策の周知と実行指導、対策前、対策後の結果
例えば作業者が不良を発生したとき、
「お互いにか
の比較、効果の確認、作業の標準化の改善をし、
くし合ったり」、上司に「叱られるから報告しない」あ
歯止めを行なう。
るいは発生させた作業者が「他の作業者から冷たく
製品の品質は各部門、各工程の協力により、各工程
見られる」などは、品質管理上正常な人間関係とはい
が責任をもって科学的に管理されることである。す
えないのである。正しい不良情報が正式なルートで
なわち「品質は各工程で作られるもの」、後工程が満
伝わり、前向きに対応がとれる職場の人間関係や雰
足する品質を提供する「後工程はお客様」という考え
囲気作りが必要である。
方が組織としてどの程度、徹底できているかがポイ
さらに工場責任者の日常工場内巡回チェックの実
第二部 ニットアパレルの生産管理
施である。
99
と認識し、組織的に取り組むことがポイントになる。
毎日の生産活動にはいろいろと問題発生の要因を
はらんでいると考える必要があり、作業状況の
3 .不良の原因と予防策
チェック、問題探しは大きな不良防止策となってい
る。不良の早期発見、タイミングよい対策が大きな効
品質管理において、いかに不良の発生を防ぎ、製品
果をもたらすことになる。
に対する信頼性を高めるかは重要な課題である。
ある程度の期間(週、月、シーズン)の検査記録の
分析活用も工場として大事な品質管理活動である。
(1) 編地に関する不良― その原因と対策
普通、記録としては生産工程の検品記録、異常発生処
以下の表は編地不良が発生する原因個所とその不
置記録、製品検査成績、手直し率だけでなく、製品出
良内容及び対応策をまとめたものである。
荷後のクレーム、コンプレンの記録や処置などを定
編地不良が発生してからその原因を取り除くこと
期的品質会議の開催で対策をとることが多いが、管
は臨床的対応であるが、発生原因個所に対し常に予
理の方法ではなく、実施面で、徹底さに欠ける工場が
防的注意を払い、発生前に保全することが理想であ
目立つように感じる。「品質は生産企業の命である」
る。
1 針︵シン カー針等含 む︶
発生個所とその内容
2 針溝
3 歯口
編地不良の内容
対応策
フック(針の頭)傷
糸切れキズ、毛羽筋、異常編目の縦筋
原因針の特定と新規針との速やかな交換。
フックの曲がり
糸切れキズ、毛羽筋、異常編目の縦筋
原因針の特定と新規針との速やかな交換。
フック折損
編目が消えて針抜き状態(針折れ傷)
原因針の特定と新規針との速やかな交換。
ベラ曲がり
タック傷、異常編目の縦筋
微妙な相違を慎重に特定・交換。
ベラ折損
折損針に編地が固定→複数針折損→編地編成不 多量の針の折損につながるので重大トラブル に
進まないうちに発生後速やかに針交換。
能
リベット不良
タック傷、異常編目の縦筋
バット不良、折損
折損針に編地が固定→複数針折損→編地編成不 多量の針の折損につながるので重大トラブル に
進まないうちに発生後速やかに針交換。
能、針抜状の縦筋
針本体の異常な曲がり
針のカム運動が円滑に作動しない→縦筋
複数の原因で同じ縦筋傷が発生するので原因 特
定に困難な場合がある。新規針に交換する。
針の錆
錆汚れ付着
一定期間使用しなかった編機の針や使用針以 外
の範囲の針に錆が発生することがあるので交 換
する。
針溝つまり
針のカム運動が円滑に作動しない→縦筋
針溝の中に風綿や油が染み込んで針の動きが 渋
くなるので適宜溝の中を掃除して除去する。
針溝の曲がり
針のカム運動が円滑に作動しない→縦筋
キャリッジのカムが針のバットを折損したと き
その衝撃により溝に歪みが発生するので針溝 を
補正する。
針溝切口不同
全体の編目が不揃い→雨降り状の不定編目
それぞれの針のカム運動の動作が一定でなく、編
成された編目が揃わないことになるので補正 す
る。著しい場合は釜、針床を交換する。
歯口調整不良
歯口幅の不同による縦筋
歯口に磨耗があるときは修正するが、修正不能な
場合は交換する。
歯口傷
毛羽筋、針筋
歯口のキズは研磨して除去する。
事前兆候に注意して編地不良が連続発生しな い
うちに交換。
第二部 ニットアパレルの生産管理 100
4 キャリッ ジ
発生個所とその内容
5 ガイド
編地不良の内容
対応策
ストローク調整不良
耳引け、耳ゆるみ、耳組織不良
回転速度不良
糸切れ、2重食い、針かぶり、タック
使用している針幅とキャリッジの運動幅とが 適
合するように調整する。
旧タイプの編機でキャリッジが本体の端々に 動
作するものはヤーンキャリアーの固定位置を 調
整する。
キャリッジの回転速度が早すぎると針の動作 が
必要以上に大きくなりすぎるので適合速度に 調
整する。
ガイドの傷
毛羽筋、糸切れ
ガイドの傷に糸が触れて切れたり、すれたりする。
ガイドを交換する。
ガイドのつまり
給糸張力異常→度目ムラ→引きつれ傷
素材によって風綿(毛羽)が異常に発生し、糸道
のガイドにつまると糸切れする前に異常圧力 を
生じ過剰な張力となる。風綿、ゴミなどはこまめ
に除去し、常に一定の張力を保持する。
位置調整不調
糸切れ、汚れ、連れ込みキズ
ガイドの位置が適正でないため糸に負担がかかる。
適正位置に調整する。
6 異常感知 装置
感度調整不良
異常感知の遅れ→糸切れ、針折損など
糸切れ等トラブル発生時点で即時反応しない と
そのための悪影響が増幅することがあり、原状復
帰に必要以上の時間がかかる。感度調整を適正に
セットする。このとき過度に敏感にすると生産効
率を極端に下げることになるので適正感度に す
ることが重要である。
位置調整不良
異常感知の遅れ→糸切れ、針折損など
異常感知装置が不適当な位置にあると糸が触 れ
たり針が衝突したりするので適合位置にしっ か
りとセットする。締め付けがゆるんで糸や針に触
れることがないようにする。
7 給糸装置
ヤーンキャリアー位置不良
耳組織に傷、2重臼不良
編端の針が安定して編目を作れるように調整する。
給糸張力不足
異常給糸張力→度目ムラ、引きつれ傷
給糸張力を設定するバネは素材毎に適当な圧 力
に設定する。
各給糸口調整不良
給糸量の不同→度目ムラ
丸編で多給糸口の場合、各給糸口の圧力を一定に
セットする。ただし、編組織によっては意図的に
圧力を変化させることもあり、その設計通りに維
持する。
積極給糸装置不良
給糸量の不同→度目ムラ
給糸口ごとの糸の送り出量の設定が間違って い
たり、調整ずれが生じることがある。送り出し量
を測定し、設計通りに調整する。
8 巻取り装 置
巻取り圧力過大
糸切れ傷
圧力を適正に調整する。
ローラーの傷
縦方向の断続的な傷
ローラ表面のキズを補修する。
巻取り動作不良
度目ムラ
巻取り装置の調整
幅出し不良
しわ
編地に適正な幅に設定する。
保持圧力左右バランス
編目曲がり(ウェール方向)
横方向の目が蛇行したり、斜行したりするので左
右の保持圧力を均等になるように調整する。
第二部 ニットアパレルの生産管理 101
9 機械全体
発生個所とその内容
0
1 作 業方法
編地不良の内容
対応策
長期停止
段ムラ(止め段)
