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医療・介護・健康関連産業実態調査

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医療・介護・健康関連産業実態調査
平成24年度横浜経済活性化推進調査
医療・介護・健康関連産業実態調査
平成25年3月
横
浜
市
経
済
局
株式会社浜銀総合研究所
《
目
次
》
はじめに ~内発的発展の主要な分野、成長分野としての「医療・介護・健康関連産業」~ 1
第1章 国の成長分野としての医療・介護・健康関連産業 ................................................................................................ 9
1-1 国の成長戦略等における位置づけと取り組み内容 ........................................................................................... 9
(1) 新成長戦略等の考え方、取組、成長マーケット規模・産業分野 ....................................................... 9
(2) 成長戦略等の比較から見る位置づけの変遷 ................................................................................................. 17
1-2 各分野における政策動向把握...................................................................................................................................... 24
(1) サービス提供体制 ......................................................................................................................................................... 24
(2) 産業振興 ............................................................................................................................................................................. 30
1-3 国や他自治体の先行調査・取り組み事例 ............................................................................................................ 36
(1) 総合特区制度及び産業クラスター計画における位置づけ ................................................................... 36
(2) 他都市で展開されている主な施策...................................................................................................................... 39
1-4 民間事業者等における取り組み状況 ...................................................................................................................... 51
(1) 経済産業省事業の公募・採択状況...................................................................................................................... 51
(2) 厚生労働省事業の公募・採択状況...................................................................................................................... 53
(3) 福祉医療機構事業の公募・採択状況................................................................................................................. 54
第2章 横浜における医療・介護・健康関連産業分野の動向整理 ........................................................................ 58
2-1 医療・介護・健康関連産業に関する概念整理 .................................................................................................. 58
(1) 医療・介護・健康関連産業に関する概念の整理 ....................................................................................... 58
(2) 本市における、医療・介護・健康関連産業の市場規模 ........................................................................ 72
2-2 経済波及効果 ......................................................................................................................................................................... 79
(1) 市内生産額から把握される市内への経済波及効果 .................................................................................. 79
(2) 従業者数 ............................................................................................................................................................................. 79
2-3 横浜の将来の高齢者像 ..................................................................................................................................................... 81
(1) 人口・世帯 ........................................................................................................................................................................ 81
(2) 住まい .................................................................................................................................................................................. 83
(3) 経済状況 ............................................................................................................................................................................. 85
(4) 関心事・ライフスタイル .......................................................................................................................................... 87
(5) 将来の高齢者像の捉え方 .......................................................................................................................................... 91
(6) 患者数、及び要介護認定者数の推計................................................................................................................. 92
2-4 将来の市場規模に応じた市内における経済効果の分析 .............................................................................. 94
(1) 過去の生産額の伸び等から見た将来の医療・介護・健康関連産業 ............................................... 94
第3章 医療・介護・健康関連産業の振興や企業支援に向けた基本的な考え方............................. 96
3-1 今後成長が期待できる分野とその可能性の明確化 ........................................................................................ 96
(1) 医療産業における今後の成長性........................................................................................................................... 96
(2) 介護産業における今後の成長性........................................................................................................................... 97
(3) 健康関連産業における今後の成長性.............................................................................................................. 100
3-2 「医療・介護・健康関連産業」に対する支援施策の整理 ...................................................................... 105
(1) 他自治体における支援施策の整理................................................................................................................... 105
(2) 本市における、これまでの支援施策の整理 .............................................................................................. 109
3-3 これから必要となる施策のイメージ ................................................................................................................... 113
(1) 医療・介護・健康関連産業に関する業界団体からの意見 ................................................................ 113
(2) 市内事業者の求める支援施策 ............................................................................................................................. 115
(3) 本市における、今後の支援施策の方向性 ................................................................................................... 120
はじめに ~内発的発展の主要な分野、成長分野としての
「医療・介護・健康関連産業」~
本調査では、現在わが国経済の成長を支える大きな柱の一つとされる「医療・介護・健康関
連産業」を取り上げる。
従前、経済学の世界においては、福祉部門に経済資源が多く配分されれば、社会全体の生産
効率は低下し、さらに経済活力や経済成長力にはマイナスの影響が出るとされていた。「福祉」
の社会的必要性は大いに認知されていたところであるが、経済的側面からとらえると、福祉は
成長のお荷物であるという考え方が支配していた時代がある。
しかし今日では、このような福祉部門に位置する医療・介護・健康関連産業が新しい雇用と
所得を生み出し、大きなマーケットに拡がる可能性を持つ成長分野となりつつあるとの認識が
持たれ、政府の「新成長戦略(平成 22 年 6 月閣議決定)」のなかでも、我が国の成長牽引産業
との位置づけがなされている。
今後急速に人口の高齢化が進んでいく本市においても、この医療・介護・健康関連産業は大
きな需要や市場が創出される分野であり、また、横浜経済における内発的発展の主要な分野の
一つであるとも想定される。このため本調査では、当該産業分野を取り巻く政策動向や市場動
向の把握、さらには市内事業者の実態等を把握することにより、今後の産業振興に向けた基本
的な考え方の整理を行うことを目的としている。本章ではその前提として、医療・介護・健康
関連産業が、なぜ成長産業であると位置づけられているのか、また、本調査において、どのよ
うな領域を当該産業分野と捉えようとしているのかにつき、明らかにしておきたい。
1.内発的発展の主要な分野、成長産業としての医療・介護・健康関連産業
(1)内発的発展の主要な分野、成長分野であるといわれる背景
医療・介護・健康関連産業が、国内の主要な内需産業の一部であるのみならず、地域に
おいても内発的発展の主要な分野であり、我が国経済を牽引する成長産業の一つであると
いわれている。本節では、その背景について整理する。
【「内発的発展」とは】
地域経済等の内発的発展とは、地域内の産業等の集積を資源として、主に地域内で生
産と流通、消費という経済活動がなされ、地域内における企業等の主体間の分業・協業
のネットワーク関係の緊密化が進み、雇用・所得が持続して生み出されるという経済循
環の仕組みのことをいう。
また、これら経済循環の仕組みを内在させるとともに、それを基礎に地域内で再投資
が繰り返し行われ、域内でイノベーションが発生する仕組みを地域の発展の原動力(ある
いは原動力の一部)とすることにより、経済等の発展を遂げる仕組みのことをいう。
(「『横浜経済の内発的発展』実態基礎調査報告書」(平成 24 年 3 月、横浜市経済局)より)
-1-
①内発的発展の主要な分野として
医療・介護・健康関連産業は国民の生活にとって必需な産業部門であるため、横浜市が
持つ国内第 2 位の人口規模は、巨大な内需力を生み出しており、内発的発展に大きく寄与
している。そこでは財やサービス、特にサービス分野では地産・地商・地消・地雇用がこ
の産業の特徴である。経済循環が地域内で完結する割合が高く、ここに横浜経済の内発的
発展の主要な分野としての根拠がある。
②高齢化の進行による医療・介護サービス需要の拡大
2015 年にはいわゆる「団塊の世代」が全員 65 歳以上となり、その 10 年後の 2025 年に
は全員が後期高齢者となる。今後 10 年程度の間に我が国で高齢者が急増することに伴い
これら高齢者による医療・介護・健康関連産業への大きな需要の発生が持続的に見込まれ
ることが、成長産業であるといわれる背景の一つとして挙げられる。
また、アジアをはじめとした海外の国々においても、高齢化の進行に伴い、高齢者の生
活を支えるサービスへの需要が高まることが予想されることから、日本の培ってきた技術
や高品質なサービスの内需産業としてだけでなく、輸出産業としての海外展開の好機到来
が期待される。
③高齢者の日常生活を支えるサービスへのニーズの高まり
二世代・三世代の同居世帯の減少に加え独居高齢者の増加など、高齢者を取り巻く生活
環境の変化から、買い物等日常生活を営む上での支援の必要性が今後高まっていくことが
予想される。一方で、これら高齢者の QOL を支えるサービスの提供基盤整備が不十分で
あることから、今後これらサービスの提供体制整備が併せて期待される。
④消費の主役となりうる高齢者
先述のとおり、2015 年には「団塊の世代」が全員 65 歳以上となるが、「産業構造ビジ
ョン 2010(産業構造審議会産業競争力部会報告)」によると、彼らが受け取る退職金の総
額は約 54 兆円にも上るとされている。これに年金や、他の世代と比較して額が多いとい
われる貯蓄等の資産を加えると、非常に大きな購買力を持っていることがわかる。
今後、我が国の家計消費に占める高齢者の消費額の割合は 40%台にまで達すると予想さ
れており、きわめて重要な位置を占める見通しとなっている。
-2-
(2)内発的発展分野、成長分野である「医療・介護・健康関連産業」の特徴
次いで、医療・介護・健康関連産業の特徴を明らかにしておきたい。
①需要が主導する成長カーブ
医療・介護・健康関連産業の、特にサービス部門の成長カーブは、
「これまでに存在しな
かった製品やサービス」の出現という、供給サイドの変化によって需要が創造されるわけ
ではなく、これらサービスを必要とする高齢者数の増加という需要の増大に伴い、今後緩
やかにかつ持続的に内発的な発展として成長を続けることが想定される。医療・介護・健
康関連産業は、必要とする人にとっては必需品であることから所得弾力性が低く、人口や
ニーズに左右されやすいという特徴を持っている。
我が国の 65 歳以上人口の将来推計結果(日本の将来推計人口(平成 24 年 1 月推計、国
立社会保障・人口問題研究所)は、団塊世代が参入を始める 2012 年に 3,000 万人を上回
り、2020 年には 3,612 万人、その後しばらくは緩やかな増加期となり、2033 年に 3,701
万人となった後、第二次ベビーブーム世代が老年人口に入った後の 2042 年に 3,878 万人
でピークを迎えるとされている。その後一貫した減少に転じ、2060 には 3,464 万人まで減
少することと推計されている。このとおり、今後少なくとも約 30 年間程度は老年人口が増
加することが推計されており、この間人口推移とともに緩やかな成長が続くことが予想さ
れる。
これに対し、製造業などの場合は、新技術や新製品を市場に投入することで需要を喚起
するとともに、増大した需要に対し、生産体制を強化することで供給量を短期的に増やす
ことが可能であるため、短期的に急成長する成長カーブが描けることとなる。
製造業等と医療・介護・健康関連産業サービス業の成長カーブの違い
新たな製品の投入
市
場
規
模
市
場
規
模
緩やか、かつ
持続的な成長
普及が進むにつれ、
売上が停滞
時間
製造業等の成長カーブ
(短期的に急成長するモデル)
時間
医療・介護・健康関連産業の成長カーブ
(長期的に緩やかに成長するモデル)
②特定の地域でなく、全国各地において成長が期待される
製造業などにおいて、ある特定の工業製品の需要が急激に増えた場合にも、生産の基盤
さえ整っていれば、すぐに需要に対し製品を届けることが可能である。なおこのとき、生
産増の恩恵をうけるのは企業(工場)の立地する地域に限定されてしまうことが多いのが
-3-
特徴といえる。
これに対して、医療・介護・健康関連産業の、特にサービス部門については、地域の需
要に対し、主に地域の事業者がサービスを提供するという形態をとっている。高齢化によ
る介護や生活を支えるサービスの需要増加は全国的な傾向であることから、地域の人口構
成と事業環境によって成長幅に差はあるものの、特定の地域に偏ることなく、全国各地に
おいて市場の成長が期待できる分野である。しかもこのサービスの担い手は、地域住民の
需要に近接する必要があるなど、全体として地域内での経済循環が大きく、地産・地商・
地消・地雇用という特徴がある。
③大きな雇用創出効果
自動車や電機といった製造業が設備投資を軸に供給力の増強を図るのに対し、サービス
は労働集約的な産業であり、人員の増強によって需要の増加に対応するため、雇用を生み
出す効果が大きいという特徴がある。
【雇用誘発係数(2005 年)】
出所:前田由美子 「医療・介護の経済波及効果と雇用創出効果-2005 年産業連関表による分析-」
(2009 年、
日医総研ワーキングペーパー)
-4-
このことは労働力に対する依存度が高いということであり、マンパワーの限界が売上(成
長)の限界に直結するという特徴も併せて持っている。医療・介護人材は現時点において
も非常に不足しており、今後高齢者が増えるなか、サービス提供に必要な人材の確保が、
成長のカギを握っているということもいえよう。
しかし、医療や介護の分野では労働者の賃金水準が低いことや、労働環境の特殊性など
により、現場の労働者の定着率が低いとされている。人材の安定的な確保に当たっては、
こうした課題を解決するための努力が必要である。
④国の政策と密接に関わる分野
冒頭で述べたように、医療・介護・健康関連産業は国の成長戦略においても重要な成長
分野として位置付けられている。新成長戦略では、
「世界のフロンティアを進む日本の高齢
化は、ライフ・イノベーション(医療・介護分野革新)を力強く推進することにより新た
なサービス成長産業と新・ものづくり産業を育てるチャンスでもある」とし、
「高い成長と
雇用創出が見込める医療・介護・健康関連産業を日本の成長牽引産業として明確に位置付
けるとともに、民間事業者等の新たなサービス主体の参入も促進し、安全の確保や質の向
上を図りながら、利用者本位の多様なサービスが提供できる体制を構築する」という方針
を掲げている。
医療・介護・健康関連産業について、国がイノベーションの促進を図るという姿勢を打
ち出すことで、今後は当該分野における既存事業者の事業継続、及び新規に参入しようと
する事業者に対する支援施策の増強や、事業環境の改善が期待される。また、医療や介護
は、公的な制度の中で事業が営まれることを基本とする分野であり、国の制度改革の影響
を受けやすい。こうした点から、医療・介護・健康関連産業は国の政策と密接に関わって
いる分野であるといえる。
以上、ここまで見てきた医療・介護・健康関連分野の特徴について改めて振り返る。
当該産業は、医療サービスや介護サービスなど人的なサービス提供という側面と、医療
機器や医薬品、介護用品など医療サービスや介護サービスを支える財の提供という二つの
側面を有している。
このうちサービス提供については、需要に対応する形で供給がなされ、医療サービスや
介護サービスそのものの提供が目的であることから、それ以外の産業への波及が少ないと
いう特徴がある。今後の人口高齢化など、当該サービスを必要とする人の増加とともに、
緩やかなカーブを描きながら成長していく分野である。なお、 高齢化の進展によりこれら
サービスの需要は緩やかながらも大きく伸びることが想定されるが、我が国の財政に占め
る社会保障費用の増大や、これにともなう自己負担額の増加など、社会保障制度の行方如
何によっては、需要が潜在化してしまう可能性も有している。
財の提供の側面では、グローバル競争の激しい創薬、及び高度な医療・介護機器など、
大企業とそれに関連する中小企業が大規模な研究開発を軸に進めており、国際戦略総合特
区もその試みの一つである。また中小製造業においては、福祉用具・用品などこれまでの
製品に「改善」や「工夫」などのカスタマイズが求められる分野が多く、市場規模も数十
-5-
億円から数億円程度で、まさに中小企業の参入が求められている分野が広く存在している。
しかも、
「横浜市中小企業ネットワーク調査」のアンケート結果(平成 24 年度実施)より、
新規事業への取り組みとして、
「医療・健康・福祉関連」は市内の中小製造業者が「環境・
エネルギー関連」に次いで高い意向を持っている分野であることが把握されており、本市
においても成長分野としての可能性の高い分野ということができる。
他方、医療・介護・健康関連産業の成長は、生産額の向上という経済規模の拡大のみな
らず、地域に豊かさと安心感をもたらすことにも大いに寄与する。これは、先に挙げたと
おり、特にサービス提供の部分においては地産・地商・地消・地雇用という特徴、つまり
地域内での経済循環が有効に働くことが期待され、地域経済の成長につながるばかりか、
雇用創出、医療や介護機能の充実と向上など、地域の質的な成長が促されることによるも
のである。 この点において、医療・介護・健康関連産業の成長が社会的にも大きな役割を
果たすという、当該産業の振興についてのもう一つの意義を見出すことができる。
上記のような特徴をまとめると、下表のように整理することができる。
【本調査における「医療・介護・健康関連産業」の成長イメージの整理】
医療・介護・健康関連製品の製造
市場の成長
経済効果の偏在
医療・介護・健康関連サービス
・供給者側が需要を創出
・需要の増大が供給量の増加を促進
・短期間に市場が大きく成長→飽和
・長期にわたり緩やかな成長が続く
・供給者の集積地に局地的な経済効果
・全国各地に需要増による経済効果
・地産、地商、地消、地雇用
供給の拡大
・主に新たな薬剤、医療・介護機器な
・主に人員の増強によって対応
どの研究開発、及び生産設備の増強
・社会的価値の向上
によって対応
⇒雇用創出効果が大きい
⇒設備投資を誘因
国の政策との
関わり
・「我が国における今後の成長分野」として、新成長戦略等、国の政策の中で
明確な位置づけがなされ、それに応じて様々な施策が展開
-6-
2.「医療・介護・健康関連産業」の全体像
(1)医療・介護・健康関連産業の相互の関係(配置)
医療・介護・健康関連産業の位置関係を図示すると、下のようになる。
予防(介護予防を含む)、リハビリ
介護関連製品・
関連サービス
健康関連産業
医療
介護
医療関連製品・
関連サービス
医療・介護・健康関連産業
医療、及び介護の 2 つの領域を柱とし、その外縁に広がる部分(日常における健康的な生
活を支える財やサービス)を健康関連産業が担うというイメージである。なお、医療と介護
は完全に独立したものではなく、両者には重なる領域が存在する。また、医療・介護につい
ては、それぞれ周辺に「予防」という領域が存在する。
また、医療、介護、健康関連産業のそれぞれについて、
「対象者の広がり」
・
「規制の厳しさ」
「健康度」の 3 点から整理すると、下記のようになると考えられる。頂点に近いほど対象者
の広がりが小さく、規制が厳しく、製品やサービスの消費者の健康度が低くなり、逆に底辺
に近いほど対象者の広がりが大きく、規制が緩く、消費者の健康度も高いという構図になっ
ている。
医療
介護
小
高
健康度:低
対象者の広がり
医療
介護
医療関連
規制の厳しさ
介護関連
疾病予防・
リハビリ
介護予防
リハビリ
健康度:高
大
健康の維持・増進
健康関連産業
-7-
低
(2)医療・介護・健康関連産業の定義
本調査では、医療産業を「医療業、医療機器、医薬品、医療関連製品、及び医療関連の研
究開発」、介護産業を「老人福祉・介護事業、介護・福祉機器、介護関連製品、及び介護関連
の研究開発」と定義する。
健康関連産業については、その対象とする範囲が広く、非常に多彩なサービスが含まれる
と考えられる。本調査においては、WHO 憲章の前文に準じて、健康を「身体」
・
「精神」
・
「社
会」の 3 つの観点で捉え、それぞれの良好な状態の維持を目的とした財やサービスを提供す
る産業を健康関連産業と想定する。
本調査における、医療・介護・健康関連産業に属する製品やサービスとして、下記のよう
なものを想定している。なお、具体的な製品やサービスについては、本書第 2 章にて後述す
る。
【本調査における「医療・介護・健康関連産業」に属する製品やサービス】
含まれる主な財やサービス
医療
医療業(病院、診療所、助産・看護業、療術業、医療に附帯するサービス)
医療機器、医薬品、医療関連製品、医療関連の研究開発
介護
等
老人福祉・介護事業(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、通所・短期入所
介護事業、訪問介護事業、認知症老人グループホーム、有料老人ホーム、その他)
介護・福祉機器、介護関連製品、介護関連の研究開発
健康関連
等
(身体)身体的な健康の維持・増進に資する製品やサービス
(精神)精神的な健康の維持・増進に資する製品やサービス
(社会)社会的な健康の維持・増進に資する製品やサービス
-8-
第1章 国の成長分野としての医療・介護・健康関連産業
1-1
国の成長戦略等における位置づけと取り組み内容
○重要性を増す「医療・介護・健康関連産業」
・高齢化の進行とともに、高齢者を対象とした医療・介護等のサービス需要が増大
・要介護認定率は 2 割未満であり、
「元気な高齢者」も多数存在することから、日常生活に
おける健康を支えるサービスの需要も高まることが見込まれる
○国の成長戦略における「医療・介護・健康関連産業」の位置づけ
・増大するニーズを背景に、国の成長戦略においても、今後の成長産業の一つとして「医
療・介護・健康関連産業」に対する注目が高まっている
…先端医療等の分野において、日本の技術力を活かした医療機器や介護機器、質の高い介
護サービス等の国際的な展開を推進していくことが検討されている
(1)新成長戦略等の考え方、取組、成長マーケット規模・産業分野
医療・介護・健康関連産業については、これまでに「新成長戦略」、
「日本再生戦略」等、国
の成長戦略において将来的な展望や施策の方向性の検討、市場規模の推計などが行われてきた。
本章では、はじめに個々の成長戦略においてどのような位置付けがなされてきたかを把握する。
①
「新成長戦略」における扱い
ア
医療・介護・健康関連産業が注目される背景
新成長戦略において医療・介護・健康関連産業が成長分野の一つとして今後の発展が期待
されているが、その背景には高齢者を中心としたニーズの拡大がある。「産業構造ビジョン
2010(産業構造審議会産業競争力部会報告書)」
(2010 年)によれば、我が国の医療・介護・
健康関連産業をめぐる状況について以下のような展望が持たれている。
【消費者ニーズの拡大】
2015 年にはいわゆる「団塊の世代」が全員 65 歳以上となり、その 10 年後の 2025 年に
は全員が後期高齢者となる。今後 10 年程度の間に我が国で高齢者が急増することが確実
であり、それに伴って国内の高齢者を対象とした医療・介護・健康関連産業の大きな需要
の発生が見込まれる。また、中国や韓国では日本を大きく上回るペースで高齢化が進行し
ているなど、アジアをはじめとした海外の国々においても高齢者の生活を支えるサービス
の需要が大きく高まることが予想されることから、日本の培ってきた技術や高品質なサー
ビスの海外展開の好機到来が期待される。
【日常生活における安全、安心への切実なニーズの高まり】
高齢者個人の状態だけでなく、国内の高齢者の生活環境自体にも変化が生じている。2
世代・3 世代の同居生世帯の減少に加え、高齢者の独居世帯が増加しており、買い物等、
日常生活を営む上での支援の必要性が今後高まっていくことが予想される。一方で、QOL
-9-
維持のためのサービス提供基盤が不十分であることから、今後、当該分野における基盤整
備が急務である。
【消費の主役となり得る高齢者】
先述の通り、2015 年には「団塊の世代」が全員 65 歳以上となるが、彼らの退職金総額
は約 54 兆円規模にも上るとされている。これに彼らの受け取る年金、及び資産や貯蓄(他
の世代と比較して、65 歳以上は貯蓄額が多いことが知られている)を加えると、彼らが非
常に大きな購買力を持っていることがわかる。
今後、我が国の家計消費に占める高齢者消費の割合は 40%台にまで成長し、きわめて重
要な位置を占める見通しとなっている。高齢者の不安を解消し、QOL 維持のためのサービ
ス消費の促進を構造化することが求められる。
なお、このように今後の成長が期待される一方で、問題点も挙げられている。想定される
課題の例として、公的負担の増大、医療機関に集中するニーズ、供給現場の効率化、潜在有
資格者の存在、生活支援サービスの創出促進などがある。
こうした問題に対応しつつ、産業としての成長を促すために、新成長戦略では「ライフ・
イノベーションによる健康大国戦略」が策定されている。
イ
新成長戦略の概要
「新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~」(以下、新成長戦略)は 2010 年 6 月
18 日に閣議決定されたもので、政府による今後の経済成長の見通しや、日本経済を成長させ
るための重点施策の方向性について取りまとめられている。
新成長戦略には 7 つの成長分野が設定されており、医療・介護・健康関連産業はその中で
「ライフ・イノベーションによる健康大国戦略」全体、及び「観光立国・地域活性化戦略」
の一部として位置づけられている。
《新成長戦略における7つの成長分野》
強みを活かす成長分野
(1)グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略
(2)ライフ・イノベーションによる健康大国戦略
(3)アジア経済戦略
(4)観光立国・地域活性化戦略…(一部に関連項目の記載がある)
成長を支えるプラットフォーム
(5)科学・技術・情報通信立国戦略
(6)雇用・人材戦略
(7)金融戦略
- 10 -
ウ
新成長戦略における医療・介護・健康関連産業の位置づけ
新成長戦略の「ライフ・イノベーションによる健康大国戦略」では、2020 年までの目標と
して、
『医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出、新規市場約
50 兆円、新規雇用 284 万人』ということが掲げられており、本文中には「すべての高齢者が
家族と社会のつながりの中で生涯生活を楽しむことができる社会を作る。また、日本の新た
な社会システムを「高齢社会の先進モデル」として、アジアそして世界へと発信していく」
(新成長戦略本文より引用)と述べられている。この目標を達成するために、重点施策とし
て 5 つの方向性が示されている。
《新成長戦略に示される医療・介護・健康関連産業における主な事業の方向性と取組内容》
(2)ライフ・イノベーションによる健康大国戦略
1.日本発の革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発推進
・新薬、再生医療等の先端医療技術、情報通信技術を駆使した遠隔医療システム
・ものづくり技術を活用した高齢者用パーソナルモビリティ
・医療・介護ロボット等の研究開発・実用化
⇒産官学の取り組み促進、創薬ベンチャーの育成を推進、ドラッグラグ、デバイスラグの解消、
治験環境の整備、認証審査の迅速化
2.アジア等海外市場への展開促進
新成長戦略全体フォローアップ(2012 年 5 月)
では、
「施策の実施が 2020 年目標に向けた政策効果に
十分につながっていない項目」として挙げられている
・医薬品等の海外販売
・アジアの富裕層等を対象とした健診、治療等の医療及び関連サービス
・アジア市場との連携(共同の臨床研究・治験拠点の構築等)
⇒観光産業との連携、アジア市場との連携
3.バリアフリー住宅の供給促進
・高齢者が居住する住宅内での安全な移動の確保や転倒防止
・介助者の負担軽減等のため、手すりの設置や屋内の段差解消、住宅バリアフリー化促進
⇒バリアフリー性能が優れた住宅取得やバリアフリー改修促進のための支援の充実
⇒民間事業者等による高齢者向けのバリアフリー化された賃貸住宅の供給促進
4.不安の解消、生涯を楽しむための医療・介護サービスの基盤強化
・質の高い医療・介護サービスを安定的に提供できる体制を整備
・医療・介護サービスの基盤の強化(高齢者が将来の不安を払拭し、不安のための貯蓄から、
生涯を楽しむための支出を行えるように)
⇒医師養成数の増加、勤務環境や処遇の改善による勤務医や医療・介護従事者の確保、医療・
介護従事者間の役割分担の見直し
⇒医療機関の機能分化と高度・専門的医療の集約化、介護施設、居住系サービスの増加の加速
5.地域における高齢者の安心な暮らしの実現
・高齢者が自らの希望するサービスを受けることができる社会を構築
⇒地域主導による地域医療の再生を図る、医療・介護・健康関連サービス提供者のネットワー
ク化による連携、情報通信技術活用による在宅での生活支援ツールの整備
・新たなシニア向けサービスの需要創造
⇒生涯学習、教養・知識を吸収するための旅行、高齢者の起業や雇用、高齢者が有する技術・
知識等が次世代への継承
- 11 -
(4)観光立国・地域活性化戦略(ライフ・イノベーション以外の関連項目)
○ストック重視の住宅政策への転換
・中古住宅の流通市場、リフォーム市場等の環境整備
⇒急増する高齢者向けの生活支援サービス、医療・福祉サービスと一体となった住宅の供給を
拡大
⇒リバースモーゲージの拡充・活用促進などによる高齢者の資産の有効活用
なお、「新規市場 50 兆円、新規雇用 284 万人」の内訳は、以下の通りである。
《新規市場 50 兆円、新規雇用 284 万人の内訳》
①医療・介護の市場規模:計 78 兆円→現状の 41 兆円を除き、新規市場 37 兆円
新規雇用 201 万人
②健康関連サービス産業:25 兆円 →現状の 10 兆円を除き、新規市場 15 兆円
新規雇用 80 万人
③「革新的医薬品・医療機器の創出並びに再生医療、個別化医療及び生活支援ロボットの開発・
実用化、先端医療の推進による経済波及効果」
:1.7 兆円、新規雇用 3 万人
↓
下線部を合計すると…
・新規市場:37+15+1.7≒50 兆円(53.7 兆円)
・新規雇用:201+80+3=284 万人
- 12 -
②
「日本再生戦略」における扱い
ア
日本再生戦略における医療・介護・健康関連産業の位置づけ
「日本再生戦略~フロンティアを拓き、「共創の国」へ~」(以下、日本再生戦略)は、新
成長戦略の後に、最新の動向や東日本大震災による被害からの復興等を踏まえて策定され、
2012 年 7 月末に閣議決定されたもので、新成長戦略を再編・強化し、被災地の復興と震災以
前よりも魅力と活力のある国として再生するための方向性が示されている。
《日本再生戦略における 11 の成長戦略》
(1)さらなる成長力強化のための取組
①環境の変化に対応した新産業・新市場の創出
■グリーン成長戦略
■ライフ成長戦略
■科学技術イノベーション・情報通信戦略 ■中小企業戦略
②食と農林漁業の再生
■農林漁業再生戦略
③新たな資金循環による金融資本市場の活性化
■金融戦略
④観光振興
■観光立国戦略
⑤経済連携の推進と世界の成長力の取り込み
■アジア太平洋経済戦略
(2)分厚い中間層の復活
①すべての人のための社会・生活基盤の構築
■生活・雇用戦略
②我が国経済社会を支える人材の育成
■人材育成戦略
③持続可能で活力ある国土・地域の形成
■国土・地域活力戦略…(一部に関連項目の記載がある)
