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212 2.6.1.5.2 マルチセル変換システムの制御動作検証 (1) 目的

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212 2.6.1.5.2 マルチセル変換システムの制御動作検証 (1) 目的
2.6.1.5.2 マルチセル変換システムの制御動作検証
(1) 目的
イットリウム系超電導コイルを用いた SMES の早期開発を目指し、そのシステムに最適と考
えられるマルチセル電力変換システムの設計を行い、動作検証用の制御装置と小規模モデル機
を製作し、SMES 基本に対する制御性を検証する。
(2) マルチセル電力変換システム用制御装置の試作
a. 制御装置概要
単相電力変換装置の試作に関し、変換器単体制御(セル制御装置)、U、V、Wの各相制御
(相制御装置)、三相制御を含む全体制御(全体制御装置)の各制御装置の組合せにて試作を実
施した。
(a) 変換器単体制御(セル制御装置)
セルモジュール
変換器単体制御は交流側電圧型PWM制御と
電流電圧変換器
単相インバータ
超電導
コイル
超電導コイル側電流電圧変換制御を実施する。
変換器単体制御(セル制御装置)は各セルモジ
ュールに搭載し、全体制御装置からの制御指令
に応じて電流電圧変換器と単相インバータへの
直
流
電
流
検
出
スイッチング指令を発生する。また相制御装置
からの制御指令(バランス補正)により、全体
制御装置からの指令に補正を実施する。なお、
直
流
電
圧
検
出
電流
電圧
変換
制御
単相
PWM
交
流
電
流
検
出
制御指令(直流側,交流側)
セルモジュールの直流電流・直流電圧・交流電
制御指令(バランス補正)
全体制御装置
相制御装置
流の検出を実施し、電流・電圧情報を相制御装
セル制御装置
置へ送信する。
図Ⅲ-1-2.6.1.5.2-1 単体制御回路
(b) 各相制御(相制御装置)
相入出力点
各相制御(相制御装置)は各相に 1 台配置し、
相内の各セルモジュールの入出力電力バランスや
セル2
電流電圧変換器
単相インバータ
全体制御装置
超電導
コイル
通信
直流電圧バランスを監視、バランス補正制御指令
相制御装置
通信
を各セルモジュールに送信を実施する。
バランス補正
なお、三相全体でのバランスは全体制御装置が
制御指令
セル制御装置
セル1
管理する。
電流電圧変換器
セル2
直流電圧電流
直流電流検出
単相インバータ
超電導
コイル
セル間
バランス
制御
相電圧検出
通信
バランス補正
セル2
直流電圧電流
直流電流検出
制御指令
セル制御装置
相電流検出
中性点
図Ⅲ-1-2.6.1.5.2-2 各相制御回路
212
連携リアクトル
(c) 全体制御(全体制御装置)
系
統
全体制御(全体制御装置)は上位制御装置から
の電力指令(有効電力, 無効電力)を受け、各セルモ
V相
U相
超電導
コイル
超電導
コイル
U2
セル
W相
超電導
コイル
V2
セル
W2
セル
ジュールの電流電圧変換器への電力指令と、単相
インバータへの電圧指令を相毎のセル制御装置へ
超電導
コイル
超電導
コイル
U1
セル
超電導
コイル
V1
セル
W1
セル
絶縁
送信する様にしている。この場合、同一相内の指
令は同じとなる。
また、各相制御装置との通信リンクにより三相
全体での電力と電圧のバランス制御を管理する様
にしている。なお、非常時のトリップ信号は専用
ラインを設け異常発生時の保護動作を確実に実施
する様にしている。
各
相
制
御
装
置
間
通
信
U
相
セ
ル
指
令
同
期
信
号
ト
リ
ッ
プ
信
号
全体制御装置
V
相
セ
ル
指
令
同
期
信
号
ト
リ
ッ
プ
信
号
W
相
セ
ル
指
令
同
期
信
号
ト
リ
ッ
プ
信
号
三
相
電
圧
検
出
三
相
電
流
検
出
電力指令(有効電力,無効電力)
上位制御装置
図Ⅲ-1-2.6.1.5.2-3 全体制御回路
(3) 小規模モデル機の詳細設計とその試作
実機製作に当たり、先ず変換器主回路の基本動作検証及び単相での SMES と系統を模した模
擬負荷装置間の充放電制御実施確認の為、セル変換器と呼称の単相インバータの製作を実施し
た。
a. 小規模モデル機の要目
(a) 模擬 SMES 仕様
インダクタンス
360mH
最大電流
DC5A
最小電流
DC2.5A
巻線抵抗
2.1Ω
蓄積最大エネルギー
4.5J
蓄積最小エネルギー
1.1J
利用可能エネルギー
3.4J
最小補償時間
0.027 秒(762/6W 出力時)
最大電圧
DC60V
定格電圧
DC48V
巻線数
6台
213
(b) 変換器全体仕様
変換器形式
電圧型、三相、マルチセル方式
モジュール構成台数
2 直、3 相構成、合計 6 台
系統側入出力容量
720VA
系統側電圧、周波数
AC104V、60Hz
系統側電流
4A
SMES 側最大電流
DC5A/巻線
SMES 側最小電流
DC2.5A/巻線
SMES 側電圧
DC48V
(c) 変換器チョッパ部仕様
形式
双方向チョッパ
台数
2 台/相×3 相(中性点接続)=6 台
最大電流
DC5A
最小電流
DC2.5A
最大電圧
DC60V
定格電圧
DC48V
チョッパ周波数
240Hz
(d) 変換器インバータ部仕様
形式
電圧型、単相インバータ
台数(チョッパと同台数)2 台/相×3 相(中性点接続)=6 台
出力
720VA
出力側電圧、周波数
30V、60Hz
出力側電流
4A
直流中間電圧
DC48V
直流中間最大電圧
DC60V
キャリア周波数
1,080Hz
(e) 直流中間関連
直流中間コンデンサ仕様 100V×470μF
(f) 系統連携リアクトル
形式
3 相、乾式
台数
1台
インダクタンス
2.1mH
定格電流
AC5A
214
(g) 出力トランス
形式
3 相、乾式
台数
1台
容量
1kVA
系統側電圧、周波数
240V、60Hz
系統側電流
2.4A
インバータ側電圧
120V
インバータ側電流
4.8A
連携リアクトル
出力トランス
系
統
U相
U2セル
電流電圧変換器
V2セル
単相インバータ
超電導
コイル
電流電圧変換器
U1セル
電流電圧変換器
W相
単相インバータ
超電導
コイル
V1セル
単相インバータ
超電導
コイル
W2セル
単相インバータ
超電導
コイル
電流電圧変換器
V相
電流電圧変換器
超電導
コイル
W1セル
単相インバータ
電流電圧変換器
単相インバータ
超電導
コイル
図Ⅲ-1-2.6.1.5.2-4 小規模モデル機回路構成
b. 主回路検証機概要
本小規模モデルは、系統側の単相電圧型インバータ、SMES 側の電流電圧変換器の他、実機
でも必要となる直流中間の初期充電及び各セルでの直流中間電圧のアンバランス補正用の電流
リミッタ付定電圧充電装置及び直流電源と直流リアクトルを組合せた模擬 SMES 装置を内蔵
させ、マルチセル型へ組上げ後の系統側との充放電検証が容易に実施出来る様に計画した。
これにより、単相インバータによる系統側との電力授受の他に 2 台のスイッチング電源を内
蔵による電源供給を実施の事とした。
本装置は、最終的に 6 台の組合せによるマルチセル電力変換器を構成し、系統連系模擬負荷
と組み合わせた、充放電制御検証も実施により、主回路部分については 340×185mm の基板
に纏めた。
各スイッチング用のパワモス FET は高速化によるスイッチング損失低減の為、ゲートの ON
及び OFF の各動作に対し出来る限り制御電荷のシンクとソースの組合せ型を採用した。
ゲートの制御については、1 つの素子の制御に対し、時間差を付した複数の信号が必要に成
る事より、アーム内の上下素子制御信号の一元化も考慮し、制御装置側からの基本制御信号に
対し FPGA によるインターフェース回路を同基板上に設け、制御装置側とは伝送距離が長くな
215
る事より、フォトカプラによるアイソレションを実施した。
搭載した FPGA は、E2PROM 内蔵型で、ON ボードでのプログラム変更が可能であり、ク
ロック入力も実施により、実機ソフトをロード前に主回路基板ハードウエア製作結果の確認用
動作チェックプログラムの書込みも可能としている。
c. 小規模モデル単相電力変換器
電流電圧変換器
単相インバータ
小規模モデル単相電力変換器は実機セル
24mH 4A
モジュールを模擬した下図に示す回路構成
となる。また、単相インバータ側の試験用
試験用
負荷装置
負荷装置としてリアクトル(24mH、4A)
を設置する構成とする。
単相電力変換器(セルモジュール)
図Ⅲ-1-2.6.1.5.2-5 小規模モデル単相電力変換器回路構成
d. 模擬 SMES 装置
模擬 SMES 装置は、360mH(実績 380mH)の外鉄型直流リアクトルと、損失補填用の降
圧チョッパ付電源装置の直列接続により構成される。
直流リアクトルの直流抵抗値が 2.1Ωであることより、最大電流 DC5A を保持の場合
2.1×5 = 10.5V
の補填電圧を印加することで電流を保持し超電導コイルを模擬することとなる。
下図にこの回路構成を示す。
リアクトル電流をチョッパ回路へ
電流電圧変換器
のデューティ指令で制御
単相インバータ
リアクトル
チョッパ
回路
模擬超電導コイル
図Ⅲ-1-2.6.1.5.2-6 模擬 SMES 装置回路構成
216
(4) イットリウム系 SMES 評価用システム基本動作性能測定
模擬 SMES 装置及び模擬負荷装置を、マルチセル電力変換器システムと組合せ、電力制御な
らびに模擬超電導コイルを用いた充放電制御機能の基本性能を測定した。
a. 性能測定時機器設定
基本性能測定時の電力変換器設定
定格電圧
( 系統側 )
440V
定格電流
( 系統側 )
32.8A
定格容量
( 系統側 )
25kVA
定格周波数
( 系統側 )
60Hz
定格直流電流( コイル側 )
170A
最大直流電流( コイル側 )
340A
定格直流電圧( コイル側 )
100V
変換器盤
模擬SMES装置
入出力盤
電力変換器システム
図Ⅲ-1-2.6.1.5.2-7
マルチセル動作検証システムの外観
b. 基本性能測定結果
系統とコイル間の電力制御ならびに充放電制御機能を測定し、SMES システムとしての基本
動作が問題なく実施できることを確認した。
測定結果を以下に示す。
試験条件
系統
440V、60A、60Hz (45.7kVA)
模擬 SMES 消費電力
約 20kW( 340A、6 台分 )
マルチセル変換器充放電容量
約 20kW
217
動作シーケンス
系統間電力制御
コイル間電力
系統連系運転
初期充電
充放電動作
補助電源
模擬SMES
図Ⅲ-1-2.6.1.5.2-8 マルチセル動作検証システムのシーケンス
218
2.6.2 系統安定化用 SMES コーディネーション技術開発
100MW/54MJ 級系統安定化 SMES の要求仕様に基づき、交直変換装置、電流リード等の
要素技術開発成果や設計などを反映して、SMES システムを構成し、ライフサイクルコスト 5
万円/kW を目指した設計検討を行った。
2.6.2.1 SMES システムの要求仕様
100MW/54MJ 級系統安定化 SMES システムの要求仕様は表Ⅲ-1-2.6.2.1-1 のとおりとし
た。
表Ⅲ-1-2.6.2.1-1
項 目
用 途
出 力
利用可能エネルギー
制御対象
運転
周 期
パターン
運転頻度
系統安定化用 SMES システム要求仕様
仕
様
発電機動揺抑制、動揺周期:約 1 秒、最大振幅±100MW 程度
100MW、左記以上の出力が必要な場合はユニットの複数化で対応
54MJ(15kWh)、ピーク値±100MW、充放電時間 0.5 秒
P(有効電力)、Q(無効電力)
1 秒(4 サイクル継続)
系統安定化制御
3~4 回/年、電圧制御
2.6.2.2 主回路構成
100MW 級系統安定化 SMES はその機能
基づき設計した。充放電率(充放電エネル
ギー/マグネット蓄積エネルギー)は、目
コス ト
と経済性の両立が必要なため、次の条件に
標コスト(交直変換装置 2.0 万円/kVA、ラ
イフサイクルコスト 5 万円/kW、コイルコスト 3 億
円 / kWh ) か ら 算 定 し た 。 系 統 安 定 化
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
SMES の充放電率はコイルと交直変換装置
常時
コイルコスト 3 億/kWh
ケース1
変換器コスト 0.2 億/MVA
トータルコスト 億円
0
0.2
0.4
0.6
充放電率
による総合コストが最低となる 0.5 程度と
図Ⅲ-1-2.6.2.2-1
した(図Ⅲ-1-2.6. 2.2-1)。また、定格電流
は SMES システムの構成、Y 系線材及び変
0.8
1
系統安定化 SMES の
充放電率の算定結果
換素子から、定格電流 3kA とした。SMES
出力が可能でかつ系統安定化 SMES とし
電 流 リー ド
変換 器へ
ての待機電流低減のために定格電圧 15kV
真 空
電 流 リー ド
電 流 リー ド
とした。
In v
また、主回路は超電導コイル、変換器及
C ho p
び電流リードからなる単一ユニットとし、
変換 器
6 kV
その3ユニットによる構成とした。コイル
変換 器
6 kV
は熱侵入、設置面積及び漏洩磁界低減の優
15kV
コイ ル
コイ ル
コイ ル
3 kA
3 kA
3 kA
電 流 リー ド
電 流 リー ド
位性から1個のクライオスタットに格納
変換 器へ
電 流 リー ド
