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「教育の情報化」に関する一考察 - みやぎ地域教材データベース

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「教育の情報化」に関する一考察 - みやぎ地域教材データベース
情報教育
「教育の情報化」に関する一考察
− 小学校における情報通信ネットワークの授業での活用を通して −
利府町立利府小学校 須藤 淳
概
要
本研究は,小学校における情報通信ネットワークを活用した学習について,文部科学
省等の公的機関による事業の調査・研究及び,先進校で行われている授業実践記録の調
査・分析を行い,「教育の情報化」がもたらす学習活動の変化について考察したものであ
る。
1 主題設定の理由
2002 年度に実施となる学習指導要領には,
「各教科等の指導に当たっては,児童がコンピュータや
情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ,適切に活用する学習活動を充実するとともに,
視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」とある。
このように,学習にコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を取り入れることをはっ
きりと示している。
小学校では,1980 年代後半からコンピュータの活用が徐々に始まり,インターネットやその他の情
報技術を活用するプロジェクトが盛んに行われてきた。特に,1999 年末の「ミレニアム・プロジェク
ト」1により,教育の情報化は政府の主要施策の一つとなり,教育の情報化の推進に向け,様々な取組
がなされている。
まず,情報教育環境の整備の面については,小学校の場合,2005 年までに,コンピュータ教室には
42 台が,各普通教室(学級)には2台+ビデオプロジェクタ1台が導入されることになっている。ま
た,インターネットへの接続は,校内ネットワーク(校内 LAN2)を整備するとともに,インターネッ
トへの高速な接続を行うとされている。
次に,教師のコンピュータ操作に関しては,ここ数年,校内研修等を通して習熟の機会が持たれ,
技能の向上がなされている。
このように,現在,教育現場では,情報教育環境の整備や人材育成が進んでいる。
上記のように教室に情報教育環境が整備された時,それらをいかに用いれば学習活動に効果的であ
るかが,今,まさに望まれている。教師が,コンピュータや情報通信ネットワークを授業の中に取り
入れ,十分な活用を図ることが課題とされているのではないだろうか。
そこで,本研究では,授業実践や先行研究から,情報通信ネットワークが児童の学習活動にどのよ
うに生かされるのかを明らかにするとともに,学習活動がどう変化していくのかを探っていきたいと
考え,本主題を設定した。
2 研究目標
小学校における「教育の情報化」による学習活動の変化について,情報通信ネットワークの活用例を
1
1999 年末,閣議決定された。その中で,教育の情報化は国の主要政策の一つとなった。
2
ローカルエリアネットワーク。同一の建物や敷地内等限られた組織や地域の中で構築されたネットワークのこと。
− 1 −
「教育の情報化」に関する一考察
示すことを通して探る。
3 研究方法
3.1 文献研究
先行研究及び文献研究から,次の点について把握し,情報通信ネットワークの効果的な活用の仕方
を考察していく際の手掛かりとする。
(1) 従来までの接続形態で行われてきた,インターネット活用の実際と具体的なコンテンツ3の種類を
調べ,各教科教育において,情報通信ネットワークを活用していく上で求められることを探る。
(2) 情報通信ネットワークの教育的利用における整備の現状と今後の展開について調べる。
(3) 教育関連企業で行われている,情報通信技術や児童・生徒向けコンテンツについて調べる。
(4) 情報通信ネットワークを活用することによって「教育の情報化」にもたらされる事象について調
べる。
3.2 調査研究
情報教育に関する事業について,その内容を調査し情報通信ネットワークの活用の在り方を探る。
(1) 情報通信ネットワークの活用について,文部科学省情報化対応事業や情報教育関係機関による事
業の次の内容について調べる。
① 情報通信技術,特に双方向性に関する取組
② 児童・生徒向けコンテンツ,特に音声・動画等の教材
(2) 先進校で行われている総合的な学習の時間並びに教科でのインターネットの活用について,実践
記録を基に調べる。
3.3 事例提示
情報教育環境の整備に伴う,効果的な情報通信ネットワークの活用の仕方を提示する。
(1) 主にインターネットを利用した,授業での情報通信ネットワークの活用事例について
(2) 主に校内ネットワークを利用した,授業での情報通信ネットワークの活用事例について
4 研究の概要
4.1 「教育の情報化」の進展
4.1.1 初等教育における情報通信ネットワーク活用の試み
1993 年6月に提出された,産業構造審議会情報部会報告を受けて,通商産業省は 1994 年5月に「高
度情報化プログラム」を策定した。この中では,教育の情報化に関し次のように述べている。
(1) 能動的な学習の実現
コンピュータソフトウェアやネットワークの先進的機能を活用することにより,学習対象を把握・
分析したりその成果を表現したりするという学習活動が,一層高度で能動的なものとなり,創造力,
思考力や表現力といった学習者の能力を抜本的に高めることが可能となる。
(2) 教室での授業が持つ制約を越えた教育,学習の実現
コンピュータとネットワークとによる情報の処理,収集,発信能力の大幅な向上により,教室での
3
文章、画像、音楽、映像などがコンテンツになる。コンピュータ関連では,正確にはデジタル・コンテンツやマルチメディアコン
テンツということになる。つまり全部、デジタル化されている点が、映画やテレビ、雑誌記事などの従来のコンテンツと異なる。
− 2 −
「教育の情報化」に関する一考察
授業が持つさまざまな制約を越えた新たな教育,学習が可能になる。
「高度情報化プログラム」実施のために,情報処理振興事業会(IPA)により,
「特定プログラム高
度利用事業」が開始された。この事業のプロジェクトの一つである「教育ソフト開発・利用促進プロ
ジェクト」の主要な実験テーマの一つを実施するために開始されたものが「100 校プロジェクト」
(1994∼1996 年度)である。このプロジェクトの趣旨は,初等中等教育におけるネットワークの利用
により,教室での授業が持つさまざまな制約を越えた教育,学習の実現を目指すものである。活動内
容を各学校に独自に任せたもの(自主企画)や,事務局が企画し参加校を募って行うプロジェクト(共
同利用計画)を実施した。実施後の課題として,次の3点が挙げられた(文献[2]参照)
。
(1) 教育利用の分野において世界的に発展してきたインターネットを国際交流・国際化にどのよ
うに活用するか(国際化)
。
(2) インターネットを教育現場で定着させるにはどのような利用計画が有効か(地域展開)
。
(3) 今後の情報技術の高度化や回線の高速化に対応した,どのような先進的なインターネットの
教育利用が有効か(高度化)
。
そこで,
「国際化」
「地域展開」
「高度化」を事業の3本柱として,新 100 校プロジェクトが発足した
(1997∼1998 年度)
