Comments
Description
Transcript
シンポジウム9 - 池田バスキュラーアクセス 透析・内科クリニック
第60回日本透析医学会 学術集会・総会 シンポジウム9 2015年6月27日(土) 14:00~16:30 第5会場(パシフィコ横浜) 演題番号:SY-09-6 再狭窄病変への挑戦 PTAの方法と開存率 医療法人 心信会 池田バスキュラーアクセス・透析・内科 池田 潔 はじめに PTAの拡張方法において、高圧拡張では完全拡張した症例と不完全拡張の症 例において開存成績に有意な差がない。 狭窄部位の治療に対して既存のデバイスでは、 ①内膜の部分的切れ込みを作った拡張 ②内膜を断裂させた高度の拡張 ③内膜の炎症を抑制した物質の投与後の拡張 となっている。 再狭窄の原因は内膜のリモデリングなどが知られている。 生理的動脈血流を変化させる実験手法として、 1.動静脈吻合 2.動脈狭窄、結紮の2種類が知られている。 約20年にわたり、秋田大学医学部2病理(高橋正人先生) では、血流変化に対する動脈リモデリングの解析を目的に 動物(主にウサギ)の総頸動脈と外頸静脈にAVFを作成し 検討を行ってきた。 動物実験モデルにて、低圧拡張と高圧単 回拡張の違いを病理的検証するために検 証実験を依頼した。 AVF後の静脈 内膜肥厚が生じるが、動脈のそれとは形態が、異なる。 イヌAVF3年、静脈閉塞部 静脈閉塞部の内膜肥厚部分には、 外膜側から中膜を貫いたと思われる 血管成分*が豊富に認められる。 矢印は内膜肥厚部。 * * * * ウサギAVF後、静脈の狭窄部、内膜肥厚がみられ、内膜肥厚部には血管が豊富である。 イヌ静脈閉塞部と同様の所見である。 吻合部に形成された瘤の断面 Stenosis Anastomosis 中膜 拡張実験② 非手術コントロールのうさぎ頸静脈(2mm弱)にコンクエスト7mm 30atmで7分拡張 拡張実験② 白ウサギにAVFを作成、作成時に静脈に狭窄を作成、狭窄を作成した4週間後 にPTA、その直後に屠殺した。 対象・方法① 実験モデル、日本白ウサギ♂(3-4kg)(n=4)。 池田式(n=2)、高圧単回拡張(n=2) AVF作成 + 頭側:結紮 心臓側:糸をかけて縫合 狭窄作成 4週間 約33%狭窄(8mm以下)作成 PTA 8mmバルーンで拡張 (30atmで1~2分) 12mmバルーンで拡張 (毎秒2atmの速度で30atmまで) 屠殺 ----- ----------------------- 1. AVFを作成、静脈の頭側は結紮、心臓側は糸をかけて縫合し、約33%狭窄(8mm以下)を作成。 2. 4週間後にPTA、8mmのバルーンで30atm・1~2分高圧単回拡張を施行。池田式で拡張を施行。 拡張が著明(12mm以上)で、コンクエスト12mmバルーンで毎秒2atmの速度で30atmまで拡張。 30秒固定後一気にデフレート:高圧単回拡張を施行。池田式で拡張を施行。 3. その直後に屠殺、PFAで灌流固定。 糸で狭窄を作成 4週間後 8mm AVF作成と同時に静脈を縫縮し狭窄を作成、4週後のうさぎ 12mm 高圧単回拡張 コンクエスト8mm 30atm 、30秒拡張 池田式 コンクエスト12mmバルーンで毎秒2atmの速度で30atmまで拡張。 <高圧単回拡張> <池田式> 結果① 血流量の比較 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 高 圧 低 圧 14-18 14-23 14-19 14-24 AVF作成前 28 35 32 34 AVF作成後 80 0 (spasm) 215 90 4w後屠殺時 250 300 410 234 高圧単回拡張;30atm 高圧単回拡張;30atm 池田式 池田式 高圧単回拡張 14-18_5EM染色×1.25倍 14-18_5.2EM染色×20倍 破裂寸前 14-23_13EM染色×1.25倍 