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TPP協定の大枠合意を読む!

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TPP協定の大枠合意を読む!
TPP協定の大枠合意を読む!
~医薬品産業に及ぼしうる影響の有無について、
特に知的財産の観点から~
於: アルカディア市ヶ谷
2016.11.15
Copyright(c) 2016
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
略 歴
2002年 大学院 工学研究科 環境工学専攻 修了
2002年 経済産業省近畿経済産業局入庁
2006年 原謙三国際特許事務所
(現 HARAKENZO WORLD PATENT &
TRADEMARK)入所
(2006年弁理士登録)
Copyright(c) 2016
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
1
本日の講義内容
【第1部】 TPP協定とは
【第2部】 医療等分野(知的財産は除く)に係る
TPP協定の概要
【第3部】 知的財産分野に係るTPP協定の概要
(第18章)
【第4部】 TPP協定の発効により想定される事
※本資料中のTPP協定の訳文は全て内閣府TPP政府対策本部のHP
(http://www.cas.go.jp/jp/tpp/index.html)から引用したものです。
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【第1部】 TPP協定とは
目次
1章.TPP協定の概要とその目的
2章.TPP協定の交渉の経緯
3章.TPP協定発効の条件
3
1章.TPP協定の概要とその目的
(1)TPP協定の概要
・TPP協定の正式名称
「環太平洋戦略的経済連携協定
(Trans-Pacific Strategic Economic
Partnership Agreement」
・TPP協定は、環太平洋地域の国々による経
済の自由化を目的とした経済連携協定(EPA)
4
・TPP協定の概要
「日米を中心とする環太平洋地域の国々に
よる、モノの関税の撤廃だけにとどまることな
く、サービス・投資の自由化を進め、知的財
産、電子商取引、国有企業の規律及び環境
といった幅広い分野において新たなルール
を構築する経済連携協定(EPA)」
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・TPP協定加盟国
TPP協定加盟国:日本、米国、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、
オーストラリア、ニュージーランド、
ベトナム、シンガポール、マレーシア、ブルネイ
合計12国
*上記12国のGDPは、世界全体のGDPの約4割(2014年度統計)
6
・TPP協定の目的
・成長著しいアジア太平洋地域に大きなバリュー・チェーンを作り出すことにより、
域内のヒト・モノ・資本・情報の往来を活性化し、太平洋地域を世界で最も豊かな
地域にすること。
・大企業に加えて、中小企業や地域の産業も含む国内の企業が、世界の成長センター
であるアジア太平洋地域の市場につながり、活躍の場を広げていくことによって、
我が国の経済成長を促すこと。
・ ヒト、モノ、資本、情報が太平洋地域を自由に行き来するようになることで、
都市部だけでなく、地方も含む国内に新たな投資を呼び込み、世界の活力を
取り込んでいくこと。
・今後の世界の貿易・投資ルールの新たなスタンダードを提供すること。
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2章.TPP協定の交渉の経緯
2006年
TPP協定の前身である、シンガポール、ブルネイ、チリ、
ニュージーランドの4国による協定(P4協定)が発効。
2009年9月 米国がTPP協定の交渉開始意図表明
2010年3月
シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4国に、
アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナムを加えた8カ国にて
交渉開始
同年10月 マレーシアが交渉に参加 (交渉国:9か国に)
2011年11月 日本、カナダ、メキシコが交渉参加に向けた協議開始の
意向表明
2012年10月 カナダ、メキシコが交渉参加 (交渉国:11か国に)
2013年 7月 日本が交渉参加 (交渉国:12か国に)
2015年10月 アトランタ閣僚会議にて大筋合意が成立
2016年2月4日 ニュージーランド・オークランドにてTPP署名式開催
2016年5月
ペルーにて、TPP閣僚会議が開催
8
3章.TPP協定発効の条件
(1)署名から2年以内にTPP協定参加国12国の全ての国内手続き
(TPP協定の国会(議会)承認・批准、及び、関連する国内法の
整備)を完了し、その旨を報告してから60日後に発効
(2)署名から2年以内にTPP協定参加国12国の全ての国内手続き
が完了しない場合、上記12国のうち、GDPの85%以上を占め
る6国以上の国にて国内手続きが完了することを条件として、
署名から2年の期間の満了から60日後に発効
*なお、GDPの85%以上を占めるためには、日本およびアメリカの
双方の国内手続きが完了する必要がある。
9
現在の状況
・現在、TPP協定の加盟国のうち、国内手続きを完了させた国の数は、0
*但し、2016年2月のTPP署名式や5月のTPP閣僚会議において、
各国は国内手続きの完了に向けて努力していくことで合意している。
TPP協定発効の可能性
・TPP協定発効には、最低でも署名した日(2016年2月4日)から2年以内に、
日本、アメリカの双方が、TPP協定に関する国内手続きを完了させる必要がある。
日本の現在の状況:今国会でTPP関連法案を審議中であるが、
今年中の承認は難しい見込み
アメリカの現在の状況:次期大統領候補の、クリントン氏、トランプ氏の両名共、
TPPの承認に対して反対の意思を表明している
→ 現状、現在の内容でのTPP協定発効は困難か?
10
TPP協定発効の条件を充足しない場合
現状では、アメリカの国内手続きが完了せず、TPP協定が発効できない
可能性がある。
→アメリカは、国内手続きの前にTPP協定の再交渉(改訂)を希望する可
能性が高い。
・TPP協定の再交渉が開始され、TPP協定の内容が改訂された場合
改定前のTPP協定が、他の国(例えば、日本)で承認されていた場合で
あっても 、改定後のTPP協定について再承認する必要がある。
→TPP協定の内容が変更になったり、TPP協定の発効時期がかなり遅れ
る(2年以上先になる)可能性がある
【第2部】 医療等分野(知的財産は除く)に係る
TPP協定の概要
目次
1章:医薬品・医療機器に関する手続の透明性・
公平性に関する付属書(第26章)
2章:貿易の技術的障害(第8章)
3章:越境サービス、投資、金融サービス
(第9~第11章)
1章:医薬品・医療機器に関する手続の透明性・
公平性に関する付属書(第26章)
(概要)
TPP協定第26章の付属書において、国の保健当局が、
保険適用希望の申請に対する検討を特定の期間内に完
了させること、手続規則、方法、原則及び指針を公開す
ること等、保険給付における価格決定手続の公正な実施
に関する内容を規定している。
(日本における対応)
・全ての規定が国内の保険給付における価格決定手続
に関する現行制度の範囲内である。
(参考事項)
・附属書の適用範囲は締約国ごとに定義されており、日本
は適用範囲を医薬品の保険給付における価格決定手続に
限定されている。
・本附属書は公的医療保険制度に直接関連するが、TPP
協定には、我が国の公的医療保険制度のあり方そのもの
に影響を与えるような民間医療保険の拡大、混合診療の自
由化、営利企業の参入等の規定は含まれていない。
2章:貿易の技術的障害(第8章)
(概要)
・製品の「規格」に関し貿易障壁の削減を目的とし、海外に立
地する適合性認証機関について、国内に立地する機関と同様
の待遇を与えること等を規定。
・付属書において、化粧品・医療機器・医薬品に関する承認手
続の透明性を確保すること等を規定している。
※具体的には、新たな規則を作成する場合には、国際的な技
術的指針文書を考慮すること、時宜を得た、合理的、客観的、
透明性、公平な態様で承認手続きを行うこと、販売承認を受
けるための条件として製造国による販売承認を受けることを
要求してはならないこと、不服申立てプロセスを確保すること
等が必要であること等も、付属書には規定されている。
(日本における対応)
・現行の医薬品医療機器法上想定されていなかった外国に
立地する医療機器の適合性認証機関について、新たに命
令・監督規定を設けるための法律改正が必要。
・但し、附属書の内容については、現行の国内制度の範囲
内であり、現状の国内制度を変更する必要性はない。
(日本における対応の内容)
「総合的なTPP関連政策大綱」において、外国における医療機器等の
認証機関への対応、競争政策に関し独占禁止法違反の疑いを効率的
、効果的に解消する仕組の導入に関し、必要な措置を講ずる、と記載
している。
具体的には、「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係
法律の整備に関する法律案」にて、登録認証機関(医薬品医療機
器法に基づき、管理医療機器、体外診断用医薬品等の認証を行う
ことができる民間の第三者機関)に関する規定の整備を行ってい
る。
例:外国の登録認証機関に対する登録、業務改善の請求、業務停
止の請求、登録の取り消し等に関する規定
3章:越境サービス、投資、金融サービス(第9章~第11章)
(1)越境サービス及び投資
(概要)
・サービス提供に関する内国民待遇、最恵国待遇、市場
アクセス(数量制限等)、拠点設置要求禁止や投資家保
護等に係るルールを規定している。
・社会事業サービス(保健、社会保障、社会保険等)につ
いては内国民待遇等の義務に関し留保を行っている。し
たがって,必要かつ合理的な措置を採用し、又は維持す
ることは妨げられない。
(2)金融サービス
(概要)
・金融サービス提供に関する内国民待遇、最恵国遇、市場
アクセス(数量制限等)や投資家保護に係るルールを規定
している。
・公的年金計画及び社会保障(公的医療保険を含む。)は
適用の対象外となっている。
【第3部】
知的財産分野に係るTPP協定の概要(第18章)
1章:医薬品産業に限定されない、知的財産分野全般
の主要トピックス
2章:特に医薬品関連と関連するトピックス
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第18章 知的財産
第18章の構成
第A節: 一般規定
1~11条
第B節: 協力
12~17条
第C節: 商標
18~28条
第D節: 国名
29条
第E節: 地理的表示
30~36条
第F節: 特許及び開示されていない試験データその他のデータ
第G節: 意匠
55~56条
第H節: 著作権及び関連する権利
57~70条
第I節:
71~80条
権利行使
第J節: インターネット・サービス・プロバイダ
第K節:
最終規定
37~54条(医薬品に特に関連)
81~82条
83条
附属書
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1章:医薬品産業に限定されない、知的財産分野全般
の主要トピックス
主に何が変わるのか?