。新 100 校プロジェクトでは,各学校が独自に活動内容を考える自主企画が特に
推進され,各学校の取組に対しての支援計画が推進された。新 100 校プロジェクトの事業の成果とし
て,活動報告書には次のような事柄が記載されている(文献[2]参照)
。
(1) 従来の学力観から計画,表現,創作,協調,興味・関心といった新しい学力観を学校文化の
中に定着させた。
(2) 情報活用能力という概念が,実践を通して明確化された。
(3) インターネットによる学習を通して,情報技術へのアクセス,それらの操作リテラシー形成,
情報化社会の実体を肌で感じ,理解し得た。そしてマルチメディアという技術の実体験を通して,
情報教育の一貫として情報科学・技術についての学習が,間接的であるにしろ,実行された。
(4) 学校と地域とを結ぶ活動を掘り起こし,新しい実践カリキュラムの構成力を育成できた。
(5) 各教科での問題解決的,道具的なネットワークの利活用に関するノウハウが蓄積された。
(6) 閉じた学習空間から開いた学習空間へのイメージが経験的に得られた。
(7) プロジェクト・ベースの学習活動を教師,児童・生徒が経験し,新しいグループ学習のモデ
ル化が図られた。
4.1.2 国家プロジェクトとしての「教育の情報化」−ミレニアム・プロジェクト−
1997 年までの教育の情報化に関する取組は「こねっと・プラン」を含め,文部省,通商産業省が行
っていたプロジェクトが主であった。1998 年に入り「ラーニング・ウェッブ・プロジェクト」4や「学
校インターネットプロジェクト」5等の省庁横断的なプロジェクトが行われる中,政策的な取組として,
内閣総理大臣直轄の省庁横断タスクフォースであるバーチャル・エージェンシで教育の情報化を政府
の重要施策として取り上げた。省庁共同で教育の情報化の枠組みを検討し,情報化時代の新しい教育
像として定義されたものが以下のとおりである。
「子どもたちが変わる」
「授業が変わる」
「学校が変わる」
そして,1999 年末,
「ミレニアム・プロジェクト」が閣議決定され,その中で,教育の情報化は政
府の主要施策の一つとなった。
「
『ミレニアム・プロジェクト』により転機を迎えた『学校教育の情報
4
5
初等教育から生涯学習まで幅広く扱い,衛星画像等を使う先端技術を活用した教育や都市部・山間部,国際交流等様々な地域や場
面を想定したプロジェクトが行われ,教育の情報化の可能性が実証された。
各学校に高速回線を導入し,その時にどのような授業ができるかを実証するプロジェクトである。
− 3 −
「教育の情報化」に関する一考察
化』
」によれば,教育現場におけるコンピュータ利用は“
「全ての教室」の「全ての授業」で”と述べ
られている。小学校のコンピュータを取り巻く環境としては,2005 年までに,コンピュータ教室には
22 台から 42 台が,各普通教室(学級)には2台+ビデオプロジェクタ1台が整備される。また,イ
ンターネットへの接続に関しては,校内 LAN の整備による「教室接続」が推進され,インターネット
への接続は,従来の 64kbps から,より高速な回線(1.5Mbps 程度)を使用する旨が記されている。つ
まり,全国の学校において「全ての教室」の「全ての授業」でインターネットが日常的に授業に利用
される時代が到来するわけである。
4.2 情報通信ネットワークを活用した授業づくり
4.2.1 情報通信ネットワークを授業に活用するために
(1) インターネットの利用
① 教育用ポータルサイトを活用する
教育用コンテンツを利用する際,以前までは,ソフトウェアを購入したり,教師が自らコンテンツ
を開発したりする方法等が行われてきた。学習に有効な教育用コンテンツをインターネット上から見
付け出すことは容易ではなく,児童に提示したり,扱わせたりするまでに多くの時間を要していた。
しかし,現在では,教師がインターネット上から教育用コンテンツを短時間に見付け出し,授業で
活用することが可能である。それは,
「教育情報ポータルサイト」の利用である。最新コンテンツ及び
その情報を容易に取得できるだけでなく,
それらを用いた実践事例・教育的効果を知ることができる。
1990年代からの各省庁における先進事業により,教育現場でのインターネット活用が研究されてき
た。現在では幾つかの研究機関により教育情報ポータルサイトが運営されている。
ポータル(portal)は本来,
「入り口,玄関」といった意味である。一般に「ポータルサイト」とは
様々なWebページやサービス
など,インターネットへの入
口になっている場合に「ポー
タルサイト」と呼ばれている。
ここでは,いくつかの代表
的な「教育情報ポータルサイ
ト」を挙げることにする。
「教育情報ナショナルセン
ター(NICER)6」はバー
チャル・エージェンシ「教育
の情報化」プロジェクト報告
(1999 年 12 月)の中での提
言を受け,構想が実現化され
たものである(図1)。2001
年8月 31 日に Web サイトが立
ち上げられた。
「こどものペー
ジ」
「おとなのページ」
「せん
図1 「教育情報ナショナルセンター(NICER)
」こどものページ(2002 年 2 月)
6
http://www.nicer.go.jp/
− 4 −
せいのページ」で構成されて
「教育の情報化」に関する一考察
おり,教育情報や各教科用のコンテンツやリンク集が用意されているだけでなく,独自のサービスと
して,Web ページを学年に応じた漢字表記に変換して表示する「ウェブ漢字かな変換サーバ れじぶ
る」をはじめ「社会科統計情報 全国データランド」や「日本史データベース 日本史探検隊」等を
利用できる。
通商産業省・文
部省による「Eス
クエア(e2)
・プロ
ジェクト」は,
「100
校プロジェクト」
「新100校プロジ
ェクト」の後を受
けて全国の学校が
インターネット利
用教育を実践する
ための支援プロジ
ェクトである。図
2にあるように,
これからインター
図2 「Eスクエア(e2)
・プロジェクト」メイン・メニュー(2002 年 2 月)
ネットに接続し教
育での活用を計画
している学校や,日常的にインターネットを使っている学校の利用者が相互に交流できるようなコミ
ュニケーションの場,また,インターネットを活用した教育に参加できる実践の場を提供している。
また,インターネットを導入または活用する上で必要な技術情報(インターネット環境の構築等)も
合わせて提供していることが分かる。
インターネット教育情報システムとして運営されている「TOSSインターネットランド7」では,
「教師サイト」
「子どもサイト」
「保護者サイト」が開設されている。
「教師サイト」の中には全教科・
全学年 8500 サイトにわたる各教科用コンテンツや授業実践等を利用できる情報システムがある。
② 教育用コンテンツを活用する
①に挙げた教育用ポータルサイトから,今までにはなかった教育用 Web ページやコンテンツを知る
ことができる。前述の「教育情報ナショナルセンター(NICER)
」で行われているサービス「ウェ
ブ漢字かな変換サーバ れじぶる」や「社会科統計情報 全国データランド」等がそうである。では,
それらの優れている点は何であろうか。
第一に,これらのサービスがインターネット上で動作するソフトウェアだということである。コン
ピュータがインターネットに接続できる環境であれば利用でき,あらかじめコンピュータに特別なソ
フトウェアをインストールしておく必要がない。このサービスが開始される前までは,同様の機能を