長期に渡って機械を停止するときは段ムラが 発
生するので巻取り装置を緩めるか、残糸などで編
進み本生産分の編地は編機から外す。
各釜の水平不良
段ムラ(機械段)
丸編のダイヤル、シリンダー、シンカー釜の芯出
し水平度の調整をする。
機械全体の調整不良
円滑作動の阻害→不安定編目
各種調整ダイヤル、ネジなどが設定通りの精度で
調整がされているか、定期的にチェックし、ずれ
が生じている場合は調整する。
給油不足
円滑作動の阻害→不安定編目
強制給油機構の場合はオイル貯油槽に適度の 量
のオイルが常に保持されているようにする。
また給油作業が必要なところは設定された間 隔
で必ず注油をする。
回転速度過剰、不定
糸切れ、段ムラ
回転速度が過剰の場合、糸の供給が間に合わず、
糸切れが生じる。最適速度に設定する。
電力変化による回転数のムラも度目変化に微 妙
に影響する。電力変化の原因を取り除く。
糸立て位置不良
連れ込み傷、2重臼不良
糸切り替えカット不良
連れ込み傷
風綿、ゴミ清掃
飛び込み
糸切れ傷、引きつれ傷
一般汚れ
汚れ
錆
錆汚れ
つなぎ目集中
結接部の塊
原糸ロット混入
色相、彩度、明度の微妙な違いによる段柄
パーツ間の色違い
保管・移動方法の不備
配色糸替えミス
酸化ガス退色、汚れ
編成中の糸立て位置が適当でないと隣の糸を 巻
き込んでしまったり、ガイド位置との位置ずれが
激しいと異常テンションが生じることがある。ガ
イド位置に対応する位置が理想だが、継ぎ足し糸
もできるだけその位置に近づける。
テンション異常が起こらない位置にする。
編成作業中は糸毛羽が飛んで編機の各部に付 着
する。
とくに糸道に沿っては多量の風綿が溜まるこ と
が多い。色切り替え後に編成中これらの糸毛羽が
混ざってしまうことがある。適宜清掃して飛び込
みが発生しないようにする。
糸道ガイドや張力圧力部にワックス剤と混ざ っ
て固形化するときがあり、異常な糸張力となるこ
とがあるので定期的に除去する。
糸立て台、編機の周辺は糸屑や油などにより汚れ
やすく、これが編成後の編地を汚す原因となるの
でこまめに清掃する。
長期停台していた編機の針に錆が生じたり、使用
範囲外の針に錆が生じることがある。これが油分
とともに針溝から編成中の編地に付着する恐 れ
がある。錆びた針は交換し、使用中止している編
機の針は防錆処置をする。
結び目位置をずらす。
複数の原料ロットを同一編成に使用する場合 は
ロット別の生産割り振りを事前に設定し、各パー
ツが同一ロットでまとまるようにする。
編成現場や保管場所で灯油ストーブ暖房をし て
いる場合酸化ガスが発生し、ガス退色が発生する
ので室内空気に接触しないようにする。
(ビニー
ル袋に密封するなど)。
第二部 ニットアパレルの生産管理 102
1
1 糸
発生個所とその内容
編地不良の内容
対応策
紡績ムラ
段ムラ
当該ロットの原糸は使用しない。
撚糸ムラ
段ムラ
当該ロットの原糸は使用しない。
染色ムラ
段ムラ
当該ロットの原糸は使用しない。
染色汚染
色違い
当該ロットの原糸は使用しない。
結び目
糸切れ傷
ワキシングのための巻直し時に小さく結び直す。
ネップ、スラブ
糸切れ傷
ワキシングのための巻直し時にコブ取り装置を調
整する。
スナール(ヨリちぢれ)
連れ込み傷
強撚糸は発生しやすいので巻直し、糸立て、編成
時に十分注意する。
ヨリバランス不良
斜行
ヨリ止めが不十分か、上より下よりのバランスが等
しくない場合に編地が斜行(よじれる)するので天
竺組織は避けてリブ系の両面組織にする。
糸汚れ
汚れ
汚れの原因をつかみ再発を防止する。
糸巻硬度のバラツキ
段ムラ
過度の硬いコーンは適正張力で巻直す。
フィラメント糸オーバー解じょ
引きつれ傷
毛羽が無く滑りやすい糸はコーンからはずれ て
台上にこぼれてしまうのでネットで抑える。
ワキシング、オイリング不良
度目ムラ
ワックスは季節、素材に適合したものを使う。
柔軟性不足
糸切れ傷
素材特性として柔軟性がない糸は物理的に無 理
な編組織は避ける。
弾性回復の悪い素材
編成途中停止による縞段
編成途中で機械停止をしない。一枚編成終了まで
編進める。
張りの強い糸
目落ち
張りのある糸はループが大きくなりがちで針 の
頭から抜ける恐れがあるので巻取り調整など に
細心の注意が必要である。
糸柄くせ(リピート加工)
かすり染め、意匠糸などで規則性があるとき
一定の規則性ある配置柄が生じるのでコース 使
用糸量と糸のリピート間隔が整数比例しない よ
うにする。
第二部 ニットアパレルの生産管理 103
(2) 製品に関する不良―その原因と対策
以下の表は製品不良の内容とその不良原因及び対応
策をまとめたものである。
不良発生とその内容
製品不良の原因
対応策
ポロ衿幅 左右の相違
巻取りローラーの張力の左右ムラ
巻取りローラーの左右のテンションバランス 調
巻取りローラーの左右磨耗度の相違
整、巻取りローラー交換
ポロ衿 編み出し線の曲がり
巻取りローラーの張力ムラ
部分ごとに巻取り調整ができる機種はバランス調整
衿全般の左右バランス崩れ
パターンの衿ぐり線不良
パターン線の修正
パターン合印不適
合印位置の再確認
リンキングポイント位置の設定ミス
編立本数とパターン位置との割り出し計算確認
いせ込み量と位置のずれ
イセ込み位置と量の左右均等化
前身頃左右編組織の物性差(縦横の伸度に相違)
衿ぐりのパターンの修正
衿ぐり寸法と針立数の不適合
針立数の調整
度目不適合
度目の調整
衿の捩れ
表と裏が対応していない(ぶっ刺しのケース)
ぶっ刺し側(裏側)の目数を注意
丸首衿で頭が入らない
衿付属の針立数不足
針本数追加
リンキング糸調子が強すぎる
張力調整
身頃編組織の伸度不足
度目調整
衿ぐりまとめ手法(止め編みなど)
後ろ中心に明きを入れる(涙明きなど)
衿の肩継部の飛び出し
肩継ぎの縫い伸び
作動比の調整
V衿剣先方向 斜行
剣先止め縫いの左右のずれ
本縫い仕様の場合は若干カーブで縫う
衿の抜け 浮き
リンキング止めで剣先縫いする
リンキングでは縫目がわらってしまう場合、さら
に本縫いで2重縫い
V衿左右の歪み
ポイント位置のずれ
針本数とパターン寸法の再調整
ポケット左右段違い
パターン位置不適
パターン修正
釦付、釦穴位置の不良
釦位置確認
編地の歪み
下蒸し工程での歪み修正
左右の編組織の物性差
ポケット仕様の変更
編地柄による錯覚(斜行柄など)
斜行度合による調整
ポケット水平度不良
片玉ポケット(切りポケット) 縫製手順中での切込み過ぎ
編地による切り込み程度の再確認
両端パンク
片玉ポケット角不良
縫製止め位置不良
定規、アタッチメントの改良
ポケット目通し(特に両端)
縫製止め位置不良(並行に止めていない)
定規、アタッチメントの改良
編地の歪み
下蒸し工程での歪み修正
縫い伸び
押え圧力を低くする
アウトポケット縫い線波うち
滑りのよい押えを使用(テフロン押え、テフロン
テープ貼)
内縫いポケット左右R違い
印の縫い線を追っていない
R部前後の左右の編地の縫製時の回転度合を 合
わす
第二部 ニットアパレルの生産管理 104
不良発生とその内容
