旧式のLL機器を活用したコンピュータ利用の授業

旧式のLL機器を活用したコンピュータ利用の授業
橋場
キーワード：
寛（大阪府立香里丘高等学校）
コ ン ピ ュ ー タ , LL, MP3フ ァ イ ル
１．はじめに
大 阪 府 の 高 等 学 校 で 最 新 の LLの シ ス テ ム 、 あ る い は CALLが 入 っ て い る 学 校 は 、 現 在 の
ところ、国際科学高校および国際教養科併設の学校くらいであろう。一般の高等学校で
先進的な機器を用いた授業と言われるものを行うのは、不可能に近い。（コンピュータ
とプロジェクター程度は学校予算の範囲内で購入可能なので、パワーポイントを用いた
授 業 は 可 能 で あ る が 。）現 任 校 に は 、LL機 器 す ら 導 入 さ れ て お ら ず 、LAN教 室 を 使 う に も 、
情報の授業が詰まっており、授業は入試中心に組まれ、先進的な機器を利用した授業を
する時間を見つけるのも大変な状態である。また、同一教科の他の教員の理解、管理職
の理解を得るのも大変である。おそらく、他の普通科のみの学校も似たり寄ったりの状
態であろう。
こ の 授 業 実 践 は 、 前 任 校 で の も の で 、 旧 式 の LL機 器 を ど の よ う に 生 か し た 授 業 が で き
る か を 試 し て み た も の で あ る 。こ の 発 表 が 、他 の 先 生 方 の 参 考 に 少 し で も な れ ば と 思 う 。
２．授業環境について
先 に 書 い た よ う に 、 LL機 器 に 関 し て は 、 旧 式 で 、 約 １ ５ 年 前 の も の な の で 、 生 徒 ブ ー
スにはテープレコーダ、イヤフォンとディスプレイのついたものである。教室には、旧
式 の プ ロ ジ ェ ク タ ー が 天 井 か ら 吊 し て あ り 、 教 室 前 面 の ス ク リ ー ン に OHC、 VTRの 画 像 が
写るようになっておりかつ生徒用のブースについているディスプレイで同様の画像が見
ら れ る 。６ 年 ほ ど 前 に 、学 校 予 算 で か ろ う じ て DVDプ レ イ ヤ ー を つ け 、学 校 情 報 ネ ッ ト ワ
ー ク で 教 室 に イ ン タ ー ネ ッ ト を 引 き 込 む た め の LANコ ネ ク タ ー を 一 つ 設 置 し て 頂 い た 。
私 の 行 っ た 授 業 は 、 上 述 の よ う な 、 旧 式 の LL機 器 を 生 か し 、 か つ パ ワ ー ポ イ ン ト を 利
用すると言うものであったので、設備に工夫が必要であった。
まず、ノートパソコンであるが、自前のものではなく、大阪府の高等学校に学校情報
ネットワークに使うために配布されたコンピュータを利用すると言うことを前提にした
の で 、 パ ワ ー ポ イ ン ト の 画 像 を ス ク リ ー ン や 生 徒 デ ィ ス プ レ イ に 映 し 出 す た め に 、 VGA
ポ ー ト か ら ダ ウ ン ス キ ャ ン コ ン バ ー タ を 用 い て 、VTRの 映 像 入 力 端 子 に つ な ぎ 、か つ コ ン
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ピ ュ ー タ で 再 生 す る MP3フ ァ イ ル を 生 徒 の テ ー プ レ コ ー ダ に 録 音 し た り 、教 室 の ス ピ ー カ
や 生 徒 ブ ー ス の イ ヤ フ ォ ン で 聞 け た り す る た め に 、VTRの 音 声 入 力 端 子 に コ ン ピ ュ ー タ の
イヤフォン端子を通して音声を送るという工夫をして始めて授業を行う前提条件が整い、
LLの マ ス タ ー ブ ー ス で 音 声 や 画 像 の コ ン ト ロ ー ル が で き る よ う に な っ た 。
学校情報ネットワークのコンピュータを利用した場合、不便ばかりではなく、利点も
あ っ た 。例 え ば 、学 校 内 の 他 の 学 校 情 報 ネ ッ ト ワ ー ク の コ ン ピ ュ ー タ と LANで 結 ば れ て い
る の で 、英 語 科 の 準 備 室 で 作 成 し た パ ワ ー ポ イ ン ト の 教 材 や MP3フ ァ イ ル を 、フ ラ ッ シ ュ
メモリーや、他の記憶媒体を用いて持ち運ぶことなく、共有フォルダーにおくことによ
っ て 、 LL教 室 の コ ン ピ ュ ー タ で 利 用 で き る と 言 う こ と で あ っ た 。
３. 授業手順について
授 業 手 順 は 以 下 の よ う に し た 。 Worksheet等 は 「 ４ 授 業 手 順 の 詳 細 」 参 照 。
１）前回のワークシートの回収
２）単語テスト用紙の配布・実施（パワーポイントで問題提示）
３）解答パワーポイントで提示
４）生徒の相互採点
５）単語テスト回収