・日本はTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定
)に加盟。TPPの目的の一つは、 知的財産の保護及び行使に
関してTRIPS協定より高度又は詳細な規律を含める点。
→ 変化が起きるのは、主にTRIPSの保護を超える部分
※主要トピックス
①著作権の保護期間の延長
②著作権侵害の罪について非親告罪化
③法定損害賠償の制定 著作権関係・商標の不正使用
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(ご参考) TRIPS協定
Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property
Rights
・1995年 世界貿易機関(WTO)創設に合わせ発効した貿易関連ルール
・知的所有権の保護に関する既存の条約(パリ、ベルヌ条約等)の改正では対
応が困難な諸問題(権利行使の問題、先進国・途上国間の対立等)の解消が
目的
・知的所有権の保護に関してWTO加盟国が順守すべきミニマムスタンダードを
規定(※)。なお、TPP加盟国は全てWTO加盟国。
※ 既存の条約の遵守を義務付けた上で、さらなる保護の強化を規定する、パリ/
ベルヌ・プラスアプローチ。
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第A節 一般規定
第十八・一条 定義
「知的財産」とは、貿易関連知的所有権協定(TRIPS協定)第二部第一節か
ら第七節までの規定の対象となる全ての種類の知的財産をいう。・・・
第十八・二条 目的
第十八・三条 原則
第十八・四条 この章の規定に関する了解
第十八・五条 義務の性質及び範囲
第十八・六条 公衆の健康についての特定の措置に関する了解
締約国は、TRIPS協定及び公衆の衛生に関する宣言(ドーハ宣言)に係る約
束を確認する旨
・締約国が公衆の健康を保護するための措置を妨げるものではない
・ドーハ宣言パラ6システム*の効果的な利用を妨げるものではない
*途上国でも医薬品にアクセスしやすくするシステム
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第A節 一般規定
第十八・七条 国際協定
加盟国が締結する条約
・特許協力条約
・パリ条約
・ベルヌ条約
・マドリッド議定書/シンガポール条約 (どちらかでOK)
・ブダペスト条約
・UPOV条約
・WIPO著作権条約 ・WIPO実演・レコード条約
第十八・八条 内国民待遇
・第H節に規定されない、著作権及び関連する権利については、締約国が他
の認められた方法で、内国民待遇の義務を免れることが認められている。
第十八・九条 透明性
第十八・十条 既存の対象事項及び過去の行為についてのこの章の規定の
適用
第十八・十一条 知的財産権の消尽
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第B節 協力
第十八・十二条
第十八・十三条
第十八・十四条
第十八・十五条
第十八・十六条
第十八・十七条
協力のための連絡部局
協力活動及び協力に係る自発的活動
特許に関する協力及び作業の共有
公共の領域(パブリック・ドメイン)
伝統的な知識の分野における協力
要請に基づく協力
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第C節 商標
第十八・十八条 商標として登録することができる標識の種類
・標識を視覚によって認識することができることを登録の条件として要求しては
ならない。
・商標を構成する標識が音であることのみを理由として商標の登録を拒絶して
はならない。
・匂いの商標は「登録するよう最善の努力を払う」
ちなみに日本では | 2015年4月1日より「新しいタイプの商標」(音・色彩のみ・
位置・動き・ホログラム)の出願・登録を認める改正商標法施行。
(匂いの商標は未導入)。
•音の商標の例:久光製薬「HI SA MI TSU♪」(登録第5804299号)、小林製
薬「ブルーレットおくだけ♪」(登録第5804301号)
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第C節 商標
第十八・十九条 団体標章及び証明標章
第十八・二十条 同一又は類似の標識の使用
第十八・二十一条 例外
第十八・二十二条 広く認識されている商標
第十八・二十三条 審査、異議申立て及び取消しについての手続上の側面
第十八・二十四条 電子的な商標のシステム
・商標を電子的に出願し、及び維持するためのシステム
・商標出願及び登録された商標に関する公に利用可能な電子的な情報シス
テム(オンラインのデータベースを含む。)
→外国出願や外国商標のウォッチングが簡単になると予想される。
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第C節 商標
第十八・二十五条 物品及びサービスの分類
第十八・二十六条 商標の保護期間
第十八・二十七条 使用権を記録しないこと
第十八・二十八条 ドメイン名
国別トップレベルドメインのドメイン名(.jp等)を管理するための各締約国の制
度に関し、各締約国の法令並びに適用がある場合にはプライバシー及び個
人情報の保護についての関連する管理者の政策に従い、次の手続及びアク
セスを利用可能なものとする。
・紛争の解決のための適当な手続
・少なくとも、商標と同一の又は混同を生じさせるほどに類似したドメイン名を
登録し、又は保有する者が、利益を得る不誠実な意図を有する場合には、適
当な救済措置を利用可能なものとする。
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第D節 国名
第十八・二十九条 国名
各締約国は、利害関係者に対し、物品の原産地について消費者を誤認させる
ような態様で当該物品に関して締約国の国名を商業的に利用することを防止
するための法的手段を提供する。
第E節 地理的表示
→農林水産物・食品等の名称であって、その名称から当該産品の産地を特定
でき、産品の品質等の確立した特性が当該産地と結び付いているということ
を特定できるもの。
日本でも特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)の
制定・商標法の改正が行われた。
山口県の「下関ふく」や北海道の「夕張メロン」など。
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日本のGIマーク→
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第E節 地理的表示
第十八・三十条
第十八・三十一条
第十八・三十二条
第十八・三十三条
地理的表示の認定
地理的表示の保護又は認定のための行政上の手続
異議申立て及び取消しの根拠
日常の言語の中で通例として用いられている用語であるか
どうかを決定するための指針
第十八・三十四条 複数の要素から構成される用語
第十八・三十五条 地理的表示の保護の日
第十八・三十六条 国際協定
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第F節 特許及び開示されていない試験データその他の
データ
→【第3部】 2章:特に医薬品関連と関連するトピックスにてまとめて
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第G節 意匠
第十八・五十五条 保護
第十八・五十六条 意匠の制度の改善
締約国は、自国の意匠登録の制度の質及び効率性を向上させること並びに
自国の意匠に係る制度において国境を越えて行われる意匠権の取得の手
続を円滑にすること(千九百九十九年七月二日にジュネーブで作成された意
匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定を締結することに
十分な考慮を払うことを含む。)の重要性を認める。
<ハーグ協定>
各国別に発生する出願手続きを一元化し、国際事務局への一つの出願手続で
指定した国それぞれに出願した場合と同等の効果を得ることができる意匠の国
際出願・登録システム。
2015年5月13日に日本においても正式発効。
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第H節 著作権及び関連する権利
第十八・五十七条 定義
第十八・五十八条 複製権
第十八・五十九条 公衆への伝達権
第十八・六十条
譲渡権
第十八・六十一条 序列を設けないこと
