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リフォームビジネス拡大に向けた勉強会報告書(案)

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リフォームビジネス拡大に向けた勉強会報告書(案)
資料4
リフォームビジネス拡大に向けた勉強会報告書(案)
平成26年5月
目次
Ⅰ.検討の目的
......................................................................................................................................................................................................................... 1
Ⅱ.検討の対象としたリフォームの内容
.............................................................................................................................................. 1
Ⅲ.住宅・リフォーム業界を巡る現状と社会環境の変化
............................................................................................. 2
○住宅・リフォーム業界を巡る社会環境の変化
○住宅関連市場の将来動向
○消費者志向の変化
○リフォームビジネス市場
Ⅳ.リフォームの担い手の事業モデル分析
............................................................................................................................... 12
Ⅴ.現在の住宅リフォーム市場が抱える課題への対応
.......................................................................................... 13
○建物の評価基準づくり、インスペクション及び金融支援
○人材の育成
○規制改革
○優良なリフォーム事業者の見える化/認証
○普及広報の推進
Ⅵ.社会ニーズに対応したリフォーム市場拡大の方向性
..................................................................................... 19
○魅力的なまちづくり・住環境の向上
○地域のものづくり企業や他業種企業との連携による新ビジネス創出
○エネルギーマネジメント
○より安全・安心な住まいの実現
○高齢化・在宅医療への対応
Ⅶ.リフォーム関連産業の今後の方向性.......................................................................................................................................... 22
○中小工務店・リフォーム事業者に期待される役割
○大手住宅メーカーに期待される役割
○建材・住宅設備メーカーに期待される役割
○地方自治体に期待される役割
○住まい手(消費者)の責任
あとがき
............................................................................................................................................................................................................................................. 24
参考1:委員等から指摘があった項目(補助制度) .......................................................................................................... 25
参考2:リフォームビジネス拡大に向けた勉強会委員名簿 ................................................................................. 26
参考3:リフォームビジネス拡大に向けた勉強会開催実績 ................................................................................. 27
Ⅰ.検討の目的
 人口の減少、少子高齢化の進展などにより、将来的に新築需要の減少が見込まれる。成
熟した社会の中で、住宅分野においても、これまでの新築主体からリソースシフトを行
い、既築ストックを有効に活用することが求められる時代になってきている。
 政府においても、中古住宅の流通活性化と既存ストックのリフォーム拡大に向け、今後
の施策の検討を本格化したところ。
 一方で、リフォーム分野において、これまでにない事業手法、異業種との連携といった
新しいビジネスモデルにより、新たな空間価値創造等を消費者に訴求し、成功する事例
が出てきている。
 こうした状況を受けて、リフォームビジネスの一層の拡大・推進に向けて、改めてリフ
ォームを「消費者の住まいに関する多様なニーズに応えるビジネス(サービス)
」とし
て注目し、先進的なリフォームビジネスの実例分析等を通じ、リフォームビジネスの拡
大に向けて有効な施策の検討を行った。
Ⅱ.検討の対象としたリフォームの内容
 リフォームを種別に見ると、増改築や大規模修繕など規模の大きなものから、建物の性
能の向上や機能の高度化を図るリフォーム、そして、需要の過半数を占める住宅設備等
の維持・修繕といったメンテナンスのための小規模なものまで幅広くある。本勉強会に
おいては、住宅ストックの資産価値の実質的な向上につながる、以下のようなリフォー
ムを主な検討の対象とした。
 増改築、大規模修繕
 性能向上・機能高度化(耐震性の向上、エネルギー使用効率の改善、バリアフリー
化、エネルギー管理(IT)システムの導入、創エネ、防災・防犯機能の付加等)
 生活の場としての居住空間における快適性・居住性向上
 また、上記に併せて、需要喚起を促す観点から、いまだ顕在化していない新規需要の掘
り起こしや、リフォームをより安心してできるようにするために必要な市場環境の整備
についても検討の対象とした。
1
Ⅲ.住宅・リフォーム業界を巡る現状と社会環境の変化
○住宅・リフォーム業界を巡る社会環境の変化
 人口は、2010 年をピークに、2050 年時点で約1/4が減少。少子・高齢化が進行(住
宅の一次取得世代である 30 代が 2020 年には 2013 年比で約 300 万人減少。
)
。
【日本の人口動態の推移と予測】
・・・60代
・・・30代
2013年
2020年
