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Bulletin6月号PDFファイル
平成3年4月16日第三種郵便物認可 平成20年6月15日発行(隔月15日発行)第23巻 第2号 通巻209号
Bulletin 209
2008 年 6 月号
COLONNADE
ESDに答える「ものづくり」、「人づくり」
上越教育大学非常勤講師 古澤
良彰氏
2
克人 氏
4
紀美子 氏
6
子どもの頃の遊びの地図にちいきの歴史が描かれる
武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科教授 及部
次世代に継ぐ住まい・まちと学び
東京学芸大学名誉教授/東海大学大学院特任教授 小澤
高校生が耐震診断
日本大学理工学部非常勤講師/市川工業高校ボランティア講師 八島
信良 氏
8
最近の小・中・高における家庭科教育事情 ―― 家庭教育参考資料
9
FORUM
多様な活動、フラットな関係、共働のありかた:みかんぐみ
次期の会長と執行部体制に期待すること
10
日建設計 小倉
新入会員抱負を語る
善明 12
秋田 謙二 13
2007年度新入会員
13
建築仕上塗材における環境対応の動向
エスケー化研 久保
宏二 14
保存問題新潟大会が初の市共催で開催
武蔵設計 武蔵
靖之 15
城南地域会
設立からの1年を振り返ってみて
建築家と法律の衝突と止揚
研建築設計事務所 林田
PAX建築計画事務所 鈴木
法政大学法学部教授 五十嵐
研 16
和貴 17
敬喜 氏 18
BACKYARD
声:雑感
研建築設計事務所 林田
研 19
Bulletin 207号 Annual Report「地域会活動報告」補遺
JIA山梨クラブ/JIA新宿地域会
19
支部ダイジェスト ― 3/4月
20
お詫びと訂正
20
賛助会員の皆様へ
20
ハウステンボス、嬉野温泉、長崎市を訪ねて
アトリエSKY
編集後記
山田 孝一 21
21
社団法人 日本建築家協会
関東甲信越支部
The Japan Institute of Architects
東京都渋谷区神宮前2-3-18 JIA館[〒150-0001]
Tel: 03-3408-8291 Fax: 03-3408-8294
http://www.jia-kanto.org/members
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
特集
ESD に答える「ものづくり」、「人づくり」
上越教育大学
非常勤講師
―― 「建築と子供たち」ネットワーク教育活動をベースに
古澤 良彰 氏
ESDを支える地域教育力と建築家の役割
然やものに自ら働きかけ、プラン、実行(製作・栽培な
E S D (Education for Sustainable Development) は、
ど)、まとめ・プレゼンテーション・評価などの過程を
2002 年ヨハネスブルグ・サミットで日本が提唱し、同
通して感性や知的気づき、技術を育てる効果的な教育領
年第57 回国連総会採択、2005 年ESDの10 年がスタ
域・システムである。特に低学年児童のものづくり活動
ートした。この「持続可能な開発のための教育」は、今
は、右脳・左脳の調和的発達や、創造性の育成、働くこ
を生きる人類にとって必修課題であり、人が変わり、地
との喜びや他との共感性・貢献性などの育成に大きく役
域が変わり、未来を変える新たな学びあいが重要となる。
立つ。学校は、地域の教育力を有効に生かして、ものづ
その学びあいは、人であり、対象は地球環境(自然環境
くり・人づくりを進め、E S D の目指す地域づくりにつ
と人工環境)となる。また、この教育を進めるためには、
なげたいものである。そこで、地域において活動する建
学びを案内したり(インタープリター)、学びあい(シ
築家集団は、かけがえのないものづくり・環境学習応援
ェアリング)に導いたりするファシリテーターや、コー
隊であり、積極的に地域教育にかかわることを期待する。
ディネーターとしての人材が必要であり、その地域の教
育力が大きく関わってくる。
地域の教育には、家庭教育や社会教育があり、学校教
「建築と子供たち」教育プログラム
筆者は、国・公立小中学校教職、教育行政などを経験
し、現在は、環境 NPO、NGO、エコビジネス企業経営
育などがある。特に環境教育においては、すべての生活
の傍ら、産業教育・環境教育学会などに所属している。
者がそれぞれに生活場面において進められる必要性があ
1 9 9 0 年代の小学校経営時には、Architecture and
る。また、これらの教育は、地域の教育資源(ローカル
Children Learning by Design について地域の建築士、
リソース)をより有効に活用することにより、確かな、
大学および日米ネットワークスタッフと連携し、組織的
生きて働く学力を育てることができる。この地域の教育
に取り組んだ経験がある。
資源には、地域の自然があり、街や施設があり、人材が
ある。
「建築と子供たち」は、 19 世紀末次世代の教育を志向
し、建築学の機能を生かしたアメリカの「 Architecture
学校教育においても、教育計画は学校にあってもそれ
and Children」の教育理論と方法である。(ニューメキ
がより効果的に進められるためには、ローカルリソース
シコ州立大学建築・都市計画部・同環境教育研究所長ア
の有効な活用が欠かせない。そこで、学校や地域におけ
ン・テーラー博士、アメリカ建築財団常任理事・建築教
る環境教育やものづくり教育についてみると、その地域
育担当、フロリダ州教育委員会・環境教育長・学校教育
の建築家は、実に優れた人材であり教育支援者である。
建築学は、自然環境や人工環境をベースに、地域の生活、
文化、科学技術や材料工学、さらに芸術領域も含めて、
総合的な教育機能を持つ。この建築学のグローバルに、
あるいはローカルに一般化できる機能と、より具体的な
ものづくり技術が、調和の取れた教育プランと合体する
ことにより、地域における強力な E S D の推進力となり
うる。
教育は人づくりであり、中でもものづくり学習は、自
2
Bulletin 2008 年 6 月号
小学校4年生の街づくり模型(グループで作った模型の集合)
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
特集
プログラム開発担当アラン・サンドラー博士らが中心と
課外活動を試みた。また、一般市民のための親子学習と
なって開発した当時斬新な教育プログラムであり、これ
して、タウンウォッチングや、ものづくり学習講座、環
からの教育にも大きく役立つものと考えている。)
境学習応援隊による学校・子ども会など出前講座などを
2 0 世紀末、急激に変化し始めた地球環境問題、それ
に対応して、学校教育にも環境教育の必要性が生じてき
継続実施している。
上越市立大和小学校4年生が課外特設学習として過去
た。また、人類の築いてきた文化は、全人類の宝であり、
に取り組んだプログラムの事例の一部を紹介するが、そ
自然保全や快適環境の街づくりや建造物保全も人類共通
の目的は「子供たちの美的感性や実践的な問題解決能力、
の課題である。当時アメリカでは、いろいろな分野の専
創造性の育成、健康的で住みよい生活環境づくりの基礎
門家がボランティアとして学校教育に協力する体制が整
を養う」などである。
いつつあった。建築家も例外ではなく学校や校外学習に
主な内容としては、①スキーマティック・ドローイン
多く活躍していた。その発展として、アメリカの建築家
グの練習 ②描画の基本と基礎練習(精密描写、略画、
協会では、子供たちの個性的で創造的な学力を伸ばす総
イメージ表現など)③ビニールハウスの設計と組み立て、
合学習の方法論を追及し、建築の持つ科学と芸術の総合
その活用(トマト、メロン栽培)④見取り図、平面図
性を生かし、さらに環境教育の観点から内容を見直して、
⑤条件や、自分の思いの図形を求める ⑥構想と表現
“Learning by Design”のカリキュラムを開発し、
⑦小鳥の巣箱の設計制作など。学習の結果としては、対
“Architecture and Children”としてアウトプットした
象は4年生であったが、この時期は、空間感覚発達の目
ものである。
覚しいときであり、期待以上の成長が見られた。これは、
1992 年シアトル・ワシントン大学、東京都、仙台市、
新潟市において「建築と子供たち」日米セミナーを開催、
文部科学省が、現在教育課程「ものづくり科」開発研究
校の推進に繋がるものと考えられる。
1993 年6月ニューメキシコ大学「建築と子供たち」国
「建築と子供たち」ネットワーク上越の現在は、イベ
際サミット、7月日本、 1 9 9 3 年シアトルと継続して研
ント的に新聞紙ドームの作成、折り紙建築実習、おもち
修し、日本においても共立女子大学助教授・日本建築学
ゃ箱アート・ダンボールアート、針金アートなどの体験
会教育委員稲葉武司氏が中心となり広がりを見せた。し
講座、親と子の町並みや環境ウォッチングなど、また、
かし、会員の高齢化」などもあり、仙台市の活発な活動
他の NPO 活動「エネルギー環境教育出前講座」と組み
や新潟市以外はやや弱体化が心配されている。
ながら活動を続けている。例としては、断熱材や、遮熱
上越市においては、筆者が中心となり、1993 ∼ 1996
年の間、小学4年生対象に週1校時の特設授業を開設し
たり、各学年の総合学習に取り入れたりして、いま「学
校からの環境教育I、II」にまとめ、発表会も開催された。
「建築と子供たち」実践例とその後
露対策など学習課題は多い。
現在は、企業とともに専門家も社会的価値と責任にお
いて自発的に地域づくりや、社会教育・学校教育にかか
わり貢献すべき時代であると考える。〈環境省登録環境カウンセ
アメリカのプランを自校化し継続的な授業や総合学習、
ものづくり支援活動
材の効果、エコハウスの工夫、省エネの光源や換気、結
ラー/上越教育大学非常勤講師/「建築と子供たち」ネットワーク上越代表〉
ビニールハウスの組み立て構造と強さを考えながら
ビニールハウスの組み立てと栽培したメロン
Bulletin 2008 年 6 月号
3
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
特集
子どもの頃の遊びの地図に
ちいきの歴史が描かれる
武蔵野美術大学
視覚伝達
デザイン学科教授
及部 克人 氏
■僕は、課題「子どものための大型段ボール遊具をつく
がゴムの樹液を採集する農民を機銃掃射していたり、日
る」の導入として「子どものための遊びの地図」をイラ
本の旅客機が描かれ、いまなお経済的な収奪を継続して
ストレーションボードに自由に描くことを求める。個人
いる姿を描いたり、漁網で根こそぎ魚を捕っていく日本
的な記憶の中にしまわれていた遊びのシーンが地形や家
の漁船や、大仏や高層化した都市やヨットで遊ぶ日本の
並や路地に描かれる。たとえば、雪や関東ローム層や河
若者の姿が描かれた。
川の土手の草の斜面における滑るという行為が紹介され、
そこに共通する斜面をテーマにした遊具がデザインされ
る。なにげない仕草を誘い出す環境のありかたについて
あらためて気づかされるのだ。グループでの討議をビジ
ュアルな絵をてがかりにいきいきとした対話を誘い出す
のだ。学生は、子どもたちと一緒に遊ぶようにふるまう
ことができるのだ。
■ 1983 年、世田谷で開催されたアジア民衆演劇会議に
おいてフィリピンの PETA という演劇グループを招い
「アジア民衆演劇会議」
遊びの地図の周囲に描かれた日本の爆撃機と旅客機 1983
て演劇ワークショップを用い、相互の理解を求める対話
僕は、日の丸の国旗を仮面としてかぶり、爆撃機にの
の手法を学びあう機会があった。若い演出家とその準備
って農民たちを銃撃した。次に統治者として上陸すると
をしている時、グループによる遊具のデザインは遊びの
住民が果物を差し出す。ありがとうとそれを受け取り、
地図をてがかりに交流を深めるのだと言う僕の話を聞い
歩き出そうとすると背面からばっさりとゲリラに襲われ