する構成とした(図Ⅲ-1-2.6.2.2-2)。
図Ⅲ-1-2.6.2.2-2
219
SMES のシステム構成
2.6.2.3 ビスマス系(Bi2212)超電導コイル
(1) Bi2212 導体
超電導コイル用導体として、負荷変動補償・周波数調整用 SMES と同様の酸化物系超電導線
材 (Bi2212) に よ る ラ ザ フ ォ ー ド 導 体 を 適 用 し た ( 表 Ⅲ -1-2.6.2.3-1 )。 こ の 導 体 構 成 を 図 Ⅲ
-1-2.6.2.3-1 に示す。
表Ⅲ-1-2.6.2.3-1
Bi 系超電導線材仕様
項
目
超電導導体
素線径
撚り線数
導体厚
導体幅
ピッチ長
導体Ic
n
仕
様
Bi2212 集合導体
φ0.81 ㎜(フィラメント 427 本)
30 本
1.64 ㎜
13.66 ㎜
90 ㎜
688A @63.5K
9.7
運転温度
4.2K
図Ⅲ-1-2.6.2.3-1 Bi2212 ラザフォード導体
および素線の断面写真
表Ⅲ-1-2.6.2.3-2
項
目
SMES 定格出力
SMES 利用エネルギー
変換器効率
定格電圧
待機電流
充放電率
定格電流
最大蓄積エネルギー
インダクタンス
最大経験磁場
仕 様
100 MW
54 MJ
0.98
15 kV
2.27 kA
0.52
3.28 kA
106 MJ
19.7 H
10 T
超電導コイル仕様
補
足
=15 kWh
要求仕様
=100MW/15kV/0.98/3、3並列システム
=2.27kA/√(1-0.52)、変換器定格
=54MJ/0.52/0.98
=106MJ×2/(3.28kA) 2
水平磁場 10T級
約3kA
5.0
超電導コイルの電気的な仕様を表Ⅲ
Ic=8.976*B^-0.38405
-1-2.6.2.3-2 に 示 す 。 系 統 安 定 化 用
4.0
ルギー54MJ を満足する。上記条件で
の、導体の負荷曲線を図Ⅲ-1-2.6.2.3-2
に示す。最大定格時の負荷率は 92%と
高いが、通電が瞬時であるため許容し
た。待機時の負荷率は 63%に抑えた。
臨界電流 Ic (kA, @4.2K)
SMES の定格出力 100MW、利用エネ
最大定格
92%
3.0
待機時
63%
2.0
Load line
1.0
Ic (kA)
Load line
Operation point
0.0
0
2
4
6
8
磁場 B (T)
10
図Ⅲ-1-2.6.2.3-2 負荷曲線
220
12
14
(2) 超電導コイル
超電導コイルの磁場配位は、トロイド配置と比較してコスト的に有利な4極マルチポール配
置とした。一般的な検討においても、トロイド配置に比べマルチポール配置は、漏洩磁場は大
きくなるが、コイル支持構造が簡易になりクライオスタット表面積も小さくできる利点がある。
コイル形状のパラメータからコイル巻線体積を求めると、ソレノイド半径 0.59mの場合が最
小となる。この条件下での最小クライオ半径は 1.99m、実機ではクライオスタットの直径は
4m を超え、形状面から耐圧的に不利となる。また、道路輸送制限の許認可上限(3.4m)を超
え、製造・施工面からも不利となる。
このため、実機クライオの直径が 3.4m 以下、最小ク
ラ イ オ 半 径 が 1.55m と な る 形 状 を 前 提 に 設 計 を 行 っ た 。 こ れ ら 両 者 の 設 計 内 容 を 表 Ⅲ
-1-2.6.2.3-3 に、コイル形状及び漏洩磁場を図Ⅲ-1-2.6.2.3-3 に示す。この条件におけるコイ
ル形状は線材体積最小の場合と比較して線材体積が 12%増加する。しかし、輸送制限やクライ
オスタット構造および重量の軽量化が図れることに加え、表面積が約 20%少なくなることによ
り熱侵入量も少なくなる。さらに漏洩磁場が小さくなり、バランスのとれたコイル設計となる。
表Ⅲ-1-2.6.2.3-3
最適化条件
磁場配位
平均電流密度
A/mm 2
ソレノイド半径 a
m
ソレノイド厚さ d
m
ソレノイド高さ h
m
コイル巻線体積
m3
超電導コイル形状の最適化結果
クライオ直径
コイル巻線
3.4m 以下
体積最小
4 極マルチポール
30
0.490
0.590
0.305
0.549
1.13
0.465
4.24
3.79
補
足
4 ソレノイドの合計
26.1
31.6
クライオ半径
m
1.55
1.99
径方向漏洩磁場
m
7.5
8.4
マルチポール中心からの 5G ライン半径
軸方向漏洩磁場
m
6.8
7.2
赤道面からの 5G ライン高さ
1.13m
10m
クライオ表面積
m2
5ガウス
図Ⅲ-1-2.6.2.3-3
コイル形状及び漏洩磁場(30A / mm 2 、最小クライオ半径 1.55m)
221
(3) コイル構造
1 5 k V , 3 .2 8 k A
変換器定格電流および電流リード耐
圧の観点から、超電導コイルは3並列
48 ターン
×
1 2 タ ゙フ ゙ル ハ ゚ン ケ ー キ
システムとし、軸方向 1.13mのソレノ
×
4 ソレ ノイ ド
×
3 マ ル チ ホ ゚ー ル
1 5 k V , 3 .2 8 k A
イドを3分割する。分割したソレノイ
ドには 15kV の絶縁に必要な絶縁材を
設置し、これによる磁気結合阻害を考
慮してアンペアターンの必要量に 10%
1 5 k V , 3 .2 8 k A
以上の余裕を持たせた。この結果を表
Ⅲ-1-2.6.2.3-4 に、またコイル結線の模
式図を図Ⅲ-1-2.6.2.3-4 に示す。
図Ⅲ-1-2.6.2.3-4
表Ⅲ-1-2.6.2.3-4
項
目
巻数/パンケーキコイル
ダブルパンケーキ数
巻数/分割後ソレノイド
巻数/分割前ソレノイド
コイル巻数の構成
数値
48
12
1,152
3,456
輻射シールド 荷重支持体
補 足
1.64×48 = 78.7 << 305
13.66×12×2 = 327.8 <<1,130
48×12×2
>3,152
電流リードポート
0.2
計測ポート
0.3
輻射シールド冷却用
冷凍機
1.13
断熱真空容器
排気ポート
一体化支持材
支持脚
0.1
1.73
超伝導コイル冷却用
冷凍機
超伝導コイル
絶縁板
1.93
超電導コイルの構成
φ3.20
φ3.34
図Ⅲ-1-2.6.2.3-5 クライオスタット概要
図Ⅲ-1-2.6.2.3-6 クライオスタット上部の配置
(4) クライオスタット
クライオスタットの構造の概要を図Ⅲ-1-2.6.2.3-5 に、またクライオスタット上部の配置を
図Ⅲ-1-2.6.2.3-6 に示す。3並列システムのため、15kV、3kA 級の電流リードを3対用いる。
また、コイルを冷却するため 10 W@4.2K の冷凍能力を持つ冷凍機を 2 台配置する。クライオ
スタットの外形は、直径 3.34m、高さ 1.93m とした。
222
2.6.2.4
イットリウム(Y)系コイルシステム
(1) Y 系導体
図Ⅲ-1-2.6.2.4-1
Y 系(YBCO)線材は中部電力で開発中の
Y 系超電導線材仕様
項
目
C u ( 安 定 化 層 )
A g ( 保 護 層 )
YBCO(超電導層)
CeO2(キャップ層)
G Z O ( 中 間 層 )
Hastelloy(基盤)
幅
導体 Ic
運転温度
Y 系超電導線材(運転温度 20K)の仕様
(表Ⅲ-1-2.6.2.4-1、図Ⅲ-1-2.6.2.4-1)を
適用して設計した。
Cu(安定化層)
仕
様
100μm
5μm
1μm
1μm
1μm
100μm
10mm
800A @20K
20K
Ag(保護層)
YBCO(超電導層)
CeO2(ギャップ層)
2(
・・・・
GZO(中間層)
テープ線材
(複数積層)
Hastelloy(基盤)
絶縁材
支持構造材
(a)Y 系線材
(b)Y 系導体
図Ⅲ-1-2.6.2.4-1
Y 系線材
超電導コイルの電気的な仕様を表Ⅲ-1-2.6.2.4-2 に示す。超電導コイルは Bi 系コイルシステ
ムと同様に 33MW の 3 並列システムの構成とし、最大磁場は 10T級とした。また、定格電流
と定格電圧は線材性能や交直変換装置の性能、システムの効率及び経済性などを考慮した 3kA、
15kV を適用して設計した。
表Ⅲ-1-2.6.2.4-2
項
目
仕
超電導コイルの仕様
様
備
考
SMES 定格出力
100MW
SMES 利用エネルギー
54MJ
=15 kWh
変換器効率
0.98
要求仕様
定格電圧
15kV
待機電流
2.27kA
充放電率
0.51
定格電流
3.24kA
=2.27kA/√(1-0.51)、変換器定格
最大蓄積エネルギー
108MJ
=54MJ/0.51/0.98
インダクタンス
20.6H
=106MJ×2/(3.24kA) 2
最大経験磁場
10T
=100MW/15kV/0.98/3、3 並列システム仮定
水平磁場 10T級
223
約 3kA
10.00
また、導体負荷曲線を図Ⅲ-1-2.6
導体Ic曲線
2.4-2 に示す。システムの定格電流
(テープ線材8枚)
8.00
臨界電流 Ic を 2 倍程度と仮定する
と、1 導体に必要となる Y 系テープ
線材は 8 枚(6kA / 800A)となる。
臨界電流Ic(kA)
が約 3kA であることから、導体の
6.00
最大定格
65.3%
4.00
待機時
45.8%
導体負荷曲線はテープ枚数を 8 枚、
コイル平均電流密度を 35A / mm 2
2.00
とした場合の特性を示す。
0.00
0.0
2.19
2.0
3.12
4.0
6.0
磁場B⊥(T)
8.0
10.0
12.0
図Ⅲ-1-2.6.2.4-2 負荷曲線
(2) 超電導コイル形状
コイル設計として、形状は Y 系テープ線材が超電導特性に異方性を有すること及びマルチポ
ール型ではコイル形状から高磁場(最大 5.2T)となり,線材臨界電流 Ic を比較するとマルチ
ポール型の Ic はトロイド型(2.86T)より Ic が約 30%低下することから,定格電流を通電す
るために必要となるテープ線材枚数が増加する(8 枚⇒11 枚)。このため,線材料を低減できる
トロイド型として設計した。
コイル平均電流密度 35A / mm 2 においてソレノイド中心半径rをパラメータとし、コイル形
状を比較した結果、r=0.5m の場合で、クライオスタット表面積 Sc 及びコイル全体積 V が最
小値となった。コイル形状の最適化結果を表Ⅲ-1-2.6.2.4-3 に、コイル概形と磁場分布を図Ⅲ
-1-2.6.2.4-3 に、漏洩磁場を図Ⅲ-1-2.6.2.4-4 に示す。
表Ⅲ-1-2.6.2.4-3
コイル体積 V 及びクライオ表面積 S cr yo 最小
最適化条件
磁場配位
平均電流密度
ソレノイド中心半径 r
ソレノイド軸長 h
ソレノイド厚さ d
コイル中心半径 R
クライオ半径 Rc
コイル全体積 V
クライオ表面積 Sc
径方向漏洩磁場
軸方向漏洩磁場
超電導コイル形状の最適化結果
A/mm 2
m
m
m
m
m
m3
m2
m
m
トロイド
35
0.50
0.32
0.32
1.2634
1.93
3.90
39.4
3.5
1.7
224
補
足
クライオ中心から 5G ライン半径
高さ方向
5m
5m
単位:T
5ガウス
図Ⅲ-1-2.6.2.4-3
コイル概形と磁場分布
図Ⅲ-1-2.6.2.4-4
(コイル平均電流密度j=35A / mm 2 )
漏洩磁場
(コイル平均電流密度j=35A / mm 2 )
(3) コイル構造
変換器定格電流(約 3kA)及
び電流リード耐電圧(15kV)を
15kV
3.24kA
<1ユニット>
7 ダブルパンケーキ
×
4 コイル
考慮して、超電導コイルは4個
の要素コイルを 1 ユニットとし
て、3 並列システムとした。こ
15kV
3.24kA
れは先に検討した Bi 系導体を
3ユニット
用いたシステムと同様である。
各超電導コイル結線の模式図を
15kV
3.24kA
図Ⅲ-1-2.6.2.4-5 に示す。
図Ⅲ-1-2.6.2.4-5
コイル結線の模式図
(4) クライオスタット構造
クライオスタットの概形を図Ⅲ-1-2.6.2.4-6 に示す。超電導コイルの冷却には冷凍機を使用
する方針とするため、液体ヘリウム貯液用のコイル容器は設けず、クライオスタットの主要構
造物は断熱真空容器と輻射シールドである。
断熱真空容器の外径はコイルとの間隔を 120mm として 4.10m、高さは十分な配線空間が確
保できるように 2.02m とした。断熱真空容器と同様な形状の輻射シールドはコイルから 50mm
離れたところに配置し、外径 1.98m, 高さ 1.72m とした。超電導コイルは上下の支持材により
一体化し、外形Φ0.3m×肉厚 3mm のステンレス製中空円筒で吊り下げる構造とした。SMES
全体の外観図を図Ⅲ-1-2.6.2.4-7 に示す。
225
図Ⅲ-1-2.6.2.4-6 クライオスタット外観
図Ⅲ-1-2.6.2.4-7 SMES 全体の外観図(鳥瞰図)
2.6.2.5 交直変換装置
(1) 交直変換装置の構成
表Ⅲ-1-2.6.2.5-1
交直変装置は目標コストを 2.0 万円 /
kVA とし、変換器関係検討会で選定された
交直変換装置用素子
の仕様
項
目
素 子
ピーク繰り返しオフ電圧
繰り返し可制御オン電流
実効オン電流
平均オン電流
「電圧型大容量変換素子直並列方式」の技
術 要 件 に 基 づ き 表 Ⅲ -1-2.6.2.5-1 に 示 す
素子を適用して設計した。それらを考慮し
た、交直変換装置の設計条件は以下のとお
定 格
GCT
6,000V
6,000A
3,100A
2,000A
りである。