製品不良の原因
対応策
裾ゴム両端の縦伸び
編機両サイド巻取り張力カラム
巻取り張力調整
裾・袖口 テンション不足
度目が粗いか、または詰め過ぎ
適正度目に調整
伸縮機能繊維のプレーティング不良
プレーティング方法の改良
裾ゴム編み出しの波うち
編み出し針を使用する編機
編み出し止めの度目を詰めて袋の度目を粗くする
前立 下端ツレ
前立付属 寸法不足
針立数追加 回転調整
前立 下端飛び出し
前立付属 寸法過大
パターン確認修正
縫い伸び
押えの滑りをよくする
針送り、上下送り機構のミシン使用
ポイント位置不良
ポイント位置調整
左右編組織 物性差
縫い方向 縫い重ね方法の検討
縫い伸び
上下送り機構のミシン
袖ぐり寸法と袖山寸法の不適合
パターン修正
肩継線のツレ
肩継伸び止めテープの張力過多
伸び止めテープ張力調整
肩継線の飛び出し
肩継の縫い伸び
差動比調整
袖付下パンク
縫代不足
袖付下十字ポイント部縫代注意
上前 下前のバランス崩れ
袖付線の蛇行
袖付下部補強縫い
釦がはずれやすい
釦と釦ホールの寸法不適合
釦と釦ホールの寸法差確認
直径が同じでも釦の厚みの差も関連する
釦と釦ホールの伸び止め不良
芯糸かテープを挿入する
2回まわしで縫う
釦ホール内の解れ糸
釦ホール内の間隔不良
メス幅に合わせて縫い糸を切断しない範囲で で
きるだけ幅丈寸法を小さく設定する
風合い違い
柄合わせ不良
縮絨条件の違い
縮絨条件管理の徹底
原料染色方法の違い
かせ染めとチーズ染めの選択
裁断・精度不良
針合わせ裁断方式
一人裁ち(手裁ち)方式
ミシンの目の目飛び
ミシン調整不良
針方向セット調整
針番手変更
ミシンのタイミング調整
縫いツレ
段差部分
段差の落ち込み部分の縫い方法の改良
メッシュ編地
縫代に芯地を貼る
上糸・下糸の糸調子ムラ
糸調子の調整
過大ないせ量
イセ込み量の再検討
縫い伸び
縫製時での過大なひっぱり過ぎ
すくい等の表地へのひびき
裾ひきロックのすくい過ぎ
すくい量の間隔調整
すくいミシンのすくい量調整不良
すくい量の間隔調整
第二部 ニットアパレルの生産管理 105
不良発生とその内容
製品不良の原因
対応策
地糸切れ
針による編地の切断
適合番手の針使用
ポールポイント、Jポイント針の使用
乾燥し過ぎの作業環境
作業環境に適度の加湿
平2本針、3本針の波うち
縫目の凹凸
差動比の調整
縫いずれ
滑り易い素材
上下送り、針送り機構
軽度の縫いずれはテフロン押えかテフロンテ ー
プを貼った押えを使用
ダレによる△状のしわ
縦方向に伸度が大きい編地
パターン修正の上縫製時点で引き伸ばしなが ら
縫う
写真 2 − 4 針のフック折による縦筋傷
写真 2 − 5 飛び込み
第二部 ニットアパレルの生産管理 106
4 .PL法に対応する社内体制
一般的方法としては保全関連の責任者が全て針の
在庫管理を行い、必要の都度作業者の要請にもとづい
製造物責任法の施行(平成 7 年 7 月)にともないニッ
て渡し、必要以上の針を作業現場内に存在しないよ
トアパレル生産企業においてもその法の主旨にもと
うにする。
づいて社内対策を迫られたが、子供ニット製品の工
さらに針を使用している工程では針管理ノートの
場現場では以前からその徹底管理を実施していた業
ようなものを設置し、針折れなどが発生した場合、日
界であった。
付、製品、作業者、折損針の復元状態を記述し、一部
ニット製品で特にPL法に関連するトラブルは各
を喪失して完全復元が困難な場合はその生産単位
種工程で使用されている金属針またはその一部の混
ロットを全て検針にかけて、安全を確認する(折損針
入により、消費者が着用時に怪我をすることが考え
復元管理)。
られる。また素材の加工段階における洗浄不足など
各工程での針管理とともに検品作業の一環として
により染料薬品が付着した状態で消費者の皮膚炎な
検針装置による全品チェックすることが通常である。
ども考えられるが、極めて希なケースである。
アパレル・メーカーとの取引きにあたっては検針
したがって、PL法対策といえば異物混入が主な
機は使用しているか、異物混入防止対策のシステム
対象であり、特に編針、ミシン針、かがり針、べら針
はどうしているかなどを文書で提出することが義務
(下札付けに使用) まち針などの混入防止をはからな
付けられることが多く(図表 2 − 30)、この対策がな
ければならない。
されていない生産企業とは取引きを避けることにな
ニット製品は一部の工程を外部の内職作業に依存
る。
することが多く、社内の製造工程内の対策だけでは
PL法の施行にともない保険会社が関連損害保険
充分とはいえず、最終検品工程で全数チェックを実
商品を取り揃え、各生産企業もほとんど加入するよ
行しなければならない。
うになった。ただし、異物混入による消費者事故の発
工場全体で針管理を徹底することが必要である。
生頻度に比して保険料の割高感があり、業界組合の
斡旋による団体加入で加入するケースが多い。
第二部 ニットアパレルの生産管理 107
図表 2 − 30 検針体制の調査事例
第二部 ニットアパレルの生産管理 108
第 5 章 外注管理
ニットアパレル生産企業は多かれ少なかれ、生産の一部を外注委託している。委託分野やその形態
は異なっても、外注工場は概して品質、納期、コストに関して管理レベルが低く、また収益性の悪化
から後継者難がみられ、ニットアパレル生産の存亡にかかわる問題ともなっている。
外注企業を育て、外注管理を円滑に進めるにはきめ細かな指導とともに、外注先が不安なく協力で
きる体制を作っていくことがポイントである。
ニットアパレル生産においては当該企業のアイテ
ントロールのなかで運用することは理想であるが、
ム、機械設備状況、人材構成などでその依存度は大き
以下のような理由で外注加工に依存するのが通常で
く異なるが、必ずといっていいほど、外注生産に委託
ある。
しているのが現状であり、外注生産の円滑化のため
の外注管理は極めて重要な経営機能となっている。
外注生産に関しては現在最も大きい課題はニット
アパレル生産業界の低収益体質を反映して、外注生
産現場においても必然的に環境が厳しく、低収益傾
向も一層強いということである。そのため機械設備
の更新もままならないばかりでなく、既存設備の維
持すら困難な状況も見受けられる。
(1) 外注生産に委託する分野
1 生産設備やノウハウを保持していない工程を委
託する場合。
染色、縮絨、ソーピング、起毛、刺繍、プリン
トなど。
2 繁閑の差が大きく、固定的に生産力を保持して
おくことが企業的に負担となる場合。
特殊な技術や設備機械を保持している場合を除き、
特殊な機械設備を必要とするもの。
その低収益性は後継者に魅力ある仕事として受け入
3 ファッション製品は季節サイクルが明確で受
れられないのが現状である。このままでは近い将来
注、生産、納品の時期が通年で偏ってしまうの
その生産力は激減することが予想される。
で、繁忙時の生産力不足を補足するために利用
ファッション業界においてデザイン、企画などの
する場合。
ソフト分野での華やかさとは逆に製造現場という