て「その地図こそ、即興劇を生みだすシナリオと同じ機
る。次に、仏像に扮した女性があぐらを組んで座禅を組
能を果たすのだね」と関心をしめし、日本側から提案す
んでいる。それを拝む民衆達。そこへカメラを首から吊
る手法のひとつとして、僕が分科会の演劇ワークショッ
った日本人役の僕が、仏像に近付き、腕をとって連れ出
プのファシリテータ−をになうことになった。
そうとすると住民が数珠つなぎとなって引っ張り、舞台
僕が参加した班のメンバーは、5人ほどのインドやタ
をふた周りしてフリーズし終了するという即興劇を演じ
イやフィリッピンから参加したソーシャルワーカーや舞
た。子どもの頃の遊びの地図は文字どおり子どもの世界
台装置家や演劇ワークショップのファシリテーターなど
だ。しかし、アジアを爆撃し植民地化しようとしたり、
だった。A3 の大きさの画用紙にクレパスで子どもの頃
市場として利用しようとする現在の日本のありようを文
の自宅から学校までの通学路とその周辺の遊びを描き、
字どおり体験した。大人が描く子どもの頃の遊びの経験
たがいに紹介しあった。通学途中で河を水牛にのって渡
は、現在の子どもと大人のありようを映し出す。
り学校にゆくなどいかにもアジアらしい風土の違いのな
かの体験の違いなどが語られた。次に、この地図を大き
な段ボールの上に貼り、空いたスペースにワンダーラン
ドを描くように求めた。それぞれの子どもの遊びの世界
を自由につなぐもうひとつの夢の世界が描かれることを
期待していたのだ。ところが、そこには、日本の爆撃機
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Bulletin 2008 年 6 月号
「爆撃機となって銃撃す
るシーン」1983
仮面をかぶって飛行の演技
をする筆者
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
特集
■このような大人のワークショップのなかに、子どもの
昭和のさまざまなエピソードが視覚化された。まちの
頃の経験と重ねあわせることによってストレートに多重
人々とのふれあいと笑顔こそがまちづくりの出発点であ
の矛盾しあう生活のありようが出現するのだ。僕は、大
ることが確かめられた。ドイツのミュンヘンでプレイバ
きな衝撃をうけた、相互の儀礼的な身振りによるふるま
ス、ミュージアムバスなどを用いて地域の活動をつづけ
いのなかからは決して学ぶことの不可能な内容の即興劇
ているヴォルフガング・ツァファリアスなども、通りが
のあり方こそ、デザインの教育のプロセスにこそ利用す
かりの年長の女性がお手玉をあやつってジャグラ−を教
ることが可能なのではないかと考えた。率直でストレー
えているさまを見て、「このような肩の力を抜いて親し
トな都市の現在を表現することが可能であり、そのワー
むことができる祭りはドイツでもなかなか実現しない
クショップがおこなわれる場と参加者の出会いのなかに
よ」と喜んでくれた。
多様な表現が可能なのではないかということである。
■こうした経験と並行して、大学では、国分寺市の並木
■僕は、1992 年には、「日本ドイツ美術館教育シンポジ
公民館を利用して活動している社会活動グループ「小さ
ウムと行動」と関連させて、世田谷の烏山川緑道の三宿
な夏休み実行委員会」が市内の小学生を 20 人前後集め
神社前で「大道芸術展―まちを子ども色に染めよう」を
て、美大生 20 人ほどと夏休みの 2日間、並木町と大学
開催した。ここでは三宿や三軒茶屋地域の男性5人と女
を結ぶ農地や玉川上水を利用したストーリーのなかに子
性1人を対象に複数の学生たちがそれぞれ囲んで子ども
どもたちを引き込んで演劇と造形を連動した活動をおこ
の頃の思い出をインタヴューしてヒアリングスケッチを
なっている。 2 0 0 7 年には「ピカドロン島の大冒険」、
おこなった。女性の1人は、「隣家のぐみの実をとって
2 0 0 6 年には「光の王子と暗闇大魔王」、2 0 0 5 年には
妹分にわけたり、プールでおぼれて恐かったこと」や、
「むしゃんび国、妖怪百鬼夜行」がおこなわれた。スタ
「北沢川沿いの水車で炭を粉にしてたどんをつくる人が
ートは 1 9 9 0 年。以来 1 8 年つづいているプロジェクト
真っ黒になっていた」思い出や、「多摩川でハゼを 100
である。
匹釣った」などの自慢話をスケッチし、それを見せなが
■学生と子ども、そして地域住民、それぞれの「創造的
ら報告しあう。参加した年長者は、その場の雰囲気を楽
な対話」から生み出される信頼とファンタジィを共有す
しみ、どんな絵ができあがるのか興味津々であった。次
る体験が重なってこそ、コミュニティの可能性をつくり
の日、地域のさまざまな場所を借りて、布絵が制作され
だす重要な作業なのだといえるだろう。地域と大学との
た。それぞれの場所に本人があらわれ、茶菓子をふるま
連携は、それぞれの組織の壁を越えて、横断的な仕組み
ったりして作品の仕上がりを期待して落ち着かない様子
をつくることが求められているのだ。真野のまちのよう
であった。これらの作品に加えて、雛祭りの雛壇に託し
にバケツリレーで火災からまちを守ることの信頼をつく
て4人の女性のエピソードを絵にしたものも緑道沿いフ
りだすことが必要とされるのだ。その中心に、子どもの
ェンスに展示され、子どもの描いた沢山の鯉のぼりとと
遊ぶ姿が必要となるのだ。
も観衆の前で披露された。
「大道芸術展」1992 地域年長者の子どもの頃の遊びの布絵
〈およべ・かつひと/武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科教授〉
「むしゃんび国、妖怪百鬼夜行」2005 妖怪と百鬼の記念写真
Bulletin 2008 年 6 月号
5
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
特集:教育事情
次世代に継ぐ住まい・まちと学び
東京学芸大学
名誉教授
東海大学大学院
特任教授
小澤 紀美子 氏
1. 衣食住から住食衣への転換を
改善していく力を育てる。④消費者としての判断力や意思決
生活の価値観はそれぞれの国の文化による違いが大きい。
定能力を育てる。
「食・住・衣・行」は中国であり、「住・食・衣」はヨーロッ
では住教育の魅力と住教育の領域をどのように考えていく
パ。日本は「衣・食・住」である。平成 18 年6月、「わが国
のがよいのであろうか。学校教育では教員は子どもの目が輝
の経済力にふさわしい豊かさを実感できる住生活の実現」の
く授業の展開を求めて、次のように努力をしている。①変化
ため、住生活基本法が制定された。住生活基本法を契機とし
しつづける社会のなかで、自ら課題を見つけ、自ら解決して
て日本人の住生活やそれを取り巻く住環境が魅力を増し、住
いく能力を育成し、児童・生徒の学ぶ喜びを高め、意欲を引
文化への価値醸成の波がさざ波から大きなうねりになってい
き出す授業を展開している。②「育てたい力」に応じた多様
くことを願い、住教育ガイドライン策定委員会が設置され、
な学習プログラム、多様な学習形態をとり、魅力的な授業を
まもなく公表される。筆者は座長としてとりまとめたので、
展開する。③住教育は子どもからお年寄りまでが世代を越え
本稿ではそのガイドラインについて紹介したい。
て、それぞれの立場から共に学ぶことができる。子ども(夢
誰もが「こんな家に住みたいな!」「こんな暮らしがしたい
見る人)―大人(夢を実現する人)―高齢者(生きることを
な!」「いろんな人と交流し、助けあって暮らしたいな!」と
味わう人)がそれぞれの魅力を生かし、協同的に学ぶことが
願い、住まいや暮らしの「かたち」を創ってきた。住教育と
できる。④目標探求型の新しい授業ができ、多元的なコミュ
は、住まいやまちで安全・安心に暮らしたいという思いや願
ニケーションが生まれ、価値創造、共生的で個性的な能力を
いを「かたち」にし、住生活や住環境をより豊かに魅力的に
育てることができる。
創るための教育である。そこで住教育ガイドラインでは学校
さらに内容的な側面からみると、①自分や家族の休養やく
教育に焦点を当てて、
「子どもたちにこんな力を育てたいな!」
つろぎの〈精神的・心理的側面〉、②家族や近隣の多様な人々
という先生の願いをかなえる住生活や住環境教育のヒントを
とかかわって、成長していく〈社会的側面〉、③安全で健康に
提示していくことにした。今を生き、未来に生きる児童・生
住むための、〈安全・保健的側面〉、④静かさ(音)や明るさ
徒の夢や希望を実現し、さまざまな人と交流し、多様な価値
(光・太陽)、空気、暖かさ・涼しさ、衛生などの健康に暮ら
観と出会い、創造的に自己の住生活の価値を醸成していくス
せる〈科学的側面〉
、⑤災害に安心して暮らせる〈安全の側面〉
キルや対応する力をつけるのが住教育であると考えたからで
など、多面的に組み合わせて、多様な学習プログラムで創造
ある。
的な授業が展開できるので、一教科の枠内に収まらない展開
2. 住教育の意義
が可能である。
学校教育現場では小・中・高等学校と系統的に展開されて
そこで住教育ガイドラインでは、具体的な領域を以下の4
いるのが「家庭科」であるが、住教育は、幼い頃からのごっ
領域で構成し、その授業の展開の2事例を示している。①人
こ遊びに始まり、小学校や中学校、高等学校のさまざまな教
科で学習できると考える。さらに成人・高齢者にも住改善に
必要な情報の理解、維持管理の仕方、地域やまちづくりへの
社会参加ができるスキルを育む生涯学習として重要な学びで
あり、そのためには以下の視点からの展開が求められる。
①人と人、人ともの、人とこと、人と空間など、さまざま
な関係性をデザインする力を育てる [図1]。②自分や家族の豊
かな住生活づくりや他者と共に働く力を付け、家族や地域社
会で協働できる力を育てる。③豊かな住生活を営む自律的・
自立的な力をつけ、さまざまな人と協同・交流し、住環境を
6
Bulletin 2008 年 6 月号
図1 「住」の関係性の広がり
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
特集:教育事情
と住まい:住まいの安全・安心、家族の語らいやくつろぎ・
ら普請道楽は旦那衆の特権であり、サロン文化も商人の住ま
団らんなど、住まいの機能や構造、生活との関係を学習する
いの中で花開いてきた。しかし戦前まで住宅の約7割は借家
〈授業展開事例―「語らう」「まもる」〉。②住まいの空間と構
であり、住宅の手入れは大家の仕事であり、一般大衆の住宅
成:人が住む器は人体寸法が基本で、それに動作空間が加わ
は民家園で保存もされてこなかったのではないか。
ること、部屋と部屋をつなぐ原理があること等、くらしに対
博物館による住環境教育も社会教育に入れていきたい。ア
応した住まいの空間や構成を学習する〈「はかる」「ひらく」〉。
メリカには子どもミュージアムが約 250 館あるといわれてい
③住まいと社会:住生活に必要なライフライン、地域の中で
る。子ども博物館では子どもが木製ブロックでアーチ型に積
の住まい、まちの良好な景観など住まいと社会のつながりを
み上げ、どのように重ねていくとバランス良く積み上げるこ
学習する。〈「つながる」「住み続けたくなる」〉。④住まいと環
とができるか、建築構造の力学などや建物の修復作業を体験
境:気候風土と住まい・住文化、環境と共生する住まい、住
型学習(ハンズ・オン)で楽しんでいる姿をよく多く見かけ
まいの維持管理のあり方を学習する。〈「環境とかかわりなが
る。また子ども以上に楽しんでいるのが大人である。有名な
らくらす」「住まいを永く大切に」〉。
ボストンにある子ども博物館は古い倉庫を改築した建物で、
こうした領域構成で男女問わず関心の高いテーマ(題材)
この館内に日本の町屋が移築されており、京都の町並みも展
を設定でき、体験的・実践的学びによって様々な学びの要素
示されている。これらの展示は異文化理解の一環として工夫
をつなげ児童・生徒の思考力や洞察力を育てていくことが可
されており、ハンズ・オンの理念にもとづいて楽しみながら
能になる。また住まいは多様な領域で構成されており、住に
探求→発見→理解していく内容となっている。そうした展示