・変換効率は 98%以上とする。
・SMES システムの定格は、出力 100MW、定格電圧 15kV、定格電流 3kA とする。
・超電導コイルは、4コイルの3ユニット構成とする。
インバータ部では、GCT容量の整合性を図るために 3 相 3 レベルインバータを採用した。
1 段あたりの定格を 11MVA とし、3 段カスケードチョッパに 3 段のインバータを接続した。3
段の 3 相 3 レベルインバータでは、PWM周波数を 5 パルス以上にしないと高調波抑制ガイド
ラインを満足する高調波特性を得ることが困難であるため、33MVA ユニット 3 ユニット分、
合計 9 台のインバータをまとめて1つの変圧器に接続し、移相巻線変圧器として各段のインバ
ータの高調波をキャンセルするような構成とした(表Ⅲ-1-2.6.2.5-2)。また、チョッパ部では、
定格電圧 15kV の高電圧化とするためチョッパを 3 段直列とした。また、定格電流 3kA とす
るため 2 並列とし、33MVA ユニットは 2 並列チョッパ 3 段カスケード接続とした(図Ⅲ
-1-2.6.2.5-1)。
226
表Ⅲ-1-2.6.2.5-2
100MW系統安定化用 SMES 用交直変換装置の仕様
項
目
定格容量
直流電圧
スイッチング周波数
直流電流
直流回路電圧変化範囲
適用素子
適用素子電圧
適用素子電流
変換器構成
アーム構成
冷却方式
その他機能
直流リアクトル
インバータ側
100MW
6kV
180Hz
―
―
GCTサイリスタ
6kV
6kA
9 段多重
3 レベル構成
純水冷却
特定高調波抑制PWM制御
―
チョッパ側
144MW
15kV
180Hz
2.2kA~3.2kA
15.0kV~10.5kV
GCTサイリスタ
6kV
6kA
2 並列 3 段
3 レベル構成
純水冷却
―
120μH
2.2kA~3.2kA
±5kV
±5kV
±15kV
±5kV
11kV
±15kV
±15kV
図Ⅲ-1-2.6.2.5-1
100MVA 系統安定化用 SMES 用交直変換装置の構成
(2) 交直変換装置の性能
100MW 出力時の系統電流の高調波解析結果を図Ⅲ-1-2.6.2.5-2 に示す。高調波抑制ガイド
ラインの値よりも十分小さな値が得られた。これにより、3 レベルインバータ、5、7 次消去
PWM 制御、9 段多重移相巻線変換器によって十分な高調波抑制機能を得る結果となった。
100MW ステップ応答シミュレーションを実施した結果を図Ⅲ-1-2.6.2.5-3 に示す。電力指令
227
に対して約 12ms 程度の遅れで追従しており、20ms 以下の良好な応答が得られた。
図Ⅲ-1-2.6.2.5-2
系統側電流高調波と高調波抑制ガイドライン
S M E S P o w e r re s p o n c e
+ 15 0
P s ys
電力
(MVA)
+5 0
+ 0
-5 0
-1 0 0
- 1 5 00 . 2 8
+1 0
系統電圧
(kV)
0 .3
0 .3 2
0 .3 4
V o lt a g e : V L a
0 .3 6
0 .3 8
V o lta g e :V L b
0 .4
0 .4 2
0 .4 4
0 .4
0 .4 2
0 .4 4
0 .4
0 .4 2
0 .4 4
0 .4 2
0 .4 4
V o lta g e :V L c
+ 5
+ 0
-5
- 1 00 . 2 8
+1 0
0 .3
0 .3 2
0 .3 4
Is ys a
0 .3 6
0 .3 8
Is ys b
Is ys c
+ 5
系統電流
(kA)
+ 0
-5
- 1 00 . 2 8
+ 6
0 .3
0 .3 2
0 .3 4
V in v A 1 1
0 .3 6
0 .3 8
V in v B 1 1
V in v C 1 1
+ 3
インバータ電圧
(1 段)
+ 0
-3
- 06 . 2 8
+ 4
0 .3
0 .3 2
0 .3 4
I in v a 1 1
0 .3 6
0 .3 8
I in v b 1 1
0 .4
I in v c 1 1
+ 2
インバータ電流
(1 段)
+ 0
-2
- 04 . 2 8
+ 8
直流電圧
(kV)
0 .3
V d c 1 1
0 .3 2
V d c 1 2
0 .3 4
V dc 1 3
0 .3 6
V d c 2 1
V d c 2 2
0 .3 8
V d c 2 3
0 .4
V d c 3 1
0 .4 2
V dc 3 2
0 .4 4
V d c 3 3
+ 6
+ 4
+ 2
+ 00 . 2 8
+2 0
コイル電圧
(kV)
0 .3
0 .3 2
0 .3 4
0 .3 6
0 .3 8
0 .3
0 .3 2
0 .3 4
0 .3 6
0 .3 8
0 .4
0 .4 2
0 .4 4
0 .4
0 .4 2
0 .4 4
0 .4
0 .4 2
0 .4 4
V c hp 1
+1 0
+ 0
-1 0
- 2 00 . 2 8
+ 2 .4
コイル電流
(kA)
Q s ys
+ 10 0
I c o il1
I c o il2
I c o il3
+ 2 .3 5
+ 2 .3
+ 2 .2 5
+ 2 .02 . 2 8
0 .3
0 .3 2
0 .3 4
0 .3 6
0 .3 8
T im e ( s e c )
図Ⅲ-1-2.6.2.5-3
100MWステップ応答時の P、Q 制御波形
(3) 交直変換装置の設計
電圧型大容量変換素子を用いた交直変換装置の設計結果の主要諸元を表Ⅲ-1-2.6.2.5-3 に示
す。変換器効率の目標は 98%であるが、充電時は 98.17%で、 放電時は 98.16%となり、共に
228
表Ⅲ-1-2.6.2.5-3
1.種別
1.種別
2.特性
1.定格
2.設計
3.素子
1.種別
2.定格
3.設計
4.構造
1.ブリッジ
2.アーム
3.電気
4.熱
5.騒音
6.製作性
5.保護
制御
6.保守
7.10MVA
変換器での
検討内容
1.電気
2.制御
3.熱
4.検出
1.保守
2.点検
1.設計
系統安定化用 SMES 用変換装置の主要諸元
項目
1.変換方式
2.ユニット数量(コイル数)
1.定格容量
2.直流電圧
3.直流電流
4.キャリア周波数
5.効率
変圧器ロス
充電時平均ロス
放電時平均ロス
待機時ロス
6.直流回路の電圧変化範囲
7.直流回路の電流変化範囲
8.交流側高調波発生量
9.直流側リプル発生量
1.回路の絶縁設計
2.冷却設計
3.機械強度設計
1.種別
1.電圧
2.電流
3.温度仕様
1.素子の選定根拠
1.ブリッジ構成
2.ブリッジ構成の特徴
1.アーム構成
2.アーム構成の特徴
1.回路の特殊性
1.冷却方式
1.装置からの騒音
1.装置の実装性
2.コンパクト性
3.部品点数
1.交流回路保護方式
2.直流回路保護方式
1.応答性・追従性
1.熱的保護
1.各種保護の検出
1.保守
1.点検・周期
1.出力分割の考え方
2.性能の再現性
3.性能の特殊性
4.付帯設備
インバータ
チョッパ
電圧型
9
100MVA
9(3)
141MVA(47MVA×3)
6kV
2.2kA~3.14kA
―
180Hz
180Hz
充電 98.17% ・ 放電 98.16%
ロス 0.55%
ロス 0.72%
ロス 0.60%
ロス 0.72%
ロス 0.61%
0.5%(バイパスペア運転時)
15kV~10.6kV
2.2kA~3.14kA
高調波抑制対策技術指針 JEAG 9702-1995 準拠
0.3A
JEC2440-1995 準拠
純水水冷
JEAG5003-1999(5m/s 2 )輸送:エアサス車
GCT
GCT
6,000V
6,000V
6,000A
6,000A
Tj=125℃
Tj=125℃
電 鉄、 電 力 用 変 換 装 置 、 産 業 用 で 5 年 ~10 年 の 実
績。単機大容量化が可能で装置コンパクト
1S1P6A
1S1P4A×2P
3 相 3 レベル
3 レベル
1S1P
1S1P
圧接構造
圧接構造
3 段多重変圧器
リアクトル多重で大電流化、
フィルタレス
カスケード接続で高電圧化
純水冷却
82dB
82dB
ユニット構造
ユニット構造
W9,350×D2,550×H2,850×9 セット
GCT 108 個
GCT72 個
過電圧検出、ゲートブロック
SMES 短絡、ゲートブロック
電力応答 20ms 以下
冷却水温度監視
CT、PT、冷却水、盤内温度
数年毎の定期点検、10 年毎のオーバーホール
目視点検、清掃:2 年、寿命部品交換:4 年~8 年
9 段多重の内、1 段インバータにて 10MVA 検証
効率検証
1 段インバータ高調波にて 9 段分を検証
上記理由により、交流フィルタを用いて検証
229
目標を達成できた。また、コストは 1,650 百万円(1.65 万円/kVA)となり、目標の 2 万円/
kVA 以下を達成できた。
2.6.2.6 100MW 級系統安定化用 SMES システムレイアウト
前項のコイルシステム検討結果と交直変換装置の検討結果等をもとにした 100MW 級系統安
定化用 SMES システムのレイアウトを図Ⅲ-1-2.6.2.6-1 に示す。
100MVA
変圧器トランス
ファン
11MVA INV-CHP
遮断器・保護抵抗
L
計測制御機器
初充電
58m
圧縮機
28m
ガス類
超伝導マグネット
図Ⅲ-1-2.6.2.6-1
100MW 級系統安定化用 SMES システムレイアウト
2.6.2.7 系統安定化 SMES 設計のまとめ
100MW/54MJ 級系統安定化 SMES の要求仕様に基づき、超電導コイル及び交直変換装置
を主体に概念設計を行った。その結果、超電導コイルは Bi 系線材と Y 系線材によるコイルを
検討し、線材特性や将来の線材コストなどを考慮すると Y 系線材によるコイルが有利である。
また、交直変換装置の効率目標は 98%であるが、充電時は 98.17%で 放電時は 98.16%となり、
共に目標を達成するとともに、コストも目標の 2 万円/KVA 以下を達成できた。
230
2.6.3 SMES システムの経済性評価
本プロジェクトの最終目標である 100MW 級電力ネットワーク制御システム技術を確立する
ため、次のシステムについてのライフサイクルコストを算定し、経済性を評価した。
・100MW 級負荷変動補償・周波数調整用 SMES システム
・100MW 級系統安定化用 SMES システム
なお、コスト算定方法については、
Ⅲ-2 SMES システムの適用技術標準化研究
2. 研究開発項目毎の成果
2.1 用途別標準 SMES システム検討
2.1.4 経済性評価
に前提条件や考え方、積算手法などを詳述しており参照されたい。
2.6.3.1 設計データ
100MW 級 SMES システムのコスト算定には、「SMES システム検討委員会」で実施された
システムコーディネーション検討(以下、「100MW 級 SMES 設計」という)における概念設
計データを用いた。
表Ⅲ-1-2.6.3.1-1 および表Ⅲ-1-2.6.3.1-2 に系統安定化用および負荷変動補償用の設計デー
タを示す。
また、表Ⅲ-1-2.6.3.1-3 にコスト算定に用いたパラメータ値を示す。
231
表Ⅲ-1-2.6.3.1-1
用途
(規模)
線材種別
素線総長
臨界電流
クライオ寸法
運転温度
フラックス
フロー損
ヒステリシス損
コイル系
侵入熱
シールド系
侵入熱
コイル
冷凍能力
シールド
冷凍能力
冷却方式
初期冷却方式
低温部材重量
初期冷却
冷媒量
100MW 級 SMES コスト算定用設計データ(系統安定化用)
系統安定化用
100MW、15kWh(54MJ)
Bi 系
Y系
1,261,440m
素線径Φ0.81mm
(フィラメント本数 427 本)
素線本数 30 本
幅 13.66mm×厚さ 1.64mm
133A@4.2K,10T
(350A@4.2K,s.f.)
直径:3.34m
高さ:1.93m
4.2K
4.5W(待機時)
300A@20K,10T
(300A@77K,s.f.)
直径:4.1m
高さ:2.02m
20K
0.1W(待機時)
-
15.1W@4.2K
-
8.8W@20K
65W@80K
71.6W@80K
20.0W@4.2K(10W×2)
10W@20K
100W@50K
100W@50K
伝導冷却
冷媒利用
(77K まで液体窒素利用、運転温
度まで液体ヘリウム利用)
21t
窒素:22,000L
ヘリウム:9,600L
伝導冷却
冷媒利用
(77K まで液体窒素利用、運転温
度まで液体ヘリウム利用)
35t
窒素:36,666L
ヘリウム:15,667L
232
337,800m
テープ線材:
幅 10mm×厚さ約 200μm
表Ⅲ-1-2.6.3.1-2
用途
(規模)
線材種別
素線総長
臨界電流
クライオ寸法
運転温度
フラックス
フロー損
ヒステリシス損
コイル系
侵入熱
シールド系
侵入熱
コイル
冷凍能力
シールド
冷凍能力
冷却方式
初期冷却方式
低温部材重量
初期冷却
冷媒量
初期冷却
必要日数
100MW 級 SMES コスト算定用設計データ(負荷変動補償用)
負荷変動補償用
100MW、500kWh(1,800MJ)
Bi 系
Y系
12,654,000m
2,073,000m
素線径Φ0.81mm
テープ線材:
(フィラメント本数 427 本)
幅 10mm×厚さ約 200μm
素線本数 37 本
幅 15.4mm×厚さ 6.82mm
(内、補強材 4.80mm)
133A@4.2K,10T
300A@20K,10T
(350A@4.2K,s.f.)
(300A@77K,s.f.)