中膜の離開 14-23_13(2)EM染色×20倍 高圧単回拡張 14-18_5HE染色×1.25倍 14-18_5.2HE染色×20倍 中膜の離開 14-23_13HE染色×1.25倍 14-23_13(2)HE染色×20倍 フィブリン血栓 の付着 破裂寸前 池田式 14-19_6EM染色×1.25倍 14-19_6EM染色×20倍 14-24_12EM染色×1.25倍 14-24_11EM染色×20倍 池田式 14-19_8HE染色×1.25倍 14-19_6HE染色×20倍 14-24_11HE染色×1.25倍 14-24_10HE染色×20倍 結果と問題点 1) 2mmであった静脈は、動脈との吻合4週間で12mmに 拡張していた。 2) 拡張後すぐの状態での変化であり遠隔での状態を見て いなかった。 3) 高圧単回拡張では、内膜の肥厚と断裂が確認できた。 ①吻合後2週間してから、狭窄を作製した。 ②狭窄に対して、拡張術後4週間おいて病理的検討を行うこと とした。 拡張実験③ 最初の実験では、白ウサギにAVFを作成、その4週間後に静脈に狭窄を作成、 その直後に屠殺した。 しかし、狭窄作成に4週間待つと拡張が大きくなりすぎるため、2週間に変更し た。また、PTA後の経過を観察するため、狭窄を作成した2週間後にPTA、その4 週間後に屠殺した。 対象・方法② 実験モデル、日本白ウサギ♂(3-4kg)(n=6)。 池田式(n=3)、高圧単回拡張(n=3) AVF作成 2週間 狭窄作成 右総頚動脈と右外頸静脈 5mm杉田クリップ使用 に側々吻合 約65%狭窄作成 4週間 クリップ解除 4週間 PTA 10mmバルーンで拡張 (20atmで30秒) ----- ----------------------- 1. 2. 3. 4. 5. 6. 右総頚動脈と右外頸静脈に側々吻合で動静脈吻合を作成。 2週後静脈心臓側に5mmの杉田クリップで狭窄を作成。 杉田クリップは内径3.5mmを使用し、約65%狭窄を作成。 4週後杉田クリップを解除。 コンクエスト10mmバルーンで20atm・30秒高圧単回拡張を施行。池田式で拡張を施行。 PTA4週後屠殺、PFAで灌流固定。 屠殺 AVF作成 動脈 吻合部 静脈 AVF作成2週間後 吻合部 径10mmに拡大した静脈 杉田クリップで狭窄を作成 約65%狭窄を作成 杉田クリップで狭窄を作成後4週後に解除 10mmバルーンで拡張 コンクエスト <高圧単回拡張> <池田式> AVF作成後、杉田クリップをV側の 心臓側にクリップして2週間おく クリップから4週間後にPTA施行 4週間後に屠殺 結果② 血流量の比較 800 700 600 500 400 300 200 完全閉塞 100 0 高 圧 低 圧 15-02 15-13 15-20 15-01 15-12 15-19 AVF作成前 AVF作成後 2w後狭窄前 41 32 40 37 30 46 208 105 126 128 98 115 277 358 199 256 212 252 2w+4w後クリッ 2w+4w+4w屠 2w+4w後拡張後 プ解除前 殺時 139 274 280 510 335 40 182 105 255 256 225 285 685 290 462 314 500 高圧単回拡張 15-02_9EM染色×1.25倍 15-02_9EM染色×20倍 15-13_9EM染色×1.25倍 15-13_9EM染色×20倍 内膜肥厚 高圧単回拡張 15-02_9HE染色×1.25倍 15-02_9HE染色×20倍 内膜肥厚 平滑筋細胞の浸潤 内膜肥厚 15-13_9HE染色×1.25倍 15-13_9HE染色×20倍 内膜肥厚 池田式 15-01_7EM染色×1.25倍 15-01_7EM染色×20倍 15-12_10EM染色×1.25倍 15-12_10EM染色×20倍 池田式 15-01_7HE染色×1.25倍 15-01_7HE染色×20倍 15-12_10HE染色×1.25倍 15-12_10HE染色×20倍 結果2 1) 高圧単回拡張群では、拡張術後の4週間で1例が閉塞 していた。 