Comments
Transcript
Structure Painting - 一般社団法人日本橋梁鋼構造物塗装技術協会 JASP
Structure Painting Vol.44 橋梁・鋼構造物塗装 2016年9月 CONTENTS page ●巻頭言 夢のある鋼橋の塗替え塗装……………………………………………並川 賢治……… 1 ●技術報告 アーチ橋上部塗替え塗装における新しい素地調整 ……………………………………………………………尾㟢 清志・村田 雄典……… 2 ブラスト素地調整における残存塩分除去対策の事例紹介 ……………中島 和俊・落合 盛人・五島 孝行・安波 博道・中野 正則……… 9 省工程防食材料の比較検証試験 ……………………………………………石橋 正博・田中 誠・政門 哲夫………16 ●技術雑感 アメリカのブラスト事情、そして日本の現状 ……………………………………………………………………………小寺 健史………22 ●特別寄稿 鋼鉄道橋の塗装概要と塗装工事について ……………………………………………………………………………坂本 達朗………26 ●よもやま話 苦い想い出………………………………………………………………津野 和男………32 橋塗協だより………………………………………………………………………………35 第 19 回技術発表大会報告… ……………………………………………………………38 会員名簿……………………………………………………………………………………39 広告…………………………………………………………………………………………42 「Structure Painting」がホームページでカラー閲覧できます。 Vol.35, No.1(平成 19 年3月発行)以降の「Structure Painting ─橋梁・鋼構造物塗装─」が 当協会ホームページ(http://www.jasp.or.jp)で閲覧できます。 巻 頭 言 夢のある鋼橋の塗替え塗装 首都高速道路株式会社 技術部長 並川賢治 メンテナンス元年と位置づけられた 2013 年から 4 年 目を向かえ、社会インフラの維持管理技術に関する動 向から目が離せなくなった。1980 年代初頭に「荒廃す るアメリカ」として伝えられた橋梁の老朽化問題や 2007 年にミネソタ州で生じた橋桁落下事故は、日本国 内に社会インフラに対する警鐘を鳴らした。着々と進 められた施策により構造物の維持管理の重要性が全国 的に意識され始めたのは、2008 年に国土交通省が定め た地方特定道路整備計画に基づき、全国の自治体が管 理する道路構造物の状態を把握し始めた頃からと思わ れる。2013 年 6 月の閣議決定による戦略的イノベーショ ン創造プログラム(SIP)の創設、2014 年 4 月の高速 道路会社による大規模更新・修繕(特定更新等工事) 事業の開始、省令による 5 年に一度の近接目視による 定期点検の義務付け、インフラメンテナンス国民会議 など、国が推し進める構造物を守ろうという働きかけ により、技術者のみならず一般の方々に社会インフラ の維持管理に関する重要性が認識され始めたことは喜 ばしい。 社会インフラの中で鋼構造物を代表する鋼橋は、軽 量で強度が強いことから、主に長大橋や都市部におい て広く採用されてきた。その鋼橋の耐久性に関わる主 たる課題は疲労と腐食であり、これまでに様々な対策・ 改善・研究が行われている。疲労き裂は、鋼材表面の みならず溶接ルートや内部欠陥から発生するために点 検・検査・モニタリングから評価に至るまで幅広く研 究がなされ、放置すると突然に落橋する可能性がある ことから補修・補強工事は優先的に行われている。一方、 腐食対策として鋼橋塗装は、フッ素樹脂塗料や高塗着 スプレー塗装工法をはじめとした基幹的な技術開発が 行われ、防汚・省工程・簡易・環境・長寿命などの観 点から研究は行われている。しかし、塗装の状態を把 握するための点検・調査が目視で比較的容易に行われ ていること、塗装の劣化が構造物の不具合に直ちに結 びつかないことから、塗替え塗装の研究や工事に割り 当てられる財源・人的資源は必ずしも多くはない。さ らに、鋼橋の塗替え塗装は、設置に労力を要する吊り 足場が必要なことから先送りされやすく、汚れや剥離・ 腐食などにより状態の良くない鋼橋があちらこちらに 目立ち始めたように感じる。鋼橋塗装は、外観を美し く保つ機能を併せ持っており、鋼橋の耐久性と景観を 維持するために、良好な塗装の状態を保つ意義は大き い。 塗装は、白亜化・塗装の消耗・ふくれ・割れ・剥離 などの経年劣化が避けらず、定期的に塗替えが必要で ある。しかし、狭隘で閉鎖された吊り足場内の塗替え 塗装は、古くから同様の手順・方法で行われており、 施工能率の向上が思うように進まない。パネル足場の 採用や照明器具・塗装シートの性能向上など、機器性 能の僅かな向上では補えない施工におけるハンデ キャップが塗替え塗装の現場には存在している。人体 に有害な PCB や鉛が塗料に含有されていることが問題 視され始めてからは、特に都市部の現場において沿道 の環境保全のために足場の密閉度は高くなった。その 結果、労働者の安全確保として着用するマスクや作業 服により身動きが取りづらくなるなど、作業環境はよ り悪化している。塗料の改良が進んでも、現場の飛来 塩分量や湿度などの状態により、初期不良の発生確率 が高くなることは昔から変わらない。このように、新 旧交えた問題が山積する塗替え塗装の現状を改善する ことは、良好な塗装の状態を保つために必要不可欠で ある。 水や砂塵が溜まり易く腐食環境に陥りやすい橋桁端 部などに、塩分の遮断効果が高い金属溶射が、塗装に 代わり使用されるようになってきた。弱部に優れた防 錆材料を用いるのは一つの方法であるが、弱部の程度 に応じた対処方法として塗替え塗装の可能性を選択肢 として残しておきたい。鋼橋には、腐食環境ではない が膜厚確保の難しい弱部として、ガセットなどの二次 部材取付け部やボルト添接部が数多く存在する。この ような弱部を部分的に塗替えられる塗装ロボットが開 発できれば、その効果として健全な塗装を活かすこと ができ、 橋梁単位での塗装の延命が見込める。すなわち、 塗替え塗装のインターバルを延ばすことができる。鋼 橋の耐久性が 100 年〜 150 年であるのなら、塗装の防 錆機能として耐久性は少なくとも 7 〜 80 年欲しい。素 地と防錆層における耐久性の向上もしくは実証がなさ れれば、旧塗膜層を残して塗り重ねる方法が本質的な 耐久性の向上として適用できる。飛来塩分の除去技術 や高湿度環境において使用できる塗料の開発は、施工 時の不具合の減少に寄与すると考えられる。 技術開発が進むと労働市場が小さくなると指摘され ることもあるが、技術開発は、労働環境を改善すると 同時に新たな労働市場を生む契機になる。将来の社会 インフラの状態に対する関心が高いこの時期に、少子 高齢化に伴う労働者の減少に対応できる技術を準備す ることは肝要である。そのために、基礎研究から実用 化までを見据えた、鋼橋における夢のある塗替え塗装 の研究や技術開発が進むことを願ってやまない。 Structure Painting Vol.44 1 技術報告 アーチ橋上部塗替え塗装における新しい素地調整 尾﨑 清志1) 村田 雄典1) 録されている 2 つの工法を併用することにより、素地 1 はじめに 調整 1 種の品質を確保し、従来のブラスト処理による 近年の鋼構造物塗替え工事における塗装仕様は橋梁 の長寿命化施策や LCC 低減の面から、耐久性が最も優 れる鋼道路橋防食便覧 Rc-Ⅰ塗装系の適用が多くなっ てきている。Rc-Ⅰ塗装系の素地調整はブラスト処理 (素地調整 1 種)であるが、現場でブラスト処理を施す 現場での課題を改善することができた一例として報告 する。 2 塗替え工事の概要 2.1 対象橋梁の概要 には、大型機械設置場所の確保、研削材の飛散防止対 本塗替え工事の対象橋梁は図-1、写真-1 に示すよう 策、周辺への防音対策、作業足場の補強、産廃処理の に、高知県高岡郡梼原町の山間部を南北に縦断する国 方法、作業者の安全等々の克服すべき課題が多岐にわ 道 440 号の梼原川に架かる高知県管理の親ヶ渕大橋で、 たる。橋の種類別に考えてみると、構造が単純で一般 橋長 161m の鋼中路式アーチ橋+2 径間連続 RC 中空床 的に多く用いられる「桁橋」では、これまでの様々な 版橋である。表-1 に橋梁の諸元と本塗替え工事の概要 実施例等から検討し、現場に適した方法で工事を遂行 を示す。 する事ができるが、道路上に複雑な鋼構造物を有する 橋、 「アーチ橋」 「トラス橋」 「歩道橋」などでは実例が 2.2 橋梁の塗装履歴と劣化状況 乏しく、各現場に即した方法を発注者と協議し、適し 新設時の塗装は鋼道路橋塗装便覧(平成 2 年版)の た方法を模索しながら進めて行くしかないのが現状で A2 塗装系(表-2)が適用され、架設時の塗装完了が ある。また、鉛含有塗料が塗装されている橋梁の場合 1993 年 6 月であり、図-1 に示す山間部の環境で約 22 には、平成 26 年 5 月の厚労省通達に即した鉛粉じん対 年供用され、その間に塗替え塗装がなされていない。 策をとった素地調整作業を行う必要がある。 塗膜劣化や発錆状況は経年劣化により特に日射や降雨 本技術報告では、鉛含有塗料が塗装されている「アー 等に直接曝されるアーチ上部の上面で塗膜劣化(白亜 チ橋」における素地調整において、NETIS 新技術に登 化による塗膜減耗)が著しく、多くの発錆が認められ 図-1 対象橋梁の場所 写真-1 親ヶ渕大橋 1)株式会社尾﨑塗装工業 2 表-1 橋梁の諸元と本工事に概要 表-2 旧塗膜の塗装仕様 写真-2 塗替え前の腐食劣化状況 た。アーチ側面や下面では発錆程度が少なく防錆機能 地調整 1 種)であることから、本橋梁の塗替え塗装工 を概ね保っている状態であったが、塗膜の劣化はかな 事にあたっては次の課題を解決することが必要となった。 り進行している状態であった。 ① 河 川上のアーチ橋におけるブラスト研削材の飛 散防止対策と防護工 2.3 塗替え塗装仕様 ② 厚労省通達の鉛粉じん対策 当初、本橋梁の塗替え塗装系は表-3 に示す鋼道路橋 ③ 大型機械設置場所の確保 防食便覧(平成 26 年版)の Rc-Ⅰ塗装系で考えられて ④ 作業足場の補強 いた。 ⑤ 産廃処理の方法 しかし、この塗装系の素地調整がブラスト処理(素 ⑥ 作業者の安全 表-3 Rc-Ⅰ塗装系(平成 26 年版鋼道路橋防食便覧) Structure Painting Vol.44 3 表-4 本橋梁工事に適用した塗替え塗装系 特に、塗装系の下塗は JIS K5625 の塗料品質である えて、本現場ではより厳重な防護対策が必要であると ことから、シアナミド鉛が 15%以上含む塗料であり、 の判断から、全面シート張り防護の上に重ねて全面に ブラスト処理による素地調整を施した場合、平成 26 年 厚手のポリシートを敷き詰めた。ポリシートの素材は、 5 月 30 日厚労省通達「鉛有害物を含有する塗料の剥離 アスベスト除去工事の養生等に使用する物と同等の製 やかき落とし作業における労働者の健康障害防止につ 品を使用した。また、吊りチェーン部に生じる小さな いて」を考慮すると、鉛粉じんによる作業者の安全と すき間は、幅広のガムテープを使用して塞いだ。防護 河川への鉛粉じんの飛散のリスクが懸念された。そこ 工の状況を写真-3 に示す。 で、厚労省通達に即して安全に作業し、且つ長寿命化 策となる Rc-Ⅰ塗装系を適用するにはブラスト処理に 3.2 素地調整 代わる方法を発注者と協議した。その結果、NETIS 新 厚労省通達を遵守した鉛含有塗膜除去を行い、且つ 技術に登録されている塗膜剥離剤とブラスト面形成動 長寿命化策となる素地調整 1 種のブラスト面を得るた 力工具の 2 つの工法を併用して素地調整することと めに、工程-1 として湿潤化法である塗膜剥離剤で塗膜 なった。 (表-4)また、飛散防止や防護養生の簡素化等 除去し、その後、工程-2 としてブラスト面形成動力工 の視点から、防食下地から上塗塗料までのスプレー塗 具でさびや僅かに残存する塗膜を除去し粗面形成する 装をはけ、ローラー塗りへ変更することとなった。 素地調整 1 種とする工法で施工した。 3.2.1 塗膜除去工(工程-1) 3 工事施工状況 過 去 の 施 工 実 績 に よ り、 本 現 場 で は 塗 膜 剥 離 剤 3.1 防護工 NETIS 番号 KK-070037-VR 「ネオリバー泥パック工法」 当初設計においては、仮設吊り足場作業床面の防護 を採用した。施工に先立ち仮設足場が概ね完成する頃 工は、従来通りの全面板張り防護+全面シート張り防 に、剥離剤メーカーによる事前調査(試験施工)を行っ 護であったが、過去に施した塗膜除去工の事例を踏ま た。調査内容は、旧塗膜の種類、膜厚、はく離剤の試 写真-3 防護工の状況 4 写真-4 現場の旧塗膜での塗膜剥離剤とブラスト面動力工具の試験状況 (左:塗付後の養生状況、中:剥離状況、右:ブラスト面形成動力工具処理面) 験施工等である。調査の結果、旧塗膜は A2 塗装系で、 1 日当たりの予定施工量をスムーズに行う事ができた。 既存塗膜厚は、200〜300μm 程度であった。また、試 また、剥離剤で除去した後に残存する塗膜やボルト部・ 験施工では 3 種類の剥離材、 「ネオリバー泥パック橋梁 隅角部等ついてはディスクサンダーや手工具を併用し 用」 「ネオリバー泥パック橋梁用 Type1」 「ネオリバー た。 泥パック橋梁用 Type2」を、主構上面、橋門構側面、 「ネオリバー橋梁用」による塗膜の膨潤軟化状況、ス 橋門構下面の 3 部材で実施した。試験施工した結果、 クレーパーによる膨潤軟化塗膜の除去状況および塗膜 旧塗膜はどの剥離剤でも膨潤、軟化し効果を現した。 除去後の状況を写真-5 に示す。旧塗膜のシアナミド鉛 スクレーパーによる塗膜除去では下塗(鉛含有塗膜)、 塗膜、MIO 塗膜、長油性フタル酸樹脂塗膜は塗膜剥離 中塗、上塗のほとんどの塗膜は除去できたが、長ばく 剤によって膨潤軟化し、スクレーパーで容易に剥がす 形エッチングプライマーは除去できなかった。なかで ことができたが、さびと長ばく形エッチングプライ も「ネオリバー泥パック橋梁用」が一番良く膨潤、軟 マー塗膜は塗膜剥離剤では除去されず残存した。 化し、剥離し易かったので、本現場ではこれを使用す 3.2.2 素地調整 1 種(工程-2) ることとした。また、塗膜剥離剤で除去できなかった この工程-2 の目的は塗膜除去した状態にある鋼材 長ばく形エッチングプライマーをブラスト面形成動力 に、写真 -5 に示すブラスト面形成動力工具「ブリスト 工具 NETIS 番号 CG-110021-V「ブリストルブラスター ルブラスター W」 (写真-6) (W:ブラシ 2 個のタイプで、 W」で処理した結果、素地調整 1 種が得られることを 現行タイプの約 1.6 倍の処理能率)によりアンカープ 確認した。その試験の状況を写真-4 に示す。 ロフィールを有する素地調整 1 種を形成するための仕 塗膜除去工の施工期間は 9 月中旬から 11 月上旬まで 上げ素地調整と位置づけた。従来からよく使用されて で、施工開始時期の作業時間帯の平均温度は 25℃を超 いるディスクサンダーと異なり、ブラシが縦回転する えるいわゆる夏日が続いた。