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平成20年度サプライチェーン省資源化連携促進事業 事例
平成20年度 経済産業省委託事業 サプライチェーン省資源化連携促進事業 事例集 ※「サプライチェーングループ」 この事業では、製品の製造における川上(素材事業者)から川中(部品製造事業者)、 川下(製品事業者)までの独立した企業間の連鎖を指します。 経済産業省 産業技術環境局 リサイクル推進課 はじめに 現在、世界的な景況感の悪化により、我が国製造業をめぐる事業の見通しはますま す悪化しています。他方で、環境・資源制約も高まっており、鉄、銅といったベース メタルからレアメタルに至るまで、今後数十年以内での資源の枯渇が懸念されていま す。これらの諸課題に対して、どのように対処するか企業経営者は、日々、難しい経 営の舵取りを迫られていることと思います。 経営環境の悪化と環境・資源制約という2つの困難な課題を解決するための1つの キーワードが、「省資源」です。従来、我が国の3R政策は、リサイクルを中心に進 められてきました。リサイクルは廃棄物の削減のため極めて有効な方策ですが、他方 で、コストの削減といった観点からは必ずしも最適の解ではありません。環境対策が 企業経営の足かせとなっては元も子もありません。したがって、製造業において、コ スト削減と環境負荷の低減を同時に達成する「省資源」が、今後ますます重要になっ ています。 もちろん、我が国の製造業においては、コスト削減の取組と軌を一にしながら、こ れまで「省資源」の取組が進められてきました。しかしながら、サプライチェーンが 複雑に絡み合う製造業においては、一口に「省資源」と言っても、製品の設計・仕様 の変更を必要とする場合等、単独企業だけでは改善が望めない場合もあります。 経済産業省では、 「省資源」を目指す中小企業を支援するため、専門家派遣による「資 源ロスの見える化」を通じて、サプライチェーンにおける「省資源」の最適化を促進 する「サプライチェーン省資源化連携促進事業」を実施しています。平成20年度は 20件の企業グループをモデルとして採択し、診断および改善策検討を支援しました。 この事例集は、採択された企業グループが実施した診断および改善策検討結果につ いてまとめたものです。自社だけでは解決できない課題を抱える製造業の皆様の参考 となれば幸いです。 この事業は、外部有識者からなる診断事業評価委員会の指導、助言を受けております。本事業の 事業委員会は、次の方々で構成されています。 診断事業評価委員会(50音順、敬称略) 委員長 國部 克彦 神戸大学大学院 経営学研究科 教授 委員 安城 泰雄 MFCA研究所 市川 芳明 株式会社日立製作所 環境本部 環境政策センタ 主管技師 上野 潔 国際連合大学 プログラム・アドバイザー 上野 英之 社団法人日本プラントメンテナンス協会 顧問 喜多川和典 財団法人社会経済生産性本部 コンサルティング部 エコ・マネジメント・センター長 下垣 彰 株式会社日本能率協会コンサルティング MFCAセンター マネージャー 中嶌 道靖 関西大学 商学部 教授 古川 芳邦 日東電工株式会社 ガバメントリレーション部 サステナブル・マネジメント推進部 部長 この事業の実施に際し、下記10名のマテリアルフローコスト会計(MFCA)に精通した外部専 門家に統括診断員としてご協力いただいております。 なお、統括診断員には、この事例集作成にもご尽力いただいております。 統括診断員(50音順、敬称略) 安城 泰雄 MFCA研究所 佐伯 秀一 財団法人社会経済生産性本部 コンサルティング部 沢味 健司 新日本有限責任監査法人 アドバイザリーサービス部門 SAAS部長 下垣 彰 株式会社日本能率協会コンサルティング MFCAセンター マネージャー 高田 愛三 特定非営利活動法人資源リサイクルシステムセンター 常務理事 玉澤 早苗 財団法人社会経済生産性本部 コンサルティング部 コンサルタント 梨岡英理子 株式会社環境管理会計研究所 取締役 松本 邦生 財団法人社会経済生産性本部 生産革新コンサルタント 山田 明寿 株式会社環境管理会計研究所 上席コンサルタント 山田 朗 株式会社日本能率協会コンサルティング 生産マネジメント革新本部 品質経営事業部 目 次 1.サプライチェーン省資源化連携促進事業とは…………………… 1 2.資源ロスの見える化について……………………………………… 2 3.事例集の構成………………………………………………………… 4 4.参加企業一覧………………………………………………………… 7 5.事例の要約…………………………………………………………… 8 6.事例紹介 株式会社エス・ティ・レーザー…………………………………… 14 株式会社エフ・シー・シー………………………………………… 16 株式会社奥羽木工所……………………………………………… 18 オーティス株式会社……………………………………………… 20 鹿嶋工業株式会社………………………………………………… 22 キングラン株式会社……………………………………………… 24 倉敷化工株式会社………………………………………………… 26 コイズミ照明株式会社…………………………………………… 28 三恵工業株式会社………………………………………………… 30 サンデン株式会社………………………………………………… 32 積水化学工業株式会社…………………………………………… 34 株式会社ダイナックス…………………………………………… 36 株式会社チクマ…………………………………………………… 38 株式会社T&E… …………………………………………………… 40 株式会社ディーアンドエムホールディングス………………… 42 パナソニック エコシステムズ株式会社… ……………………… 44 福島工業株式会社………………………………………………… 46 株式会社藤田電機製作所………………………………………… 48 北斗電子工業株式会社…………………………………………… 50 ミック工業株式会社……………………………………………… 52 1.サプライチェーン省資源化連携促進事業とは (1)事業の目的 省資源化を実現したい企業グループに対し、個別企業の資源ロスの見える化と課題の発見、さら に各企業が協力して取り組む事で解決する改善策の検討を支援し、企業グループが連携して行う省 資源化の取組の手本となる事例を作り出す事を目的としています。 (2)事業内容 ①モデル事業の採択 モデルとなる企業グループは、診断事業評価委員会の審査により採択されます。 診断事業評価委員会は必要に応じて、各グループに対して指導と助言を行います。 ②専門家による個別企業の製造工程の診断 各グループに対して、専門家3名からなる診断チームを派遣して、個別企業の診断を行い、資 源ロスを見える化します。 ③診断結果の共有 企業グループの各社担当者及び診断チームによるプロジェクト会議の場で、個別企業の診断結 果を企業グループ内で共有し、グループ全体最適の観点から問題点およびその改善策を検討しま す。 双方の機密情報を保持しながら改善策を検討するためには、共有する情報を選択する必要があ ります。(3.参加企業一覧の「連携先と共有した情報」参照) ④別の視点による改善策の検討 必要に応じ、診断チームとは異なる分野の専門家を派遣することにより、見える化された資源 ロスに対して、さらなる改善策を検討します。 (3)事業のスキーム 2.資源ロスの見える化について 本年度事業では、個別企業の資源ロスを見える化することにより解決すべき課題を見つけやすく するため、各参加企業においてマテリアルフローコスト会計(MFCA)を活用しました。ここでは MFCA の概要についてご紹介します。 ■ MFCA の狙い マテリアルフローコスト会計(Material Flow Cost Accounting 、以下 MFCA と記す)は、経 営者や現場管理者の意思決定に用いることで、環境負荷の低減とコスト低減の両立を同時に追求す ることを目的とした、環境管理会計の手法のひとつである。廃棄物の削減によるコスト削減、ひい ては生産性の向上を目指している。ドイツのアウグスブルグにある経営・環境研究所(IMU)によっ てその原型が開発された。日本においては、マテリアルを原材料・エネルギーに細分化し、工程ご とに測定し改善策の策定を行うなど、MFCA をより活用しやすいものに工夫を行っている。 MFCA では、製造プロセス中の原材料や部品など“マテリアル”のフローとストックを物量と 金額の両面から測定する。MFCA ではコストをマテリアルコスト、システムコスト、配送・廃棄 物処理コストに分類し管理する。 製造工程の各段階で使用する資源と、各段階で発生する不良品、廃棄物、排出物を物量ベースで 把握し、それを金額換算することで、不良品や廃棄物、排出物などマテリアルのロスのコスト金額 を明らかにする。 このロスのコスト金額には、原材料費のほか、労務費や減価償却費などの加工費が配分され、廃 棄物も製品の原価と同じように計算する。 MFCA が狙いとしているのは、廃棄物の発生量そのものを削減することである。MFCA は、製 造段階で発生する廃棄物を、工程ごとに、その物量と、材料費、加工費と廃棄物処理費をすべて含 めたコストで把握する。これは、廃棄物そのものの発生源に目を向けさせ、その発生量を削減する 課題を明確にし、廃棄物の発生量そのものを削減することにつながる。 廃棄物の発生量を削減することは、資源の使用量削減に直結し、製造段階の環境配慮になるだけ でなく、資源の購入量削減や業務効率向上にもつながる。 MFCA は、モノづくりにおける環境配慮とコストダウンを同時に追求し、 “環境と経済の両立” を目指す上で、非常に有効なマネジメントツールである。 ■ MFCA のコスト計算の考え方 加工型の製造においては、図表-1のように、製造工程の様々な段階で廃棄物、原材料のロスが 発生する。加工における廃棄物というのは、次のようなものである。 ・加工時の材料ロス(端材や切粉など) 、不良品、不純物 ・切り替え時の装置内に残った残渣 ・補助材料(溶剤など揮発する材料、切り替え時に装置を洗浄する洗剤、触媒など) ・原材料、仕掛品、製品の在庫の中で、品質劣化などで使用できなくなり廃棄したもの MFCA では、製品になった材料を“正の製品” 、製品にならなかった材料、すなわち廃棄物はす べて“負の製品”という。 副材料在庫 正の製品 正の製品 加工工程1 主材料在庫 負の製品 品質劣化 などによる 廃棄物 加工時の などによる 廃棄物 品質劣化 などによる 廃棄物 製品在庫 負の製品 廃棄物 ・仕掛在庫品の 正の製品 正の製品 加工工程2 負の製品 廃棄物 ・材料のロス ・加工不良 正の製品 仕掛在庫 負の製品 廃棄物 ・主材料の 補助材料在庫 負の製品 廃棄物 加工時の ・材料ロス ・不良品 ・切替時のロス 廃棄物 ・製品在庫品の 品質劣化 などによる 廃棄物 (仕掛品残渣) ・補助材料 (図表-1 製造工程で発生する廃棄物) MFCA では、次のような考え方にもとづき、製品の製造コストの計算を行う。 (1)正の製品コストと負の製品コストに分離、計算する。 ・正の製品コスト:次工程に受け渡されたもの(正の製品)に投入したコスト ・負の製品コスト:廃棄物やリサイクルされたもの(負の製品)に投入したコスト (2)全工程を通したコスト計算を行う。 ・正の製品コストは、次工程では前工程コストとして新規投入コストに加え、投入コスト合計と してコスト計算を行う。 (3)すべての製造コストを4つに分類して、上記の計算を行う。 ・マテリアルコスト(Material Cost、MC と省略して表すことがある):材料費、ただし製品に なる直接材料だけでなく、洗浄剤・溶剤・触媒などの製品にならない間接材料も計算の対象 ・システムコスト(System Cost、SC と省略して表すことがある) :労務費、減価償却費、間 接労務費などの加工費 ・エ ネルギーコスト(Energy Cost、EC と省略して表すことがある):加工費の中の電力費、 燃料費や用役費など ・廃棄物処理費(Waste Treatment Cost、WTC と省略して表すことがある) :排気、排液、廃 棄物の所内における処理費用、外部へ処理委託する際の委託費用など 以上、「マテリアルフローコスト会計手法導入ガイド Ver. 3(経済産業省産業技術環境局環境政 策課環境調和産業推進室発行) 」より抜粋 ゴシック体になっている用語については、6節「事例紹介」にも使用されておりますので、参考 にしてください。 3.本事例集の構成 本節以降の構成は以下のとおりとなっています。 御社の実情に即した事例を参照する際に、お役立てください。 4節「参加企業一覧」では、本事業に採択された20グループの「代表企 業名」 「業種」 「対象製品」 「連携する協力企業の業種」 「連携先と共有した情報」 「所在地」について記載しています。4節の「事例の要約」と合わせて御社 の実情と関連の深い事例の検索にお役立て下さい。 5節「事例の要約」では、各事例の成果を文章で要約しているほか、そ の事例を担当した統括診断員を知ることができます。 6節「事例紹介」では、見開き2ページにて採択された20グループの取 組を掲載しています。事例の見方については次ページの見本を参照くださ い。 【事例紹介見本】○○株式会社 採択されたグループの代表企業名 ―○○ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲 対象とした製品と対象工程の特徴を記載しています。関連するサプライ チェーンを通したマテリアルフローを図示しています。 A社 主材料 a B社 副材料 b 補助材料 c 副材料 f 補助材料 g 部品A 廃棄物 d 廃棄物 e 廃棄物 h 廃棄物 i ②事業に参加する目的・目標 ■目的 ■目標 プロジェクト開始時に企業自ら設定した目的・目標を記載しています。 ③診断方法 MFCAやLCA等診断に用いた手法とその概要を記載しています。 マテリアルフローコスト会計(MFCA)の用語については、 2節(2、3ページ)にて概説しています。こちらもご参 照ください。 ④診断結果 ■:診断結果 MFCA計算結果概要(コスト比率) 100% (リサイクルの売価は除く、工程間統合) 工程診断の結果を記載しています。 3.3% 掲載されている結果は公表可能な簡易なものです。 90% 80% (詳細な工程診断結果は個別企業のみに報告されています) 39.2% 70% 廃棄処理 SC EC MC 60% 6.3% 29.1% 50% 40% 4.5% 3.3% 30% 51.3% 10.0% 1.7% 20% 32.4% 10% 18.9% 0% 投入コスト 正の製品コスト 負の製品コスト ⑤改善策の検討方法と改善案 改善策① (サプライチェーン連携) 改善策② (サプライチェーン連携) 改善策③ (個別) 診断結果に基づいて検討した改善策の概略を記載しています。 改善策はサプライチェーンで取り組むべきものと、個別企業 改善策④ (個別) が単独で取り組むべきものに分けて記載しています。 改善策④ (個別) ⑥参加企業のコメント プロジェクト終了後の参加企業のコメントを記載しています。