関連する仕事が多いので、学校に多彩な人的ネットワークを
の一角に現代の日本の町並みも廊下の壁面を利用して展示さ
呼び込み、キャリア教育もできるのであり、建築士の方の学
れている。自動販売機と寿司屋が並び、その前に電信柱があ
校でのゲストティチャーとしての役割を期待したい。
るという町並みである。何とも貧しい町並みである。
なお住教育ガイドラインでは図2に示すような児童・生徒
筆者の好きな日本の博物館は、江戸時代の佇まいを実物大
の学習段階に応じた学習の流れの中でフィードバックを重ね
で再現している深川江戸資料館である。子どもが生き生きと
ながら内容を深化させステップアップすることにより、住教
館内で学習しており、ここでは事前に教員に研修する機会や
育がめざす能力を育成していく。
詳細な教員用の冊子を配布するなどの工夫を行なっている。
3. 学びとは文化の伝承
もちろん子ども用の冊子も用意されている。この博物館では、
子どもは幼児期から空間の配置に対応した実験遊びをし、
視覚的な工夫だけではなく、音や明かりの変化で一日の時の
学齢期・思春期には既存の空間の配置の改善要求や実際に試
流れと人々の生活の変化を表現展示しており、子どもが興味
したいという要求をもつ。しかし日本では、大人すら自分の
を持つように工夫されている。また子どもが疲れずに学習で
家の修理やまちづくりへの参加は少なく、その楽しさや大切
きる適度な広さである。
さを子どもに伝え、継承していくことの重要性を認識してい
ここで紹介した住教育ガイドラインは H P に掲載される予
る大人は少ないのではないだろうか。昭和 30 年代頃までは近
定であるので、詳細は http://sumai-info.jp/juseikatsu/を参
所の家の建て替えなど、日常的に見ることができ、壁の材料
照されたい。また筆者の考える住生活や住環境(まち)の教
としての土壁を暗黙の内に知りえていた。一方、江戸時代か
育・学習プログラムを(社)住宅生産連合会の「住宅・すまい
Web」の HP に「教育とすまい・まち」として掲
図2 学習の流れ
感性
→
学習の流れ 感じる
気づく
理解・認識 →
思考・判断 →
表現・行動・実践
載している。このプログラムでは、明日の住生
知る(分かる)
考える
伝える
調べる
洞察する
評価する
活・まち・生活環境・文化を豊かに創ることので
判断する
やってみる(行動
思う、願う
する)
できる、活用する
関係性によ 共感する
つながりを知る
る広がり 親しむ、愛着を
総合的に判断する
展望する、将来性を
もつ
見通す
コミュニケーション
する
働きかける
協働で取り組む
住教育への ・空間や環境を ・住まいの機能や
展開
・自然環境、近隣、 ・自分らしい住まいを
からだで感じ
種類、多様な住
社会との関係の中
る
まい方を知る
での住まいを
考える
実現する
・自分たちのまち
づくりに取り組む
きる資質・能力の育成をめざし、学校教育だけで
はなく、建築家や事業者などが社会教育や地域な
どで活用可能な教育・学習プログラムや授業づく
りのヒントを掲載している。ぜひ参照していただ
き(http://sumai.judanren.or.jp/p082m.html)、
日本の住環境教育の良き実践が共有されていくこ
とを期待したい。
〈工学博士/東京学芸大学名誉教授/東海大学大学院特任教授〉
Bulletin 2008 年 6 月号
7
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
特集:教育事例
高校生が耐震診断
日本大学理工学部
非常勤講師
市川工業高校
ボランティア講師
―― 建築防災教育と地域防災への取り組み
八島 信良 氏
はじめに
地域貢献活動
日本列島は平成7年の阪神淡路大震災から地震活動期に
市川工業高校では、平成 15 年度から毎年夏休みを利用
突入し、その後多くの地震に襲われている。関東地方では
して地域の人たちを対象に「木造住宅耐震チェック公開講
今後 3 0 年以内に首都直下型大地震が起こる確率が 7 0 %
座」を実施している。ここでは生徒が授業で学んだ知識や
と言われている。国は平成 2 7 年度までに耐震化率 9 0 %
技術を駆使して市民に耐震診断の方法を説明し、持参した
を目標に、自治体に対策内容を明示する地域目標を定める
図面を基に一緒にパソコン入力して住宅の耐震性を点検す
ことを要請している。昭和 56 年以前に建てられた木造住
る。倒壊の可能性が高い場合、希望者には現地調査も行な
宅の約半分は大地震で倒壊の可能性が高いと予測されてい
って市民と一緒に防災に取り組む活動である。さらに積極
るが、これら古い住宅には高齢者が住んでいる割合が高く、
的に地域の防災活動を進めるために、3年前からは地域自
防災意識の欠如や経済的理由などで耐震診断や耐震補強が
治会と協力して一度に多くの住宅の耐震診断を行なうこと
進まない。このような状況から専門家としての建築士には
ができる「町内まるごと耐震診断」を3回実施した。これ
社会的責任と同時に期待も大きい。
らの社会貢献活動の成果が認められ、平成 19 年には「防
防災教育への挑戦
災まちづくり大賞」で消防庁長官賞を受賞した。一方、実
筆者は、平成 15 年から千葉県立市川工業高等学校建築
務として耐震補強工事などに携わっている工務店の人たち
科のボランティア講師として木造建築物の耐震診断に関す
に対しては、防災技術を伝えるための研究成果発表会を実
る指導を行なっている。工業高校建築科の教育では木造建
施し、市民のためには地元行政と共同で防災講演会を毎年
築物が中心であるが、市川工業高校の場合には3年生2ク
開催している。
ラスの課題研究として数種類のテーマがあり、生徒が一つ
おわりに
を選択する。耐震診断を課題研究として選択する生徒は毎
市川工業高校建築科の菊池貞介教諭は「自分たちの知識
年6人から9人で、毎週一回朝9 時から 15 時過ぎまで一
が地域の防災力向上につながるので、授業への生徒の意欲
日約 5.5 時間の授業を飽きずに集中できるかどうかが課題
は高く、生徒と共に地域防災を高めることによって“建築
である。そのため住宅の現地調査、パソコン診断、人前で
防災教育”の発展に寄与できる」と述べている。全国には
の成果発表など楽しく授業を進めることを心掛けている。
245 の工業高校建築科 (平成 17 年度調査)が存在し、地域に
耐震診断班は(財)日本建築防災協会が発行した『木造住
根ざした社会貢献活動の役割は大きい。3年ほど前には東
宅の耐震診断と補強方法』(改訂版) をテキストに一般診断
日本の工業高校教員を対象とした「木造住宅耐震診断」の
法、精密診断法について勉強する。在来軸組工法のみなら
研修会を開催したが、上記活動が全国の工業高校の社会貢
ず土壁、貫や差鴨居など日本の伝統的構法の建築物の耐震
献活動の発展に寄与できるように願っている。
診断も実施している。また、地震時の建物の挙動などを知
るために、簡単な振動解析や模型振動実験を行なって建物
〈工学博士/日本大学理工学部非常勤講師/市川工業高校
ボランティア講師/(有)セラミックハウス 技術開発コンサルタント〉
の振動特性と振動応答などに関しても体験的に勉強してい
る。一方、実物の壁の強さや破壊および耐震補強方法とそ
の効果などを知ることも大切であり、実習室で各種壁の耐
力試験も実施している。これらの実験には、試験体製作、
計測装置および試験作業などに地元建築士会や企業団体の
経済的支援を頂いている。
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Bulletin 2008 年 6 月号
木造住宅耐震チェック公開講座
「町内まるごと耐震診断」の準備
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
特集:教育事情
Bulletin 2008 年 6 月号
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第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
覗いてみました「他人の流儀」
多様な活動、フラットな関係、共働のありかた
みかんぐみ
聞き手: Bulletin
編集委員
マニュエル・タルディッツ
正式にみかんぐみを結成、設計事務所および法人設立と
氏、加茂紀和子氏、曽我部
なりました。
昌史氏、竹内昌義氏 (右上写真:左から)、4人の共働設計によ
り、住宅から保育園、放送施設、ライブハウス、公共建築な
ど多様な建築設計を中心に、家具、プロダクト、インスタレ
ーションなどのアートプロジェクトも幅広く手掛け、近年の
●共働設計において、ヒエラルキーのようなものがありま
すか。また、進め方やルールがあれば教えて下さい。
NHK コンペの頃から、現在においてもヒエラルキー
このような活動を行なう先駆け的なユニットです。いまでも、
はないですね。当初から、それぞれが案を持ち寄り、集
創造し続け、常に何かを生み出す力を感じさせてくれる存在
め、検討し、喧々諤々と話し合いました。プロジェクト
です。
は全て、メンバーがフラットな立場で話し合います。初
●株式会社みかんぐみ
期のころは、メンバー5人で住宅なども打ち合わせを行
加茂紀和子氏、熊倉洋介氏、曽我部昌史氏、竹内昌義氏、
マニュエル・タルディッツ氏の5名にて 1 9 9 5 年共同設立。
加茂氏、タルディッツ氏はご夫妻。2 0 0 1 年、熊倉氏が個人
活動に移行し、現在は4人体制で活動。
■主な作品:
NHK長野放送会館 (1997 年)、八代の公民館 (1999 年)、
なっていましたが、3∼ 4年目以降は担当を決めていく
ことにしました。ただし、担当はすべての決定権を持つ
というよりも、お施主さんと他のメンバーを結び、プロ
ジェクトマネージャーとしての役割になります。よって、
詳細なディテールなどは担当者に委ねることになります
SHIBUYA-AX(2000 年)、八代の保育園 (2001 年)、ハンガ
が、全体のスキームや大きな部分のコンセプトは前述の
ートンネル (2 0 0 5 年)、日本国際博覧会トヨタグループ館
ような話し合いで決まります。みかんぐみ内では、この
(2005年)、横浜の保育園(2006年)、シゴセン(2007年) 等。
■主な受賞歴:
NHK 長野放送会館建築設計競技最優秀賞 (1995 年)、仙台
メディアテーク建築設計競技佳作 (1995 年)、JCD デザイン
話し合いを「みかんミーティング」の略称で“MM(エ
ムエム)”と呼んでいます。この M M は、スタッフが多
くなった現在は、メンバー4人と、そのプロジェクトの
2001 優秀賞 (2001 年)、住宅建築賞奨励賞 (2005 年) など、
チーフスタッフおよびアシスタントスタッフも参加して
受賞多数。
います。また、その後の実施設計レベル以降は、担当者
以外のメンバーは、細かい意見を指摘することは、ほと
●みかんぐみ設立の経緯をお話し頂けますか。
卒業して、それぞれに設計事務所勤務をして数年経ち、
その後、各々が独立をしている時期でした。そんな時、
んどないですね。その分、基本設計の段階で、しっかり
としたスキームやコンセプトを共働で話し合うことがで
きるのだと思います。
大きな規模の建物を設計する場合に、グループとしての
必然性を感じていたところ、同窓会としての大学の研究
室会がありました。その時の話のなかで、「なんか機会
があったら、一緒にコンペをやらない?」と言っていた
直後、タイムリーに NHK のコンペがあり、初めて共働
で設計を行ないました。その初めての共働設計で、最優
秀賞を受賞することになったのです。当初は、プロジェ
クトごとに結成、解散の設計 JV のような形態も考えて
いましたが、N H K の要請により法人化の必要が生じ、
NHK長野放送会館
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Bulletin 2008 年 6 月号
(撮影:平賀茂)
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