4 工場に不適なジャンルの受注を当該製品を得意
ハード的分野で生産業界の弱体化が確実に進行して
とする専門企業に委託する方が生産コストが安
いる。ニットアパレル生産業界の将来を展望するう
くなる場合。
えで、外注生産分野も含めて生産能力を維持してい
く方法を技術、ノウハウを担う人材が存在するうち
に業界全体の問題として検討する必要がある。
この章では外注生産に依存する理由とその現状及
び管理上の問題点について述べる。
5 企業内の工賃基準では割高となるような工程を
委託する場合。
内職労働に依存するような手作業手かがり、
釦の手付、肩パッド付けなど。
工程別に主要委託背景をまとめると図表 2 −31の
通りである。編立て関連では、高価な編機の投資は
1 .ニットアパレル製品の外注生産
必要最低限にし、特に特殊編機(インターシャ、粗
ゲージ、細ゲージ、広い幅機…)や能力不足は外注
ニットアパレル生産にとってその構造的な理由に
で、閑散期時の操業度を考え、規模の拡大を必要
より、外注委託生産は避けて通れない。日程管理など
以上には考えないというのが一般的である。ただ
の面からは完全内製により全て進行管理を自社のコ
し、編立て中心に自工場に重点投資し、代わりに縫
第二部 ニットアパレルの生産管理 109
図表 2 − 31 工程別主要委託背景
工程
背景
技 術 ・ 設 備 的
能
力
欠
如
編 立
縫 製
リンキング
仕 上
刺 繍
プリント
◎
△
△
△
◎
◎
(特殊・ゲー
(−)
(−)
(−)
(技術・設備) (技術・設備)
ジ)
生 産 能 力 不 足
□
○
○
○
○
◎
専 門 ・ 技 能 的
○
□
◎
◎
□
○
能
力
不
足
(技能者)
( − )
(技能者)
(技能者)
( − )
(専門者)
低
コ
ス
ト
△
◎
◎(内職)
○
○
□
企業規模適正化
○
○
○
○
△
△
繁
△
□
□
□
○
△
閑
対
策
◎非常に大きい、○大きい、□まずまず、△小さい
製工程は見本作り機能のみ内部で、他は全て外注
ることである。2番目には安定・連続性に欠ける工
という企業も稀にある。
程があること、すなわち操業度からくる稼働率の
縫製については、低コスト、生産能力が大きな
懸念からくるところが大きいようである。
背景のようである。それも閑散期の操業度から人
製品の多様化とコスト競争、受注生産比率の
手の多くを必要とするこの部門の規模を圧縮しよ
アップから従来の外注委託の考え方とその方法が
うとする働きがあるからであろう。
変わってきている。
リンキングについては、技能向上に時間を要し、
視力という肉体的条件が必要となり、必ずしも工
(2) 外注生産の形態
場形成の職場でなくとも内職的範囲で、家事との
外注委託の形態には図表 2 −32のような種類があ
併用でできることから、専門的でかつ低コストで
るが、各々の委託形態を組み合せながら外注運営し
あることが大きな背景であり理由でもある。
ている。
仕上については熟練手作業の性格から内製より
① 完全内製
外製の方が低コストであり、比較的多くの外注先
ニットアパレル生産企業において完全内製と
が専門的に存在することによるところが大きい。
いう企業は染色・プリントなどの特殊工程を除
刺繍とプリントとは共通する点が多い。1番に技
けば例外的に存在することも考えられるが、ほ
術的にも、設備的にもニット生産企業とは少し異
とんどの企業が下図の形態のように外注委託して
質なところがあり、専門外の工程と位置づけてい
いる。
図表 2 − 32 外注生産の形態
内製
ニットアパレル
生産企業
完全内製
部分外注
賃加工
原料支給製品買い
外注
製品仕入
原材料売り製品買い
原料売り方法
相殺
個別決裁
第二部 ニットアパレルの生産管理 110
② 部分外注
(3) 外注企業(工場)の現状
外注形態で最も多いのが専門工程の部分外注
ニットアパレル生産企業は長年にわたり、外注
である。
委託生産方式の併用で生産活動を続けているが、
染色などの工程では大規模な企業もあるが、
前述の背景のように、年間操業(繁閑差の拡大) 対
一般的には編立工場、縫製工場、リンキング工場
応策を考え直さざるを得ない状況である。外注企
など零細規模の場合が多く、特定企業専属外注
業もこの影響により発注企業に準ずる対応をせま
による分工場的性格のものも少なくない。
られている。最も顕著なものは、内職や下請を活
手作業を主とする内職工程もこの分野に入る。
用する外注企業のさらなる外作の強化であり、ま
たパートや長期アルバイトなどによるコストの圧
③ 原料無償支給の製品加工外注
縮である。これにより、受注先の求める本来の好
編立てから製品仕上げまで一貫して生産でき
ましい能力である、技術や設備、さらに専門技能、
る工場に全工程を一括して外注委託する場合は
生産の補てん的役割を必ずしも果たしていない現
原料無償支給の製品加工外注である。
状がある。反面、経営責任者の取り組み姿勢や優
原料購入は資金を長期に固定するため賃加工
れた技術、技能を持つもの、あるいは品質納期など
の方が資金回転がよく、設備的に製造販売が可
の管理力のあるものなど、企業規模、管理レベル、
能でも敢えて賃加工を選択する企業もある。
保有設備内容の各面で、大小、高低、質の良否で
差があり、これらはますます、拡大する傾向にあ
④ 原料売製品仕入形態の外注
る。
③との違いは原料を売り製品加工の後、 製品
正 確 な 把 握 は 困 難 だ が 、 外 注 企業の 企 業 規 模
仕入の形態で購入する場合である。この場合は
(セーター関係)は平均的には図表 2 −33の程度と
原料歩留など原料に関する各種管理の責任が外
思われる。
注企業側にあり、目付や配色比率などの事前
管理レベルについては、外注工場の運営状況か
データと本生産データとの実績差が発生した場
らもわかるように発注企業の指導や援助に負うとこ
合外注企業が負担することになる。
ろが比較的多く、期待されるレベルとはいえない
のが一般的な現状である。しかし、品質や進捗の
図表 2 − 33 工場別企業規模(平均的なもの)
項目
人員・設備数
下請活用状況
平均売上/月
備 考
工場
責任者他
3人∼10人
常時は特殊機械
編 立 て
通常10時間2交替
100万∼350万
編機
5台∼20台
繁忙時に活用
責任者他
5人∼15人
常時部分縫、糸切り
ミシン
5台∼10台
など内職中心
責任者他
1人∼2人
100%近い内職
ミシン
0台∼1台
他にキズ見内職
責任者(兼)
1∼3人
内装あるとき内職
アイロン
1∼3台
通常は少ない
縫 製
20時間/日操業
50万∼200万
リンキング
通常ミシン貸与
内職人員10人∼25人
50万∼130万
仕 上
ミシン貸与
20万∼50万
※売上金額は加工賃による収入額
家内に作業場
第二部 ニットアパレルの生産管理 111
管理に優れた工場も相当数はあり、管理レベルの
このような環境のなかでもう一つの問題は外注企
格差やバラツキが非常に多いのが実状である。そ
業の後継者難である。企業の特性から親から子へ