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 この事例に関する問合せ先を記載しています。 4.参加企業一覧 企業名 対象製品 連携する業種 連携先と共有した 情報1 所在地 (株)エス・ティ・レーザー 金属素形材製品製造業 複写機用部品 関連部品製造業 ①コストを含む情報 長野県 (株)エフ・シー・シー 自動車・同附属品製造業 四輪自動車用クラッチ 関連部品製造業 ①コストを含む情報 静岡県 教育用調理台、据付家具用 流し台 合板材製造業 ステンレス部材製造業 ②物量情報 宮城県 携帯電話部品(クッション 材、他) 糊材貼付加工業 フィルム貼付加工業 ①コストを含む情報 岡山県 工業用試作品(合成樹脂加 工、金属加工など) 精密金属加工業 ③正・負の製品割合 ④ロスの発生条件 神奈川県 キングラン(株) 家具・建具・じゅう器等卸売業 医療、福祉施設用カーテン 繊維加工業 ②物量情報 東京都 倉敷化工(株) ゴムベルト・ゴムホース・工業用 ゴム製品製造業 自動車用防振ゴム ゴム粉砕業 再生ゴム加工業 ②物量情報 岡山県 家庭用蛍光灯シーリングラ イト 板金加工業 樹脂成形・器具組立業 ①コストを含む情報 滋賀県 三惠工業(株) その他の家具・装備品製造業 イス 樹脂部品成型業 段ボール製造業 ③正・負の製品割合 三重県 サンデン(株) 自動車・同附属品製造業 自動車部品(カーエアコン 用部品) 切削加工業 ②物量情報 群馬県 積水化学工業(株) 土木工事業(舗装工事業を除く) 樹脂加工製品 樹脂加工関連業 ③正・負の製品割合 東京都 自動車用部品(湿式クラッ チディスク) 薄板鋼材製造業 鋼材加工業 摩擦材料加工業 ④ロスの発生条件 北海道 縫製加工業 ①コストを含む情報 大阪府 在庫管理業 ①コストを含む情報 広島県 (株)奥羽木工所 家具製造業 オーティス(株) プラスチックフィルム・シート・ 床材・合成皮革製造業 鹿嶋工業(株) 他に分類されない製造業 コイズミ照明(株) 電球・電気照明器具製造業 (株)ダイナックス 自動車・同附属品製造業 (株)チクマ 織物製(不織布製及びレース製を含む) 学校制服女子ブレザー 外衣・シャツ製造業(和式を除く) (株)T&E カット野菜(鍋物詰め合わ せ又はサラダ) その他の食料品製造業 (株)ディーアンドエムホールディングス 電気機械器具製造業(AV 製品) AV レシーバー 関連部品製造業 ②物量情報 神奈川県 パナソニックエコシステムズ(株) 民生用電気機械器具製造業 熱交換素子 樹脂部品成型業 ②物量情報 愛知県 福島工業(株) 電気機械器具製造業 業務用冷凍冷蔵庫 樹脂部品成型業 ③正・負の製品割合 大阪府 電気計測機器部品・光学機 器部品 電子機器部品製造業 ②物量情報 半導体製造用超純水の不純 物センサー プリント基板設計製造業 ③正・負の製品割合 兵庫県 空調機(床置型室内ユニッ ト)のオプション部材(背 面吸込口キット) 塗装業 ②物量情報 大阪府 (株)藤田電機製作所 電気計測器製造業 北斗電子工業(株) 電子応用装置製造業 ミック工業(株) 金属素形材製品製造業 神奈川県 1 連携先と共有した情報 ①コストを含む情報:物量情報(材料使用量・材料ロス量など)に加え、材料価格や人件費など製造原価に近い情報。②物 量情報:材料使用量・材料ロス量など。③正・負の製品割合:歩留り率の考えに人件費や償却費、光熱費も加味した情報。 ④ロスの発生条件:材料ロスが発生する条件のみの情報。 5.事例の要約 ㈱エス・ティ・レーザー 担当統括診断員:沢味健司(新日本有限責任監査法人) 長尺材を複写機用のシャフトに加工する工程に対してMFCAによる診断を実施した。その 結果、シャフト1本当たり、投入コストのうち約10%が負の製品コストとして発生していた。 この診断結果を参考に、1本当たりの切削誤差を20㎜から15㎜に変更することによる端材の 発生量の削減と、長尺材の直径を小さくすることによる研磨くずの発生量削減という改善策を 検討した。これらの対策により、マテリアルロスの削減と購入コストの低減という効果が期待 できる。 ㈱エフ・シー・シー 担当統括診断員:沢味健司(新日本有限責任監査法人) 四輪自動車用クラッチの製造工程に対してMFCAによる診断を実施した。その結果、クラッ チプレートのプレス工程から発生する端材がマテリアルロス(原材料ロス)の多くを占めてい ることがわかった。この診断結果を参考に、プレス方法(金型)の変更・効率化という改善策を 検討した。この対策により、材料歩留まり率が数%向上するという効果が見込まれることが、 MFCAによる試算で明らかとなった。 ㈱奥羽木工所 担当統括診断員:安城泰雄(MFCA研究所) ボード製作(大昭和ユニボード) 、及びステンレス製流し台製作(みよし工業)→調理実習台・ 教育施設用流し台製作(奥羽木工所)工程を対象にMFCAによる診断を実施した結果、みよし 工業では、約30%の工程ロス(ステンレスの端材) 、奥羽木工所において約16%の工程ロス (ボードの端材) 、が発生していた。これらのロス発生は、奥羽木工所の設計によるところが大 きい。本事業でこれらの情報が両社間、また奥羽木工所関係部署間で共有化されたことを機会 に、これらロスの発生状況を、設計部門と連携して定期的に検証し、継続的に改善活動を行な うこととなり、その活動が開始された。 オーティス㈱ 担当統括診断員:松本 邦生(社会経済生産性本部) PETフィルムを原反購入し、工程設計を行うオーティス社から、スリット加工をするオー エスピー社、その後貼り・抜き加工を行うオーシーピー社というサプライチェーンの中での各 工程を対象にMFCA診断を実施した。結果、川下のオーシーピー社で抜きカスの他加工補助用 フィルム等が全てロスとなっており、ロス率74%であった。顧客要望の製品形状及び一貫自 動化生産ラインとなっているためである。3社一体となり改善検討をした結果、顧客との仕様 打合せ、川上のオーティス社での工程設計の見直し検討を行い、新加工方法でトライすること となった。この新加工方法が成功するとシミュレーションでは負の製品コストを80%削減す ることが可能となる。 鹿嶋工業㈱ 担当統括診断員:松本 邦生(社会経済生産性本部) 鹿嶋工業でのレーザー加工SECC (電気亜鉛めっき鋼板)接続金具と、サプライチェーンを 組む外注先ティーツーでのSTKMRK (引抜鋼)レーザー加工品の二種と、最終組立(鹿嶋工業) を対象にMFCAでの診断を実施した。接続金具においては、79.2%という大きなロスが発生 していた。納期が優先されたため、仕様検討、工程設計に充分な時間がとれず加工に入ったた めである。川下のセットメーカーとの協議の中で納期、仕様確認、設計変更により約30%の ロス削減が可能であることが判明した。川下であるセットメーカーや外注先も含め必要な機能 からの材料選定、工程設計が初期段階から行えるよう情報交換を開始した。 キングラン㈱ 担当統括診断員:玉澤早苗(社会経済生産性本部) 医療機関向けオリジナルカーテンの生地製造(黒沢レース)から縫製(キングランメディケ ア)の工程に対してMFCAによる診断を実施した結果、生地製造における原糸ロス、縫製にお ける端材ロスが認められた。原糸ロスについては、供給方法を変更して原糸ロスゼロを目指す 対策と、原糸の残り量の測定精度を向上して原糸ロスを削減する対策の比較検討、端材ロスに ついては再利用と端材そのものの削減対策の実施をそれぞれ計画している。 また、生地の染色工程で購入している梱包資材(管紙)が縫製工程では廃棄されていること が判明した。再利用のための受け渡し方法の検討を開始した。 倉敷化工㈱ 担当統括診断員:安城泰雄(MFCA研究所) ゴム成形工程(倉敷化工)から発生する廃ゴム材について、現行のサーマルリサイクル[ゴ ム成形工程(倉敷化工)→破砕工程(くろがね産業)→サーマルリサイクル(製紙会社) ]と、 新方式のクローズドマテリアルリサイクル[ [ゴム成形工程(倉敷化工)→破砕工程(くろが ね産業)→脱硫・ゴム再生工程(USS東洋)→混連・シーティング工程(倉敷化工) ]の比較 を3社協力の下、MFCAとLCAにより環境側面と経済面でシミュレーション検討を行なった。 その結果、新方式が環境面、経済面の両方において優れていることが分かった。これを受けて 3社で協力し、廃ゴム材のクローズドマテリアルリサイクル実現に向けた活動が開始された。 コイズミ照明㈱ 担当統括診断員:高田愛三(NPO法人資源リサイクルシステムセンター) 蛍光灯シーリングライトを対象製品とし、鋼板基盤(シャシー)製造・組み立てラインに対 してMFCAによる診断を行った。その結果、鋼板基板製造の工程における負の製品コストは投 入コストの約30%で、最も大きいロスの原因は、プレス加工時に発生する端材であり、続い てキズによる外観不良であることがわかった。外観不良について、現行の品質管理基準の見直 しを行い、製品品質に影響を及ぼさない不良品(見えない位置の傷等)の削減を図った(2009 年1月に実施済みで、現在全社展開を実施中) 。また、今後部品の共通化による部品数削減や 設計・開発システムの見直しを検討する。 三惠工業株式会社 統括診断員:梨岡英理子(㈱環境管理会計研究所) ①パイプ椅子用樹脂部品成型(中部化成)→パイプイス組み立て工程(三惠工業) 、②梱包 材製造(三浜紙器)→梱包(三惠工業)という工程を対象に、MFCAによる診断を実施した結果、 製品全体で見た場合のロスは、組み立てを行う三惠工業とダンボール箱製造の三浜紙器はほと んど発生せず、中部化成の樹脂成型工程において多くのマテリアルロスが発生していることが 判明した。そこでロス発生原因別の分析を実施し、ロスや不良の原因となっている発注ロット 数の集約や素材の配合割合の変更検討などの改善提案を抽出。これらを実施するには三惠工業 と情報を共有することが重要であり、この改善により製造工程全体で大幅なロス削減が可能と なる。 サンデン㈱ 担当統括診断員:下垣彰(日本能率協会コンサルティング㈱) コンプレッサー部品に使用するピストンの、素材切断・鍛造(サンデン)→機械加工・塗装 (サンワプレシジョン)→組立(サンデン)の、機械加工・塗装工程までを対象に、MFCAに よる診断を実施した。その結果、サンデン、サンワプレシジョンの双方において約50%のロ ス(アルミの切り粉、端材、不良など)が発生していた。このロスの大半は切り粉、端材であ り、それはこのピストンの構造と基本的な製造プロセスに由来していた。 このロスの大幅な削減には、設計と製造プロセスを革新する必要がある。今後の製品開発に 向けて実施することを目標に、そのための技術課題を明確にした。 積水化学工業㈱ 担当統括診断員:山田明寿(㈱環境管理会計研究所) 同社は、A社より不飽和ポリエステルを素材として納入しレジンコンクリートを製作、B社 より鋳鉄製継手部品をアセンブル部品として納入し下水道、インフラ施設の事業を行うサプラ イチェーンを構成している。MFCA診断結果では、サプライチェーンに起因するロスに関して、 A社製品は品質保証期間も短く、需給調整での在庫処分が積水化学工業、A社ともにあること を確認した。特にA社での廃棄在庫は重縮合反応水を除く負の製品内訳中トップの廃棄処分と なっており、両社間での需給調整の最適化などを提案した。またB社では、下水管の特性から 資源生産性の視点で製品の10%薄肉化を設計の骨子として新規商品開発として提案した。 ㈱ダイナックス 担当統括診断員:玉澤早苗(社会経済生産性本部) 自動車用部品(湿式クラッチディスク)製造のサプライチェーンである鋼材製造(A社)→ 鋼材加工(B社)→摩擦材製造(C社)→加工・組立(ダイナックス)の工程に対してMFCA による診断を実施した結果、負の製品のほとんどは、鋼材及び摩擦材のプレス工程で発生して いることが確認された。摩擦材についてはプロセスの組み換えにより、負の製品のすべてを再 利用して廃棄物をゼロにする対策の検討を開始した。 同時に、サプライチェーン間の受け渡しのための梱包を適正化することにより、包装材の省 資源化対策の検討も開始した。 10 ㈱チクマ 担当統括診断員:高田愛三(NPO法人資源リサイクルシステムセンター) 「女子制服」を対象製品とし、原料仕入れから縫製後の出荷までのラインに対してMFCA及 びライフサイクルアセスメント(LCA)による診断を行った。その結果、キューテック社に おける入庫工程での余剰生地在庫としての負のコストが大きいことがわかった。このロスは、 発注側のチクマとの間で生地在庫量の正確な情報共有ができていないため、過剰発注により発 生することが判明し、この生地在庫の圧縮を大きな改善課題のひとつとして取り上げた。今後 は発注側のチクマと製造を受け持つキューテックの間で現在在庫量の管理システムの構築を両 社で進めていく(現在システム構築中) 。 ㈱T&E 担当統括診断員:山田朗(日本能率協会コンサルティング㈱) マスルイ青果にて生野菜を仕入れ、ティーアンドイーで加工しサラダや鍋用盛合せ野菜を 製造し出荷する全工程を対象としてMFCA診断を実施。診断の結果、物量面では両社合計の ロスを100%とすると、マルスイ青果23%、ティーアンドイー77%がと判明。全工程を通し て、正の製品コストが80%、廃棄処理費を加えた負の製品コストが20%にのぼる。ティーア ンドイーは加工ロス(カット後の残菜)が大半を占め、マルスイ青果では棚卸ロスや不良ロス も発生している。マルスイ青果で廃棄のロスは、ティーアンドイーからの生産予測精度向上や ティーアンドイーでの有効利用など企業間で削減できる可能性も見えた。 ㈱ディーアンドエムホールディングス 担当統括診断員:下垣彰(日本能率協会コンサルティ ング㈱) AVレシーバー (音響機器)の構成部品の組立(A社)では、プリント配線板(B社) 、板金部 品(C社)、パネル(D社) 、ヒートシンク(E社)の各メーカーの加工部品が、A社で組み立て られる。この4つのサプライヤーで、MFCAによる診断を実施した。その中でも、B社のプリ ント配線板は、B社内のプロセス、および納入先のA社の部品実装プロセスの双方で、もとの 材料の銅張積層板の端材が発生し、そのロスは、トータルで17%だった。このロスは、プリ ント配線板の配線設計に要因があり、配線設計次第で、ある程度の改善が可能である。改善検 討の結果、配線板設計において、このトータルなロスを計算、評価し、ロスがミニマムになる 設計で、標準化を図ることを提案した。 パナソニックエコシステムズ㈱ 担当統括診断員:安城泰雄(MFCA研究所) ポリスチレン(PS)シート成型(日本産業資材)→熱交換素子真空成型(パナソニック エコシステムズ)工程を対象にMFCAによる診断を実施した結果、パナソニックエコシステ ムズにおいて約30%の工程ロス(端材)が発生していた。両者の取引には商社が介在してお り、ロスの情報が共有されていなかったが、本事業で直接情報交換を行う機会を得たことで、 PSシートの幅を変更できる事が判明。仕様変更したPSシートをテスト加工した結果、端材が 11%削減される事が確認された。また、PS廃材を再ペレット化して日本産業資材に再投入す るクローズドマテリアルリサイクルについても検討を開始した。 