覗いてみました「他人の流儀」
このコーナーは「独自のスタイルで活躍中の方にお話を伺
い、その秘訣を探り出そう!」という企画です。
話を聞いてみたい、あるいは興味あるテーマなどがありま
したら編集委員会までお知らせ下さい。
●メンバーは、元々、
●共働設計において、
仲のいい友達だったの
問題点などもありまし
ですか。
たか。
加茂、竹内、曽我部は、
現在はほとんどありま
同じ研究室です。そして、
せんが、初期の頃、口論
加茂とタルディッツは夫
事務所入口ドア前
することはありました。
事務所風景
婦です。これが仲のいい
あの頃は、時間がたくさ
となるのかわかりませんが……。(ここで談笑状態とな
んありましたしね。しかし、自分の意見が通らなくても、
りました。)仲のいいと言うか……、近いですよね。同
誰が言った意見かこだわることでもなく、意見を共有す
じ建築教育を受けて、芯のところは共有できるところが
ることができました。そして、話し合いでは強い口調で
あり、建築感が違うということはなかったですね。また、
も、後に感情的に残るものはありませんでした。
建築というものを、自身のみで入っていくというよりも、
●これから、建築はどのように変化すると思われますか。
もう少し社会的なものとして捉えているところがあり、
建築そのものというより、一般の人の意識や評価基準
そういうところで共働ができていると思います。
の変化がみられると思います。例えば公共建築において、
●建築以外の活動もされていますが……
いままでは「与えられている」という箱ものでしたが、
そうですね、家具やアートプロジェクトなど、気がつ
最近は、「自分たちの共有物」という意識で、空間を評
くと建築と言えないものも携わっていました。積極的に
価するボキャブラリーを持ち始めていると思います。い
働きかけている場合と、参加依頼を受けるという場合が
ままでは建築家のボキャブラリーが突出していたものが、
あります。また、1997 年の住宅特集に「非作家性の時代
それと近づいてきたのでしょう。
に」という文章を執筆し、強い作家性の建築だけに依ら
ず、広い視野でいろんなものを受け入れながら、ものを
創っていくことがあり得るということを示しました。そ
■インタビューを終えて
して、その頃から建築が一般誌にも取り上げられるよう
インタビューに先立ち、事務所スペースと事務所ビル内
になり、家具やプロダクトとクロスオーバーしてきたと
の一室にあるリノベーションプロジェクトの「シゴセン」
ころ、それを私たちが言い始めたタイミングと、世の中
も案内して頂きました。お話にもありましたように、メン
の動きのタイミングが合ってきたようです。あるものを
バーがフラットな立場で共働されるというのが伝わる雰囲
作る時、そのものを作るだけでなく、それを作る「シス
気の方たちでした。本当にきさくにお話しが進んでいて、
テム」も創るという前提を、みかんぐみは持っています。
神経質になりがちな昨今の建築業界と違う大らかさも感じ
チャンスがあれば、なんでも挑戦してみたいと思ってい
られました。やはり、共働設計(体制)は、システムも大
ます。スタイルや得意分
事でしょうが、メンバー(パートナー)そのものが一番の
野を固定化せず、風穴を
要素だと、当然のことながら感じました。MMから発信さ
開けたいというスタンス
れる、まだまだ発展していく未完の状態を期待しながら、
です。
インタビューを終えさせてもらいました。
〈聞き手:編集委員 中村高淑・池元真克〉
4人のデスク風景
Bulletin 2008 年 6 月号
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第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
「温故知新」
先達から学ぶ
次期の会長と執行部体制
に期待すること
前会長
小倉 善明
上記のタイトルのような中身の原稿依頼があったので日ご
度を捕らえ、他協会との連携を図るべきでしょう。建築士
ろ感じていることを書いてみたいと思います。出江新会長
会連合会も以前から、建築業協会もそれぞれ資格について
の意見は選挙の時のマニフェストで発表されていますが、
の提案をしています。当初からまったくぶれることなく主
まだ新体制での事業計画は理事会では検討中で発表されて
張し、運動として展開している点は運動の進め方として参
いませんので、ピント外れの部分があればお許しいただき
考になります。そして、構造、設備の資格が建築士の中に
たいと思います。
位置づけられた今、我々の主張と、両会の主張には隔たり
実は、昨年、JIA 発足以来始めての会長選挙が実施される
が少なくなってきていると思います。士法改正運動は、JIA
ことになった時、最も懸念したことは選挙のしこりが後ま
だけでは達成できません。建築5 団体が力を合わせること
で残るのではないかということでした。当時、何人かの人
が必要です。
たちにこの点について質問した際「しこりなんて残りませ
2番目に重要な活動は、次期会長は、「設計報酬の法制化」
んよ」という返事でした。しかしながら、現在、まだしこ
という表現をしていますが、設計環境の向上運動です。こ
りが残っているように見受けます。まずは、新体制で会の
れまで、JIA は「設計入札をなくそう」という運動をしてき
中のしこりをなくす努力をして欲しいと考えます。会が一
ました。この二つの表現が、運動としてどのように関連し
つにならなければ JIA の活動が実りません。JIA の活動の成
合うのか判りませんが、基本的には同種の問題です。「設計
果が上がるように全員で会を一つにしましょう。
入札をなくす」運動には J I A はこれまで膨大な時間を長い
JIA は現在、本部事務局に大きな問題を抱えています。支
間注いでそれなりの効果をあげてきました。明治時代に出
部の方々はあまり感じていないと思いますが、本部は、事
来た会計法という法律によらいないで設計者を選定すると
務局員に不幸が重なり J I A を支えてきたベテランの人たち
いうはっきりとしたターゲットがあります。この運動の火
に欠員が生じました。補強もままならず現在に至っていま
も消さないで欲しいと考えます。
す。これを補強し、ベテランのいない事務局を本来の体制
JIA の主張や活動は、どれをとっても長期にわたって続け
にもどすには、一時的でも事務局の負荷を減らし、体制を
なければ実らないものばかりです。建築家の資格の創設と
立て直すしかないと思います。負荷を減らすということは、
設計環境の改善というテーマを実現するには、まだ長い年
事業を減らすことです。現在の J I A にもっとも大切なこと
月にわたり運動を継続することが必要でしょう。この活動
に絞り活動することが、JIA を健康な体にするために必要で
は、会長が変わるたびに考え直されるというよりは、多少
す。ぜひ今後の J I A 活動を永続化するためにも、事務局を
の変更はあろうとも最初のコンセプトにしたがって運動を
立て直していただきたく思います。
強めながら、バトンタッチしていくものであると思ってい
今期は、多くの活動方針を掲げないで、テーマを絞って
ます。したがってバトンタッチには両ランナーの一体感と
活動していただきたいと思います。そのなかで、まずは、
連携が必要なのです。そしてこのような運動を勝利するに
JIA の一番大切な活動である建築家資格制度を積極的に進め
は、建築5団体が団結しなければ成し遂げられません。
て欲しいと考えます。JIA の登録建築家を増やすと共に早く
私は、2011 年の UIA 東京大会の開催を5 団体の人たち
オープン化に踏み切って欲しいと思います。建築家資格制
と力をあわせ準備し成功させたいと思います。そこから生
度の JIA の主張は、建築士法改正運動そのものです。2003
まれる相互理解を大切にするよう努力しています。建築界
年に出した「建築家資格制度施行に向けて」の提案を、会員
に相互理解が生まれ、その結果、皆の力で良い建築が創れ
全員で、ぜひ再度目を通しましょう。この運動の趣旨は今
るような環境が出来るならば、UIA 東京大会を開催するこ
でも新鮮な響きがあります。この主張から外れることなく、
とが非常に意義深いものになると思うのです。
迷うことなく建築士法改正運動として現在の建築家資格制
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Bulletin 2008 年 6 月号
〈(株)日建設計東京本社〉
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
「温故知新」
新入会員抱負を語る
秋田 謙二 ←写真左:
メディカルモー
ル
たまプラーザ壁
面緑化
→写真右:
鷺沼メディカル
モール
屋上庭園
■日本建築家協会の発足は私の記憶では 1987 年頃だったと思い
境問題をも考えた建築をと努力している次第です。
ます。その頃独立間もない私は、日本の建築界の第一線で活躍し
■また、開業医師が集り、その各人が企画の段階から参加してつ
ていらっしゃる方々がその創立メンバーとして名を連ねているの
くる「メディカルモール」の企画、建築、運営、また管理も手掛
を見て、私もいずれは加入させていただきたい、という憧れにも
けております。コーポラティブ方式にも似た過程を経て完成に至
似た気持ちで発足の一報の記事を読んでおりました。
るこのメディカルモールは、地域医療の活性化を促すパイロット
仕事の忙しさに加え、私のような者が家協会に入会とはおこが
ましい、などという思いから入会のタイミングを掴めずにおりま
プロジェクトとして位置付けられ、すでに完成している事例では
事実そのように機能しております。
したが、私の先輩であり、現在 JIA マガジンの編集長を務めてお
■先日、一足先に家協会に入会し、部会にも積極的に参加してい
られる赤堀先生よりお誘いをいただいたことをきっかけに、晴れ
るという友人に会ったところ、「部会ではまるで学生時代のよう
ての入会となりました。
な溢れる情熱をもって建築談義が展開し、とても楽しい」と聞き
■私の得意とする分野は住宅でありますが、特に賃貸の集合住宅
ました。
の企画、設計は事務所での設計業務の柱として取り組んで参りま
私も若いころよりは多少は時間的余裕が持てるようにはなりま
した。建築家=「アセットマネージャー」という理念のもと、地
したので、これからは部会にも積極的に参加させていただいて、
域に根ざし、賃貸住宅の方向性を問いかける建築を創造していく
微力ながら建築界のお役にたてるよう努力してまいりたいと思い
ことを心掛け、近年では屋上緑化、壁面緑化に取り組むなど、環
ますので、どうぞよろしくお願い致します。
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2007 年度新入会員
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■4月号より新たに始まった「新入会員 抱負
を語る」のコーナーでは、順次新入会員の方を
ご紹介します。掲載を希望される方は、広報委
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員までお知らせ下さい。我こそは!という方、
お待ちしております。
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[関東甲信越支部(一部、海外) 新入会員数: 125名
(2007年度)
、143名(2006)
、151名(2005)
]
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CORBELLA Marco (株)石本建築事務所
青木英二 (株)石本建築事務所
赤崎格哉 (株)石本建築事務所
赤瀬川仁 (株)日本設計
赤松佳珠子 (株)シーラカンスアンドアソシエイツ
秋田謙二 (株)HAK
朝倉英雄 (株)安宅設計
芦田智之 (株)日建設計東京本社
芦原信孝 Nobutaka Ashihara Associates
浅野正樹 (株)DNA CO.
