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国内・海外での製品リサイクルの取組み

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国内・海外での製品リサイクルの取組み
国内・海外での製品リサイクルの取組み
Fujitsu Group Activities for Global Product Recycling
あらまし
国内の動きがゼロエミッションと廃製品のリサイクルに向かう状況の中,1998年12月に
国内業界初のリサイクルシステム(富士通リサイクルシステム)を構築した。これは,富士
通グループが事業系向けのお客様に対して廃製品を回収し,処分するスキームである。子会
社,パートナ会社が運営する富士通リサイクルセンターを全国5箇所に設置し,お客様の窓
口として富士通ロジスティクス(当時)が担当して運用を開始した。現在は,廃棄物処理法
に基づいて,広域認定を取得し,事業系と個人のお客様向けの廃製品回収のスキームを構築
し,製品リサイクルサービスとして運用している。また,海外におけるリサイクルスキーム
構築を2002年より開始し,2007年12月までに米国,カナダ,オーストラリア,フィリピン,
シンガポールの5箇国7拠点でリサイクルサービスを実施している。
Abstract
In line with a domestic environmental movement aimed at zero emissions and the
recycling of waste products, Fujitsu in December 1998 became the first company in the
industry to establish a recycling system in Japan (known as the Fujitsu recycling system).
This was a scheme whereby Fujitsu Group collects waste products from industrial users for
disposal and recycling.
We began a recycling operation by setting up Fujitsu recycling
centers in five bases nationwide, with Fujitsu Logistics Ltd. in charge of customer relations.
We now offer a recycling service as a certified, wide-area waste disposal agent under the
Waste Disposal and Public Cleansing Law, and have established a scheme to collect waste
products from both industrial and individual users.
Moreover, we launched a recycle
scheme overseas from 2002, and have implemented recycling services through seven bases in
the US, Canada, Australia, the Philippines, and Singapore until December 2007.
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工藤 孝(くどう たかし)
市村 真(いちむら まこと)
環境技術統括部 所属
現在,富士通リサイクルシステムの
運用管理に従事。
環境・リサイクルサービス部 所属
現在,事業系のリサイクルサービス
に従事。
FUJITSU.59, 2, p.146-152 (03,2008)
国内・海外での製品リサイクルの取組み
ま え が き
に対して廃製品を回収し,処分するスキームである。
子会社,パートナ会社が運営する富士通リサイクル
1991年にリサイクルの促進を目的とする「再生
センターを全国5箇所に設置し,お客様の窓口とし
資源の利用促進に関する法律(再生資源利用促進
て収集運搬業を持つ富士通ロジスティクス(当時)
法)
」が制定された。1993年から1998年にかけて,
が担当して運用を開始した。以下,富士通のリサイ
不法投棄の問題が顕著化し,廃棄物処理法による規
クルセンターについて述べる。
制がかけられてきた(図-1)。大量消費・大量廃棄
(1) 富士通リサイクルシステム(FRS)の拡充
型の経済活動により,廃棄物の最終処分場のひっ迫
当初,5箇所で始まったFRSは,現在は,図-3に
などが問題となるとともに,世界的には各種資源の
示すように6箇所(東日本リサイクルセンター,首
枯渇も懸念されてきた。国は環境保全と経済成長を
都圏相模原リサイクルセンター,首都圏綾瀬リサイ
両立させる循環型社会を形成することが重要な課題
クルセンター,中部リサイクルセンター,西日本リ
であると認識し,2000年に循環型社会形成推進基
サイクルセンター,九州リサイクルセンター)へ拡