11 福島工業㈱ 担当統括診断員:高田愛三(NPO法人資源リサイクルシステムセンター) 業務用冷凍冷蔵庫向けの一体発泡構成品とその部品である底面排水ソケットを対象とし、排 水ソケットの射出成型(阪神プラスチックス工業)からドッキングによる組み立て(福島工業 ㈱)を対象工程として、MFCA及びライフサイクルアセスメント(LCA)による診断を行った。 その結果、両工程ともに非常にロスの少ない工程であることがわかった。これは射出成型工程 ではランナーや不適合品などを都度工程内で原料リサイクルしており、また、一体発泡構成品 製造工程も組み立てが中心であるためである。今後は、資源投入量そのものの削減に向けて、 排水ソケットの設計仕様変更によるマテリアル投入量抑制を企業間で検討を進める。 ㈱藤田電機製作所 担当統括診断員:松本 邦生(社会経済生産性本部) アイリス(レンズ絞り)構成部品25種の中より、全体の設計とプレス金属部品を加工す る藤田電機製作所、樹脂成形部品を加工するA社と最終組立を行う鶴岡計器の3社の工程を MFCAで診断した。特に樹脂成形部品でのロス比率が80%と高かった。金型設計情報が、部 品設計を行う藤田電機製作所とA社との間で共有されていなかったためである。本事業推進の 中で金型設計の情報交換を行うことが出来るようになり、金型及び使用設備を小さくすること ができ、ロス率の20%削減が可能となることが判明した。今後は、構成部品25種の主対象部 品メーカーや川下のセットメーカーとも連携しMFCA診断による省資源化活動を推進してい くことを確認した。 北斗電子工業㈱ 担当統括診断員:佐伯秀一(社会経済生産性本部) パーティクルセンサー (純水・洗浄装置の微粒子検出用測定器)を対象に、ソフト設計・回 路設計(北斗電子工業)⇒AWパターン設計(エーエムサーキットデバイス)⇒プリント基板 製作(須磨電子産業)⇒組立・実装/調整・デバッグ(北斗電子工業)工程を対象にMFCA 診断を実施した結果、須磨電子産業のプリント配線基板製作の内層工程で30%、外層工程で 72%のロス発生が判明。プリント配線基板に露光するパターン方式「異種面付け」の改善に より内層工程で31%、外層工程で44%の投入コスト削減の効果が見出された。 ミック工業㈱ 担当統括診断員:高田愛三(NPO法人資源リサイクルシステムセンター) 空調機(床置型室内ユニット)のオプション部材(背面吸込口キット)を対象製品とし、ミッ ク工業における溶接・組立工程と、東海塗装における塗装工程に対して、MFCA及びライフサ イクルアセスメント(LCA)による診断を行った。その結果、外注先の金属加工業者での板 金加工ロス、及び塗装工程のロスが大きいことが判明した。今後、ネスティングの見直し、溶 接・組立工程の時間生産性の向上、溶接工程の削減、発注の効率化による大型サイズ鋼板の活 用、抜き残材の他製品パーツへの活用や、ハイソリッド系塗料導入等による塗装系の見直し、 塗膜厚管理の徹底塗装ラインの稼働率向上、塗装スプレーノズルの最適化などを検討する。 12 事例紹介 13 株式会社エス・ティ・レーザー ―複写機用シャフト製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲: 複写機用シャフトを対象製品とし、㈱エス・ティ・レーザーおよび㈱タキワ工業における シャフト加工工程を対象工程とし、MFCAによる診断を行った。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 組立メーカー 発注 納入 部品メーカー (複写機用シャフトの一部) 製造委託 エス・ティ・レーザー 製造ラインの構造 1.旋盤加工工程 2.穴あけ工程 3.研磨工程 4.検査工程 タキワ工業 納入 事業対象範囲 ■製造工程の特徴 ・負の製品(不良品除く)としては、旋盤加工工程から発生する端材と、研磨工程から発生する スラッジが主である。 ・穴あけ工程、検査工程での不良品発生率が相対的に高い。 ・使用エネルギーは電力のみである。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 ①原材料の効率的利用のための課題と解決のための方向性の明確化 ②エネルギーの効率的利用のための課題と解決のための方向性の明確化 ■目標 ①対象工程におけるマテリアルフローコスト会計の導入 ②対象工程におけるマテリアルコスト、エネルギーコスト、システムコストの明確化 ③工程別課題の明確化 ④課題に対する改善の方向性の明確化 ③診断方法 ■物量センターの定義の考え方 いずれも、マテリアル(原材料)のインプットとアウトプットが生じる主な工程を物量センター として設定した。 ■計算対象の材料種類 芯金(鉄)、切削油 14 ④診断結果 ①MFCA計算結果概要(全体の負の製品コスト) 現時点での計算結果では、製品1個当たりの算定対象の投入コストのうち、約10%が負の製品 コストになる。 (下図1) ②負の製品コストの発生工程別内訳 この負の製品の内訳は以下のとおりで、旋盤加工工程由来が大半を占め、次に研磨工程の占め る割合が高い。 (下図2) 【図1】 投入コスト 【図2】 正の製品コスト 負の製品コスト 旋盤加工工程 穴あけ工程 研磨工程 検査工程 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 グループ企業であるため、コスト情報も含めて情報共有をし、改善策を検討した。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 ①シャフト1本あたりの切削誤差を20㎜から15mmへと変更し、原材料である長尺材の長さを短 くする。これに伴い、端材の長さ (=発生量) が削減され、マテリアルロスの減少につながる。また、 長尺材は重量単位で購入しているため、コスト削減にもつながる。この対策は原材料供給メーカー との協議次第であるが、実施可能性は高い。 ②購入する長尺材の径数(直径)を小さくして完成品に近づけることによりスラッジ(研磨くず) の発生量を削減する。購入重量の減少につながり、コスト削減となる。また、シャフト1本あた りの研磨量が減ることにより、砥石の磨耗度が改善するという副次的効果も期待できる。現在購 入しているやや太目の径数を変更して標準化することにより、供給メーカー内にとっても、仕様 が統一されるのでメリットがある。 ⑥参加企業のコメント MFCAの診断結果を参考にして、長尺材の端材となる部分を削減することと、研磨くずの廃棄 量を最小限にする対策を継続調査し、実施に結び付けたい。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 株式会社エス・ティ・レーザー 資本金 4千万円、従業員20人 〒391-0211 長野県茅野市湖東7013 TEL:0266-77-3423 問い合わせ先:品質・環境保証グループ 15 株式会社エフ・シー・シー ―四輪自動車用クラッチ製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲: 四輪自動車用クラッチを対象製品とし、協力会社A社におけるクラッチ製造工程(プレス→切 削加工→組立)を対象工程範囲とし、MFCAによる診断を行った。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 エフ・シー・シー ・ ・ ・ ・ 本社部門 技術研究所 生産技術センター 生産部門(5 工場) 金型 供給 製造ラインの構造 ① プレス ② 切削加工 ③ 組立 協力会社A社 ■製造工程の特徴 ・主原料は鉄板である。 ・プレス工程ではスクラップが発生している。 ・排出物のうち、スクラップ類(端材、切粉、不良品)は全て有価売却される。 ・主な使用エネルギーは電力である。その他には、ブローチ後の洗浄機にLPGを使用している。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 クラッチプレートの歩留まり向上によるスクラップ削減と省資源化 ■目標 ①対象工程におけるマテリアルフローコスト会計の導入 ②対象工程におけるマテリアルコスト、エネルギーコスト、システムコストの明確化 ③課題に対する改善策(案)の検討・評価 ③診断方法 ■製造工程各段階の材料の投入 プレス:鉄板、切削油、洗浄液 切削加工:ハブ、切削油、洗浄液 組立:購入部品類(ディスク、保持部品、スナップリング、座金など) ■廃棄物の発生 プレス:端材、廃油、廃液、不良品 切削加工:切粉、廃油、廃液、不良品 組立:不適合品 16 ④診断結果 クラッチ製造工程(プレス→切削加工→組立)全体を通した材料ロスは、プレス工程由来の端 材によるものが大半を占めていた。従って、プレス工程における端材削減が、負の製品コストを 削減するに当たって最大の課題である。 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 グループ企業であるため、コスト情報も含めて情報共有をし、改善策を検討した。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 ①プレス方法(金型)の変更、効率化により数%材料歩留まり向上が見込まれる。ただし、改善 策の実施には、現在と同じストローク(速度)でプレス製造が行えるのか製造テストを行う必要 や納入先の品質基準を満たすかどうかを検討する必要がある。 ③コイル材の1個あたりの巻き数(重量)を増やすことにより、プレス機へのコイル材の切替回 数を減少させ、作業の効率化をはかる。輸送業者の輸送能力とのバランスの検討が必要。また、 コイル材の重量が多くなることにより原材料在庫が増加する危険性がある。 ■個別企業における主な改善策 ①人員を効率的に配置し、コイル材の段取り替えの所要時間を短縮することによって効率化をは かる。ただし、プレス工程の人員配置改善は作業の安全性を十分考慮して実施するべきである。 ⑥参加企業のコメント 今回MFCAを通し製造工程毎に発生する無駄及び又其れに伴う製造工数/エネルギー等が実際の 製造コストに占める割合が目に見えるようになり非常に参考となった。当社としても製造ロスを 徹底的に排除し環境に優しい製品を目指していく。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 株式会社エフ・シー・シー http://www.fcc-net.co.jp/ 資本金 418千万、従業員1065名 〒431-1394 静岡県浜松市北区細江町中川7000番地の36 TEL:053-523-2420 問い合わせ先:環境センター 17 株式会社奥羽木工所 ―調理実習台及び教育施設用流し台 製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲: 調理実習台と教育施設用流し台を対象とした。すべてが個別注文品である。㈱奥羽木工所での 設計、大昭和ユニボード㈱でのボード製作、みよし工業㈲でのステンレス製流し台製作、㈱奥羽 木工所での加工・組立を連結し、MFCAによる診断を行った。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 ロール紙 含浸剤 みよし工業 大昭和ユニボード パーティクルボード ステンレス板 化粧パーティクルボード シンクボウル ステンレスシンク 奥羽木工所 調理実習台 教育施設用流し台 ■製造工程の特徴 奥羽木工所では、設計から最初の部品リストの作成と、加工のプログラミングでボードのロス が殆んど決まる。また、板厚・板寸・色・柄の違いによるボードの種類が非常に多く、ロスの発 生要因となっている。みよし工業では、定尺のステンレス板と、発注仕様との関係でロスが決まっ てくるので奥羽木工所での設計が重要である。大昭和ユニボードでは、製造機械の制約で規格寸 法のボードを製造しているが、表面柄の多品種少量に対応するための段取り替え時に発生するロ スが多くなっている。 ②事業に参加する目的・目標 家具の設計及び製造工程を見直すことによって、切断工程でのムダな端材の発生を減らし、歩 留り向上による材料使用量の削減を目指す。 ③診断方法 ■物量センターの定義の考え方 各企業において、現状の生産工程で、物量が投入される工程、或いは廃材が発生する工程をそ れぞれの物量センターとした。ボードや縁貼材等の直接材料は、すべて計算対象にした。しかし、 ステンレス部材は、重量・金額ともに大きいが、家具に組込むだけでロスが発生しないので、分 けて分析を行った。 18 ④診断結果 ①奥羽木工所で発生するロスの殆どはボードの端材で、投入量の約16%である。 ②みよし工業ではロスの殆どがステンレスの端材で、投入量の約30%である。 ③大昭和ユニボードでは、含浸紙加工工程でのロール紙と含浸剤のロスが発生している。 【図1】奥羽木工所:マテリアルコスト比(ステンレス部材を除く) 縁貼材 接着剤 16% 接着剤 金物 切断 縁貼 加工・建具 組立 金物 仕上げ・木工 金物 縁貼材 合計 【図2】みよし工業:マテリアルコスト比(教育施設用流し台) レーザーガス アルゴンガス その他 砥石 シャーリング レーザー加工 曲げ 溶接・仕上げ ウレタンシート その他 砥石 アルゴンガス レーザーガス ウレタンシート 出荷 33% 合計 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 各企業間でコスト情報を除いたマテリアル情報を共有し、端材を減らすための改善策を検討し た。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 ①奥羽木工所ではステンレス材の規格寸法を考慮した設計を行い、みよし工業では規格寸法ごと のロス発生状況を分析し、両社で連携して改善を進めていく。 ②ボードについては、製造機械の制約で規格寸法の変更は難しい。そこで、奥羽木工所において 発生する端材の量を継続的に測定し、定期的に検証し、設計にフィードバックする。 ■個別企業における主な改善策 大昭和ユニボードでは、ロール紙の投入方法の改善、含浸剤の使用量削減、含浸紙端材のサー マルリサイクル化などを検討する。 ⑥参加企業のコメント MFCAによる診断で資源ロスの「見える化」ができ、予想以上にロスが発生していることが判っ た。ロスを削減するには、材料の歩留りを考慮した家具の製品設計が重要であることが判明した ので、SCグループで協力し、継続して改善を進めていく。また、歩留り向上により原材料投入量 の削減、廃棄物の発生抑制、省エネ、コストダウンに繋げていく。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 株式会社奥羽木工所 http://www.ohu.jp/ 資本金 3千万円、従業員 159名 〒983-0001 宮城県仙台市宮城野区港4丁目10-1 TEL:022-259-1981 問い合わせ先:仙台港工場 業務課 19 オーティス株式会社 ―携帯電話液晶パネル用フィルムシート 製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲: 携帯電話液晶パネル用フィルムシートを対象とし、 「設計・材料調達(オーティス社)⇒材料 のスリット加工(オーエスピー社)⇒最終組立におけるPETフィルム抜き加工(オーシーピー社) ⇒出荷(オーティス社) 」を対象工程とし、MFCAによる診断を行った。