高い気温での作業では、 「ブリストルブラスター W」の使用方法について、初 剥離剤の浸透、膨潤、軟化は想定していた時間よりも めて使用する作業員は取扱いに戸惑いが少しあったが、 早く、剥離剤塗布後、塗膜内部へ浸透し、膨潤作用に 特別な技術を要する必要は無いので、短期間で簡単に より塗膜が膜状に湿潤状態で浮き上がり、翌日にはス 使用できるようになった。 クレーパー等にて容易に除去して回収することができ ブラスト面形成動力工具で処理する前の状態は、さ た。作業終盤時期では気温の下降により若干の時間を びと長ばく形エッチングプライマーで僅かにシアナミ 要したが、工程管理に影響を及ぼすほどのことはなく、 ド鉛ペイント塗膜が残存している状態(写真-7、8)で 写真-5 塗膜剥離剤による剥離状況(左:膨潤軟化状態、中:スクレーパー除去:右:除去後の状態) Structure Painting Vol.44 5 写真-6 ブラスト面形成動力工具「ブリストルブラスター W」 写真-8 ブリストルブラスター W 作業状況 写真-7 処理前の塗膜状態 写真-9 処理面の ISO8501-1 見本帳との対比確認 塗装作業日の午前中から仕上げ素地調整を開始し、塗 布作業を 4 時間以内に終えられる範囲の施工を行った。 施工期間は塗膜剥離剤による除去後の並行作業で 9 月 下旬〜11 月中旬である。試行錯誤の結果、仕上げ素地 調整の人員は 10 人程度とし、平面部は「ブリストルブ ラスター W」を用いて 7〜8 人で作業し、ボルト部・ 隅角部等はブラシ幅 23mm の現行機「ブリストルブラ スター」を用いて 2〜3 人で行い、清掃作業と有機ジン クの塗装作業を含め 1 日当たり平均 65m2 程度であっ た。 専用ブラシの使用数量は延べ 590 個で、1 個当たり 写真-10 表面粗度比較板との対比 の施工面積は概ね 5m2 となる。専用ブラシは先端部が 消耗すると施工速度が落ちるため、付属品の砥石にて 研ぐことにより数回利用することができた。 あった。写真-8 はブラスト面形成動力工具で処理して いる状況で、処理後の表面状態を写真-9 に示す。残存 当初設計のスプレー工法により、塗料の飛散によっ 塗膜である長ばく形エッチィングプライマーが完全に て周辺を汚染しないような十分な飛散防止対策を行う 除去され、素地調整 1 種の表面が得られている。素地 には、大規模な防護工の補強が必要であったため、発 調 整 1 種 の 品 質 は ISO 8501-1 の 見 本 帳(B の Sa2.5) 注者と協議の上、スプレー工法からはけ・ローラー工 と比較確認し、表面粗度は ISO 8501-1 の粗さコンパ 法に変更した。また、梼原町は山間高地に位置し高知 レーターで検査(写真-10)した結果、除錆度、表面粗 県内で最も外気温の低い地域であり、12 月には塗装禁 度とも目標とするブラスト処理面と同等であることを 止条件である外気温 5℃を下回る日が数日あり、工期 確認できた。 終盤の工程管理には力を尽くした。その結果、Rc-Ⅰ 工程-2 の作業としては次工程の有機ジンクリッチペ イント塗布までの塗装間隔を遵守するため、基本的に 6 4 塗装作業 の塗装品質を満足する塗装ができた。 5 工事結果と考察 本現場で実施した素地調整の新技術は、いずれもブ ラスト処理による粉じんを抑制することのできる技術 本橋梁の塗替え塗装系は鋼道路橋防食便覧 Rc-Ⅰと であるため、上空面への防護工は必要なく、設備や機 大きく異なることは、2.3 の①〜⑥の理由により素地調 械の設置場所の確保や足場の補強や重装備な防護工の 整をブラスト処理工法から塗膜剥離剤とブラスト面形 必要がない。従って、必要な足場工・防護工を全て設 成動力工具の組合せ工法に変えたことである。この 2 置したオープンブラスト工法に比べて、本塗替え工事 つの工法を比較した結果を表-5 に示す。 の素地調整工法は足場工・防護工費用が概ね 40% ) ① 足場工、防護工 の費用が削減できることになる。(※当該現場において 桁橋の場合、一般的には側面と床面を完全に塞いで しまえば、橋の構造上、上空面には床版もしくは鋼床 ※ の比較値) ② 機械工具・設備等 版があり、それ自体が足場全体の屋根の役割を果たし 本工事で適用した素地調整工法はコンプレッサー等 飛散防止対策、防護工となる。それとは異なり、道路 の大型機械設備は必要なく、また設置する場所もいら 上に構造物を有するアーチ橋では、構造上、上空面に ない。必要なのは塗膜除去剤を塗布するはけ・ローラー は何もなく、オープンブラスト工法にて素地調整する や、手作業による電動工具等である。従って、機械設 場合には、上空面にも足場床面積と同じ数量の強固な 備のリース料金は、オープンブラスト工法と比べ 80% 骨組み足場を施さない限り、板張り防護工・シート張 は削減ができた。しかし、新たに新技術の機械である り防護工は設置できない。上空面の防護工は、簡易に ブリストルブラスターを購入する費用が発生した。 シート等を単管パイプに点付け固定すれば十分だと考 また、オープンブラスト工法の場合、作業現場内は える方もいるかもしれないが、実際にオープンブラス 防護工により暗闇になり、照明設備が必須となる。今 ト工法を現場で施工したことのある同業者の意見はそ 回の素地調整工法では、端部等の施工時以外は照明設 うではなく、上空面にはしっかりとした頑丈な素材で 備が不要であった。 防護工を施す必要があるという考え方が大半である。 ③ 服装、防具 また、ブラスト工法の場合は大型のコンプレッサーを 本工事で適用した素地調整工法の服装、保護具は、 設置する場所の確保とブラスト機の足場内への搬入、 ブラスト工法のようなヘルメット防塵面やエアーライ 設置等を考慮し足場の補強等を考慮する必要がある。 ンマスクや厚手つなぎ等の厳重な装備は不要であり、 表-5 オープンブラスト工法と塗膜除去+ブラスト面形成動力工具処理工法の比較 Structure Painting Vol.44 7 服装や防具による費用および作業効率の低下も抑えら については倍以上かかる。この工法で実際に施工する れた。 際には、施工規模にもよるが、ある程度の人員確保と、 ④ 産業廃棄物 ブリストルブラスターの台数の確保が必要である。 国交省積算基準ではブラスト研削材の量は標準必要 量 40kg/m2 を見込んでおり、塗装面積の 3000m2 をブ 工期について ラストすると概ね 120ton が必要である。運搬するため 現場気象条件の調査、塗膜除去工の試験施工、ブリ に大型車両の運搬費が別途必要となり、また回収した ストルブラスターの必要台数、人員体制、工程管理、 研掃材の処分場まで運搬費も別途計上することになる。 品質管理等々の検討すべき様々な事項に対し、試行錯 塗膜剥離剤「ネオリバー橋梁用」は 198 缶 ×16kg= 誤しながらより良い方法を決定し、十分な事前準備が 3168kg 使用し、ブリストルブラスターの専用ブラシ できた結果、当初設定工期内に竣工することができた。 は、590 枚使用した。本工事の素地調整工法では、運 搬費及び処分費が大幅に削減できた。 また、産廃物の点から素地調整工法をみてみると、 6 まとめ 本工事の橋梁はアーチ橋で鉛含有塗料が塗装されて ブラスト工法は約 120ton を超える量の産廃物が試算さ いたため、素地調整作業の際の鉛粉じんによる作業者 れるのに対して、本工事の素地調整工法で発生した塗 の安全と河川への鉛粉じん飛散のリスクの回避、およ 膜廃棄物は 4.4ton であった。この塗膜産廃物を調査し び長寿命化策となる Rc-Ⅰ塗装系の適用が課題となり、 た結果、鉛の含有量が 0.3mg/L 以上であり、特別管理 発注者である高知県須崎土木事務所と協議し、これら 産業廃棄物となり、高知県では処分できず、岡山県の の課題を解決する新しい素地調整工法(湿潤化法であ 処分場まで運搬してから処分した。 る塗膜剥離剤による鉛含有塗膜の除去+ブラスト面形 この結果、本現場では単純計算してもブラスト工法 成動力工具による素地調整 1 種の表面品質の確保)を と比べて、約 27 分の 1 に産廃物量を抑えることができ 試みた。その結果、作業者の安全や飛散防止が確保さ た。処分費用・運搬費用を考えると本工事の素地調整 れ、且つ素地調整 1 種の品質が確保され、Rc-Ⅰ塗装 工法はブラスト工法に比べて非常に有益と言える。 系の塗料を塗装することができた。 ⑤ 人役 本橋梁と同様な課題(鉛粉じんとブラスト適用の課 ブラスト工法で実際に施工すると、ブラストマシン 題)がある全国のアーチ橋、トラス橋や歩道橋等の塗 1 台につき、1 班 3 人体制とし、ブラストマシン 2 台で、 替え塗装において、本工事で適用した新しい素地調整 3000m2 を施工したと想定した場合には、表 -5 に示す 工法が適用されることを期待したい。また、本工事で とおり延べ 350 人が想定される。今回の素地調整工法 の課題については次回以降の工事において改善を試み では、実際に延べ 760 人の人役を要した。よって人役 たい。 謝辞:本塗替え塗装工事の計画や遂行に際してご助言をいただいた高知県須崎土木事務所の方々、試験施工に際してご協力いただ いた三彩化工㈱の堀内様、G−TOOL ㈱の辻様に感謝いたします。 【参考文献】 1) (社)日本道路協会 鋼道路橋防食便覧 H26 年 3 月 2) (社)日本道路協会 鋼道路橋塗装便覧 H2 年 6 月 3) 厚生労働省労働基準局安全衛生部 基安労発 0530 第 1 号 基安化発 0530 第 1 号 平成 26 年 5 月 30 日 「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について」 8 技術報告 ブラスト素地調整における残存塩分除去対策の事例紹介 中島 和俊1)、落合 盛人1)、五島 孝行1)、安波 博道1)、中野 正則1) 表-1 素地面の品質管理項目と目標値 1 はじめに 膨大なストックの道路橋に対して予防的かつ計画的 な維持管理を実施していくため、鋼橋の塗替えにおい ては耐久性に優れた重防食系の塗装仕様 Rc-Ⅰが積極 的に採用されるようになった 1) 〜 2) 。ところが、腐食環境 が厳しい海岸近くの橋梁において、塗替え後わずか 数ヵ月でさびが表面化するという事例が報じられた。 このような早期にさびが再発する原因の一つとして、 ブラストによる素地調整面に残存する塩分が考えられ る。この残存する塩分の除去の一般的な方法として素 地調整面の水洗が適用されてきた。しかし、橋梁の下 方や周辺の利用条件、橋梁の構造形式、施工対象部位 分量を 50mg/m2 以下になるまで除去する必要があると によっては水洗の適用が困難な場合も多い。 されているが、素地調整面における残存塩分量は定め そのような状況の中、著者らは水洗の適用を回避す られていない。一方、耐候性鋼材編においては、素地 る必要が生じた塗替え工事において、ブラストのみで 調整後の残存塩分量が 50mg/m2 以下となっていること 塩分除去を行う手法を検討する機会を得た。本稿では、 を確認することを推奨している。このため、塗装橋で ブラストの実施工に先駆けて実施した試験施工、およ あっても同等の残存塩分量により管理することとした。 び実施工における残存塩分に対する品質管理の事例に 2.2 早期さび再発の事例 ついて紹介する。 2Rc-Ⅰの早期さび再発 2.1 Rc-Ⅰの品質管理 重防食系の Rc-Ⅰ塗装系によって塗替えられたにも 拘らず、早期にさびが再発した事例を以下に示す。 (1)SS 橋 Rc-Ⅰは高価であることから、少なくとも 30 年の塗 SS 橋は海岸至近を通る国道に架かる橋梁で、海から 装寿命が期待される塗装仕様である。その耐久性を確 の飛来塩分を直接受ける腐食環境が厳しい場所に立地 保するためには、素地調整の品質が重要であり、ブラ し、直近では平成 22 年度に Rc-Ⅰ塗装系による塗替え ストによる素地調整における素地面の品質管理として、 塗装が行われた。本橋では素地調整前に荒ケレンやフ 著者らは表-1 を提案してきた。 ランジエッジ部の R 加工、素地調整後の清掃などが実 ここで、除錆度ならびに表面粗さの管理目標値は、 1) 施されており、一般的には適切な施工品質が確保され 鋼道路橋防食便覧 (以下便覧と称する)においても同 ていたと評価できる施工であったが、1 年余りで腐食 値が管理値として示され、それぞれ標準写真や粗さ見 が再発した。本橋の施工前後の状況を写真-1・写真-2 本板と素地面を目視により直接対比し合否を判断する に示す。 こととなっている。また、表面付着粉塵は、破砕した (2)CS 橋 塗膜かすや錆が塵埃となって堆積していないことをセ CS 橋は千葉県外房の海岸線に沿って走る国道に架か ロテープの付着により確認する試験であり、便覧には る橋梁で、太平洋からの飛来塩分を直接受ける腐食環 特別な記述はないが一般的に必要な品質であると考え 境が厳しい場所に立地している。本橋は 12 径間の鈑桁 られるため管理項目とした。残存塩分量は、素地調整 橋からなり、平成 22 年度から複数期に分けて塗替え塗 後の鋼材表面に残存する塩分量を示す。便覧の塗装編 装が計画され、平成 22 年度には 2 径間を対象として においては、塗替え塗装時に旧塗膜上面に付着した塩 Rc-Ⅰ塗装系による塗替え塗装が行われた。施工時に 1)一般財団法人土木研究センター Structure Painting Vol.44 9 写真-1 SS 橋 施工前 写真-2 SS 橋 施工後 1 年 2ヵ月 は前述の品質管理項目の内、除錆度、表面粗さ、表面 水洗を行う施工フロー(図-1)を採用し、2 期以降の 付着粉塵が管理されていた。しかし、施工から約 3ヵ 施工に取り入れている。本要領採用の結果、施工から 月が経過した時点で元々腐食していた部分にさびが再 2 年が経過した時点でフランジのエッジ部の一部(主 発した。橋梁の架橋地点の状況を写真-3 に、塗替え塗 に足場のクランプ跡)において僅かにさびが再発した 装前ならびに塗替え塗装後 3ヵ月を経過した時点の状 ものの、全体としては健全な状態が維持できている。 況を写真-4 〜写真-6 に示す。 しかしながら、反省点として、大掛かりな水洗を採り (3)早期さび再発の原因考察 入れることは水処理の手間と工期がかかること、およ これらの橋が共通する点は、海岸に至近であること、 部材エッジ部を中心に著しい腐食損傷が生じていたこ と、前述の素地調整における品質管理項目の内、残存 塩分に関する管理を行っていなかったことである。 CS 橋では前記のように早期の錆再発が見られたこと から、残存塩分の除去に関する施工試験を追加で行い、 び、クランプ部の適切な処理が必要であることが挙げ られた。 3FS 橋における残存塩分除去対策 3.1 経緯 (1)橋梁概要 早期さび再発を防止するための措置として、腐食部を FS 橋は福岡県の玄界灘沿岸,国道 495 号に架かる 3 先行してブラストし、腐食部の鋼板が露出した状態で 径間連続の鈑桁橋である。土研式タンク法により橋梁 写真-3 CS 橋 架橋環境 写真-4 CS 橋 施工前 10 写真-5 CS 橋 施工後 3ヵ月 写真-6 CS 橋 施工後 1 年 3ヵ月 品質管理項目は、除錆度、表面粗さ、表面付着粉塵お 4) よび素地面の残存塩分量とした 。 (2)高圧水洗の回避と残存塩分量の許容値 FS 橋の施工にあたっては、施工初期に電動工具によ る浮きさびの除去の後、橋梁全体に対して高圧水洗を 行ったが、以降の施工においては残存塩分の除去に水 洗は行わないこと前提条件とした。これは、塗替え時 期が冬場にかかり、鋼部材表面を短時間で乾燥させる ことが困難であると判断したためである。 ここで、FS 橋のように塩分によって腐食損傷が促進 された場合、一般的なブラスト施工では 50mg/m2 以下 を確保することが困難であることが知られている。過 去にはその対策としてブラスト施工面を高圧水等で洗 浄する等が行われているが、本橋では高圧水洗を用い ないため、その代案としてブラスト施工を入念に行う ことを選択した。一方、素地調整面の残存塩分の許容 4) 値については、既往の研究報告 によると、室内試験 の結果から塗膜劣化抑止に対する許容値を 200mg/m2 とすればよいと報じられていることから、本橋では 50mg/m2 の確保が難しいようであれば、200mg/m2 と することも念頭に置くこととした。 3.2 施工試験 図-1 施工フロー ブラストの実際の施工に入る直前に、実際の施工と 同一機材を用いて素地調整作業を行い、残存塩分の除 去に関する検討を行った。施工試験の対象は中程度の 腐食損傷を示すエリアを選定し、主桁の下フランジと ウェブ下端の立上がり、桁の長さ 9m の範囲とした。 施工面積は 5.8m2 である。 まず 1 回目のブラスト施工として、対象部位の除錆 度が所定値(ISO Sa 2 1/2)となるよう仕上げた。施工 時間は 1.5 時間を要した。その後、同じ試験対象部位 に対して 1.0 時間ずつの 3 回のブラスト施工を行い、 各施工回数ごとに主桁下フランジ下面の鋼材素地面の 残存塩分量を電導度法により 5 箇所ずつ計測した。各 施工回数ごとの計測結果を図-2 に示す。 塗膜残存部は、施工前に平均で 300mg/m2 であった ものが、1 回目の施工で全て目標上限値の 50mg/m2 を 写真-7 FS 橋 施工前 下回った。一方、腐食発生部については、施工前には (Rc-Ⅲ塗装系施工後 3 年) 2,000mg/m2 を超え、1 回目の施工により錆とともに塩 分も一気に減少したが、平均で 260mg/m2 は残存する こととなった。その後も回数を重ねるごとに徐々に減 上で計測した 1 年間の飛来塩分量は平均 0.67mdd であ 少したが、4 回目の施工後においても 50mg/m2 を下回 り、非常に厳しい飛来塩分環境であった。本橋は昭和 るものはなかった。しかし、3 回目では 5 箇所すべて 42 年の竣工からこれまでに数度にわたる塗替えが行わ が 200mg/m2 以下となる結果が得られ、4 回目では平 れ、直近では平成 18 年に Rc-Ⅲ塗装系により塗替えら 均で 84mg/m2 となった。この結果から、ブラストを入 れていた。しかし、平成 18 年の塗替え直後から点さび 念に行えば 200mg/m2 以下は安定して確保できるとこ が現れ始め、約 3 年が経過した時点において全長にわ と、ブラスト施工の施工回数を重ねても塩分量低減の たり主桁や横構,対傾構に著しい腐食損傷が発生した 効果が薄れ、また工期や施工コストを考慮すると 4 回 (写真-7) 。そのため、平成 26 年度には橋梁全体を対象 程度が限度であること、さらに既往の研究報告 を考 として Rc-Ⅰ塗装系による塗替えを行うこととなった。 4) 慮し、本工事における素地面の残存塩分量の管理目標 Structure Painting Vol.44 11 図-2 ブラスト施工による残存塩分量の推移 として、塗膜残存部は 50mg/m2、腐食部については 200mg/m2 とした。本来、腐食発生部の要求性能とし ては塗膜残存部と同等、あるいはより厳しくすべきで あるが、現時点ではやむを得ないと考えている。この 管理値を採用するにあたって、妥当性検証のため、ブ ラストとウェス水拭きにより残存塩分量を 50mg/m2 以 下とした施工部を設け、経過観察を行っている。 3.3 実施工とその後の経過 (1)ブラスト施工と品質管理 実施工にあたっては、ブラストの施工回数や時間を 規定するのではなく、素地調整の仕上がり状態におけ る検査によって品質管理を行うこととした。検査の対 象は施工範囲全面を基本としており、ブラスト施工日 図-3 残存塩分量の頻度 に毎回行うものとした。検査対象については、主桁、 下横構、対傾構の腐食損傷部において任意に 5 箇所を 選定し、すべての残存塩分量の計測値が 200mg/m2 以 本橋の塗装足場は、一般的なパイプ吊り足場が採用 を超える場合は不合格とし、当日の施工範囲はすべて された。吊り足場は足場荷重を橋体で支持するため、 再度ブラスト施工を行い、再検査することとした。上 主桁下フランジに吊りチェーン金具(クランプ)が取 記要領にて実施工の品質管理を行った結果、初動時の り付けられる。このクランプが取り付けられた部分は、 試行以降は全数検査ですべて合格であった。立会検査 クランプを外さない限り塗装ができないため、一般的 を行った 21 日分の残存塩分量データのヒストグラムを には足場を解体する時点まで放置され、局所的なタッ 図-3 に示す。最大値 183mg/m2、平均値 110mg/m2 で チアップ塗装が行われている。しかし、本橋ではクラ あった。 ンプ部にも著しい腐食損傷が生じている(写真-8)こ このような残存塩分量の管理を行った結果、FS 橋全 とから、これまでの方法では早期さび再発の起点にな 体のブラスト施工の実績については次の通りであった。 ることが容易に想像された。そこで、本橋では塗装工 全施工面積 1,016m に対し、ブラスト実働日数は 44 日、 程の途中でクランプを盛替え、写真-9 に示す小型ブラ 研削材使用量 68ton であり、施工能率の単純平均値と スト機により素地調整を行い、クランプ部に対しても し て 23m / 日、 単 位 面 積 あ た り の 研 削 材 使 用 量 は 他の一般部と同等の耐久性を確保する施工を行った。 2 2 67kg/m と計算される。これは、オープンブラストの クランプの盛替えと塗装施工の手順は以下の通りであ 標準的な施工能率 (60m2/ 日)、研削材使用量(40kg/ る。①足場架設時のクランプ位置のまま、1 径間全体 m )に比べ、約 2.6 倍の施工日数を要し、約 1.7 倍の研 を素地調整とジンク層塗装まで行い、その後、クラン 削材を使用したこととなる。 プを 50mm ほど移動させる (盛替える) 。②この状態で、 2 2) 2 12 (2)クランプ部の処理 下であれば合格とした。一方、1 箇所でも 200mg/m2 ンプの数は 3 径間全体で 540 箇所に上り、盛替えに要 した時間は各径間あたり約 1 日であった。 (3)施工後の状況 塗替え塗装の施工から約 8 箇月が経過した時点にお いて、経過観察を行った。目視により変状の有無を確 認したところ、部材のエッジ部の面取り R 加工を行わ なかった横構のごく一部で点錆が見られたが、主桁を 含めて全体的に良好な外観を呈していた。主桁の一部 では、素地調整後の残存塩分量を 50mg/m2 以下に管理 した部位を設けモニタリングポイントとしたが、経過 観察時点では、その他の部位との差はみられていない (写真-10)。また、クランプ部は全 540 箇所中の 3 〜 4 写真-8 足場クランプ部 箇所に点錆が見られた程度の変状に留まっていた。 4AC 橋における残存塩分除去対策 4.1 経緯 AC 橋は青森県が管理する耐候性材を使用した 4 径 間連続鋼床版箱桁橋である。路面上の排水桝が箱桁直 上に位置し、排水管が箱桁を貫通する構造であった。 昭和 61 年の建設から 25 年が経過した平成 23 年に箱桁 内部を調査したところ、箱桁内部の排水桝や排水管の 継ぎ手部から漏水が見られ、箱桁内部に著しい腐食が 5) 発生していた (写真-11, 12)。積雪地方の鋼床版橋で あるため、凍結防止剤が多量に使用され、箱桁内部も 高い付着塩分が検出された。この結果、塗膜欠陥が生 写真-9 小型ブラスト じやすい溶接部を中心に著しい腐食が生じ、最大で数 mm のオーダーでの板厚減少が生じていた。 4.2 施工試験 AC 橋のように橋長の長い箱桁の内部では、高圧水 洗時の排水処理が困難であることから、水を使わずに 残存塩分を除去する素地調整を試みた。ここでは、青 森県の標準仕様である機械工具による 2 種ケレンと、 箱桁内部での粉塵発生の抑制を目的としたバキューム ブラストによる 1 種ケレンの 2 つの素地調整方法を用 いた試験施工を行った。代表的な腐食損傷を示す部位 を対象に、所定の除錆度に達した時点を 1 回目の施工 とし、残存塩分量を計測した(図-4) 。1 種ケレンでは 1 回目の施工(写真-13)で概ね 50mg/m2 以下の残存 写真-10 モニタリングポイント外観 (施工後 8ヵ月) 塩分量に低下する結果を得た。一方、2 種ケレンでは、 1 回目の施工でほとんどのさびが除去されたものの、 さび内部に侵入していた塩分が表出したことにより、 場所によってはケレン前よりも高い残存塩分量が検出 当初のクランプ位置に素地調整とジンク層塗装を行い、 される結果となった。2 回目(写真-14)は凹部を選択 さらに盛替えたクランプ位置以外の径間全体を下塗り, 的に施工したが、依然として 100 〜 200mg/m2 程度残 中塗り,上塗りまで終わらせる。③次に、盛替えたク 存していた。3 回目は現実的な施工ではないが、グラ ランプを当初位置に戻し、残された盛替えクランプ跡 インダによって凹部のさびを周辺の鋼材とともに切削 のみに下塗り,中塗り,上塗りを行うことにより径間 する施工を行い、50mg/m2 程度の残存塩分に低下する 全体の塗替えが完了する。本橋ではクランプ部の局所 ことを確認した。この結果、AC 橋の箱桁内部の塗替 にも小型ブラストを用い、素地調整に関する品質管理 え塗装にあたっては、バキュームブラストを用いた素 も他の一般部と同等とした。なお、本橋におけるクラ 地調整を行うことが最適であると考えられた。 Structure Painting Vol.44 13 写真-11 箱桁内部の排水桝から漏水 写真-12 箱桁内部の腐食 図-4 素地調整種別の施工回数毎の残存塩分量 写真-13 1 種ケレンの仕上がり状態(1 回目) 写真-14 2 種ケレンの仕上がり状態(2 回目) 今回のバキュームブラストによる試験施工では、継 オープンブラストによる塩分除去の試験結果に比べて ぎ手部を含めた施工能率は 7.60m / 日程度となり、オー 高い効率を示した。これは、オープンブラストでは研 プンブラストの標準的な施工能率(60m / 日)に比べ 削材の跳ね返りをかわすために 60 〜 70 度程度で投射 て大幅に劣る結果となった。一方、同一の環境での直 することに対し、バキュームブラストは研削材を素地 接比較ではないものの、高い付着塩分を 1 回の施工で 面に対してほぼ直角に投射するため、微細な凹み部に 50mg/m2 以 下 と す る こ と が で き、 前 述 の FS 橋 で の 研削材が届きやすいことが一因であると推察される。 2 2 14 表-2 Rd−Ⅰ塗装系(1 種ケレン,ジンクなし) 写真-15 ブラスト施工状況 4.3 実施工 写真-16 塗装完了 ことが塗替え後の耐久性向上に効果がある。 これらの検討結果を基に、平成 26 年度には箱桁内部 ②腐食損傷が生じた橋梁の塗替えにおいては腐食発生 の塗替え塗装の実施工が行われた。塗替え範囲は下フ 部の塩分除去を入念に行うことが肝要であり、残存 ランジ上面やウェブの立上り 20cm 等の腐食損傷が生 塩分量の品質管理にあたっては、腐食発生部に着目 じた限定的な範囲に留め、腐食損傷が生じていない大 した管理を行う必要がある。 部分はそのまま放置することとした。塗替え塗装仕様 ③腐食発生部における残存塩分の除去方法として、ブ は便覧に示される Rd-Ⅲの素地調整を 1 種ケレンに変 ラスト施工と水洗の組合せにより 50mg/m2 は実現で 更した塗装系(Rd-Ⅰと呼称,表-2)を用いた。ブラ き る が、 一 般 的 な 乾 式 ブ ラ ス ト の み で は 100 〜 ストによる素地調整を行っているが、閉鎖空間内での 150mg/m2 が限界である。なお、バキュームブラス 塗替え塗装となるため、有機溶剤を用いる塗料(ジン トを用いれば効率的に 50mg/m2 を達成できる可能性 クリッチペイント等)は使用していない。施工状況並 がある。 びに完成状況を写真-15、写真-16 に示す。 5 まとめ ④いずれにしても塩分除去には手間がかかる。品質管 理目標を具体化し、目標達成に必要な工種と工数を 積算に採り入れる必要がある。 本稿では著者らが関与した案件について、早期さび再 ⑤ 1 例ではあるが、足場クランプの処理方法について 発を防止するための残存塩分除去の事例を紹介した。30 の成功事例が得られた。今後、腐食損傷が著しい橋 年間の期待に応える技術であるかの見極めを行うために 梁の塗替え施工においては、足場クランプの盛替え は経過観察が必要であるものの、一連の施工実績から得 られた知見と今後の課題について以下に列記する。 等を積極的に採用するのが望ましい。 ⑥現行規定を遵守するための対策検討と並行して、残 存塩分量そもそもの許容限界に関する究明が必要で ①ブラストによる鋼材素地面の残存塩分量を制御する ある。 【参考文献】 1) 鋼道路橋防食便覧:日本道路協会,2014.3 2) 鋼道路橋塗装・防食便覧資料集:日本道路協会,2010.9 3) 鋼橋等の塗替え塗装における素地調整の研究:石松豊,土木技術資料 49-6,2007.6 4) 福岡県汐入川橋の塗替えにおける早期さび再発防止対策:森 勝彦・矢野誠之・安波博道・中島和俊・中野正則・片脇清士, 橋梁と基礎,Vol.49, pp.41-44,2015.10 5) 青森中央大橋の健全度評価と補修方法:中野正則・安波博道・加納 勇・中島和俊,土木技術資料 56-7,2014.7 Structure Painting Vol.44 15 技術報告 省工程防食材料の比較検証試験 石橋 正博1) 田中 誠2) 政門 哲夫3) 表-1 桁端部塗装塗替仕様 1 はじめに 首都高速道路の高架橋(鋼桁)では、点検により多 くの腐食損傷が確認されている。腐食損傷の多くは、 伸縮継手からの漏水が主な原因であり、部分的かつ小 規模な腐食が点在して発生している(写真-1) 。 これら腐食損傷の補修は、通常、高架橋と並行して いる街路を車線規制し、高所作業車を用いて部分的な 塗装塗替えを行っている。弊社における塗装塗替仕様 は、腐食損傷の多い鋼桁端部においては耐久性を向上 させるため、塗膜総数は 5 層となっている(表-1)。そ のため、施工工程は 1 層 / 日となることから 5 日間を 要し、併せて車線規制も必要となるため、時間と費用 のある省工程防食材料を選定するためにサイクル数を を要する。従来の塗装仕様では、増え続ける腐食損傷 最大 180 日(4,320 時間) 、6 種類の塗料を用いて試験 の補修が進捗せず、予算も限られている状況から、よ を実施した結果、無溶剤型エポキシ樹脂塗料が特に耐 り効率的な補修を行うために各種の省工程防食材料を 久性に優れていた。