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2002/1/19 A98−4
2002年度 上智大学経済学部経営学科 提出日:2002/1/19 網倉ゼミナール A98−42125 丹羽 卒業論文 飛宇馬 『電子モールとオークションサイトの相互関係』 ◆なぜ楽天フリーマーケットは楽天市場のように圧倒的シェアではないのか 1 素朴な疑問に至るまで ここ数年でクリック&モルタルと呼ばれる、いわゆるブリック&モルタルと総称される伝統的 企業がインターネットビジネスを導入するといったものが浸透し始めた。楽天市場や Yahoo!シ ョッピングなどの電子モールが急成長し、その中でも日本においては楽天市場が圧倒的なシェア を持ち、2位と大きな差が存在する。例えば日経ネットビジネスが、2000 年 10 月に実施した 「インターネットユーザーによる EC サイト評価に関する調査」では楽天市場が第 2 位の Yahoo!ショッピングに大きく水をあけて第 1 位となっているのが分かった(図1参照)。充実 したコンサルティングとサポート体制、圧倒的な集客力、使いやすい支援システムの 3 本柱が、 楽天市場とショップの成功を支えているとあるが、実際に成功した最大の理由は楽天市場がファ ーストムーバーであったためである。 しかし「インターネットショッピング=楽天市場」と言えるほどのインターネットユーザーに 対する圧倒的な認知度の高さとブランド力があるにもかかわらず C to C のオークションでは電 子モールとは正反対の状態、つまり Yahoo!オークションが圧倒的なシェアを持っているという ことがわかった。先ほどの日経ネットビジネスの調査では Yahoo!オークションが期待度、知名 度、利用度のそれぞれが第一位であることがわかった(図2参照) 。そこでその理由について調 査することになったのだ。 独自の仮説 ―ネットオークションに関しては Yahoo! Japan がファーストムーバーであったためにオーク ション参加者の登録を独占していたため。 ―上記の理由から Yahoo!オークションには商品数が多く、また来客数も多いため。 ―参加費用の違いが人気の差の原因である。 ―ウェブユーザビリティに特別な点があるのではないだろうか。 ―商品の種類が豊富なのではないだろうか。 検証方法 ―C to C に関しての参考文献は現在ではほぼ存在しない状況なので、インターネット上での 情報収集が中心となる。(視聴率調査、オークション関連サイト等) ―利用者に対する調査を行う。 ―ウェブユーザビリティに関しては参考文献を用いて独自の調査を行う。 検証 Yahoo!オークションはファーストムーバーであったのか。: ファーストムーバーには先行者優位があるため、ブランドを確立することや市場を先取りする といったことが可能なのである。例えばブランドの確立はあまりその市場を知らない人々をそこ まで導く効果があるということや、市場を先取りするということは客をはなさない効果があるの 2 である。現に amazon.com やサラリーマンのホテル予約などはクレジットカードや個人のデー タを登録しているため、他には移りにくいのである。そして C to C ではないが、”楽天市場” の方がこの理由で成功したのである。そのため Yahoo!オークションがファーストムーバーであ ったという仮説がたったのだ。 それぞれのサイトで調査してみたところ以下のような事実がわかった: 1999 年 9 月??日 : 楽天フリーマーケット 1999 年 9 月 28 日 : Yahoo!オークション 1999 年 11 月 29 日 : BIDDERS (個人が出品できるようになったのは 2000 年1月から) 2000 年 2 月 : ebay japan Yahoo!オークションのサービスが開始されたのは‘99年の9月28日だということがわか った。しかし楽天フリーマーケットも’99年の9月にサービスが開始されていたことがわかっ た(日にちは不明だが、いずれにしても同時期である)。また楽天スーパーオークション(「楽天 市場」が運営する「B to C」のオークションサイト)に関しては‘98 年 7 月からサービスを開 始しているということだ。大規模の日本のオンラインオークションサイトでは楽天スーパーオー クションが最も古いということである。これで Yahoo!オークションが日本のオンラインオーク ションのファーストムーバーではないということが証明された。また Yahoo!