直径:11.8m
直径:11.0m
高さ:5.9m
高さ:5.0m
4.2K
20K
2,860W
100W
52,500W
88W@4.2K
1,909W@80K
20,448W @ 4.2K( 低 減 見 込 み
率:1/3 考慮の計算値)
1,909W@80K(計算値)
Lhe 浸漬冷却
冷媒利用
(77K まで液体窒素利用、運転温
度まで液体ヘリウム利用)
549t
窒素:567,800L
ヘリウム:238,400L
-
233
3,300W(開発目標値)
28.9W@20K
(H15 年度概念設計値)
2,097W@80K
(H15 年度概念設計値)
3,429W@20K(計算値)
2,097W@80K(計算値)
伝導冷却
冷凍機利用
-
-
14 日
表Ⅲ-1-2.6.3.1-3
パラメータ値一覧
項目名
説明
線材単価
高温線材の素線単価
材料歩留り率(1) 線材製造時の歩留り率
設備投資回収年数
コイル製造設備投資回収年数
SMES 年間生産能力に対する実
生産能力係数
際の年間生産台数の比率
クライオ・支持構造製造時の歩
材料歩留り率(2)
留り率
一般管理費率
SMES 製造企業の一般管理費率
利益率
SMES 製造企業の利益率
変換器効率
変換器の効率
単位
円/Am
%
年
パラメータ値
-
90%
7年
-
1
%
70%
%
%
%
8%
5%
98%
(系統安定化用)
本体
:1%
電気設備:1%
冷凍設備:2%
(負荷変動補償用)
本体
:0%
電気設備:0.5%
冷凍設備:1%
保守コスト比率
初期コストに対する年間保守コ
ストの割合
%
電力単価
冷凍機動力や変換器ロスを金額
換算するための電力単価
円/kWh
土地建屋単価
建屋建設単価、基礎工事単価、
土地単価
円/m2
人件費単価
輸送単価
固定資産税率
金利
人工費算出のための単価
SMES 輸送単価
-
-
円/人・時間
円/t
%
%
設備耐用年数
算定する設備の耐用年数
年
コストの
算定期間
-
年
234
4 円/kWh
建屋:100 千円/m2
基礎:160 千円/m2
土地:30 千円/m2
5 千円/人・時間
20 千円/t
1.4%
5%
本体:30 年
電気設備:15 年
冷凍設備:15 年
30 年
2.6.3.2 コスト算定結果
表Ⅲ-1-2.6.3.2-1 および表Ⅲ-1-2.6.3.2-2 に系統安定化用および負荷変動補償用 100MW 級
SMES のコスト算定結果を示す。また、各用途の初期コストおよびライフサイクルコストの比
較を図Ⅲ-1-2.6.3.2-1 から図Ⅲ-1-2.6.3.2-4 に示す。
100MW 級 SMES のコスト算定結果(系統安定化用)
表Ⅲ-1-2.6.3.2-1
系統安定化用
NbTi(第2)
NbTi
SMES
Bi(3円)
Bi(1円)
Y(3円)
初期コスト
4,490.8
2,718.4
3,057.9
2,654.7
2,579.9
本体コスト
656.9
692.1
1,166.4
763.3
730.5
コイル製造コスト
クライオ・支持構造コスト
輸送コスト
現場据付コスト
現場管理費
初期冷却コスト
一般管理費
利益
541.0
2.4
31.3
3.1
1.5
46.3
31.3
408.5
160.9
1.2
30.7
3.1
6.0
48.7
32.9
881.9
81.1
0.7
52.0
5.2
7.7
82.2
55.5
546.4
81.1
0.7
33.9
3.4
7.7
53.8
36.3
494.9
97.5
1.1
32.0
3.2
15.6
51.5
34.7
179.2
3,468.0
186.7
165.0
1,681.0
180.4
52.6
1,681.0
157.9
52.6
1,681.0
157.9
6.0
1,681.0
162.4
2,359.5
2,578.2
2,019.4
1,901.8
1,846.1
108.3
498.0
129.3
263.9
415.5
461.2
362.4
945.9
4.1
263.9
453.9
0.0
409.1
888.3
4.1
263.9
391.9
0.0
353.5
888.3
1.0
263.9
372.6
0.0
344.2
864.4
5,297
5,077
4,557
4,426
冷凍設備コスト
電気設備コスト
土地・建屋コスト
ランニングコスト
本体ロス・冷凍機動力コスト
変換器ロスコスト
保守コスト
運転コスト
固定資産税額
設備更新コスト
合計
1,753.2
6,850
表Ⅲ-1-2.6.3.2-2
100MW 級 SMES のコスト算定結果(負荷変動補償用)
負荷変動補償用
NbTi(第2)
NbTi
SMES
Bi(3円)
Bi(1円)
初期コスト
13,858.8
本体コスト
6,709.8
6,972.0
10,433.9
6,474.2
3,417.4
5,720.2
17.4
151.6
15.2
12.6
473.4
319.5
4,189.4
1,675.3
21.6
199.4
19.9
45.0
490.3
331.0
8,318.5
431.1
7.9
297.5
29.7
117.1
735.5
496.5
4,952.6
431.1
7.9
183.0
18.3
117.1
456.2
307.9
2,508.4
390.1
7.1
98.5
9.9
0.5
240.6
162.4
632.9
5,448.0
1,068.2
664.2
1,567.8
1,032.7
4,468.8
1,567.8
487.0
4,468.8
1,567.8
487.0
404.9
1,567.8
469.2
4,347.1 11,745.5 11,199.3
2,888.9
コイル製造コスト
クライオ・支持構造コスト
輸送コスト
現場据付コスト
現場管理費
初期冷却コスト
一般管理費
利益
冷凍設備コスト
電気設備コスト
土地・建屋コスト
ランニングコスト
本体ロス・冷凍機動力コスト
変換器ロスコスト
保守コスト
運転コスト
固定資産税額
設備更新コスト
合計
5,815.9
10,236.7 16,957.5 12,997.8
Y(3円)
288.1
969.4
384.2
1,077.3
222.6
461.2
1,459.7
742.0
4,879.1
1,077.3
807.5
0.0
2,290.0
2,691.6
4,879.1
1,077.3
807.5
0.0
1,743.8
2,691.6
203.5
1,077.3
182.8
0.0
816.1
609.2
14,584
28,703
24,197
8,748
4,558.4
19,675
5,859.4
235
5,000
土地・建屋コスト
電気設備コスト
冷凍設備コスト
本体コスト
4,500
初期コスト(百万円)
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
SMES(Nb)
SMES(Nb)
SMES(Bi)
第 2フェーズ (3円/Am) 図Ⅲ-1-2.6.3.2-1
SMES(Y)
(3円/Am)
初期コスト(系統安定化用)
その他経費
8,000
ライフサイクルコスト(百万円)
SMES(Bi)
(1円/Am) 変換器ロスコスト
7,000
本体ロス・冷凍機動力コスト
6,000
初期コスト
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
SMES(Nb)
SMES(Nb)
SMES(Bi)
SMES(Bi)
第 2フェーズ (3円/Am) (1円/Am) 図Ⅲ-1-2.6.3.2-2
SMES(Y)
(3円/Am)
ライフサイクルコスト(系統安定化用)
18,000
土地・建屋コスト
電気設備コスト
冷凍設備コスト
本体コスト
16,000
初期コスト(百万円)
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
SMES(Nb)
SMES(Nb)
第 2フェーズ 図Ⅲ-1-2.6.3.2-3
SMES(Bi)
SMES(Bi)
SMES(Y)
(3円/Am) (1円/Am) (3円/Am)
初期コスト(負荷変動補償用)
35,000
その他経費
ライフサイクルコスト(百万円)
変換器ロスコスト
30,000
本体ロス・冷凍機動力コスト
初期コスト
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
SMES(Nb)
SMES(Nb)
第 2フェーズ 図Ⅲ-1-2.6.3.2-4
SMES(Bi)
SMES(Bi)
SMES(Y)
(3円/Am) (1円/Am) (3円/Am)
ライフサイクルコスト(負荷変動補償用)
236
表Ⅲ-1-2.6.3.2-3 および表Ⅲ-1-2.6.3.2-4 に系統安定化用および負荷変動補償用 100MW 級
SMES の廃棄コストの試算結果を示す。
表Ⅲ-1-2.6.3.2-3
100MW 級 SMES の
表Ⅲ-1-2.6.3.2-4
廃棄コスト試算結果(系統安定化用)
100MW 級 SMES の
廃棄コスト試算結果(負荷変動補償用)
廃棄コスト(百万円)
NbTi
Bi系
Y系
解体・撤去コスト
18.5
15.4
9.1
廃棄物輸送コスト
6.0
2.6
2.7
中間処理コスト
10.3
4.5
4.6
最終処分コスト
0.9
0.4
0.4
有価物 計
-115.1
-796.8
-26.0
鉄
-5.6
-2.8
-2.9
銀
0.0
-774.6
0.0
銅
-23.4
-2.4
-2.4
アルミ
-0.0
-0.0
-0.0
ステンレス
-86.1
-17.1
-20.7
合計
-79.5
-774.0
-9.2
※線材単価はBi系1円/Am、Y系3円/Amとした。
廃棄コスト(百万円)
NbTi
Bi系
Y系
解体・撤去コスト
2.8
3.1
3.0
廃棄物輸送コスト
1.0
0.9
1.0
中間処理コスト
1.7
1.6
1.7
最終処分コスト
0.2
0.2
0.2
有価物 計
-7.1
-96.4
-6.3
鉄
-1.5
-1.5
-1.5
銀
0.0
-91.5
0.0
銅
-3.4
-2.4
-2.4
アルミ
-0.1
-0.0
-0.0
ステンレス
-2.0
-1.1
-2.4
合計
-1.4
-90.6
-0.5
※線材単価はBi系1円/Am、Y系3円/Amとした。
2.6.4 SMES 関連法令に関する検討
2.6.4.1 検討概要
現在の電気事業法には電力貯蔵装置という電気工作物の定義がないため、SMES は電気事業
法上で明確に定義されていない。このため、SMES の実系統への導入において、SMES の用途
に応じ、関係法令(電気事業法など)に対する許認可手続きに関し、関係部署との調整が都度必
要となっている。このことは、今後の SMES の技術開発進展に伴う実用化の際の支障となると
考えられるため、関係法令対応の簡素化など規制緩和に向けた検討を実施した。
2.6.4.2 現状の法規対応
(1) 電気事業法
表Ⅲ-1-2.6.4.2-1 に電気設備に関する技術基準を定める省令による電気工作物の主な定義を
示す。
表Ⅲ-1-2.6.4.2-1
名 称
発電所
変電所
調相設備
電気工作物の主な定義
定
義
備 考
発電機、原動機、燃料電池、太陽電池その他の機械器具{電気事 下線部は平成
業法第 38 条第 2 項に規定する小出力発電設備、非常用予備電源 12 年 9 月 20
を得る目的で施設するもの、電気用品安全法の適用を受ける携帯 日に改正。
用発電機及び電気工作物に付属する二次電池(硫黄及びナトリウ
ム、臭素及び亜鉛若しくは二酸化鉛及び鉛を電極の主な構成材料
とするもの又はバナジウムイオンを電解質としたものに限る。)を
除く。}を施設して電気を発生させる所をいう。
構外から伝送される電気を構内に施設した変圧器、回転変流機、
整流器その他の電気機械器具により変成する所であって、変成し
た電気をさらに構外に伝送するものをいう。
無効電力を調整する電気機械器具をいう。
237
上記省令において、現在、電力貯蔵装置という電気工作物の定義がないため、SMES は電気事
業法上で明確に定義されていない。このため、表Ⅲ-1-2.6.4.2-2 に示すとおり過去の SMES 設
置に伴う電気事業法上における設備の解釈がまちまちであり、許認可手続きの都度、関係部署と
の調整が必要となっている。
電力系統制御用 SMES は、平成 10 年時点では NAS 電池等の電力貯蔵装置が発電設備とし
て整理されていること、負荷平準化目的等の理由から「発電設備」と整理された。その後、平
成 14 年 3 月時点での原子力安全保安院との調整により、需要設備の「調相設備」と整理してい
る。以降 SMES 設置の都度、関係部署との調整を行っている。一方、瞬低補償用 SMES は、非
常用予備電源を得る目的で施設するものであり発電所ではないことから、「需要設備」と整理して
いる。
238
表Ⅲ-1-2.6.4.2-2 過去の SMES 設置に伴う電気事業法上の解釈に関する事例
九州電力 今宿 SMES
設置(運開)
年 月
設置場所
1998 年 3 月(平成 10 年)
九州電力今宿変電所
九州電力 今宿 SMES
2002 年 11 月(平成 14 年)
〔国プロフェーズⅡ〕
九州電力今宿変電所
出 力
貯蔵容量
1MW/3.6MJ(1kWh)
受電 6.6kV
5MVA/2.85MJ
受電 6.6kV
5MVA/10.5MJ
受電 6.6kV
系統安定化用
需要設備(調相機)
系統安定化用途であり、調相機
や並列コンデンサなどと同種の
電力系統制御装置とみなせるこ
と、出力時間が秒オーダーであ
ることから、「調相設備(需要設
備)」として整理。
負荷変動補償用
需要設備(調相機)
負荷変動補償用途であり、調相
機や並列コンデンサなどと同種
の電力系統制御装置とみなせる
こと、出力時間が秒オーダーで
あることから、「調相設備(需要
設備)」として整理。
用
途
系統安定化用
発電設備
NAS 電池等の電力貯蔵装置が
新発電方式(発電設備)として整
理されていること、SMES の主
たる目的が負荷平準化であるこ
電気事業法 ととの判断を受け、
「発電設備」
における 電 として整理。
気工作物設 冷却設備は SMES の付帯設備
備区分の整 で あ り 高 圧 ガ ス 保 安 法 よ り 除
理
外。(冷凍装置のみ高圧ガス保
安法に準拠)
中部電力 寛政 SMES
2003 年 4 月(平成 15 年)
〔国プロフェーズⅡ〕
中部電力寛政変電所
5MVA/5MJ
受電 6.6kV
調整先
エネ庁電力課(技術班)
原子力安全・保安院
原子力安全・保安院
法令対応
電気事業法第 47 条に基づき、工
事計画認可申請を提出。
電気主任技術者を選任し、保安
規程の届出を実施。
冷却設備について、使用承認検
査に先立ち KHK による委託検
査を受検。
電気事業法第 48 条に基づき、工
事計画を届出。
冷凍設備について、高圧ガス保
安法第 5 条に基づく対応を実施。
危害予防規程、高圧ガス保安統
括者等を届出。
電気事業法第 48 条に基づき、工
事計画を届出。
冷凍設備について、高圧ガス保
安法第 5 条に基づく対応を実施。
危害予防規程、高圧ガス保安統
括者等を届出。
備
考
