...

コレクション形成の理論

by user

on
Category: Documents
26

views

Report

Comments

Transcript

コレクション形成の理論
コレクション構築
福田博同2015
定義:意図→収集→活用→廃棄→長期保存→評価→意図
図書館におけるコレクション構築
•コレクションを構築し→情報提供
構成
•メディア別(図書,雑誌,視聴覚,電子資料)
•言語別(日本語,英語,中国語,朝鮮語,ポルトガル語等)
•主題別(各分野の比重)
•年代別(児童,ヤングアダルト,一般,老眼)
•タイプ別(ビジネス図書館,農村,漁村等)
コレクション構築: 焚書等
• 図書館は「表現の自由」(憲法21条) の保証機関
阻害する事例
• 言論統制:公権力等による不都合なメディアを統制
• 焚書(以下,狭義には公権力,広義には社会的力を持つ個人団体を含む)
• 公権力等が不都合な書を焼く
• 検閲・発禁
• 公権力等が事前査読、不適当な書籍やメディア規制
• 自己規制
• 発禁を逃れるための自己規制
コレクション構築:焚書等
中国
• 前356年:商鞅(しょうおう|前390年-前338年)の禁書
•
商君教秦孝公,,,燔詩書而明法令,,,孝公之行、主以尊安,国以富強(商鞅は
秦孝公を教えた,,,詩経や書経を焼き法令を明らかにし,,,孝公はこれを行い,
君主の位は尊ばれ安定し、富国強兵)(韓非子:和氏)
• 前213年,秦・始皇帝の焚書
•
李斯建議:「史書只保留秦國史書,其他國家的史書都焚毀;「《詩經》、《書
經》及諸子百家之書」只し「有博士官可以保留」,民間的都限期交出燒毀;
「醫藥、卜筮、農業之書民間」可以保留;想學法律的人以官吏為師」秦始
皇下旨同意
コレクション構築: 焚書等
中国
• 焚書坑儒(Wikiwand)~漢代の禁書(恵帝まで)(漢書巻2)
• 隋・煬帝(ようだい),讖緯(予言)書の焚書
• 668年,唐高宗『老子化胡経』偽経として廃棄(百度百科)
• 宋代, 『宋賢文集』焚書や【兵書】等の輸出禁止
• 1782年, [乾隆帝]『四庫全書』完成(検閲)
• 毛沢東, 文化大革命時の焚書(wikipedia) 「興法批儒」運
動
• 2015年現在, ネット検閲:非常に深刻な状態(ウィキペディア/国
境なき記者団)
コレクション構築: 焚書等
欧州近世まで
• 325年,コンスタンティヌス1世,キリスト教の公認(第1ニカイア
公会議)とアウリス派を異端とし、同派図書の焚書
• 1455年,グーテンベルク活版印刷術による『42行聖書』→自
由な出版への恐れ→1486年『Malleus Maleficarum』(魔女に
与える鉄槌1576年まで13版)
• 1486年,ベルトルト大僧正(Berthold von Henneberg)の出版
検問所
• 1501年,アレクサンデル6世(Pope Alexander 6),事前検閲制度
• 1559年, 【禁書目録】(Index librorum prohibitorum)
コレクション構築:焚書等
欧米近現代
• 1933年,ドイツ学生協会による非ドイツ的図書の焚書
• 1946年, 連合国による非ナチ化(ナチズムと軍国主義)メディ
ア (新聞,雑誌,映画,図書)の検閲と廃棄
• 1945年ソ連との対立,1949年中華人民共和国成立,1950年
朝鮮戦争→1950年-54年米国のマッカーシズムによるレッ
ドパージ
• 2001年-2015年6月:米国愛国者法(対テロリズム)(解説
ウィキペディア)
コレクション構築: 焚書等
日本近世以前
• 1587年,[秀吉]による【バテレン追放令】, 1590年【遣欧使
節】帰国【活版印刷機】(王彩芹2011)(秋山学2015) →1596年,
【サン・フェリペ号事件】→【フランシスコ会修道士処刑】
• 1617年, 家康【キリシタン禁教令】(奥深山親司 | 奈良静馬1942)
• 1630年, 輸入漢籍の耶蘇教義書禁書令(筆禍史/宮武外骨)コ
マ9,【書物目利】(岡村光章ほか1992)
• 1657年, 和本軍書出版許可制(京都所司代)
1992)
(岡村光章ほか
コレクション構築: 焚書等
検閲等:日本:近世以前