阿部智樹 一級建築士事務所タステンアトリエ
阿部洋之 ELKUS/MANFREDI ARCHITECTS
安藤和義 (株)三菱地所設計
飯田隆弘 (株)三菱地所設計
池元真克 眞建築工房
石橋登 (株)東急設計コンサルタント
宇高誠 (株)入江三宅設計事務所
内田一清 コクーン・アーキテクト一級建築士事務所
大泉道郎 (株)日建設計 東京本社
大木健逸 (株)坂倉建築研究所
太田裕之 (株)エス・ピー・エー
大津宏伸 おおつ住宅工房一級建築士事務所
大野徹 (株)東急設計コンサルタント
大橋智子 一級建築士事務所大橋智子建築事務所
大森晃 (株)三菱地所設計
岡田洋司 (株)日本設計
岡山巨栄 (株)現代綜合設計
荻津郁夫 (有)荻津郁夫建築設計事務所
尾高光一 (株)アーネスト空間工房アトリエOdaka
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角田充 (株)ボノボ
片山暁 (有)アトリエへん
勝矢武之 (株)日建設計東京本社
加藤隆章 (株)日総建
金子晴俊 新建設計
川上寛行 エイチ・オー・ケーグループインク
川手謙介 (有)三悦建築設計事務所
川向正人 東京理科大学理工学部建築学科
木島千嘉 一級建築士事務所木島千嘉建築設計事務所
木津潤平 (株)木津潤平建築設計事務所
木村丈夫 (株)タオアーキテクツ
木村博則 (株)石本建築事務所
熊谷賢一 (株)日本設計
栗原健太郎 栗原正明建築設計室
栗原正明 栗原正明建築設計室
桑原眞次郎 (株)丸ノ内建築事務所
小泉賢信 (株)日建設計東京本社
小泉治 (株)日本設計
河野有悟 (株)河野有悟建築計画室
國分昭子 (株)アイケイディーエス
輿 尉 (株)日本設計
小林哲也 (有)フォーラム一級建築士事務所
小林理恵子 (有)田中栄一建築設計事務所
小松實 (株)ノア設計
齊藤哲也 明星大学理工学部建築学科
齋藤紀 齋藤建築設計事務所
榊原由紀子 (株)石本建築事務所
櫻井幸二 (株)幸設計
佐々木龍一 (株)佐々木設計事務所
笹原正次 KKS INTERNATIONAL CO., LTD
佐田祐一 (有)佐田祐一建築設計研究所
塩崎政光 (株)汎建築研究所
塩谷進 SS Archdesign
清水雅人 (株)一級建築士事務所 アルテ・ワン
清水榮一郎 (株)栄設計
下平万里夫 (株)MARIO DEL MARE 一級建築士事務所
白井大之 (株)日建設計 東京本社
菅野勇 (株)三菱地所設計
須田充洋 SUDA設計室
須藤啓 (株)三菱地所設計
高田滋木 千手設計株式会社
高野福治 (株)高野建築設計
高橋秀通 (株)日建設計 東京本社
高安重一 (有)アーキテクチャー・ラボ
武井誠 TNA
田口好孝
田中秀人 (株)石本建築事務所
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((株)HAK)
田中宣彰 (株)三菱地所設計
多羅尾直子 (有)タラオ・ヒイロ・アーキテクツ
椿康子 (株)地震工学研究所
遠野未来 遠野未来建築事務所
戸塚賢一 (株)東急設計コンサルタント
永井福二 設計工房福
中澤克秀 中澤建築設計事務所
永田康明 (株)三菱地所設計
中津秀之 関東学院大学
中村渓 (株)TKN・ARCHITECT
鍋島千恵 TNA
西村浩 (有)ワークヴィジョンズ
萩尾昌則 (株)三菱地所設計
長谷山純 プロ・ジェクト,長谷山純一級建築士事務所
濱田卓志 濱田建築研究室
原健一郎 (株)石本建築事務所
樋口善信 樋口善信建築計画事務所
平本英行 一級建築士事務所ヒラモトデザインスタジオ
平山浩樹 (株)日本設計
深滝准一 深滝准一建築設計室
福西浩之 (株)日本設計
福武嘉子 (株)現代綜合設計
福本隆介 (有)福本隆介建築設計事務所
藤井洋一 一級建築士事務所虚空蔵
藤本功 (株)長谷川建築企画
堀場弘 シーラカンスK&H株式会社
松井章一郎 (株)三菱地所設計
松岡祐作 松岡祐作都市建築計画事務所
松田賢一 (有)エムアイユー建築計画事務所
丸橋森雄 (有)計画堂
丸山保博 丸山保博建築研究所
萬代恭博 (株)坂倉建築研究所
三上紀子 レジオン・コンサバティブ(株)
三谷恭一 (株)日本設計
宮崎正俊 (株)日本設計
宮本良明 (株)入江三宅設計事務所
矢賀部雅子 アトリエRAUM一級建築士事務所
山内悦義 (有)アトリエニライ
山下孝夫 (株)東急設計コンサルタント
山中新太郎 日本大学理工学部建築学科
湯浅剛 一級建築士事務所アトリエ六曜舎
遊佐謙太郎 三菱地所(株)
横川和人 (株)石本建築事務所
米村ふみ子 (有)米村アーキテクツスタジオ
渡邉顕彦 (株)三菱地所設計
渡邉徹 (有)渡邉住環境計画一級建築士事務所
和出知明 (株)梓設計
Bulletin 2008 年 6 月号
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第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
委員会活動報告
交流委員会
建築用仕上塗材における
環境対応の動向
久保 宏二
各塗材メーカーにおいては、様々な角度から環境対応に取り
用年数があると言われています。当然耐久性のある塗膜ほど
組んでいます。そのひとつとして、仕上塗材における環境対
汚れてはいけないことも重要です。単に建物における耐久性
応と性能について、代表的な外装仕上塗材である複層仕上塗
の向上ばかりではなく、立地環境による使い分けも考えられ
材(吹付タイル)を中心にして紹介しましょう。
ます。建築物が海に近い場合や、温泉街であるなど紫外線や、
複層仕上塗材は下塗り(シーラー)、主材(模様塗り)、上
塗り(色相、艶)の3層で構成されています。昭和 50 年代頃
酸の影響を受けやすいなどの状況に応じて使い分けることも
お奨めします。
は、上塗りは溶剤形のアクリルエナメル、高級仕様であれば
溶剤形ウレタンエナメルが主流でしたが、環境問題が高まる
正会員へ開かれた窓口としての交流ページ
につれ、性能を損なわず水系化する技術が開発されてきまし
私におきましては、 10 年近く JIA 関東甲信越支部の賛助会
た。最近では双方の性能を兼ね備えた弱溶剤形塗料というも
社として、交流委員会広報部会から支部の広報委員会まで参
のもあり、鉄部を中心に好評を得ています。例ですが、吹付
加させていただきました。多くの正会員の方と懇意にさせて
タイルなどの上塗などで使用する溶剤系塗料(強溶剤系)を
いただき、また同業や他部門の企業の方との交流により、多
1000m2 施工すると空気中に約
300kg の有機性の揮発成分が
くのことを学ばせていただいたと思います。賛助会社の各グ
飛んでゆき、それが上空に堆積し、光化学スモッグや地球温
ループがどのようにすれば、正会員設計士と懇意になり、各
暖化の原因となると言われています。それが弱溶剤系塗料で
企業、技術力、製品を信頼していただき安心して使っていた
あれば、 150kg と半減します。水系塗料であれば、約 30kg
だけるかなど、これからも努力する所存です。
程度(樹脂が出る限り0ではありません)まで減らすことが
交流委員会、交流大会、総会などに直接正会員・賛助会員
出来ます。また、性能の点で強溶剤系と比較して弱溶剤や水
として顔を合わせる機会が限られる現状もあり、必然的に活
性は劣る?と思い勝ちですが、最近は様々な樹脂による高耐
動懇親の場が限られてしまう中、支部の様々な委員会部会に
久性・低汚染性能などが付与されており、溶剤形塗料の勝る
参加されている正会員設計士の方々と賛助会社としてもいか
とも劣らない性能を示すものもあります。
にして接点を持つか、そして支部全体の正会員に情報発信を
吹付タイルの例で言えば、上塗に耐候形1∼3 種という基
準が存在します。ベーシックである耐候形3 種(アクリル樹
行なえるかが重要です。
今年では賛助グループにおいては、設計事務所に出向く出
脂エナメル)であれば、2∼4年で表層の艶が 20 %減となり
張セミナー、もしくは JIA 館ホールなどを借りてセミナーの
ます。これは紫外線などによる表層の分解を意味します。こ
実施を予定しています。また、本誌「Bulletin」交流のページ
れが進行すると、チョーキングという現象(白亜化)に繋が
や支部交流委員会のホームページは、正会員に開かれた窓口
ります。手で触ると白くチョークの粉のように着く現象です。
であり、各社協力し、もっと充実した楽しい内容にして行か
2 種(ウレタン樹脂エナメル)であれば5∼8年、1種は8年
ねばならないとも思います。特定の会社の宣伝にならない程
以上となります。因みに1種はアクリルシリコン樹脂エナメ
度の企業情報や、各企業のショールームの情報、イベントの
ルで 12 ∼ 15 年、フッ素樹脂エナメルで 15 ∼ 20 年の期待耐
案内、業界の最新の動向など正会員との交流の場、賛助会社
の情報公開の場、として利用し
促進耐候性試験(キセノンランプ)による試験
ていただきたいと思います。
〈エスケー化研(株)〉
光
沢
保
持
率
︵
%
︶
展示会
14
Bulletin 2008 年 6 月号
セミナー
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
委員会活動報告
保存問題委員会
保存問題新潟大会が初の市共催で開催
―― 新潟大会を振り返り(1)