100
100
男
男
女
90
1,000
800
600
400
200
0
100
男
女
90
80
80
70
70
70
60
60
60
50
50
50
40
40
40
30
30
30
20
20
20
10
10
10
0
0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,200
1,000
800
600
400
200
0
女
90
80
0
1,200
2030年
0
0
200
400
600
800
30代:1,674万人 約300万人減少 30代:1,387万人
60代:1,549万人
60代:1,837万人
総人口:12,410万人
総人口:12,725万人
1,000
1,200
1,200
1,000
800
600
400
200
0
0
200
400
600
800
1,000
1,200
30代:1,228万人
60代:1,559万人
総人口:11,662万人
出典:「日本の統計2013(総務省)」、「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)(国立社会保障・人口問題研究所)」
 東京、名古屋、大阪を中心とした三大都市圏で人口集中が継続。高度経済成長期に立地
した大規模団地では、一斉に高齢化。2050 年(推計)には、居住地域の 6 割以上の地
点で現在の半分以下に人口が減少。また、現在居住している地点の約 2 割は無居住化。
2
 人口が一定規模を下回ると、維持できなくなるサービスが増え、そのことがさらなる人
口流出を招く可能性があり、自治体のサービス維持・提供にかかる負担がさらに増大。
市町村では、中心部へのより集中した居住と各種機能の集約等によるコンパクトシティ
の形成が不可欠。
3
○住宅関連市場の将来動向
 2008 年時点で、住宅ストック数は、総世帯数に対し、約 15%多く、量的には既に充足。
2030 年には約 2 割の見込み。
【住宅ストックと世帯数の推移】
(万戸・万世帯)
1.4
7000
1.22
6000
5000
0.96
0.97
1.01
1.10
1.08
1.05
1.11
1.11
1.13
5025
1.13
1.15
1.14
5389
5759
1.2
6240
5985
1.0
4588
4201
3861
4000
0.8
3545
3106
3000
0.6
2559
2109
2000
1000
1793
1865
2182
2532
2965
3520
3284
4116
3781
4436
4726
4997
5305
5123
0.4
0.2
0.0
0
1958年 1963年 1968年 1973年 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 2008年
住宅数
世帯数
2020年
2030年
1世帯当たり住宅数
出典:国土交通省「第1回 中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」平成25年3月
住宅ストック推計値)一般財団法人ベターリビング サステナブル居住研究センター作成
世帯数推計値)国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」(2014年4月推計)
 民間推計によれば、2030 年に新設住宅着工戸数は 70.5 万戸まで減少。
新設住宅着工戸数の推移
(万戸)
180
164.3
160
129.0
140
120
98.0
100
82.5
80
60
40
20
0
全国 推計値

全国 実績
出典:国土交通省「建築着工統計年報
推計値:一般財団法人ベターリビング サステナブル居住研究センター作成
4
70.5
 一方で、既存ストックの多くは、耐震性の強化や省エネ化が必要。また、高齢者の居住
する住宅のバリアフリー化も必ずしも進んでいるとは言えない。
【耐震性の基準から見た既存住宅の割合 】
【省エネ基準から見た既存住宅の割合】
H11基準
5%
耐震性なし
約1,050万戸
(21.2%)
耐震性あり
約650万戸
(13.1%)
S56年
以前
S57年
以降
S57年以降
耐震性あり
約3,250万戸
(65.7%)
出典:総務省「平成20年住宅・土地統計調査(一部特別集計)」
S55基準
以前の基準
(無断熱)
39%
H4基準
19%
S55基準
37%
出典:総務省「平成20年住宅・土地統計調査」をもとに、国土交通省推計
バリアフリー:高齢者(65歳以上の者)の居住する住宅のバリアフリー化率(平成20年)
一定のバリアフリー:37% (平成32年目標:75%)、
高度のバリアフリー:9.5% (平成32年目標:25%)
一定のバリアフリー:①手すり(2カ所以上)又は②段差のない屋内の対応がなされている。
高度のバリアフリー:①手すり(2カ所以上)、②段差のない屋内、③廊下幅が車椅子通行可、3点全てに対応している。
出典:総務省「平成20年住宅・土地統計調査(一部特別集計)」
 住宅の一次取得者層の大部分を占める 30 代の平均年収、金融資産はともに大きく減少。
(万円)
5
○消費者志向の変化
 消費者のニーズは、近年、
「多少値段が高くても品質が良いもの」に変化。特に若年層
において、
「自分が気に入った付加価値には対価を払う」こだわりが強い。
基本的な消費価値観の推移
50.2
46.9
45.3
45.4
41.2
とにかく安くて
経済的なもの
を買う
40.0
40.9
43.3
44.3
46.4
多少値段が
高くても、品
質の良いもの
を買う
22.9
自分のライフ
スタイルにこ
だわって商品
を選ぶ
0
10
20
30
出典:NRI「生活者1万人アンケート調査」
14.4
16.6
17.6
18.2
17.0
環境保護に
配慮して商
品を買う
29.1
33.5
35.6
37.8
38.4
安全性に配
慮して商品
を買う
31.2
31.5
34.6
36.0
40
52.6
57.7
58.1
61.3
61.7
できるだけ
長く使えるも
のを買う
50
60
0
70
(%)
2000年
10
20
2003年
2006年
30
40
2009年
50
60
70
(%)
2012年
4つの消費スタイル
13
【プレミアム消費】
自分が気に入った付加
価値には対価を払う
18
19
20
2000年
2003年
2006年
22
2009年
37
35
36
35
37
【利便性消費】
購入する際に
安さよりも利便性を重視
10
【徹底検索消費】
多くの情報を収集し、
置きに入りを安く買う
13
13
14
14
【安さ納得消費】
製品にこだわりはなく、
安ければよい
27
0
2012年
10
20
出典:NRI「生活者1万人アンケート調査」
6
30
32
31
40
34
40
50
(%)
4つの消費スタイル(年代別 2012年)
0%
10%
全体
10代男性
20%
20.8
18.9
20代女性
40代男性
22.9
50代男性
20.6
11.1
50代女性
21
11.2
11.4
プレミアム消費
徹底探索消費
29.5
39.9
28.3
42
25.8
31.6
39.1
41.8
9.3
26.5
36.1
10.8
15.2
27.4
38.8
40.6
