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シリコンとガラスの陽極接合部に及ぼす ガラス材料の影響
日本金属学会誌 第 73 巻 第 2 号(2009)110 115 シリコンとガラスの陽極接合部に及ぼす ガラス材料の影響 岡 田 英 樹1,2, 金 内 隆 祥1, 高 木 秀 樹3 大 橋 修1 1新潟大学大学院自然科学研究科 2新潟県工業技術総合研究所 3独立行政法人産業技術総合研究所 J. Japan Inst. Metals, Vol. 73, No. 2 (2009), pp. 110 115 2009 The Japan Institute of Metals Effect of Glass Materials on Joints in Anodic Bonding of Glass to Silicon Hideki Okada1,2,, Takayoshi Kaneuchi1,, Hideki Takagi3 and Osamu Ohashi1 1Graduate School of Science and Technology, Niigata University, Niigata 9502181 2Industrial 3National Research Institute of Niigata Prefecture, Sanjo 9500915 Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Tsukuba 3058564 Borosilicate glass is often used as a material during the anodic bonding process because the thermal expansion coefficient of glass is very close to that of silicon. However, in recent years, a new chemical composition of glass was developed as a joinable glass at a lower bonding temperature. To ensure the reliability of anodic bonding joints of the new glass to silicon, it is necessary to clarify the influence of bonding conditions and the comparison of performance of anodic bonding joints of new glass and borosilicate glasses. In this study, the effect of the bonding conditions on the tensile strength and thickness of the reaction layer YY) to silicon was comparatively and bonding charge density of anodic bonding joint of three glasses (TEMPAX, PYREX, SW investigated. The main results obtained are as follows. YY was bonded at a lower bonding temperature than TEMPAX and PYREX. Under The anodic bonding joints using SW YY to silicon was the thickest of all. Independent of the same bonding conditions, thickness of the reaction layer on joints of SW glasses, the increase in the bonding charge density resulted in stabilized tensile strength and the fracture modes changed to glass fractures. Thus, measuring the bonding charge density during the anodic bonding process helped to clarify the effects of the bonding conditions on the anodic bonding joints of glass to silicon. (Received October 10, 2008; Accepted December 1, 2008) Keywords: anodic bonding, micro-electro-mechanical-systems, borosilicate glass, lithium aluminosilicate glass, silicon, tensile strength, bonding charge density 部の組成変化よる残留応力の発生について報告5)があり,陽 1. 緒 言 極接合では,シリコンと熱膨張係数が近いホウケイ酸ガラス が最も利用されている.