武蔵 靖之
第 1 7 回保存問題新潟大会が地元・県外合せて 2 4 2 名の参加
その上に杉丸太の小屋組が載せられている。聖堂は第二ヴァ
者を集め、2008 年 2 月 16 日(土)、17 日(日)両日、新潟県新
チカン公会議の決定による新しい対面ミサ方式にしたがって
発田市で挙行された。今回のテ−マは「城下町しばたのいま
デザインされている。新発田市の至宝であるが、前面庭園が
と未来」。新発田市は新潟市より 30 キロほど北に位置し、10
道路拡張でなくなるため、成り行きが気になる。
万余人を擁す地方中核都市である。400 年の歴史を持つ城下
白壁兵舎は、新発田公累代の居館跡新発田駐屯地に在る。
町を形成し、戦後は国防の重責を担う陸上自衛隊の駐屯地も
ここに陸軍東京鎮台歩兵第8番大隊が置かれ、明治7年白壁
都市の中心地を形成している。
兵舎は落成、同年 11 月東京鎮台歩兵第3聯隊第2大隊が移動
2月 16 日(土)12 時 45 分、地元参加者も多数集まり、総勢
しその兵舎となった。
155 名は4 台のバスに分乗、自衛隊白壁兵舎へ、その後3班
さらに昭和 11 年に完成した自然採光によるスタジオを持つ
に分かれ、吉原写真館、清水園、石泉荘、道の駅、宝光寺、
吉原写真館のほか、清水園、石泉荘、宝光寺など、ウォッチ
カトリック新発田教会、新発田城辰己櫓をウォッチング。地
ングした所は重要な建築物で、中心市街地に位置する。見て
区中心部で徒歩可能圏である建物の価値と経済性がクロス
知って地元や県内外の方々で行なう翌日のシンポジウムへと
オ−バ−され、オーセンティシティとの関係が気になるとこ
つなげる。ウォッチング後は場所を月岡温泉ホテル泉慶に移
ろだ。ウォッチングした建物を二、三紹介する。
動、ゆっくり温泉に浸ったあと7 時から地元市民と JIA 参加
新発田城は慶長3年初代藩主溝口秀勝が、五十公野に居を
者の交流・懇親会が行われ、深夜まで活況を呈した。
かまえ、三代藩主宜直のとき完成した。その後寛文8年、享
明けて2月 17 日(日)、市内自由ウオッチングの後、斎藤洋
保4年に大火で櫓などを焼失している。石垣は「切込みはぎ」
一郎氏の総合司会によってシンポジウムは始まる。JIA 関東甲
と呼ばれる美観を重視した方法で築き、石と石の間に隙間を
信越支部保存問題委員会川上恵一委員長は「新発田市は 400
残さないよう積み上げている。特に注目する点は、平成 16 年
年の歴史を持ち、江戸、明治、大正、昭和の建物があり、そ
辰己櫓、三階櫓の復元で、表門、旧二の丸隅櫓(共に重要文化
れを使ってきている。私達は今の時代に住んで新しい物を考
財)共々市民に親しまれ現在に至っている。
える。このことは歴史も同様でまさに保存と創造は同じと考
新発田カトリック教会は、1965 年アントニン・レ−モンド
える。そのことを踏まえて新発田に未来が見えるよう期待す
の設計、1966 年8月竣工、基礎部分はレンガ積みの組積造で、
る」と保存の理解を求め、新発田市片山吉忠市長は、「新発田
の発展および景観と保存に対し、 J I A 関
東甲信越支部保存問題委員会が企画し、
新発田市在住の有識者および新発田に関
わる方々を一同に集め、街の現状を見て
いただいた後のシンポジウムで未来を見
据えることに大変感謝する」と期待を寄
せ、シンポジウムは開幕した。
[→次号へ続く]
新発田カトリック教会
白壁兵舎
清水園
石泉荘
〈武蔵設計〉
宝光寺
Bulletin 2008 年 6 月号
15
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
地域会活動報告
城南地域会
林田 研
発足して1年の城南地域会ですが、特筆すべきは例会出
が後半は区の本音も聞けて、実りある交換会になりまし
席者の多さです。毎回 10 ∼ 15 名の会員が集まり、自由
た。
闊達な話し合いがなされます。話は頻繁に脱線していき
「大田の魅力再発見ウォーク」に参加しました
ますが、これがまた楽しいのでしょう、誰も軌道修正を
3 月 30 日(日)、大田区観光協会、東急電鉄主催の「大
しません。そのまま例会後の懇親会でも椎名政夫代表、
田区の魅力再発見ウォーク」に参加し、池上駅−本門
林寛治会員などを中心に話が盛り上がり、久し振りに旧
寺−石川台−洗足池−大岡山(約6km)を散策しました。
家協会当時の雰囲気が想い起こされます。
桜に包まれた本門寺五重塔などの見所もさることながら、
「市民住宅講座」品川サテライトセミナー
2008 年になってからの活動を記します。2月 29 日、
住宅部会と共催で一般市民向け「市民住宅講座」品川サ
テライトセミナーを品川区中小企業センターで開催しま
した。品川区の後援を受け「家の工事費・予算・構造」、
「インテリアのコツ」、「品川の街並みと安全・防災」と
いう盛り沢山のテーマで、聴講者は満腹感を味わった様
道路の作り方、ガードレールのデザイン、塀や擁壁の見
苦しさなど、身近なところの景観ウォッチングが出来ま
した。建築としては東京工大の「 7 0 周年記念講堂」
(1958 年竣工:谷口吉郎設計)が秀逸、景観では洗足池駅
近くの「洗足流れ」の整備がとても良い雰囲気を出して
いました。
↓東京工大「70周年記念講堂」
子でした。品川区も「来年も是非やってください」との
こと、初めての試みでしたが成功裡に終わりました。
中原街道沿道地区計画〔案〕に対する意見書を
大田区に提出
道路騒音対策として環七から環八までの中原街道沿い
↑「洗足流れ」
建築を防音壁代わりにしよう、という強権的な条例に対
し、おもに景観上の問題や環境の観点から、反対の意見
ホームページの制作
書を3月 21 日に提出しました。その後、3 月 26 日の大
2月から本格的に城南地域会のホームページ制作を開
田区役所との意見交換会でもこの話題で我々の意見を補
始しました。活動報告など当たり前のコンテンツと共に、
足しましたが、大田区としては景観に対しての活動は行
「品川・大田を知ろう」というページでは両区の文化、
なっていないので、行政と民間とで出来ることのすりあ
環境、防災、バリアフリーなどに関する施設や地域を地
わせをしたい、とのことでした。
図上にプロットし、一目で両区がわかるページを作成中。
大田区役所との意見交換会
さらに会員専用ページでは地域会活動の過去から現在ま
上記、中原街道沿道地区計画や羽田空港跡地利用基本
で全てが判るアーカイブ機能を持たせています。ほぼ出
計画(パブリックコメント提出済)および区の施設老朽
来上がっていますが、まだ知られていない両区の良さを
化にともなう施設売却・建
発見して今後も掲載していくつもりです。
替え計画に対する協力など、
URLは、http://www.jia.or.jp/kanto/jonan/
地域会から 1 4 名が出席し
上記記事の詳細も下記URLでご覧になれます。
て意見の交換を行ないまし
http://www.jia.or.jp/kanto/jonan/record/
た。最初は堅い感じでした
16
Bulletin 2008 年 6 月号
↑3月26日大田区役所との第2回意見交換会
〈(株)研建築設計事務所〉
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
地域会活動報告
JIA 城北地域会
設立からの 1 年を振り返ってみて
鈴木 和貴
城北地域
会となることの繰り返しでした。
城北地域会は豊島・練馬・板橋・北の4区とその周辺からなる城北地
域の特性を生かした諸活動を展開しようとする地域会です。
2006 年6月 18 日に第1回地域会設立準備会をJIA館5階で開催して
以来、数回の準備会を経て2007年3月 31日に設立総会を開催し、同年
5月 31 日の通常総会で設置を承認されました。
そのため、地域会として設立した昨年は、なるべくまち歩きやセミナ
ー等を通じて地域会会員との交流や意見交換を試みようとの思いもあり、
結果として、3回のまち歩きと東京大会でのシンポジウムの参加は、大
変有意義な時間を共有できたと思っています。
5月の企画は王子・飛鳥山界隈に残る近代建築や石神井川の流れを利
4つの行政区域にまたがるため、この1年は各自治体に対する提言や
地域住民への直接的な活動より、地域会会員を主体に城北地域全体にま
たがる広域的な視点の中で、城北地域固有の諸問題や特性について検証
してきました。
用した親水公園の見学を通して城北地域の景観形成におけるその背景を
再確認しようというものです。
さらに、東京に残る唯一の都電・荒川線に乗り旧中山道・地蔵通り商
店街ヘと移動し、都電の車窓から、また商店街の活気から城北地域のス
特に「石神井川と千川上水」
「街道」
「武蔵野台地の作る崖線」
「商店街」
は城北地域の特質を示すキーワードです。
ケール感とエネルギーを五感で感じられたのではないかと思っています。
10月には目白周辺の良質な地域資産と街づくりの事例を見学しました。
あまり知られていないかもしれませんが、水運の恵みがもたらした産
業の発達により旧日本軍関連施設の集中、その結果が現在の城北地域の
土地利用に大きく係わっています。
徳川家ゆかりの一帯には歴史の流れの中で光り輝いた巨星の数々が地域
資産として現在にも継承され「まちづくり」へ活かされています。
1月は北区飛鳥山博物館学芸員の山口氏を講師にお招きした赤羽台・
五街道の一つの中山道だけでなく、この地域は都心から郊外へと延び