しかし、刷毛塗りに適さない等の 平成 23 年頃より試験的に使用を開始した。 施工上の課題を有していたため、塗料改良を実施した。 しかし、省工程防食材料による補修箇所が、数年後 本稿は、これら部分的かつ小規模な腐食損傷の補修 に腐食する状況が確認され始めたため、より耐久性の としての省工程防食材料の耐久性比較検証試験結果と ある省工程防食材料を選定することを目的として、耐 耐久性に優れた無溶剤型エポキシ樹脂塗料の改良につ 久性比較検証試験を実施した。 いて報告する。 試験は、複合サイクル試験にて実施し、より耐久性 写真-1 腐食損傷状況 1)首都高速道路株式会社 東京西局 2)首都高メンテナンス西東京株式会社 3)日本エンジニアリング株式会社 16 図-1 複合サイクル試験条件 写真-2 試験片 ディスクグラインダで素地調整をしたものを用いた。 2 耐久性比較検証試験 なお、既設構造物では腐食により断面欠損が生じてい 2.1 試験概要 る箇所は凹部となり完全にさびが除去出来ないため、 省工程防食材料の耐久性評価は、実環境に近似した 試験方法と言われている複合サイクル試験 ※1 を図-1 に 示すサイクルにて実施した。試験期間は、通常、サイ その状況を再現するために標準試験片の他に凹凸試験 片を製作して試験を行った。 試験は、残存さびによる影響も比較確認するため、 クル数 30 日(720 時間)であるが、より耐久性のある 素地調整 1 種(ブラスト処理)と素地調整 3 種とした 材料を選定するためサイクル数を最大 180 日(4,320 時 それぞれ標準及び凹凸試験片の計 4 種類の試験片を用 間)まで実施した。試験では、7 日毎(168 時間)に外 いて実施した。試験片の状況は写真-2 に示す。 観状況を確認し、その際に試験体の配置による環境条 件の違いができるだけ生じないように試験体の設置場 2.3 試験塗料(省工程防食材料) 所をローテーションした。また、30 日毎(720 時間) 試験する省工程防食材料は、弊社で使用実績のある にクロスカット幅の測定を行った。 5 種類の塗料と使用実績のない無溶剤型エポキシ樹脂 塗料の全 6 種類を用いて試験を実施した。省工程防食 2.2 試験片 材料とは、塗膜総数が少なく短期間で施工できる塗料 試験片は、既設構造物の腐食箇所を塗装塗替するこ である。 (表-2) とを想定し、試験片を複合サイクル試験にて腐食させ、 表-2 試験塗料 Structure Painting Vol.44 17 3 試験結果 複合サイクル試験後の評価は、外観(さび、はがれ、 素地調整 3 種は塗料 F’ 、 G 以外は 2.0MPa 以下であっ たのに対し、素地調整 1 種は塗料 C、D、E、F が 2.0MPa 以上あり付着力が大きい結果であった。残さびの影響 われ、ふくれ) 、カット幅、塗膜付着力にて評価を行っ により、素地調整 3 種の省工程防食材料は付着力が落 た。 ちたと考えられる。 3.1 外観 3.4 試験結果のまとめ 外観は、日本鋼構造協会の鋼橋塗膜調査マニュアル 弊社の複合サイクル試験塗膜品質判定基準を表-3 に に示されている塗膜の目視調査評価方法に従って、さ 示す。今回試験では、大半の塗料がサイクル数 30 日 び、はがれ、われ、ふくれの 4 項目で評価を行った。 3.1.1 さび さびの評価は、目視にて図-2 に示す等級により決定 した。試験結果を図-3 に示す。 無溶剤型エポキシ樹脂塗料(F、F’ )は、4,320 時間 で標準・凹凸試験片ともに等級 2 以下で良好な結果で あった。その他塗料の多くは、1,440 時間を超えると等 級 3 以上となり試験片全体にさびが発生した。また、 素地調整 1 種、3 種を 2,160 時間において比較すると、 無溶剤系塗料(A) 、アルミ系(D)が 1 種で等級 3 に 図-2 さび評価の等級と発錆程度 対し、3 種では等級 5 であり 3 種の方がさびの進行が 早く、素地調整時の残存さびの影響が寄与しているも のと考えられる。 3.1.2 はがれ はがれの評価は、図-4 に従いはがれの面積にて等級 を決定した。代表して凹凸試験片の結果を図-5 に示 す。無溶剤型エポキシ樹脂塗料(F、F’)は 4,320 時間 で等級 8 と良い結果に対し、その他塗料は 720 時間を 超えると等級が下がる傾向を示した。 3.1.3 われ われの評価は、図-6 に従い基準図版にて等級を決定 図-4 はがれ評価の等級とはがれ程度 した。代表して凹凸試験の結果を図-7 に示す。マグネ タイト系 B(E) 、無溶剤型エポキシ樹脂塗料(F、F’) は、4,320 時間で等級 8 以上で良い結果であった。 3.1.4 ふくれ ふくれの評価は、図-8 に従いふくれの大きさにより 評価を行った。代表して凹凸試験の結果を図-9 に示 す。無溶剤型エポキシ樹脂塗料(F、F’)はふくれが 発生せずもっとも良い結果であった。 3.2 カット部からの劣化幅 図-6 われ評価の等級とわれ程度 試験片に設置したクロスカット部からの劣化幅を 図-10 に示す。カット幅は、無溶剤型エポキシ樹脂塗 料(F、F’ )が 4,320 時間までほぼ変化がなく良い結果 であった。その他塗料は、2,160 時間経過後にカット幅 が大きくなる傾向を示した。 3.3 塗膜付着力 塗膜付着力は、複合サイクル試験終了後にアドヒー ジョンテストにより定量的に計測し、図-11 に従って 評価を行った。アドヒージョンテスト結果を図-12 に 示す。 18 図-8 ふくれ評価基準 図-3 さび評価結果 図-5 はがれ評価結果 図-7 われ評価結果 図-9 ふくれ評価結果 Structure Painting Vol.44 19 (720 時間)においては塗膜に異常がなく、さび・ふく 今後、改良した無溶剤型エポキシ樹脂塗料にて、部 れ幅が 4.0mm 以下となっており、弊社規定をクリアし 分的かつ小規模な腐食損傷の塗装塗替えを実施する予 ている。しかし、サイクル数 30 日経過後に耐久性が落 定である。本塗料を使用することで、これまで弊社塗 ちる材料がほとんどであった。このような中で、無溶 替え仕様で施工に 5 日を要していたが、2 日にて施工 剤型エポキシ樹脂塗料(F、F’ )はサイクル数 180 日 が完了する。また、無溶剤型であり火災に対する安全 (4,320 時間)経過後も耐久性が落ちることなく耐久性 性も高いため今後広く補修塗装に適用し、併せて経過 に優れた省工程塗装材料であることが確認できた。 4 無溶剤型エポキシ樹脂塗料の改良 観察することでその耐久性の確認を引き続き実施して いく予定である。 4.1 塗料改良概要 今後の小規模塗装塗替は、複合サイクル試験にて良 好な結果を示した無溶剤型エポキシ樹脂塗料(F)を 使用することとした。塗料性能を表-4 に示す。 本塗料は 1 層で 1,000μm も塗布できる超厚膜型エポ キシ樹脂塗料であるが、表-5 に示す施工上の課題が あった。そのため、主剤・硬化剤の配合率を変化させ る等して、施工性の改善を実施した。表-5 に塗料改良 状況を示す。なお、塗料改良に伴い耐久性に変化を生 じている可能性もあるため、改良塗料の耐久性検証試 験(複合サイクル試験)を実施した。 4.2 耐久性検証試験結果 複合サイクル試験は、2.1、2.2 と同方法で実施した。 図-11 付着力の評価基準 表-3 品質判定基準 試験条件は、試験時間を 180 日(4,320 時間) 、試験片 は標準試験片 2 片と凹凸試験片 2 片、素地調整は 3 種 にて実施した。 試験結果の試験片外観状況(抜粋)を写真-3、さび、 はがれ、われ、ふくれ等は図-3,5,7,9,10,12 の F’に 示す。外観写真のとおり、標準試験片 1 片のみが 30 日 (720 時間)からクロスカット部のさびが確認されたが、 表-4 塗料性能 180 日までにはがれ、われは生じることなく、試験後 のアドヒージョンテストの結果も最小値が 3.37MPa と、 塗料改良前と同等の耐久性を有していることが確認で きた。 よって、今後の小規模塗装塗替えは表-6 に示す仕様 で施工を実施する予定である。 5 まとめ 部分的かつ小規模な腐食損傷箇所の補修に、より耐 表-5 施工上の課題と改良状況 久性のある省工程防食材料を適用することを目的とし て耐久性比較検証試験を実施した。試験の結果、無溶 剤型エポキシ樹脂塗料の耐久性が良いことが確認され た。しかし、無溶剤型エポキシ樹脂塗料は超厚膜型塗 料であり施工性の課題を有していたため、主剤・硬化 剤の配合率を変化させたり、添加剤を加える等して塗 料改良を行い施工性の改善を図った。また、改良塗料 の耐久性試験を実施し、改良前後で耐久性に変化が生 じていないことを確認した。 20 表-6 小規模塗装塗替仕様 図-10 カット部からの劣化幅の評価結果 図-12 塗膜付着力結果 写真-3 試験片外観状況(抜粋) F’ 無溶剤型エポキシ樹脂系(塗料改良版) 【参考文献】 ※1 JIS K 5600-7-9 塗料一般試験方法 - 第 7 部塗膜の長期耐久性 - 第 9 節サイクル腐食試験方法 - 附属書 1(規定)サイクル D Structure Painting Vol.44 21 技 技術 術雑 雑感 感 アメリカのブラスト事情、そして 日本の現状 小寺 健史1) 1.ブラスト施工技術研究会の発足 平成 26 年 12 月に「ブラスト施工技術研究会」が発 足して、早 1 年半が過ぎた。発足のきっかけとなった 的に入ってくるようになり、より確かな情報が集約出 来る様になってきた。今まで、バラバラだった日本の ブラスト業界も、大きく前進したと思っている。 のは、ブラストは古い技術なのに、ブラスト施工業者 昨今の有害物質対策もそうだが、今までは各社で対 と言うのは、所謂横の繋がりがほぼ皆無で、例えば関 策を考えていたのだが、各地の情報がダイレクトに 西ではこういう施工をするのに、他の地域ではどうい 入ってきて、対策も立てやすくなって来た。 う施工が行われているのかが解らなく、研削材 1 つ とっても、全国各地バラバラで、何処で何を使用して いるかも解らない状態だった。 2.アメリカのブラスト事情 日本での情報はある程度入る様になってきたが、こ 素地調整は、塗替塗装の品質を担保するのに 50%以 んな疑問が湧き上がってきた。「日本のブラスト業界は 上寄与すると言われている。その中でも、素地調整 1 世界で通用するのか、本当に言われている様に日本の 種はブラストしかない。しかし、そのブラストですら ブラストは遅れているのか?」と言う事だった。ブラ 使用機械や施工方法も全国的に基準が無く、各々が独 スト先進国であるアメリカはどの様な施工を行ってい 自のスタイルでブラストを、もしくはブラストらしき るのか、どの様な機材や研削材を使用しているのか、 もの行っているのである。 法律や環境問題への対策はどの様に行っているかと、 そこで、 「ブラストに関わる技術・知識の向上を以て、 疑問だらけだった。 社会インフラの長寿命化を担う事」を主旨として、北 そこで様々な方の御協力を得て、今年の 1 月 19 日 は北海道から、南は九州までのブラスト施工業者に声 か ら 25 日 の 7 日 間、 ア メ リ カ で の SSPC 展 示 会 を掛けて、賛同して頂ける業者に集まって頂き「ブラ (写真-1〜写真-4参照)とゴールデンゲートブリッジ スト施工技術研究会」が発足した。ブラスト施工業者 (写真-5〜写真-10参照)、ロサンゼルスハイウェイの 2 だけではなく、装置メーカー・研削材メーカー、他に ブラストを施工するには足場を多々利用する。しかし、 現場の視察を会員 8 社 11 名で行う事となった。 まずはテキサス州サンアントニオにて参加した 我々は足場仮設後に現場に行く事が多く、凄く施工し SSPC2016 だが、日本でも展示会にブラスト関連の機 難い足場での作業になる事が多い。他工種との兼ね合 材や研削材等は出店しているが、ほぼブラスト関連の いも有るからだが、ブラスト側からの視点を聞いて頂 みの展示会で有るという事に大変驚かされた。世界各 きたいと言う事から足場資材メーカー、ブラストには 地のブラスト関連業者が一堂に会したみたいだ。ブラ 産廃が必須なので産業廃棄物業者、作業員を守る・安 スト機材だけでも種類豊富で、通常のブラスト釜から 全に作業するという観点から保護具メーカーと、ブラ 1MPa の高圧釜、日本では到底走れないであろうト スト施工業者だけでは無く、ブラストに関わる業種の ラック積載型の超大型機械や、スポンジブラスト、新 方方に賛同して頂き、当初は 14 社で発足し、今現在 しい所では自動ブラスト機が数台展示して有った。ブ (平成 28 年 7 月現在)では 27 社までになった。 会員間で色々と話をしていると、非常に興味深い話 が多多出てくる。例えば、北海道では雪景色の中、寒 ラスト機で印象的だったのは、湿式ブラスト各種の展 示が多かった事だ。 それよりも 1 番驚いたのは、研削材の豊富さだった。 冷地養生を行ってブラストが施工されていたり、造船 日本で聞いていた事と大きく違い、アメリカ産・カナ 業界では検査員(インスペクター)制度が確立されて ダ産・オーストラリア産のガーネットやスラグ系・ガ いて、彼らによってより良い施工が行われていたり、 ラス系・アルミナ系など多種多用の研削材を使用して 今トレンドの研削材の事や、施工中の現場での狭隘部 施工を行っているという事だった。面白かったのが、 のブラスト法などなど。それが、施工会社からだけで 研削材メーカーの話を聞いていると、どのメーカーも 1)ブラスト施工技術研究会 会長 22 はなく、研削材メーカーや機械メーカー等からも複合 技 技術 術雑 雑感 感 写真-1 トラック積載型大型機材 写真-2 SSPC2016 展示会場(風景) 写真-3 様々な研削材 写真-4 様々なブラストノズル 「ウチの研削材が 1 番使用されているんだ。」と主張し 前に施工をしていて、プライマー塗装を行った後、緊 てきて、それを足すと 200%を超す比率になってし 急で他の場所を施工しなければならずに、そのままプ まっていた。 ライマーで 15 年間放置していた事だ。「大丈夫なのか」 他に特に目を引いたのが養生シートの多さだった。 と、こちらが心配したのだが、「問題ない。常に注意深 我々も見た事もないシートが多く、熱収縮シートや、 く我々が観察をしている。」との答えが返ってきた。施 厚手のシートにチャックが縫い込んであり、そこから 工方法も日本とは違って、2 日間ブラストを行った後 出入りが出来る物、シートとシートの繋ぎ目を極力無 に、エアブロー→プライマー塗装を小ロットずつ区 くした物など、やはりアメリカでもブラストの粉塵対 切って行う。これは日本もほぼ同じなのであるが、こ 策には力を入れていると感じた。 こからが違う。施工範囲総てにプライマー塗装を行っ 展示会場は、そんなに大きくなかったのだが、興味 ある物が多すぎて、時間が足りない位だった。 た後に、施工面・足場上総て水洗いを行うのである。 理由を聞くと、「再塗装を行う面に、粉塵の付着をさせ 次に、カリフォルニア州サンフランシスコに移動を ない為」だと言う。「その方式は、アメリカではスタン して、ゴールデンゲートブリッジにてブラスト施工現 ダードなのか。」と聞くと、 「他は判らない。あくまで 場 の 視 察 を 行 っ た。 