中部電力 瞬低補償用 SMES
2003 年 7 月(平成 15 年)
2005 年 10 月(平成 17 年)
シャープ亀山工場
10MVA/10MJ
受電 6.6kV
瞬時電圧低下対策用
需要設備
非常用予備電源を得る目的で施
設するものであり、「発電所」に
は該当しないため、
「需要設備」
として整理。
電気事業法第 48 条に基づき、工
事計画を届出。
冷凍設備については、冷凍機の
冷凍能力 3 冷凍トン未満のため、
高圧ガス保安法に基づく対応な
し。
日光 SMES
2007 年(平成 19 年)
〔国プロフェーズⅢ〕
古河日光発電株式会社内
(参考)沖縄電力フライホイール
10MVA/20MJ
受電 11kV
20MW/210MJ(58kWh)
系統制御用
需要設備(調相機)
電力系統制御用であり、調相機
や並列コンデンサなどと同種の
電力系統制御装置とみなせるこ
と、出力時間が秒オーダーであ
ることから、「調相設備(需要設
備)」として整理。
周波数変動対策
調相機
「三相ロータリーコンデンサ」
との扱いとし、
「調相機」として
整理。
239
電炉メーカーサイト
原子力安全・保安院
関東経済産業局
九州通商産業局
電気事業法第 48 条に基づき、工
事計画を届出。
冷凍設備について、高圧ガス保
安法第 5 条に基づく対応を実施。
危害予防規程、高圧ガス保安統
括者等を届出。
――
ヘリウム液化装置の冷凍能力:
87.5t/日
ヘリウム液化装置の冷凍能力:
87.5t/日
1995 年(平成 7 年)
その結果、設備の解釈により、表Ⅲ-1-2.6.4.2-3 電気事業法における工事計画および表Ⅲ
-1-2.6.4.2-4 許可と事前届出の区分により、以下のとおり工事計画の対応が異なっている。
・発電設備と区分した場合、電気事業法第 47 条に基づき、工事計画の認可が必要。
・需要設備と区分した場合、電気事業法第 48 条に基づき、工事計画の事前届出で可能。
表Ⅲ-1-2.6.4.2-3
条 項
第 47 条
第 48 条
電気事業法における工事計画
内
容
事業用電気工作物の設置又は変更の工事であって、公共の安全の確保上特に
重要なものとして経済産業省令で定めるものをしようとする者は、その工事
の計画について経済産業大臣の認可を受けなければならない。(後略)
事業用電気工作物の設置又は変更の工事(前条第1項の経済産業省令で定め
るものを除く。)であって、経済産業省令で定めるものをしようとする者は、
その工事の計画を経済産業大臣に届け出なければならない。
240
表Ⅲ-1-2.6.4.2-4
工事の種類
発電所
許可と事前届出の区分(電気事業法施工規則 別表第2)
設置の工事
変更の工事
(1)発電設備の設置
(2)発電設備以外
1 原動力設備
2 電気設備
(2)変圧器
(3)電圧調整器
(4)調相機
変電所
送電線
路
需要設
備
(5)電力用コンデンサ(6)分路リアクトル
(7)周波数変換機器
(8)遮断器
(9)逆変換装置
3 附帯設備
(1) 発電所の運転を管
理するための制御装置
(2) 非常用予備発電装
置(原子力に限る)
設置の工事
認可を要するもの
(第 47 条関係)
1 発電所の設置であって、
次に掲げるもの以外のもの
(1)水力発電所の設置
(2)火力発電所の設置
(3)燃料電池発電所の設置
(4)太陽電池発電所の設置
(5)風力発電所の設置
発電設備の設置であって、次
に掲げるもの以外のもの
(1)水力発電所の発電設備の設
置
(2)火力発電所の発電設備の設
置
(3)燃料電池発電所の発電設備
の設置
(4)太陽電池発電所の発電設備
の設置
(5)風力発電所の発電設備の設
置
事前届出を要するもの
(第 48 条関係)
1 発電所の設置であって、次に掲
げるもの
(7)出力 500kW 以上の燃料電池発電
所の設置
(8)出力 500kW 以上の太陽電池発電
所の設置
(9)出力 500k W 以上の風力発電所の
設置
2 省略
省略
送電電圧 17 万 V 以上の発電所に係
る容量 2 万 kVA 以上の調相機の設
置、改造、取替え
電圧 17 万 V 以上(受電所にあって
は 10 万 V 以上)の変電所の設置
省略
電圧 17 万 V 以上の送電線路又は電
圧 17 万 V 以上の電気鉄道用送電線
路の設置
省略
受電電圧 1 万 V 以上の需要設備の設
置
省略
変更の工事
設置の工事
変更の工事
設置の工事
変更の工事
(1)遮断器
(2)(1)以外の機器
1 電圧 1 万 V 以上の機器であって、
容量 1 万 kVA 以上又は出力 1 万
kW 以上のものの設置
2以降省略
(3)電線路
241
(2) 高圧ガス保安法
高圧ガス保安法の第 3 条第 1 項第 6 号及び同施行令第 2 条第 2 項において、「発電、変電又
は送電のために設置する電気工作物並びに電気の使用のために設置する変圧器、リアクトル、
開閉器及び自動遮断器であって、ガスを圧縮、液化その他の方法で処理するもの」は高圧ガス
保安法による適用を除外されるとあるが、需要設備である調相設備(電力系統制御用 SMES)、
需要設備である非常用発電設備(瞬低補償用 SMES)については明確な除外対象となっていな
いことから、高圧ガス保安法の適用を受ける設備として対応が必要となっている。
具体的には、表Ⅲ-1-2.6.4.2-5 高圧ガス保安法における製造の許可に基づき、以下のとおり
高圧ガス設備の冷凍能力に応じた都道府県知事へ製造の許可を行っている。
・冷凍能力 20 トン以上の場合、高圧ガス保安法第 5 条 1 項 2 号に基づき、製造許可を申請。
・冷凍能力 3 トン以上の場合、高圧ガス保安法第 5 条 2 項 2 号に基づき、製造許可を届出。
但し、瞬低補償用 SMES については、使用する冷凍機の冷凍能力が 3 冷凍トン未満である
ことから、高圧ガス保安法の適用は受けていない。
表Ⅲ-1-2.6.4.2-5
条 項
第 5 条第 1 項
第2号
第 5 条第 2 項
第2号
高圧ガス保安法における製造の許可
内
容
冷凍のためガスを圧縮し、又は液化して高圧ガスの製造をする設備でそ
の一日の冷凍能力が 20 トン(政令で定めるガスの場合は、政令で定める
値)以上のものを使用して高圧ガスの製造をしようとする者は、都道府
県知事の許可を受けなければならない。
冷凍のためガスを圧縮し、又は液化して高圧ガスの製造をする設備でそ
の一日の冷凍能力が 3 トン(政令で定めるガスの場合は、政令で定める
値)以上のものを使用して高圧ガスの製造をする者は、製造開始の日の
20 日前までに、製造をする高圧ガスの種類、製造のための施設の位置、
構造及び設備並びに製造の方法を記載した書面を添えて、都道府県知事
に届け出なければならない。
2.6.4.3 検討内容
(1) 電気事業法
規制緩和へ向けた検討として、SMES は冷凍設備に高圧ガスを使用することから、高圧ガス
保安法による規制をうける。一般に、電気事業法で定める電気工作物の高圧ガスは、高圧ガス保
安法の適用から除外される。このため、電気事業法上の電気工作物に SMES が含まれるように
すれば、高圧ガス保安法の適用から除外されるため、許認可手続きの簡素化、規制緩和が図れる。
また、高圧ガス保安法の第 3 条第 1 項第 6 号及び同施行令第 2 条第 2 項(適用除外)に掲げる
電気工作物は、発電、変電又は送電のために設置する電気工作物並びに電気の使用のために設
置する変圧器、リアクトル、開閉器及び自動遮断器であって、ガスを圧縮、液化その他の方法
で処理するものと定義されているが、現行 SMES の設備区分は明確にはなっていない。この中
に(需要設備を視野に入れて)SMES を適用させるためには、変圧器、リアクトル及び開閉器等
と同等の安全性の確保すなわち技術基準又は解釈あるいは民間規程の作成が必要である。
242
(2) 高圧ガス保安法
高圧ガス保安法の規制緩和へ向けた検討としては、表Ⅲ-1-2.6.4.3-1 政令で定めるガスの種
類で、規制が緩和されているフルオロカーボンが存在する。不活性ガス(ヘリウム、ネオン、
窒素等)は、フルオロカーボンに比べ化学的に安定で、分解時の毒性も無く安全であることか
ら、フルオロカーボンと同程度の規制へ緩和すれば、規制を受ける冷凍機の規模も緩やかにな
り、無人運転も可能になる。さらに、圧縮装置内の不活性ガスは、温度 35℃において圧力5
MPa 以下で、高圧ガス保安法の適用除外となっているため、冷凍装置内のものについても高圧
ガス保安法の適用除外とできれば、高温超電導機器のほとんどの冷却は、高圧ガス保安法の規
制対象外となる。
表Ⅲ-1-2.6.4.3-1
政令で定めるガスの種類
法第 5 条第 1 項第 2 号
の政令で定める値
フルオロカーボン(不活性のものに限る)
50トン
フルオロカーボン(不活性のものを除く)
50トン
及びアンモニア
ガスの種類
法第 5 条第 2 項第 2 号
の政令で定める値
20トン
5トン
2.6.4.4 電力貯蔵設備規制検討ワーキング(国のワーキング)の検討状況
電気事業法、高圧ガス保安法の規制緩和へ向けた検討とは別に、国のワーキングで電力貯蔵
設備全体の規制についての検討がなされたので、その概要と結果を記す。
二次電池(蓄電池)は、一部(ナトリウム・硫黄電池等)を除き、発電所として工事計画認
可対象となっている。二次電池を始めとする電力貯蔵設備の開発・普及動向等を考慮して、現
在の規制体系が適切であるかどうか、また、二次電池を始めとする電力貯蔵設備の規制のあり
方、技術基準の規制のあり方について検討がなされた。その結果、以下のことが今回整理され
た。
・電力貯蔵設備は放電部分を捉えた発電所として取扱うのでなく、発電所、変電所、需要設
備などを構成する設備と整理。
・常用電源用途の二次電池(蓄電池)は、近年普及が進み、大容量化してきており、保安確
保の観点から「個別設備としての基準」の追加整備を検討。
・SMES、フライホイール、電気二重層キャパシタ等は、設備の普及状況、事故発生状況な
どを勘案し、必要に応じて技術基準の整備を検討することが適当(SMES が実証試験段階、
フライホイール・電気二重層キャパシタは実用化されて間もない)。
2.6.4.5 SMES の技術基準への適用調査
2.6.4.3 検討内容に記載したように SMES を電気事業法で定める技術基準に適用させること
により規制緩和が図れる。そのため、日本電気協会をはじめとする関係各所に調査を行った。
その結果、SMES を技術基準へ適用させるためには、設備の普及実態から、国指導のもと個別
に技術基準等(「個別設備としての基準」の整備)を作成する。もしくは、SMES の民間規程
を作成して、国の技術基準等として規定すべきと提案する必要がある。
243
2.6.4.6 検討結果
(1) 電気事業法
2.6.4.3 の電気事業法に関する検討で、技術基準の作成あるいは民間規程の作成が必要なこ
とから、現時点で技術基準等の作成を実施した場合、SMES は現在実証試験段階であり、また基
幹系統制御用 SMES については設計もできていない状況から勘案すると、技術基準等の整備に
ついては時期尚早と判断される。また、技術基準の適用調査結果、及び国 のワ ーキ ング 結果
(SMES については、設備の普及状況等を勘案し、必要に応じて技術基準の整備を検討するこ
とが適当と整理)等を考慮し、本プロジェクト内では特に対応はしないこととした。但し、試
験法標準化を始めとした試験法評価法等の検討において、安全確保を意識した試験法標準化を
検討し、将来の技術基準又は解釈あるいは民間規程の作成のベースとなるデータ等の整理を実
施した。本格的な技術基準化については、状況に応じ次期プロジェクトの中で検討することと
している。
(2) 高圧ガス保安法
2.6.4.3 の高圧ガス保安法に関する検討に記載したとおり、以下の 2 点に関して検討した。
o「温度 35℃で圧力5MPa 以下」適用除外条件を、「圧縮装置」内の不活性ガスだけでな
く「冷凍装置」内のヘリウムについても拡張する。
oヘリウムに関して、製造の許可の裾切り値を、フルオロカーボン並みに緩和する。
ここで、今回ヘリウムに限って提案しているが、当初、不活性ガス全般(ヘリウム、ネオン
アルゴン、窒素及び二酸化炭素)について検討していたが、規制緩和に関して提案していくと
実績データの提示が必要と考えられるため、不活性ガスを冷媒に使用している冷凍機の使用実
績を考慮し、ヘリウムに絞っている。
検討の結果、「温度 35℃で圧力 5MPa 以下」適用除外条件を、冷凍装置内のヘリウムついて
適用することは、考え方の根拠、安全面における実績について、記述することが十分でないた
め今回見送ることとし、製造の許可の裾切り値を、フルオロカーボン並に緩和することについ
て、関係箇所へ提案し、規制緩和が図れるようにしていくものとする。
また、ネオン、アルゴン等の不活性ガスについては、次のステップで規制緩和を要望する。
244
Ⅲ-2. SMES システムの適用技術標準化研究
1. 事業全体の成果
1.1 用途別標準 SMES システム検討
検討対象とする SMES システムの目的・用途を、「超電導電力貯蔵システム技術開発」プロ
ジェクト(平成 11~15 年度)にてまとめられた SMES 市場調査結果をもとに区分し、これに
基づいて用途別標準 SMES システムを検討することとした。
まず、標準化すべき SMES の用途・規模を見極めるため、電力系統制御及び電力品質に関
して国内外の市場ニーズ調査を実施した。国内の市場ニーズについては、SMES の適用が期待
される電力会社、需要家(メーカー、電鉄、研究機関など 11 業種)を対象として聞き取りや
文献などによる調査を実施した。また、経済規模の拡大が続き SMES の有望な市場として見
込まれる海外市場について文献調査を実施し、特に日系企業の進出が顕著な東南アジア地区の
工業団地の需要家、IPP、および配電会社を対象とした現地調査を行うとともに、日系企業が
多く進出する中欧地域ほかについて需要家を対象に電力供給・品質及び市場ニーズ調査を行っ
た。
市場ニーズ調査結果から SMES の市場規模・導入可能量について用途毎に想定、用途毎の
SMES の性能・得失を検討するため、SMES システムの解析モデルを調査・作成し、系統安
定化、負荷変動補償、周波数調整、瞬時電圧低下対策、分散型電源対応の各用途について適用
効果評価シミュレーション解析を実施。ま た 競 合 電 力 系 統 制 御 技 術 の 適 用 効 果 評 価 を 行 う
た め 、SVC、蓄 電 池 、電 気 二 重 層 キ ャ パ シ タ 等 に つ い て 目 的 用 途 毎 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 解 析
を行った。
さらに、SMES の用途別標準システムを検討するため、用途毎 SMES、および競合技術のコ
ストについて試算し、経済性評価を行うとともに、今後導入が見込まれる用途別 SMES システ
ムと競合技術の取りまとめを実施した。図Ⅲ-2-1.1-1 に研究の進め方のフローを示す。
1.2 SMES システムの試験法・評価法調査、国際標準化検討
国際標準化活動との連携の観点から、SMES システム、SMES システム試験法、評価法およ