持つソフトウェアを購入,コンピュータにインストールして使用する必要があったが,本サービスに
より,今後はインターネット上でいつでも利用することができるのである。第二に,最新の情報デー
タベースを利用し,
欲しいデータを瞬時に得ることができることである。
例えば,
「社会科統計情報 全
7
http://www.tos-land.net/
− 5 −
「教育の情報化」に関する一考察
国データランド」では,農業や漁業,人口等について,データベースを利用し調べることができる。
「野菜」
「果物」
「穀物」
「家畜」
「面積・
人口」
「降水量・気温」から調べたい項目を
選択した後,知りたい地域を選択すること
で,
情報を地図や図表で表示する。
図3は,
仙台の降水量と気温の様子を表示させた様
子である。扱われている情報は,現在は,
平成 12 年度国勢調査及び平成 12 年度日本
統計年鑑(総務省統計局)となっており,
正に最新の情報であるといえる。
このサービスを利用すれば,社会科等の
学習で児童が知りたいと思ったデータをす
ぐに調べることができる。教科書や資料集
等と共に利用できる情報源として,非常に
有効であると考える。
次に,財団法人コンピュータ教育開発セ
ンターにより運用されている「教育用画像
図3 「社会科統計情報 全国データランド」の使用例(2002 年 2 月)
素材集8」を挙げる。
ここでは,授業で使える約 11,000 点の動
画・静止画を公開している。
「アサガオの双
葉の展開」
「ホウセンカの色水実験」
等の微
速度撮影や歴史記録映像,
「マット運動」
等
の器械運動の基本的な動きを見せる動画が
利用できる。図4はそれらコンテンツの中
の「植物の微速度撮影」のページである。
(2)校内ネットワークの利用
新整備計画により,各校にコンピュータ
関連機器及び校内ネットワークが整備され
る。各教室と特別教室の一部は互いに接続
されるとともに,すべてのコンピュータが
インターネットに接続される。
① ハードウェアを活用する
新整備計画に付随して各校で取り入れて
いくであろうハードウェアについて考える。
コンピュータを授業で利用するに当たり,
現在開発されているハードウェアのいくつ
かを表1に示す。表1に挙げたような機器
図4 「教育用画像素材集」植物の微速度撮影(2002 年 2 月)
8
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/index.html
− 6 −
を使用することでの効用は何かといえば,
「教育の情報化」に関する一考察
これらの機器を通して得られる情報の収集と
表1 コンピュータを授業で活用するためのハードウェア
[資料提示・発表での使用]
・大型ディスプレイ ・電子黒板 ・カラープリンタ
・PC カメラ
編集のマルチメディア化が図られることであ
る。マルチメディアとは本来,画像・動画や
文字,音声等のあらゆるメディアをコンピュ
[情報収集]
・CD プレーヤ ・DVD プレーヤ ・デジタルビデオデッキ
・デジタルスキャナ
・デジタルカメラ ・IC レコーダ ・デジタルビデオカメラ
・携帯電話
ータで表現する技術の事を指す。つまり,マ
[情報授受・発信]
・TV 会議システム ・衛星放送受信設備
がデジタルカメラ・デジタルビデオを利用し
ルチメディア機器の活用により,画像・動画
や文字,音声等をコンピュータに取り入れる
ことが可能になるわけである。例えば,児童
て収集した物をスクリーンに表示することや,
収集した画像・動画を編集・加工し,文章や
音声を加えて資料としてまとめ,発表を行うといったことが可能なのである。
② ネットワークに接続されている相互のコンピュータを活用する
校内ネットワークにつながれているコンピュータは互いに情報をやり取りすることができる。ある
コンピュータに蓄えられている情報を別のコンピュータから参照したり,直接情報を取り入れたりす
ることが可能である。これを生かせば,他のコンピュータにあるコンテンツやインターネットから入
手した情報,児童の作品等を手元のコンピュータで扱うことができ,とても便利である。
このようなコンピュータとネットワークの特徴を利用して,校内に情報を蓄積するコンピュータを
用意しておき,情報を分野ごとに整理し蓄積することで,いつでも必要な情報を利用することができ
るのである。
また,コンピュータを上手に利用すると,インターネットで行われている様々なサービスを校内ネ
ットワークで実現することが可能である。電子メールを校内で使用したり,Web ページや電子掲示板
を作成して公開したりできるのである。また,これらの機能は,校内ネットワーク内でのみ利用可能
であり,
校外にあるコンピュータからは接続することができないので,
活用の仕方を工夫し校内の様々
な場面に取り入れることができる。
インターネット
情報を共有する
校内ネットワーク
コンピュータ
図5 校内ネットワークの例
4.2.2 情報通信ネットワークの授業での活用
− 7 −
「教育の情報化」に関する一考察
活用法1
最新の教育情報をインターネットから得る
校内での教育活動において,学習指導案を始めとした教科の指導に関する情報,また,校務支援に
関する情報は,インターネット上から容易に入手することが可能である。文献・文書やソフトウェア
だけでなく,最新の教育関連ニュース等である。また,教師間での情報交換の手段として電子メール
も活用できる。
[「Eスクエア(e2)
・プロジェクト」を利用した情報収集]
校内での授業研究会,また,他校での校内研究会等で提示される学習指導案や教材教具等は,教師
にとって貴重な資料となる。このような授業実践にかかわる情報は,教師が教材研究を進める上で,
参考資料として利用していく。
インターネットを利用すると,学習指導案等の授業にかかわる資料を数多く入手できる。
「授業実践
事例の検索」ページから実践事例検索を用い,小学校「社会科」について検索すると,101 件もの事
例を知ることができる。また,教材・教具とそれらの活用事例については,
「教育用ソフトウェア検索」
ページから教育用ソフトウェア活用事例検索を用いると「理科」に関する情報が 105 件表示される。
Web ページを公開している全国の小学校について知りたければ,
「教育関連機関 Web サイト」のペー
ジから「小学校を」をたどれば,そこにすべて網羅されていることがわかる。
校務については,
「校務テンプレート」というページが用意されており,学校業務に必要な文書のテ
ンプレート(雛形)が校種別にまとめられている。必要なものをダウンロードして使用できるように
なっている。
[電子メールを利用した情報収集]
① メールマガジンを活用する
メールマガジンとは,会員登録をしておくと,電子メールで定期的にニュースなどが送られてくる
サービスである。以前は,
「電子メール新聞」という言い方もしたが,最近は「メールマガジン」と呼ぶ
ことが多い。配信のサイクルも,1 日に数回,1 日に 1 回,週に数回,週に 1 回,月に数回,不定期な
どサービスによって違いがある。いろいろなメールマガジンをまとめて紹介している Web ページがあ
るので,興味のある話題があれば購読してみるとよい。
表2 メールマガジン紹介サイトの例 (2002 年 2 月現在)
メールマガジンを紹介している Web ページ
Web ページのアドレス
@niftyMacky!メールマガジン立ち読みスタンド
http://macky.nifty.com/
melma!