現 場 で は、 現 場 管 理 者 の Philip もここの仕様はそうなっている。」との事だった。こち Chaney 氏の説明を受けた。彼等は世界的にも非常に らの疑問・質問に対して直ぐ明確な返答がある。アメ 有名なゴールデンゲートブリッジの補修だけを専門に リカの現場管理者はそれだけの知識と権限、そして自 する為の会社である。 信を持っている事に驚かされた。最終的には、我々が このトラス橋は全面ブラストで塗装塗替えを行って 質問をし過ぎて、うんざりとした顔はしていたが・・・。 いる。施工の問題点は日本と同じ様な事も多く、非常 あとは非常に合理的に施工を行っていると感じた。 に勉強になった。ここで一番印象に残ったのが、15 年 足場もそうだが最近、日本でも使用されている作業空 Structure Painting Vol.44 23 写真-5 視察したゴールデンゲートブリッジ 写真-6 橋梁内部 写真-7 ブラストマン 写真-8 参加者・現場作業員・現場監督との記念撮影 写真-9 現場監督の Philip Chaney 氏と筆者 写真-10 プライマー塗装後の水洗い作業 間を大きく取れる足場を使用して、作業者のストレス こちらはロサンゼルススタジアム近隣のハイウェイで、 を極力少なくする事や、その足場上にきっちりと区切 3 年掛けて全面塗替え塗装を行う現場である。残念な られた作業員休憩所や小物や機材置場が設置してあっ がらブラスト作業は始まっていなかったが、足場上で たりした。 工事概要の説明を受けた。 次に、ロサンゼルスに移動をして現場視察を行った。 24 今回の視察の成果としては、①規制等に大きな違い 技 技術 術雑 雑感 感 が有る事が解った ②素地調整に対して積極的である な業種である。しかし、橋梁の長寿命化には、適正な 事 ③アメリカでも様様なブラストが行われている事 素地調整が必須である。それを疎かにすると、品質に ④実際のブラストマンからも話を聞けた事 ⑤日本 重大な欠陥を伴う。我々の願いは、素地調整の重要度 も言われている程は遅れてはいない ⑥会員間の団結 をもっと理解して頂き、鋼構造物の長寿命化に貢献出 等が挙げられる。 来る様になる事だ。 今回の視察で残念だった事としては、①塗装系を詳 当然我々施工業者もまだまだ勉強をし、技術力を研 しく聞けなかった事 ②時間的な理由で、実際に使用 鑽してレベルアップをしなければならないが、正しく していた機材を見学出来なかった事 ③私個人的に英 ブラストを施工する事によって、品質が担保出来、尚 語力が悲しい位無かった事が挙げられる。 且つ長寿命化に繋がり、最終的にはコストダウンにな 施工の考え方や法規制等が違うので一概にアメリカ る。総ての橋梁にブラストをと言いたい所だが、ブラ が良いとか日本が良いとかは言えないが、お互いの良 ストも万能ではない。それぞれの物件をしっかりと検 い所を組み合わせれば、まだまだブラスト業界も発展 証し、橋梁に合わせて塗膜剥離工や他の素地調整工と 出来ると思っている。 お互いを補完しつつ、それに応じて適正な素地調整を 3.日本におけるブラスト 行う事が必要になってきている。 「発注者」・「受注者」・「施工者」が忌憚なく話し合え 日本でのブラストは、主に造船・プラント・水門等 る場を持って、お互いに意見を出し合っていく事で、 の鋼構造物での施工が多く、橋梁で本格的に活用され より良い品質の施工が実現するのではないでしょうか。 るようになってからはまだ日が浅い。まだまだニッチ Structure Painting Vol.44 25 特別寄稿 鋼鉄道橋の塗装概要と塗装工事について 坂本 達朗1) 1.はじめに 社会資本である鋼構造物は、長期間の供用を前提に 設計・建設されており、部材の腐食による安全性低下 を抑制する観点から、適切な防食技術が施されている。 鋼構造物の防食に用いられる材料には、塗料、溶射、 めっき、耐侯性鋼などが挙げられるが、この中で最も 古くから使用されてきた材料が塗料であり、多数の鋼 構造物に適用されている。したがって、鋼構造物を維 持管理するうえで、塗装技術を把握しておくことは非 常に重要と言える。 鋼構造物には様々な種類が存在する。本報で述べる 2) 図-1 最古の鋼鉄道橋(現・浜中津橋) 鋼鉄道橋は鋼橋梁の一種であり、主な鋼橋梁はその使 用目的に応じて大きく鋼鉄道橋と鋼道路橋に区分され る。これらは、構造物の規模や構造物構造などに起因 超えない範囲での目視による検査(通常全般検査)が する要求性能の違いにより、それぞれ異なる防食設計 行われている。また、構造種別や線区の実態に合わせ の元で維持管理されてきた。 て、部材に接近しての詳細な検査(特別全般検査)が 本報では、初めに鋼鉄道橋における塗装技術の概要、 必要に応じて行われる。 次いで塗替え時の塗装工事を中心とした現在の課題に 特別全般検査では詳細な検査を行うために足場を架 ついて触れるとともに、将来期待される防食技術につ 設することが多く、その場合には経済性の観点などか いて述べる。 ら塗替え施工を同時に行うのが一般的である。特別全 般検査の検査周期は一律に定まっておらず、通常全般 2.鋼鉄道橋の塗装技術の概要 検査時にき裂の発生などの大きな異状またはその兆候 2.1 鋼鉄道橋の歴史 が発見された場合や、塗膜の劣化程度が塗替えを必要 我が国の鋼鉄道橋の歴史は、1874 年に開業した東海 とする段階に達した場合に実施される。したがって、 道線(大阪〜神戸間)内に建設された錬鉄製のワーレ き裂などの発生が懸念されるために定期的な詳細点検 ントラス橋梁(武庫川橋梁、下神崎川橋梁、下十三川 が必要な鋼橋梁では、その周期に合わせた塗装仕様を 1) 橋梁)から始まった 。図-1 に、現在道路橋として転 選択し、塗膜の劣化程度に応じて詳細点検を実施する 用された桁の外観を示す 。その後、鉄道網の拡大に伴 鋼橋梁では、なるべく長期耐久性の期待できる塗装仕 い多くの鋼鉄道橋が建設された。初期の鉄道網の拡大 様を選択することが望ましいとされている。 2) は、明治期から大正期に行われた。このため、鋼鉄道 橋は長期間供用されているものが多い。市川らが 1980 3) 年代に鋼鉄道橋の実態について調査した結果 では、 2.3 鋼鉄道橋の塗装技術に関する基準類 鋼鉄道橋の塗装工事における基準類として最初に作 当時の段階で建設から 50 年以上経過した橋梁が半数以 成されたのは 1943 年の土木工事標準仕方書である。そ 上を占めており、現在においては 80 年以上経過した橋 の後、幾度の改訂や名称の変更を経て、現在では「鋼 梁が多く存在していることになる。 (以下、 「塗装指針」と呼ぶ。 ) 構造物塗装設計施工指針 」 4) が防食設計上の技術マニュアルとして各鉄道事業者に 2.2 鋼鉄道橋の維持管理方法 活用されている。 「塗装指針」では防食設計、塗装系、 鋼鉄道橋では安全性の確保を主目的として、2 年を 塗装施工、管理・検査などが記載されており、以下に 1)公益財団法人鉄道総合技術研究所 材料技術研究部 26 特別寄稿 記載している近年の塗装系や塗装工事については「塗 装指針」に則った内容となっている。 2.4 塗装系の変遷 鋼構造物では、長期間の防食性や耐候性などの種々 の性能が求められる。このため、性質の異なる複数の 塗料を組み合わせた塗装仕様(塗装系)が用いられる。 塗料技術の進歩により、鋼鉄道橋では様々な塗装系が 採用されてきた。 鉄道が開業された明治期から 1950 年代までの間は、 現場調合型の鉛丹さび止めペイントが一般に用いられ ていた。太平洋戦争後から調合された状態の塗料が使 用されるようになり、1960 年代に入ると鉛丹以外の鉛 系さび止め顔料を用いた塗料が採用されるようになっ 図-2 局所的な塗膜変状および腐食を生じた部材の例 た。新設時塗装系と塗替え塗装系が区分されるように なったのもこの頃からである。 2.5 鋼鉄道橋の塗替え工事 1970 年代には、本四架橋の建設計画を受け、1960 年 鋼構造物は複数の部材から構成されることで複雑な 頃から研究されてきた 腐食性の高い環境に対して長 形状を有する。このため大部分では健全な塗膜が存在 期間の防食性が期待できる塗装系(長期防錆型塗装系、 する一方で、狭隘部や角部、添接部や部材下面などで 鋼道路橋の分野では重防食塗装系に類する)が基準類 は比較的早期に塗膜変状や腐食が生じ、塗膜の劣化は で規定された。これにより、一般的な環境では鉛系さ 構造物全体で均一に進行しないことが多い。局所的な び止め塗料と長油性フタル酸樹脂塗料の塗装系が用い 塗膜変状および腐食を生じた部材の例を図-2 に示す。 5) られ、腐食性の高い環境ではエポキシ樹脂塗料やポリ このような状態の鋼構造物に対して旧塗膜を全て除 ウレタン樹脂塗料などから成る塗装系が用いられるよ 去して全面を塗替えるのは経済的ではない。また、過 うになった。新設時塗装系には、ジンクリッチペイン 去に国鉄で実施された現地塗替え試験では、発錆部だ トとエポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料などを け鋼素地を露出させた方が塗膜欠陥の発生率が少ない 用いた塗装系が規定された。ただし、塗装系の移行に という結論が出ている 。これらを考慮して、鋼鉄道橋 は時間を要し、上記の長期防錆型塗装系が本格的に普 の塗替え工事では健全と考えられる塗膜を活膜と称し 及するようになったのは 2000 年代からである。 て残す方法が一般的に採用されている。以下に、塗替 2000 年代になると、有害化学物質の使用制限( 「国 等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グ 6) え工事における重要な項目として、素地調整方法およ び塗装方法についての基本概念を述べる。 リーン購入法) 」や「特定化学物質の環境への排出量の 2.5.1 素地調整 把握等及び管理の改善の促進に関する法律」などの制 塗装前の素地調整では、劣化した塗膜やさびを除去 定など)や、揮発性有機化合物(VOC)の排出量削減 し、活膜の表面を清浄にするとともに適度なあらさを に向けた取組み(「大気汚染防止法」の改訂など)を受 付与する作業を行う。活膜の範囲は事業者側が事前に けて、一部塗装系を廃止するとともに、環境に配慮し 把握しており、「替ケレン種別」と呼ばれる区分で作業 た塗料を用いた塗装系が登場した。具体的には、鉛や 者側に伝えられる。替ケレン種別の分類と鋼素地が露 クロムを含まないさび止め塗料(鉛・クロムフリーさ 出する面積率の目安を表-1 に示す。 「塗装指針」では び止め塗料)や、溶媒に水を用いた水系塗料などから 替ケレン-3 での塗替えを推奨している。これは、塗膜 成る塗装系が規定された。 の全面更新などの特殊な場合を除き、替ケレン-1 や替 ケレン- 2 で塗替えする段階では鋼材の腐食がある程度 進行している場合が多いことや、腐食の進行程度に応 4) 表-1 替ケレン種別による鋼素地の露出面積率と作業量比(目安) Structure Painting Vol.44 27 鋼素地露出箇所 さびの残存箇所 図-3 素地調整後にさびが残存した状態の例 図-5 複数層に塗り重ねられた旧塗膜の断面 の見本を図-4 に示す。 2.5.2 塗装方法 鋼鉄道橋の塗替え作業は夜間作業を伴うことが多い。 これは、構造物構造によっては軌道上から塗装しなけ ればならない場合があるためである。塗装時の環境条 件には気温、湿度が挙げられ、所期の塗膜特性を発現 させるため、使用可能な範囲が規定されている。一般 に使用される塗料の塗装作業禁止条件を表-2 に示す。 温度の上限については特に定められていないが、高温 となった部材では塗料が著しく早期に乾燥・硬化する などの理由によって塗装作業性が低下する場合がある ため、注意が必要である。 動力工具を用いて替ケレン2を適用した状態であり、 鋼素地露出箇所にさびは残存していない 図-4 素地調整後の見本写真 4) 3.塗替え工事における現在の課題と対策 長期間供用された鋼鉄道橋では、活膜として残存す る旧塗膜が十数回塗り重ねられたものとなっているこ とが多い(図-5)。また、塗り重ねに伴って旧塗膜を構 成する塗料種は多岐に及んでいる。このような状況を じてさびを除去するための作業量が甚大となり、素地 受け、本報では、塗替え工事における現在の課題のう 調整が不十分となる可能性が高くなることによる ち、厚膜化に伴う塗膜変状への対応や、部分塗装系の (図-3) 。 適用、塗膜中の有害物質への対応について述べる。 塗膜の耐久性は、鋼素地の状態に大きく影響する。 特に、腐食した部材においてさびが残存した状態で塗 3.1 厚膜化に伴う塗膜変状への対応 装すると、塗膜下での腐食が早期に進行して塗膜の劣 近年、複数回の塗替え工事が行われた鋼鉄道橋に残 化に至ることが経験的に知られている。このため、「塗 存する旧塗膜では、経年による樹脂の加水分解や酸化 装指針」では替ケレン種別に関わらず腐食箇所のさび 等に伴う塗膜劣化のほか、塗り重ねる塗料が硬化・収 を完全に取り除くことを基本としている。素地調整後 縮する際の内部応力の増加などが要因と考えられてい 4) 表-2 一般に使用される塗料の塗装作業禁止条件(温度、湿度) 28 特別寄稿 旧塗膜からの割れ 鋼素地からの剥がれ 図-6 塗膜変状事例 従来の塗膜劣化程度見本 (点さびに起因する塗膜変状) 塗膜の割れの評価見本 図-7 塗膜の割れ、剥がれの評価見本例 塗膜の剥がれの評価見本 4) る割れや剥がれが顕在化している。塗膜変状事例を た幅となるように碁盤目状の傷を導入し、テープ引き 図-6 に示す。 剥がし時の塗膜残存程度から、旧塗膜の健全性を評価 こうした塗膜変状は比較的厚い旧塗膜が残存した箇 する手法である。 所で生じることが経験的に知られており、せん断力な 旧塗膜に関する今後の課題の一つに、劣化した旧塗 どの作用によって容易に剥離する場合が多い。このた 膜の効果的な除去方法の構築が挙げられる。経年した め、本来であれば活膜とは言えない状態ではあるが、 鋼鉄道橋では旧塗膜の除去範囲が甚大となる可能性が 塗替え前には上記の塗膜変状が見られないために活膜 あり、こうした場合には塗膜除去の効率化と、後述す と誤認される場合がある。また、これまでの基準類で る塗膜中の有害物質への対応が求められる。これまで は主な塗膜変状を点さび及び点さびが拡大した剥がれ の塗膜除去方法には主に動力工具や手工具が適用され としており、塗膜の割れ、剥がれに対して十分な対処 ていたが、近年では剥離剤や誘導加熱などの塗膜除去 方法が記載されていなかったため、塗膜変状を見落と 技術について検討された事例が報告されている されていたことが指摘される。 うした技術について、適用範囲や費用対効果などの観 このような状況を受け、近年改訂された「塗装指針」 では、事業者側が活膜の範囲を特定する際の評価基準 に 塗 膜 の 割 れ、 剥 が れ の 見 本 を 新 た に 追 加 し た (図-7) 。また、旧塗膜の除去範囲を詳細に把握するた 7) , 8) 。こ 点から引き続き検討を進める必要がある。 また、旧塗膜の変状が膜厚に影響するのであれば、 塗り重ねに伴う旧塗膜の膜厚の増加を抑制できる塗装 系を開発する必要がある。 め、塗替え工事より前に塗膜状態調査を行うことを基 本とする旨を追加した。