(3)世界におけるプレゼンス(存在感)の強化
新成長戦略には 11 の成長戦略が設定されており、医療・介護・健康関連産業はその中で
「ライフ成長戦略」全体、及び「国土・地域活力戦略」の一部として位置づけられている。
この日本再生戦略の中には「グリーン(エネルギー、環境)」
、
「ライフ(医療・介護・健康
関連産業)」
、
「農林漁業」の 3 つが「新たな成長をめざす重点分野」として位置付けられて
おり、この分野は新成長戦略に引き続き、我が国の成長牽引産業として重要視されているこ
とがわかる。
《ライフ成長戦略の方向性》
・医療イノベーション 5 か年戦略の着実な実施等により、引き続きドラッグラグ、
デバイスラグの短縮に取り組む
・日本のものづくり力を活かした革新的医薬品・医療機器・再生医療製品等を世界に
先駆けて開発し、積極的に海外市場へ展開する
- 13 -
ライフ成長戦略、及び国土・地域活力戦略における主な事業の方向性と取組内容は以下の
ように記載されている。
なお、国土・地域活力戦略には直接的に医療や介護に関する記述はないが、
「バリアフリー
化」や「住居の確保(中古住宅の流通促進等)
」というキーワードで見れば、医療・介護・健
康関連産業に関係する要素が含まれていると言うことができる。
《日本再生戦略の中に示される医療・介護・健康関連産業における主な事業の方向性と取組内容》
○ライフ成長戦略
1.革新的医薬品・医療機器創出のためのオールジャパンの支援体制、臨床研究・治験環境等
の整備
・がん、難病、肝炎、感染症等の重点領域を中心に、大学等の基礎研究の優れた成果を実用化
につなげる一貫した支援の実施
⇒創薬支援ネットワークの構築、医薬基盤研究所の体制強化
⇒医療機器については、医工連携等による拠点整備・開発、医療サービスと一体化した海外展
開等を推進
2.医療機器・再生医療の特性を踏まえた規制・制度等の確立、先端医療の推進
・医療機器の審査の迅速化のため、薬事法の改正、後発医療機器の承認・認証制度の拡充等を
実施
・再生医療の世界に先駆けた本格的な実用化
⇒開発・実用化に必要な装置等の周辺産業を含めた関連産業の振興に資する取組を実施
・行政区域単位の特区とは異なる機関特区の創設
⇒当面は総合特区の活用により対応を図る
3.15 万人規模のバイオバンク構築による東北発の次世代医療等の実現
・15 万人規模の大規模バイオバンク構築
⇒東日本大震災の被災者を対象とした健康調査の結果を基にバイオバンクを構築
⇒バイオバンクに蓄積された情報は、個別化医療等の実現に向けた研究開発(東北メディカル・
メガバンク計画等)への活用が期待される
4.ロボット技術による介護現場への貢献や新産業創出/医療・介護等周辺サービスの拡大
・研究機関、企業、介護現場の連携促進による環境整備
⇒介護現場のニーズに応えるロボット技術の研究開発、実用化のための環境整備を図る
⇒重点分野を特定し、安全性や機能の評価手法を確立する
・国内における早期普及のための公的支援・制度的措置、海外展開に向けた国際標準化の支援
- 14 -
○国土・地域活力戦略(ライフ成長戦略以外の関連項目)
1.良質な住宅ストックの供給と不動産流通システムの改善
⇒サービス付き高齢者向け住宅の供給拡大、子育て世帯向けの住替え等、ライフステージに応
じて適切な住まいが確保できるよう取組を推進する
⇒老朽マンションの建て替え・改修の促進策の実施等により、省エネ性・耐震性・バリアフリ
ー性等に優れた住宅の普及促進を図る
2.集約型のまちづくりや次世代型生活への対応
⇒人口減少社会の中でも子育て世代・高齢者等が健康、安全、快適に生活できる持続可能な地
域づくりを進める
(この施策の中に、「医療・介護施設や子育て施設等の整備」も盛り込まれている)
ライフ成長戦略の内容、及び 2020 年までの目標については下記の通り記載されており、
目標、及び市場規模の推計は新成長戦略と同値となっている。このことからもわかるように、
日本再生戦略における医療・介護・健康関連産業の位置づけは新成長戦略と同様の考えに基
づいたものとなっている。なお、新成長戦略と異なる点として、日本再生戦略では、2020
年までの目標に加え、2015 年までの中間目標が新たに設定されている。
《ライフ成長戦略の目標》
【2020 年までの目標】
・医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出:
新市場約 50 兆円、新規雇用 284 万人
⇒革新的医薬品・医療機器の創出並びに再生医療、個別化医療及び生活支援ロボットの
開発・実用化、先端医療の推進による経済波及効果:1.7 兆円、新規雇用 3 万人
⇒健康関連サービス産業:市場規模 25 兆円、新規雇用 80 万人
・海外市場での医療機器、サービス等ヘルスケア関連産業での日本企業の獲得市場規模
:約 20 兆円
【2015 年度の中間目標】
・創薬支援ネットワークによる支援対象の検討シーズ数:累積 100 件
・治験届出数:800 件(うち国際共同治験数 150 件、医師主導治験数 20 件)
・新医療機器承認数:30
・ヒト幹細胞を用いた研究の臨床研究又は治験への移行:約 10 件
・医療・介護機関と連携した医療・介護周辺サービス市場:1 兆円
(参考)中小企業戦略
日本再生戦略には、
「中小企業戦略」も盛り込まれている。これは中小・小規模企業政策の
再構築を行い、企業・創業・育成支援、海外展開支援の抜本強化、及び金融面からの支援等
に重点的に取り組むものである。医療・介護・健康関連産業においては中小企業の果たす役
割も大きいことから、当該分野の成長に間接的な影響を与えると考えられる。
工程表には、下記のような施策が記載されている。
- 15 -
《中小企業戦略の工程表に挙げられた施策の方向性》
1.ちいさな企業に光を当てた施策体系の再構築
・ちいさな企業を支援するための施策の再構築
・中小・ベンチャー企業の起業・創業・育成の支援体制強化
・ものづくり技術の強化・継承に関する施策強化
・中小企業の人材確保・育成・定着支援
・中小企業の事業再生
・中小企業の海外展開支援等
・中小・ベンチャー企業の知財活動の強化
2.金融円滑化法の期限到来も踏まえた中小企業等への支援
・将来の成長可能性を重視した金融の実現、地域密着型金融の推進
・金融円滑化法からの円滑な移行に向けた体制整備
・個人保証制度の見直し
・動産・売掛債権担保の利用促進策の整備
・金融機関による資本性資金の供給促進策(5%出資規制の見直しを含む)の検討
・多彩な資金調達が可能な金融資本市場の実現
- 16 -
(2)成長戦略等の比較から見る位置づけの変遷
ここでは、我が国における医療・介護・健康関連産業に対する国の姿勢の変遷を把握するこ
とを目的として、
「新成長戦略」、
「日本再生戦略」等、国の成長戦略における医療・介護・健康
関連産業の位置づけや施策の方向性についての比較を行う。
なお、平成 9 年に橋本内閣が閣議決定した「経済構造の変革と創造のための行動計画」、及
び平成 18 年に小泉内閣が閣議決定した「経済成長戦略大綱」の基となった「新経済成長戦略」
(平成 18 年、経産省)を参照し、新成長戦略及び日本再生戦略との比較を通じて新成長戦略
以前から現在(日本再生戦略)に至るまでの当該分野の位置づけの推移を整理する。
(参考1)経済構造の変革と創造のための行動計画
平成 9 年に橋本内閣が閣議決定した「経済構造の変革と創造のための行動計画」では、
「新
規・成長 15 分野」の中に「医療・福祉関連分野」が取り上げられている。「新規・成長 15
分野」は、関係省庁が連携して施策を講じていく上での前提となる、平成 13(2000)年まで
の中長期的な計画として決定されたものである。15 の成長分野と、それぞれの雇用規模・市
場規模の予測(平成 9(1997)年当時)は表 1-1-1 のとおりである。
2010 年には医療・福祉関連分野の雇用規模は 480 万人、市場規模は 91 兆円となることが
予測されており、他の分野と比較すると、特に雇用の面で大きな期待が寄せられていたこと
がわかる。
表 1-1-1 「新規・成長 15 分野」の雇用・市場規模予測
雇用規模予測
現状(1997 年)
市場規模予測
2010 年
現状(1997 年)
2010 年
医療・福祉関連分野
348 万人
480 万人
38 兆円
91 兆円
生活文化関連分野
220 万人
355 万人
20 兆円
43 兆円
情報通信関連分野
125 万人
245 万人
38 兆円
126 兆円
新製造技術関連分野
73 万人
155 万人
14 兆円
41 兆円
流通・物流関連分野
49 万人
145 万人
36 兆円
132 兆円
環境関連分野
64 万人
140 万人
15 兆円
37 兆円
ビジネス支援関連分野
92 万人
140 万人
17 兆円
33 兆円
海洋関連分野
59 万人
80 万人
4 兆円
7 兆円
バイオテクノロジー関連分野
3 万人
15 万人
1 兆円
10 兆円
都市環境整備関連分野
6 万人
15 万人
5 兆円
16 兆円
航空・宇宙(民需)関連分野
8 万人
14 万人
4 兆円
8 兆円
新エネルギー・省エネルギー関連分野
4 万人
13 万人
2 兆円
7 兆円
人材関連分野
6 万人
11 万人
2 兆円
4 兆円
国際化関連分野
6 万人
10 万人
1 兆円
2 兆円
住宅関連分野
3 万人
9 万人
1 兆円
4 兆円
1,060 万人
1,800 万人
200 兆円
550 兆円
(資料:「経済構造の変革と創造のための行動計画の概要」(首相官邸ホームページ))
※各分野に示された予測は、各種統計、産業動向等の情報をもとに総合的な分析を行い求められた現時点での見
通しであり、目標ではない。本見通しは相当な幅を持って解釈する必要がある。また、各分野での雇用・市場
規模予測には若干重複がある。(首相官邸ホームページより)
合計
- 17 -
医療・福祉関連分野には、高齢者向けの医療サービス、医療機器の開発、高齢者・障害者の
自立支援、及び健康志向のニーズに対応する事業が含まれており、その範囲は住宅・建築物等
のバリアフリー化にまで及ぶ。また、生活文化関連分野には「生活重視、ゆとりと豊かさ重視
へと質的に変化する国民の生活者としての意識に応える事業」が含まれており、健康関連産業
と完全には一致していないが、一部それに該当する項目も含まれている。
「経済構造の変革と創造のための行動計画」においても、急速な高齢化の進行により医療ニ
ーズや介護ニーズが増大する一方で、少子化の進行により介護の担い手が減少すること、及び
高齢者や障害者の自立に関するニーズ(社会参加等)が増大することが医療・福祉関連分野を
成長分野として位置付ける背景となっている。
「経済構造の変革と創造のための行動計画」における医療・福祉関連分野の産業発展の課題
と政策の基本的方向は、以下のとおりである。「技術開発促進」、「規制緩和」、「人材育成」、及
び「情報化の推進」は両者に共通しているが、福祉分野ではそれに「市場環境整備」、「生活空
間・社会環境整備」(バリアフリー化の推進に相当)、「標準化の推進」の 3 つが加えられてい
る。
【医療分野の施策の方向性】
・規制緩和や情報化の推進による医療サービスの効率化を図る
(高齢化の進行に伴う国民負担抑制のため)
・高度医療機器の技術開発リスクの補完、技術開発のための人材育成等を推進
(具体的な施策)
技術開発の推進、人材育成、規制緩和、情報化の推進、国際調和
【福祉分野の施策の方向性】
・福祉用具の評価システムの確立、規制緩和等の実施
・福祉用具の研究開発、及び普及の促進
・福祉サービスの多様化に資する情報通信技術開発の促進
・高齢者、障害者等の社会参加支援
・生活空間等のバリアフリー化を総合的に推進し、福祉サービス・福祉用具の有効な活用等
を通じた高齢者・障害者等の利便性の向上を図る
(具体的な施策)
市場環境整備、生活空間・社会環境整備、技術開発の推進、標準化の推進、情報化の推進、
人材育成、規制緩和
- 18 -
(参考2)新経済成長戦略
平成 18 年に経済産業省が公表した「新経済成長戦略」では、サービス産業が「双発の成長
エンジンの一つ」として位置付けられており、
「第 3 節
サービス産業の革新」では具体的な
6 つの分野についてサービス分野別の対応が定められている(表 1-1-2 参照)。この 6 つの分
野のうち、概ね新成長戦略の「医療・介護・健康関連産業」に相当するものとして、
「健康・
福祉関連サービス」が取り上げられている。
表 1-1-2 「新経済成長戦略」の雇用・市場規模予測
雇用規模予測
現状(2006 年)
市場規模予測
2015 年
現状(2006 年)
2015 年
496 万人
552 万人
51.8 兆円
66.4 兆円
50 万人
54 万人
3.1 兆円
3.9 兆円
観光・集客サービス
475 万人
513 万人
24.5 兆円
30.7 兆円
コンテンツ(政策・流通・配信)
185 万人
200 万人
13.6 兆円
18.7 兆円
ビジネス支援サービス
630 万人
681 万人
75.0 兆円
93.9 兆円
1,447 万人
1,458 万人
126.5 兆円
150.7 兆円
健康・福祉関連サービス
育児支援サービス
流通・物流サービス
(資料:「新経済成長戦略」(経済産業省))
「健康・福祉関連サービス」については、2015 年の雇用規模は 552 万人、市場規模は 66.4
兆円と試算されており、
「所得の向上による健康志向の高まり」と「高齢化の進展」によるニ
ーズの着実な拡大が成長の背景とされている。
新経済成長戦略における、医療・介護・健康関連分野についての具体的な施策は下記のと
おりである。
■需要の創出・拡大
○健康・医療・福祉に係る新ビジネスモデルの創造支援
○新健康産業の創出と科学的根拠の明確化支援
○健康状態の把握を可能とする基盤整備支援
○健康増進インセンティブの検討と普及支援
■競争力・生産性の向上
○良質なサービスを提供する人材の確保・育成
○IT 活用を通じた医療サービスの効率化と質の向上
○地域ヘルスケア提供体制の重点化
○高度医療・福祉支援技術の開発・普及
- 19 -
①
成長戦略等の比較
これまでの成長戦略における雇用・市場規模の予測を比較すると、図 1-1-1 のようになる。
それぞれ対象としている領域が完全に一致していないため単純に比較することはできないが、
新成長戦略においては 2010~2020 年の間に市場規模が約 2 倍(医療・介護・健康関連分野の
合計)、新規雇用が 284 万人となることを目標としており、医療・介護・健康関連分野に非常
に大きな期待が寄せられていることが伺える。
図 1-1-1 これまでの成長戦略における雇用・市場規模予測の比較
2000年
経済構造の変革
と創造のための
行動計画
【医療・福祉】
雇用:348万人
市場:138兆円
【生活文化】
雇用:220万人
市場:120兆円
2005年
2010年
雇用:1.4倍
市場:2.4倍
雇用:1.6倍
市場:2.1倍
2020年
【生活文化】
雇用:355万人
市場:143兆円
【健康・福祉】
雇用:496万人
市場:152兆円
新経済成長戦略
2015年
【医療・福祉】
雇用:480万人
市場:191兆円
【健康・福祉】
雇用:552万人
市場:166兆円
雇用:1.1倍
市場:1.3倍
【医療・介護】
市場:141兆円
【医療・介護】
新規雇用:201万人
市場:178兆円
新規雇用:201万人
市場:1.9倍
医療:159兆円
介護:119兆円
新成長戦略
【健康関連】
市場:110兆円
日本再生戦略
【健康関連】
新規雇用:180万人
市場:125兆円
新規雇用: 80万人
市場:2.5倍
【革新的医薬品・医療機器の創出並びに再生医療、個別化医療及び生活
支援ロボットの開発・実用化、先端医療の推進による経済波及効果】
(2020年までに)1.7兆円、新規雇用3万人
※「経済構造の変革と創造のための行動計画」の「生活文化関連分野」(図中「生活文化」)には、医療・介護・
健康関連産業以外に該当するものも含まれる
表 1-1-3 それぞれの成長戦略における分野の名称、及びカバーされている領域
分野の名称
経済構造の変革と創
医療・福祉関連分野
カバーされている領域
医療サービス、医療機器・医薬品、介護サービス、
福祉用具製造、バリアフリー化関連産業
造のための行動計画
生活文化関連分野
等
生涯学習関連産業、余暇関連産業(観光産業等)
、
ファッション産業、家庭支援サービス産業
新経済成長戦略
健康・福祉関連サービス
医療サービス、医療機器・医薬品、スポーツ・健康増進サービス、
介護サービス、エステサービス
新成長戦略
日本再生戦略
医療・介護・健康関連産業
等
等
医療サービス、医療機器・医薬品、スポーツ・健康増進サービス、
介護サービス、福祉用具製造、バリアフリー化関連産業、
日常生活支援サービス
- 20 -
等
それぞれの分野でカバーされている業種を比較すると、
「経済構造の変革と創造のための行動
計画」では医療・福祉関連分野は健康関連産業とは別扱いだったのに対し、新経済成長戦略以
降は「スポーツ・健康増進サービス」が明示されるようになっている。
また、新成長戦略以前は介護や保育などをまとめて「福祉」と一括りにされていたのに対し、
新成長戦略以降は「介護」が一つの産業分野としてより大きく扱われるようになったことがわ
かる(表 1-1-3 参照)。
②
個々の分野における施策の比較
続いて、新成長戦略以前の成長戦略、「新成長戦略」、及び「日本再生戦略」における医療・
介護・健康関連産業に対する施策を比較する。新成長戦略以前は、主に医療・介護・健康関連
産業の全体についての方向性や施策が設定されていたが、新成長戦略以降は、医療・介護・健
康関連産業のそれぞれについて個別に対応する施策が打ち出されるようになっている。
《医療分野》
医療分野全体の方向性は、基本的に新成長戦略以前から日本再生戦略の間に相違はなく、
引き続き日本の高い技術力・サービスを武器に経済成長を牽引する役割が期待されている。
高度な医療技術や機器の開発等に関しては継続的に取組が行われているが、新成長戦略では
それに加え、アジアをはじめとする海外市場への展開の促進が重点施策として盛り込まれた。
また、日本再生戦略では、ロボット技術に関する施策や、
「15 万人規模のバイオバンク構
築」を含めた「東北メディカル・メガバンク計画」が重点施策として新たに取り上げられて
いる。
表 1-1-4 医療分野に関する施策の比較
新成長戦略以前
【経済構造の変革と
創造のための行動計画】
■技術開発の推進
■人材育成
■規制緩和
新成長戦略
日本再生戦略
【工程表に挙げられた方針】
【工程表に挙げられた方針】
■医療・介護サービスの基盤強化、高
■革新的医薬品・医療機器の創出
齢者の安心な暮らしの実現
■新たな医療技術の研究開発・
実用化促進
■新たな医療技術の研究開発・
実用化促進
■医療・介護サービスの基盤強化、高
■情報化の推進
■ドラッグラグ、デバイスラグの解消
■国際調和
■医療の国際化推進
■医療の国際化推進
齢者の安心な暮らしの実現
【重点施策】
【重点施策】
■日本発の革新的な医薬品、医療・介
■革新的医薬品・医療機器創出のため
・国際規格の整合化等
医療
【新経済成長戦略】
■需要の創出・拡大
・健康・医療・福祉に係る新ビジネ
スモデルの創造支援
・健康増進インセンティブの検討
と普及支援
■競争力・生産性の向上
護技術の研究開発促進
■アジア等海外市場への展開促進
■不安の解消、生涯を楽しむための医
療・介護サービスの基盤強化
■地域における高齢者の安心な暮ら
しの実現
のオールジャパンの支援体制、臨床
研究・治験環境等の整備
■医療機器・再生医療の特性を踏まえ
た規制・制度等の確立、先端医療の
推進
■15 万人規模のバイオバンク構築に
よる東北発の次世代医療等の実現
・良質なサービスを提供する人材の
■ロボット技術による介護現場への
確保・育成
貢献や新産業創出/医療・介護等周
・IT 活用を通じた医療サービスの
辺サービスの拡大
効率化と質の向上
・地域ヘルスケア提供体制の重点化
・高度医療・福祉支援技術の開発・
普及
- 21 -
《介護・福祉分野》
介護・福祉分野において、介護サービスの基盤強化や地域における安心した暮らしの実現
といった項目は「経済構造の変革と創造のための行動計画」から現在まで、引き続き取り組
むことが記載されている。
新経済成長戦略までは、需要の創出等、市場環境の整備に関する取組が重視されていたが、
新成長戦略からはそうした項目は重点施策という扱いでは取り上げられていない。このこと
から新成長戦略以降は、ある程度整備の進んだ市場において、より本格的な成長を目指すこ
とが主眼となっていることが伺える。
また、新成長戦略ではロボットの開発、及び普及を促進することが重点施策に挙げられて
いる。新経済成長戦略では、介護用のロボットに対する施策はサービス業としての介護事業
ではなく、製造業の振興という観点から記述されていたが、新成長戦略では介護分野の成長
を牽引する新たな要素として位置づけられるようになった。日本再生戦略においてもこの方
針は引き継がれており、新成長戦略に比べて重点施策として取り上げられている項目は少な
くなっているが、介護用のロボットの開発・普及に向けた取組が重点施策として新成長戦略
以上に重要視されている。
表 1-1-5 介護・福祉分野に関する施策の比較
新成長戦略以前
【経済構造の変革と
創造のための行動計画】
■市場環境整備
■生活空間・社会環境整備
新成長戦略
日本再生戦略
【工程表に挙げられた方針】
【工程表に挙げられた方針】
■医療・介護サービスの基盤強化、高
■医療・介護サービスの基盤強化、高
齢者の安心な暮らしの実現
■新たな医療技術の研究開発・実用化
齢者の安心な暮らしの実現
■新たな医療技術の研究開発・実用化
介護・福祉
■技術開発の推進
促進
促進
■標準化の推進
(介護現場のニーズに応えるロボッ
(介護現場のニーズに応えるロボッ
■情報化の推進
ト等)
ト等)
■人材育成
■規制緩和
【新経済成長戦略】
【重点施策】
【重点施策】
■日本発の革新的な医薬品、医療・介
■ロボット技術による介護現場への
護技術の研究開発促進
■需要の創出・拡大
■アジア等海外市場への展開促進
・健康・医療・福祉に係る新ビジネス
■バリアフリー住宅の供給促進
モデルの創造支援
■競争力・生産性の向上
・地域ヘルスケア提供体制の重点化
・高度医療・福祉支援技術の開発・
貢献や新産業創出/医療・介護等周
辺サービスの拡大
■不安の解消、生涯を楽しむための医
療・介護サービスの基盤強化
■地域における高齢者の安心な暮ら
しの実現
普及
《健康関連産業》
「経済構造の変革と創造のための行動計画」では、個々の施策というレベルでは健康関連
産業に類する項目が取り上げられているが、
「健康」という一つの分野としては位置付けられ
ていなかった。新経済成長戦略では「健康・福祉関連サービス」という括りで、医療や介護
を含めて広く健康の維持や増進に向けた取組が示され、新成長戦略においては「健康関連産
業」という、医療や介護とは別個の一つの分野として扱われている。
新成長戦略では今後の成長が見込まれる分野として「健康関連産業」が新たに位置付けら
- 22 -
れ、単体としてだけでなく、医療や介護等と連携し、国民の健康増進や地域における安心・
安全の確保に資する産業としても期待されている。地域の高齢者の安心な暮らしの実現や海
外市場への展開も重点施策として盛り込まれており、以前よりもその役割は大きくなってい
ることがわかる。
日本再生戦略においても全体の方向性については新成長戦略の路線を継続している。ただ
し、日本再生戦略においては、新成長戦略と比較して特に新たな重点施策は設定されていな
い。
表 1-1-6 健康関連産業に関する施策の比較
新成長戦略以前
新成長戦略
日本再生戦略
【新経済成長戦略】
【工程表より】
【工程表より】
■需要の創出・拡大
■医療・介護と連携した健康関連サー
■医療・介護と連携した健康関連サー
ビス産業の成長促進と雇用の創出
ビス産業の成長促進と雇用の創出
・健康・医療・福祉に係る新ビジネ
スモデルの創造支援
健康関連
・健康状態の把握を可能とする基盤
整備支援
・新健康産業の創出と科学的根拠の
明確化支援
【重点施策】
■アジア等海外市場への展開促進
■地域における高齢者の安心な暮ら
しの実現
■競争力・生産性の向上
・良質なサービスを提供する人材の
確保・育成
・地域ヘルスケア提供体制の重点化
- 23 -
1-2
(1)
各分野における政策動向把握
サービス提供体制
①
これまでの経緯
ア
医療分野
<戦後からの医療機関数の拡大>
我が国の医療の提供体制については、第二次大戦終戦後、感染症等をはじめとした急性期
の疾病への対応が中心であったなかで昭和 23 年に医療法が制定され、公的な医療機関を中心
に、病院の量的な確保がまず図られた。その後、保険証があれば全国どこの医療機関でも受
診ができる国民皆保険制度ができたこと(昭和 36 年)や、国民健康保険の給付率が改善され、
自己負担割合が減少したことなどもあり医療機関の受診がし易くなったこと、自由に開業で
きる自由開業制であることなどが相まって、我が国経済が大きく成長していくなか、公立、
民間を含め医療機関数は大きく拡大してきた。
また、高齢化率が上昇するなかで、老人医療費の無料化政策が採られたことを契機に(昭
和 48 年)高齢者の受療率は急激に増大し、国民医療費に占める老人医療費の割合も上昇した。
当時は、高齢者の生活を支える介護の体制が量的に不十分であり、また措置制度として介護
が行われてきたこともあり、昭和 50 年代以降、必ずしも入院医療を必要としない者も含め、
家庭での介護が難しい高齢者の受け皿としての病院・病床が増大した。
<病床規制制度の導入>
このように病院数は増大してきたが、病院の配置について調整を行う仕組みはなく、県庁
所在地など人口の多い地域に集積しがちであった。これを是正するため、昭和 60 年の第一次
医療法の改正により都道府県医療計画制度が導入され、いわゆる病床規制制度が実施されて
いる。地域の病床数が基準を超えている地域には原則として新たに病院設置ができないこと
となり、この制度施行前のいわゆる「駆け込み増床」を最後に、病院・病床数の伸びに歯止
めがかかることとなった。
また、診療所数も昭和 30 年代以来継続して増加している。昭和の終わりから平成の初めに
かけて施設数の伸びが一時弱まったものの、その後は再度安定して増加(近年は特に無床診
療所が増加)している。
<医療機能の分化・連携と患者視点の重視>
医療法についてはその後、平成 4 年、9 年、12 年、18 年と四次にわたり改正が行われてお
り、特定機能病院制度及び療養型病床群の創設(平成4年)、総合病院制度の廃止と地域医療
支援病院制度の創設(平成 9 年)、療養病床と一般病床の区分(平成 12 年)といった医療機
能の分化・連携を推進するための制度改革が行われた。
また、医療に対する国民の意識の変化等を踏まえ、広告規制の緩和、インフォームドコン
セントの法律への位置付け等患者の視点に立った見直しが行われている。そして平成 18 年に、
地域医療の連携体制の構築を進める医療計画制度の見直し、医療機関の機能に関する情報の
開示等を内容とする第五次医療法改正が行われた。
- 24 -
表 1-2-1 医療法改正の主な経緯について
改正年
昭和 23 年
医療法制定
昭和 60 年
第一次改正
平成 4 年
第二次改正
改正の趣旨等
終戦後、医療機関の量的整備が急務とされる中で、医療
水準の確保を図るため、病院の施設基準等を整備
医療施設の量的整備が全国的にほぼ達成されたことに
伴い、医療資源の地域偏在の是正と医療施設の連携の推
進を目指したもの。
人口の高齢化等に対応し、患者の症状に応じた適切な医
療を効率的に提供するための医療施設機能の体系化、患
者サービスの向上を図るための患者に対する必要な情
報提供等を行ったもの。
主な改正内容
病院の施設基準を創設
医療計画制度の導入
・二次医療圏ごとに必要病床数を設定
診療所への療養型病床群の設置
地域医療支援病院制度の創設
医療計画制度の充実
・二次医療圏ごとに以下の内容を記載
地域医療支援病院、療養型病床群の整備目標
医療関係施設間の機能分担、業務連携
平成 9 年
第三次改正
要介護者の増大等に対し、介護体制の整備、日常生活圏 療養病床、一般病床の創設
における医療需要に対する医療提供、患者の立場に立っ 医療計画制度の見直し
た情報提供体制、医療機関の役割分担の明確化及び連携 ・基準病床数へ名称を変更
の促進等を行ったもの。
平成 12 年
高齢化の進展等に伴う疾病構造の変化等を踏まえ、良質 特定機能病院の制度化
第四次改正 な医療を効率的に提供する体制を確立するため、入院医 療養型病床群の制度化
療を提供する体制の整備等を行ったもの。
・基準病床数へ名称を変更
平成18年 質の高い医療サービスが適切に受けられる体制を構築 都道府県の医療対策協議会制度化
第五次改正 するため、医療に関する情報提供の推進、医療計画制度 医療計画制度の見直し
の見直し等を通じた医療機能の分化・連携の推進、地域 ・4疾病5事業の具体的な医療連携体制
や診療科による医師不足問題への対応等を行ったもの。
を位置付け
(資料:厚生労働省医政局指導課「医療計画の見直しについて(社会保障・税一体改革で目指す将来像(医療計
画の見直しに関する都道府県担当者向け研修会資料:平成 24 年 3 月)より抜粋)
<介護が必要な高齢者の受け皿整備>
介護の必要な高齢者の受け皿については、昭和 62 年に老人保健施設が制度化され、また平
成 2 年には高齢者保健福祉推進 10 か年戦略(ゴールドプラン)を策定して、在宅介護の体制
強化や、特別養護老人ホームやケアハウスも含めた施設整備が進められた。また、病院の中
においても、特例許可老人病院(昭和 58 年に制度化。介護保険発足に際し廃止)
、療養型病
床群(平成 4 年に制度化)といった長期療養に対応した病床類型が位置付けられた。平成 12
年の介護保険制度の発足にあたっては、社会的入院問題への対応が課題の一つであったが、
介護基盤の不十分ななか、療養型病床群(医療法の改正により、平成 15 年 9 月以降は「療養
病床」)についても、介護保険施設の一類型(介護療養型医療施設)として位置付けられた。
イ
高齢者介護分野
高齢者介護については、平成 12 年度まで老人福祉法及び老人保健法に基づいて措置事業と
して提供されてきた。しかし、核家族化や介護者の高齢化等への対応、社会的入院の解消な
どが求められ、平成 10 年度に介護保険法が成立、平成 12 年 4 月より介護保険制度が開始さ
れた。
その後、高齢者人口の増加はもとより、介護保険制度導入により、自己選択に基づくサー
ビス利用、利用者(被保険者)としての地位の確立、保険料及び利用者負担の導入によるサ
ービス利用に関する心理的負担の軽減、介護サービス分野における事業活動の活発化などに
- 25 -
より、サービス利用は大幅に増加してきている。
介護保険制度は 5 年ごとに見直しを行うことが法により定められているが、平成 17 年度改
正(平成 18 年 4 月から実施)では、将来の介護保険制度利用の増加に伴う保険財源のひっ迫
が懸念され、予防重視型のシステムへの転換を図るとともに、住み慣れた地域での生活の継
続を目的とした地域密着型サービスが創設された。
この間、平成 12 年度から現在に至るまでに、要介護認定者は約 256 万人から約 506 万人
とおよそ 2 倍となっており、またサービス利用者は約 2.4 倍(約 124 万人から約 302 万人)、
さらに、保険給付額は 7 兆 2,536 億円(平成 22 年度)という規模となっている。
ウ
健康関連分野
我が国では、健康増進に関わる取り組みとして「国民健康づくり対策」が昭和 53 年から数
次にわたって展開されてきている。
<第1次国民健康づくり対策(昭和 53 年~)>
健康づくりは、国民一人一人が「自分の健康は自分で守る」という自覚を持つことが基本
であり、行政としてはこれを支援するため、国民の多様な健康ニーズに対応しつつ、地域に
密着した保健サービスを提供する体制を整備していく必要があるとの観点から、①生涯を通
じる健康づくりの推進、②健康づくりの基盤整備、③健康づくりの普及啓発、の三点を柱と
して取組を推進。
<第2次国民健康づくり対策≪アクティブ80ヘルスプラン≫(昭和 63 年~)>
第1次の対策などこれまでの施策を拡充するとともに、運動習慣の普及に重点を置き、栄
養・運動・休養の全ての面で均衡のとれた健康的な生活習慣の確立を目指すこととし、取組
を推進。
<第3次国民健康づくり対策≪21 世紀における国民健康づくり運動(健康日本 21)≫(平
成 12 年~)>
壮年期死亡の減少、健康寿命の延伸及び生活の質の向上を実現することを目的とし、生活
習慣病及びその原因となる生活習慣等の国民の保健医療対策上重要となる課題について、10
年後を目途とした目標等を設定し、国及び地方公共団体等の行政にとどまらず広く関係団体
等の積極的な参加及び協力を得ながら、
「一次予防」の観点を重視した情報提供等を行う取組
を推進。
その後平成 25 年度より、健康日本 21(第 4 次)として、
「健康寿命の延伸と健康格差の縮
小」、
「生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(NCD(非感染性疾患)の予防)」
、
「社会
生活を営むために必要な機能の維持及び向上」
、「健康を支え、守るための社会環境の整備」、
「栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔くうの健康に関する生活
習慣及び社会環境の改善」の 5 つを目標に新たな取り組みが開始されることとなっている。
- 26 -
②
これからの方向性
今後の医療・介護分野におけるサービス提供体制については、平成 24 年 2 月に閣議決定さ
れた「社会保障・税一体改革大綱」に、その方向性が示されている。この大綱に示される医
療・介護分野の今後の方向性と具体的なサービス提供の在り方について概観する。
ア
サービスの在り方
医療・介護分野のサービスの在り方については、大きく二つの目標を掲げている。
「高齢化
が一段と進む 2025 年に、どこに住んでいても、その人にとって適切な医療・介護サービス
が受けられる社会を実現する」ことと、
「予防接種・検診等の疾病予防や介護予防を進め、ま
た、病気になった場合にしっかり「治す医療」と、その人らしく尊厳をもって生きられるよ
う「支える医療・介護」の双方を実現する」というものである。
これらを実現するため、大綱では、
「医療サービス提供体制の制度改革」、
「地域包括ケアシ
ステムの構築」、「その他の事項」と3つの柱をたて、今後制度面での見直しを行っていくこ
とを明記している。
(1)医療サービス提供体制の制度改革
○ 急性期をはじめとする医療機能の強化、病院・病床機能の役割分担・連携の推進、在宅医療の充実等
を内容とする医療サービス提供体制の制度改革に取り組む。
<今後の見直しの方向性>
ⅰ 病院・病床機能の分化・強化
⇒急性期病床の位置付けを明確化し、医療資源の集中投入による機能強化を図る
⇒病診連携、医療介護連携等により必要なサービスを確保しつつ、長期入院の適正化を推進
ⅱ 在宅医療の推進
⇒在宅医療の拠点となる医療機関の趣旨及び役割を明確化
⇒達成すべき目標や医療連携体制等を計画上に明確化させ、在宅医療を充実
ⅲ 医師確保対策
⇒医師の地域間、診療科間の偏在の是正
⇒医師のキャリア形成支援を通じた医師確保の取組を推進
ⅳ チーム医療の推進
⇒多職種協働による質の高い医療を提供するためチーム医療を推進
(2)地域包括ケアシステムの構築
○ できる限り住み慣れた地域で在宅を基本とした生活の継続を目指す地域包括ケアシステム(医療、介護、
予防、住まい、生活支援サービスが連携した要介護者等への包括的な支援)の構築に取り組む。
<今後のサービス提供の方向性>
ⅰ 在宅サービス・居住系サービスの強化
⇒居宅生活の限界点を高めるためのサービスの充実(24 時間対応、小規模多機能型)
⇒サービス付き高齢者住宅の充実
ⅱ 介護予防・重度化予防
⇒要介護者の減少、自立した高齢者の社会参加の活発化を目的とした介護予防の推進
⇒生活期のリハビリテーションの充実
⇒ケアマネジメントの機能強化
ⅲ 医療と介護の連携の強化
⇒在宅要介護者に対する医療サービスの確保
⇒他制度、多職種のチームケアの推進
⇒小規模多機能型サービスと訪問看護の複合型サービスを提供
⇒退院時・入院時の連携強化や地域における必要な医療サービスを提供
- 27 -
ⅳ 認知症対応の推進
⇒認知症に対応するケアモデルの構築や地域密着型サービスの強化
⇒市民後見人の育成など権利擁護の推進を図る。
(3)その他
○ 診療報酬・介護報酬改定、補助金等予算措置等により、以下についても、取組を推進する。
⇒外来受診の適正化等(生活習慣病予防等)
⇒ICTの活用による重複受診・重複検査、過剰な薬剤投与等の削減
⇒介護施設の重点化(在宅への移行)、施設のユニット化
⇒医療・介護を担うマンパワーの増強
図 1-2-1 医療・介護サービス保障の強化
(資料:社会保障・税一体改革で目指す将来像(平成 24 年 1 月 6 日厚生労働大臣提出資料)より抜粋)
イ
提供体制の在り方
提供体制については、
「働き方にかかわらない保障の提供、長期高額医療を受ける患者の負
担軽減、所得格差を踏まえた財政基盤の強化・保険者機能の強化、世代間・世代内の負担の
公平化、といった観点から、医療保険・介護保険制度のセーフティネット機能を強化」を目
標に掲げ、以下の 12 の柱を中心に制度の充実を図る予定となっている。
(1)市町村国保の低所得者保険料軽減の拡充など財政基盤の強化と財政運営の都道府県単位化
○低所得者保険料軽減の拡充や保険者支援分の拡充等により、財政基盤を強化。併せて、都道府県単位
の共同事業について、事業対象をすべての医療費に拡大
(2)短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大
○短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大に併せ、被用者保険の適用拡大を実施
- 28 -
(3)長期高額医療の高額療養費の見直しと給付の重点化の検討
○高額療養費については、保険者が共同で支え合う仕組みや給付の重点化を通じて、高額療養費の改善
に必要な財源と方策を検討する
(4)高齢者医療制度の見直し
○高齢者医療制度改革会議のとりまとめ等を踏まえ、高齢者医療制度の見直す
○高齢者医療の支援金を各被用者保険者の総報酬に応じた負担とする措置について検討
○70 歳以上 75 歳未満の方の患者負担について、世代間の公平の観点から見直し行う
(5)国保組合の国庫補助の見直し
○保険者間の公平確保の観点から、所得水準の高い国保組合に対する国庫補助を見直す
(6)介護1号保険料の低所得者保険料軽減強化
○65 歳以上の加入者の保険料(1号保険料)の低所得者軽減を強化
(7)介護納付金の総報酬割導入等
○介護費用を公平に負担する観点から、介護納付金の負担を医療保険者の総報酬に応じた按分方法とす
ること(総報酬割の導入)を検討。また、現役世代に負担を求める場合には、負担の公平性などの観
点に立ち、一定以上の所得者の利用者負担の在り方など給付の重点化についても検討
(8)その他介護保険の対応
○軽度者に対する機能訓練等重度化予防に効果のある給付への重点化を実施
○第6期の介護保険事業計画(平成 27 年度~平成 29 年度)の施行も念頭に、介護保険制度の給付の
重点化・効率化とともに、予防給付の内容・方法の見直し、自立支援型のケアマネジメントの実現に
向けた制度的対応を検討する。
(9)後発品のさらなる使用促進、医薬品の患者負担の見直し等
○後発医薬品推進のロードマップを作成し、診療報酬上の評価、患者への情報提供、処方せん様式の変更、
医療関係者の信頼性向上のための品質確保等、総合的な使用促進を図る。
○イノベーションの観点にも配慮しつつ、後発医薬品のある先発医薬品の薬価を引き下げ
○医薬品の患者負担の見直しの検討
(10)その他効率的で高機能な医療提供の推進
○少子高齢化の進行、経済状況の変化、厳しい保険財政・国家財政という状況の下で、サービス・給付の
充実のみならず、効率化できるものは効率化し、負担の最適化を図り、国民の信頼に応え得る高機能で
中長期的に持続可能な制度を実現
○予防医療、チーム医療、本人・家族の意思を尊重した適切な医療の提供を推進する。
(11)総合合算制度
○税・社会保障の負担が増加する中で、低所得者の負担軽減により所得再分配機能を強化。
○そのため、制度単位ではなく、医療・介護・保育等に関する自己負担の合計額に上限を設定する「総合
合算制度」を創設