６）パワーポイントで画像と選択肢（５択）提示、アナライザーで生徒に解答させる。
７）パワーポイントで解答提示（画像と吹き出し利用）
８）新出単語の発音練習（英日両方でリピート。パワーポイントで単語提示。アクセン
ト部分は大きいフォントサイズ利用）
９ ） worksheet1配 布
１ ０ ） Practice１ を 行 う
１１）音声ファイルの内容に関しての英問１つ口頭で言う。
１２）コンピュータで音声ファイル再生、選択肢をパワーポイントで提示、同時に音声
を生徒のテープレコーダに録音、生徒アナライザーで解答。パワーポイントで解
答 提 示 。 (Practice 2)
１ ３ ） １ ２ の 活 動 を あ と ２ 回 繰 り 返 す 。 音 声 フ ァ イ ル の 録 音 は １ ２ の み 。 (Practice 2)
１ ４ ） worksheet 2配 布
１ ５ ） 生 徒 は 各 自 の テ ー プ レ コ ー ダ を 使 い 、 自 分 の ペ ー ス で Practice 3を 行 う 。
１ ６ ） ス ク リ プ ト の プ リ ン ト を 配 布 。 Practice 3を 生 徒 の ぺ ー ス で 答 え 合 わ せ さ せ る 。
１７）スクリプトをもとに、フレーズ毎に教師の後についてリピートさせる。
ス ク リ プ ト を 見 な が ら 、コ ン ピ ュ ー タ の 音 声 フ ァ イ ル（ フ レ ー ズ 毎 の ポ ー ズ 入 り 。
フ レ ー ズ の 後 １ 秒 、 セ ン テ ン ス の 後 ２ 秒 ） に つ い て shadow reading(parallel
reading)
１ ８ ） read and look up
１ ９ ） Practice 4 生 徒 を ペ ア に し 、 ポ ー ズ 入 り 音 声 で shadowing。 相 互 評 価 。
２ ０ ） Practice 4 １ ９ ） と 同 じ ペ ア で 、 shadowing。 相 互 評 価 。
２ １ ） 生 徒 １ 名 を 指 名 し 、 教 室 の 前 で shadowing
２ ２ ） Practice 5 宿 題
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４.
授業手順の詳細
さて、上述の手順の中で、特に説明したい部分に関して図表等を挙げて解説していき
たい。
まず６）７）であるが生徒のスキーマを活性化させるためにパワーポイントで下左の
画 面（ 図 １ ）を 提 示 し ア ナ ラ イ ザ ー で 生 徒 に 答 え さ せ 。下 右 の 解 答（ 図 ２ ）を 提 示 し た 。
図 １ power point 画 面 1
図 2. power point 画 面 2
普 段 研 究 会 の 発 表 等 で は パ ワ ー ポ イ ン ト の 効 果 音 は あ ま り 使 わ れ な い が 、こ の 授 業 に
関しては生徒の興味を引くために効果音を用いてみた。当初考えていたとおり、生徒は
効果音に敏感に反応をしめし、成功であった。但し、生徒の興味をつなぎ止めるため毎
回違う効果音を用いた。
左の画像（図３）が８）のアクセントある部分
に大きいフォントサイズを用いた例である。アク
セントのある部分を視覚的に示すことにより、単
語を読むときの生徒の声が大きくなった。また、
英語的に正しいかどうか不安であったが、例えば
図 ３ の ２ を 例 に 挙 げ る と 、 [rapid 急 速 な ]と 英 語
と日本語をひとまとまりとして２回音読させ記憶
の 定 着 を は か っ た 。 （ 1995 池 田 和 弘 ）
図 3. power point 画 面 3
９ ） で 次 の worksheet1を 配 布 し た 。 こ の 授 業 は 国 際 教 養 科 １ 年 で 実 施 し た も の で あ る
が 、worksheetに は 発 音 記 号 を 入 れ た 。中 学 校 で 学 習 し て い な い た め 、学 年 当 初 に 発 音 記
号を学習させたので、それを定着させる意図である。最初のうちはカタカナ表記も活用
した。カタカナ表記、発音記号、どちらも、論議の対象になるが、大部分の英和辞典で
は発音記号が使われているので、生徒に教えることにした。カタカナ表記は生徒がとっ
つきやすいので利用した。
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Worksheet 1
Mo bali sh N o.９ (1)
(Practice 1)英 語 を 発 音 す る の で リ ピ ー ト し な が ら 、 書 き 取 り な さ い 。 回 数 は ２ 回 で
す。上の表を参考にしても結構です。
2)
1)
3)
4)
5)
6)
7)
8)
(Practice 2)音 声 を よ く 聞 い て ア ナ ラ イ ザ ー （ テ ー プ レ コ ー ダ ） の １ ～ ３ の ボ タ ン を
押し次のカッコに正解の番号を書きなさい。
１（