第十八・六十二条 関連する権利
第十八・六十三条 著作権及び関連する権利の保護期間
・生存期間及び著作者の死後
・権利者の許諾を得た最初の公表の年の終わりから
・創作の年の終わりから
少なくとも70年
※従来の国内法は50年(後述)
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第H節 著作権及び関連する権利
第十八・六十四条 ベルヌ条約
第十八・六十五条 制限及び例外
第十八・六十六条 著作権及び関連する権利の制度における均衡
第十八・六十七条 契約に基づく移転
第十八・六十八条 技術的保護手段
著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段を権限なく故意に回避す
る行為をした者はその救済措置について責任を負うこと等を規定
第十八・六十九条 権利管理情報
権利管理情報を故意に除去等する行為をした者はその救済措置について責
任を負うこと等を規定
第十八・七十条 集中管理
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第I節 権利行使
第十八・七十一条 一般的義務
第十八・七十二条 推定
第十八・七十三条 知的財産権に関する権利行使の実務
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第I節 権利行使
第十八・七十四条 民事上及び行政上の手続及び救済措置
6 各締約国は、民事上の司法手続において、著作物、レコード又は実演を保護する著作権又は
関連する権利の侵害に関し、次のいずれか又は双方の損害賠償について定める制度を採用し、
又は維持する。
• (a) 権利者の選択に基づいて受けることができる法定の損害賠償
• (b) 追加的な損害賠償 (注)
• 注 追加的な損害賠償には、懲罰的損害賠償を含めることができる。
7 各締約国は、民事上の司法手続において、商標の不正使用に関し、次のいずれか又は双方
の損害賠償について定める制度を採用し、又は維持する。
• (a) 権利者の選択に基づいて受けることができる法定の損害賠償
• (b) 追加的な損害賠償 (注)
• 注 追加的な損害賠償には、懲罰的損害賠償を含めることができる。
8 6及び7の規定に基づく法定の損害賠償は、侵害によって引き起こされた損害について権利
者を補償するために十分な額に定め、及び将来の侵害を抑止することを目的として定める。
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第I節 権利行使
第十八・七十四条 民事上及び行政上の手続及び救済措置
<法定損害賠償>
•
•
私法上の損害賠償の一種であり、賠償額の算定について、実際の損害額を算定し
て計算するというものではなく、制定法の範囲内で決定するというもの
日本では、原則として、被害者が実際に被った損害額を被害者の方で証明する必要
があるが、商標権や著作権を含む知的財産権の損害額はその立証が容易ではない
ため、商標法では38条、著作権法では114条において「損害の額の推定等」という規
定が置かれている。法定損害賠償制度はこれをさらに進め、最初から一定の損害額
を決めておき、その範囲内で侵害者に賠償責任を負わせるものといえる。
※追加的損害賠償(特に懲罰的損害賠償)とは、実際の損害以上の賠償額を
裁量で認めるもの
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第I節 権利行使
第十八・七十四条 民事上及び行政上の手続及び救済措置
9 司法当局は、6及び7の規定に基づく追加的な損害賠償の裁定を下すに
当たり、全ての関連する事項(侵害行為の性質及び将来における同様の侵害
の抑止の必要性を含む。)を考慮して適当と認める追加的な損害賠償の裁定
を下す権限を有する。
※我が国においては、民事上の損害賠償請求において、懲罰的な意味合い
を認めない
→損害賠償制度の目的は、損害の填補
→商標法および著作権法の損害賠償請求規程においても、法定損害賠償
制度のみが採用された(後述)
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第I節 権利行使
第十八・七十四条 民事上及び行政上の手続及び救済措置
15 各締約国は…確保する。当該司法当局は、また、申立人に対し、費用(適
当な弁護士の費用を含むことが出来る。)を被申立人に支払うよう命じる権限
を有する。
→弁護士費用を敗訴者に負担させることができる旨明記
※わが国では、訴訟費用につき敗訴者負担が定められているも(民事訴訟
法61条)、弁護士費用は訴訟費用には含まれない。
→弁護士費用は自己負担が原則であるが、不法行為に基づく損害賠償請
求においては、弁護士費用を損害額の一部として計上するということが
実務上行われている。
→慰謝料や逸失利益の合計額の約1割を請求することが多いが、どのよう
に判断されるかは、裁判所の裁量による。
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第I節 権利行使
第十八・七十五条 暫定措置
第十八・七十六条 国境措置に関する特別の要件
第十八・七十七条 刑事上の手続及び刑罰
<著作権侵害の非親告罪化>
(1)はじめに
• 現在、我が国では著作権侵害の罪は、原則として親告罪となっている。我が
国では、日常的に著作権侵害が発生しているにもかかわらず、著作権の制
限規定に該当するとして侵害にならない場合の他、侵害となっているにもか
かわらず、権利者が黙認しているため、公になっていないという場合もかな
り多いというのが現状である。
• ※「親告罪」とは、被害者が捜査機関に対して処罰を求める意思を示して初
めて捜査がなされるというもの
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第I節 権利行使
第十八・七十七条 刑事上の手続及び刑罰
<著作権侵害の非親告罪化>
(2)非親告罪になるということの意味(従前指摘されていたこと)
• ①捜査機関が自らの判断で、著作権侵害の捜査を行えることとなり、著作物
の利用がこれまでより制限される恐れ
→これまで制限されなかった(権利者が黙認していた)著作物の利用行為
であっても、捜査機関の判断により、罰則の対象とされることも起こり得る
• ②日本では、制限規定についてもアメリカのようないわゆるフェアユース規
定が存在しない
→柔軟な法解釈によって、実質的に処罰に値しないような行為につき非侵
害との判断を導けるのか
• ③世界的にみても厳しい日本の著作権侵害の罰則
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第I節 権利行使
第十八・七十七条 刑事上の手続及び刑罰
<著作権侵害の非親告罪化>
(3)問題点
• このように非親告罪にすると言うことは、これまで認められてきた著作物の
利用が制限されるということであり、文化の発展を法目的とする著作権法の
趣旨を損なうおそれすらある。ここで、特に著作物の二次創作に萎縮効果を
与えないようにとの配慮の下、非親告罪として扱うものを下記のように限定
するとされた。
• 具体的には、著作権侵害において非親告罪として扱われる場合として、
①商業的規模であること
②市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与える場合であること
の2点が必要とされた。
※改正法については、後述
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第J節 インターネット・サービス・プロパイダ
第十八・八十一条 定義
第十八・八十二条 法的な救済措置及び免責
著作権の侵害に対処するため権利者が法的な救済措置を利用することがで
きることを確保し、及びインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)が提供する
オンライン・サービスに関する適当な免責を確立し、又は維持する。
例えば
著作権の侵害について法的に十分な主張を行った著作権者が、侵害者であるとされ
る者を特定する情報を著作権の保護又は行使のために求める場合、その情報を当
該ISPから迅速に入手することができるようにするための手続を定める。
→日本では、プロパイダ責任制限法で同様の規定を設けている。
第K節 最終規定
第十八・八十三条 最終規定
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2章:特に医薬品関連と関連するトピックス
・ 「第F節 特許及び開示されていない試験データその他のデー