(12)難病対策
○長期高額医療の高額療養費の見直しのほか、難病患者の長期かつ重度の精神的・身体的・経済的負担を
社会全体で支えるため、医療費助成について、法制化も視野に入れ、助成対象の希少・難治性疾患の範
囲の拡大を含め、より公平・安定的な支援の仕組みの構築を目指す。
○治療研究、医療体制、福祉サービス、就労支援等の総合的施策の実施や支援の仕組みの構築
- 29 -
(2)産業振興
ここまで、医療・介護・健康関連分野における政策の変遷、及び今後のサービスのあり方とこ
れを支える提供体制のあり方についてみてきた。以下、医療・介護・健康関連分野における産業
振興策の推移について概観する。
①
医薬品及び医療機器産業振興(厚生労働省を中心に)
ア
医薬品産業ビジョン(平成 14 年 8 月:厚生労働省)
医療品産業ビジョンは、「生命科学の飛躍的発展」、「グローバル化の進展と国際競争の激
化」、
「急速な少子高齢化の進展に伴う医療費の増大」、
「医療に対する国民意識の変化」とい
った医療品産業を取り巻く環境変化に対し、現状や今後の課題、産業の将来像を提示し、企
業または国が具体的に進めていくべき道筋を提示したものである。このなかでは、2002 年
から 2006 年までを「イノベーション促進のための集中期間」と位置付け、厚生労働省とし
て実施する具体的施策を提示している。
図 1-2-2 医療産業政策の基本的考え方
(資料:厚生労働省「医薬品産業ビジョンの概要(平成 14 年 8 月)
」より抜粋)
イ
医療機器産業ビジョン(平成 15 年 3 月:厚生労働省)
アでみた医薬品同様に、医療機器についても 2003 年に医療機器産業の振興策として、産
業ビジョンが示されている。
医療機器産業ビジョンでは、「医療工学技術の高度化と最先端医療への応用の進展」、「世
界的な競争の激化」、
「増大する患者安全への対応の必要性」、
「保険医療における医療機器の
評価の影響」
、
「医療に対する国民意識の変化」といった医療機器産業を取り巻く環境変化に
対し、我が国の医療機器産業の現状と課題を把握したうえで、今後の医療機器政策の基本的
- 30 -
考え方と、具体的な取り組みについて定めており、2003 年から 2007 年を「イノベーション
促進のための集中期間」と位置付け、厚生労働省として実施する具体的施策を提示している。
図 1-2-3 特定分野に限定した重点的支援のあり方
(資料:厚生労働省「医療産業ビジョンのポイント(平成 15 年 3 月)」より抜粋)
図 1-2-4 国際競争力強化のためのアクション・プラン
(資料:厚生労働省「医療産業ビジョンのポイント(平成 15 年 3 月)」より抜粋)
ウ
新医薬品産業ビジョン(平成 19 年 8 月:厚生労働省)
アの医療品産業ビジョン策定から 5 年が経過し、「生命科学の進展」、
「グローバル化の進
展と本格的な国際競争」
、「M&A 増加や資本市場の変化」、
「製薬関連企業の機能分化」など
医療機器産業を取り巻く新たな環境変化が生じるなか、我が国医薬品産業の国際競争力の伸
- 31 -
び悩みなど、我が国医薬品産業は危機的状況に瀕しているとの認識に基づき、新たに 10 年
後の産業の将来像を見据えたうえで、政府として取るべき施策についての考え方と具体的内
容を定めたものである。
図 1-2-5 医療品産業政策の基本的考え方
(資料:厚生労働省「新医薬品産業ビジョンの概要(平成 19 年 8 月)」より抜粋)
エ
革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略(平成 19 年 4 月:厚生労働省、文部科
学省、経済産業省)
革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略は、医薬品・医療機器産業を日本の成長
牽引役へ導くとともに、世界最高水準の医薬品・医療機器を国民に迅速に提供することを目
標とし策定された政策パッケージである。この戦略は、開発・審査段階はもちろん薬価・診
療報酬制度までを対象とする、つまり、上市に至る過程を支援する一貫した政策パッケージ
となっている。なかでも、医療機器については、材料の標準化、医療機器産業への参入促進、
審査人員の増員、審査方式の合理化などが進められるとしている。
オ
医療イノベーション5か年戦略(平成 24 年 6 月:医療イノベーション会議)
医療イノベーション5か年戦略は、医療関連分野を成長産業に育成し、また世界最高水準
の医療を国民に提供(患者目線での医療の質向上)することにより「我が国の持続的な経済
成長と健康長寿社会の実現」を目指す政策パッケージであり、これまでの「革新的医薬品・
医療機器創出のための5か年戦略」を継承・発展させたものである。平成 24 年 6 月に発表
- 32 -
され、現在、この医療イノベーション5か年戦略のもと、医薬品・医療機器産業の振興が図
られている。
医療イノベーション5か年戦略における主な取り組み
Ⅰ 革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略
●「日の丸」印の医薬品・医療機器の創出と産業競争力強化
①国内のアカデミアへの技術開発支援の充実・重点化によるシーズ開発力の強化
②国内のアカデミアの優れた基礎研究の成果を実用化研究につなげるためのオールジャパン体制に
よる橋渡し機能強化
- 新薬(バイオ医薬品を含む)・医療機器の開発に必要なインフラの整備
- ベンチャーをはじめとする周辺産業の育成等
③国際水準の臨床研究・治験環境の強化(臨床研究中核病院等の機能強化を含む)
④イノベーションを促す承認審査や保険償還等の制度・運用の強化
- PMDAの審査体制の強化
- 医療機器の特性に鑑みた規制のあり方の検討
- レギュラトリーサイエンスの推進(国衛研の強化等)
- イノベーションの適切な評価等
⑤企業競争力の強化
- 高度なものづくり技術を有する異業種・中小企業の新規参入促進
- 研究開発税制の拡充
- 医療機器の国際標準取得
- 医療技術・サービス等が一体となった海外進出による海外への市場拡大の推進等
●患者目線にたった医薬品・医療機器提供体制の整備
①医療上必要な世界標準の医薬品・医療機器のラグの解消
②極めて患者数の少ない疾患治療薬・医療機器の開発支援強化
Ⅱ 世界最先端の医療実現のための5か年戦略
(個別化医療)
①研究の推進
②個別化医療推進のためのインフラ整備(バイオバンク、医療ICTインフラの強化、メディカルイン
フォマティクス機能強化等)
③個別化医療の普及に必要な制度・運用の強化
④個別化医療を支える新たな医薬品・医療機器の開発推進
(再生医療)
①研究資金の重点化・拡充
②再生医療推進のために必要な細胞のストック機能・細胞培養施設などのインフラ整備(ストックする
細胞について我が国発の規格・標準の確立を含む)
③再生医療を迅速に実用化させるための制度・運用の強化
④再生医療製品の開発促進(重点技術に集中して関係省庁が連携して成功事例を生み出す仕組み構築)
と製造・販売産業等の振興
(その他の医療イノベーション推進のための横断的施策)
①大学、ナショナルセンター等が連携したオールジャパンの研究連携体制の構築
②知的財産戦略の強化
③情報通信技術の活用・ネットワーク化による医療サービス・技術の高度化
④医療イノベーションを担う人材の育成
- 33 -
②
新たな産業としての機器・サービス振興(経済産業省を中心に)
ア
新産業創造戦略(平成 16 年 5 月:経済産業省)
新産業創造戦略においては、少子高齢化といった社会の要請・変化に対応した市場ニーズ
にこたえる産業群7分野のうちの一つとして、
「健康・福祉・機器・サービス」分野を設定。
2010 年の市場規模を約 75 兆円(2002 年は約 56 兆円)、雇用規模を約 750 万人(同 551 万
人)と展望している。
なかでも、
「健康サービスの総合的育成」、
「電子カルテの普及など医療の情報化(e-Japan
重点計画)」、「バイオテクノロジーを活用したテイラーメイド医療や予防医療、再生医療の
実現・普及」
、
「我が国の優れた製造技術を活かした医療・福祉機器の開発・普及」の5つを
重点政策として掲げ、産業振興を図るとしていた。
イ
新産業創造戦略 2005(平成 17 年 6 月:経済産業省)
平成 16 年に策定された新産業創造戦略の7つの戦略分野の強化やさらなる具現化を目的
として策定された戦略。前回の戦略策定後「健康・福祉・機器・サービス」分野において、
政府全体での健康増進・予防への取り組み強化(「健康フロンティア戦略」策定(平成 16 年
5 月)が策定されたことへの対応等を図っている。ポイントとして、
「予防や健康増進を含め
た効率的な包括的地域ケアシステムの構築」、「専門職大学院等における人材育成の実施」、
「(技術戦略マップに基づいた)研究開発の進展」、「
(臨床検査基準や医療情報データなど)
基盤整備のさらなる推進」が今後の取り組み内容として示された。
ウ
医療・福祉機器産業施策として実施されてきた事業
新産業創造戦略及び新産業創造戦略 2005 をうけ、平成 18 年度以降、経済産業省の医療・
福祉機器産業施策として、下記のような様々な事業が実施されてきた。以下では各事業のタ
イトルのみを提示する。
・地域医療情報連携システムの標準化及び実証事業(平成 18 年度)
・医療機関における生産性向上への取組に関する実態調査(平成 19 年度)
・医療機器ガイドライン策定事業(平成 19 年度、20 年度)
・地域見守り支援システム実証事業(平成 21 年度)
・健康情報活用基盤構築のための標準化及び実証事業(平成 20 年度~22 年度)
・課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院・企業間の連携支援事業(平成 22 年度、
23 年度)
・課題解決型医療機器等開発事業(平成 24 年度)
エ
医療産業研究会報告(平成 22 年 6 月)
平成 22 年 6 月に示された医療産業研究会報告では、医療分野の基盤強化や市場拡大に向
け、海外との競争力強化も踏まえた具体的施策として、医療生活産業の振興の必要性などが
指摘された。これに対応するため、「医療生活産業の振興」「医療の国際化」「医療情報のデ
ジタル化・標準化」の 3 つが具体的施策として示され、そのうち「医療生活産業の振興」は、
- 34 -
医療を産業の側面からとらえた上で、「公的保険の枠内で全てを賄おうとした場合には期待
できない、自由な発想や工夫された効率性、自律的に顧客のニーズに応える能力を持つサー
ビス事業の創出」が必要であり、その上で、病院と自宅の間を埋めるサービス機能を持つ“准
病院”の役割を担う機関など、人生の QOL を維持するための医療・周辺サービスの振興や、
外食産業やフィットネスなどの医療とは必ずしも密接な関わりを持たない産業などとの連
携、ノウハウの応用を提唱している。
図 1-2-6 「医療生活産業」のビジネスイメージ
(資料:医療産業研究会「医療産業研究会報告書(平成 22 年 6 月)
」より抜粋)
- 35 -
1-3
国や他自治体の先行調査・取り組み事例
本節では、これまで見てきた新成長戦略等による取扱い、及び医療・介護及び健康関連分野
における取り扱いのほかに、わが国及び他都市の医療・介護・健康関連産業に関連する施策状
況の取組について記載する。
(1)総合特区制度及び産業クラスター計画における位置づけ
①
総合特区制度
国は新成長戦略を実現するための政策課題解決の突破口を目指すことを目的に、国際競争
力の強化、地域の活性化のための包括的かつ先駆的な取組を行う実現可能性の高い地域に対
して、規制の特例措置、税制・財政・金融上の支援措置などにより総合的に支援する制度で
あり、新成長戦略の「21 の国家戦略プロジェクト」として、位置づけられた。
この制度は二つに分類されており、一つ目は「国際戦略総合特区」であり、わが国の経済
成長のエンジンとなる産業・機能の集積拠点の形成を目的としており、現在は 7 特区が認定
されている。もう一つは「地域活性化総合特区」であり、地域資源を最大限利用した地域活
性化の取組による地域力の向上として、現在、32 特区が認定されている。そのうち、医療・
介護・健康分野関連の特区については、国際戦略総合特区が 3 特区、地域活性化総合特区が
10 特区(医療関連:7 特区、福祉・健康分野:3 特区)が認定されている(表 1-3-1)。
表 1-3-1 医療・介護・健康分野に関連する総合特区一覧
【国際戦略総合特区:医療関連】
申請主体名
特区名
目標
茨城県、つくば市、
国立大学法人筑波大学
つくば国際戦略総合特区~つく
ばにおける科学技術の集積を活
用したライフイノベーション・グリ
ーンイノベーションの推進~
つくばを変える新しい産学官連携システムを構築すると
ともに4つの先導的プロジェクトに取り組み、5年以内に
目に見える成果を上げ、ライフイノベーション・グリーンイ
ノベーション分野で我が国の成長・発展に貢献する。
神奈川県、横浜市、
川崎市
京浜臨海部ライフイノベーション
国際戦略総合特区
個別化・予防医療時代に対応した、グローバル企業によ
る革新的医薬品・医療機器の開発・製造と健康関連産
業の創出。
京都府、大阪府、
兵庫県、京都市、
大阪市、神戸市
関西イノベーション国際戦略
総合特区
関西からの医薬品・医療機器の輸出を増加させ、世界
市場でのシェアを倍増。
関西の電池生産額を大幅増。
出所:首相官邸・総合特別区域推進本部ホームページ資料
- 36 -
【地域活性化総合特区:医療関連】
申請主体名
特区名
目標
ふじのくに先端医療総合特区
がん医療の飛躍的発展(革新的ながん診断装置・診断
薬の開発と世界展開)。
地域企業の活性化と雇用創出(医療健康産業クラスタ
ーの形成)。
大阪府、泉佐野市
国際医療交流の拠点づくり
「りんくうタウン・泉佐野市域」
地域活性化総合特区
世界と結ばれる 関西国際空港の目の前 という立地特
性を最大限に活かし、国内外の人々が訪れ、交流する、
魅力と活力ある地域づくりを目指す。
特区指定を起爆剤に、地域の資源を活かした取組みを
より活発にし、本地域をはじめ、大阪・関西の活性化を
図る。
国際医療交流の推進や外国人訪日の回復・促進につな
げ、わが国の新成長戦略の実現に寄与する。
大分県、宮崎県
東九州メディカルバレー構想特区
(血液・血管医療を中心とした医
療産業拠点づくり特区)
東九州地域において血液や血管に関する医療を中心に
医療機器産業の一層の有責を図ることにより、地域の
活性化とアジアに貢献する医療産業拠点を目指す。
我が国全体の医療機器産業の成長と世界市場における
地位の上昇に寄与する。
広島県
尾道地域医療連携推進特区
ICTを活用した発展的な地域医療・介護連携による在宅
医療等の充実・強化を目指す。
香川県
かがわ医療福祉総合特区
遠隔医療システムの積極的な導入や医療従事者がより
活躍できる環境整備により、全ての県民が、常に質の高
い医療・福祉を享受し、地域で安心して暮らせる香川県
の実現人口減少と高齢化に伴う医療、福祉の課題を克
服する全国的なモデルを構築。
三重県
みえライフイノベーション
総合特区
画期的な医薬品、医療機器等を創出するとともに、企業
や研究機関の立地、県内への研究開発資金の投入、雇
用の拡大等によって、県内経済の活性化を生み出し、ラ
イフイノベーションに寄与する地域になることを目指す。
徳島県
先導的な地域医療の活性化
(ライフイノベーション)総合特区
「地域医療の再生」と「糖尿病の克服」により先導的な地
域医療の活性化を図る。
静岡県
出所:首相官邸・総合特別区域推進本部ホームページ資料
- 37 -
【地域活性化総合特区:福祉・健康関連】
申請主体名
特区名
目標
柏市
柏の葉キャンパス「公民学連携に
よる自律した都市経営」特区
トータルヘルスケアの実施による地域高齢者の健康維
持・状態改善(「都市経営」、「地域エネルギー」、「地域
の健康・介護」の3軸のうち、「地域の健康・介護」部分)
富山県
とやま地域共生型福祉推進特区
あかちゃんからお年寄りまで、年齢や障害の有無にか
かわらず、住み慣れた地域で生活が継続できる「共生社
会」の実現。
健幸長寿社会を創造するスマー
トウエルネスシティ総合特区
自律的に「歩く」を基本とする『健幸』なまち(スマートウェ
ルネスシティ)を構築することにより、健康づくりの無関
心層を含む住民の行動変容を促し、高齢化・人口減少
が進んでも持続可能な先進予防型社会を創り、高齢化・
人口減少社会の進展による地域活力の沈下を防ぎ、も
って、地域活性化に貢献することを目標にする。
伊達市、新潟市、三条
市、見附市、岐阜市、高
石市及び豊岡市
出所:首相官邸・総合特別区域推進本部ホームページ資料
②
産業クラスター計画(2001 年度~2009 年度)
経済産業省では全国で新しい産業クラスターの形成を目的とした「産業クラスター計画」
を 2001 年度から 2009 年度までの 9 年間実施し、地域の中堅・中小企業、ベンチャー企業や
大学、研究機関等とのネットワーク形成の取組等に対する支援を行ってきた。施策の時期と
して、2001 年度から 2005 年度を第Ⅰ期「産業クラスターの立ち上げ期」として、産業クラ
スターの基礎となる「顔の見えるネットワーク」の形成、2006 年度から 2009 年度を第 2 期
「産業クラスターの成長期」として、ネットワークの形成や事業を具現化を推進した。
現在では、第 3 期「産業クラスターの自律的発展期」として、地域の経済産業局と民間の
推進組織が一体となって推進してきた 18 のプロジェクト(2009 年度時点)は、民間や各自
治体等が中心とした地域主導型として活動されており、そのうち、医療・介護・健康関連は
10 のプロジェクトが引き続き行われている(表 1-3-2)。
表 1-3-2 医療・介護・健康関連の産業クラスター計画一覧(2009 年度時点)
担当部局
北海道
プロジェクト名
北海道地域産業クラスター計画
東北
TOHOKUものづくりコリドー
関東
首都圏バイオネットワーク
中部
東海バイオものづくり創生プロジェクト
北陸ものづくり創生プロジェクト
近畿
関西バイオクラスタープロジェクト
中国
次世代中核産業形成プロジェクト
四国
四国テクノブリッジ計画
九州
九州地域バイオクラスター計画
沖縄
OKINAWA 型産業振興プロジェクト
出所:経済産業省資料
- 38 -
(2)他都市で展開されている主な施策
現在の国家戦略の一つである「日本再生戦略」において、医療・介護・健康関連分野は、重
点分野の一つとされている。また、今後、各地域で老年人口の増加が見込まれていること等か
ら、多くの自治体でも医療・介護・健康関連産業の育成等を産業振興と掲げている地域も多く
みられる。本節では他都市で実施されている医療・介護・健康関連分野の施策について把握す
る。
①
産業振興関連
各政令指定都市別の産業振興計画で「医療・介護・健康産業」についてみると、多くの自
治体で記載されている。たとえば、札幌市では「札幌市産業振興ビジョン」の中で、5つの
重点分野の一つとして、
「健康・福祉」を位置づけており、バイオテクノロジーを活かした健
康関連産業の振興を掲げている。また、仙台市や川崎市、京都市、堺市、岡山市等でも産業
振興計画の中で、医療や介護、健康産業を重点すべき産業の一つとして掲げており、それぞ
れ基本方策や施策について記載されている。
表 1-3-3 他都市の産業振興計画に記載されている医療・介護・健康産業の方向性について
市区町村名(計画名)
施策の方向性等
キーワード
バイオテクノロジーを活かした健康関連産業
の振興
医療・医薬分野、機能性食品、バイオテク
ノロジー
健康意識の高まりに伴う関連サービス
産業の振興
健康増進、ヘルスツーリズム
福祉・介護分野における研究開発の促進
新技術・新製品、製造業の振興、高齢者
向けのビジネス、建設業の振興
福祉・介護関連サービス産業の振興と
人材育成の推進
教育機関や福祉関連団体等との連携
健康福祉産業の創出
仙台フィンランド健康福祉センター、IT
福祉産業の振興
かわさき基準(KIS)、福祉製品
戦略的な産業立地政策の展開
ライフサイエンス等の先端産業
静岡市
(産業振興プラン)
新産業クラスターの形成
機能性食品、フーズ・サイエンスヒルズプ
ロジェクト
名古屋市
(産業振興ビジョン)
なごやサイエンスパーク事業の推進
医療・介護等にかかる先端技術の
研究開発
バイオ・ライフサイエンス分野における
医工薬産学公連携支援事業の推進
京都大学先端医療機器開発・臨床研究セ
ンター、医療技術に関する研究開発活動
バイオ・ライフサイエンス(医療・介護・健康)
関連産業の育成
京都バイオシティ構想、予防医療分野や
介護分野等での研究開発
堺市
(産業振興アクションプラン)
医療・健康・福祉サービス分野等を中心に、
生産性向上や先進的サービスの創出、ソー
シャルビジネスの育成等を支援
サービス品質、経営効率、顧客満足度の
向上、医療・健康・福祉サービス分野等に
おける先進的サービス
岡山市
(産業振興ビジョン)
医療、健康・福祉関連産業育成
メディカルネット岡山、普及啓発活動、需
要者側と供給者側との交流や連携促進
札幌市(産業振興ビジョン)
仙台市
(経済活性化・雇用推進プラン)
川崎市
(かわさき産業振興プラン)
京都市
(新価値創造ビジョン)
出所:各種ホームページ資料より作成
- 39 -
②
医療・介護関連について個別計画や構想がある主な自治体
医療・介護関連について①の産業振興計画よりも下位計画で個別に計画されているものや
構想があるものについてみると、川崎市、神戸市や福岡市が挙げられる。
表 1-3-4 他都市における医療・介護・健康分野の個別計画や構想がある自治体
市区町村名(計画名等)
目的
キーワード
川崎市
(かわさき福祉産業振興ビジョン)
市内に蓄積された基盤技術等を活用し福祉製
品(用具・サービス・まちづくり等)を創出するた
め、これまでの福祉産業振興施策を総括し、新
たな福祉産業振興指針
「かわさき基準」、研究開発フィ
ールド及びショウルーム
神戸市
(神戸医療産業都市構想)
高度医療技術の研究・開発拠点を整備し、医療
関連産業の集積を図ることで、より健やかで活
力ある神戸にしていくためのプロジェクト
ポートアイランド、高度医療技術
福岡市
(ふくおか健康未来都市構想)
21 世紀の創造的なモデル都市づくりを目指すア
イランドシティにおいて、「健康で質の高いサー
ビスが充実した生活の実現」等を目指す。
高度医療機関
出所:各種ホームページ資料より作成
ア
川崎市
川崎市では今後の高齢化社会の進展を踏まえた上で、発展できる産業分野として「福祉産
業」を挙げており、新総合計画における「福祉・生活産業の振興」として「かわさき福祉産
業振興ビジョン」を平成 19 年度に策定している。
当ビジョンにおける方向性については、下表の通りである。
表 1-3-5 「かわさき福祉産業振興ビジョン」に基づく施策の方向性
項目
運営組織について
施策の方向性
協議会の設置と(仮)かわさき福祉開発支援センターの開設
利用者の状況及び生活基本動作(アクティビティ)ごとに配
慮すべき事項を示した基準の作成
「かわさき基準」について
充実更新(WEB の活用)
教育機関や福祉関連団体等との連携
福祉用具開発モニターについて
福祉製品モニターの設置
(仮) KIS ( Kawasaki Innovation Standard)
マークについて
(仮)KIS(Kawasaki Innovation Standard)マークのデザイン
市民への認知度向上について
WEB や展示による周知
モデルフィールドによる「かわさき基準」の周知と実験
研究機関との連携による先進的なノウハウの提供
研究開発フィールド及びショウルームについて
京都大学先端医療機器開発・臨床研究センター、医療技術
に関する研究開発活動
常設展示の設置
福祉産業のしくみづくりの調査・研究
出所:川崎市「かわさき福祉産業振興ビジョン」
- 40 -
その中で、福祉用具の開発を促進させるため、
「自立支援」を基本コンセプトとした理念に
基づき、利用者にとって最適な福祉製品(福祉用具、サービス、まちづくりなど福祉産業か
ら提供される製品)のあり方を具体的に示した、川崎市独自の基準である「かわさき基準
(KIS)」を作成している。
工業都市である川崎市においては、中小企業も含め、厳しい経営状況にある企業が少なく
ない。また、一方で少子高齢化も進んでおり、在宅を中心に介護を行うという流れの中で、
技術によって人力の不足を補う必要がある。そうした考えに基づき、KIS は創出された。
「かわさき基準」の目的としては、
「理念」や「基準(ガイドライン)
」といった利用者の
満足度の高い福祉製品の目標を提示することにより、福祉産業に参入する企業にとって競争
力の高い福祉製品開発を支援することができ、川崎市の基盤技術を活用した川崎発福祉製品
の創出を促進させることにある。また、促進のみならず、
「かわさき基準」に基づくモニタリ
ングの実施やその結果のフィードバックや評価・認証によるブランド力の付与などにより、
既存施策の課題であった「研究開発」、
「販路開拓」の支援も実施している。平成 20 年度から、
川崎市では「かわさき基準」の認証製品の公募が毎年行われており、平成 23 年度までで 61
製品が認証されている。
また、市内の中小製造業者に対し、製品開発への補助として、施策の部分を「委託事業」
として民間に発注するという取り組みも行われている。これにより、事業者に対して研究開
発費というリスクを軽減することができ、実際に委託事業から製品化につながった事例も存
在する。
介護器具における先進地域は欧州だが、体格差や標準的な家の大きさの問題から、アジア
人にとって使いやすい大きさの商品として、今後高齢化の進行する中国や韓国へ進出できる
可能性があると考られることから、海外市場への進出についてもサポートを行っている。
- 41 -
イ
神戸市
神戸市では、阪神大震災後の神戸経済の活性化を目的に、ポートアイランド第 2 期を中心
に、高度医療技術の研究・開発拠点の整備による医療関連産業の集積を図ることを目的に「神
戸医療産業都市構想」が平成 10 年から開始された。この構想は「知的クラスター創生事業」
や「先端医療開発特区」
、「関西イノベーション国際戦略総合特区」など、国の制度にも位置
づけられており、国家的なプロジェクトとして進められている。
総合特区の認定や、スパコン「京」の設置などが医療産業都市の計画に好影響を与えてい
る。現在では大手製薬メーカーの創薬部門の立地が進んでいる。医療産業都市の強みとして、
「臨床の場」を持っていることが挙げられ、現在では iPS 細胞の実用化に向けた研究も進め
られている。
本構想の目標としては、主に「神戸経済の活性化」、「市民の健康・健康福祉の向上」、「国
際社会への貢献」の 3 点があげられている。構想の実現に向けて、中核施設の整備・誘致や、
先端医療分野の研究開発や実用化支援、進出企業や地元企業への支援、ベンチャー創出など
の事業化支援、人材育成、情報発信などを充実させている。
表 1-3-6 神戸医療産業都市構想の推移
年 月
内 容
平成 10 年 10 月
神戸医療産業都市構想懇談会設置
平成 11 年 8 月
神戸医療産業都市構想研究会設立
平成 13 年 8 月
「都市再生プロジェクト」に選定
平成 14 年 4 月
「知的クラスター創成事業」に選定
平成 15 年 4 月
「先端医療産業特区」に認定
平成 15 年 4 月
先端医療センターの開業
平成 17 年 8 月
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興会議設置
平成 18 年 6 月
「地域再生計画」に認定
平成 19 年 3 月
次世代スーパーコンピュータの立地が決定
平成 19 年 6 月
「知的クラスター創成事業(第Ⅱ期)」に選定
平成 20 年 11 月
「先端医療開発特区(スーパー特区)」に選定
平成 24 年 3 月
「関西イノベーション国際戦略総合特区」第一次計画の認定
出所:神戸市ホームページ
平成 24 年 10 月末現在における進出企業・団体数は 221 社・団体と、医療関連の産業集積
が順調に進んでいる。
現状においては、中核施設として、
「先端医療センター」や「理化学研究所 発生・再生科
学総合研究センター」、
「臨床研究情報センター」など 14 の施設が稼動している。企業誘致策
としては、固定資産税と都市計画税、事業所税等の税制面での優遇措置や、設備投資や地元
雇用を行う際の補助金制度などを実施しているほか、トータルサポートセンターを設置して
おり、異業種の企業が医療分野で事業を興す際のコンサルティングも実施している。
医療産業都市では「売れるものづくり」を重視しており、出口戦略を見据えた商品開発を
- 42 -
進めている。医療機器メーカーOB のアドバイス等を行い、国内で販売を展開しやすいよう
な形に持っていく支援に加え、中小企業が製造した製品を「神戸バイオメディクス株式会社」
が販売するという取り組みも行っている。
表 1-3-7 神戸医療産業都市に進出している主な企業
企業名
業 種
フクダ電子
医療用電子装置等の研究・開発、販売及びメンテナンス等
アスビオファーマ(第一三共クループ)
医薬品の研究開発
三菱重工業
高精度四次元放射線治療装置の開発
村田製作所
ヘルスケア用電子デバイスの研究開発
ニチイ学館
医療関連サービス
ウシオ電機
光技術を応用したバイオ・医療関連製品の開発
パナソニックヘルスケア
各種ヘルスケア機器の製造・販売
ノエビア
医薬部外品、化粧品等の研究開発・製造販売
出所:神戸市ホームページ
また、事業者ばかりでなく、市民にも医療産業都市の成果の恩恵が受けられるよう、市民
の参加を促すための「健康を楽しむまちづくり」が進められている。具体的な事業の例とし
て、
「市民 1,134 人を対象としたコホート研究」
(「都市型のコホート」としてのデータ活用)、
「ウォーキングサポートシステム」
(登録した市民に対し、自身の歩いた実績をフィードバッ
ク)を実施している。
- 43 -
ウ
仙台市
仙台市では、フィンランド共和国と提携して、フィンランドと日本の企業・大学が連携し、
高齢者の自立に役立つ健康福祉機器・サービスの開発・提供に関するプロジェクト(仙台フ
ィンランド健康福祉センタープロジェクト)を平成 14 年に立ち上げ、平成 17 年から実施、
市内の地域の福祉レベルの向上を図るとともに、国際的な健康福祉関連産業の創出を目指し
ている。
具体的には、仙台市青葉区に立地している「仙台フィンランド健康福祉センター
(S-FWBC)」を拠点に、仙台やフィンランドの企業や大学、研究機関が高齢者の自立した生
活を実現するための福祉機器・サービスの研究・開発支援を実施している。また、開発した
機器・サービスの事業化を目的に、特別養護老人ホーム(せんだんの館)に福祉機器・サー
ビスを提供した上で、利用者からのニーズや評価を踏まえた上で、商品・サービスの事業化
を支援している。
出会いの場、実験の場、実証の場として S-FWBC 研究開発館を設け、研究支援、開発支援、
事業開発・起業支援、教育・研修、ネットワーク形成等の事業を行っている。開発支援では、
エビデンスに基づく開発、事業開発・企業支援ではスペースの提供のほか、フィールドテス
トのためのフィールドの紹介・仲介を行っている。なお、中小企業がマス・マーケットに対
応するには限界があり、すき間(ニッチ)が主なターゲットになるという考えが前提となっ
ている。
公的機関として支援する産業は、高齢者の QOL の向上、ADL の改善に寄与し、自立、自
律を支える産業を対象にすべきという考えに基づき、S-FWBC ではエビデンスに基づく製品
開発を目指している。
図 1-3-1 仙台フィンランド健康福祉センターにおける研究から事業化のフロー
出所:仙台フィンランド健康福祉センターホームページ
- 44 -
エ
大阪市
大阪市においては、ロボットテクノロジーや健康関連製品・サービス等の集積を活かし、
新産業を創出することを目的に、公益財団法人大阪市都市型産業振興センターの新産業創造
推進室(ヘルスチーム)が情報発信や開発パートナー(企業、研究機関)とのマッチング、
販路拡大等の支援を実施している。また、福祉・介護の機器や同関連サービス等の開発、既
存製品の改良を検討している企業に対して、相談窓口を設置し、企業に対する経営支援を行
っている。
オ
福岡市
福岡市では、福岡アイランドシティに平成 13 年から「健康で質の高いサービスが充実した
生活の実現」や「関連産業の集積による経済基盤の確立と雇用の創出」等、4つの構想を踏
まえた上で、
「ふくおか健康未来都市」の構想が進められてきた。
現状では「メディカルコア機能」、「福祉・居住機能」、「研究開発・ビジネス機能」の3つ
の機能を連携させながら、健康・医療・福祉関連施設と連携した健康で快適な居住環境の形
成と、次代を支える関連分野によるすそ野の広い産業の集積を図っている。
カ
その他(政令指定都市以外)
政令指定都市以外の自治体の施策については、都道府県レベルでは多くの自治体がみられ
る。例えば、青森県では「青森県ライフイノベーション創造戦略」を策定し、医療・介護・
健康分野の産業振興の強化に取り組んでいるほか、福島県でも 2005 年度から「うつくしま
次世代医療産業集積プロジェクト」を実施しており、産学官の連携により医療機器関連分野
の産業振興と集積を図っている。また、岡山県(メディカルテクノおかやま)、三重県(みえ
メディカルバレープロジェクト)等でも実施している。
- 45 -
③
健康関連分野ついて取組を行っている自治体について
ア
柏市
柏市では、都市部において進む超高齢化の中でのまちづくりのあり方の検証や高齢者が安
心して元気に暮らすことができるまちづくりの具体化を目的に、東京大学高齢社会総合研究
機構及び独立行政法人都市再生機構とともに三者で「柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会」
を平成 21 年 6 月に発足した。
本研究会におけるまちづくりの方針としては、超高齢・長寿社会に対応したまちづくりの
観点から「いつまでも在宅で安心した生活が送れるまち」
「いつまでも元気で活躍できるまち」
の 2 つを大きな軸としており、その方針の実現のため、
「地域包括ケアシステムの具現化」と
「高齢者の生きがい就労」に取り組む事を目標としている。
「生きがい就労」は、ボランティアではなく、最低賃金を守ってもらえる就労を目指して
いる。そのうち、「高齢者の生きがい就労」(リタイア層が慣れ親しんできた「仕事・就労」
というかたちをとりつつ、セカンドライフの要望に応じたフレキシブルな働き方を可能に、
同時に、働くことで地域の課題解決に貢献できる場)については、農業、生活支援、育児、
地域の食の 4 分野 8 事業に対して、高齢者を雇用し、知識を活用するプロジェクトであり、
平成 23 年から段階的に実施している。
図 1-3-2 高齢者の生きがい就労事業の全体像
出所:柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会「長寿社会のまちづくり」
- 46 -
表 1-3-8 「生きがい就労事業」における8事業の内容
事 業
内 容
休耕地を活用した農業(農業)
ミニ野菜工場(農業)
屋上農園(農業)
生活支援の課題を高齢者の就労で
解決(生活支援)
放課後の子どもの居場所確保
(育児)
子育て支援センター創設(育児)
保育・学童保育・教育の充実のため
の出前講座(育児)
地域の食が抱える課題を高齢者の
就労で解決(地域の食)
農業者が集まって出資し、困りごと(土地の確保、人の確保、経営が不安定)を解
決する組合組織を創設する。
高齢者は、農業者の事業規模拡大に伴う農業、組合組織で就労する。
地域の空きスペースに、「ミニ野菜工場」また建物の屋上を利用した、農園事業を
創造し、高齢者を雇用する。
豊四季台地域を中心に、介護保険対象外の生活支援サービス(掃除・洗濯・外出
支援・御用聞き等)や、元気高齢者に対する生活を充実させるサービス、現役世
代(特に子育て世代)を対象とした、負担となる家事のサポートサービス(子ども
の送迎等)等を適宜事業開始し、民間による生活支援サービスを高齢者の就労
で充実させる。
小学1年生~中学3年生の子どもを対象に、学習機会の提供まで実施する居場
所(かしわっこアカデミー)を整備する。
「子ども一時預かり所」や「子育て世代への子育て研修」等の事業について、認定
こども園内又はその隣接地にて実施。
高齢者による昔の遊びや高齢者による体験教室(農業・料理・おけいこ)、高齢者
による伝統芸教室を保育園や学童保育所、小学校において高齢者が講師として
実施。
高齢者のニーズに沿った食サービスの提供や地域コミュニティの構築の土台とし
て「コミュニティレストラン」を構築。
出所:柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会「長寿社会のまちづくり」
また、本市の産業振興計画である「柏市産業振興戦略プラン(2011~2014 年度)」でも、
重点プロジェクトの一つとして、
「農と食と健康のまち「柏」プロジェクト」が位置づけられ
ている。このプロジェクトの目的としては、地域の農業資源を活かし、地域でつながりを広
げていく事業の支援・促進させるとともに、農業資源の循環による農業の活性化、商業(小
売、飲食、サービス等)の活性化、消費者の健康増進にもつなげることである。また、前述
の動きを地域内外に情報発信することにより、域内消費、来訪者の増加による需要の拡大も
目指している。主な取組としては、
「食品関連産業展示会の出展」や「発信力のある食関連媒
体」があげられるが、その中でも「かしわサラダ・プロジェクト」の推進は産業の活性のみ
ならず、健康づくりにも着目した取組事例となっている。
表 1-3-9 かしわサラダ・プロジェクトの内容
事業
方向性
主な事業
かしわサラダ・プロジェクト
柏市食育推進計画の重点プロジェクトに位置づけられている事業で、全国的に見ても生産量の
多い柏の農産物である「かぶ」、「ねぎ」、「ほうれんそう」を活用し、これらの食材を使ったサラダ
を「かしわサラダ」と定義して、地産地消の推進と野菜摂食量の増加による健康づくりを推進。
多様な主体との連携を図りながら、産業振興の観点からも推進。
地元農産物を活用したレシピの普及
レシピなどを活用したPR事業(飲食店等でのメニュー導入)
関係機関、企業などの連携による地産地消の推進
出所:柏市「柏市産業振興戦略プラン」
- 47 -
図 1-3-3 かしわサラダ・プロジェクトの全体図
出所:柏市「柏市食育推進計画」
- 48 -
イ
札幌市
医療・介護・健康関連分野のうち、健康関連分野に特化した形で施策を行っている自治体
は政令指定都市レベルでは札幌市が挙げられる。札幌市では「札幌市産業振興ビジョン(平
成 23~32 年度)」の中で「札幌市経済の成長を牽引する重点分野」の一つとして「健康・福
祉」を掲げており、その施策の一つとして、
「健康意識の高まりに伴う関連サービス産業の振
興」を挙げている。
表 1-3-10 札幌市の健康サービス分野の取組
施策
方向性
事業
健康意識の高まりに伴う関連サービス産業の振興
近年、ウォーキングやフィットネスなど、健康づくりを目的としたスポーツが親しまれていることか
ら、健康増進という観点からのスポーツ振興を通した関連サービス産業の振興を図ります。ま
た、「健康」・「医療」・「癒し」などをテーマとした新たな観光スタイルとして、ヘルスツーリズムの
振興を図ります。
健康サービス産業推進事業(札幌市民を対象とした健康サービスの企画・運営に対する補助)
出所:札幌市「札幌市産業振興ビジョン」
ウ
富山市
富山市では、コンパクトなまちづくりの実現に向けた公共交通の活性化と歩行圏の形成を
推進している。そうした中において、富山市では富山大学等と共同で「社会資本の活性化を
先導する歩行圏コミュニティづくり」(研究代表者:富山大学大学院医学薬学研究部
中林
美奈子准教授)という研究開発プロジェクトを開始している。
研究の目的としては、都市中心部に居住する高齢者の歩行支援の課題を分析するともに、
富山市の中心市街地を対象に、歩行補助車を公共ツールとして活用することで、元気な高齢
者だけでなく身体が弱くなった高齢者も積極的に街に出て、生き生きと交流を楽しむことの
できる生活圏の形成を目指すことにある。
プロジェクト期間は 2011~2014 年度となっており、スケジュールと具体的なプロジェク
トについては以下の通りである。
- 49 -
図 1-3-4 開発プロジェクトの期間と内容
出所:社会技術研究開発センター「平成 23 年度研究開発実施報告書(社会資本の活性化を先導する歩行圏コミュニティづくり)」
エ
その他