10.1
22.5
33.3
10.9
22.4
21.8
35.1
13.6
16.8
21.9
30.1
11.8
27.7
36.7
38.2
利便性消費
100%
30.4
31.1
16.7
20.7
70代女性
28.5
15
40代女性
90%
32.8
21.8
27.4
22.6
80%
28.6
17.6
26.2
30代女性
70%
31.1
22.2
30代男性
70代男性
60%
37.3
29.4
60代女性
50%
19.9
20代男性
60代男性
40%
13.3
16.2
10代女性
30%
37.3
安さ納得消費
出典:NRI「生活者1万人アンケート調査」
(%)
 東日本大震災後の意識変化として、住まいについては、
「省エネ性能」
、
「安全・安心」
を重視する層が増加。
7
 住宅の購入意識について、
「予算面」や「築年数よりもスペック重視」等の理由から、
中古住宅へのシフトも見られる。
8
○リフォームビジネス市場
 市場全体では約 6.7 兆円(2012 年)と微増。このうち、設備等の修繕維持が過半を占
め、増築・改築工事を伴うリフォームは6%程度で横ばい推移。民間調査では、市場の
定義が異なるものの、2016 年の市場規模を 8.7 兆円(対 2012 年増減率 10.7%増)と予
測。
【新設住宅着工戸数の推移】
(千戸)
【住宅リフォームの市場規模】
1,800
1,643 1,600
1,400
1,200
(兆円)
8
1,470 1,387 7
1,290 1,236 1,198 1,215 1,230 1,174 1,189 1,151 1,160 1,061 1,094 5
980 834 788 813 800
883 5.02
4.76
5.25
6.73
5.43
設備等の修繕維持費
4.40
増築・改築工事費
4
3
600
2
400
1
200
0
0
95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
6.50
5.61
6
1,000
6.37
6.06
(年)
出典:国土交通省「建築着工統計年報」
4.20
3.98
4.60
4.82
5.01
0.56 0.42 0.42 0.43 0.42 08
09
10
11
12
広義のリフォーム金額
(年)
※推計には、分譲マンションの大規模修繕等共用部分のリフォーム、賃貸
住宅所有者による賃貸住宅のリフォーム、外構等のエクステリア工事は含
まれない
※ 「広義のリフォーム」は、戸数増を伴う増築・改築工事費と、リフォーム関
連の家庭用耐久消費財、インテリア商品等の購入費を加えた金額
出典:国土交通省「建築着工統計年報」、総務省「家計調査年報」、 総務省
「全国人口・世帯数・人口動態表」等により、公益財団法人 住宅リ
フォーム・紛争処理支援センターが推計
 市場の担い手は、地場工務店が最も多く、リフォーム専業系、住宅メーカー、住宅設備・
建材メーカーの系列企業が主なところ。このうち、売上に占めるリフォーム事業の比率
では、住宅メーカーは2割以下と新築重視の傾向にあるほか、建材メーカーにおいても
依然として低い状況。また、工務店の受注単価は小規模にとどまっている。
9
【一般社団法人 日本住宅リフォーム産業協会(JERCO)
会員173社の企業実体調査の特徴】
【大手住宅関連企業のリフォーム関連事業の状況】
リフォーム
売上高(A)
(億円)
対会社売上
リフォーム(B)
比率
平均工事
単価
(万円)
(A÷B)
生産効率
(万円)
(A÷C)
従業員数(C)
(人)
住友不動産
1,129.1
15.32%
490.9
5,132.3
2,200
積水ハウス
1115.5
6.91%
-
5,738.2
1,944
積水化学
工業
958.0
9.28%
73.7
4,165.2
2,300
大和ハウス
764.7
3.81%
142.9
4,779.4
1,600
ミサワ
ホーム
648.3
16.43%
85.3
4,231.7
1,532
住友林業
541.7
6.41%
156.6
3,682.5
1,471
パナホーム
472.9
16.34%
110.0
8,598.2
550
※営業のみ
旭化成
463.1
9.52%
201.3
7,505.7
617
三井不動産
358.7
2.48%
208.5
4,321.7
830
売上高
平均4.6億円
(リフォーム部門)
社員1人あたりの売上高
平均受注単価
平均2,732万円
158.8万円
(中央値80万円、
最頻値50万円)
出典:一般社団法人日本住宅リフォーム産業協会「JERCOリフォームハンドブック」
【大手建材メーカーのリフォーム関連事業の状況(2012年度)】
総売上高
リフォーム関連
事業売上高
()は前年比
中心単価
TOTO
4,763億円
2,581億円
(103.9%)
約150万円
LIXIL
8,741億円
2,480億円
(100.8%)
約350万円
7兆3,030億円
(うちエコソ
リューションズ社
1兆7700億円)
2,120億円
(111.6%)
約400万円
パナソ
ニック
出典: (株)富士経済「新・住宅リフォーム市場の現状
と将来性2013 」、各社ホームページ
出典:(株)リフォーム産業新聞社「住宅リフォーム市場データブック2014」
 リフォームの施主は 60 代が最も多く、全体の約 4 割を占める。また、約半数は初めて
のリフォーム。受注が多い部位はキッチン、トイレ、浴室といった水廻り。
【施主の年齢】
20才
30才代
40才代
50才代
60才代
【リフォームの部位】
不明
70才代
順位
H20
(n=1078)
7.1
15.0
36.0
34.0
7.1
部位
1 キッチン
2 トイレ
H21
(n= 911 )
7.0
H22
(n=1032)
7.5
13.4
27.2
39.8
10.1
H23
(n=1184)
8.5
12.2
29.4
37.0
12.3
H24
(n=1529)
7.3
11.8
12.6
37.2
34.8
7.9
3 浴室
4 居間
5 ダイニング
6 外壁
7 屋根
8 すべての部屋
27.7
38.2
9 玄関
12.0 2.2
10 和室
0.8
0%
20%
40%
60%
80%
11 給湯器
100%
出典:一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「平成24年度住宅リフォーム実例調査報告書」
12 子供部屋
【前回のリフォーム時期】
13 主寝室
14 収納
54.1
今回が初めて
15 その他
14.5
5年以内
16 門・へい
17 車庫・物置
13.5
10年以内
18 高齢者居室
7.2
15年以内
2.1
20年ぶり以前
5.3
不明
0
39.8%
28.5%
27.5%
27.5%
23.2%
22.3%
16.8%
14.6%
13.3%
11.5%
10.9%
8.8%
8.0%
7.2%
7.2%
7.0%
5.1%
1.4%
住宅の建て方別
戸建て 集合住宅
35.4%
25.2%
27.2%
25.7%
18.7%
27.7%
20.7%
11.0%
13.5%
11.5%
11.2%
7.2%
6.2%
6.0%
7.2%
9.0%
6.2%
1.2%
54.4%
40.8%
35.9%
30.1%