タ(37条~54条)」のうち、特に、37条、38条、46条、48条、50
条、51条、53条を取り上げる。
・ また、 44条(出願公開)と、医薬品との対比として47条(農業
用の化学品)とを取り上げる。
特許を受けることが出来る対象(三十七条)
三十七条
特許を受けることができる対象事項
1 各締約国は、3及び4の規定に従うことを条件として、新規性、進歩性及び産業上の利用可能性のある全ての
技術分野の発明(物であるか方法であるかを問わない。)について特許を取得することができるようにする。
2 各締約国は、3及び4の規定に従うことを条件として、かつ、1の規定に適合する方法で、少なくとも既知の物の
新たな用途又は既知の物を使用する新たな方法のうちいずれかとして請求の範囲に記載されている発明について
特許が与えられることを確認する。締約国は、当該新たな方法について、当該物の用途自体を請求の範囲に記載し
ていないものに限定することができる
3 締約国は、公の秩序又は善良の風俗を守ること(人、動物若しくは植物の生命若しくは健康を保護し、又は自
然若しくは環境に対する重大な損害を回避することを含む。)を目的として、商業的な実施を自国の領域において防
止する必要がある発明を特許の対象から除外することができる。
ただし、その除外が、単に当該締約国の法令によって当該実施が禁止されていることを理由として行われるもので
ないことを条件とする。締約国は、また、次のものを特許の対象から除外することができる。
(a) 人又は動物の治療のための診断方法、治療方法及び外科的方法
(b) 微生物以外の動物並びに非生物学的な方法及び微生物学的な方法以外の動植物の生産のための本質的に
生物学的な方法
4 締約国は、また、微生物以外の植物を特許の対象から除外することができる。もっとも、各締約国は、1の規定
に適合する方法で、かつ、3の規定に従うことを条件として、少なくとも植物に由来する発明について特許が与えられ
ることを確認する。
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特許を受けることが出来る対象(三十七条)
TRIPs協定と比較した三十七条のポイント
(1) 方法又は物の発明として「用途発明」を保護することを義務付け
2 各締約国は、・・・・・・・・・、少なくとも既知の物の新たな用途又は既知の物を使用する新たな方法のうち
いずれかとして請求の範囲に記載されている発明について特許が与えられることを確認する。
※ 米国が当初提案した「治療方法発明の保護」は義務付けられなかった。TPP加盟国の中で「 治療方
法発明」を保護する国は米国、オーストラリアだけという状況が続く見込み。
(2) 公序、良俗の保護に関する具体例(自然に対する重大な損害を回避)が追加
3 締約国は、公の秩序又は善良の風俗を守ること(・・・・・・・自然若しくは環境に対する重大な損害を回避
することを含む。)を目的として、商業的な実施を自国の領域において防止する必要がある発明を特許の対
象から除外することができる。・・・・・・・・
(3) 「植物に由来する発明」の保護を義務付け
4 締約国は、また、微生物以外の植物を特許の対象から除外することができる。もっとも、各締約国は、1
の規定に適合する方法で、かつ、3の規定に従うことを条件として、少なくとも植物に由来する発明について
特許が与えられることを確認する。
※ カナダは、「多細胞生物自体(multi-cellular organism)」の発明を、特許法による保護対象としていな
い点でユニーク。この取り決めはTPP大枠合意にも反せず、この方針は維持されると予想。
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特許を受けることが出来る対象(三十七条)
〔三十七条導入による影響〕
日本政府の見解
「広い範囲の技術に対して特許権を取得することが可能となり、我が国企業
等のTPP域内への進出を促進することが期待される。」
実務家の観点から実際に予想される影響
日本政府の見解は正しいと思われる。
過剰な期待は禁物だが、特許法で保護される/されない発明が法上で明確
に規定されていない国や、第二医薬用途の保護に保守的な国(ベトナム等)も
あるため、一定の効果は期待できるであろう。
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猶予期間(三十八条)
三十八条 猶予期間
各締約国は、少なくとも、発明が新規性又は進歩性のあるものであるかどうかの判断に際して用いる
公衆に開示された情報について、その開示が次の(a)及び(b)の要件を満たす場合には(注1、注2)、
当該情報を考慮に入れない。
(注1) ・・・・省略。
(注2) ・・・・省略。
(a) 特許出願人又は特許出願人から直接若しくは間接に当該情報を入手した者により行われたも
のであること。
(b) 当該各締約国の領域における出願の日の前十二箇月以内に行われたものであること。
※ いわゆる「新規性喪失の例外適用」を認める期間を定めた規定である。
※ 医薬品発明はグローバル出願が原則で、「新規性喪失の例外適用」案件は元々少ない。従い、
影響は軽微であろうが、 「新規性喪失の例外適用」を用いて日米という主要二市場をおさえる出願は
増えるだろう。
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猶予期間(三十八条)
〔1. 猶予期間(平成22年時点)の各国比較〕
(1) 12カ月
米国、カナダ、メキシコ、チリ、ペルー、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド(※)
※ ニュージーランドは、所定の公開行為に関しては猶予期間が6カ月
(2) 6カ月
日本(※)、ベトナム
※ 日本国特許法30条で規定。前回法改正(平成24年)の際、12カ月とすることを見送った経緯あり
(3) 無し
ブルネイ
〔2. 日本への影響〕
プラス面
① いわゆる「新規性喪失の例外適用」の範囲が期間の観点で拡大。
マイナス面
① 出願されるか否かの不確定期間(発明がパブリックドメインになるまでの期間)が長期化。
② 例外適用のための「証明書」の提出義務は維持される方向。
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特許出願の公開(四十四条)
四十四条(特許出願の公開)
1. 各締約国は、特許制度における透明性が有益であることを認め、公開されていない係属中の特
許出願を出願日又は優先権が主張される場合には最先の優先日から十八箇月を経過した後速やか
に公開するよう努める。
2. 締約国は、1の規定に従い係属中の出願が速やかに公開されない場合には、当該出願又はこれ
に対応する特許を実行可能な限り速やかに公開する。
3. ・・・・・・・・・省略・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<四十四条導入による影響>
公開代償保護の考えに基づけば、特許出願は速やかに全件公開されるべき。
しかし、本条の規定では全件公開は努力目標。TPP加盟国の実情は当面変わらないと予想。
・チリ、ブルネイ ⇒ 出願公開制度なし
・米国
⇒ 条件を満たせば米国のみに出願された出願を出願公開の対象から除外可
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特許期間の調整(四十六条)
四十六条 特許を与える当局の不合理な遅延についての特許期間の調整
1. ・・・・・・・・・・・・・・省略・・・・・・・・・・・・・・・・・
2. ・・・・・・・・・・・・・・省略・・・・・・・・・・・・・・・・・
3. 締約国は、自国における特許の付与において不合理な遅延がある場合には、当該遅延について
補償するために特許期間を調整するための手段を定め、及び特許権者の要請があるときは当該遅延
について補償するために特許期間を調整する(・・注は省略・・)。
4 この条の規定の適用上、不合理な遅延には、少なくとも、締約国の領域において出願した日から五
年又はその出願の審査の請求が行われた後三年のうちいずれか遅い方の時を経過した特許の付与
の遅延を含む。締約国は、そのような遅延の決定において、特許を与える当局による特許出願の処理
(・・注は省略・・)又は審査の間に生じたものではない期間、特許を与える当局が直接に責めに帰せら
れない(・・注は省略・・)期間及び特許出願人の責めに帰せられる期間を除外することができる(・・注
は省略・・) 。
※ 注釈において、 「この条の規定は、この協定が締約国について効力を生ずる日又はこの協定の署名の二年後の日のうち当該締約