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 ■製造工程の特徴 オーティス社がPETフィルムや両面テープなどの材料を原反で購入し、オーエスピー社にて製 品別のサイズ(幅)にスリット加工する。その後、オーシーピー社にて7種類の材料を投入し、 貼り合わせ、抜き、カスあげ、カット等の12工程を経て完成品となる。投入材料においては、製 品となる部分の比率が圧倒的に少なく、明らかに材料ロスが多い。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 各種樹脂フィルム、金属箔等の複合部品加工の製造に関わる3社により構成されるサプライ チェーングループでの企業間の摺り合わせ、連携等を強化することにより、サプライチェーン全 体における原材料使用量を削減し、歩留り改善、コストダウンに繋げていくことを目的とする。 ■目標 マテリアルコスト(あるいは物量) :20%削減、システムコスト(あるいは工数) :20%削減、 エネルギーコスト(あるいは使用量) :10%削減 ③診断方法 オーエスピー社でのスリット加工工程およびオーシーピー社での12の加工工程を物量センター として、MFCAによる診断を行った。 20 ④診断結果 ■オーエスピー社:使用する材料はロール状で購入しており、製品によってロール幅が異なるた め種類が多い。また、製品幅に合わせてロールの両端を20㎜~40㎜ほどカットしており、この 端材が主たるロスとなっている。長さ方向も取り数が少ない場合にロスが発生する。 ■オーシーピー社:主たるマテリアルロスは、加工工程内で発生する抜きカスの他、加工補助用 フィルムが最終的にすべてロスとなっている。 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 3社はグループ会社であるため、コスト情報を含む全てのMFCA診断結果を共有し、3社で一 体となって解決策を検討した。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 オーティス社において、設計の見直しや購入材料の仕様変更を検討し、オーエスピー社および オーシーピー社における端材発生量や加工補助用フィルム使用量の削減に取り組む。 ⑥参加企業のコメント 工程別の端材発生量やシステムコスト・エネルギーコストを把握でき、SC全体でのロスの発生 を捉えることができた。また、ロスに関する定量的な各種データが得られたので、改善がスムー ズに効率的にできると思われる。MFCA研修も活用し、現場の作業担当者を始め、主任・係長ク ラスにも材料ロスに対する認識を高めていきたい。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 オーティス株式会社 http://www.otis-com.co.jp/ 資本金 3千万円、従業員189名 〒〒719-3225 岡山県真庭市中原202-13 TEL:0867-42-3690 問い合わせ先:管理部 21 鹿嶋工業株式会社 ―液晶テレビスタンドの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲 液晶テレビスタンドを対象製品とする。鹿嶋工業㈱における液晶テレビスタンド製品の接続 金具部品の製造工程及び組立工程と、㈱ティーツーにおける角パイプの製造工程を対象として、 MFCAによる診断を行う。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 鹿嶋工業 鹿嶋工業 ティーツー ■製造工程の特徴 鹿嶋工業社は部品の製造工程での端材の発生は多いが、組立工程での廃棄物の発生は無い。 ティーツー社は標準品からの加工だが端材は意外と少ない。両社とも、部品加工については小ロッ ト生産に向いたレーザー加工が主である。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的:サプライチェーン全体における資源投入量の抑制を行い、省資源とコストダウンを推進 することを目的とする。 1)材料使用率の改善による無駄の排除 2)品質不良に よるロスの低減 3)リードタイム短縮におけるコスト削減 ■目標:1)材料使用:10%削減 2)加工時間:10%削減 3)電気使用量:10%削減 ③診断方法 ■物量センターの定義 鹿嶋工業社の材料投入、接続金具部品の製造工程、ティーツー社の角パイプの製造工程、鹿嶋 工業社での組立工程を物量センターとした。 ■製造工程各段階の材料の投入:①角パイプ加工工程:STKMRK (引抜鋼) 、②接続金具加工工程: SECC-CF(電気亜鉛メッキ鋼板) 、③組立工程:SWCH (圧延用炭素鋼線) ■廃棄物の発生:STKMRK、SECC-CF材料 ■特徴:鹿嶋工業社のレーザー加工部品(接続金具) 、ティーツー社のレーザー加工部品(角パイプ) を物量センターとして分析し、その「正の製品」を鹿嶋工業社の組立物量センターへの投入デー タとして活用、分析を行なった。 22 ④診断結果 【接続金具のコスト比率】 A:鹿嶋工業 ①接続金具加工において、マテリアルコスト等、 「負の製品」の割合が79%前後と大きい。 「正の製品」に対しブランク部分の「負の製品」の占める割合が大きいためである。 ②製品の加工レイアウトに無駄が多い。 ③試作の場合は納期を最優先しているために、加工プログラミンングに時間を掛けられないの が現状であった。 B:ティーツー 角パイプ加工において、 「負の製品」の割合が今回は4%前後と少ないが、原材料標準規格品(長 さ5500mm)から部材が効率よく取れたためで、製品の長さが変わると端材が多く出る可能 性がある。 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 2社間で正負の製品の割合と、マテリアルロスとなる主な材料と加工工程、加工方法を共有し て改善策の検討を行った。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 A社、B社連携の上、川下のセットメーカーと共に板材からの切出し形状や角パイプでない材料 も含め、何の機能が必要なのかの打合せを持ち省資源、コストダウンに繋がる最適な加工方法を 検討する。 ■個別企業における主な改善策 A社の接続金具切出し工程での端材を削減する改善策として、高速自動配置ソフト(ネスティ ング)を使用する方向となった。又、併せて原反のシート材料寸法も大きくする(3×6版→4 ×8版)ことにより、大きなの削減効果となる。 ⑥参加企業のコメント 試作業界は、得意先である大手家電メ-カ-からの納期・品質を最優先と考えており、材料に ついてのロスは意識していなかった。今回MFCAでの“見える化”を軸に工場全体活動を行って みて,新たな視点での工場運営ができる可能性を感じた。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 鹿嶋工業株式会社 http://www.kashima-ind.co.jp/kashimahp/index.shtml 資本金 9,800万円 従業員数 120名 住所 〒229-1133 神奈川県相模原市南橋本2-18-10 問合わせ先:TEL:042-773-7721 23 キングラン株式会社 ―オリジナルカーテン製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲 医療機関向けオリジナルカーテンを対象製品とし、 原糸倉庫→カーテン生地製造(編立)→生地倉庫→ カーテン製造(縫製)の工程を対象範囲として、MF CAによる診断を行った。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 キングラン :商品企画 資源採取 原料製造 原料仕入 黒澤レース 編みたて 裁断 キングラン メディケア 縫製 使用 廃棄 ■製造工程の特徴 製品は基本的に同じ加工順序で生産され、工程を経るにしたがって製品のバリエーションが増 えていく。カーテン生地製造(編立)までは、設備集約的な工程であり、生産効率の高い製造設 備で連続生産しているが、品種や原糸の切り替え時にロスが発生しやすい。また、カーテン製造 (縫 製)ラインは、作業者が裁断機やミシン等を使用した小回りのきく加工を行っている。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 今回の事業を通じてコストの見える化を実現する手法を習得し、サプライチェーンで連携して コスト改善と省資源に継続的に取り組み、経営体質強化と環境に配慮した企業経営を推進してい く。 具体的な取り組み課題 1.省資源とコストダウンの推進 2.製造プロセスの改善効率化 3.不良率の低減と生産性の向上 4.生産工程からの廃棄ロスの削減 ■目標 1.資源生産性の10%改善 2.ロスコストの半減 24 ③診断方法 ■物量センターの定義 MFCAの物量センターの定義をマテリアルのイン/アウトの計測の明確性及びMFCA管理の継 続性の観点より企業側で定義している製造工程を基に上記の6工程の区切りとした。 ■製造工程各段階の材料の投入 原糸等、生地、フックテープ・ラベル類、その他副資材など ■廃棄物の発生 残糸、不良反(C反) 、裁断屑、その他副資材のロスなど ■特徴 使用されるマテリアルの種類は少なく、基本的には糸の加工物(原糸→生地→カーテン)にサ イズラベル、フックテープなどが付加されていく製品重量増加型のマテリアルフローである。 ④診断結果 ①カーテン生地製造における主たるインプット材料は原糸であり、主たる負の製品は品種や原糸 の切り替え時に発生する残糸及び不良反(C反)である。 ②カーテン製造における主たるインプット材料は生地であり、主たる負の製品は、裁断屑である。 特注サイズのカーテンの場合、仕様に合わせた裁断が必要になるため裁断屑は増加する。 ③各工程におけるマテリアルロス(負の製品物量/投入物量)は、1%以下と比較的少なかった。 ただし検査・補修工程における不良の発生状況により、ロスが増加する可能性がある。 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 各企業間でコスト情報を除いたマテリアル情報を共有し、ロスを減らすための改善策を検討した。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 生地梱包材の簡易化、および芯材(紙管)のリユース化を検討する。 ■個別企業における主な改善策 ①カーテン生地製造(黒沢レース) ・原糸交換方法の改善 ・原糸巻きの残糸重量管理し、製造条件との相関から残糸量のバラツキ削減 ・カーテン生地製造の精度向上、欠点基準(合否基準)の見直しによる不良反の削減 ・色工程前の欠点発見によるEC・SCの削減 ②カーテン製造(キングランメディケア) 反物取替時の裁断屑削減および生地の裁断屑のリサイクル化を検討する。 ⑥参加企業のコメント ・サプライチェーンでの省資源化の有効性を実感した。 ・製造工程全体を通してのコスト管理と廃棄物にコストがあるという新しい視点を得た。 ・MFCAを使った分析手法、コストダウンの視点は従来の不良効率低減に止まらず、省資源・ 省エネをも実現できる手法として、縫製部門に関わらず、色々な分野で活用していきたいと 考える。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 キングラン株式会社 http://www.kingrun.co.jp/ 資本金 2億5千5百万円 従業員数 44名(連結合計325名) 〒101-0041 東京都千代田区神田須田町1-10 TEL:03-5296-3031 (大代表) 問い合わせ先:業務本部 25 倉敷化工株式会社 ―自動車部品(ゴムキャップ)製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲 倉敷化工㈱におけるゴムキャップ製造工程とその廃材の現在の処理工程と、くろがね産業㈱(廃 ゴム破砕業)と㈱USS東洋(再生ゴムメーカー)との間で廃材のクローズド・マテリアル・リサ イクルを行った場合について、MFCAおよびLCAにより比較を行う。 1.現状のフロー図(廃材のサーマル・リサイクル) 倉敷化工 天然ゴム ①素練 添加剤 ② 混練・ シ ーティング くろがね産業 ③成形 製品 製紙メーカー (対象外) ④破砕 廃材 破砕材 サーマル リサイク 2.廃材のクローズド・マテリアル・リサイクルを行った場合のフロー図 倉敷化工 天然ゴム ①素練 添加剤 ② 混練・ シ ーティング くろがね産業 ③成形 製品 廃材 ④破砕 破砕材 USS 東洋 ⑤脱硫・ ゴム再生 ■製造工程の特徴 静脈物流のサプライチェーンであり、クローズド・マテリアル・リサイクルについては、現在 評価中の工程である。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 廃材のクローズド・マテリアル・リサイクル化による、環境負荷(製品ライフサイクルでCO2 排出量と資源消費量)の低減、およびコストダウンの効果について検証する。 ■目標 新たな静脈SCを構築することにより廃材のクローズド・マテリアル・リサイクル化を行う。 ③診断方法 ■物量センターの定義の考え方 ・フロー図に示した①~⑤を物量センターとした。また、廃ゴム破砕業者および再生ゴムメーカー の物量センターでは、現在検討している各2種類のリサイクル手法について評価を行った。 ■計算対象の材料種類 ・直接材料の天然ゴム及び添加物は、すべて計算対象にした。間接材料は殆んど無い。また、3 社間の輸送費も重要な要素であるため計算に加えた。 ・クローズド・マテリアル・リサイクルを行った場合についてはシミュレーション値を用いた。 26 ④診断結果 ①倉敷化工の成形工程で原料ゴムの約6%が廃材となっている。現在は、これを廃ゴム破砕業者 にて破砕し、製紙会社にてサーマル・リサイクルしている。 ②クローズド・マテリアル・リサイクル化の検討では、廃ゴム破砕業者では、より粒度を細かく した破砕を行なう必要がある。2段階破砕と、破砕機の改造による1段階破砕を検討したが、後 者の方が環境負荷およびコストの面で有利であることが分かり、後者を採用することにし、破砕 機の改造に着手した。 ③再生ゴムメーカーにおいても、従来方式(パン方式)と、新技術(二軸せん断方式)を比較検討し、 新技術の方が、環境影響およびコスト面で有利であることが分かり、新技術を採用することにし た。 ④診断の結果、再生材投入によるバージン材の削減の経済効果は、再生のためのコスト増を上回 ることが確認された。また、環境影響の面でも、バージン材の削減の効果が、再生工程でのエネ ルギー使用や、サーマル・リサイクル廃止による負荷増を上回り、約11%削減されることが分 かった。 