http://www.melma.com/
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』
http://www.mag2.com/
Lycos インターネット - メールマガジン
http://www.lycos.co.jp/internet/mailmag/
役立つメールマガジン from Unplugged
http://member.nifty.ne.jp/unplugged/static/mailmag/
メールマガジン専門! めるる
http://www.tk.airnet.ne.jp/pakanya/
ODN メールマガジン
http://melma.odn.ne.jp/
goo メールマガジン
http://channel.goo.ne.jp/mailmaga/
BIGLOBE メルマガ「カプライト」
http://kapu.biglobe.ne.jp/
② メーリングリストを活用する
メーリングリストとは,電子メールを使って,特定のメンバーと情報交換する仕組である。
「ML」は、
メーリングリストの略である。メーリングリストの会員になると,他のメンバーへ電子メールを送る
時に全員の電子メールアドレスを指定する必要がない。メーリングリストのアドレス宛に送れば,自
− 8 −
「教育の情報化」に関する一考察
動的にメンバー全員に送られる方法となっている。同じ専門分野の教師が集まり,メーリングリスト
を使って盛んに情報交換を行っている。グループは大小様々で,近隣の数名でのものから全国規模の
ものまで存在する。
表3 メーリングリスト紹介サイトの例 (2002 年 2 月現在)
メーリングリストを紹介している Web ページ
Web ページのアドレス
E スクエア・プロジェクト メーリングリスト
http://www.edu.ipa.go.jp/E-square/ml/info.html
FreeML
http://www.freeml.com/
Lycos インターネット - メーリングリストサーチ
http://www.lycos.co.jp/internet/mailing_list/
③ ネットニュースを活用する
ネットニュースとは,
インターネット上で運営されている電子会議室のようなものである。
つまり,
グループごとに決まったテーマがあり,参加者が文章で意見交換する。この仕組みをネットニュース
と言い,それぞれのグループをニュースグループという。
ネットニュースという名前から、新聞が扱うような社会性の高い情報が送られてくると思う人が少
なくない。しかし,そうとは限らない。もちろん公共性の高いテーマで運営しているグループもたく
さんあるが,肩の凝らない話題で盛り上がっているグループも多い。なお,ネットニュースに参加す
るには、対応したソフトが必要である。だが,主要なブラウザーや電子メールソフトには,この機能
が備わっている。
授業実践事例
電子メールの利用
授業で用いる教材
教育情報ポータルサイト
校務で使用する文書
図6 インターネットから得られる教育情報
− 9 −
「教育の情報化」に関する一考察
活用法2
「課題発見」や「課題解決」の際に
支援や援助の手掛かりをインターネットから得る
児童が自ら課題を持つことが調べ学習の第一歩となる。社会科等の教科学習では,前時までの学習
を想起させ,疑問点やさらに深く調べたい事柄等を考えさせることから課題発見に導くようにするこ
とが多い。しかし,中には「なかなか課題を見付けられない」児童や「解決が安易な課題を選んでし
まう」児童が見られる。そのような児童には,教師が個別に課題発見のヒントを話したり,具体的に
課題を例示したりして支援や援助を行ってきた。
[児童の疑問をインターネットから知る]
調べ学習の第一歩である「課題発見」で支援・援助を行う時,児童がどのようなことに疑問を感じ,
何が分からないのかについて教師が知ることができれば更に良い支援・援助をすることができると考
える。そして,そのような事例を参照するにはインターネットが有効な場合がある。
調べ学習に役立つ Web ページは「教育情報ポータルサイト」だけでなく,書籍等にも数多く紹介さ
れている。それら Web ページには,児童・生徒向けのページを含むものが多数存在し,その中には「質
問コーナー」や「Q&A」等のページがあるものが少なくない。そこには児童からの質問が数多く寄
せられている。
例えば,図7は鎌倉時代に関することがまとめられた Web ページを用いた授業例である。小学生か
らの質問を受け付けるコーナーが存在し,
日本全国の多くの小学生からの質問に答えている。
内容は,
鎌倉時代についての事柄が8項目に分かれており各項目 10∼30 の質問と解答が載せられている。
表4
は小学生からの質問の一部である。これを見ると,児童が教科書を中心とした一次学習後に,どのよ
うなことに疑問を持っているのかが分かり,何に興味を示しているのかを知ることができる。
このように,児童からの質問を受け付
表4 鎌倉時代について小学生から寄せられた質問内容
けるページを見ることにより,調べ学習
[武士のこと関係]
を始める児童に対して,特に,課題が見
・源平の合戦のしかたと,なぜ源氏が勝ったのか教えてください。
付けられない児童等に対して,教師が気
・なぜ源氏は頼朝.実朝.頼家の 3 代で途切れてしまったのですか?
付きを促すための有効な手段となる。
[人物のこと関係]
このような小学生向けの Web ページは,
・北条政子はだれと結婚して子供は何人いたのでしょう?
社会科だけでなく,他教科・多方面にわ
・どうして頼朝は義経と手を結んで政治をしなかったのですか?
たって存在するので,教師が支援・援助
[庶民のこと関係]
の際にこれらの内容を参照し,児童一人
・鎌倉時代の農民は何を食べていたのですか?
一人の実態に合わせて活用することで,
・鎌倉時代の人は、どんな遊びをしていたのですか?
児童に効果的にアドバイスをしたり,深
[元冦のこと関係]
く考えさせたりすることができるのでは
・元が攻めてきた理由は何ですか?
ないかと考える。
・元寇のとき日本軍はどのくらいいたのですか?人数を教えてください。
[学習に深みを持たせるために]
Q&Aのページは,いずれも,
「課題発見」時以外に活用できる。調べ学習では,学習時間の許す限
り子供に活動させたいと考えるが,課題を解決する時に調べる内容が簡単な場合や課題解決に時間が
かからなかった場合等,そのままでは学習に深まりが見られない。その時,教師から質問を投げ掛け
ることで関連した新たな課題を生み,結果,調べる内容がさらに充実していくことが期待できる。こ
のような場合も,児童の考えが多く載せられている Web ページを参考にし,教師の支援・援助の中に
取り入れ,声掛けをしていくことで,児童の気付きが促され,結果的には児童の学習活動に深みを持
たせることができるのではないだろうか。
調べ学習に役立つ Web ページは,児童がインターネットで課題解決をするためにだけあるのではな
く,教師が児童の創意工夫を引き出すための支援・援助を行う手掛かりが隠されていると言える。
− 10 −
「教育の情報化」に関する一考察
社会科
第6学年
1 日本の歴史
源頼朝と武士の世の中
鎌倉時代について調べよう
東京書籍
8/10時間
主 な 学 習 活 動
1
前時までの学習を振り返り,鎌倉時代の人物や暮らし,文化について調べてみた
いこと(学習課題)を考える。
課題を見付けられない
[調べてみたいこと]
児童に対し,支援・援助
・頼朝の政治が平氏の政治とどう違うのか。
を行います。
・武士は弓矢のけいこ以外にどんな訓練をしていたの。
2
考えた学習課題について,どのような方法で調べていくのかを考え,発表する。
[調べる方法]
・・・資料集,児童書,百科事典,インターネット等
[まとめ方]
・・・・模造紙,TP シート,画用紙,プリント等
3
学習課題について調べる。
学習活動に深みを持たせる
よう,調べた内容に質問をし
たり,新たな課題に気付かせ
たりします。
全国の小学生からよせられた・・
日本全国の小・中・高生からの質問が数多く寄
せられています。これらは児童・生徒の興味・
関心の集りだと言えるでしょう。
このような Web
ページを参考にし,調べ学習での創意工夫を引
き出すための支援を行うことができます。
頼朝は鎌倉が好きだったのかなぁ?・・・
「KAMAKURA-BAKUFU」
(http://www.tamagawa.ac.jp/sisetu/kyouken/kamakura/(2002 年 2 月))
頼朝の地元なんじ
ゃないの?