国についていずれか遅い日の後に提出された全ての特許出願に適用する」旨が決められている。
※ ベトナムは発明の分野に応じた3~5年の経過期間が認められている。
※ 3.に関し、この規定の適用が出来ない場合の特別規定がペルーに対して設けられている(アンデス共同体によるアンデス決定に基
づく縛りに起因)。
※ 日本は対応する制度が未整備のため特許法の改正が必要。
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特許期間の調整(四十六条)
〔四十六条に対応する日本の特許法改正〕
•
•
•
•
延長登録出願制度(特許法67条の2)を改正する方向で検討中。
すなわち、出願人が延長登録出願をしなければ、特許期間は調整されない。
また、この延長登録出願の期限は、原則、「特許権の設定登録の日から三月以内」である。
なお、米国では、出願人が申し立てなくとも、特許付与が決まった時点で、特許庁が計算して特
許期間を調整する。
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特許期間の調整(四十六条)
〔四十六条に対応する日本の特許法改正〕
=調整期間を計算する上で除外可能な期間(TPP46条)=
(1)特許を与える当局による特許出願の処理又は審査の間に生じたものではない期間
(2)特許を与える当局が直接に責めに帰せられない期間
(3)特許出願人の責めに帰せられる期間
=TPP46条と特許法67条改正案(10項目が挙げられる)との対応=
(1)に該当するもの
・拒絶査定不服審判、審決取消訴訟、行政不服審査の期間、等
(2)又は(3)に該当するもの
・特許庁長官又は審査官が行う通知又は命令に応答するまでの期間
例えば拒絶理由通知や補正指令への応答、等
・手続の中断又は中止した期間
天災等による手続の中止、出願人の破産等による手続の中断、等
・出願人の申出により手続を保留した期間、等
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特許期間の調整(四十六条)
〔四十六条導入による影響(全加盟国)〕
日本政府の見解
「有効な権利期間を有する特許権を取得することが可能となり、我が国企業
等のTPP域内への進出を促進することが期待される。」
実務家の観点から実際に予想される影響
日本政府の見解は概ね正しい。但し、当初は反対した条項であり、マイナスの
影響も予想されよう。
※ 日本には未導入だが、米国とFTA締結済の国の一部や米国は導入済の制度。
① 少なくとも特許付与時まで、権利期間が確定しない。
② 審査迅速化のプレッシャー ⇒ 審査品質が落ちる可能性。
③ 審査体制が不十分な国では、他国の審査に依存する傾向がより強まるだ
ろう。他国として日本が選択されれば、日本企業には有利だが・・・・・。
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特許期間の調整(四十六条)
〔四十六条導入による影響(日本限定)〕
政府見解の通り、一見すると影響は少なそうに思える。
(理由)
① 設定登録~延長登録出願までの期間が短く、特許期間調整
の有無が長期間未決な状況は回避。
② 調整期間を計算する上で除外可能な期間が、比較的明確。
③ 日本の審査はすでに十分迅速で、特許期間調整の対象とな
る案件は少ない。
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特許期間の調整(四十六条)
〔四十六条導入による影響(日本限定)〕
■ しかし、以下の事態を招来することが非常に懸念される。
① 延長登録(特許期間調整)の無効性を巡る争いの発生
② 円滑な審査を妨げるような出願・権利化戦略の横行
※ 特に、特許権一つの価値が大きく、かつ、特許権の設定登録後に製品が販売され
ることの多い医薬品業界では、上記①②の事態が予想される。すでに特許調整期間と
いう制度を持つ米国勢が有利であろうが、特許戦略の重要性はより増すだろう。
■ 5年を超える特許期間延長に道筋をつけた点も軽視すべきで
ない。
※ 特許法67条の2改正案では調整期間の上限はない方向。
※ 従前の延長登録出願(延長期間の上限5年)との併用可能の方向。
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農業用の化学品に関する措置(四十七条)
第B款 農業用の化学品に関する措置
四十七条 農業用の化学品についての開示されていない試験データその他のデータの保護
1. 締約国は、新規の農業用の化学品の販売承認(・・注・・省略)を与える条件として、当該化学品の安全性及び有
効性に関する開示されていない試験データその他のデータの提出を要求する場合には(・・注・・省略) 、当該締約国
の領域における当該新規の農業用の化学品の販売承認の日から少なくとも十年間(・・注・・省略) 、以前にそのよう
な情報を提出した者の承諾を得ないで、第三者が当該情報に基づき又は当該開示されていない試験データその他の
データを提出した者に与えられた販売承認に基づき同一又は類似の(・・注・・省略)製品を販売することを認めてはな
らない。
2 . 締約国は、新規の農業用の化学品の販売承認を与える条件として、他の国又は地域の領域における当該化学
品の先行する販売承認についての証拠の提出を認める場合には、当該締約国の領域における当該新規の農業用の
化学品の販売承認の日から少なくとも十年間、当該先行する販売承認を裏付ける当該化学品の安全性及び有効性
に関する開示されていない試験データその他のデータを以前に提出した者の承諾を得ないで、第三者が当該開示さ
れていない試験データその他のデータに基づき又は当該他の国若しくは地域の領域における当該先行する販売承認
の他の証拠に基づき同一又は類似の製品を販売することを認めてはならない。
3. この条の規定の適用上、新規の農業用の化学品は、締約国の領域において農業用の化学品に用いることにつ
いて、以前に承認されていない化学物質を含む(・・注・・省略)ものとする。
※ いわゆるデータ保護期間の農薬版。医薬用の化学品の五十条に相当。
※ 「第B款 農業用の化学品に関する措置」に含まれるのは四十七条のみ。
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四十八条 不合理な短縮についての特許期間の調整
第C款 医薬品に関する措置
四十八条 不合理な短縮についての特許期間の調整
1. 各締約国は、不合理又は不必要な遅延を回避することを目的として、効率的かつ適時に医薬品の
販売承認の申請を処理するため最善の努力を払う。
2. 各締約国は、特許の対象となっている医薬品(・・注・・省略)については、販売承認の手続の結果
として生じた有効な特許期間の不合理な短縮について特許権者に補償するため特許期間の調整(・・
注・・省略)を利用可能なものとする(・・注・・省略)。
3. ・・・・省略・・・・・・・・・・
4. ・・・・省略・・・・・・・・・・
※ 医薬品又は医薬品の物質に関して適用。
※ この条の規定が締約国について効力を生ずる日の後に当該締約国に提出される全ての販売承認
の申請について適用。ペルーに関しては四十六条(特許期間の調整)と同様の特例適用あり。
※ マレーシア、メキシコには4年6月、ベトナムには5年の経過期間が認められている。
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四十八条 不合理な短縮についての特許期間の調整
〔許認可に関わる医薬品の特許期間延長制度の整備状況〕
(1) 制度あり
ブルネイ、シンガポール、日本、オーストラリア、米国、チリ
※ チリ(上限規定されておらず)以外は最長5年の特許期間延長が可能。
(2)制度なし
マレーシア、ベトナム、ニュージーランド、メキシコ、カナダ、ペルー
※ カナダは対EU、ペルーは対米国のFTA締結を契機に、制度導入の準備中
(TPPの交渉開始当初は、カナダの反対が懸念されていた)
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四十八条 不合理な短縮についての特許期間の調整
四十八条導入の影響
1.日本国内では影響がない(特許法改正の予定もない)。
2.制度を導入済の他国の国内でも影響はないか軽微と想定。
3.制度を未導入の国内では大きな影響があると想定。創薬メーカ
ーの多い先進国にとり、制度を未導入の新興国におけるビジネスチ
ャンスが広がるだろう。
4.将来的に5年を超える侵食期間の補填も義務付けられないかと
いう点は、懸念事項。 ※ 日本は四十六条対応でその道を開きつつある?