36.9%
0.0%
1.9%
27.2%
12.6%
11.7%
10.7%
14.6%
14.6%
12.6%
7.8%
0.0%
1.0%
1.9%
出典:国土交通省「平成24年度住宅市場動向調査報告書」
2.7
20年以内
全体
10
20
30
40
50
出典:国土交通省「平成24年度住宅市場動向調査報告書」
10
60
(%)
 リフォームに当たり、消費者は何らかの不安を抱えている。半数近くが「適正価格がわ
からない(不透明)
」と回答。
「適正な施工」
、
「誠意ある対応」
、
「業者選び」などリフォ
ーム業者に関わる点について心配している。
 建設産業の就業者数の推移をみると、技術者は特に 30~40 代で減少、技能労働者は若
年層の占める比率は少なく、高齢化が進展。また、新規学卒者の理工系入職者数の推移
をみると、大学等は微減、高校は半減。
(千人)
(人)
【建設産業就業者の年齢構成】
80000
1400
【学歴別建設業新規入職者数の推移】
技術者
技能系労働者
1200
大学院
70000
大学・短大
60000
1000
高等専門学校
50000
高等学校
800
理工系:1,718
40000
600
理工系:1,868
30000
400
理工系:9,540
理工系:8,774
20000
理工系:12,009
200
10000
理工系:6,557
0
0
H2 H12H22
10代
H2 H12H22
20代
H2 H12H22
30代
H2 H12H22
40代
H2 H12H22
50代
H2 H12H22
平成4年
平成9年
平成14年
平成21年
60代以上
出典:総務省「国勢調査」
11
出典:文部科学省「学校基本調査」
Ⅳ.リフォームの担い手の事業モデル分析
 リフォーム分野において、これまでにない事業手法、異業種との連携といった新しいビ
ジネスモデルにより、新たな空間価値創造等を実現し、成功してきている事例がある。
 本勉強会では、大きく分けて、①リフォーム専業及び地場工務店、②インターネットを
利用した事業や住宅設備・建材の流通分野での強みを活用する企業、③特定のビジネス
領域において前線で活動する企業について、関東圏を中心に約30社へのヒアリングを
通じて、その手法や強み、抱える課題等を分析した。
【リフォーム専業及び地場工務店】
 施工の内製化や自社による建材・設備製造を通じて低コスト化を図ったり、需要開拓の
ために会員制住宅メンテナンスサービス提供等の事業を行うことで他の事業者と差別
化を図っているケースがみられた。また、地場工務店において、リフォームの「見える
化」として、戸建てリフォーム物件を工事過程の公開も含み、一定期間展示した後に売
却するという手法を取っているところがあったほか、モデルハウスを設計事業者と組ん
でリフォームした事例などがみられた。
【インターネットを利用した事業や住宅設備・建材の流通分野での強みを活用する企業】
 家電量販店においてリフォームの新規需要の掘り起こしに取り組む例や、ホームセンタ
ーにおいて複数の工事を組み合わせたリフォームの提案をする例、総合量販店がグルー
プ内の連携を強みとして提案力で差別化を図る例がみられた。インターネット上のスト
アにおいて消費者が自由に建材を選べる環境づくりを目指している事例では、全国的に
取り組む施工業者が不在という課題に直面している。
【新しいビジネスモデルにより特定の客層・事業領域において強みを発揮する企業】
 「中古マンション」にターゲットを絞り、
「コーディネーター」を軸に、不動産仲介、
改修を通じて新たな暮らしの価値創造を提案するリノベーション、金融をワンストップ
で提案するモデルを始め、従来は単独で事業展開していた不動産事業者と設計施工事業
者が事業連携しているケース、設計事務所が事業領域を不動産に拡げているケースなど、
独自のモデルで他社との差別化を実現している事例がみられた。また、消費者志向を捉
える取り組みとして、住宅に関心のあるメール会員 60 万人から消費者ニーズの把握に
努めている企業、こだわりを持つ層に焦点をあて、建材・設備等を消費者自らが選択で
きるサイトを運営する企業も見られた。
 また、上記の企業に対するヒアリングを通じて、中古住宅やマンション等のリフォーム
を進める上で、様々な規制等が障害となっているケースがあることがわかった。
 さらに、本勉強会の議論の中では、規制に関連してリフォームに対する金融支援が十分
でない背景として、築年数のみを基準とした建物評価が一般的であり、リフォーム等を
しても建物評価に適正に反映されないことが注目された。
12
Ⅴ.現在の住宅リフォーム市場が抱える課題への対応
○建物の評価基準づくり、インスペクション及び金融支援
【問題の所在】
 リフォーム市場が拡大しない大きな理由の1つに、リフォームの際、新築と同様の長期
ローンなどの金融支援が受けられないことがあげられる。
 これは、中古住宅の資産価値が新築時を起算点とした耐用年数を重要な根拠としており、
例えば、木造戸建ての場合20年を超えると価値がゼロと評価されてしまうことによっ
て、その中古住宅が必要となる借入れに十分な担保とならず、借りる場合でも建物部分
は担保評価なしの条件となるため。
 一方で、木造住宅をはじめとして、適切な修繕を行うことで住宅が耐用年数以上に長期
に使用可能であり、
「実質的経過年数」あるいは「使用可能な残存期間」などを適正に
評価し、明確化することが必要。
 但し、単純に耐用年数を伸ばすと、固定資産税の扱いなど、派生的に問題が発生し、か
えって負担増となる可能性があるため、バランスの良い仕組みとすることが重要。
 この建物価値の適正な評価を行うためには、物差しとなる評価基準と現況検査等のイン
スペクションに基づく評価が車の両輪として機能することが必要。
 なお、こうした建物の評価基準とインスペクションは、市場の需給動向により価格決定
する中で機能するものでなければならないとの意見、また、設備については専門性が高
く、開発サイクルも短いこと、住宅の省エネ性能に寄与する影響が大きいことから、建
物評価の一部として、設備に関するインスペクションや評価の基準を明示すべきとの指
摘もあった。また、昭和56年以前に建築された旧耐震基準による建築物については、
ストック住宅の中でも分けて考える必要があるとの指摘もあった。
【基本的な考え方とアプローチ】
 現在、国土交通省が主催している中古住宅市場活性化ラウンドテーブルでは、金融庁と
協力し、金融支援を主要なテーマの一つと位置づけて、金融支援の拡大・強化の可能性
や、新たな建物評価指針の不動産・金融市場への定着について検討を行っている。
 具体的には、中古住宅の建物評価手法等に関連して、建物の性能、品質に着目した評価
について、
「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に係る指針」を策定し、同指針の不
動産・金融市場への定着に向け、
「既存住宅価格査定マニュアル」の改訂等に取り組む
こととしている。
 一方、アメリカの住宅流通システムでは、中古住宅流通時に買い手が重要な責任を負う
ことを背景に、建物の状態を調査するインスペクターや建物評価を行うアプレイザーと
いった職種が買い手の保護の観点から機能している。こうした制度を直ちに我が国に移
転することで機能するかどうかは議論の余地があるが、日本特有の売り手に主たる責任