桐ヶ丘団地の見学会でした。
るいくつもの街道がありました。青梅街道、清戸道、所沢道、長久保道、
戦後の住宅難を解消するべく行なわれた一連の住宅政策の中で実施さ
川越街道、岩槻街道など往時の幹線道路を今でもたどることができます。
れた日本有数の大規模団地は再生に向け大きな歯車を回し始めました。
この道を行き来したものは公家大名だけでなく文化や産業もここを経由
旧軍用地の払い下げから始まる武蔵野台地周縁部の開発が、後の高島平
すると同時に沿道の地域もその恩恵に預かってきました。
団地(板橋区)や光が丘団地(練馬区)などの大規模団地へ生かされ、
武蔵野台地は板橋区から北区にかけて長大な崖線を形成し、緑豊かな
城北地域の景観形成に大きな方向性を示すことになります。歴史的な背
景観を作っています。さらに、豊島区内の南斜面には台地の終端を感じ
景のみならず、諸先輩達が残してくれた叡智の結晶からのメッセージを
ることのできる場所が随所にあります。この台地の辺境地には多くの文
読み取ろうとする企画であり、未来の街区に思いを巡らせる企画でした。
化人や芸術家が好んで移り住み、また、良好な郊外型住宅地として手が
また、10 月の東京大会では都市デザイン部会と東京の地域会が連携し
加えられてきました。
て開催したシンポジウム「東京の景観・まちづくりを考える」に城北地
そのような豊かな歴史的・地形的な背景をもつ住民の作る街には元気
な商店街がたくさんあります。
域の景観とまちづくりの現状と課題について発表し、建築家の地域での
役割や貢献について活発な意見交換をすることができました。
まち歩きとシンポジウム
1年を振り返って
準備会時代では会合は自由学園明日館をたびたび利用してきました。
まち歩きやシンポジウムの企画は湧き水のごとく、連鎖的にアイディ
他の地域会に比べ、城北地域会の会員構成の特色は在住者が比較的多
アがあります。
いことと小規模な事務所が多いことです。そのため、自由学園の暖かな
多分、今年も有意義なイベントを開催することができるでしょう。し
空間での会議は、地域会の活動方針の打合せというより地域を知り尽く
かし、残念なことは、地域会への参加者が増えないことです。今年は、
した者同士の建築論のような熱い論議に陥ってしまうことが常でした。
地域住民との関わりも視野に入れながら、地域会活動を展開していこう
それはそれで面白いのですが、会議としての議論には決めるべきこと
と考えています。
がなかなか決まらず、会場管理者から時間切れの連絡でやむを得ずの閉
城北地域の元気な商店街
石神井川
〈PAX建築計画事務所〉
東京書籍印刷社
赤羽台団地
Bulletin 2008 年 6 月号
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第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
建築に関わる法改正
建築家と法律家の衝突と止揚
法政大学法学部教授
五十嵐 敬喜 氏
ずっと気になってきたことがある。建築家と話をしてい
ておくと姉歯のように悪いことをする。したがって建築
ると、同じものについてまったく受け止め方が異なって
基準法は何よりも厳格にしなければならず、建築士法も、
いるのだ。ひょっとすると、これが日本の建築を駄目に
デザインだけでなく構造計算などについてもしっかり責
している大きな原因なのではないか。
任を取らせる。違反したらうんときつい罰を科さなけれ
テーマは「建築確認」。これは、いうまでもなく建築基
ばならない。いわゆる「性悪説」というものである。こ
準法の中核中の中核であり、建築家にとってみれば毎日
れに対し、法律家・市民の側は、建築確認制度を「許可
の「日常」である。建築家サイドから見ればこれは実に
制」に変え、建築家はこの許可制のもと、当該自治体・
厄介なもので、そこはただ難癖をつけられるだけの「鬼
地域に責任を持って仕事をする「建築プロフェッション」
門」である。多くの建築家は腹の底では、このやろうと
でなければならないと考える。さらにいえば「性善説」
思いながら、表面上はできるだけ速く手続きを進めるた
を主張しているのである。こうして双方はまったくかみ
めに「ご指導いただきたい」などと揉み手をしながら何と
合わない。今回の一連の法改正作業は、いかにもとって
か無事パスすることだけを考える。ついでに言えば、せ
つけたような偽装事件関係者の裁判と、建築確認の停滞
っかくとった建築確認に対して環境保護などを理由にし
や構造基準の画一的押し付けといった形でこの間隙を突
てクレームをつける市民などは、本音のところではそれ
いたように見える。では今後どうするか。黙して服する
こそダニやゴキブリのように見えるのだろう。
か、頭を上げて反撃するか。
ところで建築界にとって幸か不幸か、構造計算偽装事
反撃するには、建築家・法律家・市民がもう一度共通
件が起きて、従来からのややこしい建築確認手続きにさ
の土台に戻らなければならない。共通の土台とは何か?
らに判子の押し方まで徹底的に「指導」されるようにな
一つは、建築は「場所」とともにあるということを確認す
った。構造計算の自由は封じ込められ、手続きの煩雑さ
るということである。許可制はこれが必要条件だ。特に
も倍加する。この意味で建築家から見れば「建築の不自
ポストモダーン以降、建築界はこの建築物の場所性をと
由」はまさに頂点に達しつつあるといえるのだろう。
ことん無視するようになっている。第二は、建築物は個
一方、私などの法律家や市民から見ると、建築確認は
人の所有物であっても都市の一部を構成するものであり、
自治体の裁量をまったく許さない「中央集権」の塊であり、
公共性を持つということである。建築はそれゆえに、一
その基準は全国画一であり、いたるところで高層ビルが
般の人にわかる言葉で話され、多くの人に愛されるもの
建てられ、日本中どこも同じような町になってしまった
にならなければならない。最近の建築は、わかりやすい
ことからもわかるように、ずぶずぶの「建築自由」にな
という部分はほとんどゼネコンやハウスメーカーに持っ
っている。日本の建築や都市を救うには、アメリカやヨ
ていかれ、愛されるという部分は建築家の独りよがりの
ーロッパのように「建築不自由」を前提にした「許可制」
自己愛に移っているように見える。第三は、建築は永遠
にする以外にない、と主張してきた。つまり建築確認と
である、ということである。ヨーロッパでは普通の建物
いう同じ制度について、建築家サイドはこれを「建築不
でも 100 年以上、記念的なものではそれこそ何百年も使
自由」の、法律家サイドは「建築自由」のそれぞれ典型と
われている。修繕しながら持続させるというのが基本で
見ている、ということにまず驚くのである。
ある。日本では30年ないし40年で廃棄されてしまう。
もう一つ付け加えておくと、「建築家」という職業のあ
これが出発点である。この三点で双方が合意できれば、
り方についても同じように明確な、というより正反対の
今回の一連の法改正はそれこそ逆に双方の間隙を埋め、
認識の差異がある。周知のように、今回の建築基準法の
最近の閉塞感を破るためのターゲットを明確にしてくれ
改正に関連して建築士法が改正された。建築基準法と建
たと捉えることができるだろう。
築士法の改正に共通する文脈は、そもそも建築家は放っ
〈法政大学法学部教授/JIA外部アドバイザー〉
著作:『建築革命―偽装を超えて「安全」で「美しい」まちへ』など
18
Bulletin 2008 年 6 月号
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
「声」欄への投稿は支部事務局(担当:菊地)まで Tel 03-3408-8291 / Fax 03-3408-8294 / E-mail: [email protected]
雑感――24時間換気の功罪を問う
という追放作戦である。シックハウスシンドロームに苦しん
林田 研
でいる人達や新しい家に住もうとしている人達にとって、大
■先日、竣工後3年の賃貸マンションを検査で訪れて愕然と
変有効な制度改正であったと思われる。しかしながら、捨て
した。給気口の周りは真っ黒で、フィルターには目詰まりす
れば新たに別なものが入ってくる。
るぐらい煤煙粒が詰まっているし、玄関扉もすきま風の影響
東京の大気は昔に比べて綺麗になったといわれているが、
で、黒い煤が扉の足下1/3にへばりついている。さらに最近、
決して大気汚染が解消したわけではなく、相変わらず大量の
竣工後1年検査で訪れた住宅でも、給気口の周りはびっくり
車からは CO 2 と共に有害物質を排出し続けている。都心にお
するほど黒く汚れていた。「今まではこんな事はなかったの
いての「24 時間換気」による常時外気導入は、人体有害物質
に?」と首をかしげ、ハタと思い当たった。
の排出と同時に別な人体有害物質の取り込みになってしまっ
た。果たしてどちらのほうが人体により悪影響を及ぼすのだ
「24時間換気」のせいではないだろうか!
確かに、前者は中落合の目白通りに面し、かつ信号のある交
ろうか?
いや、有害物質はないほうが良いに決まっている。
差点の前に位置している。後者は下北沢にあり、前面道路は
二者択一ではなく、都心でも外気を清浄に濾過して取り込め
5m位だが結構車の通りは多い。24 時間外気が室内に入って
る方法はないものだろうか?