図7 鎌倉時代に関することがまとめられた Web ページを用いた授業例
− 11 −
「教育の情報化」に関する一考察
活用法3
教材の作成にインターネットを活用し
教材の「共有化・蓄積」と「再構成・再利用」を図る
各教室・特別教室でのコンピュータ及びビデオプロジェクタの使い方としては様々な利用法が考え
られるが,
主に,
教師が画像や資料等の教材を児童に提示するというスタイルが中心となると考える。
コンピュータの画面上に表示されるオブジェクトがビデオプロジェクタを通してスクリーンに表示さ
れるのであるから,プレゼンテーションとしての効果が大きい。
教師が授業に向け,コンピュータを活用して教材を準備していく利点として次の5点があると考え
る。
(1) 短時間に多くの情報を手に入れることができる。
(2) 最新の情報を手に入れることができる。
(3) 児童が興味・関心を持つ情報を手に入れることができる。
(4) 資料の収集から提示という流れをマルチメディア化することができる。
(5) 教材の再利用・再構成ができる。
[情報の収集をインターネットで]
教師がコンピュータ及びビデオプロジェクタに
表5 資料の収集から提示までの流れ
よる教材提示を行いたいと考える時,一番時間が
かかるのが,教材の作成であると考える。それを
自ら作成するといった場合は別だが,インターネ
「教育情報ポータルサイト」でキーワード検索する。
検索したサイトを閲覧し,意図するコンテンツを探す。
↓
ットを活用して資料を収集し,コンピュータで加
工するといった方法では,資料の収集から授業で
の提示までを効率よく仕立てていくことができる。
資料の収集から教材の作成,そして授業での提
「お気に入り」へ登録。Web ページごとハードディスクに保
存する。
示という一連の流れを「探す」→「選ぶ」→「加
↓
工する」→「提示する」とし,その例を表5に示
す。大まかであるが,次のような手順となると考
えられる。
まず始めに,資料の収集であるが,インターネ
児童にわかりやすい形に加工・編集する。
校内にあるどのハードウェアを用いるかを考えに入れて加
工するとよい。
↓
ットでやみくもに探していても時間がかかり,結
局,意図したWebページやコンテンツを見付けるこ
とができないこともある。一般に用いられる検索
授業の効果的な場面で資料の提示を行う。
ページを利用して探していくという手段もあるが,
検索件数によっては,膨大な時間が掛かってしまったり,児童向けの内容でなかったりと,効率的と
は言えない。
このような情報の収集に向いているのが「教育情報ポータルサイト」や「児童向け検索サイト」で
ある。これらのサイトは学習内容に見合うページを参照したり,検索エンジンから検索したりするこ
とで短時間に目的のWebページやコンテンツを探し出すことができる。代表的な「教育情報ポータルサ
イト」「児童向け検索サイト」を表6に挙げた。
次に,それらのアドレスを控えたり(「お気に入り」に登録),直接コンピュータのハードディス
クに取り入れたりする。そして,収集した資料を児童に分かりやすい形に整えていく。加工や編集に
− 12 −
「教育の情報化」に関する一考察
表6 代表的な教育用ポータルサイトと児童向け検索サイト (2002 年 2 月現在)
[教育用ポータルサイト]
Eスクエア
http://www.edu.ipa.go.jp/E-square/
TOSSインターネットランド
http://www.tos-land.net/
教育情報ナショナルセンター
http://www.nicer.go.jp/
Elgreen
http://www.elgreen.com/top/top_index.html
春日井 教育ポータルサイト
http://www3.justnet.ne.jp/ m-aoki/kidsinfo/
All About Japan [教育・スクール]チャネル
http://allabout.co.jp/education/
インターエデュ・ドットコム
http://www.inter-edu.com/
[児童向け検索サイト]
キッズ goo
http://www.goo.wnn.or.jp/
こねっと博物館
http://www.wnn.or.jp/konet/index.html
Yahoo!きっず
http://kids.yahoo.co.jp
まねっと
http://www.jsdi.or.jp/ havc/manet/
学研キッズネット
http://kids.gakken.co.jp/
大阪書籍キッズサイト
http://www.osaka-shoseki.co.jp/kids/
子どもに役立つリンク集
http://www.human.gr.jp/cgi-bin/navi.cgi
は,OS付属のグラフィック編集ソフトやテキストエディタを使ったり,プレゼンテーションソフト等
を用いたりしてスライドショーを作成してもよい。こうして作成された教材を授業で活用していく。
[教材の「共有化と蓄積」そして「再構成・再利用」]
ここでは,教材をコンピュータと
ビデオプロジェクタを使って提示す
ることを扱ったが,教材の提示は紙
面への印刷等も有り得る。その様な
印刷物等も含め,授業で活用された
後の教材は,削除することなく新た
な活用を考えていくべきである。
図8は教師により制作された生活
科マップである。毎年,地域の建築
物や植物分布等を更新して活用して
いくことで,教材に盛り込まれてい
る内容が常に新しく,更に充実した
ものになっている。
コンピュータで扱うデジタルデー
タは,紙面に残されたものと違って色
あせることはない。そして,教材の加
工・再構成がコンピュータ上で何度で
も可能である。これらの特徴は「児童
図8 生活科マップの例
の実態に合わせた教材の作成」を考え
る上でも大きな利点となるのではないか。
このような利点を生かしていくために,教師の作成した教材の「共有化と蓄積」が非常に重要だと
いえる。特に,地域素材や学校独自の実践に基づく教材等は,ほかで入手できるものではないだけに
貴重である。
このように,教材の使用を一時の活用で終わらせてしまわずに,再構成しながら活用を図っていく
ことができるのは,コンピュータの利点であり,特徴であると考える。
− 13 −
「教育の情報化」に関する一考察
活用法4
各教室に設置されるコンピュータを
校内ネットワークで活かす
普段の学習でのコンピュータの利用としては,主に,教師が児童に映像(画像・音声)や資料を提
示するというスタイルが中心となると考える。その時,コンピュータは校内ネットワークを通じてイ
ンターネットが利用できるだけでなく,校内に各種サーバ9を設置することで様々な活用が可能となる。
つまり,以前まで用いられてきた視聴覚機器とは一線を画す活用の仕方が考えられる。
[ファイルサーバの活用]
学習の際に映像や資料を提示するために,今まではテレビ(VTR)
,OHP,実物投影機,CD プレーヤ
等が用いられてきた。確かに,コンピュータ及びハードウェアを利用することで,それらの一元化が
図られるが,
コンピュータの利用は以前まで用いられてきた視聴覚機器の代替えとなるだけではない。
ファイルサーバの最大の利点は,校内でコンテンツを共有できるところにある。コンピュータで扱
える学習教材を蓄積しておくことで,どの学級でも,教師が必要な時にいつでも利用できる。ファイ
ルサーバは言うなれば,教材の倉庫となるのである。
[Web サーバの活用]
Web サーバは,校内ネットワークという閉じられたネットワーク(イントラネット)の中に,校内
だけで見ることのできる Web ページを提供する。つまり,現在インターネット上で扱われているコミ
ュニケーションである「Web ページ」
「電子掲示板」
「チャット10」等を利用することができる。
これらによって,学級・学年単位,または児童一人一人による校内での情報発信及び意見交換が可
能となる。つまり,児童による学級・学年の枠を超えたコミュニケーション,人と人との交流をもた
らすことができるのではないか。
[授業での活用]
次ページに挙げた音楽科での事例では歌唱指導の際に,伴奏の音楽ファイルや歌詞ファイルがファ
イルサーバに置かれている。歌詞をスクリーンに映し出し,伴奏をコンピュータですることにより,
教師は児童に向かい合いながら,歌唱指導をすることができる。
また,本時の指導のために自作した教材等があれば,ファイルサーバに保存しておくことで,他の
教師が利用できるようになる。
学習の後半では,児童が歌う様子を録画している。録画された映像は学級内で鑑賞するだけではな
く,校内の Web ページや電子掲示板に送られ,他の学級・学年に発表することができる。1年間の学
習の中で,学級での取組を全校に向けて発表するという機会は限られている。だが,この方法であれ
ば機会を待つことなくいつでも実行でき,多くの児童や教師からの意見を聞くことができる。児童は
満足感が得られるだけでなく,新たな課題を見付け更に良いものにしていこうという意識が高まると
考える。
一方,発表を聞く相手側(他の学級の児童や教師)は,この学級の発表をどのような形で観賞する
ことになるのか。それは,学習中とは限らない。時間は休み時間,給食時間や放課後に,場所は教室
でも職員室でもコンピュータのある場所であれば,いつでもどこでも鑑賞でき,その場で掲示板等に
意見を書き込むことが可能なのである。
児童にとって,自分達の学習の成果を目にしてくれる相手や成果について意見してくれる者の存在
は,児童の学習に対する意欲付けとなり,とても貴重であると言える。
9
インターネットや LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)などのコンピューターネットワークで、主に情報を蓄積したり中継し
たりネットワークを管理するコンピュータ。サーバには「ファイルサーバ」
「Web サーバ」
「メールサーバ」等がある。LAN の場合は,
多人数で共有する情報をサーバに置いておく。そして必要な人が必要な情報を手元のパソコンに呼び出して使う。このとき,手元の
パソコンをクライアントという。クライアントは「要求する人」という意味で,サーバは「奉仕する人」という意味である。
10
コンピュータを用い複数の利用者がリアルタイムでメッセージを交換することができるサービス。
− 14 −
「教育の情報化」に関する一考察
音楽科
第6学年
5 みんなで あわせて
二つのふしをあわせよう(題材「はしの上で」)
教育芸術社
1/4時間
主 な 学 習 活 動
1
曲全体の感じをつかんで歌う。
・範唱を聴いたり,範唱に合わせて歌ったりする。
伴奏と歌詞はファイルサーバ
にあるものを利用する。
2
言葉遊びを楽しみながら歌う。
・
( )の中に合う言葉を工夫して,言葉遊びをして替え歌を作る。
3
歌唱に気をつけて,合唱する。
・柔らかい声で歌う。
・グループ別に( )の中の言葉を工夫し,発表し合う。 他の学級・学年の児童に聴い
・歌唱の様子を録画し,鑑賞する。
てもらえることを話し,意欲
的に課題に取り組ませる。
電子掲示板で呼び掛ける
ことで,上級生や下級生,
先生方からの,意見やアド
バイスを受けることがで
きます。
前を向いて,
ていねいに歌おう!