があるゆえにリフォームに係るインセンティブが働かない現実、あるいは、インスペク
ションなどの仕組みが単なる売り手の負担増に見える現状を考え合わせると、現在より
も買い手の責任をより明確とし、その保護と併せて制度を構築する有効性、可能性を検
討していくことが重要である。
13
 しかしながら、昨年策定したインスペクションガイドラインの運用、新たな建物評価の
改善に向けた指針の策定やその利用者に対する既存住宅価格査定マニュアルを提示す
るだけでは、それらのガイドラインや指針の活用への拘束力が十分でなく、建物評価の
仕組みが自律して機能していくためには、更なる対応が必要である旨、国土交通省に対
して働きかけを行う。
 こうした中、建物評価基準の策定及びインスペクションについての最新の検討を踏まえ
て、金融機関の立場から、融資審査に際し、建物評価の基準や仕組みをより実用的なも
のにし、それらを金融支援スキームの運用の中で実際に活用し、運用実績を踏まえてそ
の基準や仕組みを発展させていくための検討を行う。
 なお、中長期的に住宅ストックの維持、改善を進めていくためには、今後、持主責任を
より明確化していくことが重要と考えられ、将来的にリフォーム等による工事の履歴の
記録・保存等のいわゆる「家歴制度」が普及した後の段階においては、制度のコスト、
その負担のあり方等について国民的コンセンサスを得ることを前提に、定期的な住宅の
検査制度(家検制度)創設の可能性について検討していくことが必要と考えられる。
【取り組むべき方向性】
 リフォーム等による性能向上を行った中古住宅、マンション等の流通を活性化するた
め、賃貸事業者や買取再販事業者等を対象に、民間金融機関又は政府系金融機関、評価
機関が連携して、新たな金融支援のモデル事業を検討し、立ち上げる。
 具体的には、民間金融機関又は政府系金融機関がローンを提供する際、リフォーム等に
よる建物評価の改善が進んでいない点に着目し、
その評価の基準や仕組みの最新の検討
をベースに、金融機関の立場から、融資審査に際し、建物評価の基準や仕組みをより実
用的なものにし、金融支援スキームの運用の中で実際に活用し、運用実績を踏まえてそ
の基準や仕組みを発展させ、将来的にその成果を他の金融機関と共有していく。
 更に上記の取組に加えて、消費者を対象とした中古住宅の購入及びリフォームについ
て、従来は価値がゼロとみなされていた築20年以上の中古住宅に対して、耐用年数の
適正な評価による金融機関の長期ローンの試行、
リフォーム等による工事履歴情報が共
有化できるような家歴制度、評価方法としての「スムストック(注)
」の手法の活用等
も併せて検討する。
(具体的なイメージ)
※支援対象としては、増改築等や大規模修繕などの大規模なもの及び建物の性能向上・機
能高度化をイメージ。
14
(注)優良ストック住宅推進協議会では、優良なストック住宅(ブランド名:SumStock
スムストック)の普及に向け、独自の査定マニュアルを策定し、協議会認定の査定士を育
成。
○人材の育成
【問題の所在】
 リフォームに限らず、建設分野の技術者、技能労働者の不足は深刻。事業者にとってそ
の確保は非常に重要な課題。
 一方で、大工の不足を背景に、大手建材メーカーは、プレカット製品など現場において
簡単に施工可能な商品の普及・利用を推し進めており、大工を育成しても活躍する場/
さらに技能を向上させる場との調整を工夫する必要がある。
 また、大学(建築)を卒業しても現場を全然知らない、建築分野に定着しないという問
題もあり、大学と地域の工務店等の連携により、学生の現場体験等を通じた建築業界へ
の人材定着、能力向上を図るとともに、当該分野で働くことの魅力発信を併せて行う必
要がある。
【基本的な考え方とアプローチ】
 大手住宅メーカーは、職人の高齢化、不足が課題となる中、品質の維持・向上、技術の
伝承を図るため、若手人材の養成機関を設けるなどの活動を実施しており、引き続き継
続していく必要がある。
 国土交通省では、建設産業の担い手の確保・育成のあり方を検討する中で、特に技能労
働者に対する教育訓練について、教育訓練センター(※)の充実強化を図る等の検討を
行っている。
※「富士教育訓練センター」は、建設専門工事会社等が、平成 9 年に静岡県富士宮市
に開校した、建設技術者・技能者のための教育訓練施設。業界全体で共同利用が可
能な施設として、平成 26 年度末までの建替工事着手を予定。この中で、国交省から
の委託事業により、
「リフォーム・メンテナンス技能者育成カリキュラム」を作成、
26 年度、リフォームコース(内装施工、建築配管施工)の研修が実施される予定。
15
 他方、大学等と地域の中小工務店では雇用のミスマッチ等が生じており、必ずしも建築
業界への人材定着等が十分でなく、更なる対応が必要であると考えられる。
【取り組むべき方向性】
 大学等と地域の中小工務店のマッチングを通じて現場実習等の連携活動を中小企業施
策等の活用等により実施、その効果を見つつ規模を拡大し、建築業界への技術者の人材
定着、能力向上を図っていく。また、その中で女性ならではのきめ細かな配慮・感性等
を活かすための環境作りも検討していく。
○規制改革
【取り組むべき方向性】
 中古住宅やマンション等のリフォームやリノベーションを進める上で障害となってい
る様々な規制等について、関係省庁に規制緩和の働きかけを行うとともに、規制改革会
議や特区制度への提案、
産業競争力強化法に基づく企業実証特例制度やグレーゾーン解
消制度の活用を促していく。
<委員等から指摘があった具体的な項目例>
 区分所有法(第 31 条 規約の設定、変更及び廃止)
:法務省
マンション標準管理規約(第 8 条 共用部分の範囲、別表第 2)
:国土交通省
 築年数が経過しているマンション等の管理規約は、ただちに変更が難しく、リフォ
ーム等の妨げとなっているケースが存在(例:防音の観点でフローリングへの変更
が出来ない、壁にエアコンの穴を空けられない、共用部のサッシ交換ができない、
室内の古い給湯器をバルコニーに出せない等)
。
 管理規約における共用部・専有部の区分が不明確となっているケースが存在(例:
個別配水管の扱い等)
。
 減価償却資産の耐用年数に関する省令(財務省令)
:財務省
 中古住宅の資産価値が新築時を起算点とした耐用年数を重要な根拠としており耐
用年数を超えた住宅やリフォームを行った住宅の建物価値が評価されないため、新
築と同様の長期ローンなどの金融支援が受けられない等の事例あり。
 割賦販売法(第 35 条の 3 の 23 個別信用購入あっせん業者の登録義務)
:経済産業省、
消費者庁
 平成 20 年に規制強化され、金融機関等が提携ローンを行う場合は、個別あっせん
業者の登録を行わなければならず手続コスト等が増加。その結果、銀行ではリフォ
ーム提携ローンの提供を取り止めたケースが存在。
16
 建設業法(第 3 条 建設業の許可)
: 国土交通省
 500 万円以上の建設工事を請け負うためには、あらかじめ建設事業者としての許可
を受ける必要があるが、この金額より低い工事であれば、参入障壁なく誰でも行え
る。このため、悪徳リフォーム事業の存在を完全に排除することができない。
 建築基準法(第 52 条 容積率、第 53 条 建ぺい率)
: 国土交通省