くれば、外の排気ガスや煤煙も進入してくるのは当たり前だ。
幸いにして、住宅地の真ん中に位置する浦和の住宅の一年
シックハウスシンドローム対策として住宅の「24時間換気」
検査では、給気口周りの汚れは全く見受けられなかった。車
が義務づけられ約5年が経過した。同時に「ホルムアルデヒ
公害の恐ろしさを再認識すると共に、石油依存社会からの脱
ド放散等級制度」による新表示と内装使用材料の制限も加わ
却を早めなければいけないとしみじみ感じた次第である。
った。有害物質を極力持ち込まない、放散したら外へ出す、
――2008年3月28日
〈(株)研建築設計事務所〉
Bulletin 207 号 Annual Report 「地域会活動報告」補遺
JIA 山梨クラブ
JIA 新宿地域会
代表:長田 孝三
代表:相田武文
連絡先:東京都新宿区大久保1-3-2
長田孝三
渡辺安徳
網野隆明
奈良田和也
連絡先:〒400-0035 山梨県甲府市飯田4-7-14(イズ内)
Tel: 055-226-8888 Fax: 055-226-5727
E-mail: [email protected]
Tel/Fax: 03-3205-1585 E-mail: [email protected]
■平成19年度の活動報告
本年度は9回の定例会 (2007 年 1 月 − 2008 年 2 月 ) を行ないま
した。8月8日には新宿区中山区長をお尋ねし、また 10 月 20 日
■山梨クラブは会員8名の小さな地域会です。しかし小さいがゆ
には日本建築家協会2007 JIA20周年記念大会において、「神楽
えに、全員の顔が見える親密な地域会です。
坂のまちづくりを語る」というテーマでシンポジウムを行ないま
■私たちの回りで、時代は大きく変化しています。本物の顔の見
した。神楽坂在住の山下副代表から概要説明があり、その後、相
えるものづくりが求められています。市民の目は建築家に対して
田代表、まちづくり運動代表の日置圭子さん、「都市計画」の西
もそれを求めています。私たちがその職能により何が出来るか、
村幸夫東大教授が加わっての有意義な会となりました。2007 年
どう社会貢献が出来るか、どう行動するのかを見つめ、また期待
6月、相田代表が東京地域連携会議議長となり、他の東京の地域
しています。
会との連携も徐々に出来つつあります。これらを踏まえ、来年度
■この小さな地域会が、山梨に何が出来るかを模索しつつ活動し
は①ゼミ形式の講演会を発足させる。②ホームページの開設 ③
ています。2年前よりの甲府市中心市街地を元気にするためのま
地図作り ④ツアー ⑤機関誌 ⑥ U I A 関連 などの目標を掲
ちづくり活動も、いよいよアーケード建設組合から、地域会にデ
げています。例会後の親睦会は毎回盛況で、建築・まち・建築家
ザイン・コンペ審査・監理などの作業の正式依頼を受け、具体的
を縦横に話し合う場でもあり、その輪を広げてゆきたいと考えて
に動き始めました。同時に活性化のためのさまざまな具体的提案
います。
(しま・よしと/新宿地域会事務局)
を市民とともにまとめ、提案していきます。
■会員作品展は今秋中心市街地の空き店舗で開催しようと準備し
ています。過日は身延山五重の塔再建現場見学会を行ないました。
今週には県下高校卒業設計コンクールの審査会を行ないます。…
…と、小さな会は仲良くフットワークも軽く活動しています。今
年は仲間を増やし、2桁にするのも目標です。
〈長田孝三/(株)イズ〉
「神楽坂の歴史とまちづくり」シンポジウム
Bulletin 2008 年 6 月号
19
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
支部ダイジェスト 3 / 4 月
詳細はJIA本部、関東甲信越支部HPなどをご覧ください
NEWS
●
委員会・地域会・部会からのお知らせ
関東甲信越支部総会が開催されました(4月23日付)
「JIA広報通信」支部広報委員会ブログを設置
●
2007 年度の事業報告、会計報告、2008 年度の活動方針案、
昨年度より実験を行なっていたブログが本格的に始動いた
予算案などが承認されました。会場からは会費などに関する
しました。支部内外での動きをよりスピーディーに掲載する
意見もあり、執行部より来年度に向け本部でも討議していく
ことで更なる活性化を目指していきたいと考えています。
と回答されました。
(広報委員会より)
「第18回AACA賞」「第7回芦原義信賞」作品募集中
●
●
HPが更新
(4月16日付)
社団法人日本建築美術工芸協会主催のもと、優れた芸術的
行政関連 詳細は国土交通省HPなどをご覧下さい
環境をつくった個人の作家、または作家グループを賞します。
●
芦原義信賞は将来性ある新人に贈られます。9月 26 日(消印有
効)締切になります。
アーバントリップ委員会、杉並地域会、住宅部会の
一級建築士の懲戒処分(国土交通省2008年3月18日)
戸建住宅での壁量不足による耐震性不足や不誠実行為など
を理由に、一級建築士12名に対し懲戒処分が下されました。
●
最近の建築確認件数等の状況について
2008 年2月までの建築確認件数等の状況が、国土交通省よ
り公開されています。(3月31日付)
お詫びと訂正
● Bulletin
208号 (2008年 4 月号)において、以下の誤りがあり
2.「改正法問題のこれから」梓設計 関洋之
誤:紙面右上の5行目「132万人」⇒正:「32万人」
ました。お詫びして訂正いたします。
以後、このような事がないよう充分に注意いたします。
■お願い――「原稿の締め切りについて」
1.「川場村世田谷区健康村訪問記」
アルコ建築設計事務所
原稿執筆依頼の際に締切前の提出をお願いしておりますが、
柿崎豊治
昨今、残念なことに遅れが目立ちます。限られた時間内での
「ふじやまビレッジ」の写真に誤りが
ありましたので、正しい写真を掲載
いたします。なお、写真右の古民家
写真左:ふじやまビレッジ
右:古民家
作業となり、編集委員内で混乱をきたし、誌面レベルの低下、
また締切前に送っていただいた方々へのご迷惑にもつながり
は隣接する片品村から移築されたもので、石野高野建築事務
かねません。お忙しい中、原稿を執筆いただく方々へ大変感
所により「ふじやまビレッジ」の管理棟として改築設計され
謝を申し上げると同時に、締切の厳守を今一度お願い申し上
たものです。
げます。
(編集長:鈴木利美)
Bulletinに広告を掲載しませんか
賛助会員の皆様へ
広報委員会委員長:中村 高淑/Bulletin編集長: 鈴木 利美/支部事務局長:菊地 良一
■広報委員会では、支部会報誌 Bulletin への広告掲載を募集
■広告掲載料金表(2008 年4月現在)
しています。JIA 関東甲信越支部会報誌として、支部会員建築
掲載スペース
家、関係官庁、団体などに直接郵送しています。年7回・毎
表2 (表紙裏)
サイズ
会員料金
一般料金
1 ページ
¥ 150,000-
―
1 ページ
¥ 100,000-
―
半 ページ
¥ 60,000-
―
1/3 ページ
¥ 40,000-
―
¥ 200,000-
―
¥ 50,000-
¥ 80,000
号 3000 部を発行の予定です。
貴社の新しい技術情報や製品情報、独自の技術思想や製品
表3 (裏表紙の裏面)
開発に対する考え方、展示会の御案内・講演、その他建築家
に提供できるサービスの紹介など、建築家への認知度を高め、
表4 (裏表紙)
効率のよい広告としてご利用下さい。賛助会員でない場合も、
差込み(持ち込み) ・印刷別
別料金で差し込みを入れることが可能です。
20
Bulletin 2008 年 6 月号
1 ページ(カラー)
A4(1枚/ A3 二つ折り)
第三種郵便物認可 Bulletin 2008年6月15日発行
旅に行ってきました
ハウステンボス、嬉野温泉、長崎市を訪ねて
――平成20年2月5日(火)∼2月6日(水)
の歴史を誇り、入れば肌がつるつるになる女性客に人気のある
温泉だそうだ。
■2月の旅行なので暖かい長崎と思っていたのだが、寒い旅行
2日目は長崎市内観光で、まず原爆資料館、次に長崎県美術
館を見学。長崎県美術館は、平成 17 年4 月開館の新しい美術
になってしまった。
1日目は、ハウステンボス。佐世保市にあり、大村湾に面し
館で、コンセプトは「呼吸する美術館」。運河をはさみ西側と
た広大な敷地に折々の花とレンガ造りの街並みと運河で構成さ
東側ふたつの棟で構成されている。屋上庭園、その他の屋上も
れた滞在型リゾート施設。入国ゲートから入り、運河船に乗っ
芝などで緑化されて屋上からの景色もすばらしい。
て展望台下で船を下りて展望台に上りハウステンボスを一望し、
午後は、大浦天主堂を見学する。中世紀建築の代表であるゴ
チック様式の日本で最古の天主堂である。
そこからは出国ゲートに向かっ
てレンガ造りの街並みを眺めな
そして最後にグラバー園を見学。スコットランド出身のグラ
がらおみやげ、チーズの試食を
バーは 1859 年、21 歳のときに開港と同時に長崎に来日、グラ
しながらバスに向かう。
バー商会を設立、1863 年南山手の丘に住まいを建設した。そ
の当時共に長崎を愛し長崎に暮らした貿易商たちの邸宅が残さ
そこから宿へ。今日の宿、嬉
れている。素晴しいことである。 〈山田孝一/(有)アトリエSKY〉
野温泉は、佐賀県で 1200 年も
編集後記
■独立して半年。そういえば、ここ4∼5年、風邪をひいてい
ていただきました。本年は賛助会社B(防水・塗装)の代表幹
ない。以前は、よくひいていた。身体が資本、これに勝るもの
事を仰せつかり、広報委員会を辞退させていただきました。こ
はないと実感しています。いろんな人と出会いました。委員会
れからも正会員の頼りになる賛助各社を宜しくお願い致します。
でも取材でも。きっと私の財産です。
(M.I.)
(Ko.Ku.)
■メタボの私のウエストが 90 を切った!税金の無駄遣いもや
■4月から HPWG の主査になりました。まだ右も左もわから
れば出来る!はず?
ないですが、よろしくお願いします。
(Hf.Ko.)
■広報委員を退任する仲間の送別会が編集長紹介のスペイン料
(K.N.)
■先日クライアントと初めて「Skype」を使ってビデオ会議を
理店で開かれ、おいしいスペインワインをいただいた。退任す
した。なるほど便利。JIA もインターネットによる TV 会議シ
る方々、ご苦労様でした。フィジーから帰国した翌日でしたが、
ステム導入を検討中だ。広報委員会でも委員会の一部で活用を
おいしいワインに満足しました。
始めたい。
(Hy.Ko.)
(N.T.)
■プロバスケットボール東京アパッチの試合をみる。本場アメ
■商店街に路面店舗ならぬ路面事務所を構えた。今まで他人事
リカ流の演出、1点を秒単位で争う見ごたえのある試合だった。
であった世界が切実であると知らされ、1軒でも多くの“質の
ところが当日のスポーツニュースでは得点表だけの紹介、これ
高い家”のために努力をしていかねばならないと意を新たにし
からである。
(Y.Ko.)
た。
(R.S.)
■・・・・・・・・・・は・・・・・・・・・・。・・・嫌
■最近建主によくお土産を頂く。タケノコにフキ、どれも建主
・・・・・・・・・・・・・夏・・・・・・・・・・・・・・
宅で収穫されたもの。妻にお土産のフキタバを持ち帰ったとき
・・・い・・・・・・・・・・・・大・・・・ (Ka.Ku.)
は、花束 (ハナタバ) よりも喜ばれた。「地産地消」――理想
■交流委員会広報部会として支部広報委員会のお手伝いをさせ
的かつ魅力的です。
編集:
社団法人 日本建築家協会
発行人:
菊地 良一
関東甲信越支部広報委員会
発行所:
社団法人日本建築家協会 関東甲信越支部
委員長:
(T.Y.)
中村 高淑
〒150-0001東京都渋谷区神宮前2-3-18 JIA館
副委員長:近藤 剛啓・鈴木 利美
TEL 03-3408-8291(代) FAX 03-3408-8294
委員:
安東 政朗・池元 真克・倉島 和弥・近藤 弘文・古池 廣行・
印刷:
サンデー印刷社
中澤 克秀・田中宣彰・湯浅 剛
編集長:
鈴木 利美
副編集長:湯浅 剛
編集委員:安東 政朗・池元 真克・倉島 和弥・田中宣彰・中村 高淑
菊地 良一
表紙デザイン:山本 信治/本文デザイン:神田 雅子
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デザイン:山口 尊敏
©社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 2008
Bulletin 2008 年 6 月号
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