して管理レベルは、企業規模の大小や経営者また
の継承が望まれるところだが、実態は厳しく、難し
は責任者の性格、経営する業種によるのではなく、
い状況にある。話合いを繰り返し説得したりで、
経営者(責任者)の企業運営の姿勢や責任感による
やっと決まるか、あるいは問題を残したままの状態
ところが大きいことはいうまでもない。
で、経営を続けざるを得ない企業が多いのが現状
そのうえで作業別にみると、機械作業や単純作
である。希望のある企業作りが、どうしたらでき
業が比較的よく管理され、手作業やそれに近いミ
るかが課題である。
シン作業、内職の多い作業ほど管理が不十分とい
う傾向がみられる。この意味で工場別にみてみる
2 .外注管理の問題点
と、編立より縫製、縫製の中ではリンキングが管
理を難しくし、レベルが低いといわれることがあ
外注生産で最も重要なことは外注生産が社内生産
るが、受注先の発注条件(時間的、量的、質的)の
の「モノ作り」の姿勢と同質かということである。生
難度による場合もあるのである。
産現場において 3 大テーマといえる品質、納期、価格
管理レベルの判断にはいろいろあるが、実績や
に関して同一の基準で製品を完成品まで作り上げる
受注に対する外注企業の経営者(責任者)がYES、
ことは極めて困難である。言葉一つにしても衿の部
NOをいえるかどうかが大きな要素ともなる。しか
分を「きれいにして下さい」と求めても、社内の「き
し現実にはそのような責任者の存在が十分でなく
れい」と外注先の「きれい」が一致するとは限らない
全体として低レベルである。
からである。
設備の現状は管理レベルと類似する点が非常に
それには自社製品のコンセプト、ターゲット、価格
多い。編立工場では市場の要求に応える新鋭機を
ゾーンさらに自社の生産に対する根本的な姿勢まで
積極的か、または必要に応じて投資し、質的、量
時間をかけて理解してもらうことが重要である。
的に改善する傾向がある。しかし省力化が中心の
ニットアパレル製品の関連外注企業は昨今の低価
縫製関連では、積極的に入れ替えていくというよ
格、小ロット、高難度により、収益性が極端に悪化し
り、既設のものを使い続けるか、老朽設備の更新
たため後継者に対する魅力を失った結果、現場作業
程度か、不足設備を受注先企業から賃借するかな
において高齢化とともに後継者不足が目立ち始めた。
どが平均的な現状である。これらの背景は第一に
新規設備の更新もできず、外注先の生産力が減退
不安定な受注下で償却が難しい、第二に資金力に
することはニットアパレル生産の将来にも大きく関
欠ける、第三に編機以外では新しい設備の出現が
わってくる重要な問題として、国内生産企業の育成
少なく大きな生産性アップにつながらない、第四
に大きな関心を寄せる必要がある。
に既設のものでも操業に大きな支障がない、第五
に受注先の動向を見守るなどによると考えられ
(1)
外注加工賃
る。
外注加工賃を求める一般的な方法には次の三つ
したがって編機を除いては質の面で部分的(セッ
がある。
ト機、ミシン…)に向上もみられるが、大きな変化
① 経験見積法
もなく、量的には企業の縮小や廃業等で減少の傾向
にある。
しかし一方で発注企業と連携を深め、積極的に
体質の改善に努める外注企業もあり、設備面でも
企業格差が大きくなっている。
ベテランの経験や勘による計算。
② 比較算定法
類似した前例を参考に、それと比べて決める。
③ 見積り算定法
仕様書、使用材料から、加工時間を算出し、直
第二部 ニットアパレルの生産管理 112
接の人件費、経費と間接の経費や利益など加味
とにより、進行チェックを発注企業でできるよう
して算出。
にする。
ニットアパレル業界も上記の算出に準じて取引
一般的にはまず発注企業の要因として
きされてきているが、発注企業は
③と②を主体に、
① 短納期の発注をせざるを得ないことによる無
外注企業は①または②で見積ることが多く、算定
基礎の差による不一致(一般に外注企業が高くなる
傾向)が多々みられる。これは発注企業が求める加
理な発注
② 発注企業の管理レベル別重点管理の不徹底の
ため、低レベル外注企業に問題多発
工標準時間通りには外注企業ではできにくいとい
③ 外注企業の受け入れ体制や実状を確認不足(他
う生産性からくる基本的問題と、原価管理力の不
社の製品、設備、能力…)のまま発注したことに
十分さからくる場合が多い。この種の問題は他の
よる納期の遅れ
業種にもみられるが、ニットアパレルでは古くて
新しい難しい課題である。
④ 必要十分な情報(仕様、品質、納入日…)提供が
不足していることによる問題
このような基盤に加え、海外生産の増大にとも
また、外注企業の要因としては
ない、コスト競争の激化、それによる加工単価の
① 管理責任者の納期意識の薄弱に起因する管理
切り下げ、さらに発注量の減少、繁閑差の拡大な
不十分、すなわち責任感、作業員への周知徹底、
ど、外注加工賃の決定に与える要素があまりにも
進捗状況の把握などが不充分なことによる問題
多く、何を重点に、どんな方法で解決していくか、
答えを出せないのが現状である。結局は発注企業
の受注単価にスライドした指値で決められること
が多く、外注企業も満たされない場合が多いので
ある。
管理を進めるうえでの根本課題は発注量をいか
② 手作業や内職工程の標準作業時間未達による
生産遅れ
③ 標準作業の不徹底による不良品や手直し品の
多発による遅れ
④ 全体として管理者の質、 量の不足による計画
性に欠ける進行
に継続して確保できるかで、単価の決定はその後
といった多くの問題がある。しかし発注企業にも
の問題と考えたい。
外注企業にも進捗管理の不徹底からくることや、納
期に対する認識不足からくることが全体として目立
(2) 納期管理
一部専門の工程(編立て、リンキングなど)を委
つように思われる。まずこの点がどれだけ改められ
るかがポイントになろう。
託する外注先は比較的零細規模が多い。そして外
注先の責任者がそのままエンジニアであり作業者
(3) 品質管理
である場合が多く、管理業務に時間をさくことが
品質に関する姿勢は外注先の責任者の資質が大
なかなかできないため、生産進行チェックなど納
きく影響する。
期管理に必要な最低限の生産実態を把握していな
比較的規模が小さい場合は特にその傾向が強く、
い場合がある。
発注企業の製品に対し充分な理解が得られるよう
このようなケースの場合は発注企業からできる
に努めなければならないが、基本姿勢として発注
だけ情報を提供し、簡易な方法で現状把握と生産
企業のコンセプトと相入れない場合は委託するべ
予定がつかめるようにした方が賢明である。
きではない。
編立生産はパーツ生産になることが多く、日常
委託製品の生産に必要な設備が存在するか、なけ
の生産進行を毎日把握しても全体の進行度合が正
れば自社から貸出可能か、生産に必要なノウハウ
確に読み取れないことが多い。この場合はできる
を持っているか、発注企業の指導で解決できるか、
だけパーツ生産実績も含めて日産報告を受けるこ
単なる指示書の提示だけでなく環境条件の整備に
第二部 ニットアパレルの生産管理 113