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五十条 開示されていない試験データその他のデータの保護
五十条 開示されていない試験データその他のデータの保護
1(a).締約国は、新規の医薬品の販売承認を与える条件として、当該医薬品の安全性及び有効性に
関する開示されていない試験データその他のデータの提出を要求する場合には(・・注・・省略)、当該
締約国の領域における当該新規の医薬品の販売承認の日から少なくとも五年間(・・注・・省略)、以前
にそのような情報を提出した者の承諾を得ないで、第三者が次のいずれかの情報に基づき同一又は
類似の(・・注・・省略)製品を販売することを認めてはならない。
(i)当該そのような情報
(ii)当該そのような情報を提出した者に与えられた販売承認
※ 「新規の医薬品」=五十条1の規定の適用上、「新規の医薬品」とは、締約国において以前に承認された化学物質を含まない(※「利
用しない」と解釈可)医薬品をいう。
※ この条又は次条(生物製剤)に規定する医薬品の安全性か有効性かの少なくとも一方のデータの提出を要求する場合は、この条項
の適用対象。
※ TPP締約国は、この規定に基づく保護の期間を五年に、次条(生物製剤)1(a)の規定に基づく保護の期間を八年に限定することがで
きる。
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五十条 開示されていない試験データその他のデータの保護
五十条 開示されていない試験データその他のデータの保護
1(b).締約国が、新規の医薬品の販売承認を与える条件として、他の国又は地域の領域における当該
医薬品の先行する販売承認についての証拠の提出を認める場合には、当該締約国の領域における当
該新規の医薬品の販売承認の日から少なくとも五年間、当該医薬品の安全性及び有効性に関する開
示されていない試験データその他のデータに係る情報を以前に提出した者の承諾を得ないで、第三者
が当該他の国又は地域の領域における先行する販売承認に関する証拠に基づき同一又は類似の製
品を販売することを認めてはならない(・・注・・省略)。
※ 「新規の医薬品」=五十条1の規定の適用上、「新規の医薬品」とは、締約国において以前に承認された化学物質を含まない(※「利
用しない」と解釈可)医薬品をいう。
※ この条又は次条(生物製剤)に規定する医薬品の安全性か有効性かの少なくとも一方のデータの提出を要求する場合は、この条項
の適用対象。
※ TPP締約国は、この規定に基づく保護の期間を五年に、次条(生物製剤)1(a)の規定に基づく保護の期間を八年に限定することがで
きる。
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五十条 開示されていない試験データその他のデータの保護
五十条 開示されていない試験データその他のデータの保護
2. 各締約国は、次のいずれかのことを行う(・・注・・省略)。
(a)以前に承認された医薬品の新規の効能、新規の製剤又は新規の投与の方法を対象とする販売承
認の裏付けとして要求され、提出される新規の臨床上の情報について、1の規定を少なくとも三年間準
用すること。
(b)当該各締約国において以前に承認されていない化学物質を含む(注1)新規の医薬品について、1
の規定を少なくとも五年間準用すること(注2)。
(注1) 締約国は、この条の規定の適用上、「含む」とは利用することを意味するものとして扱うことがで
きる。
(注2) 締約国は、この(b)の規定の適用上、以前に承認されていない化学物質に係る安全性及び有効
性に関する開示されていない試験データその他のデータのみを保護することを選択することができる。
※ 1の規定に基づき少なくとも八年の保護の期間を提供する締約国は、この2の規定を適用すること
を要求されない。
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五十条 開示されていない試験データその他のデータの保護
五十条 開示されていない試験データその他のデータの保護
3.締約国は、1及び2の規定並びに次条(生物製剤)の規定にかかわらず、次のいずれかのものに従
い、公衆の健康を保護するための措置をとることができる。
(a) 貿易関連知的所有権協定及び公衆の健康に関する宣言
(b) 貿易関連知的所有権協定及び公衆の健康に関する宣言を実施するために世界貿易機関設立協
定に従ってWTOの加盟国により与えられる貿易関連知的所有権協定の規定の免除であって、締約国
間で効力を有するもの
(c) 貿易関連知的所有権協定及び公衆の健康に関する宣言を実施するための貿易関連知的所有権
協定の改正であって、締約国について効力を有するもの
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五十一条 生物製剤
五十一条 生物製剤
1. 締約国は、新規の生物製剤の保護に関し、次のいずれかのことを行う。
(a)締約国における生物製剤であり、又は生物製剤を含む新規の医薬品(注1、注2)の最初の販売承認に関し、当該
締約国における当該医薬品の最初の販売承認の日から少なくとも八年間、前条(開示されていない試験データその
他のデータの保護)1及び3の規定を準用して実施することによる効果的な市場の保護について定めること。
(注1)締約国は、次の事項についてこの(a)に定める保護を適用することを要求されない。
(a)当該医薬品の二回目以降の販売承認
(b)以前に承認された生物製剤である医薬品又は当該生物製剤を含む医薬品
(注2)各締約国は、申請者が、この協定が当該各締約国について効力を生ずる日から五年以内に、前条(開示され
ていない試験データその他のデータの保護)1(a)及び(b)に規定する手続に基づき生物製剤であり、又は生物製剤を
含む医薬品の承認を要請することができることを定めることができる。ただし、同じ区分の製品である他の医薬品が当
該手続に基づきこの協定が当該各締約国について効力を生ずる日の前に当該各締約国により承認されていることを
条件とする。
(b)締約国における生物製剤であり、又は生物製剤を含む新規の医薬品の最初の販売承認に関し、市場において同
等の効果をもたらすために次のことを行うことによる効果的な市場の保護について定めること。
(i)当該締約国における当該医薬品の最初の販売承認の日から少なくとも五年間、前条(開示されていない試験データ
その他のデータの保護)1及び3の規定を準用して実施すること。
(ii)他の措置をとること。
(iii)市場の環境も効果的な市場の保護に寄与することを認めること。
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五十一条 生物製剤
五十一条 生物製剤
2.この節の規定の適用上、各締約国は、少なくとも、バイオテクノロジーの工程を使用して生産されるたんぱく質であ
る製品又は当該たんぱく質を含む製品(病気又は異常の予防、治療又は治癒のために人間に使用されるもの)につ
いてこの条の規定を適用する。
3.締約国は、生物製剤であり、又は生物製剤を含む新規の医薬品の国際的な及び国内の規制が形成段階にあるこ
と並びに市場の環境が長期的にみて変遷し得ることを認識しつつ、生物製剤であり、又は生物製剤を含む新規の医
薬品の開発のために効果的な奨励措置を提供すること、後続的生物製剤の適時の利用可能性を促進すること及び
生物製剤であり、又は生物製剤を含む新規の医薬品の追加の区分の承認に関する国際的な発展に2に定める適用
範囲が引き続き適合することを確保することを目的として、1に定める排他的な期間及び2に定める適用範囲を見直
すため、この協定の効力発生の日から十年後に又は委員会による決定に従って協議する。
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五十条、五十一条(データ保護期間)
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五十条、五十一条(データ保護期間)
五十条・五十一条 加盟国で保護が求められる期間
(※ パテント2016 Vol. 69, No.3 pp66-73 「環太平洋経済連携協定(TPP協定)における医薬知財
保護
桝田祥子 先生」)
※ 50条(新薬データの保護)に関し、ブルネイには4年、メキシコ、ペルーには5年、ベトナムには10年の経過期間が認められている。
※ 51条(生物製剤データの保護)に関し、ブルネイには4年、マレーシア、メキシコには5年、ペルー、ベトナムには10年の経過期間が
認められている。
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五十一条 生物製剤
五十・五十一条導入の影響
<日本政府の見解>
生物製剤のデータ保護(五十一条)を含め、現行の国内関連制度の範囲内。
より具体的には、データ保護という制度自体は無いものの、新薬についての再審査期間が実施的な
データ保護の制度として機能。
世界でも新薬の開発能力のある国は限られており、我が国はそのうちの一つである。TPP協定の規