新潟県では、健康・福祉・医療分野での付加価値の高いビジネスがより多く輩出されるこ
とを目的として、平成 18 年に「健康・福祉・医療新産業ビジョン~健康ビジネス連峰政策~」
を推進している。現状では、
「健康ビジネスのブランド化推進」や既に市場化された健康関連
商品(機器・食・サービス等)の販売拡大を目指すプロジェクトとしての「売れる仕掛けづ
くり支援」を中心に、健康分野に対する支援を実施している。
- 50 -
1-4
民間事業者等における取り組み状況
本節では、民間の事業者等が、医療・介護・健康関連分野においてどのようなビジネスへの
参入意欲を持っているか、またどのような分野での製品や商品開発等を行っているのかを把握
することを目的に情報の把握・整理を行った。
具体的には、経済産業省が民間企業等からの公募で実施している「医療・介護周辺サービス
産業創出調査事業」や厚生労働省が実施している「社会福祉推進事業」、福祉医療機構の「社会
福祉振興助成事業」において、どのような公募案件のテーマ設定がなされているのか、また、
どのような事業者がどのような提案を行っているのかについて状況を概観した。
(1)経済産業省事業の公募・採択状況
経済産業省では、公的保険サービスの周辺に存在する需要に応えるため、医療・介護サービ
スと連携した生活を支援するサービス産業の創出促進を目指し、
「医療・介護等関連分野におけ
る規制改革・産業創出調査研究事業(医療・介護周辺サービス産業創出調査事業)
」が実施され
ている。
事業は平成 22 年度から 24 年度までの実施となっているが、テーマ募集の際には、医療・介
護周辺サービスの創出が見込まれる領域として、主に表 1-4-1 の 4 点が設定されている。なお、
平成 23 年度の事業では、この 4 つのテーマ設定に関連し、表 1-4-2 のような事業テーマが採択
されている。内容の特徴別に「医療機関主体サービス」「医療・介護・民間連携サービス」「保
険者機能強化に向けたサービス」「有資格者の活用」「産業創出に向けた基盤整備」と分類され
るが、これらから、医療法人、財団、株式会社など、様々な主体が医療・介護サービス産業の
創出を目指し活動していることがうかがえる。
表 1-4-1 「医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出調査研究事業(医療・介護周辺
サービス産業創出調査事業)」におけるテーマ設定
1)健康状態を保つサービス、生活習慣の改善に資するサービス(疾病予防、糖尿病重症化予防
等の疾病管理)
2)介護が必要のない状態を維持するためのサービス(介護予防)
3)医療・介護から日常生活への復帰をサポートするサービス(リハビリ・生活支援)
4)必要な医療・介護を受けつつ、在宅での生活を支援するサービス(生活支援・看取り)
- 51 -
表 1-4-2 「医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出調査研究事業(医療・介護周辺
サービス産業創出調査事業)」(平成 23 年度)の採択事業一覧
モデル
事業名
代表団体
医 療 機 関 地域の中高年の若返りと街の活性化プ 医療法人陽心会
主 体 サ ー ロジェクト
ビス
“医療のまち”モデル地区に向けた 医療法人社団KNI
総合生活産業創出調査事業
中山間地域の医療機関主体による複合 愛知県厚生農業協同組
輸送サービス
合連合会
地域在住高齢者への医療外サービス提 地方独立行政法人 東京
供における効果および課題に関する調 都健康長寿医療センタ
査研究(民間施設における医療外サー ー
ビス利用促進を目的として)
医 療 ・ 介 「在宅配食(治療食等)事業を基軸と 日清医療食品株式会社
護 ・ 民 間 した関連(周辺)サービス事業の創出」
連 携 サ ー プロジェクト
ビス
食事指導サービス事業者食事指導普及 株式会社リンクアンド
事業
コミュニケーション
多業種連携型 医療・介護・保険分野の 株式会社コナミスポー
「難民」対策調査事業
ツ&ライフ
糖尿病重症化予防「うえきモデル」 株式会社くまもと健康
調査事業
支援研究所
生活支援コーディネーターによる高齢 株式会社セブン-イレ
者生活サポート事業
ブン・ジャパン
プライマリ・ケア地域定着実証
株式会社エヌジェイア
事業
イ
地域栄養ケアシステム構築事業
財団法人東京都保健医
療公社
“ロボット技術を用いた介護負担の少 ユニ・チャーム ヒュー
ないまちづくり”実証研究事業
マンケア株式会社
二地域居住型ライフケアビジネスの可 株式会社日本アプライ
能性調査
ドリサーチ研究所
保 険 者 機 保険者機能強化支援プロジェクト
株式会社日立製作所
能 強 化 に 糖尿病を想定した三次予防サービス事 新日鉄ソリューション
向けたサ 業
ズ株式会社
ービス
徳島地域糖尿病予防サービス事業創出 公益財団法人とくしま
プロジェクト
産業振興機構
保険サービスプラットフォーム創出事 株式会社RDサポート
業
健康貯蓄口座(HAS-P)事業
伊藤忠エレクトロニク
ス株式会社
有 資 格 者 看護・介護の専門性を活かした生活 株式会社やさしい手
の活用
支援サービスの事業化プロジェクト
産 業 創 出 医療生活産業品質認証モデル調査
財団法人日本規格協会
に 向 け た 後見・信託事業に関する検討
国立大学法人東京大学
基盤整備
(政策ビジョン研究センター)
「大学病院を活用した医療・介護周辺サー 学校法人慶應義塾
ビス産業創出に向けた基盤構築」調査
「健康経営」による健康・医療の産 ヘルスケア・コミッティ
業化調査事業
ー株式会社
(資料:日本総合研究所
事業区分
疾病予防・
疾病管理
介護予防
リハビリ・ 生活支援・
生活支援
看取り
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
平成 23 年度医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出調査研究事業
(医療・介護周辺サービス産業創出調査事業)調査研究報告書)
- 52 -
(2)厚生労働省事業の公募・採択状況
厚生労働省では、地域社会における今日的課題の解決を目指す先駆的・嗜好的取り組みに対
する支援を通じて、社会福祉事業の発展改善等に寄与することを目的に、「社会福祉推進事業」
が実施されている。
対象事業テーマは年度によって若干異なっているが、例えば平成 23 年度、平成 24 年度にお
いては、表 1-4-3 のようなテーマの設定がなされている。また、このうち、「『孤立死』の取り
組みに関する調査・研究事業」に関しては、具体的に表 1-4-4 のような事業が採択されている。
高齢者の増加にともない、単身世帯数も増加していくことについて触れたが、そのような動
向と関連し、高齢者の「孤立死」の問題への対応が重要になっていることがうかがえる。
表 1-4-3 「社会福祉推進事業」の募集テーマ一覧
募集年度
募集テーマ
平成 23
年度
(1)地域における住民の相互扶助の体制構築に関する調査・研究事業
(2)社会的困窮者の自立支援に関する調査・研究事業
(3)福祉施策に携わる人材の育成・確保、専門性の向上に関する調査・研究事業
(4)国が実施又は国が補助を行う福祉施策の効果測定に関する調査・研究事業
(5)国が実施又は国が補助を行う福祉施策の改善点の把握に関する調査・研究事業
(6)東日本大震災における被災地の福祉的支援に関する調査・研究事業
<一般枠>
(1)ボランティアセンター間の連携のあり方に関する調査・研究事業
(2)民生・児童委員の活動等の実態把握及び課題に関する調査・研究事業
(3)生活福祉資金貸付事業における自立支援に関する調査・研究事業
(4)「孤立死」の取り組みに関する調査・研究事業
(5)隣保館運営事業の推進及び隣保館職員の資質向上に関する調査・研究事業
(6)ホームレスへの支援の実態把握に関する調査・研究事業
(7)ひきこもり、矯正施設退所者等への福祉的支援に関する調査・研究事業
(8)福祉施策に携わる人材の育成・確保、専門性の向上に関する調査・研究事業
(9)社会福祉法人の経営及び社会福祉事業に関する調査・研究事業
(10)国が実施又は補助を行う福祉施策の効果測定又は改善点の把握に関する調査・研究事業
(11)東日本大震災等大規模災害における被災地の福祉的支援に関する調査・研究事業
<生活支援戦略(仮称)枠>
(1)生活困窮者支援に対する支援アセスメントのプロセスに関する調査・研究事業
(2)生活困窮者への支援を行う人材のあり方に関する調査・研究事業
(3)社会的就労支援事業のあり方に関する調査・研究事業
(4)生活困窮者支援体系に資する調査・研究事業
(5)地域における生活困窮者の把握に資する調査・研究事業
平成 24
年度
表 1-4-4 「『孤立死』の取り組みに関する調査・研究事業」
団体名
事業名
一般社団法人全国介護者支援協議会
都内の大規模集合住宅団地における孤立死の取り組みに関す
る調査研究事業
「孤立死」の実態把握のあり方に関する調査研究事業
株式会社野村総合研究所
社会福祉法人兵庫県社会福祉協議会
「無縁社会」に警鐘を鳴らし、「支え合い社会」への道標を探
る調査・研究事業
- 53 -
(3)福祉医療機構事業の公募・採択状況
独立行政法人福祉医療機構では、人と地域の絆をつくり直し、支え合いと活気に満ちた地域
社会の再生をサポートすることを目的に、「社会福祉振興助成事業」が実施されている。
助成事業の分類として、
表 1-4-5 のように大きく 4 つの分類がある。平成 24 年度の事業では、
特に「高齢者などの孤立防止」、「児童虐待防止」及び「貧困対策」に関する事業を重点的に支
援するとしているが、具体的な採択事業のうち、高齢者福祉に関連する事業(一部、障害者等
対象のものも含まれる)としては、表 1-4-6~表 1-4-9 に示すような事業が採択されている。
これらの採択テーマを概観すると、平成 24 年度採択テーマとして災害時の対応に関連した
テーマが多くなっていることが把握されるが、このほか、地域で高齢者をどのように支えてい
くか、高齢者の「居場所」をどのように考えていくかといった点に関して、様々な団体が様々
な形で取り組んでいる状況にあることがうかがえる。また、これらのなかには、一部「ICT 活
用」や「タブレット活用」などの動きがあることも見て取ることができる。
表 1-4-5 「社会福祉振興助成事業」における助成事業分類
福祉活動支援事業
個々の団体が実施する社会福祉の振興に資する創意工夫ある事業
に助成
社会参加促進活動支援事業
個々の団体が実施する高齢者・障害者等の日常生活の便宜若しく
は社会参加を促進する事業に助成
地域連携活動支援事業
地域の多様な社会資源を活用し、複数の団体が連携やネットワー
ク化を図り、社会福祉諸制度の対象外のニーズその他地域の様々
な福祉のニーズに対応した地域に密着した事業に助成
全国的・広域的ネットワーク
全国又は広域的な普及・充実等を図るため、複数の団体が連携や
活動支援事業
ネットワーク化を図り、相互にノウハウを共有し、社会福祉の振
興に資する創意工夫ある事業又は社会福祉施策等を補完若しくは
充実させる事業に助成
- 54 -
表 1-4-6 「社会福祉振興助成事業」
(平成 24 年度)の採択テーマのうち高齢者福祉に関連する
事業一覧(福祉活動支援事業)
事業分類:福祉活動支援事業
助成テーマ:高齢者などが地域で普通の暮らしをすることを支援する事業
○配食や買い物、移動支援、見守り、居場所づくり、心のケアなどにより、高齢者などの社会か
らの孤立を防止する事業
団体名
事業名
特定非営利活動法人スワンの家
特定非営利活動法人日本SNS推進機構 北海道支部
特定非営利活動法人さっぽろ福祉支援ネットあいなび
特定非営利活動法人千歳めいぷるの会
特定非営利活動法人ボランティア杜の家
特定非営利活動法人みんなの広場
特定非営利活動法人YU~Ki倶楽部
社会福祉法人弘前豊徳会
社会福祉法人臥牛三敬会
特定非営利活動法人浦戸福祉会
特定非営利活動法人学割net
特定非営利活動法人御倉町かいわいまちづくり協議会
特定非営利活動法人コミュニティちゃばたけ
特定非営利活動法人スマイルパートナー
特定非営利活動法人志民アシストネットワーク
特定非営利活動法人フォーライフ
特定非営利活動法人コレクティブハウジング社
一般社団法人シニア法務サポート
特定非営利活動法人POSSE
老人給食協力会ふきのとう
社団法人神奈川県聴覚障害者協会
よろんごの木
特定非営利活動法人今立ファミリーサポートひなたぼっこ
山梨市集いの会
特定非営利活動法人SHAREHOUSE光が丘
特定非営利活動法人エフ・エー
特定非営利活動法人けしごやま
特定非営利活動法人ふれあいセンターたんぽぽ
共生サロンにおける「リフォーム手芸」交流事業
北海道老老除雪支援プロジェクト事業
地域生活24時間支援(すけっと愛)事業
共生型サロン事業
高齢者や介護する側の孤立を防止する事業
高齢者・障害者(ささえ愛)サポート事業
高齢者・障害者夜間安心電話事業
被災地要介護者の移送・遠隔面会支援事業
買い物弱者支援のための移動販売車輌の購入事業
浦戸の震災復興のための高齢者生活支援事業
健康運動指導士による生活不活発病予防事業
御倉邸で逢いましょう。事業
団塊世代、高齢者の活き活きげんき事業
過疎地域高齢者買い物支援事業
地域支え合いサービス「安心おとどけ隊」事業
東日本大震災被災者コミュニティ構築支援事業
持続可能なコミュニティづくり支援事業
高齢者の孤立防止と自己決定を尊重する事業
仮設住宅における被災者の制度利用支援事業
高齢者孤立予防のための地域体制づくり事業
要支援聴覚障害者の孤立防止・自立支援事業
安全で安心な支え合いの地域づくり事業
地域包括の町づくり支えあい活動推進事業
高齢者を対象にしたコミュニティー施設の運営事業
高齢者と障害者のシェアハウス事業
地域の居場所づくりと地域活動支援事業
障害者、高齢者、市民、交流サロン事業
地域の買物難民を支える買物ツアーとサロン活動事業
表 1-4-7 「社会福祉振興助成事業」
(平成 24 年度)の採択テーマのうち高齢者福祉に関連する
事業一覧(社会参加促進活動支援事業)
事業分類:社会参加促進活動支援事業
助成テーマ:高齢者の日常生活、社会参加等を支援する事業
○高齢者の生きがいと健康づくり活動の全国的な振興を図る事業
団体名
事業名
一般財団法人長寿社会開発センター
特定非営利活動法人コーチズ
全国健康福祉祭宮城・仙台大会文化交流事業
新聞手巻き棒歩行力向上プログラム普及事業
○高齢者の生きがいと健康づくり活動の全国的な振興を図る事業
団体名
事業名
株式会社プラウシップ
株式会社ジェー・シー・アイ
トランスファ・スツールの製品化事業
高齢者福祉施設特化型車いすの開発事業
- 55 -
表 1-4-8 「社会福祉振興助成事業」
(平成 24 年度)の採択テーマのうち高齢者福祉に関連する
事業一覧(地域連携活動支援事業)
事業分類:地域連携活動支援事業
助成テーマ:高齢者などが地域で普通の暮らしをすることを支援する事業
○配食や買い物、移動支援、見守り、居場所づくり、心のケアなどにより、高齢者などの社会か
らの孤立を防止する事業
団体名
事業名
もしも北海道グループ実行委員会
特定非営利活動法人きなはれ
特定非営利活動法人たすけあいワーカーズさくらんぼ
特定非営利活動法人遠野まごころネット
特定非営利活動法人LEAF26
特定非営利活動法人NPOほうらい
福島県一般社団法人情報センターFais
特定非営利活動法人栃木県シニアセンター
特定非営利活動法人ふれあいねっと
松原団地見守りネットワーク
社会福祉法人和光市社会福祉協議会
特定非営利活動法人運転免許取得支援センター
特定非営利活動法人ココCOLORねっと
特定非営利活動法人たすけあいの会ふれあいネットまつど
特定非営利活動法人シニアソーホー普及サロン・三鷹
特定非営利活動法人自立支援センターふるさとの会
社会福祉法人プシケおおた
特定非営利活動法人プロップK
公益社団法人「小さな親切」運動本部
特定非営利活動法人子育てネットワーク・ピッコロ
特定非営利活動法人かまくら地域介護支援機構
特定非営利活動法人木々の会
特定非営利活動法人新潟リハビリレクリエーションア
カデミー
特定非営利活動法人ライフネッツにいがた
加賀市小規模多機能型居宅介護事業者連絡会
特定非営利活動法人琵琶湖ライフケアシステム
特定非営利活動法人寝屋川あいの会
和花
特定非営利活動法人元気むらさくぎ
特定非営利活動法人あいあいねっと
特定非営利活動法人シニアネット光
神東地域振興協議会
特定非営利活動法人Wall Less Japan
社会福祉法人寺子屋工房
特定非営利活動法人ひと・学び支援センター
特定非営利活動法人ボランティア仲間九州ラーメン党
十年DIGと老孫工房による孤立防止事業
地域相談カフェと課題解決ご近所ネット事業
地域における孤立防止のための拠点運営事業
大船渡市内における被災高齢者見守り事業
復興(幸)と笑顔をこの大地に事業
バスを通じた仮設住宅コミュニティー事業
仮設住宅支援「おでかけ送迎サービス」事業
タブレット活用で第三の居場所を創る事業
高齢者の生活支援及び交流促進事業
松原団地見守りネットワーク運営事業
寄り合いどころ「たまりば」事業
被災地の高齢者の生活支援事業
“困った時はお互い様”市民助け合いネット事業
ユニバーサルコミュニティカフェの開設事業
ICT活用の孤立防止ネットワーク構築事業
困窮要介護単身高齢者地域生活安定継続事業
高齢者・障害者への休憩場提供と配食事
地域の子どもと高齢者ダーツ交流・定着事業
地域活性生きがい支援事業
地域をつなぐ赤ちゃん~高齢者のサロン事業
地域の高齢者等を笑顔で支えるシステムづくり事業
障がい者と市民が共に泊まりくつろぐ家事業
高齢者の居場所活性化支援事業
特定非営利活動法人やまが元気倶楽部
社会福祉法人まつみ福祉会
通信端末活用による安否確認と緊急連絡事業
小規模多機能ケアによる高齢者孤立防止事業
地域を活性化して楽しめる街にしよう事業
団塊世代による高齢者相互の支え合い事業
地域の触れ合いと支えあいを実現する事業
さくぎ地域ネットワーク助け合い隊事業
フードバンクシステムを活用した配食事業
ICT活用による生きがいサポーター養成事業
高齢者等地域総合支え合い事業
孤独死防止につながる買い物支援事業
高齢者等日常生活支援総合事業
かえでの森で、今日から始める新しい絆事業
ハンセン病療養所入所者と保育園児と地域住民の
交流事業
買い物弱者対策(買い物リハ倶楽部)事業
高良地域サポートネットワーク構築事業
- 56 -
表 1-4-9 「社会福祉振興助成事業」
(平成 24 年度)の採択テーマのうち高齢者福祉に関連する
事業一覧(全国的・広域的ネットワーク活動支援事業)
事業分類:全国的・広域的ネットワーク活動支援事業
助成テーマ:高齢者などが地域で普通の暮らしをすることを支援する事業
○配食や買い物、移動支援、見守り、居場所づくり、心のケアなどにより、高齢者などの社会か
らの孤立を防止する事業
団体名
事業名
特定非営利活動法人グローバルヒューマン
日本調整療法協会
特定非営利活動法人教育ルネッサンス
特定非営利活動法人ハートウォーミング・ハウス
公益社団法人全国老人保健施設協会
被災弱者へのトータル支援事業
被災地高齢者への介護予防システム構築事業
震災ストレスメンタルケア及び学習支援事業
空家活用による地域支え合い拠点ネット事業
モバイルデイケア(巡回型リハビリテーション)
事業
地域連携による健康・生活相談室開催事業
Y・Yネットふるさと絆プロジェクト事業
男性介護者孤立防止のためのネットワーク事業
高齢者ニーズ(買い物等)サポート事業
一般社団法人キャンナス東北
社会福祉法人恵風会
特定非営利活動法人スマイルウェイ
公益社団法人徳島県シルバー人材センター連合会
- 57 -
第2章 横浜における医療・介護・健康関連産業分野の動向整理
2-1
医療・介護・健康関連産業に関する概念整理
○「医療・介護・健康関連産業」の概念整理
・医療、介護については国の制度に則り事業が展開しており、統計等の既存の情報からそ
の概要についてある程度把握することが可能
⇒対して、健康関連産業は民間事業者の活動の自由度が高く、非常に多様な業種が参入
している分野であるため、その実態がつかみづらい
→健康関連産業についての国等の対応については次のような考え方が含まれている
◇健康分野を医療や介護とシームレスに連結・連携すること
(公的国民皆保険や介護保険制度を含めて)
◇民間事業者等の需要への自律的対応の可能性を地域の資源として活かすことは地
域の経済・社会の循環性を活かすことでもある
◇健康分野に関連する技術の蓄積や地域資源の活用等に有機的に取り組むこと
⇒健康について、
「身体」
「精神」
「社会」の 3 つの観点から、概念の整理を行い、該当す
る事業についての整理を行った。
(1)医療・介護・健康関連産業に関する概念の整理
①
国における医療・介護・健康関連産業の関連概念の整理
第 1 章で見てきたように、国の成長戦略や「医療・介護・健康関連産業」に関する報告書か
らは、「医療・介護」の周辺に展開される「健康関連産業」の重要性も読み取ることができる。
新成長戦略では、
「ライフ・イノベーション」の中でも先端的な医療技術や製品、海外への事
業展開が注目されがちだが、
「不安の解消、生涯を楽しむための医療・介護サービスの基盤強化」
、
「地域における高齢者の安心な暮らしの実現」といったテーマも大きく取り上げられている。
平成 24 年 2 月に閣議決定された「社会保障と税の一体改革大綱」においても、「治す医療」
と「支える医療」
(その人らしく尊厳を持って生きられるようにする)の双方の実現が盛り込ま
れており、できる限り住み慣れた地域で在宅を基本とした生活の継続を目指す「地域包括ケア
システム」の構築に取り組み、
「どこに住んでいても、その人にとって適切な医療・介護サービ
スが受けられる社会」を構築することが明言されている。
平成 22 年の「医療産業研究会報告」においても、
「医療生活産業の振興」が掲げられており、
「公的保険の枠内で全てを賄おうとした場合には期待できない、自由な発想や工夫された効率
性、自律的に顧客のニーズに応える能力を持つサービス事業の創出」が必要であること、また
QOL を維持するための「医療・周辺サービスの振興」や、外食産業やフィットネスなどの、医
療と直接的な関わりを持たない産業などとの連携、ノウハウの応用、及び商店街や地域コミュ
ニティといった地域資源の活用についても提唱されている。
このような「医療・介護」の周辺に展開される「健康関連産業」について、先行する研究報
告を見ると、以下のようになっている。
- 58 -
○医療・介護・高齢者生活支援関連産業戦略(経済産業省「医療・介護・高齢者生活支援・子育ての
ニーズをビジネスに活かせるか?」(産業構造審議会産業競争力部会資料)(平成 22 年 4 月))
経済産業省では、産業構造審議会産業
競争力部会において、「医療・介護機関
と健康関連サービス事業者との連携推
進等により、医療・介護機関と健康関連
サービス事業者との連携推進等により、
公的保険依存から脱却し、患者、消費者
本位の多様で質の高いサービスを供給
する体制を構築」することをコンセプト
とする「医療・介護・高齢者生活支援関
連産業戦略」が検討されている。
○医療産業/医療生活産業(医療産業研究会報告書(平成 22 年 6 月))
当研究会報告書では、日本の医療市場
を拡大させるため、「①健康サービスを
はじめとした医療周辺サービスを提供
する「医療生活産業」を振興する」「②従
来の医療の世界においても、医療の国際
化等を通じて、公的保険制度の枠外の自
由な市場での資本蓄積や技術革新の基
盤整備を実現し、自律的な成長を可能と
する」の 2 つの視点が必要であるとして
いる。
そのため、需要への自律的対応可能性を確保することで医療の産業化を図ることに加え、
新しい医療周辺市場(医療生活産業(※))を創出することを提言している。
(※)疾病予防や疾病管理、介護予防、リハビリ、慢性期の生活支援等の実現のサポートするために、医療
と連携して生活に根差した形で提供されるサービス産業
- 59 -
○ヘルスケア産業(産業構造審議会新産業構造部会報告書 経済社会ビジョン(平成 24 年 6 月))
当ビジョンでは、政策の方向性の一つとして「新産業の創出と産業構造の転換」を位置づ
けており、創出を図る新産業の一つとして「ヘルスケア産業」を位置づけている。また、ヘ
ルスケアに関する経済産業政策の方向性として、「医療・介護周辺サービスの創出」「ものづ
くり技術を活かした医工連携での医療機器等の開発支援」
「医療機器・再生医療の特性に応じ
た規制・制度改革」「医療機器とサービスが一体となった日本式医療の海外展開の推進」「生
活支援ロボットの実用化の加速」を挙げている。
【経済産業政策の方向性】
①ヘルスケア産業
・医療・介護周辺サービスの創出
・ものづくり技術を活かした医工連携での医療機器等の開発支援
・医療機器・再生医療の特性に応じた規制・制度改革
・医療機器とサービスが一体となった日本式医療の海外展開の推進
・生活支援ロボットの実用化の加速
○新ヘルスケア産業(中部経済産業局「新ヘルスケア産業創出懇談会中間とりまとめ」(平成23年 9 月))
当懇談会では、我が国のヘルスケ
アの現状について、各分野の相互接
続性が十分でないことが利用者の利
便性を妨げており、各分野のヘルス
ケア・サービスをシームレスにつな
ぐことが「新ヘルスケア産業」の発
展のビジネスチャンスが存在になる
としている。
ここでは、
「新ヘルスケア産業」を
「事業者間又は分野間の相互接続性
が十分に確保され、ものづくりを含めシームレスにつながったヘルスケア・サービスを提供
する事業」と位置づけており、ものづくり基盤技術の蓄積及び温泉、農産品等の地域資源を
はじめとして、ヘルスケアに関連する産業を有機的に取込むことによって、当地域独自のヘ
ルスケア・サービスの展開が可能になるとしている。
- 60 -
○健康文化産業(近畿経済産業局「平成 20 年度広域ブロック自立施策等推進調査」(平成21 年 3 月))
当調査報告書では、今後の少子高齢化社会の進展とともに、高齢者をはじめとした国民が
健康で暮らしやすい社会の形成が望まれ、
「健康が『文化』化することを推進することにより、
新たな産業が創出される」としている。
ここでは、
「健康を文化としてとらえ、商品やサービスの付加価値の一つとして健康価値を
訴求する産業」を「健康文化産業」と定義し、直接的に身体の健康を支えるものだけでなく、
健康に配慮した製品、文化的な面で生活を充足させる等、幅広い事業がそこに含まれるとし
ている。
なお、本報告書によれば、2007 年における近畿経産局管内の「健康文化産業」の市場規模
は 10.9 兆円と推計され、特に健康に配慮した家電、自動車、ヘルスツーリズム、健康関連コ
ンテツンツ等に対する潜在重要が大きいとされる。
- 61 -
○厚労省 健康・福祉関連サービス産業(健康・福祉関連サービス産業統計調査(平成 8 年 9 月))
当統計調査では、
「健康・福祉関連サービス産業」として、
「在宅福祉サービス」
「医療関連
サービス」
「健康増進サービス」を有料で提供している民間事業所を調査対象(社会福祉協議
会、医療施設、老人保健施設、 訪問看護ステーション、社会福祉施設、有料老人ホームは含
まない)とし、
「在宅福祉サービス」9 種、
「医療関連サービス」10 種、
「健康増進サービス」
1 種、計 20 種類を対象サービスとしている。
在宅福祉サービス
A01 訪問介護(ホームヘルプサービス)
A02 訪問入浴サービス
A03 在宅配食サービス
A04 福祉用具の賃貸・販売サービス
A05 緊急通報サービス
医療関連サービス
B01 検体検査サービス
B02 医療用具等滅菌消毒サービス
B03 患者給食提供サービス
B04 患者搬送サービス
B05 医療機器の賃貸サービス
健康増進サービス
C01 健康増進サービス
A06
A07
A08
A09
移送サービス
日帰り介護(デイサービス)
短期入所生活介護(ショートステイサービス)
寝具乾燥消毒サービス
B06
B07
B08
B09
B10
医療機器の保守点検サービス
医療機器の修理サービス
寝具類洗濯(リネンサプライ)サービス
院内清掃サービス
医療関連事務・情報管理業務サービス
○介護サービス施設・事業所(介護サービス施設・事業所調査)
当調査では、介護保険制度における介護予防居宅サービス事業所、地域密着型介護予防サ
ービス事業所、介護予防支援事業所、居宅サービス事業所、地域密着型サービス事業所、居
宅介護支援事業所及び介護保険施設を対象としている。
- 62 -
○シルバービジネス(高齢・障害・求職者雇用支援機構「高齢社会対応型ビジネスと高齢者雇
用の可能性に関する調査研究」(平成 19 年度))
当調査研究報告書では、シルバービ
ジネスについて、「一般的には中高年
齢者を対象として開発された商品、サ
ービスなどを総称している」ものとし、
「介護保険内で提供される介護サー
ビスを頂点に配置し、要介護の高齢者
をも含めた高齢者全体を対象とする
シルバービジネス領域をその底辺に
配置」し、市場規模について「裾に向
かうほど大きくなる」としている。
○シルバーサービス(シルバーサービス振興会「シルバー産業振興ビジョン」(平成 20 年 3 月))
高齢者の利用に配慮した一般商品・サービスの開発・普及
当ビジョンでは、シルバーサービスの振興の方向性として、
「高齢期の活躍を支えるシルバ
ーサービス」
「さらに発展・充実をめざす介護サービス」の 2 つの方向性を掲げている。
【拡大・創出が期待される多様なシルバーサービス市場】
○自分自身の生活を豊かにする「自分のためのマーケット」
○人と関わりたいというニーズを満たす「関係づくりマーケット」
○高齢者の感性や技術を伝承する「伝承マーケット」
○少し働きたいというニーズに応える「働こうマーケット」
○健康増進や長生き関連の「ヘルスサポート・マーケット」
○いつまでも若々しくいたい「アンチエイジング・マーケット」
○高齢期の生活に欠かせない「ITマーケット」
○好奇心に富んだ高齢者を対象とした「団塊支援マーケット」
○家族と生きる、家族を支える「ファミリー・マーケット」
【ニーズの多様化や個別性への対応を図る介護サービス】
○「上乗せ横出し」サービス(介護保険外の介護サービス市場)の充実
○介護に関わる商品などをワンストップで購入できる場の提供
○個人の尊厳を重視したサービス・技術の開発
○先が読めない高齢期の医療と介護の不安の解消
○重度化・長期化する介護に応える新たなサービス開発
○人生の終末期を支援する
○介護技術の海外移転と海外介護マーケットへの展開
○高齢化関係ビジネス(日本ビジネス開発「少子化・高齢化ビジネス白書」)
当書では、高齢化関係ビジネスについて、「老人ホーム・住宅・住居市場」「バリアフリーグ
ッズ・機器市場」「健康管理、医療、医療周辺、介護市場」等 13 分野について市場動向等を
とりまとめている
○衣料・生活・身の回り品市場
○食市場
○老人ホーム・住宅・住居市場
○バリアフリーグッズ・機器市場
○健康管理、医療、医療周辺、介護市場
○安全・安心市場
○生きがい・カルチャー市場
○余暇・レジャー市場
○雇用・労働市場
○情報・ソフト市場
○財テク・金融・保険市場
○葬祭関連市場
○社会システム市場
- 63 -
②
本調査における、医療・介護・健康関連産業の事業分野の定義
本調査においては、医療・介護、及びその周辺に展開される健康関連産業を調査の対象と
している。
医療、介護についてはそれぞれ国の制度に基づいて事業が行われている分野であり、統計
等の情報が整えられているが、一方で健康関連産業については、現状において汎用的に用い
られる明確な定義はなく、一口に「健康」といっても、そこには非常に多様な財・サービス
が関連している。また、医療・介護においても、日本標準産業分類の中分類における「医療
業」、小分類における「老人福祉・介護事業」のみならず、それぞれ周辺的な製品やサービス
が存在しており、
「医療・介護・健康関連産業」として総体的に取り扱う際には、こうした周
辺の領域についても見る必要があると考えられる。
そこで、本調査においては医療・介護の関連事業、及び健康関連産業についての実態を把
握するため、下記のような業界団体に対してヒアリング調査を実施した。
表 2-1-1 業界団体ヒアリング対象
分野
医療関連サービス
団体名称
主な調査項目
(財)医療関連サービス振興会
・医療関連サービスに該当するサービスの種類
・医療関連サービスの現状と今後の展望、及び課題
介護関連サービス
(財)シルバーサービス振興会
・シルバーサービスに該当するサービスの種類
・シルバーサービスの現状と今後の展望、及び課題
介護・福祉用具
日本福祉用具・生活支援用具協会
余暇産業
余暇創研(日本生産性本部)
・介護・福祉用具の現状と今後の展望、及び課題
・余暇産業に該当するサービスの種類
・余暇関連サービスの現状と今後の展望、及び課題
フィットネス産業
日本フィットネス産業協会
・身体的な健康を支えるサービスの種類
・フィットネス産業の現状と今後の展望、及び課題
これらを踏まえ、本調査における「医療」
・
「介護」
・
「健康関連産業」のそれぞれについて、
該当する製品、及びサービスの範囲を下記のように定義する。
○医療
医療の本体である、日本標準産業分類の中分類における「医療業」については、そこに該
当するものをそのまま調査対象とした。一方、医療の周辺に位置する製品やサービスについ
ては、下記のようなプロセスで対象範囲を検討した。
まず、医療に関連するサービスについて整理するため、財団法人医療関連サービス振興会
の刊行している「医療関連サービス実態調査」を参照し、調査の対象となっているサービス
のうち、外部事業者への委託率が高いものを本調査における医療関連サービスの調査対象と
した。
続いて、医療機器等の製造・販売については、主として「薬事工業生産動態統計調査」の
調査対象となっている分野を参考に、本調査における調査対象の範囲を設定している。
医療業本体に、以上のような関連サービス、及び関連製品の製造・販売を加えたものを本
調査における「医療」分野として定義する。調査対象に含まれる具体的な事業としては、表
2-1-2 のとおりである。
- 64 -
表 2-1-2 本調査における、「医療」分野に含まれる製品、及びサービス
大分類
医療・福祉
生活関連サービ
中分類
医療業
医療本体
洗濯・理容・美容・浴場業
洗濯業
廃棄物処理業
産業廃棄物処理業
感染性廃棄物処理
飲食店
食堂、レストラン
患者給食(食堂)
配達飲食サービス業
患者給食(食堂)
その他の小売業
医薬品・化粧品小売業
医薬品販売(ドラッグストア等)
化学工業
医薬品製造業
医薬品の開発、製造
生産用機械器具製造業
電子応用装置製造業
電気機械器具製造業
電気計測器製造業
ス、娯楽業
サービス業
卸売業、小売業
具体的な
財・サービス
小分類
持ち帰り・配達飲食サービ
ス業
寝具類洗濯
画像診断システム、画像診断用 X 線
関連装置
整体現象計測・監視システム、医用検
体検査装置
処置用機器、施設用機器、生体機能
製造業
業務用機械器具製造業
医療用機械器具・医療用
品製造業
補助・代行機器、治療用又は手術用
機器、歯科用機器、歯科材料、鋼製
器具、眼科用品及び関連製品、家庭
用医療機器
パルプ・紙・紙加工品製造
その他のパルプ・紙・紙
業
加工品製造業
繊維工業
ゴム製品製造業
その他の繊維製品製造
業
その他のゴム製品製造
業
衛生材料及び衛生用品(一部)
衛生材料及び衛生用品(一部)
衛生材料及び衛生用品(一部)
○介護
介護の本体である、日本標準産業分類の小分類における「老人福祉・介護事業」について
は、そこに該当するものをそのまま調査対象とした。一方、介護の周辺に位置する製品やサ
ービスについては、医療と同様に、下記のようなプロセスで対象範囲を検討した。
まず、介護に関連するサービスについて整理するため、財団法人医療関連サービス振興会
のに対するヒアリング調査の結果などに基づいて対象となる分野を選定するとともに、併せ
て介護タクシー、成年後見等のサービスについても調査の対象とした。
続いて、福祉用具等の製造・販売については、主として日本福祉用具・生活支援用具協会
の実施している「福祉用具市場規調査」の調査対象のうち、市場規模がある程度大きなもの
を、本調査における調査対象とした。
介護事業本体に、以上のような関連サービス、及び関連製品の製造・販売を加えたものを
本調査における「介護」分野として定義する。調査対象に含まれる具体的な事業としては、
表 2-1-3 のとおりである。
- 65 -
表 2-1-3 本調査における、「介護」分野に含まれる製品、及びサービス
大分類
中分類
具体的な
財・サービス
小分類
社会保険・社会福祉・介護
医療・福祉
老人福祉・介護事業
介護本体
洗濯業(再掲)
寝具類洗濯
事業
生活関連サービ
洗濯・理容・美容・浴場業
ス、娯楽業
運輸業、
郵便業
道路旅客運送業
一般乗用旅客自動車運
送業
その他の道路旅客運送
業
移送サービス、介護タクシー
法律事務所,特許事務所
学術研究,専門・
技術サービス業
専門サービス業(他に分類さ
れないもの)
公証人役場,司法書士事
務所,土地家屋調査士事
務所
権利擁護、成年後見サービス
行政書士事務所
持ち帰り・配達飲食サービス
卸売業,小売業
配達飲食サービス業(再掲)
小売店による宅配等、生活支援サー
ビス
その他の事業サービス業
警備業
見守りサービス
パルプ・紙・紙加工品製造
その他のパルプ・紙・紙
業
加工品製造業(再掲)
業
サービス業(他に分
類されないもの)
紙おむつ
民生用電気機械器具製
電気機械器具製造業
造業
温水洗浄便座
その他の輸送用機械器
製造業
輸送用機械器具製造業
具製造業
車いす
家具・装備品製造業
家具製造業
医療用・介護用の電動ベッド
その他の製造業
他に分類されない製造業
眼鏡
映像・音響機械器具製造
情報通信機械器具製造業
補聴器
業
建設業
総合工事業
建築リフォーム工事業
- 66 -
バリアフリー、介護リフォーム
○「健康関連産業」の考え方
「健康(Health)」について、WHO によると「健康とは、病気でないとか、弱っていない
ということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状
態にあることをいう。」
(日本 WHO 協会訳)と定義されている。
したがって、本調査では、
「健康・福祉」に関連する産業について「身体」
・
「精神」
・
「社会」
の 3 つの要素に注目し、
「健康関連産業」はこれを複合的に有するものと考える。なお、「健
康」とは変化のない静的な状態を指すのではなく、状況の変化に応じて良くも悪くもなる、
動的な状態である。すなわち、全く注意を払わなければ健康状態は徐々に損なわれていくも
のであり、当人の様々な活動を通じて維持されるものと考える。
図 2-1-1 本調査における「健康」の考え方
・生きがいや楽しみがある
・安らぎや癒しがある
身体的な健康
精神的な健康
・内臓等の機能が正常
社会的な健康
・運動機能を維持している
・他の人との交流がある
・食生活、栄養状態が良い
・社会的な居場所がある
…就労先、サークル活動等
・身の回りのことができる
○「健康関連産業」の財・サービスの整理
続いて、上記で整理した考え方に基づき、健康な暮らしを支えるものについて検討する。
例えば、身体的な健康のうち「重い病気を抱えていない」という状態を長期にわたって維
持するには、重病を治療したり進行を遅らせたりするための医療行為や、早期発見のための
健康診断といったサポートが欠かせない。また、社会的な健康のうち「社会的な居場所があ
る」状態を維持するには、就労支援サービスや、サークル活動の場を提供するサービス等を
利用することが有効であると考えられる。
なお、
「健康関連産業」については、若年層から高齢者まで幅広い層を対象とした製品やサ
ービスが考えられるが、本調査ではこのような
「健康関連産業」全体を調査対象とする。その
(健康関連産業の顧客層と本調査の調査対象)
高齢者のみでなく、全体が調査対象
中で、今後は徐々に高齢者層の顧客が増加する
という点に注目して調査を行う。
このようにして、それぞれの健康状態の維持
を支えるものを整理すると、次頁の枠内のよう
になると考えられる。
市
場
の
大
き
さ
(高齢者層)
年齢層
- 67 -
○身体的な健康
⇒身体の健康状態を維持・改善するための支援
(例)■健康状態を改善(現状では良くないものを、「良い」方向に持っていく)
■健康状態の維持・向上
○精神的な健康
■運動機能の維持・向上
⇒生きがいや楽しみ、及び精神面のケアを行うための支援
(例)■生きがいづくりの支援
○社会的な健康
■精神的ヘルスケア
(例)■就労支援
⇒健康な社会生活を維持するための支援(社会での居場所づくり)
■サークル活動、地域での活動の支援