協力しながら、当該製品の生産に必要な要素を可
2) 平均的に基盤の弱い委託先への技術指導、設
能な限り揃える。
備や人材育成などの協力を積極的に進められる
設備不足、ノウハウ不足のなかで無理な生産進
か。
行をすると予測以上の工数がかかるだけでなく、
品質的にも問題が発生することが多い。
3) 日常発生する生産上のトラブル、他工場の状
況、話題の製品、その他必要な情報の交換ができ
ているか。
以上、外注管理の問題点やその背景からくる解決へ
の難しさについて述べたが、基本的には発注企業が
1)
外注先別の依存度をどう考えるか。いいかえ
るとパートナーとして位置づけできるか。
4) 端境期の圧縮への配慮や発注数量などの継続
確保ができるか。
などが外注管理上の大きなポイントになると考える。
第二部 ニットアパレルの生産管理 114
第 6 章 情報管理
ニットアパレル生産においても多品種少ロット化が一層進み、また納期管理も厳しいものが求めら
れている。これにともない関連する管理情報もますます多様化し、複雑化している。
生産管理を含むこれらの生産情報の管理にはコンピュータの利用が不可欠であるが、企業によって
扱う商品や生産形態も異なるため、それに応じて独自にシステム化していることが多い。
ここではパソコンを利用して受注管理、原料管理、生産管理等を行っているシステム事例を紹介す
ることとする。
ニットアパレルの生産に関連する情報管理はいま
まで他産業に遅れていた分野である。
MRP(Material Requirement Planning)システム
(「資材所要量計画」:多品種少量生産に有効とされる
生産システムのなかで数値的に不安定な部分が多
生産在庫管理方式)などの生産管理手法とそのプログ
いことと同時に他の生産現場とは際だった特徴があ
ラム化という方法も考えられるが、原料計算∼納品管
り、既存の生産管理システムに当てはめることが困
理の実務の経験からあまりに詳細なシステム構築は現
難であることが多い。また、各企業によりその製品ア
場がついていけず、むしろシステムの機能マヒに陥る
イテムが違うことが生産管理の重点を異とし、した
ことが多い。
がって個別企業により生産管理実務が違うのが現状
後者は最近劇的に価格低下したハードと市販の
である。
データベースソフトの組み合わせなのでコストパ
フォーマンスが極めて高い。ただし素人によるソフ
1 .コンピュータによる情報管理
ト設計やプログラム作成のためシステム効率や管理
レベルが低くなるのは避けられない。
市販のアパレル生産システムなどのコンピュータ
各個別企業では表計算ソフトを業務別に分散処理
ソフトではまず有効に使用できるものはなく、実際は
的に利用しながら、パソコン利用のノウハウを蓄積
各個別企業が独自にソフト会社と設計段階から 関
し、徐々にデータベースによる生産システムの構築
わって自社独自の生産システムを組み立てる場合と
に向かうのが現実的手法と思われる。
パソコンレベルのハードと汎用性のあるデータベー
スソフトを利用し、社内スタッフによってその会社
2 .パソコンによるシステム事例
に適合した生産管理システムを組み立てる場合とが
ある。
生産受注から原料計算、生産管理、納期管理などを
前者の場合は比較的コスト高となるが、コン
データベースソフトを利用して行っている実例を紹
ピュータソフトのスペシャリストによるプログラム
介する。企業ごとには製品アイテムの重点の置き方に
開発となり、ハードの機能を十分に引き出したり、管
より実務上の情報の流れはそれぞれ違うケースも多
理レベルもかなり高度なものを期待できる。ただし、
いと思われるが、パソコンによる情報管理の一例と
当該企業においてもある程度のコンピュータと生産
して参考にしていただきたい。
システムに関する知識と経験が必要で、中途半端な
システムは結局機能しないために、過去に失敗した実
例も多い。
(1) システムの概要
このシステムは最低限ハード構築としてパソコ
第二部 ニットアパレルの生産管理 115
図表 2 − 34 システム概要(基本部分)
実務内容
原料計算
データ入力
受注数
目付
配色
新規作成ファイル
データ利用(自動転記)
管理帳票 伝票 シール発行
受注表F
目付表F
配色表F
原料集計(製品別)F
原料集計F
→資材F 納品台帳F 編立台帳F 2次加工台帳F
→パーツ別目付F
原料発注依頼書
→原料台帳①F
→原料台帳②F
パーツ別目付
パーツ別目付F
パーツ別データ表
製品基本
ファイル作成
製品基本
データ
製品登録データF
資材計算
資材データ
各種インデックス別品番リスト
(ゲージ別、工場別、得意先別)
資材発注書
原料管理
原料発注数
原料台帳F
原料入荷数
ロット別台帳F
生産管理
資材台帳F 資材タイプ別F
資材集計(製品別)F
→資材台帳①F
資材集計F
→資材台帳②F
原料入荷実績表
生産ユニット
生産ユニット分割F
分割
生産ロット分割表
ロット別シール発行
編立入荷
編立入荷伝票F → 編立パーツ登録F → 編立パーツ別台帳F
パーツ別実績表 週間データ表等
2次加工入荷
工程入荷伝票F → 工程登録F → 工程別台帳F
工程別実績表 週間データ表等
編立生産予定
編立パーツ別予定表F
データ
予定実績比較データ
請求書
請求データ入力
購入資材関連請求書F 工賃支払関連F
粗利集計表
納品管理
納品数
納品伝票F → 納品台帳F → 支店別納品台帳F
納品達成率 粗利集計表
その他の不随業務
関連データ
概算粗利実績計算 納品、原料発注(×単価)
資材発注(×単価)
工賃請求金額
生産実績納品達成率集計 受注数 編立入荷実績 2次工程別入荷実績 納品実績
送り状発行 取引先名簿ファイル
サンプル関連データ管理 サンプル品番ファイル
工場別生産予定実績表 生産予定データ 受注数 生産入荷実績
原料ロット別生産割り振り 原料ロット別入荷数 原料集計ファイル(製品別)
受注票 目付表 配色表
在庫糸管理 在庫糸(残糸)の保管 利用
登録編地管理 編地の登録 保管
ン本体、ハードディスク、プリンタが、ソフト
多く、紡績企業の生産枠を早く確保す
ウェアとしてデータベースソフト、日本語変換ソ
る意味から、正式書類の発行を待たず
フトが必要である。主な管理対象と処理内容及び
にサイズカラー別枚数を確認できれば
構成ファイルを図表 2 −34に示す。
直ちに受注枚数として計算に入る。
(2) 受注管理
原料計算をするために、次のベースと
受注管理の流れは発注書が届いて各色、各サイ
なる三つのファイルにデータを入力す
ズ別の受注枚数が確定し、本生産に入るために必
る。
要な製品の詳細な修正事項が確定することにより
受注表ファイル(品番、サイズ、カラー、受注数)
開始されることになる。
目付表ファイル(品番、サイズ、配色、目付)
〔受注管理の流れ〕
A 発 注 書
原料計算は一時期に集中することが
配色表ファイル(品番、カラー、配色、原料コード、
原料カラー、数量)
第二部 ニットアパレルの生産管理 116
B 原料計算
この段階で本システム上における正