 容積率、建ぺい率は都市計画の用途地域等により制限される。そのため、例えば2
世帯住宅を建てる際に容積率、建ぺい率の問題により必要なスペースが確保できな
いケースがある。
 建築基準法(第 86 条の 7 既存の建築物に対する制限の緩和)
:国土交通省
 リノベーションや増改築等に際し、確認申請が必要な建築物は、既存部分が適法か
否かの判断を求められ、事業者による確認等に大きなコストがかかる。又、その結
果、施主がリフォームを断念するケースも存在。
 建築基準法(第 87 条 用途の変更に対するこの法律の準用)
 検査済証のない建築物の用途変更ができない。
 オフィスから住宅(共同住宅)への転用(コンバージョン)の場合は、特殊建築物
への転用に該当し、基準が厳しくなるため、用途変更が進まない要因となっている。
○優良なリフォーム事業者の見える化/認証
【問題の所在】
 これまでリフォーム事業は、その効果と仕上がりが目に見えないだけでなく、価格につ
いても明確でない場合があり、結果として消費者は「どの事業者に頼んだら良いか分か
らない」という問題に常に直面している。
 リフォームに係る様々なサービスを消費者が安心して選択できるよう、優良な事業者の
見える化を行い、さらにそれらの事業者の活動を積極的に後押ししていくことで、健全
なリフォーム市場を整備していくべきである。
 また、優良なリフォーム事業者が取り扱った物件が明確となることも建物評価を行う上
で有用である。
【基本的な考え方とアプローチ】
 優良な事業者の見える化を図るためには、リフォーム事業を幅広く対象として、その中
で真に優良な事業者が認証される仕組みを機能させることが必要である。
 一方で、既に様々な団体や地方公共団体において、優良なリフォーム業者を区別するた
めの仕組みの運用が開始されている。また、国土交通省においては、
「リフォーム評価
ナビ」へのリフォーム事業者の登録が既に実施されているほか、新たに事業者団体の登
録を通じた適正なリフォーム事業の推進に関する制度をとりまとめた。その際、施工品
質のみならず、消費者への提案力を兼ね備えた優良な事業者の見える化には、母数の絶
17
対数の十分な確保、その中から真に優良な事業者を選別するための要件の厳格化等を行
っていく必要がある。
【取り組むべき方向性】
 今後、
国土交通省でとりまとめた登録の仕組みが確立した際に、
その運用実績を踏まえ、
登録要件の精緻化・厳格化等の見直しを行った上で、第三者認証の仕組みを構築するこ
との可能性・是否を検討するよう、国土交通省に働きかけを行う。
 更に、第三者認証の仕組みが確立した場合には、認証された事業者を優良な事業者とみ
なし、他の制度と組み合わせる(連動させる)ことにより、一定のインセンティブを付
与する可能性を追求する。
○普及広報の推進
【問題の所在】
 リフォーム市場を現在の延長線ではないレベルで成長させるためには、住まい手・消費
者側の住宅の価値向上、最新リフォームの効果等に対する意識の向上が不可欠。
 リフォームは、あらかじめその効果を実感することが難しい。特に新築の場合にモデル
住宅を見る際の「空間的なひろがり」を体験することができない。
 また、中古住宅に住む/中古住宅を買うことに対するイメージを改善していく必要があ
る。
【基本的な考え方とアプローチ/取り組むべき方向性】
 企業が商品・サービスによるリフォームの効果を消費者に訴求することについて、政府
及び関係する業界が一体的に取り組むことで、効果をあげるべく努力する。
 例えば、政府、リフォームに携わる企業、関係団体等が連携してオールジャパンで、メ
ディア等を活用してリフォームによる「生活が変わる」ということについて社会的認知
を高めることも効果がある(例:リフォームウィークの制定、建築・建材展や中小企業
総合展、ENEX 展の活用等)
。
 加えて、消費者の多様で複雑なニーズを汲み取って、建築、不動産、金融など多岐にわ
たる分野の知識を駆使し、リフォームを通じたソリューションを提案するコーディネー
ターの必要性について指摘があったが、企業がそのコーディネート力を強みとして事業
展開している中にあって、先導的に取り組むリフォーム事業者を選定・表彰し、リフォ
ーム後の空間を実感できるようにするための取組とあわせ、ベストプラクティスとして
発信することで、リフォーム拡大の加速化につなげていく。
 また、企業はWEBサイト等で建材の組み合わせや価格などを提示する際に、各々の消
費者が嗜好に応じて選択できるようにし、あわせてリフォームによる生活価値(健康・
快適性)の向上、商品情報、施工情報等をわかりやすく発信していく(例:カタらボに
よる普及等)
18
Ⅵ.社会ニーズに対応したリフォーム市場拡大の方向性
 少子高齢化など、Ⅲ.において示された住まいに関する社会環境変化と将来の動向を踏
まえて、住宅・リフォームが、社会ニーズに対応していく中でどのような役割を果たす
ことができるか、そのためにどのような取組が必要かについて検討した。
○魅力的なまちづくり・住環境の向上
 今後も三大都市圏への人口集中が続く中、地域では都市部からの人口の積極的な受入れ
を通じた活力の維持・活性化が課題となる。その際に住宅は、人口受入れのための基本
インフラとなる。これにリフォームや空きストックの活用を含む住環境の改善を通じて、
地域の魅力を高めていくことができる。
 地方や郊外では、地方への移住者、その職の確保、住み続けたいと思う魅力的なまちづ
くりに向けて、今後、地域毎のテーマの設定とそれに向けた地域ぐるみの取組が重要と
なる。その際、地域の特徴やコンセプトを踏まえた、まち全体のリノベーションを行う
ことも有効な方法の一つ。こうした各地の取組の成功事例をとりまとめ、情報発信して
いくことが重要。
 現在、安全・安心の向上、耐震の強化、暮らしやすさの改善といった社会ニーズに対応
した製品・サービスの開発やエネルギーマネジメント、IT、次世代自動車との連携など
が行われている。今後、更に住環境を向上させる取り組みとして、住宅をプラットフォ
ームとした需要の拡大を図っていくことが必要。
【取り組むべき方向性】
 魅力的なまちづくりの中で、産学官の連携等を通じて、住宅・リフォーム、住環境の果
たす役割をさらに高めていく。また、社会ニーズに対応した製品・サービスの開発等の
促進等を含めてリフォーム市場が有するポテンシャルをビジネスチャンスとして提案
できるよう、未来型の住環境を検討する場を設けるなど、引き続き需要の拡大に向けた
方策を検討していく。
○地域のものづくり企業や他業種企業との連携による新ビジネス創出
 地域資源を活用した地域材は生産量等の制約により、大手建材メーカーとしては全国一
律での大量供給が難しい。そこで、地域の中小企業等が有するものづくり力や地域材を
活用した、地域独自の商品やサービスの提供を支援する、また、新たなサービスを提供
するベンチャー企業の育成、大学等によるコミュニティビジネス創出などの環境を整備
するといった手法を通じて、住まい・暮らしの充実を促進することも重要。
 その際、経済産業省が行っている中小企業支援や地域産業支援の枠組等を活用して、関
係者が連携して新ビジネスを創出する仕組みを構築していく。
 更に、従来の住宅・リフォーム分野のプレーヤーに加えて、地域に根ざした企業や新技
術を持つ企業、他業種の企業、大学など多様な主体が参画し、プレーヤー間の新たな連