定によって、我が国の製薬会社の利益が確保されるとともに、TPP協定締約国の市場への早期の進
出が可能になることが期待される。
なお、TPP協定の医薬品関連の規定は、我が国の関連制度の範囲内の規定となっているため、我が
国において、現状と比較してジェネリック医薬品の製造・販売を阻害することはない。
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五十一条 生物製剤
五十・五十一条導入の影響
バイオ医薬品のデータ保護期間に関する米国要求(12年)は合意されず。
・日本国内 ⇒ 影響がない。
・米国、オーストラリア、カナダ国内 ⇒ 影響がないか軽微であろう。
※ バイオ医薬品に関して8年またはそれ以上のデータ保護期間が設けられている。
・上記以外の加盟国国内 ⇒ 特にバイオ医薬品に関して大きな影響が想定される。
※ 多くは最大5年のデータ保護期間である。
但し、五十一条は、「一定要件下、少なくとも5年のデータ保護期間を設ける」ことも許容する玉虫色
の規定。「5年のデータ保護期間」という現状が維持されたと見る加盟国もあり、当面の影響は軽微か
もしれない(法改正を要すると判断し経過期間を要求したのはブルネイ、マレーシア、メキシコ、ペルー
、ベトナムのみ)。先陣を切るだろうオーストラリアの対応が注目される。
将来的には、創薬メーカーの多い先進国にとりビジネスチャンスが広がるだろう。
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五十三条 特定の医薬品の販売に関する措置
五十三条 特定の医薬品の販売に関する措置
1. 締約国は、医薬品の販売を承認する条件として、安全性及び有効性に関する情報を最初に提出した者以外の者が、以前に承認さ
れた製品の安全性又は有効性に関する証拠又は情報(例えば、先行する販売承認であって、当該締約国によるもの又は他の国若しくは
地域の領域におけるもの)に依拠することを認める場合には、次のものを定める。
(a)当該最初に提出した者以外の者が当該承認された製品又はその承認された使用の方法が請求の範囲に記載されている適用される
特許の期間中に当該医薬品を販売しようとしていることについて、当該医薬品が販売される前に、特許権者(注)に通知し、又は特許権
者が通知を受けられるようにする制度
(注)この条の規定の適用上、締約国は、「特許権者」に特許の実施許諾を得た者又は正当に販売承認を与えられた者を含むことを定
めることができる。
(b)特許権者が、侵害しているとされる製品の販売(注)前に、(c)に規定する利用可能な救済手段を求めるための十分な期間及び機会
(注)この(b)の規定の適用上、締約国は、「販売」を、締約国が運用し、かつ、附属書二十六A(医薬品及び医療機器に関する透明性及
び手続の公平な実施)の付録に記載する国の保健医療制度に基づく償還のために医薬品が一覧に掲載された時に開始するものとして
扱うことができる。
(c)承認された医薬品又はその承認された使用の方法が請求の範囲に記載されている適用される特許の有効性又は侵害に関する紛争
を適時に解決するための手続(司法上又は行政上の手続等)及び迅速な救済措置(予備的差止命令又はこれと同等の効果的な暫定措
置等)
2. 締約国は、1の規定の実施に代えて、特許権者若しくは販売承認の申請者により販売承認を行う当局に提出された特許に関連す
る情報に基づき又は販売承認を行う当局と特許官庁との間の直接の調整に基づき、当該特許権者の承諾又は黙認を得ない限り、請求
の範囲に記載されている特許の対象である医薬品を販売しようとする第三者に販売承認を与えない司法上の手続以外の制度を採用し、
又は維持する。
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五十三条 特定の医薬品の販売に関する措置
五十三条導入の影響
<日本政府の見解>
現行の国内関連制度の範囲内。
より具体的には、審査当局は、先発医薬品に含まれている成分に特許が存在することにより後発医
薬品が製造できない場合は、後発医薬品を承認しないこととしている。
世界でも新薬の開発能力のある国は限られており、我が国はそのうちの一つである。TPP協定の規
定によって、我が国の製薬会社の利益が確保されるとともに、TPP協定締約国の市場への早期の進
出が可能になることが期待される。
なお、TPP協定の医薬品関連の規定は、我が国の関連制度の範囲内の規定となっているため、我が
国において、現状と比較してジェネリック医薬品の製造・販売を阻害することはない。
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五十三条 特定の医薬品の販売に関する措置
五十三条導入の影響
(※ パテント2016 Vol. 69, No.3 pp66-73 「環太平洋経済連携協定(TPP協定)における医薬知財
保護
桝田祥子 先生」)
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五十三条 特定の医薬品の販売に関する措置
五十三条導入の影響
米国内でのパテントリンケージより緩和な条件での合意と言える。
・日本国内 ⇒ 影響がないか軽微であろう。ただし、「先発医薬品に含まれてい
る成分以外に特許が存在する場合」はどうするのかという点にやや疑問。
・他の制度導入済の加盟国(米国、カナダ、オーストラリア、シンガポール等)国
内
⇒ 影響がないか軽微であろう。
・上記以外の加盟国国内 ⇒ ジェネリック医薬品に関して大きな影響が想定さ
れる。
※ ブルネイには2年、マレーシアには4.5年の経過期間が与えられている。
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【第4部】 TPP協定の発効により想定される事
目次
1章:前提
2章:特許関連
3章:商標
4章:著作権
76
1章:前提
TPPの締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の整備が進
んでいる
→参考資料として、「環太平洋パートナーシップ協定の締結に
伴う関係法律の整備に関する法律案の概要」(平成28年3月
内閣官房)
※従来問題視されていた点につき解消されているか、TPP
協定の内容が十分に反映されているか、という観点
77
2章-1:特許(国内法改正予定あり)
• 1.新規性喪失の例外規定(TPP18章38条)
• 2.特許権の存続期間の延長規定(TPP18章46条)
78
<日本政府の見解>
TPP域内における制度調和を進め、知的財産権の保護と利用
のレベルが必ずしも高いとは言えないTPP域内の新興国におい
て、多様な発明についての特許権の取得と適切な権利期間を確
保する制度が整備されることにより、我が国企業等の産業財産
権の保護と利用が促進され、さらなる海外事業展開が促進され
る。
79
政府見解は極めてポジティブ。だが、国内法改正を伴う以上、
日本国内への影響について、政府見解と異なる見方も考えて
おくべきでは
1.新規性喪失の例外規定
■ 出願されるか否かの不確定期間(発明がパブリックドメインになるまで
の期間)が長期化。
2.特許権の存続期間の延長規定
■ 延長登録(特許期間調整)の無効性を巡る争いの発生
■ 円滑な審査を妨げるような出願・権利化戦略の横行
■ 5年を超える特許期間延長に道筋をつける点も軽視すべきでない
80
日本国内に限定されない影響について、政府見解と異なる
見方
1.新規性喪失の例外規定
① 日本の医薬品企業に有利に働くケースは稀だろう。
※ 例外規定を利用しない実務がスタンダードなため。
2.特許権の存続期間の延長規定
① 少なくとも特許付与時まで、権利期間が確定しない。
② 審査迅速化のプレッシャー ⇒ 審査品質が落ちる可能性。
③ 審査体制が不十分な国では、他国の審査に依存する傾向がより
強まるだろう。他国として日本が選択されれば、日本企業には有利だが
・・・・・特許庁ほかの努力次第か。
81
2章-2:特許(国内法改正予定なし)
• 1.不合理な短縮についての特許期間の調整
(TPP18章48条)
• 2.データの保護(TPP18章50条・51条)
82
<日本政府の見解>
・ 広い範囲の技術に対して、有効な権利期間を有する特許権を取得すること
が可能となり、我が国企業等のTPP域内への進出を促進することが期待され
る。
・ 生物製剤のデータ保護を含め、現行の国内関連制度の範囲内。すなわち、
日本国内への影響は無い。
・ 世界でも新薬の開発能力のある国は限られており、我が国はそのうちの一
つである。TPP協定の規定によって、我が国の製薬会社の利益が確保される
とともに、TPP協定締約国の市場への早期の進出が可能になることが期待さ
れる。
なお、TPP協定の医薬品関連の規定は、我が国の関連制度の範囲内の規
定となっているため、我が国において、現状と比較してジェネリック医薬品の製
造・販売を阻害することはない。
83
政府見解と異なる見方
1.不合理な短縮についての特許期間の調整(TPP48条)
① 将来的に、5年を超える侵食期間の補填も義務付けられないか
※ もう一つの特許期間の調整規定(TPP46条)によりその道は開かれた?