• 1694年, 『鹿の巻筆』版木焼却著者流罪(筆禍史/宮武外骨)コマ17
• 1722年,[吉宗]の【出版令】(筆禍史/宮武外骨)コマ22と【本屋仲間
制度】(岡村光章ほか1992)
• 1790年【寛政異学の禁】(昌平黌で朱子学以外を禁じる)
• 1804年【絵本太閤記】等絶版[喜多川歌麿],〔歌川豊国〕
等手鎖50日処罰(筆禍史/宮武外骨)コマ37
• 1842年【出版取締令】(筆禍史/宮武外骨)コマ46, 『偽紫田舎源
氏』等絶版(筆禍史/宮武外骨)コマ48
コレクション構築: 焚書等
検閲等:日本:近代
• 1868年【太政官布告】(出版統制),
(筆禍史/宮武外骨)コマ62
• 1869年【出版条例】( 『法令全書明治』8年コマ143), )
• 1875年【讒謗律(さんぼうりつ)】(名誉保護法:『法令全書明治』8
年コマ137),
【新聞紙条例】(宮武外骨「新聞雑誌処罰略記」(筆)筆禍史
64所収)
• 1925年【治安維持法】
コマ
コレクション構築: 焚書等
焚書等:日本:現代
• 1945年[GHQ]による【事前検閲制】,戦前思想書等の焚書,墨
塗り教科書(田甫桂三2013)
• 1952年サンフランシスコ講和条約発効,以降刑法175条違反の押収
• 2001年,船橋西図書館員の図書廃棄事件(ウィキペディア)
• 選書権を持つ司書(公権力等)が「新しい歴史教科書をつくる会」や
西部邁らの著書107冊を廃棄(表現の自由保証,除籍基準違反)
• 最高裁判決:有罪(判決文)
• 図書館は「図書館の自由宣言」にあるように「表現の自由」を保
証する機関
• 「著作者の表現の自由を侵す」
コレクション構築: 表現の自由
表現の自由の保証
• 憲法
• 21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、こ
れを保障する。
•
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵しては
ならない。
• 憲法14条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性
別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係
において、差別されない。 →
•
地方自治法
•
244条2普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次
項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用す
ることを拒んではならない。
コレクション構築: 選書・別置・廃棄
事件
• 1988年『ちびくろサンボ』絶版
• 1932年, ラングストーン・ヒューズの「黒人差別」批判(Jim Crow Museum
of Racist Memorabilia : The Picaninny Caricature)
•
1935年差別動画 米国の図書館で禁止
•
1953年, 岩波書店版(イラストがインド系少年でなく黒人少年)のち120万部発行
• 1988年, ワシントンポストで日本の黒人差別書として批判記事。「黒
人差別をなくす会」絶版要請(西日本新聞)。 岩波書店も絶版
•
1990年10月31日,長野市,教育委員会, 市内図書館等に廃棄依頼(11月15
日朝日新聞夕刊(加藤夏希2010))
•
2005年, 著作権切れを瑞雲社で復活
コレクション構築: 選書・別置・廃棄
事例
• 2008年, 堺市ボーイズラブ本問題(堺市監査委員公表 第48号), (参考:放
送倫理・番組向上機構2008.1)
• 2010年, 「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する
条例」について(JLA 図書館の自由委員会要請)
• 2013年, 松江市『はだしのゲン』学校図書館での閉架要求←JLA要望
• 2015年, 「OoA Against Racism」漫画『嫌韓流』閉架要求(図書館の自由委員会)
• 2015年, 国連人権委員会委員Boer-Buquicchio, 日本の児童ポルノ(漫