■日常生活の支援
以上のように、健康を形成する3つの要素に基づき、
「健康関連産業」に属する具体的な財
やサービスを、下記のように整理した。
図 2-1-2 「健康関連産業」の財・サービスの整理
身体
健康食品
サプリメント
健康器具
健康診断
スポーツ用品
疾病予防
医療リテラシー
バリアフリー化
鍼灸・マッサージ
旅行商品
温浴施設
旅館・ホテル
スポーツ教室
観光ガイド
アミューズメント施設
フィットネスクラブ
家事代行サービス
カルチャースクール
移動・移送サービス
配達サービス
起業支援
映画・演劇等
精神
給食サービス
人材総合サービス
- 68 -
社会
「健康関連産業」は前述した医療や介護と異なり、健康関連産業というカテゴリは日本標
準産業分類にそのままの形であてはまるものではないので、統計を参照する前段として、先
に整理した健康関連産業の財・サービスを提供する事業者が、どのような産業分類に属して
いるのかを整理しておく必要がある。
本調査では、まず電話帳等を基に、上記①で整理した財やサービスを提供している事業者
を検索し、その結果に基づいて、健康関連産業に該当する事業者、及びその属する産業分類
についての整理を行った。
本調査において想定する健康関連産業の財・サービスを日本標準産業分類にあてはめると、
表 2-1-4 のようになる。
表 2-1-4 日本標準産業分類と「健康関連産業」の財・サービスの対応状況
大分類
中分類
食料品製造業
その他の食料品
健康食品、サプリメント
化学工業
化粧品・歯磨・その他の
化粧用調整品製造業
化粧品
業務用機械器具製造業
サービス用・娯楽用機械器
具製造業
サービスの提供に用いる機器の製造
その他の製造業
がん具・運動用具製造業
運動用具製造業
製造業
各種食料品小売業
飲食料品小売業
卸売業,小売業
具体的な
財・サービス
小分類
機械器具小売業
その他の小売業
その他の飲食料品
小売業
小売店による宅配等、生活支援サー
ビス
機械器具小売業
(自動車,自転車を除く)
街の電気屋による、宅配、電球交換
等の生活支援サービス
農耕用品小売業
園芸店(趣味のサポート)
スポーツ用品・がん具・娯楽
用品・楽器小売業
登山用品、釣具店(趣味のサポート)
他に分類されない小売業
ホームセンター(趣味のサポート)
法律事務所,特許事務所
学術研究,専門・
技術サービス業
専門サービス業(他に分類さ
れないもの)
公証人役場,司法書士事務
所,土地家屋調査士事務所
権利擁護、成年後見サービス
行政書士事務所
宿泊業,飲食サー
ビス業
宿泊業
旅館,ホテル
旅行
持ち帰り・配達飲食サービス
業
配達飲食サービス業
配食、給食サービス
洗濯・理容・美容・浴場業
美容業
美容業
一般公衆浴場業
温浴施設
その他の公衆浴場業
その他の生活関連サービス
業
生活関連サービス
業,娯楽業
娯楽業
旅行業
旅行
他に分類されない生活関
連サービス業
家事サービス(生活協同組合によるもの
も含む)、結婚相談
映画館
映画館
興行場(別掲を除く),興
行団
劇団、楽団,舞踏団
演芸・スポーツ等興行団
スポーツ施設提供業
ゴルフ場、ゴルフ練習場、フィットネスクラブ
公園,遊園地
遊園地
遊戯場
囲碁・将棋所
その他の娯楽業
マリーナ業、ダンスホール、カラオケボックス
- 69 -
大分類
中分類
教育,学習支援
業
その他の教育、
学習支援業
サービス業
(他に分類されな
いもの)
職業紹介・労働者派遣業
③
具体的な
財・サービス
小分類
教養・技能教授業
パソコン教室、外国語会話教授業、
健康教授業、音楽教授業
職業紹介業
就業支援
横浜市内における「健康関連産業」への取り組み状況
②において、医療・介護とともに健康関連産業についても範囲を設定したが、
「どのような
事業者が、どのような取り組みを行っているのか」という実態については、統計資料だけで
はなかなか見えてこない。そこで、本調査においては、市内における健康に関連する事業へ
の取り組み状況、及び健康に関連する事業に取り組んでいるのはどのような事業者であるの
かということを把握するため、市内の幅広い業種の事業者を対象にアンケート調査を実施し
た。その結果、185 件の回答が得られ、うち 100 件が「事業を実施している」と回答してい
る。
「事業を実施している」と回答した事業者に、当該事業に取り組むようになった経緯につ
いてたずねたところ、「創業時から当該事業を実施していた」が 60.0%、「本業からの派生と
して当該事業に参入した」が 27.0%となっており、ほとんどが本業、及びそこで培ったノウ
ハウを活かせる分野への進出であったことが伺える。一方、
「もとは全く異なる事業を行って
いたが、新規に当該事業に参入した」は 12.0%であり、異業種からの新規参入というケース
もあることが確認できる。
図 2-1-3 当該事業に取り組むようになった経緯(n=100)
もとはまったく異な
る事業を行ってい
たが、新規に当該
事業に参入した
12.0%
無回答
1.0%
本業からの派生と
して当該事業に参
入した
27.0%
創業時から当該事
業を実施していた
60.0%
また、当該事業を始めてからの期間については「30 年以上」が 32.0%と最も多く、20
年以上にわたって当該事業に取り組んでいる事業者が約半数となっている。このことから、
医療・介護・健康関連産業が成長分野として取り上げられる以前から取り組みを行ってい
た事業者が少なからず存在しており、地域に根付いた活動を行ってきていることをうかが
い知ることができる。
- 70 -
図 2-1-4 当該事業を始めてからの期間(n=100)
無回答 3年未満
2.0%
5.0%
3年以上5年未満
5.0%
5年以上10年未満
16.0%
30年以上
32.0%
10年以上20年未満
23.0%
20年以上30年未満
17.0%
当該事業に参入した理由については、
「社会や人の役に立つ事業だから」という社会責任
的な観点による理由が 61.0%と最も多かったが、「市場の成長が見込める分野だから」が
39.0%、
「自社の技術・ノウハウを活用できる分野だから」が 31.0%となっており、必ずし
も社会貢献だけが目的ではなく、事業としても成立するだけの基盤があると判断して当該
事業に参入している事業者もいることがわかる。
図 2-1-5 当該事業に参入した理由(n=100、複数回答)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
21.0%
事業領域の幅を広げるため
61.0%
社会や人の役に立つ事業だから
4.0%
6.0%
13.0%
その他
無回答
70.0%
31.0%
自社の技術・ノウハウを活用できる分野だから
今後の事業展開に向けた、ノウハウ蓄積のため
60.0%
39.0%
市場の成長が見込める分野だから
イメージアップのため
50.0%
4.0%
- 71 -
(2)本市における、医療・介護・健康関連産業の市場規模
①
規模の把握を行うにあたって
本節では、前節で定義した、医療・介護・健康関連産業の、本市における市場規模等を把
握する。なお、市場規模の把握には、横浜市産業連関表の市内生産額を用い説明を試みるが、
全国や横浜市の産業連関表の業種分類では、産業を 190 の部門に分類した 190 部門表が、作
成されているなかで一番細かく分類されたものとなっている。なお、この 190 部門はおおよ
そ経済センサスでいう小分類に該当するが、先に見たとおり、今回医療・介護・健康関連産
業が対象としている財やサービスは小分類よりも細かく分類されるものであり、市場規模の
把握にあたっては、把握される 190 部門表の生産額に「構成率」を掛けて、推計を行う必要
がある。
なお、各分野における「構成率」は、国の産業連関表における「部門別品目別国内生産額
表」に基づき、対象となる財やサービスが、産業連関表の各産業分類のいずれにあてはまる
かを把握する等、当該産業分類における財やサービスのシェアを求めることにより把握した。
【本調査における「構成率」の例】
例:化粧品の生産額
「化粧品」は、国の産業連関表における統合小分類「石けん・界面活性剤・化粧品(2071)」
に含まれる。この生産額 2 兆 3,434 億円のうち、「化粧品」に該当する細品目(「香水・
オーデコロン(2071021101)」~「その他特殊用途化粧品(2071021503)」までの合計)
の生産額は 1 兆 4,915 億円であり、全体の 63.7%を占める。
横浜市産業連関表(190 部門表:国の統合小分類に該当)では「化粧品」のみの生産
額を見ることができないので、上記で算出した割合(63.7%)を「石けん・界面活性剤・
化粧品(2071)」の生産額に掛け、横浜市における化粧品の生産額を推計した。
また、経済センサスについても「化粧品の製造」のみの従業者数を見ることができな
いため、小分類「化粧品・歯磨・その他の化粧用調整品製造業」の従業者数に対して上
記の構成率を掛けることで当該産業の従業者数を推計した。
- 72 -
②
本市における医療・介護・健康関連産業の規模
①において把握した、各産業分類における医療・介護・健康関連サービスの各財やサービ
スの「構成率」を用い、当該産業のボリュームについて経済センサスを用い把握を試みた。
その結果、医療産業では約 10 万 5 千人、介護産業では約 5 万人、健康関連産業では、約 4
万 9 千人の従業者がいると推計され、医療・介護・健康関連産業全体では約 19 万 5 千人の
従業者がいると把握された。
産業分野別にみると、まず医療産業については「医療業」の割合が高く約 8 万人、次いで
「医療品・化粧品小売業」が 1 万 7 千人、
「洗濯業」が 1,680 人となっている。なお、繰り返
すが、ここでみている従業者数は、経済センサスの各々の産業分類別の従業者数に「構成率」
を掛けて推計した結果であり、経済センサスの調査結果そのものでないことに留意されたい。
表 2-1-5 本市医療産業の従業者数推計(推計値:民営ベース)
大分類
中分類
小分類
医療
医療関連
サービス
医薬品
医療機器
医療・福祉
医療業
生活関連サービス、娯楽
洗濯・理容・美容・浴場業
業
サービス業
廃棄物処理業
飲食店
卸売業,小売業
持ち帰り・配達飲食サービ
ス業
製造業
化学工業
生産用機械器具製造業
電気機械器具製造業
製造業
単位:人
従業者数
80,424
洗濯業
1,680
産業廃棄物処理業
食堂、レストラン
3
1,653
配達飲食サービス業
1,382
医薬品製造業
電子応用装置製造業
電気計測器製造業
医療用機械器具・医療用品
業務用機械器具製造業
製造業
パルプ・紙・紙加工品製造 その他のパルプ・紙・紙加
業
工品製造業
繊維工業
その他の繊維製品製造業
ゴム製品製造業
その他のゴム製品製造業
その他の小売業
医薬品・化粧品小売業
893
428
256
522
58
90
1
医薬品販売 卸売業,小売業
17,459
104,849
(資料:経済センサス基礎調査(2009 年))
※表中には経済センサス(2009 年)の数値に「構成率」をかけた値を記載しているため、経済センサスの値とは
一致しない
- 73 -
また、介護産業については、老人保健・介護事業の割合が非常に高く、約 4 万 7 千人であ
ることがわかった。
表 2-1-6 本市介護産業の従業員数推計(推計値:民営ベース)
大分類
中分類
小分類
介護
生活関連サービス、娯楽
業
社会保険・社会福祉・介
護事業
洗濯・理容・美容・浴場
業
サービス業
廃棄物処理業
医療・福祉
道路旅客運送業
運輸業、郵便業
介護関連サ
ービス
学術研究,専門・技術
サービス業
卸売業,小売業
サービス業(他に分類され
ないもの)
持ち帰り・配達飲食サー
ビス業
専門サービス業(他に分類
されないもの)
生産用機械器具製造業
電気機械器具製造業
持ち帰り・配達飲食サービ
ス業
その他の事業サービス業
その他の製造業
介護リフォ
ーム
建設業
法律事務所,特許事務所
1
公証人役場,司法書士事
務所,土地家屋調査士事
務所
行政書士事務所
配達飲食サービス業(再掲)
警備業
建築リフォーム工事業
家具・装備品製造業
1,680
392
総合工事業
輸送用機械器具製造業
47,173
産業廃棄物処理業(再
掲)
一般乗用旅客自動車運
送業
その他の道路旅客運送
業
情報通信機械器具製造
業
電気機械器具製造業
製造業
洗濯業(再掲)
その他のパルプ・紙・紙
加工品製造業
(再掲)
民生用電気機械器具製
造業
その他の輸送用機械器
具製造業
家具製造業
他に分類されない製造
業
映像・音響機械器具製造
業
パルプ・紙・紙加工品製
造業
介護機器・
用品
老人福祉・介護事業
単位:人
従業者数
3
0
1
0
1,382
126
58
4
1
17
39
25
86
50,988
(資料:経済センサス基礎調査(2009 年))
※表中には経済センサス(2009 年)の数値に「構成率」をかけた値を記載しているため、経済センサスの値とは
一致しない
- 74 -
さらに健康産業については、余暇活動のなかの宿泊業、遊技場、スポーツ施設提供業や、
健康増進・維持のなかの美容業や療術業などで 5,000 人を上回っており、ある程度大きな規
模で産業分野が存在していることがわかる。
表 2-1-7 本市健康関連産業の従業者数(推計値:民営ベース)
大分類
中分類
小分類
食料品製造業
製造業
健康維持・
増進
医療,福祉
生活関連サービス業,娯楽業
生活支援・
サポート
卸売業,小売業
生活関連サービス業,娯楽業
卸売業,小売業
宿泊業,飲食サービス業
生活関連サービス業,娯楽業
余暇
教育,学習支援業
製造業
生活関連サービス、娯楽業
就業・
社会参加
その他の食料品
化粧品・歯磨・その他の化
化学工業
粧用調整品製造業
その他の製造業
がん具・運動用具製造業
医療業
療術業
美容業
洗濯・理容・美容・浴場業 一般公衆浴場業
その他の公衆浴場業
各種食料品小売業
飲食料品小売業
その他の飲食料品小売業
機械器具小売業(自動車,
機械器具小売業
自転車を除く)
医薬品・化粧品小売業(再
その他の小売業
掲)
その他の生活関連サービス 他に分類されない生活関
業
連サービス業
農耕用品小売業
スポーツ用品・がん具・娯楽
その他の小売業
用品・楽器小売業
他に分類されない小売業
宿泊業
旅館,ホテル
その他の生活関連サービス
旅行業
業
その他の教育,学習支援業 教養・技能教授業
サービス用・娯楽用機械器具
業務用機械器具製造業
製造業
映画館
興行場(別掲を除く),興
行団
スポーツ施設提供業
娯楽業
公園,遊園地
遊戯場
その他の娯楽業
サービス業(他に分類されな
職業紹介・労働者派遣業 職業紹介業
いもの)
単位:人
従業者数
68
515
104
5,844
6,864
241
1,234
0
0
0
0
473
26
316
935
9,441
387
2,280
235
609
782
6,349
403
8,173
3,639
86
49,004
(資料:経済センサス基礎調査(2009 年))
※表中には経済センサス(2009 年)の数値に「構成率」をかけた値を記載しているため、経済センサスの値とは
一致しない
- 75 -
次いで、医療、介護、健康関連産業の市内生産額を、平成 17 年横浜市産業連関表により把
握した。
その結果、医療産業(含む医薬品、医療機器、医療関連産業)の本市における市場規模(市
内生産額)は約 1 兆 128 億円であると推計された。
なお、分野ごとの内訳をみると、まず医療産業については、医療業そのものが医療産業全
体の約 84%を占め、約 8,535 億円であり、その他医療関連サービスが合計で約 1,022 億円、
医療機器製造業が合計で約 398 億円、医薬品販売が約 112 億円、医薬品製造業が約 61 億円
と続く。
表 2-1-8 医療産業の財やサービスの生産額(推計値)(平成 17 年、単位:億円)
分野
医療
産業連関表の
産業分類
具体的な財・サービス
病院、診療所、歯科診療所、助産院等
寝具類洗濯
医療関連
医療(感染性)廃棄物処理
サービス
患者給食
医薬品
医薬品の開発・製造
画像診断システム、画像診断用 X 線関
連装置
生体現象計測・監視システム、医用検
体検査装置
処置用、生体機能補助・代行機器、治
医療機器
療用又は手術用機器、歯科用機器、歯
科材料、など
紙製衛生材料、衛生用品、紙おむつ
繊維製衛生材料、衛生用品
医療・衛生用ゴム製品
医薬品販売 医薬品販売
医療
洗濯・理容・美容・浴場業
廃棄物処理
飲食店
医薬品
電子応用装置
電気計測器
8,535
322
1
699
61
(参考)
国内生産額
(H17)
362,331
9,382
37
23,044
66,468
130
5,345
63
1,679
193
10,021
市内生産額
(H17)
その他の精密機械
その他の紙加工品
その他の繊維工業製品
その他のゴム製品
小売
3
4,806
0
756
7
395
112
4,168
10,128
488,431
(資料:各年横浜市産業連関表、総務省統計局産業連関表)
※表中の生産額(横浜市内、国)は産業連関表(2005 年)の数値に「構成率」をかけた値を記載している
次いで、本市の介護産業の市場規模(市内生産額)について把握する。介護産業の市内に
おける市場規模は約 2,747 億円と推計された。
なお、分野ごとの内訳をみると、まず介護事業が約 1,464 億円と介護産業全体の約 53%を
占め、また、介護関連サービスが約 1,098 億円、介護機器・用品が約 24 億円、バリアフリー・
介護リフォームが約 160 億円と推計された。
- 76 -
表 2-1-9 介護産業の財やサービスの生産額(推計値)(平成 17 年、単位:億円)
分野
産業連関表の
産業分類
具体的な財・サービス
介護
在宅介護サービス、施設介護サービス
寝具類洗濯
医療(感染性)廃棄物処理
移送サービス/介護タクシー
介護関連
サービス
権利擁護、成年後見サービス
配食、給食サービス
見守りサービス
紙おむつ
温水洗浄便座
介護機器・ 車いす
用品
医療用・介護用の電動ベッド
眼鏡
補聴器
介護
バリアフリー・介護リフォーム
リフォーム
介護
洗濯・理容・美容・浴場業
廃棄物処理
道路旅客輸送
その他の対事業所サービス
飲食店
その他の対個人サービス
その他の紙加工品
民生用電気機器
その他の輸送機械
家具・装備品
光学機械
民生用電子機器
住宅建築
1,464
322
1
38
11
699
27
3
2
1
2
13
3
(参考)
国内生産額
(H17)
63,875
9,382
37
1,096
299
23,044
768
4,806
691
136
342
1,288
181
160
4,633
2,747
110,579
市内生産額
(H17)
(資料:各年横浜市産業連関表、総務省統計局産業連関表)
※表中の生産額(横浜市内、国)は産業連関表(2005 年)の数値に「構成率」をかけた値を記載している
健康関連産業の市場規模(市内生産額)については、約 7,930 億円であると推計された。
内訳をみると、健康食品・サプリメントの製造や運動用具の製造、美容や温浴施設など健康
の維持及び増進にかかわる分野が約 1,241 億円、園芸・登山用品・釣具など趣味のサポート
や、旅行・ホテル等の観光、さらにはパソコン教室、外国語教室、スポーツクラブ等生活関
連サービスや娯楽業など、余暇活動をサポートする産業が約 5,093 億円、就業支援や労働者
派遣など、就業や社会参加にかかわる産業が約 1,388 億円であると推計された。
表 2-1-10 健康関連産業の財やサービスの生産額(推計値)(平成 17 年、単位:億円)
分野
12
56
10
1,164
(参考)
国内生産額
(H17)
550
14,915
4,262
33,886
その他の対個人サービス
209
6,023
小売
702
26,029
1,285
227
65,558
10,924
693
19,959
サービス用機器
娯楽サービス
194
1,992
15,947
86,506
その他の対事業所サービス
1,388
37,417
産業連関表の
産業分類
具体的な財・サービス
健康食品、サプリメント
健康維持・ 化粧品
増進
運動用具
理容、美容、温浴施設
生活支援・
家事サービス、結婚相談
サポート
園芸店、登山用品、釣具店等趣味のサ
ポート
旅行(旅行代理店)
旅行(宿泊施設)
余暇
パソコン、外国語会話。健康、音楽等
各種教室
娯楽機器
映画館・スポーツ施設ほか娯楽施設
就業・社会
職業紹介
参加
その他の食料品
石けん・界面活性剤・化粧品
がん具・運動用品
洗濯・理容・美容・浴場業
宿泊業
その他の運輸付帯サービス
その他の対個人サービス
市内生産額
(H17)
7,930
321,976
(資料:各年横浜市産業連関表、総務省統計局産業連関表)
※表中の生産額(横浜市内、国)は産業連関表(2005 年)の数値に「構成率」をかけた値を記載している
- 77 -
これら産業について、国の産業連関表を用い、我が国全体の生産額を推計すると、平成 17
年時点の医療産業の市場規模は約 48 兆 8,431 億円、介護産業は約 11 兆 579 億円、健康関連
産業は約 32 兆 1,976 億円であると推計された。
国の新成長戦略においては、平成 22 年時点の医療分野の市場規模は約 31 兆円、介護産業
は約 10 兆円、健康関連サービス産業は約 10 兆円と示されており、これと比較すると今回の
推計に用いた産業分野の範囲について、医療分野及び健康関連分野では、やや広めに把握し
ていることがうかがえる。
なお、10 年前の平成 7 年から平成 17 年までの伸びを、産業連関表の各産業分類の伸びや
事業所統計(経済センサス)の従業者数の伸び等で把握すると、医療産業の市内の市場規模
は平成 7 年の約 7,866 億円から平成 17 年の約 1 兆 128 億円へ、28.8%の増加となっている。
また介護産業は、平成 7 年の 1,652 億円から 10 年間で 66.3%の増加、さらに健康関連産業
は平成 7 年の約 7,726 億円から 10 年間で約 2.6%増加していると把握された。
表 2-1-11 平成 7 年から 17 年までの各産業市場規模の推計値(単位:億円)
平成 7 年
平成 12 年
平成 17 年
H12⇒H17
H7⇒H17
医療産業
7,866
9,361
10,128
8.2%
28.8%
介護産業
1,652
2,209
2,747
24.3%
66.3%
健康関連産業
7,726
8,313
7,930
△4.6%
2.6%
医療・介護・健康関連
16,151
18,841
19,780
5.0%
22.5%
産業(重複を除く)
(資料:各年横浜市産業連関表、総務省統計局「平成 17 年(2005 年)産業連関表 統合品目別細品目別国内
生産額表などをもとに、浜銀総研作成」
※医療産業及び介護産業の両方にまたがる産業分野については、医療産業と介護産業をそれぞれについて語る
場合は各々の産業に重複して計上しているため、これが各産業の数値を大きくしている要因の一つであるこ
とも考えられる。なお、医療・介護・健康関連産業の合計について語る場合、及び経済波及効果の推計等に
あたっては、この重複分は取り除き計算を行っている。
- 78 -
2-2
経済波及効果
(1)市内生産額から把握される市内への経済波及効果
上記でみた、医療・介護・健康関連産業につき、各々の産業にまたがって把握される産業分
野の重複分を取り除くと、市内生産額は合計で約 1 兆 9,780 億円となる。この医療・介護・健
康関連産業の市内生産による他産業への波及につき、平成 17 年横浜市産業連関表逆行列表を
用いて推計を行う。
推計方法は、平成 17 年の各部門の市内生産額を横浜市産業連関表逆行列表にかけあわせる
ことより、医療・介護・健康関連産業の動きに他産業も誘発され、効果となって表れる(間接
一次効果)。またこれら経済活動に伴い、雇用者に対し所得が生じ、この所得によりまた消費を
行うことにより、さらに経済が活発化する(二次波及効果)。これらを足し合わせたものが、経
済効果となる。
消費支出による経済波及効果の推計フロー
平成 17 年度生産額(横浜市産業連関表の産業部門別ベクトル)
↓←横浜市産業連関表(逆行列表)
一次波及効果(直接効果+間接一次効果)
↓←横浜市産業連関表(雇用者所得率)
消費支出により生まれる雇用者所得額
↓←家計調査(消費性向)
、横浜市産業連関表(家計消費構成比)
雇用者所得により生まれる消費額
↓←横浜市産業連関表(逆行列表)
二次波及効果 + 一次波及効果
= 医療・介護・健康関連業の経済波及効果
推計の結果、市内への経済波及効果は一次波及効果と二次波及効果の合計で約 3 兆 290 億円
となり、もとの生産額の約 1.53 倍となると推計された。
なお、本稿「はじめに」において述べたとおり、医療・介護・健康関連産業は、他の産業と
比較し人的な資源を多く投入する産業分野である。また移輸入率が低い(市内自給率が高い)
分野であることももう一つの特徴といえる。このことから、生産額に占める賃金などの割合が
高く(市民の所得に回る額の割合が大きく)、消費支出の増加につながり、結果として、二次波
及効果の額が大きくなることから、一次波及効果、二次波及効果を含めた市内経済波及効果も
比較的大きな数値となって表れる。
(2)従業者数
先に見たとおり、市内の平成 17 年時点の医療・介護・健康関連産業合計で、約 1 兆 9,780
億円の市場規模があると述べたが、産業連関表の雇用表を用い、当該事業に係る従業者数を推
計すると、市内合計で約 20 万 3,800 人が従事していると想定される。このうち、医療・保健
- 79 -
が約 7 万 7,856 人と最も多く、介護が 2 万 4,325 人と続く。また、上記(1)でみた経済波及
効果のとおり、医療・介護・健康関連産業の市内生産の他産業への波及により、全体で 27 万
3,222 人の従業者が誘発されることが推計された。
なお上記でみた従業者数は、生産額の波及による効果(経済波及効果)の雇用に及ぼす影響
を把握するために推計した値であり、P73~75 でみた経済センサスによる従業者数とは異なる
ことに留意されたい。
- 80 -
2-3
横浜の将来の高齢者像
○高齢化の状況
・横浜市における高齢者人口の推移と今後の見通し
…全国平均に比べるとやや進行は遅いが、横浜市内においても高齢化は着実に進行
⇒市内においても、
「医療・介護・健康関連産業」は今後ますます重要性の高まる分野
○経済的に余裕のある高齢者の存在
・横浜市内の高齢者の貯蓄状況:全国的に見て、比較的高い水準
⇒医療・介護、及び健康関連サービスの消費が期待される
○「元気な高齢者」の存在
・横浜市内の高齢者の生活実態や意識に関する調査(市民意識調査等)より、健康への高い意
識や、日常生活の充実を望む高齢者の存在が確認される
⇒「医療」・「介護」以外の、「健康関連産業」の潜在的な市場も大きいことが期待される
(1)人口・世帯
将来の横浜市における人口構成について、65 歳未満の人口は減少し、65 歳以上人口は数・
割合ともに増加する見込みとなっている。65 歳以上の人口が全体に占める割合である高齢化率
は、平成 30 年(2018 年)には 25.0%を超え、4 人に 1 人は高齢者という状況になることが予
想されている(図 2-3-1)。また、高齢者の中でも、75 歳以上の後期高齢者の数・割合が次第に
増加していくことが予想される。
なお、性別により平均寿命に違いがあることから、65 歳以上人口は男性よりも女性の方が多
くなる。平成 37 年(2025 年)は団塊の世代が後期高齢者に差し掛かる時期であるが、例えば、
その際の横浜市の「75~79 歳」の人口は、男性に比べ女性の方が約 20 万人多い状況になると
予想される(図 2-3-2)。
また、世帯構成としては、
「高齢夫婦のみの世帯」や「高齢単身世帯」が増加していくことが
予想される。平成 22 年までの過去 20 年間で各世帯の世帯数、ならびに一般世帯に占める割合
は増加傾向で推移してきた(図 2-3-3)。このような傾向は今後も続くことが予想され、例えば
平成 37 年の後期高齢者の単身世帯数は平成 22 年に比べて約 2 倍となるものと想定される(図
2-3-4)。
図 2-3-1 横浜市の将来人口推計・高齢化率
4,000,000人
40.0%
3,500,000人
35.0%
3,000,000人
30.0%
2,500,000人
25.0%
2,000,000人
20.0%
1,500,000人
15.0%
1,000,000人
10.0%
0~14歳
15~64歳
65歳以上
H42
H41
H40
H39
H38
H37
H36
H35
H34
H33
H31
H32
H30
H29
H28
H27
H26
H25
H24
H23
H22
H21
H20
0.0%
H19
0人
H18
5.0%
H17
500,000人
高齢化率
(資料:横浜市将来人口推計(2005 年基準、出生中位・死亡中位))
- 81 -
図 2-3-2 平成 37 年(2025 年)の性別・5 歳階級別推計人口
180,000 人
160,000 人
140,000 人
120,000 人
100,000 人
80,000 人
60,000 人
40,000 人
20,000 人
0~
4歳
5~
9
10 歳
~
14
15 歳
~
19
20 歳
~
24
25 歳
~
29
30 歳
~
34
35 歳
~
39
40 歳
~
44
45 歳
~
49
50 歳
~
54
55 歳
~
59
60 歳
~
64
65 歳
~
69
70 歳
~
74
75 歳
~
79
80 歳
~
84
85 歳
~
89
90 歳
~
94
95 歳
歳
以
上
0人
男性
女性
(資料:横浜市将来人口推計(2005 年基準、出生中位・死亡中位))
図 2-3-3 高齢夫婦のみ世帯、高齢単身世帯の推移
200,000世帯
10.0%
180,000世帯
9.0%
160,000世帯
8.0%
140,000世帯
7.0%
120,000世帯
6.0%
100,000世帯
5.0%
80,000世帯
4.0%
60,000世帯
3.0%
40,000世帯
2.0%
20,000世帯
1.0%
0.0%
0世帯
平成2年
高齢夫婦世帯
平成7年
平成12年
高齢単身世帯
平成17年
高齢夫婦世帯割合
平成22年
高齢単身世帯割合
(資料:国勢調査)
- 82 -
図 2-3-4 年齢階層別高齢単身世帯の推移
200,000世帯
180,000世帯
40,435
160,000世帯
31,072
21,867
140,000世帯
120,000世帯
100,000世帯
14,476
64,514
9,577
76,557
89,678
51,900
80,000世帯
37,611
60,000世帯
40,000世帯
20,000世帯
50,433
67,889
59,134
66,855
58,193
0世帯
平成17年
平成22年
平成27年
65~74歳
75~84歳
平成32年
平成37年
85歳以上
(資料:横浜市第 5 期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画)
(2)住まい
高齢者の住まいの特徴として、最も割合が高いのは「持ち家の戸建て住宅」であるが、近年
では、
「持ち家の集合住宅」に居住している方の割合が増加傾向にあることがわかる(図 2-3-5)。
年代別にみると、若い世代ほど「持家共同住宅」の割合が高いことから、今後より一層その傾
向が強くなっていくことも予想される(図 2-3-6)。
また、団塊の世代の方に対して平成 37 年ごろの住まいのイメージについて尋ねたところ、
「現
在の住まいに住み続けている」が 7 割を超えているが、「バリアフリー化された利便性の高い
住まいに引っ越ししている」、
「有料老人ホームなど、介護も受けられる住まい(ケア付き住宅)
に引っ越している」との回答も 2 割強となっていることが把握される(図 2-3-7)。
このほか、横浜市では、今後より一層高齢化が進んでいくことなどを背景として、今後横浜
市では「高齢者向けの賃貸住宅及び老人ホーム等の供給の促進」、「高齢者の賃貸住宅への入居
支援」等の取り組みを進めていく計画としている(横浜市
高齢者居住安定確保計画)。これら
から、今後はユニバーサルデザインの住宅の増加やバリアフリー化の推進、サービス付き高齢
者向け住宅の供給などの動きが見られ、高齢者の生活居住の場が次第に変化していく可能性が
あることが考えられる。
- 83 -
図 2-3-5 高齢者の現在の居住形態
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
2.9
H22調査
(n=2,524)
64.2
19.8
6.3
H19調査
(n=2,529)
65.1
17.6
8.1
5.4
1.5
2.1
H16調査
(n=3,976)
1.3
1.3
6.0
7.1
14.4
68.5
5.8
1.3
持ち家の戸建て住宅(借地に持ち家の場合も含む)
公営住宅
その他
持ち家の集合住宅
民間賃貸(アパート・マンション)
無回答
(資料:横浜市第 5 期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(平成 16 年度・平成 19 年度・平成 22 年
度横浜市高齢者実態調査(高齢者一般調査)))
図 2-3-6 世帯主の年齢別現在の居住形態
0%
40~49歳
50~59歳
10%
20%
30%
40%
30.0
50%
60%
34.0
40.4
4.9
持家一戸建・長屋建
6.1
27.9
59.7
65歳以上
公的借家
90%
民営借家木造
100%
17.6
8.5
6.7
18.9
持家共同住宅
80%
9.4
31.8
49.3
60~64歳
70%
4.0
10.7
7.9
10.3
民営借家非木造
2.5
7.5
6.5
0.7
4.4 0.3
給与住宅
(資料:横浜市高齢者居住安定確保計画(平成 20 年住宅・土地統計調査)
)
図 2-3-7 団塊の世代が抱く平成 37 年頃の住居のイメージ
有料老人ホームな
ど、介護も受けられ
る住まい(ケア付住
宅)に引っ越してい
る
6.7%
バリアフリー化され
た利便性の高い住
まいに引っ越してい
る
13.9%
その他
8.6%
現在の住まいに住
み続けている
70.8%
(資料:横浜市第 5 期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画)
- 84 -
(3)経済状況
高齢者のうち就労している人の割合は 2 割強となっており、前期高齢者に限れば約 3 割の人
が就労している状況にある。ただし、75 歳以上では就労している人の割合は約 1 割、約 9 割の
人は仕事をしていない(図 2-3-8)。
全国一般の状況として、世帯主が高齢者の無職世帯では、収入のうち約 9 割が公的年金など
の社会保障給付であり、家計は収入よりも支出の方が多い「赤字」となっている。不足分は預
貯金などの金融資産を取り崩すなどして賄われているが、その額は平均で月額約 4 万円という
状況にある(総務省「統計からみた我が国の高齢者(平成 23 年 9 月 16 日)」)
。
ただし、横浜市において高齢者がいる世帯の年間収入、ならびに貯蓄額の分布をみると、全
国的平均に比べ比較的経済状況がよい世帯の割合が高いことが明らかにされている(図 2-2-9、
図 2-3-10)。
これらのことから、横浜における将来の高齢者について、後期高齢者の割合が増えていくに
ともなって、就労による収入を得られない方が増えていくことが予想されるが、全国的な状況
から比較すると、比較的高い経済水準を保っている方が多い可能性があることがうかがえる。
図 2-3-8 高齢者の就労の状況
0%
10%
高齢者全体
(n=2,529)
30%
40%
50%
22.4
前期高齢者(65~74歳)
(n=1,649)
後期高齢者(75歳以上)
(n=868)
20%
60%
70%
75.8
29.6
仕事はしていない
100%
1.0
86.3
仕事をしている
90%
1.9
69.3
10.2
80%
3.5
無回答
(資料:横浜市第 5 期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(平成 22 年度横浜市高齢者実態調査(高齢
者一般調査)))
- 85 -
図 2-3-9 高齢者がいる世帯の年間収入の分布(全世帯、高齢者世帯:全国・横浜市)
30.0%
25.0%
20.0%
15.0%
10.0%
5.0%
~
~
上
満
以
未
円
万
90
0
万
円
円
万
80
0
横浜市高齢者世帯
1,0
00
90
0
1,0
00
万
万
円
円
円
万
~
円
万
満
未
未
満
満
円
80
0
万
70
0
万
全国高齢者世帯
70
0
50
0
60
0
万
万
円
円
~
~
60
0
万
50
0
~
円
万
40
0
未
満
未
円
未
円
円
万
~
円
万
30
0
満
満
未
満
未
40
0
万
30
0
万
20
0
10
0
万
円
円
~
~
20
0
10
0
万
万
円
円
円
未
未
満
満
0.0%
全国全世帯
(資料:横浜市第 5 期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(平成 22 年度横浜市高齢者実態調査(平成
22 年国民生活基礎調査、平成 22 年度横浜市高齢者実態調査)
))
図 2-3-10 高齢者がいる世帯の貯蓄額の分布(全世帯、高齢者世帯:全国・横浜市)
30.0%
25.0%
20.0%
15.0%
10.0%
5.0%
0.0%
300 万円 未満
300 万円~
700 万円
未満
700 万円~
1,000 万円
未満
全国高齢者世帯
1,000 万円~ 1,500 万円~
1,500 万円
2,000 万円
未満
未満
横浜市高齢者世帯
2,000 万円~ 3,000 万円 以
3,000 万円
上
未満
全国全世帯
(資料:横浜市第 5 期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(平成 22 年度横浜市高齢者実態調査(平成
22 年国民生活基礎調査、平成 22 年度横浜市高齢者実態調査)
))
- 86 -
(4)関心事・ライフスタイル
ふだんの心配ごと・悩みについてみると、
「健康のこと」が最も多くなっており、高齢者にと
って健康保持に関する問題は非常に大きいことが把握される(図 2-3-11)。関連して、健康増
進のために取り組んでいることとして、「ウォーキングや体操など、定期的に運動をしている」
との回答は 5 割を超える状況にあることも明らかになっている(横浜市「平成 22 年度横浜市
高齢者実態調査(高齢者一般調査)
」)。
このような高齢者の関心事の特徴は家計の支出の状況からも把握でき、全国一般の状況とし
て、すべての世帯の平均における支出の状況との比較からは、高齢者の方がいる世帯では「保
健医療」の分野に対する支出が多いという特徴があることが把握される(図 2-3-12)。また、
単身世帯の支出の状況から、「保健医療」の分野の内訳としては、「医薬品」や「保健医療サー
ビス」については女性よりも男性において、
「健康保持用摂取品」や「保健医療用品・器具」に
ついては男性よりも女性において支出が多い傾向にあることも見てとれる。
同様に、全国一般の状況について、スポーツ全般で見たときには年齢を経るごとに実施する
人の割合が減少している傾向にある中で、
「ウォーキング・軽い体操」については、高齢者にお
いても比較的高い割合で実施されていることが把握される(図 2-3-13)。
また、趣味・娯楽に関する活動として、比較的高い年齢層で行動率が高くなっているのは、
男性・女性ともに「園芸・庭いじり・ガーデニング」であり、そのほか男性では「日曜大工」
や「囲碁」、女性では「演芸・演劇・舞踊鑑賞」、
「華道」などがあることが把握される(図 2-3-14)。
これらについては現在の高齢者のライフスタイルに関するものであり、世代が変わればその内
容も変化する可能性があるが、特徴として、男性では日常的な生活の中での創作活動に対して、
女性では文化芸能活動に対して関心が高い傾向にあることがうかがえる。
このほか、今後の高齢者のライフスタイルの変化という点に関しては、インターネット利用
率が高まっているという特徴があることが挙げられる。年齢階層別のインターネット利用率は
近年高齢者層で伸びを見せており(図 2-3-15)、また、高齢者世帯のインターネットを利用し
た支出額も増加傾向にある(図 2-3-16)。これらのことから、高齢者層において、今後よりい