） ２（
） ３（
）
１年（
）組（
）番 氏名（
）
Practice1 に 関 し て は 、 音 読 筆 写 を 意 識 し た 。
１２）の選択肢は図４のような画面で行い正解の部分
の色が変わるようにした。
１７）のポーズの時間であるが、当初私の感でフレーズ
の後１秒、センテンスの後２秒としたが、「どのくらいの
ポーズの長さが生徒にとって聞きやすいか中学校３年間で
かなり力を身につけた高校１年を使って実験してみたとこ
ろ 1.2 秒 」 （ 鈴 木 2004） な の で 全 く の 、 間 違 い で な か っ
図 4 パワーポイント画面 4
434
たようである
１ ２ ） １ ３ ） １ ７ ） の MP3 フ ァ イ ル の 再 生 に 関 し て は 、 パ ワ ー ポ イ ン ト 画 面 か ら MP3
ファイルにリンクを張ることにより実施した。
１８）１９）２０）２１）に関しては授業時間をみながらどれかの活動を省略するこ
ともあった。
Worksheet 2
Mobalish No.９(2)
(Practice 3) テ ー プ を 聞 い て 空 所 を 埋 め な さ い 。｛ 数 字 の 部 分 は ア ラ ビ ア 数 字
（例：１２３）で書きなさい｝
The city of Shanghai is 1)(
) to (
) a Disneyland theme park.
Shanghai’s rapid economic development has made the city an attractive 2)(
)
destination. The city also has a convenient public transportation system. For these
3)(
),
the
Walt
Disney
company
has
4)(
)(
)(
) Shanghai. Shanghai will become the
third Asian city to host a Disneyland.
A "Universal Studios" theme park and the first World Expo are also scheduled to open in
Shanghai by 5)(
).
(Practice 4)
Shadowing competition
間違いの個数
pause
入り
pause
なし
パートナーの名前
(Practice 5) こ の 記 事 の 感 想 を 英 語 で 書 き な さ い 。 ２ sentences
１年（
）組（
）番
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氏名（
各 5words 以 上 。
）
スクリプシート
Shanghai Disneyland
The city of Shanghai / is planning to open / a Disneyland theme park.//
Shanghai's rapid economic development / has made the city / an attractive tourist
destination.// The city also has / a convenient public transportation system.// For these
reasons, / the Walt Disney company / has become interested in Shanghai.// Shanghai will
become the third Asian city / to host a Disneyland.//
A "Universal Studios" theme park / and the first World Expo / are also scheduled to open in
Shanghai / by 2010.//
上海ディズニーランド
上海市がディズニーランド開園を計画しています。
上 海 は 急 速 に 経 済 発 展 を 遂 げ 、観 光 客 に と っ て も 魅 力 的 な 行 き 先 と な り ま し た 。同 市 に
は、便利な公共交通機関もあります。これらの理由によってウォルト・ディズニー社は
上海に興味を持つようになりました。上海はアジアで 3 番目にディズニーランドを誘致
する都市となります。
上 海 で は 2010 年 ま で に 「 ユ ニ バ ー サ ル ・ ス タ ジ オ 」 の 開 園 や 、 初 め て と な る 万 国 博 覧
会の開催が予定されています。
５．授業の周辺
こ の 授 業 を 始 め た き っ か け は 、PTA の 予 算 で NTT DoCo Mo の mobalish と い う サ イ ト（ 英
語のニュース、その日本語訳、音声ファイルが手に入るサイトを自由に使えるようにな
