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Oracle Fusion Applications
ViewPoint Oracle Fusion Applicationsの全容 -Oracle社の次世代企業アプリケーションの概要と特長- #V11040025 本レポートは『ITR Review』2010年12月号 に掲載されたものである ITR View Point Oracle Fusion Applicationsの全容 - Oracle社の次世代企業アプリケーションの概要と特長 - #R-210123 2010年9月19日から23日までサンフランシスコで開催されたOracle社最大のイベントである OOW 2010において、Fusion Applicationsの全容が明らかとなった。Fusion Applicationsは、2011 年第1四半期の正式出荷に向け最終的なテスト/品質検証が進められている。Oracle社のアプリ ケーションを利用する企業だけでなく、基幹業務システムの導入を検討する企業が注目すべき点 について述べる。 Fusion Applications Ver1の公開 Oracle社は2005年にFusion Applicationsの開発を発表しており、当初 は2008年の正式出荷を目指すとしていた。しかし、2008年に一部の限定 機能が出荷されたものの、企業アプリケーションの全体像ならびに具体 的な機能群についてはベールに隠されたままであった。E-Business Suiteに加えて、買収したPeopleSoft、JD Edwards、Siebelなどの製品 を単一の新製品に融合するという前代未聞の取り組みは想定以上の難産 となり、当初の予定を2年超過することとなったが、ついにOOW 2010 においてその全容が明らかとなった。しかも、一気に100モジュールを超 えるコンポーネントから成るFusion Applications Ver1として発表され た こ と は 大 き な 驚 き を も っ て 迎 え ら れ た 。 2009 年 に は Fusion Applicationsに関する大きな発表もなく、一部にはProject Fusionが空手 形に終わるのではないかとの憶測も流れていたからである。 OOW会場内のExhibition Centerでは、Fusion Applicationsのほとん どの機能が公開されており実機で操作もできるようになっていた。また、 E-Business Suite、JD Edwards、PeopleSoft、Siebel、Primavera、 Hyperionなどの機能拡張開発も継続しており、これらの製品とFusion ApplicationsはGUI上の見た目ではほとんど区別がつかない状態で仕上 げられている。この点はOracle社の既存アプリケーションのユーザーに とって違和感なく受け止められるだろう。Fusion ApplicationsはOracle 社が保有するアプリケーション群から優れた機能や特性を抽出して、新 たなSOAベースの体系に沿って融合させつつ、Fusion Middlewareの基 2010 ©ITR Corporation. All Rights Reserved. 1 ITR ViewPoint 盤上で拡張性と自由度の高い統合と再編を可能とする最新のアプリケー ションである。 そして、E-Business Suite、PeopleSoft、JD Edwards、Siebelなどの 既存アプリケーションの開発を並行して行いながらFusion Applications のコンポーネントとして再利用したという点においては、世界最大規模 のSOA事例としても評価できる。 現時点のFusion Applications Ver1では109コンポーネントが7つの機 Fusion Applications の概要 能群(Financial Management、HCM:Human Capital Management、 SCM:Supply Chain Management、PPM:Project Portfolio Management、 Procurement、CRM:Customer Relationship Management、GRC: Governance, Risk & Compliance)で構成されており(図1)、2011年に はVer1.xへの機能拡張も計画されている。 図1.Fusion Applications Ver1の概要 Oracle Fusion Human Capital Management Oracle Fusion Financial Management Oracle Fusion Supply Chain Management General Ledger Accounts Payable Asset Management Global Human Resources Workforce Lifecycle Management Benefits Product Master Data Management Distributed Order Orchestration Global Order Promising Payments & Collections Accounts Receivable Cash & Expense Management Compensation Management Talent Review Performance & Goal Mgmt Inventory Management Cost Management Shipping & Receiving Global Payroll Network @ Work KPIs, Dashboards, Extensibility Common Modules KPIs, Dashboards, & Extensibility FW Oracle Fusion Project Portfolio Management KPIs, Dashboards, & Extensibility FW Oracle Fusion Customer Relationship Mgmt Oracle Fusion Procurement Project Costing Project Billing Project Performance Reporting Purchasing Self-service Procurement Sourcing Customer Master Sales Marketing Project Control Project Integration Gateway Project Contracts Procurement Contracts Supplier Portal Spend & Performance Analysis Incentive Compensation Mobile & Outlook Integration Territory & Quota Mgmt KPIs, Dashboards, & Extensibility FW KPIs, Dashboards, & Extensibility FW Oracle Fusion Governance, Risk & Compliance Financial Compliance Issue & Risk Manager KPIs, Dashboards, & Extensibility FW Access Controls Transaction Controls Configuration Controls KPIs, Dashboards, & Extensibility FW 出典:Oracle社 Oracle社が既存アプリケーションの棚卸しを行った結果、Financial ManagementとProcurementはE-Business Suite、HCMはPeopleSoft、 PLMおよびPPMはPrimavera、CRMはSiebelをそれぞれ中核に、そして SCMはJD Edwards、E-Business SuiteおよびVCP(Oracle Value Chain Planning Suite:SCMダッシュボード/需要管理/生販計画/供給計画) を組み合わせたものを中核に、Fusion Applicationsのコンポーネントと してサービス化したものと、ITRでは見ている。 