本法を制定した。この法律では,事業者についても
充し,お客様の利便性を高めるために提携リサイク
事業活動のすべての段階において循環型社会の形成
ルセンター3箇所(札幌,金沢,沖縄)を新たに設
のために努力することを責務として規定している。
置した。
また,循環型社会形成推進基本法に基づき,講じる
(2) お客様向け回収スキーム
べき施策などを定めた循環型社会形成推進基本計画
お客様向け廃製品の回収スキームとして,家庭系
が2003年に策定された。2000年の循環型社会形成
リサイクルスキームと事業系リサイクルスキームが
推進基本法の制定以降,家電リサイクル法などの各
ある。富士通は,「廃棄物広域再生利用認定制度」
種リサイクル法が整備された。また,2000年に1R
の認定業者として,環境省から認可を受けて,回
(リサイクル)から3R(リデュース,リユース,リ
収・再資源化スキームを構築している。広域認定制
サイクル)に取組みを拡大するために従来の「再生
度としては,事業系のお客様向けの「事業系IT製
資源利用促進法」が「資源有効利用促進法(改正リ
品リサイクルサービス」と個人のお客様向けの「家
サイクル法)」へ大幅な改正が行われた。国の動き
庭系パソコンリサイクルサービス」がある。これら
を先取りする形で,1999年から2002年には工場廃
のサービスについては,別章で仕組みを述べる。
棄物を最終埋立て処分しない動きとして,ゼロエ
ミッションが製造系事業所に広がった。リサイクル
(3) 富士通リサイクルセンターの特徴
お客様のリスクを回避するために安心・安全を基
を推進するために,資源有効利用促進法(改正リサ
本として下記の活動を実践している。
イクル法)では指定再資源化製品としてパソコンを
・統一処理基準(解体基準)による適正処理の実施。
指定しており,企業系パソコンは2001年4月に,家
IT機器ごとに,解体基準を定めて,ユーザ情報
庭系パソコンは2003年10月に施行された(図-2)。
の抹消,HDDなどの記憶媒体の取外し・破壊を
欧州においては,販売会社に製品の回収を義務付け
規定。また,機器の機能破壊も規定。富士通のリ
るWEEE指令(注1 )がでてきている。
サイクルセンターであれば,どこでも同じ解体
富士通の資源循環に対する取組み
国内の動きがゼロエミッションと廃製品のリサイ
基準で解体処理を実施。
・お客様情報の漏えい防止(お客様名などのお客様
情報の抹消,HDDのデータ消去とHDDの破壊)
クルに向かう状況の中,1998年12月に国内業界初
。IT機器に貼られている機器管理番号シー
(図-4)
のリサイクルシステム(富士通リサイクルシステ
ルなどのユーザ情報をはがすことによりユーザ情
ム)を構築した。これは,富士通が事業系のお客様
報を抹消。また,HDDはボール盤による穴あけ
破壊,クラッシャによる破壊を実施。
(注1) Waste electrical and electronic equipmentの略。電気・
電子機器の廃棄物に関するEUの指令で,製造者に電
気・電子機器を回収してリサイクルすることを義務付け
たもの。
FUJITSU.59, 2, (03,2008)
・受入れから最終処分までのトレーサビリティの確
保(これを支援するために,リサイクル統合情報
管理システムを導入)。リサイクル統合情報管理
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国内・海外での製品リサイクルの取組み
・ゴミ処理の取組みに優先順位
循環型社会形成推進基本法
・排出者責任と拡大生産者責任
(2000年施行)
一般的な仕組みの確立
(2001年施行)
(2001年施行)
廃棄物処理法
(改正)
資源有効利用促進法
(改正リサイクル法)
・マニフェスト制度の見直し強化
・1R(リサイクル)⇒3R(リデュース,リユース,リサイクル)
・不正処分に関する罰則強化
・指定再資源化製品分野の新設
個別物品の特性に応じた規制
容器包装
リサイクル法
家電
リサイクル法
(2000年施行)
建設資材
リサイクル法
(2001年施行)
-家電4商品-
・洗濯機
・テレビ ・エアコン
・冷蔵庫
(2002年施行)
食品
リサイクル法
(2001年施行)
グリーン
購入法
(2001年施行)
図-1 国内環境法規制
Fig.1-Environmental law and regulation in Japan.
パソコン(指定再資源化製品) :新設分野
・対
象 : a) デスクトップパソコン本体
c) CRTディスプレイ装置 ・回収方法
b) ノートブックパソコン
d) 液晶ディスプレイ
: 製造事業者による自主回収システム構築
家庭系と事業系のリサイクルスキームによる運用
・再資源化状況 : 公表回収実績[回収重量・台数・資源再利用率]を家庭系
と事業系を合わせて毎年公表 2001年3月の経済産業省/環境省令第1号で定められた資源再利用率目標値
a) 50% b) 20% c) 55% d) 55%
・適
用 : 企業系パソコン
家庭系パソコン
2001年4月施行
2003年10月施行 図-2 資源有効利用促進法(改正リサイクル法)
Fig.2-Law for promotion of effective utilization of resources.