しかしながら,近年,接合温度の低 陽極接合13) は,ガラスと金属や半導体材料を密着させて 温化を目的とした新しい組成のガラスの開発610)が行われて 200 ~ 400 ° C 程度に加熱し,金属や半導体材料側を陽極とし おり,市販されるようになってきている.また,陽極接合プ て 100 ~ 1000 V の電圧を印加して接合する技術である.本 ロセスの低温化はガラス材料の改良だけでなく,レーザを使 接合法は MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の製造 用した局所加熱11) や誘導加熱による方法12) ,アルミニウム によく利用されている.先に,シリコンとホウケイ酸ガラス 蒸着による方法13) など,プロセスの改善についても報告が の陽極接合部(引張強さや破断形態などの機械的特性,接合 ある.陽極接合部の信頼性を高めるためには,これら新しい 界面の反応層)に及ぼす接合条件(接合温度,接合電圧,接合 ガラス材料の接合性について,すでに使用されているホウケ 時間)や電荷密度の影響を検討した.その結果,「接合状態は イ酸ガラスとの比較や接合条件の影響などを検討し,明らか 電荷密度に依存し,電荷密度が低い接合条件では界面破断す にする必要がある. るが,電荷密度が大きくなるにつれて,引張強さのばらつき が小さくなり,ガラス内破断となる4).」ことを報告した. そこで本研究では,陽極接合で利用される 3 種類のガラ ス材料( TEMPAX, PYREX, SW YY )を用いて,以下の内 陽極接合のプロセスの改善について,シリコンとガラス材 容について比較検討した.接合条件と接合部の破断形態や引 料の熱膨張係数差によって発生する歪みや,接合に伴う接合 張強さなどの機械的特性の関係を検討した.さらに,接合部 の断面の電子顕微鏡観察を行い,接合部の反応層に及ぼす接 新潟大学大学院生(Graduate Student, Niigata University) 合条件の影響についても調べた.併せて,接合界面での電荷 第 号 2 シリコンとガラスの陽極接合部に及ぼすガラス材料の影響 111 の移動が陽極接合反応と密接に関係していると考えられるた (接合電圧)を印加して,一定時間,温度・電圧ともに保持し め4),接合中に接合部に流れ電流から電荷密度を算出し,界 た後,加熱と電圧の印加を停止して室温まで放冷した.接合 時間は電圧印加時間である.接合条件は,接合温度 200 ~ 面の反応層や引張強さとの関係を検討した. 350° C ,接合電圧 100 ~900 V ,接合時間 60 min とし,すべ 実 2. 2.1 験 方 法 ての接合は大気中で行った.接合電流は,回路内に配置した 電気抵抗( 1 kQ )の両端の電圧から算出し, Si とガラスの接 供試材・試験片形状 合面積 9 mm×9 mm で除して電流密度とした. 供試材は,添加元素ホウ素の p 型半導体で抵抗率が 3.53 ~5.58 Q・cm,結晶面方位が(100)面のシリコン(以下,Si と 2.3 評価方法 表記する)を使用した.また,ガラス材料はすべて Si と熱膨 評価は全て既報4)と同じ方法を用いた.接合部の観察を接 張係数が近いものであり,成形方法が異なる 2 種類のホウ 合後にガラス側から光学顕微鏡で行った.引張試験は,陽極 株 製 TEMPAX Float および ケイ酸ガラス(ショット日本 接合体を引張試験用ジグに接着し,万能材料試験機を用いて Corning Inc. 製 PYREX ) ( 以 下 , TEMPAX お よ び 試験速度 1.0 mm / min で行った.引張試験後,破断面を観 PYREX と表記する)と,接合プロセスの低温化を目的とし 察した. て開発されたリチウムアルミノケイ酸ガラス(旭テクノグラ 株 製 SW ス YY )(以下, SW YY と表記する)を用いた. 接合した試料の断面を走査型電子顕微鏡で観察,エネル ギー分散型分析装置で線分析を行った. 化学組成の測定結果を Table 1 に示す.組成は走査型蛍光 X 株 リガク製 ZSX PrimusII )により測定した. 線分析装置( 表面粗さ Ra の測定結果を Table 2 に示す.表面粗さの測定 株 製フォームタリ は形状・粗さ測定機(テーラーホブソン サーフ S5C)で行った. 実 3. 3.1 験 結 果 引張強さと接合条件の関係 各ガラス材料を用いて陽極接合した接合部の接合温度と接 陽極接合試験片の形状は,既報4)と同様のものを用いた. 合電圧の引張強さへの影響について調べた.ガラス材料とし Si は厚さ 0.5 mm,直径 100 mm のウェハの片面にフォトリ て TEMPAX を使用し,各接合温度のときの引張強さと接 ソグラフィにより 9 mm × 9 mm ,高さ約 30 mm の凸部を複 合電圧の関係を Fig. 1 に示す.接合時間は 60 min である. 数形成し,ダイヤモンドカッタで 13 mm 角に切断したもの 図中の線は各接合温度における接合電圧の影響の傾向を示し を使用した.ガラスは厚さ 1.1 mm,直径 25.4 mm の円板状 たものである.接合温度が 250, 300 ° C では,接合電圧が高 くなる と引張強さは大きくなった.接合温度が 350 ° Cで である. 2.2 は,接合電圧の影響はほとんどみられなかった.また,接合 陽極接合法 温度が高いほど,引張強さが高くなる傾向がみられた.破断 陽極接合法は既報4)と同じ方法を用いた.