っそうインターネットを介したサービス利用が高まっていく可能性があることがうかがえる。
- 87 -
図 2-3-11 高齢者の普段の心配ごと・悩み
0%
10%
20%
30%
40%
50%
自分の健康のこと
60%
53.8
42.2
配偶者の健康のこと
18.8
生活費等経済的なこと
ひとり暮らしや孤独になること
12.4
10.8
病気などのの時に面倒を見てくれる人がいないこと
精神的なゆとりがないこと
4.6
趣味や生きがいがないこと
4.1
時間的なゆとりがないこと
3.3
安心して住める場所がないこと
2.7
その他
2.9
12.6
心配事や悩みはない
9.9
無回答
(資料:横浜市第 5 期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(平成 22 年度横浜市高齢者実態調査(高齢
者一般調査 n=2,524)))
図 2-3-12 すべての世帯の平均における消費支出の構成比に対する比率
3.50
3.00
2.50
2.00
1.50
1.00
0.50
そ の他 の消 費 支 出
教養娯楽
教育
交 通 ・通 信
男性単身の世帯
(保 健 医 療 サ ー ビ ス )
(保 健 医 療 用 品 ・器 具 )
(健 康 保 持 用 摂 取 品 )
世帯主が高齢者の世帯
(医 療 品 )
保健医療
被 服 及 び履 物
家 具 ・家 事 用 品
光 熱 ・水 道
住居
食料
0.00
女性単身の世帯
(資料:総務省「統計からみた我が国の高齢者(平成 23 年 9 月 16 日)」(家計調査))
- 88 -
図 2-3-13 年齢階層別、スポーツの行動者率
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
男性、ウォーキング・軽い体操
以
上
74
歳
75
歳
69
歳
70
~
64
歳
65
~
59
歳
55
~
60
~
54
歳
49
歳
50
~
44
歳
45
~
40
~
39
歳
34
歳
スポーツ全般
35
~
25
~
30
~
29
歳
24
歳
19
歳
20
~
15
~
10
~
14
歳
0%
女性、ウォーキング・軽い体操
(資料:総務省平成 18 年社会生活基本調査)
図 2-3-14 年齢階層別、趣味・娯楽の行動者率
60%
50%
40%
30%
20%
10%
上
以
74
歳
75
歳
69
歳
70
~
64
歳
65
~
59
歳
60
~
54
歳
55
~
49
歳
男性、園芸・庭いじり・ガーデニング
男性、囲碁
女性、華道
50
~
44
歳
45
~
39
歳
40
~
34
歳
35
~
29
歳
30
~
24
歳
25
~
19
歳
20
~
15
~
10
~
14
歳
0%
男性、日曜大工
女性、演芸・演劇・舞踊鑑賞
女性、園芸・庭いじり・ガーデニング
(資料:総務省平成 18 年社会生活基本調査)
- 89 -
図 2-3-15 年齢階層別、インターネット利用率の推移
95.5 96.3 95.6 96.3 97.2 97.4 95.796.395.1
95.4
92.0 94.2
100%
86.1 86.6
90%
82.2
80%
70%
71.6
68.968.6
65.5
70.1
63.4
58.0
60%
57.0
50%
39.2
37.6
40%
32.9
30%
27.7
18.5
14.5
20%
20.3
10%
0%
6~12歳
13~19歳
20~29歳
30~39歳
平成20年度末(n=12,791)
40~49歳
50~59歳
60~64歳
平成21年度末(n=13,928)
65~69歳
70~79歳
80歳以上
平成22年度末(n=59,346)
(資料:総務省通信利用動向調査)
図 2-3-16 世帯主が高齢者の世帯のインターネットを利用した支出総額の推移(平成 14 年~平
成 22 年)
20,000円
18,000円
16,000円
14,000円
12,000円
10,000円
8,000円
6,000円
4,000円
2,000円
0円
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
平成19年
平成20年
平成21年
平成22年
(資料:総務省「統計からみた我が国の高齢者(平成 23 年 9 月 16 日)」(家計消費状況調査))
- 90 -
(5)将来の高齢者像の捉え方
将来の高齢者像について、人口やライフスタイルなど、足元の状況から推察すると上記のよ
うな変化が予想されるが、長期的にどのように変化していくかの展望も重要である。
例えば、高齢者人口・高齢化率について、今後増加の傾向で推移していくことを示したが、
より長期的な観点からみると、全国的な傾向として高齢者人口は 2042 年前後にピークを迎え、
その後は継続的に人口減少が進むと推計される(図 2-3-17)。
高齢化率に関しても継続的に増加傾向が続くわけではなく、高齢化率が 40%を超えたところ
でほぼ横ばいになるものと予想される。また、仮に今後出生率が高まっていけばその水準は
35%程度になるとも考えられ、これらの長期的な推移を認識しておくことも重要である。
このほか、
「高齢者」をどのように捉えていくのかという点についても、今後変化が起きてい
く可能性がある。内閣府の平成 24 年版高齢社会白書では、
「高齢者を 65 歳以上の者として年
齢で区切り、一律に支えが必要であるとする従来の「高齢者」に対する固定観念が、多様な存
在である高齢者の意欲や能力を活かす上での阻害要因となっていると考えられる」とし、
「高齢
者」の捉え方の意識改革が必要であるとされている。65 歳を超えても元気な方や、就労してい
る方、社会参加活動を通じて活躍している方等が多くなっているという実態をどのように捉え
ていくか、また、そのような方々を今後どのように支援していくかという視点も必要であるも
のと考えられる。
図 2-3-17 日本の全国将来推計人口(2011 年~2060 年)
45.0%
40,000,000人
40.0%
35,000,000人
35.0%
30,000,000人
30.0%
25,000,000人
25.0%
20,000,000人
20.0%
15,000,000人
15.0%
10,000,000人
10.0%
5,000,000人
5.0%
0人
0.0%
20
10
20
12
20
14
20
16
20
18
20
20
20
22
20
24
20
26
20
28
20
30
20
32
20
34
20
36
20
38
20
40
20
42
20
44
20
46
20
48
20
50
20
52
20
54
20
56
20
58
20
60
45,000,000人
65歳以上人口(死亡中位)
65歳以上割合(出生中位、死亡中位)
65歳以上割合(出生高位、死亡中位)
(資料:国立社会保障人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成 24 年 1 月推計))
【コラム①:「人生二毛作」という考え方】
かつては「人生 50 年」といわれていた時代もあったが、平均寿命(2012 年)は男性が
79.44 歳、女性が 85.90 歳まで伸びており、定年後もまだ 20 年以上の時間がある。人生を
実りあるものにするためには、老後のライフデザインが重要である。
本調査にて意見を求めた有識者は、
「『老後は老人クラブで活動』というのは過去の固定
観念であり、今後は、社会に対して『全員参加で、生涯現役』というのがあるべき姿だ」
と指摘している。柏市の事例のように、これまでの経験を活かし、セカンドライフを豊か
にするための仕組みが求められている。
- 91 -
(6)患者数、及び要介護認定者数の推計
医療・介護・健康関連産業の将来の市場規模把握を行う前提として、まず将来時点における
全国の患者数及び要介護認定者数の動きを把握すべく、簡易推計を行った。
①
患者数
まず、患者数についてであるが、厚生労働省の患者調査によると、入院、通院を併せて、
平成 17 年時点における全国の患者数は合計で約 829 万人であるとされている。将来推計に
あたり、平成 11 年から平成 23 年までの 5 歳階級別受療率をもとに、将来における受療率を
推計し、国立社会保障・人口問題研究所が平成 24 年 1 月に推計した将来推計人口(出生率、
死亡率ともに中位のもの)に乗じることにより患者数を推計した。その結果、平成 37 年(2025
年)における患者数は、平成 17 年時点より 6.9%減の約 773 万人となると推計された。年齢
別にみると、特に生産年齢(15~64 歳)の落ち込みが大きく、平成 17 年の約 397 万人から
約 271 万人へ、△31.7%と大きく減少する一方、高齢者(65 歳以上)は約 355 万人から約
426 万人へと、約 20%増加すると推計された。
また、市内の患者数についても、市の人口構成比から推測すると同様に高齢者(65 歳以上)
の患者が増加すると考えられる。。
表 2-3-1 平成 17 年と平成 37 年における患者数の簡易推計値(単位:千人)
平成 17 年
全国
②
患者数計
うち 15 歳未満
15~64 歳
65 歳以上
平成 37 年
伸び率
8,294
7,725
△6.9%
779
753
△3.3%
3,970
2,710
△31.7%
3,545
4,262
20.2%
(厚生労働省「患者統計」、人口問題研究所「将来推計人口」)
要介護認定者数
また、介護保険の要介護認定者については、平成 17 年時点で約 435 万人が認定を受けて
いる。要介護認定者の認定率については、平成 12 年の介護保険制度創設以降、制度の周知や
事業所数の増加により、潜在ニーズの顕在化などにより大きく認定率が伸びてきた経緯があ
るが、平成 20 年以降ほぼ横ばいとなってきている。そこで、直近の平成 23 年現在の認定率
を、患者数と同じく国立社会保障・人口問題研究所の推計した将来推計人口に乗じることに
より、将来時点の認定者数を推計した。その結果、平成 37 年(2025 年)における要介護認
定者は大幅に増加し、約 818 万人(平成 17 年比約 88%の増)となると推計された。
一方横浜市については、過去の年齢別の認定率等の情報が開示されていないため、推計が
難しい。そこで、横浜市健康福祉局が作成した「第5期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保
険事業計画」に記載されている、要介護認定者数の将来推計をみると、平成 17 年時点では約
9 万 7 千人であった市内の要介護認定者数が、平成 37 年には、21 万 5 千人へと、約 2.2 倍
になると想定されている。
これらの結果から、まず病院や診療所の患者数は、全国的には人口の減少及び人口構造の
変化や受療率の変化などから全体としては減少傾向にあるものの、横浜市では特に高齢者を
- 92 -
中心に増え続け、全体としても微増となっていることがわかった。また、要介護認定者数は、
全国的にも横浜市も今後大きく増加することが見込まれているが、これまで認定率が全国と
比べ低めの数値であった横浜市では、今後急激に要介護認定者数が増加することが把握され
た。
表 2-3-2 平成 17 年と平成 37 年における要介護認定者数の推計値(単位:千人)
平成 17 年
平成 37 年
伸び率
全国
要介護認定者数
4,345
8,180
88.3%
横浜市
要介護認定者数
97
215
121.6%
※厚生労働省「介護給付費実態調査」、人口問題研究所「将来推計人口」、等を基に浜銀総研推計。
横浜市については、「第 5 期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」における推計値を記載している
- 93 -
2-4
将来の市場規模に応じた市内における経済効果の分析
(1)過去の生産額の伸び等から見た将来の医療・介護・健康関連産業の試算
今後の医療・介護・健康関連産業の将来における市場規模を把握するにあたり、過去から今日
までの医療・介護・健康関連産業に属する各産業分野の伸び率をもとに、推計を試みた。具体的
にはデータの揃う平成 7 年から平成 17 年の産業連関表(108 部門)における各々の産業分野の市
内生産額の伸び、及び平成 8 年から平成 18 年の事業所統計における従業者数の伸びをもとに、平
成 37 年時点における医療・介護・健康関連産業の市場規模把握を行った。
その結果、これまで見たとおり市内の医療・介護・健康関連産業は、平成 17 年には総額で 1
兆 9,780 億円の市場規模(市内生産額)を持っているが、これが 20 年後の平成 37 年(2035 年)
時点には、2 兆 7,416 億円にまで伸びると推計された。なお、20 年間の伸び率は 38.6%である。
分野別にみると、医療産業の市内における市場規模は平成 17 年時点では約 1 兆 128 億円であ
るが、平成 37 年には約 1 兆 4,793 億円(平成 17 年比 46%増)となると推計された。また介護産
業については、同じく平成 17 年の 2,747 億円から、平成 37 年には 4,994 億円と、約 81.8%の増
加、さらに平成 37 年の健康関連産業の市場規模は 8,529 億円(平成 17 年比 7.5%の増)となる
と推計された。
表 2-4-1 平成 7 年から 17 年まで伸び(※)に基づく、市場規模(市内生産額)の試算
実績値
平成 7 年
将来推計値
平成 17 年
平成 27 年
伸び率
平成 37 年
H17→H37
医療産業
786,558
1,012,847
1,251,945
1,479,305
46.1%
介護産業
165,222
274,684
385,318
499,447
81.8%
健康関連産業
772,614
793,019
830,488
852,874
7.5%
1,615,161
1,978,035
2,371,965
2,741,624
38.6%
医療・介護・健康関連産業 計
※平成 7 年、12 年、17 年の数値に基づいた線形回帰分析による。
各産業と産業連関表産業分野との対応は以下のとおり。
なお、医療・介護・健康関連産業の合計については、重複分を取り除いて算出している
医療産業┬医療サービス
-医療
├医療関連サービス-洗濯・理容・美容・浴場業、廃棄物処理、飲食店
├医薬品
-医薬品
├医療機器
-電子応用装置、電気計測器、その他精密機器、その他紙加工品、その他ゴム製品
└医薬品販売
-小売
介護産業┬在宅・施設介護 -介護
├介護関連サービス-洗濯・理容・美容・浴場業、廃棄物処理、道路旅客輸送、その他対事業所サービス、飲食店、
|
その他対個人サービス
├介護用品・機器 -その他の紙加工業、民生用電気機器、その他の輸送機械、家具・装備具、光学機械、
|
民生用電子機器
└介護リフォーム -住宅建築
健康関連産業┬健康維持増進-その他食料品、石けん・界面活性剤・化粧品、玩具・運動用品、洗濯・理容・美容・浴場業
├生活支援
-その他対個人サービス
├余暇
-小売、宿泊業、その他の運輸付帯サービス、サービス用機器、娯楽サービス
└就業社会参加-その他対事業所サービス
※医療関連サービス、介護、介護関連サービス、生活支援・サポートの各分野を構成する産業分類の一部につい
ては、平成 7 年時点の産業連関表に数値のないものがあるため、この場合事業所統計の従業者数の伸びを基に、
さかのぼる形で独自に推計を行った。
- 94 -
図 2-4-1 平成 7 年から 17 年まで伸び(※)に基づく、市場規模(市内生産額)の試算
30,000億円
25,000億円
20,000億円
15,000億円
10,000億円
5,000億円
0億円
平成7年
医療産業 平成17年
介護産業 平成27年
健康関連産業 平成37年
医療・介護・健康関連産業計
※平成 7 年、12 年、17 年の数値に基づいた線形回帰分析による。
表 2-4-1 の数値を基にグラフを作成。なお、医療・介護・健康関連産業の合計については、重複分を取り除いて算出し
ている
- 95 -
第3章 医療・介護・健康関連産業の振興や企業支援に向けた基
本的な考え方
3-1
今後成長が期待できる分野とその可能性の明確化
本節では、これまでの調査・分析に基づき、医療・介護・健康関連産業における今後の成長性
についての整理を行う。
(1)医療産業における今後の成長性
①
患者数の将来推計
本市における患者数は今後も高齢者(65 歳以上)の増加が見込まれている。このことから、
医療そのもの、及び医療に付随する製品やサービスについても、潜在的なニーズは増加する
可能性があることが伺える。ただし、医師や看護師といった人材の確保、及び医療制度の改
定や可処分所得の状況によってはニーズが顕在化しない可能性もあるので、この点には注意
が必要である。
表 3-1-1 (再掲)平成 17 年と平成 37 年における患者数の簡易推計値(単位:千人)
平成 17 年
全国
②
患者数計
うち 15 歳未満
15~64 歳
65 歳以上
平成 37 年
伸び率
8,294
7,725
△6.9%
779
753
△3.3%
3,970
2,710
△31.7%
3,545
4,262
20.2%
(資料:厚生労働省「患者統計」、人口問題研究所「将来推計人口」)
医療産業における成長性の整理
上記①で見たように、横浜市においては今後患者数が増加することが予想されており、そ
れに伴って医療サービスの成長が期待される。医療に関連した製品や関連サービスについて
は、規制改革等の大きな変化がない限り、基本的には医療と連動して市場の成長や衰退が起
こると考えられるため、担い手の確保の状況が限定要因となる可能性はあるものの、医療の
成長に伴い、このような周辺領域についても成長が予想される。ただし、本市においてもい
ずれは患者の減少が予想されることから、長期的な展望を考える場合においては注意が必要
である。
- 96 -
(2)介護産業における今後の成長性
①
要介護認定者数の将来推計
2-3(6)で見たように、本市の「第5期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」
では、要介護認定者数の将来推計について、平成 17 年時点の約 9 万 7 千人が平成 37 年には、
21 万 5 千人へと、約 2.2 倍になると想定されている。このように大きな伸びが予想されてい
ることから、介護サービスの需要が大きく増加すると考えられる。医療と同様に、サービス
提供の担い手の問題から、公的な介護制度の中だけですべてのニーズに十分な対応ができる
とは限らないが、潜在的な需要が大きく成長することが見込まれる。
図 3-1-1 (再掲)要介護認定者数の推計(平成 17 年→37 年)
0
50,000
100,000
150,000
約97,000人
平成17年
200,000
250,000
2.2 倍
約215,000人
平成37年
(資料:第 5 期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画)
②
介護産業における成長性の整理
今後の要介護認定者の増加により、介護サービスの成長、及び介護サービスを支える製品
や関連サービスの成長が期待される。ただし、医療と同様に、事業者における人材の確保、
及び介護保険制度の改定などにより、供給側が需要に対応しきれない部分が生じる可能性が
あるという点には注意が必要である。
基本的には介護の本体が成長し、その周辺に位置する製品やサービスの成長を牽引するこ
とが市場規模拡大の主体となると考えられるが、本調査で実施したアンケートやヒアリング
からは、いくつかの分野の成長性について、市内事業者における今後の見通しに関する情報
が得られた。それらをまとめると、以下のようになる。
《配食サービス等の生活支援サービス》
本書 2-3 でも見たように、今後は単身世帯や高齢者のみの世帯が増えていくことが予想さ
れている。このことから、配食や身の回りの世話、及び高齢者の権利擁護や見守りサービス
といった、日常生活をサポートするサービスの需要は増加が見込まれる。
- 97 -
図 3-1-2 年齢階層別高齢単身世帯の推移
200,000世帯
180,000世帯
40,435
160,000世帯
31,072
21,867
140,000世帯
120,000世帯
14,476
100,000世帯
64,514
9,577
76,557
89,678
51,900
80,000世帯
37,611
60,000世帯
40,000世帯
20,000世帯
50,433
67,889
59,134
66,855
58,193
0世帯
平成17年
平成22年
平成27年
65~74歳
75~84歳
平成32年
平成37年
85歳以上
(資料:横浜市第 5 期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画)
【コラム②:配食サービスの利用状況】
高齢者のみならず、単身者、夫婦共働きの世帯など、配食サービスは幅広い層で利
用されている。1 食分当たりの価格は 600 円を切るのが相場であり、利用者を増やす
ことで採算が取れるという領域であるため、きめ細かなサービスなど、他社との差別
化を通じて顧客を獲得していくことが課題となる。
ヒアリングを実施した事業者では、料理の配達とともに、利用者の見守りサービス
も実施しており、緊急時の通報や、振り込め詐欺の防止につながったケースもあると
いう。このように、付加的なサービスとして安全・安心な社会を作る取り組みが行わ
れていることも注目される。
《住宅リフォーム》
住宅リフォームについて、国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査」では、
「高齢者・身体障害者対応」を目的としたリフォーム工事の件数は平成 21 年度から 22 年度
にかけて減少が続いていたが、23 年度にかけて多少持ち直すという様子が見られた。
本調査にて実施した、市内のリフォーム事業者に対するヒアリングでは「退職後のタイミ
ングで工事を行うことが多い」という回答が得られているが、現在は団塊世代の退職を迎え、
大きな需要が見込まれることから、今後成長する可能性はあると思われる。ただし、どの時
点でピークを迎えるのかという点には注意が必要と考えられる。
- 98 -
図 3-1-3 「高齢者・身体障害者対応」を目的としたリフォーム工事の受注件数の推移(全国)
300,000件
250,000件
200,000件
150,000件
173,676
178,718
164,723
158,101
85,807
70,701
70,339
86,548
平成20年度
平成21年度
平成22年度
平成23年度
100,000件
50,000件
0件
主目的
主目的以外
(資料:建築物リフォーム・リニューアル調査(国土交通省))
【コラム③:住宅リフォームの現況】
本調査でヒアリングを行った事業者によれば、介護リフォームを利用する方は非常に
高齢で、必要に迫られて工事を依頼される。つまり、すでに生活の中で支障が出ており、
本来であれば、もっと早いうちに工事を行うべきであるという。
ちょっとした段差の解消や手すりの設置などは、通常のリフォームのついでに実施さ
れていることもあるが、こちらについては、潜在的な需要が大きいと考えられている。
「バ
リアフリー工事」を目的とした工事だけではなく、通常のリフォームにプラスして実施
される部分についても注目すると、今後の成長についての期待はより大きくなると思わ
れる。
- 99 -
(3)健康関連産業における今後の成長性
①
健康関連産業の需要の見通しについて
2-3 において本市の高齢者の将来像について整理したが、その中で「貯蓄額が全国と比較
しても多い(購買力がある)」
、
「運動や旅行、趣味の活動など、健康な生活に対する関心が高
い」という特徴が確認された。これは国の新成長戦略において健康関連産業を成長分野と位
置付けるための前提条件と合致しており、本市においても健康関連産業の潜在的な需要が存
在していることが伺える。
本調査実施したアンケートにおいて、健康に関する事業を「実施している」と回答した事
業者のなかで、当該事業の今度の見通しについての回答で最も多かったのは「横ばいが続く
見通し」(35.0%)だが、「今後も順調に成長が続く見通し」が 9.0%、「しばらくは成長が続
くが、鈍化する見通し」が 14.0%であり、合わせて 2 割強が「今後も成長する」という見通
しを持っていることがわかる。
図 3-1-4 当該事業の今後の見通し(n=100)
今後も順調に
しばらくは成長が
成長が続く見通し 続くが、鈍化する
9.0%
見通し
14.0%
無回答
9.0%
わからない
15.0%
今後は衰退
していく見通し
18.0%
横ばいが続く見通し
35.0%
同様に、今後も事業を行っていくエリアとして見た場合の横浜市に対する評価をたずねた
ところ、
「有望なエリアと考えている」との回答が 56.0%、
「有望なエリアとは考えていない」
は 2.0%であり、半数以上の事業者が横浜市を有望なエリアととらえ、今後も市内での事業継
続を望んでいるという結果が得られた。
図 3-1-5 今後の、当該事業の実施エリアとしての「横浜市」に対する見通し(n=100)
有望なエリアとは考
えていない
2.0%
無回答
8.0%
どちらともいえない
34.0%
有望なエリアと考え
ている
56.0%
- 100 -
また、市内事業者(健康に関する製品やサービスの提供を実施しているか否かは不問)に
対し、横浜市内で事業を営むことのメリットについてたずねたところ、
「市場が大きい(顧客
が多い)」ことを回答者の 50.3%が挙げている。医療・介護・健康関連産業においては「需要
者と供給者の距離が近い」という特徴があり、市内に顧客が多いという点は大きなメリット
であると考えられる。
図 3-1-6 横浜市内で事業を営むことのメリット(n=185、複数回答)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
50.3%
市場が大きい(顧客が多い)
16.8%
人材の確保がしやすい
2.7%
同業他社が少ない
29.2%
公共交通機関の便が良い
15.1%
東京に近い
6.5%
東京に比べて低コスト
事業パートナーを得やすい
2.2%
大学、教育機関・研究機関の集積がある
1.6%
その他
2.7%
14.6%
特にない
15.7%
無回答
また、市内事業者を対象としたヒアリング調査からは、それぞれが実施している事業の今
後の展望について下記のような意見が得られている。中には「今後もあまり変化しない」と
いう見通しを持っている事業者もいるが、高齢層を中心に、今後も成長する余地があるとの
回答が多い。
表 3-1-2 市内事業者による、今後の事業の見通し(ヒアリング調査より)
事業の種類
フィットネスクラブ
過去から現在までの推移
今後の展望
フィットネスクラブができた当時から、 健康に対する意識の向上、高齢化の進行
「人口の 3%」という利用率はあまり変
など、複数の要素で明るい兆しが見えて
化していない。しかし、プールやスタジ
おり、今後の成長が期待できると考えて
オ等の大型の設備があまり求められな
いる
くなっており、事業所の数が増えている
カルチャーセンター
ドラッグストア
あまり利用状況に変化は見られない。講
今後も、利用状況にあまり大きな変化は
座の内容については、時期によって流行
ないと考えている。ただ、利用者の中心
り廃りが見られ、利用者のニーズに対応
である 50~60 代の人口が増えてくるた
する努力は不可欠である
め、多少は影響があるかもしれない
順調に店舗数が増えている
横浜市は住民一人当たりのドラッグス
トア店舗数が少ないエリアとされてお
り、今後も店舗を増やす余地はあると考
えている
- 101 -
なお、ドラッグストアチェーンについては、全国の売上 10 位以内の企業のうち、2 社が横
浜市内に本社を置いている(11 位まで含めれば 3 社)。事業所・企業統計を見る限りでは「医
薬品・化粧品小売業」の平成 8~18 年の間の事業所数はほぼ横ばいとなっているが、ほとん
どの企業で 2009 年度から 2010 年度にかけて売り上げが伸びているほか、本調査で実施した
アンケート、及びヒアリングでは「横浜市内は人口に対するドラッグストア店舗数が少なく、
まだ出店の余地が残されている」として、今後の成長性については期待が持てるという見通
しを持っている事業者の存在が確認されている。
表 3-1-3 ドラッグストアチェーンの売上高、及び本社所在地(上位 10+1 社)
年間売上高
売上高の順位
伸び率
企業名称(店舗名称)
本社所在地
(2010 年度)
2009 年度
2010 年度
(09→10)
1
マツモトキヨシホールディングス
3,930 億円
4,282 億円
9.0%
千葉県松戸市
2
サンドラッグ
2,841 億円
3,607 億円
27.0%
東京都府中市
3
スギホールディングス
2,935 億円
3,047 億円
3.8%
愛知県安城市
4
ツルハホールディングス
2,519 億円
2,798 億円
11.1%
北海道札幌市
5
ココカラファイン
1,910 億円
2,567 億円
34.4%
神奈川県横浜市
6
グローウェルホールディングス
(現、ウェルシアホールディングス)
1,989 億円
2,388 億円
20.1%
東京都千代田区
7
カワチ薬品
2,323 億円
2,355 億円
1.4%
栃木県小山市
8
コスモス薬品
1,778 億円
2,054 億円
15.5%
福岡県福岡市
9
クリエイト SD ホールディングス
1,399 億円
1,491 億円
6.6%
神奈川県横浜市
10
アインファーマシーズ
1,154 億円
1,255 億円
8.8%
北海道札幌市
11
CFS コーポレーション
1,443 億円
1,220 億円
-15.5%
神奈川県横浜市
(資料:日医総研ワーキングペーパー(2011 年、№239))
図 3-1-7 ドラッグストアチェーンの売上高(上位 10+1 社)
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
4,000
4,500
マツモトキヨシホールディングス
サンドラッグ
スギホールディングス
ツルハホールディングス
ココカラファイン
グローウェルホールディングス
(現、ウェルシアホールディングス)
カワチ薬品
コスモス薬品
2009年度
2010年度
クリエイトSDホールディングス
アインファーマシーズ
CFSコーポレーション
(資料:日医総研ワーキングペーパー(2011 年、№239))
- 102 -
②
健康関連産業における成長性の整理
①で見たように、横浜市内における健康関連産業については、今後の成長の可能性が高い
ことが伺える。ただし、健康関連産業は多様な事業が含まれることから、すべての業種にお
いて高い成長性を持っているかという点について把握することは容易ではない。
例えば身体的な健康の維持・増進に関する製品やサービスについて、特保等の機能性食品
の普及や健康志向が高まることにより、健康食品については今後も需要が伸びることが予想
されるが、それ以外の分野については成長性についての判断が難しい。
一方、いくつかの分野については、本調査で実施したアンケート及びヒアリングの結果か
ら、今後の成長性についてある程度の情報が得られている。それらをまとめると、以下のと
おりである。
《生活を支援するサービス》
生活を支援するサービスについては、高齢化の進行に伴い、対個人サービス(家事サービ
ス等)の需要が増加すると思われるが、こちらについては介護保険の範囲でどこまでカバー
されるかということに影響される。また、高齢化の進行により思うように外出できない方が
増えることや、インターネットの普及が進んでいることから、商品配達サービスの需要は今
後も高まることが予想される。ただし、商品配達については小売店の付帯サービスであるこ
とが多く、数字には表れにくいものと考えられる。
【コラム④:あるドラッグストアにおける取り組み】
スーパーやコンビニと同様に、ドラッグストアでも商品配達サービスが実施されてい
る。本調査でヒアリングを実施したドラッグストアでは、食品や生活用品など、購買頻
度の高い商品の品ぞろえに力を入れているが、ここでは商品の配達に加え、
「高齢者を店
舗まで引率し、買い物を手伝う」というサービスも提供している。
「実際の店舗で、自分
で商品を選んで買いたい」との要望(つまり、
「買い物をしたい」というニーズ)に応え
て実施されているサービスだそうである。
通販サービスは便利だが、外出の機会を減少させているという見方もできる。この事
例からは、同じように商品購入を支えるサービスでも、工夫次第で別のニーズについて
も満たすことができるということが伺える。
《余暇活動に関する産業》
スポーツや趣味など、余暇活動に関連する産業について、今回の生産額推計に用いた産業
連関表では概ね「娯楽」としてまとめられてしまうため、生産額としての個別の動きが見え
にくい。しかし、アンケートやヒアリングからは、フィットネスクラブなどで「今後の成長
が期待できる」という回答が得られている。
健康食品やフィットネス等の身体的な健康増進に資する製品・サービスを活用し、市民の
健康状態の維持や改善を図ることは将来的な社会保障費抑制という観点からも重要なことで
あり、行政には事業者の活発に事業活動が行える環境作りをサポートすることが求められる。
- 103 -
【コラム⑤:フィットネスクラブの介護事業(デイサービス)への進出】
フィットネスクラブには、運動指導や体力測定に関するノウハウが蓄積されている。
そのノウハウを、高齢者のリハビリに活用しようという動きがある。これまでにも介護
事業者によってリハビリが提供されてきたが、ノウハウの不足や、効果の測定において
難があることが指摘されてきた。その点、利用者の体力増進効果について科学的な測定
を行ってきたフィットネス事業者にとって、効果の測定は得意分野というわけである。
このように、本業で培ったノウハウを活かし、新たな取り組みを始めるという事業者も
見られる。
- 104 -
3-2
「医療・介護・健康関連産業」に対する支援施策の整理
「はじめに」で述べたように、医療・介護・健康関連産業、特にサービス部門については、地
域の需要に対し、主に地域の事業者がサービスを提供するという形態をとっている。しかも、こ
のサービスの担い手は地域住民の需要に近接する必要があるなど、地産・地商・地消・地雇用と
いう特徴があり、中小サービス事業者の参入が盛んな分野である。
また、製造業部門ではグローバル競争の激しい創薬や高度な医療・介護機器など、大企業によ
る研究開発を軸に進めており、国際戦略総合特区もその試みの一つである。
しかし、大企業が参入するほどの市場規模がある財やサービスはごくわずかである。その他の
広範な分野については中小企業の活躍できる領域が多いことが指摘されている。
例えば、日本福祉用具・生活支援用具協会によると、福祉用具・用品などこれまでの製品に「改
善」や「工夫」といったカスタマイズが求められる分野が多く、市場規模も数十億円から数億円
程度がほとんどで、まさに中小企業の参入が求められる分野が広く存在している。
こうしたことから、自治体が実施している支援策においても、中小企業の研究開発や、事業化
の実現に対する助成が中心となっていることが伺える。
(1)他自治体における支援施策の整理
本節では、他都市で実施している主な支援施策について参照した上で、本市の健康関連産業
を活性化させる適切な支援施策について検討する。
医療・介護・健康関連産業の中には、大きく分けて製品の製造、及びサービスの提供という
2 つの側面があり、そのうちサービス提供については需要と供給が近接しているという特徴が
ある。一方、製造という面においても、個々の状態に合わせた福祉用具が必要とされるケース
もあり、消費者の身近なところで生産活動が行われる可能性もある。
他の自治体における、医療・介護・健康関連産業の振興のための取り組み事例について、具
体的な支援策を整理すると、下記のように分類することができる。
①
総合特区制度の活用
国の新成長戦略を受け、
「国際戦略総合特区」、及び「地域活性化総合特区」の認定を受け、
地域の産業振興のための取り組みを進めている事例が全国に見られる。現在のところ、
「国際
戦略総合特区」のうち 3 特区、また「地域活性化総合特区」のうち 10 特区が医療・介護・健
康関連産業に関する取り組みを行っている。
【国際戦略総合特区】
施策
国際戦略総合特区
概要
事例
わが国の経済成長のエンジンとなる産業・機能
の集積拠点の形成を目的としており、現在は 7
特区が認定。うち、医療・介護・健康関連産業
に関する取り組みが含まれるものは 3 特区。
茨城県等:つくば国際戦略総合特区
神奈川県等:京浜臨海部ライフイノベー
ション国際戦略総合特区
京都府等:関西イノベーション国際
戦略総合特区
- 105 -
【地域活性化総合特区】
施策
概要
事例
地域活性化総合特区
地域資源を最大限利用した地域活性化の取組
による地域力の向上として、現在、32 特区が
認定。うち、医療・介護・健康関連産業に関す
る取り組みが含まれるものは 10 特区(医療関
連:7 特区、福祉・健康分野:3 特区)。
(医療関連)
静岡県:ふじのくに先端医療総合特区
大阪府等:国際医療交流の拠点づくり
「りんくうタウン・泉佐野市
域」地域活性化総合特区
等
(福祉・健康関連)
柏 市:柏の葉キャンパス「公民学連携
による自律した都市経営」特区
等
②
具体的な支援施策の例
・製品やサービスの開発・販売促進に関する支援
他自治体における新たな製品・サービスの開発・普及に関する支援として、研究開発に対
する支援や規格の作成、相談支援などが行われている。本調査において収集した他都市の事
例では、下表のような支援策が見られる。
【製品やサービスの開発・販売促進に関する支援】
施策
概要
特徴的な事例
研究・開発支援
研究開発に対する補助金
神戸市:医療・健康・福祉分野研究
独自の規格・認証マ
製品やサービスの品質を保証するための規格
川崎市:かわさき基準(KIS)
ークの作成
や認証制度の整備
販路開拓支援
市場動向に関する情報提供、「売れる商品」の
開発費補助
神戸市:相談事業に加え、「神戸バイオ
開発支援、販売方法のアドバイス等
メディクス㈱」による、中小企
業製品の販売代行も実施
・新規参入、事業継続、及び域外からの企業誘致に関する支援
域内企業の事業継続、及び域外からの企業誘致に関しても、各自治体で様々な支援策が実
施されている。本調査において収集した事例では、具体的な支援施策として、補助金や減税
措置といった金銭的な面での優遇措置や、インキュベーション施設やレンタルラボ等の設置、
また事業者に対する各種相談支援などが見られる。
【新規参入、事業継続、及び域外からの企業誘致に関する支援】
施策
概要
事例
補助金、減税措置
医療・介護・健康関連産業に関する新規事業の
(新規起業に対する
企画・事業立ち上げにおける対象経費について
支援)
の補助金、及び固定資産税等についての減税措
神戸市:KOBE ドリームキャッチ
プロジェクト
※「神戸医療・健康・福祉分野新規開発
等推進補助」
置
補助金、減税措置
域内に拠点を置く事業者に対する、医療・介
(域内企業の事業継
護・健康関連産業に関する企画・運営における
続に対する支援)
対象経費についての補助金、及び固定資産税等
についての減税措置
- 106 -
札幌市:健康サービスの企画・運営に対
する補助
施策
概要
事例
補助金、減税措置
医療・介護・健康関連産業に関する事業への進
川崎市:川崎製先端産業創出支援制度
(企業の誘致に関す
出のために域内へ拠点を置こうとする域外に
(イノベート川崎)
る支援)
拠点を置く事業者に対する、対象経費について
神戸市:神戸医療産業都市
の補助金、及び固定資産税等についての減税措
置
インキュベーション
健康・福祉産業での研究開発や新規事業を行う
仙台市:仙台フィンランド健康福祉
施設、レンタルラボ
企業や研究者を対象に、インキュベーション施
等の設置・運営
設やレンタルラボを設置
神戸市:レンタルラボ(医療産業都市)
相談支援
事業の立ち上げ、課題の解決等に関する行政・
川崎市: かわさき J プロジェクト
企業等のアドバイザーによる各種相談
神戸市:
センター
・人材確保・育成、及びパートナー企業等との連携促進に関する支援
医療・介護・健康関連産業のうち、サービスの分野では、事業を行う上で仁ざいふぁ重要
な経営資源であり、人材の確保・育成がきわめて重要な問題となる。また、事業のパートナ