※ 交渉中のRCEP(東アジア地域包括的経済連携)でも、
許認可による少なくとも5年の侵食期間の調整を主張する動きが一部にあるようだ。
2.データの保護(TPP50条・51条)
① バイオ医薬品のデータ保護期間8年以上はインパクトがある。しかし、五
十一条は玉虫色の規定ゆえに、TPP協定が発効しても、当面、各国の事情は
変わらない可能性も相当にある。
② バイオ医薬品のデータ保護期間は、TPP協定が発効して十年後に見直す。
8年を超える保護期間が義務付けられる可能性もある。
84
2章(特許) まとめ
(1)日本国内
上述の通り、国内特許法改正を伴う二点に関し、医薬品業界を含めた
全産業界に影響がないとは考えにくい。
(2)全加盟国
加盟各国の運用は当面バラつき、10年程をかけて特定の先進国の
運用にハーモナイズしていくのではないか?
加盟各国での国内法改正や運用を注意深く情報収集し、ハーモナイ
ズの大きな流れをつかむ必要があるだろう。
※ 加盟国は、いわゆる先進国から新興国まで多様。
※ TPPの各条項は解釈の余地あり。
※ 多くの条項で複数国に経過期間が設けられている。
85
3章:商標
• 1.商標権の取得の円滑化
• 2.商標の不正使用に対する法定損害
賠償制度の制定
86
1.商標権の取得の円滑化
• 国際的な商標の一括出願を規定した標章の国際登録
を定めるマドリッド協定議定書(マレーシア、カナダ、ペ
ルー等が未締結)又は商標出願手続の国際的な制度
調和と簡略化を図るためのシンガポール商標法条約(
マレーシア、カナダ、ペルー、メキシコ等が未締結)の
締結を義務付け
→商標の国際登録出願の利用により、TPP加盟国
での商標権取得を円滑化する
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2.商標の不正使用に対する法定損害賠償制度の制定
(1)改正案
• 具体的には、商標の不正使用*1による損害の賠償を請求する場合において、当該登
録商標の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を損害額として請求できる
規定を追加する。
*1:商標の不正使用とは、登録商標と同一の商標のみならず、登録商標と社会通念上
同一の商標の使用による侵害を指す
〔具体例〕
「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の概要」
(平成28年3月 内閣官房)より抜粋
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2.商標の不正使用に対する法定損害賠償制度の制定
(1)改正案
商標法38条1項
侵害品の数量×正規品の利益額
商標法38条2項
侵害者が受けた利益
商標法38条3項
商標の使用料相当額
改正案
•
当該登録商標の取得及び維持に通常要する費用に相当する額
※追加的な損害賠償(懲罰的賠償)については、採用しなかった(著作権分
野も同じ)
→わが国の民法上、損害賠償に懲罰的意味合いを持たせることは想定され
ていない
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2.商標の不正使用に対する法定損害賠償制度の制定
(2)期待される効果
• 権利者が容易に損害賠償請求権を行使できるようにすることに
より、TPP協定域内の新興国において、我が国企業等のより効
果的かつ効率的な侵害対策を可能とし、更なる海外事業展開
が促進されることが期待される。
※「登録商標の取得及び維持に通常要する費用に相当する
額」が実際に生じた損害との関係で十分でない場合は、従来
どおりの規定に基づき、損害賠償請求する必要がある。
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4章:著作権
• 1.非親告罪化
• 2.保護期間の長期化
• 3.法定損害賠償
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1.非親告罪化について
(1)改正案
•著作権法改正法案では、非親告罪として扱うものを下記のように限定するとしている。
①財産上の利益を得る目的又は権利者の利益を害する目的があること
②有償著作物等(有償で公衆に提供・提示される著作物、実演等)を原作の
まま公衆へ譲渡又は公衆送信すること
③権利者の利益が不当に害されること
※有償著作物等に限定するというのは、違法ダウンロード厳罰化の時と同じ
※海賊版の販売やネット配信が非親告罪となる行為の例として挙げられている反面、同人誌の
コミケでの販売やパロディのブログへの投稿は、従来どおり親告罪とされている(「環太平洋パー
トナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の概要」(平成28年3月 内閣
官房)参照)。
→世界的に問題とされている海賊版に対する規制を強めようという内容になっている。
→危惧されていた二次創作への萎縮的効果については、②要件(特に「原作のまま」)により、
少なくなることが予想される。
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2.保護期間の長期化について
(1)はじめに
• 現在、我が国の著作権の保護期間は原則として、著作者の死後50年とされ
ているが、下記の例外が設けられている(著作権法51条以下)。
原則
現行法
公表後50年
改正後
公表後70年
無名又は変名の著作物*2
公表後50年
公表後70年
団体名義での著作物
公表後50年
公表後70年
映画の著作物
公表後70年
公表後70年(変更なし)
実演
レコード
実演が行われた後50年
レコードの発行後50年
実演が行われた後70年
レコードの発行後70年
*2:「無名又は変名」とは、著作者名が明らかにされていない場合や
いわゆるペンネームが用いられている場合等を指す
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2.保護期間の長期化について
(2)問題点
①これまで50年分で済んでいた著作物使用料が20年分上乗せされる
→我が国の著作物使用料の国際収支は大幅な赤字とされているが、この赤字幅が増大する。
↓ただし、
→海外でも評価の高い日本のアニメなどの著作物使用料についてもTPP加盟国に対しては、70年分使用料
が徴収できる
②著作権の保護期間が切れて自由利用が可能となっている作品(パブリックドメイン)が、保護期間の延長により
自由利用が認められなくなるのではないか
→TPP条項案には「著作権が期間満了で消滅後に、権利が復活することはない」というベルヌ条約の規定の遵守
条項が入るとのことで、この点は問題ないと考えられる
③いわゆる孤児著作物の問題
→権利者と利用許諾のための連絡が取りたくても、なかなか連絡が取れない状態が70年続くということでその利
用の促進のために裁定制度の利用(著作権法67条以下)やその手続の簡素化が期待される。
※裁定制度の要件緩和
「相当な努力を払っても権利者と連絡することが出来ない場合」(67条1項)=政令で具体例が定められていたが、
これが緩和される見通し
→文化庁ウェブサイトのデータベースの閲覧や照会の利用が認められることに
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3.法定損害賠償について
•
侵害された著作権等が著作権等管理事業者により管理されている場合は、著作権者等は、当該著作権等管
理事業者の使用料規程により算出した額(複数ある場合は最も高い額)を損害額として賠償を請求すること
ができる。
著作権法114条1項
侵害品の数量×正規品の利益額
著作権法114条2項
侵害者が受けた利益
著作権法114条3項
著作物の使用料相当額
改正案
著作権等管理事業者の使用料規程により算出した額*3
*3:具体例(「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の概要」
(平成28年3月 内閣官房)より抜粋)
カラオケ施設が、使用料規程において1曲1回あたり120円が使用料とされている演奏を無断で1日30曲、
1,000営業日行った場合
→120円/回×30回/日×1,000日=360万円を請求可
※「著作権等管理事業者の使用料規程により算出した額」が実際に生じた損害との関係で十分でない場合
は、従来どおりの規定に基づき、損害賠償請求する必要がある。
→個人が著作権侵害を主張する場合の問題が残る
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ご清聴ありがとうございました
特許業務法人HARAKENZO WORLD
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(弁理士 中尾 守男)
代表℡: 03-3433-5810
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