陽極接合装置は 形態については,接合温度が 250 ° C ではすべての試料が界 試料加熱用ホットプレートと直流安定化電源から構成される 面破断を示し,350° C ではすべてがガラス内破断を示した. 装置を用いた. 300° C で接合したものに関しては,接合電圧が高くなると破 ホットプレート上に銅電極板(陰極),カーボンシート,ガ ラスと Si の凸部を重ね合わせたもの,モリブデン電極棒(陽 断形態が界面破断からガラス内破断に変化した. PYREX を使用した場合の引張強さと接合電圧の関係を Fig. 2 に 示 す . PYREX は 引 張 強 さ と 接 合 電 圧 の 関 係 は 極)の順で設置した. Si は前処理として,アセトン,エタノールの順で超音波 洗浄を行い, 10 フッ酸に浸漬し,酸化膜を除去した.一 TEMPAX とほぼ同じ結果を示した. SW YY を使用した場合の引張強さと接合電圧の関係を Fig. 3 に示す.200, 250° C で接合したものは,接合電圧が高 方,ガラスは受け入れたままの状態で使用した. 接合手順は,所定の温度(接合温度)に到達後,所定の電圧 Table 1 Chemical compositions of glasses (mass). SiO2 B2O3 Al2O3 Na2O K2O Li2O MgO ZnO TEMPAX 78.4 14.6 2.6 3.7 0.7 ND ND ND PYREX 79.5 13.4 2.6 3.8 0.7 ND ND ND SW YY 61.4 5.8 20.4 ND ND 2.1 2.8 7.5 ND: Non-Detect Table 2 Surface roughness values Ra of glasses ( mm). TEMPAX PYREX SW YY 0.0039 0.0039 0.0038 Fig. 1 Plot of tensile strength of Si/TEMPAX joints as a function of bonding voltage with different bonding temperatures. 112 日 本 金 属 学 会 誌(2009) 第 73 巻 くなると引張強さが大きくなったが,300° C では変化はほと んどみられなかった.また,200° C ではほとんどが界面破断 を示し,250, 300° C ではガラス内破断を示した. 接合面積や欠陥,未接合部の有無,ガラス材料の相違など を接合部の光学顕微鏡観察によって確認した.接合部をガラ ス側から観察した結果を Fig. 4 に示す.未接合部分では間 隙があるため干渉縞がみられたが,どの材料も接合電圧の増 加とともに干渉縞が減少し,接合面積が増えた.また,接合 面に埃などの異物があると間隙が発生し,その周りは接合さ れないが,このような異物によらない微細な未接合面も存在 している.特に SW YY は,この未接合面が多数発生して Fig. 2 Plot of tensile strength of Si/PYREX joints as a function of bonding voltage with different bonding temperatures. おり,接合電圧が高くなると発生点数は増え,未接合部 1 個あたりの面積は小さくなった.接合温度が高くなると発生 しにくくなった. 次に,同じ条件で接合した場合のガラス間の引張強さの比 較を行った.Fig. 5 (a)に 250° C,(b )に 300 ° C で接合した場 合の接合電圧と引張強さの関係を示す. Fig. 5 ( a )の 250 ° C で接合した場合では, TEMPAX や PYREX に比べ, SW YY では界面破断からガラス内破断となる接合電圧が低く, 引張強さも高い傾向がみられた. Fig. 5 (b )の 300 ° C で接合 した場合は,ほとんど差がみられない. 以上のことから, SW YY は TEMPAX や PYREX に比 べて,同じ接合電圧ではより低い接合温度での接合が可能で あるが,接合条件によっては未接合部などの欠陥が多く発生 する傾向がみられた. Fig. 3 Plot of tensile strength of Si/SW YY joints as a function of bonding voltage with different bonding temperatures. 3.2 接合部の反応層と接合条件・引張強さの関係 ガラス材料の接合部反応層への影響を調べるために,走査 型電子顕微鏡を用いて接合部の断面の組成像観察と線分析を Fig. 4 Observations of Si/glass anodic bonding joints at bonding temperature of 250° C and various bonding voltages and glass materials: (a) TEMPAX, 300 V, (b) TEMPAX, 500 V, (c) TEMPAX, 700 V, (d) PYREX, 100 V, (e) PYREX, 300 V, (f) PYREX, YY, 300 V, (i) SW YY, 500 V, (j) SW YY, 700 V. 500 V, (g) PYREX, 700 V, (h) SW 第 2 号 シリコンとガラスの陽極接合部に及ぼすガラス材料の影響 113 Fig. 5 Plot of tensile strength as a function of bonding voltage with various glasses: (a) at bonding temperature (TB ) of C, (b) at TB=300° C. 250° 行った. Fig. 6 Compositional image and line analyzed profiles for cross section of Si/TEMPAX interface after anodic bonding. Si と TEMPAX を接合温度 300° C,接合電圧 500 V,接合 時間 60 min で接合した試料の中心の断面観察結果を Fig. 6 に示す.