ーとなる企業や研究機関との連携により、共同研究や商品開発などに、それぞれの強みを活
かした取り組みを行うことができるよう、パートナーとのマッチングを促すことも重要な施
策であると考えられる。本調査において収集した事例の中で、これらに関する支援を整理す
ると、下表のようになる。
【人材確保・育成、及びパートナー企業等との連携促進に関する支援】
施策
概要
事例
人材確保・育成支援
医療・介護・健康関連産業に関する事業者に対
し、新規雇用や教育訓練を行う際の費用の助
神戸市:成長分野等人材育成支援事業
奨励金
成、及び就労希望者とのマッチングを実施
連携支援(産学連携、 地域の企業や研究所、大学等との連携作りを促
医工連携の促進、パ
進するため、交流会等のマッチングの場を提供
ートナー企業とのマ
するなどの支援を実施
神戸市:「クラスター交流会」開催
ッチング)
・健康の維持・増進に関する活動に対する支援
医療・介護・健康関連産業の振興においては、その製品やサービスの消費者となる地域住
民に対し、健康の維持・増進に対する関心を高め、需要の拡大を図っていくことも重要な課
題である。
食事や運動等、身体的な健康の維持・増進に関することはもちろん、生きがいづくりに関
する活動(趣味・娯楽等)や、地域における社会活動などへの参加を促すといった、精神的・
社会的な健康も重要である。本調査で収集した事例の中では、下記のような施策が実施され
ている。
- 107 -
【健康の維持・増進に関する活動に対する振興策】
施策
概要
事例
身体的な健康に
地域住民に対し、食事・運動等に関する指導を
札幌市:健康サービス産業推進事業
関する活動に対する
行ったり、健康の維持・増進を図る行事(ウォ
神戸市:健康をたのしむまちづくり
支援策
ーキング等)を実施するほか、市民を対象とし
た健康関連サービスの企画・運営に対して助成
精神的、社会的な
地域住民(特に高齢者)の生きがいづくりや社
健康に関する活動に
会参加を促すため、行事の開催や仕組みづくり
対する支援策
を実施
- 108 -
柏
市:生きがい就労事業
(2)本市における、これまでの支援施策の整理
本市において、これまでに医療・介護・健康関連産業についての振興策がいくつか実施されて
きているが、それらをまとめると、下記のように整理できる。
○「ライフサイエンス都市横浜」の推進
本市では、バイオ産業の振興により、健康な市民生活への貢献や、経済の活性化を目指し、
企業、研究機関、大学等の連携のもと、バイオ関連産業の集積や研究拠点の整備を図る「ライ
フサイエンス都市横浜」を推進している。
特に京浜臨海部の鶴見区末広町周辺地区を先端科学分野の研究開発を先導する地区として
「横浜サイエンスフロンティア」と位置付け、国際的な研究開発拠点形成に取り組んでいる。
当地区は理化学研究所の「横浜研究所」等の誘致に成功したことにより、生命科学分野におけ
る、国際競争力のある産業拠点の整備が加速している。
当地区では、企業が大学等と連携して研究開発を実施できる施設として、
「横浜市産学共同研
究センター」やベンチャー企業育成のためのインキュベート施設である「リーディングベンチ
ャープラザ」といった施設整備を行うなど、バイオ産業の振興のための支援が行われている。
ライフサイエンス都市横浜の具体的な取り組みとしては、
「研究開発拠点の整備」
(横浜サイ
エンスフロンティアの機能拡充)、
「戦略的モデル事業の推進」
(市民の病気予防や健康に貢献す
る先進的なプロジェクトの推進)、
「バイオ関連産業の集積促進」
(企業立地促進条例による企業
誘致や国際的なバイオ関連展示会の開催)、
「企業間連携のコーディネート」
(木原記念横浜生命
科学振興財団事業の推進)の 4 つが実施されることとなっている。
図 3-2-1 「ライフサイエンス都市横浜」のイメージ図
出所:地域再生計画(横浜市)
- 109 -
○国際戦略総合特区の指定
本市では、神奈川県・川崎市と連携し、
「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」
として国際戦略総合特区の指定を受けている。
京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区では、
「個別化・予防医療時代に対応した、
グローバル企業による革新的医薬品・医療機器の開発・製造と健康関連産業の創出」を目標と
して掲げており、ライフイノベーションに関連する産業及び研究開発の基盤となる技術の集積、
国内外とのネットワーク、研究成果の発信やビジネスの交流拠点となるコンベンション機能な
ど京浜臨海部に存在するさまざまな資源を活用し、目標の実現に向けた先駆的な取り組みの推
進を行うこととされている。
なお、国際戦略総合特区としての具体的な取り組みについては、下記のような 7 分野・16 の
プロジェクトが計画されている。
【7 つの分野】
分野
予防・健康
概要
個々の情報を基にした予防医療の提供などにより、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)
の向上を目指す
診断
血中のアミノ酸などの情報により、がん等の早期発見に向けた診断技術開発を目指す
再生医療
iPS 細胞を活用した臓器再生など、再生医療の実現を目指す
情報基盤構築
新たな健康医療サービスの開発に有用な情報基盤の構築を目指す
創薬
抗がん剤と診断薬の一体的な開発など、個別化医療に対応した医薬品の開発を目指す
創薬・機器開発支援
医薬品等の承認に向けた支援機能などにより、ドラッグラグ・デバイスラグの解消を
目指す
医療機器開発
患者のデータを使った腹腔鏡下手術訓練システムの開発など、革新的な医療機器開発
を目指す
図 3-2-2 京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区の 16 のプロジェクト
- 110 -
○医療・介護・健康関連産業の事業者に対する支援施策
横浜市で実施している、医療・介護・健康関連産業の事業者に対する支援施策としては、下
記のようなものがある。
【製品やサービスの開発・販売促進に関する支援】
対象者
支援内容
施策名称
施策概要
下記の対象経費への助成
横浜市中小企業新技術・新製品
新技術・新製品開発に取り組
重点枠として、「医
開発促進事業(SBIR)重点枠
(要件)
む市内中小企業に対し、研究
療・介護枠」(平成
・研究
開発の準備段階から 販路開
22 年度)、「健康分
・技術導入
拓までを一貫して支援
・新技術・新製品開発
野」(平成 23・24
年度)を設定
・開発可能性調査
【域外からの企業誘致に関する支援】
支援内容
施策名称
施策概要
対象者
(要件)
環境・エネルギー、医療・健
環境・エネルギー、
借などに対し、最大で 300
康、ITなど 4 分野の重点産
医療・健康、ITな
万円の助成
業を営む市外企業の横浜市
ど 4 分野の重点産
への初進出に対して助成
業を営む企業
事務所等の市内拠点の賃
横浜市重点産業立地促進助成
事務所等の市内拠点の賃
横浜市重点産業立地促進助成
既に市内に拠点を置いてい
環境・エネルギー、
借などに対し、最大で 300
(本社機能拡張移転特例)
る企業の本社機能・及び研究
医療・健康、ITな
開発機能の市外から市内へ
ど 4 分野の重点産
の移転に対して助成
業を営む企業
万円の助成
○健康の維持・増進に関する活動に対する支援
横浜版成長戦略(中期4か年計画の成長戦略)の中で、戦略4として「100 万人の健康づく
り戦略」が取り上げられている。
10 年後には高齢者が 95 万人(全市民の 1/4)となることが推計されている中で、市民一人ひ
とりが、壮年期から高齢期に至るまで楽しみながら健康を維持し、地域の高齢者・障害者を支
える活動にも幅広く参加できる仕組みづくりを進めるというものである。この「100 万人の健
康づくり戦略」では、次頁に示す 4 つの取り組みが実施されることになっている。
【健康の維持・増進に関する活動に対する支援】
戦略名称
100 万人の運動・スポーツ戦略
取組概要
介護予防、生活習慣病予防のために、継続的に運動・スポーツを
行う習慣を広める
100 万人のアクティブ・ライフ戦略
芸術文化活動やレクリエーションに親しむなど、日々の生活を楽
しめる環境づくりを進める
100 万人の楽しく食事・栄養バランス戦略
毎日の食生活を見直すきっかけとして、地域で健康相談や料理教
室などの取組を進める
100 万人の社会貢献活動への参加支援戦略
高齢者がいきがいや楽しみを感じながら子育て支援や高齢者・障
害者の生活支援などの社会貢献活動に参加できる仕組みづくり
を進める
- 111 -
上記の取り組みについて、先ほど整理した、他自治体における支援施策にあてはめると、実施
状況は下記のようになる。
【本市における、他自治体で実施されている支援施策と同様の施策の実施状況】
支援テーマ
製品やサービス
の開発・販売促
進に関する支援
新規参入、事業
継続、及び域外
からの企業誘致
に関する支援
具体的な施策
研究・開発支援
実施
◎
独自の規格・認証マークの作成
販路開拓支援
×
◎
補助金、減税措置
(新規起業に対する支援)
○
補助金、減税措置
(域内企業の事業継続に対する支援)
補助金、減税措置
(企業の誘致に関する支援)
インキュベーション施設、レンタル
ラボ等の設置・運営
相談支援
◎
◎
◎
○
人材確保・育成、 人材確保・育成支援
及びパートナー
企業等との連携
促進に関する支 連携支援(産学連携、医工連携の促
援
進、パートナー企業とのマッチン
グ)
健康の維持・増 身体的な健康に
進に関する活動 関する活動に対する支援策
に対する支援
精神的、社会的な
健康に関する活動に対する支援策
○
○
△
△
本市における支援施策の実施状況
バイオ、先端技術に関しては、すでに複数の支
援が実施されている。
該当する施策は特に見られない
SBIR 等の事業の中で、バイオ・先端技術に関す
る販路開拓を支援
ベンチャー、ソーシャルビジネスを含め、起業
に係る費用の助成を実施。ただし医療・介護・
健康関連産業に特化したものではない
様々な補助金、減税措置を実施。ただし医療・
介護・健康関連産業に特化したものではない
「横浜市重点産業立地促進助成」の中で、事業
拠点の市内移転に対する助成を実施
サイエンスフロンティア地区の「リーディング
ベンチャープラザ」等の施設を運営
事業者に対する相談事業を実施。ただし医療・
介護・健康関連産業に特化したものではない
求人活動支援(ジョブマッチングよこはま)、も
のづくり人材育成支援等を実施。ただし医療・
介護・健康関連産業に特化したものではない
「横浜ものづくりコーディネーター事業」等の
マッチング支援を実施。ただし医療・介護・健
康関連産業に特化したものではない
市民の健康維持・増進に関しては「健康横浜
21」
、
「100 万人の健康づくり」等の計画に基づ
く事業が実施されている。健康関連産業の事業
者との連携については、今後検討していく段階
である
※表中「実施」欄の記号が示している状況は、下記の通り
◎:医療・介護・健康関連産業を特化した支援を実施
○:一般的な事業者支援施策の中で支援を実施
△:体系的な計画はあるが、事業者に対する具体的な支援施策が十分に実施されていない、もしくは未確定
×:該当する支援策が実施されていない
本市では神奈川県・川崎市と連携して「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」
の取り組みを進めているほか、支援策を「実施している/実施していない」の区別で見ると、他
自治体において実施されているような大抵の支援策については、本市においてすでに実施されて
いることがわかる。
ただ、医療・介護・健康関連産業のうちの、バイオや先端医療などに関する部分についての支
援においては様々な施策が展開されているが、それ以外の部分については支援が薄く、支援の対
象となっている領域、及び受けられる支援の程度には偏りが大きいことが伺える。特に健康関連
産業について、現時点ではその事業範囲を明確に定義して支援を打ち出している施策はない。
また、
「横浜市中小企業新技術・新製品開発促進事業(SBIR)」のようにものづくりに対する包
括的な研究開発支援はあるものの、サービス事業に対しては「人材確保」、
「税制優遇」のように、
特定の経費に対する部分的な支援に留まっているのが現状である。
本市では今後の施策について、以上のようなことを踏まえて検討する必要があると考えている。
- 112 -
3-3
これから必要となる施策のイメージ
3-2において、他自治体で実施されている医療・介護・健康関連産業の事業者に対する支援
施策、及び本市における支援施策の実施状況について整理したが、続いて、医療・介護・健康関
連産業の振興のために本市に求められる施策について検討する。
(1)医療・介護・健康関連産業に関する業界団体からの意見
本調査では、医療・介護・健康関連産業に関する 5 つの業界団体に対し、各業界の動向や今
後の課題、及び行政に求められる支援についてヒアリング調査を実施した。その結果、各分野
における行政に求められる具体的な支援策について、下記のような意見が寄せられている。
①
医療に関連するサービスの今後の成長性について
医療に関連するサービス(医療そのものを除く)について把握するため、財団法人医療関連
サービス振興会に対してヒアリングを実施した。医療に関連するサービスにおいては、業務の
内容によって医療機関外への委託率が異なっている。給食サービスや情報サービスなどでは
徐々に委託率が高まっているが、リネンサプライなど既に 8 割を超える部分が外部に委託され
ている分野もあり、全体として、今後急激に成長することはないと予想されている。
ただし、同財団の認定している「医療サービスマーク」の対象となる事業の中で、調査・研
究・情報発信といった分野についてはある程度成長が見られるなど、医療関連サービスにおい
ても「事業拡大の芽」は存在しているとのことである。こうした部分をうまく見つけ、育てて
いくことが求められる。
②
高齢者に対するサービスに対する支援について
財団法人シルバーサービス振興会へのヒアリングからは、高齢者に対するサービスに対する
支援として、次のような意見が得られた。
まず、健康を支える分野(介護に関連する分野以外)については、現状において特に参入規
制はないため、新規参入がしやすいが、一方で事業者の質の担保が難しいという側面もあると
いう。今後は、行政側である程度の参入要件を付与する必要があるのではないか、という指摘
があった。
また、
「事業者を支える事業者の育成」が必要だという指摘があった。増大する需要に対応で
きる供給力を確保するためには、事業者をサポートする二次的な事業者群の存在が重要である。
行政には、現場と二次的事業者をつなぐ役割が期待される。
その他にも、介護労働者の健康状態の改善、独居老人に対するサポート、情報発信の拡大な
ど、行政の果たすべき役割は多いとのことであった。
③
福祉用具の製造・販売に対する支援について
福祉用具の製造・販売に対する支援について、日本福祉用具・生活支援用具協会からは、第
一に「ニーズにマッチした製品開発の支援」が挙げられた。実際に「売れる製品」
(現場で通用
する製品)の開発は難しく、現状ではニーズとシーズのマッチングがうまくいっていないとい
- 113 -
う。そのため、
「どうすれば売れる製品が作れるか」という観点からのアドバイス等、効果のあ
る支援が必要とのことである。新成長戦略等で期待されている介護用ロボットについても、ニ
ーズとシーズのマッチングが課題になっているという。
また、総合的な知識に基づいたアドバイスのできるコーディネーターが不足しており、こう
した人材の育成が必要であるという点も指摘された。
④
レジャー等、余暇に関連する産業に対する支援について
健康関連産業のうち、スポーツやレジャー等、余暇活動に関する分野への支援について、余
暇創研(日本生産性本部)へのヒアリングから次のような意見が得られた。
まず、
「余暇活動への参加促進」に関する支援が求められているという。スポーツなど、余暇
活動への参加率が比較的高い分野においても、
「まったく活動していない」という層が各年齢層
について 3 割程度存在している。彼らに対し、活動への参加を促すことで、さらなる市場の拡
大が期待される。なお、活動を活発化させるためには、仲間づくりを促すための支援が必要で
あるという点が指摘されている。
加えて、
「体力、知識等の能力向上」についても支援を行うことが望ましいという意見もあっ
た。十分に余暇を楽しむためには体力や知識などの能力が必要であり、体験などを通じて、余
暇の重要性の啓発と合わせ、能力を高めるための支援が望ましい。
⑤
スポーツ、フィットネスの分野に対する支援について
健康関連産業のうち、スポーツやフィットネス等の分野において、日本フィットネス産業協
会からは「医療や介護の分野と連携し、予防及び健康の維持・増進に取り組んでいくことが重
要であり、行政にはその支援を望みたい。」という意見があった。
具体的な支援策としては、
「地域との結びつきの強化」が挙げられ、フィットネスクラブの主
要な顧客となる近隣の住民に対し、行政と連携して健康に関する啓発活動を行うことが重要が
と指摘されている。
また、現状ではサービスの質を保証する社会的な仕組みがないことから、一定程度の質を担
保する仕組みづくりが求められているという。
- 114 -
(2)市内事業者の求める支援施策
①
事業者アンケートにおける、行政に求められる支援策についての回答
本調査では、市内の事業者に対し、医療・介護・健康関連産業の取り組み状況に関するアン
ケート調査を実施している。
その中で、当該分野に関する事業を実施していく上での現在の課題についてたずねたところ、
「顧客の開拓」が 52.0%と最も多く、次いで「売り上げの停滞・減少」が 40.0%、
「人材の育成」
が 37.0%となっている。
図 3-3-1 医療・介護・健康関連産業に関する事業を実施していく上の課題(n=100、複数回答)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
32.0%
人員の確保
21.0%
資格を持った人材の確保
人材の育成
37.0%
顧客の開拓
52.0%
3.0%
他者との競争の激化
25.0%
新たな製品・サービスの開発
パートナー企業の確保
29.0%
3.0%
法的規制への対応
13.0%
後継者の育成
13.0%
市場の成熟・縮小
17.0%
施設・設備の老朽化
29.0%
売上の停滞・減少
その他
無回答
60.0%
24.0%
資金の調達
市場に関する情報の不足
50.0%
40.0%
4.0%
7.0%
また、市内企業に対する行政の支援として、望ましいものについては、
「運転資金への融資の
拡充」が 26.5%と最も多く、次いで「人材確保に関する支援」が 24.3%、「設備投資への支援」
が 21.1%となっている。
なお、事業活動に対する直接的な支援とは別に、
「地域住民との交流機会の創出」が 15.1%と
なっており、相談事業や販路開拓支援よりも割合が高い。このことから、地域との交流を通じ
て住民の健康の維持・増進や生きがいづくりに関するニーズを掘り起こしていきたいという意
識を持った事業者が存在していることをうかがい知ることができる。
地域との関わりについて、事業の中で「顧客同士の仲間づくりや、地域とのつながりづく
り」に取り組んでいるかどうかたずねたところ、「既に取り組んでいる」が 46.0%、「今は取り
組んでいないが、今後取り組みたいと考えている」が 22.0%であった。
「今後取り組みたい」と
いう意見も合わせると、7割弱の回答者が地域と積極的に関わっていきたいという意向を持っ
ていることがわかる。
- 115 -
市内企業に対する行政の支援として望ましいもの(n=185、複数回答)
0.0%
10.0%
経営に関する相談
20.0%
30.0%
10.3%
法律・税務などの専門的相談
10.8%
運転資金への融資の拡充
26.5%
設備投資への支援
21.1%
販路開拓に関する支援
11.4%
財・サービスの開発、
企画に係る資金支援の充実
8.6%
IT活用に関する支援
5.9%
他企業へのつなぎ役・仲介
11.4%
大学、専門学校等へのつなぎ役・仲介
7.0%
24.3%
人材確保に関する支援
人材育成に関する支援
海外進出に関する支援
11.9%
1.6%
15.1%
地域住民との交流機会の創出
規制に対する情報提供
その他
15.7%
3.2%
15.1%
特にない
無回答
16.2%
当該事業における、顧客同士の仲間づくりや地域とのつながりづくりへの取り組み状況(n=100)
今は取り組んでお
らず、今後も取り組
む予定はない
23.0%
無回答
9.0%
既に取り組んでい
る
46.0%
今は取り組んでい
ないが、今後取り組
みたいと考えている
22.0%
- 116 -
②
ヒアリング調査における、行政に求められる支援策についての意見
本調査では、アンケートへの回答等から抽出した事業者を訪問し、ヒアリング調査により回
答に対する深掘りを行った。その結果、今後、行政に対して求められる支援として、下記のよ
うなことが挙げられた。
回答者の業種
住宅リフォーム
ドラッグストア
フィットネスクラブ
カルチャーセンター
生活支援サービス
生活協同組合
行政書士
福祉用具製造・販売
ボウリング場
パソコン教室
行政の支援に対する意見
【業者の質を担保する仕組み】
・リフォーム業者に対する、統一的な規格を作成し、消費者が優良な事業者か否
かについて客観的に判断できるようにしてほしい
【地域住民との交流機会の創出】
・自治体(区役所等)と協力し、健康に関する催し等、地域住民との交流機会を
作っていきたい。
【健康の維持・増進に取り組むことへの助成】
・健康の維持・増進に取り組むことに対し、行政から補助が受けられるような仕
組みが欲しい。医師の診断に基づく運動プログラム等、運動が必要な方に対し
て直接的に援助があれば、健康状態の改善に大きく貢献できると思う。
【特になし】
・カルチャーセンターの利用状況は安定しており、今後も大きな変化はないと
考えている。そのため、特に行政の支援の必要性は感じていない。
【商店街の活性化】
・最近は商店街が疲弊しており、取り組みが活発でない。今後、様々な活動を
行っていくためには、地域の基盤となる商店街の元気を取り戻すことが重要
である。空き店舗対策など、商店街の底上げを図る施策が望まれる。
【活動の認知度を高める支援】
・行政との連携によるイベントの開催など、生協が地域で行っている活動につい
ての認知を高める機会をつくる支援が望ましい。また、行政の考えていること
を知りたいと思うので、生協に対して「こういうことができないか」という要
望を出してもらいたい。
【行政との連携強化】
・化粧品や健康食品等、許認可に関する事業はまだ拡大の余地があり、行政書士
が手伝えることも多いと考えている。行政側から、もっと要望(逆提案のよう
なもの)が出てくれば、今以上に連携した事業が展開できると思う。
【「売れるもの」の開発に向けた支援】
・研究開発に対する助成制度などで創られる製品の中で、市場で通用するものは
ほとんど見られないように思う。技術者の視点からだけではなく、現場のニー
ズを的確に捉えた製品開発が求められる。行政には、そのための支援(マッチン
グ、コーディネート等)を期待したい。
【行政との連携強化】
・市内の各区にあるボウリング協会と連携した事業(協会側からの依頼による)
は行っているが、行政そのものとの連携はまだできていない。場所の提供やイ
ンストラクターの手配など、こちらから手伝えることは多いと思うので、行政
の側から逆に「こういうことをやりたいので、手伝ってほしい」と提案しても
らえると、今以上に地域の健康づくりに貢献できると思う。
【行政との連携強化】
・他の自治体では、行政と連携して地域住民向けのパソコン教室が開催されてい
るが、当社ではまだそこに至っていない。パソコンを「人に教える」という経
験やノウハウについて当教室は高いレベルにあると自負しており、行政から依
頼があれば、地域の高齢者にパソコンやデジタル機器の使い方を教えることな
どに貢献できると思う。
- 117 -
③
本調査により把握された地域における取り組みの萌芽
本調査で実施したアンケート調査やヒアリング調査から、事業者は営利事業以外の部分で、
地域住民との交流や、顧客同士の交流を促す取り組みなど、様々な活動を行っていることが確
認されている。
本業のノウハウを活かした取り組みとして、ドラッグストアチェーンによる健康相談、商品
の配達や家庭の電球交換といった生活支援サービスの提供が行われており、単独の事業者だけ
ではなく、商店街と連携した取り組み事例も見られる。また、顧客をクラブとして組織化し、
旅行等の行事を開催したり、地域住民が自由に交流できる場所を提供するなど、顧客や地域に
対して活動の機会を創出する取り組みも行われている。
事業者側の目的やねらいとして、
「自社のサービスの利用促進」があることは確かだが、直接
的な利益のみを求めているのではなく、
「近隣住民の健康な生活に貢献したい」、
「地域の一員と
して、もっと地域との交流を図りたい」といった思いから取り組みを行っているという。
活動を通じ、地域住民に対して健康への関心や、活動への参加を促すことにつながっており、
結果として住民の身体的・精神的・社会的な健康の維持・増進に寄与していることが伺える。
今後、住民の健康な暮らしを支えていくために、行政がこうした活動を支援すること、及び事
業者と連携して活動を行っていくことはますます重要になってくると考えられる。
取り組み
実施者
概要
目的、ねらい
・顧客同士のつながりを強化する
顧客同士の仲間
・リフォーム業者
自社の顧客に対し、会員クラブを設
づくりの促進
・フィットネスクラブ
立したり、交流のための行事の開催
ことにより、活動への参加率を
・カルチャーセンター
など
高めるとともに、自社の製品や
サービスの継続的利用を促す
他
健康教室、
・ドラッグストア
地域住民に対し、食事や運動に関す
健康相談
・フィットネスクラブ
る指導や相談、及び服薬指導などの
他
活動を実施
・地域住民の健康に関する正しい
知識習得を促進
・健康維持・増進活動に関する自
社製品やサービスの利用を促進
・地域住民の交流や趣味の活動な
地域の交流の場
・リフォーム業者
地域の住民が利用できるオープン
の創出
・フィットネスクラブ
スペースやコミュニティカフェの
ど、地域での生活における生きが
・カルチャーセンター
の設置・運営、及び交流行事の開催
いづくりを支援
他
など
商品配達等の生
・商店街
商品の配達、電球交換などのサービ
活支援サービス
・介護事業者
スを提供。自社で独自に行うほか、
・電器店
商店街と連携した取り組みも行わ
他
・地域住民の困りごとを解消し、
健康な生活の維持を支援
れている
また、企業以外に、NPO 法人など、コミュニティビジネス、ソーシャルビジネス的な側面か
ら地域住民の健康維持・増進に関する活動に取り組んでいる団体も市内には存在している。地
域における医療・介護・健康関連産業の需要の増加を促進するためには、事業者以外に、こう
した団体についても地域資源ととらえ、積極的な連携を図りながら取り組みを進めていくこと
が重要であると考えられる。
本市において活動している団体、及びその活動の例として、下記のようなものがある。
- 118 -
【公的団体、NPO 法人等による、地域住民の健康を支える活動の例】
団体名
取り組み
概要
NPO 法人ワーカーズ・コレ
コミュニティサロン「ばぁばの家あさ
空き家を活用したコミュニティサロンを
クティブたすけあいぐっ
だ」の運営
開設し、子どもから高齢者まで多世代が交
ぴい
浜マーケット(磯子商店
流する場をつくる取り組みを行っている
宅配サービス「浜すまいる」の実施
街)、㈲すまいる
西谷商栄会
地元の事業者の協力により、商店街の商品
を宅配するサービスを実施
オープンスペース「井戸ばた倶楽部@
西谷商店街にオープンスペースを設置し、
nishiya」の運営
地域のコミュニケーションや、個人の作品
の展示販売等に利用できる場を提供
- 119 -
(3)本市における、今後の支援施策の方向性
本市においては、医療・介護・健康関連産業に対する支援策として、バイオ産業や先端技術等、
ライフサイエンス分野の研究開発に対しては特区をはじめとした様々な取り組みが行われている。
また、製造業に対しては SBIR のような助成制度も設けられており、支援施策の有無を見る限り
では、他の自治体と比較しても施策は充実していると考えられる。
しかし、神戸市の医療産業都市のように、市内において生命科学に関する研究機関の集積を図
り、この分野における国際的な競争力を高めるための体系的な取り組みを行っているところと比
較すると、医療・介護・健康関連産業を今後の成長分野として重点的に支援していくためには、
施策の体系化、及び支援する対象の明確化などが求められる。特に、内発的発展の立場から、医
療・介護・健康関連産業の中で重要な位置を占めるサービス業の振興については、研究開発から
商品化、ニーズとシーズのマッチング等に関する包括的な施策の検討が必要であろう。
本市が今後、医療・介護・健康関連産業を成長分野と位置づけ、その振興について重点的に取
り組んでいくにあたっては、行政による逆提案など事業者に対する支援、地域の活動に対する支
援、及び行政自身に対する働きかけが重要であると考えられる。行政による医療・介護・健康関
連産業に対する支援施策の方向性としては、大きく「事業者の創業支援・経営支援に関する施策」
、
「新規事業の育成に関する施策」、
「雇用の創出に関する施策」と「地域における医療・介護・健
康関連産業の振興への取り組み」の4つに分類することができる。また、具体的な施策の方向性
として、例えば下記のようなことが考えられる。
①
医療・介護・健康関連産業における、事業者の創業支援・経営支援に関する施策
○市内企業の健康関連産業への参入を促す仕掛けづくり
新規に健康関連産業に参入しようとする事業者に対し、制度に関する相談や事業化にあたっ
てのアドバイス、現在のノウハウを活かした事業展開についての検討など、作り手と使い手を
結びつける等参入障壁を乗り越えるための支援を行うことが重要である。
一方で、人々の健康に直結する分野であるため、品質の管理や安全性に対する基準など、参
入に対してある程度規制をかけることについても検討する必要があると考えられる。市内の健
康関連産業の適切なあり方について検討し、それを実現するための総合的なコーディネーター
の役割が求められる。
○人材の確保・育成に関する支援
医療・介護・健康関連産業においては、対人サービスが重要な位置を占めている。主に人の
手を介してサービスが供給されるため、供給側の人的資源が成長の限定要因になりやすい。事
業者の人手不足を解消し、増大・多様化するニーズに対応するためには、資格取得に対する補
助などの人材の確保・対象の多様化に対応できる人材の育成等に対する支援施策が求められる。
○企業の社会の変化への対応についての支援
健康関連産業においては、企業の事業活動を通じ、社会の健康増進を図るという効果が期待
される。そのためには事業者が社会のニーズの変化に対応できるよう支援することが重要とな
る。
「地域の住民から何が求められているのか」という情報を的確に把握し、事業者に対して発
- 120 -
信するための仕組みを構築することが求められる。
○医療・介護・健康関連産業の情報発信
本調査において定義したように、医療・介護・健康関連産業に対する考え方を明確にし、成
長分野として重点的に取り組んでいくという姿勢を内外にアピールすることが重要である。
市内事業者に対する情報発信と同時に、市外に対しても横浜市としての取り組みについて情
報発信を行い、取り組みの認知を高めるための施策が求められる。
②
事業者の新規事業(医療・介護・健康関連産業)の育成に関する施策
○市内企業の、「新たな柱」としての事業(医療・介護・健康関連産業)育成に対する支援
社会経済環境の変化に対応して、今後の「新たな事業の柱」とするために医療・介護・健康
関連産業に参入する事業者も少なくない。しかし、当該分野には固有な課題や規制も多いこと
から、制度に関する情報の提供、事業継続にあたってのアドバイス、現在のノウハウを活かし
た事業展開についての検討支援など、事業者が当該分野において安定的に事業を継続できるよ
うに支援することが求められる。
③
医療・介護・健康関連産業における、雇用の創出に関する施策
○雇用の受け皿の整備による若手人材の雇用創出、及び高齢者の就労支援
医療・介護・健康関連産業はサービス業の比重が高い労働集約的な産業であり、主として人
員の増強によって需要の増加に対応することから、雇用を生み出す効果が大きい。当該分野が
成長することによって、既存の他産業からの転職を含め、多くの雇用の受け皿となることが期
待できる。また、当該分野では若手の人材に対する需要が高く、特に地域の人材が求められて
いる。そのため、当該分野に対する社会的な評価が高まることにより、新規に就労する若者に
とって魅力的な産業となれば、雇用者と被雇用者のマッチングが進み、
「地雇用」としての雇用
創出効果が大きくなると考えられる。ただし、公的な規制があり、業務によっては専門的な知
識や資格が求められる分野であるため、当該分野の成長を雇用の創出に結び付けるための支援
施策が不可欠である。
なお、医療・介護・健康関連産業においては、資格とともに専門的な知識や経験が求められ
ており、事業者の「経験豊富な高齢者を雇用したい」という需要も大きい。このことから、当
該産業は高齢者の就労支援の対象分野としても注目される。
○転職に伴う人材研修システムの整備
医療・介護・健康関連産業では、直接的に人々の安全・安心に関わることから、当該産業で
働く人材には様々な資格や知識、及び経験が求められている。人材研修システムを整備するこ
とにより、当該産業における転職(当該産業以外からの転職を含む)をより円滑に進めること
が可能になると考えられる。
- 121 -
④
福祉施策と連携した、地域における医療・介護。健康関連産業の振興への取り組み
○地域住民に対する、健康の維持・増進に関する取り組みとの連携
医療・介護・健康関連産業は、需要によって成長が牽引されるという性格の強い産業分野で
ある。また、需要者と供給者の地理的な位置が近く、地域の住民が主な需要者となっている。
したがって、当該分野の成長のためには、新しい製品やサービスを市場に投下するばかりでは
なく、地域住民の健康の維持・増進に関する財やサービスの需要を醸成していくことが重要で
ある。
○行政の関係セクションの連携体制の構築
医療・介護・健康関連産業の振興にあたっては、産業担当部署だけでなく、庁内の医療・介
護・健康、及びまちづくり等に関わりのある部門が連携を取り、より広く取り組みを行ってい
けるような体制を整えることも重要だと考えられる。
また、地域での取り組みにおいては区役所が重要な役割を果たすと考えられ、庁内の各部門
に加え、区役所とも連携を強化し、一体的に動くことができるような体制を整えることが不可
欠である。
○事業者、及び NPO 等の団体との連携強化
現在、事業者、行政、NPO 法人等、様々な主体が地域住民の健康維持・増進に関する活動を
行っている。複数の主体が連携した取り組みもすでに実施されているが、本調査におけるアン
ケートやヒアリングの結果を見ても、事業者や業界団体の中に今以上に連携を強化したいとい
う意識が少なからずあることが伺える。
地域における、身近な健康づくりの拠点を確保し、身体的・精神的・社会的健康を支える取
り組みを維持するためにも、行政から事業者や NPO 法人等に働きかけ、連携を強化していく
ことは重要な課題であると考えられる。例えばドラッグストアと連携して健康相談の機会を設
けるなど、事業者や NPO 等を地域資源としてとらえ、有効に活用していく方法を検討する必
要がある。
- 122 -
施策イメージ
「健康関連産業による行政の活用」と「行政の支援」
種をまく(福祉・区・経済の連携)
行政との連携で顧客との
敷居を低くする
高齢者の自立性(IT 活用
等)を高める
アピールする(経済・福祉)
常設・移動展示場
市場への的確なアピール
地域との共存共栄
仕掛けをつくる(経済)
行政の音頭による異業種
との連携でニーズに対応
する
医師会、ドラッグストア、フィット
ネスクラブ、街の電気屋、商店
街などの生活文化産業他
販路開拓
安心、安全と結びつける
(ex.見守り事業)
潜在市場の発掘をする(経済)
立地(郊外、駅前、商店街内
など)、地域化、顧客の囲い
込み(相談会)、仲間づくり、
保険外ニーズも多様にある
人材の確保・育成する(福祉・経済)
専門家の確保・育成
人材定着率の改善
高齢リーダーの活用
企業
生産
安全と品質に関わる認証制度
業界基準の形成
法的規制への対応
パートナー企業の確保
信頼
もう一つの効果
地域の質的向上
企画・開発
売れるモノづくり(他社との差別化)
専門家(エビデンスを提案する)
健康(生活)の維持・継続の提案
先進的なエクササイズ、プログラムの開発
汎用から特注へ
マッチング(アドバイス事業)
行政の支援
創業や経営にかかわる支援
○サービス業の相談担当組織及びコーディネーターの配置 ○業界形成への支援
○運転資金・設備投資の支援 ○機器、サービスのアイディア選定、表彰
○利用者、卸・小売業と開発・生産とのマッチングの仕組み
第二の創業(新規事業への進出)支援
○健康関連等サービス業の相談担当組織及びコーディネーターの配置(再掲)
○業界等による認証や基準形成への支援
雇用の創出
○雇用の受け皿と若手雇用者の創出 ○転職に伴う人材研修システムでの支援 ○高齢者等の就労支援
○転職への助成金の拡充
福祉施策、地域との連携
○社会的価値の向上 ○市民のスポーツ・文化への多様な取り組みへの醸成
○福祉関連部局による健康意欲の向上を醸成、区等による健康イベントや健康拠点づくりとの経済局に
よる「地域資源としての事業者」との連携の強化を進める
- 123 -
資
料
横浜市経済活性化推進調査
「健康・福祉関連分野取り組み状況」アンケート調査
集計結果
報告書をご覧頂くにあたり
○ 回答は、選択肢の中から一つのみを選ぶもの(単一回答)と、複数選ぶことができ
るもの(複数回答)がある。
○ 単一回答の場合、調査結果の数値は、回答者の構成比(%)で表記した。なお、小
数点第2位を四捨五入している関係で、各項目の構成比の合計が 100%とならない
場合がある。
○ 複数回答の場合、調査結果の数値は、調査対象者のうち当該選択肢を選んだ方の割
合(%)で表記した。なお、複数回答の場合、各選択肢の割合の合計は 100%にはなら
ない。
○ 本文中の「n」は当該設問及び項目ごとの回答者数を表す。なお、単一回答の質問
に対し複数の回答をした場合は、その回答者については回答を無効とし、集計対象
から除外している。
1.アンケート実施概要
本調査の実施概要は、下記のとおりである。
調査目的
横浜市内における、「健康・福祉関連分野」に該当する事業の現状での実態、及び
今後の動向について把握する
調査対象
「健康・福祉関連分野」に該当する財・サービスを提供している事業者(581 件)
※基本的に横浜市に本社を置く事業者が対象だが、一部、市外に本社を置く事業者も含む
調査方法
調査期間
郵送による送付・回収(ハガキによる督促を実施)
調査項目
①健康・福祉関連分野への取り組み状況
(事業の概要、規模、現状の課題、事業の将来に対する展望 等)
②横浜市内の、健康・福祉関連分野の事業環境
(市内で事業を行うメリット、市内での事業継続意向、望ましい支援
平成 24 年 11 月 14 日~12 月 28 日
(11 月 26 日に督促状を発送、12 月 10 日を最終締め切りとする)
等)
2.アンケート回収結果
■回収件数:185 件、回収率:31.8%
(参考)業種分類別回収状況
業種名
建築リフォーム工事業
回収状況
回収数
回収率
対象数
事業実施 「有」
件数
割合
45
10
22.2%
3
30.0%
他に分類されない食料品製造業
9
3
33.3%
2
66.7%
医薬品原薬製造
1
0
0.0%
0
0.0%
医薬品製剤製造
22
8
36.4%
2
25.0%
生薬・漢方製剤製造
4
2
50.0%
1
50.0%
サービス用機械器具製造業
3
0
0.0%
0
0.0%
娯楽用機械製造業
0
0
0.0%
0
0.0%
他のサービス・娯楽用機械器具製造
0
0
0.0%
0
0.0%
医療用機械器具製造
19
5
26.3%
4
80.0%
歯科用機械器具製造
2
1
50.0%
0
0.0%
医療用品製造
3
1
33.3%
1
100.0%