システムは,お客様ごと,マニフェストごとに受
け入れた廃製品をリサイクルセンターの各工程に
家庭系パソコンリサイクルサービス
配置された端末装置で入力し,リサイクルセン
本サービスは,日本郵便による業界共通の回収
ターの処理工程のどこにあるかを管理し,選別資
ルートをベースに構築されている。個人のお客様が
源化されるまでを記録。
パソコン4品目(デスクトップパソコン,ノートパ
・セキュリティの確保。各リサイクルセンターに監
ソコン,CRTディスプレイ,液晶ディスプレイ)
視カメラを設置し,映像を保存。また,HDDの
を廃棄したいときは,販売したメーカの窓口に廃棄
データ消去・破壊のために専用の部屋を設けて,
の申込みをすると,エコゆうパック伝票がお客様へ
IDカードによる入退室管理を実施。
送付され,対象のパソコンをゆうパックで戸口回収
・徹底した手解体による選別を行い,廃プラスチッ
するか郵便局へ持ち込むかをお客様が選択して回収
クの破砕,発泡剤の減溶ペレット化などを実施し,
される。回収されたパソコンは集配郵便局経由で集
素材への再資源化を実施。富士通の資源再利用率
荷場に集められて,そこから各メーカの再資源化拠
(再生部品・再生資源量/廃IT製品の処理量)は,
点(リサイクルセンター:富士通は3拠点)へ配送
90%を超えている。
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され,再資源化される仕組みとなっている(図-5)。
FUJITSU.59, 2, (03,2008)
国内・海外での製品リサイクルの取組み
:富士通リサイクルセンター
:提携リサイクルセンター
札幌
富士通東日本
リサイクルセンター
(株)エフアイティフロンティア
富士通西日本
リサイクルセンター
富士通周辺機(株)
富士通九州
富士通首都圏相模原
金沢
リサイクルセンター
エコー電子工業(株)
富士通中部
リサイクルセンター
富士通化成(株)
富士通首都圏綾瀬
リサイクルセンター
FDKエコテック(株)
沖縄
リサイクルセンター
PFUライフビジネス(株)
図-3 富士通リサイクルセンター(事業系)
Fig.3-Fujitsu recycling center for enterprise.
手解体
顧客データ・個人情報の消去
データ消去ソフトでディスク全領域に
ダミーデータを上書き(JEITAガイドライン準拠)
リユース
保守・修理用
10 mm
使用済みパソコン
ハードディスクの物理的破壊
ディスク部を電動ドリルで貫通穴あけ
HDDクラッシャで圧縮破壊
または
破壊ディスク
マテリアルリサイクル
・鉄
・アルミニウム
・銅
図-4 ハードディスクのデータ消去・物理破壊
Fig.4-Data erasing and physical destruction of HDD.
2003年10月以降に個人に販売したパソコンは,資
広域認定制度にのっとり,国内の官公庁,自治体,
源有効利用促進法および省令改正(2003年4月公
企業,病院など,事業系のお客様で不要となった
布)に基づき,メーカが廃棄時に無料(無償)で回
IT機器の廃棄を製造メーカの富士通が受託する
収・再資源化し,2003年10月以前に販売したパソ
。
サービスである(図-6)
コンは,有償で回収・再資源化している。
事業系IT製品リサイクルサービス
事業系IT製品リサイクルサービスは,環境省の
FUJITSU.59, 2, (03,2008)
事業系のお客様がIT製品の廃棄処理を行う場合,
廃棄物処理法に基づき都道府県(政令指定都市)の
許可を取得した産業廃棄物の運送業者と処分業者の
それぞれと直接契約が必要となるが,本サービスの
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国内・海外での製品リサイクルの取組み
<仕組>
・郵便局(ゆうちょ銀行)
カード支払時は②不要
日本郵便
「コンビニエンスストア」・「郵便
切手類販売所」・「簡易郵便局」
・「郵便局以外のゆうパック取扱
所」では取扱できません。
出典:パソコン3R推進センター (1)
図-5 家庭系パソコンの回収・リサイクル
Fig.5-Recycling for home-use PC.
[特徴]
お客様と富士通の契約
処理責任は富士通
お客様
契約
収集運搬会社
(28社)
収集
搬
運
契約
富士通
処分
契
約
提携リサイクルセンター
(3拠点)
富士通リサイクルセンター
(6拠点)
(富士通製IT製品)
「産業廃棄物広域再生利用認定制度(広域認定制度) 」にのっとった,富士通(生産者)
による使用済みIT製品の回収・運搬・廃棄処理サービス。
図-6 事業系IT製品リサイクルサービス
Fig.6-Recycling services for enterprise-use IT products.
場合,富士通との契約1本のみとなる。また,全国
るが,広域認定制度ではマニフェストに代わるエビ
に拠点を持つお客様は,地区ごとに認可のある運送
デンスが認められているため,本サービスでは契約
業者,産業廃棄物処理業者を探し,複数の契約が必
書と完了報告書をもって,お客様のマニフェスト手
要となるが,この場合も,契約1本のみで対応が可
続きを不要としている。
能となる。
実際の廃棄物の運送と処分については,広域認定
さらに,産業廃棄物を処理する上で,お客様はマ
制度で申請している業者のみを利用し,安心・安全
ニフェストと呼ばれる伝票の発行と管理が必要とな
なサービスを継続的に提供している。運送会社は
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FUJITSU.59, 2, (03,2008)
国内・海外での製品リサイクルの取組み
リサイクル法制定済みの国
富士通が自主的にリサイクルサービスを提供する国
図-7 海外での製品リサイクルサービス状況
Fig.7-Worldwide product recycling service.