組成像において,左側の白く写っている部分が Si,右側の灰色の部分がガラスである.Si 近傍の TEMPAX 中にコントラストが異なる層が観察された.線分析の結果か ら,Na, K の拡散がみとめられ,界面付近では減少していた. 次に PYREX を使用した場合の断面観察結果を Fig. 7 に 示す. PYREX の観察結果,線分析結果は TEMPAX とほ ぼ同じ結果を示した. SWYY を使用した場合の断面観察結果を Fig. 8 に示す. TEMPAX や PYREX とは異なり,SW YY ではコントラス トの異なる層が 2 層(母材より暗い層と明るい層)形成され ていた.また, SW YY では Si 近傍の SW YY 内で Zn や Mg の拡散が確認され,コントラストの明るい層での濃化が みられた. TEMPAX や PYREX と同じようにアルカリで ある Li の拡散が考えられるが, EDS では Li の分析ができ ないため確認できていない. 次に,Fig. 6 ~8 に示すようにこのコントラストの異なる 層(SW YY については明るい部分と暗い部分の 2 層合わせ たもの, Fig. 8 では 0.89 mm )を反応層と定義して厚さを調 べ,接合条件の影響について調べた.各ガラス材料の反応層 の 厚 さ と 接 合 電 圧 の 関 係 を Fig. 9 に 示 す . 接 合 温 度 は 300 ° C ,接合時間は 60 min である.どのガラス材料におい ても,接合電圧が高くなると反応層は厚くなった. TEM- PAX, PYREX の反応層はほとんど同じ厚さであったが, SW YY の反応層は TEMPAX や PYREX に比べて厚くな っていた. Fig. 7 Compositional image and line analyzed profiles for cross section of Si/PYREX interface after anodic bonding. 114 第 日 本 金 属 学 会 誌(2009) 73 巻 Fig. 10 Plot of tensile strength as a function of thickness of reaction layer with various glasses. 4. 考 察 SW YY は TEMPAX や PYREX に比べ,同じ接合電圧 ではより低い接合温度での接合が可能であるが,接合条件に よっては接合部に発生する欠陥の量が多くなる傾向がみられ ること,接合部のガラス内には反応層が存在するが, SW YY は TEMPAX, PYREX と比べ厚い反応層が形成されて いることがわかった.そこで, TEMPAX, PYREX と SW YY の接合性の違いについて,接合中に接合部に流れる電流 Fig. 8 Compositional image and line analyzed profiles for YY interface after anodic bonding. cross section of Si/SW 密度の時間的変化や,電荷密度,引張強さ,反応層等から検 討した. はじめ に,各ガラ ス材料の接 合中の電流 密度の変化 を Fig. 11 に示す.どのガラス材料も手動で電圧を調整してい るため,電圧印加直後,電流は急激に増加し,最大値をとっ て,その後緩やかに減少した.しかし,TEMPAX, PYREX ではほぼ同程度の電流密度が発生しているのに対して, SW YY は非常に大きな電流密度が発生しており,その電流 密度の最大値は TEMPAX や PYREX の約 4 倍であった. その理由として, TEMPAX や PYREX の主のイオン伝導 種である Na よりイオン半径の小さい Li を含んでいること や,アルカリ濃度が高いことが考えられる. 各ガラス材料を用いたときの反応層の厚さと電荷密度の関 係を Fig. 12 に示す.接合温度や接合電圧といった接合条件 Fig. 9 Plot of thickness of reaction layer as a function of bonding voltage with various glasses. によらず電荷密度が高くなると,反応層は厚くなった.ま た,ガラス材料によらず,ひとつの曲線で表すことができ, 反応層の形成は電荷の発生によるものと考えられる. 反応層の形成は電荷密度に依存していることがわかった. 反応層と引張強さの関係を Fig. 10 に示す.ガラス材料に SW YY は TEMPAX や PYREX に比べ,同一の接合条件 よらず,反応層が厚くなると引張強さは大きくなる傾向がみ で大きな電荷密度が発生するため,低温での接合が可能であ られ,どのガラス材料でも約 0.6 mm を超えるとすべてガラ ると考えられる. ス内破断となった. 