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C _中間発表会申請書(Request for Interim Presentation)

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C _中間発表会申請書(Request for Interim Presentation)
提出日Submission Date: 2009
Form J (F→O)
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21
博士学位論文審査報告書
Summary of Doctoral Thesis and Report of Examination
研究科長 殿
下記のとおり、審査結果を報告します。
To the Dean:
We report the result of Examination for the Doctoral Thesis below.
学籍番号 Student I.D. No.:
4000S307 -
学生氏名 Name:
和文題名Title in Japanese:
武重
直人
中国都市社会における「単位」の形成と変化:
建国から改革・開放までの「単位」機能形成の要因と過程
英文題名Title in English:
Factors and Processes in the Formation, Evolution and Functioning of the Work Unit System in Urban
China, 1949-1978
記
1. 口述試験参加教員 Faculty Members Involved in Oral Examination
①論文主指導教員
Doctoral Thesis Guidance Faculty
(審査委員会主査)
(Chief Referee of the Screening Committee)
(プロジェクト研究指導教員) (Faculty in-charge of the Project Research)
氏名 Name:
所属 Affiliated Institution:
資格 Status:
園田
茂人
印
東京大学大学院情報学環/早稲田大学大学院アジア太平洋研究科
教授/客員教授
博士学位名・取得大学名: Ph.D. Title Earned・Name of Institution
社会学修士
東京大学
②副指導教員(審査委員 1)Deputy Advisor (Member of Screening Committee 1)
氏名 Name:
天児
所属 Affiliated Institution:
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科
資格 Status:
教授
慧
印
博士学位名・取得大学名: Ph.D. Title Earned・Name of Institution
社会学博士
一橋大学
③審査委員 2 Member of Screening Committee 2
氏名 Name:
菱田
所属 Affiliated Institution:
法政大学法学部
資格 Status:
教授
雅晴
印
博士学位名・取得大学名: Ph.D. Title Earned・Name of Institution
学士(文学) 東京大学
④審査委員 3 Member of Screening Committee 3
氏名 Name:
小嶋
所属 Affiliated Institution:
筑 波 大 学 大 学 院 人 文 社 会 科 学 研 究 科
資格 Status:
専任講師
華津子
印
博士学位名・取得大学名: Ph.D. Title Earned・Name of Institution
法学博士
慶応義塾大学
⑤審査委員 4[該当者のみ]Member of Screening Committee 4 [if any]
氏名 Name:
所属 Affiliated Institution:
資格 Status:
博士学位名・取得大学名: Ph.D. Title Earned・Name of Institution
印
2. 添付資料 Attached document(s)
4
枚pages(和文4,000字程度、和文に限る。ただし、論文題目のみは、和文・英文を併記すること)
武重直人君(学籍番号 4000S207-)の博士学位取得申請論文「中国都市社会における『単
位』の形成と変化:建国から改革・開放までの『単位』機能形成の要因と過程」
(英語訳 Factors
and Process in the Formation, Evolution, and Functioning of the Work Unit System in
Urban China, 1949-4978)の審査会が 2009 年5月 18 日(月)の午後1時から午後3時す
ぎまで、早稲田大学 19 号館3階 317 室で行われた。会場には、武重君と審査委員4名の他
に傍聴者1名、合計6名が集まり、口述試験が行われた。