ゴムキャップ1個あたりの温室効果ガス排出量 温室効果ガス排出量[kg-CO2e] 500 成型 400 ゴム練り NR製造 300 出荷 脱硫・ゴム再生 200 熱回収 出荷・輸送 100 粉砕2 粉砕1 改良キャップ -100 従来キャップ 0 引取・受入 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 診断結果からコスト情報を除いたマテリアル情報を共有し、改善策の検討を行った。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 クローズド・マテリアル・リサイクルの実現に向けて、3社で協力体制を構築する。倉敷化工 においては、製品技術、生産技術、品質、製造の各部門を中心に、営業部門も含めて全社で取組む。 また、他社を含めた同種の廃ゴム材を、広く集めて再生使用することも将来の検討課題となる。 ■個別企業における主な改善策 倉敷化工において、設備・金型・製造方法の見直しにより、廃ゴムの発生量を最小にすること を検討する。さらには、3社間の輸送距離が長いため、その改善も必要である。 ⑥参加企業のコメント 当初の目的であった環境負荷評価(LCA)の実施、およびコストダウン・省資源化の可能性検 討については、評価できる成果が得られたと思う。MFCAの手法に対する新たな認識を経営層に も展開でき、今後は、会社全体に水平展開させていきたい。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 倉敷化工株式会社 http://www.kuraka.co.jp/ 資本金 309,600千円、従業員 724名 〒712-8555 岡山県倉敷市連島町矢柄四の町4630 TEL:086-465-1111 (代) 問い合わせ先:環境アメニティ事業室 27 コイズミ照明株式会社 ―シーリングライト製造ラインの診断と改善-- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲: 蛍光灯シーリングライトを対象製品とする。その中で、鋼板基盤(シャシー)製造・組み立て ラインを対象工程として、MFCAによる診断を行う。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 ミツヨシ金属㈱:コイル鋼板のプレス加工(型抜き、成型)により、シャシーを製造する。 コイズミライティング㈱:ミツヨシ金属のシャシーに部品取り付け等の組み立て加工を行う。 コイズミ照明㈱:製品設計、品質管理、販売を担当する。 ミツヨシ金属 コイル鋼材 梱包資材 コイズミライティング 部品 アクリルシート コイズミ照明 梱包資材 シーリング ライト 鋼材端材・不良品 端材 不良品 不良品 ■製造工程の特徴 コイズミ照明はファブレス企業であり、製造をコイズミライティング等のいくつかの企業に委 託している。本事業では、シャシーの製造に関わるサプライチェーンのみを対象とする。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 コイズミ照明グループの経営ビジョン2010 「1.清らかで健全な地球を維持するため、環境対 応、環境対策を積極的に展開し、環境企業としての社会的責任を実行する」の具体的実行と実現 を目指す。 ■目標 蛍光灯シーリングライトの製品・製造工程・物流等については、環境配慮設計視点から見直し、 MFCA・LCAのアプローチからの改善を進める。またそれらの手法の取得を目指す。 ③診断方法、計算方法 ■物量センターの定義の考え方 作業、設備、工程のまとまりを反映させ、上図の工程を物量センターとする。 ■計算対象の材料種類 ミツヨシ金属:ロール鋼材 コイズミライティング:アクリルシート、取り付け部品(外部購入品) コイズミ照明:設計を担当するため、対象とする材料はない。 さらには、次のような項目の評価も行った。 1.不良品の原因分析を行い、製造工程での問題点等を抽出するための別データを収集。分析 結果をMFCAに反映させ、資源生産性の観点からより実効性のある改善提案を検討する。 2.サプライチェーンでの改善点抽出のため、①部品の集約、②品質基準に重点を置いて分析 する。 28 ■特徴 ミツヨシ金属・コイズミライティングでの製造方法等は、コイズミ照明が行う設計に依拠する。 また製品の品質管理基準も、コイズミ照明が決定している。 ④診断結果 ①ミツヨシ金属の工程における負の製品コストは投入コストの約30%である。最も大きいロスの 原因は、プレス加工時に発生する端材であり、続いてキズによる外観不良である。 ②コイズミライティングでは、今回対象の工程でのロスは発生していない。 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 3社はグループ会社に近いため、ほぼすべての情報を共有して改善策の検討を行った。 ■サプライチェーンでの改善策 ①部品の集約 多品種少量生産のため、管理している金型の数が多い。 (製造責任のため使用頻度の低い金型 もメンテナンス義務がある。 )また、金型替えにより生産効率が低下している。コイズミ照明にて、 部品の共通化による部品数削減を検討する。また、設計・開発システムの見直しにより、製品仕 様を早い段階で決定する。 ②品質基準の見直し 現行の品質管理基準では、機能と美観に問題のないところにキズのある部品も、すべて不良品 として返品され、廃棄されている。品質管理基準の見直しを行い、不良品を削減する。 (2009年 1月に実施済みで、現在全社展開を実施中。 ) ⑥参加企業のコメント 今回の事業に参加させていただき、ご担当の診断員様のご指導も頂く中で、具体的な成果も見 出すことができた。また、サプライチェーン間で共通のテーマを追求する過程において、それま で潜在的には感じていたブランドメーカーとしてのあるべき課題も、鮮明化することが出来た点 は、副次的には大きな成果である。今回の貴重な経験を今後の事業活動に活かし、全社一丸となっ て「真の環境企業実現」に向けて邁進していく。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 コイズミ照明株式会社 http://www.koizumi-lt.co.jp 資本金 300百万円、従業員 680名 〒541-0051 大阪市中央区備後町3-3-7 (本社) 問い合わせ先:開発センター (東大阪市宝町12-3) TEL:072-986-5030 29 三惠工業株式会社 ―いす製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲: いす製造ラインを対象とする。原料仕入れからいす組立後の出荷後までを対象工程し、MFCA およびLCAによる診断を行った。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 三浜紙器㈱における三惠工業㈱向け段ボール箱製造ライン、中部化成㈱における三惠工業向け 樹脂部品製造工程、三惠工業㈱におけるパイプいす組立工程を対象とする。(下図参照) ■製造工程の特徴 三浜紙器:製品梱包用段ボールの裁断・印刷(残留インクは回収) 中部化成:背もたれ等の樹脂部品の射出成型とねじ穴加工 三惠工業:パイプなどの構造材の加工、塗装、組み立て(残留粉体塗料は回収) ②事業に参加する目的・目標 ■目的 三惠工業は平成18年度製品グリーンパフォーマンス高度化推進事業に参加しており、三重県で も環境対策の進んでいる企業である。平成19年度にすでにMFCAをベースとしたPIUS-Checkを 実施しており、今回は自社のみならずサプライチェーンに拡大したコスト削減・環境負荷削減を 検討する。 ■目標 サプライチェーンを含めたコスト削減に対する課題の抽出、改善提案の想起を目標とする。 ③診断方法 ■物量センターの定義の考え方 作業、設備、工程のまとまりを反映させ、下図の9工程を物量センターとした。 ■計算対象の材料種類 三惠工業:部品(鉄パイプ等) 、粉体塗料、部品(樹脂)、ねじ、ダンボール箱 三浜紙器:段ボール、インク、仕上げテープ 中部化成:樹脂ペレット、ナット類 ■製造工程各段階の材料投入と廃棄物の発生 30 ④診断結果 ①三浜紙器では主にダンボール箱の印刷不良ロス(ロス材料b)に、中部化成では、製品不良お よび段取り替え時に使用するパージ材のロス (パージ材) に注目した。負の製品が大きかったのは、 中部化成における工程3(成型加工)であった。 ②三惠工業は組立て中心のため、材料ロスは少ない。このため製造時のエネルギーロス(システ ムコスト)の削減を検討した。 (図表)三惠工業におけるMFCA結果 MFCA計算結果概要(コスト比率) 100% (リサイクルの売価は除く、工程間統合) 0.0% 90% 80% 33.0% 32.2% 廃棄処理 SC EC MC 70% 1.5% 1.5% 60% 50% 40% 30% 65.5% 64.7% 投入コスト 正の製品コスト 20% 10% 0% 0.0% 0.9% 0.0% 0.8% 負の製品コスト ③上記製造工程内を対象とするMFCAのほか、工程内仕掛品在庫の仕様変更等による廃棄物や製 品完成後の仕様変更等による廃棄物(工程9出荷後、廃棄物h)に着目した。 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 3社でコスト情報を除いたマテリアル情報を比率で共有し、今まで企業間のすり合わせが不十 分であった項目について今後検討していく。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 ・発注情報の共有化(川下から川上への情報伝達の迅速化とロット数への反映、在庫数量の適正化) ・部品共通化や仕掛品/中間品在庫情報の共有化(部品の適用製品範囲を広げて在庫部品種数削 減) ・主材料に含まれる再生樹脂の配合割合の検討(製品組成から製造段階を含めた環境配慮型製品 へ) ・段ボール箱への印刷省略、ラベル化(インクロス、印刷不良の根絶、梱包箱の死蔵在庫化防止) ■個別企業における主な改善策(中部化成) ・パージ(洗浄)方法の変更(パージ材の削減) 、金型修正(製品不良の根絶) ・背窓材の不透明化(半透明製品は気泡等が入る場合が多い) ⑥参加企業のコメント 本事業に参加した3社でサプライチェーンに関する討議を行ったことは、非常に有意義な取組 であり、今後に活用していきたい。特に、意見交換するテーマが明確になったことが最大の成果 である。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 三惠工業株式会社 http://www.isu-sankei.co.jp/ 資本金 5000万円 従業員 80名 〒513-0017 三重県鈴鹿市上野町字助町48番地 TEL:059-378-1243 (代) 問い合わせ先:開発部 31 サンデン株式会社 ―カーエアコン用コンプレッサーのピストン部品- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲: カーエアコン用コンプレッサーのピストンを対象製品とする。その製造工程全体を対象範囲と して、MFCAによる診断を行った。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 サンデン(株) ①素材切断工程 ②鍛造工程 サンワプレシジョン(株) ③機械加工工程 ④塗装工程 ⑤機械加工2工程 ⑥検査工程 サンデン(株) ⑦組立工程(対象外) ■製造工程の特徴 基本的に少品種大量生産の機械加工ライン、途中で接合と塗装を含む。 ②事業に参加する目的・目標 対象製品はカーエアコン用のコンプレッサーの中心部品であり、戦略部品でもあるため、SCで の渡り部品での「ロスの見える化」を実現したい。 ③診断方法 ■物量センターの定義の考え方 現在の工場における物量管理単位の工程を、それぞれの物量センターとした。 (工程①~⑥) ■製造工程各段階の材料投入と廃棄物の発生 素材切断、鍛造工程でアルミ素材を投入し、機械加工工程において、別の外注先で加工された アルミ部品を接合し、機械加工する。塗装では、塗料と複数種類の間接材料を投入する。また、 各工程で、マテリアルロスが発生し、特に機械加工時の切り粉(アルミ)が多い。 ■計算対象の材料種類 直接材料のアルミと塗料はすべて計算対象にした。間接材料ではショット材のみを対象とした。 サンデン サンデン 赤城事業所 八斗島事業所 サンワプレシジョン 組立工場 部品加工工場 材料: 材料: 棒材 塗料 素材 切断 鍛造 加工 塗装 機械 加工2 検査 ロス: ロス: ロス: ロス: ロス: ロス: 端材 不良 切り粉 塗料 切り粉 不良 不良 不良 不良 不良 他社製造の部品 32 機械 他社製造の部品 製品 組立 ロス: 不良 ④診断結果 ①アルミについては、投入物量の50%がマテリアルロスになっている。 ②別の外注加工部品については、その外注加工段階(今回の対象範囲外)でも、かなりのマテリ アルロスがある。 ③塗料については、塗料に含まれる溶剤のマテリアルロスが多いと思われる。 サンデン-サンワプレシジョン マテリアル物量フローグラフ アルミ投入累積 アルミロス累積 塗料投入累積 塗料ロス累積 間接材料投入累積 間接材料ロス累積 150 100 50 0 素材切断 鍛造 機械加工 塗装 機械加工2 検査 -50 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 2社はグループ会社であるため、設計・製造にかかわる両社の担当者が、現状のラインで実施 可能な改善と、製造プロセスの見直しの必要な改善について、技術課題ばらしの手法を使い、③ 以降の工程について、機械加工のマテリアルロス(端材、切り粉) 、不良、塗装量について検討し、 工程と部位別にロス物量を整理した。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 これらのロスの多くは、サンデンの設計、金型の仕様、およびサンワプレシジョンの製造方法、 設備仕様によって、発生している。マテリアルロスの削減のため、それらの改善の可能性研究を 行うこととした。 ⑥参加企業のコメント サプライチェーンにおいて、金額、物量の両側面でのロスの共有ができた。また、サプライチェー ンのロス改善を“課題ばらし”の手法を用いて議論し、改善対策を検討することができた。さら には、従来行なっている検討と比べ、MFCAでのロスが明確になったため、焦点を絞った深い議 論ができた。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 サンデン株式会社 http://www.sanden.co.jp/ 資本金 11,037百万円、従業員 2,689名 〒372-8502 群馬県伊勢崎市寿町20 TEL:0270-24-1220 問い合わせ先:環境推進本部 33 積水化学工業株式会社 ―配水管関連部材製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲: 住宅・公共下水道施設等で使用される配水管関連部材を対象製品とする。