2 2010 ©ITR Corporation. All Rights Reserved. ITR ViewPoint Fusion Applications の特長 Fusion Applicationsは多くの特長をもつが、主要なポイントは以下の 通りである。 ①100%オープン・スタンダード:常にオープンな技術を利用し標準性の 高いミドルウェアを提供する同社の姿勢は従来から高く評価されてい たが、Fusion ApplicationsはJavaによりソースコード・レベルで100% 書き直されている。 ②モジュラー化:サービス化された各コンポーネントは完全に独立して おり、例えば、SCMの「Distribute Order Orchestration」だけを単 独で導入できる。コンポーネントの追加や差し替えが必要であればビ ルディング・ブロックのように容易に拡張できる。 ③エンベデッドBI:BIが画面/業務プロセスに埋め込まれており、トラ ンザクション処理で必要なアナリティクス・データを統計的かつグラ フ ィ カ ル に 参 照 で き る 。 詳 細 な 分 析 が 必 要 で あ れ ば 、 Fusion MiddlewareのBI機能をフル活用して、シームレスに原始データに遡る ことができる。 ④Web 2.0コラボレーション:企業のワークスタイルが多様化するに伴い、 ルーチン業務を効率化するアプリケーションだけでなく、グループウェ アやSNSの機能も統一されたワークプレイスから提供する。これによ り、経営から現場の各層において迅速な意思決定支援を可能とする。 ⑤SOA:Fusion Applicationsは、SOAに基づき単一のデータ/業務プロ セスモデルで設計され、各コンポーネントの独立性と整合性が完全に 保証されている。さらに、企業固有の追加開発も標準コンポーネント のExtensionとして独立管理されるため、アップグレードに影響を与え ない。 また、Fusion Applicationsのモジュール間、Fusion Applicationsと Oracle社の既存アプリケーション、または他社のアプリケーションや レガシーとのシステム連携はFusion Middlewareのワークフロー、 BPEL、ルールエンジンといったBPMベースの連携ソリューションや、 ODI(Oracle Data Integrator) 、OGG(Oracle GoldenGate)といった データ統合ソリューションがあらかじめ設計段階から組み込まれてお り、インタフェースなどの追加開発が極小化できるよう考慮されている。 ⑥オンプレミス/クラウド:オンプレミスでもクラウドでも利用できる ことを前提として設計されている。100%新規に書き直された製品であ 2010 ©ITR Corporation. All Rights Reserved. 3 ITR ViewPoint り、ソースコード・レベルでも、Salesforce.comにおいて実証済みの データベース・レベルの機能でも完全なマルチテナンシーが実現され ている。 Fusion Applicationsは、E-Business Suiteのモジュラー性の高さやフ レックス・フィールドに代表される拡張性の高さ、PeopleSoftやSiebel の開発ツールにおける生産性と柔軟性の高さとデータモデルの完成度な どを活かしつつ、新たなアプリケーションの基盤として融合することに 成功している。個々の機能としても、買収で獲得したアプリケーション を含めて、最も優れた機能を抽出/再編成してモジュラー化しつつ単一 のデータモデル上で独立したコンポーネントとして利用できる。さらに、 コンポーネントへの追加開発がアップグレードでも継承できる点や、 Fusion Middlewareのシステム連携やデータ統合のソリューションによ り、業務プロセス設計の自由度と柔軟性を向上できる点は高く評価できる。 Fusion Applicationsは、いわばSOAの理想を実現した製品であり、現 時点の最新のソースコードから成るエンタープライズ・アプリケーショ ンである。競合他社が既存のソースコードの延命策やサービス化された コンポーネントの開発に手間取ったり不完全さを残したりしている状況 に対して、大きく先行したといえよう。さらに、OOW 2010で同時に発 表 さ れ た Fusion Middleware の ア プ ラ イ ア ン ス で あ る Exalogic や Exadata X2-8と組み合わせたソリューションは、メインフレームに残る 大規模OLTPのリプレースにおける費用対効果の向上や、従来であれば複 雑なインテグレーションと長い導入期間を必要としたプロジェクトの負 担を軽減する可能性がある。 Fusion Applicationsはまだ進化の過程にあり、国内正式出荷時期の詳 細やライセンス体系およびSIのサポート体制など不明な点が残っている。 しかし、Oracle社がアプリケーション統合の技術で大きく進化し、今後 新たにアプリケーションを買収しても、Fusion Applicationsの枠組み上 に迅速に組み込むことができるようになったことは確かといえよう。 提言 Fusion Applicationsは、現時点で最新のエンタープライズ・アプリケー ションであり、従来は難しかった課題や理想像の実現において大きなブ レイクスルーを達成したといえよう。国内正式出荷やパートナーの体制 など克服すべき課題も多いが、今後の進展に注目すべきである。 浅利 浩一 4 2010 ©ITR Corporation. All Rights Reserved. 株式会社アイ・ティ・アール 〒160-0023 東京都新宿区西新宿3-8-3 新都心丸善ビル3F TEL: 03-5304-1301 FAX: 03-5304-1320 http://www.itr.co.jp/ ITR ViewPoint #V 11040025 2011年4月発行 発行所 株式会社アイ・ティ・アール 本レポートに記載された全ての内容については、株式会 社アイ・ティ・アールが著作権を含めた一切の権利を所 有します。 本レポートに記載された一切の文章、図表のいかなる部 分も当社の書面による許可なしに、転載、複製、電子媒 体への入力などを禁じます。無断転載、無断複製、無許 可による電子媒体への入力は損害賠償、著作権法上の 罰則対象となります。 本レポートは、当社が信頼できると判断した情報源から の情報に基づいて作成されていますが、その情報の正確 性、完全性を保証するものではありません。本レポートに は、当社がその顧客から非公開情報として入手したもの は一切含みません。 また、本レポートに記載された当社の意見、予測等は、本 誌作成時点における当社の判断によるもので、今後、予 告なしに変更されることがあります。 本レポートに記載されている会社名、商品名などは各社 の商標または登録商標です。