運動用具製造業
9
2
22.2%
1
50.0%
介護用品製造業
2
1
50.0%
1
100.0%
一般乗用旅客自動車運送業
15
5
33.3%
1
20.0%
特定旅客自動車運送業
3
1
33.3%
0
0.0%
ドラッグストア
6
1
16.7%
1
100.0%
スーパー
2
0
0.0%
0
0.0%
コンビニ
5
2
40.0%
2
100.0%
法律事務所
5
2
40.0%
0
0.0%
公証人役場、司法書士
9
3
33.3%
1
33.3%
行政書士
4
2
50.0%
1
50.0%
配達飲食サービス業
5
0
0.0%
0
0.0%
旅館・ホテル
17
5
29.4%
3
60.0%
美容業
23
5
21.7%
3
60.0%
一般公衆浴場業
10
2
20.0%
1
50.0%
2
1
50.0%
0
0.0%
その他の公衆浴場業
- 126 -
業種名
回収状況
回収数
回収率
対象数
事業実施「有」
件数
割合
旅行業
26
5
19.2%
1
20.0%
旅行業者代理業
20
8
40.0%
4
50.0%
家事サービス業
25
11
44.0%
7
63.6%
映画館
8
1
12.5%
1
100.0%
劇団
5
0
0.0%
0
0.0%
楽団,舞踏団
1
1
100.0%
0
0.0%
演芸・スポーツ等興行団
2
0
0.0%
0
0.0%
スポーツ施設提供業
4
2
50.0%
1
50.0%
ゴルフ場
7
2
28.6%
1
50.0%
ゴルフ練習場
23
9
39.1%
5
55.6%
ボウリング場
6
4
66.7%
3
75.0%
テニス場
9
0
0.0%
0
0.0%
バッティング・テニス練習場
9
7
77.8%
4
57.1%
24
7
29.2%
4
57.1%
遊園地
1
0
0.0%
0
0.0%
囲碁・将棋所
1
0
0.0%
0
0.0%
ダンスホール
2
2
100.0%
1
50.0%
マリーナ業
7
3
42.9%
1
33.3%
フィットネスクラブ
カラオケボックス業
13
4
30.8%
1
25.0%
他に分類されない娯楽業
1
0
0.0%
0
0.0%
音楽教授業
8
3
37.5%
3
100.0%
生花・茶道教授業
1
1
100.0%
0
0.0%
そろばん教授業
1
1
100.0%
1
100.0%
外国語会話教授業
2
1
50.0%
0
0.0%
スポーツ・健康教授業
13
4
30.8%
4
100.0%
その他の教養・技能教授業
20
5
25.0%
4
80.0%
あん摩指圧師・柔道整復師
17
6
35.3%
6
100.0%
職業紹介業
8
5
62.5%
5
100.0%
街の電機店
15
7
46.7%
1
14.3%
7
3
42.9%
2
66.7%
パソコン教室
便利業
14
2
14.3%
2
100.0%
健康食品取扱
5
2
40.0%
1
50.0%
生活協同組合
5
2
40.0%
2
100.0%
商店街の組合等
3
1
33.3%
0
0.0%
その他生活支援サービス
5
3
60.0%
3
100.0%
大手建設会社
2
2
100.0%
2
100.0%
化粧品
3
0
0.0%
0
0.0%
警備業
11
6
54.5%
0
0.0%
その他
2
1
50.0%
1
100.0%
結婚相談所
3
1
33.3%
1
100.0%
製造業
4
0
0.0%
0
0.0%
ホームセンター
3
1
33.3%
0
0.0%
植木
3
0
0.0%
0
0.0%
登山
5
0
0.0%
0
0.0%
釣り具店
2
0
0.0%
0
0.0%
581
185
31.8%
100
54.1%
合計
- 127 -
3.集計結果
3-1健康・福祉関連分野への取り組みについて
問1
事業の実施状況
健康・福祉関連分野への取組状況についてたずねたところ、「実施している事業がある」(いず
れかの事業内容を選択し、その番号を回答欄に記入している)が 54.1%、
「実施している事業がな
い」(「0」を選択)42.2%であった。
図1
事業の実施状況(n=185)
無回答
3.8%
実施事業なし
42.2%
実施事業あり
54.1%
また、実施している事業の内容は、下記のとおりである。
表1
分類
製造業
建築・
施設運営
卸売・小売
運輸・観光・
旅行
ヘルスケア・
生活関連サー
ビス
生涯学習
その他
実施している事業の内容
事業の概要(例)
医療機器(中病院以上の検査室内にて使用)の製造(販売)
医療用 X 線装置関連製品の製造
福祉用具販売及び改造
健康食品の受託製造・販売
治療院、整骨院、デイサービス事業
介護付有料老人ホーム等の経営
バリアフリー工事
メディカルモール
ドラッグストア・調剤薬局の経営
スポーツ用品・補助用品の販売
高齢者への配達サービス(一部店舗)の実施
福祉タクシー
地域の方々が旅行に行きやすいようにバスを近くまで迎えに行く
ホテル・レストランの運営、宴会・婚礼の請負
夕食宅配
デイサービス
リラグゼーションサロンの運営 等
スイミングスクール、フィットネスクラブ等
スーパー銭湯
結婚情報サービス(独身の方へ向けたサービス)
美容室
各種教室
カラオケ
人材派遣、職業紹介(看護師派遣等も含む)
その他(電球の出張取替、医薬品の研究開発、業務代行等)
- 128 -
件数
1
1
3
3
3
3
3
1
3
7
1
2
4
3
2
4
5
12
1
2
5
12
2
4
5
問2
当該事業に取り組むようになった経緯
当該事業に取り組むようになった経緯についてたずねたところ、
「創業時から当該事業を実施し
ていた」が 60.0%、「本業からの派生として当該事業に参入した」が 27.0%となっており、「もと
は全く異なる事業を行っていたが、新規に当該事業に参入した」は 12.0%であった。
図2
当該事業に取り組むようになった経緯(n=100)
もとはまったく異な
る事業を行ってい
たが、新規に当該
事業に参入した
12.0%
無回答
1.0%
本業からの派生と
して当該事業に参
入した
27.0%
問2-1
創業時から当該事
業を実施していた
60.0%
当該事業を始めてからの期間
当該事業を始めてからの期間についてたずねたところ、「30 年以上」が 32.0%と最も多く、
次いで「10 年以上 20 年未満」が 23.0%、「20 年以上 30 年未満」が 17.0%であった。
図3
当該事業を始めてからの期間(n=100)
無回答 3年未満
2.0%
5.0%
30年以上
32.0%
3年以上5年未満
5.0%
5年以上10年未満
16.0%
10年以上20年未満
23.0%
20年以上30年未満
17.0%
- 129 -
問2-2
当該事業に参入した理由
当該事業に参入した理由についてたずねたところ、「社会や人の役に立つ事業だから」が
61.0%と最も多く、次いで「市場の成長が見込める分野だから」が 39.0%となっている。
図4
当該事業に参入した理由(n=100、複数回答)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
39.0%
市場の成長が見込める分野だから
31.0%
自社の技術・ノウハウを活用できる分野だから
21.0%
事業領域の幅を広げるため
61.0%
社会や人の役に立つ事業だから
4.0%
イメージアップのため
6.0%
今後の事業展開に向けた、ノウハウ蓄積のため
13.0%
その他
4.0%
無回答
問2-3
70.0%
当該事業に参入した際の課題
当該事業に参入した際に課題となったことについてたずねたところ、
「人材の育成」と「顧客
の開拓」がともに 50.0%と最も多く、次いで「人員の確保」が 40.0%、
「資金の調達」が 38.0%
となっている。
図5
当該事業に参入した際の課題(n=100、複数回答)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
38.0%
資金の調達
40.0%
人員の確保
22.0%
資格を持った人材の確保
人材の育成
50.0%
顧客の開拓
50.0%
7.0%
市場に関する情報の不足
19.0%
事業の許認可
27.0%
競合他社との差別化
8.0%
パートナー企業の確保
15.0%
法的規制への対応
その他
無回答
3.0%
7.0%
- 130 -
60.0%
問3
当該事業の主な顧客の年齢層
当該事業の主な顧客の年齢層をたずねたところ、
「年齢層に偏りがない」が 40.0%であった。特
定の年齢層で最も割合が高かったのは、「50~60 代」(21.0%)となっている。
図6
当該事業の主な顧客の年齢層(n=100)
一般消費者以外
7.0%
30代未満
4.0%
無回答
4.0%
30~40代
7.0%
50~60代
21.0%
年齢層に偏りがな
い
40.0%
問3-1
70代以上
17.0%
当該事業の主な顧客の年齢層の変化
問3で回答した主な顧客の年齢層について、今後変化すると思うかどうかたずねたところ、
「現在と変わらない」が 54.0%であった。次いで「50~60 代が中心になると思う」が 18.0%、
「70
代以上が中心になると思う」が 14.0%となっている。
図7
当該事業の主な顧客の年齢層の変化(n=100)
その他無回答
2.0% 8.0%
70代以上が中心に
なると思う
14.0%
現在と変わらない
54.0%
50~60代が中心に
なると思う
18.0%
30代未満が中心に
なると思う
1.0%
30~40代が中心に
なると思う
3.0%
- 131 -
問3-2
当該事業における、顧客同士の仲間づくりや地域とのつながりづくりへの取り組み状況
当該事業において、顧客同士の仲間づくりや地域とのつながりづくり等に取り組んでいるか
どうかたずねたところ、
「既に取り組んでいる」が 46.0%、「今は取り組んでいないが、今後取
り組みたいと考えている」が 22.0%であった。一方、
「今は取り組んでおらず、今後も取り組む
予定はない」は 23.0%となっている。
図 8 当該事業における、顧客同士の仲間づくりや地域とのつながりづくりへの取り組み状況(n=100)
今は取り組んでお
らず、今後も取り組
む予定はない
23.0%
無回答
9.0%
既に取り組んでい
る
46.0%
今は取り組んでい
ないが、今後取り組
みたいと考えている
22.0%
問3-3
当該事業の顧客の、製品・商品・サービスの利用目的
当該事業の顧客が、主にどのような目的で製品・商品・サービスを利用しているかについて
たずねたところ、「その他」を除き、
「健康状態の維持管理・改善」が 26.0%と最も多く、次い
で「健康増進・増強」が 23.0%であった。
図9
当該事業の顧客の、製品・商品・サービスの利用目的(n=100)
無回答
5.0%
健康増進・増強
23.0%
その他の目的
38.0%
病気の予防
1.0%
療養・リハビリ
7.0%
- 132 -
健康状態の維持管
理・改善
26.0%
問4
現在、当該事業を実施する上での課題
現在、当該事業を実施する上で課題となっていることについてたずねたところ、「顧客の開拓」
が 52.0%と最も多く、次いで「売り上げの停滞・減少」が 40.0%、
「人材の育成」が 37.0%となっ
ている。
図 10
現在、当該事業を実施する上での課題(n=100、複数回答)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
32.0%
人員の確保
21.0%
資格を持った人材の確保
37.0%
人材の育成
52.0%
顧客の開拓
3.0%
25.0%
他者との競争の激化
29.0%
新たな製品・サービスの開発
パートナー企業の確保
3.0%
法的規制への対応
13.0%
後継者の育成
13.0%
17.0%
市場の成熟・縮小
29.0%
施設・設備の老朽化
40.0%
売上の停滞・減少
その他
無回答
60.0%
24.0%
資金の調達
市場に関する情報の不足
50.0%
4.0%
7.0%
- 133 -
問5
現在、及び 3 年前の事業規模
現在、及び 3 年前(当該事業に参入して 3 年未満の場合は、参入当時)の事業規模についてた
ずねたところ、以下のような回答が得られた。
(当該事業の売上高)
当該事業の売上高の分布を見ると、下の図 11 のようになっている。現在は「1 億円以上 3 億
円未満」が 18 件と最も多く、3 年前では「1000 万円以上 3000 万円未満」が 16 件と最も多い。
なお、「10 億円以上」のうち、100 億円を超える大きな売上を記入している回答者が 4 件見ら
れた。
図 11
当該事業の売上高(n=100、数値は実際の件数)
0
5
10
6
1000万円未満
15
20
30
8
15
1000万円以上3,000万円未満
3000万円以上5000万円未満
25
16
9
6
7
7
5000万円以上1億円未満
1億円以上3億円
18
15
3億円以上5億円未満
10
8
5
5
5億円以上10億円未満
9
10億円以上
10
21
無回答
現在
25
3年前
(回答者の売上全体に占める、当該事業の売上の割合)
回答者の売上全体に占める、当該事業の売上の割合の分布を見ると、下の図 12 のようになっ
ている。現在、及び 3 年前ともに、
「100%」が最も多くなっている。また、回答者の半数以上
が「50%以上」と回答している。
図 12
回答者の売上全体に占める、当該事業の売上の割合(n=100、数値は実際の件数)
0
10%未満
5
10
8
20
25
30
35
40
9
10%以上30%未満
9
30%以上50%未満
9
9
50%以上100%未満
15
10
12
14
40
39
100%
19
無回答
現在
- 134 -
22
3年前
45
(当該事業にかかる従業員数)
当該事業にかかる従業員数の分布を見ると、下の図 13 のようになっている。現在、及び 3
年前ともに、
「10 人未満」が最も多い。一方で、100 人を超える規模で事業に取り組んでいる
回答者は全体の 1 割弱となっている。なお、ここでの「従業員数」には、パート、アルバイト、
派遣社員等の非正規社員を含んでいる。
図 13
当該事業にかかる従業員数(n=100、数値は実際の件数)
0
5
10
15
20
25
30
10人未満
32
30人以上50人未満
5
10
11
3
4
4
5
19
無回答
現在
問5-1
36
6
50人以上100人未満
300人以上
40
21
22
10人以上30人未満
100人以上300人未満
35
22
3年前
直近3年間の当該事業の推移
直近 3 年間の、当該事業の推移についてたずねところ、「おおむね順調に成長している」が
19.0%、
「成長しているが、速度は鈍化している」が 11.0%となっており、約 3 割が「成長して
いる」と回答している。一方、
「やや後退している」が 31.0%、
「大きく後退している」が 10.0%
であり、「後退している」との回答が 4 割程度となっており、「成長している」という回答より
も割合が高い。
図 14
直近 3 年間の当該事業の推移(n=100)
大きく後退している
10.0%
おおむね順調に成
長している
成長はしているが、
19.0%
速度は鈍化してい
る
11.0%
無回答
9.0%
横ばいで推移して
いる
20.0%
やや後退している
31.0%
- 135 -
問5-2
当該事業の今後の見通し
当該事業の今後について、どのような見通しを持っているかについてたずねたところ、
「横ば
いが続く見通し」が 35.0%と最も多かった。
「今後は衰退していく見通し」は 18.0%となってい
るが、
「今後も順調に成長が続く見通し」が 9.0%、
「しばらくは成長が続くが、鈍化する見通し」
が 14.0%となっており、2 割強の回答者は「成長が続く」と考えていることがわかる。
図 15
当該事業の今後の見通し(n=100)
今後も順調に
しばらくは成長が
成長が続く見通し 続くが、鈍化する
9.0%
見通し
14.0%
無回答
9.0%
わからない
15.0%
今後は衰退
していく見通し
18.0%
問5-3
横ばいが続く見通し
35.0%
今後の、当該事業の実施エリアとしての「横浜市」に対する見通し
今後、当該事業を実施する上で、横浜市を有望なエリアと思うかどうかについてたずねたと
ころ、
「有望なエリアと考えている」が 56.0%、
「有望なエリアとは考えていない」が 2.0%であ
った。
図 16
今後の、当該事業の実施エリアとしての「横浜市」に対する見通し(n=100)
有望なエリアとは考
えていない
2.0%
無回答
8.0%
どちらともいえない
34.0%
有望なエリアと考え
ている
56.0%
- 136 -
問6
健康・福祉関連産業について、今後新たに取り組みたいことの有無
健康・福祉関連産業について、今後新たに取り組みたいことの有無をたずねたところ、
「特にな
い」が 60.0%であった。一方、取り組みたいことがあると回答した方については、
「具体的な計画
がある」が 5.4%、「検討している」が 7.0%、「関心はある」が 16.2%であった。
図 17
健康・福祉関連産業について、今後新たに取り組みたいことの有無(n=185)
具体的な計画
がある
5.4%
検討している
7.0%
無回答
11.4%
関心はある
16.2%
特にない
60.0%
問6-1
今後取り組みたいと考えている事業の内容
問6で「取り組みたいことがある」と回答した方(「具体的な計画がある」、
「検討している」、
「関心はある」のいずれかを選択)に対し、その内容についてたずねたところ、下記のような
事業が挙げられている。
表2
分類
製造業
建築・
施設運営
卸売・小売
金融・保険
運輸・観光・
旅行
情報通信
ヘルスケア・
生活関連サー
ビス
教育・研究
その他
今後取り組みたいと考えている事業の内容
事業の概要
福祉用具、福祉機器、義肢装具、健康機器等(部品・材料含む)の製造
介護用品、衛生用品(部品、材料含む)の製造
健康食品、サプリメント(原材料含む)、化粧品の製造
病院、診療所、介護施設等
有料老人ホーム、高齢者専用賃貸住宅、サービス付き高齢者向け住宅等
バリアフリー等のリフォーム
調剤薬局、ドラッグストア等(化粧品を含む)
福祉用具、介護用品、健康食品、健康機器、スポーツ用品等の販売・リース・レンタル
高齢者に配慮された商品等の販売(スーパー、コンビニエンスストア等)
医療保険、介護保険等の保険商品
旅行業
ホテル、旅館
医療・介護関連情報の提供サービス
給食、配食、メニュー開発
患者・要介護者向け保険外サービス
医療・介護業務支援サービス
運動系施設・サービス(フィットネス、プール等)
癒し・リフレッシュ系施設・サービス(温浴施設等)
個人向けコンサルティング(結婚相談、フィナンシャル・プランニング、成年後見等)
カルチャーセンター、各種教室
医療教育関連
補完・代替医療関連
健康食品・漢方薬の原料の栽培等、有機栽培等
アミューズメント施設(映画館、演芸場等)
就労支援(人材派遣等)、起業支援
その他の事業
- 137 -
件数
2
1
3
5
2
2
1
2
5
1
2
1
2
1
3
6
9
3
9
6
1
1
1
1
2
1
3―1
問1
横浜市内の、健康・福祉関連分野の事業環境について
横浜市内で事業を営むことのメリット
横浜市内で事業を営むことについて、メリットと感じていることをたずねたところ、
「市場が大
きい(顧客が多い)」が最も多く、50.3%の回答者がメリットとして挙げている。次いで「交通機
関の便が良い」が 29.2%、
「人材の確保がしやすい」が 16.8%であった。一方、
「特にない」は 14.6%
となっている。
図 18
横浜市内で事業を営むことのメリット(n=185)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
50.3%
市場が大きい(顧客が多い)
16.8%
人材の確保がしやすい
同業他社が少ない
2.7%
29.2%
公共交通機関の便が良い
15.1%
東京に近い
6.5%
東京に比べて低コスト
事業パートナーを得やすい
2.2%
大学、教育機関・研究機関の集積がある
1.6%
その他
2.7%
14.6%
特にない
15.7%
無回答
問2
60.0%
今後の、横浜市内での事業継続意向
今後も、横浜市内で事業を行っていこうという意向の有無についてたずねたところ、
「同規模で
事業を継続する」が 51.4%と、約半数を占めており、次いで「規模を拡大して事業を行う」が 16.2%
となっている。一方、
「廃業または事業からの撤退」が 1.1%、
「市外への転出、もしくは拠点の移
動を予定」は 0.5%となっている。
図 19
今後の、横浜市内での事業継続意向(n=185)
現状ではまだ
決まっていない
11.9%
無回答
15.1%
廃業または
事業からの撤退
1.1%
市外への転出、
もしくは拠点の
移動を予定
0.5% 市内に拠点を置き
つつ、市外への
事業展開を行う
3.8%
同規模で事業を継
続する
51.4%
規模を拡大して事
業を行う
16.2%
- 138 -
問2-1
市外への転出を考えている理由
問 2 で「市外への転出、もしくは拠点の移動を予定」と回答した方(1 件のみ)に対し、そ
の理由についてたずねたところ、「同業他社が多く、競争が厳しい」と回答している。
問3
市内企業に対する行政の支援として望ましいもの
市内企業に対する行政の支援として、どのようなことが望ましいと思うかたずねたところ、
「運
転資金への融資の拡充」が 26.5%と最も多く、次いで「人材確保に関する支援」が 24.3%、
「設備
投資への支援」が 21.1%となっている。
図 20
市内企業に対する行政の支援として望ましいもの(n=185、複数回答)
0.0%
10.0%
経営に関する相談
20.0%
30.0%
10.3%
法律・税務などの専門的相談
10.8%
運転資金への融資の拡充
26.5%
設備投資への支援
21.1%
販路開拓に関する支援
11.4%
財・サービスの開発、
企画に係る資金支援の充実
8.6%
IT活用に関する支援
5.9%
他企業へのつなぎ役・仲介
11.4%
大学、専門学校等へのつなぎ役・仲介
7.0%
24.3%
人材確保に関する支援
人材育成に関する支援
海外進出に関する支援
11.9%
1.6%
15.1%
地域住民との交流機会の創出
規制に対する情報提供
その他
15.7%
3.2%
15.1%
特にない
無回答
16.2%
- 139 -
問4
今後、行政や地域、市民と連携して取り組みたい事業やアイデア等
今後、行政や地域、市民と連携して取り組みたい事業やアイデア等についてたずねたところ、
下の表 3 のような回答が得られた。
表3
今後、行政や地域、市民と連携して取り組みたい事業やアイデア等
事業の概要
ひきこもり老人を外へ連れだしてあげる
シニア企画塾/シニアの経験や知識を、企画書の作り方を教えることで、多方面への提案を促進させた
件数
1
1
い
スポーツ施設の案内を支援してほしい
1
隣接近隣に対し、一時避難所及び市消防の拠点としての協力について昭和 48 年ころに約束をしている。
1
井戸、プロパン等
テニスコートは雑種地の評価なので高く面積も使うので、固定資産税が高すぎる
1
行政の支援を頂き地域の方々の生活に密着していきたい
1
高齢者の方の支援など
1
行政施設への出店、商品の広報の連携
1
医薬品に頼らない健康増進⇒医療費の抑制
1
介護関連講座の開催。弊社は失禁ケアセミナーの実施が可能です(内容的に)。
1
行政イベントへの参加、地元自治会、地域包括支援センターへの事業案内
1
現在行っている事業をバックアップしてもらいたい
1
災害における環境整備
1
地域内のコミュニティの充実
1
シルバーゴルフ教室の連携
1
生活総合支援サポートを展開していきたい。地域を拠点をもち実践
1
小中学校での音楽課外授業(ローランド芸術文化振興財団と連携したオルガンの授業等)
1
市民の方のアイデアを吸い上げて、商品開発に活かしたい。アイデア募集や交流会、コンペなど
1
法律的解決をスムーズにする為ワンストップサービスの調整
1
ヨットの普及
1
高齢化時代におき、医療費抑制は急務と思います。鍼灸マッサージ業にその一部を担わせてもらえれば
1
低コストで利用者も益を得られるものと思います。自宅でのセルフ灸の指導なども高齢者には健康度ア
ップにつながります。
より、地域に根ざした CVS になる為に、もっと行政との連携を強化したい
1
市民への水中運動の指導及び講習会の支援
1
- 140 -
3-3
問1
高齢者の雇用について
高齢者の採用状況
高齢者(65 歳以上)を採用しているかどうかたずねたところ、
「積極的に採用している」が 8.1%、
「採用している」が 30.8%であった。「特に積極的には採用していない」は 50.3%となっている。
図 21
高齢者の採用状況(n=185)
積極的に採用
している
8.1%
無回答
10.8%
採用している
30.8%
特に積極的には採
用していない
50.3%
問1-1
高齢者を採用している理由
問 1 で「積極的に採用している」、「採用している」と回答した方に対し、その理由をたずね
たところ、「働くことに対する意欲が高いから」が 54.2%、「知識・ノウハウ・専門性を有して
いるから」が 47.2%となっており、雇用形態の自由度や人件費等コストの観点よりも、高齢者
自身の素質を理由に採用を行っている様子がうかがえる。
図 22
高齢者を採用している理由(n=72、複数回答)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
働くことに対する意欲が高いから
54.2%
知識・ノウハウ・専門性を有しているから
47.2%
雇用形態等の自由度が高いから
36.1%
人件費等コストの観点から
26.4%
その他
無回答
60.0%
8.3%
4.2%
- 141 -
「健康・福祉関連分野取り組み状況」アンケート調査
秘
※ご多忙のところ恐れ入りますが、平成24年11月30日(金)までに同封の封筒にて、ご返送ください。
(企業ラベル貼付欄)
貴社の概要及びご回答者についてご記入ください。
代表者名・役職名:
貴社名:
資本金:
百万円
従業員数:
人
ご回答者:(役職・部署)
住所:
(氏名)
(TEL)
《「健康・福祉関連分野」について》
高齢化社会の本格的な到来に伴い、健康や福祉に関連する分野の重要性が益々高まってくるものと予測さ
れます。本調査は市内事業者の「健康・福祉関連」分野における取組状況を把握し、今後の施策の基礎資料
とすることを目的に実施するものです。
なお、本調査においては、健康や福祉に関連する分野として、健康診断やスポーツジムなど身体的な面で
健康を支える事業のみならず、下記のとおり幅広く捉えております。
(事業のうち一部でもこうした分野に配
慮した取り組みをされている(例:職業紹介事業において高齢者の方を対象にしている、等)方にもご回答
をお願いしております。)
ご多忙のなか大変恐縮ですが、本調査へのご協力をお願い申し上げます。
◆「健康・福祉関連分野」の例(詳しくは別紙『
「健康・福祉関連分野」の事業群』をご参照ください)
・身体的な健康に資する:体力増強、体調維持 等
⇒フィットネスクラブ、ヘルスチェック 等
・精神的な健康に資する:生きがいづくり 等
⇒カルチャースクール、旅行、娯楽、コンサルティング 等
・社会的な健康に資する:社会参加、日常生活支援 等 ⇒就労支援、給食サービス、家事代行サービス 等
1.貴社で実施している、健康・福祉関連分野への取り組みについてお伺いします。
問1.貴社では、横浜市内で上記のような分野の事業に取り組んでいますか。その事業の概要について簡単
にご記入ください。また、別紙の事業群にある製品・商品・サービスのうち、近いものの番号を1つ
選んで、「番号」の欄にご記入ください。
⇒現在取り組んでいる事業が特にない方は、番号欄に「0」をご記入の上、3ページの問6にお進み下さい。
事業概要
例:地域の一人暮らしの高齢者への配食サービスをしている。
(製品やサービスの内容
などをご記入ください)
番号(別紙「健康・福祉関連
分野」の事業群から選択)
※問2~問6については、上記問 1 で回答した、貴社で実施されている事業について、各設問に対する選択
肢を選び、番号に○をお付けください。
【当該事業に取り組むようになった経緯についてお伺いします】
問2.どのような経緯で当該事業に参入しましたか。
(下表の選択肢の中から該当する番号ひとつに○をつけてく
ださい。)
1.創業時から当該事業を実施していた
2.本業からの派生として当該事業に参入した
3.もとはまったく異なる事業を行っていたが、新規に当該事業に参入した
問2-1
当該事業を始めてから、どのくらいの期間になりますか。(下表の選択肢の中から該当する番号ひ
とつに○をつけてください。
)
1.3 年未満
4.10 年以上 20 年未満
2.3 年以上 5 年未満
5.20 年以上 30 年未満
3.5 年以上 10 年未満
6.30 年以上
問2-2 どのような理由から、当該事業に参入しましたか。(下表の選択肢の中から該当する番号すべてに○を
つけてください。)
1.市場の成長が見込める分野だから
3.事業領域の幅を広げるため
5.イメージアップのため
7.その他(
問2-3
2.自社の技術・ノウハウを活用できる分野だから
4.社会や人の役立つ事業だから
6.今後の事業展開に向けた、ノウハウ蓄積のため
)
当該事業に参入する際に、どのようなことが課題になりましたか。(下表の選択肢の中から該当す
る番号すべてに○をつけてください。
)
1.資金の調達
4.人材の育成
7.事業の許認可
10.法的規制への対応
2.人員の確保
5.顧客の開拓
8.競合他社との差別化
11.その他(
3.資格を持った人材の確保
6.市場に関する情報の不足
9.パートナー企業の確保
)
【当該事業の主な顧客(対象者)についてお伺いします】
問3.当該事業の主な顧客は、どのような年齢層ですか。なお、最終製品でなく、半製品や部品を製造また
は加工し、他の企業等に納品等している場合は、「6.一般消費者以外」をお選びください。
(下表の選択肢の中から該当する番号ひとつに○をつけてください。)
1.30 代未満
4.70 代以上
2.30~40 代
5.年齢層に偏りがない
3.50~60 代
6.一般消費者以外
問3-1 主な顧客の年齢層は、今後の5年間で変化すると思いますか。
(下表の選択肢の中から該当する番号ひとつに○をつけてください。)
1.現在と変わらない
3.30~40 代が中心になると思う
5.70 代以上が中心になると思う
2.30 代未満が中心になると思う
4.50~60 代が中心になると思う
6.その他(
)
問3-2 当該事業において、顧客同士の仲間づくりや地域とのつながりづくり等に取り組んでいますか。
(下表の選択肢の中から該当する番号ひとつに○をつけてください。1、2を選択した方は、取組内容も
ご記入ください)
1.既に取り組んでいる
2.今は取り組んでいないが、今後取り組みたいと考えている
3.今は取り組んでおらず、今後も取り組む予定はない
(取組内容)
問3-3 当該事業の顧客は、主にどのような目的で製品・商品・サービスを利用されていますか。
(下表の選択肢の中から該当する番号ひとつに○をつけてください。)
1.健康増進・増強
3.療養・リハビリ
2.健康状態の維持管理・改善
4.病気の予防
5.1~4以外の目的
【現在の、当該事業実施上の課題についてお伺いします】
問4.現在、当該事業を実施する上で課題となっていることはありますか。
(下表の選択肢の中から該当する番号すべてに○をつけてください。)
1.資金の調達
4.人材の育成
7.他社との競争の激化
10.法的規制への対応
13.施設、設備の老朽化
15.その他(
2.人員の確保
3.資格を持った人材の確保
5.顧客の開拓
6.市場に関する情報の不足
8.新たな製品・商品・サービスの開発 9.パートナー企業の確保
11.後継者の育成
12.市場の成熟・縮小
14.売上の停滞・減少
)
【貴社の当該事業の事業規模、及び今後の見通しについてお伺いします】
問5.現在、及び3年前(参入して3年未満の場合は、参入当時)の事業規模についてご回答ください。
【事業】
現在
①当該事業の売上高(※1)
3年前(又は参入当時)
百万円
百万円
②貴社の売上全体に占める、当該事業の売上の割合
%
%
③当該事業にかかる従業員数(※2)
人
人
※1「現在」については、前年度の売上高をご回答ください(今年度から事業を開始した場合は、今年度の見込)
※2「従業員数」については、パート、アルバイト、派遣社員等の非正規社員を含みます
問5-1 直近3年間の当該事業の推移についてご回答ください。
(下表の選択肢の中から該当する番号ひとつ
に○をつけてください。)
1.おおむね順調に成長している
3.横ばいで推移している
5.大きく後退している
問5-2
2.成長はしているが、速度は鈍化している
4.やや後退している
当該事業の今後について、どのような見通しをお持ちですか。(下表の選択肢の中から該当する番
号ひとつに○をつけてください。
)
1.今後も順調に成長が続く見通し
3.横ばいが続く見通し
5.わからない
2.しばらくは成長が続くが、鈍化する見通し
4.今後は後退していく見通し
問5-3.今後、当該事業を実施する上で「横浜市」は有望なエリアであると思いますか。
(下表の選択肢の中から該当する番号ひとつに○をつけてください。)
1.有望なエリアと考えている
3.有望なエリアとは考えていない
2.どちらともいえない
【健康・福祉関連事業について、将来的に取り組んでみたいと考える事業についてお伺いします】
※下記の設問は、1 ページの問 1 にて「取り組んでいる事業がない」と回答した方もご回答ください。
問6.健康・福祉関連事業について、今後新たに取り組みたいと考える事業はありますか。(下表の選択肢
の中から該当する番号ひとつに○をつけてください。)
1.具体的な計画がある
3.関心はある
2.検討している
4.特にない
問 6 で「1.具体的な計画がある」
「2.検討している」
「3.関心はある」と回答した方にお伺い
します。
問6-1 今後取り組みたいと考えている事業の内容について、下記にご記入ください。
取り組みたい事業:
←別紙の事業群より、近いものの番号を選んでご記入ください(複数選択可)
(事業の対象者、製品・商品やサービスの概要等)
2.横浜市内の、健康・福祉関連分野の事業環境についてお伺いします。
問1.横浜市内で事業を営むことについて、メリットと感じていることはありますか。
(下表の選択肢の中から該当する番号すべてに○をつけてください。)
1.市場が大きい(顧客が多い)
3.同業他社が少ない
5.東京に近い
7.事業パートナーを得やすい
9.その他(
2.人材の確保がしやすい
4.公共交通機関の便が良い
6.東京に比べて低コスト
8.大学、教育機関・研究機関の集積がある
)10.特にない
問2.今後も、横浜市において事業を行っていこうと思いますか。
(下表の選択肢の中から該当する番号ひとつに○をつけてください。)
1.同規模で事業を継続する
2.規模を拡大して事業を行う
3.市内に拠点を置きつつ、市外への事業展開を行う 4.市外への転出、もしくは拠点の移動を予定
5.廃業または事業からの撤退
6.現状ではまだ決まっていない
問 2 で、「4.市外への転出、もしくは拠点の移動を予定」と回答した方にお伺いします。
問2-1 市外への転出を考えていると回答した理由について、下記からお選びください。
(下表の選択肢の中から該当する番号ひとつに○をつけてください。)
1.市場がすでに成熟、または縮小している
3.人材が確保しにくい
5.事業パートナーとなる企業が少ない
7.その他(
2.事業コストが高い
4.大学、教育機関・研究機関の集積が少ない
6.同業他社が多く、競争が厳しい
8.特に考えていない
)
問3.市内企業に対する行政の支援として、どのようなことが望ましいと思いますか。
(下表の選択肢の中から該当する番号すべてに○をつけてください。)
1.経営に関する相談
3.運転資金への融資の拡充
5.販路開拓に対する支援
7.IT活用に関する支援
9.大学、専門学校等へのつなぎ役・仲介
11.人材育成に関する支援
13.地域住民との交流機会の創出
15.その他(
2.法律・税務などの専門的相談
4.設備投資への支援
6.財・サービスの開発、企画に係る資金支援の充実
8.他企業へのつなぎ役・仲介
10.人材確保に関する支援
12.海外進出に関する支援
14.規制に対する情報提供
) 16.特にない
問4.今後、行政や地域、市民と連携して、取り組みたい事業やアイデア等がありましたら下記にご記入く
ださい。
3.貴社における、高齢者の雇用状況についてお伺いします。
問1.貴社では、高齢者(65 歳以上)を採用していますか。(下表の選択肢の中から該当する番号ひとつに○を
つけてください。)
1.積極的に採用している
2.採用している
3.特に積極的には採用していない
問 1 で、「1.積極的に採用している」「2.採用している」を選んだ方にお伺いします。
問1-1
高齢者を採用している理由を、下記よりお選びください。(下表の選択肢の中から該当する番
号すべてに○をつけてください。)
1.働くことに対する意欲が高いから
3.雇用形態等の自由度が高いから
5.その他(
—
2.知識・ノウハウ・専門性を有しているから
4.人件費等コストの観点から
)
調査は以上です。ご協力ありがとうございました。—
記入に関するお問合せは、tel 045-225-2372(調査受託事業者:株式会社浜銀総合研究所)まで
別紙
【「健康・福祉関連分野」の事業群】
分野
(製造業)
番号
代表例
1
医療機器(薬事法規制対象外のもの)の製造
2
医療機器(〃)の部品・材料の製造
3
その他医療機器(医療機関等で使用される薬事法対象外のもの。部品・材料含む)の製造
4
福祉用具、福祉機器、義肢装具、健康機器等(部品・材料含む)の製造
5
眼鏡、コンタクトレンズ、その他光学機器等(部品・材料含む)の製造
6
その他機械用具(部品、材料含む)の製造
7
スポーツ用品の製造
8
介護用品、衛生用品(部品、材料含む)の製造
9
健康食品、サプリメント(原材料含む)
、化粧品の製造
10
病院、診療所、介護施設等
11
有料老人ホーム、高齢者専用賃貸住宅、サービス付き高齢者向け住宅等
12
シェアハウス
13
バリアフリー等のリフォーム
14
メディカルモール
15
医療機関への医薬品、医療機器等の販売
16
調剤薬局、ドラッグストア等(化粧品を含む)
17
福祉用具、介護用品、健康食品、健康機器、スポーツ用品等の販売・リース・レンタル
18
高齢者に配慮された商品等の販売(スーパー、コンビニエンスストア等)
19
介護施設、高齢者住宅等への融資
20
リバース・モーゲージ等の金融商品
21
医療保険、介護保険等の保険商品
22
介護タクシー等の運輸サービス
23
旅行業
24
ホテル、旅館
25
電子カルテ、その他医療・介護関連情報システム
26
医療・介護関連情報の提供サービス
(ヘルスケア・生
27
給食、配食、メニュー開発
活支援関連サー
28
患者・要介護者向け保険外サービス
ビス)
29
医療・介護業務支援サービス
30
健康診断、特定健康診査、特定保健指導、人間ドック等
31
補完・代替医療(鍼灸、整体、アロマセラピー等)
32
運動系施設・サービス(フィットネス、プール等)
33
癒し・リフレッシュ系施設・サービス(温浴施設等)
34
個人向けコンサルティング(結婚相談、フィナンシャル・プランニング、成年後見等)
35
生活関連サービス(美容院、身近な生活サービスを行う電気店、警備業等)
(生涯学習、医療
36
カルチャーセンター、各種教室
教育関連)
37
医療教育関連
38
コ・メディカル関連
39
補完・代替医療関連
(農林水産業)
40
健康食品・漢方薬の原料の栽培等、有機栽培等
(その他)
41
アミューズメント施設(映画館、演芸場等)
42
就労支援(人材派遣等)、起業支援
(建築・施設運営)
(卸売・小売)
(金融・保険)
(運輸・観光・
旅行)
(情報通信)
43
その他の事業
※上記事業が主な「健康・福祉関連分野」として想定している分野です。
平成 24 年度横浜経済活性化推進調査
「医療・介護・健康関連産業実態調査」 報告書
平成 25 年 3 月
編集・発行
発行
横浜市経済局経済企画課
〒231-0017 横浜市中区港町 1-1
TEL.
調査協力
045-671-2583
株式会社
浜銀総合研究所
〒220-8616 横浜市西区みなとみらい 3-1-1
TEL.
045-225-2372
無断転載を禁じます
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