図9 校内ネットワーク用いた音楽科の授業例
− 15 −
「教育の情報化」に関する一考察
活用法5
テレビ会議を活用し児童の情報活用能力を育てる
調べ学習や教科等の発展的な学習で専門的な知識が必要となる場合,書籍や VTR 教材以外に,その
分野の専門家と直接対話することで,学習に大きな効果を上げる場合がある。また,遠方の自然や文
化,人々の暮らし等を学校間交流によって学ぶことから,大きな学習効果を得ることができる。
[テレビ会議を活用したコミュニケーション]
以前までは,学区内または近隣の学校・施設に人材を求め,学校独自の「ゲスト・ティーチャー」
等を充実させ活用を図ってきたが,インターネットを用いることで,自校からの距離を考慮すること
なく,遠方の人々とでも交流を持つことができるようになる。交流の手段としては,
「電子メール」等
のような文面でやりとりを行う方法から,現在では「テレビ会議」のように双方向でリアルタイムに
対話をしていく方法が用いられている。
[ゲスト・ティーチャーを迎えたテレビ会議の活用]
遠方の専門家をゲスト・ティーチャーとして活用した場合,
「テレビ会議システム」
「電子メール」
「Web ページ」という技術を複合的に活用することで,児童は学習内容を振り返り,更に専門家との
直接交流によってより深い学びを行うことができるのではないかと考える。例えば,一次学習のまと
めを Web ページとして校内ネットワーク上に立ち上げることで,児童は学習のまとめや振り返りとし
て利用できる。次に,一次学習から生まれた疑問を電子メールで専門家に質問をし,回答を得ること
で学習を進める。そして,テレビ会議を通してゲスト・ティーチャーと直接対話することで,学習活
動を更に深めていく。ここでの「児童」
「教師」
「ゲスト・ティーチャー」3者の情報通信ネットワー
ク上でのかかわりかたを図 10 に示した。
ゲスト・ティーチャー
電子メール等による
交渉・連絡
教 師
テレビ会議を用いた
遠隔学習
電子メールによる
質疑応答
学習をまとめた
Web ページを提供
児 童
図 10 情報通信ネットワークを通じた3者のかかわり方】
− 16 −
「教育の情報化」に関する一考察
[学校間におけるテレビ会議の活用]
学校間交流にテレビ会議を活用することで,情報通信ネットワークを介しているが,児童が異文化
や自然等を直接体験することに近い効果をもたらしている。その例として,宮城県築館町立玉沢小学
校の事例を取り上げたい。
玉沢小学校では研究主題を「『進んで活動し,自分の思いを表現する子どもの育成』∼情報通信ネ
ットワークを生かした交流学習を通して∼」とし,2000 年度から実践を行っている。研究紀要によれ
ば,情報通信ネットワークを生かした交流学習の在り方について次のように規定している(文献[3]
参照)
。
◎交流の形からみた二つのタイプ(どのような形で交流するか)
○「プロジェクト参加型」
:様々なプロジェクトに参加した複数の学校や不特定な相手と学習するもの。共通のテ
ーマで共同観察を行ったり,意見交換を行ったりするもので,多様な考えとの出会いと学習の場の広がりが期待
できる。
○「単独校との継続型」
:学習の相手を特定し,継続して行う学習。相手の存在を意識して学習を進めることがで
きるので,活動意欲が継続しやすく学習の深まりが期待できる。
◎交流する相手の種類からみた三つのタイプ(誰と交流するか)
○「世代間交流」
:幼稚園児やお年寄りなどと一緒に活動したり触れ合ったりするものと,学校段階を越えた異校
種間で交流するものである。それぞれの世代のものの見方や考え方を感じたり,相手に対する思いやりを持った
りすることが期待できる。
○「地域間交流」
:他地域の子供たちとそれぞれの特有な自然や文化,習慣などを互いに教え合ったり,共通テー
マに共同で取り組んだりする交流である。他地域との異同に気付いたり,自分たちの調べたことを伝える活動を
通して表現力の育成が期待できる。
○「異文化交流」
:国境を越えて外国の子供たちと交流するもので,異文化を深く理解し,異質なものへの寛容性
を高めたり,地球的視野で共通の問題を解決しようとする態度を持つことなどが期待できる。
また,2000 年度,2001 年度にわたって行われた交流学習は以下の通りである。
表7 築館町立玉沢小学校での交流学習
学年
単元名
交流の相手(プロジェクト名)
交流のタイプ
2000 年度
4
宮城探検隊(総合・社会)
和歌山県和歌山市立有功東小学校
∼宮城のステキを紹介しよう∼
単独校との継続型
地域間交流
5
学校紹介をしよう
気仙沼市立大島小学校
単独校との継続型
5
文明作り(総合)
アメリカ合衆国カリフォルニア州チャペラルミ
単独校との継続型
ドルスクール
異文化交流
6
未来の玉沢(総合)
宮城マルチメディアフェア
プロジェクト型
湿地に関する普及啓発・環境教育国際ワークシ
地域間交流
地域間交流
ョップ
2001 年度
3
ケナフと友達
全国発芽マップ
プロジェクト型
(総合)
香川県観音寺市立常磐小学校
単独校との継続型
おらほのふるさと
NHK たった一つの地球
プロジェクト型
(総合)
和歌山県和歌山市立有功東小学校
単独校との継続型
地域間交流
4
地域間交流
− 17 −
「教育の情報化」に関する一考察
5
ふるさとの沼
ガンかも類調査
プロジェクト型
・ふるさとの鳥
北海道美唄町立西美唄小学校
単独校との継続型
(総合)
秋田県十文字町立植田小学校
地域間交流
ふるさとに生きる
NHK お米クラブ
プロジェクト型
(総合)
宮城マルチメディアフェア
単独校との継続型
岡山県立精研高等学校
地域間交流
∼渡り鳥探検隊∼
6
世代間交流
特に,情報通信ネットワークを活用した交流学習について,
「パソコンやネットワークを介してはいるが,それはあくまでも手段・方法の一つであり,学習
の相手をしているのは人間であるということである。特に遠隔共同授業(テレビ会議)は,メデ
ィアを介していても,相手の表情,声のイントネーション,服装,雰囲気等々を,リアルタイム
に感じることができ,まさに間接体験ではなく直接体験であると考える。また,自分たちの世界
とは全く違う外の世界を直接知り,理解し,そして認めることができることで,いわゆる『異文
化理解』が育まれるものと考える」
と述べている。
2001 年度第3学年実施の「ケナフと友達」の実践では,学習後の効果について次のように述べられ
ている。
「学び」について
・遠く離れているという思いはあっても,同じ時間を共有することで親しみを持って話すことが
できた。クイズなどでは積極的に手を挙げ答えようと意欲的だった。
・自分たちがまとめ,発表したクイズや生長の様子をカメラの前に立ち,相手に伝える活動を通
して広がりを見せ,大きな満足感となったと思う。
・ケナフの生長の違いが新たな疑問となり,今後の活動の意欲付けとなった。
「情報通信ネットワークを生かした交流学習」について
・子供たちはまず気温の違いに驚いていた。こうした違いに気付き,自分たちの地域ことを振り
返って考えることが交流学習の大切な部分であると感じた。
・テレビ会議における交流学習は子どもたちに大きな感動を与え,「次回は画面の向こうにいる
友だちと話してみたい」,「相手の学校へ行ってみたい」という思いを抱いているようである。
そしてテレビ会議で得た体験は,次の活動に向けた意欲につながるものとして効果的であると
感じた。
