...

プロジェクトブリーフノート(和文)(PDF/4.09MB)

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

プロジェクトブリーフノート(和文)(PDF/4.09MB)
JICAプロジェクトブリーフノート
スリランカ
気象観測・予測・伝達能力向上プロジェクト
‐ 正確でタイムリーな気象情報提供による自然災害の人的・物的被害の軽減 ‐
2014年10月
プロジェクトの背景と問題点
スリランカでは過去50年に発生した自然災害の
内、9割以上が気象に起因した災害です。毎年
のように、大雨による洪水や地滑り、熱帯サイ
クロン、旱魃、落雷、強風などの災害が各地で
発生しており、2000年~2010年の間には延べ
1,300万人以上の国民が被災し影響を受けました。
また、近年では、甚大な災害を引き起こす事象
や自然災害の発生の頻度が増加する傾向にあり
ます。今後一層加速することが予想される地球
温暖化による気候変動で、気象災害がさらに頻
発に発生し、激甚化することが推測され、私た
ちの生活にとって大きな脅威になりつつありま
す。
スリランカ気象局は、気象及び気候サービスと
気象災害被害の軽減のため、早期警報情報を提
供することが政府機関として義務付けられてい
ます。スリランカでは気象が生死に関わる問題
に直結するため、唯一、気象情報を提供する機
関である気象局の重要性が増しています。
効果的な災害被害軽減のため、スリランカ気象
局の気象観測能力の向上、予警報精度の向上及
び適切な手段による迅速且つ適時の予警報発表
能力の向上が求められています。
日本は、2004年12月に発生したインド洋大津波
により、スリランカが未曾有の被害を受けて以
降、防災セクターに対する支援を継続して実施
してきています。
日本の無償資金協力で実施した「気象情報・防
災ネットワーク改善計画」は、日本がスリラン
カの防災支援を行った一例で、右の図に記載の
通り、スリランカ全土に38基の自動気象観測シ
ステムを整備しました。スリランカ政府は、自
然災害を引き起こす可能性がある危険な気象現
象の把握と予報能力の向上のために、日本政府
に対し支援の要請を行い、本プロジェクトを実
施することとなりました。
降水地域や降水量が異なるため、気象関連のプ
ロジェクトを実施する際には、スリランカの降
水特徴を十分に把握することが極めて重要とな
ります。
本プロジェクトでは、自然災害による被害を軽
減し弊害を効果的に縮小することを目標として
います。この目標を達成するには、多くの国民
の尊い命を奪い、計り知れない経済的損失や経
済的困窮を発生させ、社会経済発展の停滞を招
く恐れのある自然災害の被害を軽減すべく、ス
リランカ気象局の気象観測・気象予報・予警報
発信能力を向上させること重要となります。
スリランカの気候パターンは、1年を4つのモン
スーン季に分けることができます。季節ごとに
第 1 インターモンスーン期
南西モンスーン期
特徴:
海風が卓越し、大気の状
態が不安定となる。午後
や夜間は雷雲が発達。期
間中は、南西部で雨量が
多くなる(300mm 以上)。
特徴:
南西モンスーンが
「ス」国に大量の湿っ
た空気を運ぶ。南西部
の山沿いは地形効果で
期間雨量が 3,000mm 以
上。一方、山越えとな
る北部や東部は雨量が
非常に少ない。
(mm)
1000
750
500
300
200
100
50
4
3
北東モンスーン期
特徴:
ベンガル湾から吹き込む
湿った北東風やベンガル
湾で発達する熱帯擾乱に
より、北部や東部で雨が
降る。
5 6
月
2
1
(mm)
1000
750
500
300
200
100
50
7
(mm)
3000
2000
1500
1000
750
500
300
200
100
50
8
9
10
第 2 インターモンスーン期
12 11
特徴:
期間中、対流性の降水
が支配的となる。また
ベンガル湾で発達する
熱帯気象システムも影
響する。
(mm)
1000
750
500
300
200
100
50
気象観測機器保守点検・校正能⼒の向上を⽬指して
問題解決のためのアプローチ
ステップ:1
観測露場の維持管理及び気象観測機器の維持管
理・校正を定期的且つ適切に実施するためのルー
ル作りを行い、新たなマニュアルの作成及び既存
マニュアルの改訂・増補を行う。
ステップ:2
気象観測の記録及び観測データの通報を行うため
のルール(観測時間、観測順序、記録・通報手
順)を見直し、既存観測マニュアルの改訂・増補
を行う。
ステップ:3
気象観測機器の校正に必要な準器及びAWSの維持
管理に必要な可搬式データ比較点検装置とスぺア
パーツを調達する。
表 整備されるマニュアル、ガイド及び報告書
校正(比較点検)関連
準器に従ったマニュアル測器の校正マニュアル
準器に従ったデータ比較点検装置の校正マニュアル
可搬式データ比較点検装置とAWSの観測データ比較点検マニュアル
清掃、維持管理、点検及び修理関連
観測所測器点検月例報告書
AWS清掃週間報告書
観測露場及び気象測器保守・管理マニュアル