オークションの人 気の理由も他にあるということが分かった。 それぞれのサイトにおける商品数の変動: まずはサービス開始時から数ヶ月のデータである。ストックリサーチ社のデータによると Yahoo!オークションは 2000 年 1 月中旬時点で、常時 20 万件の商品が出品中であったことが分 かった。また楽天フリーマーケットの場合は同時期で常時1万数千件程度であった。2001 年 12 月現在では Yahoo!オークションの商品数が 3,011,483 で楽天フリーマーケットが 56,053 である。 ちなみに BIDDERS は楽天フリーマーケットのほぼ倍の出品数ということである。 現在では出品数にかなりの違いがあることがわかった。これが Yahoo!オークションの人気の 最大の理由だろう。出品数が多いということは同時にアクセス数や落札数も多いということにつ ながるのである。 商品の種類について: 商品数の違いは各社の戦略の違いにもつながるだろう。それぞれのサイト ( http://trading.rakuten.co.jp/ http://auctions.yahoo.co.jp/ )にて出品されているものの 比率を調査してみたところこのようになった(出品数の多い順位): Yahoo!オークション↓ 楽天フリーマーケットオークション↓ ① 住まい・インテリア ① ファッション ② アンティーク・コレクション ② ホビー・カルチャー 3 ③ おもちゃ・ゲーム ③ パソコン・モバイル・家電 ④ ファッション ④ 本・音楽・映像 ⑤ ホビー・カルチャー ⑤ 美容・健康・福祉 ⑥ 音楽 ⑥ 車・スポーツ・アウトドア ⑦ 本・雑誌 ⑦ トラベル・チケット ⑧ スポーツ・レジャー ⑧ フード Yahoo!オークションの①の中でも家具やインテリアの出品数が多い。また②のアンティー ク・コレクションと中でも人気があるのはおもちゃであることがわかった。またどちらも①と② が桁違いに多いのである。 楽天フリーマーケットの①のファッションではレディース物が多く、また②のホビー・カルチ ャーでは Yahoo!オークションと同様におもちゃやコレクターズグッズが殆どである。 Yahoo!オークションの場合は妙な出品も多く、マニア的な物や、一般的にまともではない物 など非常に多種多様である。それとは対照的に楽天フリーマーケットではファッションやブラン ド品などの出品が多く、非常に女性的なイメージが強いようである。全体的な雰囲気も、Yahoo! オークションとは異なりほのぼのした印象が強い。 サービス開始時から数ヶ月に何が生じていたのか: 上記の段落ではサービス開始時から数ヶ月の間にすでに大きな差が生じていたことがわかっ た。そこでそれぞれのサイトで当時のデータを集めてみたところ、非常に重要な要因が判明した: ヤフーに質問をしてみたところ、 『開始時の Yahoo!オークションは、売るのも買うのも手数料 不要という手軽さを武器に、若年層∼30 代ユーザーの人気を急速に集めたことにより、特に 2000 年から急激に伸びた』ということが分かった。 『「C to C」オークションサイトにとって今 や必須と言える「評価システム」も早くから用意されており、FAQ もかなり充実していてわか りやすかった。楽天オークションは会員登録が比較的簡単で、無料であったために人気が集中し たが(「楽天オークション」は会員費無料、入札出品無料。出品物が落札された時に、落札金額 の 5%を支払う。 )検索ポータルの最大手、ヤフーは会員費入札出品は無料、ID をログインする だけで利用可能なためオークションユーザーが全てヤフーに一極集中したとある。』また当時か ら参加している方からの意見で『当時の Yahoo!オークションは,だれでも無料で参加できると いうこと以外に、楽天や BIDDERS などの他の大手オークションサイトと異なり,本人確認も していなかったために Yahoo!オークションの人気が高まったと推測可能である。』ちなみにヤフ ーオークションの有料化の後でも出品数が過去の記録を超えたのである。「選ぶ楽しさ」がある ヤフーが人気なのは当然と言えるだろう。出品数が全然減らないのも当たり前である。また月額 280 円は、振込手数料や送料よりも安いため、結局はお買い得だと言えるのではないだろうか。 アクセス状況もすでに差がついていたようだ。Japan Access Rating という会社の公開してい るデータである程度調べることが出来たのだが、1999年9月当時、Yahoo!