調査方法の例としては、スク 3.2 部分塗替え塗装系の適用 レーパーなどの手工具の適用のほかに、JIS K 5600– 鋼鉄道橋ではレールや架線からの摩耗粉などの影響 5–6「塗料一般試験方法 第 5 部:塗膜の機械的性質 第 によって汚れやすいなどの理由により、高い景観性を 6 節:付着性(クロスカット法)」に準じた碁盤目試験 必要としないことが多い。このため、2.5 節で述べたよ の適用が挙げられる。これは、試験箇所の膜厚に応じ うに塗膜劣化しやすい部位とそうでない部位での塗膜 Structure Painting Vol.44 29 このように、従来の全面塗替えでは対応困難な状態 の鋼鉄道橋が増加しつつあるのが現在の課題として挙 欠損部 げられる。この課題への対策の一つは、なるべく容易 に部分塗替えを行うことができるように基準類の改訂 を行うことである。近年改訂された「塗装指針」では 部分塗替えを実施する際の判定フローが導入されたほ か、部分塗替えを実施することでの維持管理費用の低 減効果例を示している(図-9)。また、筆者らは部分塗 替えを実施すべき腐食性の高い環境下の鋼鉄道橋を簡 9) 易に選定する手法を検討しており 、個々の橋梁で個別 の防食設計を導入することによる維持管理手法の適正 図-8 局所的な腐食により部材の欠損に至った事例 化が期待される。 3.3 塗膜中の有害化学物質への対応 状態に差が生じて局所的な変状を生じた場合には、景 2.4 節で述べたように、鋼鉄道橋で使用する塗料中の 観性を回復するための全面塗替えではなく、部分的な 有害化学物質への対応を始めたのは 2000 年代になって 塗替えを行うことが推奨されている。しかしながら、 からである。旧塗膜中に含まれる代表的な有害化学物 部分塗替えの場合には塗膜劣化箇所を詳細に把握する 質には鉛やクロムの化合物が挙げられ、塗替え時に除 必要があるなど、塗替えの適正時期が判断し難い。こ 去および廃棄する塗膜中にこれらの物質が含まれてい のため実際の塗替え方法としては、構造物全体の塗膜 ることから、作業者の安全や廃棄物の処理方法には注 が劣化してからの全面塗替えが主流となっている。 意を払う必要がある。近年では平成 26 年に厚生労働省 近年、塗装周期の延伸による維持管理費用の削減を から「鉛等有害物質を含有する塗料の剥離やかき落と 目的に、橋梁の設置環境を問わず、長期防錆型塗装系 し作業における労働者の健康障害防止について」が通 が広く適用されている。しかしながら、前述のように 達されるなど、作業者への鉛の影響が特に指摘されて 塗膜劣化の進行程度は部位によって異なり、塗膜自体 いる。このため素地調整作業時には、除去塗膜の粉塵 の耐久性に影響されないことが多い。沿岸部の橋梁の の吸入を阻止するための防護措置を入念に講じる必要 ように腐食性の高い環境に設置された鋼鉄道橋では、 がある。今後は、粉塵化した塗膜の環境中への飛散な 大部分の塗膜は健全であるが局所的な腐食が進行する どに対する規制が厳しくなることが予想されるため、 ため、全面塗替えを行う前に部材の欠損に至るまで腐 塗替え工事にあたっての適切な養生方法の構築などを 食が進行する場合がある(図-8) 。 検討する必要があると考えられる。 4) 図-9 塗替え手法による塗装費用 (積算値) と部材の板厚減少量 30 特別寄稿 4.おわりに 本報では、鋼鉄道橋を対象とした防食塗装技術の概 要と主な課題について述べた。現状で指摘されている 課題の多くは塗替え工事に関連しており、適切な塗装 が困難な部位に対する塗装方法の構築や、適切な素地 調整方法の確立などが求められている。また、作業者 の安全や環境への影響について従来以上に考慮する必 要があると考えられる。これまでは塗膜特性の向上と いうニーズのもとで塗料技術が注目されやすい傾向に あったが、今後は塗替え工事を中心とした施工技術に 着目した研究開発および技術開発が必要と考えられる。 【参考文献】 1) 久保田:本邦鉄道橋梁ノ沿革ニ就イテ,鉄道技術研究所業務研究資料,1934. 2) 日本橋梁建設協会:日本の橋(増訂版),p56, 1994. 3) 市川:鋼鉄道橋の補修・補強の概要,橋梁と基礎,Vol.28, No.8, pp.17-21, 1994. 4)(公財)鉄道総合技術研究所:鋼構造物塗装設計施工指針,2013. 5) 桐村,橋本,佐藤,大川:海洋環境における防食塗装,鉄道技術研究報告,No.1070, 1978. 6) 為広,吉田,菅原,鈴木:橋けた塗装試験報告 - 宗の尻橋りょうの調査 -,鉄道技術研究所速報,No.59-328, 1959. 7) 石橋,伊藤,中山:化学的方法を用いた塗膜除去に関する検討,日本鉄道施設協会誌,Vol.48, No.10, pp.847-849, 2010. 8)岡部,吉川,小野,中村:IH(電磁誘導加熱)による鋼橋の塗膜除去工法,Painting Structure, Vol.42, pp.2-10, 2014. 9) 坂本,貝沼:塗装さび鋼板を用いた塗装鋼構造物の腐食度評価に関する検討,防錆管理,Vol.60, No.5, pp.165-172, 2016. Structure Painting Vol.44 31 東京大空襲、沖縄戦、7 月 26 日ポツ れた。これは江戸時代の火災拡大防止 ダム宣言が広報され、広島、長崎の原 対策に他ならない。その後勤労動員で 爆投下で天皇制護持を条件にして「大 隅田川左岸、千住大橋のたもとの日本 東亜戦争終結に関する詔書」が放送さ 皮革の工場で軍靴の靴底の型取りの作 れることになったと言う。 業に従事する。連日プレスで金具を間 「日本の長い日」は軍部が存在する に皮革を打ち抜く作業を繰り返す。 と戦争が自己目的化し戦争は容易に終 やがて海軍予科兵学校を受験する事 わらない。現今の安全保障関連法案に になり広島の江田島に出向いた。兄貴 関連して来そうな話でもある。 はすでに無線通信の関係で輸送船に 最近戦争を振り返る記事、映画、テ 乗っており、一次審査を通り江田島に レビ映像が盛んに出て来る。我々の年 呼び出され戦争に参加するのも当然の 代は戦時下で生活をひしがれ、もう振 事としての認識だった。 り返りたくない気持ちなのだが、8 月 筆記試験終了後、身体検査を受けた 15 日は何の日と尋ねられ答えられた が肺浸潤の影があるから不合格と通告 される。その夜宿舎は強烈な地震に襲 昨年は終戦 70 年、いろいろな談話、 のは 20 〜 30 才代では 30%に満た ぬという。戦争を推し進めた支配階級、 われた。帰途東海道線は止まり、名古 想い出話がでてきた。 安部首相の談話では、かつての村山、 軍部、その犠牲になった国民の悲惨さ が甦って来る。 小泉談話を踏襲したが、加えて戦後生 まれの世代が人口の 8 割を超えたこと を踏まえ、「いつまでも謝罪を続ける 宿命を背負わせてはならない。 」と日 本の過去に対する謝罪に一区切りつけ たいと言っている。イギリス、アメリ カ、フランスなど先進国は、戦前アフ リカ、アジアの国々を植民地として支 配していたが、日本、ドイツの敗戦が 起因となってその植民地は独立国家に 変遷している。たしかにいつまでも日 本はお詫びしていかねばならないのか。 ドナルド・キーンの戦争を語る言葉 では「戦争に敗れたのは軍隊、勝った のは戦後の国民」他の国へ行った方が 幸せだとは誰も考えていない。日本人 として意識しなければならない言葉は 「大和」 「大いなる平和」と言っている。 映画「日本のいちばん長い日」を見 に行った。この映画は 1945 年 4 月 の鈴木貫太郎内閣の発足から、天皇の 聖断(決断)で終戦となる日までを描 いている。太平洋戦争の末期、戦争指 導部の混乱と天皇の決断、その録音盤 を奪取しようとした軍部クーデター未 遂事件があり、玉音放送が流れるまで の「長い一日」が映像化されている。 この映画に対して、明大教授山田朗 (日本近現代史)は史実はどうだった のかを次のように述べている。 既に近衛文麿は 2 月に戦争終結を上 奏したが、天皇は「もう一度戦果を見 てから」と拒否。5 月のドイツ降伏、 32 1)本誌 編集顧問 ここでは、自分なりに過去の苦い想 い出を拾い出して記してみたくなった。 屋から甲府経由の混雑する中央線夜行 列車で帰宅する。 軍需工場に戻り昭和 20 年の正月が 過ぎた頃、プレス機で型取りをしてい て右手人差し指第一関節の先を切断し 昭和 18 年、父の仕事の関係で生ま てしまった。集中心が欠けた放心状態 れ故郷の新潟県長岡から東京の目黒碑 だったようで気が付いた時、皮革には 文谷に引っ越した。当時はもう東京に 赤い血が広がっている。病院で手当て 転校する中学を探すのが大変でやっと してもらい三角巾に腕を通して夕方帰 都立上野中学で引け受けて貰う。田舎 宅した。家ではお袋が仏壇に向い線香 者が初めての東京で東横線に乗って渋 を灯して手を合わせて泣いている。 「ど 谷に出、地下鉄で上野に通うだけでも うしたの?」と尋ねたら、兄貴が南太 一苦労だった。 平洋上で戦死の通報があったという。 教室では越後訛りの言葉が抜けず、 英語の教科書を読まされ、アイ ウエ わが身の怪我どころではなく不幸がそ の日に重なってしまった。 ントをアイ ウイントと発音して皆に 上野中学の工作室での戦闘機の部品 笑われ、何故笑われたのか分らずキョ 作りに移る。隣接する上野動物園では トンとした。後で分ったのだが越後言 猛獣の処理の話が伝わり、5 月には大 葉には母音が 6 個、イとエの間にイエ 空襲で下町は焼け野原となる。上野公 と混ざった発音があると柳田国男説を 園の丘の上から眺望すると見渡す限り 見つけ納得したのだが、これはなお後 無残な空襲の焼け跡の先に浅草寺の瓦 を引いている。 屋根だけが見える。その後寛永寺の庭 長岡中学は 1 年半、上野中学は 3 先には運び込まれた無数の焼死体が並 年半だったが、仕事の関係で東京に住 びまさに茫然自失と言う外ない。幸い むことになった長岡の友達 3 人とは今 我が家は庭に焼夷弾の重しが落ちて来 でも年賀状のやり取りをし、上野の連 て、お袋がビックリ飛び上がった程度 中とは卒業以来付き合いがない。石川 で済んだが、長岡は大空襲で焼け野が 啄木の歌に「ふるさとの訛なつかし停 原になったというから、何が幸いする 車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」 か分らない。 というのがあるが今でも身に染みる思 いがある。 8 月 15 日昼、校庭に並んでラジオ 放送を聴く。雑音が交じり玉音放送は 何を話しているのか不可解だったが、 中学 3 年の時、日暮里から浅草まで の道路拡幅強制工事の手伝いをさせら とにかく「皇国の興廃この一戦にあり」 で煽られた戦争は終結したのだと息つ いたのだけが記憶に残る。教壇に立つ 刑務官の案内で仲間と拘置所の門をく でプラカードを掲げている。今回は 先生も軍国主義からいきなり民主主義 ぐった。鉄格子の扉が開き入所した途 我々の教育復興闘争よりさらに日本の への急転換に責任を感じたのか、曖昧 端背中でガタンと音を立てて閉まり身 将来を見据えて国のあり方を考える大 な態度で煮え切らない。やがて鬼畜米 が引き締まった。 きな行動だと思うと感無量のものがあ 英から親米となり米兵が街をうろつき、 「リンゴの唄」に平和の訪れを実感す 3 階建ての建物は 1 階から 3 階ま る。 で吹き抜けになっていて、3 階の廊下 を歩く係官が見上げられる。独房のド 昭和 39 年東京オリンピック開催を アには覗き窓があり部屋は 6 畳ぐらい 前にして新幹線は東京−大阪間が開通 か、片隅に陶器の台があって木の板が し首都高速道路も羽田から日本橋を 載っている。台と思ったのは便壺、板 通って代々木国立競技場へ直結し開催 は食事用テーブルと聞いて寒気がして に万全を図った。その後、国土改造計 復興学生決起大会が日比谷公園で開か くる。複合部屋は何段かの棚式寝床、 画が政策スローガンとなり道路整備、 れた。前もって、デモの実行委員の一 風呂は裸になって列を作って通り抜け ダム構築に拍車がかかる。 員として中央大学、日大に出掛け共闘 るだけとか。作業場を見学し青い服の 東京では路面電車が外されて地下鉄 を申し入れメッセージを渡し、懇談会 背中に刑 00 番とある服役中の男とす に振り替わり、道路拡幅工事に伴い都 を開いて何とか参加してほしいと要望 れ違い、何とも云いようがなく身体が 市高速道路の建設が華々しくなって来 している。趣旨は私立大学の授業料は しびれてき、しんみりして拘置所を失 た。路線は 9 号線まで計画され更に神 国立大学の 10 倍を超えているのを、 礼する。友人の親父さんの我々を見学 奈川線、湾岸線と延伸される。 国として助成金を出してその格差を減 させた意図が見えてき意気消沈となっ らして貰おうという運動だった。国会 てしまった。 ることになる。 昭和 22 年第一早稲田高等学院に入 学した。 昭和 23 年終戦後の混乱の中、教育 く程度で納められている。 帰途、道端で通りがかりの親父さん に呼び止められ質問された。 北池袋から高島平までの建設を担当す る第 2 建設部部長を命じられた。 ヘのデモ、そして各党文教委員に面会 し文教予算の増加を要請したが聞き置 首都高速に勤務して 15 年、5 号線 大学制度が変わり高等学院 2 年生か ら新制大学 2 年生に移行する。各科に 昭 和 53 年 6 月、 板 橋 区 議 会 に 午 別れて行くため、最後の機会だからと 後から出席を求められ、厳しい質問攻 友人それぞれの故郷に誘ってくれた。 めに会う。 「何故この街に高速道路を通すのか?」 「君たち憲法 89 条を知っているの 浜松で歓待され、九州福岡へと長い旅 かね?」返事のしようがなく後で調べ が続く。途中から眺めた広島の原爆の 「この区役所の前の中仙道は地元の たら、そこには「公金その他の公の財 凄惨の跡に眼を見張る。見渡す限りの 車も仙台、青森に行く車も一緒になっ 産は・・・・・教育若しくは博愛の事 焼け野が原は東京の比ではないと痛感 て大混雑し、そのため車は狭い道にま 業に対しこれを支出しまたはその利用 する。帰途は回り道して別府から船に で入り込んで事故を起こしたりしてい に供してはならない」とあり愕然とし 乗り大阪へ。時間つぶしに歌舞伎見物 ます。この地域の車と遠距離の車を分 た。これはいずれ私立学校が学校教育 して、北陸線で戦後長岡へ戻っていた けて通すべきではありませんか。 」 法の教育法の規定を受けているため、 親父の処にたどり着く。懐の財布は その支配に属していると解釈され私学 空っぽになっていた。 「高速道路では 120km のスピード を出して事故を起こし危険極まりない。 どう対策を考えているのか。」 振興助成金法が施行されることになっ 新学期が始まった頃、学生集会が制 たのだが、これにはかなりの月日を必 圧される。警官多数が大学を取り囲み、 要としている。 学内に入るのを取り調べ本部玄関には の業務で我々の関与するところではな 「スピード違反の取り締まりは警察 学期末には試験ボイコットとまで話 鉄兜かぶった警官が守衛に立ち、大学 いが、必要な個所にはカメラを取り付 が進んだ。我々クラスとしてどうして の自治と自由の権利は無視された。ク けてスピード違反者の運転手の顔まで 良いか分らずクラス主任の中村英雄先 ラスメートの一人が我が家を訪ねてき、 写しとり三宅坂の管理所で常時警官が 生の板橋のお宅に伺った。 