19
携を通じて、新商品や新サービスの開発、販路拡大等を地域の実情に併せて進めるなど、
地域中小企業の住宅・リフォーム分野における挑戦の機会を創出する環境を整えていく
ことが必要。
【取り組むべき方向性】
 地域の中小企業や他業種の企業の持つ強みをリフォーム分野で発揮し、
新ビジネスが創
出できるよう、
ビジネスマッチングの実施など新たな事業者間の連携を促進する環境整
備に取り組む。
○エネルギーマネジメント
 我が国の民生部門におけるエネルギー消費量は全体の 3 割以上を占め、産業分野と比し
てこれまでの増加も顕著であり、省エネルギー対策の強化が求められている。
 また、東日本大震災以降、消費者のエネルギーに対する意識はさらに高まり、政府とし
て、
「規制の必要性や程度、バランス等を十分に勘案しながら、2020 年までに新築住宅・
建築物について段階的に省エネルギー基準の適合を義務化する。
」ことを掲げている。
 こうした状況を踏まえ、住宅ストックの省エネ性能改善の可能性に着目すると、現行基
準と比較して省エネルギー性能が十分でない昭和55年、平成4年基準で建築された住
宅を断熱向上等のリフォームをすることで効果が高いと考えられる。
 エコポイント制度を契機として、新築における省エネルギー基準への適合の割合は著し
く改善してきているものの、依然省エネリフォームに対する各種支援制度等の整備・改
善(参考1)を求める声が大きい。
 また、省エネルギーリフォームを促進するに当たり、特に断熱性の効果が把握しにくい
中、可能な範囲でその見える化(例:住宅のエネルギー性能表示)に向けて努力しつつ、
併せて、住まい手の住宅のエネルギー面での性能向上に対する意識向上と責任の自覚に
向けて取り組むことが重要。
【取り組むべき方向性】
 住宅ストックの省エネルギー性能向上が求められる中、
各種支援制度の改善やその効果
の「見える化」に引き続き取り組む。
○より安全・安心な住まいの実現
 東日本大震災以降、
「安全性」を重視する消費者が増加。消費者の意識は、
「より品質が
良いもの」
、
「より自分のライフスタイルにあったもの」に必要な対価を払う方向に変化。
 一方、耐震や耐久性向上のための改修効果は「目に見えにくい」という問題がある。ま
た、これらの技術については、依然として新たな改修技術の開発とその検証が必要。
 より安全・安心な暮らしを実現するための住宅関連サービス、住宅設備の導入等に対す
る各種支援制度の充実(参考1)や情報提供による消費者の更なる啓発が求められる。
20
【取り組むべき方向性】
 より安全・安心な暮らしが求められる中、耐震・耐久性向上のための住宅関連のサービ
ス、住宅設備の導入等に対する支援や情報提供による更なる啓発を図っていく。
○高齢化・在宅医療への対応
 高齢化の進展、要介護者の増加に対する対応に加えて、健康寿命延長のための病気・ト
ラブルの防止に向けて、住宅及びリフォームが果たす役割は大きい。また、今後、必要
性が高まってくると考えられる在宅医療への対応も期待される。
 バリアフリー、要介護者対応の需要が少ないことにより、関連する設備や建材が高価格
であることが市場拡大につながらない要因の一つと考えられる。
 また、高断熱、高気密による適切な室内温度の維持が健康に与える影響に対する認知度
を高めることや、関連する支援制度の拡充(参考1)が対応策として考えられる。
【取り組むべき方向性】
 住宅における健康環境増進に向けたリフォームの重要性についての認知度を高める。
21
Ⅶ.リフォーム関連産業の今後の方向性
今後のリフォームビジネスの拡大に当たっては、リフォーム市場の各プレーヤーがその
期待される役割を果たしていくとともに、異なる業界からの新たな参入を受け入れつつ、
プレーヤー間の連携を深めることにより、市場の活性化を図り、さらに魅力的な提案を行
いながら住まい手のニーズにきめ細かに対応していくことが重要である。
○中小工務店・リフォーム事業者に期待される役割
 これまで地域に根ざして住宅を建築し、関連するサービスを供給してきた中小工務店が、
これまでの地域とのつながりを活かし、家守的な役割として存在する意義は大きい。
 また、リフォームは、住まい手の多様で複雑なニーズに対し、可能な工法、必要な建材
と住宅設備を利用してソリューションを与える高度なサービス業と言える。そのサービ
ス提供には、建築、不動産、金融など多岐にわたる分野の知識と経験が必要である。
 地域の中小工務店、リフォーム事業者は、効果的なビジネスモデルにより、きめ細かく
消費者ニーズを汲み取り、そこで自らの強みを活かしてニーズに対応していくことが求
められる。
○大手住宅メーカーに期待される役割
 大量生産・大量供給の新築住宅とは異なり個別対応となるリフォームでは、大手メーカ
ーが得意とする規模の経済が機能しにくく、利益率の低さや職人不足も伴い、全国一律
でのサービス提供・品質確保に課題がある。
 将来の住宅需要を踏まえて、現在の事業状況を打開する、リフォーム分野で十分な利益
創出が可能な事業モデルを開発し、新築重視であった企業活動を思い切ってリフォーム
事業への意識改革を行い、具体的な組織、人員等のリソースをシフトしていくことが求
められる。
○建材・住宅設備メーカーに期待される役割
 建材・住宅設備メーカーでは、職人の減少や低コスト化への対応などから、省施工化に
つながるリフォーム建材・住宅設備開発が大きなテーマとなっている。一方、優良なリ
フォーム事業者からは、シンプルな建材や半製品に自ら付加価値を与えて施工したいと
の要望がある。こうした両面からのニーズに対し、リフォームの魅力訴求とリフォーム
分野の人材育成と活性化の観点から、バランスのとれた対応が求められる。
 また、建材・設備の調達は利益重視やクレーム回避のためクローズドなシステムになっ
ている。このため、顧客が真に使いたいものを自由に選ぶことができていない。インタ
ーネットで消費者が自ら建材を選択する際、セレクトショップでモノを買い、自由に組
み合わせるといった手法が増えていることから、本分野でそうした市場の形成に協力し、
その中で「選ばれる」企業となるための努力が必要である。
 リフォーム用建材・設備は、販売ルートの違いによる二重価格差の問題がある。また、
大量供給される新築用建材とは異なり、価格が高い。これら流通に関する課題の解消や
商品の標準化等について産業界において踏み込んだ対応に向けて検討することが必要
22
である。
○地方自治体に期待される役割
 都市部と比較して、地方部における中古住宅流通の活性化は容易でない。地方自治体に
おいては、一棟単位でのリフォーム、空き家対策という視点ではなく、地域単位で独自
のテーマや地域活性化に向けた計画を打ち出し、まちづくりという共通の横串を持って、
周辺環境の整備や雇用創出などの課題に取り組むことにより、まず住みたい街になるこ
とで、リフォーム需要が掘り起こされると考えられる。
リフォームは新築にはない満足感が得られるチャンスであり、
こうした供給側における
市場活性化の取り組みとともに、住まい手への普及啓発策と相まった消費者自身の意識の
向上が必要である。
○住まい手(消費者)の責任
 住宅は個人の所有物であるが、同時に社会で保有している資産であるとの意識を消費者
が持ち、住宅の定期的なメンテナンスによる性能維持等にも取り組むべきである。また、