の 3202,3 4 (アクセス指数)に対して楽天は 413,6 となっており、かなりの差があったことがわかる (http://www.istinc.co.jp/jar/jar_sum/jar0007.html) 。 ち な み に 現 在 の デ ー タ ( http://www.istinc.co.jp/jar/jar_sum/jar0037.html )を見るとさらにアクセス数の差が大きく開 いているのがよくわかる。 やはり初期の敷居の高さによりユーザ集客力の違いが生じたのも大きな原因である(Yahoo 掲示板によると)『当時の Yahoo!は完全無料で、認証もザル。アダルトカテゴリOK。..など』 といった敷居の低さだが、当時の楽天の場合は『クレジトカードが登録が必要で有料』となって いる。 利用度について: 再び日経ネットビジネスの表を見てわかるのは、利用度の高さと知名度が強く関係していると いうことである。電子モールでは楽天市場が 91.5%の知名度を獲得しているのに対して、2位 の Yahoo!ショッピングは 55.4%。オークションサイトでは Yahoo!オークションが 77.9%で、 2位の楽天フリーマーケットが 52.7%である。 ここから推測できることは、EC サイトでは、高い知名度(ブランド)を獲得したサイトが一 人勝ちになる傾向が強いということである。上位・中位・下位というグループ分けにならず、1 位と、それ以下という構図になりがちである。したがって特定のジャンルで1位にならないと高 い収益を上げることは難しいといえそうだ。 参加費用: 月額280円について述べたので参加費用に関しても比較したいと思う。Yahoo!オークショ ンに関しては先ほど述べた通りである。楽天フリーマーケットは無料キャンペーンを除けば一回 10円であるが、写真掲載が40円や文字修飾に40円、追加アイコン40円、ギフトマーク4 0円などがかかってしまう。利用の方法でも異なるが、全体的に Yahoo!オークションの方が安 上がりだろう。 その他考えられること: Yahoo!オークションの場合は、検索サイトとしての地位を確立していたのが成功の大きな要 因といったことも考えられる。トップページ(www.yahoo.co.jp)から誘導されて参加し始めた 人も多いはずである。楽天は確かに電子モールの最大手だが、電子モールという限られたジャン ルに特化したサイトである。従って当時の一般ユーザーの中には知らない人や知っていても興味 が無いといった感じ人が多く、楽天のサイトをそもそも訪れない人も多数いたのではないだろう か。逆にネットショッピングに最初から興味を持っているユーザーでなければ楽天のサイトを経 由して楽天フリーマーケットに辿り着くことなかったという状況があったと想定可能である。し かしながら Yahoo は知らない人が殆どいなく、興味に関係無く誰もが訪れるサイトであるため、 Yahoo を開いて、そこで偶然オークションのリンクをクリックした人は楽天のそれと比べてはる 5 かに多かったはずである。 また現在のイメージで Yahoo!オークションの場合は、 “ゴミみたいな物を出しても売れてしま う”とよく耳にするぐらいなのでやはり売れやすいサイトを選ぶのは当然のことである。 無料サイトの中で Yahoo!がいち早く抜け出し、独走態勢を築き今に至るということだろう。 有料化に際しても、他のサイトとの差がありすぎたために致命傷にならなかったのだろう。安全 性を確保すると出品の敷居が高くなってしまい参加者と商品数が確保できなくなってしまうと いうのも戦略のも大きなポイントである。また当時は Yahoo!オークションをやめても他の似た 移民先がなかったと考えられる。 ウェブユーザビリティーの比較: 商品数やサービス開始時の状況などから、この論文の結論はほぼ分かっているのだが、もしか したらウェブユーザビリティーも関係しているかもしれないので調査をしてみたいと思う。 しなみに http://www.archive.org/index.html (Way Back Machine)で昔のページが見られる のだが、Yahoo!はトップページからロボット排除しているのでデータが残っていないようであ る。そのため現在のページを参考にする。 それぞれの比較の前に『ウェブユーザビリティーの法則』という参考文献の基本原則を述べた い。その文献によると、 『ウェブサイトに王道はない』ということだ。確かに hotmail やその他 多くの有名サイトでさえデザインを変更することがあるのでその通りである。