その中の樹脂製造業 と鋳物継手製造業における製造工程を対象工程とし、MFCAによる診断を行った。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 A社(樹脂製造) 樹脂原料等 スチレンモノマー等 積水化学工業 添加剤 ベースレジン 生成水 配管残存ロス等 B社(鋳物継手製造) スラグ 耐火材 銑鉄、鉄スクラ ップ、コークス 砂等 ショット粉 中子等 鋳物砂 鋳物 継手 湯道、鋳物砂、 中子ガラ等 不良品 ョット 研削屑 粉 ■製造工程の特徴 A社で製造された樹脂原料を用いて積水化学工業で強化プラスチック複合管を製造する。A社の 工場内の主要部分は自動計測制御システム化され、製品パージ時の負の製品も、大部分を原料と して再利用している。B社では、積水化学工業の設計に基づいて鋳物継手が製造される。B社では、 主材料をキューポラにて溶解、砂型枠に注湯し、型枠をバラして鋳造品を製作する。砂の廃棄量 が多く、また、主材料のすべてが工程内リサイクルされる。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的:積水化学工業ではMFCAの全社導入を推進中である。MFCA導入事業場の成果も大きく 現れている。本事業に参加する目的は、更なる資源生産性・環境経営を図るべくサプライチェー ンでの導入と効果を検証することにある。 ■目標:サプライチェーンでのMFCA推進におけるサプライヤー、積水双方の課題、及び対象製 品が持つ公共市場と特有の調達、輸送、在庫に関しての課題をMFCAの視点から捉え、明確にする。 ③診断方法 ■物量センターの設定 図に示す工程を物量センターとした。 ■計算対象の材料種類 A社:エチレングリコール、不飽和2塩基酸、飽和2塩基酸など7種類の原材料。稀釈槽ではス チレンモノマーで稀釈してベースレジンを製造。 34 B社:主材料は銑鉄、鉄スクラップ、コークスなど。補助材料は、中子、砂、耐火材、ショット粉等。 ■特徴 A社:材料の特性から製品の品質保持期間が数ヶ月程度である。品質確認のための採取サンプル 残も原料として再投入を行うなど徹底した管理を行っている。生成水は産廃処理されている。 B社:溶解した鉄を注ぐ湯道など、製品に残らない部分が30~50%程度の大きさを必要とする。 それらは、工程内リサイクルされている。 ④診断結果 ■A社:負の製品割合(マテリアルベース)は6%であり、その主なものは重縮合反応に伴う生 成水であった。その他に、需給調整に起因する製品在庫処分品があることがわかった。 ■B社:負の製品割合(マテリアルベース)は64%であった。その内訳は鋳物砂23%、湯道 18%、スラグ19%であるが、湯道はすべてリサイクル材として再利用される。サプライチェー ンに起因する負の製品は見られなかった。 A社 <マテリアルベース> 負の製品 重量;21,000kg 比率;6% 正の製品 重量;309,000kg 比率;94% B社 <マテリアルベース> 負の製品 重量;48,000kg 比率;64% 正の製品 重量;28,000kg 比率;36% <その他のコスト> システムコスト エネルギーコスト 正 負 正 93% 7% 88% 負 12% ※データは公開用に架空の数値に変更 <その他のコスト> システムコスト 正 負 56% 44% エネルギーコスト 正 負 30% 70% ※データは公開用に架空の数値に変更 ⑤改善案 ■A社:積水化学工業との間で、正・負の製品の総量・比率についての情報共有を行い、それを 基に、製品設計・在庫、輸送、納入先の材料倉庫などの課題について協議を行う。 ■B社:すでに積水化学工業との間で情報共有を行っている。製品の薄肉化について、新製品企 画段階から取り組みを検討する。 ⑥参加企業のコメント 原材料費の乱高下、生産量の減少等の多くのマイナス要因が続く中、企業間におけるマテリア ル、エネルギーの情報共有化により材料のムダを省く活動は今後さらに重要性が増してくる。品 質向上、適正在庫等の視点、かつ長期的視野でサプライチェーンMFCAの取り組みを図っていき たい。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 積水化学工業株式会社 http://www.sekisui.co.jp/ 資本金 1,000億円、従業員 18,907名(連結) 〒105-8450 東京都港区虎ノ門2-3-17 虎ノ門2丁目タワー TEL:03-5521-0521 (代) 問い合わせ先:R&Dセンター モノづくり革新センター 35 株式会社ダイナックス ―自動車用部品製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲 自動車用部品(湿式クラッチディスク)の主要製品1機種を対象とする。その中で薄板鋼材加 工および摩擦材料製造からディスク組立てまでの製造工程を対象工程とし、MFCAによる診断を 実施した。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 A社(薄板鋼材製造業) 鋼材 梱包資材 鋼材端材 B社(鋼材加工業) 段ボール ダイナックス 薬液 接着剤 廃液 不良品 鋼材端材・不良品 C社(摩擦材加工業) 紙原料 梱包資材 損紙 損紙 樹脂・溶剤 摩擦材端材・樹脂・廃液 ■製造工程の特徴 A社およびB社のラインで製造された芯金上に、C社のラインで製造された摩擦材を、ダイナッ クスで張り合わせ、湿式クラッチディスクを製造する。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 製品形状がリング状であるため、原材料である薄板鋼板及び摩擦材原紙の端材の発生量が非常 に多い。サプライチェーンにおける製造プロセス全体を串刺しにした材料とコストの管理を実現 し、省資源化を進めたい。また、MFCA手法を習得し継続的に社内展開を行いたい。 ■目標 サプライチェーン全体での端材の発生量を半減することを目標とする。 ③診断方法 ■物量センターの定義の考え方 図に示した9工程を物量センターとする。各工程における2008年10月のデータを対象に、各 種マテリアルの投入量、廃棄量、排気量、システムコスト、エネルギーコストを確認可能な範囲 で収集した。 ■計算対象の材料種類 ・直接材料:薄板鋼板、紙原料、樹脂、接着剤 ・間接材料:薬剤、溶液、梱包資材 36 ■特徴 製品形状がリング状であるため、プレス工程で発生する薄板鋼板と摩擦紙の端材(中抜き部分 および縁部分)の量が非常に多い。工程が比較的シンプルであるため、端材以外のロスは少ない と思われる。 ④診断結果 ①正の製品の割合(重量ベース)は、投入材料の約55%である。投入材料の45%となる負の製 品のほとんどは、B社のプレス工程で発生する端材である。この端材は、他の小型製品にも利用 されているが、半分近くは最終的にロスとなっている。 ②摩擦材の含浸・プレス工程において、ロス(端材)が発生している。その中の一部が別製品の 原材料として利用されているが、半分以上が廃棄されている。 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 コストを含む情報の共有は不可能である。マテリアル情報についても、負の製品に関する情報 については、各企業の歩留まりに関連するので、積極的な共有は難しい。定性的な情報の共有に よりロスの削減策を検討した。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 ①製品形状から考えて薄板鋼板の端材削減は困難であるため、摩擦紙のロス削減を中心に改善策 を探った。摩擦材加工方法をロールに対する加工から廃材が発生しない接着後加工又はリング加 工に切り替え、負の製品の廃棄物ゼロ化を目指す。 ②A社及びC社における製品の簡易梱包が可能かどうかについても検討を続けていく。 ③データ収集期間が短いため、一部にINPUTとOUTPUTの整合が取れない材料がある。他製品も 含めて、より精度の高いデータ収集を行っていくことが必要である。 ⑥参加企業のコメント 正の製品及び負の製品という物量をベースとして、既存の組織単位ではなく組織を通貫してロ スを明確にするという新たな視点は非常に有効であるように感じた。今後も社内において継続的 な活動の展開を検討したい。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 株式会社ダイナックス http://www.dxj.co.jp 資本金 500百万円、従業員 1,434名 〒066-8585 千歳市上長都1053-2 TEL:0123-24-3247 (代) 問い合わせ先:生産技術本部 37 株式会社チクマ ―制服製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲: 女子制服を対象製品とし、原料仕入れから縫製後の出荷までを対象工程とする。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 チクマが設計、生産管理(受発注) 、在庫管理を行い、キューテックが製造を担当する 資源採取 原料製造 デザイン 原料仕入 チクマ キューテック パターン切抜き 製造方法設計 裁断 縫製 使用 廃棄 ■製造工程の特徴 【キューテック】 ・パターン切抜き:手作業で襟芯等のパターン用紙を切抜く。パターン用紙は全て廃棄する。 ・裁断:裁断機により、原料(表地、裏地、芯地) 、パターン用紙・ビニール紙・ロール紙を型 ごとに切抜く。原料の裁断切れ端、とパターン用紙・ビニール紙・ロール紙の全て廃棄される。 ・縫製:芯貼り、縫製(中間プレス) 、仕上げ(プレス) 、まとめ(ボタン付け)を行う。廃棄物 は発生しない。 【チクマ】 ・デザイン、生地・梱包材の発注・手配、在庫の管理を担当する。製造ラインを持たない。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 ・女子制服縫製ラインから発生するロス等を削減し、資源生産性の向上のポイントを探り出し、 改善策を検討する。 ■目標 ・チクマの在庫からの廃棄物、キューテックのラインから発生する廃棄物等の削減ポイントを明 確にし、具体的な取り組み計画を検討する。 38 ③診断方法、計算方法 ・実際の業務の流れに従い、パターン切抜き、裁断、縫製の大きく3工程に分けて、MFCAおよ びLCAによる診断を行った。 ・計算対象の材料種類 【直接材料】 :原料生地(表地、裏地、芯地) 【間接材料】 :ビニール紙・ロール紙 糸、ボタンなどは金額的及び物量的重要性の観点から考慮しない。 ④診断結果 ■LCA・MFCAによる診断結果 ・キューテックにおける余剰生地在庫は、チクマでそれらの生地在庫量の正確な把握ができてい ないための過剰発注により、最終的に不良在庫となってしまう。よって生地在庫の圧縮が大き な改善課題のひとつである。 キューテック社におけるMFCA結果 ・梱包はチクマからの梱包仕様の指示に基づき行っ ているが、梱包材は製品に対して重量比も高く、 マテリアルコストもかかっているため削減の余 地がある。 MFCA計算結果概要(コスト比率) (リサイクルの売価は除く、工程間統合) 0.0% 100% 90% 80% 45.7% 45.1% 60% ・キ ューテックは工場が決して新しいものではな く、電気、灯油等のエネルギーによる環境負荷 の割合が高いので削減の余地がある。 廃棄処理 SC EC MC 70% 1.5% 50% 40% 1.2% 30% 52.7% 20% 36.6% 10% 0.0% 0.7% 0.3% 16.1% 0% 投入コスト 正の製品コスト 負の製品コスト ⑤改善策の検討方法と改善案 2社はグループ会社であるため、コスト情報を含む全てのMFCA診断結果を共有し次のような 改善策について検討を行った。 ・チクマとキューテック間での現在在庫量の管理システムの構築を両社で行う。 ・梱包資材の変更(軽量化、通い箱化など)を両社で検討する ・キューテックの省エネ(電力・灯油使用量等)についても実施方法を検討する。 ⑥参加企業のコメント ・SC上で感覚的に把握していたものが具体的な数値で落としこめるきっかけとなった。 ・現場と机上の乖離が少なくなった ・設計上の考え方のベースの差異・改善点等を見つけ出す必要性が見えてきた ・発注側とのコミュニケーションをとるいい機会になった。 ・チクマが考えるのはマテリアル、キューテック側はシステムコスト、エネルギーコストである。 これらをブレークスルーして取り組んでいくことが重要 ・期間が短かった。3つの命題が出てきたが、これらが取り組みの第一歩 ・仕入先も巻き込めればよりよいSCでの省資源化につながる ⑦企業プロフィールと問合せ先 株式会社チクマ http://www.chikuma.co.jp/ 資本金 6億7,900万円 、従業員数 251名 住所 〒541-0047 大阪府大阪市中央区淡路町3-3-10 問い合わせ先:キャンパス事業部 39 株式会社 T & E ―カット野菜ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲 カット野菜を対象製品とする。㈲マルスイ青果(野菜の仕入れから出荷まで)および㈱T&E (野 菜の仕入れから加工、製品出荷まで)の工程を対象としてMFCAによる診断を行う。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 マルスイ青果 T&E 加工工程 QC1 投入材料 各種野菜 QC2 正の製品 QC3 正の製品 QC4 正の製品 投入材料 加工工程 包装・計量工程 QC5 QC6 正の製品 正の製品 QC7 正の製品 正の製品 原材料在庫 原材料在庫 各種野菜 検品・仕分け T&E出荷量 製品在庫 T&E向け品 洗浄・加工 加工野菜 包装・計量 包装済製品 製品在庫 各種製品 マルスイ購入野 購入野菜 マルスイ外購入 負の製品 材料在庫ロス 負の製品 不良ロス 棚卸ロス 負の製品 負の製品 重量不整合等 材料在庫ロス 負の製品 加工ロス 負の製品 計量ロス 負の製品 製品在庫ロス ■製造工程の特徴 マルスイ青果:購入した野菜をスーパー等へ卸している。一部の製品は小袋に仕分ける。上図 の3工程にモデル化して計算。 T&E:野菜の購入、皮むき、消毒、カット 、計量、パッケージ、ラベル、仕分け、出荷。上図 の4工程にモデル化して計算。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的:卸段階及び加工段階でのロスコスト明確化・ロスコストの削減 ■目標:ロス削減の方向性明確化 ③診断方法 ■製造工程各段階の材料の投入:白菜、人参、ピーマン、玉ねぎ、芋など各種野菜(約30種類) ■廃棄物の発生:マルスイ青果にて、不良品(傷んでいる野菜、色、大きさなどが悪いなど)や 棚卸ロスが発生。T&Eにて、野菜の皮をむいたりカットすることにより発生する加工ロス。 ■特徴:マテリアル(各種野菜)は、マルスイ青果→T&Eへ共通に流れる野菜を対象としている。 マルスイ青果では、野菜は目安重量にて管理。T&Eでは今回実測したので、実測値との差が大き く発生している。 ④診断結果 ①ある一定期間に実測したデータをもとに計算。物量面では両社合計のロスを100%とすると、 マルスイ青果23%、T&E77%。T&Eは洗浄・加工工程で発生している加工ロスが大半を占める。 その他、マルスイ青果では棚卸ロスや不良ロスも発生している。 ②両社含めた費目別コストはマテリアルコスト51%、システムコスト45%、エネルギーコスト 5%である。全工程を通して、正の製品コストが80%、廃棄処理費を加えた負の製品コストが 20%にのぼることが判明した。 40 MFCA計算結果概要(コスト比率) (リサイクルの売価は除く、工程間統合) 100% 0.2% 90% 80% 44.3% 廃棄処理 SC EC MC 70% 60% 38.1% 4.5% 50% 40% 4.1% 30% 51.0% 20% 0.2% 36.7% 6.2% 10% 0.4% 14.3% 0% 投入コスト 正の製品コスト 負の製品コスト ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 コスト(原価)情報も含めた全ての情報の共有を行った。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 ・マ ルスイ青果での不良ロスと棚卸ロスなどの廃棄ロスは、T&Eからの生産予測精度の向上や T&Eでの有効利用などサプライチェーン間で削減できる可能性がある。 ■個別企業における主な改善策 (1)マルスイ青果 ・不良ロス:仕入れた商品を計量・仕分け時に商品として出荷できないもの (改善策)T&E用製品の予測精度の向上 (改善策)T&Eへの格下げ納入の推進(品質に問題のない品はT&Eで原料として活用) ・棚卸ロス:帳簿と実在庫が不一致。小分け出荷の端数や不良在庫のマイナス(廃棄など)処理 の未実施、実在庫の数え洩れなどにより発生。 (改善策)棚卸ロス≒廃棄ロスと考えられるので不良ロスと同様の活動 ・T&E払出し不整合ロス:マルスイの管理単位(ケース数)とT&E要求単位(kg)の不一致等の 払出し量と受入れ量の不整合 。計算上の差異であり物理的に発生するロスではない) (2)T&E ・加工ロス:生野菜を加工するプロセスで発生する皮・へた・種などのいわゆる“残菜” 。 (改善策)除去量の削減 (改善策)ロス品の再利用(餃子の具などへの廃棄物の製品化:マルスイの不良ロスの活用も 含む) (改善策)廃棄物の再資源化(肥料・飼料など) ・計量ロス:計量・包装プロセスで製品規格重量不足を回避するための必要以上の充填(原料の ロスではないが、あえて負の製品とした) 。 (改善策)計測器の校正、計測方法の見直し、教育の徹底 ⑥参加企業のコメント 数々のロスが定量化されて明確なり、思ったより大きなロス金額であることがわかった。また 改善の方向性が明確になり良かった。更にベースとしての物量データの管理が重要であることが わかった。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 株式会社T&E http://www.tande-v.co.jp 資本金 1000万円 〒737-0831 広島県呉市光町11番18号 TEL:0823-21-0345 問い合わせ先:代表取締役社長 41 株式会社ディーアンドエムホールディングス ―AVレシーバー製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲 AVレシーバー (音響機器)を対象製品とする。本製品は、多くのサプライヤーで加工された部 品を、ディーアンドエムホールディングス(A社)において製品に組み立てる。ここではその中 のB社におけるプリント配線板、プリント基板の製造工程のMFCAによる診断について述べる。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 ・各サプライヤー (B~E社)においては、サプライチェーンとしての関係がほとんどない。 ・ロスの多くは、サプライヤーで発生する。不良品を除くと、直接材料のロスの多くは、主に、 A社の設計仕様、品質基準などが、その物量を決める要因になっている。 直接材料:銅張積層板、インキ等 間接材料:レジスト、フィルム等 梱包材 B社:プリント配線板製造 ロス:配線部以外の銅、 端材(配線板製造時) 直接材料:メッキ鋼板、インキ 間接材料: 梱包材(通い箱を実施済み) C社:板金部品製造 ロス:端材、追加部品 直接材料:アルミ形材 間接材料:表面処理用の薬剤等 梱包材 D社:パネル製造 ロス:不良による手直し (間接材料、エネルギー) 直接材料:アルミ形材 間接材料: 梱包材 E社:ヒートシンク製造 ロス:不良資産化した材 料在庫 A社:プリント基板部品実装 ロス:端材(Vカット部) A社:製品 組立 他社:上記以外の部品 ■製造工程の特徴 プリント配線板メーカーB社が製造したプリント配線板の上に、A社が部品実装し、分割して AVレシーバーに組み込み、配線を行う。部品実装後に、端材が発生する。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的:製造プロセス、製品設計の改善から、省資源化の構築を行い無駄の削除、効率アップに よるコストダウンを目指す。また、今後対応が必要なCO2削減活動、LCA導入の手がかりとする。 ■目標:AVレシーバーの現行機種を対象に分析し、次機種の設計に各種設計改善、製造方法改善 の課題を反映させる。 ③診断方法、計算方法 ■物量センターの定義の考え方 B社のプリント配線板の製造工程における「前加工⇒回路形成⇒レジスト⇒シルク印刷⇒プレ ス⇒検査」の各工程を物量センターとして、MFCAによる診断を行った。A社における組み立て 工程ではほとんど廃材が発生しないため、対象外とした。 ■計算対象の材料種類 ・直接材料:銅張積層板、銅(めっき)など、・間接材料:各種薬剤 ■特徴 プリント配線板の製造工程、およびその後の実装工程において、銅張積層板の端材が発生する。 また、それにメッキされた銅についても、プリント配線板の製造段階でのロスが多い。 42 ④診断結果 ①銅張積層板:端材と不良で、B社で12%がロス、②めっきの銅:B社で67%がロス(溶解) ①の銅張積層板の端材は、A社の部品実装段階でも発生し、2社で連携改善すべきロス。 今回の対象機種では、A社、B社の両方で、17.2%が端材になっている。 (図を参照) ②の銅は、現在のプリント板製造技術においては、改善方法がない。 (1)プリント配線板の原板のロス比率 (2)プリント配線板の製造段階の端材 (3)プリント配線板の部品実装段階の端材 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 2社間でコスト情報を除いたマテリアル情報を共有し、両社で発生する端材の削減策を検討した。 ■サプライチェーンでの改善策 ① 教育、ロス管理:プリント配線板製造時(B社) 、部品実装時(A社)を通した端材のロスを、 プリント配線板設計者に認識させ、機種ごとに「見える化」する。 ② 設計標準化:基本機種設計時に、端材の少ないプリント配線板の設計を行い、機種シリーズご とに、端材の少ないプリント配線板の設計を標準化する。 この改善策は、今後、A社の設計部門などに提案し、改善の実施に向けて、詳細な検討、ある いは分析、調査を行っていく。またB社も、端材の少ないプリント配線板の設計が実現できるよ うに、プリント配線板の設計、試作段階で、必要な情報提供を行う予定である。 ⑥参加企業のコメント この機会にサプライチェーンが連携して改善していく場を設け、品質・納期・コスト・環境の すべての側面で競争力のある取引関係を創造して行きたい。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 株式会社ディアンドエムホールディングス http://www.dm-holdings.com/jp/ 資本金 3,847百万円、従業員711名 〒210-8569 神奈川県川崎市川崎区日進町2-1 TEL:0248-27-3281 (代表) 問い合わせ先:生産推進本部ODM購買部 43 パナソニック エコシステムズ株式会社 ―熱交素子製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーン(SC)の構造 ■対象製品と対象工程範囲 熱交素子を対象製品とする。日本産業資材㈱でのシート成型と、パナソニック エコシステムズ ㈱での真空成型及び組立工程を対象工程として、MFCAによる診断を行う。 パナソニックエコシステムズ 日本産業資材 PSバージン材 ①配合 ②シート成型 廃材 ウレタン部材 商社 ③梱包 ロール材 (対象外) ④真空成型 ⑤溶着 ⑥組立 廃材 産廃業者 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 ・製造プロセス全体を通した材料とコストの管理を実現し省資源化を図る。 ・MFCA手法を習得し継続的に社内展開する。 ■目標 ・サプライチェーンにおける廃材を半減する。 ③診断方法 ■物量センターの定義の考え方 ・生産工程で、物量が投入される、或いは廃材が発生する工程をそれぞれの物量センターとし、 上記対象工程範囲で示した物量センターとした。 ■計算対象の材料種類 ・直接材料のポリスチレン(PS)材、ウレタン部材は、すべて計算対象にした。 ・間接材料はほとんど使用しない。 ④診断結果 ①パナソニック・エコシステムズでは、PS材は、④真空成形工程での端材がロスとなっている。 その大部分は、トリミングスケルトン、具体的には、縁(耳) 、型の面付け、そして送りサンである。 ②今回、幅を10mm狭い材料を手配し、テスト加工により量産可能という結果が得られ、切り替 えが完了した。これにより縁(耳)を11%削減することができた。 ③パナソニック エコシステムズで発生しているPS廃材は、再ペレット化すれば、日本産業資材 で再投入可能である。これにより、PS廃材のオープンマテリアルリサイクルからクローズドマテ リアルリサイクルへとシフトアップすることが可能である。 44 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 材料種類別の物量情報を共有し、両社において発生しているPS廃材の発生量削減策とその廃材 の効率の良いリサイクル方法について検討した。 ■サプライチェーンでの主な改善策 ①パナソニック エコシステムズで発生したPS廃材を、日本産業資材の取引先で再ペレット化す る方向で具体的に検討開始した。 ②段取り時のシート端尺材の使用←規定長さ以下のロール材納品/使用の可否、条件等の確認/調 整 ③両社で発生させている縁(耳)ロスの共有化による、シート成型幅の縮小 ■個別企業での主な改善策 ①金型とキャビの差異の極小化、送りサンの極小化、縁ロスの極小化など(パナソニックエコシ ステムズ) ②成形幅と納品幅の差異の極小化、段取り時の頭ロス削減、段取り時のシート端尺材ロスの削減 (日本産業資材) ⑥参加企業のコメント 対象とした工程は、十分な合理化の検討を済ませた「乾いた雑巾」の状態と漠然と考えていたが、 実はまだまだ改良の余地のあることがわかった。特に、サプライチェーン全体を鳥瞰することで 関連企業間に大きな改善の余地のある事がわかった。今回の取組みを積極的に横展開し、省資源 化や省エネを通じて地球環境保護に貢献したい。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 パナソニック エコシステムズ株式会社 http://panasonic.co.jp/pes/ 資本金120億9,236万円(平成18年3月31日現在) 従業員5,479名(平成20年3月31日現在) 〒486-8522 愛知県春日井市鷹来町字下仲田4017番 問い合わせ先:環境グループ 45 福島工業株式会社 ―業務用冷蔵庫の一体発泡構成品の診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲 業務用冷凍冷蔵庫向けの底面排水ソケットを対象とする。排水ソケットの射出成型(阪神プラ スチックス工業㈱) ⇒ドッキングによる組み立て(福島工業㈱)を対象工程として、MFCAおよ びLCAによる診断を行った。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 阪神プラスチックス工業株式会社 混合機 粉砕機 ランナー 福島工業株式会社 不適合品 排水構成品 リサイクル 樹脂ペレット 混合 射出成形 検査 バージン 樹脂ペレット 出荷 外箱構成品 内箱底組立 背面組立 側面組立 天組立 スチロール構成品 ■製造工程の特徴 阪神プラスチックス工業にて射出成型加工された排水ソケットを、福島工業の内箱組立工程で 組み込む。射出成型工程は、ランナーや不適合品などを都度原料リサイクルしているため、材料 のロスが少ない工程となっている。 福島工業は、板金加工品をパーツごとに内箱と外箱に組み立て、それらをドッキング工程で合 体し、最後に発泡剤の注入と後処理・仕上げを実施する。組み立て工程が中心となるため、廃棄 物の発生は少ない。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 福島工業が製造する業務用冷蔵庫において筐体とその筐体内で使用される排水ソケットにおい てサプライチェーンでの省資源化のポイントを探り出し、改善策を検討する。 ■目標 SCでの取り組みを通じて省資源化のポイントを探り、改善策を提示する。 ③診断方法 ■物量センターの定義の考え方 福島工業では、各パーツの組み立て加工工程とその後の内箱組立、ドッキング、発泡剤注入・ 後処理工程を物量センターとし、MFCAおよびLCAによる診断を行った。阪神プラスチックス工 業では、混合工程・射出成形工程の2つの物量センターを設定し、MFCAによる診断を行った。 ただし、LCAにおいてはすべて一つの工程にまとめて算定を行った。 ④診断結果 ■福島工業 ・全般的に投入材料に対する不良が少ない。 各パーツの組立工程ではこれまで正確なデータを取っ ていなかったため、今回不良品率を設定し、工程内のロスにも着目する下地を作った。 46 ・大きなロスが最後の発泡注入・後処理工程で発生する、発泡ミスによる不良品である。発生数 は非常に少ないが、1個当たりのロスコストは非常に大きいのでこの発生を抑制することは1 つの改善ポイントとして挙げられる。 ・全体的にはロスコストが非常に小さいので改善のポイントは少ない。 ■阪神プラスチックス工業 ・工程内で一度不良として発生した廃棄物もすぐに工程に戻され、材料としてリサイクルされる のでロスが非常に少ない。 ・マテリアルのロスは少ないがシステムコストの割合が非常に高いので、この点が改善のポイン トのひとつとして挙げられる。 ・全体的にはロスコストは非常に少ないので、製品そのものの原材料の量を抑制する、すなわち 仕様変更などによるマテリアル投入量の抑制などが考えられる。 