このとき使用されたファイルが資材台
式受注となり、ここで登録された製
帳ファイルと各資材タイプ別ファイル
品が管理対象となる。原料計算デー
である。
タは受注に応じた原料発注数の計算
品番別資材明細書( 品番単位) が出力
をすることが目的であるが、この
されたらデータ表と照合し検証する。
(図表 2 − 37 参照)
データはコスト計算の原料コストに
対応しているので直ちに照合する必
資材計算に使われる受注数は受注表
要がある。
ファイルを使用する。
この際発行される品番別の計算結果
タイプ 1 (全色全サイズ共通)の資材は
により、出力された素材別の 1 人目付
このファイル内の受注数と目付用尺の
とコスト計算上で予測した目付との
積で必要量が計算されるので補完的な
比較を行なう。
タイプ別ファイルは作成しない。
(図表 2 − 35 参照)
C 原料集計
D 原料発注
算プログラムが実行される。
果を記録する。
このとき使用されるファイルは資材計
このとき使用されるのが品番別原料
算の集計結果が転送される製品資材集
集計ファイル(日付、発注番号、品番、
計ファイルと素材別資材集計ファイル
原料コード、原料カラー、数量、単価)
である。
と素材別集計ファイル(日付、発注番
具体的な資材計算は資材基礎ファイル
号、原料コード、原料カラー、数量)
(品番、資材番号、資材コード、タイ
である。
プ、規格、資材カラー、目付用尺、単
集計ファイルにもとづき原料出荷依
価、仕入先コード) と各タイプ別の
頼書(発注書)をプリント出力。
ファイルのデータを基に集計する。
H 資材発注
集計ファイルにもとづいて資材発注
手配を指示する場合は製品別集計
明細書を発行する。
ファイルにもとづき原料商社に対し
資材発注は複数の仕入先に数種類の資
品番別に直送手配する。
材を発注することが多いので仕入先別
受注管理から原料発注の受注管理と
に発行される。
(図表 2 − 38 参照)
は
日付データ 別に管理上に利用するデータとして
入力 入力する。
I 製品登録
原料計算を実行すると当該品番は製
品
パーツ別目付表の発行――
>各パーツ
ファイル 登録ファイルに、品番と基本項目は自
目付の集計結果と原料計算結果の 1
作成 動的にデータ転送される。
人目付との比較。原料計算ミスの防
ただし、原料計算の結果は緊急度が高
止に役立つ。
いので計算上必要なデータ以外は別途
(図表 2 − 36 参照)
F 資材基本
入力されたデータにもとづき資材計
原料計算の一連の流れとして集計結
製品により生産現場が異なり、直送
E パーツ別
G 資材計算
入力する方が合理的である。
資材計算プログラムを起動し、資材
この時点で製品の付帯データ( 編機
計
ゲージ、縮絨・刺繍などの有無、縫製
デ ー タ 入 力 算基礎データ表にもとづいて入力す
る。
工数、リンキングゲージ、リンキング
工数、納期、単価など)を入力し、生
第二部 ニットアパレルの生産管理 117
産管理の各局面で利用する。
製品が存在したり、原料無償支給の特注製品など
製品登録ファイル(製品番号、得意先コード、受
が製品登録無しで現場に流れることもあり得るが、
注総数、スタイル、ゲージ、編立工場、縮絨、刺
仮原料計算などの方法で例外なく製品登録するよ
繍、リンキング、縫製工数、リンキングゲージ、
うにしなければならない。
リンキング工数、確認編地、編立完了、納品完了、
このファイルのデータを基に多様なインデックス
納期、単価)に入力されている品番のみがシステム
を付けることにより、いろいろな角度から集計す
上で正式受注され、各種のファイルにデータが入
る。
力転送される。イレギュラーな受注製品などがこ
営業からの分析
のファイル登録(原料計算)なしで進行するような
得意先別、ゲージ別、スタイル別、編立工場別、
事態はシステムの信頼性を低下させるので、組織
納期別など。
的ルールは厳しく守らなければならない。
複数の項目を組み合わせてさらに詳細な分析がで
システム導入直後はそのような例外的な動きの
きる。
図表 2 − 35 原料計算
第二部 ニットアパレルの生産管理 118
図表 2 − 36 パーツ別目付計算
図表 2 − 37 資材明細
第二部 ニットアパレルの生産管理 119
図表 2 − 38 資材発注
第二部 ニットアパレルの生産管理 120
第二部 ニットアパレルの生産管理 121
生産からの分析
C 出荷処理
原料の出荷伝票処理
編立工場別、ゲージ別、納期別、
各種フラッグフィールドのデータから縮絨ソー
ピング品番、刺繍プリント品番。
(4) 生産管理
〔生産管理の流れ〕
負荷工数の計算
編立生産と裁断縫製加工とは管理の性格が違う
縫製工数集計、リンキング工数集計
ので管理を別にする。
A 生産ユニット分割
(3) 原料管理
注数をユニットに分割する。
〔原料管理の流れ〕
A 発注処理
生産化の最小単位として受
原料計算によって作成された集計
生産ユニット分割ファイルはユニット
番号、品番、サイズ、カラー、数量か
ファイルに対して発注処理をした発
らなる。
注番号だけを原料台帳ファイルに転
製品のカラーサイズ別に受注数をユ
記して原料管理の対象とする。
ニットごとに分割する場合通常原則と
原料計算したものが全て原料発注さ
して 1 ユニットを 16 枚とする。
れるとは限らないので、発注処理に
ただし、製品によって最適数値が変化
よって原料管理の対象範囲を限定す
するので自由に設定することもできる
る。
ようにする。
(図表 2 − 39、2 − 40 参照)
原料台帳ファイル(原料発注№、仕入先、ブラン
ド、年季、原料コード、原料カラー、必要数量、
入出荷はすべてユニット単位で行い、
伝票記帳もユニット番号を明記する。
B ユニット分割表発行
現場での管理帳票として、
発注日、発注数量、最新入荷日、最新入荷、累積
編立て、外注、縫製などに対して発行
入荷、請求数量、最新出荷日、最新出荷、累積出
する。
荷、入荷予定日)は発注された原料の入荷予定と入
(図表 2 − 41 参照)
荷実績、入荷予定のせまった原料のリスト、未入
C ユニットシール発行
編地や仕掛品の 1 ユニッ
荷原料のリストなど原料管理の基本となるので
トごとに管理カードを付けそれにユ
ファイルで、生産投入(編立て開始)可能な品番リ
ニット情報をプリントしたシールを貼
ストもこのファイルから出力できる。特に数種類
る。
以上の原料を組み合わせる製品の生産投入のタイ
(図表 2 − 42 参照)
ミング判断は非常に難しいが、原料計算ファイル
D 編立生産管理:ニットアパレル生産は一概に一
と組み合わせて出力させると容易に掌握できる。
つのパターンに当てはめることができ
他にロット別台帳ファイルがある。
ない。生産単位としてどのパーツを共
原料は紡績ロット、染色ロットなど混入しない
通単位とするか製品や編立条件、時期
ようにロット別に各パーツがセットされなければ
的要素も含め、さまざまな形態が考え
ならない。
られる。したがってそれぞれの製品の
製品の必要数量とロット別数量をできるだけ適