しかしユーザビリ ティーの第一法則は“ユーザーに考えさせない。 ”ということだそうだ。その他細かい内容と2 つのオークションサイトを照らし合わせながら比較してみたいと思う。 Yahoo!オークションのユーザビリティー: ―トップページでユニークな品が目立つよう配置されているため興味を引いている。 これは初めてきた人にも非常に印象的なトップページではないだろうか。楽天と比較した場 合でも明らかにユニークである。 ―コンテンツの配置がわかりやすい。 どこに何があるか一目でわかるようになっている。 ―検索システムにより探している商品をすぐにサーチできる。 ―入札額や残り時間が一目でわかる。 これも興味を引くものである。また楽天フリーマーケットのトップページにはないものであ る。 ―ページ自体が非常に軽い データが軽いことにより表示も速く、嫌な気持ちにならない。これはわりと重要なことで、 重そうなページに入ってしまった場合にすぐに退出する人は多いのである。 ―初めの一歩というコーナー 6 初心者でもすぐに基本を知ることが出来るのでユーザーに考えさせないといった第一の法 則を守っているといえよう。 その他私が見つけた Yahoo!オークションサイトの良い点: ―Yahoo!オークションでは、アクセス総数やウォッチリストに追加した総数を教えてくれるた め1日何回でも開いて楽しい。 楽天フリーマーケットのユーザビリティー: ―Yahoo!オークションとことなりトップページでユニークな品を強調していない。 そのため、どちらかというと Yahoo!オークションの方が面白そうにみえる。またピンク色 が強調されているため、多少女性向けのイメージがある。 ―コンテンツの配置がわかりやすい。 ヤフー同様、どこに何があるか一目でわかるようになっている。 ―検索システムにより探している商品をすぐにサーチできる。 ―入札額や残り時間が表示されていない。 Yahoo!オークションでは、トップページから表示されているのだが、こちらではそれがな い。 ―ページが軽い。(Yahoo!オークションと同様) ―ヘルプの表示 (〃) 資料に『多くの人はページ内の文章を読まず、ざっとみるのみ』と書かれていることを考慮し た場合はより画像の多い Yahoo!オークションの方がユーザビリティーが上と考えられる。しい て言えばカテゴリーのハイパーリンクされている文字の量が楽天フリーマーケットの方が少な いのでみやすいとも捉えられる。 結論: さまざまな見解があったもののやはり一言で言えば商品数である。しかしそれは現在のことで、 そこに至るまでにはサービス開始当時から数ヶ月の間に大きな差が生じたのである。まとめとし ては Yahoo!オークションは偶然にアクセスする間口が広かったのと敷居が低かったため、とり あえずそのまま利用開始する人が多かったが、楽天は相対的には間口が狭く、敷居がある程度あ ったので登録しなかった人が多かった。そして現在はネットワーク外部性により優位を保ってい るのだろう。同じサイトに参加するメンバーが増えれば増えるほど、参加メンバーにとっての便 益が増大するのだ。この場合は出品数と落札数のアップにつながっているのである。 またユーザビリティーの面でも Yahoo!オークションの方が上であるというのが独自の検証で ある。 7 ↓図1 ↓図2 (http://nnb.nikkeibp.co.jp/nnb/ranking/s-rm.html) 参考文献 ―小林雅一『クリック&モルタル』ダイヤモンド社、2001. ―Steve Krug 『A Common Sense Approach to Web Usability』Soft Bank Publishing, 2001. ―ウェブムページ: 主に http://nnb.nikkeibp.co.jp/ : 日経ネットビジネス http://trading.rakuten.co.jp/ : http://auctions.yahoo.co.jp/ : 楽天フリーマーケット Yahoo!オークション http://www.istinc.co.jp/jar/ : Japan Access Rating 8 (ネット視聴率調査会社) http://www.archive.org/index.html : Way Back Machine (ウェブサイトの以前の様子を見 ることが可能) http://www.stockresearch.co.jp/auctions/ : (ストックリサーチ) その他ヤフー、楽天、Bidders, eBay, …など 9