MFCA計算結果概要(コスト比率) 100% 100% 90% 80% (リサイクルの売価は除く、工程間統合) 0.2% 90% 39.1% 39.1% 80% 廃棄処理 SC EC MC 70% 60% 4.6% 4.6% 41.3% 41.3% 廃棄処理 SC EC MC 70% 60% 4.9% 4.9% 50% 50% 40% 40% 30% MFCA計算結果概要(コスト比率) (リサイクルの売価は除く、工程間統合) 0.2% 56.0% 30% 55.8% 53.5% 53.4% 投入コスト 正の製品コスト 20% 20% 10% 10% 0% 投入コスト 正の製品コスト 0.2% 0.0% 0.2% 0.0% 負の製品コスト 0% 0.2% 0.1% 0.0% 0.0% 負の製品コスト ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 2社間で、正負の製品の割合と、マテリアルロスとなる主な材料名のみを共有して、改善策の 検討を行った。各社ごとに、設計部門と製造部門の関係者が集まり、ブレーンストーミングによ り解決策を探った。 ■サプライチェーンでの改善案 福島工業における設計変更により、排水ソケット部分の薄肉化で重量の10%削減を実施した場 合、マテリアルコストの比率が低下し、全体のコストで約6.4%の削減、マテリアルコストで約 9.6%の削減効果があることがわかった。また、LCA実施の結果、約10%地球温暖化への影響が 低減することがわかった。 ⑥参加企業のコメント ロスの実際の量・コストなどが非常に少ないことがわかった。また、単価の出し方を理解でき たのは有意義であった。今後、多品種少量生産への適用方法について研究が必要である。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 福島工業株式会社 http://www.fukusima.co.jp 資本金:27億6千万円、従業員数:1,113人 〒555-0012 大阪府大阪市淀川区御幣島3-16-11 TEL:06-6477-2863 問合せ先:岡山工場製品品質保証部 47 株式会社藤田電機製作所 ―アイリスメーター製造ラインの診断と改善- ①①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲 電気計測機器部品・光学機器部品(アイリスメーター)を対象製品とする。樹脂成形メーカー A社における樹脂成形加工、㈱藤田電機製作所におけるプレス加工、鶴岡計器㈱における総合組 立を抽出し、対象工程として、MFCAによる診断を行った。 ■サプライチェーンと製造ラインの構造 ㈱藤田電機製作所 伊勢原事業所 鶴岡計器㈱ 成形メーカーA社 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 電気計測器部品、光学機器部品等製品の製造に関わる3社により構成されるサプライチェーン グループでの企業間の摺り合わせ・連携等を推進することにより、サプライチェーン全体の資源 投入量を抑制し、結果として、歩留まりの改善、コスト低減に繋げる。 ■目標 マテリアルコスト(あるいは物量) 10%削減、システムコスト(あるいは工数) 10%削減、エ ネルギーコスト(あるいは使用量) 10%削減、を目標とする。 ③診断方法 ■製造工程各段階の材料の投入 樹脂成形加工:ポリカーボネート(PC)金属プレス加工:炭素工具鋼(SK2) 総合組立:なし(投入部品点数:29) ■廃棄物の発生 PC樹脂、SK2、組立工程における不良品 ■物量センターの定義の考え方 3社に係わる部品・加工工程に焦点をあて、データ収集・分析・診断の合理性を勘案し、4個 の物量センターとした。また、金属プレス部品(取付板) 、樹脂成形部品(ホルダー、カバー)の 3点をそれぞれ物量センターとして分析、それらの「正の製品」部分を、物量センター (総合組立) への投入データとして活用・分析した。 ■計算対象の材料種類 樹脂成形加工:PC 金属プレス加工:SK2 (炭素工具鋼)総合組立:なし 48 ④診断結果 ①A社:樹脂成型工程において、負の製品コストの割合が80%前後と大きく、スプール・ランナー の占める割合が大きい。原因として、部品の大きさに対して、使用設備や金型が過大であること が考えられる。さらに、スプルー・ランナーが大きいため、冷却時間がより長くなっている。 ②藤田電機製作所:プレス工程において、負の製品コストの割合が80%前後と大きく、ブランク 部分の占める割合が大きい。原因として、部品の大きさに対して使用設備が大きく、また材料の 標準化のために材料幅が大きいことが原因と思われる。 ③鶴岡計器:総合組立における不良率は0.6%であるが、工程不良が発生すると、負の製品コス トが増大する。また、不良品には再生不可の部品が多い。特に高額な光学部品は再生できない場 合が多い。 成形品(ホルダーの例) ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 3社で材料タイプ別の物量情報の共有を行い、サプライチェーンを通した改善策を検討した。 ■サプライチェーンでの主な改善策 ・材料取りの検討。材料レイアウトの検討。材料の検討。 ・使用機械の検討。使用設備・治工具の検討。金型の検討。設計仕様の見直し・検討。 ⑥参加企業のコメント マテリアルロスが定量的に把握でき、改善活動への大きなトリガーとなった。設計をはじめ、 製造部門において今後MFCAを全域展開し、資源生産性向上に向けた意識付け、気付きの改革を 図り、自主的な改善に取り組んでいく。その為にも、MFCA研修をはじめ、各種管理手法の教育・ 訓練を継続して行い、体質強化に取り組んでいきたい。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 株式会社藤田電機製作所 http://www.fujita-denki.co.jp/ 資本金1億円 従業員205人 神奈川県中郡二宮町山西945番地(本社) TEL:0463-95-1221 問合せ先:伊勢原事業部 49 北斗電子工業株式会社 ―パーティクルセンサーの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲 パーティクルセンサー (純水・洗浄装置の微粒子検出用センサー)を対象製品とし、次の工程 を対象としてMFCAによる診断を行った。 ①ソフト設計 ⇒ ②回路設計 ⇒ ③AWパターン設計 ⇒ ④プリント基板製作(内層)⇒ ⑤プリント基板製作(外層)⇒ ⑥組立・実装 ⇒ ⑦調整・デバック ■サプライチェーンと製造ラインの構造 北斗電子工業様 ソフト 設計① 回路 設計② 組立 実装⑥ 調整 デバック⑦ エーエムサーキットデバイス様 AWパターン AW パターン 設計③ 須磨電子産業様 プリント配線基板の 製作(内層)④ プリント配線基板の 製作(外層)⑤ ■製造工程の特徴 対象工程範囲での製造工程該当は、④、⑤、⑥、⑦の計4工程となる。④、⑤の工程でプリン ト基板を製作し、⑥でこの基板上に各種電子部品の搭載(実装)をおこなう。⑦の工程で完成品の 調整およびデバック(修正)をおこなう。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 北斗電子工業㈱で新製品として販売を開始したパーティクルセンサーについて、上流の設計か らプリント配線基板製造・組立・検査の下流までを通して、ロスコストを明確にすることで、① 今後の改善のポイントを明確にし、②改善策をまとめることにより、本事業終了後の活動につな げる。 ■目標 現状把握をした上で、最も大きいロスコストについて、30%以上の改善を目標とする。 ③診断方法 ■物量センターの定義の考え方:サプライチェーンの計3社において、各機能を主としてデータ の収集性、分析精度を考慮して、合計7つの物量センターを設定した。 ■製造工程各段階の材料の投入 ・プリント基板製作(内層) :基材、プリプレグ、銅箔、ドライフィルム、薬液、水 ・プリント基板製作(外層) :基材、ドライフィルム、レジストインク、シルクインク、薬液、水 ・組立・実装 :各種電子部品(半導体レーザー、コンデンサ、抵抗、コネクタ等) ■廃棄物の発生 ・プリント基板製作(内層):基材・プリプレグ・銅泊・ドライフィルムの端面端切れ、薬液・水 の過剰分 ・プリント基板製作(外層) :基材・ドライフィルムの端面端切れ、インク・薬液・水の過剰分 ■特徴 ・廃棄物が発生するのは④、⑤のプリント基板製作の2物量センターとなる。 50 ④診断結果 ■フローコストマトリックス(7物量センター合計) コスト分類 正の製品 負の製品 合計 マテリアル 98.0% 2.0% 100% システム 97.7% 2.3% 100% エネルギー 98.5% 1.5% 100% 廃棄物処理 - 100% 100% 合計 97.7% 2.3% 100% ■上記の物量センター全体でのロスは2.3%に過ぎないが、物量センター単位で見ると差異が大 きいため、個別に診断する必要がある。 ●ソフト設計、回路設計 :設計ミスがないために負のコストは発生していない。 ●AWパターン設計 :設計ミスによるシステムコストロスが4.8%発生。 ●プリント配線基板製作(内層):30.2%のロスコストが発生。基板の端切れロスが大きい。 ●プリント配線基板製作(外層):72.2%のロスコストが発生。 基板の端切れロス、および受注外の廃棄ロスが大きい。 ●組立・実装 :ロスコストは0%。 ●調整・デバック :6.9%のロスコストが発生。 ■ロスが大きい「プリント配線基板製作」でのコスト比率 (投入コストを100%とする) 12.88% 100% 2.97% 72.2% 69.8% 0.19% 100% 33.94% 11.59% 30.56% 52.38% 1.96% 66.42% 0.80% 30.2% 3.38% 廃棄物処理コスト エネルギーコスト システムコスト マテリアルコスト 43.91% 27.8% 廃棄物処理コスト エネルギーコスト システムコスト マテリアルコスト 1.28% 1.01% 27.65% 24.73% 30.42% 22.52% 26.09% 4.33% 投入コスト 正のコスト 負のコスト 図1プリント配線基板(内層)の診断結果 投入コスト 正のコスト 負のコスト 図2プリント配線基板(外層)の診断結果 ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 サプライチェーン間の機密性を保持するために、投入コストを100%として、正・負のコスト を%表示することで、情報の共有化を図った。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 ①1基板に複数パターンを露光する「異種面付け」が有効である。今後生産計画に基づいて、ど ちらの方法で製作するかを北斗電子㈱にて判断する。 ・内層では投入コスト31.4%削減の効果予測、外層は投入コスト44.1%削減の効果予測。 ・貴金属である銅箔の削減効果は、17.7%予測。 ②1基板内での複数パターンデータにおいて、 「一括出力」をおこなう。 ③新たな電子部品を採用する場合に、注意を喚起する情報を同時添付する。 ⑥参加企業のコメント ロスは常に意識していたが、コスト比で見ることで、損失の大きさを改めて認識した。また、 サプライチェーン間での改善策を見出せたことが有意義であった。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 北斗電子工業株式会社 http://www.hokuto-ele.co.jp/ 資本金 600百万円、従業員:50人 〒669-1148 兵庫県西宮市名塩東久保2番16号 TEL:0797-62-0131 (代) 51 ミック工業株式会社 ―空調機オプション部材製造ラインの診断と改善- ①診断対象の製品・工程とサプライチェーンの構造 ■対象製品と対象工程範囲 空調機(床置型室内ユニット)のオプション部材(背面吸込口キット)を対象製品とする。ミッ ク工業における溶接・組立工程と、㈱東海塗装における塗装工程を対象工程として、MFCAによ る診断を行った。 ■製造工程の特徴 ・製品の最終的な仕様(形状、塗装色等)は空調機メーカーが決定する。 ②事業に参加する目的・目標 ■目的 対象製品の製造において、サプライチェーンでの省資源化のポイントを探り出し、改善策を検 討する。 ■目標 東海塗装での塗装工程における塗料・溶剤・エネルギーの削減を目指す。 ③診断方法、計算方法 ■製造工程各段階の材料の投入 ・抜き曲げ加工:鋼板 ・塗装行程:塗料・シンナー ■廃棄物の発生 ・抜き曲げ加工:部品を抜いた残材 ・塗装工程:前処理の薬剤、塗料やシンナー ■物量センターの定義の考え方 ・ミック工業: 「溶接」 、 「組立」 、 「出荷」を物量センターとした。 ・東海塗装:「前処理」 、 「塗装」 、 「検査出荷」を物量センターとした。 ■計算対象の材料種類 ・抜き曲げ加工部材、断熱材、塗料・シンナーを主材料として計測した。 52 ④診断結果 ①ミック工業では、不良が発生しなかったため全投入コストに対する正の製品は99.5%であっ た。 ただし、外注先の金属加工業者で大きなロス(板金加工残渣)が発生しており、改善が必要で ある。 ②東海塗装では、同34.5%(塗料固形分ベース)であった。塗料の付着効率(現在の歩留まり 31.5%)の向上が必要である。 MFCA計算結果概要(コスト比率) 120% 100% 5.3% 0.3% 80% 51.8% 2.9% 60% 34.6% 40% 20% 42.7% 27.8% 0.3% 2.3% 17.1% 廃棄処理 EC SC MC 14.9% 0% 投入コスト 正の製品コスト 負の製品コスト ⑤改善策の検討方法と改善案 ■改善策の検討方法 2社において材料タイプ別の物量情報の共有を行い、東海塗装での負の製品コスト低減策を検 討した。 ■サプライチェーンにおける主な改善策 東海塗装において、ハイソリッド系塗料導入等による塗装系の見直しや塗膜厚管理の徹底を ミック工業との話合いにより検討を行っていく。 ■個別企業における主な改善策 ・ミック工業:ネスティングの見直し、溶接・組立工程の時間生産性の向上、溶接工程の削減、 発注の効率化による大型サイズ鋼板の活用、抜き残材の他製品パーツへの活用などを検討する。 ・東海塗装:塗装ラインの稼働率向上、塗装スプレーノズルの最適化などを検討する。 ⑥参加企業のコメント 負の製品コストの数字を見て資源のムダ使いに改めて驚いています。この現実を踏まえ環境改 善・収支改善に取り組んでいく。 ⑦企業プロフィールと問合せ先 ミック工業株式会社 http://www.mic-j.co.jp/index.html 資本金 1500万円、従業員150人 〒599-8266 堺市中区毛穴町102番地 TEL:072-271-5571 問い合わせ先:本社工場 53 本資料の内容に関するお問い合わせは産業環境管理協会SC事業事務局までお願いします。 社団法人 産業環境管理協会 製品環境情報事業センター SC事業 事務局 〒101−0044 東京都千代田区鍛冶町2-2-1 三井住友銀行神田駅前ビル [電 話]03−5209−7708 [FAX]03−5209−7716 [E-mail][email protected]