IT機器の運搬を行うスキルのある富士通の協力会
社,処分はすべて富士通のリサイクルセンターで実
施している。
。
説明する(図-7)
富士通グループは,第4期富士通グループ環境行
動計画における目標の一つとして,北米・アジアで
なお,富士通はIT機器の新規導入,運用,廃棄
の廃IT機器のリサイクル体制構築に取り組んでき
の一連の流れをLCM(Life Cycle Management)
た。その成果として,2007年12月までに米国・カ
サービスとしてお客様に提案している。IT機器の
ナダ・オーストラリア・フィリピン・シンガポール
ライフサイクルの終末で産業廃棄物の適正な処理
の5箇国7拠点で,リサイクルサービスを実施して
サービスを提供することで,循環型社会の形成と地
いる。
球環境保護にも貢献していく。
海外リサイクルのグローバル体制構築
IT製品の廃棄量増加や情報セキュリティに関し
廃IT機器のリサイクル体制の構築に当たっては,
日本での経験や海外政府のガイドラインなどを参考
に統一されたリサイクル業者選定基準を作成し,そ
の基準によって各国でリサイクルパートナを選定し,
ては,世界的に問題視されている。このような状況
契約した。このシステムにより,富士通グループは
を受け,日本・欧州など一部の国々では,拡大生産
お客様から回収した廃IT機器をリサイクルパート
者責任という考えを取り入れ,特定の使用済み電
ナで,適切に処理するサービスを提供可能となった。
気・電子機器の適切な処理を生産者の責務とする法
以下具体的な活動事例を紹介する。
律が制定されてきている。欧州では2005年8月に
Fujitsu Transaction Solutions Inc.(米国)では,
WEEE指令が施行され,廃電気・電子機器の回収
2002年より,使用済みのPOSシステムなどを回収
が義務化された。富士通では,上記指令に対応する
し,自社工場で整備した後,再度使用してもらうな
ため2004年から他社に先駆けて欧州域内で廃IT機
どのサービスを提供し,お客様数ベースで約40%
器のリサイクルシステムを構築してきた。近年,廃
のお客様に利用されている。
電気・電子機器の回収義務化の動きが加速しており,
Fujitsu Australia Ltd.(オーストラリア)がIT
北米,アジアなどでも回収義務化の動きがでてき
製品リサイクルサービスを2006年4月より開始し,
ている。
2007年2月までに同国の大手小売企業を対象に約
本章では,これから廃電気・電子機器リサイクル
の法的義務化が進むと予測される北米・アジア(一
250トン(以下,t)の使用済みPOSシステムのリ
サイクルを行った。
部の州・国では既に義務化)での先行的な富士通グ
Fujitsu Philippines, Inc.(フィリピン)グルー
ループの廃IT機器の回収の取組みについて簡単に
プでは,パイロットプロジェクトとして,2006年6
FUJITSU.59, 2, (03,2008)
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国内・海外での製品リサイクルの取組み
月から2007年2月までの間にFPIグループおよびそ
構築し,お客様への信頼できるリサイクルサービス
のお客様からの電子廃棄物27 tのリサイクルを行っ
の提供と廃棄された資源の再利用や少ない投入資源
ている。2007年5月からは,IT製品リサイクルサー
で製造可能な環境配慮型製品の技術開発に役立てて
ビスを正式に開始し,廃IT製品を環境に配慮され
いく。
た方法で処理している。
む
香港では電機業界他社や小売業者と協力し,
す
び
2008年1月から始まったコンピュータリサイクルプ
富士通における製品リサイクルはお客様の安心・
ログラムに立上げ当初から積極的に参加している。
安全を基本に適正処理の確保が大きなサービスであ
また,タイでは,2008年度内に廃IT機器リサイク
ると認識し,対応している。
ルサービスの提供を計画している。
これで,欧州,アジア,北米,オセアニア域内で
の廃電子機器の回収体制がほぼ整ったことになる。
また,海外リサイクルを拡大していくとともに,
法令遵守のための適正処理を確保するための仕組み
の見直しに,今後とも継続して取り組んでいく。
今後も,富士通は廃IT機器の不法投機による環
境破壊防止のために生産者としての社会的責任をき
ちんと果たしていく。また,グローバル体制(情報
網)を利用し,高効率な廃IT機器回収スキームを
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参 考 文 献
(1) パソコン3R推進センター:PCリサイクルマニュア
ル(平成17年3月現在)
.
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