AWSの点検及び清掃に関するユーザーガイド
AWSの修理(部品交換)に関するユーザーガイド
ステップ:4
整備されたマニュアルに基づいて気象観測機器の
維持管理・校正及び気象観測の記録と観測データ
の通報に関する研修を実施する。
観測関連
気象観測マニュアル
気象データ通信ネットワークの強化
問題解決のためのアプローチ
代替通信システムへの移行
ステップ:1
AWSの観測データを送信するための既設VSAT衛星
通信システムの稼働が不安定であるため、地上通
信網を利用するIP-VPN を代替通信システムとし
て検討する。
ステップ:2
代替通信システムの接続テスト、通信安定度確認
テストを研修を兼ねて実施する。
ステップ:3
代替通信システムへの移行に必要な技術移転を実
施し、移行の側面支援を実施する。
GTSメッセージスイッチングシステムの更新
ステップ:1
WMO(WIS)の推奨する気象通報式に対応するGTS
メッセージスイッチングシステムを調達するため
の技術仕様を確定する。
ステップ:2
GTSメッセージスイッチングシステムを調達し、
据付・試運転及び初期操作指導を実施する。
定性的予報から定量的予報へ移⾏するためのチャレンジ
問題解決のためのアプローチ
ステップ:1
数値予報モデルの格子点値及び無償資金協力で整
備されたAWSの観測値を利用して、気象予報ガイ
ダンスの開発を通して、スリランカ気象局へ技術
移転を実施する。
 36時間先までの12時間毎の降水量の短期気象予
報ガイダンス
 日最大風速(24時間毎の最大風速)の短期気象
予報ガイダンス
 7日先の24時間積算降水量の気象予報ガイダン
ス
 24時間毎に48時間先までの海上風の気象予報ガ
イダンス
ステップ:2
降水量の季節予報の手法/手順に関する課題の改
善のための研修を実施する。
 月降水量、スリランカ気候値及び数値予報の月
降水量値を比較して、降水量の変化傾向を把握
 1ヶ月降水量と数値予報の月降水量を用いて、
海面水温の変化傾向を把握
 海面水温変化傾向予想を降水量季節予報に反映
ステップ:3
気象予報ガイダンス値、観測値、数値予報プロダ
クト等を用いて天気予報精度向上のための研修を
実施する。
図説:気象予報ガイダンスの作成手順
⼤⾬・強⾵・雷 〜 気象災害から国⺠の命を守るために
問題解決のためのアプローチ
ステップ:1
大雨・強風等の注意報・警報を県単位に細分化し
て発表しているが、注意報・警報の基準値は全国
で同じ値が適用されていることから、過去の災害
履歴及び気象観測データ等から基準値の妥当性を
検証する。
 過去30年の災害記録、災害発生時の気象観測
データ及び天気図を収集
 収集した資料を基に災害発生時の気象状況を解
析
 大雨・強風の現状の注意報・警報及び発表基準
の課題を地域毎に抽出
ステップ:2
防災関係機関との協議を通して大雨・強風に関す
る注意報・警報及びその発表基準を改善し、更に
雷に関する新たな注意報・警報及びその発表基準
を作成する。
 注意報・警報基準の設定に関する研修の実施
 大雨と強風に関する注意報・警報及びその発表
基準の地域毎の改善
 数値予報プロダクト等を活用し、雷に関する新
たな注意報・警報及び発表基準の作成
 注意報・警報及び発表基準の試運用状況に応じ
た見直しの実施
スリランカ全域において
同一の基準で注意報・
警報を発表している
新しい注意報・警報とそ
の発表基準を地域毎に
作成して、運用する
- 大雨
- 強風
- 雷
魅⼒あるスリランカ気象局ホームページに変⾝
問題解決のためのアプローチ
ステップ:1
静的HTMLである既設Webページをダイナミック
HTMLへ移植する。
ステップ:2
ユーザーが気象情報をスムーズに且つ楽しく閲覧
できるよう、魅力あるWebページにリニューアル
する。




文字情報のビジュアル化の促進
気象情報・警報のページに多くの図表を活用
子供用の気象教育用情報ページの充実
スマートフォンからのアクセスへの対応
ステップ:3
ユーザーによるWebページプロダクトの自由なダ
ウンロードが可能となるWebページ環境を整備す
る。
ステップ:4
Webページの更新やプロダクトのアップデートに
必要な技術の移転を実務と研修を通して実施する。
スリランカ版防災教育アニメを作成、オープンクラス開催
問題解決のためのアプローチ
防災教育用アニメーションの作成
ステップ:1
スリランカ特有の気象・気候及び自然災害からの
身の守り方を題材にしたアニメーション(音声付
き)を作成する。
 タイトル:Save Yourself
 内容:スリランカの気候、雷と竜巻、大雨災害
 言語:英語、シンハラ語、タミル語
ステップ:2
防災教育資料作成に係る企画力向上のための技術
移転を実施する。
防災啓発活動の実施
ステップ:3
学校において防災教育アニメーションを上映して、
オープンクラス(出前授業)を開催する。




アニメーションの上映
理解度テストの実施(アニメ上映前後)
質疑応答
受講者の防災教育受講の証明として、スリラン
カ気象局オリジナルマスコットを各児童へ配布。
Fly UP