び構成要素機器についての TS(技術仕様書)、PAS(公開仕様書)素案作成に関する調査を実
施、試験法、評価法データのとりまとめを行った。
SMES システムの試験法・評価法の検討については、過 去 の 国 家 プ ロ ジ ェ ク ト や 電 力 会 社
に よ る 研 究 開 発 に お け る 試 験 法 、海 外 で 製 品 化 さ れ た マ イ ク ロ SMES の 試 験 法 に つ い て 調
査 、ま た 現 用 の 電 力 貯 蔵 装 置 の 試 験 法 に つ い て 調 査・取 り ま と め を 行 う と と も に 、超 電 導
電 力 機 器( 発 電 機 、変 圧 器 、ケ ー ブ ル 、限 流 器 )の 試 験 法 を 参 考 と し 、SMES シ ス テ ム の
試 験 種 別 定 義 を 検 討 、こ れ に 基 き 過 去 実 施 さ れ た SMES シ ス テ ム 試 験 法 の 分 類 、整 理 を 行
った。
SMES の国際標準化に向けて必要となる SMES システムや構成要素機器の設計要求、試験・
評価方案について、PAS(公開仕様書)や TS(技術仕様書)策定に関するデータ収集・整理を
行い、SMES デバイス * 並びに SMES システム * の試験方法規格に係わる SMES デバイスおよ
245
び SMES システムの試験方法規格試案を作成した。
* ここでは SMES とクライオスタット、冷凍機を組み合わせたものを SMES デバイス,SMES デバイス
と交直変換装置、保護監視装置を組み合わせたものを SMES システムと定義
246
平成 16 年度
用途別 SMES
システム検討
平成 18 年度
SMES の目的・用途整理
市場ニーズ・経済性調査
SMES 解析モデル調査
・文献調査
SMES 解析モデル作成
競合技術解析モデル調査
・文献調査
試験法・評価
法調査検討
平成 17 年度
SMES システムと競合技術との比較
・用途毎 SMES のコスト検討
・用途毎の効果、コスト比較
SMES の適用効果の評価
競合技術の解析モデル作成
・競合技術モデル:SVC、フライホイ
ール、キャパシタ、電池 等
試験法調査
・他の超電導機器、既存電力貯蔵装置他
平成 19 年度
競合技術の適用
効果の評価
用途別標準システムの検討
・用途毎の SMES 出力、
容量整理
・システムコーディネー
ション検討結果反映
・経済性検討結果反映
試験種別の定義、試験項目の整理、試験方法検討
・10MVA/20MJ SMES システム検証結果の反映
基本仕様項目の整理
・システムコーディネーション検討結果の反映
SMES システム
の国際標準化
検討
用途別標準 SMES システムのデータ整理
・システムコーディネーション検討結果
・10MVA/20MJ 級 SMES システム製作結果
標準化範囲設定、データ収集
・用途別、規模別の標準化範囲の整理
・用途別、規模別の整理、文献調査結果の織込み
用途別標準 SMES システムの仕様、試験法整理
・10MVA/20MJ 級 SMES システム製作・検証結果
・IEC 規格体系【技術仕様書(TS)】に沿う形で整理
図Ⅲ-2-1.1-1
研究の進め方
247
2. 研究開発項目毎の成果
2.1 用途別標準 SMES システム検討
2.1.1 研究の進め方、SMES システムの目的・用途の整理
目的用途を体系的に整理し、国内外の市場ニーズについて企業ヒアリング、文献調査及び経
済性分析・評価を実施、SMES システムと競合技術との比較検討を行う。以下に基づき整理。
・ 電力用途、産業用途、海外用途についてまとめる。用途は調査結果により整理
・ 電力用途は、系統制御用(系統安定化用、負荷変動補償用、周波数調整用など)
・ 産業用途は、瞬時電圧低下補償用、負荷変動補償用、研究開発用など
・ 海外用途は、瞬時電圧低下補償用など
2.1.2 市場ニーズ調査、導入可能量想定
(1) 市場ニーズ調査方針
電力品質向上対策などについて市場ニーズ調査を行う。国内外での現在・将来の電力系統状
況や電力品質維持のニーズを調査し、SMES 適用可能性、適用範囲、要求仕様等を明らかにす
る。
(2) 調査対象及び調査内容
a. 国内
(a) 電力会社調査
平成 14 年度に電力会社を対象に実施した送・配電系統に関するニーズ調査結果から、
SMES のニーズ毎に SMES の規模を調査・整理した。なお、電力品質維持などに対する最新
状況および SMES のニーズについても聞き取り調査を行った。
(b) 需要家調査
需要家(鉄鋼、非鉄金属、自動車、電機、化学、鉄道、研究施設等)から、電力品質の問
題点に対する対策状況、対策コストおよびニーズを聞き取り調査、将来における電力品質の
状況、対策コスト等を分析し、SMES の導入効果について整理するとともに、SMES の適用
形態、要求仕様を検討した。
b. 海外
・ 今後の経済成長・品質対策の要求が大きい、企業進出が見込まれるところを調査対象とし、
現地に進出している日系企業を対象に聞き取り調査。
・ 現地電力会社または電力系統を所管する箇所に、電力品質、系統安定度、系統構成の実態、
今後(10 年先程度まで)の見通しなどを聞き取り調査することを目的として実施。
(3) 市場調査結果
表Ⅲ-2-2.1.2-1 に産業用途、表Ⅲ-2-2.1.2-2 に電力用途について結果を示す。海外市場は、東
南アジア地区日系大規模工業団地に対し、供給・需要双方に対し現地調査を行った。結果を表
Ⅲ-2-2.1.2-3 に示す。
248
表Ⅲ-2-2.1.2-1 産業用途におけるニーズ調査結果
業
種
総 括 (①変動負荷対策 ②瞬低・停電対策)
負荷実態等
問題事例など
①高炉あるいは大きい負荷となる電炉が存在し、比較的 ・電気炉用専用送電線で ・数万 kW の負荷変動(電気炉)あり
工場規模が大きく、6 万 V 以上の強い系統に連系。自
66kV 受電
・スクラップに電極を当てる際、フリッカ発生
家発所有率も高く、変動負荷対策はコンデンサで充足。 ・電気炉を夜間運転
・5 回/年程度の瞬低あり、加工用 NC 装置のプロ
②年数回の瞬低があるが、UPS、CVCF で対策しており、 (30MW 弱で 20 分、 グラムがリセットされるケースあり
鉄 鋼
強いニーズはなし。
5MW で 10~15 分とい ・停電は 1 回/2~3 年、タイミングにより工程遅れ
うパターンの4回繰り返 などを生じる(2~3 回/10 年溶解中の固化あり)
しを受注量に合わせて が、設備被害はあまりない
運転)
①変動負荷(圧延機、誘導電気炉)対策はコンデンサ(高調 ・20,000kW の圧延機、 ・誘導電気炉の入切でフリッカが発生するが、ライ
波対策、力率改善を兼用)で充足しており、明確なニー
750~1,500kW の誘
ン、計器などへの影響はなし
ズはなし。
・マグネットコンダクタ、放電灯などが切れる瞬低
導電気炉十数台等が
非 鉄
あり(圧延機、塗装工程、熱交換器への影響大)
あり、5~10 分程度
製 金 属 ②鉄鋼に比べ工場規模が小さく、自家発所有率も低い。
・10~30 回/年程度の瞬低あり、3 サイクル以上で
また、比較的雷害の影響を受けやすい 6~7万 V 系統
の入切繰り返し
機器停止による製品不良発生
であることが多く、瞬低頻度が高いことから瞬低対策
・瞬低による火災発生の恐れもあり
のニーズがある。
造
①変動負荷対策のニーズはない。
・ 一 般 負 荷 程 度 ( 中 間 ・工場内での電圧変動問題なし
②1~2 回/年瞬低が発生するが、制御系のバックアップ
ピーク、夜間オフピ ・1~2 回/年の瞬低あり
自動車
程度のニーズであるとともに、近年は、省エネ効果を
ークの変動(工場全 ・NC 機械加工機の停止によるカッターの歯こぼれ
考慮してコージェネ導入例が増加し、品質対策を兼ね
体で 15MW 程度)
あり
ているとみられ、強いニーズはない。
①変動負荷対策のニーズはない。
・電圧変動問題なし
・フラット負荷
電 機
②液晶など高付加価値製品の国内生産への回帰現象が見
・過去 3 年間で 30 回程度瞬低発生(約 10%の電圧
(液 晶)
られるとともに、瞬低 1 回あたりの被害想定額が高額
低下、10~15ms)
であることから、瞬低対策の強いニーズあり。なお、 ・フラット負荷
・電圧変動なし
瞬低保険の適用条件が厳しくなり、適用を受けること
電 機
・10~20 回/年の瞬低発生
が困難化。
(半導体)
(製品の納期遅れによる信頼問題あり)
高 速
鉄 道
電
鉄
一 般
電 鉄
情報通信
医療施設
研究施設
(加速器)
J-PARC
研究施設
(核融合)
JT-60
①新幹線では 15 万 V 以下受電地点において、変動負荷 ・77kV~275kV 受電
・約 15MW/車両の負荷変動発生
対策用 SVG を設置。10 年後くらいに新幹線用の SVG ・新幹線 1 編成 16 車両あ (上下線それぞれで約 4 分間隔)
更新の可能性があり、変動負荷対策用途でのニーズが
たり連続定格約13MW
見込まれる。
ピーク(短時間)約18MW
②瞬低対策への強いニーズはなし。
・送電線落雷により 10 回/年程度停電発生
停電発生に伴って停車、数分以内に受電再開し、
運転再開(10 分弱の遅延発生)
①変動負荷対策は、車両の軽量化、省エネ化、受電の専 1,500V 直流き電線で ・4.5~9MW 程度、1 分の変動発生
用線化に伴い、変電所の容量対策としてのニーズは後 3~6kA 程度の負荷
・都市部は列車密度が高いため問題にならない
退傾向にある。また、回生電力の吸収に関しては、キ
・鉄道用変電所供給の専用線化により問題縮小化
ャパシタ、リチウム 2 次電池が注目される方向にある
・隣りあった 2 回線間の切替時に瞬低発生
(車載も視野にあるため)
。
②パワー関係への瞬低対策へのニーズはなし。
①変動負荷対策のニーズはない。
・通信設備(テレコムセンタ) ・電圧変動問題なし(フラット負荷)
②サーバの集中配置が 90 年代後半頃の想定に比べて伸 ・500kW未満×6,500ビル ・データセンタのメンテナンス中、波及による停電
びていない。また、情報通信事業においては、瞬低対 ・情報設備(データセンタ)
の事例あり
策よりも停電対策も併せた対策という観点で検討され ・4MW×300ビル
る傾向にある。これらのことから、瞬低対策のみとし
てのニーズは大きくない。
①変動負荷となる医療用加速器が登場する可能性があ ・陽子線治療:将来的に ・陽子線治療:1 分~数分程度、1Hz、変動幅 1MW
り、その変動負荷対策へのニーズがある。市場規模は 全国に 50 箇所程度
(最大負荷 1.4MW 程度の負荷変動あり)
今後の展開次第となるが、高度医療へのニーズの高ま (高圧連系)
・重粒子線:6MW 程度の負荷変動あり
りもあり一定の需要が見込まれる。
・重粒子線:数箇所程度 ・瞬低・停電あり(頻度は不明)
(特別高圧連系)
②瞬低対策については強いニーズはなし。
①変動負荷対策への強いニーズがあり、大規模なフライ ・154kV 送電線から受電 ・ピーク 20MW、平均 8MW、4 秒周期で脈動
ホイール等での対策を実施している。現状は、実験設 ・電源(陽子シンクロトロ ・スーパーカミオカンデにニュートリノを打ち込む
備自体への予算が優先され導入されていないが、予算 ン)12GeV が主要負荷
陽子シンクロトロンは 2.2 秒周期で変動あり
化されれば導入の可能性は高い。
・電圧異常 29 回/年(2000 年)
②実験スケジュールへの影響などがあり、瞬低対策につ
いても一定のニーズあり。
・275kV 送電線から 2 回 ・トロイダル励磁のための電力 60MW1 分程度の尖
線受電
頭負荷あり
・数サイクル程度の電圧低下が数回/年あるが、実
験への深刻な電力品質問題の発生はなし
249
被害規模
データなし
データなし
現状の対策
ニーズ
・コンデンサ 10MVA×2 台設置
【変動負荷対策】
・事務所内は UPS、情報システム関係は (電力会社に対する
UPS、CVCF で対策(1~50kVA 程度) 高品質な電力供給)
【瞬低、停電対策】
・雷サージの影響をアレスタで対策
・圧延機にコンデンサ設置
【変動負荷対策】
数百万円/回、 ・コンピュータなどは定電圧電源でバッ
数億円/年の
クアップ
箇所もあり
・自家発、UPS(500kW 程度)
【瞬低・停電対策】
規模想定
コンデンサ代替として業界全
体で90ヶ所(電炉設備数から
計900MVA程度)
(単機10MVA/50kWh)
データなし
データなし
データなし
・2MVA×4 台程度の 数MVA/数kWh
補償装置を検討中 100箇所程度
(5~6 億円程度) 計500MVA
・短時間(無瞬断~1
秒程度以内)の装置
・UPS 設置
【瞬低・停電対策】
・雷情報で NC 加工機を停止
データなし
10 億円/回の ・SMES を設置(10MW×1 台)
オーダー
【瞬低対策】
データなし
5 千万円/回
・NAS 電池を設置(常時 1MW、瞬低時 ・NAS 電池は初期コ
3MW×20ms) 【瞬低対策】
ストが高く、総合効
率が低いことが課題
・SVG
設置から 15
データなし
・154kV、77kV 受電の変電所に SVG を設
年経過しており
置(34~60MVA、コスト:約 10 万円/
10 年後にリプレ
kVA)
イス
【変動負荷対策】
の可能性あり
データなし
・コンピュータ機器は UPS で補償
【瞬低・停電対策】
データなし
データなし
データなし
データなし
データなし
データなし
データなし
8 千万円/年
データなし
データなし
10MVA/3kWh
数百箇所程度(計1GVA)
数MVA/数kWh
100箇所程度
計500MVA
30~50MVA×4~5台、電
鉄全体のSVC代替として
30箇所計900MVA
(単機30MVA/150kWh)
・フライホイール(3MVA)
、リチウム二次
電池、キャパシタによる回生電力の電圧
対策の検討実績あり【変動負荷対策】
・運転指令所では CVCF、UPS で対策
・駅舎でのサービス高
【瞬低・停電対策】
度化によるニーズあり
・テレコムセンタ:蓄電池によるバックアッ ・負荷機器近接に設
プ付の直流系
置する短時間バ
・データセンタ:UPS(例えば 200kW×5~
ックアップ装置
10 台)
、受電系統の多重化などで対策
のニーズあり
【瞬低・停電対策】
・SVG、コンデンサを設置
【変動負荷対策】
陽子線:
2MVA/10kWh×50 台
重粒子線:
6MVA/30kWh×数台
・線量測定など重要なデータ管理面で、
UPS 設置 【瞬低・停電対策】
・SVC(20MVA)設置
・SVC の応答が悪く、 20~100MVA/100~500kWh
【変動負荷対策】
SMES 導入を検討 5~10 箇所程度
した経緯あり
(計200MVA)
・各部署にて UPS で対策【瞬低・停電対策】
・非常用発電機もあるが、30 年間未稼働
・フライホイール(215MVA、400MVA)
、変動負荷
対策用発電機(500MVA)設置【変動負荷対策】
・制御機器を UPS で保護
・非常用発電機設置【瞬低・停電対策】
表Ⅲ-2-2.1.2-2 電力用途におけるニーズ調査結果
用途
種別
系統安定化
現状およびニーズ