以上から引張強さは反応層の厚さに依存し,反応層の形成 以上の結果から,陽極接合部のガラス内の Si 近傍には, は電荷密度に依存することがわかった.そこで,引張強さと Na などアルカリ金属が減少した層やある元素が濃化した層 電荷密度の関係について検討した.各ガラス材料について引 があり,この層を合わせて反応層と定義した.この反応層は 張強さと電荷密度の関係を Fig. 13 に示す.図中に電荷密度 接合温度,接合電圧の増加とともに厚くなった.また,その が 0~0.4 kC/m2 を拡大して右上に示した.ガラス材料によ 反応層と引張強さには関係があり,反応層が厚くなることに らず,電荷密度が大きくなると,引張強さが高くなり,ばら よって引張強さは向上した. つきが小さくなった.また,接合条件に依存せず,電荷密度 が約 0.4 kC / m2 を越えると,ガラス内破断する継手が得ら 第 号 2 シリコンとガラスの陽極接合部に及ぼすガラス材料の影響 115 Fig. 11 Measurement of current density at joints during anodic bonding process with various glasses. Fig. 13 Plot of tensile strength as a function of bonding charge density with various glasses. の引張強さは電荷密度に依存する.電荷密度の増加とともに 引張強さが増加し,引張強さのばらつきも小さくなり,界面 破断からガラス内破断となる.接合中に電荷密度を測定する ことによって接合状態を把握できる. 陽極接合部の Si 近傍のガラス内には,Na などのアル カリ金属の減少や Mg や Zn 等の元素の濃化によって組成の 変化した反応層が形成される.その反応層は電荷密度に依存 し,その反応層が厚くなると引張強さが大きくなる. Fig. 12 Plot of thickness of reaction layer as a function of bonding charge density with various glasses. SW YY は,TEMPAX や PYREX に比べ,電荷が流 れやすいため,同じ接合電圧ではより低い接合温度での接合 が可能であるが,接合条件によっては接合部に発生する未接 合部等の欠陥の量が多くなる傾向がみられる. れることがわかった.反応層の成長も 0.4 kC / m2 で鈍化す ることから,電荷密度が 0.4 kC / m2 を超えると,陽極接合 文 献 反応が十分に進み,接合が安定したものとなったと思われ る.したがって, SW YY と TEMPAX, PYREX では,接 合条件によって引張強さに差があるものの,電荷密度で整理 すると,電荷密度の増加とともに引張強さは向上し,ばらつ きが小さくなった.また,0.4 kC/m2 を超えるとすべてガラ ス内破断となった.電荷密度を接合中に測定することで,接 合の状態を把握することができると考えられる. 結 5. 言 陽極接合で利用される 3 種類のガラス材料( TEMPAX, PYREX, SW YY )について,陽極接合条件,接合部の破断 形態,引張強さ,接合部の反応層,電荷密度等から比較検討 した.その結果,次の結論を得た. ガラス材料によらず,シリコンとガラスの陽極接合部 1) G. Wallis and D. I. Pomerantz: J. Appl. Phys. 40(1969) 3946 3949. 567. 2) G. Wallis: J. Ceram. Soc. 53(1970) 563 257. 3) M. P. Borom: J. Ceram. Soc. 56(1973) 254 4) H. Okada, K. Oya, H. Takagi and O. Ohashi: J. Japan Inst. 794. Metals 72(2008) 789 A(1995) 5) Y. Shoji, K. Minami and M. Esashi: T. IEE Japan 155 1208 1213. 6) S. Shoji, H. Kikuchi and H. Torigoe: Sens. Actuators A 64(1998) 95100. 7) Y. Huang, Z. Cui, X. Gao, C. Liu and Z. Gu: J. Non-Cryst. Solids 354(2008) 14071410. 432. 8) D. H äulsenberg: Microelectron. J. 28(1997) 419 2495. 9) P. Yu, C. Pan and J. Xue: Mater. Lett. 59(2005) 2492 10) R. Legtenberg, S. Bouwstra and M. Elwenspoek: J. Micromech. 160. Microeng. 1(1991) 157 11) U. M. Mescheder, M. Alavi, K. Hiltmann, C. Lietzau, C. 98(2002) Nachtigall and H. Sandmaier: Sens. Actuators A 97 422 427. 12) M. Chen, L. Yuan and S. Liu: Sens. Actuators A 133(2007) 266 269. 433. 13) S. Hata: Bull. Ceram. Soc. JAPAN 41(2006) 429