30 分弱のプレゼンテーションと1時間 10 分程度の質疑応答の後、20 分ほど審査を行い、
審査結果をとりまとめた。結果は「合格」。以下に論文の概要、質疑応答の内容、及び評価
を示す。
*
論文の目次は以下の通り。
はじめに
第1章
序論
第2章
政治的機能―動員機能のメカニズムを中心に
第3章
経済的機能―現金配分抑制機能に注目して
第4章
社会的機能―社会流動制御機能に注目して
第5章
結論
「はじめに」では、本論文が中国の都市社会を理解する上で重要となる「単位(danwei)」
を研究の対象とし、建国後から文化大革命が収束するまでの時期に限定した上で、「単位」
の機能と機能間の関連性、具体的には政治的機能としての「動員」、経済的機能としての「現
金配分抑制」
、社会的機能としての「社会流動制御」に注目することを指摘し、これらの相
互関係を明らかにすることが主張される。
第1章では、本論文が対象とする「単位」を定義し、その基本的特性を紹介した上で、
従来の「単位」の形成史及びその機能分析を行っている諸研究(路風、X.Lu、A.Walder、
W.Yeh,M.Frazier, E.Perry など)が「単位」の形成プロセスを明らかにすることを目的と
していながら、その歴史的起源を探ることに力点を置きすぎ、どのようなメカニズムを通
じて「単位」の堅固な構造が出来上がったかを明らかにしえていない点を指摘する。そし
て、「はじめに」で指摘した3つの機能の連関を軸に、「単位」の形成と変化のプロセスを
明らかにするべく、モデル・仮説を提示している。
具体的な歴史に即しながら、個々の機能の(時期ごとの)特徴を論じているのが、第2
章から第4章までである。
1
第2章では、政治的機能を動員に注目しながら、「単位」の機能変容を論じている。広義
の動員が可能となるためには、監視と狭義の動員(政治思想教育や運動への呼びかけなど)
が充実していなければならず、これらの監視と狭義の動員をめぐって、どのような動員主
体が、どのような装置を用い、どのようなアウトプットをもたらしたかを歴史的に分析し
ている。その結果、①大衆路線を掲げた中国共産党の絶対的支配が確立する中で、②党組
織や党外協力者、保安機構、報告制度、档案などの政治装置が使われ、③大衆運動へと発
展していったものの、そこには「紅」と「専」の間で循環的周期が見られる、としている。
第3章では、計画経済化が進む中で、特に都市部の賃金が低く抑えられている点に注目
し、なぜこのようなことが生まれたのかを中心に分析が進められている。
賃金の抑制は、具体的には、インセンティブ部分の縮小、基本給の凍結・引き下げ、低
賃金労働力の活用といった3つの方法をもって進められたが、それが時期によって異なる
経済的要請を受けていたこと、またその背後に政治的イデオロギーとしての「紅」(反物質
主義的で、闘争指向、均質指向)と「専」(高い労働生産性を第一義とする考え)の対立・
融合が存在していたという。そして、その具体的な政策やその背景、社会的流動要因、イ
デオロギー要因が 1949 年から 55 年、1955 年から 57 年、1957 年から 61 年、1961 年から
65 年、1966 年から 78 年の5つの時期ごとに分析されている。
政治と経済を十全に機能させるには、人口の移動を制御しないといけない。第4章では、
「単位」のもつ社会流動制御の機能を、雇用をめぐるコントロール、社会的資源の配分を
通じたコントロール、戸籍によるコントロールの3つの側面に注目した上で、これらがど
のような政治的機能(=動員)や経済的機能(=賃金の抑制)と結びついていたかを、象
徴的な政策を時期区分のメルクマールとしながら、歴史的に紐解いていく。
第5章は、以上の3つの章で展開されてきた議論を総括し、政治、経済、社会のそれぞ
れの機能のあり方を歴史的に通観してみる一方で、それぞれにどのような力が働きあった
のかをまとめた箇所である。
①政治的な動員によって賃金の抑制が図られる一方で、賃金の抑制(特に低賃金労働力
の活用)が政治的動員によって可能となっていたこと、②政治的動員によって雇用、戸籍、
社会的配分による社会の非流動性が生まれるとともに、こうした非流動的状況が監視機能
や狭義の動員を可能にしたこと、③社会的流動性の欠如が賃金抑制に有利に働く一方で、
賃金を抑制するために社会的流動性が利用されたことなど、それぞれ政治的イデオロギー
のあり方によって、その影響力の強さは異なるものの、3つの機能の間で互いに作用しあ
うようになり、特に 1967 年から 70 年にかけては、党の支配、党の単位への浸透、大衆運
動の広域性など、おおよそすべての局面で「単位」が形成されることになったとされ、今
までの議論がまとめられている。
最後に、本論文における成果として、①主要な機能の間での連関過程を明らかにしたこ
と、②その相互補完関係をモデルとして提示したこと、③「単位」のもつ歴史的特徴と今
日の都市社会の関連性を部分的に明らかにしたこと、④各機能間の連関で従来の研究では
2
明らかにされてこなかったいくつかの点に言及できたことの4点が触れられ、他方、①労
働組合や福利厚生など、
「単位」の働きと結びつきが強い事項についての言及・掘り下げが