規模想定
・ 現時点において、500kV 超高圧送電網の整備が進んできており、基幹系統における過渡安
定度、定態安定度の問題があるとする電力会社はないが、将来的な電源増設時には問題が
発生する恐れがある。
・ 電源制限および系統増設での対策が多数。遠隔地火力の安定化で SDR を採用している会
社があるが、設備維持が大変で装置として撤去の方向にある。
・ 安定度をその必要対策コストの観点から評価しているとする会社がある(SDR、SVG)
。
・ 長距離電源(水力系)線の安定度対策として SVG を導入しているとする会社があり、リ
プレース時には、コスト効果性があれば SMES のニーズが生まれる可能性がある
・現状の SVC・SVG 代替と
して 100MVA/15kWh
数箇所
・最大導入可能量として、
500MVA×20~30 箇所を
想定(H14 調査結果)
供給サイド
(電力会社)
需要サイド
(工業団地)
・ 負荷側に近い都市部沿岸地域の中小老朽火力の廃止に伴い電圧問題が発生した場合に、 ・電圧安定性対策:
SVG 等の設置で対応したケースがある。また、電源の廃止に伴う潮流変化による電圧対策 ・50~100MVA×14 箇所
(SVC 代替)
を実施した会社もある
・1,500MVA(同期調相機)
・ 送電熱容量限界近くでの運用やルート断事故時に電圧問題が発生する系統があると回答 ・フリッカ対策:
した電力会社が複数ある。ただし、通常の運用では問題が発生しないため、積極的に対策
20MVA/5kWh×5 箇所
・最大導入可能量として、
を行う状況ではない
50~100MVA×数十台を想
定
(H14 調査結果)
電圧対策
系統運用関連
分散電源等
PPS,
並列対策
・ 連系上問題がある場合は、受け入れ不可としている
・ 電力系統連系技術要件・ガイドライン等に準じて事業者側で SVC などの対策を実施
・ 風力発電連系については、周波数調整面から連系量に制約(上限)を設けている
問 題 点
対策のニーズ
o電力品質
(停電・瞬低頻度大、
周波数動揺・常時電圧変
動有)
o電源容量不足
o自家用発電設備が電力系統
側の
擾乱の影響を受ける
(停電・瞬低、電圧変動)
o電力系統側の品質をアップできるよう
な装置が必要
・国内での検討と同じ規模
o電力系統側の擾乱に対して、発電機の過
負荷、周波数の上昇を抑える機能を有す
る装置が必要
・インドネシア:MM2100 工業団地
300MVA 級(1,500kW×200 社)
・タイ:ロジャナ工業団地
100MVA 級(1,500kW×70 社)
表Ⅲ-2-2.1.2-3 (2/2) 電源の需給先によるニーズ
SMES の用途
・最大導入可能量として、
2MVA/1kWh×120 箇所
(風力発電所の電圧変動対策)
計240MVA を想定
o瞬低対策機能
(~1s 程度)
o電圧変動補償機能
(~20s 程度)
・ インバータ電源(太陽光や燃料電池)の増加により、将来的に系統の慣性(モーメント) ・最大導入可能量として、
3,000~6,000MVA/2~
が減り、周波数の安定化に影響が出ないか懸念される
4MWh を想定
・ 基本的に LFC の強化を考えるのが一般的である
(H14 調査結果)
・ 今後、PPS の増加量によってはガバナフリー領域の調整能力がきつくなることが懸念され
る
周波数調整
分散電源等
並列対策
変動負荷
対策
配電関連
瞬低対策
参考文献
表Ⅲ-2-2.1.2-3(1/2) 供給サイド・需要サイドからの問題点、対策のニーズ
電力会社から
需給する場合
SMES のニーズ
oオンサイト電源の導入と比較した品質
改善効果の優れる SMES
・工業団地全体を補償
工業団地当たり 100~300MVA 級
・団地内企業毎で補償
1MVA 級×800 箇所
(現地法人数の 10%程度想定)
日系企業進出状況(2005)
現地法人数
・ 基本的に原因者負担の考えに基づき、事業者側で対策
・ 太陽光発電の一地域集中連系がある場合、出力急変によるフリッカ問題が発生する恐れが
ある
・ 一斉解列が起こった場合に、分散電源の再立上げまでの供給力不足が懸念される
・ 単相電源が低圧配電系統で増加した場合、電圧不平衡などの問題が懸念される
・ 原因者負担で補償装置を設置
・ 大規模顧客接続時には、専用線化、回線分割、上位電圧階級での受電を推奨
オンサイト
電源を有する場合
・ 需要家側で対策を実施。一方、遊技施設など比較的小規模な需要家で、電力品質のニーズ
があらたに想定され始めている
o系統安定化機能
(電力系統の擾乱に対して
自家用発電設備が影響を
受けない)
o自家発高速切換遮断機能
進出企業数
中
国
4,040
2,174
韓
国
634
528
台
湾
905
784
フィリピン
449
374
インドネシア
697
587
ベトナム
219
220
タ
計
イ
1,507
1,140
8,451
5,807
・オンサイト電源(自家発)の安定化に寄
与する SMES
(工業団地全体の安定化ではない)
SVC導入量
:「静止型無効電力補償装置の現状と動向」電気学会技術報告第 874 号(2002 年)
同期調相機導入量:「わが国における電力用並列コンデンサの配置状況、稼働状況および無効電力配分状況に
関する調査結果」電気学会技術報告第 788 号(2000 年)
250
(4) 市場規模・導入可能量想定
a. 導入可能量想定の考え方
調査結果をもとに、工場内の変動負荷や高速鉄道通過時の変動負荷などの負荷変動補償用途、
系統周波数変動時の周波数調整用途、系統動揺時の安定化制御等のための系統安定化用途、工
場内などにおける瞬時電圧低下対策用途、および分散型電源(風力、太陽光発電)による電圧
変動対策用途についての SMES の導入可能量を検討した。
SMES の導入時期については、すでに一部導入が始まっている瞬時電圧低下対策用途につい
ては 2015 年頃から本格的に導入されると想定した。また、一層の信頼性が要求され規模も大
きなものとなる系統安定化用途、負荷変動補償・周波数調整用途の SMES においては、2020
年頃からの導入と想定した。
b. 用途別導入可能量想定
(a) 負荷変動補償用途
①鉄
鋼
電炉リプレースの際に全てのコンデンサ代替として 2040 年まで SMES 設置を想定
1 万kW ×
90 箇所 = 90 万kW(代替)
②新幹線
新幹線の変動負荷対策用 SVG 設置から約 20 年経過、15 年後から順次 SMES に取り替わ
ると想定
3 万kW ×
30 箇所 = 90 万kW(代替)
③研究施設
研究機関や大学など大型研究施設について、SMES 実用化後順次導入されると想定
2 万kW ×
10 箇所 = 20 万kW(新設)
④風力発電
風力発電連系起因の電圧変動対策として 2040 年までに 120 箇所程度の風力連系を想定
0.2 万 k W× 120 箇 所 ≒ 20 万kW(新設)
以上より、2040 年までの導入可能量は、①~④計で 220 万kW 程度と想定した。
(b) 周波数調整用途
ガバナフリー必要量を、系統の最大需要の3%と風力発電等の出力変動の大きい電源の導
入量の和と想定、この増分を SMES の導入可能量と想定。表Ⅲ-2-2.1.2-4 に示す。
表Ⅲ-2-2.1.2-4
①最大需要
変動電源 風 力
導入量
太陽光
②ガバナフリー必要量
③SMES 新規導入量
④SMES への更新量
SMES 導入可能量想定(周波数調整用途)
2003 年
16,727
68
86
656
-
-
2010 年
17,812
112
161
807
-
-
2020 年
20,069
175
268
1,045
59
67
2030 年
20,886
237
375
1,239
49
67
〔単位:万 kW〕
2040 年
21,737
300
482
1,434
49
67
累
計
-
-
-
-
157
201
計(③+④)
-
-
126
116
116
358
上表より、2040 年時点の周波数調整用途の SMES 導入可能量は、360 万kW 程度と想定
251
①最大需要
1.2%(2010 年~2020 年)、0.4%(2020~2040 年)で想定
伸び率
*(2030 年のエネルギー需給展望,H17 年 3 月、総合資源エネルギー調査会需給部会)
②ガバナフリー必要量
最大需要①の3%と変動電源(風力、太陽光)導入量の合計
③SMES 新規導入量
ガバナフリー必要量の増分×導入率 25%
④SMES への更新量
2010 年時点でのガバナフリー量×更新率 25%で想定
(c) 系統安定化用途
長距離送電による過渡安定度面対策量全てに SMES が設置されると想定
①電力需要
・ 発電設備総出力
2005 年
19,998 万kW(電気事業便覧による)
・ 需要の増分
年 0.9%の伸び (「2030 年のエネルギー需給展望」H17 年 3 月総合資源エネルギー調査会による)
2020 年度:22,800 万kW、2040 年度:27,400 万kW 、増分:4,600 万kW
2040 年の電源構成比予測:汽力 51%、原子力 38%、水力他 11%で案分し、
増分は汽力 2,350 万kW、原子力 1,750 万kW、水力他 500 万kW
・ 長距離電源からの大電力輸送となる量
上記のうち、原子力、汽力の全てと想定し、2,350+1,750 = 4,100 万kW
・ 過渡安定度向上のために必要な SMES 容量
電源設備容量の 1/10 と想定し、4,100 万kW×0.1 = 410 万kW
②代替需要(廃止も含む)
現状で対策している SVG、SVC の代替として、10 万kW×10 箇所 = 100 万kW
③上記より、2040 年時点の系統安定化用 SMES の導入可能量は、510 万kW と想定した。
(d) 瞬時電圧低下対策
需要が期待される産業について、電池などの代替として、あるいは新規に 2040 年までに
SMES が設置されると想定した。なお、箇所数想定はヒアリング結果に基づく。
①非鉄金属
0.5 万 kW×130 箇所
= 65 万kW(代替・新設)
②電機(液 晶) 1.0 万 kW×125 箇所
= 125 万kW(代替)
③電機(半導体) 0.5 万 kW×130 箇所
= 65 万kW(代替)
以上より、2040 年までの導入可能量は、合計で 255 万kW 程度と想定
(e) 導入可能量のまとめ
図Ⅲ-2-2.1.2-1 に 2040 年までの導入可能量のまとめを示す。
1 4 ,0 0 0
負 荷 変 動 補 償 用 (産 業 用 も 含 む )
1 2 ,0 0 0
周 波 数 調 整 用
系 統 安 定 化 用
累計潜在需要(MVA)
1 0 ,0 0 0
産 業 応 用 (瞬 低 用 )
8 ,0 0 0
6 ,0 0 0
4 ,0 0 0
2 ,0 0 0
0
2005
~ 2010
2012
2014
2016
2018
2020
2022
2024
2026
2028
2030
2032
年
図Ⅲ-2-2.1.2-1
SMES の導入可能量想
252
2034
2036
2038
2040
2.1.3 SMES 及び競合技術の適用効果
(1) 適用効果検討方法
超電導電力貯蔵装置(SMES)は、有効・無効電力の同時制御が可能で、大電力を瞬時に出
し入れでき、繰り返し使用に強いなど、これまでの技術には見られない優れた特徴を有してお
り、これを活かした用途として系統安定化、負荷変動補償、周波数調整などの電力ネットワー
ク制御が挙げられる。また、需要家における瞬低対策や、分散形電源の系統連系対応などへの
適用も期待されている。本節では SMES ならびに競合技術の系統導入効果検討の際の基本的な
進め方と SMES システムの適用用途について述べる。
(2) SMES システムの適用用途
ここでは SMES システムの有効・無効電力制御可能という特徴より適用用途を整理する。
a. 系統安定化用途
(a) 電力系統の安定度
需要と供給のバランスが保たれている電力系統では全ての発電機が同期速度で運転されて
いるが、電力系統への落雷事故時等はその付近の発電機において瞬時に大きなエネルギーのア
ンバランスが生ずることがあり、事故後加速と減速を繰り返しつつ再び定格回転数での運転状
態に復帰できる時、電力系統は安定であるという。しかし、一部の発電機に蓄えられた加速エ
ネルギーを系統側に放出できない場合には、定格回転数へ復帰できず加速し続けてしまうこと
がある。これを発電機の脱調現象といい、系統から解列する必要がある。この場合、電力系統
は不安定であるという。すなわち、平常運転時には問題がなくとも、事故が起きた後にすべて
の発電機が運転を継続でき、電力系統が再び安定な運転状態に復帰できるか否かが、電力系統
の安定度問題(過渡安定度)である。
(b) SMESシステムの適用
SMES システムを用いた過渡安定度向上対策としては、制動抵抗と同じく事故直後の加速エ
ネルギーを SMES システムによって吸収する方法が挙げられる。また、SMES システムの無効
電力制御機能を活かして、SVC と同様に電圧を制御することで安定度を向上させる方法も考え
られる。定態安定度の向上対策としては、事故後数百ミリ秒~数十秒にわたる発電機の動揺を、
SMES システムのもつ有効電力制御能力によってすばやく減衰させることが考えられる。図Ⅲ
-2-2.1.3-1 に系統制御用 SMES システムモデルを示す。
図Ⅲ-2-2.1.3-1
系統制御用 SMES システムモデル
253
b. 負荷変動補償用途(電圧変動抑制)
(a) 電力系統の負荷変動
電力系統に接続する負荷(需要家)の中には電力消費が急激に大きく変化する等、電力系統
への影響を考慮しなければならない場合があり、電気炉や金属圧延工場、電気鉄道などが挙げ
られる。以下に代表的な負荷変動の特徴を述べる。
・
鉄鋼を生産する電気炉メーカーでは、原料の鉄スクラップや焼却灰の溶融などにアーク炉
を使用しており、使用される電力は設備の容量に応じて数十~百数十 MW に達する。数 Hz
~30Hz 程度で、主として周辺需要家にフリッカ現象(照明のちらつき)として現れる。
・
金属圧延工場の厚板用や分塊用の圧延機は、負荷変動は数秒のオーダーとなる。負荷変動
幅は厚板負荷では有効電力が 15~20MW、無効電力が 20~25Mvar 程度となる。一方、鋼板
や棒鋼用の圧延機では、負荷の変動周期は数十秒から数分のオーダーとなる。負荷変動幅は
熱延負荷の場合有効電力が 70~75MW、無効電力が 70~75Mvar 程度となる。よって圧延機
の負荷変動による電源系統への擾乱は、アーク炉のようなフリッカ発生の問題よりも、むし
ろ電圧低下及び力率低下が問題となる場合が多い。
・
新幹線の列車負荷は一編成当たりの電力が 30MVA 程度と大きな単相負荷であり、き電変
圧器(主にスコット結線変圧器)により電鉄変電所で受電する三相交流電圧から変換される
が、単相負荷であるため、これが三相側に流れると大きな不平衡電流(逆相電流)を発生す
る。これにより三相側交流電圧にも不平衡が発生し電力系統に影響を与える。
(b) SMESシステムの適用
SVC と同様に、SMES が持つ無効電力の高速制御能力を活かして、負荷の無効電力変動を吸