この実践を通して,テレビ会議の特徴であるリアルタイムでの遠方とのやり取りの中で,児童は学
習への興味・関心を深め,活発な活動が行われている。交流校の児童と体験を共有することで,身の
回りの事象について見つめ直したり,共有した相手とのかかわりを深めたりすることにつながってい
る。
「もっと詳しく調べて教えてあげたい」と感じたり,
「本やインターネットで調べてみよう」と考
えたりし,伝える相手や情報交換できる相手がいることで,追求意欲の高まりが見られるのはすばら
しい効果である。また,
「相手に分かりやすく伝えたい」
「(学習内容だけでなく)相手のことを詳し
く知りたい」という気持ちが,大きな意欲付けとなっていることから,学校間交流は情報活用能力を
育成する魅力的な方法であるといえるのではないだろうか。
玉沢小学校に限らず,テレビ会議によるコミュニケーションを実践している先進校の多くが,児童
に見られる効果として,
「スクリーンの向こう側に映る相手を強く意識する」ことを挙げている。これ
は,テレビ会議が双方向の通信であるからだろう。既存のテレビ放送や VTR では成し得なかったもの
であり,インターネット上で映像・音声の双方向通信が可能になった今だからこそ実現できることな
のである。テレビ会議によるスクリーンの向こうの人間との対話は「直接体験」に成り得るのである。
− 18 −
「教育の情報化」に関する一考察
活用法6
児童の活動を Web ページに公開し,学校間交流の活用を図る
全国にある小学校の Web ページの中身には「学校紹介」
「保護者へ向けての活動報告」等があるが,
中でも注目したいのが「児童の活動の記録」である。学校により Web ページ上での呼称は様々である
が,それらの中には,自校の教育実践について詳しくまとめている学校がある。Web ページ上で実践
を公開するようになれば,同種の実践を行っている学校にとって貴重な情報源になるであろう。
[共同学習に見る学校間交流]
みやぎSWANには,
「サイバー図鑑」というマルチメディア・データベースが構築されている。こ
れは,身近な動植物について検索できるシステムである。
このデータベースは,みやぎSWAN接続校の児童・生徒が学校,学級,グループなどの単位で参
加し,構築している。いわば共同学習である。
[学校間交流の活用と情報発信の意義]
上記のような,共同学習から,教育活動で多くの可能性を導き出すことができる。その一例として,
「アルミ缶リサイクル」を通してもたらされた学校間交流を描いてみた(図 11)
。
「アルミ缶リサイク
ル」というキーワードから出会ったいくつかの小学校が「Web ページ」
「電子メール」
「テレビ会議」
等を複合的に活用し,特別活動に効果をもたらしている。それだけではない。他教科,他領域にもイ
ンターネットを媒介として用いることで,学習効果を上げている。
このように,自校の教育実践を Web ページとして公開していくことは,単に,他校が学習に利用で
きるだけではない。情報発信が学校間交流を生み,そこに新たな学校が参入して輪を作るのである。
各学校がそれぞれの教育実践を Web ページとして公開すること−情報発信すること−が,今までにな
い教育活動を生む第一歩と成り得るのである。
B小学校
学校間交流④
D小学校
学校間交流①
学校間交流③
アルミ缶リサイクル
Web リング
C小学校
A小学校
学校間交流②
図 11 アルミ缶リサイクルを実践とする小学校のつながり
− 19 −
「教育の情報化」に関する一考察
[学校間交流①]
児童によるアルミ缶リサイクルの実践を「Web ページ」として公開していたA小学校から,同じよ
うに実践を行っていたB小学校へ,
「電子メール」による交流の依頼が来た。これをきっかけに,両校
では児童が,学習の成果を「ビデオメール11」や「Web ページ」等によって互いに発表し合うようにな
り,
「テレビ会議」を用いることで,アルミ缶リサイクルに関する議題について話合いを行った。
学校同士が遠く離れていることから,互いの地域性を生かし,4・5年生の社会科の授業で,地域
の自然や人々の暮らしを学び合うこととなった。児童による「電子メール」でのやり取りから始まり,
「テレビ会議」を通して学習が深まり,遠方の児童との友情をはぐくむことができた。
[学校間交流②・③]
インターネットを通じて,C小学校から交流の申し込みが入った。C小学校でもアルミ缶リサイク
ルが盛んに行われており,集めたアルミ缶を運動会の種目に取り入れたり,児童集会でのゲームに利
用したりと,楽しみながらリサイクルを実践している。
C小学校はA・B小学校とのインターネットを媒介とした数回の交流学習の後,A小学校と距離が
近いことから,
6年生がA小学校を訪問することとなった。
リサイクルについての話合いを持ったり,
空き缶を使った遊びを教え合ったりという活動が行われた。後日,A・C両校の Web ページにはこの
ときの実践が紹介されることとなる。
[学校間交流④]
B小学校の「Web ページ」を見たD小学校からB小学校へ,交流学習を求める「電子メール」が届
いた。
「アルミ缶リサイクル Web リング」に加わりたいとの内容である。
5 研究のまとめと今後の課題
5.1 研究のまとめ
5.1.1 インターネットを利用した,情報通信ネットワークの活用について
「インターネットは世界最大の百科事典である」という言葉がある。だが,その巨大な百科事典か
ら目的とする情報を短時間に探し出すのには,多少の知識と経験が必要であるとも言われている。
教師がインターネットを用いて,目的とする情報を探し出し授業に生かしたいと考えるとき,いく
ら有益な情報があふれているとはいえ,入手に多くの時間と労力が割かれたのでは本末転倒である。
そこで,本稿では「教育情報ポータルサイト」を「教師のためのインターネットへの入り口」ととら
え,その有用性を述べた。「活用法1」に挙げた教育情報の検索例から分かる通り,教材研究のため
の資料や校務全般に至るまで,数え切れないほどの資料を入手することができる。
また,電子メールを利用した情報収集でのメーリングリストの活用は,教師相互の交流を表してい
る。県内でも幾つものメーリングリストが存在し,議論が盛んである。勤務校の枠を超えたコミュニ
ケーションが情報の流れを作り出している。
言うならば,
インターネット上のコミュニケーションは,
表面上はコンピュータ同士が接続されているものの,実際は人と人とが結ばれており,そこから教育
に役立つ情報を得ることができるのである。
このように,インターネットを通して得られた情報の多くは,授業へと生かされ,以前までは見ら
れなかった新しい授業を生むことが予想される。
「活用2」では,調べ学習での児童に対する教師の支援・援助の手掛かりをインターネットから得
ることについて述べた。児童向けのWebページを閲覧すると,大人が当然だと考えていたことに疑問を
11
電子メールの添付ファイルを活用する。電子メールを作成する際に,音声やグラフィック,映像などを添付ファイルとして添え
ることで,文字情報に加え,多彩な情報を伝えることができる。
− 20 −
「教育の情報化」に関する一考察
もっていることに気付いたり,児童が何について分からずにつまずいているのかが分かったりするこ
とがある。そこで,これらのWebページは,「活用2」のような利用の仕方以外にも,一次学習の際に