不足していること、②扱っている資料が二次資料に偏っており、インタビューなど新しい
データの発掘が不足していること、③現代の都市社会のあり方との結びつきについては示
唆程度にとどまっていること、の3点が今後の課題として示され、論文が終っている。
*
口述試験では、以下の点が問題点として指摘された。
第一に、「単位」の機能を論じるに当たって、労働組合や居民委員会など、それ以外のア
クターとの関連性が言及されてしかるべきである点。本論文では、単位をめぐる政策的動
向を論じることに焦点が当たりすぎており、他のアクターとの関係抜きでは「単位」の性
格が理解できないとする点については、筆者も理解していたが、あくまで政策的動きを軸
に論文をしたという返答がなされた。
第二に、具体的な「単位」内部の行動・事象が細かく論じられていないため、
「単位」が
政府の意向に沿って動く受動的な存在でしかないような印象を与えかねない点。筆者は、
確かにそうではあるが、論文の意図が「単位」の成立プロセスの歴史的追跡であるため、
「単
位」の具体的な動きについては射程となっていないと反論した。
第三に、
「単位」がどれだけ社会主義体制全体に起因するものであるかを論じるためには、
ソ連などとの対比が必要とされた点。筆者は、その指摘に同意しつつも、時間的制約から
そこまで手が回らなかったと述べた。
第四に、章ごとに節のネーミングがバラバラで、時期区分も異なるために、記述・説明
に体系性が欠けている印象を与えかねない点。この点については、①各機能を論じるにあ
たって問題にしなければならない事象や政策が異なるため、どうしてもこうした齟齬が生
じてしまうこと、②しかも各機能を論じるにあたって求められるデータが異なるため、処
理の方法も異ならざるをえないと主張し、筆者なりの見解を開示した。
第五に、文献の記述に平板な箇所が見られ、特に政策の呼称については、英語や中国語
を利用しているなど不統一が見られる点。この点について筆者は陳謝し、表記を統一した
ものを再度提出したいと返答した。
もっとも、審査委員がもっとも問題視したのは、本論文で展開されている仮説の第一が
「複数要因説」と命名されていた点にある。
「単位」に関する従来の先行研究が単一要因説であったとしても、多くの場合、社会現
象は複数の要因に影響を受けていることから、
「複数要因説」といってみたところで、何も
言っていないことに等しいのではないか。むしろ、複数の機能が相互に予期し合う状況が
歴史的に出来上がっていったプロセスをうまく表現し、これを仮説として表記するのがよ
いのではないかというのが審査委員の主張である。筆者も、論文の新規さ、論点の新しさ
3
を過不足なく表現できなかった点を反省した上で、この点、今後に活かして生きたいとし
て口述試験は終了した。
*
これら多くの批判・コメントが出されたものの、以下の諸点を考慮すると、本論文は博
士学位授与に値するというのが審査委員の間で合意された。
第一に、従来の「単位」研究をしっかり整理している点。筆者が指摘するように、
「単位」
に関しては相当に雑駁な研究しか行われていないのが現状で、その意味でも知的な貢献は
大きい。特に、中央政府による政策を「単位」の組織化に関わる機能から整理し直し、そ
の相互の関係について堅実な洞察を行っている点は評価できる。
第二に、筆者自身が指摘しているように、「単位」が形成される過程で各機能間が連関す
るようになる点を考察する過程で、従来の研究では明らかにされてこなかったいくつかの
点に言及できた点は評価に値する。
筆者自身は特段意識していないようだが、文化大革命が始まった時期、都市部の多くの
知識人が農村に下放されるようになるのは、毛沢東主義の「紅」による影響が大きい一方
で、農村から多くの「安価な労働力」が都市部に流入し、代替可能性が高い仕事に入り込
んでいったのは、劉少奇・鄧小平ラインの「専」による影響が大きく、この両方が同時に
作用することによって、この時期に大きな人口移動が生じることになったと指摘されてい
る。この視点は、1990 年代以降大規模に生じるようになった農村からの人の移動を理解す
る上でも重要で、現代における賃金の格差拡大が劉少奇・鄧小平ラインの「専」のみの論
理によって説明できることを示唆するものである。
筆者は長く上海における日本企業の駐在員として勤務し、指導教員から直接的な指導を
受ける機会が極めて限られていた。指導教員が行うゼミでは、研究を行う上でのポイント
を確認する作業が絶えず行われているが、このゼミに参加できなかったことを考えると、
筆者の知的努力は大変なものであったと想像される。それゆえ、もう少しこうした方がよ
かったといった要求が審査委員から多く出されることになったが、筆者の置かれていた状
況を考えてみると、よく努力したというのが審査委員全員の感想であった。
以上から、表記の統一を前提とした上で、博士学位取得申請論文「中国都市社会におけ
る『単位』の形成と変化:建国から改革・開放までの『単位』機能形成の要因と過程」を
合格とし、学位授与に審査委員全員が賛成したことを報告する。
(4,400 字)
4
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