収することで、電圧変動の抑制効果が期待できる。
(c) 適用効果検討方法
金属圧延工場における負荷変動の実測データにより模擬負荷変動解析用モデルを作成した。
電中研開発の Y 法シミュレーション解析により評価する。解析モデルを図Ⅲ-2-2.1.3-2 に示す。
c. 負荷変動補償用途(有効電力変動抑制)
(a) 電力系統の周波数変動
周波数は、有効電力の需要と供給のバランスを取ることにより維持されており、このバラン
スが崩れると周波数変動が発生する。1 日の中で電力需要は絶えず変動しており、これに対し
て電力会社が発電機の出力を調整することで周波数を維持している。
周波数の調整は、需要の変動周期に応じて、長周期成分、短周期成分、微小変動分に分けて
行われる(図Ⅲ-2-2.1.3-3)。長周期成分は比較的予測がしやすく、予測値に基づいた出力指令
が発電所へ送られる。一方、短周期成分は火力・水力発電所を中心とした負荷周波数制御(LFC:
Load Frequency Conrtrol)によって調整される。残りの微小変動分については、ガバナフリー
運転で対応している。
近年、原子力発電比率の増加、PPS の参入、分散形電源の増加など硬直化電源の増加によっ
て、LFC 容量不足が懸念されており、特に周波数調整容量が少ない夜間の軽負荷時間帯で問題
となる可能性がある。
254
66kV 8km/2cct
V1.05
潮流検出 Pflow
変動負荷
需要変動の大きさ
需要変動の大きさ
V0.98
X=0.1[pu]
需要特性
ガバナ
フリー
V 検出 Vn
対策機器
20秒程度
負荷周波
数制御
数分
経済負荷
配分制御
十数分程度
変動周期
図Ⅲ-2-2.1.3-2 変動負荷補償用途解析系統モデル
図Ⅲ-2-2.1.3-3 需要変動に対する
制御分担概念
(b) SMESシステムの適用
SMES がもつ有効電力の高速制御能力により負荷の有効電力変動を吸収、周波数変動を抑制
できる可能性がある。
(c) 適用効果検討方法
模擬負荷変動解析用モデルによりY法シミュレーション解析を実施し、SMES システムの有
効電力変動抑制の適用効果を評価する。なお風力発電出力変動による周波数変動は分散形電源
連系対応として扱うこととし、ここでは負荷変動による周波数変動の抑制効果を検討する。
d. 瞬時電圧低下対策用途
(a) 電力系統の瞬時電圧低下
電力系統に落雷などの事故が発生した際には保護継電器が働き事故送電線を開放、当該送電
線への送電がストップされその後再閉路されるが、継電器が動作するまでの短時間電圧低下は
避けられない。これが瞬時電圧低下(以下、瞬低)と呼ばれる現象で、ほとんどの場合継続時
間は数サイクル以内(0.5 秒以内)である 。
瞬低により瞬間的な電圧低下に敏感な機器・システムを有する需要家にとっては機器停止な
どの影響が生ずる場合があり、機器に影響がでない場合も含めると、年間 30~40 回に及ぶこ
ともある。また、連系他電力へ影響が波及することもある。
(b) SMESシステムの適用
瞬低対策にはいくつかの方法があるが、いずれもエネルギー貯蔵部をもっており、SMES を
用いた瞬時対策装置が海外ですでに実用化されている。日本国内においても液晶工場で運用が
開始されるなど、他用途 SMES システムよりも実用化に一歩近い状況にある。
(c) 適用効果検討方法
瞬低時の現象が数サイクルと非常に短く変換器動作の特性を詳細に模擬する必要があるた
め、他の用途での検討で実施している実効値解析ではなく瞬時値解析が必要となる。本報告で
は 広 く 一 般 に 使 用 さ れ て い る 瞬 時 値 解 析 ツ ー ル ( EMTP : Electro Magnetic Transients
Program)を用いたシミュレーション解析を実施し、SMES システムによる適用効果を示す。
255
e. 分散形電源系統連系対応用途
(a) 分散形電源の電力系統連系
地球温暖化問題や CO2 削減問題などを背景に、風力発電(主として送電系統連系)や太陽光
発電(主として配電系統連系)は近年その導入量が増大しつつあり、特に風力発電については
2030 年までに 1,180 万 kW の導入目標とされている。これらは出力を任意に制御することが
できず、また一般にその変動が大きく予測が困難、電力品質の面で問題を引き起こす原因とな
る場合もある。
(b) SMESシステムの適用
風力発電出力の有効・無効電力変動、太陽光発電出力の有効電力変動は、適正な出力と容量
を持つ SMES システムの高速な有効・無効電力同時制御能力で吸収できることが期待される。
(c) 適用効果の検討方法
平成 12~13 年 NEDO「風力発電電力系統安定化調査」事業では、風力発電が電力系統に与
える影響として系統周波数変動と電圧変動が取り上げられ、ケーススタディが実施されている。
周波数変動については、周波数調整力、系統容量、風力発電パターンなどをパラメータとし、
負荷周波数制御を考慮したシミュレーション解析を実施、電圧変動については二次系統の電圧
変動を風力発電機タイプ、風力発電機台数、連系点から主系統までの線路インピーダンス、主
系統の短絡容量をパラメータとした解析が実施されている。
なお、本報告では実際の系統にどれだけの風力発電を導入できるかという観点での検討では
なく、貯蔵装置を組み合わせることにより、風力発電、太陽光発電の出力変動抑制効果を解析
することが主眼である。シミュレーション解析には Y 法を使用した。
(3) SMES と競合技術の適用効果の評価
a. 系統安定化用途
図Ⅲ-2-2.1.3-4 に多機系統モデルでの導入効果結果、図Ⅲ-2-2.1.3-5 に無効電力制御機器 SVC
との比較による導入効果結果を示す。
・ PQ 同時制御型の機器(SMES、F/W、EDLC、電池)では、静止機器である SMES と EDLC、
電池は効果がほぼ同じであるのに対し、F/W は回転機であるため、F/W の回転数が定格回転
数に達してもすぐに止まらず一時的に過負荷運転となり有効電力を多く吸収し効果が大き
い。
・
安定度限界には有効電力だけでなく電圧の高速制御も影響を与えるため、PQ 同時制御が
可能な SMES は無効電力制御のみの SVC・STATCOM よりも安定度向上効果は大きい。
256
5.90
SMES
5.80
安 定限 界
中間開閉所
SVC
SDR
FW
EDLC
RF
対策無
5.70
5.60
5.50
フライホイール
RF
SMES,EDLC
5.40
5.30
PSS のみ対策時
の安定限界
5.20
SDR
2 箇所
中間開閉所
1 箇所
]
W
G
[
5.10
3 箇所
SVC,STATCOM
5.00
4.90
0
100
図Ⅲ-2-2.1.3-4
容量[MVA]
200
300
多機系統モデルでの限界送電電力向上効果
限
界
送
電
電
力
(M
W
)
5510
SMES
SVC
5410
5310
5210
5110
100MW
5010
図Ⅲ-2-2.1.3-5
2
200
1
100
PSS の み
の安定限
3
300
対策機器容量(MVA)
SMES と無効電力制御機器 SVC との限界送電電力向上効果の比較
b. 負荷変動補償用途
図Ⅲ-2-2.1.3-6 に有効電力変動抑制効果、図Ⅲ-2-2.1.3-7 に電圧変動抑制効果の結果を示す。
<有効電力変動抑制効果>
・
PQ 同時制御型の機器(SMES、電池、EDLC、F/W)では、静止機器である SMES と電
池、EDLC はほぼ効果が同じであるのに対し、F/W は回転機であるため、F/W の回転数が定
格回転数に達してもすぐに止まらず一時的に過負荷運転となり有効電力を多く吸収し、若干
効果が大きくなる場合がある。ただし、負荷変動の大きさに見合う機器容量がある場合は
SMES と同様でそれ以上の変動補償効果は得られない。
<電圧変動抑制効果>
・
PQ 同時制御型の機器(SMES、電池、EDLC、F/W)では、静止機器である SMES と電
池、EDLC はほぼ効果が同じであるのに対し、F/W は回転機特有の界磁回路の時間遅れの影
響により、若干効果が減少する。
・
SMES の P 変動抑制制御により無効電力制御のみの SVC より若干効果が良くなる。
257
0.4
0.06
0.25
SVC
SMES
F/W
RF
EDLC
0.05
SMES
F/W
RF
EDLC
0.3
0.04
電圧差
0.03
0.2
[pu]
有効電力潮流差[pu]
0.35
0.15
0.1
SVC
SMES,RF,EDLC
F/W
0.05
0.01
SMES,RF,EDLC
0
0
0
10
F/W
0.02
20
30
40
50
60
70
0
10
30
40
50
60
70
対策機器容量[MVA]
対策機器容量[MVA]
図Ⅲ-2-2.1.3-6
20
有効電力変動抑制効果図
図Ⅲ-2-2.1.3-7
電圧変動抑制効果
c. 瞬時電圧低下対策用途
瞬低対策機器の観点からまとめたものを表Ⅲ-2-2.1.3-1 に示す。電圧低下から逃げるタイプ
を例としたときの各種機器による電圧低下波形である。瞬低発生後の電圧低下から回復に至る
過程の波形は対策機器ごとでの違いは無い。
表Ⅲ-2-2.1.3-1
瞬低対策機器による比較
実機相当の SMES(出力 10MW、時間 1S)と同じ条件で瞬低電圧抑制効果
の比較
電気二重層キャパシタ
(EDLC)
1.2
需 要 家 側 電 圧 [p u ]
SMES、
電池、
フライホイール
(F/W)、
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0.75
0.8
0.85
0.9
0.95
1
Time[sec]
d. 分散形電源連系用途(送電系統への風力発電連系)
<有効電力変動抑制効果>
図Ⅲ-2-2.1.3-8 に Off-Peak 断面データにおける有効電力変動抑制効果を示す。
・
風力発電機のタイプ(二次励磁と DC リンク)による効果の違いはほとんど見られない。
・
F/W が短時間過負荷運転となり有効電力を多く吸収し、効果的に作用する場合(10MVA
以下)は、有効電力抑制効果が若干大きめに出る場合がある。ただし、風力出力変動の大き
さに見合う機器容量がある場合は SMES と同等。
・
PQ 同時制御により SMES と EDLC、電池はほぼ同じ効果。電池のフル放電時の内部抵抗
ロスの影響で放電エネルギーが減少した場合は、制御性能が低下する場合がある。
258
0.07
0.07
SMES
FW
RF
EDLC
0.05
0.04
0.03
RF
SMES,EDLC
0.02
F/W
0.01
SMES
FW
RF
EDLC
0.06
有効電力潮流差[pu]
有効電力潮流差[pu]
0.06
0.05
0.04
0.03
0.02
SMES,RF,EDLC
0.01
0
F/W
0
0
10
20
30
対策機器容量[MVA]
40
0
(a)二次励磁方式の風力発電機
図Ⅲ-2-2.1.3-8
10
20
30
対策機器容量[MVA]
40
(b)DC リンク方式の風力発電機
Off-Peak 断面での有効電力変動抑制効果(Peak 断面も同様)
<電圧変動抑制効果>
図Ⅲ-2-2.1.3-9 に Off-Peak 断面データにおける電圧変動抑制効果を示す。
・
風力発電機のタイプ(二次励磁と DC リンク)による効果の違いはほとんど見られない
・
PQ 同時制御により SMES と電池、EDLC はほぼ効果が同じであるのに対し、F/W は界磁
回路の時間遅れの影響により、若干効果が減少する。
0.06
0.06
SMES
SVC
FW
RF
EDLC
0.05
0.04
電圧差[pu]
0.04
電圧差[pu]
SMES
SVC
FW
RF
EDLC
0.05
0.03
0.03
0.02
0.02
SMES,RF,EDLC
SMES,RF,EDLC
F/W
0.01
F/W
0.01
SVC
SVC
0
0
0
10
20
30
対策機器容量[MVA]
0
40
10
20
30
対策機器容量[MVA]
40
(a)二次励磁方式の風力発電機
(b)DC リンク方式の風力発電機
図Ⅲ-2-2.1.3-9 Off-Peak 断面での電圧変動抑制効果(Peak 断面も同様)
e. 分散形電源連系用途(配電系統への太陽光発電連系)
図Ⅲ-2-2.1.3-10 に有効電力変動抑制効果と電圧変動抑制効果の結果、図Ⅲ-2-2.1.3-11 に無効
電力制御機器 SVC との比較による系統導入効果の結果を示す。なお、検討に際しては、配電
用変電所から長距離フィーダー線の末端に大量の PV が導入されたモデルを用いた。
<有効電力変動抑制効果>
・
SMES と競合技術ではほぼ同じ効果となった(PV の変動が長周期で過負荷運転により吸
収エネルギーの上限に達し F/W の過負荷運転の効果が得られなかったため)。
<電圧変動抑制効果>
・
PQ 同時制御機器では、静止機器である SMES と電池、EDLC はほぼ効果が同じであるの
259
に対し、F/W は界磁回路の時間遅れの影響により、若干効果が減少する。
・
配電系統は線路インピーダンスの抵抗分が高く、発電機の有効電力変動の電圧変動への影
響が強いため、SMES の P 変動抑制制御の効果により Q 制御のみの SVC よりも電圧変動を
抑える効果が大きくなる。
電圧変動を抑制した場合の SVC との導入効果の比較では、電圧変動抑制のニーズが高い
・
ほど(電圧変動を1%以内に抑制)、SMES の効果は SVC より大きくなる。
0.040
0.060
SMES
SVC
RF
FW
EDLC
SMES
RF
FW
EDLC
RF
0.020
0.010
0.040
電圧差[pu]
有効電力潮流差[pu]
0.050
0.030
SMES,F/W,EDLC
0.030
0.020
F/W
SVC
0.010
SMES,RF,EDLC
0.000
0.000
0
100
200
300
400
500
0
100
200
機器容量[kVA]
(a)有効電力変動抑制効果
図Ⅲ-2-2.1.3-10
800
PV導入可能量(kW) PV導入可能量(kW) 500
有効電力変動・電圧変動抑制効果
SMES
SVC
800
700
600
500
400
SMES
SVC
700
600
500
400
300
200
300
100
40
1
100
2
200
3
対策機器容量(kVA)
無対策時
の導入可
400
(b)電圧変動抑制効果
900
200
300
機器容量[kVA]
(a)電圧変動を 2%pu に抑制する
無対策時
の導入可
ケース
図Ⅲ-2-2.1.3-11
50
1
100
2
対策機器容量(kVA)
200
3
(b)電圧変動を 1%pu に抑制する
ケース
系統導入時の SVC との比較結果
(4) SMES と競合技術の比較検討の総括
こ れ ま で の 結 果 と 各 機 器 の PQ 制 御 性 や 技 術 上 の 特 徴 な ど を と り ま と め た も の を 表 Ⅲ
-2-2.1.3-2 に示す。
260
表Ⅲ-2-2.1.3-2 SMES と競合技術の各用途別に対する効果比較の総括一覧
261
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