っ た か ら で あ る 。（ 現 在 、 こ の サ イ ト は 閉 鎖 さ れ て い る ）
ま た 、私 自 身 長 年 LL の 授 業 で 映 画 を 使 っ て き た の だ が 、た ま に は 違 う 試 み を し て み た
いという気持ちもあった。
反省点としては、スクリプトシートの日本語訳をフレーズ訳にすべきであったと言う
こ と 、 ま た output に も う 少 し 時 間 が 割 け れ ば と 言 う こ と で あ る 。
この授業の結果、何回も音声を聞き、音読したことで英文が生徒の頭にインプットさ
れ た こ と は 間 違 い な い 。LL 教 室 を 出 る と き に は 、か な り の 生 徒 が 英 文 を 口 ず さ ん で い た
のだ。
MP3 フ ァ イ ル へ の ポ ー ズ 入 れ だ が 、 フ リ ー ソ フ ト の sound engine free を 用 い る こ と
にした。大変役にたつソフトなので少し紹介しておきたい。
sound engine free と は 、 い わ ゆ る 波 形 編 集 ソ フ ト で 、 無 料 で 配 布 さ れ て い る ソ フ ト
ウ エ ア で あ る 。（ http://www.cycleof5th.com/download/index.htm か ら ダ ウ ン ロ ー ド で
き る 。 Ｈ Ｐ に よ る と windows 95/98/Me/2000 で 動 作 。 私 は Ｘ Ｐ で 利 用 し て い る が 、 問 題
な く 動 作 す る 。）何 が で き る か と い う と 、マ イ ク 、ア ナ ロ グ ソ ー ス 、デ ジ タ ル ソ ー ス 、イ
ンターネット等から取り込んだ音声ファイルの波形表示や再生、録音レベルの一定化、
ノ イ ズ 除 去 、 無 音 挿 入 等 が で き る 。 基 本 的 に は WAVE フ ァ イ ル 対 応 だ が 、
VBMP3.dll(http://www.angel.ne.jp/~mike/vbmp3/index.html よ り ダ ウ ン ロ ー ド ) と
gogo.dll(http://www.marinecat.net/free/gogo3/mct_gogo.htm よ り 午 後 の コ ー ダ for
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Windows Ver3.11a を ダ ウ ン ロ ー ド (3.60MB)し コ ン ピ ュ ー タ に イ ン ス ト ー ル 、 Program
Files の WinGOGO よ り 取 り 出 す 。 ) を windows の system に 入 れ る こ と に よ っ て 、 MP３ フ
ァイルにも対応する。
６．速読練習用ホームページ作成ページ
話 は 変 わ る が 、 １ ０ 年 ほ ど 前 か ら Java Script に 関 心 を も ち 、 速 読 練 習 用 ホ ー ム ペ ー
ジができないものかと考え次の図のようなＨＰを作成してみた。
http://www.geocities.jp/hashibahiroshi/rapidver1.2.html に ア ク セ ス す る と 図 ５ の
ページがあらわれる、速読練習に使いたい文章をフォーム入力または貼り付け、チャン
ク の 先 頭 に ス ラ ッ シ ュ を 入 れ る 。（ 図 ６ ） 語 数 を ス ペ ー ス で 数 え る の で 、 例 え ば 、 The
International Air Transport Association / has revealed の 様 に ス ラ ッ シ ュ の 両 方 に
空白を入れると語数を数え間違えるので注意して頂きたい。図６の状態で、速読ページ
作成用ページという文字の真下のボタンを押すと、図７のようなページができる。図８
の よ う に 上 か ら ２ つ 目 の フ ォ ー ム に WPM を 入 れ て 「 英 文 を 読 む 」 ボ タ ン を 押 す と 、 図 ９
の よ う に 、 先 ほ ど 図 ６ で 区 切 っ た 区 切 り ご と に 、 図 ８ の WPM で 文 章 が 一 番 上 の フ ォ ー ム
にでてくると言うものだ。ぜひ、活用して頂きたい。
図５速読練習用ホームページ作成ページ 1
図６速読練習用ホームページ作成ページ 2
図 7 速読練習用ホームページ 1
図 8 速読練習用ホームページ 2
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図 9 速読練習用ホームページ 3
７．参考文献
池 田 和 弘 (1995)ス ー パ ー ソ ニ ッ ク 実 践 英 単 記 憶 術 中 経 出 版
鈴 木 寿 一 (2004)第 ５ ４ 回 大 会 紀 要 P156, 全 英 連
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