画を含む)を包括的に批判(国連人権委員会)
• 有害図書リスト例:内閣府リスト 茨城県
「図書館の自由宣言」
コレクション構築: 選書論
•ボストウィック「図書館員は検閲官たれ」(Bostwick1908)
背景解説(井上靖代2013)
•価値論
•古くは高価:宗教書→研究・教養書→実用書→娯楽書→商売書
•教養教育的価値が必要
•要求論
•1909年ボルトン「コミュニティのニーズ」(Bolton1909)
• 目的論:
ウェラード:社会調査の上,社会改良的目的,教育的目的,娯楽的目的,
情報提供目的に基づき価値の確定
コレクション構築:日本
• 1963年JLA『中小都市における公共図書館の運営』
– すべての人に無料で貸出、資料の増大を
• 1970年JLA『市民の図書館』
– 市民の求める図書を自由に気軽に貸出す
– 児童にサービス
– 全域にサービス網
• 以上の参考資料:森智彦2011 安井一徳2004
• 蔵書構築の課題: CA1734研究文献レビュー蔵書構成
山本昭和2001
• 無料貸本屋論争
– CA1579公共貸与権をめぐる国際動向(南亮一20005)
– 無料貸本屋でどこがわるい?(津野海太郎2013)
以上参考資料を読んで、蔵書構築の課題をまとめ、自分なりの蔵書
構築を考えよう
コレクション構築:メディア基準
• コレクションづくりの考え方
– IFLA 政府機関図書館のためのガイドライン2008
第6章
• 組織の目的によるコレクション構築方針の継続性
• 利用者ニーズ,利用者,潜在的利用者の把握:利用コ
ミュニティの特性の理解
• 満足の質:少ない労力で昀良のものを
• 所属する組織の目標と目的を達するために、利用者
コミュニティーにとって最大限の妥当性
コレクション構築:メディア基準
– IFLA 政府機関図書館のためのガイドライン2008
第6章:続き
•
•
•
•
•
•
•
アクセスか所有か:電子情報の発信の重要性
著者・発行者の権威
資料の永続的価値
作品およびインデックスの質
同分野の資料の量や要望
複本はしない:利用が多い場合を除くが
電子資料:アクセスレベル, 印刷物との関連, ドキュメ
ントの提供方法, 複数利用のライセンス
– IFLA 多文化コミュニティ
等
コレクション構築:実際上の課題
館種別蔵書構築方針
• 国立国会図書館
– 国レベルの視点
– 納本制度
– 資料電子化→国レベルの視点で情報提供
– Web情報資源のアーカイブ
コレクション構築:実際上の課題
館種別蔵書構築方針
• 公立図書館の設置及び運営上の望ましい
基準について(日本図書館協会)
• 都道府県立図書館
– 都立図書館 | 埼玉県立図書館
• 市区町村立図書館:
– 例:千代田区立図書館, 同資料選定基準
– 例:新宿区立図書館資料の除籍・廃棄基準
– 武雄市図書館蔵書問題 Chika Igaya2015.12.25 図書館
問題研究会声明2015
コレクション構築:実際上の課題
館種別蔵書構築方針
学術情報基盤としての大学図書館等の今後の整備の在り方について2006
• 専門図書館: 現状, 契約データベース 重点収集資料
– 参考資料:専門図書館論/(原田勝1974)
• 大学図書館
–
–
–
–
学術雑誌(冊子, オンライン)の割合が多い
研究用資料と学生用資料の区分
例:新潟大学 | 立命館大学
選書ツアー:例:明治大学(報告書:鈴木,桑原2011)
– 参考資料:小山憲司2012
• 全国学校図書館協議会図書選定基準 | メディア基準
– 各分野に応じた具体的な判断基準
コレクション構築:学術雑誌
•学術論文収集の課題
•電子図書館プロジェクトから機関リポジトリへ(栗山正光2004)
•わたしを眠らせない7つの難問(尾城孝一2010)
構築理論
•ブラッドフォードの法則
•ある主題に関連する論文の多くが少数の主要雑誌に掲載される(コ
アジャーナル)
•一方,そのような論文をごくわずかしか掲載しないような雑誌が非常
に多数存在するという経験則(コトバンク)
•半減期の法則
•資料の老化:学術雑誌論文の利用半減期とエンバーゴの長さを巡
る議論 (CA25204:2014)
Fly UP