2) 高圧単回拡張群では、明らかな内膜肥厚と平滑筋細胞 の浸潤を認めた。 3) 池田式では、内膜肥厚は高圧単回拡張と比べて明らか に経度であった。 4) 低圧からの拡張であれば、20気圧から30気圧まで拡 張で加圧しても、内膜は経度の肥厚で断裂することなく拡 張されていた。 15-01_7EM染色×1.25倍 新生血管 15-01_7EM染色×20倍 拡大 目的 内膜面の断裂を抑制し、緩徐な内膜の伸展による低圧頻回拡張法を行ってデ バイスによる有意差と開存成績を検討した。 対象・方法 2013年1月1日から2015年5月15日に行ったAVF狭窄604例、拡張方法はデバイ スの normal pressure 以下の加圧まで1~2気圧の低圧から開始し1~2気圧ごと に徐々に拡張行う。 各加圧では30~60秒ごとに加圧と減圧を繰り返す。完全拡張に近い拡張が得ら れるまで最終加圧では時間を延長して行う。 Normal pressure 以下でも完全拡張が得られた時点で加圧は終了する。 Elastic recoil 症例は最終加圧で5~10分間行う。 結果 開存期間の比較 (%) 100 90 ―A群:Super-non-compliance (n:339) ―B群:Others (n:488) 80 平均加圧 平均 バルーンサイズ A 8.39±3.31 5.33±0.74 B 7.02±2.54 4.66±0.74 70 開 60 存 50 率 40 〔mean±SD〕 30 20 (n.s.) 10 0 0 200 400 開存期間 600 800 1000 (日) 開存期間の比較 (%) 100 90 ―A群:Super-non-compliance (n:339) ―B群:Others over 8atm. (n:213) 80 平均加圧 平均 バルーンサイズ A 8.39±3.31 5.33±0.74 B 9.27±2.01 4.70±0.71 70 開 60 存 50 率 40 〔mean±SD〕 30 20 10 (p<0.01) 0 0 200 400 開存期間 600 800 1000 (日) 開存期間の比較(AVFのみ) (%) 100 ―A群:Super-non-compliance (n:188) ―B群:Others over 8atm. (n:186) 90 80 平均加圧 平均 バルーンサイズ A 8.58±3.62 5±0.64 B 9.31±2.09 4.53±0.58 70 開 60 存 50 率 40 〔mean±SD〕 30 20 10 (n.s.) 0 0 200 400 開存期間 600 800 1000 (日) 図29-5 AVF群の比較 (Super-non-compliance) (%) 100 90 80 70 開 60 存 50 率 40 30 20 10 0 0 ―A群:完全拡張 (n:64) ―B群:非完全拡張 (n:54) 平均加圧 平均 バルーンサイズ A 8.47±4.26 4.52±0.50 B 7.89±3.48 4.51±0.50 〔mean±SD〕 (※0.149) 200 400 600 開存期間 800 1000 1200 (日) まとめ 1) 動物実験で、低圧からの頻回拡張(池田式)と高圧単回拡張の組織学 的考察を行った。 2) 高圧単回拡張群では、1例で4週間の間に閉塞を認め組織学的に著し い内膜肥厚と血栓の付着を認めた。 3) 低圧から頻回拡張では、20気圧の加圧にても内膜肥厚は経度で、平 滑筋の侵入は認めなかった。 今後の方針 低圧からの拡張は、高圧領域にゆっくり達することで 組織学的に有効な拡張方法であることが示唆された。 開存期間を延長するために完全拡張考慮する場合 にも、低圧からの開始が重要だと考えられた。