生産状況に応じて、管理単位を自由に
合するようにし、編立て、裁断、縫製のロット管
設定することが可能なシステムにしな
理を回避する。どうしても同一製品に複数ロット
ければならない。
を使用する場合もあるのでロット管理のルールを確
例えば前身がインターシャで後身袖が
立する。
無地天竺の場合、それぞれの生産単位
B 入荷処理
原料が入荷したときの入荷伝票処理
で進行するか、三つのパーツを 1 単位
図表 2 − 39 原料発注
第二部 ニットアパレルの生産管理 122
図表 2 − 40 原料発注(品番別)
第二部 ニットアパレルの生産管理 123
第二部 ニットアパレルの生産管理 124
図表 2 − 41 生産ユニット管理表
図表 2 − 42 ユニットシール
第二部 ニットアパレルの生産管理 125
第二部 ニットアパレルの生産管理 126
で進行するかは時期に応じて判断す
タッフが少人数でもシステムを維持す
ることになる。一部のパーツに刺繍
ることができる。
などが入るときはその判断も変わっ
この場合も汎用的に柔軟性に富むこと
てくる。要するに事前に固定してし
はさまざまな製品特性に対応しやすく
まうようなシステムは現実に合わな
ニット製品の多様な製品種類に対し、
くなるのでシステムには柔軟性が必
例外処理をせずに管理対象とすること
須となる。
ができる。例外処理にすることにより
原料計算のときのパーツは製品の構
システムからのデータ出力に対する信
成要素を分解したときのもので、生
頼性が失われることになる。これが従
産管理でのパーツ生産は複数の構成
来のコンピュータシステムの導入失敗
要素を組み合わせたグループと理解
の大きな原因と思われる。
する。
本システムでは工程登録も生産進行に応じて行
生産管理上のパーツ登録は本生産が
う手法をとる。
開始されてから適宜に事実にもとづ
ある工程から初めて入荷したときに工程登録、工
いて設定する方法が現実的である。
程台帳への転記を行うので、実態に後追いした実績
編立入荷処理
入荷伝票にしたがって入力作業を
管理となる。これは生産工程を事前に固定せず、
する。入荷パーツが初めての入荷の
予定管理がしにくいことになるが、ゲート工程で
場合は編立てパーツ登録ファイル(品
の実績掌握を生産進行に合わせて管理するのでむ
番、パーツ番号、パーツ名、工場、完
しろ理解しやすいと思われる。
了、完了予定)に登録し、編立てパー
工程別入荷台帳ファイル( 品番、サイズ、カ
ツ入荷台帳に当該パーツのための
ラー、工程番号、最新入荷日、入荷数、累積入荷)
データを受注ファイルから転記する。
は各工程からの上がり状況を掌握し、工程別進捗
編立 てパーツ台帳の所定のサイズ、
状況を出力することができる。
カラーの欄に入荷数が転記される。
(図表 2 − 43 参照)
E 裁断縫製管理
(図表 2 − 44、2 − 45 参照)
F 請求書管理
目的は実績進行数と請求対象数量
裁断以降の加工生産においては
とのチェックと製品の生産納品が完了
詳細な工程別生産進行管理をするこ
した後、概算粗利を算出する場合の
とはプログラム作成負担が過大なば
データとすることにある。
かりでなく、現場の情報伝達能力が
請求書ファイルは大きく二つに分けて
それについていけず、システムが全
購入材関係と工賃支払関係の2種類と
く機能しないことになる。
する。
たとえ情報収集伝達が可能だとして
G 納品管理
納品実績を入力するのは生産計画と
も、データ入力に多くの時間をかけ
納期管理との整合のなかでそのスケ
る割にはそれほどの費用効果が得ら
ジュールの面からの達成率と原料計算
れないのが普通である。
から始まった生産管理の最終目標とし
主要な工程をゲートとしてそこを通
ての納品実績への数量的達成率を掌握
過したことを入力するようにする。
するのに不可欠だからである。
チェックする工程が少ないことはそ
(図表 2 − 46 参照)
れだけ管理レベルは粗くなるが、実
納品管理に関連するファイルは納品伝票ファイ
務上は充分であり、負担が軽い分ス
ル、納品台帳ファイル、支店別納品ファイルであ
第二部 ニットアパレルの生産管理 127
る。
3.一括複数ヶ所単納期…一回の納期に複数ヶ所の
ニットアパレルの業界は納品形態もさまざまな方
法がある。
4.一括複数ヶ所複数納期…複数の納期に複数ヶ所
1.一括一ヶ所単納期…一回の納期に全数量を指定
場所に納品する。
の指定場所に納品する。
5.指定納期までの任意納品…納期までに生産完了
2.一括一ヶ所複数納期…同一品番複数の納期を設
定し指定場所に納品する。
指定場所に納品する。
したものを任意の枚数納品する。
以上のようなケースが考えられるが、納品管理
図表 2 − 43 編立予定一覧表
第二部 ニットアパレルの生産管理 128
図表 2 − 44 生産実績報告書
第二部 ニットアパレルの生産管理 129
図表 2 − 45 工程別生産報告
図表 2 − 46 生産状況グラフ
第二部 ニットアパレルの生産管理 130
図表 2 − 47 完了品番データ集計
第二部 ニットアパレルの生産管理 131
第二部 ニットアパレルの生産管理 132
もさまざまなケースを想定した柔軟な対応が必要
さらに昨今の複合製品(織生地+ニット+ジャー
となる。
ジー+ 2 次加工)などを例外なく処理するには、対象
納品が完了した製品は関連するファイルに記録
生産の数量的規模は大きくなくても処理過程はより複
されているデータを基に概算の粗利計算をして
雑にならざるを得ない。
データ上の矛盾点を確認する。
それをソフトハウスに依存するとなると、極めて密
納品数量と編立て数量、縫製数量など数値的に
接なコミュニケーションが必要であるばかりでなく、
矛盾がないか確認し、生産プロセスでの実績コス
システムの維持コストも相対的に過大になることがあ
トと予定コストを対照する。
る。
原価計算∼納品まで、入力したデータにもとづ
ニットアパレル生産企業の場合、生産対象の製品種
き、図表 2 −47に示した各品番ごとの実績集計を出
類、アイテム分類、受注構造、生産構造など個別企業
力し、コスト表との対比をすることにより、実績粗
ごとに千差万別というのが実態で、どの企業にも有効
利を把握する。
なシステムというのは存在しないといっても過言では
ニットアパレル生産においてシステムを構成しソフ
ない。
トを開発する場合に、最も大きな課題はその生産構造
管理レベル的には多少の精度を犠牲にしても生産の
の複雑さと製品種類の多様性をどのように取り入れる
全体を洩れなく掌握できるような柔軟なシステムを社
かということである。
内的に開発し、システム運営上の問題が発生すればそ
織物製品の裁断縫製の管理と同等の情報処理をする
れに対処しながらシステムレベルを向上させていく。
とともに、テキスタイル生産の管理情報も処理するこ
結果的に各企業に最も適合したコンピュータ管理を実
とが可能でなければならない。
現するというのが実務的に望ましいと思われる。
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