家庭部門のエネルギー消費量が増加傾向であるという状況も鑑み、省エネ建材・設備の
利用にも積極的に取り組む自覚を持つことが重要である。
 リフォームにより生活水準や利便性の向上、豊かな生活を見込むことができる。愛着感
を持って、質の良い家を長く、修理しながら大切に使うという意識を常に持つことが求
められる。
23
あとがき
リフォームビジネスが拡大した社会はどのようになっているだろうか。私は、
住宅が今よりも長く使い続けられる社会、そして、消費者ひとりひとりが豊かな
生活を手に入れられる社会であってほしいと願っている。
本報告書は、リフォームビジネスを拡大するために、行政、事業者、消費者、
それぞれの立場に求められる「次の一歩」についてまとめたものである。
行政には、市場拡大のための環境整備を行うことが求められる。中古住宅の適
切な評価とそれを支えるインスぺクション及び金融支援、優良事業者の見える化、
リフォーム事業の普及促進などの施策は、速やかに実行してもらいたい。
消費者には、住宅に関するリテラシーの向上が求められる。リフォームによっ
て消費者は使い勝手の良い住まい、自分だけの愛着のある住まいを手に入れるこ
とができる。ただ、その住宅を維持するために、住環境の整備を含め継続的な投
資がなされてきたことを忘れてはならない。つまり、住宅はいわば国民共有の資
産なのだから、消費者にはそれらを良好な状態で次世代に引き継ぐ責任があるの
である。
そして、リフォームビジネスは住宅だけでなく不動産や金融の知識が必要な難
易度が高いビジネスであり、また、新築よりもニーズが多様で、かつ消費者との
丁寧なコミュニケーションが必要なので手離れが悪いビジネスでもある。事業者
に求められるのは、自らの強みをいかしつつ新規参入業者を含めたプレーヤー間
で連携し、新たな製品やサービスを開発することである。同時に、性能向上によ
る省エネ化、安全・安心な住宅の供給を行うことも求められる。
一方、現在の日本が抱える、少子高齢化に伴う人口減少、地方や郊外の衰退な
どの社会問題は、空き家の増加につながっている側面がある。大雑把な言い方だ
が、リフォームは空き家を解消する手段なのだから、リフォームビジネスはこれ
らの社会問題を解決する一翼を担えるのではないだろうか。言い換えれば、住環
境の整備や雇用創出などの施策は、リフォーム需要の掘り起こしにつながると考
えられる。
リフォームビジネスの拡大に伴い、住宅関連産業を中心に、新しい住まい方の
提案や魅力的な住環境の創出がなされることを期待したい。
リフォームビジネス拡大に向けた勉強会
座長 江口亨
24
参考1
委員等から指摘があった項目(補助制度)
○魅力的なまちづくり・住環境の向上
 個々の住宅のリフォームにはとどまらない地域ぐるみの再開発的リフォームを推進す
る。その周辺の住居について、計画に参加する場合にはリフォーム費用を補助するとい
った工夫があり得るのではないか。
○エネルギーマネジメント
 断熱改修技術の開発支援、思い切った補助金制度が必要。
 省エネ設備・家電・照明機器といった省エネ製品リフォームも有効。
 既存住宅における高性能建材導入促進業
 工事とは別途、手続きの手数料を請求できるシステムが欲しい。
 補助の条件を簡素化し、分かりやすい構成にして欲しい。
 天井については、天井のみでなく「天井および屋根断熱」も認めて欲しい。
○より安全・安心な住まいの実現
 防災補助制度の導入を提案したい。例えば、耐震、耐防火、地盤強化対応、緑化、外部
電源接続システム、井水利用、備蓄対応等。
 長期優良化リフォーム促進事業
 告知期間を増やしたり、通年募集をして欲しい。
 バリアフリーについての補助を加えて欲しい。
 耐震改修促進事業について、自治体毎に異なる補助金交付条件を統一化して欲しい。
○高齢化・在宅医療への対応
 高齢化や介護のためのハードの普及には、ハード設置後の未来が見える、ソフト・制度
(法での義務づけ、補助金、融資制度)の充実が必要。
 4月より一部、訪問診療、訪問看護の保険点数が大幅に削減してしまう。自宅での訪問
診療が受けられやすくなるとバリアフリーリフォームの推進に有効となる。
 介護保険による住宅改修
 浴室改修、洗面、トイレ改修など健康・快適リフォームへ補助対象を拡大していく
べき。また、これらのリフォームもできるよう、補助金額を 200 万円程度に引上げ
を。
 もう少し簡素化された制度として欲しい。
 バリアフリーリフォームの減税措置については対象が一定年齢以上の高齢者となって
いるが、若い年齢層でも減税措置が受けられるようにして欲しい。
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参考2
リフォームビジネス拡大に向けた勉強会委員名簿
(敬称略、委員五十音順)
えぐち
とおる
おおさき
さだかず
おちあい
かんじ
かきうち
たつや
かみよし
としゆき
たかはし
こ う えい
たぐち
かずとし
はしもと
たかし
座長
江口
亨
委員
大崎 貞和
落合 寛司
垣内 達也
神吉 利幸
高橋 孝栄
田口 和敏
橋本
隆
むらかみ
村上 ひろみ
オブザーバー
横浜国立大学都市イノベーション研究院 准教授
株式会社野村総合研究所 主席研究員
西武信用金庫 理事長
コーナン商事株式会社 リフォーム事業部長
積水化学工業株式会社 執行役員
住宅カンパニー営業統括部長
株式会社空間設計研究所 代表
株式会社LIXIL LIXILジャパンカンパニー
執行役員 リフォーム推進統括部統括部長
バークレイズ証券株式会社 マネージングディレクタ
ー
株式会社北洲 代表取締役社長
山下 智弘
やました
と も ひろ
リノベる株式会社 代表取締役
あおやま
まさ ゆき
一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会
かわち
こ う じ
青山 雅幸
運営委員会委員長
川内 浩司
株式会社MUJIHOUSE 取締役
(事務局)経済産業省製造産業局住宅産業窯業建材課
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参考3
リフォームビジネス拡大に向けた勉強会開催実績
第1回
【1/29(水)9:00~11:00@経済産業省本館17階第4共用会議室】
・勉強会の目的・趣旨等の提示
・事例紹介(リノべる(株) 山下委員)
第2回
【2/20(木)9:00~11:00@経済産業省本館9階西8会議室】
・マクロ的視点からの問題提示
・事例紹介(
(株)MUJIHOUSE 川内様)
第3回
【3/25(火)9:00~11:00@経済産業省別館1階114会議室】
・先進的なリフォーム事業の事例分析の報告
・リフォーム市場拡大の方向性についての議論①
第4回
【4/ 8(火)9:00~11:30@経済産業省本館9階西8会議室】
・リフォーム市場拡大の方向性についての議論②
・
(一社)日本建材・住宅設備産業協会リフォームタスクフォースからの報告
第5回
【4/23(水)16:00~18:00@経済産業省本館9階西8会議室】
・報告書案についての議論
第6回
【5/13(火)10:00~12:00@経済産業省本館9階西8会議室】
・最終取りまとめ
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