児童が興味・関心を持つ事柄を把握すること等に利用することも可能である。また,インターネット
上には,
児童が調べ学習をし,
まとめたものを公開しているWebページがあるので学習内容は違っても,
まとめ方の参考として活用することで児童が興味・関心を示し,まとめ方に工夫が見られるようにな
るのではないか。
「活用5」では,「テレビ会議」を活用することでの遠隔地の交流学習がもたらす教育的効果につ
いて述べた。交流学習に関しては,特に,学校間交流の意義を考えさせられた。「Eスクエア」には
学校間交流を希望している学校のリストのページが存在する。そのうち「国内交流」に寄せられてい
る各校の概要(交流目的)に「テーマは決めず・・」「まずは,学校や地域紹介から」「(テーマは
決めず)テレビ会議システムを活用した交流を・・」等という登録が幾つもなされているのには,驚
きを隠せずにはいられない。確かに,学校間交流が目新しい時期には,交流そのものやテレビ会議自
体に,非常に関心があるのは分かるが,そもそも学校間交流とは,双方に学習のメリットがあって初
めて成立するのではないのだろうか。そのような観点から,「活用6」では,総合的な学習の時間や
児童会活動等の児童の実践を通してつながり合う学校間交流を描き,小学校のWebページを「教育実践
の公開の場としてのWebページ」ととらえ,学校間交流の基盤となる可能性を示唆した。
5.1.2 校内ネットワークを利用した,情報通信ネットワークの活用について
活用例を提示するに当たり,教師が基礎的なコンピュータの扱い方を習得していることを前提にし
た。確かに,これからの教師は,文書作成を含めたコンピュータの基本的な操作や,校内に備え付け
られるハードウェアの扱い方を知ることが大切である。しかし,重要なのは教育的価値のあるコンテ
ンツをどのように授業に組入れていくかということなのではないだろうか。つまり,「機器の操作に
詳しくなければ授業で活用できない」わけではなく,授業の中で「どのようなことを行いたいか」と
いう「発想」が必要であると考える。例えば,「音楽科で鍵盤ハーモニカの運指の指導の際,教師の
指の動きをスクリーンに映したい」という発想があるとする。それを実践したところ,使いやすく教
育的効果があったとなれば,それは立派なコンピュータ活用となると考える。「発想」を大切にし実
践を重ねることで,以前までの視聴覚機器の代替えではない,コンピュータでなければできない活用
が生まれるのである。
校内ネットワークを利用したコンピュータの活用としては,「活用3」で取り上げた教材の「共有
化・蓄積」が効果的であると考える。「活用4」の「サーバの活用」とも関連するが,児童の実態に
即した教材を用いることが,その学校独自の教材の発端となるのではないか。仮に,家庭科の裁縫の
学習でエプロンを作るとする。その時,縫う際の手元の様子や仕立てる際のポイントを映像で保存し
ておけば,他の学級でも使用することができる。見せたいところを何度でも繰り返し映し出すことが
できるのがコンピュータの利点である。このような教材を,ファイルサーバに蓄積していき,他の学
級でも児童に提示できることがコンピュータ活用の一方法だと考える。ところで,ファイルサーバに
蓄積するものは自作の教材とは限らない。児童の作成したWebページや文書,デジタルカメラで撮影さ
れた画像でもよい。それらを分かりやすく分類・保管し活用する事で,児童の理解が深まり,また,
教師の教材研究に役立っていくのである。
本研究では「インターネット」および「校内ネットワーク」での情報通信ネットワークの活用につ
いて述べ,考察してきた。現在,コンピュータ及び周辺機器を普段の授業の中で活用することができ
るよう,教師のリテラシー向上が課題となっている。
− 21 −
「教育の情報化」に関する一考察
そこで,コンピュータを有効に活用していくためには,教師間の「コンピュータ活用に関するネッ
トワーク」が必要であると考える。普段の授業の中で,コンピュータをどのように使用したときに児
童の理解が深まったのかを考えるとき,「どのように」という部分は,機器の活用,教材の善し悪し,
提示の仕方等様々である。それらを一部の教師の知識とせずに,互いに伝え合うことが大切なのでは
ないだろうか。そうして初めて,どの学級でもコンピュータが活用されていくと考える。
IT等の新しい技術や手法を授業に取り入れれば,初めはその目新しさから,児童は,コンピュータ
を取り入れた授業に興味・関心を持つであろう。だが,児童がそれらに慣れてしまうことで教育的効
果がなくなるのでは,正しい活用法とは言えないのではないか。児童の論理的な思考力・想像力・表
現力等を高めるようなコンピュータの活用法が真に望まれているのだと考える。
5.2 今後の課題
「ミレニアム・プロジェクト『教育の情報化』」が進み,コンピュータやインターネットの活用促
進が図られている。来るべき新時代に向け,今後も情報通信ネットワークの活用について探っていく
必要がある。
(1) 作成した活用事例は幾つかの分野においてのものである。コンピュータの活用を「全ての教室」
の「全ての授業」で,という趣旨からすると,今後は多くの教科,多くの分野でのコンピュータの活
用について考えていきたい。
(2) ITは日々進歩し,常に新しい技術が生まれている。この研究を進めている間にさえ,多くの新し
い技術を知ることとなった。授業でのコンピュータの活用は,これまでにない技術の導入により,研
究で述べた活用法とは少なからず違った方向に進展することが十分に予想される。今後は,最新の技
術に常に目を向け,児童の学習におけるコンピュータの役割について考え,その活用法を探っていき
たい。
主な参考文献
[1]文部省:
「小学校学習指導要領」
[2]情報処理振興事業協会:
「インターネット教育利用の新しい道」
[3]築館町立玉沢小学校:
「平成 13 年度 自主公開研究会資料」
[4]井上伸雄:
「通信の最新常識」
日本実業出版
[5]コンピュータ教育開発センター:
「インターネット活用ガイドブック」
[6]コンピュータ教育開発センター:
「情報モラル指導事例集」
[7]阿部浩二:
「インターネット用語解説」
ブティック社
[8]鈴木敏恵:
「マルチメディアで学校革命」
小学館
[9]授業研究 21 2月号:
「インターネット活用で授業が変わる」
明治図書
[10]宮城県大河原商業高等学校:
「光ファイバー網による学校ネットワーク活用研究開発事業実践報告」
[11]宮城県泉高等学校:
「ネットワーク活用方法研究開発事業研究報告」
[12]日本教育工学振興会:
「情報教育の充実をめざして」
[13]日本教育工学振興会:
「コンピュータを教育に活かす」
[14]日本教育工学振興会:
「第 10 回海外調査‐アメリカ・カナダ教育事情視察報告書‐」
[15]日本教育工学振興会:
「第2回教育用コンピュータに関するアンケート調査」
[16]文部省:
「みんなが生き生き総合的な学習」
[17]坂手康志:
「Eラーニング 教育のインターネット革命」
東洋経済新報社
[18]先進学習基盤協議会:
「eラーニング白書」
オーム社
[19]通産省機会情報産業局情報処理振興課:「学びのデジタル革命」
学研
[20]田中博之:
「ヒューマンネットワークをひらく情報教育」
高陵社書店
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