「まあ、そ レッドパージで大学を退学させられた れはともかく今読書会やっているから と悔しさ一杯に告げられ愕然とした。 警戒しています。」 その他、工事中の安全、騒音対策な 聞いていけよ。 」一時中断したがこれ 先生の中でも民主主義科学者同盟に参 ど質疑応答が延々と続きうんざりして が今に続く同人誌「ねんりん」への参 加しているだけで身の危険が迫ってい いた時議場がグラグラっとしてきた。 加のきっかけとなる。 ると聞き、言論の自由は破壊されつつ 宮城沖地震が起き、これで急きょ閉会 あり戦前の社会主義弾圧政策を再現し となった。何が幸いするか分らない。 ある日、クラスの仲間一人が「おい 親父が見学させてやるから来いと言っ ているよ。 」と誘われ興味本位で小菅 の東京拘置所を見学する事になった。 ているのかと身の毛がよだった。 現在、安全保障関連法案に反対する 学 生 団 体「SEALDs― 自 由 と 民 主 主 友人の親父さんはここの副所長だった。 義のための学生緊急運動―」が国会前 夜は地元の地区ごとの集会に呼び出 された。 中仙道から外れて高島平、荒川の笹 目橋までの地域で工事安全騒音対策、 Structure Painting Vol.44 33 ある日その委員会から突然出頭の通知 ているうち夜遅くなってしまう。地元 が手元に届いた。同時に係官が会社に 朝 10 時から夕方 5 時まで延々と の人は歩いて帰れるからいいがこちら やって来て机の引き出し、書類棚の調 続く。息抜きは公園近くでの昼食時の はそうはいかぬ。せめて終電には間に 査がはじまりメモ用紙、書類が持ち出 み。 合わせてくれと切望する。最大の問題 された。 帰宅すると家の門の前に誰か男が は高架橋による騒音振動対策、テレビ 日比谷公園を背にした検察庁の建物 立っている。新聞社のものですがと何 は板橋区の地下ケーブルによる有線放 の一画にでかけ、担当官より事情聴取 処から聞いたのか公取調査の事情を話 送に切り替えてもらうなどだった。 をうける。丁度その頃首都高 OB 会「首 してくれと言うのには閉口した。家に 建協会」の会長を引き受けていたので も係官がやって来て書棚の隅に置いて これが引き金となって高架橋計画が 激変する。北池袋から板橋と反対方向 その関係かと構えた。 あった日記帳、手帳を運んで行ったが、 の中央環状新宿線―品川線はすべて地 「首都高の建築関係工事を受注した 「あなたの記録は日程、旅行記、読書 下トンネル形式となり湾岸線の大井 会社で、これはあなたの差配によると 感想文しかありませんでしたね。」と ジャンクションで地上に出る事になる。 いうメモが見つかった。その事情をお 途中数か所に換気所、換気塔を設置し て排気ガスが沿道に与える影響を最小 限にしている。 渋谷の大橋ジャンクションでは地下 道路から地上の街路と 3 号線高架橋の 聞きしたい。」 「私の名を利用して各社適当に工事 を仕分けしたのではないですか。」 「入札金額がほとんど同じで談合し ているとしか考えられない。」 返してくれた。 約一か月が過ぎてやっと解放された。 精神的疲労からか気が付いたら体重が 6kg 減っていた。 誤解を招くから、李下に冠を正さず として「首建協会」を解散する。半年 上り下り両方向に接続するため何層も 「発注者側は入札時の時価に応じて 経過して公取委は最終措置として、首 の渦巻き状の連絡路が必要となった。 予定価格を決めている。入札価格がそ 都高建築工事に関連した 12 社に排除 ここの換気所屋上には緑化空間の整備 れより高くては落札する訳がない。 」 勧告を首都高に通知している。 として「目黒天空の庭」と名付けられ 毎日、同じ様な質疑応答の繰り返しで た公園まで整備されている。 一週間が経過する 戦後 70 年。新聞雑誌は盛んに過去 これは苦い想い出と言うより苦し フィリピンのセブ島の現場事務所か を掘り出してこれからの時代のあり方 かった想い出が浮かんで来たとでも言 ら連絡が舞い込んだ。セブ島からマク に問題を提起している。国として、国 う外ない。 タン島に渡る海峡の橋(410m)の起 民として、個人として振り返って見る 工式があり、それにはラモス大統領が いい機会かもしれぬ。 首都高速道路公団 22 年の勤務を経 て、建設会社に移った。 全国橋の架設現場を見て回る。入社 10 年後の平成 7 年(1995 年)1 月 出席するので是非参列して挨拶して欲 喜怒哀楽、さまざまな体験を経て今 しいとの要望だった。公取委の了解を 日に至っている事に気づき自分なりに えて一週間の日程で勇躍出掛けること 苦い想い出苦しかった体験を記して見 になる。 たくなった次第である。 阪神大震災が起きた。新幹線利用が可 セブ島はこの国の保養地。日本人観 能になり一週間後に出掛け、神戸市内 光客も見かけられ爽やかで良い気晴ら の高速道路は方々で桁が落下し、一本 しになった。 脚のコンクリート高架橋 630m が倒 帰国してからも尋問に近い取り調べ 壊しているのを目前にして凄まじいと が続く。近くの部屋で大声をあげてい 云うより不気味な悪夢を見ているよう るのが聞こえてくる。 に感じた。市の旧庁舎は圧壊しており 想定外の地震の上下動による怖さを認 識させられる。 耐震、免震、制震、と構造物に対す 何時もの担当官の脇に見慣れぬ男が 着席した。いきなり怒鳴り出した。 「何をいつまでしらっぱくれている んだ!」 る防震構造が再認識され、その後古い 「私は参考人として呼ばれているの 建物などにはたすき掛けの補強が施さ じゃないんですか?」彼の隣りの担当 れてきたが直下型地震には対応できる 官が片手を挙げて制してくれた。 のか心配してしまう。 「この人は検察庁の検察官で刑事責 任を追求するのが目的。談合と判明す 大手建設会社に対して、例によって 公正取引委員会が動き出しているとい う噂が立ちまた談合騒ぎでもあるのか ればここから検察庁送りになりますか らね。 」 政官財界その癒着の調査、関連する と他人事のように感じていた。しかし、 公正取引委員会の談合摘発の厳しさを 34 身近に感じ取る。 家屋事前調査などあれこれ質疑応答し ―おわり― 橋塗協だより 第 5 回定時総会・懇談会を開催 第 5 回定時総会は 5 月 25 日(水)、午後 3 時 30 分からアルカディア市ヶ谷 6 階「霧島」において開 催された。 総会は、奈良間会長の挨拶、国土交通省大臣官房技術審議官 池田 豊人氏の来賓挨拶の後、議事に入り、 第 1 号議案「平成 27 年度事業報告承認」、第 2 号議案「平成 27 年度決算及び公益目的支出計画実施報告 書承認」が上程され、第 1 号議案及び第 2 号議案について、特に異議はなく、原案どおり承認、可決された。 報告事項の「第 1 号平成 28 年度事業計画について」及び「第 2 号平成 28 年度収支予算について」報 告され、いずれも、特に異議はなく、報告事項については終了した。 以上ですべての議事を終了し午後 4 時 30 分に閉会した。 午後 5 時から同所 6 階「阿蘇」において「懇談会」を開催した。懇談会は奈良間会長の挨拶、国土交通省 総合政策局 建設市場整備課企画専門官 仲嶋 幹雄氏の祝辞の後、一般社団法人日本塗装工業会 副会長 永 田 好一氏の乾杯の音頭で開宴、午後 7 時過ぎ盛会裏に終了した。 総会:奈良間会長 挨拶 懇談会:奈良間会長 挨拶 総会:国土交通省 池田技術審議官 来 賓挨拶 懇談会:国土交通省 仲嶋建設市場整備 課企画専門官 来賓挨拶 懇談会:(一社)日本塗装工業会永田副 会長 乾杯 平成 28 年度会長表彰 平成 28 年度表彰式は第 5 回定時総会終了後に行われ、安全施工者表彰の受賞者に対し表彰状を授与し、 併せて、副賞として記念品を贈呈した。 受賞者 濱田 恒志(東海塗装株式会社) 光井 和也(建設塗装工業株式会社) 松橋 正一(建設塗装工業株式会社) 鈴木 仁(中仙塗装工業株式会社) 茂木 進一(中仙塗装工業株式会社) 餅 佳(株式会社小掠塗装店) Structure Painting Vol.44 35 橋塗協だより 「高塗着スプレー塗装施工管理技術者」認定講習・試験を実施 平成 27 年度「高塗着スプレー塗装施工管理技術者」の認定試験及び更新講習会を東京・名古屋及び広島 で実施し、40 名(新規 7 名、更新 33 名)が認定された。これで平成 16 年度からの認定者の累計は 233 名となった。 「高塗着スプレー塗装技能者」講習会を開催 平成 27 年度「高塗着スプレー塗装技能者」講習会を東京・名古屋及び広島で実施し、48 名(新規 7 名、 更新 41 名)が修了した。これで、平成 16 年度からの修了者の累計は 134 名となった。 2 級土木施工管理技術検定試験(鋼構造物塗装)受験準備講習会の開催 平成 27 年度 2 級土木施工管理技術検定試験(鋼構造物塗装)の受験者を対象に講習会を開催した。東京、 大阪及び福岡で実施し、133 名が受講した。 塗装技士会 第 16 回通常総会を開催 日本塗装土木施工管理技士会(略称:塗装技士会)「第 16 回通常総会」は、5 月 25 日、午前 11 時か らアルカディア市ヶ谷 6 階「霧島」において開催され、下記の議事が原案どおり承認された。 第 1 号議案 平成 27 年度事業報告承認の件 第 2 号議案 平成 27 年度収支決算承認の件 第 3 号議案 平成 28 年度事業計画(案)決定の件 第 4 号議案 平成 28 年度収支予算(損益ベース) (案)決定の件 以上ですべての議事を終了し午前 11 時 30 分に閉会した。 会議等開催状況 【第 4 回定時総会】 日 時 平成 27 年 5 月 27 日(水)15 時 30 分〜 16 時 10 分 場 所 アルカディア市ヶ谷 6 階「霧島」 議 事 第 1 号議案 平成 26 年度事業報告及び収支決算承認の件 第 2 号議案 平成 26 年度決算及び公益目的支出計画実施報告書承認の件 第 3 号議案 役員選任の件 報告事項 第 1 号 平成 27 年度事業計画について 第 2 号 平成 27 年度収支予算書について 36 【第 7 回理事会】 日 時 平成 27 年 4 月 22 日(水)15 時 00 分〜 16 時 10 分 場 所 鉄鋼会館 805 会議室 議 題 (1)平成 26 年度事業報告(案)の承認について (2)平成 26 年度収支決算報告(案)の承認について (3)平成 26 年度事業監査の報告について 【第 8 回理事会】 日 時 平成 28 年 3 月 23 日(水)15 時 30 分〜 16 時 30 分 場 所 鉄鋼会館 804 会議室 議 題 (1)平成 28 年度事業計画(案)の承認について (2)平成 28 年度収支予算(案)の承認について (3)正会員、賛助会員の入会の承認について (4)運営規則の改正の承認について (5)平成 28 年度会長表彰の承認について 【第 63 回運営審議会】 日 時 平成 27 年 4 月 22 日(水)13 時 30 分〜 14 時 30 分 場 所 鉄鋼会館 805 会議室 議 題 (1)平成 26 年度事業報告(案)の審議について (2)平成 26 年度収支決算報告(案)の審議について (3)平成 26 年度事業監査報告について 【第 64 回運営審議会】 日 時 平成 27 年 7 月 27 日(月)15 時 30 分〜 17 時 場 所 鉄鋼会館 804 会議室 議 題 (1)事業活動について (2)入会金について 【第 65 回運営審議会】 日 時 平成 27 年 10 月 27 日(火)15 時〜 17 時 場 所 鉄鋼会館 804 会議室 議 題 (1)新規正会員の入会金について (2)首都高速道路(株) の対応、中間報告について (3)正会員の退会について 【第 66 回運営審議会】 日 時 平成 28 年 3 月 23 日(水)14 時 00 分〜 15 時 20 分 場 所 鉄鋼会館 804 会議室 議 題 (1)平成 28 年度事業計画(案)について (2)平成 28 年度収支予算(案)について (3)賛助会員の入会について (4)運営規則の改正について (5)平成 28 年度会長表彰者について Structure Painting Vol.44 37 第19回技術発表大会報告 一般社団法人 日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会 38 会員名簿 会社名 (平成 28 年 9 月 1 日現在) 〒 住所 TEL FAX 北海道地区 (1 社) ●北海道(1 社) ㈱大島塗装店 063-0823 北海道札幌市西区発寒 3 条 2-4-18 011-663-1351 011-664-8827 ㈲柿崎塗装 031-0801 青森県八戸市江陽 5-6-20 0178-43-2979 0178-43-8825 ㈱富田塗装所 031-0804 青森県八戸市青葉 2-12-17 0178-46-1511 0178-46-1513 ㈲大館工藤塗装 017-0823 秋田県大館市字八幡沢岱 69-7 0186-49-0029 0186-42-8592 ㈱加賀昭塗装 011-0942 秋田県秋田市土崎港東 2-9-12 018-845-1247 018-846-8822 ㈱黒澤塗装工業 010-0001 秋田県秋田市中通 3-3-21 018-835-1084 018-836-5898 三建塗装㈱ 010-0802 秋田県秋田市外旭川字田中 6 018-862-5484 018-862-5564 中仙塗装工業㈱ 010-1424 秋田県秋田市御野場 8-1-5 018-839-6110 018-839-6116 平野塗装工業㈱ 010-0971 秋田県秋田市八橋三和町 17-24 018-863-8555 018-877-4774 ㈱フジペン 010-0802 秋田県秋田市外旭川宇田中 6-3 018-866-2235 018-866-2238 丸谷塗装工業㈱ 010-0934 秋田県秋田市川元むつみ町 7-17 018-823-8581 018-823-8583 ㈱山田塗料店 015-0852 秋田県由利本荘市一番堰 180-1 0184-22-8253 0184-22-0618 ㈱トウショー 999-3511 山形県西村山郡河北町谷地字月山堂 870 0237-72-4315 0237-72-4145 ㈱ナカムラ 997-0802 山形県鶴岡市伊勢原町 26-10 0235-22-1626 0235-22-1623 山田塗装㈱ 998-0851 山形県酒田市東大町 3-7-10 0234-24-2345 0234-24-2347 310-0031 茨城県水戸市大工町 3-2-8 029-224-8807 029-272-3191 371-0013 群馬県前橋市西片貝町 2-225 027-243-6505 027-224-9789 朝日塗装㈱ 273-0003 千葉県船橋市宮本 3-2-2 047-433-1511 047-431-3255 呉光塗装㈱ 271-0054 千葉県松戸市中根長津町 25 047-365-1531 047-365-4221 ヨシハタ工業㈱ 260-0813 千葉県千葉市中央区生実町 1827-7 043-266-5105 043-266-5194 東北地区 (14 社) ●青森県(2 社) ●秋田県(9 社) ●山形県(3 社) 関東地区 (28 社) ●茨城県(1 社) ㈱マスダ塗装店 ●群馬県(1 社) ㈱石田塗装店 ●千葉県(3 社) ●東京都(15 社) ㈱朝原塗装店 140-0011 東京都品川区東大井 1-13-12 クレールメゾン品川 109 号室 03-3450-5148 03-3450-5190 磯部塗装㈱ 136-0071 東京都江東区亀戸 7-24-5 03-5858-1358 03-5858-1359 久保田塗装㈱ 112-0013 東京都文京区音羽 1-27-13 03-6912-0406 03-6912-0407 建設塗装工業㈱ 101-0044 東京都千代田区鍛冶町 2-6-1 堀内ビルディング 7 階 03-3252-2511 03-3252-2514 建装工業㈱ 105-0003 東京都港区西新橋 3-11-1 03-3433-0757 03-3433-4158 江東塗装工業㈱ 132-0025 東京都江戸川区松江 7-3-10 03-3653-8141 03-3653-7227 ㈱河野塗装店 111-0034 東京都台東区雷門 1-11-3 03-3841-5525 03-3844-0952 昌英塗装工業㈱ 167-0021 東京都杉並区井草 1-33-12 03-3395-2511 03-3390-3435 ㈱鈴木塗装工務店 120-0022 東京都足立区柳原 2-30-14 03-3882-2828 03-3879-0420 大同塗装工業㈱ 155-0033 東京都世田谷区代田 1-1-16 03-3413-2021 03-3412-3601 ㈱テクノ・ニットー 144-0051 東京都大田区西蒲田 3-19-13 03-3755-3333 03-3755-3355 東海塗装㈱ 146-0082 東京都大田区池上 5-5-9 03-3753-7141 03-3753-7145 ㈱冨田鋼装 133-0052 東京都江戸川区東小岩 1-24-12 03-3672-1707 03-3657-1892 ㈱ナプコ 135-0042 東京都江東区木場 2-20-3 03-3642-0002 03-3643-7019 丸喜興業㈱ 154-0023 東京都世田谷区若林 2-7-9 03-3422-3255 03-3412-4907 Structure Painting Vol.44 39 会員名簿 (平成 28 年 9 月 1 日現在) 会社名 〒 住所 TEL FAX ●神奈川県(5 社) ㈱コーケン 236-0002 神奈川県横浜市金沢区鳥浜町 12-7 045-778-3771 045-772-8661 ㈱サカクラ 235-0021 神奈川県横浜市磯子区岡村 7-35-16 045-753-5000 045-753-5836 清水塗工㈱ 221-0071 神奈川県横浜市神奈川区白幡仲町 40-35 045-432-7001 045-431-4289 シンヨー㈱ 210-0858 神奈川県川崎市川崎区大川町 8-6 044-366-4771 044-366-4810 ㈱ヨコソー 238-0023 神奈川県横須賀市森崎 1-17-18 046-834-5191 046-834-5198 安保塗装㈱ 390-0805 長野県松本市清水 2-11-51 0263-32-4202 0263-32-4229 桜井塗装工業㈱ 380-0928 長野県長野市若里 1-4-26 026-228-3723 026-228-3703 ㈱ダイソー 390-0852 長野県松本市大字島立 810-1 0263-47-1337 0263-47-3137 ㈱小島塗装店 943-0828 新潟県上越市北本町 2-6-8 025-523-5679 025-523-5195 平川塗装㈱ 950-0950 新潟県新潟市中央区鳥屋野南 3-1-15 025-281-9258 025-281-9260 939-8261 富山県富山市萩原 72-1 076-429-6111 076-429-7178 ㈲沖田塗装 921-8066 石川県金沢市矢木 3-263 076-240-0677 076-240-3267 ㈱川口リファイン 921-8135 石川県金沢市四十万 5-3-2 076-287-5280 076-259-0124 萩野塗装㈱ 920-0364 石川県金沢市松島町 3-26 076-272-7778 076-249-1103 ㈱若宮塗装工業所 920-0968 石川県金沢市幸町 9-17 076-231-0283 076-231-5648 ㈱岡本ペンキ店 914-0811 福井県敦賀市中央町 2-11-30 0770-22-1214 0770-22-1227 ㈱野村塗装店 910-0028 福井県福井市学園 2-6-10 0776-22-1788 0776-22-1659 ㈱山崎塗装店 910-0017 福井県福井市文京 2-2-1 0776-24-2088 0776-24-5191 421-3203 静岡県静岡市清水区蒲原 1-25-8 054-385-5155 054-385-5158 ㈱佐野塗工店 457-0067 愛知県名古屋市南区上浜町 215-2 052-613-2997 052-612-3891 ヤマダインフラテクノス㈱ 476-0002 愛知県東海市名和町石塚 12-5 052-604-1017 052-604-6732 ㈱内田商会 502-0906 岐阜県岐阜市池ノ上町 4-6 058-233-8500 058-233-8975 岐阜塗装㈱ 500-8262 岐阜県岐阜市茜部本郷 3-87-1 058-273-7333 058-273-7334 ㈱森塗装 500-8285 岐阜県岐阜市南鶉 7-76-1 058-274-0066 058-274-0472 ㈱小掠塗装店 551-0031 大阪府大阪市大正区泉尾 3-18-9 06-6551-3588 06-6551-4319 ㈱ソトムラ 577-0841 大阪府東大阪市足代 3-5-1 06-6721-1644 06-6722-1328 鉄電塗装㈱ 534-0022 大阪府大阪市都島区都島中通 2-1-15 06-6922-5771 06-6922-1925 ㈱ハーテック 550-0022 大阪府大阪市西区本田 1-3-23 06-6581-2771 06-6581-3063 ㈱伊藤テック 661-0043 兵庫県尼崎市武庫元町 1-29-3 06-6431-1104 06-6431-3529 ㈱ウェイズ 657-0846 兵庫県神戸市灘区岩屋北町 4-3-16 078-871-3826 078-871-3946 千代田塗装工業㈱ 672-8088 兵庫県姫路市飾磨区英賀西町 1-29 079-236-0481 079-236-8990 ㈱日誠社 673-0011 兵庫県明石市西明石町 2-1-13 078-923-3674 078-923-3621 ●長野県(3 社) 北陸地区 (10 社) ●新潟県(2 社) ●富山県(1 社) 住澤塗装工業㈱ ●石川県(4 社) ●福井県(3 社) 中部地区 (6 社) ●静岡県(1 社) 静岡塗装㈱ ●愛知県(2 社) ●岐阜県(3 社) 近畿地区 ( (8 社) ●大阪府(4 社) ●兵庫県(4 社) 40 会社名 〒 住所 TEL FAX 中国・四国地区 (10 社) ●島根県(1 社) 蔵本工業㈱ 697-0027 島根県浜田市殿町 83-8 0855-22-0808 0855-22-7853 ㈱西工務店 700-0827 岡山県岡山市北区平和町 4-7 086-225-3826 086-223-6719 ㈱富士テック 700-0971 岡山県岡山市北区野田 5-2-13 086-241-0063 086-241-3968 ㈱カネキ 733-0841 広島県広島市西区井口明神 2-7-5 082-277-2371 082-277-6344 第一美研興業㈱ 731-5116 広島県広島市佐伯区八幡 3-16-13 082-928-2088 082-928-2268 司産業㈱ 734-0013 広島県広島市南区出島 2-13-49 082-255-2110 082-255-2142 ㈱長崎塗装店 730-0036 広島県広島市西区観音新町 1-7-24 082-233-5600 082-233-5622 日塗㈱ 721-0952 広島県福山市曙町 1-10-10 084-954-7890 084-954-7896 ㈱シンコウ 772-0003 徳島県鳴門市撫養町南浜字東浜 34-13 088-686-9225 088-686-0363 ㈱平井塗装 770-0804 徳島県徳島市中吉野町 4-41-1 088-631-9419 088-632-4824 ㈱くちき 880-2101 宮崎県宮崎市大字跡江 386-4 0985-47-3585 0985-47-3586 吉川塗装㈱ 883-0021 宮崎県日向市財光寺字沖の原 1055-1 0982-53-1516 0982-53-5752 903-0103 沖縄県中頭郡西原町字小那覇 1293 098-945-5135 098-945-4962 ●岡山県(2 社) ●広島県(5 社) ●徳島県(2 社) 九州地区 (2 社) ●宮崎県(2 社) 沖縄地区 (1 社) ●沖縄県(1 社) ㈱沖縄神洋ペイント (以上 80 社) 賛助会員 会社名 旭硝子㈱化学品カンパニー 〒 住所 100-8405 東京都千代田区丸の内 1-5-1 新丸の内ビルディング TEL 03-3218-5040 大塚刷毛製造㈱ 160-8511 東京都新宿区四谷 4-1 03-3357-4711 関西ペイント販売㈱ 144-0045 東京都大田区南六郷 3-12-1 03-5711-8901 三彩化工㈱ 531-0076 大阪府大阪市北区大淀中 3-5-30 06-6451-7851 ㈱島元商会 457-0075 愛知県名古屋市南区石元町 3-28-1 052-821-3445 神東塗料㈱ 661-8511 兵庫県尼崎市南塚口町 6-10-73 06-6426-3355 G-TOOL ㈱ 461-0001 愛知県名古屋市東区泉 1-13-1 泉第三パーキングビル 3F 052-265-8091 大日本塗料㈱ 554-0012 大阪府大阪市此花区西九条 6-1-124 06-6466-6661 ㈱トウペ 592-8331 大阪府堺市西区築港新町 1-5-11 072-243-6411 日本ペイント㈱ 140-8677 東京都品川区南品川 4-7-16 03-5479-3602 みぞぐち事業㈱ 041-0824 北海道函館市西梗町 589-44 0138-48-0810 山一化学工業㈱ 110-0005 東京都台東区上野 1-10-12 商工中金・第一生命上野ビル 10F 03-3832-8121 山川産業㈱ 660-0805 兵庫県尼崎市西長洲町 1-3-27 06-4868-1560 好川産業㈱ 550-0015 大阪府大阪市西区南堀江 1-19-5 06-6538-3951 (以上 14 社) Structure Painting Vol.44 41 高塗着スプレー塗装工法 NETIS 登録番号:HR−050017−V 株式会社 島 元 商 会 代表取締役 島 隆 幸 ○取扱代理店 ○ほか営業品目 旭サナック(株)製高塗着スプレーシステム 塗装用刷毛各種・ブラシ各種 高塗着スプレー用アース分岐システム 塗装機器・養生用品・防災用品 高塗着スプレー関係 現場 設営 指導 仮設資材・その他建築塗装用資材一式 〒457-0075 名古屋市南区石元町 3−28−1 電話 052−821−3445 FAX 052−821−3585 42 元 (一社)日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会賛助会員 愛知県塗装技術研究会賛助会員 アース分岐システム特許取得番号 第 399101 号 Structure Painting Vol.44 43 44 NETIS(国土交通省新技術情報提供システム) 登録番号KK-120064-A 水性ジンキー 8000 HB 0570-200-684 Structure Painting Vol.44 45 46 当協会会員は、 「発注者から 信頼される元請企業」として 全国各地で活躍しています。 「より良い塗装品質」の確保を目指すと共に、 「 美しい 景観」の実現にも積極的に取り組んでいきます。 一般社団法人 日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会 〒103-0025 東 京 都 中 央 区 日 本 橋 茅 場 町 2 丁 目 4 番 5 号 茅場町2丁目ビル3階 TEL 03-6231-1910 FAX 03-3662-3317 E-mail [email protected] URL http://www.jasp.or.jp Structure Painting Vol.44 47 編 集 後 記 橋梁塗装に総合評価入札方式が試行・導入されて久しく、その間橋梁塗装業界は縮小の一途をたどり ました。 総合評価入札方式は評価点と価格点の合計で落札者が決まりますが、評価点がトップの企業にほぼ落 札する入札方式です。 それは受注意欲のある入札参加者が最低制限価格ギリギリの金額で入札するために、価格点では差が つかずに評価点の差がそのまま入札結果になるからです。 もう一つの問題点として評価点を付ける評価項目は、総合評価入札方式になる直前に施工実績を付け た業者が圧倒的に有利なことです。 評価項目が入札公示日の 2 〜 5 年前の施工実績を評価する項目が多く、しばらく受注機会が無かった 業者には評価点が付きません。 したがって評価点の低い業者は入札に参加しなくなりました。 よって受注の機会が得られない業者は官公庁の橋梁塗装から撤退していった経緯があります。 この入札方式を全て否定している訳ではありませんし、良い工事成績を目指して良い品質の工事を安 全に完了することに努力を惜しみませんが、総合評価入札方式の試行直前に施工実績を付けた一部の業 者に落札者が集中し、自由競争を制限する結果となった現状を発注者には問題視して頂きたい。 (M.T) 一般社団法人日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会 会 長 顧 問 奈良間 力 松崎 彬麿 副会長 鈴木 精一 加藤 敏行 副会長 塚本 正雄 Structure Painting 編集委員会 編集委員長 編集委員(五十音順) 並川 賢治(首都高速道路株式会社) 糸日谷淑光(本州四国連絡高速道路株式会社) 編集幹事 山内 貴宏(首都高速道路株式会社) 坂本 達朗(公益財団法人鉄道総合技術研究所) 加藤 敏行(副会長) 槌谷 幹義(橋塗協 理事) 服部 雅史(株式会社高速道路総合技術研究所) 守屋 進(元独立行政法人土木研究所) Structure Painting - 橋梁・鋼構造物塗装 - 平成 28 年 9 月 20 日 印刷 発行所 一般社団法人日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会 平成 28 年 9 月 30 日 発行 非売品 東京都中央区日本橋茅場町 2 丁目 4 番 5 号 年 1 回発行/無断転載厳禁 (茅場町 2 丁目ビル 3 階) 発行責任者 奈良間 力 〒 103-0025 電話 03(6231)1910 FAX 03(3662)3317 48 (通巻第 142 号)